平成21(行コ)4 懲戒免職処分取消請求控訴事件(通称 神戸市職員懲戒免職)

裁判年月日・裁判所
平成21年4月24日 大阪高等裁判所
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判決文本文9,630 文字)

- 1 -主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2事案の概要(略記は,原判決のそれに従う)。 本件は,控訴人職員として勤務していた被控訴人につき,処分行政庁は,被控訴人が平成19年3月30日午前9時30分ころ酒気帯び運転をしたことを理由に,同年5月11日付けで,地方公務員法29条1項1号及び3号の規定に基づき,懲戒免職処分とした(以下「本件処分」という。また,処分行政庁を単に「消防長」といい,神戸市長を単に「市長」という)ので,被控訴人。 が本件処分の取消しを求めている事案である。 原審は,被控訴人の請求を認容した。そこで,控訴人は,これを不服として控訴した。 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり訂正するほかは,原判決「事実及び理由」中の「第3争いのない事実等」及び「第4争点及び争点に関する当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する。 「」「,( )原判決4頁17行目の改正後から18行目末尾までを改正以降は 酒気帯び運転に対する目安となる標準量定を免職又は停職と定めており,その運用に当たっては事故の有無にかかわらず原則免職とする扱いに変更している」と改める。 。 ( )原判決6頁14行目の「行っおり」を「行っており」と改める。 - 2 -第3当裁判所の判断 当裁判所も,被控訴人の控訴人に対する本件請求は,理由があるから,これを認容するのが相当であると判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用す 請求は,理由があるから,これを認容するのが相当であると判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 ( )原判決10頁20行目の「アルコール」から21行目末尾までを「肝臓 疾患があって,γ-GTPが171(正常値10ないし50)で,中性脂肪が224(正常値40ないし130)であり,かかりつけの医院に通院し服薬しているが,未だ直ぐに禁酒するように言われたことはない」と改める。 。 ( )原判決12頁20行目の「検出された」の次に次の文章を加える。 「が,その他,警察官の鑑識による質問応答状況,言語態度状況,目の充血等の身体状況,歩行・直立等の運動能力の状態においても,特段の異常は認められなかったことがうかがわれる」( )原判決14頁8行目末尾に改行の上次の文章を加える。 「また,姫路市においては,平成18年10月に飲酒運転は原則免職とする旨処分基準を厳罰化した後に,消防局の消防司令補が,前日夜に酒を5,6合飲酒して,速度違反をし,呼気1リットル当たり0.15ミリグラムのアルコールが検出され,酒気帯び運転・速度超過で逮捕された事例において,停職1月の処分としているようである(甲18」)。 ( )原判決15頁2行目末尾に改行の上次の文章を加える。 「ただし,上記のa教授の見解は,あくまで一般的に用いられるアルコール,,分解能力に関する数式に基づいておおよその可能性として述べられており肝臓疾患がアルコール分解能力に影響を与えることも可能性としては否定していない。そして,上記のアルコール分解能力に関する数式は,おおよその目安を示すもので,個人差もあり,酒の飲み方や体調によっても大きく変わってくるといわれている(甲19 ることも可能性としては否定していない。そして,上記のアルコール分解能力に関する数式は,おおよその目安を示すもので,個人差もあり,酒の飲み方や体調によっても大きく変わってくるといわれている(甲19。また,関西の多くのバス会社では「少)- 3 -なくとも勤務前の8時間は飲酒禁止」との内規があるが,これを遵守しても乗務前のアルコール検査で社内基準値を上回ることがあるとか,航空業界では出発8(あるいは12)時間前以降の飲酒を禁じているがこれを遵守しても搭乗前アルコール検査で社内基準を超えるアルコールが検出されることがあるとの新聞報道がなされている(甲19,24」)。 ( )原判決15頁3行目から19頁18行目までを次の文章に改める。 