平成29年8月9日判決言渡平成28年(行ウ)第97号滞納処分取消請求事件 主文 1 原告Aの訴えを却下する。 2 原告Bの請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求大阪国税局長が平成26年11月26日付けで別紙差押財産目録記載1~4の各財産に対してした差押処分及び同年12月15日付けで同目録記載5の各財産に対してした差押処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要大阪国税局長は,原告Bの滞納国税を徴収するために別紙差押財産目録記載1~5の各財産について差押処分(以下「本件差押処分」という。)をした。本件は,原告らが,当該滞納に係る国税の徴収権は時効により消滅している上,同目録記載2及び3の持分(以下「本件持分」という。)は,本件差押処分当時,原告Aに帰属しており,原告Bに帰属していなかったと主張して,本件差押処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令の定め⑴ 国税通則法(以下「通則法」という。)ア通則法72条1項は,国税の徴収を目的とする国の権利(以下「国税の徴収権」という。)は,その国税の法定納期限から5年間行使しないことによって,時効により消滅する旨規定し,同条2項は,国税の徴収権の時効については,その援用を要せず,また,その利益を放棄することができない旨規定し,同条3項は,国税の徴収権の時効については,同条及び73 条に別段の定めがあるものを除き,民法の規定を準用する旨規定する。 イ通則法73条1項は,国税の徴収権の時効は,次の各号に掲げる処分に係る部分の国税については,その処分の効力が生じた時に中断し,当該各号に掲げる期間を き,民法の規定を準用する旨規定する。 イ通則法73条1項は,国税の徴収権の時効は,次の各号に掲げる処分に係る部分の国税については,その処分の効力が生じた時に中断し,当該各号に掲げる期間を経過した時から更に進行する旨規定し,4号において,督促を挙げ,その時効中断期間を,督促状を発した日から起算して10日を経過した日までの期間とする旨規定している。 ⑵ 中小企業等協同組合法(以下「中協法」という。)中協法17条1項は,中小企業等協同組合(以下「組合」という。)の組合員の持分の譲渡につき,組合員は,組合の承諾を得なければ,その持分を譲り渡すことができない旨規定する。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者原告Bは,宅地建物取引業等を目的とする株式会社であり,原告Aは,原告Bの会社分割により同原告の不動産の売買等に関する営業を承継した株式会社である。(甲10)⑵ 原告Bの滞納国税の発生等ア J税務署長は,兵庫県〇市内において遊技場の経営等を行っていた株式会社C(以下「C」という。)が,源泉所得税,法人税等を滞納していたことから,別紙滞納国税一覧表(以下「別紙一覧表」という。)の番号1~19の各国税(以下「本件滞納国税」といい,個別にいうときは,番号に従い,「本件滞納国税1」などという。)につき,別紙一覧表の「督促年月日」欄記載の日に督促状を発し,その納付を督促した。しかしながら,本件滞納国税が完納されなかったため,J税務署長は,通則法43条3項に基づき,大阪国税局長に対し,別紙一覧表の「徴収引継日」欄記載の日に本件滞納国税の徴収の引継ぎを行った。 イ大阪国税局長は,平成11年10月25日,本件滞納国税1~17を 3条3項に基づき,大阪国税局長に対し,別紙一覧表の「徴収引継日」欄記載の日に本件滞納国税の徴収の引継ぎを行った。 イ大阪国税局長は,平成11年10月25日,本件滞納国税1~17を徴収するため,国税徴収法(以下「徴収法」という。)62条に基づき,CがDに対して有する賃貸借契約に基づく保証金6000万円の返還請求権(以下「本件保証金返還請求権」という。)を差し押さえ,同月29日,その差押通知書が同人に送達された。(乙6,7)ウ原告Bは,平成16年8月6日,Cを吸収合併し,通則法6条に基づいて,Cが納付すべき本件滞納国税を承継した。 エ大阪国税局徴収職員は,平成16年11月29日,本件滞納国税を徴収するため,徴収法142条に基づき,原告Bの本店事務所内を捜索したが,差し押さえるべき財産は見当たらなかった。(乙9)オ大阪国税局長は,本件保証金返還請求権の債務者であるDが無資力であることから,平成17年12月9日,徴収法79条1項2号に基づき,差押えを解除した。(乙10)⑶ 原告BのE信用組合(以下「本件組合」という。)への加入原告Bは,中協法に基づいて設立された信用協同組合である本件組合に対し,平成15年9月5日付けで1000万円を,平成16年6月8日付け200万円の合計1200万円を出資し(本件持分),本件組合に加入した。 (甲2)⑷ 原告Bによる会社分割等ア原告Bの代表者であるFは,吸収合併したCに多額の偶発債務が存在することが判明したことから,会社分割により設立した株式会社に原告Bの事業並びに事業に必要な資産及び負債を承継させることとした。そして,原告Bは,平成19年10月1日,会社分割により原告Aを設立して不動産の売買等の事業を承継させ,同年11月28日,会社分割により株 事業並びに事業に必要な資産及び負債を承継させることとした。そして,原告Bは,平成19年10月1日,会社分割により原告Aを設立して不動産の売買等の事業を承継させ,同年11月28日,会社分割により株式会社G(以下「G」という。)を設立して遊技場に関する事業を承継させた(これらの会社分割を「本件会社分割」という。)