令和1(ワ)31444 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年6月22日 東京地方裁判所
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判決文本文20,336 文字)

- 1 -令和5年6月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和元年(ワ)第31444号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和5年3月2日判決主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求別紙請求目録記載のとおり 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、法律上又は事実上の配偶者及び子と別居する原告らが、被告である国が「養育権」を保障する法制度を整備しないことが憲法13条又は14条1項に違反することが明白であり、正当な理由なく長期にわたって立法措置を怠 っていることが国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項の違法を構成し、これにより原告らが精神的苦痛を被ったと主張して、被告に対し、国賠法1条1項に基づく損害賠償として、別紙請求目録記載の各損害賠償金及びこれに対する不法行為の後の日である令和元年12月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下、 単に「民法」と記載する場合には、これを指す。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに括弧内に記載した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下、単に「前提事実」という。)(1) 原告A、同B、同C、同D、同E、同G及び同M並びに亡Hは、配偶者と 婚姻中に子を設けた後に離婚をし(同人らの子らの親権者はそれぞれ他方配 - 2 -偶者である。)、現在配偶者であった者及び子と別居している。(弁論の全趣旨)なお、亡Hは、本件訴訟の係属中である令和3年10月26日に死亡し、その相続人である原告I及び同Jが訴訟承継人となった。 偶者である。)、現在配偶者であった者及び子と別居している。(弁論の全趣旨)なお、亡Hは、本件訴訟の係属中である令和3年10月26日に死亡し、その相続人である原告I及び同Jが訴訟承継人となった。(当裁判所に顕著)(2) 原告Fは、事実婚の関係にあった者との間で子を設けた後に同関係を解消 し、現在事実上の配偶者であった者及び子と別居している。(弁論の全趣旨)(3) 原告K及び同Lは、配偶者との婚姻中に子を設け、現在も配偶者との法律婚の関係は継続しているものの、配偶者及び子と別居している。(弁論の全趣旨)(4) 民法は、法律婚の関係にある父母は、原則として共同して親権を行うもの とする(同法818条3項)一方、法律婚の関係にない父母(離婚後の父母及び一度も法律婚の関係にあったことのない父母)は、必ずその一方が単独で親権を行うものとしている(同法819条1項~5項。以下、同法818条3項と合わせて「本件各規定」という。)。 3 争点 (1) 被告が本件各規定につき改廃しないことが、立法不作為として国賠法1条1項所定の「違法」を構成するか(争点1)(2) 損害の発生及びその数額(争点2) 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(被告が本件各規定につき改廃しないことが、立法不作為として国 賠法1条1項所定の「違法」を構成するか)について(原告らの主張)ア憲法13条違反について(ア) 「養育権」が憲法13条に基づき保障されること子を養育する意思と能力を有する親が子を監護・養育する権利(以下 「養育権」ということがある。)は、憲法13条に基づく幸福追求権と - 3 -して憲法上保障され、不当な侵害を受けないことは当然のことである。 上記の理は、最高裁昭和43年(あ)第161 「養育権」ということがある。)は、憲法13条に基づく幸福追求権と - 3 -して憲法上保障され、不当な侵害を受けないことは当然のことである。 上記の理は、最高裁昭和43年(あ)第1614号同51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁において、親子の自然的関係に基づいて親が子の監護・養育を行うことが当然の前提とされていること、諸外国の法制度等を検討すれば、親の子の監護・養育は、国、民族、文 化等に左右されない普遍的な人権として保障されるべきであると解されること、児童の権利に関する条約(平成6年条約第2号)においても、子が父母から養育を受ける権利を基本的人権として保障していることなどからみても明らかである。 (イ) 現行の親権に関する規律が原告らの養育権を侵害すること 原告らは、それぞれの子に対して、養育権を有するところ、現行法上の親が子の監護・養育する権利としての親権は、前提事実(4)のとおり、法律婚の関係にある父母においては共同して行う一方、法律婚の関係にない父母(一度も法律婚の関係にあったことのない父母、離婚後の父母、事実婚の状態にある父母を含む。以下「非婚の父母」ということ がある。)はその一方が単独で親権を行うこととされている(この制度全体を「非婚時単独親権制」ということがある。)。非婚時単独親権制は、父母間に子の養育に関する意見の対立があったとしても、これを調整するための法的な仕組みを一切用意せず、父母間の事実上の力関係に解決を委ねるか、親権を共同で行わせないこととして養育に関する決定 権自体を一方の親に集中させるかによって解決を図ろうとするものである。以下の諸点を考慮すれば、非婚時単独親権制は、原告らの養育権を不当に侵害するものである。 a 親は子に対する養育権を有する 権自体を一方の親に集中させるかによって解決を図ろうとするものである。以下の諸点を考慮すれば、非婚時単独親権制は、原告らの養育権を不当に侵害するものである。 