昭和55(ネ)776等 福岡中央郵便局職員起訴休職

裁判年月日・裁判所
昭和59年4月26日 福岡高等裁判所
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【DRY-RUN】主   文 一 原判決中一審被告国敗訴の部分を取消す。 二 一審原告らの一審被告国に対する請求を棄却する。 三 一審原告らの一審被告らに対する本件各控訴を棄却する。 四 一審被告国の民事訴訟法第一九八

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主文 一原判決中一審被告国敗訴の部分を取消す。 二一審原告らの一審被告国に対する請求を棄却する。 三一審原告らの一審被告らに対する本件各控訴を棄却する。 四一審被告国の民事訴訟法第一九八条二項の原状回復等の申立により 1 一審原告aは、一審被告国に対し、金二四七万〇、一五八円及びこれに対する昭和五五年一二月一九日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。 2 一審原告bは、一審被告国に対し、金二二八万七、一三四円及びこれに対する昭和五五年一二月一九日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え 3 一審被告国の一審原告aに対するその余の申立を却下する。 五訴訟費用のうち、一審原告らと一審被告国との間に生じた部分は、一、二審を通じて全部一審原告らの負担とし、一審原告らと一審被告c、同dらの間に生じた控訴費用は、一審原告らの負担とする。 六本判決主文四項の1、2は、仮りに執行することができる。 事実 一当事者双方の申立(一審原告ら)1(一) 原判決中一審被告国に関する部分を次のとおり変更する。 (二) 一審被告国は、一審原告aに対し金五五一万九、九八九円及びこれに対する昭和五一年四月九日以降、一番原告bに対し金五七四万二、四一七円及びこれに対する昭和五一年四月二日以降各支払いずみまで夫々年五分の割合による金員を支払え。 2(一) 原判決中一審被告c、同dに関する部分を取消す。 (二) 一審被告c、同dは、各自、一審原告aに対し金五五一万九、九八九円及びこれに対する一審被告cは昭和五一年四月七日以降、一審被告dは同月一〇日以降各支払いずみまで夫々年五分の割合による金員を、一審原告bに対し金五七四万二、四一七円及びこれに対する一審被告cは昭和五一年四月二日以降、一審被告dは同月三日以降各支払いずみまで夫々 同月一〇日以降各支払いずみまで夫々年五分の割合による金員を、一審原告bに対し金五七四万二、四一七円及びこれに対する一審被告cは昭和五一年四月二日以降、一審被告dは同月三日以降各支払いずみまで夫々年五分の割合による金員をいずれも支払え。 3 一審被告国の一審原告らに対する本件各控訴を棄却する。 4 一審被告国の民事訴訟法第一九八条二項の原状回復等の申立を却下する。 5 訴訟費用中控訴に関する部分は、第一、二審を通じて全て一審被告らの負担とする。 6 前記1、2の各(二)につき仮執行宣言。 (一審被告ら)一審被告国主文一ないし三項、四項の2同旨及び民事訴訟法第一九八条二項の原状回復等の申立として「一審原告aは、一審被告国に対し金二五七万〇、一五八円及びこれに対する昭和五五年一二月一九日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。」並びに主文五項同旨の判決と金員の給付を命ずる部分につき仮執行宣言。 一審被告c、同dら主文三、五項同旨の判決二当事者双方の事実上の陳述と証拠の関係は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示及び原審、当審記録中各証拠目録に記載のとおりであるからこれを引用する(但し、原判決四枚目裏三行目の「ものである。」を『ものである。」』と訂正し、同五行目の「一二月二七日」とあるのを「一二月二六日」と訂正し、原判決一六枚目裏五行目の「7 同10の主張は争う。」とあるのを「7 一審原告らが、本件休職処分がなければ、同期間中得られたであろう本俸、調整手当及び期末手当の推計総額並びに右期間中一審原告らが一審被告国から現実に支給された金額が原判決請求原因10に記載のとおりであることは認める。請求原因10のその余の主張は争う。」と改める。)。 1 一審被告ら(一) 起訴休職(国家公務員法……以下法という……七九条二号)は、国家公務 が原判決請求原因10に記載のとおりであることは認める。請求原因10のその余の主張は争う。」と改める。)。 1 一審被告ら(一) 起訴休職(国家公務員法……以下法という……七九条二号)は、国家公務員(以下単に公務員という)たる職員が刑事事件に関して起訴されたことを唯一の法律要件として、当該職員の身分を保有させながら一時職務に従事させないこととする制度である。 即ち、公務員は、全体の奉仕者として(憲法一五条二項、法九六条一項)、公共の利益のために勤務し、かつ職務の遂行にあたつては、全力をあげてこれに専念すべく(法九六条一項、一〇一条一項)、また官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない(法九九条)。しかして、刑事事件で起訴されるということは、我国における有罪率の高さからみても、相当程度の強い客観性をもつて公の嫌疑をうけていると社会からうけとめられるのであり、また刑事被告人は公判期日における出頭、公判準備等のため、または事件によつては勾留されているため、そうして禁錮以上の刑に処せられた場合はその執行を終わり又は執行を受けることがなくなるまでの間は公務員の欠格条項に該当するため(法三八条一項二号)、刑事被告人たる職員をそのまま職務に従事させるときは、職場の秩序保持や規則の維持に弊害を生じ、公務、官職の信用を失墜し、あるいは当該職員に職務専念義務の遵守を期待し得なくなる。