。(甲1,10,乙22) イ原告Aが本件会社分割により原告Bから承継する権利義務には本件持分が含まれていた。また,本件会社分割により原告A及びGが設立された際に発行された原告A及びGの株式各20株(以下「本件各株式」という。)はいずれも原告Bに割り当てられた。(甲1,10,乙22)ウ大阪国税局長は,本件滞納国税を徴収するため,平成20年2月25日,徴収法73条に基づき,本件各株式を差し押さえ(以下「本件株式差押処分」という。),その差押通知書は,同月26日,原告A及びGに送達された。(乙11~14)⑸ 本件差押処分ア大阪国税局長は,本件滞納国税を徴収するため,平成26年11月26日,徴収法62条に基づき,別紙差押財産目録記載1の請求権を差し押さえ,この差押通知書は,同月28日,公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会に送達された。(乙15,16)イ大阪国税局徴収職員は,本件滞納国税を徴収するため,平成26年11月26日,徴収法73条に基づき,別紙差押財産目録記載2及び3記載の各持分(本件持分)を差し押さえ,この差押通知書は,同日,本件組合に送達された。(乙17,18)ウ大阪国税局徴収職員は,本件滞納国税を徴収するため,平成26年11月26日,徴収法73条に基づき,別紙差押財産目録記載4の出資を差し押さえ,この差押通知書は,同日,H信用金庫に送達された。(乙19) 税局徴収職員は,本件滞納国税を徴収するため,平成26年11月26日,徴収法73条に基づき,別紙差押財産目録記載4の出資を差し押さえ,この差押通知書は,同日,H信用金庫に送達された。(乙19)エ大阪国税局長は,本件滞納国税を徴収するため,平成26年12月15日,徴収法68条に基づき,別紙差押財産目録記載5の各土地を差し押さえ,同月18日に差押登記を経由した。(乙20,21)⑹ 本件訴訟に至る経緯ア原告らは,平成27年1月23日,国税不服審判所長に対し,本件差押処分の取消しを求めて審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,同年 12月4日付けで同審査請求を棄却する旨の裁決をした。(甲2)イ原告らは,平成28年3月28日,本件訴えを提起した。(顕著な事実) 3 争点⑴ 本件滞納国税の徴収権の消滅時効の成否(争点1)⑵ 本件持分の帰属(争点2) 4 争点に関する当事者の主張の要旨⑴ 争点1(本件滞納国税の徴収権の消滅時効の成否)(原告らの主張の要旨)ア国税の徴収権は,その国税の法定納期限等から5年間行使しないことによって時効により消滅するところ,本件滞納国税の法定納期限は別紙一覧表の「法定納期限」欄記載のとおりである。そして,本件滞納国税の徴収権の時効は,別紙一覧表の「督促年月日」欄記載の日に督促状が送付されたことにより中断し,本件滞納国税1~17の徴収権については,平成11年10月25日にされた本件保証金返還請求権の差押処分により時効が中断し,その効力は同処分が解除された平成17年12月9日まで継続していた。また,本件滞納国税18及び19の徴収権については,平成16年11月29日にされた原告Bの本店事務所内の捜索により,同日,時効が中断した。さらに,原告Bは れた平成17年12月9日まで継続していた。また,本件滞納国税18及び19の徴収権については,平成16年11月29日にされた原告Bの本店事務所内の捜索により,同日,時効が中断した。さらに,原告Bは,平成17年12月30日に本件滞納国税の本税を納付しており,これにより本件滞納国税の徴収権の時効が中断した。 以上のとおり,本件滞納国税の徴収権の時効は中断しているものの,その時効の中断が終わった日の翌日から本件差押処分まで5年が経過しているから,本件滞納国税の徴収権は時効により消滅している。 イ本件株式差押処分による時効中断の有無について以下のとおり,本件株式差押処分当時,本件各株式は原告BからFに譲渡されており,この譲渡を差押債権者である被告に対抗することができる から,本件株式差押処分は原告Bに帰属しない財産を差し押さえるものとして無効である。したがって,本件株式差押処分により本件滞納国税の徴収権の時効が中断するものではない。 (ア) 原告Bが本件各株式をFに譲渡したこと本件会社分割においては,原告Bが本件各株式の割当てを受けた後に本件各株式をFに譲渡することが当然に予定されていたのであり,原告Bは,当初の予定通り,平成19年12月28日,本件会社分割により割り当てられた本件各株式をFに譲渡した。本件各株式が原告BからFに譲渡されたことは,①原告Bの総勘定元帳に本件各株式をFに譲渡した旨が記載されていること,②原告Bの平成19年5月1日から平成20年4月30日までの事業年度の税務申告書添付の決算報告書に資産として本件各株式が記載されていないこと,③原告Aの平成19年10月1日から平成20年4月30日までの事業年度の確定申告書別表二及びGの平成19年11月28日から平成20年4月30日までの事業年度 して本件各株式が記載されていないこと,③原告Aの平成19年10月1日から平成20年4月30日までの事業年度の確定申告書別表二及びGの平成19年11月28日から平成20年4月30日までの事業年度の確定申告書別表二においてそれぞれの株主がFである旨が記載されていることから明らかである。 (イ) 本件各株式の譲渡を被告に対抗することができることa 会社法130条1項は株主名簿を作成していることを前提とするものであり,公開会社ではない株式会社においては株主名簿が作成されていない現状の下で株主名簿が作成されていない場合にまで一律に同項を適用することは妥当性を欠くこととなる。