主文 被告人を懲役2年6月に処する。 未決勾留日数中130日をその刑に算入する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は,交際していたA(以下「被害者」という。)が,かねてから,死にたいなどと口にしたり,薬の過剰摂取をして自殺を図ったりなどするたびに,被害者を励まし,翻意させるなどしていたが,このような言動を繰り返す被害者との交際を続ける中,被告人自身も職場での居づらさを感じていたことや,借金の返済に追われていたことなどもあって,死にたいなどと考えるようになった。 被害者は,平成29年1月上旬頃から,被告人に対し,殺してほしいと繰り返して言うようになり,同月中旬には,被告人も被害者に死にたいとの気持ちがあることを伝え,二人で死ぬことを考えて東京方面に旅行に行ったこともあったが,被害者が翻意し,結局は,そのような事態には至らなかった。 しかし,被害者は,後記犯行の前日,職場に行こうとする被告人に対し,職場に行けば別れさせられて一生会えなくなるから嫌だ,殺してほしいと言い出した。被告人は,被害者をなだめたが,被害者は翻意せず,被告人は,海が見たいと言う被害者と車で出かけ,後記のホテルに入った。被害者は,その道すがら,被告人に対し,手で首を絞めた後にUSBケーブルで絞めることや,殺害後は服を着せることを依頼した。被告人は,翌日ホテルで起床した被害者から殺害の実行を促され,被害者が翻意していないのを知り,被害者を殺害して自分も死のうと決意した。 (罪となるべき事実)被告人は,平成29年1月21日,愛知県知多郡a町字bc番地dホテルef号室において,被害者(当時18歳)から嘱託を受けて,同人に対し,殺意をもって,その頚部を両手で絞め付け,さらに,同人の頚部にUSBケーブルを巻き付けて絞め付け,よって,その頃,同所において, ef号室において,被害者(当時18歳)から嘱託を受けて,同人に対し,殺意をもって,その頚部を両手で絞め付け,さらに,同人の頚部にUSBケーブルを巻き付けて絞め付け,よって,その頃,同所において,同人を頚部圧迫による窒息により死亡さ せ,もって嘱託を受けて人を殺害した。 (法令の適用)罰条刑法202条後段刑種の選択懲役刑を選択未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件の犯行態様は,被害者の頚部を手やUSBケーブルで長時間締め付けるというもので,殺意は強固であった。被害者からの嘱託があったとはいえ,被害者の生命を奪った結果は重い。 そして,被告人は,「犯行に至る経緯」で示したとおり,殺してほしいという被害者を翻意させることができず,むしろ被害者の希望に応えて一緒に死のうと考え,被害者の殺害を決意するに至ったのであるが,被告人が,死にたいと思うような不安定な精神状態になっていたとはいえ,このような決意をしなければならないほど追い込まれた状況は存在せず,他の方法を選択することは十分に可能であった。被告人の判断は,利己的な考えに基づくものではないが,生命の尊さに考えの及ばない,独り善がりで短絡的なものであったというほかなく,強い非難を免れない。 遺族にとってみれば,被告人によって被害者の命が奪われるなどとは予期もしていないことであり,突然,被害者を失ったその悲しみは深い。 以上の犯情に照らすと,被告人の刑事責任には重いものがあり,本件が刑の執行を猶予すべき事案であるとは考えられない。 そして,被告人が母親の協力を得て被害者遺族との間で分割により合計2050万円の損害賠償金を支払 らすと,被告人の刑事責任には重いものがあり,本件が刑の執行を猶予すべき事案であるとは考えられない。 そして,被告人が母親の協力を得て被害者遺族との間で分割により合計2050万円の損害賠償金を支払う旨の示談を成立させ,その内金250万円を支払ったことのほか,被告人が事実を認めて反省の態度を示していること,被告人の母親が監督を誓約していること,元勤務先の社長が出廷の上で被告人を社会復帰後に再雇用して支援する意思がある旨述べていることなど,被告人のために斟酌できる犯情以 外の情状も併せて考慮し,被告人を主文のとおりの刑に処するのが相当であると判断した。 (検察官の求刑懲役5年,弁護人の意見執行猶予付き判決)平成29年8月25日名古屋地方裁判所刑事第5部 裁判長裁判官奥山 豪 裁判官小川貴紀 裁判官横井千穂
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