よつてこれら弊害を防止し、公務、官職の信用を保持し、職務専念義務の遵守に障害ある状態での執務を排除するため、公務員が刑事事件に関して起訴されたときは、原則として休職を命ずるのである。 (二) 起訴休職を発令する法律上の要件は、当該公務員が「刑事事件に関し起訴された」ことだけである。もつとも法七九条は「休職することができる。」と定め、公訴事実の内 原則として休職を命ずるのである。 (二) 起訴休職を発令する法律上の要件は、当該公務員が「刑事事件に関し起訴された」ことだけである。もつとも法七九条は「休職することができる。」と定め、公訴事実の内容、罪名、罰条、起訴に至る経緯等の如何によつては、直ちに休職処分に付することが必らずしも妥当でないこともあるので、刑事事件に関して起訴された職員に休職を発令するか否かを任命権者の裁量に委ねている。しかし、その要件について法は何も定めていない趣旨からみればその裁量権行使は任命権者の広範な自由裁量に委ねられていると解される。 (三) このようにして、任命権者は起訴休職処分を行うか否かの判断を専ら前述の起訴休職制度の趣旨目的にてらして裁量によつて行うのであつて、公訴事実の存否を調査する義務がないのは勿論、その休職処分により当該公務員が蒙る不利益(給与の減縮、昇給の延伸等)も、その裁量に際して考慮することを義務づけられてはいない。 即ち、休職処分をうけた公務員のうける給与等につき考えてみると、法八〇条四項は「休職者は、その休職の期間中、給与準則で別段の定をしない限り、何等の給与を受けてはならない。」として、職務に従事しない以上むしろ給与を受けないことを原則とする(ノーワーク・ノーペイ)。また昇給は、定期昇給であつても「一定給与期間を良好な成績で勤務」することを要件とし、職員に従事しない休職者が昇給を延伸されることは休職の当然の効果である。 この点を更に事実関係に則して述べると、一審原告らは、公共企業体等労働関係法(公労法)の適用をうける郵便事業に属する職員で(公労法二条一項二号イ)、国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法(企業職員給与特例法)の適用をうけるが、同法四条に定める給与準則たる郵政事業職員給与準備(乙第五号証の二)五条による (公労法二条一項二号イ)、国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法(企業職員給与特例法)の適用をうけるが、同法四条に定める給与準則たる郵政事業職員給与準備(乙第五号証の二)五条による特別の定めにあたる「休職者の給与について」(昭和三五年一二月二七日依命通達……郵給四九八号)及びその一部改正通達たる「休職者の給与について」(昭和四〇年一二月二七日依命通達……郵人給四一二号の二)によると、起訴休職の場合は、「……その休職期間中所定給与種目のそれぞれの一〇〇分の六〇以内を支給すること。」と定められている。これは、一般職の職員の給与に関する法律二三条四項と同旨である。そうしてその運用方針を定める「一般職の職員の給与に関する法律の運用方針」(昭和二六年一月一日、給甲第二八号)(乙第四五号証)第二三条関係四項は「……休職者の給与は、休職者の生活を保障する意味において予算の許す限り各庁の長が所定の割合以内で、その裁量によりその支給額を定めるものとする。」と定めているので、企業職員給与特例法三条二項の「職員の給与は、一般職の職員の給与に関する法律……の適用を受ける国家公務員及び民間事業の従業員の給与その他の事情を考慮して定めなければならない。」とする趣旨にてらしても、一審原告らに対する休職中の給与の支給は、本来ゼロであるべきところ、生活保障の見地から恩恵的措置として、「一〇〇分の六〇以内」の範囲内で、支給されて来たのである(郵政省と全逓信労働組合、全国特定局労働組合、全国郵政労働組合間の「休職者の給与に関する協定」四条も同旨である)。また定期昇給については、郵政省と右全逓等の間に締結している「昇給の欠格基準に関する協定(昭和三五年四月二三日締結)」一条で、休職による場合は、「定期昇給するため必要とされる『良好な成績で勤務したとき』の条件 給については、郵政省と右全逓等の間に締結している「昇給の欠格基準に関する協定(昭和三五年四月二三日締結)」一条で、休職による場合は、「定期昇給するため必要とされる『良好な成績で勤務したとき』の条件を欠くものとして、」「休職期間を三月で除して得た数に相当する号俸数(三月の倍数に満たない部分の期間については一号俸とする。)」を減号俸のうえ昇給することとされている。これまた休職者は勤務しないのであるから極めて当然のことといえる。昇格上の不利益も同様である。 以上の如く、休職に伴う当該職員の不利益は、休職に伴う当然の現象であるから、当該職員を起訴休職するか否かを定めるにあたり右の不利益も考慮すべき要素とするということは起訴休職制度の趣旨を逸脱するものである。なお、休職者は、休職期間中職務専念義務を免除されるから、所轄庁の長等の許可をうければ、公務員としての身分地位にふさわしい範囲内で、兼業を行うことができるのである。 (四) 本件で福岡中央郵便局長が一審原告らを休職とした処分に違法はなかつた。 (1) 前述の如く、起訴されたときは、休職を発令するのが原則である。 (2) 任命権者は、前述の如くその裁量により休職を発令しないこともできるが、その判断は前述の起訴休職制度の趣旨、目的と当該職員の地位、担当職務内容、公訴事実の内容等を勘案してこれを行うべく、従つて平素から庁内の事情に通暁し、その指揮監督にあたつている者(任命権者)の裁量にゆだねなければ適切な結果を期待できないのである。もとよりその裁量は恣意にわたることを得ないが、任命権者がその裁量権を行使した上で発令した休職処分は、それが社会通念にてらして著しく妥当を欠き、これを濫用したと認められない限り(行政事件訴訟法三〇条参照)、違法とはならない。 (3) 本件起訴にかかる刑事事件の内容は、一審原 上で発令した休職処分は、それが社会通念にてらして著しく妥当を欠き、これを濫用したと認められない限り(行政事件訴訟法三〇条参照)、違法とはならない。 (3) 本件起訴にかかる刑事事件の内容は、一審原告らの職場内で、多数の職員が職務に従事中、その面前で発生した職場内暴力事犯で管理者に傷害まで負わせたというもので、罪名は公務執行妨害、傷害であり、前者の法定刑は懲役又は禁錮(三年以下)のみであり、有罪が確定すれば当然に公務員欠格事由に該当する(法七六条)情の重い事案であつた。 しかして職場内における管理者に対する暴力事犯という公訴事実の内容からして、一審原告らをそのまま職務に従事させることは職場の秩序保持、規律維持に支障があつた。 (4) 一審原告らの職務内容は、民事訴訟法、郵便法、郵便取扱規則等の諸規定にもとづく精神的労務に属する事務を含み(最高裁第三小法廷昭和三五年三月一日判決刑集一四巻三号三〇九頁)、単純な機械的作業のみではなかつた。 (5) 刑事事件係属期間の予測は、任命権者ではできないし、また一般的には起訴休職とすべき必要性の高い(即ち情の重い)事件ほど係属期間が長いとも考えられる。従つて起訴休職期間(当該公務員がそれによつてうける不利益期間)が長期にわたると予想されるか否かは、当該休職の合理性を判断する要素にはならない。 (6) 本件任命権者(福岡中央郵便局長)は、郵政大臣官房人事局長昭和四〇年一二月二七日「職員の休職の取扱いについて(依命通達)」(郵人人第四八八号)の第二条関係3、4の趣旨に従い(乙第八号証参照)、事件の関係者から口頭あるいは書面による報告をうけ、検察庁に文書で照会して公訴事実の内容を把握した上、本件は、右通達による休職を行わないことができる場合(当該事案が軽微であつてその情が軽いか、あるいは本人が当該事案を否認す いは書面による報告をうけ、検察庁に文書で照会して公訴事実の内容を把握した上、本件は、右通達による休職を行わないことができる場合(当該事案が軽微であつてその情が軽いか、あるいは本人が当該事案を否認する等して裁判の結果をまつ要があり、かつ、いずれも本人を引き続き職務に従事させても支障がないと客観的に認められる場合)に該当しないものとして休職を発令した。 (7) 一審原告らの刑事事件は、一審無罪で検察官が控訴したが控訴棄却によつて無罪判決が確定した。しかし、起訴休職は、公訴事実が真実であることを要件とせず、起訴された事件が無罪となつたからといつて違法となるものではない。また、右の判決理由によつても、一審原告らの行為の外形的事実は認められており、暴行に関する故意や共謀の存在について証拠がないという理由の無罪にすぎず、任命権者としては、そのようなことを知るわけはなかつたし、また知り得る立場にもなかつた。 (五) 本件で福岡中央郵便局長が一審無罪判決の後休職を解除しなかつた点についても違法はなかつた。 (1) 起訴休職は当該刑事事件が係属中は継続するのが法の定める原則である(法八〇条二項)。 (2) 一審原告らは右刑事事件の第一審で無罪判決をうけたが、その理由は前述の通りであつて検察官控訴があつた。そうして、我国における一審の無罪判決に対する検察官の控訴率は三割ないし四割程度であるがその控訴事件の有罪率は八割を超えるもので(昭和五一ないし五四年検察統計年報による)、逆転有罪の可能性が十分にあつた。本件の無罪理由が前述の如き故意・共謀の立証不十分ということを考えればなおさらである。 (3) 右の事情にてらすときは、前記の起訴休職発令時の事情が一審無罪判決により変更されたとは考えることができなかつた。なお刑事訴訟法三九〇条によれば、控訴審で刑事被告人は 考えればなおさらである。 (3) 右の事情にてらすときは、前記の起訴休職発令時の事情が一審無罪判決により変更されたとは考えることができなかつた。なお刑事訴訟法三九〇条によれば、控訴審で刑事被告人は公判期日に出頭することを要しないが、本件は裁判所が出頭命令を出し得る事業であるし(同条但書)、一審原告らは常に出頭していたのであり、訴訟準備の必要性も一審とかわらなかつた筈で、職務専念義務を遵守させることについての障害も一審当時と同様に存在した。 (4) もともと行政処分後あらたな公益上の必要を生じた場合、行政庁は当該処分を撤回する権限を有するが、その権限を行使するか否かは行政庁の裁量に委ねられ、私人が行政庁に撤回請求権を持つことはない。 また行政処分の適法性判断の基準時は処分時とするのが確定した判例であるから、処分後の事情変更は抗告訴訟による取消しの理由とはならない。 そうして本件休職処分も行政処分であるから、その撤回は当該任命権者の裁量によるのであるが、任命権者が撤回義務を負うことはない。 (5) 一審の無罪判決によつても任命権者が裁量権を行使せず、起訴休職処分を継続することが過失というためには当該任命権者がその継続が裁量権の範囲をこえ又はその濫用にわたつて違法となること(行政事件訴訟法三〇条参照)を知つていたか、あるいは知り得た場合でなくてはならない。しかるに一審無罪判決によつて起訴休職処分の撤回を命ずる旨の法の規定も、確定した判例も、法解釈上の通説もなく、本件では右休職処分の継続が社会通念にてらして明らかに不合理とすべき事情もなかつたのであるから、本件任命権者に過失があつたとはとうてい言えない。 なお、各行政庁の実務もそのような運用は行われていない。 (六) 本件では検察官の起訴、控訴、訴訟追行に違法はなかつた。 本件では一審被告c、同dに ら、本件任命権者に過失があつたとはとうてい言えない。 なお、各行政庁の実務もそのような運用は行われていない。 (六) 本件では検察官の起訴、控訴、訴訟追行に違法はなかつた。 本件では一審被告c、同dに一審原告ら主張の如き違法な行為はなかつた。 (七) 一審原告らは本件と起訴休職処分が発令されていない他の事案を比較して本件処分が均衡を失し、平等原則に反していると主張するが、同一事案に対して多数の職員が起訴されたのに特段の合理的な理由もないのに特定の一部の者にのみ休職が発令されたような場合は別として、別事件との比較は合理性がない。また福岡県内においてこの種事案で休職処分が発令されたのは一審原告らだけではない。 