平成25(わ)395 逮捕監禁,傷害,殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,覚せい剤取締法違反,窃盗

裁判年月日・裁判所
平成26年3月4日 神戸地方裁判所
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判決文本文10,379 文字)

平成26年3月4日宣告裁判所書記官平成25年(わ)第395号,第539号,第577号,第917号逮捕監禁,傷害,殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,覚せい剤取締法違反,窃盗被告事件判決 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中270日をその刑に算入する。 神戸地方検察庁で保管中の回転弾倉式けん銃1丁,けん銃実包2発及び日本刀1振並びに大阪地方検察庁で保管中の覚せい剤白色結晶3袋を没収する。 理由 【罪となるべき事実】(神戸事件;第1ないし第6の一連の事件をいう。)被告人は,第1 A(当時52歳)が借金を返済しないことに腹を立て,同人を逮捕監禁して貸金を回収するとともに覚せい剤の精製方法を聞き出そうと考え,B,C,D,E,Fと共謀の上,平成24年11月27日午前1時過ぎ頃,大阪府東大阪市ab丁目c番d号付近路上に停車中の自動車内において,Aの両手をガムテープで緊縛するなどして同人を逮捕した上,その頃,同車を発進・走行させ,引き続き,同月28日午後9時30分頃までの間,同府内を走行・停車中の自動車内並びに大阪市e区fg丁目h番i号j倉庫内及び同市k区lm丁目n番o号pマンションq号室内の各所において,同人の両手,両足及び顔面をガムテープ等で緊縛するなどして,同人をいずれからも脱出不能にし,もって,同人を不法に逮捕監禁した第2 借金を返済しないAに制裁を加えようと考え,Bらと共謀の上,上記逮捕監禁中である同月27日午前1時過ぎ頃から同月28日午後6時30分頃までの 間に,前記各所において,Aに対し,多数回にわたり,その顔面,頭部等の身体の多数か所を手拳やハンマー等で殴打し,足で蹴るほか,電動ドリルを作動させてその刃を同人の右下腿に押し当て,カッタ 間に,前記各所において,Aに対し,多数回にわたり,その顔面,頭部等の身体の多数か所を手拳やハンマー等で殴打し,足で蹴るほか,電動ドリルを作動させてその刃を同人の右下腿に押し当て,カッターナイフの刃等を用いてその左小指末節部を切断するなどの暴行を加え,よって,同人に加療期間不明の左小指末節部切断,右下腿前面刺創様損傷等の傷害を負わせた第3 法定の除外事由がないのに,上記逮捕監禁中である同月27日午後4時45分頃,大阪府豊中市rs番t号u駐車場に駐車中の自動車内において,借金を返済しないAを威嚇する目的で,所携の回転弾倉式けん銃1丁(以下「本件けん銃」という。)で弾丸1発を発射し,もって,不特定又は多数の者の用に供される場所においてけん銃を発射した第4 法定の除外事由がないのに,前記第3の日時場所において,本件けん銃をこれに適合するけん銃実包1発と共に携帯して所持した第5 同月28日午後9時46分頃から同日午後10時15分頃までの間に,大阪府内又は兵庫県内の高速道路を走行中又は停車中の自動車内において,Aに対し,殺意をもって,本件けん銃で弾丸1発を発射して,同人の左肋骨弓部に命中させ,同人に左肋骨弓部射創に基づく肝臓・下大静脈損傷等の傷害を負わせて同人を仮死状態にし,引き続き,E及びFと共に,同月29日午前零時20分頃,神戸市v区wx丁目y公園南西側岸壁において,Aが既に死亡していると誤信したまま,犯跡を隠蔽するため同人を自動車ごと同岸壁横の海中に転落させ,よって,同日午前零時25分頃,同所において,同人を溺死させて殺害した第6 同月28日午後11時30分頃,神戸市v区z町a1丁目b1番c1号d1駐車場e1番枠において,同所に駐車中のG所有に係る普通乗用自動車1台(時価約150万円相当)を窃取した。 (大阪事件 第6 同月28日午後11時30分頃,神戸市v区z町a1丁目b1番c1号d1駐車場e1番枠において,同所に駐車中のG所有に係る普通乗用自動車1台(時価約150万円相当)を窃取した。 (大阪事件;第7ないし第9の一連の事件をいう。)被告人は, 第7 Hから後輩ともめごとになっているから援護して欲しいと頼まれてこれを引き受け,Hと共謀の上,同年10月11日午前2時39分頃,大阪府吹田市f1町g1丁目h1番i1号先路上において,I(当時43歳)に対し,Hがいきなり催涙スプレーを顔面に繰り返し噴射するとともに,モデルガンで頭部を多数回殴る暴行を加えたものの,Hの方が劣勢になったとみるや,Hを援護するため,被告人が,日本刀(以下「本件日本刀」という。)でIの左腕を斬り付けるとともに左臀部を1回突き刺すなどの暴行を加え,よって,Iに全治約3か月間を要する左小指深浅屈筋腱完全断裂,左尺骨神経完全断裂,左手根骨骨折,左臀部刺創,顔面・頭部挫創,鼻骨骨折,第3・4腰椎左横突起骨折の傷害を負わせた第8 法定の除外事由がないのに,前記第7の日時場所において,本件日本刀(刃渡り54.8センチメートル)1振を所持するとともに,Hと共謀の上,いずれも法定の除外事由がないのに,本件けん銃をこれに適合する実包1発とともに携帯して所持した第9 Iに体を捕まえられていたHから「撃て撃て」と指示され,Iを威嚇するため,Hと共謀の上,いずれも法定の除外事由がないのに,前記第7の日時場所において,本件けん銃で弾丸1発を発射し,もって,不特定又は多数の者の用に供される場所においてけん銃を発射した。 (その他の事件;第10ないし第13の事件をいう。)被告人は,第10 Jと共謀の上,同月2日午前8時42分頃,名古屋市j1区k1駅l1丁目m1番n1 供される場所においてけん銃を発射した。 (その他の事件;第10ないし第13の事件をいう。)被告人は,第10 Jと共謀の上,同月2日午前8時42分頃,名古屋市j1区k1駅l1丁目m1番n1号o1階駐車場において,同所に駐車中の自動車内から,K所有又は管理にかかるノート型パーソナルコンピューター等10点(時価合計約5万6000円相当)を窃取した第11 法定の除外事由がないのに,同年11月28日午前7時頃,大阪市p1区q1r1丁目s1番t1号u1v1号室の当時の被告人方において,フエニルメ チルアミノプロパンの塩類若干量を加熱し気化させて吸引し,もって,覚せい剤を使用した第12 みだりに,同月29日午前3時12分頃,前記u1北側出入口において,覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩の結晶1.109グラム及びフエニルメチルアミノプロパンの結晶0.883グラムを所持した第13 法定の除外事由がないのに,前記第12の日時場所において,本件けん銃1丁をこれに適合する実包2発とともに携帯して所持した。 【証拠の標目】(省略)【事実認定の補足説明】 1 争点本件の争点は,判示第5の殺人事件について,けん銃を発射した時点における殺意の有無である。検察官は,被告人が狭い自動車内で至近距離からけん銃を撃ち,弾丸が被害者の身体の重要部分に命中していることから,身体の重要部分を狙って撃ったこと,すなわち殺意が推認できると主張する。これに対して,弁護人は,被告人は弾丸を被害者に当てるつもりはなかったので,殺意はなかったと主張しており,被告人もこれに沿う供述をする。 当裁判所は,判示第5のとおり,被告人に殺意が認められると考えたので,その理由を説明する。 2 当裁判所の判断 認定できる事実ア前提事実 張しており,被告人もこれに沿う供述をする。 当裁判所は,判示第5のとおり,被告人に殺意が認められると考えたので,その理由を説明する。 2 当裁判所の判断 認定できる事実ア前提事実次の各事実は,当事者間に概ね争いがなく,関係各証拠により容易に認められる。  被告人は,平成24年11月28日午後9時30分頃,Cと別れて,後部座席に被害者を乗せたまま,クラウンアスリート(以下「本件自動車」 という。)を運転して立ち去った。その際,本件自動車には,被告人と被害者の2人しか乗っていなかった。被害者は,両手を胸付近でガムテープで縛られ,目と口にもガムテープが幾重にも巻かれていた。  