「2飲酒状況及び酒気帯び運転の認識について( )被控訴人は,平成19年3月29日午後8時ころから,バンコク市 内のホテル自室で夕食をとり,その際に350ミリリットルのビール2本を飲み,その後,被控訴人は,午後11時30分ころ発の飛行機に搭乗し,搭乗後すぐに航空機内サービスを受け,午後11時45分ころまでの間にシャンペンをグラス2杯(1杯につき100ミリリットル)飲み,その間に翌日の仕事に備えて航空機内で熟睡するために,睡眠導入剤であるハルシオン1.5錠を服用し,午前5時19分に日本に到着するまで熟睡したと主張し,本件事故以後,警察,消防局,神戸市人事委員会,検察庁,簡易裁判所において,そして本訴提起後においても現在に至るまで一貫してその旨の供述を維持している(甲5,乙1,8,10ないし13,弁論の全趣旨。 )しかし,被控訴人に対する飲酒検知(呼気検査)の数値が正確であるとすれば(ただし,この点について控訴人は検査の方法等を記載した報。),,告書等を何ら提出していない前記1( )のa教 趣旨。 )しかし,被控訴人に対する飲酒検知(呼気検査)の数値が正確であるとすれば(ただし,この点について控訴人は検査の方法等を記載した報。),,告書等を何ら提出していない前記1( )のa教授の見解に照らすと 飲酒量に関する被控訴人の主張は少量に過ぎ,実際にはその主張する量よりも相当程度多かったのではないかとの疑いが強いが,他方で,被控訴人が有する肝臓疾患,また当時の体調やそのときの飲み方,服薬や航空機などによりアルコール分解能力にある程度の影響があり得ることはにわかに否定しにくいところであり,少なくとも実際の飲酒量は被控訴- 4 -人主張量よりも若干多かったであろうとの推認は可能であろうと考えら。 ,,,,れるただし被控訴人の上記主張の内飲酒量以外の飲酒した状況経緯,時刻,場所や酒の種類などについては,他の客観的な状況とも特段矛盾せず,採用することができるものと考えられる。 ( )前項( )で認定した飲酒状況を前提として,被控訴人に酒気帯び運転 の故意や認識があったか否かについて検討する。 被控訴人は,飲酒し睡眠導入剤を服用して後5時間ほど機内で熟i睡し,関西国際空港に到着後同空港内で,さらに神戸空港内駐車場でいずれも相当時間の休憩をとっており,結局最後に飲酒してから10時間近くも経ってから軽自動車の運転をして本件酒気帯び運転中に本件事故に至ったものであること,本件事故後警察官は被控訴人からアルコiiール臭を感じ飲酒検知を実施して呼気1リットル中に0.2ミリグラム,,のアルコールが検出されたとはいえ警察官の鑑識による質問応答状況言語態度状況,目の充血等の身体状況,歩行・直立等の運動能力の状態iiiにおいても,特段の異常は認められなかったものと推認されること,通常誰でも自分自身のアルコー え警察官の鑑識による質問応答状況言語態度状況,目の充血等の身体状況,歩行・直立等の運動能力の状態iiiにおいても,特段の異常は認められなかったものと推認されること,通常誰でも自分自身のアルコール臭を覚知することは困難であると考えられるところ,被控訴人も上記自動車運転の際に自分自身のアルコール臭を覚知することはできなかったのではないかと思われるし,現に被控訴人は本件事故当時飲酒運転の認識はなかったとの供述を維持していること,バス業界には「少なくとも勤務前の8時間は飲酒禁止」とivの内規があることからうかがわれるように,飲酒後8時間程度経過すると飲酒運転にならないことが多いとの認識が世間一般に比較的広く流布していると思われることなどからすると,被控訴人が本件事故当時アルコールを自己の身体に保有しながら車両の運転をすることの認識を有していたとするには大きな疑問があるといわなければならない。 なお,被控訴人は,本件酒気帯び運転について,平成19年5月21- 5 -日,刑事処分として罰金25万円の略式命令を受け,仮納付命令に基づき,即日その納付をしており,その際,警察,検察庁及び簡易裁判所に対し,飲酒検知の結果や飲酒運転の有無等について異議を述べることはなかったものである。しかしながら,被控訴人が異議を述べることなく刑事処分を甘受したのは,たとえ酒気帯び運転の故意や認識はなくとも客観的には酒気を帯びて自動車を運転したことは間違いないのであるから,罰金25万円を支払うことで早期に刑事手続が終了するのであれば敢えて多くの時間と労力と費用を費やして罪状を争うことをせずに,処罰を甘受しようとしたものと推測されるところであって,公職だけでなく,名誉さらには退職金まで失うことになる本件処分については被控訴人の被る不利益が大きいのでこれを甘受す て罪状を争うことをせずに,処罰を甘受しようとしたものと推測されるところであって,公職だけでなく,名誉さらには退職金まで失うことになる本件処分については被控訴人の被る不利益が大きいのでこれを甘受することはできないと判断したのではないかと考えられる。