2 一審被告国の当審における民事訴訟法第一九八条二項の申立(一) 一審原告らは、原判決の仮執行宣言に基づき、昭和五五年一二月一八日、一審被告国に対し強制執行をして、次のとおり現金を差押え支払いをうけた。 一審原告a(合計二五七万〇、一五八円)(イ) 損害賠償債権元本一九九万三、九八二円(ロ) 右に対する昭和五一年四月九日から昭和五五年一二月一七日まで年五分の割合による遅延損金害四六万八、一七六円(ハ) 執行費用八、〇〇〇円一審原告b(合計二二八万七、一三四円)(イ) 損害賠償債権元本一八四万四、三二八円(ロ) 右に対する昭和五一年四月二日から昭和五五年一二月一七日まで年五分の割合による遅延損害金四三万四、八〇六円(ハ) 執行費用八、〇〇〇円(二) しかし、原判決は取消されるべきであるから、一審被告国は民事訴訟法一九八条二項による原状回復及び損害賠償請求として、一審原告aに対し右金二五七万〇、一五八円及びこれに対する右執行の後である昭和五五年一二月一九日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金、一審原告bに対し右金二二 害賠償請求として、一審原告aに対し右金二五七万〇、一五八円及びこれに対する右執行の後である昭和五五年一二月一九日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金、一審原告bに対し右金二二八万七、一三四円及びこれに対する右執行の後である昭和五五年一二月一九日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の各支払いとこれについての仮執行宣言を求める。 3 一審原告ら(一) 検察官による本件起訴、控訴、公判維持の違法本件は、郵政部内における労使対立の場で発生したトラブルである。検察官が一審原告らを起訴する決定的な根拠となつた証拠は、一審被告c、同dの公訴事実と同旨の供述であつたことは明らかであるが、この各供述が信用できずかつ真実に反するものであつたことも、本件刑事事件の一審控訴審の各判決が説示するところで明らかである。そうしてこのことは、本件刑事事件の記録全体を検討しても十分に首肯できるもので、検察官が一審被告c、同dその他参考人の本件発生直後における各警察官に対する供述調書(乙第一五、第一六号証、同第二八号証等)を検討すれば明白であつた筈である。 従つて、検察官が、警察での捜査記録を検討し、公正な立場で起訴不起訴を決定すべく真相の究明のため取調べにあたつたのであれば、本件のような起訴はあり得なかつた筈であつた。しかるに検察官は、昭和四四年一二月一三日一審被告c、同dほかe、f、g、hら六名の当局側管理者を全員同席させた上、一審原告a、同bらの事件当日の動きとか格好、管理者らの位置関係等を再演させ、かつ供述調書を作成した。これは、本件に関する限り、警察段階の捜査で相互に顕著なくいちがいがあり一審原告bが誤つて一審被告cに衝突したのではないかと疑わせるものもあつた管理者らの供述の矛盾をとりつくろわせ、検察官が組合運動弾 れは、本件に関する限り、警察段階の捜査で相互に顕著なくいちがいがあり一審原告bが誤つて一審被告cに衝突したのではないかと疑わせるものもあつた管理者らの供述の矛盾をとりつくろわせ、検察官が組合運動弾圧の意図のもとにひたすら起訴に持ち込むべく一定の筋書にそつて管理者らの供述を誘導したものといわざるを得ない。そうしてこの取調べの後、一審原告c、同dほかその他の管理者らは、一斉に重要な点で供述を変更し、「一審原告bが一審原告aと前後に並んで前傾姿勢をとつて一審被告cの腹部付近に正面から頭突きを加えた」とする公訴事実同旨の供述をするに至つたのである。 よつて本件起訴は、公訴権を濫用してなされたものである。 また一審判決に対する検察官の控訴も、合理的根拠がなく、検察官が訴訟を追行するにあたつて認められる合理的な裁量範囲を逸脱し権限を濫用してなされたものであつた。検察官が本件控訴審に期待したものは、真実の発見ではなく、一審原告bが一審被告cに頭突きを加えたことを否定する内容のh証人の供述を、一審被告c、同dらの供述に合致するよう変更させ、一審原告b、同aが一審被告dをも強く押していたとの筋書に符合するよう管理者らの供述を変更させることにあつた。 その結果控訴審においては一審被告d、同c及びf、hらの符節をあわせたような証言変更があつたが、その証言変更がそれまでの供述と無関係に、不自然に作為的になされたため、控訴審裁判所の採用するところとならなかつたのである。以上の如く控訴にも検察官の控訴権濫用の違法があつた。 (二) 一審被告c、同dの不法行為原判決請求原因6に記載のほか、右一審被告らは、郵政当局の事実調査に対し虚偽の事実報告をして本件起訴休職処分を発令する重要な資料を提供した。 そうして、右一審被告らは捜査当局及び郵政当局に対し一審原告らの行為 原因6に記載のほか、右一審被告らは、郵政当局の事実調査に対し虚偽の事実報告をして本件起訴休職処分を発令する重要な資料を提供した。 そうして、右一審被告らは捜査当局及び郵政当局に対し一審原告らの行為に関する虚偽の申告、供述、報告をなした際、これらの申告等により一審原告らにつき公訴が提起され、あるいは懲戒処分又は休職処分等の不利益処分がなされることを十分予見していたもので、右一審被告らの行為は本件一審原告らの損害と相当因果関係がある。更に右一審被告らの虚偽の申告、供述、報告により、一審原告らは職場の内外で名誉を毀損され、精神的苦痛を蒙つた。本件損害には、その精神的損害も含めて主張する。 (三) 一審原告らに対する起訴休職の違法(1) 行政処分の裁量限界の基準としては(A)事実誤認、(B)目的違反、動機の不正、(C)平等原則違反、(D)比例原則違反等が論じられていて、単に「社会観念上著しく妥当を欠いた」というような包括的抽象的概念をもつて基準とすることは許されない。 (イ) 起訴休職が適法となるには、当該公務員が起訴されたという事実のほか、起訴された状態での勤務を認めるときは職務に対する信用の失墜を招くとか、職場秩序が維持できないとか、当該公務員について職務専念義務の遵守に支障を生ずるとかの要件を必要とする。 