平成22年11月17日神戸地方裁判所姫路支部平成21年(ワ)第278号損害賠償請求事件主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告らは,原告Aに対し,連帯して3120万9739円及びこれに対する平成20年7月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは,原告Bに対し,連帯して3120万9739円及びこれに対する平成20年7月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,亡きCが,被告会社の製造・販売するこんにゃく入りゼリーを食べた際にこれを喉につまらせ窒息し,その後に死亡したのは,被告らがこんにゃく入りゼリーの設計上の致命的な欠陥を放置してこれを漫然と製造・販売したことによるものである等として,Cを相続した原告らが,被告らに対し,被告会社につき製造物責任及び不法行為責任に基づき,被告D及び同Eにつき取締役の第三者に対する責任に基づき,それぞれ損害金3120万9739円及びこれに対するCが前記こんにゃく入りゼリーを食べた日である平成20年7月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 (1) 当事者等 ア原告A及び同Bは,亡きC(平成18年10月5日生まれ。)のそれぞれ父及び母である。 イ被告会社は,蒟蒻製品等の製造販売を目的とする株式会社である。被告D及び同Eは,いずれも被告会社の代表取締役である。 (2) Cの死亡事故(以下「本件事故」という。)の発生Cは,平成20年7月29日,Cの祖母であるFが与えた,被告会社の製造・販売したミニカ 被告D及び同Eは,いずれも被告会社の代表取締役である。 (2) Cの死亡事故(以下「本件事故」という。)の発生Cは,平成20年7月29日,Cの祖母であるFが与えた,被告会社の製造・販売したミニカップ容器入りのこんにゃく入りゼリー(製品名「蒟蒻畑マンゴー味」。以下,「本件こんにゃくゼリー」といい,ミニカップ入りのこんにゃく入りゼリーを単に「こんにゃくゼリー」という。)を食べた際,これを誤飲して喉につまらせ窒息し,同年9月20日,死亡した。 Cが摂取した本件こんにゃくゼリーは,Fが予め冷凍しておいたものであった。 (甲2,甲3の1ないし3,甲37,甲38)(3) 本件こんにゃくゼリーの形状,警告表示等(別紙1ないし4参照)ア本件こんにゃくゼリーは,1つ当たりの内容量が25グラムであり,摂取する際に押し出せるよう柔らかいプラスチック製で左右非対称のハート型をしたミニカップ容器に詰められ,上面はフィルム製の蓋がされていた。 そして,このように個別に包装されたこんにゃくゼリーが12個入れられたものを1袋として,販売されていた。 (甲4,乙1の1・2,乙2,乙3,乙7の1・2,乙8)イまた,本件こんにゃくゼリーには,警告表示として,外袋表面の右下隅に,横約2.6センチメートル・縦約3センチメートルの大きさで,赤色の「<×>」印の中に子ども及び高齢者が息苦しそうに目をつむっているイラスト(ピクトグラフ)が描かれ,その上には「こんにゃく入りゼリー」・その下には「お子様や高齢者の方はたべないでください」との文字がそれぞれ印字されており,同裏面の右下には,横約6センチメートル・縦約 5センチメートルの赤枠内に,「警告」「●お子様や高齢者の方は,のどに詰まるおそれがありますので,食べないでください。」「●万が一,のどに詰まった場合には,膝の上にうつ 約6センチメートル・縦約 5センチメートルの赤枠内に,「警告」「●お子様や高齢者の方は,のどに詰まるおそれがありますので,食べないでください。」「●万が一,のどに詰まった場合には,膝の上にうつぶせにして背中をたたくか,または,にぎりこぶしをみぞおちに当てて押し上げ,吐き出させてください。」「●お子様の手の届かないところに保管してください。」との文字が赤色で印字され,同警告表示の上には,横約6センチメートル・縦約3センチメートルの黒枠内に,「召しあがり方」(召しあがり方には下線が付されている)「容器の底をつまんで押し出して,吸い込まずにお召しあがりください。」との文字が,ミニカップ容器のプラスチック部分を指でつまんで中身(こんにゃくゼリー)を押し出している絵とともに,黒色で印字されていた。また,各々のミニカップ容器の上蓋には,「吸い込まずに底をつまみ押し出しよくかんでお召しあがりください」との文字が黒色で印刷されていた。 (甲4,乙1の1・2,乙2,乙9の6)(4) 行政機関による事故情報等の公表,指導等ア国民生活センターは,平成7年以降,本件事故が発生するまでの間,計10回にわたり,小児や高齢者がこんにゃくゼリーを摂取した際に喉に詰まらせ窒息死した等の事故や,同事故原因の究明のために実施したこんにゃくゼリーに関する調査結果に関する情報の公表を行った。 なお,国民生活センターが把握している限りにおいて,こんにゃくゼリー摂取による死亡事故は,本件事故までに21件発生していた。 (甲5の1ないし12)イまた,農林水産省は,平成7年以降,本件事故が発生するまでの間,計7回にわたり,全国こんにゃく協同組合連合会等に対し,こんにゃくゼリーの摂取による事故防止のための指導等を行い,事故防止の対策を徹底するよう通知等を行った。 (甲3 件事故が発生するまでの間,計7回にわたり,全国こんにゃく協同組合連合会等に対し,こんにゃくゼリーの摂取による事故防止のための指導等を行い,事故防止の対策を徹底するよう通知等を行った。 (甲30の1・2,調査嘱託の結果) 争点 (1) 被告会社の責任(争点1)(原告らの主張)ア本件こんにゃくゼリーの欠陥Cのような幼児がこんにゃくゼリーを摂取することは通常予想される使用形態であるところ,本件こんにゃくゼリーは,以下のように,当該製造物が通常有すべき安全性を欠いており,致命的な欠陥がある。 (ア) 設計上の欠陥aこんにゃくゼリーは,製品の外形が「蒟蒻」とは全く異なるものであり,触感及び食感も「蒟蒻」を想起するものではなく,あくまでも「ゼリー」のうちの一種類であるとの認識が一般的であり,一般消費者は,あくまでもゼリーと同様に柔らかく口の中で容易につぶせる食品であると認識して購入して口にすることになり,当然のことながら,こんにゃくゼリーが口蓋でつぶすことができず,そのまま摂取された時の形態を変形するだけで咽頭に移送され,窒息に至る可能性があることなど,予想していない。 この点,餅やパン等は,小さくちぎって口に入れ,よく噛んで食べなければ喉に詰まる危険性があるという前提で注意しながら食べるが,こんにゃくゼリーはそのような点にまで意を払わずに自然に口蓋でつぶれて溶けてしまうものと考えて口に入れて食べるのであり,餅やパンのような危険性をそもそも認識できないのであって,これらとは違った特異な危険性を有する製品なのである。 bそして,本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器は,同容器に収まっているものを上から落とし込むような方法で食べたり,勢いよく吸い込んだりして食べることが容易に想定可能な形態になっており,容 器をつまんで押し出し吸 にゃくゼリーのミニカップ容器は,同容器に収まっているものを上から落とし込むような方法で食べたり,勢いよく吸い込んだりして食べることが容易に想定可能な形態になっており,容 器をつまんで押し出し吸って食べる際に,手先のコントロールがつきにくく,咀嚼力,嚥下力の低い幼児,高齢者は直接喉に詰まらせる危険が高い(この点,本件こんにゃくゼリーのような大きさで,本件こんにゃくゼリーのような形態のゼリーを食べるとき,わざわざスプーンやナイフを用いて小さく切って食べる消費者がどれほどいるのだろうか。)。 c加えて,こんにゃくゼリーには弾力性があり,口腔や咽頭の形態に応じてその形態を容易に変化させる上に,硬いため,口蓋や歯でつぶしたり噛み切ろうとしてもゼリーが逃げてしまい,気道に詰まらない大きさにまで小さくできないという特徴があり,さらに表面がつるつるとしているため,咽頭相が嚥下の状態に整っていないうちにのどにすっと急速に入ってしまい,弁がその存在を感知する暇がない状態で気道に入り込み,誤嚥を引き起こす。しかも,一旦,気道を塞いでしまったこんにゃくゼリーは,その弾力性と表面の滑らかさのために除去しにくいのであり,そのため,重大な事故を招来させやすいのである。 そして,窒息した場合,医学的見地からは,3分で呼吸困難,痙攣を起こし,4分で無呼吸,5分で呼吸が停止し死に至るとされ,一旦詰まると,救出される可能性が低い。また,本件事故を含め,大半の事故が保護者の前で発生している。 d以上のとおり,本件こんにゃくゼリーには,①通常のゼリーよりも硬く,弾力性が強い,②一口大の大きさのミニカップに入っており,小さく切って食べることが想定されていない,③カップを口に当てて中のこんにゃくゼリーを吸い出して食べることにより,口の中に勢いよく入ることとなり,一気 い,②一口大の大きさのミニカップに入っており,小さく切って食べることが想定されていない,③カップを口に当てて中のこんにゃくゼリーを吸い出して食べることにより,口の中に勢いよく入ることとなり,一気に喉に達する危険性が高い,④一気に気道に達すると,気道を塞ぎ,これを除去することは極めて困難である, といった欠陥がある。 (イ) 警告表示の欠陥本件こんにゃくゼリーの警告表示は,前記前提事実(3)イのとおりであるが,高齢者は視力・注意力が減退しており,幼児は表示の意味を理解することができない。しかも,警告表示の位置も,商品を右手で持つとちょうど手で隠れてしまう箇所にあり,表示の大きさも小さすぎることからして,買い物籠を左手に提げてスーパー内を歩き回って買物をする際に,その警告表示の存在に気付いて注意深く読むとは到底考えられないし,そのような行動を消費者に期待して危険な商品を販売することは許されないといわざるを得ない。 このように,本件こんにゃくゼリーに関する警告表示は,製品に付属して提供すべき指示・警告を欠いている不十分なものであり,それ自体も欠陥といわざるを得ない。 (ウ) 販売方法の不適切性さらに,危険性のある食料品を流通において販売するに当たっては,問屋業者及び小売店等に対しても,販売の際の注意事項を指示する措置をとるべきであるところ,実際の販売形態は,警告を記載したPOPなどもなく,広告に掲載された特売商品として出入口付近に平積みで陳列されたり,菓子コーナーに陳列されたりしている状態であった。 このように,被告会社は,こんにゃくゼリーを販売するに当たり,問屋に対しても小売業者に対しても何らの注意喚起を行っておらず,小売業者も窒息事故の危険性を認識しないまま,一般の「ゼリー」と同じ販売形態において,幅広い消費者に対して販売してい 販売するに当たり,問屋に対しても小売業者に対しても何らの注意喚起を行っておらず,小売業者も窒息事故の危険性を認識しないまま,一般の「ゼリー」と同じ販売形態において,幅広い消費者に対して販売していたのであった。 (エ) まとめ以上のように,本件こんにゃくゼリーは,通常予見される使用形態において設計上の危険性があるところ,設計上の欠陥がある限り事故は発 生し続けるものである上,そもそもこんにゃくゼリーには,設計上の欠陥があるにもかかわらず重大な被害の危険性を容認し警告表示をしてまで流通させる社会的有用性は存在しないから,製造業者たる被告会社は責任を免れない。 イ被告会社の責任(ア) 製造物責任被告会社は,製造物責任法2条1項の「製造物」たるこんにゃくゼリーを業として製造する製造業者であるところ(同法2条3項),上記アのとおり,本件こんにゃくゼリーには食品として通常有すべき安全性を欠いた「欠陥」があり,当該欠陥によりCの生命が失われたのであるから,原告らに対し,製造物責任法3条に基づく賠償責任を負う。 (イ) 不法行為責任上記アのとおり,本件こんにゃくゼリーには欠陥があるところ,同欠陥の存在は,本件事故前の21件の死亡例その他の重大事故例の報告や,国民生活センター,農林水産省その他の関係諸機関からの度重なる情報提供,要望,指導等により,少なくとも本件事故発生前には明らかとなっていたのであるから,被告会社においては,こんにゃくゼリーの摂取による死亡・重大事故が再発しないよう,設計上の欠陥を除去すべく製品改良を行う義務があったというべきであるし,仮に設計上の欠陥を完全に除去できないのであれば,製品を回収して製造を中止する等,消費者の生命身体を奪うような事態を繰り返さないよう適切な措置を講じる義務があった。 しかるに,被告会社は,十 るし,仮に設計上の欠陥を完全に除去できないのであれば,製品を回収して製造を中止する等,消費者の生命身体を奪うような事態を繰り返さないよう適切な措置を講じる義務があった。 しかるに,被告会社は,十数年以上前から指摘されていた設計上の致命的な欠陥を放置し,漫然と製造・販売を行っていたのであり,この点において被告会社の過失は明らかに認められるのであるから,無過失責任たる製造物責任法上の賠償責任のみならず,一般法たる民法上の不法 行為責任に基づく損害賠償責任も負う。 (被告らの主張)ア本件こんにゃくゼリーの欠陥について(ア) 設計上の欠陥についてa客観的な統計資料からみれば,こんにゃくゼリーの窒息事故は,食物による窒息死亡事故数(平成7年から同19年までの合計)で全食物中の0.04パーセント,事故発生確率で0.8ないし1.8パーセントにすぎず,むしろ,我々が通常食している「もち,ご飯(おにぎりを含む。),パン,粥,あめ,団子」といった食品の方が,こんにゃくゼリーよりも余程窒息事故の発生率が高く,もちはこんにゃくゼリーの9.6ないし30.3倍,ご飯(おにぎりを含む。)は7. 6ないし9.3倍,パンは5.8ないし14.3倍,流動食でさえ1. 0ないし4.3倍の事故発生率であるところ,こんにゃくゼリー以外のこれらの食品に関し,欠陥食品であるとか,危険性の高い食品であると主張する者は一人もいない。 そして,どんな事柄であってもリスクを0にすることはできず,どんな食物であっても,その食し方によって窒息のリスクが高まり,窒息事故を起こすことになるのであって,こんにゃくゼリーだけが窒息のリスクを有しているのではなく,しかも死亡事故数,死亡に限らない事故発生確率の双方からみても,こんにゃくゼリーは,むしろ他の食品よりも安全性が高いのであり,少なく って,こんにゃくゼリーだけが窒息のリスクを有しているのではなく,しかも死亡事故数,死亡に限らない事故発生確率の双方からみても,こんにゃくゼリーは,むしろ他の食品よりも安全性が高いのであり,少なくとも通常有すべき安全性を有していることは,これら統計資料からも明白である。 また,被告会社の製品である「蒟蒻畑」の外袋には,表面に「蒟蒻」,裏面に「こんにゃくを…フルーツこんにゃくです」とそれぞれ表示してあるほか,調査でも,その食感が好きだとの回答が60ないし75パーセントと最多の割合に達しているところ,ここでいう食感 とはいうまでもなく「こんにゃくの食感」であり,こんにゃく特有の歯ごたえと弾力であって,大多数の消費者は,蒟蒻畑が一般のゼリーとは異なるこんにゃく製品であることを知っているのである。 実際,平成7年ころにこんにゃくゼリーによる窒息事故が発生したが,その後の約10年間すなわち本件事故発生ころまでは特にこんにゃくゼリーによる事故報告がされた状況になかったのであって,本件事故時においては,こんにゃくゼリーには一定の弾力があるとの事実が周知されるに至っている。特に本件こんにゃくゼリーには,包装紙上に明瞭な警告表示もあることから,通常の安全性を備えた食品として認知されている。 bこんにゃくゼリーに関しては,内容物が容器から出にくく,中身を吸い出そうとする反動で,内容物が一気に喉の奥に吸い込まれてしまうとの指摘がされたことから,これを防止するために内容物を押し出しやすくする工夫がされてきたのであり,本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器も,同様の理由から,左右非対称のハート型として,内容物を吸わなくても押し出せるようにしているのである。 したがって,本件こんにゃくゼリーを食べようとする際には,蓋を取り,容器の底部を挟むように持てば,内容 の理由から,左右非対称のハート型として,内容物を吸わなくても押し出せるようにしているのである。 したがって,本件こんにゃくゼリーを食べようとする際には,蓋を取り,容器の底部を挟むように持てば,内容物が容器の上部からはみ出てくるので,これをスプーンなどで小さくすくうか,歯で噛み切ればよい。要するに,一口大の内容物を吸い出すことにはならないのであって,内容物が「一気に喉に詰まる」こともあり得ない。 cさらに,本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器の大きさは,別紙5のとおりであり,1個当たりの量は25グラムであるから,到底一口では食べられない大きさ・量であり,この点からも,窒息事故に関して十分な安全性を有している。 (イ) 警告表示の欠陥について 前記前提事実(3)イのとおり,本件こんにゃくゼリーの外袋には,その表面及び裏面に,誰が見ても分かる警告マーク(ピクトグラフ)及び文字で,子供及び高齢者に不向きである旨の警告表示が記載されているのであるから,一般人が通常の注意力をもって当該警告表示を読んで実行すれば(警告表示が完全に見えなくなることなど,あり得ない。),幼児や高齢者に関する窒息事故のリスクが「0」になり,事故発生に至らないことは明らかである。 さらに,前記前提事実(3)イのとおり,本件こんにゃくゼリーの外袋の裏面には,右中に「召しあがり方」との注意書きが図解入りで記載されており,個別包装の蓋にも警告表示が文字で記載されているのであるから,一般人が通常の注意力をもってこれら注意書きを読めば,窒息事故のリスクがより低下し,事故発生に至らないことも明らかである。 なお,幼児は警告表示の意味を理解しないなどと主張する者もいるが,幼児が自分でスーパーマーケットやコンビニに行き,お金を出してこんにゃくゼリーを買うことなどない(本件でも買い いことも明らかである。 なお,幼児は警告表示の意味を理解しないなどと主張する者もいるが,幼児が自分でスーパーマーケットやコンビニに行き,お金を出してこんにゃくゼリーを買うことなどない(本件でも買い与えたのは祖母(成人)である。)。そして,警告マーク及び警告表示からすれば,幼児が摂取することは通常予見される使用形態であるなどといえなことが,むしろ明白である。 (ウ) 販売方法の不適切性について前記前提事実(3)イのとおり,本件こんにゃくゼリーは,その外袋の表裏及び個々の容器の上蓋に,食べる際の注意・警告を分かりやすく表示しているのであり,これを見れば注意喚起は十分である。 イ被告会社の責任について(ア) 製造物責任について上記アのとおり,本件こんにゃくゼリーには「通常有すべき安全性」が備わっているのであるから,被告会社に製造物責任法に基づく損害賠 償義務は存在しない。 (イ) 不法行為責任についてそもそも「故意・過失」が認められるのは具体的な行為者についてであり,通常はまず法人の従業員に民法709条の不法行為責任が認められる必要があるところ,原告らは,いつの時点で,誰のいかなる行為が,いかなる注意義務に違反したのかを特定しないから,原告らの請求原因は不明であるが,前記アのとおり,被告会社は「通常有すべき安全性」を具備した商品(本件こんにゃくゼリー)を製造・販売していたのであるから,その行為に違法性も権利侵害も認められないことは明白である。 よって,被告会社には,不法行為責任に基づく損害賠償義務も発生していない。 (2) 被告D及び同Eの責任(争点2)(原告らの主張)被告会社の代表者である被告D及び同Eは,十数年前からこんにゃくゼリーを食べて気管に詰まらせるという窒息事故が死亡事故も含めて多数発生していることを認識していたの の責任(争点2)(原告らの主張)被告会社の代表者である被告D及び同Eは,十数年前からこんにゃくゼリーを食べて気管に詰まらせるという窒息事故が死亡事故も含めて多数発生していることを認識していたのであるから,被告会社の最高責任者として,消費者の生命身体を侵害しないという食品業者として最低限の社会的責任を果たすべく,自社の製造物たるこんにゃくゼリーの欠陥を除去して欠陥のない商品を製造販売できるような体制を講じるか,仮にそれが不可能であれば製造を中止する等の措置を講じるべき義務を負っていた。 しかるに,被告D及び同Eは,これを怠り,適切な改善措置を講ずることなくこんにゃくゼリーの製造・販売を続けてきたのであり,かかる任務懈怠につき重大な過失があるから,会社法429条1項に基づき,原告らに対し,損害賠償責任を負う。 (被告らの主張)被告会社の不法行為責任に関する被告らの主張欄に記載のとおり,原告ら の主張は失当というほかないが,前記のとおり,被告会社に損害賠償責任が認められない以上,被告会社代表者らの悪意・重過失など考慮する必要もなく,賠償責任がないことは明らかである。 (3) 損害(争点3)(原告らの主張)アC固有の損害(ア) 葬儀費用76万6711円(イ) 入院雑費8万1000円1日1500円×54日(ウ) 付添看護費(24時間看護)45万6300円1日6500円×54日×1.3(エ) 逸失利益2311万5467円a年収555万4600円(平成18年度賃金センサス第1巻第1表,産業計,企業規模計)bライプニッツ係数8.323(死亡時1歳)c計算式555万4600円×8.323×50パーセント(オ) 慰謝料2400万円Cは,高度不妊治療(顕微受精)を経て,原告ら両親に祝福されて出生し,同年齢の男 数8.323(死亡時1歳)c計算式555万4600円×8.323×50パーセント(オ) 慰謝料2400万円Cは,高度不妊治療(顕微受精)を経て,原告ら両親に祝福されて出生し,同年齢の男児よりも早く大きく成長していたにもかかわらず,本件事故により1歳9か月にして命を絶たれ,限りない可能性が広がっていた前途ある人生を失わされた。かかるCの無念を慰謝するには,2400万円を下らない。 イ原告らの相続各2420万9739円原告らは,上記ア(ア)ないし(オ)の合計4841万9478円を,各2分の1の割合で相続により承継取得した。 ウ原告ら固有の損害各400万円 原告らは,本件事故により,慈しみ育ててきたCを理不尽な原因で突如として失った上,主治医からCが脳死状態(植物状態)であることを告げられた平成20年8月12日,被告会社の関係者に本件こんにゃくゼリーによって植物状態になったCを直接見てもらいたいと思い,被告会社に対し電話をしたが,被告会社はその後も全く連絡をしてこず何らの対応もしなかったのであり,被告らに対し,強い怒りを持っている。 そして,原告らは,今でもCを思い出す度に二人で泣き悲しみ続けているのであって,このような原告ら固有の精神的苦痛を慰謝するには,各400万円を下ることはない。 エ弁護士費用各300万円原告らは,本件訴訟を提起するに当たり,弁護士に依頼せざるを得なかったところ,かかる弁護士費用のうち,被告らが各原告に対して負担すべき金額は,損害額(上記イ・ウの合計)の1割に相当する300万円を下ることはない。 オ原告らの請求額(上記イないしエの合計)各3120万9739円(被告らの主張)全て争う。なお,幼児の死亡慰謝料額は,1800ないし2000万円程度が一般である。また,本件事故は,原告らの親 オ原告らの請求額(上記イないしエの合計)各3120万9739円(被告らの主張)全て争う。なお,幼児の死亡慰謝料額は,1800ないし2000万円程度が一般である。また,本件事故は,原告らの親族が複数いる中で当該親族が購入した本件こんにゃくゼリーを食べさせて発生した事故であり,被告らに対して原告ら固有の慰謝料が発生する根拠はない。 (4) 過失相殺(争点4)(被告らの主張)ア原告らの関係者,特にFと原告Aの姉(G。)の2名は,国民生活センターから発せられた窒息事故発生の公表・注意喚起・警告を,テレビや新聞報道を通じて,また家族間の話題で知っていたと解され,仮にこれを知らなくとも,本件こんにゃくゼリーの外袋表面・裏面の警告表示を見てお り,また見る機会が十分に存在した。 イFは,Cに本件こんにゃくゼリーを与えた際,「よく噛みなさいよ」と言い,Cが「はーい」と答えたというが,1歳9か月の幼児が「よく噛みなさいよ」と言われてこれを十分に理解できるわけがなく,仮に理解してもそのとおり実行できないことは常識である。また,1歳9か月では「はーい」と答えられるはずもない。 ウしかるに,FやGは,Cが本件こんにゃくゼリーを食べようとしている時に注意を払っておらず,Cが下を向いて本件こんにゃくゼリーを吸っているのを見ながら何もしていないところ,これは,国民生活センターが消費者に向けて発出した注意喚起及び警告を無視するものである。 そして,被告会社の警告表示どおり,Cに本件こんにゃくゼリーを与えていなければ本件事故は発生していないこと,たとえこんにゃくゼリーを与えてもこれを小さく千切ったり,側についてスプーンで与える等の当たり前の行動を取っていれば,本件事故が発生していないことも明白である。 エこのような状況からすれば,被告らに責任はない ゃくゼリーを与えてもこれを小さく千切ったり,側についてスプーンで与える等の当たり前の行動を取っていれば,本件事故が発生していないことも明白である。 エこのような状況からすれば,被告らに責任はないというべきであるが,仮に被告らに何らかの責任があると仮定しても,F及びGという2名の大人がついていながら,幼児に食物を与える際の常識的かつ当たり前の行動をとっていないことが本件事故発生の原因である以上,原告ら側と被告ら側の過失割合は9対1程度と解さざるを得ない。 (原告らの主張)ア消費者が,スーパーで買い物をするに当たり,生命身体の安全に関わる警告表示が書いていないかどうかなどと,一つ一つその外装をチェックすることはほとんどない。もともとある食品に対するアレルギーを有する消費者であれば,当該アレルギー食品が原材料として含まれていないかどうかを原材料表示を見て確かめるが,それでも,それ以外の部分の表示はあまり注意してみないものである。そして,このような一般の「ゼリー」と 同じ外観で,同じ「ゼリー」という呼称で販売されている食品が,実は全く異なる物性で,それ自体に窒息事故を引き起こす危険性のある食品であることは,およそ予想できないことであるといわざるを得ない。 したがって,すべての食品について,その外観や呼称と,実際の中身が異なっている可能性があるとの前提に基づいて,外装表示をしっかりと見て,本当に外観や呼称と一致した物性を有する食品であるのか否かを確かめるべきとの規範を消費者に対して与えることは,およそ現実的ではなく,製造業者たる被告らが流通に置く前の段階において,消費者に対して誤解を与えないような設計をした上で製造する義務があるのである。 そして,被告らの本件事故への寄与度は圧倒的であって,その被告らの責任の重大さに鑑みれば,原告らに 置く前の段階において,消費者に対して誤解を与えないような設計をした上で製造する義務があるのである。 そして,被告らの本件事故への寄与度は圧倒的であって,その被告らの責任の重大さに鑑みれば,原告らに「過失」を認め,被告らの責任を一部でも免れさせることは許されないというほかはない。 イまた,Fの過失の有無及びその程度は,原告らに対し損害を賠償した被告らがFに対しその過失に応じた負担部分を求償する際に考慮されるべき事柄であるにすぎず,被告らの支払うべき損害賠償額を定めるにつき,Fの過失をしんしゃくして損害額を減額することは許されない。 