被告人は,同日午後9時46分,本件自動車を運転して阪神高速道路w1町入口から同高速に乗り,神戸方面に向かった。被告人は,同日午後10時15分頃,Eに電話をかけ,約4分間会話した。発信当時,本件自動車は兵庫県西宮市x1町付近の阪神高速道路上を走行していた。  被告人は,阪神高速道路を走行中又は停車中のいずれかの時点で,本件けん銃で弾丸1発を発射し,その弾が被害者の左肋骨弓部に命中した。被害者は判示第2の各暴行によってかなり衰弱していた上,撃たれた傷はそれだけで致命傷になり得るものであった。  被告人は,同日午後10時19分頃,y1出口から阪神高速道路を降り,その後,F及びEと合流した。 イ F供述から認められる事実 Fは,①被告人がEに架けた電話の中で,被害者を乗せて神戸に向かって走行している,ガソリンがなくて高速を降りる,被害者は仏さんになっているなどと話していたと,Eから聞かされたこと,途中でEと電話を替わったところ,被告人は“いわした”というニュアンスのことを話していたこと,②被告人と合流した後,本件自動車の運転席 は仏さんになっているなどと話していたと,Eから聞かされたこと,途中でEと電話を替わったところ,被告人は“いわした”というニュアンスのことを話していたこと,②被告人と合流した後,本件自動車の運転席側の後部ドアを開けると,被害者は頭部を運転席側に向けて上半身を後部座席の座面上に横たえていたこと,被害者が動かなかったのでもう死んでいると思ったことを供述する。  Fは判示第1の逮捕監禁事件の共犯者であるが,被告人との間に利害関係はなく,被告人を陥れる動機は見当たらない。公判廷では記憶にない部分は記憶にないと素直に述べており,その供述態度は真摯である。 その上で供述内容について検討すると,まず,F供述①は,被告人が, Eに架けた電話の通話が終わるころに,高速道路を降りているという前提事実と整合している。また,F供述②は,被害者の身体の位置や向きについて,被告人供述と食い違っているが,その観察状況(被告人から被害者が死んでいる旨聞かされている状況で,本件自動車の運転席側の後部ドアを開けて,被害者を間近で観察し,動かないことを確認したものである。)からすると,被害者の上半身が後部座席の座面上にあったのか,座面下にあったのか,頭が運転席の後部にあったのか,助手席の後部にあったのかを,Fが見間違えたとは考えにくい。また,このようなごく基本的な事柄に関するFの記憶が,時間経過により変容したということも考えにくい。  以上の点に照らすと,上記F供述①②はいずれも信用性が高いといえ,そのとおりの事実が認められる(これに反する被告人の供述は信用できない。)。  検討ア前記のとおり,Fは本件自動車の後部座席上に上半身を横たえて運転席側に頭を向けた状態の被害者を目撃している。その当時の被害者の受傷状況や緊縛状況からすると,被害 ない。)。  検討ア前記のとおり,Fは本件自動車の後部座席上に上半身を横たえて運転席側に頭を向けた状態の被害者を目撃している。その当時の被害者の受傷状況や緊縛状況からすると,被害者が,けん銃で撃たれた後,自力で後部座席の座面下から座面上にはい上がったとは考えにくく,何者かが被害者をそのように持ち上げたという事実も認められない。そうすると,被告人がけん銃を発射した時点における被害者の位置について,その姿勢(寝ていたのか座っていたのか)までは明らかでないが,少なくとも上半身部分は本件自動車の後部座席上にあったということが認められる。 イ 上記の点と本件けん銃から発射された弾丸が被害者の上半身(左肋骨弓部)に命中していることを考え合わせると,発射時点において,本件けん銃の銃口が後部座席上に向けられていたことが認められる。この事実からは,特段の事情が認められない限り,被告人が後部座席上に向けてけん銃 を発射する意思を有していたことが推認できる。  この点について,被告人は,運転席に座った状態で左手でハンドルを握り,右手に把持したけん銃を腰の辺りから後ろに回し,被害者に当たらないように後部座席の座面よりも下に向けてけん銃を発射した,その後,後方をみると,被害者は座面下に落ちていたなどと供述し,座面下に落ちた被害者に偶然弾丸が当たった可能性を指摘する。 