1 地域自治会において,宗教関係費の支出を一般会計とは区別しないまま一括して区費を徴収する方法が,当該宗教を信仰しない者にとっては,事実上,宗教上の行為への参加を強制するものであり,信教の自由ないしは信仰の自由を侵害し,憲法20条1項前段,2項,地方自治法260条の2第7項,8項等の趣旨に反し,違法であるとされた事例。 2 地域自治会の対応は,不十分,不適切ながらも,改善への努力や,原告らに対する配慮をうかがうことができ,社会的な許容限度を超え,直ちに損害賠償を帰結するだけの権利侵害行為ではないとされた事例。 主文 1 原告らが被告b町区の構成員の地位を有することを確認する。 2 原告らの,被告b町区に対する,原告らを被告b町区の構成員名簿(会員名簿)に記載せよとの訴えを却下する。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用はこれを3分し,その2を原告らの負担とし,その1を被告b町区の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項と同旨 2 被告b町区は,原告らを被告b町区の構成員名簿(会員名簿)に記載せよ。 3 被告b町区は,原告ら各自に対し,110万円及びこれに対する平成12年1月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告亡D訴訟承継人Eは,被告b町区と連帯して,原告ら各自に対し,第3項の金員のうち55万円及びこれに対する平成12年1月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告らが,構成員として加入した地域自治会である被告b町区(以下「被告町区」という。)が氏子費等の神社関係費の支出を一般会計とは区別しないまま一括して区費を徴収していたのに対し,そのような区費の徴収方法は原 ,構成員として加入した地域自治会である被告b町区(以下「被告町区」という。)が氏子費等の神社関係費の支出を一般会計とは区別しないまま一括して区費を徴収していたのに対し,そのような区費の徴収方法は原告らの信教の自由を侵害するとして,神社関係費を控除した区費の支払をしようとしたところ,被告町区に受領を拒否され,それ以降,被告町区の構成員として扱われずに様々な不利益を受けたとして,被告町区に対し,構成員の地位を有することの確認と構成員名簿への登載を求めるとともに,被告町区及びその代表者に対し,被告町区の対応等により原告らの信教の自由ないしは信仰の自由(宗教的人格権)が侵害されたとして,不法行為に基づき,慰藉料等の損害賠償の支払を求めた事案である(遅延損害金の請求を含む。)。 1 基礎となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,又は括弧内掲記の証拠により容易に認めることができる。 (1) 当事者等(原告ら)ア原告A及び同B(以下,「原告ら」というときには,原告両名を指すこともあるし,原告Aのみを指すこともあり,それらを厳密に区別しない。)は,平成3年7月6日,b町の現住所に転入し,被告町区に構成員(以下「区民」という。)として加入した(甲1,甲74)。 イ原告らは,いずれも浄土真宗の信者である(原告らはいずれも浄土真宗の寺院の住職の家に生まれた。甲74)。 (被告町区)ア被告町区は,少なくとも平成3年以前から存在し,主として佐賀県a市b町(以下「b町」という。)の住民らで組織する地域自治会であり(以下,略して「自治会」ともいう。),同9年5月20日(告示日),地方自治法260条の2に基づき,「地縁による団体」として法人の認可を受けた団体である(甲2,乙33)。 イ亡D(以下「D区長」という。)は,少なくとも平成3 いう。),同9年5月20日(告示日),地方自治法260条の2に基づき,「地縁による団体」として法人の認可を受けた団体である(甲2,乙33)。 イ亡D(以下「D区長」という。)は,少なくとも平成3年ころから被告町区の区長及びa市の嘱託員を務めてきたが,同12年4月9日,それらの職を辞した(甲2の2,甲52,乙20)。 ウ平成12年4月9日,C(以下「C区長」という。)が被告町区の区長に就任した(甲29,乙25)。 エ平成12年7月24日,D区長が死亡し,相続人の一人である妻のEが,その訴訟上の地位を承継した(他の相続人に対する訴えはいずれも取り下げられた。)。 (2) 被告町区(乙20,乙25,被告代表者C)ア被告町区は,行政区域としてのa市b町の全区域をその区域としており(当該区域内に他の自治会は存在しない。),平成13年当時,全世帯数は約520戸,人口は約1600人で,古くには農村地域の共同体として発展したが,近年は急速に都市化,住宅化が進み(大部分が一戸建てであるが,集合住宅の数も多い。),農家世帯の数は全世帯数の一割程度まで減少している(甲77,乙7,乙26,乙27,乙29)。 イ被告町区は,住民相互の連絡,美化,清掃等区域内の環境整備,公民館施設等の維持管理及び区有財産等の保全管理,体育活動,文化活動その他区の行事等に関することを目的とし(甲2の2),それらの目的を達成するために,区民から一定額の区費を徴収している。 ウ被告町区は,上記イの目的に沿って,a市との連絡,回覧板の回付,募金等のとりまとめや,地区の清掃活動や体育祭,敬老会,子供会をはじめ,公民館での各種会合等の活動を行っている。 エ被告町区へ加入するか否かは,居住者,転入者の自由な意思による(任意加入の団体)。 オ被告町区は,転入者に対し,被告町区がa ,敬老会,子供会をはじめ,公民館での各種会合等の活動を行っている。 エ被告町区へ加入するか否かは,居住者,転入者の自由な意思による(任意加入の団体)。 オ被告町区は,転入者に対し,被告町区がa市から嘱託された事務があり,同市から市民への伝達,連絡等の事務を担っていること(厳密には嘱託されているのは区長だが,その事務は,実際には被告町区の組織と労力を使って遂行されており,実質的には被告町区がa市から嘱託されていると評価してよい。),地区内での防犯,交通安全等を推進する必要があることなどを示した上,文書により,被告町区への加入を依頼している(甲75,乙13)。 カ平成13年当時の被告町区への加入状況をみると(世帯を基準),b町以外に居住する者で被告町区に加入している世帯が3戸,b町内では,全世帯約520戸のうち,他の自治会に加入している世帯が7戸,原告ら以外にどこの自治会にも加入していない世帯が2戸で,その他全ての世帯が被告町区に加入しており,b町内における加入率は98パーセントを超えている。 キ被告町区の区長は,「a市政事務委嘱に関する規則」により,a市から,印刷物等の集配布及び各種の伝達(市報等の配布),担当町区内の世帯別居住者台帳の整備等の事務を嘱託されている(甲51,被告町区には同区の区長以外にa市の嘱託員はいない。)。その際,区長は,「a市非常勤特別職の報酬及び費用弁償に関する条例」により,a市から,報酬及び日当の支払を受ける(甲95)。 ク地方自治法260条の2は,地縁団体としての地域自治会について,以下のとおり定めている。 (ア) 法人化の要件について,「住民相互の連絡,環境の整備,集会施設の維持管理等良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行うことを目的とし,現にその活動を行っていると認められること」 (ア) 法人化の要件について,「住民相互の連絡,環境の整備,集会施設の維持管理等良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行うことを目的とし,現にその活動を行っていると認められること」(2項1号),「その区域に住所を有するすべての個人は,構成員となることができるものとし,その相当数の者が現に構成員となっていること」(同項2号)などと定めている。 (イ) 自治会への加入について,「正当な理由がない限り,その区域に住所を有する個人の加入を拒んではならない。」(7項)と定めている。なお,加入拒否ができる「正当な理由」とは,「その者の加入によって,良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行うことを目的とする当該地縁による団体の目的及び活動が,著しく阻害されることが明らかであると認められる場合など,その者の加入を拒否することについて,社会通念上も,また同条2項3号の規定の趣旨からも客観的に妥当と認められる場合」をいう(自治省通達)。 (ウ) 活動等について,「民主的な運営の下に,自主的に活動するものとし,構成員に対し不当な差別的取扱いをしてはならない。」(8項),「特定の政党のために利用してはならない。」(9項)などと定めている。 (3) 甲神社(甲3,乙25,被告代表者C)(甲神社の施設等)ア甲神社は,b町内に存在する神社であり,その歴史は古く,数百年前にまでさかのぼると考えられる。 イ甲神社は,神社本庁を包括法人として,昭和28年7月2日に宗教法人法による法人格を取得し,Fが宮司(神職)として代表役員を勤め(平成10年2月17日就任),C区長をはじめ被告町区の役員らが責任役員を兼ねている。 ウ甲神社には,宮司は常駐していない(Fはa市h町の乙神社の代表役員も兼任している。甲61)。 エ甲神社は,b町内に境内 2月17日就任),C区長をはじめ被告町区の役員らが責任役員を兼ねている。 ウ甲神社には,宮司は常駐していない(Fはa市h町の乙神社の代表役員も兼任している。甲61)。 エ甲神社は,b町内に境内地2筆,山林1筆を所有し(甲4の1ないし3),その境内には,正面にしめ縄を掲げ,賽銭箱,鈴などを備えた拝殿があり,その奥に階段でつながった本殿がある(その中に「神体」が置かれていると考えられる。)。境内の入口から拝殿正面までは参道が続いており,入口付近には左右一対の石灯籠と一の鳥居が,さらに進んだところに二の鳥居があり,これら2つの鳥居にはいずれも「天満宮」という社号標が掲げられている。参道を拝殿に向かって進むと,右側には参拝の際に手を浄めるための手水舎があり,さらに進むと,拝殿正面の両側に一対の石造りの狛犬が置かれている(甲91,甲93,乙12)オさらに,甲神社の境内には,上記エの各施設の他に,児童のための遊具(被告町区の区費によって造られたもの),相撲の土俵(祭りの際の子供相撲のためのもの),ゲートボール場(2面,a市の大会の会場となっているもの),能舞台(地区の演芸大会等に利用されるもの)などの各施設が置かれ,いずれも被告町区の住民らによって利用されている(甲91,甲93)。 カ甲神社は,b町の住宅地域の中にありながら,その境内には巨木がうっそうと茂っており,上記オの各施設を備え,被告町区の住民らの交流や憩いの場となり,公園施設としての機能を果たしている。 (目的等)ア甲神社の登記簿謄本の目的欄には,「本神社は菅原道真公を奉斉し,公衆礼拝の施設を備へ,神社神道に従つて,祭礼を行ひ祭神の神徳をひろめ本神社を崇敬する者及び神社神道を信奉する者を教化育成し,社会の福祉に寄与しその他本神社の目的を達成するための財産管理その他の業務を行 拝の施設を備へ,神社神道に従つて,祭礼を行ひ祭神の神徳をひろめ本神社を崇敬する者及び神社神道を信奉する者を教化育成し,社会の福祉に寄与しその他本神社の目的を達成するための財産管理その他の業務を行ふことを目的とする。」旨の記載がある。 イ神社本庁は,庁規において,目的,組織等について,「神社神道を宣布し,祭祀を執行し,その道を信奉する者を教化育成し,神宮の奉賛及び大麻の頒布をすることなどを目的とする(3条)。各都道府県に神社庁を置く(59条)。神社庁で,礼拝の施設を備え,神社神道を宣布することなどを目的とする団体は宗教法人となることができる(61条の2)。伊勢の本宮は,本庁の本宗として奉戴する(73条)。」などと定めている(甲60)。 ウ神社本庁は,庁規において,各神社及びその活動等について,「神社は,本殿,拝殿等公衆礼拝の施設を備え,神社神道に従って祭祀を行い,神徳をひろめることなどを主たる目的とする(75条)。宮司を代表役員とする(78条)。神職たる宮司は神社神道に基づいて宗教活動に従事する(87条)。神社が一定の行為をする際には神社本庁の統理の許可が必要である(93条)。神社は,神社本庁,神社庁等に対して負担金を納める義務を負うが(95条),その経費は自らが負担する(96条)。神社の維持について義務を負う信者を,慣例に従い氏子等という(99条)。」などと定めている(甲60)。 (甲神社の運営,行事等)ア甲神社は,被告町区の住民らと共に,毎年,例祭,八朔等の祭りを行っている(ただし,甲神社には,それらの祭りを計画,実行するだけの組織や能力はないから,実際には,氏子集団によって計画,主催されていたと考えられる。)。 イ甲神社は,b町及びその周辺地域に,農業就業者を中心にした氏子集団を持っているが,氏子名簿は作成されておらず,被 力はないから,実際には,氏子集団によって計画,主催されていたと考えられる。)。 イ甲神社は,b町及びその周辺地域に,農業就業者を中心にした氏子集団を持っているが,氏子名簿は作成されておらず,被告町区と明確に区別された氏子組織も形成されていない(もちろん,氏子組織としての独自の会計処理も行われていなかったと考えられる。)。 ウ例祭,八朔等の祭りの際には,祭司たる宮司が,五穀豊穣,風水害の避譲等の祈願(神事)を神社神道の方式に従って行う(上記のとおり宮司が常駐していないため,それらの祭りの際に宮司が甲神社に来て,神社神道による奉納等を主宰している。)。 エ被告町区は,毎年,甲神社に対し,区費の中から,氏子費,社格割等の一定額の金員を支出している。 オまた,被告町区は,例祭,八朔等の祭りの際には,祭りの当番の組に対し,区費の中から,一定額の金員を援助している。 2 争点(なお,以下の判決中で使う略語については,後記第3の1「認定事実」を参照)(1) 区費の徴収方法自体についての適否(被告町区の区費の徴収方法に,憲法及び法律の趣旨に反する権利侵害状態=違法性があったといえるか。被告らはこの点について憲法判断の必要がないと主張するが,下記争点(2)及び(3)の判断にとって不可欠の前提事実であるから,冒頭で当裁判所の判断を示すことにする。なお,被告らの主張の真意は判然としないが,本件で問題となっているのが直接的な憲法判断のケースでないことはもちろんであり,あくまで下記争点(2)及び(3)の前提として,いわゆる間接適用の範囲内での判断であることを念のため付言する。)ア原告らの被侵害利益の性格等イ被告町区(地域自治会)の性格等ウ甲神社の宗教性(神社神道は宗教といえるか。甲神社は宗教団体といえるか。)エ特定宗教関係費の宗 ことを念のため付言する。)ア原告らの被侵害利益の性格等イ被告町区(地域自治会)の性格等ウ甲神社の宗教性(神社神道は宗教といえるか。甲神社は宗教団体といえるか。)エ特定宗教関係費の宗教性(被告町区の目的との関係)(以下,「特定宗教関係費」というときには,形式的な意味において,被告町区の歳出の科目にある「氏子社格割」,「諸手当」,「願成就其他」及び「仏教婦人会」の各費目を併せたものを指すこともあるし,あるいは,実質的な意味において,甲神社,神社神道の維持及び活動のために支出された費用であるという趣旨で使うこともある。)