したがって,刑事手続では罪状を争わなかったにもかかわらず,酒気帯び運転の故意や認識を否定して本件処分の違法性を主張することは必ずしも不自然であるとはいえない。 争点1(本件指針及びその運用の違法性)について( )本件処分の根拠となる地方公務員法29条1項は,地方公務員に同 項1号ないし3号所定の非違行為があった場合,懲戒権者は,戒告,減給,停職又は免職の懲戒処分を行うことができる旨を規定するところ,同法は,すべての職員の懲戒について「公正でなければならない」と規定し(同法27条1項・公正原則,すべての国民はこの法律の適用に)ついて平等に取り扱われなければならない(同法13条・平等原則)と規定するほかは,どのような非違行為に対しどのような懲戒処分をすべきかについて何ら具体的な基準を定めていない。したがって,本件にお,,,,,,,いて消防長は被控訴人の非違行為の原因動機性質態様結果影響等のほか,被控訴人の非違行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する懲戒処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般- 6 -の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分をすべきかを,その裁量により決定することができると解される(最高裁昭和47年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁参照。もっとも,懲戒権)者が裁量権の行使としてした懲戒処分は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与 和47年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁参照。もっとも,懲戒権)者が裁量権の行使としてした懲戒処分は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したと認められる場合でない限り,その裁量権の範囲内にあるものとして,違法とならないものというべきであるが,決定された懲戒処分が社会通念上著しく妥当を欠いて苛酷であるとか,著しく不平等であって,裁量権を濫用したと認められる場合には,公正原則,平等原則等に抵触するなどとして違法となると解される。 このような観点から,前記1,2で認定した事実及び前記第3の争いのない事実等に基づき,以下本件処分が違法なものであるか否か(争点1,2)について検討する。 ( )本件指針の運用の実際,本件指針等の策定及び標準量定の改正の経 緯は,前記第3の5のとおりであるところ,市長及び消防長は,平成18年に福岡市職員の飲酒運転により悲惨な交通事故が起こったこと等を契機として,公務員の飲酒運転に対する厳罰化の流れが加速したことを受けて,飲酒運転根絶の取組みを民間企業や他都市に先駆けて率先して実践するべきであると判断し,平成18年9月26日に標準量定を定めた本件指針等を改正したものであり,同日以降は,酒気帯び運転に対する目安となる標準量定は免職又は停職と定められており,その運用に当たっては事故の有無にかかわらず原則免職とし,酌量すべき事情がある場合に限って停職とする取扱いに変更されている。 そして,本件指針は,交通事故・交通法規違反関係の非違行為を,飲酒運転,人身事故を伴う交通事故及び交通法規違反の3種類に区分し,- 7 -飲酒運転については,人身事故を伴う交通事故及び交通法規違反よりも重い量定を定めている(甲3の3。これは,飲酒運転根絶 飲酒運転,人身事故を伴う交通事故及び交通法規違反の3種類に区分し,- 7 -飲酒運転については,人身事故を伴う交通事故及び交通法規違反よりも重い量定を定めている(甲3の3。これは,飲酒運転根絶が社会の強)い要請であることを踏まえ,社会全体の奉仕者である神戸市職員,その中でも特に治安の一翼を担う消防職員が,一般市民や他の自治体の職員・国家公務員よりも率先して飲酒運転根絶に取り組むために定めたものであるが,故意による飲酒運転と過失による交通事故とでは規範意識の欠如という主観面での悪性や非難可能性及び行為の客観的な危険性の点で格段の相異があると考え,これをその一つの大きな根拠として決定したものである。