第3争点に対する判断 認定事実前記前提事実に加え,証拠(各項末尾掲記)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 (1) 本件事故の詳細アFは,本件事故の数日前,加古川市内のスーパーに行き,被告会社の製造・販売するこんにゃくゼリー「蒟蒻畑マンゴー味」(本件こんにゃくゼリー)を購入した。本件こんにゃくゼリーは,他のゼリーとともに,上記スーパーの冷蔵ショーケース内に積まれている状態で販売されていた。 Fは,数日後に同人の孫らが自宅に遊びに来ることになっていたところ, 自宅の冷凍庫の中にはアイスクリームがなかったため,アイスクリームの代わりに上記購入した本件こんにゃくゼリーを昼食後のデザートとして孫らに与えようと考え,本件こんにゃくゼリーを冷凍庫の中に入れて保管した。 (甲37,証人F)イ本件事故当日(平成20年7月29日),午前9時前に,Cのほかに,H(Cの兄。),G,Gの子3人が,Fの自宅に遊びに来た。そして,Cの祖父(原告Aの父)も含め8人で,昼食を取った。 (甲37,甲38,証人F,証人G)ウ昼食後,Fは,孫らからアイスクリームが欲しい旨を言われたので,アイスクリームは 自宅に遊びに来た。そして,Cの祖父(原告Aの父)も含め8人で,昼食を取った。 (甲37,甲38,証人F,証人G)ウ昼食後,Fは,孫らからアイスクリームが欲しい旨を言われたので,アイスクリームはない旨を答えるとともに,デザートとして,冷凍庫で保管していた本件こんにゃくゼリーを与えることとし,本件こんにゃくゼリーの外袋を開け,これをテーブルの上に置いた。Fは,その2時間程度前に本件こんにゃくゼリーを冷凍庫から冷蔵庫に移し替え,孫らに与える直前にまず自身が1個食して解凍状況を確認したところ,3分の2ほどは溶けていたものの,ゼリーの中心部分は芯が残ったような状態であり完全には溶けていなかったが,暑いときであるから冷たくて少し歯ごたえがあるこの程度の固さがよいのではないかと考えた。 そして,Fの孫らは,それぞれ本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器を外袋から1つずつ取り出し,それを持ってテーブルの南側にあるソファーに移動した。この際,Fは,Cに対し,良く噛んで食べるように言った。 なお,Gは,Fが孫らに本件こんにゃくゼリーを与える前に,既にリビングの床の上に横になって入眠しており,Fが孫らに対し本件こんにゃくゼリーを与えたことを知らず,また,原告Aの父は,昼食後は,別の部屋に出て行った。 (甲37,甲38,証人F,証人G) エソファに移動したF及び同人の孫らは,東側から,H,Gの子3人,Fの順に北側を向いて一列に座ったが,Cは,ソファーには座らず,Hの左斜め前方に南側を向いて立っていた。 そして,Cを除くFの孫らは,本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器の上蓋を自ら剥がしたが,Cは,自身ではこれを剥がすことができなかったため,ミニカップ容器をFの所に持ってきた。Fは,同容器の蓋を剥がし,再度これをCに渡したところ,これを受け取ったCは,元 プ容器の上蓋を自ら剥がしたが,Cは,自身ではこれを剥がすことができなかったため,ミニカップ容器をFの所に持ってきた。Fは,同容器の蓋を剥がし,再度これをCに渡したところ,これを受け取ったCは,元の位置に戻った。 その後,C以外の孫ら4人は,それぞれ,本件こんにゃくゼリーを食べ終わり,空のミニカップ容器をテーブルの上に置き,再度ソファーに座って,テレビを見ていたが,Cだけは,他の孫ら4人が食べ終わった後も,本件こんにゃくゼリーのミニカップを手に持ち,下を向いたまま,同カップ内のこんにゃくゼリーを吸っているような状態であったが,テレビを見ていたFは,特に関心を払うことはしなかった。 (甲37,証人F)オしかし,Fは,Cがいまだ本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器を手に持ち,様子がおとなしかったので,まだ食べ終わらないのかと思い,今度はCを注意して見たところ,Cは,こんにゃくゼリーが3分の1程度残ったミニカップ容器を床に落とし,頭はがっくりと下に垂らした状態であった。 そこで,Fは,Cがこんにゃくゼリーを喉に詰めたのではないかと思い,「C!」等と叫びながら,Cの元に駆け寄り,同人の背中を叩いたり,口腔内に指を入れようとして顎を手で挟んだりしたが,Cは歯をくいしばった状態であり,口を開かなかった。 また,上記Fの叫び声を聞いてCの元に来た原告Aの父は,Cの口腔内に指を入れて喉に詰まったこんにゃくゼリーを吐き出させようとしたり, 同人を逆さまにして背中を叩いたりしたが,Cの喉に指を突っ込んだ際に,人差し指と中指の先に少しひっかかる程度のゼリーを取り出すことができたものの,Cは,泣き叫んだりすることはなく,ただ黙って目をつむったままであった。 なお,Gは,前記Fの叫び声で目を覚ますまで,入眠したままであった。 (甲37,甲38,証人F, を取り出すことができたものの,Cは,泣き叫んだりすることはなく,ただ黙って目をつむったままであった。 なお,Gは,前記Fの叫び声で目を覚ますまで,入眠したままであった。 (甲37,甲38,証人F,証人G)カその後,Cは,Gが呼んだ救急車により,心停止の状態で病院に運ばれたが,その後に意識を回復することはなく,同年8月12日には脳死の判定を受け,同年9月20日,窒息による多臓器不全により死亡した。 (甲1,甲2,甲36ないし38,証人F,証人G,原告A本人)(2) こんにゃくゼリーの特性等国内における各種の調査結果によれば,こんにゃくゼリーの特性として,・口蓋と舌でつぶして処理することに困難さを伴い,硬さが強く,破砕され難いというこんにゃく食品自体の物性により,つぶれる(破砕される)ことなく,摂取された時の形態を変形するだけで咽頭に移送されることが多い・水に極めて溶解しにくく,口腔内ではほとんど溶解しない・室温に比べて冷温では,硬さ,付着性が増加する傾向があり,冷やして食べることで窒息のリスクが増加する・特に小児の場合,容器から直接吸って出し,その勢いで直接喉に到達した場合,喉を詰まらせることが考えられる・ミニカップの形態から,上向き食べ,吸い込み食べが誘発され,咽頭閉鎖が不十分な状態のままゼリー片を吸い込んで,気道を詰まらせてしまう・商品名においては,いずれもゼリーというカテゴリーに属するため,一般消費者にとっては「こんにゃく入り」ゼリーの食品特性を意識しにくいといった点が指摘されている。 (甲17,甲18,乙6,乙16,乙17の1・2)(3) こんにゃくゼリーに関する行政機関の指導等とこれに対する被告会社の対応等ア被告会社は,平成3年10月にこんにゃくゼリーの製造・販売を開始したが,当初のミニカップ容 16,乙17の1・2)(3) こんにゃくゼリーに関する行政機関の指導等とこれに対する被告会社の対応等ア被告会社は,平成3年10月にこんにゃくゼリーの製造・販売を開始したが,当初のミニカップ容器の形状は,上面の面積(直径)に比較して底面の面積(直径)が若干狭いだけのほぼ円柱型で(吸い出して食べる通常のゼリーのミニカップと同様の形状),ミニカップ1個当たりの内容量は,22グラムであり,外袋等に警告表示は印字されていなかった。 (乙8)イ平成7年10月16日,国民生活センターは,「こんにゃく入りゼリーで,死亡事故が起きています!」と題し,こんにゃくゼリーに関し,誤嚥による事故事例を紹介するとともに,こんにゃくゼリーが新商品であるため消費者に危険の認識度が低く子どもも食べる菓子類であることなどから事故の拡大が懸念されるとして,具体的な問題点として,①普通のゼリーより硬く,弾力性も強いこと,②一口大の大きさであるため,切って食べるには小さすぎ,スムーズに喉を通るには大きすぎるため,喉につかえやすい大きさ(玩具の安全基準を参考にすると危険な玩具に相当する大きさ)であること,③カップを口に当てて中のゼリーを吸い出して食べるものであるため,口の中に勢いよく入ることとなり,一気に喉に達することが十分考えられることを挙げ,消費者へのアドバイスとして,①乳幼児にこんにゃくゼリーを食べさせるときは,スプーンなどで小さくして与え,親がそばについていること,②凍らせたものでも事故が発生しているので注意すべきことを公表した。 また,国民生活センターは,同月30日,全国こんにゃく協同組合連合会等に対し,こんにゃくゼリーの誤嚥による事故事例を紹介するとともに,①こんにゃくゼリーが容器から取り出しにくいと,取り出そうと吸引する 力も強くなり,勢いよく口に ,全国こんにゃく協同組合連合会等に対し,こんにゃくゼリーの誤嚥による事故事例を紹介するとともに,①こんにゃくゼリーが容器から取り出しにくいと,取り出そうと吸引する 力も強くなり,勢いよく口に入ることになるので,容器から取り出しやすくする工夫をすること,②万一こんにゃくゼリーが直接喉に達しても喉に詰まらないよう,サイズを小さくすること,③こんにゃくゼリーは一般のゼリーと比べ口の中では砕けないものが多いので,事故が起きないよう食べ方の具体的な注意表示を記載すること,④凍らせて食べる場合には,弾力性,硬さとも強くなるため,より注意が必要である旨の表示をすることを要望し,厚生省及び農林水産省に対しても,その旨の情報提供をした。 