したがって,株主名簿を作成していない株式会社の株式については,同項の適用はなく,当該株式の譲受人は,株主名簿の記載又は記録がなくても,その譲渡を第三者に対抗することができるというべきである。 b 株式会社が株主名簿を作成していないために株式の譲受人が株主名簿の記載又は記録をすることができない場合は,株式会社による株主 名簿の名義書換の不当拒絶と同様の状況にあるということができるところ,株券発行会社ではない株式会社が株主名簿の名義書換を不当に拒絶した場合には,株式の譲受人は名義書換なしに株式の移転を第三者に対抗することができると解する見解もある。したがって,株主名簿を作成していない株式会社の株式の譲受人は,会社法130条1項にかかわらず,株主名簿の記載又は記録がなくても,その譲渡を第三者に対抗することができるというべきである。 c 原告A及びGは,法人設立届出書の添付書類として「設立時の株主名簿」と題する書面(以下「設立時株主等の名簿」という。)を作成し所轄の税務署に提出しているが,これには株主はFである旨が記載されており,この設立時 は,法人設立届出書の添付書類として「設立時の株主名簿」と題する書面(以下「設立時株主等の名簿」という。)を作成し所轄の税務署に提出しているが,これには株主はFである旨が記載されており,この設立時株主等の名簿は会社法所定の株主名簿に相当するものである。したがって,原告Bは,本件各株式が原告BからFに譲渡された事実を第三者に対抗することができると解すべきである。 d 大阪国税局は,原告A及びGの設立時株主等の名簿には,本来,原告Bが株主として記載されるべきであるのに,Fが株主として記載されていたことを認識しており,このことからすれば,大阪国税局は,本件差押処分当時,本件各株式が原告BからFに譲渡された事実を認識していたといえる。そうすると,大阪国税局長は,本件各株式が原告BからFに譲渡された事実を認識しながら,あえて本件差押処分を行ったというべきであるから,信義則上,本件各株式が原告BからFに譲渡された事実について株主名簿の名義書換が未了であることを主張し得ないというべきである。したがって,原告Bは,本件各株式をFに譲渡した事実を被告に対抗することができるというべきである。 (被告の主張の要旨)以下のとおり,平成19年12月18日に本件各株式が原告BからFに譲渡されたことはないし,仮に,そのような譲渡があったとしても,その事実 を被告に対抗することができない。したがって,本件株式差押処分当時,本件各株式は原告Bに帰属する財産であったから,本件株式差押処分により本件滞納国税の徴収権の時効は中断したというべきである。 ア本件各株式が原告BからFに譲渡されていないこと本件会社分割の新設分割計画書に添付された原告A及びGの定款には,設立時発行株式の割当てを受ける者として原告Bが記載されていたのに対し,原告A及 ア本件各株式が原告BからFに譲渡されていないこと本件会社分割の新設分割計画書に添付された原告A及びGの定款には,設立時発行株式の割当てを受ける者として原告Bが記載されていたのに対し,原告A及びGが所轄の税務署に提出した設立時株主等の名簿には株主がFである旨が記載されていた。そこで,大阪国税局徴収職員は,本件株式差押処分に当たり,原告らの税務代理行為をしていたI税理士に対して,定款の記載と設立時株主等の名簿の記載のいずれが正しいのかを確認したところ,I税理士から,原告A及びGの株主は設立時から現在まで原告Bであり,設立時株主等の名簿については近日中に訂正したものを提出する旨の回答を得た。そして,実際,本件株式差押処分がされた後,原告Aから同年2月27日付けで,Gから同年3月3日付けでそれぞれ株主の氏名を原告Bと訂正した設立時株主等の名簿が提出された。 また,同年12月28日に本件各株式が原告BからFに譲渡されたのであれば,原告B及びFは本件株式差押処分に対して不服申立てを行うのが自然かつ合理的であるが,平成20年2月25日に本件株式差押処分がされた後,平成26年に本件差押処分がされるまでの間,本件株式差押処分に対する不服申立ては一切行われていない。 以上の諸事情に照らせば,本件各株式が原告BからFに譲渡された事実は認められず,本件株式差押処分当時,本件各株式は原告Bに帰属していたというべきである。 イ本件各株式の譲渡について対抗要件を欠いていること(ア) 株式会社である原告A及びGは,会社法121条に基づいて作成し,備え置くべき株主名簿を作成していなかったから,仮に,本件株式差押 処分当時,本件各株式が原告BからFに譲渡されていたとしても,本件各株式の譲渡につき会社法130条所定の対抗要件を具備 備え置くべき株主名簿を作成していなかったから,仮に,本件株式差押 処分当時,本件各株式が原告BからFに譲渡されていたとしても,本件各株式の譲渡につき会社法130条所定の対抗要件を具備していなかった以上,原告Bは本件各株式をFに譲渡した事実を第三者に対抗することができない。そうすると,仮に,本件株式差押処分がされた当時,本件各株式が原告BからFに譲渡されていたとしても,被告との関係において,本件各株式が原告Bに帰属していなかったということはできない。 (イ) 原告らは,本件各株式が原告BからFに譲渡されたのに原告A及びGの株主名簿の名義書換がされていないことは,会社による株主名簿の名義書換の不当拒絶と同様の状況にあると主張する。