令和2(ワ)14627 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年5月27日 東京地方裁判所
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判決文本文26,727 文字)

令和4年5月27日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和2年(ワ)第14627号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和4年3月2日判決原告株式会社珠屋櫻山同訴訟代理人弁護士吉岡正太郎 大久保博史被告A同訴訟代理人弁護士竹内淳主文 1 被告は、原告に対し、963万6770円及びこれに対する平成29年1月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを9分し、その5を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求の趣旨被告は、原告に対し、2128万0344円及びこれに対する平成29年1月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 原告は、株式会社櫻山(以下「櫻山」という。)の権利義務を承継した会社であり、被告は、櫻山の代表取締役であったところ、被告の元配偶者であるBは、櫻山の印影を付した申請書を使用するなどし、櫻山の保有する別紙商標目録記載の本件商標1及び2に係る商標権(以下「本件各商標権」という。)を自らの名義に移転登録させた。 本件は、原告が、被告に対し、上記移転登録が被告とBの共同不法行為を構成するとして、不法行為に基づき、損害金2128万0344円及び本件商標1に係る移転登録の申請がされた日から民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実をいう。なお、本判決を通じ、証拠を摘示する場合 定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実をいう。なお、本判決を通じ、証拠を摘示する場合には、特に記載しない限り、枝番を含むものとする。)⑴ 当事者等ア原告は、旧商号を株式会社珠屋小林商店としたが、平成29年12月1日、櫻山外1社を合併し、現商号に変更するとともに、櫻山のラスクの製造・販売等の事業を承継した会社である。合併当時の代表取締役は、Cであった。(甲1)イ被告は、平成20年1月25日から平成29年1月15日まで、櫻山の代表取締役を務めていた者である。被告は、もともと、櫻山の株式全部を保有していたが、平成28年3月7日、Cが代表取締役を務める株式会社ホクショーに対し、これを譲渡した。(甲4、乙イ2、21)ウ Bは、平成20年1月25日まで、櫻山の代表取締役を務め、平成22年11月19日まで、被告と婚姻していた者である。Bは、本件訴訟の相被告とされ、自身の行為の違法性は認め、損害論のみを争ったが、本件口頭弁論終結後、原告と裁判上の和解をした。(甲3、乙イ1)⑵ 櫻山の株式譲渡に係る経緯ア櫻山は、平成18年2月2日、有限会社櫻山として設立され、平成19年2月1日、株式会社櫻山に商号変更した会社であり、Bが代表取締役を務め、秋田県雄勝郡羽後町を本店所在地としていた。(乙イ1、2)イ被告は、平成20年1月25日、Bに代わり、櫻山の代表取締役に就任 した。櫻山は、平成24年8月3日、「クロワッサン、ラスク」を指定商品とする本件商標1及び2の登録を得た。(甲7、8、乙イ2)ウ被告は、平成27年12月15日、福島市所在の株式会社ホクショーとの間で、櫻山が同社の子会社となるが、被告は引き続き櫻山の 」を指定商品とする本件商標1及び2の登録を得た。(甲7、8、乙イ2)ウ被告は、平成27年12月15日、福島市所在の株式会社ホクショーとの間で、櫻山が同社の子会社となるが、被告は引き続き櫻山の代表取締役を務めることなどを内容とする株式譲渡契約を締結した。