a 親は子に対する養育権を有するところ、本件各規定は、父母の婚姻中以外は、父母間の意見の調整の規定を置かずに、非親権者は親権を 行使することができないとしていることから、非親権者の養育権を不 - 4 -当に侵害する。 b 親は子に対する養育権を有するところ、15歳未満の者を養子とする縁組に関する規定を定めた民法797条1項、2項及び関連する最高裁判例によれば、養子となる者が15歳未満であるときには、親権者の代諾によって縁組をすることができる一方、監護者ではない非親 権者は縁組について同意をする権利を持たず、その意思によることなく親権者変更の申立てをする機会を失ってしまうのであり、監護者ではない非親権者の養育権を不当に侵害する。 c 親は子に対する養育権を有するところ、面会交流や子の監護者の指定に関する民法766条(類推適用も含む。)の規定は、非監護親・ 非親権者への配慮を欠くものであり、非親権者の養育権を不当に侵害する。 d このように、非婚時単独親権制として規律される現行の法制度は、裁判所が不適切な運用をする原因となる点においても、非親権者及び非監護親の養育権を侵害するものである。 (ウ) 上記(イ)の養育権侵害が憲法13条に違反することa 非婚時単独親権制の立法目的が正当ではないこと被告は、現行の非婚時単独親権制の目的を、子の利益の確保及び両性の本質的平等を図ることにあると主張する。 しかしながら、被告の主張する「子の利益の確保」とは、親権の行 使に関する合意が適時適切に得られないおそれを避けることにあると解されるが 保及び両性の本質的平等を図ることにあると主張する。 しかしながら、被告の主張する「子の利益の確保」とは、親権の行 使に関する合意が適時適切に得られないおそれを避けることにあると解されるが、このおそれが現実化して子が不利益を受けることがあるのは、父母の意見が一致しない場合における規律を用意しないことが原因であるにすぎない。また、上記(イ)において主張したとおり、非婚の父母においては、代諾による養子縁組のような子の身分にかかる 重大な決定がされる場合でも、親権者でも監護者でもないときは何ら - 5 -関与することができないなど、子の福祉よりも慎重熟慮を図らずに適時適切に親権を行うことを優先させているといえるから、このような立法目的は正当とはいえない。そして、諸外国の立法例をみれば、父母が適時適切に親権を行うことができるか否かは、親権が父母に共同して帰属するか否かの問題によるものではないことが分かる。したが って、非婚時単独親権制の目的として「子の利益の確保」を据えることは正当ではない。 また、現行法の非婚時単独親権制においては、本来的に養育権を有している親の一方が、親としての能力や資質を全く問題にされることなく子の養育に関する決定権者から除外されるものであり、「両性の 本質的平等」を達成するものではない。 b 立法目的との関係で非婚時単独親権制が合理性を欠くこと仮に、立法目的が子の利益の確保及び両性の本質的平等を図ることであるとしても、非婚時単独親権制は、目的達成のための合理性を欠く制度である。 すなわち、非婚時単独親権制の下においては、子の監護養育に関する父母の意見が一致せず離婚に至る場合もあり、離婚が成立するまでに相当の時間を要することを踏まえると、父母の間で適時に親権を行うことは すなわち、非婚時単独親権制の下においては、子の監護養育に関する父母の意見が一致せず離婚に至る場合もあり、離婚が成立するまでに相当の時間を要することを踏まえると、父母の間で適時に親権を行うことは期待できず、さらに、非婚時単独親権制の下においては、親権の帰属についての父母の対立を生み、増長させる効果があることは 論を待たないから、結果として、子は、成長するまでの過程のほとんどを、親権の帰属も決まらない父母の対立状態で過ごすことも少なくない。 また、非婚の父母においては、一律に、共同して親権を行えないこととされているが、これは、父母が法律婚の関係にないということか ら、父母の協力関係が存しないであろうという、生活等の実態を類型 - 6 -的に推測するとの立場に依拠するものであり、乱暴な議論であって合理性は見出せない。 さらに、戦前の民法(昭和22年法律第222号による改正前の明治31年法律第9号。以下「明治民法」という。)においては、父の親権に服するとされていたところ、憲法の改正に伴う民法の改正にお いて、家制度の打破と両性の本質的平等の達成が目指された。しかしながら、この改正において、父母間の意見調整の方法についての立法の必要性が認識されたにもかかわらず、かかる方法についての立法が現在においてもされていないことは、非婚時単独親権制の不合理性を基礎付けるものである。 イ憲法14条1項違反について(ア) 差別の存在について本件各規定は、法律婚の関係にある父母と非婚の父母との間に、次のような差別を生じさせている。すなわち、法律婚の関係にある父母は、原則として共同して親権を行うこととされており、その意に反して親権 を喪失又は停止される場合は、親権喪失又は停止の審判に限られる一方、非婚の父 させている。すなわち、法律婚の関係にある父母は、原則として共同して親権を行うこととされており、その意に反して親権 を喪失又は停止される場合は、親権喪失又は停止の審判に限られる一方、非婚の父母は、その一方だけが親権を行うこととされる。 そして、上記差別は、父母が法律婚の関係にあるか否かという「社会的身分」によって、親権の帰属につき区別を設けるものである。 (イ) 上記(ア)の差別が憲法14条1項に違反すること 前記ア(ウ)において述べた各要素に照らせば、上記(ア)の差別が事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものではないことは明らかである。 加えて、上記(ア)の不合理な差別によって侵害を受ける者は、取扱いにおいて区別を受ける片側の身分・地位にある者にとどまらないことがある。非婚時単独親権制の下においては、自らの「養育権」が他方の親 により侵害された親は、適切にこれを回復する手段を持たないが、これ - 7 -は、根本的にみて、国が全ての親に「養育権」を認めていないことの現れでもある。 