オ徴収と支出の関係(2) 原告らが被告町区の構成員たる地位を有するか。 ア自主脱退の有無(原告らが真に脱退の意思を表明したかどうか。)イ脱退認定取扱の有効性(上記アが否定されたとしても,被告町区は,原告らが本件拒絶通知により区費の支払拒絶を通告するなどしてきたため,原告らによって区の目的及び活動が「著しく阻害されていることが明らか」(自治省通達)であると認め,原告らを区民として扱わないという取扱=脱退認定取扱を行っており,その取扱の有効性が次に問題となる。その際,脱退認定取扱の主たる理由は,原告らによる区費の支払拒絶にあると考えられるから,その支払拒絶について,実体的にも,手続的にも正当な理由があったかどうか,やむを得ない事由があったかどうかが主要な争点となり,それは上記(1)の判断とほとんど重なる。なお,被告町区の規約には除名処分についての規定がないから,この判決中では,「除名処分」ではなく,「脱退認定取扱」として表記することとする。)(3) 不法行為の成否(上記(1)及び(2)の判断を前提として,①区費の徴収方法の違法性は,直ちに不法行為の成立に直結するのか,②被告町区の一連の対応等について, 扱」として表記することとする。)(3) 不法行為の成否(上記(1)及び(2)の判断を前提として,①区費の徴収方法の違法性は,直ちに不法行為の成立に直結するのか,②被告町区の一連の対応等について,不法行為の成立要件としての権利侵害=違法性があったといえるのかが問題となる。)ア違法性の有無(被告町区の一連の対応等を時系列に並べると,①本件申入から脱退認定取扱までの対応,②脱退認定取扱,③脱退認定取扱以降の対応に分けて考えることが可能であり,それぞれについて違法性の有無が検討されるべきである。なお,基本的な事実経過については概ね争いはないが,「本件回答の趣旨」(本件回答を被告町区による区費の受領拒否と評価できるかどうか。)については,大きな隔たりがある。)イ損害額 3 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1)(区費の徴収方法自体についての適否)について(原告らの主張)信教の自由は極めて重要な憲法上の人権であり,最大限に尊重されなければならない。他方,地域自治会は,当該地域に居住する住民のみで構成され,市町村の事務の一部を請負う準公的団体であり,宗教を問題としないはずの事実上全員加入の団体である。甲神社は,菅原道真公を奉斉し,神社神道に則る宗教法人であり,特定宗教団体である。このような団体である被告町区及びその代表者であるD区長が,甲神社に対して特定宗教関係費を支出すること,特定宗教関係費の支払を拒否している区民に対し,区費を強制的に徴収し,徴収に応じなかった区民を被告町区の運営上差別的に取り扱うこと,また,被告町区が特定宗教関係費の支出も含めて包括的に区費全額を支払う以外に方法がないシステムを採り,運用していることは,神社神道を信仰しない原告らにとっては,信教の自由の侵害もしくは信教の違いに起因する差別であり,憲 教関係費の支出も含めて包括的に区費全額を支払う以外に方法がないシステムを採り,運用していることは,神社神道を信仰しない原告らにとっては,信教の自由の侵害もしくは信教の違いに起因する差別であり,憲法20条1項,14条に違反し,違法である。しかも,それらの行為は,地方自治法260条の2第7項(加入拒否の禁止),同条第8項(差別的取扱いの禁止)の法意にも違反し,違法である。 (被告らの主張)宗教的人格権は,その内容が曖昧であり,具体的な法的利益として保障されたものではない。他方,地域自治会は,自由加入の団体であり,何ら地域住民に対して強制力を持つような団体でもない。甲神社は,被告町区の区民らにとっては公園であり,宗教性はない。被告町区が,被告町区内を清掃したり,公民館施設等の維持管理を図ったり,祭りなどの行事をすること及びそのために費用を拠出することは,区の法人としての目的そのものであり,何ら違法ではない。また,被告町区が,宗教的活動を行ったり,強制したりすることはないし,区費の徴収目的にも宗教的意義を有するところはなく,区費の徴収にあたっても,区民の内心を問うことなく一律に徴収しているに過ぎない(原告らが問題とするのは区費の支出であり,徴収方法には違法はない。)。 ア原告らの被侵害利益の性格等について(原告らの主張)本件では,原告らが,信じてもない宗教に関する施設に対し,金銭供与を強制されている事案であるから,消極的宗教的行為の自由(意思に反して特定の宗教行為を強制されない自由)が問題となっており,これは,憲法上の人権である「信教の自由」そのものの問題である。 精神的自由である信教の自由は,裁判所における違憲審査において,経済的自由に比べて優越的地位を有する。また,信仰の対象は,人生の究極的な価値に関する最も根元的な 教の自由」そのものの問題である。 精神的自由である信教の自由は,裁判所における違憲審査において,経済的自由に比べて優越的地位を有する。また,信仰の対象は,人生の究極的な価値に関する最も根元的なものであるし,客観的,合理的な判断にもなじまないから,少数者の自由を保護する必要性が高い。日本でも,ある一つの宗教だけを信仰し,その信仰を潔癖に守り続ける人もいるが,多重信仰的な宗教感情を持つ日本人は,神社仏閣を敬い拝む自らの行為を習俗的,社会儀礼的なものとして捉えがちであり,それらの行為を宗教行為と感じる他者(少数者)の存在に理解が及ばず,善意ないし無意識にそれら少数者の信仰を侵害するおそれが大きい。そして,日本国憲法が,大日本帝国憲法下で神社神道が事実上国教化され,信教の自由が大幅に制限されていたことを反省し,厳格な政教分離の制度をとり,信教の自由の完全な保証を目指したことなどに照らすと,とくに少数者の信教の自由を手厚く保障する必要性は高い。 また,自由に神仏を信仰することは,人間存在にとって不可欠のものであり,かかる「信仰の自由(宗教的人格権)」は,私法上,プライバシーの権利等と同様に,一種の人格権として具体的な法的利益として保護されるべきである(以下,憲法上の人権である「信教の自由」と区別する意味で「信仰の自由」という。)。 原告らは浄土真宗の信者であり,その教えや価値観は神道とは全く相反するし,国家神道の名のもと親鸞の教えが歪められたという戦時中の苦い体験から,どうしても神道には協力できないという強い信念を持つに至った。それにもかかわらず,神道に対して金銭の拠出を求められ続け,極めて重大な精神的苦痛を被った。 (被告らの主張)原告らは,憲法上の人権である信教の自由が侵害されていると主張するが,本件はあくまで私人間効 かわらず,神道に対して金銭の拠出を求められ続け,極めて重大な精神的苦痛を被った。 (被告らの主張)原告らは,憲法上の人権である信教の自由が侵害されていると主張するが,本件はあくまで私人間効力の問題に過ぎない。また,私法上の一種の人格権としての信仰の自由(宗教的人格権)が侵害されたと主張するが,かかる人格権は,その内容において曖昧であり,具体的な法的利益として保障されたものではない(自衛官合祀事件最高裁判決と同旨)。 イ被告町区(地域自治会)の性格等について(原告らの主張)地域自治会は,地域住民相互の連絡,環境の整備,集会施設の維持,管理等,良好な地域社会の維持及び形成に資する地域共同活動を行うことを目的として,市町村の一定の地域(同一地域)に住居するということ(地縁)のみによって形成された,特定宗教についての賛否を加入の問題としない団体である。地域自治会は,歴史的,社会学的及び法的位置づけのいずれからみても,地域占拠性,事実上の全員加入性,包括的な公共的機能を持つ団体で,市町村の事務の一部を請負う準公的団体であり,実質的には加入の自由,脱退が著しく制限された団体である。このような自治会の性格からは,たとえ任意加入した会員に対しても,特定宗教に対して強制的に協力を求めることは,思想,信条及び信教の自由を侵害することになり,許されないというべきである。 (ア) 歴史的側面明治政府は神社神道を国家統合の軸とする政策をとっていたが,その中で,町内会,部落会等は市町村の補助的下部機関となり(その時期には全員加入制が採られていた。甲46),大きな負の役割を果たした。戦後になり,その反省から,文部省通達により町内会と神社の結びつきが禁止されたりもしたが(甲70),現在に至るまで伝統的な自治会と神社の関係は曖昧なまま,明確な 甲46),大きな負の役割を果たした。戦後になり,その反省から,文部省通達により町内会と神社の結びつきが禁止されたりもしたが(甲70),現在に至るまで伝統的な自治会と神社の関係は曖昧なまま,明確な分離がなされずに推移している。被告町区でも,平成10年度までは氏子費,社格割を一般会計予算として支出していたし,同13年に至っても,自治会の組織を使って「神宮大麻」の購入を薦めるなどしている(甲94)。やっと最近になって,憲法の趣旨に従い,自治会と神社との分離を進める動きが各地で起こり始めている(甲41ないし45,甲84,甲88)。 (イ) 社会学的側面被告町区は,b町の全域を区域とし,そこには他の自治会は存在せず,当該地域のa市の嘱託員も被告町区の区長しかいない(地域占拠性)。現在,被告町区では,転入者に対し,被告町区がa市の事務を嘱託されていることなどを強調して強く加入を薦め,実際に加入率も98パーセントと極めて高く,事実上,全戸加入制がとられている(事実上の全員加入性)。また,被告町区は当該区域の地域活動において唯一の包括的役割を担っている団体であり(包括的機能),a市から各種の事務を嘱託されている団体でもある(地方自治体の末端的機能)。 (ウ) 法的位置づけ地方自治法260条の2第7項は正当な理由のない加入拒否の禁止,同条8項は民主的な運営に基づく活動と構成員に対する不当な差別的取扱いの禁止をそれぞれ定めており,地域自治会が公共的な性格を有することを前提にしている。この理は,法人格取得の前後で変わるものではなく,平成6年当時の被告町区にも当然に当てはまる(甲25)。 (被告らの主張)被告町区は地方自治法260条の2に基づいて法人格を与えられた地縁による団体であり,住民により任意に組織された私的団体である。地域自治会 町区にも当然に当てはまる(甲25)。 (被告らの主張)被告町区は地方自治法260条の2に基づいて法人格を与えられた地縁による団体であり,住民により任意に組織された私的団体である。地域自治会は,市町村長の認可によって権利能力を取得するものの,法律上は公法人ではなく,認可が公共団体その他行政組織の一部とすることを意味するものと解釈してはならないと規定され(同条6項),市町村長の一般的監督を受けない(同条15項,民法67条の準用なし)。 そして,地域自治会は,自由加入の団体であり,何ら地域住民に対して強制力を持つような団体ではなく,そこからの脱退によって,一個人として日常生活を送ることが著しく阻害され,あるいは事実上不可能となるような団体ではない。被告町区についても,原告ら以外にも加入していない者がいるし,他の自治会に加入している者もいる。また,原告らは,a市が被告町区に事務を嘱託していることをもって,被告町区が準公共的団体であると主張するが,かかる事務嘱託は,地方公共団体が私人に対して事務を嘱託したものにすぎない。 地域自治会は任意団体であるから,当然私的自治の原則が適用され,特定の政党のためには利用できないが,団体として政治家個人の政治活動を自治会の目的の範囲内において支援することもできるし,収益事業も行うことができる(甲50)。また,区費の支払は強制的なものではなく,自らの意思で被告町区への加入を希望する者のみが,自らの意思で負担する義務である。原告らは,加入しないことによる各種の不利益により,事実上加入が強制されていると主張するが,それらの不利益はいまだ加入を強制しているといえるような程度のものではない。何かの権利を侵害されたと主張するのであれば,脱退すればいいだけである。 ウ甲神社の宗教性について(原告らの主 するが,それらの不利益はいまだ加入を強制しているといえるような程度のものではない。何かの権利を侵害されたと主張するのであれば,脱退すればいいだけである。 ウ甲神社の宗教性について(原告らの主張)判例の定義によると,宗教とは,「超自然的,超人間的本質(すなわち絶対者,造物主,至高の存在等,なかんずく神,仏,霊等)の存在を確信し,畏敬崇拝する心情と行為」をいう(津地鎮祭控訴審判決)。そこでいう宗教とは,日本国憲法が信教の自由の完全な保障を目指した歴史的経緯に照らし,可及的に広く捉えられるべきであり,その内実に体系的教義を持つか否か,具体的な教義教典を持つか否か,教祖を有しているか否か,組織的であるか否かは問わないと考えるべきで,非組織的な民間信仰や宗教的習俗であっても宗教であることは否定できない。 神社本庁が,伊勢神宮を中心に据え,神社神道を行う目的のために設立された団体である以上,かかる団体に組織化されるならば,宗教たる神社神道の拠点としての各神社の宗教性は否定できず,かかる意味からも甲神社の宗教性が認められる。 甲神社は,体系的な教義や教典及び教祖は持たないが,その目的自体に神社神道に従って祭祀を行うことをうたっている宗教法人であり,「御霊信仰」という超自然的,超人間的本質の存在を信じ,無病息災や五穀豊穣を実現できるという崇拝を本質としているから,上記定義に照らして宗教であることは明らかである。また,甲神社は,宮司の常駐こそないものの,近隣のh乙宮の宮司がそれを兼職し,宗教的意義を有する各施設を備え,実際にも,「例祭」,「八朔」といった行事を厳格な神社神道の方式に従って行っており,その宗教性は明らかである。 被告らは,甲神社を宗教ではなく,地域に密着する伝統であると主張するが,それが日本人の傾向であることは否定 八朔」といった行事を厳格な神社神道の方式に従って行っており,その宗教性は明らかである。 被告らは,甲神社を宗教ではなく,地域に密着する伝統であると主張するが,それが日本人の傾向であることは否定できないとしても,それは地域との密着性や住民の意識における非宗教性を示しているにすぎず,甲神社の宗教性を否定するものではない。さらに,先にも指摘したとおり,多重信仰的な宗教感情を持つ日本人は,神社仏閣を敬い拝む自らの行為を習俗的,社会儀礼的なものとして捉えがちであり,それらの行為を宗教行為と感じる他者(少数者)の存在に理解が及ばず,善意ないし無意識にそれら少数者の信仰を侵害するおそれがあることを十分に注意しなければならない。 (被告らの主張)原告らは,神道が一時期軍国主義に利用されたという点だけを固定的,短期的に捉えて,神社仏閣の物理的存在自体をその認識の象徴と位置づけ,当該神社にまつわる諸行事をすべて憲法論に取り込み,宗教であるとの一義的な誤った判断をしているが,これは,長い間培われた歴史的背景を無視するものである。原告らの主張は,神道に対する嫌悪感を物理的存在としての甲神社にぶつけているにすぎず,それは理念と現象の混同である。日本は多神教の社会であり,日本人の宗教観には,神道や仏教を問わずあらゆる宗派理念や宗俗が濃淡の差はあっても満遍なく混在している。したがって,日本人は仏教徒であっても正月の初詣とか,お宮参りを行っても特に違和感を持つことはない。行くか,行かないかはその人の個人的な感情,好き嫌いの問題でしかない。 