そこで,被告会社は,同年11月から,内容量は22グラムのままであるものの,こんにゃくゼリーを押し出しやすいようミニカップ容器の底面を細くして円錐型とし,併せて外袋の裏面には,別紙6のとおり,注意書を記載した。 なお,国民生活センターは,同月1日,前記公表の続報として,水分,大きさ,弾力性,硬さの調査結果を総合的に考えると,こんにゃくゼリーは,特に小児においては,容器から直接吸い出した勢いで直接喉に到達した場合,喉を詰まらせることが考えられ,また口腔内に留まった場合でも,噛み切りにくいと推察され,消費者の食べ方によっては,喉に詰まる事故が発生する可能性がある商品といえ,外観的には通常のゼリーとよく似ており喉に詰まる危険性が予期されにくかったことも事故の発生につながった一因ではないかと思われるとする調査結果等を公表し,併せて,①小児にこんにゃくゼリーを与えるときには,スプーンなどで小さくして与え,親がそばについていること,②凍らせた場合は注意が必要である旨の消費者へのアドバイスを公表した。 (甲5の1・2,甲30の ,①小児にこんにゃくゼリーを与えるときには,スプーンなどで小さくして与え,親がそばについていること,②凍らせた場合は注意が必要である旨の消費者へのアドバイスを公表した。 (甲5の1・2,甲30の2,乙8,乙9の1,調査嘱託の結果)ウ平成8年6月21日,国民生活センターは,こんにゃくゼリーに関し,3回目の警戒情報の公表を行い,前記公表後も引き続き窒息事故が発生し,同月現在で21件にのぼっているとして,①こんにゃくゼリーは乳幼児に は与えず,凍らせたものも食べさせてはいけないこと,②学齢に達した子供でも,親が先に食べ簡単に口の中でつぶれるものであることを確認した上で与えることとし,その場合でも必ず親がそばについていること等の注意喚起を,同年7月12日,同年8月14日には,その後に寄せられたこんにゃくゼリーの誤嚥による事故事例の公表等をそれぞれ行い,後者の公表では,高齢者の死亡事故が発生したことを踏まえ,こんにゃくゼリーは幼児にとってだけでなく,高齢者にとっても注意が必要な食べ物であるとの見解を表明した。また,国民生活センターは,同月9日,全国こんにゃく協同組合連合会等に対し,①乳幼児が食べても安全なものにするために,口腔内で簡単につぶせる程度に柔らかくするなど,製品の抜本的な対策を実施すること,②大人向けに今のまま製品を販売するのであれば,乳幼児には与えてはいけない旨の警告表示を,他の表示事項より目立つように表示を工夫すること等を要望した。 また,農林水産省は,同年4月4日,こんにゃくゼリーの誤嚥による事故が発生したことに伴い,上記連合会等に対し,前記イ説示の①ないし④の要望の注意徹底等を求めるとともに,同年6月7日にも,同連合会に対し,①弾力性が強く口の中で砕けにくいという商品特性を示し,事故が起きないよう食べ方の具体的な注 会等に対し,前記イ説示の①ないし④の要望の注意徹底等を求めるとともに,同年6月7日にも,同連合会に対し,①弾力性が強く口の中で砕けにくいという商品特性を示し,事故が起きないよう食べ方の具体的な注意(小さく切る,よく噛む)等を容器包装に表示するよう関係者へ周知徹底すること,②特に凍らせた場合は,一層弾力性が強くなることや,子供,お年寄りのように咀嚼力の弱い人が食することにも十分考慮した表示にするとともに,注意表示の記載については消費者の注意を引くよう工夫すること,しかし,万が一事故が発生した場合,注意表示をしていればメーカーの責任が免れるというものではなく,事故を防止するための対策の検討に当たっては,まず,製品の形状,大きさ,弾力性等製品の設計段階からの検討が不可欠であり,各メーカーにあっては,自社の製品毎の特性を把握した上で,自己の責任において,製品 設計の変更,注意表示の記載等事故防止のための対策を検討すること等を要請し,さらには,同年8月22日,今後,小さな子供にも安心して与えられるよう口腔内で簡単につぶせる程度に柔らかくするなどの商品改良に取り組むことが必要である旨等を指導した。 被告会社では,同年7月から,自社のこんにゃくゼリーに関し,別紙7のとおりの注意書の表示を開始し,同月22日からは,一時的に,注意書の上部に,別紙8のとおりのステッカーを貼付した。さらに,被告会社は,同年10月から,ミニカップを左右対称のハート型とし,内容量を37グラムに増大するとともに,同年11月からは,別紙9のとおりに注意書を変更し,吸い込まずにミニカップの底をつまんでこんにゃくゼリーを押し出すよう絵入りで説明するとともに,吸い込みの予防,弾力性への注意喚起,小さな子供・高齢者に不向きである旨の警告表示を行った。 (甲5の3ないし5,甲30の カップの底をつまんでこんにゃくゼリーを押し出すよう絵入りで説明するとともに,吸い込みの予防,弾力性への注意喚起,小さな子供・高齢者に不向きである旨の警告表示を行った。 (甲5の3ないし5,甲30の1・2,乙8,乙9の2ないし4,調査嘱託の結果)エ上記ウのとおり,国民生活センター及び農林水産省は,こんにゃくゼリーの物性を柔らかくするよう指導していたが,国民生活センターは,平成9年9月5日,従来のこんにゃくゼリーに比べ硬さや弾力性を抑えた商品でも誤嚥事故が発生したところ,これはこんにゃくゼリーが口中に入ったときにつぶして食べるという認識を十分持てず,その動作を行おうとする前に,表面が滑りやすく弾力があるため崩れたりせずに喉に到達し,その時点では喉頭蓋が閉じていなかったための事故と考えられ,従来のこんにゃくゼリーと比較して柔らかく弾力性も小さい商品であっても,噛まないでも自然に形が崩れるようなもの以外は乳幼児には与えない方が賢明であり,乳幼児には与えてはいけない旨の警告表示が必要であると考えられるとして,「ソフトタイプ」の表示のあるものでも幼児には与えない方が無難であるとの見解を公表し,併せて,事業者に対し,①ソフトタイプのこ んにゃくゼリーでも「幼児には与えてはいけない」旨の表示を見やすい場所に注意を喚起するように表示して欲しいこと,②こんにゃく由来の原材料を使用したものであれば「こんにゃく入りゼリー」との表示をすること等を要望する旨を発表した。 また,農林水産省も,同月26日,こんにゃくゼリー製造事業者宛てに,国民生活センターの上記見解に併せ,更に一層の事故防止に万全を期するよう指導した。 (甲5の6,甲30の2,乙12)オその後,被告会社では,平成11年1月から,別紙10のとおり,注意書に英語表記を併記するとともに,平成 解に併せ,更に一層の事故防止に万全を期するよう指導した。 (甲5の6,甲30の2,乙12)オその後,被告会社では,平成11年1月から,別紙10のとおり,注意書に英語表記を併記するとともに,平成12年11月からは,ミニカップ容器を左右非対称のハート型とし,内容量についても,37グラムから25グラムに減量した。 なお,これ以降,ミニカップ容器の形状及び内容量の変更は行われていない。 (乙8,乙9の5)カ平成18年11月13日,国民生活センターは,約9年ぶりに,「こんにゃく入りゼリーの事故-幼児,高齢者はとくにご注意!」との表題でこんにゃくゼリーに関する注意喚起を行い,危害・危険件数の推移の公表や,事故件数は減少しているもののいまだに事故が発生している上に重篤な事故も見受けられ,特に幼児や高齢者に事故が多いことから,幼児等には与えない方が良い旨の見解を発表し,平成19年5月23日には,その後に発生した2件の事故事例を公表等するとともに,事故の再発防止のための明確な方策が示されない現状においては,こんにゃくゼリーは子供や高齢者に食べさせることを控えるべきである旨を発表し,同年6月15日には,同事例に係るこんにゃくゼリーの製造業者名の公表等をした。さらに,国民生活センターは,同年7月5日,同年6月に実施したこんにゃくゼリー に関するテスト結果に基づき,海外でのこんにゃくゼリーの規制等を紹介するほか,普通のゼリーと比較して一目で違うと分かる形状のものはほとんどなく,事故報告のあったこんにゃくゼリーの最大径や体積は差が見られたが,全体として商品の改善が行われたとは言い難いとして,消費者に対し,こんにゃくゼリーは子供や高齢者には与えていけない旨を改めて警告するとともに,行政への要望として,①こんにゃくゼリーの安全性を検討の上,販売規制 品の改善が行われたとは言い難いとして,消費者に対し,こんにゃくゼリーは子供や高齢者には与えていけない旨を改めて警告するとともに,行政への要望として,①こんにゃくゼリーの安全性を検討の上,販売規制を含めた事故防止策の検討,②製造・販売・輸入業者に対する事故防止のためにより一層の指導を要望し,また,業界に対しては,死亡事故が再発している現状を深刻に受け止め,事故防止のための安全対策に取り組むよう要望する旨の発表をした。 また,農林水産省は,同年5月23日,同年7月5日,全国こんにゃく協同組合連合会等に対し,事故防止の徹底を要請するとともに,同年8月8日,独自に行ったこんにゃくゼリーに関する調査結果等を公表し,食品事業者が注意表示等について今後の改善策を検討する際の留意事項として,①外袋の表側への注意事項の記載や,文字サイズの大型化,目立つ配色にするなど,注意表示をもっと見やすくすること,②子供や高齢者へ与えることに対する注意表示を強化すること(場合によっては,子供や高齢者へは与えるべきではない旨の記載を徹底すること),③個別容器への注意表示の記載を徹底することの3点を,発表した。 