したがって、上記(ア)の差別は、憲法14条1項に違反する。 ウ立法不作為について我が国においては、司法に対し、父母間の「養育権」を調整する判断基 準や仕組みが法律で与えられておらず、父母間の養育権に関して適切に調整することができないところ、この点について、立法上の手当てをすべき必要性があった。憲法の改正に伴って改正された民法が施行された当時は、父が子の監護・養育についての決定権を有する実態があることを前提に、非婚時単独親権制とすることも事務処理上の理由からやむを 得なかったが、両性が子育てに関与するべき時代となり、遅くとも離婚後に母が親権を行う家庭の割合が父が親権を行う家庭の割合を超えた昭和41年には、非 権制とすることも事務処理上の理由からやむを 得なかったが、両性が子育てに関与するべき時代となり、遅くとも離婚後に母が親権を行う家庭の割合が父が親権を行う家庭の割合を超えた昭和41年には、非婚時単独親権制につき立法上の手当てをすべき必要性があった。 しかしながら、国は、非婚時単独親権制が、憲法上保障され又は保護さ れている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に反することが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠ってきた。したがって、かかる立法不作為は、国賠法1条1項所定の「違法」を構成する。 (被告の主張) ア憲法13条違反について(ア) 「養育権」が憲法13条に基づき保障された権利ではないこと原告らが主張する「養育権」の具体的な内容や親権との関係は、判然としない。また、親権は、親の職分や社会的責務であると理解されており、基本的人権であることを前提とした権利であるとはいえない。 したがって、「養育権」が憲法13条に基づき保障された基本的人権 - 8 -であるとはいえない。 (イ) 現行法の規定が憲法13条に違反しないことa 法律婚の関係にある父母について民法の関連する諸規定をみれば、親権制度は、子の利益の確保を重視していることが明らかである。また、同法は、法律婚の関係にある 父母について、嫡出推定の規定を設け(民法772条)、同居協力扶助義務を負わせていること(同法752条、760条)などからすれば、法律婚の関係にある父母は、共同生活を営むなどして相互に協力扶助しながら、夫婦間に出生した子を育てる関係にあるとともに、実際上も、夫婦及び子が同居する等、相互に協力して子の養育に関与し、 慎重熟慮の上、子の養育に は、共同生活を営むなどして相互に協力扶助しながら、夫婦間に出生した子を育てる関係にあるとともに、実際上も、夫婦及び子が同居する等、相互に協力して子の養育に関与し、 慎重熟慮の上、子の養育に関する事項に必要な判断を適時適切に行うことを期待することができる一般的な状況にあるものということができる。 また、明治民法においては、父の単独親権に服することが原則とされていたが、戦後の同改正により、両性の本質的平等という基本原則 に基づき、父母が共同して親権を行使するものとされた。 以上のとおり、民法818条3項本文は、両性の本質的平等という基本原則の下、子の利益を確保することを目的としており、父母の双方に親権を認めて子の養育に関与させることが子の利益に資するといえるから、法律婚の関係にある父母について共同親権を認めることは、 上記立法目的との関係で合理性を有することは明らかである。 b 法律婚の関係にない父母について前記a のとおり、民法において、親権制度が子の利益の確保を重視していることからすれば、法律婚の関係にない父母について単独で親権を行使することを定めることの立法目的も同様に、子の利益の確保 にあると考えられる。そして、明治民法においては、父の親権に服す - 9 -ると解されていたところ、昭和22年法律第222号による改正により、父母の協議又は協議に代わる審判によって子の親権者を定めることとされたものであり、上記立法の目的は両性の本質的平等にもある。 そして、法律婚の関係にない父母においては、同居して共同生活を営むなどして互いに協力扶助しながら子を育てるべき法律関係にはな い。また、事実婚の関係から単に子を設けたにすぎない男女まで多様であり、特に離婚後の父母は別居することが通常であって父母間 生活を営むなどして互いに協力扶助しながら子を育てるべき法律関係にはな い。また、事実婚の関係から単に子を設けたにすぎない男女まで多様であり、特に離婚後の父母は別居することが通常であって父母間の関係が良好ではないことからすると、一般的に、父母の双方が同居するなどして良好な関係を保ちつつ協力して子の養育に関与し、慎重熟慮の上、子の養育に関する事項に必要な判断を適時適切に行うことを期 待することができるという状況にあるとはいえず、かえって子の利益が害されるおそれがある。更に、法律婚の関係にない父母について一定の場合に共同して親権を行使するとした場合、父母の関係性が多様である上、外部からその関係性が明確でないことも踏まえれば、いかなる関係の場合に共同親権とすることが相当か、共同親権とする基準 として明確か、また共同親権とした場合に子の利益が害されるおそれがないかといった問題が生じると考えられる。 以上のとおり、民法の諸規定は、両性の本質的平等という基本原則の下、子の利益を確保することを目的としており、父母の一方を親権者とすることにより、子の監護に関わる事項について適時に適切な決 定がされることになり、子の利益につながるといえるから、法律婚の関係にない父母について単独で親権を行使するとの規定が上記立法目的との関係で合理性を有することは明らかである。 イ憲法14条1項違反について(ア) 憲法14条1項が規定する法の下の平等とは、個人と個人の間の平 等をいい、同項が禁止する不合理な差別も、個人と他の個人との間の不 - 10 -合理な差別をいうものと解される。原告らは、法令上の区別として「法律婚の関係にある父母」との人的関係と「非婚の父母」との人的関係との間の差異について述べるところ、これが憲法14 - 10 -合理な差別をいうものと解される。