主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は,控訴人に対し,4071万7770円及びこれに対する平成8年2月1日から支払済みまで年7・3パーセントの割合による金員を支払え。 (3) 仮執行宣言 2 被控訴人(1) 主文同旨(2) 仮執行宣言につき,担保提供した上での仮執行の免脱宣言を求める。 第2 事案の概要 1 本件は,租税特別措置法40条1項後段に規定する公益を目的とする事業を営む法人に対して贈与を行った控訴人が,(1) 所得税法59条1項1号の適用を受けない前提で所得税の確定申告をしたところ,いまだ租税特別措置法(以下「措置法」という。)40条1項後段に規定する国税庁長官の承認決定がされていないとして,西新井税務署長から所得税法59条1項1号の適用を前提とした更正処分等(以下「本件更正等」という。)をされたことから,前記更正に基づく所得税本税及びこれに対する過少申告加算税並びに延滞税(以下「本件延滞税」という)を納付した(以下「本件各納付」という。),(2) その後,国税庁長官から前記承認(以下「本件承認決定」という。)がされ,これに基づく減額更正(以下「本件減額更正」という。)がされて,前記各納付税額が控訴人に還付されたが,還付加算金は付されなかったとして,被控訴人に対し,(1) 主位的に,本件更正等は無効であり,また,納付時においては延滞税は発生していなかったなどとして,納付時からの還付加算金の支払を求め,(2) 予備的に,控訴人は,被控訴人担当職員から還付加算金が支払われるとの虚偽の説明を受けて納付したものであるから,少なくとも,納付時からの還付加算金と同額の損害を被ったとして,国家賠償 払を求め,(2) 予備的に,控訴人は,被控訴人担当職員から還付加算金が支払われるとの虚偽の説明を受けて納付したものであるから,少なくとも,納付時からの還付加算金と同額の損害を被ったとして,国家賠償法に基づき,損害賠償を請求している事案である。 2 本件の争点は,原審同様に,(1) 還付金加算金の還付請求(主位的請求)関係につき,①(ア) 本件更正等が違法であり,かつ,その瑕疵が重大かつ明白であるために無効であるか(本件争点(1)①(ア),(イ) 控訴人には,本件延滞税の納付義務が発生していなかったといえるか(本件争点(1)①(イ)),② 国税庁長官が本件承認決定を行ったことが「その申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実のうちに含まれていた行為の効力に係る官公署の許可その他の処分が取り消されたこと(国税通則法施行令6条1項1号)」に当たるか否か(本件争点(1)②),(2) 国家賠償請求(予備的請求)関係につき,被控訴人の担当者である東京国税局徴収部特別整理第五部門総括主査Aが,還付をするには,還付加算金については納付した日から計算して支払うと告げて,納税を慫慂したことが,国家賠償法上違法であり,これによって,控訴人が損害を被ったといえるか否か(本件争点(2)),にある。 3 その余の事案の概要及び当事者の主張の詳細は,原判決の「事実及び理由」の「第二事案の概要」欄に記載のとおりである。 4 原審は,(1)(本件争点(1)①(ア)につき) 国税庁長官の措置法40条1項後段の承認決定又は承認をしないことの決定がされていな段階においては,所得税法59条1項1号に規定するみなし譲渡課税の規定の適用については,当該財産の贈与又は遺贈がなかったものとみなすことはできず,これがあることを前提として,みなし譲渡課税の規定 な段階においては,所得税法59条1項1号に規定するみなし譲渡課税の規定の適用については,当該財産の贈与又は遺贈がなかったものとみなすことはできず,これがあることを前提として,みなし譲渡課税の規定が適用されるものと解するほかないものであり,その適用を前提とした更正決定,各種加算税の賦課決定を行うことが違法ということはできない,(2)(本件争点(1)①(イ)につき) 措置法40条4項が,国税庁長官が前記承認をしないことの決定がされるまでの期間につき,その者の納付すべき所得税の額から承認があったものとした場合における納付すべき所得税の額を控除した金額に係る延滞税の納税義務が発生しないことまで規定するものと解することは困難であり,控訴人の主張に係る本件延滞税を納付する義務が生じていなかったものとは認められない,(3)(本件争点(1)②につき)本件減額更正は,措置法40条1項後段に規定する国税庁長官の承認決定がされたことに基づいてされたものであるから,これに伴って発生した過納金の還付に際しては,国税通則法58条5項,同法施行令24条5項,6条1項1号の各規定により,減額更正があった日の翌日から起算して一月を経過する日の翌日から還付加算金を付すことになるものであるところ,本件減額更正があったのは,平成8年1月22日であり,東京国税局長は,同月31日付けで,件減額更正によって発生した還付金全額を控訴人に還付しているものであるから,控訴人には,その主張に係る還付金は付されないことになる,(4)(本件争点(2)につき) 