一審原告らは、身柄不拘束のまま審理をうけていて、公判期日はせいぜい月一回位と予測され、公判期日の出頭や公判のための準備は、年次有給休暇で処理できる見通しであつた。一審原告らが公判中勾留されるようなことは全く予想されなかつたのであつて、起訴後そのまま勤務しても職務専念義務の遵守に支障はなかつた。 また、一審原告らの職務内容は機械的労働を主体とし、「被害者」と目されている一審被告c、同dらとは職場を異にし、日常業務で顔をあわせることもなか そのまま勤務しても職務専念義務の遵守に支障はなかつた。 また、一審原告らの職務内容は機械的労働を主体とし、「被害者」と目されている一審被告c、同dらとは職場を異にし、日常業務で顔をあわせることもなかつた。 以上の事情を考慮すれば、本件は、他の要件にも該当しないというべきである。よつて、本件起訴休職処分は、右の要件が存在しないのにあると誤認して発令されたことになる。 (ロ) 本件休職処分は、前記平等原則にも違反する。即ち、飯塚局事件、博多局事件、甘木局事件、福岡西局事件、小倉西局事件などこれまで福岡県下で発生した労使紛争にからむ刑事事件(公務執行妨害を含む)で、起訴された郵政職員が休職処分をうけた例はなく、本件についてのみ休職が発令された理由が明らかにされていない。 (2) 休職処分の効果として当該公務員が受ける不利益(給与減額、昇給、昇格の不利益等)並びにその予想される休職期間の長短も起訴休職をなすか否かの裁量において考慮されるべき要素である。仮りにこれら不利益が起訴休職に当然内在するものとしても、その故に裁量に際して考慮すべき判断要素にしてはならないということはない(このことは懲戒免職の場合を考えれば明らかである)。そうして本件の起訴休職ではこの点の考慮が払われていない。 本人が事実を否定している等の理由から長期にわたる審理が予想され、しかもその有罪無罪を明確に予測し難いときは、処分により当該公務員が蒙る不利益の長期性、重大性を考慮し起訴休職処分は「相当性」を欠くといわなければならない。 (3) 公務員が起訴されたとしても、それが不当な起訴で、公訴事実が真実に反するものであつたとすれば、起訴休職とすべきでないことは明らかである。従つて原判決請求原因7の(一)に記載の通達は、無実の者への処分を避けるため、あらかじめ事案の内容を検察庁および 訴事実が真実に反するものであつたとすれば、起訴休職とすべきでないことは明らかである。従つて原判決請求原因7の(一)に記載の通達は、無実の者への処分を避けるため、あらかじめ事案の内容を検察庁および本人はもちろん関係方面について調査すべきことを任命権者に義務づけている。また同通達は「当該事業が軽微であつて、その情が軽いかあるいは本人が当該事案を否認する等して裁判の結果を待つ必要があり、かついずれも本人を引き続き職場に従事せしめても支障がないと客観的に認められる場合」は起訴休職を行わないことができるとも定めている。 本件はその公訴事実によればまず職場秩序の紊乱で、懲戒処分の対象ともなり、郵政当局は職場秩序の回復維持の観点からみてもこれを調査する責務と権限があつた。そうして本件は、事件の外形からみても一審原告らの故意による暴行傷害の事実は明らかでなく、偶発事故の可能性も十分にあつたし、一審被告c、同dの供述は一貫性を欠き、他の関係者の供述も重大な点で右一審被告らの供述と異つていたから、任命権者が十分に調査をして事案を検討すれば、一審原告らにつき暴行、傷害の故意が認められるとはいえない事案であつた。すくなくとも任命権者は右故意の存在には重大な疑問を抱いた筈であつた。 従つて、それにもかかわらず福岡中央郵便局長が本件起訴休職を行つたのは、公訴事実が真実でないことを知りつつ処分したか、すくなくとも公訴事実に重大な疑問を抱きつつ処分を行つたか、もしくは為すべき調査を十分に行わなかつたため事実を誤認して処分を行つたかのいずれかである。ちなみに、本件では一審原告らが公訴事実を否認し、当然審理の長期化が予想されたのに検察官に対する一審原告らの認否状況や審理期間の見通しの照会もせず、直接一審原告らに事実関係の聴取もしないまま休職を発令した。 いずれの場 告らが公訴事実を否認し、当然審理の長期化が予想されたのに検察官に対する一審原告らの認否状況や審理期間の見通しの照会もせず、直接一審原告らに事実関係の聴取もしないまま休職を発令した。 いずれの場合においても本件休職処分は、任命権者が裁量権を逸脱濫用してなしたものであることが明らかである。 (4) 仮りに福岡中央郵便局長が事実を誤認して本件休職処分を行つたとしてもそれは熊本郵政局所属の一審被告c、同dらが、福岡中央郵便局兼務を命ぜられ、同局で労務対策にあたつていた間のトラブルで、右一審被告らが虚偽の報告をした結果の誤認であるから、右両名が故意に真実をかくしたことの責任は同局長が負うべきものである。 (5) また、本件の如く任命権者が当該公訴事実の真実性を調査すべき義務を負い調査をすることによりその真実でないことが容易に知り得たであろう場合に、調査をつくさず起訴休職を発令した場合は、後日刑事事件で公訴事実につき無罪が確定すれば、起訴休職も当初から違法であつたことになるというべきである。 (四) 一審無罪後も起訴休職を撤回しなかつたことの違法(1) 起訴休職が一旦なされた以上、事情の変更により撤回するか否かは任命権者の自由裁量に属するということはない。起訴休職処分を適法ならしめる前記(三)の(1)の(イ)の要件が消滅するならば、その処分はその時以後失効ないし違法となり、任命権者はすくなくとも処分を撤回すべき義務を負うにいたる(継続的行政行為)。 (2) 当初から本件起訴休職を適法ならしめる要件が具備していなかつたことは前述のとおりであるが、一審無罪により、休職を継続すべき理由はいよいよ薄弱となつたのである。従つて、おそくとも一審判決後は本件休職処分を撤回しないことの違法性は明らかとなつたといわなければならない。