甲神社は,被告町区の人々にとって,神社というよりも公園となっており,演芸,スポーツ,盆踊りなど共通の使用目的に供されることが多く,神社固有の宗教的儀式が行われるということはまずない。例祭は地区としての無病息災祈願 の人々にとって,神社というよりも公園となっており,演芸,スポーツ,盆踊りなど共通の使用目的に供されることが多く,神社固有の宗教的儀式が行われるということはまずない。例祭は地区としての無病息災祈願,八朔は秋の収穫前に行われる虫や台風などの自然災害避譲を願う農耕社会に根付く伝統的風俗や習慣であり,その宗教色は薄い。原告らは,甲神社に宗教的施設が存在すると主張するが,それは同神社が菅原道真を祭神とする神社であるという沿革からいってむしろ当然である。問題は,その神社が地域住民に共通するイベントを行うときに,そこに集う住民がどのような意識にあるかであるが,被告町区において原告らを除く住民の全部は,甲神社を,区を象徴するものとして,子供のころはそこで遊び,祭りに興じ,また各種行事の際の集合団欒の場(被告町区には他にそのような施設はない。)として親しみ,あるいは地域を守る氏神として受け入れてきたのであり,甲神社は,有形的にも無形的にも優れて土着性を有している。甲神社がそれ自体特定宗教を名乗るものであっても,住民らが地域を守る氏神として甲神社を受け容れたとき,その心情は決して宗教心にのみ根ざすものではく,宗教宗派を超えた存在としての,その地域に居住する者の素朴で純真な住民感情であり,もはや特定の宗教宗派を代表するというものではない。そして,そのような住民感情もさらに希薄化し,神社仏閣を利用して行われる行事も形骸化している現状では,もはや,無宗教に近くなっていると言っても差し支えない(乙40,乙46を参照)。 エ特定宗教関係費の宗教性について(原告らの主張)(ア) 氏子社格割について氏子とは,神社の維持について義務を負う信者のことであるから(甲60),氏子費とは神社の信者としての会費であり,特定宗教関係費である。 また,社格割は,神社それ 主張)(ア) 氏子社格割について氏子とは,神社の維持について義務を負う信者のことであるから(甲60),氏子費とは神社の信者としての会費であり,特定宗教関係費である。 また,社格割は,神社それぞれに掛ける賦課金であり(甲60,神社は神社庁等に負担金を納める義務があり,氏子は神社の維持について義務を負う。),特定宗教関係費である。そして,このような支出が,区の活動目的の範囲外であることは論を待たない。 被告らは,氏子社格割を公園使用の対価であると主張するが,D区長は新聞上で氏子費,社格割の神社神道との関わりを認めるような発言をしており(甲20の1),さらに,被告町区は,佐賀県弁護士会の人権救済勧告が出た後,平成11年度から氏子社格割を農家会計に移管させるなどの是正措置をとっており,これらの事実は,被告町区が氏子費,社格割が神社の信者として負担するものと認識していたことを如実に示している。また,公園使用の対価であることを裏付けるような書類も存在せず,被告らの主張が失当なのは明らかである。 (イ) 諸手当について宮司(給)については,文字どおり,甲神社の宮司(神職で代表役員)に対する手当であり,特定宗教関係費である。仮に,被告町区が主張するように,甲神社の例祭,八朔等の祭りを担当する伝統行事実行当番班に対する手当であるとしても,例祭,八朔自体,神職による神社神道の方式に従って行われる神事を伴うもので,特定宗教の行事の実行そのものに対する支出であり,特定宗教関係費であることを免れない。ことに玉串料の支出については,被告町区の主張によっても,祭りの当番の組に渡される清掃料等の中から,その代表者が宮司に支払っているというのであり(被告代表者C),伝統行事実行当番班に対する手当としての支出と玉串料の支出は直結しており,特定宗教関係費 も,祭りの当番の組に渡される清掃料等の中から,その代表者が宮司に支払っているというのであり(被告代表者C),伝統行事実行当番班に対する手当としての支出と玉串料の支出は直結しており,特定宗教関係費としての支出であることは明らかである。そして,このような特定の宗教的行為への支出が,区の活動目的の範囲外であることは明白である。仮に,目的の範囲を広く捉え,祭りのレクレーション的要素を重視し,そのための支出を目的の範囲内と考えたとしても,構成員の有する自由や権利と矛盾衝突する場合には協力義務にも限界があるというべきである。本件においても,公共的な性格を有する地域自治会が,具体的使途として特定の宗教的行為に対する支出であることが明白に特定している金銭の徴収を強制することは,結局,原告らにとっては,自らが信仰していない特定の宗教について積極的協力を強制されていることになり,協力義務の限界を超えている。 割方給も,社格割と同様「割方」という用語を使用しており,特定宗教関係費である。 (ウ) 願成就其他について例祭,八朔等の祭りの際には,ともに神職が主宰する神社神道の方式に従った神事が行われ,その儀式は一挙手一投足に至るまで祭神の存在を信じ畏敬崇拝する信条と行為で貫かれている(甲58)。したがって,それらの祭りのための支出(玉串料,お飾りの費用等)は,特定宗教関係費である。 (エ) 仏教婦人会について仏教婦人会は,仏教の僧から仏教講話を聞く会で,特定宗教的な性格を有しており,特定宗教関係費である。被告らの主張のように地域における葬儀等のための互助組織であれば,「仏教」という名称をつける必要はないはずである。 (被告らの主張)被告町区は,その目的を達成するために様々な活動をするが,そのために区費を支出,徴収することは何ら違法では 互助組織であれば,「仏教」という名称をつける必要はないはずである。 (被告らの主張)被告町区は,その目的を達成するために様々な活動をするが,そのために区費を支出,徴収することは何ら違法ではない。そして,区費の中で原告らが特定宗教関係費と位置づけるものは,まさに,その目的達成のために必要な費用である。 (ア) 氏子社格割についてこれは,被告町区が甲神社の境内にあるゲートボール場等を利用しているところ,その場所的恩恵に対する対価,場所の維持運営費として,甲神社に渡しているものである。それを最終的に神社庁に納める方法を取るか否か,その使用方法については,最終的には甲神社が決めることであり,区の権限でも,区の関与するところでもない。 (イ) 諸手当について大祭当番班長は,被告町区16組のうち農業を主とする5組が祭りの当番の組となって神域約8500平方メートルの清掃管理や秋祭りを主催することに対する手当,謝礼である。 割方給は,区費の賦課徴収を行う庶務会計実務担当者への手当であり,宗教色は全くない。 (ウ) 願成就其他についてこれは,区民の無病息災及び豊作を願う秋祭りの費用である。 (エ) 仏教婦人会についてこれは,町内住民の葬儀費軽減のため,婦人達が労力奉仕をすることに対する補助であり,被告町区として,区民間の相互扶助活動に対して最低限の費用負担をしているにすぎない。 オ徴収と支出の関係について(原告らの主張)①被告町区における区費の徴収と支出は,毎年,定期総会で同時に併せて決定または確定されており,法的根拠も手続も全く同様であり,租税が法的根拠も手続も全く別個にするのとは異なる。また,②租税が使途を定めずに徴収されるのは,国家が活動していくには莫大な金が必要であり,その使途も多岐に渡るし,政策的な判 手続も全く同様であり,租税が法的根拠も手続も全く別個にするのとは異なる。また,②租税が使途を定めずに徴収されるのは,国家が活動していくには莫大な金が必要であり,その使途も多岐に渡るし,政策的な判断も大きく,その時々の情勢から徴収段階で確定できないからであるが,これに対し,自治会の支出は,毎年ほぼ同様の費目に対して支出がなされており,政策的判断が必要となる余地は少なく,実際にも使途は極めて具体的に定められていて,徴収と支出には直接的,具体的な関連性があり,やはり租税とは異なる。したがって,区費の徴収と支出は,法的根拠,手続を同じくし,かつ,その間に直接的,具体的な関連性がある以上,支出が違憲,違法であれば,当然,徴収手続も違憲,違法となる。 (被告らの主張)徴収した区費が区の予算に基づいて支出される際,仮に何らかの問題がある特定の支出があったとしても,これが直ちに徴収自体を違法とするわけではない。特定の支出のために徴収される寄付金のようなものとは違い,区費というのは区全体の運営一般のために区民全員から徴収されるものであって,区費の徴収と予算に基づく各具体的個別支出とは,①規約の根拠と手続を異にし,②直接的具体的に関連しているわけではないから,当該支出に問題があったとしても,それは予算の執行上の問題であり,徴収の違法性をきたすわけではない(東京高裁平成3年9月17日判決)。 (2) 争点(2)(構成員たる地位の有無)についてア自主脱退の有無(原告らの主張)原告らは,被告町区に対して控除負担の申入をしたのに,本件回答によって特定宗教関係費の支出を含めた区費の一括支払以外の受領を拒否されたため,自らの信仰を守るために,特定宗教関係費を控除した形での支払ができるまで区費の支払を拒否したにすぎず,被告町区を自ら脱退しよう て特定宗教関係費の支出を含めた区費の一括支払以外の受領を拒否されたため,自らの信仰を守るために,特定宗教関係費を控除した形での支払ができるまで区費の支払を拒否したにすぎず,被告町区を自ら脱退しようとしたわけではない。本件拒絶通知は,本件回答に対するリアクションとしてなされており,被告町区を脱退する意思を含んでいないし,文言上,脱退の意思の表明が含まれているわけでもない。また,原告らは,本件拒絶通知の直後である平成6年5月末ころに区費を支払っているし,同年10月には区費の供託も行っており,自主脱退の意思表示をしたのであれば,このような行為に及ぶはずはない。 (被告らの主張)(ア) 本案前の主張被告町区は,原告らが再加入の手続をとれば,これを受け容れる用意があり,そして,被告町区への加入は加入届に簡単な記入を行い,これを提出するだけで可能であるから,わざわざ判決によって区民の地位を確認することによって得られる法的利益は存在せず,原告らに確認の利益はない。 (イ) 本案の主張原告らは,本件拒絶通知によって区民の基本的義務である区費の支払を明確に拒絶し,これにより,自主脱退の意思表示を少なくとも黙示的に行っているというべきである。本件拒絶通知は,これまでの経過を踏まえた上,「ここまで到達した以上区費という負担金の徴収について私の分だけの徴収はおことわりさして頂きます。」となっており,単に一時的に区費の支払を見合わせるという程度のものであれば,被告町区が区費の支払を猶予していた以上,そこまで明言する必要もなかったはずであり,被告町区との決別を宣言したと考えるのが自然である。 これに対し,原告らは,本件拒絶通知の文言上はそのような記載がないなどと主張するが,それでは,なぜ原告らがそのような通知をしたのか合理的な理由を説明でき の決別を宣言したと考えるのが自然である。 これに対し,原告らは,本件拒絶通知の文言上はそのような記載がないなどと主張するが,それでは,なぜ原告らがそのような通知をしたのか合理的な理由を説明できていない。また,本件拒絶通知後の原告らの言動も,自主脱退の事実を否定しない。すなわち,原告らは,自らの判断で一定額を控除して一方的に供託を行い,他方,同じ時期に被告町区を激しく非難する書面を送り付けるなど,その供託は真に区民としての地位を欲してのものなのか,被告町区に対する感情的問題から,あてつけとして供託したに過ぎないものなのか判然としない。区費を支払ってはいるが,その際,本件拒絶通知や自分のこれまでの発言等を明確に撤回するようなことは何もしていない。法務局に対する人権救済申立においても,原告らの和解案(乙18)を受けて,被告町区が,それに近い形で和解条項を回答したにもかかわらず(乙19),和解解決に至らないなど,原告らが真に区民たる地位の回復を目指しているのかは疑問である。そして,被告町区が平成11年度から氏子社格割を農家会計に移管させた後,原告らに再加入を呼びかけたにもかかわらず,それも拒んでいる。 イ脱退認定取扱の有効性(主要部分は上記争点(1)のとおり)(原告らの主張)被告らは,被告町区の目的及び活動が,原告らにより「著しく阻害されることが明らか」(自治省通達)であるから,原告らを区民と扱わないことには正当な理由があると主張するが,そもそも被告町区の規約には除名事由と除名手続についての規定がない以上,適法に除名することはできないはずである。また,目的及び活動を「著しく阻害」するとは,社会通念上極めて例外的な場合を指すというべきであるところ,①本件では,そもそも被告町区の区費の徴収方法自体が違憲,違法であり(上記争点(1) ずである。また,目的及び活動を「著しく阻害」するとは,社会通念上極めて例外的な場合を指すというべきであるところ,①本件では,そもそも被告町区の区費の徴収方法自体が違憲,違法であり(上記争点(1)のとおり),したがって,原告らの区費の支払拒絶には正当な理由があるから,支払拒絶自体を原告らに不利に援用して,目的及び活動を著しく阻害していると認めることは許されない(しかも,原告らは区費の供託も続けている。)。また,②原告らが差別発言をして区長を攻撃し,その言動により区長選出の目処が立たなくなるほど被告町区を混乱させたというが,それは,そもそも被告町区の区費の徴収方法自体に問題があったからであって,原告らの批判は当然の行動であるから,社会通念上,目的及び活動を著しく阻害したと評価できるものではない。 (被告らの主張)地方自治法260条の2第7項は,自治会への加入を拒否するには「正当な理由」が必要であると規定するが,原告らは,①本件拒絶通知において区費の支払を明確に拒絶しただけでなく,②他人を差別発言で罵倒して,区長を攻撃の的にし,区長の選出の目処すら立たなくさせるなどしており,被告町区の良好な関係の維持,円滑な活動,区の目的達成が,原告らにより「著しく阻害されることが明らか」(自治省通達)であるから,被告町区が原告らを区民と扱わないことには正当な理由がある。また,原告らの支払拒絶は,自力救済による権利実現に他ならないのであり,徴収自体を拒否するというのは,手段として何ら正当性を持たない。 (3) 争点(3)(不法行為の成否)についてア違法性の有無(原告らの主張)被告らの行為は,原告らの信教の自由ないしは信仰の自由を侵害するものであり,不法行為を構成する(民法44条1項,709条,710条,719条,前提事実として, 違法性の有無(原告らの主張)被告らの行為は,原告らの信教の自由ないしは信仰の自由を侵害するものであり,不法行為を構成する(民法44条1項,709条,710条,719条,前提事実として,原告らの被侵害利益の性格等,被告町区の性格等についての主張は,上記争点(1)の各項のとおり)。 その侵害の態様は,原告らに対し,区民としての扱いを受けるための条件として,特定宗教関係費の支出を求めるというものであり,重大なものであった。すなわち,被告町区は,平成6年,原告らの本件申入に対し,本件回答において,平成6年度は特定宗教関係費を控除して区費を支払うことを認めず,区費の受領を拒否し,一括支払を要求した。その後,被告町区が,平成6年6月に区費を返還したこと,同年10月以降,原告らが供託した区費を一切受領しないことなどの事実からは,本件回答の「原告から区費を徴収しない。」