しかし,この供述中,けん銃で撃たれた被害者が座面下にいるのを見たという部分は,信用できるF供述から認められる事実(上記ア)と食い違うものであって,信用できない。被告人は,被害者のいた位置につき虚偽の供述を交え,座面より下に向けてけん銃を発射したと供述しているのであるから,その供述の信用性も乏しいといわざるを得ない。 なお,念のため,座面よりも下に向けてけん銃を ,被害者のいた位置につき虚偽の供述を交え,座面より下に向けてけん銃を発射したと供述しているのであるから,その供述の信用性も乏しいといわざるを得ない。 なお,念のため,座面よりも下に向けてけん銃を発射したつもりであったにもかかわらず,誤ってそれよりも上に発射してしまった可能性についても検討しておく。たとえば,車体が大きく揺れるなど,狙った方向から銃口が大きくそれるような外部的な力が作用したのであれば,当然,発射の際に被告人もその点を認識したはずであるが,被告人は,そのような出来事については何ら供述していない。また,証拠から認められる本件自動車内の広さ(運転席の座面から後部座席の座面までの水平距離は,せいぜい数十センチメートルである。)からすると,座面の上を狙うのと下を狙うのとでは,銃口の向き,銃身の角度が大きく異なるのであって,被害者に当たらないようにしようという意識があったなら,そのような間違いをするとは考えられない。そうすると,上記の可能性が存在する合理的な疑いは認められない。 したがって,被告人の供述を踏まえて検討してみても,上記推認は揺るがない。 ウそして,後部座席上に被害者の上半身があることは被告人にも当然に想定 できたこと,被害者は目隠しをされていてけん銃を向けられても認識できない状態にあったことを考えると,後部座席上に向けて殺傷能力の高いけん銃を発射すれば,被害者の身体の枢要部分に当たって,被害者が死亡する危険性が極めて高いといえ,これは,被告人も容易に認識できたはずである。 このことは,被告人が,被害者の容態を間近で観察することができたと考えられる時点(阪神高速道路を降りた後)よりも前に,被害者が死んだと思っていたとみられる発言をしていること(F供述①)とも整合する。 エ以上のとおり,被告人は,被害 間近で観察することができたと考えられる時点(阪神高速道路を降りた後)よりも前に,被害者が死んだと思っていたとみられる発言をしていること(F供述①)とも整合する。 エ以上のとおり,被告人は,被害者の身体の枢要部に弾丸が命中する可能性を認識しながらけん銃を発射したといえるから,殺意が認められる。証拠からは,被告人が被害者を殺したいという積極的な意欲を有していたとまでは認められないけれども,上述した行為態様に照らすと,被告人の殺意の強さの程度が弱いものとはみられない。  弁護人の主張についてア弁護人は,被告人がけん銃を発射したのは本件自動車内で暴れた被害者を威嚇する目的であったから,殺意は認められないと主張し,被告人もこれに沿う供述(高速道路を走行中に,被害者が,コンソールボックスから運転席に両足を入れてきて,被告人の手や頭を蹴ってきた。)をする。 しかし,小指を切断されるなどの苛烈な暴行を加えられて衰弱していた被害者が,このような反撃行為をできたかは疑わしい上,本件自動車が高速走行をしていることを容易に認識できたと考えられる被害者が,運転者を蹴りつけて運転の邪魔をするという,自らも死亡しかねないような行動を取るとも考えにくい。また,被告人の上記供述は,けん銃発射の動機となる部分であり,けん銃発射に関する供述とも密接に関連するところ,被告人のけん銃発射に関する供述が信用できないことは前記イのとおりである。これらの点を考え合わせると,被告人供述は信用性が乏しい。 仮に被告人が被害者を大人しくさせる必要があると思ったとしても,前記 認定のけん銃発射行為の態様からは,被告人において,被害者に弾丸が当たらないように意識して発射したとは到底認められない。 そうすると,いずれにせよ,殺意に関する上記認定は,動かない。 前記 認定のけん銃発射行為の態様からは,被告人において,被害者に弾丸が当たらないように意識して発射したとは到底認められない。 そうすると,いずれにせよ,殺意に関する上記認定は,動かない。 