一審被告らは検察官控訴事件の有 より、休職を継続すべき理由はいよいよ薄弱となつたのである。従つて、おそくとも一審判決後は本件休職処分を撤回しないことの違法性は明らかとなつたといわなければならない。一審被告らは検察官控訴事件の有罪率の高さをいうが、国民一般の理解としては、第一審が無罪なら公訴事実はなかつたと考えるのが普通である。従つて一般国民の信頼が回復し起訴休職を継続すべき必要性は失われたこととなる。なお、一審被告らは、訴因の外形は認められたというが、無罪判決の理由如何で休職を継続させる必要性が左右されるとはとうてい考え難い。 (五) 前記2の(一)(一審原告らの一審被告国に対する強制執行)の事実は認める。 理由 当裁判所は、以下述べるとおり、一審原告らの請求は失当としていずれも棄却せらるべく、一審原告が仮執行宣言付原判決によつて一審被告国から支払いをうけた金員は、一審被告国に返還せらるべきものと判断する。 一一審被告国の関係で原判決請求原因事実1ないし4は当事者間に争いがなく、一審被告c、同dの関係では、原判決請求原因1の事実、同2の事実中一審原告らがその主張の如く福岡地方裁判所に公判請求された事実、同3の事実中一審原告らが右起訴を理由にその主張の如く休職処分をうけた事実、同4の事実中一審原告らが一審無罪の判決をうけ、二審の控訴棄却の判決が確定して復職したことも当事者間に争いがない。そうして、一審被告c、同dの関係で、成立に争いなき甲第五、第一五、第二三号証、同第八七号証の一、二、乙第三七、第三八、第四〇、第四三号証、原本の存在及び成立につき当事者間に争いなき乙第七七ないし第八〇号証に原審証人iの供述と弁論の全趣旨をあわせると、原判決請求原因2ないし4のうちその余の諸事実も認めることができ、この認定を左右するに足る証拠はない。 二前掲甲第五 に争いなき乙第七七ないし第八〇号証に原審証人iの供述と弁論の全趣旨をあわせると、原判決請求原因2ないし4のうちその余の諸事実も認めることができ、この認定を左右するに足る証拠はない。 二前掲甲第五号証、同第八七号証の一、二、乙第七七ないし第八〇号証、成立に争いなき甲第二五号証の三、四、同第三四号証の三、同第三六号証の三、同第四三号証の三、四、同第四七号証の三、同第四九号証の三、同第五一号証の三、同第五二号証の三、同第五四号証の三、四、同第五六号証の三、四、同第六〇号証の三、同第六一号証の三、四、同第六四号証の五、同第八二号証の三、四、同第九九号証の三ないし七、同第一〇三、第一〇四号証、乙第一一ないし第三六号証に前項記載の事実と弁論の全趣旨をあわせると、本件刑事事件の経過につき原判決二〇枚目表九行目から二二枚目表五行目までに説示されているところと同一の事実を認定することができるので、これを引用する。この認定を左右するに足る証拠はない。 三一審原告らに対する検察官の本件公訴提起と訴訟追行が適法と認められることについては、次のとおり付加訂正するほか、原判決二二枚目表七行目から二六枚目裏一一行目までに説示されているところと同一の判断をするのでこれを引用する。 1 原判決二三枚目表一行目の「冒頭陳述書)」の次に「成立に争いなき」と挿入する。 2 原判決二三枚目裏一〇、一一行目の「被告人」を「右b」と訂正する。 3 原判決二四枚目裏三行目の「j(乙第一四号証)」とあるのを「j(乙第一三号証)」と訂正し、同一〇行目冒頭の「供述調書」の次に「(以上乙号各証につき成立に争いがないことは前述のとおり)」と挿入し、同一三行目の末尾に「但し、右冒頭陳述書記載事実中、一審原告a(第一集配課員で当時第一集配課室内で勤務中)が室外に出て来て、普通郵便課員で当時停職処分 成立に争いがないことは前述のとおり)」と挿入し、同一三行目の末尾に「但し、右冒頭陳述書記載事実中、一審原告a(第一集配課員で当時第一集配課室内で勤務中)が室外に出て来て、普通郵便課員で当時停職処分をうけ執務中の右室内に立入りを禁止されていたにもかかわらず第一集配課西出入口から入室しようとして管理職らに阻止されていた一審原告bを呼び、便所入口のところでその内容は別として言葉をかわした事実は、一審原告bの供述でも認めているところであり(乙第三三号証)、この点については一審原告aも右乙第三二号証で、便所に行く時、一審原告bに耳打ちしたのではないかとの問に対し、話の内容は別として耳打ちをした行為は認める趣旨の供述をしていることが認められる。」と付加する。 4 原判決二五枚目表一行目の「これに対し、」を「そうして、」と改め、同九行目の「それぞれ」から同一三行目までを「それぞれ相当詳細な記載がある。」と改める。 5 原判決二五枚目裏一三行目の「原告」を「一審原告b」と訂正し、同二六枚目表一三行目の「旨の記載がある。」を「旨の記載があることは前述のとおりである。」と改める。 6 原判決二六枚目裏一一行目の次に「一審原告らは、検察官が手持ちの証拠資料を公正に検討すれば、一審被告c、同dらの供述が信用できず、虚偽であることは明らかであつた筈だと主張するが、前述の冒頭陳述書の「頭突き」は別として(公訴事実は「突きあたつて」と表現している)、前記認定の事実によつても管理職らがピケラインを張つて停職処分中の一審原告bの入室を阻止している事実を知りながら、一審原告らがこれをすり抜けようとした事実は認められるのであつて、更に右認定事実によると、仮りに一審原告らが管理職ら(スクラムを組んでいたわけではない)の間隙を縫つて入室する意図であつたとしても管理職らの身体に触 れをすり抜けようとした事実は認められるのであつて、更に右認定事実によると、仮りに一審原告らが管理職ら(スクラムを組んでいたわけではない)の間隙を縫つて入室する意図であつたとしても管理職らの身体に触れずに入室できる可能性が大であつたとは考えられず、そのことは一審原告らも知つていたと推認される。これらの事情に前記一審原告らの供述調書記載部分をあわせると、右一審被告c、同dらの供述が明らかに信用性を欠く虚偽のものと決めつけることはできない。