原告らは、法令上の区別として「法律婚の関係にある父母」との人的関係と「非婚の父母」との人的関係との間の差異について述べるところ、これが憲法14条1項の禁止する不合理な差別に該当し得ること及びその理由については明らかにされていない。 (イ) 仮に原告らが個人を主体とする法令上の区別について主張するものと解したとしても、法律婚の関係にある父母とそれ以外の父母とでは、その置かれている状況が法律上も事実上も異なるから、親権について区別を設ける本件各規定には合理性がある(前記ア(イ)参照)。 また、現行法においても、親権の有無にかかわらず、法律上、親子で あることに変わりがなく、親は子に対する扶養義務を負い、子は扶養を受け得るものであり、子と同居していない親でも、監護に要する費用について、少なくとも抽象的な支払義務は原則として負っているものと解される。さらに、たとえ父母の一方しか親権を有していない状態であっても、父母が相互に協力し合って養育に関与することが現行法上禁止さ れるものでもない。仮に、父母が婚姻中であるか否かを問わず、上記のような父母間の協力が見込めない場合も含めて父母双方が親権を有することとすると、親権行使に関する父母の合意が適時適切に得られないおそれがあり、子の利益の確保に重大な支障が生じることが想定されるものであり、このような事態を防止するという点でも、本件各規定は合理 性を有している。 ウ立法不作為について本件各規定は、裁判所が後見的立場から親権者としての適格性を吟味し、その一方を親権者と定めることで、子に関する事項について適時に適切な決定がされ、子の利益を保護することにつながるものであり、十分な 合理性を有するものである。 者としての適格性を吟味し、その一方を親権者と定めることで、子に関する事項について適時に適切な決定がされ、子の利益を保護することにつながるものであり、十分な 合理性を有するものである。 - 11 -そして、原告らのいう「養育権」を保障する立法が一般的な意味で子の福祉を促進する場合が仮にあり得るとしても、具体的な制度設計はなお明らかとはいえない上、その導入のデメリットや、現行の調停・審判手続や民事執行手続との整合性を含め多くの検討を要することからすれば、我が国の現行制度が不合理とはいえない現状にあって、原告らが主張す る共同親権者たる父母の「養育権」を保障する法整備をしないことが、憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるとはいえない。 したがって、被告が原告らの主張する所要の立法をしないことは、国賠 法1条1項所定の「違法」を構成しない。 (2) 争点2(損害の発生及びその数額)について(原告らの主張)原告らは、子を養育する意思を有するにもかかわらず、民法の諸規定に係る立法不作為によって、幼い子と突然会えなくなったままとなって行方が知 れなくなったり、公的機関において親として扱われることなく傷ついたり、親子としての自然な養育関係とはほど遠い状態に置かれたりしている。原告らは、自らの人生において大事なものを奪われるという精神的苦痛を被っており、その被害は甚大で回復困難である。 原告らの上記苦痛を慰謝するための慰謝料は、100万円(本件訴訟係属 中に死亡した亡Hの訴訟承継人である原告I及び同Jについては、それぞれ50万円)を下らない。 (被告の主張)不知ないし争う。 第3 当裁判所の判断 0万円(本件訴訟係属 中に死亡した亡Hの訴訟承継人である原告I及び同Jについては、それぞれ50万円)を下らない。 (被告の主張)不知ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告が本件各規定につき改廃しないことが、立法不作為として国賠 - 12 -法1条1項所定の「違法」を構成するか)について(1) 立法不作為に係る国賠法1条1項所定の「違法」について国賠法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個々の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するもの であるところ、国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個々の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したかどうかの問題であり、立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきものである。そして、上記行動についての評価は原則として国民の政治的判断に委ねられるべき事柄であって、仮に当該立法の 内容が憲法の規定に違反するものであるとしても、そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに同項の適用上違法の評価を受けるものではない。もっとも、法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改 廃等の立法措置を怠る場合などにおいては、国会議員の立法過程における行動が上記職務上の法的義務に違反したものとして、例外的に、その立法不作為は、同項の適用上違法の評価を受けることがあるというべきである。そして、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保す ける行動が上記職務上の法的義務に違反したものとして、例外的に、その立法不作為は、同項の適用上違法の評価を受けることがあるというべきである。そして、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するための立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が 正当な理由なく長期にわたってこれを怠るときは、上記の例外的な場合に当たるものと解するのが相当である(最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁、最高裁平成13年(行ツ)第82号、第83号、同年(行ヒ)第76号、第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁、最高裁平成25年(オ) 第1079号同27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁、 - 13 -最高裁令和2年(行ツ)第255号、同年(行ヒ)第290号、第291号、第292号同4年5月25日大法廷判決民集76巻4号711頁参照)。 