(甲4)エ Cは、平成28年3月7日、櫻山の唯一の(代表)取締役であった被告に加え、櫻山の代表取締役(共同)に就任し、D外1名が、新たな取締役に就任した。(甲5)オ被告は、Dに対し、平成28年10月20日、櫻山の代表者印を引き渡し、また、同年11月4日頃、これとは別に古い通帳に挟まれていた櫻山の印鑑カードを送付した。(甲13、23、被告本人・22頁)⑶ 本件商標2の移転登録までの経過ア Bは、平成28年10月11日、特許庁長官に対し、登録義務者の欄に「有限会社櫻山代表取締役印」の印影を付した申請書により、本件商標2を自らの名義に移転する申請をした。(甲14、15)イ特許庁長官は、平成28年11月4日、Bに対し、前記アの申請について、代表者印が「有限会社」のままであるため、「印鑑証明書による証明」などを要するとする拒絶理由通知を発送した。(甲14)ウ被告は、平成28年11月9日、Dに対し、いわゆる「ものづくり補助金」に係る手続に必要であるなどとして、櫻山の印鑑証明書を羽後町役場のE宛てに送付するよう依頼した。(甲21)エ被告は、平成28年11月14日、株式会社ホクショー、C及びDに対し、平成29年1月15日をもって、櫻山の代表取締役及び取締役を辞任する旨の通知をした。(甲54、55、乙38)オ Bは、平成28年11月21日、特許庁長官に対し、櫻山の印鑑証明書を添付した上、改めて、前記アと同様に、本件商標2を自らの名義に移転 する申請をし、その登録 した。(甲54、55、乙38)オ Bは、平成28年11月21日、特許庁長官に対し、櫻山の印鑑証明書を添付した上、改めて、前記アと同様に、本件商標2を自らの名義に移転 する申請をし、その登録を受けた。(甲8、9)⑷ 本件商標2の移転登録以後の経過ア Bは、平成29年1月18日、特許庁長官に対し、前記⑶オの印鑑証明書を援用するとした上、これと同様に、本件商標1を自らに移転する申請をし、その登録を受けた。(甲10、11)イ Bは、平成29年1月27日、特許庁長官に対し、「CAFEOHZAN」の文字を含む花柄の図案(以下「B商標1」という。)の商標登録を申請したが、拒絶査定がされた。(甲40、44)ウ Bは、平成29年1月27日、特許庁長官に対し、「オウザンのスティックラスク」という標準文字(以下「B商標2」という。)の商標登録を申請し、その登録を受けた。(甲45)エ Bは、平成29年1月27日、特許庁長官に対し、「オウザンのキューブラスク」という標準文字(以下「B商標3」という。)の商標登録を申請し、その登録を受けた。(甲46)オ被告は、平成29年1月27日、取締役辞任に伴う引継ぎのため、Dとともに、櫻山の取引先である株式会社三越伊勢丹ホールディングス(以下「三越伊勢丹」という。)の担当者と面談した。(乙イ8)⑸ 本件訴訟に至る経緯ア原告は、平成30年10月9日、Bによる本件商標1及び2の移転登録に被告が共謀しており、有印私文書偽造、同行使、特別背任に当たるなどとして、被告を告訴又は告発したが、秋田地方検察庁は、令和元年11月17日、公訴を提起しない処分をした。(乙イ4、5、7)イ東京地方裁判所は、平成31年3月30日、Bに対し、本件商標1及び2に係る移転登録の抹消登録手続を命じる判決をし、櫻山の 、令和元年11月17日、公訴を提起しない処分をした。(乙イ4、5、7)イ東京地方裁判所は、平成31年3月30日、Bに対し、本件商標1及び2に係る移転登録の抹消登録手続を命じる判決をし、櫻山の承継人である原告が、本件各商標権の名義人となった。なお、Bは、当該訴訟の口頭弁論に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しなかった。(甲24) ウ特許庁は、令和元年5月25日付けで、原告の請求に基づき、前記イの判決の結果、原告が本件各商標権の権利者となったことを前提として、B商標2及び3の登録が無効である旨の審決をした。なお、Bは、原告の当該請求に対し、何らの答弁もしなかった。(甲48、49) 3 争点⑴ 被告の共謀の有無(争点1)⑵ 被告の過失の有無(争点2)⑶ 原告に生じた損害(争点3)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告の共謀の有無)について(原告の主張)被告が、Bによる本件商標1及び2の移転手続に主体的に関与していたことは、以下の点から明らかである。 ⑴ 被告は、櫻山の代表取締役たる地位にあった者であるから、櫻山が、本件各商標権を有していることを当然に認識していた。 これに対し、被告は、商標登録の事務をしていたのはBであるなどと主張する。しかし、被告は、本件商標1及び2の商標登録がされた時点の代表取締役である上、櫻山は小規模な会社であって、代表取締役が、会社の重要な知的財産の情報を知らないとは考え難い。まして、本件商標1は、日本初と宣伝していた「クロワッサン・ラスク」(乙イ3・5頁)に係るものであり、本件商標2は、その商品に使用されていた商標である(甲38)。 ⑵ その上、Bによる本件商標2に係る移転登録の申請は、被告が櫻山の代表取締役であった時期にされたものである。 そうすると、被告は 、本件商標2は、その商品に使用されていた商標である(甲38)。 ⑵ その上、Bによる本件商標2に係る移転登録の申請は、被告が櫻山の代表取締役であった時期にされたものである。 そうすると、被告は、Bに協力していたと考えるのが自然である。実際、本件商標2の移転登録手続に添付された印鑑証明書(甲8)は、被告が、Dに対し、ものづくり補助金のために必要であるという虚偽の理由を述べ (甲66)、羽後町役場に送付させた上(甲21)、これを櫻山の事務所に届けさせたものである(甲22)。 これに対し、被告は、本件商標2の移転登録手続のために印鑑証明書を取り寄せたことを否認し、Bが、被告の自宅から当該印鑑証明書を無断で持ち出したかのように主張する。しかし、Bによる当初の移転登録申請が却下されてから再度の移転登録申請がされるまでの短期間の時系列からすれば、被告は、Bと意を通じていたと考えるほかはない。 なお、被告は、当時、櫻山の代表印を所持していなかったが、本件商標2の移転登録に係る申請書の印影は、本来の印影と異なる部分があり、Bが偽造したものと考えられる(甲12)。そして、被告も、平成28年12月12日、この偽造された印影と同様の印影を付した書面(甲50)を作成しており、これに関与していたと考えられる。なお、Bは、印鑑自体は偽造しておらず、パソコンを使用し、印影を偽造したにすぎないと説明するが、この点の真偽よりも、上記の事実関係が重要である。 ⑶ しかも、被告は、経営権をめぐる対立から櫻山の代表取締役を辞任した者であり、櫻山の事業を妨害するという動機を有していた。 ア Bは、本件各商標権を移転登録させるのみならず、B商標1ないし3を登録申請し、原告の業務を妨害している。しかし、Bは、原告の業務を妨害するような独自の動機は有していないはずであ を有していた。 ア Bは、本件各商標権を移転登録させるのみならず、B商標1ないし3を登録申請し、原告の業務を妨害している。しかし、Bは、原告の業務を妨害するような独自の動機は有していないはずであるから、本件各商標権の移転登録は、被告の原告の業務に対する妨害行為の一環であると考えられる。実際、被告は、平成29年11月中旬、三越伊勢丹に対し、櫻山の商標登録に問題がある旨の通知(甲26)をしている。 イまして、Bは、被告の元夫であり、平成29年11月8日、原告と被告とのトラブルの際にも被告と行動を共にし、その後も、被告のために、原告従業員の様子を撮影するなどしている(甲56ないし58)。このように、Bが、被告の指示を受け、これに一貫して協力してきたことからすれ ば、本件各商標権の移転登録に関してのみ、Bの独断の行為であると考えるのは不合理である。 ウ以上のほか、Bは、原告に無断で、原告の電話回線及びインターネット回線の解約手続をするという業務妨害にも及んでいる。また、被告の退任に反発した櫻山の元従業員らは、ラトリエモネイと称するラスクの製造会社を立ち上げ、原告商品の模倣品ともいうべき製品を販売しているが(甲63)、Bは、その工場にも出入りしている(甲62)。したがって、Bが、被告に同調していたことは明らかである。 ⑷ 以上によれば、Bが、被告の意の下で、本件商標1及び2の移転登録をしたと考えるのが相当である。