とは,被告町区から原告らに区費を請求しないというのみならず,原告らから区費の支払の申し出があったとしても受領を拒否するという意味であったことは明らかである。原告らは,本件回答が区費の受領を拒絶するものであり,原告らの主張は全く理解されておらず,単なる解決の引き延ばしであると受け取ったため,やむを得ず区費の支払を拒絶する旨の通知をしたところ,被告町区は,原告らを区民として扱わないことを決め,以後,原告らとの協議も拒否し,単に区費の支払がないからという理由だけで(区費の受領拒絶を続けて),8年以上もの間,原告らを区民として扱わず,下記のとおり,差別的待遇を続け,不利益な取扱を行った。そして,被告らは,平成6年4月の問題提起以降,被告町区の区費徴収のあり方が原告らの信教の自由を侵害すること及び精神的苦痛を与えていることについて悪意である(故意,過失あり)。 (ア) 被告町区 。そして,被告らは,平成6年4月の問題提起以降,被告町区の区費徴収のあり方が原告らの信教の自由を侵害すること及び精神的苦痛を与えていることについて悪意である(故意,過失あり)。 (ア) 被告町区は,法務局人権擁護委員会での人権救済手続においても,D区長の主導により,区費の一括徴収に固執して,協議の申入れを拒否し,合理的解決を図ろうせず,被告らに対し,特定宗教関係費を含めた区費全額を支払うか,拒否して区民とならないかの選択を原告らに強制した。 (イ) D区長は,佐賀県弁護士会人権救済勧告が出るや,その報復として,原告らに対し,a市報の配付を停止した。さらに,原告らに対して回覧板の回付をせず,原告らがした募金も突き返したりした。 (ウ) 被告町区は,原告らに対し,被告町区の総会の案内や平成12年までは運動会の案内を送らなかった。 (被告らの主張)原告らは,区民であることを前提に不法行為の成立を立論しているが,原告らが区民でない以上,a市報や総会の案内を配布する必要はなく,不法行為は成立しない。 また,本件の具体的事情の下では,被告町区の区費の徴収行為やその他の対応が社会的許容限度を超え,公序良俗に反したり,不法行為を構成するものであるとは到底いえない。本件は,当事者間の協議,法務局及び弁護士会への人権救済申立,その後の氏子社格割等の農家会計への移管と段階を経て推移してきたところ,被告町区は,その段階ごとに解決案の提案や原告らへの加入の勧誘等,適切な対応をしてきたのに対し,原告らは,口では解決したいと言うものの,被告らを一切信用しようとせず,総会という手続的な手順を踏むことさえ理解せずに一方的に侮辱を続け,譲歩するというような姿勢を一切見せなかった。原告らは,下記のとおり,自己の目的を達成するためには手段を選ばず,他人を差別発言 ず,総会という手続的な手順を踏むことさえ理解せずに一方的に侮辱を続け,譲歩するというような姿勢を一切見せなかった。原告らは,下記のとおり,自己の目的を達成するためには手段を選ばず,他人を差別発言で罵倒して,区長を攻撃の的にし,被告町区の良好な関係の維持,円滑な活動,区の目的達成を著しく困難にしているのであって,原告らの行為についてこそ不法行為が成立するというべきである。また,D区長の行為は個人としての行為ではなく,あくまでも被告町区の機関としての行為であるから,D区長が個人として不法行為責任を負うことはない。 (ア) 区の法人化に関して区の法人化に対する原告らの非難は,「地域法人そのものが日本にはないとのことです。」,「お宮の財産を盗むことになるそうです。」など何ら合理的理由のないものであり(乙16),その程度は団体における自律的批判の域を超えていた。また,原告らは何ら根拠のない横領の告発まで行っており,原告らの主張,物事の解釈には特異で独善的な傾向が明確であり,これは本件を通じて見受けられるもので,本件紛争の原因でもある。 (イ) 脱退認定取扱に関して原告らの本件申入の内容は,区の法人化を非難する部分も含めて極めて感情的で,賎称を用いるなど,区に対する要求を伝えるものとしてふさわしいものではなかった。しかし,被告町区は,原告らの意思を尊重し,役員会を開催した上で,出席役員全員の連名で原告らに対して本件回答をしたのであって,原告らの要求に対し,一方的にこれを拒絶したようなことはない。そもそも原告らの主張する徴収の有無,応否の決定は,総会決議によるものとされているので(規約第15条),被告町区は,役員会だけで決めることをせず,次期総会で検討することとしたのであり,他方,原告らに配慮して,当該年度の区費については,暫定的に全 ,総会決議によるものとされているので(規約第15条),被告町区は,役員会だけで決めることをせず,次期総会で検討することとしたのであり,他方,原告らに配慮して,当該年度の区費については,暫定的に全額納入を猶予することにしたのである。この点,原告らは,本件回答の趣旨について,被告町区の明確な区費の受領拒絶であり,問題解決を先延ばしするものであったと主張するが,これは本件回答(甲7)の記載文言に明らかに反する解釈であり,感情的な問題からその趣旨を曲解しているといわざるを得ない。また,区費を自ら控除して支払うことは,区の財政上,すべての区民にとって許されない支払方法であり,その申し出を断ったとしても,区費の受領拒絶であるとはいえない。 被告らは,手続上当然でむしろ丁寧といってよい被告町区の対応に対し,これを引き延ばしと決めつけ,「人民裁判に掛ける気か」,「暴力団みたいに」などと悪態をついた末,差別用語も交えて激しく被告町区を非難した後,区費全額についての支払を拒絶してきた。そして,被告町区は,原告らの本件拒絶通知について,役員会において検討した結果,その文言上,原告らの最終的な結論として通告されていること,区費納入は規約に明記された区民の義務であることなどから,原告らを被告町区の区民として扱わないことを決めた(脱退認定取扱)。その理由がどうであれ,納入義務のある区費を納入しないと宣言する者を区民としての取扱いをしないのは当然のことであり(規約第6条),何ら違法な行為ではない。 (ウ) その後の対応等について原告らは,被告町区に対し,平成6年10月22日に内容証明郵便を送り付けたが,その内容は,徐々にエスカレートしてきた被告町区や区長,区民らに対する罵詈罵倒,侮辱が頂点に達したものであった。そのため,法務局に対する人権救済申立にお 年10月22日に内容証明郵便を送り付けたが,その内容は,徐々にエスカレートしてきた被告町区や区長,区民らに対する罵詈罵倒,侮辱が頂点に達したものであった。そのため,法務局に対する人権救済申立において,被告町区が原告らに謝罪を求めても,原告らはこれを拒み,一切妥協しようとはしなかった。このような原告らの対応にこそ非がある。また,被告町区は,弁護士会の勧告を尊重して,氏子社格割を農家会計に移管させた後,その旨が分かる予算書を添付して原告らに再加入を呼びかけたが,原告らは資料すら目を通さずに拒否した。 イ損害額(原告らの主張)被告らの不法行為によって原告らに生じた損害は,下記のとおり,各合計110万円である。 (ア) 慰謝料各100万円原告らは,被告らの不法行為によって,長年にわたり信教の自由を侵害され,かつ宗教の違いによる不合理な差別を受けて多大な精神的損害を被った。その精神的苦痛に対する慰謝料は,金員に評価すると少なくとも原告ら各100万円を下らない。 (イ) 弁護士費用各10万円(被告らの主張)すべて争う。 a市報は月に1回程度配布されるにすぎず,市役所に行けばいつでも入手できるし,原告らにとって,必要な情報へのアクセスが絶たれたということではないから,精神的苦痛自体もなく,慰謝料の対象とはならない。また,原告らの日常生活に最も密着した被告町区内の班の活動については,原告らはその作業や事務に参加できているのだから,その日常生活に支障が出るような事態にはなっておらず,したがって,精神的苦痛も発生しているとはいえない。 第3 争点に対する判断 1 認定事実前記第2の1「基礎となる事実」に加えて,証拠(以下個別に掲記)によれば,以下の事実が認められる(1) 被告町区の会計状況(乙23, とはいえない。 第3 争点に対する判断 1 認定事実前記第2の1「基礎となる事実」に加えて,証拠(以下個別に掲記)によれば,以下の事実が認められる(1) 被告町区の会計状況(乙23,乙35,平成7年4月16日付け「平成6年度b町一般会計決算書並びに平成7年度予算書(案)」を基礎とし,その前後についても必要な範囲で検討する。)(歳入)ア被告町区は,区民から一定額の金員を徴収し,これに前年度繰越金,寄付金等を加えたものを一会計年度の歳入としている。 イ被告町区は,区民から,一戸当たり,月額500円(歳入の科目では「月貫」となっているが,一般的には区費を指すものと考えられる。)と,年額1500円(歳入の科目で「区費」となっているもの。これと前記の「月貫」を合わせたものが,実質的意味での区費であり,この判決中では,「区費」とはすべて実質的意味の区費を指す。)を徴収している。 ウ平成7年度予算において,歳入の総額は512万1823円で,そのうち区費は315万円(500円×12×420戸+1500円×420戸)である。 (歳出)ア被告町区の規約によると,区の事業計画及び予算は,区長が作成し,毎会計年度の開始前に定期総会の議決を経て定め(規約33条),事業報告及び決算は,区長が作成し,監査役の監査を受けた上で定期総会での承認を得なければならない(同34条)。 イ被告町区は,毎年,4月に開催される定期総会において,前年度の決算と当該年度の歳入及び歳出予算についての議決ないしは承認を一括して行っている(決算書と予算書は一枚の用紙である。)。 ウ歳出の科目には,会議費や水道費等の一般費目の中にまじって,「氏子社格割」,「諸手当」,「願成就其他」,「仏教婦人会」の各費目がある。 エ氏子社格割の平成7年度予算は6万1500円であり, )。 ウ歳出の科目には,会議費や水道費等の一般費目の中にまじって,「氏子社格割」,「諸手当」,「願成就其他」,「仏教婦人会」の各費目がある。 エ氏子社格割の平成7年度予算は6万1500円であり,その内訳として,予算説明欄に「氏子1戸当たり150円×(390)+社格割3000」との記載がある(なお,この計算によると,被告町区が計上する氏子費の負担戸数は,区費を負担する総戸数よりも30戸少ないことになる。)。 氏子費について,平成2年度から10年度までの歳出予算を一覧表にすると下記のとおりである(この表からは,同8年度以外のすべての年度で一戸当たりの氏子費としての具体的金額が計上されていること,同7年度以降は区費の増額,戸数の増加にもかかわらず,氏子費の総額は一定額に抑えられていることなどの事実が分かる。)。 社格割については,平成2年度から10年度まで,すべて3000円が計上されている。 氏子社格割は,平成11年度以降は農家会計に移管され,非農家は負担しないことになった。 (費目) (説明欄の記載) (区費の徴収)H2 負担金 140×380(53200) 400×390×12(1年) 3 氏子社格割 150×380(57000) 400×410 4 同 150×390(58500) 400×410 5 同 150×390(58500) 400×410 6 同 150× ( )※1 400×410※2 7 同 150×390(58500) 500×420 8 同 (58500) 500×445 9 同 150 ※2 7 同 150×390(58500) 500×420 8 同 (58500) 500×445 9 同 150× (59000) 500×445 10 同 150× (58500) 500×490(円) (戸) (円) (戸)※1 空欄はいずれも記載がない分である。 ※2 年度途中から500円になった。 オ諸手当の平成7年度予算は5万5000円であり,その内訳として,予算説明欄に「大祭当番班長30000,割方給年25000」との記載がある。 同説明欄の「大祭当番班長」に該当する費目は,平成2年度から6年度までは「宮司(給)」,同8年度には「村行事当番班長」,同9年度及び10年度には「伝統行事当番手当」,同11年度には「村祭当番組手当」,同12年度には「村祭り当番組謝礼」と表記が変遷しているが,同費目の金額は,いずれも3万円と一定している(同11年度及び12年度については金額の明記がないが,諸手当の総額が6万円と一定しており,その前後関係から3万円との推定が可能である。)。 同説明欄の「(区費)割方給」は,平成2年度から7年度までは2万5000円,同8年度から12年度までは3万円が計上されている(同11年度及び12年度については上記同様,推定額)。 諸手当のうち,「大祭当番班長」に該当する費目は,平成13年度から農家会計に移管された(説明欄に区費割方給の3万円のみとなっていることで分かる。)。 カ願成就其他の平成7年度予算は12万8100円であり,予算説明欄には,「区民の無病,農作物豊作祈願等費用他」との記載がある。費目,説明欄の記載 割方給の3万円のみとなっていることで分かる。カ願成就其他の平成7年度予算は12万8100円であり,予算説明欄には,「区民の無病,農作物豊作祈願等費用他」との記載がある。費目,説明欄の記載及びその金額は下記のとおり変遷している。願成就其他のうち,公園管理費を除く部分については,平成13年度から,農家会計に移管された(下記のとおり,同11年度から金額も減少している。)。 (費目) (説明欄の記載) (金額) H2 補助金大祭費,観音様,願成就等 118100(27000)(6000)(85100) 3 願成就他天満宮願成就費用他 118100 4 願成就等他天満宮願成就費用他 118100 5 願成就等他天満宮願成就費用他 118100 6 その他補助無病,豊作祈願等費用他( ) 7 願成就其他区民の無病,農作物豊作祈願等費用他 128100 8 村行事費用 b区の伝統行事等の費用その他 120000 9 願成就他( ) 120000 10 願成就他( ) 120000 ※2 11 公園管理等村祭り等の費用,神社公園管理 60000 12 願成就等村祭り費用,神社公園管理費等 60000 13 願成就他公園管理費(13年度より) 30000 ※1 空欄はいずれも記載がない分である。 ※2 平成11年度から「公園管理等」の費目が登場同年度 就他公園管理費(13年度より) 30000※1 空欄はいずれも記載がない分である。 ※2 平成11年度から「公園管理等」の費目が登場同年度から「氏子社格割」は農家会計へ移管キ仏教婦人会の平成7年度予算は2万円である(同2年度から12年度まで,同6年度に金額の記載がないのを除き,すべて2万円が計上されている。)。 同12年度の予算説明欄には,「葬祭活動奉仕等の補助」との記載がある。 (2) 本件訴訟に至るまでの事実経過(甲74,乙20,乙25,原告A,被告代表者C)(被告町区の法人化に関する紛争)ア D区長は,地方自治法の改正により,地域自治会の法人化の途が開かれたことから,平成4年4月,被告町区の定期総会の場において,区の法人化とともに,被告町区所有のため池等(乙41)の共有名義の登記を早期に被告町区名義の登記に移すことを検討している旨述べた。 イこのD区長の発言について,原告らは,D区長は甲神社の建物等を被告町区の財産とすることを検討しているものと曲解し,仏教徒としてこれを阻止する必要があると考えた。