そこで、本件においては、本件各規定が、憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるか否か、国会が正当な理由なく長期にわたって その改廃等の立法措置を怠っているといえるか否かを検討する。 (2) 憲法13条に違反するとの主張についてア原告らは、本件各規定が、憲法13条後段に基づき保障される「子を養育する意思と能力を有する親が、子を監護及び養育する権利」(養育権)を、合理的な理由なく制約するものであることが明白であると主張する。 イ原告らは、非婚時単独親権制、すなわち、法律婚の関係にない父母の一方に親権を認めないことが憲法13条に違反する旨を主張することから、まず、親権の法的性質に ことが明白であると主張する。 イ原告らは、非婚時単独親権制、すなわち、法律婚の関係にない父母の一方に親権を認めないことが憲法13条に違反する旨を主張することから、まず、親権の法的性質について検討する。 民法は、親権の効力として、監護及び教育(同法820条)、居所の指定(同法821条)、懲戒(同法822条)、職業の許可(同法823 条)、財産の管理及び代表(同法824条)などを定めるが、同法820条は、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と規定して、子の監護及び教育をする権利は、「子の利益のために」行使されなければならないこと及び親権者の義務でもあることを明記している。また、財産管理に関しても、子の行為を目的 とする債務を生ずべき場合には子の同意を要するものとし(同法824条但書)、親権者と子との利益が相反する行為には特別代理人の選任請求を義務付ける(同法826条1項)など、子の利益に反するおそれのある行為については親権の効力を制限している。さらに、家庭裁判所は、「親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより『子の利益を著しく害す るとき』」は親権喪失の審判(同法834条)を、「親権の行使が困難又 - 14 -は不適当であることにより『子の利益を害するとき』」は親権停止の審判(同法834条の2)を、「管理権の行使が困難又は不適当であることにより『子の利益を害するとき』は管理権喪失の審判(同法835条)をそれぞれできるものとして、親権が適切に行使されないことにより子の利益が害されることを防ぐ制度を設けている。 このように、親権は、専ら子の利益を図るために行使することが予定されている上、権利であると同時に義務であるともされており、これ いことにより子の利益が害されることを防ぐ制度を設けている。 このように、親権は、専ら子の利益を図るために行使することが予定されている上、権利であると同時に義務であるともされており、これを行使しないという事態は予定されていない。そうすると、親権は、子のための利他的な権限であり、その行使をするか否かについての自由がない特殊な法的地位であるといわざるを得ず、親権者自身の自己実現に資するもので あることを考慮しても、憲法上の他の人権とは性質を異にするものというほかない。このような親権の特質によれば、親権が憲法13条で保障されているものと解することはできない。 また、原告らの主張する養育権という基本的人権を保障することを文言上明らかにした憲法の規定は見当たらず、原告らの主張する養育権という 権利の内容を直ちに一義的に特定することは困難である。 以上のとおり、子の監護及び教育をする権利をその中核的な内容とする親権について、憲法13条で保障されているものと解することはできない上、原告らの主張する「子を養育する意思と能力を有する親が、子を監護及び養育する権利」であるという養育権という権利の外延が明らかでなく、 その権利の内容を直ちに一義的に特定することが困難であることからすれば、原告らの主張する養育権が憲法13条で保障されているものと解することは困難である。 ウ以上によれば、非婚時単独親権制を定めた本件各規定が養育権を侵害するものとして憲法13条に反するものとは認められない。 (3) 憲法14条1項に違反するとの主張について - 15 -ア次に、原告らは、非婚時単独親権制が憲法14条1項に違反すると主張する。具体的には、法律婚の関係にある父母が原則として共同して親権を行う 違反するとの主張について - 15 -ア次に、原告らは、非婚時単独親権制が憲法14条1項に違反すると主張する。具体的には、法律婚の関係にある父母が原則として共同して親権を行うことができるのに対し、法律婚の関係にない父母は、必ずその一方が単独で親権を行うものとされていることから、原告らのうち法律婚の関係にない父母(離婚をした者及び一度も法律婚の関係にあったこと がない者であり、いずれも親権を有しない。)は、法律婚の関係にある父母との間で差別されており(以下「本件差別的取扱い」という。)、本件差別的取扱いが憲法14条1項に違反する旨を主張するものと解される。 イ憲法14条1項は、法の下の平等を定めており、問題となる規定が、事 柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解すべきである(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁、最高裁昭和45年(あ)第1310号同48年4月4日大法廷判決・刑集27巻3号265頁等参照)。 