また,他の自治体においても酒気帯び運転に対して原則免職の方針を定めている自治体が増加しており,国家公務員においても人事院は,平成20年4月1日「懲戒処分の指針」を一部改正し,国,家公務員の懲戒処分の標準量定を見直し,飲酒運転の標準量定を,従来の「停職,減給,戒告」から「免職,停職,減給」に改正している(弁論の全趣旨。 )さらに,本件指針及び原則免職とするその運用は,被控訴人にも告知・教育がなされていると認められるところ(前記1( ) ,これらはあ 3 )くまでも原則を定めたものであり,飲酒運転を行えばその他の具体的な事情を一切考慮することなく画一的・自動的に懲戒免職処分とするものではなく,酌量すべき事情がある場合には当然に停職処分に留める余地を認めていて,本件指針及びその運用自体が職員にとって過酷に過ぎることはないと考えられる。 以上の点を総合的に考慮すれば,本件指針及び原則免職とするその運用自体には十分な合理性が認められ,懲戒権者の裁量権の濫用はなく裁量の範囲内にあるものと判断される。 争点2(本件処分の違法性)について( を総合的に考慮すれば,本件指針及び原則免職とするその運用自体には十分な合理性が認められ,懲戒権者の裁量権の濫用はなく裁量の範囲内にあるものと判断される。 争点2(本件処分の違法性)について( )上述のように,本件指針及び原則免職とするその運用は十分な合理 - 8 -性を有するものであるが,次に,この本件指針と運用を,被控訴人の本件酒気帯び運転に適用してなされた本件処分の違法性の有無について検討する。 ア本件指針及びその運用は,前記3( )で説示したように,酒気帯び 運転が,故意による犯罪行為であって規範意識の欠如した強い非難可能性に値する危険な行為である点を最も重視して,人身事故を伴う交通事故及び交通法規違反よりも重い量定を定めているのであるから,酒気帯び運転の故意や認識を欠く行為に対して直ちに懲戒免職処分をもって臨むことは,相当性を欠くおそれが高いものということができる。なお,酒気帯び運転の故意や認識を欠く行為に対しては,本来刑事責任を問うこともできない筋合いのものであることはいうまでもないところである。 そして,前記2( )に説示したように,被控訴人が本件酒気帯び運 転当時アルコールを自己の身体に保有しながら車両の運転をすることの認識を有していたとするには大きな疑問があるのであるから,被控訴人の本件酒気帯び運転に対して直ちに懲戒免職処分をもって臨むことは,相当性を欠くおそれが高いものというべきである。 イ本件酒気帯び運転は,被控訴人が出勤途上という公務に極めて近接した状況で行った行為であり,被控訴人の呼気に残存していたアルコールの量は,呼気1リットル中0.2ミリグラムであるから,故意の点を除きこれを外形的に見ると,本件酒気帯び運転の非違行為としての性質,態様,結果という点で,悪質さの程度が必ずしも低いとはい アルコールの量は,呼気1リットル中0.2ミリグラムであるから,故意の点を除きこれを外形的に見ると,本件酒気帯び運転の非違行為としての性質,態様,結果という点で,悪質さの程度が必ずしも低いとはいえない。 ウ非違行為の原因や動機についてみるに,本件は,前日の夜に摂取したアルコールが,10時間近く経っても分解されることなく翌日の朝まで体内に残存したという事案であって,不用意であったということ- 9 -はできても,非違行為に至った原因や動機について,特段の非難に値するとか,破廉恥な事情があったということはできない。すなわち,被控訴人につき,飲酒直後に運転することが分かっていながら飲酒したとか,大量に飲酒後わずかの休憩をとっただけであえて運転したといった悪質な事情は存しない事例であるから,被控訴人の飲酒運転に対する規範意識や法令遵守の精神が鈍麻していたとまでいうことはできない。 エ非違行為の他への影響という点についてみるに,本件酒気帯び運転によって被控訴人は,本件酒気帯び運転当日の夕刻ころまで出勤できなかったというのであるから,公務への影響が少なからず生じたといえるし,また,本件事故により,他人に物損被害を生じさせており,公務員への信頼という観点から新聞報道を通じて地域社会に与えた悪影響も軽微であるとはいえない。ただし,物損事故を起こすこと自体は犯罪ではなく,行政取締りの対象となる交通違反でもないのであって,本件事故そのものは非違行為として懲戒の対象となるわけではないから,本件事故の発生をそれほど重大視することは,公正とはいえないと考えられる。 オ被控訴人は,本件酒気帯び運転の事実を当日遅滞なく職場に報告しており,特段非違行為を隠蔽しようとしてはいないし,被控訴人には前科前歴もなく,控訴人の消防局に採用後過去30年間に懲戒処分等 れる。 