しかしながら,株主名簿の名義書換の不当拒絶とは,株式の譲受人が適法に株主名簿の名義書換請求をしたにもかかわらず,会社が不当に名義書換を拒絶したり,又は過失により名義書換をしない場合をいうものであるところ,Fが,原告A及びGに対し,株主名簿の名義書換を請求したり,名義書換請求を行う前段階として株主名簿の作成を要求するなどといった,株式譲渡の対抗要件具備に向けて努力をした様子は一切うかがえない。そうすると,本件各株式が原告BからFに譲渡されたのに原告A及びGの株主名簿の名義書換がされていないことが,株主名簿の名義書換の不当拒絶と同様の状況にあるということはできない。 (ウ) 原告らは,設立時株主等の名簿が会社法所定の株主名簿に相当すると主張するが,設立時株主等の名簿は,会社設立時点で予定されている株主の氏名等を明らかにするにとどまるものであるし,設立時株主等の名簿には会社法所定の株主名簿の記載事項とされている株式を取得した日が記載されていない。したがって,設立時株主等の名簿をもって ている株主の氏名等を明らかにするにとどまるものであるし,設立時株主等の名簿には会社法所定の株主名簿の記載事項とされている株式を取得した日が記載されていない。したがって,設立時株主等の名簿をもって会社法所定の株主名簿に相当するものということはできない。 (エ) 原告らは,大阪国税局が,本件差押処分当時,本件各株式が原告BからFに譲渡された事実を認識していたとして,被告において本件各株 式が原告BからFに譲渡された事実について株主名簿の名義書換が未了であることを主張することが信義則に反すると主張するが,大阪国税局において本件各株式が原告BからFに譲渡された事実を認識していたことはないから,原告らの主張は前提を欠くものである。 ⑵ 争点2(本件持分の帰属)(被告の主張の要旨)ア中協法17条1項は,組合員は組合の承諾を得なければその持分を譲り渡すことができない旨規定しているところ,本件組合が原告Bから原告Aに対する本件持分の譲渡を承諾した事実は認められない。したがって,原告Aは本件持分を取得しておらず,本件差押処分当時,本件持分が原告Bに帰属していたことは明らかである。したがって,本件差押処分は,原告Bに帰属する財産に対するものであり,適法である。 イ原告らは,会社分割による承継には中協法17条1項の適用がない旨主張する。しかしながら,同項が組合員の持分の譲渡につき組合の承諾を必要とした趣旨は,組合が組合員の人格的,精神的要素を多分にその結合関係の中に持つものであることから,その持分の譲渡を自由にすることは組合員間の信頼関係に影響を与えるためである。そうすると,会社分割による持分の承継も実質的には通常の持分の譲渡と何ら異ならない以上,会社分割による出資持分の承継に同項を適用しない理由 由にすることは組合員間の信頼関係に影響を与えるためである。そうすると,会社分割による持分の承継も実質的には通常の持分の譲渡と何ら異ならない以上,会社分割による出資持分の承継に同項を適用しない理由はないというべきである。 ウ原告らは,本件持分の譲渡につき本件組合の承諾が擬制されると主張する。しかしながら,原告Aは,本件持分の承継につき,本件組合に出資加入申込書を提出したものの,本件持分の譲渡について本件組合に承諾を求める手続に不備があったために本件組合において原告Bの原告Aに対する本件持分の譲渡を承諾するか否かの判断をすることができず,その処理が完了していないことが認められる。したがって,本件組合が本件持分の承 継を承諾したことが擬制されるということはできない。 (原告らの主張の要旨)ア本件持分の譲渡につき本件組合の承諾が不要であること(ア) 本件持分は,本件会社分割により原告Bから原告Aに承継されたから,本件差押処分当時,本件持分は原告Aに帰属していた。したがって,本件差押処分は,原告Bに帰属しない財産に対するものとして違法である。 (イ) 被告は,中協法17条1項は組合の持分の譲渡に組合の承諾を要する旨を規定しており,本件組合が原告Bから原告Aに対する本件持分の譲渡を承諾した事実がないから,本件持分は原告Aに譲渡されたとはいえないと主張する。 しかしながら,会社分割による権利義務の承継は,当該権利義務に関する分割会社の地位を承継する包括承継であるから,同項の「持分の譲渡」に該当しないと解されるし,会社分割により設立された株式会社は会社分割を行った株式会社の事業をそのまま継続するのであるから,会社分割による持分の承継は,単なる譲渡と異なり,組合員の信頼関係に影響を与えるものではない。そうす 会社分割により設立された株式会社は会社分割を行った株式会社の事業をそのまま継続するのであるから,会社分割による持分の承継は,単なる譲渡と異なり,組合員の信頼関係に影響を与えるものではない。そうすると,会社分割による持分の承継に同項の適用はなく,組合の承諾は不要であるというべきである。 イ本件持分の譲渡につき本件組合の承諾が擬制されること中協法に基づく組合は,正当な理由がない限り,組合員の持分譲渡の承諾を拒むことはできないところ,原告Aは,本件会社分割により本件持分を承継するに当たり,本件組合に対して,前記承継の事実を口頭で通知した上,平成19年11月27日付けの出資金加入申込書を提出し,前記承継を承諾するよう促している。このような事実関係の下では,本件組合が前記承継を承諾したことが擬制されるというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 原告Aの原告適格について⑴ 原告Aは,本件持分が原告Bではなく原告Aに帰属するとして,本件差押処分の取消しを求めているところ,原告Aは,本件差押処分の名宛人たる滞納者ではないから,本件訴えに関して原告Aが原告適格を有するか否かを検討する。 ⑵ 行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解すべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第99号同53年3月14日第三小法廷判決・民集32巻2号211頁,最高裁平成元年(行ツ)第130号同4年9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号571頁等参照)。そして,処分の名宛人以外の者が処分の法的効果による権利の制限を受ける 判決・民集32巻2号211頁,最高裁平成元年(行ツ)第130号同4年9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号571頁等参照)。そして,処分の名宛人以外の者が処分の法的効果による権利の制限を受ける場合には,その者は,当該処分により自己の権利を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者として,その処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に当たり,その取消訴訟における原告適格を有するものというべきである(最高裁平成24年(行ヒ)第156号同25年7月12日第二小法廷判決・裁判集民事244号43頁)。 そして,徴収法47条1項に基づく差押処分がされた場合には,その法的効果として差押えに係る財産の譲渡や用益権設定等の処分が禁止されることに鑑みると,差押処分の名宛人以外の第三者が,(a)当該差押処分当時,㋐その差押えに係る財産の所有権を有しており,かつ,その所有権を差押債権者に対抗することができる場合には,当該差押処分の法的効果によりその権利の制限を受けることとなるから,当該差押処分により自己の権利を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者として,その差押処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に当たり,その取消訴訟における原告 適格を有するが,他方,(b)前記㋐及びの要件を満たさない場合には,特段の事情のない限り,当該差押処分により自己の権利を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあるとはいえないから,その差押処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者には当たらず,その取消訴訟における原告適格を有しないものと解される(なお,処分の取消しを訴求する原告適格に関する立証責任は原告に課されると解されることからすると,原告らが,前記の立証責任を負うものと考えられる。)。 ⑶ア本件において,前記前提 いものと解される(なお,処分の取消しを訴求する原告適格に関する立証責任は原告に課されると解されることからすると,原告らが,前記の立証責任を負うものと考えられる。)。 ⑶ア本件において,前記前提事実⑷イのとおり,原告Aが本件会社分割により原告Bから承継する権利義務の中には本件持分が含まれているが,中協法17条1項は,組合員は組合の承諾を得なければその持分を譲渡することができない旨規定している。 この点に関して,原告Aは,①会社分割による権利義務の承継は包括承継であるから同項の「持分の譲渡」に該当しないと解されるし,②会社分割により設立された株式会社は会社分割をする株式会社が行っていた事業をそのまま継続するから会社分割による持分の承継は,単なる譲渡と異なり,組合員の信頼関係に影響を与えるものではないとして,会社分割による組合の持分の承継に同項の適用はなく,本件会社分割による本件持分の承継には本件組合の承諾は不要であると主張する。 そこで,会社分割による組合の持分の承継につき同項所定の組合の承諾を要するかについて,検討する。 イ中協法は,中小規模の商業等の事業を行う者等が相互扶助の精神に基づき協同して事業を行うために必要な組織について定め,これらの者の公正な経済活動の機会を確保することなどを目的とするものであり(1条),組合の要件として,組合員の相互扶助を目的とすることを定め(5条1項),その行う事業によってその組合員に直接奉仕することを目的としなければならない旨規定している(同条2項)。また,中協法は,組合員の相互扶助 という目的を達成するため,組合の種類ごとに組合員たる資格を有する者の範囲を定めており,その範囲内においてそれぞれの組合がその目的,性格等に応じて具体的な組合員資格を定款で定めることとなる(8条)。 という目的を達成するため,組合の種類ごとに組合員たる資格を有する者の範囲を定めており,その範囲内においてそれぞれの組合がその目的,性格等に応じて具体的な組合員資格を定款で定めることとなる(8条)。さらに,中協法は,組合員の人格的平等性の観点から,各組合員は,その出資口数に関係なく,1個の議決権及び選挙権を有するものとしている(11条1項)。 以上のような中協法の規定に照らせば,組合は,資本団体である株式会社とは異なり,相互扶助の精神を基調とする人的結合体であると解されるのであって,中協法17条1項は,組合員が組合の持分を譲渡することは組合の基礎をなす組合員の信頼関係に影響を及ぼすものであることから,組合員が組合の持分を譲渡するときは組合の承諾を要するとしたものと解される。