そこで,原告らは,「仏さまや神さまの財産を取りもどして我々の財産にして云々というような慣習は,これまでの日本には見あたりません。・・私の場合,我々の財産にするという方法に加われないことが解りました。お宮さんの財産を盗むことになるそうです。・・手錠がかかればいやです。そうして,地域法人そのものが日本には無いとのことです。」などと激しく抗議した(乙16)。 (原告らによる区費の支払拒絶)ア原告らは,平成6年春ころ,班長を通じて被告町区に対し,「特定宗教には協力できないので,特定宗教関係費を除く自治会費の納入で区費納入は済んだことにして欲しい。本来は自治会と氏子団体の会計そのもの ア原告らは,平成6年春ころ,班長を通じて被告町区に対し,「特定宗教には協力できないので,特定宗教関係費を除く自治会費の納入で区費納入は済んだことにして欲しい。本来は自治会と氏子団体の会計そのものを分離すべきだ。」との申入れをした(このような内容及び趣旨の申入れを「控除負担の申入れ」という。)。 イしかし,被告町区は,原告らに対し,これまでどおり一括して区費を支払ってもらいたい旨要求し,区費の徴収方法を変更しなかった。 ウそこで,原告らは,平成6年4月ころ,被告町区に対し(葉書),控除負担の申入れをするとともに(被告町区からの回答なし),同月末ころ,4月分の区費を支払った(甲30)。 エ原告らは,平成6年4月30日(同月27日付け内容証明郵便),D区長らに対し,原告らの信教の自由が侵害され続けているとして,再び控除負担の申入れをし,被告町区としての回答を促した(甲6)。 オ被告町区は,区の役員会を開いた上,平成6年5月3日,原告らに対し,同年度中は特定宗教関係費の支出を区別せずに区費の徴収を続けるが,原告らの申入れについては,平成7年度の定期総会の議題として提案し,その際,原告らにも申入れの趣旨についての説明を予定していること,その間,原告らから区費を徴収しないことを書面により回答した(甲7,原告らがこの時点までに行った控除負担の申入れを,それぞれ単独又は併せて「本件申入」といい,それに対する被告町区のこの回答を「本件回答」という。)。 カさらに,被告町区は,平成6年5月3日,原告らが所属する班の班長に対し,本件回答の内容を周知させた上,「隣保班長さんは,5月分の区費その他区長より依頼した金銭の徴収はしないでください。既に徴収した4月以降の金銭は区会計より返送することにしております。」などと指示した(乙17)。 キこれに対し, ,「隣保班長さんは,5月分の区費その他区長より依頼した金銭の徴収はしないでください。既に徴収した4月以降の金銭は区会計より返送することにしております。」などと指示した(乙17)。 キこれに対し,原告らは,平成6年5月12日(同月11日付けの内容証明郵便),D区長らに対し,「個人負担分の免除(基本的人権の一つ,信教の自由)を認めて下さいと云うことです。この点のご回答は得ていません。・・平成七年度のb町定期総会の議題として提案し私の書簡の主意と理由を説明せよとのことですが,誰も否定出来ない基本的人権をどうお考えですか?認める以外に方法がありますか?それをまるで総会の名を借りて宗教裁判にでもかけるみたいに回答をわざわざ引きのばして皆の前に立たせて人権剥奪の決定でもしようというのでしょうか。それとも公開人民裁判のつもりですか?」などと通告するとともに,平成7年度の定期総会までは区費を徴収しないとの点については,「お便りの第三項は区長さんの権限と責任でなされたことであって私がとやかく申し上げるべき筋あいではありません。私の要求は暴力団みたいに領収書も交附せず国民から金銭を取りたてるのは御免です御改正くださいと違法なことですと申しているのです。・・だから任意団体である自治会の総会でどのような予算が決定されても,人を(中略)扱いしておいて謝ることもせず誤魔化せばすむと思っている婦人会長さんや,信教の自由さえ認めない自治会の予算は異教徒の私にとっては毎回々々踏み絵のような精神的苦しみをなめさせられ加えて強制的に領収書もなしに金銭を徴収されるのですから申し訳ありませんがここまで事態が到達した以上区費という負担金の徴収について私の分だけの徴収はおことわりさして頂きます。」などと通告し,区費の支払を明確に拒絶した(甲8,この通知を「本件拒絶通知」とい 訳ありませんがここまで事態が到達した以上区費という負担金の徴収について私の分だけの徴収はおことわりさして頂きます。」などと通告し,区費の支払を明確に拒絶した(甲8,この通知を「本件拒絶通知」という。なお,この時点以降,被告町区が原告らを区民として扱っていないという事実については,当事者間に争いがない。)。 ク原告らは,平成6年5月末ころ,同年5月分から7月分までの区費を支払ったが(控除しない全額),被告町区は,同年6月ころ,原告らに対し,それを返還した(甲30)。 ケ原告らは,平成6年10月18日,D区長に対し,控除負担の申入れをしたが,受領を拒否されたため,同月19日,毎月の区費から神社管理費分としてそれぞれ23円を控除した上,同年4月分から9月分までの区費を供託した(甲31)。 コ原告らは,平成6年10月22日(同月20日付けの内容証明郵便),D区長らに対し,「恐れ入りますがもうそろそろ信教の自由という基本的人権の大切さについて御理解御納得御解決頂けませんか。永いこと(平成四年以来)困ったことです。いつまでも皆様方が憲法違反を犯しつづけたり人権侵害を押し通したりしてみても何一つ良い結果は出ないと思いませんか?それより心を開いて解って頂いて私の願いを受け入れて下さいませんか。・・恐れ入りますが御返事を平成6年10月末日までに文章にて御回答下さい。・・甲神社は氏子さんで維持運営して頂くべきものです。ただそれだけです。それ以外のことは私とは何の関係もないことです。婦人会長さんの私に対する(中略)扱いはあやまってもらいます。私は(中略)でも(中略)でもない日本人ですからどうぞよろしくお願いします。」などと通告した(甲9,乙1)。 サこれに対し,被告町区は,平成6年10月26日,原告らに対し,「すでに被告町区の役員会で確認して原告ら (中略)でもない日本人ですからどうぞよろしくお願いします。」などと通告した(甲9,乙1)。 サこれに対し,被告町区は,平成6年10月26日,原告らに対し,「すでに被告町区の役員会で確認して原告らから平成6年度の区費を徴収していないことから,本件回答のとおりであり,新たな回答の必要がない。」旨回答した(甲10)。 (佐賀地方法務局への人権救済申立)ア原告らは,平成6年12月19日付け内容証明郵便で,法務大臣に対し,特定宗教関係費を区費として強制的に徴収されているとして,その改善を求めた(甲32)。 イ原告らは,平成6年末ころ,①特定宗教関係費を含めて区費を強制的に徴収するのは信教の自由の侵害であり,それを除く納入で区費を納めたと認めること,②被告町区において差別的取扱をやめることなどを求めて,佐賀地方法務局に人権救済を申し立てた(そのころ,特定宗教施設の清掃費不足金の徴収についても問題となっていたが,それは「班」の決定事項であり,平成9年になって班が不徴収の決定をしたので解決した。)。 ウ原告Aは,平成7年4月,弁護士らと共に被告町区の定期総会に出席しようとしたが,拒否された(それだけではなく,その際に約束した後日の協議についても拒否された。)。 エその後,法務局による調査や双方出席しての話し合いが行われ,双方から和解案が提案されたりもしたが,区費から控除すべき特定宗教関係費の具体的な金額等について一致をみなかったため,もの分かれとなった(甲11ないし14)。 (佐賀県弁護士会への人権救済申立)ア原告らは,平成8年9月30日,同9年7月7日,同年8月25日,佐賀県弁護士会に対し,①原告らが被告町区の構成員であることの確認,②被告町区が特定宗教関係費を原告らから徴収せず,それを控除した区費の支払で区費の支払義務を果たした 9年7月7日,同年8月25日,佐賀県弁護士会に対し,①原告らが被告町区の構成員であることの確認,②被告町区が特定宗教関係費を原告らから徴収せず,それを控除した区費の支払で区費の支払義務を果たしたと認められること,③被告町区が会計処理において特定宗教関係費と一般会計を区別することなどの措置を求めて,人権救済の申立てをした(甲17,甲18)。 イ佐賀県弁護士会は,原告らの申立てを認め,平成11年1月28日,被告町区に対し,「氏子社格割」及び諸手当の中の「大祭当番班長(宮司給)」を特定宗教関係費(甲神社,神社神道の維持及び活動のために支出された費用)であると認めた上で(諸手当の中の「割方給」は,区費の賦課徴収を行う庶務会計担当者への手当であり,「願成就其他」も,区民の無病息災及び農作物の豊作を祝う秋祭りなどの習俗的な活動に支出されるものである限り,いずれも特定宗教関係費と断定することはできないと判断した。),被告町区は,①原告らを構成員名簿に登載するとともに,原告らに対し,区総会議案の送付等の措置を行うこと,②特定宗教関係費を原告らから徴収せず,それを控除した区費の支払で区費の支払義務を果たしたと認めること,③会計処理において,特定宗教関係費と一般会計を区別することのなどの措置を採るよう勧告した(甲19)。 ウ被告町区は,上記イの勧告を受けたにもかかわらず,平成11年4月に開催予定の定期総会の案内を原告らに送付しなかった。 エそこで,原告らは,平成11年4月10日,弁護士らと共に被告町区の定期総会の場を訪れ,弁護士会の勧告に従わなかったことを抗議したが,被告町区が原告らを区民と認めない旨の回答をしたため,さらに,同月14日,被告町区に対し,文書により弁護士会の勧告に従った形での協議を申入れた(甲21,甲22)。 オこれに対し,被告 抗議したが,被告町区が原告らを区民と認めない旨の回答をしたため,さらに,同月14日,被告町区に対し,文書により弁護士会の勧告に従った形での協議を申入れた(甲21,甲22)。 オこれに対し,被告町区は,平成11年8月10日,原告らに対し,平成11年度の予算書を添付した上(これをみると,同年度から氏子社格割が農家会計に移管されたことが分かる。),「申入れの内容は一方的で,平成7年3月14日佐賀法務局人権擁護課法務官及びa市人権擁護委員の来訪を始め数回の調査があっています。・・その内容は,A氏からb町区長及び役員等への内容証明郵便に対して,当方より回答した文書を持って協議解決の方策を見出す最善の方法であったと信じています。・・(本件拒絶通知により)区民の権利・義務を自ら放棄されたと見なして今日に到っています。・・(佐賀県弁護士会の)この勧告内容は,事実確認をしないままの勧告文書であると判断します。その一例は法務局に区費を供託された事であります。平成6年10月19日2462円の供託があった以外,法務局からの新たな供託通知はあっていません。・・貴殿から話し合いの申入れがあっていますが,これまでの経過は十分にご承知と存じますので,勧告文書は文書として受けとめますが,新たな協議は存在しないと考えます。したがって,A氏がb町区民として参加される場合,・・(被告町区規約の加入規定等)に基づき一般加入所帯として加入届を提出されること以外に対処出来ません。」などと回答した(甲23)。 カそのころ,被告町区は,原告らに対し,班長を通じて被告町区への再加入を呼びかけたが,原告らはこれを拒否した。また,そのころ,被告町区は,原告らに対するa市報の配布を取りやめた。 キ原告らは,平成11年9月,被告町区の区費の供託を始めた(甲36,甲102,平成13年12 かけたが,原告らはこれを拒否した。また,そのころ,被告町区は,原告らに対するa市報の配布を取りやめた。 キ原告らは,平成11年9月,被告町区の区費の供託を始めた(甲36,甲102,平成13年12月まで継続している。)。 2 争点(1)(区費の徴収方法自体についての適否)について(1) 当裁判所は,平成6年当時の被告町区の区費の徴収方法(特定宗教関係費の支出を一般会計とは区別しないまま一括して区費を徴収する方法)は,神社神道を信仰しない原告らにとっては,事実上,宗教上の行為への参加を強制するものであり,原告らの信教の自由ないしは信仰の自由を侵害し,憲法20条1項前段,2項,地方自治法260条の2第7項,8項等の趣旨に反し,違法であったと考える。 以下,各争点に従って検討を進め,その理由を述べる。 (2) まず,甲神社の宗教性(神社神道は宗教といえるか。甲神社は宗教団体といえるか。)について判断する。 ア憲法20条1項前段は「信教の自由」を保障し,同条2項は何人も「宗教上の行為」への参加を強制されないと定めているが,そこでいう「信教」,「宗教」とは,超自然的,超人間的本質(すなわち絶対者,造物主,至高の存在等,なかんずく神,仏,霊等)の存在を確信し,畏敬崇拝する心情と行為をいうと解される(津地鎮祭控訴審判決)。また,同条1項後段により特権の付与等が禁止された「宗教団体」,憲法89条により公金支出が禁止された「宗教上の組織若しくは団体」とは,特定の信仰を有する者らによる,当該宗教目的を達成するための組織若しくは団体を指すものと解される。 そして,前記認定事実等によると,神社神道は,礼拝の対象として様々な祭神をまつり,人々は,そこに人知を超えた超自然的,超人間的本質の存在を信じた上,無病息災や五穀豊穣の実現を一心に崇拝するのであるから して,前記認定事実等によると,神社神道は,礼拝の対象として様々な祭神をまつり,人々は,そこに人知を超えた超自然的,超人間的本質の存在を信じた上,無病息災や五穀豊穣の実現を一心に崇拝するのであるから,上記の定義に照らし,本質的に宗教であると認められる。 また,甲神社は,氏子名簿はなく,明確な氏子組織も形成されていないが,これを崇拝する氏子の集団がいて(被告町区の住民らによって形成されている。),祭司たる宮司は常駐していないものの,例祭,八朔といった祭りの際には,宮司が来て,五穀豊穣,風水害の避譲等の祈願(神事)を神社神道の方式に従って行っている。さらに,甲神社は,①組織としての側面,すなわち,神社本庁を包括法人として宗教法人格を取得し,神社本庁に負担金を納める義務を負い,一定の行為を行うには神社本庁の許可が必要とされるなど,神社本庁に組織化されていること,②目的としての側面,すなわち,甲神社,神社本庁のいずれも,神社神道に従って祭祀を行うことを目的として定めていること,③施設としての側面,すなわち,甲神社の境内に宗教的意義を持つ多くの施設等が備えられていること(実際にそれらの施設で神事や参拝が行われる。)など,いずれの側面からみても,神社神道に基づいた宗教的活動を行うことを目的としていることは明らかである。これらの事実によると,甲神社は,憲法20条1項後段,憲法89条でいう宗教団体であると認められる。 イこれに対し,被告らは,「日本は多神教の社会であり,仏教徒であっても正月の初詣とかその他お宮参りを併せ行っても特に違和感を持つことはない。 行くか,行かないかはその人の個人的な感情,好き嫌いの問題でしかない。 甲神社は,長い間,地域を守る氏神として住民らに受け入れられ,その境内は,演芸,スポーツ,盆踊りなど共通の使用目的に供されること 行くか,行かないかはその人の個人的な感情,好き嫌いの問題でしかない。 