控訴人は,本件承認決定がされる以前において,本件更正等に基づく所得税等の納税義務及び本件延滞税の納付義務を負っていたものであるから,前記Aが,控訴人に本件各納付を慫慂した時点においても,控訴人には本件各納付に係る税金の納税義務が生じ おいて,本件更正等に基づく所得税等の納税義務及び本件延滞税の納付義務を負っていたものであるから,前記Aが,控訴人に本件各納付を慫慂した時点においても,控訴人には本件各納付に係る税金の納税義務が生じていた以上,前記慫慂に従って本件各納付を行ったとしても,控訴人には何らの財産的損害は生じていない,として,控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した。 控訴人は,原判決に不服があるとして本件控訴を提起した。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も控訴人の請求は,いずれも理由がないと判断する。その理由は,次に付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第三当裁判所の判断」欄に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,51頁8行目の「法」の後に「施行令」を加える。)。 2 所得税法59条1項は,居住者である個人が,土地,建物,株式及び美術品等の譲渡所得の基因となる資産を法人に寄附した場合には,これらの資産は寄附した時の価格,すなわち時価で譲渡されたものとみなし,同法33条の規定に基づき所得税が課税されることになっているのである。 ところで,措置法40条1項によれば,国又は地方公共団体に対して財産の贈与又は遺贈があった場合には所得税法59条1項1号は適用されず,みなし譲渡税は課税されないところ,措置法40条1項後段に規定する寄附がされた場合も同様に前記課税はされないのである。しかし,措置法40条1項後段所定の寄附は,当該贈与又は遺贈が教育又は科学の振興,文化の向上,社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することその他の政令で定める要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けることが要件とされているのであり,前記要件を満たした場合に,国税庁長官は承認をすることができるのであるから,個人が,民法34条の規定により設立された法人その他公益 ものとして国税庁長官の承認を受けることが要件とされているのであり,前記要件を満たした場合に,国税庁長官は承認をすることができるのであるから,個人が,民法34条の規定により設立された法人その他公益を目的とする事業を営む法人に対して財産の贈与又は遺贈をした場合であっても,国税庁長官から前記承認を受けない限り,所得税法59条1項1号は適用されるのである。したがって,前記承認のための申請がされていたとしても,国税庁長官からの承認がされていない限り,所得税法59条1項1号が適用されるのであり,それゆえ承認申請中における課税も禁止されるものではなく,これは,控訴人の主張に係る措置法40条4項等の規定等が存することによっても異なるものではないのである。 控訴人は,これらの点につき,るる主張するが,それらがいずれも採用することができないことは原判決が逐次詳細に説示するとおりである。 3 以上によれば,控訴人の本件請求は,その余の点を判断するまでもなくいずれも理由がなく,これと同旨の原判決は相当である。 そうすると,控訴人の本件控訴は理由がないものとして棄却を免れない。 よって,民事訴訟法67条1項,61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第12民事部裁判長裁判官伊藤瑩子裁判官秋武憲一裁判官三代川俊一郎
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