ウ婚姻及び家族に関する事項は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断を行うことによって定められるべきものであるから、憲法24条2項は、婚姻及び家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第一次的には国会の合理的な立 法裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すことによって、その裁量の限界を画したものといえる(最高裁平成25年(オ)第1079号同27年12月16日大法廷判決・民集69 、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すことによって、その裁量の限界を画したものといえる(最高裁平成25年(オ)第1079号同27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁参照)。 また、国家が親権制度を構築するに当たっては、子の利益、特にその人 - 16 -格を発展させ、その手段として教育を受ける環境の整備を求める利益と、子が自律的人格として有する尊厳の確保という要請を調和的に達成することが求められているが、これに加えて、親が子を監護し養育することは、子の最善の利益に従って行動すると推定される親の監督下に置かれることによって、子の利益となるだけでなく、子との親密な人的結合を 通じた相互作用により、自らの究極的な価値観を吟味する契機ともなり得る点において、親自身の人格的利益の一部を構成するともいうことができる。そこで、このような人格的利益をいたずらに害することがないようにすべきことも、上記立法裁量の限界を画する一要素であると解される。 そうすると、本件差別的取扱いが憲法14条1項に反するか否かは、本件差別的取扱いの立法目的に合理的な根拠があり、かつ、その区別の具体的内容が上記の立法目的との関連において合理性を有するものであるかどうかという観点から判断するのが相当である。 エ前記(2)のとおり、民法は、親権に関し、子の監護及び教育をする権利 は、「子の利益のために」行使されなければならないこと及び親権者の義務でもあることを明記し、財産管理についても、子の利益に反するおそれのある行為については親権の効力を制限し、「子の利益を著しく害するとき」又は「子の利益を害するとき」は、親権喪失、親権停止、管理権喪失の審判ができるものとして、 理についても、子の利益に反するおそれのある行為については親権の効力を制限し、「子の利益を著しく害するとき」又は「子の利益を害するとき」は、親権喪失、親権停止、管理権喪失の審判ができるものとして、専ら子の利益を図るために親権が 行使されることを確認している。そして、親権を行う者は、専ら子の利益を図るために、子の日常的な世話に関する側面から、成年に達するまでの長期的な教育方針の決定に関する側面まで、軽重様々の判断を適時かつ適切にすることが求められる。また、民法は、法律上の夫婦については、嫡出推定の制度を設け、妻が婚姻中に懐胎した子を夫の子と推定 するほか(同法772条1項)、同居協力扶助義務(同法752条)や - 17 -婚姻費用分担義務(同法760条)などを規定して(以下、これらの規定を「夫婦関係諸規定」という。)、法律婚の関係にある父母は、共同生活を営むなどして相互に協力扶助しながら、夫婦間に生まれた子を育てるべき法律関係(以下「本件法律関係」という。)にあるものとしている。 以上の民法の諸規定や親権行使の性質等に照らすと、本件差別的取扱いの趣旨は、夫婦関係諸規定の適用がない法律婚の関係にない父母の関係は多様であり、本件法律関係と同様の関係を類型的に期待することはできず、実際にも、離婚した父母は通常別居し、両名の人間関係も必ずしも良好なものではない状況となることが想定されるものの、そのような 父母の人間関係が良好でない場合であっても、法律婚の関係にない父母の一方を親権者として、親権者が適時に適切な判断をすることを可能とし、もって子の利益を確保しようとする点にあると解される。このような本件差別的取扱いの趣旨に照らすと、本件差別的取扱いの立法目的は、親権者が実効的に親権を行使することによ 切な判断をすることを可能とし、もって子の利益を確保しようとする点にあると解される。このような本件差別的取扱いの趣旨に照らすと、本件差別的取扱いの立法目的は、親権者が実効的に親権を行使することにより、子の利益を図る点にある といえ、合理的な根拠に基づくものと認められる。 オ前記エのとおり、法律婚の関係にある父母については、夫婦関係諸規定が適用され、本件法律関係にあるものとされており、実際上も、夫婦及び子が同居して、相互に協力して子の養育に関与し、子の養育に関する事項に必要な判断を適時かつ適切に行うことが合理的に期待される状況 にあるものということができる。他方、子の父母が離婚するに至った場合には、父母が別居し、両名の人間関係も必ずしも良好なものではない状況となることが通常想定されることから、そのような両名が共同で親権を行使し、子の養育に関する事項を決するものとしたときは、類型的に、両名の間で十分な意思の疎通をし、的確な検討を踏まえて、適時に 適切な合意を形成することができず、子の利益を損なうおそれがあるも - 18 -のと認められる。また、法律婚に至らない父母については、父母間・親子間において良好な関係を築いており、法律婚の関係にある父母に合理的に期待される状況と同様の状況にある者から、父母の関係が破綻し、日常的なコミュニケーションが図れない者まで、多様な関係性が想定されるところ、夫婦関係諸規定の適用がなく、本件法律関係と同様の関係 を類型的に期待することはできないから、そのような父母が共同で親権を行使し、子の養育に関する事項を決するものとしたときは、両名の間で十分な意思の疎通をし、的確な検討を踏まえて、適時に適切な合意を形成することを類型的に期待することはできない。そこで、親権者が適時に 行使し、子の養育に関する事項を決するものとしたときは、両名の間で十分な意思の疎通をし、的確な検討を踏まえて、適時に適切な合意を形成することを類型的に期待することはできない。そこで、親権者が適時に適切な判断をすることができず、子の利益が損なわれる事態を回避 するために、法律婚の関係にある父母は原則として共同して親権を行うことができるとする一方、法律婚の関係にない父母は必ずその一方が単独で親権を行うものとする本件差別的取扱いの内容は、実効的な親権の行使による子の利益の確保という立法目的との関連において合理性を有するものと認められる。 