そして,会社分割による組合の持分の承継も,組合の持分の譲渡と同様,組合員の変更や出資口数の増減を生じさせるものであり,組合員の信頼関係に影響を与え得るものであることに鑑みると,前記のとおり同項が持分の譲渡に先立ち組合の承諾を要するとした趣旨は,会社分割により組合の持分を承継する場合にも当てはまることは明らかであると考えられる。 そうすると,同項所定の組合の承諾を必要とする「その持分を譲り渡す」場合の中には,会社分割により組合の持分を承継する場合も含まれるものと解するのが相当である。 ウ以上によれば,会社分割による持分の承継にも中協法17条1項の適用があり,組合の承諾を要するというべきである。そして,前記のような同項の趣旨からすると,組合の承諾のない持分の承継は無効であると解すべきである。 ⑷ そこで,原告Aが原告Bから本件持分を承継することについて本件組合の承諾があったか否かについて検討する。 ア証拠(甲11,乙33,34)及び弁論の全 あると解すべきである。 ⑷ そこで,原告Aが原告Bから本件持分を承継することについて本件組合の承諾があったか否かについて検討する。 ア証拠(甲11,乙33,34)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,平成19年11月27日付けで,本件組合の〇支店に対し,本件会社分割による本件持分の承継につき出資金加入申込書を提出したものの,申込手続の不備により同支店での決裁手続が行われたにとどまり,本件組合の承諾を得るに至らなかったことが認められる。 したがって,本件組合の承諾を得ることなくなされた本件会社分割による本件持分の承継は無効であって,原告Aは,本件差押処分当時,本件持分を有していなかったというべきである。 イこれに対し,原告Aは,組合は,正当な理由がない限り,組合員の持分譲渡の承諾を拒むことはできないから,原告Aが,本件会社分割により本件持分を承継するに当たり,その事実を口頭で通知した上,前記の出資金加入申込書を提出したことをもって本件組合が本件会社分割による持分の承継を承諾したことが擬制されると主張する。 しかしながら,組合は,組合員の持分の譲渡の可否を判断してこれを拒み得る以上,原告Aが主張するような事実から直ちに本件組合が本件会社分割による持分の承継を承諾したとみなすことはできない。 したがって,原告Aの前記主張は採用することができない。 ⑸ 以上によれば,原告Aは,本件差押処分当時,本件持分を有していなかったため,前記(2)の㋐の要件を満たさないところ,他に,原告Aにつき,本件持分につき本件差押処分がされることにより自己の権利を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあると解すべき特段の事情の存在も認められないから,その差押処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者には当たらず,その取消訴訟に ことにより自己の権利を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあると解すべき特段の事情の存在も認められないから,その差押処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者には当たらず,その取消訴訟における原告適格を有しないものというべきである。 また,原告Aは,本件差押処分の対象のうち本件持分以外の財産についても,本件差押処分当時,所有権を有していたとは認められないため,前記(2)の㋐の要件を満たさないところ,他に,原告Aにつき,本件持分につき本件 差押処分がされることにより自己の権利を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあると解すべき特段の事情の存在も認められないから,その差押処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者には当たらず,その取消訴訟における原告適格を有しないものというべきである。 そうすると,原告Aは,本件差押処分の取消しを求める本件訴えについて原告適格を有しないというべきである。 2 争点1(本件滞納国税の徴収権の消滅時効の成否)について⑴ 証拠(甲2)によれば,本件滞納国税の法定納期限は別紙一覧表の「法定納期限」欄記載の日であり,本件滞納国税の徴収権は,その翌日から5年行使しないことによって,時効により消滅するが,前記前提事実⑵アのとおり,本件滞納国税については,別紙一覧表の「督促年月日」欄記載の日に督促状が送付されたため,同日から起算して10日を経過した日までの期間,本件滞納国税の徴収権の時効が中断した(通則法73条1項4号)。そして,前記前提事実⑵イ及びオのとおり,大阪国税局長は,本件滞納国税1~17を徴収するため,平成11年10月25日,本件保証金返還請求権を差し押さえ,同月29日,その差押通知書が第三債務者に送達されているから,同日,本件滞納国税1~17の徴収権の時効は中断し, 税1~17を徴収するため,平成11年10月25日,本件保証金返還請求権を差し押さえ,同月29日,その差押通知書が第三債務者に送達されているから,同日,本件滞納国税1~17の徴収権の時効は中断し,差押えが解除された平成17年12月9日に前記中断が終了した(通則法72条3項,民法147条2号,157条1項)。また,前記前提事実⑵エのとおり,大阪国税局徴収職員は,平成16年11月29日,本件滞納国税を徴収するため,原告Bの本店事務所を捜索したが差し押さえるべき財産が見当たらなかったのであり,このような場合には当該捜索に着手した時に時効中断の効力を生ずると解されるから,同日,本件滞納国税18及び19の徴収権の時効が中断した(通則法72条3項,民法147条2号参照)。