昭和23(れ)930 業務上横領

裁判年月日・裁判所
昭和24年6月29日 最高裁判所大法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。          理    由  弁護人倉金熊次郎の再上告趣意は末尾に添附した別紙書面記載の通りである。  弁護人倉金熊次郎の上告趣意第一点同第二点につい

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判決文本文2,196 文字)

主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人倉金熊次郎の再上告趣意は末尾に添附した別紙書面記載の通りである。 弁護人倉金熊次郎の上告趣意第一点同第二点について。 按ずるに横領罪は、他人の物を保管する者が、他人の権利を排除してほしいままにこれを処分すれば、それによつて成立するものであることは明らかであり、必ずしも自分の所有となし、もしくは自分が利益を得ることを要しない。第二審判決において認定した事実によれば、被告人は茨城県真壁郡a村村農会会長在任中、業務上保管中の国所有の玄米百四十四俵及びA営団所有の玄米三百十二俵を、正規の手続を経ないでほしいままに之れを特配名義の下に売渡したというのであるから、横領罪を構成することは疑いない。論旨は、判示玄米は被告人の所有物として個人的に売買したものでないと主張する。しかし原判決は「被告人は本来為し得る行為について単に其履行を誤つたものではなくして正規の手続を経て権限を授与されることなくして為すべからざる行為をなしたものである、換言すれば被告人は単に玄米特配の履行手続を誤つたものではなくして玄米特配の外形を借りて実は玄米を個人的に売却したのである。」と説示しているが、第二審判決の認定した事実に対する判断としては正当であつて何等違法は認められない。論旨は更に、本件の所謂特配は、被告人居村住民の窮迫した食糧不足を救済し、農村の食糧増産義務履行を完遂せしめ、併せて農村一揆等の起るのを防止する為め実行したもので、玄米売渡代金は一銭も私しない全く公益性公共性を有するから、刑法領得罪を構成するものではないに拘わらず、被告人に対し有罪を宣告したことは憲法に違反すると主張する。 しかし、すでに説明した通り、他人の物を保管する者が他人の権利を排除してほしいままに之れを処分すれば、 罪を構成するものではないに拘わらず、被告人に対し有罪を宣告したことは憲法に違反すると主張する。 しかし、すでに説明した通り、他人の物を保管する者が他人の権利を排除してほしいままに之れを処分すれば、横領罪は成立するのであるから、判示玄米を処分した- 1 -ことは村民救済の為であるとしても、犯罪の成立をさまたげるものではなく、また処分によつて得た金銭は一銭も私しないとしても、横領罪が成立することは前段の説明によつて明らかである。 なお論旨は、被告人の行為は公益性公共性を有し犯罪を構成しない旨を力説するのであるが、右主張事実は第二審並に原審の肯定しないところであり、それは何等法則に違反したと認むべき点はない。そして罪となるべき行為につき上告人が刑罰法令の解釈を誤り、該法規に該当せずとなし違憲の主張をすることは、本来単なる違法を主張するに過ぎないものであるから、裁判所法第一〇条刑訴応急措置法第一七条にいわゆる違憲の論旨と認めることはできない。況んやこの点について論旨はただ原判決は、違憲であるというだけであつて、憲法の如何なる条項に違反するかを主張しないから、再上告適法の理由とはなり得ない。次に論旨は、知事の還元配給中止命令は、被告人居村の最低限度の生活権を侵害したもので憲法第二五条同第九八条に違反するものであり、其為め被告人居村住民の食糧が不足し其ままにして置くことができない状態に陥つたので、村民の最低限度の生活を維持する必要上特配を実行したのであつて、判示玄米は被告人の個人的売買ではなく、公益性公共性を有するから犯罪を構成するものではないと主張するが、かかる事実は、第二審判決において全く認めないところである。そして憲法第二五条第一項の法意は、国家は国民一般に対し、概括的に健康で文化的な最低限度の生活を営ましめる責務を負担し、これを国政上 るが、かかる事実は、第二審判決において全く認めないところである。そして憲法第二五条第一項の法意は、国家は国民一般に対し、概括的に健康で文化的な最低限度の生活を営ましめる責務を負担し、これを国政上の任務とすべきであるとの趣旨であつて、此規定により直接に個々の国民は国家に対し、具体的現実的にかかる権利を有するものではない。(昭和二三年(れ)第二〇五号昭和二三年九月二九日大法廷判決参照)従つて最低限度の生活を維持する為めには、国及び県食糧営団の権利を排除してほしいままに之れを処分しても罪とならないという理由は同条の解釈からは出てこない。そして第二審判決の判示したところによれば、被告人の犯行の違法性を阻却すべき原由となる- 2 -ものではないから、被告人の行為を目して合法性乃至合憲性のものであるとはいい得ない。仮りに知事の行政行為が所論の如き違憲違法があるものとしても、それは他に救済の道があるべき筈であり、之れを本刑事事件において再上告の理由となし得るものではない。要するに論旨は多岐にわたつているが、何れも採用することはできない。 よつて旧刑事訴訟法第四四六条により主文の通り判決する。 以上は裁判官全員一致の意見である。 検察官十蔵寺宗雄関与昭和二四年六月二九日最高裁判所大法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官長谷川太一郎裁判官沢田竹治郎裁判官霜山精一裁判官井上登裁判官栗山茂裁判官真野 一裁判官井上登裁判官栗山茂裁判官真野毅裁判官小谷勝重裁判官島保裁判官斎藤悠輔裁判官藤田八郎裁判官岩松三郎- 3 -

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