特に、被告が、前記⑵のとおり、本件商標2の移転登録に関与したことは明らかであるから、そうである以上、被告は、本件商標1の移転登録にも関与したと考えるべきである。 (被告の主張)被告が、Bによる本件各商標権の移転登録について、Bと共謀するなどした事実は存在せず、原告の指摘は、以下のとおり失当である。 ⑴ 被告は、本件 録にも関与したと考えるべきである。 (被告の主張)被告が、Bによる本件各商標権の移転登録について、Bと共謀するなどした事実は存在せず、原告の指摘は、以下のとおり失当である。 ⑴ 被告は、本件各商標権の移転登録が問題とされる以前、櫻山において、本件各商標権が保有されていることを特に認識していなかった。 すなわち、本件各商標権が登録された当時、商標登録の事務を担っていたのはBであり、被告は、その登録に係る詳細を知らなかった。そして、被告が櫻山の代表取締役であった間、ラスク菓子の製造販売のため、本件商標1及び2を使用したことは基本的になかった(ただし、Cらによる嫌がらせなどのため、包装袋の発注が間に合わず、本件商標2を付した過去の料亭時代の土産袋を使用したことはある。)。特に、本件商標2は、桜の花及び富士山を模した図案からなるものであり、ラスク菓子のような洋菓子とはイメージが合うものではなく、当該図案は、櫻山が、Bを代表取締役として、日本料理の料亭を営んでいた時期に使用されていたロゴである(なお、Bは、日 本料理の調理師を本職とし、当該図案を考案した者である。)。 ⑵ そして、被告は、櫻山の代表取締役であった時期を含め、Bによる本件各商標権の移転登録手続に関与しておらず、関知もしていない。 ア本件商標2の移転登録手続に添付された櫻山の印鑑証明書が、被告が取り寄せた印鑑証明書と同一であることの証明はない。原告は、その根拠として、Bによる当初の移転登録申請が却下されてからの時系列を指摘するが、そもそも、被告は、Bによる移転登録申請が却下されたことを知らなかったのであるから、被告が印鑑証明書を取り寄せた時期が当該却下の時期に近接しているとしても、そのことに何らの意味もない。 イまた、被告が、印鑑証明書を取り寄せるに当たり、Dを欺 れたことを知らなかったのであるから、被告が印鑑証明書を取り寄せた時期が当該却下の時期に近接しているとしても、そのことに何らの意味もない。 イまた、被告が、印鑑証明書を取り寄せるに当たり、Dを欺罔したという事実も存在しない。そもそも、被告は、ものづくり補助金の事務局からの指示を受け、印鑑証明書の追加提出するため、その送付を求めたにすぎない(ただし、その指示は担当者の手違いであり、当該印鑑証明書は実際には提出されなかった。)。確かに、被告は、Dに対し、当該補助金と無関係な羽後町役場に送付するよう依頼している。しかし、被告は、当時、Cらの意向に沿うよう強要され、代表者印や印鑑カードも取り上げられるなどの嫌がらせを受けており、被告が、Dに対し、被告自身の下に印鑑証明書を送付するよう依頼しても、難癖を付けられることは容易に想定される状態にあった。そのため、被告は、これを羽後町役場に勤務していたE宛に送付するように依頼した上、同人から当該印鑑証明書を入手することができるように手配したにすぎない。 仮に、Bが、当該印鑑証明書を使用し、本件商標2に係る移転登録申請をしたとすれば、Bは、被告に無断で当該印鑑証明書を持ち出したということになる。この点につき、被告は、当該印鑑証明書の保管場所を明確に記憶していないが、被告は、通常、書類ファイルに印鑑証明書の予備を保管するようにしていた。そして、Bは、被告と離婚した後も、櫻山の事務 をし、その事務所に出入りするなどしていた。 ウなお、本件各商標権の移転登録申請書に付された印影が、偽造された印鑑によるものであることは否認する。もとより、被告が、当該申請書を偽造した事実もない。原告が指摘する書面(甲50)は、被告の社宅の賃料に係る預金口座振替依頼書であるが、被告が櫻山の正規の代表者印を取り上げら のであることは否認する。もとより、被告が、当該申請書を偽造した事実もない。原告が指摘する書面(甲50)は、被告の社宅の賃料に係る預金口座振替依頼書であるが、被告が櫻山の正規の代表者印を取り上げられる前に準備していたものである。