甲神社は,長い間,地域を守る氏神として住民らに受け入れられ,その境内は,演芸,スポーツ,盆踊りなど共通の使用目的に供されることが多く,住民らにとって神社というよりも公園となっており,神社固有の宗教的儀式が行われるということはまずないのであって,有形的にも無形的にもすぐれて土着性を有しており,無宗教に近い。例祭は地区としての無病息災祈願,八朔は秋の収穫前に行われる虫や台風などの自然災害避譲を願う農耕社会に根付く伝統的風俗や習慣であり,宗教色は薄い。」などと主張して,甲神社は,もはや習俗,伝統にすぎず,宗教性は認められないと主張する。 しかし,日本国憲法が,過去の経験を踏まえて徹底した信教の自由を保障しようとしたことに照らすと,宗教の意義については可及的に広く捉えるべきであり,具体的な教義,教典の有無,体系的教義の有無,教祖の有無等は問わないと解され(したがって,民間信仰や宗教的な習俗であっても,なお宗教と認められる。),かかる定義からすると,上記アで検討したとおり,甲神社の宗教性は否定できない。 たしかに,前記認定事実によると,甲神社の境内には遊具やゲートボール場等の施設が置かれ,被告町区の住民らによって利用されていること,甲神社の境内は,被告町区の住民らの交流や憩いの場となり,公園施設としての機能を果たしていることなどの事実が認められ,その限りでは被告らの主張は的を得ている。また,C区長が,甲神社について,「長い歴史の中で,無病息災を願うと共に五穀豊穣を祈願して,老若男女の何もなかった単調な時代から,一つの憩いの場所として現在に至っています。・・多くの区民の融和を図るのが目的です。」などと供述するとおり,被告町区では,長い間,甲神社が氏神として地域の人々の 若男女の何もなかった単調な時代から,一つの憩いの場所として現在に至っています。・・多くの区民の融和を図るのが目的です。」などと供述するとおり,被告町区では,長い間,甲神社が氏神として地域の人々の心の拠り所となり,また,例祭,八朔等の祭りによって住民らの絆が強まり,あるいは,区民の融和が図られてきたことは想像に難くない。しかも,その際,多くの住民は,神社神道の宗教性について特別な意識を持たなかったのではないかと考えられる。これらの事実によると,被告らが主張するとおり,甲神社,神社神道は,キリスト教等と比べても,日本の社会,風俗に深く溶け込んでおり,その宗教性が希薄になっていることもまた否定できない。 しかしながら,日本国憲法の制定の経緯,すなわち,日本国憲法が,明治憲法下で神社神道が事実上国教化されたことを反省し,政教分離の制度をとった上,少数者の信教の自由の保障を徹底させようとしたことに照らすと,憲法20条,89条でいう宗教とは,第一には神社神道そのものを念頭に置いたものと言わざるを得ず,神社神道が当該地域に深く溶け込んでいるとか,多数の住民らが宗教であるとの意識を持たなかったとしても,それらのことから,甲神社の宗教性が否定されるものではない。被告らは,正月の初詣やお宮参りに行くか行かないかは,その人の個人的な感情,好き嫌いの問題でしかないというが,もともと特定の行為について宗教的な感情を抱くかどうかは極めて相対的な問題であり,それは,神社神道に対して宗教的な感情を明確に抱かない多数者にとってはそうかもしれないが,少数者にとっては必ずしもそうではない。本件での原告らがそうであったように,神社神道以外の確たる信仰を持つ者(少数者)にとっては,たとえ正月の初詣やお宮参りであっても,自己の信仰とは決して両立することのない禁忌となるこ しもそうではない。本件での原告らがそうであったように,神社神道以外の確たる信仰を持つ者(少数者)にとっては,たとえ正月の初詣やお宮参りであっても,自己の信仰とは決して両立することのない禁忌となることもあり得るのであって,かかる意味でも,甲神社の宗教性は否定されないというべきである。 ウしたがって,神社神道は宗教であり,かつ,甲神社は宗教団体であるから,これにより,甲神社の宗教性が基礎付けられる。 (3) 以上のとおり,甲神社に宗教性が認められる以上,仮に,国ないしは地方公共団体が,原告らに甲神社に関わる宗教上の行為への参加等を強制すれば,それは憲法20条1項前段,2項違反となるが,本件で侵害主体として問題となっているのは地域自治会という任意団体であるから,私人間の問題となり,直ちに憲法違反の問題が生じるわけではない。 しかしながら,その強制の態様,程度が社会的に許容しうる限度を超えるときには,原告らの信教の自由を侵害するものとして,民法1条,90条の趣旨に照らし,私人間においても違法と評価すべきである(三菱樹脂事件最高裁判決)。 そして,違法性の有無,すなわち,強制の態様,程度が社会的な許容限度内であるか否かを判断するためには,原告らの被侵害利益の性格や,侵害主体とされる被告町区(地域自治会)の性格等について,さらに詳細に検討を加える必要がある。 (4) そこで,まず,原告らの被侵害利益の性格等について検討する。 ア日本国憲法は,政教分離の制度をとった上,信教の自由を手厚く保障している(憲法20条,89条)。これは,人がある特定の信仰を持つということが,場合によってはその人が自らの価値観のすべてを信仰に委ねることをも意味し,信仰を持つことが人の精神的活動において中核をなすからである。かかる意味で,信教の自由は,憲法が保障する人権の ということが,場合によってはその人が自らの価値観のすべてを信仰に委ねることをも意味し,信仰を持つことが人の精神的活動において中核をなすからである。かかる意味で,信教の自由は,憲法が保障する人権の中でも中核的な人権の一つといえる。 そして,信仰が人間の存在にとって重要な意味を持つものであるが故に,そこに自由な領域を確保する利益は,対国家との関係だけでなく,私人に対する関係においても十分に保障されるのが望ましい(もっとも,私法関係においては,一次的には私的自治の原則が妥当するから,実際には様々な制約がある。)。かかる意味で,信仰の自由は,それを原告らが主張するような宗教的人格権と呼ぶかは別にして,私人間においても法的に保護された利益とみるべきである。 イこれに対し,被告らは,原告らが主張する宗教的人格権はその内容が曖昧であり,具体的な法的利益として保障されたものとはいえないと主張するが,本件では,違法性の有無の判断をするために被侵害利益の性格を問題としているに過ぎないから,「具体的」な権利である必要まではないというべきである。 ウしたがって,原告らの信教の自由ないしは信仰の自由は,私人に対する関係においても十分に尊重されるべきである。そして,個人の信仰に権力的に介入することで,特定の信仰を禁止したり,信仰しない宗教上の行為に参加を強制したりすることは,個人の価値観自体を否定することを意味し,それはその人の存在自体に関わることでもあるから,そのような態様の侵害を受けたとき,信教の自由ないしは信仰の自由は,大きな危機にさらされることになる。 (5) しかしながら,私人間,とくに,本件のように,特定の私的団体とその構成員との関係において,団体が構成員に対して特定の宗教上の行為への参加等の強制をしたとしても,それが直ちに構成員の信教の 。 (5) しかしながら,私人間,とくに,本件のように,特定の私的団体とその構成員との関係において,団体が構成員に対して特定の宗教上の行為への参加等の強制をしたとしても,それが直ちに構成員の信教の自由ないしは信仰の自由の侵害であり,違法であるということはできない。それは,多くの場合,当該団体が任意加入の私的団体であること,すなわち,構成員が,①自らの自由な意思に基づき,そのような強制が伴う関係を形成したからであり(自己責任),②意に反する強制があっても,当該団体から脱退することで侵害状態を回避することができるからにほかならない(脱退による回避)。 しかし,形式的には任意加入の団体であっても,①加入の自由が大きく制限されていたり,②脱退の自由が大きく制限され,あるいは,困難なためにその期待可能性がないなど,実質的に強制加入の団体ないしはそれに準ずるような団体であると認められる場合には,事情が異なってくる。 (6) そこで,次に,被告町区(地域自治会)の性格等について検討する。 ア被告町区は,法律上は公法人ではなく,認可によって公共団体その他行政組織の一部とみなされるわけでもない(地方自治法260条の2第6項)。また,市町村長の一般的監督も受けない(同条15項,民法67条の準用がない。)。被告町区は,任意加入の団体であり,その加入及び脱退は,原則として区民の自由な意思による(地方自治法260条の2第7項は,正当な理由があれば加入拒否ができる旨定めるが,少なくとも脱退については,形式的には完全に自由である。)。 しかしながら,任意加入の団体とはいっても,前記認定事実のとおり,被告町区は,その目的に従い,地区の清掃活動や体育祭,敬老会,回覧板の回付等の当該地域における様々な共同活動,広報活動を行い,地域活動における中核的な役割を果たし はいっても,前記認定事実のとおり,被告町区は,その目的に従い,地区の清掃活動や体育祭,敬老会,回覧板の回付等の当該地域における様々な共同活動,広報活動を行い,地域活動における中核的な役割を果たしている上,a市との連絡や市報の配布等の事務を行うなど,公共的な役割をも担っている。そして,それらの活動及び各種サービスは,その性質上,当該地域の居住者全員が参加し,享受することが予定されたものであり,かつ,それが望ましい状態でもある。実際にも,被告町区への加入状況をみると,平成13年当時において,被告町区の総世帯数は500戸以上,人口も1600人を超え,その規模は必ずしも小さくないにもかかわらず,加入率は98パーセント以上と極めて高い。これは,住民らに対する熱心な勧誘の結果だとみるにしても,任意加入の団体としては極めて高い割合であり,結局,被告町区では,事実上,運用として全戸加入制がとられていたものとみるほかない(加入及び脱退の自由が確保されているかぎり,運用として全戸加入制をとること自体は望ましいものであったといえるが,そのような運用をする以上,構成員に対する関係では,より慎重な態度が要求されるというべきである。)。そして,被告町区に加入しないということは,生活の重要な基盤である居住地において,上記のような地域の共同活動に参加できず,かつ,各種サービスを受けられないということであり,しかも,事実上,全戸加入制をとってきた被告町区の方針に明確に反することでもある(そのことで,地域社会から疎外されることもあり得るし,そのことに大きな心理的負担を感じる者は少なくないと考えられる。)。これらの事実によると,被告町区への加入は,強制されているとまではいえないにしても,その自由は大きく制限されているというべきである。 また,被告町区からの脱退が自 者は少なくないと考えられる。)。これらの事実によると,被告町区への加入は,強制されているとまではいえないにしても,その自由は大きく制限されているというべきである。 また,被告町区からの脱退が自由であるとはいっても,b町には被告町区以外の地域自治会は存在しないから(地域占拠性),脱退者には,居住地区の自治会には全く加入しないか(もちろん被告町区へ再加入するという方法もある。),居住地から離れた他の自治会へ加入するか(自治会がもともと地域に密着した活動を行うものである以上,一般的には加入の利益は少ないものと考えられるし,転居となれば相当に困難である。),いずれかの選択の余地しかない。これらの事実によると,脱退についても,その自由は大きく制限されているというべきである。 そして,地方自治法は,地域自治会の法人化について,「良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行うことを目的としていること」(同法260条の2第2項1号)と定め,その目的の公共性を要件としている。また,「すべての居住者に構成員資格があること,その相当数の者が現に構成員となっていること」(同項2号)と定め,居住の事実のみが構成員の資格要件であり(特定の信仰,主義,主張等を共通にすることを前提としない。),現に相当数の者が加入していることが法人化の前提であるとしている。さらに,「正当な理由がないかぎり地域自治会への加入を拒否できない。」(同条7項)と定め,区による加入拒否を制限しているが,これは,地域自治会が公共的な役割を果たしていることを考慮したからにほかならない。 このことは,例えば一般企業が採否の自由(契約の自由)を有し,ことに傾向団体であれば,加入者に対して特定の信仰,主義,主張等を問うことが相当とされる場合もあるのとは明らかに異なる。さらに,「民主 。 このことは,例えば一般企業が採否の自由(契約の自由)を有し,ことに傾向団体であれば,加入者に対して特定の信仰,主義,主張等を問うことが相当とされる場合もあるのとは明らかに異なる。さらに,「民主的な運営と不当な差別の禁止」(同条8項),「特定の政党のための利用の禁止」(同条9項)などを定め,地域自治会の公共性を側面から担保しようとしている。 イこれに対し,被告らは,「地域自治会は,自由加入の団体であり,何ら地域住民に対して強制力を持つような団体ではない。原告ら以外にも被告町区に加入していない者がいるし,他の自治会に加入している者もいる。原告らは加入しないことによる各種の不利益により,事実上加入が強制されていると主張するが,それらの不利益はいまだ加入を強制しているといえるような程度のものではない。」旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,平成13年当時において,総戸数500戸以上に対し,他の自治会に加入しているのがわずか7戸,原告ら以外でどこの自治会にも加入していないのはわずか2戸にすぎず,加入率は98パーセントを超えており,これは,都市化,住宅化が進み,他の地域からの転入者が増え続けている現状に照らすと,驚異的な加入率というほかない。また,たしかに,被告らが主張するとおり,加入しないことによる不利益は,各種サービスが受けられないという個々の部分だけをみると,すぐに日常生活に支障を来すような種類のものではないかもしれないが,むしろ,目に見えない部分のもの,地域社会から疎外されるという心理的負担は,個人差があるにせよ,軽視できるものではない。 ウしたがって,被告町区は,その公共性が法的にも明確に位置づけられている上,加入及び脱退の自由が,いずれも大きく制限されており,これらによると,被告町区は,強制加入団体とは同視できないにし ない。 ウしたがって,被告町区は,その公共性が法的にも明確に位置づけられている上,加入及び脱退の自由が,いずれも大きく制限されており,これらによると,被告町区は,強制加入団体とは同視できないにしても,それに準ずる団体であるというべきである。そして,被告町区がこのような性格を持つ団体である以上,その運営は,構成員が様々な価値観,信仰を持つことを前提にしてなされなければならない。 (7) それでは,このような性格を持つ被告町区が,原告らに対し,特定の宗教上の行為への参加を強制したといえるだろうか。本件では,被告町区が,区民らから徴収した区費の中から,甲神社に関する特定宗教関係費を支出した行為について問題となっているため,さらに,それらの各支出の宗教性について検討する必要がある。 (8) そこで,次に,特定宗教関係費が,甲神社,神社神道の維持及び活動のために支出された費用であるといえるか,被告町区の活動の目的との関係をまじえながら,以下,検討する。 