なお、この点に関する前掲乙第七七、第七九号証(刑事一審判決)も、一審被告c、同dの証言又は供述調書は、h(当時現場で警戒線を構成していた管理職の一人)の証言と対比して信用しないと説示しているにとどまるのである。よつて、この点に関する一審原告らの主張は採用できないし、検察官が組合運動弾圧等特定の意図をもつて一審被告c、同dほか関係人らの供述を誘導したという主張も採用できない。」と付加する。 四検察官の本件控訴が適法と判断できることについては、次のとおり付加訂正するほか原判決二六枚目裏一三行目から三〇枚目裏一行目までに説示されているところと同一の判断をするのでこれを引用する。 1 原判決二八枚目裏一二行目の「ものである。」を「ものである(以上の甲、乙号各証の成立は前述のとおり当事者間に争いがない)。」と改め、同二九枚目表三行目の「甲第八二号証」を「前掲甲第八二号証の三」と改める。 2 原判決二九枚目裏一〇行目の「においては、」の次に「前掲」と挿入する。 五本件起訴休職について 1 本件刑事事件による起訴を理由に、一審原告らに対して請求原因3のとおりの起訴休職と給与等の減額(六〇%支給)がなされたことは前述のとおりである。 2 そうして、本件起訴休職が適法であつた(一審無罪判決後の問題は後述)ことについて当裁判所 告らに対して請求原因3のとおりの起訴休職と給与等の減額(六〇%支給)がなされたことは前述のとおりである。 2 そうして、本件起訴休職が適法であつた(一審無罪判決後の問題は後述)ことについて当裁判所も次のとおり付加訂正するほか、原判決理由中三〇枚目裏一三行目から三七枚目表三行目までに説示されているところと同一の判断をするので、これを引用する。 (一) 原判決三一枚目表七行目の「証人kの供述によれば」とあるのを「成立に争いなき乙第三号証の一、二、同第八号証、同第九号証の一、二、同第一〇号証の一、二、同第六七号証、原審証人k、同l、当審証人mの各供述をあわせると、」と改める。 (二) 原判決三三枚目裏九行目の「休職者の給与に関する協定」とあるのを「休職者の給与に関する協定(乙第九、第一〇号証の各一、二参照)」と、同一〇行目の「それぞれ一〇〇分の六〇」とあるのを「それぞれ一〇〇分の六〇以内」と改め、原判決三四枚目表四行目冒頭の「ない。」を「ない(もつとも休職者は職務専念義務を免除されるから所定の手続を経て兼職も可能であろうがそれは一つの法律上の可能性に止る)。」と改める。 (三) 原判決三四枚目裏四行目の「という」の次に「主として」と挿入し、同三五枚目表一行目の「によつて」から三行目までを「によつて処理することが可能であつたことがいずれも認められる。」と改め、同一一行目と一二行目を削除し、同裏六行目の「本件刑事事件は、」の次に「前掲」と挿入し、同一三行目の「上司」を「管理職ら」と改め、原判決三六枚目裏一二行目冒頭の「しても、」の次に「福岡中央郵便局長が前記通達にいう休職を行わない場合に該当しないとしてなした」と挿入し、同三七枚目表一行目の次に以下のとおり付加する。 「また一審原告らは、本件休職処分は任命権者(福岡中央郵便局長)が、公訴事実の真実 前記通達にいう休職を行わない場合に該当しないとしてなした」と挿入し、同三七枚目表一行目の次に以下のとおり付加する。 「また一審原告らは、本件休職処分は任命権者(福岡中央郵便局長)が、公訴事実の真実でないことを知りつつ発令したか又はその真実性に重大な疑問を抱きつつ発令したこと、仮りにそうでなかつたとすれば、任命権者は本件公訴事実についてこれを調査すべき職責と権限があるのに十分な調査を行わず検察官に対して一審原告らの認否状況や公判審理期間の見通しについての照会もせず、直接一審原告らに対する事情聴取も行わないで休職の発令をしたこと、本件休職処分には同種事案と対比して平等原則の違反があること、仮りに任命権者が公訴事実を真実と誤解していたとしても、それは任命権者の指揮監督下にある一審被告c、同dらが一審原告らの行為に関し虚偽の報告をしたためであつて(不法行為)、任命権者も右一審被告らの行為については責を負うべきことなどによる任命権者の裁量権の逸脱濫用を主張する。 そうして、本件当時一審被告cは郵政監察官として、同dは熊本郵政局人事部管理課員として、夫々福岡中央郵便局に派遣されていたことは当事者間に争いがない。 しかして原審証人l、当審証人m、原審及び当審一審被告c、同d各本人の供述に弁論の全趣旨をあわせると、一審被告cは、福岡中央郵便局に派遣され同局の業務運行状況の調査並びに非違等の調査、処理の職務を行つていた郵政監察官(九州郵政監察局福岡支局所属)であり、一審被告dは、福岡中央郵便局兼務を命ぜられていたこと、一審原告らが起訴された後、福岡中央郵便局長は検察庁に文書で一審原告らの起訴年月日と公訴事実を照会し、他方一審被告c、同dほか現場に居合わせた管理職らから現認書形式の報告書を提出させ、前記認定の如き当時の労使関係や本件が「職場内犯行」で 長は検察庁に文書で一審原告らの起訴年月日と公訴事実を照会し、他方一審被告c、同dほか現場に居合わせた管理職らから現認書形式の報告書を提出させ、前記認定の如き当時の労使関係や本件が「職場内犯行」であつて事案の内容は明白と判断したことなどから一審原告らの弁明は聴取せず、本件起訴休職を発令したことが認められる。しかして一審被告c、同dをはじめ関係管理職らは、夫々本件公訴事実の内容に同旨の報告をしたであろうことは、以上認定の諸事実関係から推認できる。してみると、福岡中央郵便局長が一審原告らに対する本件休職処分を発令するにあたり、公訴事実に相応する行為が存在しないことを知つて敢えて発令したとか、その真実性に重大な疑問を抱きつつ発令したとかいうような事実は認められない。また、任命権者のなす調査としては一審原告ら本人に対する事情聴取をしなかつた点が前記通達の趣旨に反する点を除けば、一応為すべき処置は尽したということができる。また、前述の如き本件の事件内容にてらして、一審被告c、同dが、一審原告らの行為につきことさら虚偽の報告をしたと認めることもできない。