すなわち、被告は、Cらが、被告の東京の社宅を解約するよう理不尽な要求をし始めたため、その賃料を自らが負担せざるを得なくなった場合に備え、当該書面を準備しておいたものであり、平成28年11月10日、これが最終的に決まったため(乙イ36、37)、同年12月12日付けで、当該書面を提出した。 ⑶ 実際、被告において、本件各商標権を移転登録するなど、原告に対する業務妨害をしようと考える動機はなかった。 ア確かに、被告は、株式会社ホクショーやCが、当初の合意に反し、櫻山の取締役の過半数を確保した上、被告に対し、理不尽な要求や嫌がらせを続けたため、事実上、代表取締役から放逐された。しかし、被告は、既に櫻山の株式を手放しており、株式会社ホクショーや原告に対し、驚き呆れこそすれ、恨むような気持は有しておらず、その事業を妨害するなどしたこともない。もとより、被告が、三越伊勢丹に対し、櫻山の「商標登録に問題があり」、「問題のある会社」(甲28)であるなど、櫻山の商標や櫻山の評価に関わる文書を送付したような事実もない。 なお、被告は、三越伊勢丹に対し、櫻山が、新工場に係る賃貸借契約を締結せずに、被告所有地を使用しており、また、旧工場等の賃料を支払わず、その賃貸借契約を解除されたことなどを内容とする文書を送付したことはある。しかし、当該文書は、被告が、三越伊勢丹に対し、櫻山の代表取締役退任に伴う引継ぎの際に、当時説明していた内容と全く異なる事態が生じてしまったため、被告が、三越伊勢丹から責任を追及される可能性 も考慮し、 文書は、被告が、三越伊勢丹に対し、櫻山の代表取締役退任に伴う引継ぎの際に、当時説明していた内容と全く異なる事態が生じてしまったため、被告が、三越伊勢丹から責任を追及される可能性 も考慮し、その経緯を説明したものにすぎない。そのため、その送付には、必要性及び合理性があったのであり、業務妨害に当たるものではない。 イ他方、Bにおいて、原告の営業を妨害する動機を有していなかったと断じる根拠はない。むしろ、Bが、自ら考案した本件商標2を保有する櫻山に対し、恨みや不満を抱いていたことは想像に難くない。 そして、被告が、Bと一貫した協力関係にあったような事実も存在しない。確かに、被告が、Bに対し、原告とのトラブルについて、一時的な助力を頼んだことがあることは事実である。しかし、原告は、当時、櫻山の工場として、被告の所有地を不法占有していたのであり、原告のいう原告の従業員なる者は、同工場に常駐しており、誰何する被告を撮影するなど、明らかな不審人物であった。そのため、被告が、身辺保護の意味合いでBに協力を求め、被告の意を受けたBが、その不審人物に注意をするなどしたことがあったにすぎない。 2 争点2(被告の過失の有無)について(原告の主張)仮に、被告が、故意によって、本件商標1及び2の移転登録に関する行為をしていないとしても、被告とBとの人間関係など、争点1で主張した事情に鑑みれば、被告は、少なくとも、過失によって、Bの不法行為に関与したものとして、その責任を免れないというべきである。 実際、被告は、Bの依頼を受け、印鑑証明書を取り寄せている。そうすると、被告において、それが本件商標2に係る移転登録申請に使用されることを知らなかったとしても、会社の重要書類である印鑑証明書の使用方法等を確認しなかった点に過失責任があることは明らか いる。そうすると、被告において、それが本件商標2に係る移転登録申請に使用されることを知らなかったとしても、会社の重要書類である印鑑証明書の使用方法等を確認しなかった点に過失責任があることは明らかである。 (被告の主張)原告は、被告の過失責任を問題とするが、これを基礎づける具体的な主張をしておらず、失当であることは明らかである。なお、原告は、被告において、 会社の重要書類である印鑑証明書の保管に過失があったかのように主張するところ、確かに、被告は、現在、その保管場所を記憶していないが、現在から4年以上も前のことなのであるから不自然なことではない。仮に、当該印鑑証明書が、Bの説明のとおり、被告宅の重要書類の入ったファイルに保管されていたのであれば、被告は、これを適切に保管していたということになる。