ア氏子社格割について前記認定事実のとおり,被告町区は,甲神社に対し,毎年,氏子費,社格割として,それぞれ一定額の金員を支払っているが,氏子費とは,文字どおり,神社の信者(氏子)としての会費のことであり,社格割とは,神社本庁によって神社それぞれに掛けられる賦課金のことをいう(甲60)。したがって,氏子社格割は,形式的には特定宗教関係費である。 これに対し,被告らは,被告町区の住民らが甲神社の境内を公園として利用し,各施設を利用しているのであり,氏子社格割は,その公園使用等の対価であるから,特定宗教関係費ではないと主張する。たしかに,前記認定事実によれば,甲神社の境内は,私有地でありながら地区の住民らに常に開放され,住民らの交流や憩いの場として利用されていること,甲神社が,長い間,地域 宗教関係費ではないと主張する。たしかに,前記認定事実によれば,甲神社の境内は,私有地でありながら地区の住民らに常に開放され,住民らの交流や憩いの場として利用されていること,甲神社が,長い間,地域を守る氏神として住民らに受け入れられ,被告町区の社会,風俗に深く溶け込み,その宗教性が希薄になっていたことなどの事実が認められ,これらの事実によると,場所的な恩恵を受けているという客観的側面,支払う側の住民らの意識という主観的側面のいずれの側面からみても,氏子社格割が,一面において公園使用等の対価という意味を有していたことは否定できない。このことは,被告町区が,平成11年度以降,氏子社格割を農家会計へと移管させた際,それと同時に「公園管理等」という歳出の費目を作ったことからもうかがわれる(もっとも,費目の表記の変遷が激しいため,真実がそうだという趣旨ではなく,被告町区の認識が推測できるという趣旨にすぎない。)。そして,公園使用等のために区費を支出することは,まさに区民の福祉にかなうことであり,区の活動目的の範囲内の支出である。 しかしながら,公園使用等の対価であることと,特定宗教関係費であるということは両立しないわけではない。前記認定事実によれば,甲神社は,被告町区の住民らによって形成された氏子集団を持っているが,氏子名簿は作成されず,被告町区と明確に区別された氏子組織も形成されていなかったこと(しかも,独自の会計処理も行っていなかったこと),被告町区は,例祭,八朔等の祭りの際には,祭りの当番の組に対して一定額の援助を行い,その当番の組によって祭りが執り行われていることなどの事実が認められ,これらの事実によると,結局,被告町区と氏子集団は,組織的にも会計的にも,区別されていなかったものと認められる(したがって,それらの祭り自体を被告町区 りが執り行われていることなどの事実が認められ,これらの事実によると,結局,被告町区と氏子集団は,組織的にも会計的にも,区別されていなかったものと認められる(したがって,それらの祭り自体を被告町区が主催していたと評価できる。)。そして,そのような状況の中で,甲神社が,毎年,神社神道の方式に従って五穀豊穣等の祈願(神事)を行っているというのであるから,結局,被告町区の各支出(氏子社格割,その他)は,主として甲神社,神社神道そのものを支えるという趣旨で支出されていたと認められる。被告町区が平成11年以降,氏子社格割を農家会計に移管させたのは,そのような事実を考慮したからにほかならない。 したがって,氏子社格割は特定宗教関係費であると認められる。そして,甲神社,神社神道そのものを支えるという趣旨で金員を支出することが,区の活動目的の範囲外の支出であることは明らかである。 イ諸手当について前記認定事実のとおり,諸手当の中の「大祭当番班長」(平成7年度)という費目は,各年度ごとにその表記が変遷しているが,金額は3万円と一定しているため,支出内容が変更したのではなく,単に表記を変遷させたにすぎないと考えられる。そして,同費目は,平成2年度から同6年度までは「宮司(給)」となっており,これは,文字どおり,甲神社の宮司に対する手当であるから,結局,「大祭当番班長」に該当する費目は,形式的には特定宗教関係費である。 これに対し,被告らは,同費目は,境内の清掃管理や祭りの当番の組への手当であると主張するが(実際に,平成9年度及び10年度には「伝統行事当番手当」という費目となっている。),結局,その手当の中から宮司へ玉串料等が渡されているのであるから(被告代表者C),同主張を前提としても,同費目は,祭りの際に神事を主宰した宮司への手当にほかな 当番手当」という費目となっている。),結局,その手当の中から宮司へ玉串料等が渡されているのであるから(被告代表者C),同主張を前提としても,同費目は,祭りの際に神事を主宰した宮司への手当にほかならない。 もっとも,先にも述べたように,例祭,八朔等の祭りによって,被告町区の住民らの絆が強まり,あるいは,区民の融和が図られてきたことは想像に難くないのであって,その効果を重視すれば,本件の支出が被告町区の活動目的の範囲内の支出であったとみる余地がある。 しかしながら,住民らの絆を強め,区民の融和を図るという目的自体は相当なものであっても,その手段を例祭,八朔といった祭りに求めることは,その祭りが神社神道の方式に従った神事を伴うものである以上,神社神道を信仰しない者に対する配慮が必要である。しかも,被告町区が農村地域の共同体であった時代には,そのような配慮はほとんど不要であったかもしれないが,都市化,住宅化が進んだ現在では,これまで住んでいた住民らとは異なる価値観,宗教意識を持つ者が他の地域から転入してくる可能性も増えているのであって,より慎重な配慮が必要となってくる。結局,そのような現状や,被告町区の公共的な性格等に照らせば,被告町区のような地域自治会は,本来の目的である地域における共同活動に専念すべきであり,神社神道の方式に従った神事を伴う祭りの主催は,被告町区とは明確に区別された氏子集団等の組織によって行われるべきである。 したがって,「大祭当番班長」という費目は,被告町区が祭りを実質的に主催する中で,宮司に対し,神事の主宰に対する手当として支出されていることから,特定宗教関係費であると認められる。 諸手当の中の「(区費)割方給」は,「割方」が賦課金という意義を持っていることや,頭に「区費」と表記のあることから,被告らの 手当として支出されていることから,特定宗教関係費であると認められる。 諸手当の中の「(区費)割方給」は,「割方」が賦課金という意義を持っていることや,頭に「区費」と表記のあることから,被告らの主張のとおり,区費の賦課徴収を行う庶務会計実務担当者への手当であると一応認められ,特定宗教関係費ではない。 ウ願成就其他についてこの費目は,平成2年度には「大祭費」として支出され(乙23),被告代表者Cも,「9人の役員が主体となって願成就を実行する。その中の食事費,千燈火,お飾りの材料費など,様々な費用が入っている。その中には区が直接関与するものと,祭りの当番の組が関与するものの2つが入っている。」旨供述するとおり,例祭,八朔のための費用の一部にあてられたものと認められる。したがって,上記イと同様であり,被告町区が祭りを実質的に主催する中で,区費の中から甲神社に支出されている限り,特定宗教関係費であると認められる(具体的な支出関係については,証拠上判然としないが,この判決の結論には影響しない。)。 エ仏教婦人会についてこの費目は,被告らの主張のとおり,被告町区内の住民の葬儀費軽減のため,婦人達が労力奉仕をすることに対する補助であると認められる(被告代表者C,その趣旨で「婦人会」という表記をしたものと考えられる。)。したがって,同費目は,「仏教」という表記があるものの,区民間の相互扶助活動に対する補助であると認められ,区の活動目的の範囲内の支出であり,特定宗教関係費ではない。 (9) 以上のとおり,被告町区は,その目的の範囲を超えて,区費の中から特定宗教関係費を支出しているが,他方,原告らにとっては,区民の義務として課されるのは区費の支払義務(被告町区の側からいえば,区費の徴収)であるから,まず,区費の徴収と支出との関係について の中から特定宗教関係費を支出しているが,他方,原告らにとっては,区民の義務として課されるのは区費の支払義務(被告町区の側からいえば,区費の徴収)であるから,まず,区費の徴収と支出との関係について検討を加えた上,原告らから区費を徴収することが,原告らに対し,宗教上の行為への参加を強制するものと評価できるかどうかについて検討する。 (10) そこで,まず,区費の徴収と支出との関係について判断する。 被告らは,仮に被告町区の支出に違法な点があったとしても,「区費は,特定の目的,支出のために徴収される寄付金のようなものとは違い,区全体の運営一般のために区民全員から徴収されるものであって,区費の徴収と予算に基づく個別の各支出とは,①規約の根拠と手続を異にし,②直接的具体的に関連しているわけではないから,当該支出に問題があったとしても,それは予算の執行上の問題であり,徴収の違法性を来すわけではない(東京高裁平成3年9月17日判決)。」旨主張する。 たしかに,前記認定事実によると,区費の徴収と支出は,被告町区の規約上,根拠及び手続をいずれも異にしているが(規約33条,34条),地域自治会の活動に伴う支出というのは,もともと限定されたものであって(政策的判断の余地が少ない。),実際にも,支出の費目は,数年間,ほぼ一定していて変化がないこと(乙23),それらの支出に対応する形で機械的に区費の徴収が確定されてきたことなどの事実が認められ,これらの事実によると,区費の徴収と支出との間には,直接的,具体的な関連性があるというべきである(被告らが指摘する上記の判決は,国税の徴収と支出との関係に関するものであって,本件のような目的,活動が限定された地域自治会には妥当しない。)。 したがって,被告町区の区費の支出と徴収は,違法性の有無の判断において相互 判決は,国税の徴収と支出との関係に関するものであって,本件のような目的,活動が限定された地域自治会には妥当しない。)。 したがって,被告町区の区費の支出と徴収は,違法性の有無の判断において相互に密接に関連するものといえる。 (11) そして,本件では,被告町区は,原告らに対し,何らかの宗教上の行為への参加を直接に強制したわけではないが,特定宗教関係費の支出を続けながら,原告らから区費を徴収するということは,原告らにとっては,区民であるために,信仰しないことを誓った神社神道のために区費の支払を余儀なくされるということであり,これは,被告町区への加入及び脱退の自由が大きく制限されているという現状に照らすと,事実上,原告らに対し,宗教上の行為への参加を強制するものであったと認められる。 (12) したがって,冒頭に述べたとおり,被告町区の区費の徴収方法は,神社神道を信仰しない原告らにとっては,事実上,宗教上の行為への参加を強制するものであり,原告らの信教の自由ないしは信仰の自由を侵害し,憲法20条1項前段,2項,地方自治法260条の2第7項,8項等の趣旨に反し,違法であったと認められる。 3 争点(2)(構成員たる地位の有無)について(1) 本案前の主張について被告らは,原告らが再加入の手続をとれば,被告町区にはそれを受け容れる用意があり,その手続も簡易であるから,区民の地位を確認することによって得られる法的利益は原告らには存在せず,本件では確認の利益はないと主張する。しかしながら,その主張は,原告らが一旦被告町区から脱退したことを前提とするものであり,失当というほかない。そして,原告らが,現時点での区民の地位の確認を求めるということは,その時点まで区民としての地位が継続してきたことの確認をも当然に含むものであるから,かかる意味にお るものであり,失当というほかない。そして,原告らが,現時点での区民の地位の確認を求めるということは,その時点まで区民としての地位が継続してきたことの確認をも当然に含むものであるから,かかる意味において,原告らには確認の利益がある。 もっとも,原告らの請求のうち,構成員名簿への登載については,登載自体により原告らに何らかの具体的な利益が発生し,あるいは,不登載により直ちに原告らに不利益が及ぶようなことは考えられないから,本件では,地位の確認だけで足りるというべきである(構成員名簿の性質や登載請求の根拠についても判然としない。)。したがって,構成員名簿への登載を求める訴えの部分については確認の利益がなく,却下すべきである。 (2) 自主脱退の有無についてア本件では,原告らが,本件拒絶通知により,自ら被告町区を脱退する意思表示を行ったかどうかが問題となるところ,前記認定事実によれば,原告らは,平成6年春以降,被告町区に対し,控除負担の申入れを何度も行い,本件拒絶通知の直後にも区費を支払っていること,その後,原告らは,さらに控除負担の申入れをし,それが受け容れられないとみるや,自らの判断で特定宗教関係費として一定額を控除した分の区費を供託し,その後も控除負担の申入れを行っていることなどの事実が認められ,これら本件拒絶通知の前後の経過によると,原告らは,特定宗教関係費を控除して区費の支払をすること,すなわち,被告町区の区民たる地位に執着していたことがうかがわれるし,本件拒絶通知自体,その文面上,脱退の意思が読みとれ得るようなものでもない。これらの事実によると,原告らによって脱退の意思表示が行われた事実はなかったと認められる。 イこれに対し,被告らは,「本件回答により,被告町区が区費の支払を猶予していた以上,区費の拒絶を明言する必要はな の事実によると,原告らによって脱退の意思表示が行われた事実はなかったと認められる。 イこれに対し,被告らは,「本件回答により,被告町区が区費の支払を猶予していた以上,区費の拒絶を明言する必要はなかったはずであり,これは,被告町区との決別を宣言したものと考えるのが自然である。また,自らの不当な言動等を撤回しないまま行った区費の支払や供託は,真に区民としての地位を欲してのものなのか疑問である。」などと主張し,黙示的な脱退の意思表示があったと主張する。 しかしながら,そもそも,原告らは本件回答を区費の支払猶予とは受け取っておらず,その趣旨を取り違えているから,上記の主張はその前提事実を欠いている。また,原告らに不当な言動があったことは,脱退認定取扱の有効性や不法行為の成否には影響すると考えられるが,脱退の意思表示の有無と関係があるとは考えられない。 ウしたがって,本件において,原告らが自ら脱退の意思表示を行った事実は認められないから,原告らは,なお区民としての地位にある。 (3) 脱退認定取扱の有効性について本件で,被告町区は,原告らが,①本件拒絶通知において区費の支払を明確に拒絶したこと,②他人を差別発言で罵倒して,区長を攻撃の的にし,区長の選出の目処すら立たなくさせるなど被告町区を混乱させたことを根拠にして,被告町区の良好な関係の維持,円滑な活動等が,原告らにより「著しく阻害されることが明らか」(自治省通達)であるとして,脱退認定取扱を行っている。 そこで,まず,①の当否について検討すると,被告町区のような地域自治会では,その運営費のほとんどが区民からの区費によってまかなわれており,区費の支払義務は区民にとって最も重要な義務の一つであるから,区費の支払をしない者,あるいは,その支払を明確に拒絶した者を,区から脱退したものと 費のほとんどが区民からの区費によってまかなわれており,区費の支払義務は区民にとって最も重要な義務の一つであるから,区費の支払をしない者,あるいは,その支払を明確に拒絶した者を,区から脱退したものとして扱うことは,一般的には有効である(実際には,不払の理由やその期間等の検討が不可欠であり,一概にはいえないが,手続が規定されていないから除名できないとの原告らの主張は採用できない。)