イ弁護人は,被告人は被害者から貸金の回収を図ろうとしていたし,被害者に対する監禁・傷害の結果を隠すために殺害を行うとは考えられないなどとして,被害者を殺害する動機がないと主張する。 しかし,証拠によると,被告人は,被害者の借金の肩代わりをさせるために,その知人等に多数回電話を架けたものの,いずれの者からも断られておおり,借金回収の現実的な見込みはなかったこと,自らの弟分であるBやDなどが,被害者に対する監禁や小指切断を含む暴行行為に関与しており,被害者を解放すれば弟分も共犯者として逮捕されるおそれがあったこと,被告人自身,他の者を巻き込むことを嫌う性格であったことが認められ,このような当時の被告人が置かれていた状況からすると,弁護人が主張する上記各事項は,いずれも殺害の動機を否定するものとはならない。 ウその他,弁護人は被告人に殺意が存在しないことをるる主張するが,いずれも前記認定を左右するものではない。 【累犯前科】被告人は,平成17年2月9日大阪高等裁判所で窃盗,詐欺,詐欺未遂,覚せい剤取締法違反,大麻取締法違反,銃砲刀剣類所持等取締法違反の各罪により懲役7年6月に処せられ,平成23年10月18日その刑の執行を受け終わったもので,この事実は捜査報告書によって認める。 【法令の適用】罰条判示第1の行為刑法60条,220条判示第2,第7の各行為いずれも刑法60条,204条判示第3,第9の各行為いずれも銃砲刀剣類所持等取締法31条1項,3条 の13(判示第9につき,さらに刑法60 条,220条判示第2,第7の各行為いずれも刑法60条,204条判示第3,第9の各行為いずれも銃砲刀剣類所持等取締法31条1項,3条 の13(判示第9につき,さらに刑法60条)判示第4,第8の行為のうちけん銃加重所持の点,第13の各行為いずれも銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1項,3条1項(判示第8につき,さらに刑法60条)判示第5の行為刑法199条判示第6,第10の各行為いずれも刑法235条(判示第10につき,さらに刑法60条)判示第8の行為のうち日本刀の所持の点銃砲刀剣類所持等取締法31条の16第1項1号,3条1項判示第11の行為覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条判示第12の行為覚せい剤取締法41条の2第1項科刑上一罪の処理刑法54条1項前段,10条(判示第8の日本刀の所持及びけん銃の加重所持の各罪は,1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,1罪として重いけん銃の加重所持罪の刑で処断。)刑種の選択判示第2,第6,第7,第10の各罪につき懲役刑を,判示第3,第9の各罪につき有期懲役刑を,判示第5の罪につき無期懲役刑をそれぞれ選択累犯加重判示第1,第2,第6,第7,第10ないし第12の各罪につきそれぞれ刑法56条1項,57条(再犯の加重)判示第3,第4,第8,第9,第13の各罪につきそれぞれ刑法56条1項,57条(同法14条2項の制限内で再犯の加重) 併合罪の処理刑法45条前段,46条2項本文(判示第5の罪について無期懲役刑を選択したので,他の刑を科さない。)未決勾留日数の算入刑法21条没 再犯の加重) 併合罪の処理刑法45条前段,46条2項本文(判示第5の罪について無期懲役刑を選択したので,他の刑を科さない。)未決勾留日数の算入刑法21条没収刑法19条1項1号,2号,2項本文,覚せい剤取締法41条の8第1項本文(主文記載のけん銃1丁は,判示第5の犯罪行為の用に供した物であるとともに,判示第3,第4,第8,第9,第13の各犯罪行為を組成した物であり,被告人以外の者に属しない。主文記載のけん銃実包2発は,判示第13の犯罪行為を組成した物であり,被告人以外の者に属しない。主文記載の日本刀1振は,判示第7の犯罪行為の用に供した物であるとともに,判示第8の犯罪行為を組成した物であり,被告人以外の者に属しない。主文記載の覚せい剤白色結晶3袋は,いずれも判示第12の罪に係る物で,犯人である被告人が所有する。)訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書き【量刑の理由】 1 本件で最も重い犯行は,けん銃を用いて被害者1名を殺害した判示第5の殺人事件である。そこで,まず,この殺人及びそれに至るまでの一連の神戸事件の犯行に見合う被告人の責任の範囲を検討する。 神戸事件は,被告人が被害者を長時間にわたって監禁し,その間,繰り返し暴行を加え,小指切断などの極めて残酷な傷害行為まで及び,被害者をさんざん苦しめた末に殺害するに至っているという経過があり,殺害に至るまでの行為は,相当悪質である。また,被害者に致命傷を負わせたけん銃は被告人が常日頃から 持ち歩いていた物であり,被告人は,それ以前にも被害者に向けて威嚇発射をしている。このような事件全体の経過を通じてみれば,被告人の行為はとても悪質で,違法性が強いものと考えられる。 被告人が車内で被 ち歩いていた物であり,被告人は,それ以前にも被害者に向けて威嚇発射をしている。このような事件全体の経過を通じてみれば,被告人の行為はとても悪質で,違法性が強いものと考えられる。 被告人が車内で被害者を撃ったことについては,場当たり的な側面がある可能性は否定できず,被告人が被害者を殺したいという積極的な意欲を有していたとまでは認められない。しかしながら,後部座席上に被害者がいることを分かっていながら,後部座席に向けてけん銃を発射していることから,人命を奪う危険性について被告人には十分な認識と認容が認められるのであって,被告人の殺意の強さの程度が弱いとはみられない。また,上記のとおり徐々に行為を過激化させたあげくけん銃発射まで及んだ被告人の一連の行動は,被害者の生命・身体という法益を軽んじる態度が顕著に認められることから殺人が偶発的な行為ともいえないものがある。 そのような神戸事件の目的は,貸金の回収とその末の事件の隠蔽にあるとみられるところ,たかだか10万円の借金の返済を求めるために苛烈な暴行を加え,その後,殺害するに至ったことには酌量の余地がない。被害者に対する暴行には,共犯者の関与も認められるが,いずれも被告人の指示に基づくものか,その意向を汲んで行われたものといえる。貸金の回収のために,共犯者を次々と関与させ,一連の神戸事件を主導した被告人の意思決定に対しては,厳しい非難が向けられるべきである。 このようにみると,殺人事件を中心とする神戸事件の犯行に見合う被告人の刑の範囲は,けん銃による殺人事件の類型の中でも,相当重い部類に属するといえ,有期懲役刑の上限(30年)付近から無期懲役刑も視野に入れて検討すべき範囲と考えるのが相当である。 2 被告人は,さらに大阪事件及びその他の事件も行っているので,その行為に対する責任も加える え,有期懲役刑の上限(30年)付近から無期懲役刑も視野に入れて検討すべき範囲と考えるのが相当である。 2 被告人は,さらに大阪事件及びその他の事件も行っているので,その行為に対する責任も加えることとなる。 なかでも大阪事件は,素手で共犯者の加害行為に応戦していた被害者に対し, 他の手段を採ることなくいきなり日本刀で斬り付けて重傷を負わせた傷害事件と,一般人の安全を脅かす住宅街でのけん銃発射事件という非常に悪質で重大な事件であるので,大阪事件の行為に見合う被告人の刑だけでも,かなり重いものにならざるを得ない。 3 このようにみると,神戸事件の行為に見合う被告人の刑の範囲は,けん銃による殺人事件の類型の中でも,相当重い部類に属するものといえるところ,これにそれ自体でも重い大阪事件の責任や,その他の事件に対する責任も加味して考えると,全事件の行為に見合う被告人の刑の範囲は,有期懲役刑の上限(30年)では到底評価し尽くせないといえ,無期懲役刑が相応しいといえる。 4 その上で,行為責任以外の事情を検討しても,被告人の刑を有期懲役刑に減軽するほどの事情は見られないのであるから,被告人に対しては無期懲役刑に処するのが相当である。 (求刑無期懲役,主文同旨の没収)平成26年3月4日神戸地方裁判所第2刑事部 裁判長裁判官増田耕兒 裁判官辻井由雅 裁判官小西俊輔

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