たしかに、前記ウのとおり、親が子を監護し養育することは、親自身の人格的な利益の一部を構成し、このことは、法律婚の関係にない父母についても変わらないから、法律婚の関係にない父母が子の養育のためにその関係性を一定の範囲で維持し、父母のいずれもが子の養育に関与し続けることができるようにすることが、子にとっても、法律婚の関係に ない父母にとっても望ましいと考えられるところ、法律婚の関係にない父母の一方にのみ親権を認めたとしても、父母間にこのような関係性が維持されている場合には、非親権者である親の人格的な利益の制約は限定的なものに止まるものと考えられる。他方、法律婚の関係にない父母において、このような関係性が維持できない場合に、共同して親権を行 うものとすると、父母の一方からの同意が適時に得られないことにより - 19 -適時に親権を行使することが妨げられたり、同意が得られないことにより親権を行うこと自体ができないといった事態が生じ、子の利益が損なわれるおそれがあるといわざるを得ない。そうすると、本件差別的取扱いにより、法律婚の関係にない父母の一方は親権者となることが ことにより親権を行うこと自体ができないといった事態が生じ、子の利益が損なわれるおそれがあるといわざるを得ない。そうすると、本件差別的取扱いにより、法律婚の関係にない父母の一方は親権者となることができず、その人格的な利益が制約されることがあり得るとしても、子の利益を確 保するためにやむを得ないものであって、法律婚の関係にない父母の一方の人格的な利益をいたずらに害するものではないというべきである。 カ以上によると、本件差別的取扱いは、事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものであって、憲法14条1項に違反しない。 キ原告らは、民法が、法律婚の関係にない父母の法律上又は事実上の配偶 者であった親権者が、自らの監護する子につき代諾による養子縁組を行うなど重大な決断を行うに際して、非監護親の関与を排除することにより慎重熟慮を図らずに適時適切に親権を行うことを優先させていることや、諸外国において、我が国と異なり、法律婚の関係にない父母にも共同して親権を行うことを認める立法例がみられることなどから、本件差 別的取扱いの立法目的として「子の利益の確保」を措定することは正当ではないと主張し、これに沿う証拠を提出する(甲48、証人O)。 たしかに、民法第四編親族のうち、第四章親権ではなく、第三章親子第二節養子に設けられた民法797条1項は、養子となる者が15歳未満であるときの代諾権者を法定代理人とし、この法定代理人には親権者も 含まれるものの、同条2項は、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときはその同意を得なければならないものとして、親権者ではない監護者にも養子縁組が子の利益に合致するかどうかの判断の機会を与え、親権者のみの意思で子の監護に関する父母の合意が変更されるのを防 にあるときはその同意を得なければならないものとして、親権者ではない監護者にも養子縁組が子の利益に合致するかどうかの判断の機会を与え、親権者のみの意思で子の監護に関する父母の合意が変更されるのを防止することとしている。このように、同条は、15 歳未満の者を養子とする縁組という具体的局面における関係者の利益状 - 20 -況を踏まえて、所要の手続を定めたものと認められ、同条の規定内容をもって、親権の帰属に係る本件差別的取扱いの立法目的の認定が左右されるものとは認められないし、本件差別的取扱いの立法目的が、親権者が実効的に親権を行使することにより、子の利益を図る点にあるという前記エの認定と矛盾するものとも認められない。 また、諸外国において、法律婚の関係にない父母にも共同して親権を行うことを認める立法例がみられることは、法律婚の関係にない父母と親権との関係については、本件差別的取扱いとは異なる立法政策があり得るものであり、国民的な合意が形成されれば本件差別的取扱いを変更することも考えられることを示唆するものではあるものの、前記エのとお り、本件差別的取扱いの立法目的が、親権者が実効的に親権を行使することにより、子の利益を図る点にあることと矛盾するものとはいえないし、前記オのとおり、本件差別的取扱いの内容が、立法目的との関連において合理性を有することと直ちに矛盾するものということもできない。 ク原告らは、仮に本件差別的取扱いが「子の利益の確保」を意図して立法 されているものであるとしても、子の監護又は養育についての意見が一致しない父母の下においては、父母が意思決定のために離婚をすることとなると相当の時間を要すること、子は対立状態にある父母のもとで成長するまでの過程のほとんどを過ごすこと 護又は養育についての意見が一致しない父母の下においては、父母が意思決定のために離婚をすることとなると相当の時間を要すること、子は対立状態にある父母のもとで成長するまでの過程のほとんどを過ごすことになることなどから、本件差別的取扱いは上記目的との関係で合理性を欠く制度であるとも主張する。 しかし、仮に離婚後の父母にも共同親権を認める制度を採ったとしても、別居することが通常である離婚後の父母のいずれが子と同居して監護を行うのかが争われ得るのであるから、離婚の条件をめぐる交渉が有意に短縮するかは定かではないし、原告らが指摘する子に対する悪影響は、親権制度につきいかなる立法をするかによらず、高葛藤状態にある父母 の下で成長期を過ごす子には一般的に発生し得る事態であると解される - 21 -から、本件差別的取扱いが不合理であるということはできない。 ケ原告らは、本件差別的取扱いは、父母が法律婚の関係にあるか否かによって、生活等の実態を類型的に推測するとの立場に依拠するものであり、不合理であると主張する。 しかし、本件差別的取扱いが制定されて以降の家族の在り方に関する社 会状況等の変化を踏まえ、立法論としては、父母が法律婚の関係にあるか否かを基準とする本件差別的取扱いを見直すことの当否を含め議論の余地があり得るとしても、父母が法律婚の関係にあるか否かによって、夫婦関係諸規定の適用の有無が異なり、本件法律関係又はこれと同様の関係を類型的に期待することができるか否かが異なることからすると、 実効的な親権の行使による子の利益の確保の観点から、父母が法律婚の関係にあるか否かを基準として、親権の帰属の在り方を異ならせることにはなお合理性があるということができる。 