さらに,証拠(乙8,11)及び弁論の全趣旨によれば,原告Bは,平成17年12月30日,本件滞納国税4・7・15~19の本税を納付したことが認められ,これにより,同日,これらの 国税の徴収権の時効が中断した(通則法73条5項)。 ⑵ そして,前記前提事実⑷ア及びウのとおり,本件会社分割により平成19年10月1日に原告Aが,同年11月28日にGがそれぞれ設立され,それぞれの設立に際して発行された本件各株式が原告Bに割り当てられたが,大阪国税局長は,平成20年2月25日,本件各株式を差し押さえた上(本件株式差押処分),同月26日,その差押通知書が原告A及びGに送達されている。そうすると,前記(1)のとおり,①本件滞納国税1~17の徴収権の時効については,平成11年10月29日,中断し,当該中断は,平成17年12月9日に終了するまで継続し,②本件滞納国税18・19の徴収権の時効については,平成16年11月29日及び同日から5年が経過する以前の平成17年12月30日, 日,中断し,当該中断は,平成17年12月9日に終了するまで継続し,②本件滞納国税18・19の徴収権の時効については,平成16年11月29日及び同日から5年が経過する以前の平成17年12月30日,中断しているところ,③同月9日(本件滞納国税1~17の関係)及び同月30日(同18・19の関係)から5年間の消滅時効期間が経過する以前の平成20年2月25日に本件滞納国税(本件滞納国税1~19)を徴収するため,本件株式差押処分がされ,同月26日に本件株式差押処分に係る差押通知書が原告A及びGに送達されたことによって,本件滞納国税の徴収権の時効は,同日,中断したというべきであり,しかも,弁論の全趣旨によれば,本件差押処分まで本件株式差押処分に係る差押手続は終了していないことが認められるから,本件差押処分当時,本件滞納国税の徴収権が時効により消滅していたということはできない。 ⑶ 原告Bの主張に対する判断アこれに対して,原告Bは,本件株式差押処分に先立つ平成19年12月28日,本件各株式をFに譲渡したから,本件株式差押処分は原告Bに帰属しない財産を差し押さえるものとして無効である旨主張する。 しかしながら,証拠(甲10,乙22)及び弁論の全趣旨によれば,①原告A及びGは,株券を発行する旨の定款の定めがない株式会社であり,その株式は振替機関が取り扱うものでもないこと及び②会社法121条所 定の株主名簿を作成していないことが認められる。そうすると,仮に,平成19年12月28日に本件各株式が原告BからFに譲渡されたとしても,譲受人であるFが株主名簿に記載され,又は記録されていない以上,原告Bは,その譲渡をもって差押債権者である被告に対抗することができないというべきである(社債,株式等の振替に関する法律128条,会社法130条 るFが株主名簿に記載され,又は記録されていない以上,原告Bは,その譲渡をもって差押債権者である被告に対抗することができないというべきである(社債,株式等の振替に関する法律128条,会社法130条1項)。 したがって,原告Bの前記主張は,採用することができない。 イ原告Bは,会社法130条1項は,株式会社が株主名簿を作成することを前提とする規定であり,公開会社ではない株式会社においては株主名簿が作成されていない現状の下において株主名簿が作成されていない場合にまで一律に同項を適用することは妥当性を欠くことになるとして,株主名簿を作成していない株式会社の株式には同項は適用されるべきでないと主張する。 しかしながら,会社法は,株主と会社との間の集団的法律関係を画一的に処理するための制度として株主名簿の制度を設け,その目的を達するため,規模の大小,公開会社か否かに関係なく株式会社は株主名簿を作成しなければならないとした上(121条),株主名簿に一定の法律上の効力を付与しているのであって,株式会社が株主名簿を作成するか否かの自由を有し株主名簿を作成しなければ会社法130条が適用されないと解することは,前記のような会社法121条の規定や株主名簿の制度の趣旨に反するというべきである。そうすると,株主名簿を作成していない株式会社にも会社法130条1項が適用されると解するべきである。 したがって,原告Bの前記主張は,採用することができない。 ウ原告Bは,株式会社が株主名簿を作成していないために株式の譲受人が株主名簿の記載又は記録をすることができない場合は,株式会社が株式譲受人から株主名簿の名義書換の請求を受けたにもかかわらず正当な理由な くこれを拒絶した場合と同様の状況にあるということができ,前記の名義書換の不当拒 ができない場合は,株式会社が株式譲受人から株主名簿の名義書換の請求を受けたにもかかわらず正当な理由な くこれを拒絶した場合と同様の状況にあるということができ,前記の名義書換の不当拒絶の場合には株式譲受人は名義書換なしに株式の移転を第三者に対抗することができると解されているとして,株主名簿を作成していない原告A及びGの株式についても,株式譲受人は,会社法130条1項にかかわらず,株主名簿の記載又は記録がなくても,株式の譲渡の事実を第三者に対抗できるというべきであると主張する。 しかしながら,株主名簿を作成していない株式会社が,株式譲渡の当事者から株主名簿を作成して株式譲渡がされた旨の記載又は記録をすべきことを請求されたにもかかわらず,株式会社が株主名簿を作成しない場合には,前記の名義書換の不当拒絶と同様の状況にあるものと解する余地は否定できないものの,本件において,原告B及びFが原告A及びGに対して株主名簿の作成を請求したことを認めるに足りる証拠はなく,原告B及びFが原告Aにより株主名簿の名義書換を不当に拒絶されたものと同様の状況にあるということはできない。 