。しかしながら,区費の不払や支払拒絶自体に,正当な理由があると認められる場合には,それを根拠にした不利益な取扱,すなわち,支払拒絶をした者に対する脱退認定取扱はできないというべきである。そして,本件では,上記2で検討したとおり,被告町区の区費の徴収方法自体が違法であったと認められる以上,原告らの支払拒絶には正当な理由があるから,それは脱退認定取扱の根拠とはなり得ない。 次に,②について検討すると,原告らに相当性を欠くような言動が多々みられたのはたしかであるが,それは,もともと被告町区の区費の徴収方法に問題があったことが原因の一つでもあるし,先に述べたとおり,被告町区への加入及び脱退の自由が大きく制限されている現状に照らすと,その地位の喪失事由の有無については厳格に判断すべきである。そうすると,いまだ本件の程度では,被告町区の良好な関係の維持,円滑な活動等が,原告らによって「著しく阻害されることが明らか」であるとまでは認められないというべきであり,脱退認定取扱の根拠とはなり得ない。 したがって,本件において,脱退認定取扱はその根拠を欠き無効であるから,原告らは,なお区民としての地位にある。 4 争点(3)(不法行為の成否)について(1) 上記2で検討したとおり,被告町区の区費の徴収方法は,事実上,原告らに対して宗教上の行為への参加を強制するものであり,憲法 お区民としての地位にある。 4 争点(3)(不法行為の成否)について(1) 上記2で検討したとおり,被告町区の区費の徴収方法は,事実上,原告らに対して宗教上の行為への参加を強制するものであり,憲法20条1項前段,2項,地方自治法260条の2第7項,8項等の趣旨に反し,違法であったといえるが,そのこと自体から,直ちに,不法行為が成立するということはできない。なぜなら,被告町区は,長い間,そのような徴収方法を問題とされることなく取り続けてきたのであって,今回,原告らから指摘されるまでは,その徴収方法に内在する問題点に気付くのは困難であったと考えられるからである(故意,過失の不存在)。 したがって,本件において,もっぱら不法行為の成否が問題となるのは,原告らが本件申入によって区費の徴収方法の問題点を指摘した以降,すなわち,平成6年春以降の被告町区の行為に限られることになる。 そこで,以下,同行為について,①本件申入から脱退認定取扱までの対応,②脱退認定取扱(上記3(3)で検討したとおり,脱退認定取扱は,原告らの区民としての地位を喪失させる取扱としては無効であるが,それが無効であるということと,直ちに損害賠償を帰結するだけの権利侵害行為であったと評価できるかどうかというのは別問題であり,別途,検討が必要である。),③脱退認定取扱以降の対応(これは,被告町区が,脱退認定取扱以降,原告らを区民として扱わなかったことが違法であるかどうかという判断であり,結局,そのほととんどの部分が,原因行為としての脱退認定取扱自体の違法性の判断,すなわち②の判断に収斂すると考えられる。)について,それぞれ違法性の有無を検討する。 (2) まず,本件申入から脱退認定取扱までの対応について検討した上,脱退認定取扱そのものの違法性について検討する(①及び②)。 収斂すると考えられる。)について,それぞれ違法性の有無を検討する。 (2) まず,本件申入から脱退認定取扱までの対応について検討した上,脱退認定取扱そのものの違法性について検討する(①及び②)。 ア前記認定事実によると,被告町区は,原告らから,控除負担の申入れを受け,区費の徴収方法の問題点を指摘されたのに対し,これまでどおり一括して区費を支払うように要求したこと,その後,被告町区は,再び控除負担の申入れを受けたが,何も回答しなかったこと,その後,被告町区は,再び控除負担の申入れを受けたため,役員会を開いて対応を検討した結果,原告らに対し,「平成6年度は特定宗教関係費の支出を区別せずに区費の徴収を続けるが,原告らからの申入れについては,平成7年度の定期総会の議題として提案し,その際,原告らにも申入れの趣旨についての説明を予定しており,それまでの間,原告らから区費を徴収しない。」旨書面により回答したこと(本件回答),さらに,被告町区は,班長に対し,本件回答の内容を周知させるとともに,原告らから区費を徴収しないように指示したことなどの事実が認められ,これらの事実によると,被告町区の対応は,当初こそ区費の一括徴収にこだわったりしたものの,その後は役員会を開いた上で本件回答をし,さらに班長への周知,指示を図るなどしており,その措置は適切であったといえる。 そして,本件回答において,当該年度中はそのまま区費の徴収を続けるとしている点については,被告らが主張するように,区費の徴収についての判断が定期総会による決定事項であること(規約15条),原告ら以外に徴収方法について異議を述べている者がおらず,とりあえず原告らに対して区費の支払を猶予することで,権利侵害状態が回避できたと考えられることなどに照らせば,一次的な措置として適切であったといえる 外に徴収方法について異議を述べている者がおらず,とりあえず原告らに対して区費の支払を猶予することで,権利侵害状態が回避できたと考えられることなどに照らせば,一次的な措置として適切であったといえる。しかも,本件回答は,現に信教の自由が侵害されていると主張してきた原告らに対しては,その申入れの内容について次年度の定期総会で検討すること,その際に原告らの話も聴くことを示した上,それまでの間,原告らから区費を徴収しないこと,すなわち,暫定的に区費全額の納入を猶予することを明確に伝えており(もちろん,「猶予する」とは,区費の支払がなくても,定期総会までは区民として扱うことが当然の前提となっていたものと解される。),その措置は極めて適切,妥当であったといえる。 イこれに対し,原告らは,本件回答の趣旨について,「本件回答は,平成6年度中は特定宗教関係費を控除して区費を支払うことを認めず,区費の受領を拒否し,一括支払を要求したものである。その後,平成6年6月に被告町区が区費の返還をしていること,被告町区が同年10月以降,原告らが供託した区費を一切受領しないことなどの事実からは,本件回答でいう区費を徴収しないとは,原告らに区費を請求しないというのみならず,原告らから区費の支払の申し出があったとしても,その受領を拒否するという意味であったことは明らかである。」旨主張する。 しかしながら,本件回答には,文面上,原告らの申入れについて次回の定期総会で検討することを前提とした上,「この間,b町費は徴収しません。」(甲7)と明記されており,それまでの経緯に照らしても,本件回答を被告町区による区費の受領拒絶とみるのは不自然,不合理であり,原告らの上記主張は採用できない(なお,被告町区が区費を返還したことや供託金を受領しないことは,脱退認定取扱以降の事実で ても,本件回答を被告町区による区費の受領拒絶とみるのは不自然,不合理であり,原告らの上記主張は採用できない(なお,被告町区が区費を返還したことや供託金を受領しないことは,脱退認定取扱以降の事実であり,本件回答の趣旨とは直接関係がない。)。むしろ,原告Aが,「本件回答は,区費の受領を明確に拒否し,一括支払を要求したものと受け取った。被告町区は,定期総会まで問題を先延ばしして,その場で自分を吊し上げようという魂胆だった。自分にとっては,宗教裁判をするつもりであると受け取った。」旨供述するとおり,結局,原告らの主張は,原告らの認識を示すものに過ぎないと考えられる。 そして,原告らは,本件回答を支払の猶予ではなく明確な受領拒絶であると受け止め,その趣旨を曲解してしまったことから,その後,本件拒絶通知により,「公開人民裁判のつもりですか?」,「暴力団みたいに領収書も交付せず国民から金銭を取り立てるのは御免です」などと被告町区の対応を激しく非難した上,区費全額の支払拒絶を通告しており,このような対応を受けた形で,被告町区による脱退認定取扱が行われている。 ウ以上の事実経過によると,本件の問題点は,原告らが,性急に自己の要求を実現させようとするあまり,本件回答の趣旨を曲解して受け止めてしまったところにあるというほかない。そして,被告町区にしてみれば,支払の猶予という原告らの主張に配慮した措置をとったにもかかわらず,かえって激しい非難を受け,区費の支払拒絶を通告されたのであって,そのような経緯を考慮すると,被告町区が脱退認定取扱に及んだのはやむを得なかったものというほかない。これらの事情に照らせば,本件の脱退認定取扱が,社会的な許容限度を超え,直ちに損害賠償を帰結するだけの権利侵害行為であったということはできない。 エしたがって,本件申入か ったものというほかない。これらの事情に照らせば,本件の脱退認定取扱が,社会的な許容限度を超え,直ちに損害賠償を帰結するだけの権利侵害行為であったということはできない。 エしたがって,本件申入から脱退認定取扱までの対応,脱退認定取扱のいずれについても,違法性があるとは認められない。 (3) 次に,脱退認定取扱以降の被告町区の対応について,その違法性の有無を検討する(③)。 上記(2)で検討したとおり,脱退認定取扱に違法性が認められない以上,その後,被告町区が同取扱に従って原告らを区民として扱わなかった行為については,原則として違法であるとの評価を受けない(原告らを区民として扱わない行為は,脱退認定取扱を原因行為としており,その違法性の判断は,結局,ほととんどの部分が,脱退認定取扱自体の違法性の判断に収斂すると解されるからである。)。したがって,本件でも,原告らの権利,自由がさらに侵害されていると評価できるような特段の事情が認められない限り,被告町区の対応が,社会的な許容限度を超え,損害賠償を帰結するだけの権利侵害行為であったということはできない。 そこで,以下,特段の事情が認められるかどうかについて検討する。 前記認定事実によると,原告らが区民として扱われない期間が8年以上という長期間に及んでいること,その間,原告らは,法務局や弁護士会に対して人権救済を申し立てたにもかかわらず(弁護士会からは人権救済勧告も出ている。),話し合いを含めていずれも不調に終わったこと,被告町区が,原告らに対し,定期総会や体育祭等の案内を送らず,a市報の配布も停止させたことなどの事実が認められ,これらの事実によると,原告らの被った不利益は,その心理的な負担を考えると,かなり大きなものであったと言わざるを得ない。 他方,被告町区は,脱退認定取扱以 布も停止させたことなどの事実が認められ,これらの事実によると,原告らの被った不利益は,その心理的な負担を考えると,かなり大きなものであったと言わざるを得ない。 他方,被告町区は,脱退認定取扱以降,かたくなに原告らが区民ではないという立場をとり,原告らから区費が支払われ,あるいは,供託されても,それらを返還し,あるいは,無視するのみで,原告らの真意を確認したり,協議を再開するというような姿勢をとらなかったこと,また,法務局による仲裁にもかかわらず,数年にわたり,特定宗教関係費の改善をしようとしなかったばかりか(その間,定期総会も数回開催されている。),その間,原告らの弁護士を通じた協議申入れを何度も拒否していること,そして,弁護士会の勧告後,定期総会等の案内を送付せず,a市報の配布を停止させたことなどの事実が認められ,これらの事実によると,脱退認定取扱以降の被告町区の対応は,原告らに対する配慮が不十分,不適切であったと言わざるを得ない。また,特定宗教関係費の改善の時期も早いものではない(氏子社格割が農家会計に移管されたのは平成11年度からであり,原告らの本件申入から約4年もの期間が経過している。)。 しかしながら,原告らは,区の法人化に関する紛争の当初から,一方的に被告町区が甲神社の建物を被告町区の財産とすることを検討していると曲解して,被告町区を激しく非難して対立の発端を生じさせ,その後も,被告町区が本件回答により区費の支払の猶予を決め,原告らの本件申入を検討する姿勢を見せたにもかかわらず,被告町区に対して激しい非難を繰り返し,さらに,被告町区を明確な根拠もないまま横領により告発する(乙20)などしており,これらの事実によると,本件において,被告町区が態度を硬化させた原因,すなわち,本件紛争の長期化の原因の一端は,明らかに原 ,被告町区を明確な根拠もないまま横領により告発する(乙20)などしており,これらの事実によると,本件において,被告町区が態度を硬化させた原因,すなわち,本件紛争の長期化の原因の一端は,明らかに原告らにもあるというべきである。また,原告らが権利侵害状態からの回復を計ろうとするのは当然ではあったが,本件で原告らがとった方法は,あまりに性急なものであり,かつ,長い間本件のような徴収方法をとってきた被告町区に対する配慮が全くなかったと言わざるを得ず,適切な回復手段,方法であったとは言い難い。 他方,被告町区は,弁護士会の勧告を受けた形で,「氏子社格割」を平成11年度から(それ以前も,総戸数が年々増加しても,氏子費の負担戸数が一定に抑えられおり,それ自体は単なる計算上のもので全く意味はないが,改善の姿勢がうかがわれる。),諸手当のうちの「大祭当番班長」を同13年度から,「願成就其他」のうちの祭りの費用部分を同11年度から,それぞれ農家会計に移管させて,特定宗教関係費の支出について全般的な改善を行ったこと,脱退認定取扱以降も原告らに対してa市報等の配布を行ってきたこと(原告らが主張するように,仮に,その配布が勧告等に影響を受けたもので,自発的なものでなかったとしても,配布を行った事実には変わりがない。),特定宗教関係費の改善後,原告らに被告町区への再加入を呼びかけていることなどの事実が認められ,これらの事実によると,脱退認定取扱以降の被告町区の対応は,不十分,不適切ながらも,被告町区なりの改善への努力や,原告らの申入れに対する配慮をうかがうことができる。 以上の事実によると,本件においては,原告らの権利,自由がさらに侵害されたと評価できるような特段の事情は認められず,原告らの対応が,社会的な許容限度を超え,直ちに損害賠償を帰結するだけの きる。 以上の事実によると,本件においては,原告らの権利,自由がさらに侵害されたと評価できるような特段の事情は認められず,原告らの対応が,社会的な許容限度を超え,直ちに損害賠償を帰結するだけの権利侵害行為であったということはできない。 したがって,脱退認定取扱以降の被告町区の対応について,違法性があるとはいえない。 (3) 以上のとおり,本件における被告町区の行為にはいずれも違法性が認められないから,その余の点について検討するまでもなく,原告らの不法行為の主張は理由がない。 4 以上検討したとおり,原告らの請求のうち,被告町区の構成員たる地位の確認については理由があるからこれを認容するが,構成員名簿(会員名簿)への登載を求める訴えを却下し,不法行為の請求についてはいずれも理由がないからこれを棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 佐賀地方裁判所民事部裁判長裁判官亀川清長裁判官早川真一裁判官杉原崇夫
▼ クリックして全文を表示