そこで,上記連合会等の業界団体は,同年9月26日付けで,警告表示に関しピクトグラフの導入等のほか,各メーカーから小売業者に対し子供向けのお菓子(幼児用ビスケット,ウエハー,玩具菓子等)の傍らに置かないようお願いすること等を柱とした事故防止対策を,共同で発表した。 被告会社は,同年10月15日から,上記事故防止対策に基づき,こんにゃくゼリーの外袋の表面・裏面,個別包装の蓋上に,前記前提事実(3)イのとおりの警告表示の記載を開始した。 (甲5の7ないし11,甲6,甲30の1,乙9の6)キ平成20年7月29日,本件事故が発生し,同年9月20日,Cが死亡した。 上に,前記前提事実(3)イのとおりの警告表示の記載を開始した。 (甲5の7ないし11,甲6,甲30の1,乙9の6)キ平成20年7月29日,本件事故が発生し,同年9月20日,Cが死亡した。 ク同月30日,農林水産省は,同月11日に続けて,業界団体に対し,①現時点の警告マークや注意メッセージの表示が小さくて見にくいとの指摘があることから,これを大きくし,警告文を大きく商品前面に記載するとともに,個包装(カップ)にも警告のための表示を行うなど,消費者にはっきりとわかるものにすること,②吸い込みによる窒息事故が発生していることから,吸い込んだ場合の危険性を踏まえ,ゼリーの大きさ,形状,固さ,弾力性,容器の形状・タイプなどについて改善や変更を行うこと,③小売店における注意事項の掲示を行うことや子供向け菓子類と一緒に販売しないことなど,販売業者に協力を要請し,販売の際にも事故防止の工夫を行うこと等を要請し,これを受けて,全国こんにゃく協同組合連合会等は,同年10月3日付けで,①袋表面の警告内容の明確化及び警告マークの拡大,②袋の裏面の警告表示等の改善,③個包装の表示の改善を柱とする「一口タイプのこんにゃく入りゼリーの事故防止強化策」を策定した。 被告会社は,同年10月3日,①販売中のこんにゃくゼリーの自主回収はせず,まずは表示改善の要請で対応する,②袋の表に大きく見やすく「お子様や,高齢者の方はたべないでください」というお願いを記載する,③同新表示で出荷できるまで,当面,「お子様や,高齢者の方はたべないでください」と呼び掛ける店頭POPを,同日出荷分の外装箱に同梱することとしたが,同月7日,同月8日の出荷をもって,こんにゃくゼリーの製造を一時中止することとした。その後,前記策定に基づき,警告表示を別紙11のとおりに改訂し(外袋表面に 日出荷分の外装箱に同梱することとしたが,同月7日,同月8日の出荷をもって,こんにゃくゼリーの製造を一時中止することとした。その後,前記策定に基づき,警告表示を別紙11のとおりに改訂し(外袋表面につき,ピクトグラフの横に,赤字で「お願い」と題し,黒色の太字で「小さなお子様や高齢者の方は絶対にたべないでください」と,通常の黒字で「本品は弾力性があり,そしゃく 力の弱い小さなお子様や高齢者の方はのどに詰まるおそれがあります」とそれぞれ記載し,裏面につき,「召し上がり方」の説明文内に「よく噛んで」の文言を挿入し,「警告」欄に「凍らせると硬さが増しますので,凍らせないでください。」との文言を追加し,さらに,個別包装の容器の上蓋にもピクトグラフを追加表示した。),さらに原材料に使用するこんにゃく粉の量を従来から10パーセント減らして,平成20年12月1日から出荷を再開した。 (甲10,甲13の1・2,甲25の1,甲30の1,乙9の7) 争点1(被告会社の責任)について(1) 判断当裁判所は,本件こんにゃくゼリーにつき,通常有すべき安全性を備えており,製造物責任法上の「欠陥」はないものと考える。その判断理由は,以下のとおりである。 ア設計上の欠陥について(ア) 前記1(2)認定のとおり,本件こんにゃくゼリーを含むこんにゃくゼリーについては,その特性として,①口蓋と舌でつぶして処理することに困難さを伴い,硬さが強く,破砕され難いため,摂取した時の形態を変形するだけで咽頭に移送されることが多い,②水に極めて溶解しにくく,口腔内ではほとんど溶解しない,③室温に比べて冷温では,硬さ,付着性が増加する傾向があり,冷やして食べることで窒息のリスクが増加する,④特に小児の場合,容器から直接吸って出し,その勢いで直接喉に到達した場合,喉を詰まらせ ない,③室温に比べて冷温では,硬さ,付着性が増加する傾向があり,冷やして食べることで窒息のリスクが増加する,④特に小児の場合,容器から直接吸って出し,その勢いで直接喉に到達した場合,喉を詰まらせることが考えられる,⑤ミニカップの形態から,上向き食べ,吸い込み食べが誘発され,咽頭閉鎖が不十分な状態のままゼリー片を吸い込んで,気道を詰まらせてしまう,⑥商品名がいずれもゼリーというカテゴリーに属するため,一般消費者にとっては「こんにゃく入り」ゼリーの食品特性を意識しにくい,といった点が 指摘されている。 (イ) ところで,上記(ア)記載のこんにゃくゼリーの特性のうち,口蓋と舌でつぶして処理することに困難を伴い,硬さが強く破砕され難いこと(上記特性①),水に溶解しにくいこと(同②),冷温では硬さ及び付着性が増加する傾向があること(同③)は,いずれも蒟蒻自体の特性といえるから,これらのみでは,こんにゃくゼリーの設計上の欠陥を基礎づける事情とはなり難い。 しかし,上記(ア)記載のとおり,こんにゃくゼリーは,同時に,商品名においてゼリーというカテゴリーに属するため消費者にとって食品特性,すなわち上記特性①ないし③を意識しにくいこと(上記特性⑥),ミニカップの形態から上向き食べ及び吸い込み食べが誘発されること(同⑤)という特性が指摘されていることからすれば,これらに対する対策が不十分である結果,消費者がこんにゃくゼリーの上記特性①ないし③に気付かずに,誤嚥による事故を誘発しているとすれば,それはこんにゃくゼリーの設計上の欠陥を基礎づける事情となるというべきである。 なお,被告らは,本件こんにゃくゼリーの商品名につき,ゼリーではなく,「蒟蒻」畑であり(外袋表面),「フルーツこんにゃく」である(同裏面)旨を主張するが,証拠(甲4,乙1の1)によ うべきである。 なお,被告らは,本件こんにゃくゼリーの商品名につき,ゼリーではなく,「蒟蒻」畑であり(外袋表面),「フルーツこんにゃく」である(同裏面)旨を主張するが,証拠(甲4,乙1の1)によれば,本件こんにゃくゼリーの外袋表面には,中央の「蒟蒻畑」という文字のすぐ下に英語で「jelly」と表記されていることが認められることからすれば,被告ら自身,「ゼリー」であると強調してはいないものの,「ゼリー」であること自体は認識しているものと推認されるから,これに反する被告らの上記主張は,採用の限りではない。 (ウ) そこで,まず,本件こんにゃくゼリーが,本件事故当時(平成20年7月29日),商品名等において消費者にとって食品特性を意識しにく い状態にあったか否かにつき検討するに,前記前提事実(3)及び証拠(甲4,乙1の1・2,乙2,乙3,乙7の1・2,乙8,乙13)によれば,本件こんにゃくゼリーの外袋(横約16センチメートル・縦約23センチメートル)の表面には,その中心に,横約11センチメートル・縦約3.5センチメートルの大きさで「蒟蒻畑」と表示されていることに加え,被告会社が調査会社に依頼して実施されたインターネット調査によれば,蒟蒻畑の認知度は,平成18年3月17,18日の調査において91.0パーセント,平成19年3月21,22日の調査において91.8パーセント,平成20年3月21,22日の調査において92.4パーセントに上り,蒟蒻畑を食用する理由については,食感が好きである旨の回答が約6割に上ること,事故報道認知率は,平成20年3月21,22日の調査において86.6パーセントであったことが認められる。 これによれば,一般の消費者は,本件こんにゃくゼリー及び同時期に製造・販売されていた被告会社のこんにゃくゼリーである蒟蒻畑が, 21,22日の調査において86.6パーセントであったことが認められる。 これによれば,一般の消費者は,本件こんにゃくゼリー及び同時期に製造・販売されていた被告会社のこんにゃくゼリーである蒟蒻畑が,蒟蒻に由来する成分を含むものであり,食感等の点において他の通常のゼリーとは異なることを十分に認識可能であったというべきである。 この点,前記1(1)認定事実及び証拠(甲25の1・2)によれば,本件事故直前,本件こんにゃくゼリーを含む蒟蒻畑は,他の通常のゼリーとともにスーパーの冷蔵ショーケース内に積まれていたり,菓子コーナーに陳列するなどして販売されており,必ずしも蒟蒻畑のみ別の場所で販売されてはいなかったことが認められるが,上記認定説示の「蒟蒻畑」のロゴの記載方法並びに同商品及び事故報道の認知率からすれば,一般の消費者が,上記のような販売方法が行われていたからといって,蒟蒻畑の食品特性を意識しにくい状態にあったとは言い難いというべきである。 したがって,本件こんにゃくゼリーが,食品特性を意識しにくい状態にあったとは認められない。 (エ) 次に,本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器につき,その形状が上向き食べ,吸い込み食べを誘発するものであるかにつき検討するに,前記前提事実(3)及び前記1(3)認定のとおり,本件事故当時,被告会社の製造・販売するこんにゃくゼリー(蒟蒻畑)のミニカップ容器は,柔らかいプラスチック製で左右非対称のハート型をしており,中身を容易に押し出せるように配慮された構造であったのであり,その結果として,上を向いたり吸い出したりして食べる必要のないことは,ミニカップ容器の見た目や感触により,こんにゃくゼリーを摂取する前に容易に認識することが可能であったということができる上,上記(ウ)説示のとおり,事故報道を含めた蒟蒻畑 して食べる必要のないことは,ミニカップ容器の見た目や感触により,こんにゃくゼリーを摂取する前に容易に認識することが可能であったということができる上,上記(ウ)説示のとおり,事故報道を含めた蒟蒻畑の認知度からすれば,本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器が,その形状から,上向き食べないし吸い込み食べを誘発するものとは認め難いといわねばならない。 (オ) さらに,前記(ア)説示のとおり,特に小児において,こんにゃくゼリーをミニカップ容器から直接吸って出し,その勢いで直接喉に到達した場合,喉を詰まらせることが考えられるとの調査結果が出ているが(前記特性④),上記(エ)説示のとおり,本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器は,こんにゃくゼリーを吸って食する必要がない構造となっており,その形状も吸って食することを誘発するものではないところ,ある程度の年齢の小児であれば,本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器に触れれば,それが吸い出さなくても中身が出てくるものであることは容易に認識し得ると考えられ,またこんにゃくゼリーを摂取する際には,ミニカップ容器の底を摘んでカップより出てきたこんにゃくゼリーのうち自分が食するのに適した大きさの分量だけ噛み切るなどして摂取すればよいのであり,逆に,例えば自らはミニカップ容器の上蓋を剥がせな いような乳幼児に対しては,保護者等がこんにゃくゼリーを適当な大きさに切り分けるなどして与えるべきであって,仮にこのような乳幼児に対しこんにゃくゼリーを切り分けせずに与えた結果,当該乳幼児がこんにゃくゼリーを誤嚥したとしても,それはこんにゃくゼリーの設計上の欠陥を徴表するものではないというべきである。 (カ) したがって,本件こんにゃくゼリーに,設計上の欠陥は認められない。 イ警告表示の欠陥について本件こんにゃくゼリーの警告 んにゃくゼリーの設計上の欠陥を徴表するものではないというべきである。 (カ) したがって,本件こんにゃくゼリーに,設計上の欠陥は認められない。 イ警告表示の欠陥について本件こんにゃくゼリーの警告表示は,前記前提事実(3)のとおりであり,外袋の表面にはその右下に,ある程度の大きさで,子供及び高齢者が息苦しそうに目をつむっているイラスト(ピクトグラフ)が描かれ,こんにゃく入りゼリーであることも明示されていること,外袋の裏面には,子供や高齢者はこんにゃくゼリーをのどに詰めるおそれがあるため食べないよう赤字で警告されており,その真上には,ミニカップ容器の底を摘んで中身を押し出し吸い込まずに食するよう,摂取方法が同容器の絵とともに記載されていることに加え,前記ア(ウ)説示のとおり,本件こんにゃくゼリーの外袋表面の中央には「蒟蒻畑」と印字されており,食感等の点で通常のゼリーとは異なることを容易に認識し得ると解されることからすれば,本件こんにゃくゼリーの警告表示は,本件事故当時において,一般の消費者に対し,誤嚥による事故発生の危険性を周知するのに必要十分であったというべきである(なお,本件事故後に蒟蒻畑の警告表示が改訂され,さらに見やすいものになっていることは前記1(3)認定のとおりである。)。 したがって,本件こんにゃくゼリーにつき,警告表示の欠陥は認められない。 ウ販売方法の不適切性についてこの点,前記1(3)認定のとおり,全国こんにゃく協同組合連合会等は,平成19年9月26日付けでの事故防止対策の一環として,各メーカーか ら小売業者に対し子供向けのお菓子の傍らに置かないようお願いすることを定めたところ,前記ア(ウ)説示のとおり,蒟蒻畑は,本件事故直前,他の通常のゼリーとともにスーパーの冷蔵ショーケース内に積まれていたり,菓子コーナ 供向けのお菓子の傍らに置かないようお願いすることを定めたところ,前記ア(ウ)説示のとおり,蒟蒻畑は,本件事故直前,他の通常のゼリーとともにスーパーの冷蔵ショーケース内に積まれていたり,菓子コーナーに陳列するなどして販売されており,被告会社から小売店に対し販売方法に関する要望等がされたことがうかがわれないことからすると(甲25の2参照),被告会社は,上記要望の実行という点において,不徹底な面があったといわざるを得ない。 しかし,こんにゃくゼリーをどのように販売するかは,第一義的には小売店の専決事項であり,仮に子供向け菓子の傍らで販売されていたとしても,それが直ちに製造メーカーに対し何らかの責任を基礎づけることになるものとはいえない。加えて,前記ア(ウ)説示のとおり,本件こんにゃくゼリーの場合,外袋表面の「蒟蒻畑」のロゴの記載方法並びに同商品及び事故報道の認知率からして,それが蒟蒻に由来する成分を含むものであり,食感等の点において他の通常のゼリーとは異なることを十分に認識可能であったといえることからすれば,本件こんにゃくゼリーに関し,被告会社の責任を基礎づけるほどの不適切な販売方法がされていたとは認め難いといわねばならない。 エまとめ以上からすれば,本件こんにゃくゼリーは,それが通常有すべき安全性を備えており製造物責任法上の「欠陥」はないものというべきであるから,被告会社に製造物責任は認められない。 (2) 原告らの主張についてア設計上の欠陥について(ア) 原告らは,こんにゃくゼリーが,製品の外形,食感等が「蒟蒻」を想起するものではなく,あくまでも「ゼリー」のうちの一種類であるとの認識が一般的であり,一般消費者は,あくまでもゼリーと同様に柔らかく口の 中で容易につぶせる食品であると認識して購入して口にすることとなると主張す ,あくまでも「ゼリー」のうちの一種類であるとの認識が一般的であり,一般消費者は,あくまでもゼリーと同様に柔らかく口の 中で容易につぶせる食品であると認識して購入して口にすることとなると主張する。 しかし,前記(1)ア(ウ)説示のとおり,本件事故直前(Fが本件こんにゃくゼリーを購入した当時)において,蒟蒻畑の知名度は90パーセント,事故報道認知率は85パーセントをそれぞれ上回り,その食感を好んで蒟蒻畑を食用する消費者が60パーセントを上回るところ,そこでいう食感とは,こんにゃく特有の弾力のある歯ごたえのことであると解されること(乙12),また,蒟蒻畑の外袋表面の中央には「蒟蒻畑」と大きく表示されていることからすれば,一般の消費者が,こんにゃくゼリーないしこんにゃく入りゼリーという愛称ゆえにこんにゃくゼリーを「ゼリー」の一種類であると認識することは格別,これを口の中で容易につぶせる通常のゼリーと同様の食品であると認識して購入及び摂取するとまではにわかに考え難いといわざるを得ない。そして,このことは,前記1(3)認定及び前記2(1)ア(ウ)説示のとおり,国民生活センターが,当初(平成7年当時)はこんにゃくゼリーが新商品であるため消費者の危険の認識度が低いことを問題にしていたのに対し,その後平成9年以降は約9年間にわたりこんにゃくゼリーに関する注意喚起すら行わず,これを再開した平成18年には既に蒟蒻畑の認知度が90パーセントを超えていたことからも,強く推認されるというべきである。 したがって,この点に関する原告らの主張には,理由がない。 (イ) 次に,原告らは,本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器は,容器内に収まっているものを上から落とし込むような方法で食べたり,勢いよく吸い込んだりして食べることが容易に想定可能な形態になっていると主張 次に,原告らは,本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器は,容器内に収まっているものを上から落とし込むような方法で食べたり,勢いよく吸い込んだりして食べることが容易に想定可能な形態になっていると主張する。 確かに,ミニカップ容器の大きさからすれば,原告らが主張するような食べ方を想定すること自体は可能であるといえる。しかし,前記(1)ア(エ) 説示のとおり,本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器は,中身を吸い出すことなく容易に押し出せるように配慮された構造となっており,そのことは同容器をつかむなどすることで容易に認識可能であることからすれば,あえて原告らが主張するような食べ方を選択する必要はないのであって,また同容器がそれを誘発するものとも認められない。そうすると,それにもかかわらず消費者があえてそのような食べ方でこんにゃくゼリーを摂取したというのであれば,仮にその結果誤嚥等の事故が発生したとしても,それは当該消費者が責任を持つべきものであって,被告会社の責任を基礎づけるものではないといわねばらない。 