オ被控訴人は,本件酒気帯び運転の事実を当日遅滞なく職場に報告しており,特段非違行為を隠蔽しようとしてはいないし,被控訴人には前科前歴もなく,控訴人の消防局に採用後過去30年間に懲戒処分等の処分歴もなく真面目に勤務してきたものであり,被控訴人の同僚など681名から人事委員会宛に処分軽減を求める嘆願書も提出されているところであって,これらの事情は被控訴人に有利に汲むべきものである。また,被控訴人は,本件事故の翌日には,今後一切酒類を飲まない旨の誓約書を提出し,謝罪のため本件事故の被害者を訪れているのであるから,非違行為後の被控訴人の態度は決して非難すべきも- 10 -のではないということができる。さらに,被控訴人は,消防車両を2,,,4年間にわたり運転していたがその間一切事故を起こしておらず平成12年7月5日には,神戸市人事委員会から安全精励賞の表彰を受けているし,職場以外でも30年間以上無事故で運転を継続している(甲5,弁論の全趣旨。 )カ国家公務員においては,前記3( )で説示したように,人事院は平 ,,「,,成20年4月1日以降飲酒運転の標準量定を従来の停職減給戒告」から「免職,停職,減給」に改正しているが,それでも,前記1の( )イのとおり,国家公務員の場合,酒気帯び運転で免職となる 例は少ないと考えられるまた地方公務員においても前記1の( )。 ,, アのとおり,地方公共団体によっては,酒気帯び運転については原則として免職処分に処することにする旨懲戒処分の基準を厳罰化した後にも,懲戒免職処分としない事例も存するようである。なお,控訴人においては,本件指針等の改正後本件処分までの間に飲酒運転をした職員3名を懲戒免職処分としている(前記1の( )ア)が,いずれも (, ,懲戒免職処分としない事例も存するようである。なお,控訴人においては,本件指針等の改正後本件処分までの間に飲酒運転をした職員3名を懲戒免職処分としている(前記1の( )ア)が,いずれも (,飲酒運転の故意や認識に問題のない事案のようであり乙33含枝番34,本件とは事案を異にするものと考えられる。 )国家公務員と地方公務員の間,あるいは異なる地方公共団体の公務員の間では,それぞれの依って立つ処分基準が異なるため,処分内容を単純には比較できないところであって,基準や具体的な処分に差異があることは特段異とするに足りないけれども,身分保障を受ける公務員に対する懲戒処分の妥当性についての社会観念を推知する上で必ずしも軽視することはできないと思われる。 キ免職という懲戒処分は,公務員にとって著しい不名誉であるだけで,,,はなくこれにより当該公務員は直ちに職を失って収入が閉ざされ退職金さえ失うのであって,これにより当該公務員が被る有形・無形- 11 -の損害は甚大である。特に,被控訴人のように30年間も真面目に勤務実績を積み上げてきた者にとっては,なおさらそうであり,懲戒免職処分は,当該公務員の半生を棒に振らせるに等しいのであるから,懲戒免職処分を行う際には,処分権者の側にも相応の慎重さが求められるといわなければならない。 ( )以上のとおり,本件酒気帯び運転については,故意の点を除くと非 違行為の外形的な性質,態様,結果の悪質性及び他に与えた影響の程度などは必ずしも軽微であるとはいえないけれども,他方で,懲戒処分の決定に際して極めて重要な要素を構成する被控訴人が酒気帯び運転の故意や認識を有していたことには大きな疑問があるだけでなく,本件酒気帯び運転の原因や動機,酒気帯び運転の前後における被控訴人の態度,懲戒処分等の処分歴 て重要な要素を構成する被控訴人が酒気帯び運転の故意や認識を有していたことには大きな疑問があるだけでなく,本件酒気帯び運転の原因や動機,酒気帯び運転の前後における被控訴人の態度,懲戒処分等の処分歴,日常の勤務状況,国家公務員や他の地方公務員における処分との均衡,処分を受ける公務員の受ける不利益の程度などにおいては被控訴人に有利に汲むべき点が多いことに照らすと,本件酒気帯び運転に対し,停職処分ではなく直ちに懲戒免職処分をもって臨むことは,社会通念上著しく妥当を欠いていて苛酷であり,裁量権を付与し,。 ,た目的を逸脱しこれを濫用したものと評価すべきであるしたがって本件処分は違法なものとして取り消されなければならない」。 以上によれば,原判決は正当であって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第3民事部裁判長裁判官島田清次郎- 12 -裁判官坂本倫城裁判官松井千鶴子

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