したがって,原告Bの前記主張は,採用することができない。 エ原告Bは,原告A及びGは株主をFとする設立時株主等の名簿を作成して所轄の税務署に提出しており,設立時株主等の名簿は会社法所定の株主名簿に相当するものであるとして,本件各株式が原告BからFに譲渡された事実を第三者に対抗することができると主張する。 しかしながら,原告Bは,原告A及びGにおいては会社法所定の株主名簿を作成していないことを前提として,設立時株主等の名簿が会社法所定の株主名簿に相当すると主張しているのであり,会社法所定の株主名簿ではない書面が作成されていることをもって株式の譲渡を第三 の株主名簿を作成していないことを前提として,設立時株主等の名簿が会社法所定の株主名簿に相当すると主張しているのであり,会社法所定の株主名簿ではない書面が作成されていることをもって株式の譲渡を第三者に対抗することができるとする法的根拠は不明というほかない。また,仮に,設立時株主等の名簿が会社法所定の株主名簿に当たると解する余地があるとしても,原告A及びGが所轄の税務署に提出した設立時株主等の名簿は,その 表題が「設立時の株主名簿」とされていることからすると,会社設立時の株主を記載したものと解されるから,その名簿に株主がFである旨の記載があっても,その記載をもってFが原告Bから株式を取得した者であることが記載又は記録されているということはできない(原告A及びGは,所轄の税務署に対し,設立時株主等の名簿に株主を原告Bと記載すべきところを誤ってFと記載していたとして既に提出していたFを株主とする設立時株主等の名簿と差し替える趣旨で原告Bを株主とする設立時株主等の名簿を提出しており〔乙24の1・2〕,このことは,株主がFである旨が記載された設立時株主等の名簿が会社設立時の株主を記載したものであることを前提とするものということができる。)。そうすると,設立時株主等の名簿に株主がFである旨が記載されていることをもって本件各株式が原告BからFに譲渡された事実を第三者に対抗することができるということはできないというべきである。 したがって,原告Bの前記主張は採用することができない。 オ原告Bは,大阪国税局長は,原告A及びGが所轄の税務署に提出した設立時株主等の名簿には,本来,設立時の株主である原告Bを株主として記載されるべきであるのに,Fが株主として記載されていたことを認識しており,このことからすれば,大阪国税局長は,本件差押処 提出した設立時株主等の名簿には,本来,設立時の株主である原告Bを株主として記載されるべきであるのに,Fが株主として記載されていたことを認識しており,このことからすれば,大阪国税局長は,本件差押処分当時,本件各株式が原告BからFに譲渡された事実を認識していたといえるとして,大阪国税局長は,本件各株式が原告BからFに譲渡された事実を認識しながら,あえて本件差押処分を行ったというべきであるから,信義則上,本件各株式が原告BからFに譲渡された事実について株主名簿の名義書換が未了であることを主張し得ないと主張する。 しかしながら,証拠(甲10,12,13,乙22,26)及び弁論の全趣旨によれば,原告Bの財産調査を行っていた大阪国税局徴収職員は,本件会社分割の新設分割計画書に添付された原告A及びGの定款には設立 時発行株式の割当てを受ける者として原告Bが記載される一方で,原告A及びGが所轄の税務署に提出した設立時株主等の名簿には株主がFである旨が記載されていたことから,平成20年2月25日(本件株式差押処分がされた日),原告らの税務代理行為をしていたI税理士に対して,前記の定款の記載と設立時株主等の名簿の記載のいずれが正しいのかを問い合わせ,I税理士から,原告A及びGの設立時の株主及び現在の株主はいずれも原告Bである旨の回答を得たことが認められ,これらの事実によれば,大阪国税局長は,本件差押処分当時,原告A及びGの設立時の株主が原告Bであり本件各株式が同原告に帰属するとの認識を有していたことが推認されるというべきであって,原告Bの前記主張はその前提を欠くものというべきである。 したがって,原告Bの前記主張は採用することができない。 (4) 小括以上のとおり,本件株式差押処分当時,本件各株式は原告Bに帰属していた 前記主張はその前提を欠くものというべきである。 したがって,原告Bの前記主張は採用することができない。 (4) 小括以上のとおり,本件株式差押処分当時,本件各株式は原告Bに帰属していたといえるから,本件株式差押処分は適法であり,この処分により平成20年2月26日に本件滞納国税の徴収権の時効が中断したというべきである。 そして,本件差押処分まで本件株式差押処分に係る差押手続は終了していないことが認められるから,本件差押処分当時,本件滞納国税の徴収権が時効により消滅していたということはできない。 3 争点2(本件持分の帰属)について前記1によれば,本件組合の承諾を得ることなくなされた原告Bから原告Aに対する本件持分の承継は無効であるから,本件差押処分当時,本件持分は原告Bに帰属する財産であったというべきである。 したがって,本件持分に係る本件差押処分は適法であるから,本件持分に係る本件差押処分の取消しを求める原告Bの請求は棄却すべきである。 4 結論 以上の次第で,原告Aの訴えは不適法であるからこれを却下することとし,原告Bの請求には理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官三輪方大 裁判官角谷昌毅 裁判官稲岡奈桜
▼ クリックして全文を表示