したがって,この点に関する原告らの主張には,理由がない。 (ウ) また,原告らは,本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器につき,容器を摘んで押し出して食べる際に,手先のコントロールがつきにくい旨を主張し,その旨の記載のある意見書等(甲11の4,甲12)を証拠として提出している。 しかし,前記前提事実(3)及びア(エ)説示のとおり,本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器は,柔らかいプラスチック製であり,同容器を指等で押した圧力が中身を押し出す力として作用しやすいよう配慮されているのであるから,むしろ手先のコントロールがつきやすいものというべきであって,原告らの上記主張はこれに真っ向から反するものである。しかも,原告らが証拠提出している上記意見 用しやすいよう配慮されているのであるから,むしろ手先のコントロールがつきやすいものというべきであって,原告らの上記主張はこれに真っ向から反するものである。しかも,原告らが証拠提出している上記意見書等は,単に手先のコントロールがつきにくい旨を指摘するにとどまり,これに副う科学的根拠等は何ら示されておらず,本件全証拠によっても,同根拠等となる事情は認められないから,原告の上記主張は失当であるというほかはない。 そして,原告らは,本件ミニカップ容器が手先のコントロールがつきにくいものである結果,咀嚼力,嚥下力の低い幼児,高齢者はこんにゃくゼリーを喉に詰まらせる危険が高いとするが,そもそもコントロールがつき にくいことを前提としている点で失当であるばかりか,仮にこの点をおくとしても,証拠(甲17,甲49,甲52,乙5,乙16,乙17の2,乙18)によれば,咀嚼力,嚥下力の低い幼児や高齢者が喉に詰まらせる危険性は,こんにゃくゼリーに限ったものではなく,食品全般についてあてはまるものであると認められることからすれば,幼児ないし高齢者の咀嚼力,嚥下力の低さをもってこんにゃくゼリーの欠陥ないし危険性を指摘するのは,必ずしも正当なものではないといわざるを得ない。 さらに,原告らは,本件こんにゃくゼリーのような大きさ,形態のものを食べる際に,わざわざスプーンやナイフを用いて小さく切って食べる消費者の存在を疑問視するが,咀嚼力,嚥下力の低い人が物を食する,あるいは同人に食物を与える際に,通常の咀嚼力,嚥下力を有する者が食する場合には特に加工等を施すことなくそのまま摂取するような食品であっても,あえて細かくしたり小さくしたりあるいはゲル状にする等の加工を施して咀嚼ないし嚥下を容易にすることは,通常考えられるところであるから,この点に関する原告らの主張 のまま摂取するような食品であっても,あえて細かくしたり小さくしたりあるいはゲル状にする等の加工を施して咀嚼ないし嚥下を容易にすることは,通常考えられるところであるから,この点に関する原告らの主張も採用の限りではない。 (エ)加えて,原告らは,こんにゃくゼリーに弾力性があることを前提にるる主張するが,こんにゃくゼリーの弾力性は蒟蒻自体の性質に由来するものであり,それ自体が本件こんにゃくゼリーの設計上の欠陥を基礎づけるものではないこと,弾力性に基づく誤嚥事故等が発生しないよう合理的な対策が施されていることは,前記(1)ア説示のとおりである。 イ警告表示の欠陥について原告らは,高齢者は視力・注意力が減退しており,幼児は表示の意味を理解できないにもかかわらず,本件こんにゃくゼリーの警告表示は,商品を右手で持つとちょうど手に隠れてしまう箇所にあり,表示の大きさも小さすぎるから,警告表示の存在に気付いて注意深く読むとは到底考えられないと主張する。 しかし,まず,幼児については,そもそも自ら買い物をするとは到底考えられず,その知的能力からしても,こんにゃくゼリーに限らずあらゆる物の警告表示を理解する能力があるとも到底考えられないから,幼児を基準に警告表示の欠陥の有無を論じることは,適切でないといわねばならない。次に,高齢者については,視力や注意力が減退していることは想定し得るものの,それらの減退の程度が著しい場合には,そもそも自ら買い物・摂取をすることは通常考えにくいから,ここで問題とすべきは,Fのような自活能力のある高齢者が,警告表示に気付き得るかということというべきである。 この点,本件こんにゃくゼリーの警告表示は,別紙1・2のとおりであるから,本件こんにゃくゼリーの外袋を手に持った際に,警告表示が隠れ得る位置に印刷されていることは 得るかということというべきである。 この点,本件こんにゃくゼリーの警告表示は,別紙1・2のとおりであるから,本件こんにゃくゼリーの外袋を手に持った際に,警告表示が隠れ得る位置に印刷されていることは認められるが,そもそも警告表示自体,当該商品のいずれかの場所に印刷せざるを得ないところ,その印刷場所の有限性からすれば,いずれの箇所に警告表示を印刷しても,それが当該商品を手に持った際に隠れ得ることは必ず起こり得ることであるといわざるを得ない。他方で,ある商品を購入して摂取するまでに当該商品を常に所持し続けざるを得ないため警告表示を目にする機会がないということは極めて想定し難く,特に,本件こんにゃくゼリーのように外袋を開封して中の個別包装(ミニカップ容器)を取り出す必要があるような商品の場合,摂取するまでに警告表示に気付き得る機会が幾度もあることは明らかである。しかも,本件こんにゃくゼリーの場合,外袋表面の右下に印刷されている警告表示は,文字のみの記載ではなく,赤色の「<×>」印の中に子供及び高齢者が息苦しそうに目をつむっているイラスト(ピクトグラフ)が描かれており,直接視覚に訴えてくるものであるばかりか,その大きさも横約2.6センチメートル・縦約3センチメートルと決して小さくなく,注意を惹きやすい大きさであると認められる上,その印刷位置も,たとえFが本件こんにゃくゼリーを購入した際のように平積みになって販売されている場合でも目に付きやすい箇所であ るといえることからすれば,仮に本件こんにゃくゼリーを持った際に警告表示が隠れるようなことがあっても,商品を手にするまでにはそれに容易に気付き得ることは明らかであって,もし消費者が警告表示を意識的に見ることがなかったとしても,前記(1)ア(ウ)説示のとおりの事故報道を含めた蒟蒻畑の認知度の高 も,商品を手にするまでにはそれに容易に気付き得ることは明らかであって,もし消費者が警告表示を意識的に見ることがなかったとしても,前記(1)ア(ウ)説示のとおりの事故報道を含めた蒟蒻畑の認知度の高さからすれば,それは前記1(3)認定のとおりの被告会社による一連の警告表示が奏功した結果,こんにゃくゼリーの食品特性(危険性)を予め知っていたからにすぎないというべきである(この点,Fは,本件こんにゃくゼリーを購入した際には警告表示に気付かず,視力が減退しているため小さい字は見えにくい旨を証言等するが(甲37,甲47,証人F),証人尋問の際には本件事故現場であるF宅の部屋の絵を文字の説明入りで難なく描いていたのであり,Cの所持していた本件こんにゃくゼリーのミニカップ容器の上蓋を剥がすのに苦労したというような事情も見当たらないこと,Cに本件こんにゃくゼリーを与える際には良く噛んで食べるようわざわざ注意喚起までしていることからすれば,Fの上記証言をにわかに措信することはできないといわねばならない。)。 ウ販売方法の不適切性について本件こんにゃくゼリーの販売方法が,被告会社の責任を基礎づけるものでないことは,前記(1)ウ説示のとおりである。 エそして,Cは,本件事故当時,当時1歳10か月足らずであることからしても,同人に食物を与える際は,こんにゃくゼリーに限らず,保護者等(大人)が食べやすい大きさに加工するなどし,摂取中はそばについているなどして与えるのが通常であると考えられるところ,本件では,Fは,本件こんにゃくゼリーをミニカップ容器のままCに与え,自らはテレビに見入り,Gは入眠しており,Cが同容器をFから与えられ誤嚥するまでの一部始終を全く知らなかったというのであるから,およそ本件こんにゃくゼリーの通常予想される使用形態とはかけ離れたもの 自らはテレビに見入り,Gは入眠しており,Cが同容器をFから与えられ誤嚥するまでの一部始終を全く知らなかったというのであるから,およそ本件こんにゃくゼリーの通常予想される使用形態とはかけ離れたものであるといわざるを得ず,幼児がこん にゃくゼリーを大人の介助もないまま自ら食べることがその通常予想される使用形態でないことは,前記1(3)認定のとおり,国民生活センターによる一連の注意喚起が,その文面上,幼児に直接向けられたものではなく,その保護者等を対象としたものであることからしても,明らかである。 第4 結論 以上の次第で,本件こんにゃくゼリーは,それが通常有すべき安全性を備えており製造物責任法上の「欠陥」はないものというべきであるから,これを前提とする被告らの責任も何ら発生しない。 よって,その余の点につき判断するまでもなく,原告らの請求にはいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所姫路支部裁判長裁判官中村隆次裁判官吉澤暁子裁判官舘野俊彦
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