また、原審証人nの供述に弁論の全趣旨をあわせると、他に一審原告ら主張の如く起訴されながら休職処分をうけていない郵政職員の事例も多くあると認められるが前述の如く、本件においては休職処分をなすについて十分な合理性、必要性があるというべきであるから、平等原則違反による違法の主張も採用できない。また、以上のいきさつからみて任命権者が公訴事実に相応する犯行の存在を疑わなかつたことをもつて直ちに過失があるとはいえず、一審原告らに対する直接の事情聴取をしなかつたことをもつて本件休職処分が直ちに違法となるともいえない。 本来起訴休職処分の効力は、当該刑事事件の有罪、無罪に左右されないのであるから、本件の場合後日 一審原告らに対する直接の事情聴取をしなかつたことをもつて本件休職処分が直ちに違法となるともいえない。 本来起訴休職処分の効力は、当該刑事事件の有罪、無罪に左右されないのであるから、本件の場合後日の無罪確定をもつて本件起訴休職処分が遡つて違法になるという主張(本判決事実3の(三)の(5))も採用できない。」六一審無罪判決後における起訴休職の継続(不撤回)について 1 原判決請求原因事実4に記載の如く本件刑事事件について無罪の一審判決があつたが検察官が控訴したこと、これに伴い福岡中央郵便局長は、休職処分を撤回しなかつたばかりか、一審原告らに対する給与等を三〇%に減額支給することとし、この処置は控訴棄却の二審判決が確定するまで続いたことは前述のとおりである。 2 そうして、前掲乙第八号証、原審証人k、同i、当審証人oの供述によれば、これは(イ)前記通達の六条二項(1)の但書によれば「ただし、本人が控訴しまたは控訴された場合は、移審の効果を生じた日以後判決……中略……確定の日まで所定給与種目のそれぞれ一〇〇分の三〇を支給する。」旨の定めを根拠としたものであること、(ロ)任命権者がこの段階で一審原告らに対する休職を撤回しない実質的理由としたのは、検察官控訴によつて公務の信頼はいまだ回復せず、ことに控訴審で有罪となつて確定すれば公務員の欠格事由に該当するような罪であることのほか、「職場内犯行」という公訴事実の特殊性から、一審判決当時はすでに三六協定は締結されるような状況にはなつていたものの職場内秩序の保持という点で起訴休職の理由は消滅していないと判断したことの理由によつたものと認めることができる。 そうして、法第八〇条二項に「前条第二号の規定による休職の期間は、その事件が裁判所に係属する間とする。」と定め、前記「休職の取扱いに関する協約」三条 ことの理由によつたものと認めることができる。 そうして、法第八〇条二項に「前条第二号の規定による休職の期間は、その事件が裁判所に係属する間とする。」と定め、前記「休職の取扱いに関する協約」三条三項も同旨の定めを置いていることに、前述の如き起訴された本件刑事事件の内容並びに前掲乙第七七、第七九号証によつて認められる一審原告らに対する一審無罪の理由(検察官控訴の適法性参照)並びに原本の存在及び成立とも当事者間に争いなき乙第八一ないし第八八号証と弁論の全趣旨により認められる昭和五一ないし昭和五四年の一審無罪事件の検察官控訴事件の有罪率(八割程度)なども考慮すれば、本件起訴休職の継続並びに給与減額に関する福岡中央郵便局長の措置が裁量権の範囲を逸脱して著しく社会通念に反する違法のものであつたと断定することはできず、以上の判断を左右するに足る証拠はない。 よつて、この点に関する一審原告らの主張も採用しない。 七一審被告c、同dの行為について前掲乙第一五、第一六、第一八、第二三、第二四、第二五、第三〇号証、原審及び当審における一審被告本人c、同dの各供述、当審証人mの各供述によれば、一審被告c、同dの申告、供述、報告等が検察官の本件公訴提起や休職処分の資料となつたことは疑いがなく、また右一審被告らは捜査機関に一審原告らの処罰を求める陳述をしていることも認められる。しかして前述の如き本件刑事事件の内容にてらすときは、右一審被告らが自らの記憶に反しことさら虚構の事実を述べてまで一審原告らの処罰や処分(懲戒又は休職)を求めたとまでは断定できず、この点は右第一審被告らが刑事事件の公判廷でなした証人尋問調書(成立に争いなき甲第四七号証の三、同第五二号証の三、四、同第五四号証の三、四、同第六一号証の三、四、同第九九号証の四ないし六、)と対照してもかわり 第一審被告らが刑事事件の公判廷でなした証人尋問調書(成立に争いなき甲第四七号証の三、同第五二号証の三、四、同第五四号証の三、四、同第六一号証の三、四、同第九九号証の四ないし六、)と対照してもかわりはない。他に右一審被告らに一審原告ら主張の如き違法行為があつたことを確認できる証拠はなく、この点に関する一審原告らの主張は採用できない。 八してみると、爾余の点は判断するまでもなく一審原告らの一審被告らに対する請求は失当として棄却せらるべきであるから一審被告国の関係で原判決中同被告敗訴部分を取消し一審原告らの請求を棄却すると共に一審原告らの控訴は理由がないから棄却を免れない。また一審被告c、同dの関係では同旨の原判決は相当で一審原告らの控訴は理由がないからいずれも棄却を免れない。 九しかして一審原告らは、仮執行宣言付原判決に基づき、一審被告国に対して強制執行を行い、夫々一審被告国主張の如くその主張の金額の支払いをうけたことは、当事者間に争いがない(但し一審原告aの執行合計額が二五七万〇、一五八円とあるのは合計のときの違算で二四七万〇、一五八円と認められる)。よつて、一審原告らは一審被告国に対し民事訴訟法第一九八条二項による原状回復及び損害賠償として一審被告国主張の金員を夫々支払う義務があるから、一審被告国の右申立は認容することができる。但し、一審原告aに対しては右二四七万〇、一五八円の限度で認容し、その余は却下する。 一〇 よつて、民事訴訟法第九五条、第九六条、第八九条、第一九六条を適用の上、主文のとおり判決する。 (裁判官西岡徳寿岡野重信松島茂敏)別紙原状回復等の申立て(省略) 茂敏 別紙原状回復等の申立て(省略)

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