コ原告らは、明治 実効的な親権の行使による子の利益の確保の観点から、父母が法律婚の関係にあるか否かを基準として、親権の帰属の在り方を異ならせることにはなお合理性があるということができる。 コ原告らは、明治民法の改正において、父母間の意見調整の方法についての立法の必要性が認識されたにもかかわらず、父母間の意見調整の方法 についての立法が現在においてもされていないことは、本件差別的取扱いの不合理性を基礎付けるものと主張する。 しかし、現行法においても、婚姻中の父母について親権の共同行使が事実上困難であるような場合には、父母の一方は、民法766条の類推適用により、家庭裁判所に対し、子の監護権者を指定するための調停・審 判を申し立てることができ、父母の一方による親権行使が子の利益を侵害するものである場合には、親権停止・親権喪失等の申立てを行うことができるし、婚姻中の父母の意見が一致しない場合を直接規律する定めを欠くことが、父母が法律婚の関係にあるか否かを基準として親権の帰属を定める本件差別的取扱いの合理性を失わせるものと認めることはで きないから、原告らの主張は理由がない。 - 22 -サ原告らは、現行の親権制度が子の成長・発育や家庭環境を悪化させるものと主張し、これに沿う証拠として、父母の一方が他方と別居する場合における子の成長等に関する研究をした北九州市立大学文学部教授Pの陳述書及び研究結果(甲61、62)並びに同人の証言がある。 しかし、同人の研究によっても、現行の親権制度が子の成長・発育や家 庭環境の悪化に及ぼす因果関係は必ずしも明らかではなく、原告らの主張は理由がない。 シなお、原告らは、父母の間に生じる子の養育に関する意見の対立を調整する仕組みを一切用意しないとい 庭環境の悪化に及ぼす因果関係は必ずしも明らかではなく、原告らの主張は理由がない。 シなお、原告らは、父母の間に生じる子の養育に関する意見の対立を調整する仕組みを一切用意しないという意味において、法律婚の関係にある父母を規律する仕組みも含めた非婚時単独親権制そのものが不合理な差 別であるとも主張する。しかし、かかる主張は、法律婚の関係にある父母と法律婚の関係にない父母との間の本件差別的取扱いとは異なる対立項を主張するものと解されるが、いかなる差別的取扱いを主張するものかが不明瞭であり、これにより現行の親権制度が憲法14条1項に違反するものとは認められない。 2 小括以上によれば、現行の親権制度が憲法13条又は14条1項に違反するとの原告らの主張は、いずれも採用することができない。 第4 結論以上によれば、原告らの請求は、その余の点について判断するまでもなく、 いずれも理由がないからこれらを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第43部 裁判長裁判官古庄研 - 23 - 裁判官石原拓 裁判官伊藤康博は、転補につき、署名押印することができない。 裁判長裁判官古庄研 - 24 -別紙当事者目録記載省略 - 25 -(別紙)請求目録 1 被告は、原告Aに対し、100万円及びこれに対する令和元年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Bに対し、100万円及びこれに対する令和元年12月26日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支 する令和元年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Bに対し、100万円及びこれに対する令和元年12月26日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告Cに対し、100万円及びこれに対する令和元年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告Dに対し、100万円及びこれに対する令和元年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告は、原告Eに対し、100万円及びこれに対する令和元年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告は、原告Fに対し、100万円及びこれに対する令和元年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 被告は、原告Gに対し、100万円及びこれに対する令和元年12月26日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 8 被告は、原告Iに対し、50万円及びこれに対する令和元年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 9 被告は、原告Jに対し、50万円及びこれに対する令和元年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は、原告Kに対し、100万円及びこれに対する令和元年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 11 被告は、原告Lに対し、100万円及びこれに対する令和元年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 12 被告は、原告Mに対し、100万円及びこれに対する令和元年12月26日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 以上 0万円及びこれに対する令和元年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。以上

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