したがって、原告の主張は、いずれにせよ失当である。 3 争点3(原告に生じた損害)について(原告の主張)⑴ 営業上の損害ア原告は、実店舗における営業に加え、大手百貨店である三越伊勢丹のカタログやインターネット販売サイト(以下「カタログ等」という。)に自社商品を掲載し、その販売を行っていた。 ところが、三越伊勢丹は、平成29年12月15日、原告に対し、同年11月中旬、原告の商標登録に問題があるなどと指摘する被告の代理人弁護士名義の文書が届いたとして、商標に問題がある以上、原告の商品をカタログ等に掲載することはできないと告げた(甲28)。そのため、原告は、少なくとも平成30年1月から令和2年5月まで、カタログ等の掲載による営業利益を上げることができないという損害を受けた。 なお、原告は、その間においても、三越伊勢丹における実店舗での営業を続けることができたが、三越伊勢丹のような規模の百貨店において、部門ごとに判断が異なる を上げることができないという損害を受けた。 なお、原告は、その間においても、三越伊勢丹における実店舗での営業を続けることができたが、三越伊勢丹のような規模の百貨店において、部門ごとに判断が異なるといったことは往々にしてあるから、三越伊勢丹が、原告に対し、商標に係る問題があることを指摘し、原告の商品をカタログ等に掲載することを拒否したことは事実である。 イその結果、原告は、平成30年1月から令和2年5月までの29か月間に、原告の平成28年におけるカタログ等による平均月間営業利益55万円(甲37、65)を乗じた1595万円相当の損害を被った。 なお、原告がカタログ等の販売をし得なくなった平成30年の直近は平成29年であるが、被告が、退任前、三越伊勢丹と同年におけるカタログ等の掲載に係る打合せをしなかったため、原告は、同年には、カタログ等による販売をしていない。そのため、上記のとおり、平成28年の営業利益を損害算定の基礎とするのが相当である。 ⑵ 訴訟及び仮処分手続の費用ア本件各商標権は、原告の重要な財産である。また、原告が、これらを自己の名義に戻さなければ、その類似商標であるB商標2及び3の無効審決を得ることはできず、その結果、これと類似する花柄ロゴを商標登録することもできない状況にあった。そのため、原告は、本件各商標権が第三者に移転される事態を防ぐため、処分禁止の仮処分を申し立てた上、その移転登録の抹消登録手続を求める訴訟を提起することを余儀なくされた。 イこれらの手続に要した費用は、印紙代18万5000円(甲24)、郵券6000円、弁護士費用202万0680円(甲29ないし31)及び仮処分登録免許税16万3300円(甲32)であり、原告は、その合計237万4980円相当の損害を被った。 ⑶ 特許庁での手続に係 券6000円、弁護士費用202万0680円(甲29ないし31)及び仮処分登録免許税16万3300円(甲32)であり、原告は、その合計237万4980円相当の損害を被った。 ⑶ 特許庁での手続に係る費用ア原告は、B商標1ないし3の商標登録の申請がされたことを知ったことから、これを阻止するため、特許庁に情報提供をすることとし、弁理士事務所に手数料を支払った(甲33の1ないし4)。 イ原告は、原告の使用する花柄ロゴ等の商標登録申請が拒絶査定を受けたことから、これに対応するための印紙代及び弁理士事務所に対する意見書作成手数料を出捐した(甲33の5ないし13)。 ウもっとも、原告が、上記イの花柄ロゴ等の登録を得るには、前記⑵アのとおり、その類似商標であるB商標2及び3の無効審決を得る必要があり、原告は、その弁理士費用を出捐した(甲33の14、15)。 エ上記アないしウの手数料、印紙代、意見書作成手数料及び弁理士費用の合計102万0788円は、本件各商標権の移転登録と相当因果関係あるものとして、原告に生じた損害である。 ⑷ 小括以上によれば、原告に生じた損害は、前記⑴ないし⑶の合計1934万5768円に、弁護士費用相当損害193万4576円を加えた2128万0344円を下回らないというべきである。 (被告の主張)⑴ 営業上の損害ア原告が、新宿伊勢丹、日本橋三越及び銀座三越での実店舗での営業や羽後町の古民家でのカフェにおける営業に加え、三越伊勢丹のカタログ等に自社商品を掲載し、その販売を行っていたことは認める。 しかし、原告が、平成30年に三越伊勢丹のカタログ等による販売をし得なくなったのは、Dが、被告の退任に伴う平成29年1月27日の顔合わせなどにおいて、三越伊勢丹の担当者に対し、不誠実な言動をとるなどし し、原告が、平成30年に三越伊勢丹のカタログ等による販売をし得なくなったのは、Dが、被告の退任に伴う平成29年1月27日の顔合わせなどにおいて、三越伊勢丹の担当者に対し、不誠実な言動をとるなどし、その信頼を失ったことが主たる原因である(乙8、9)。 また、被告が櫻山の代表者であった時期、三越伊勢丹のカタログ等に掲載してもらうためには、三越伊勢丹に対し、新商品を提案し、その承認を得なければならなかった。そのため、原告が、カタログ等の掲載を認められなかったのは、単に新商品の開発ができなかったからであるとも推測される。 これに対し、原告は、三越伊勢丹から商標に係る問題を指摘されたことが原因であったと主張するが、その根拠となるメール(甲28)の内容は要領を得ないものである。仮に、そのような指摘があったのであれば、原告の商標には何ら法的問題がない旨を説明すれば足りたはずである。 実際、原告は、平成30年において、三越伊勢丹の実店舗での営業を継 続している。仮に、三越伊勢丹が、商標に係る問題を本当に深刻に捉えていたのであれば、そのような商品はカタログ等に掲載するのみならず、店舗でも販売することができないはずである。 また、被告が、三越伊勢丹に対し、櫻山の商標登録に問題があり、問題のある会社であるかのように通知する文書を送付した事実が存在しないことは、争点1で主張したとおりである。 イ原告は、損害額算定の根拠として、平成28年の営業利益の額を主張するが、その金額は、商業帳簿で立証されるべきである。しかるに、原告が提出する証拠(甲65)は、これに原告独自のネットショップや羽後町のカフェにおける売上げが含まれていないことが明らかではない書面である上、具体的に営業利益の額を導き出した計算過程(売上割戻、期首棚卸高、製造原価、外注費、期末 れに原告独自のネットショップや羽後町のカフェにおける売上げが含まれていないことが明らかではない書面である上、具体的に営業利益の額を導き出した計算過程(売上割戻、期首棚卸高、製造原価、外注費、期末棚卸高及び販管費の考慮)も不明なものである。 そもそも、平成28年の営業利益は、被告の事業努力の賜物であるから、その金額に基づき、原告の損害額を算定することは許されない。 これに対し、原告は、平成29年の営業利益の額を損害額算定の基礎としない理由として、被告が、三越伊勢丹と打合せをしていなかったため、同年におけるカタログ掲載ができなかったからであると主張する。しかし、被告は、三越伊勢丹との間で、平成29年のカタログ等の掲載に係る打合せをし、その準備を進めていたのであり、実際、三越伊勢丹の担当者が、被告の退任に不安を示したことから、被告は、株式会社ホクショーに対し、繁忙期が終わる同年3月まで留任することを申し出ており、これを拒絶したのは株式会社ホクショーである(乙16ないし18)。そうすると、櫻山が、同年においても、カタログ等による販売をすることができなかったのは、前記アのとおり、CやDが、三菱伊勢丹の信頼を失っていたことによるものと考えられる。 ⑵ 訴訟及び仮処分手続の費用 ア原告が主張する費用のうち、郵券や仮処分登録免許税のような訴訟費用等(民事訴訟費用等に関する法律2条1号、2号、11号、3条、11条1項1号)は、訴訟費用額確定手続によって、Bに償還請求すべきであり、これを別訴で請求することは許されない。 イ原告が問題とする訴訟手続及び仮処分手続は、商標権移転登録抹消登録請求に関するものにすぎず、不法行為や労働働契約上の安全配慮義務違反に係る損害賠償請求に関するものではないから、その弁護士費用を当該手続の相手方でもない被 続及び仮処分手続は、商標権移転登録抹消登録請求に関するものにすぎず、不法行為や労働働契約上の安全配慮義務違反に係る損害賠償請求に関するものではないから、その弁護士費用を当該手続の相手方でもない被告に負担させることは許されない。 ⑶ 特許庁での手続に係る費用原告が主張する費用のうち、特許庁に情報提供をすることに係る弁理士費用は、その具体的内容が不明であり、原告が、原告の使用する商標を確保する上で余儀なくされた費用であるか否かが明らかではない。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実、証拠(後掲各証拠のほか、証人F及び同Cの各証人尋問並びにB及び被告Aの各本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実を認めることができる。 ⑴ 櫻山の来歴ア被告は、平成元年頃、羽後町の実家の建物において、櫻山の前身となる旅館兼懐石料理店を創業した。また、Bは、日本料理の調理人であるが(弁論の全趣旨)、平成4年3月、被告と結婚し、法人化の前後を通じ、櫻山を経営した(甲3、乙イ1、イ44・1頁、乙ロ12・1頁)。 イ Bは、平成20年頃、櫻山の経営の前面から退き、被告は、平成21年頃から、櫻山の経営の中心を自らが考案したクロワッサン・ラスクなどの洋菓子の製造販売に移行させた。そして、被告とBは、平成22年11月に離婚した。(乙イ1頁及び2頁、乙ロ・1頁及び2頁)。 ウもっとも、Bは、被告と離婚した後も、櫻山において、懐石料理やカフェの調理などの業務をし、櫻山が、平成23年から平成24年頃まで、懐石料理から完全に撤退した後も、櫻山における事務作業を請け負うなどしていた。(乙イ1頁及び2頁、乙ロ・2頁、B・6頁)エ櫻山は、平成24年8月3日、本件商標1及び2を登録したが、本件商標2は、櫻山が懐石料理を提供してい も、櫻山における事務作業を請け負うなどしていた。(乙イ1頁及び2頁、乙ロ・2頁、B・6頁)エ櫻山は、平成24年8月3日、本件商標1及び2を登録したが、本件商標2は、櫻山が懐石料理を提供していた時期にも使用されていた桜と富士山の図案につき、これに付記された「OHZAN」の文字の下に、「クロワッサン・デコラスク」の文字を加えたものであった(甲7、乙ロ1)。 オ被告は、その後、櫻山の経営を拡大したものの、資金繰りに問題が生じたことなどから、株式会社日本M&Aセンターの仲介を受け、平成27年12月15日、株式会社ホクショーの子会社となることとした。(乙イ19、22ないし24、39ないし41、44・2頁及び3頁)カなお、櫻山は、平成23年頃には三越伊勢丹と取引があり、東京の青山に被告の社宅でもある事務所を構えていたが、株式会社ホクショーの子会社となった後は、事務所機能を東京の赤坂に移転し、従前からの従業員であるGに勤務させていた。(乙イ20、被告本人・5頁及び6頁)⑵ 本件各商標権の移転までの経緯ア被告とCは、青山の社宅賃料を含む被告の待遇や経費の使用、本社機能の移転など、経営方針をめぐって対立し、Cは、平成28年9月9日頃までには、被告を代表取締役から解任することをも視野に入れるようになっていた。(乙イ26、27、29、44・3頁及び4頁)イ Dは、平成28年10月7日、被告に対し、「最後の打合せの機会」と称してCとの話合いを提案し、被告は、同月15日、Cと会談したが、社宅及び事務所の賃料の負担問題の合意に至らず、被告は、代表取締役を退任する意向を示した。(乙イ35、36、被告本人・14頁)ウ Bは、平成28年10月11日、特許庁長官に対し、本件商標2を自ら の名義に移転する申請をしたが、特許庁長官は、同年1 取締役を退任する意向を示した。(乙イ35、36、被告本人・14頁)ウ Bは、平成28年10月11日、特許庁長官に対し、本件商標2を自ら の名義に移転する申請をしたが、特許庁長官は、同年11月4日、Bに対し、代表者印が「有限会社」のままであるため、「印鑑証明書による証明」などによる却下理由の解消を示唆する却下理由通知を発送した。(甲14、15)エ被告は、平成28年11月4日頃、株式会社ホクショーに対し、社宅と事務所及び賃料の会社負担を止めることは当初の合意に反することを指摘した上、前記イの会談で示された意向を撤回することを要求し、これに1週間以内に回答するよう求める最後通知を送付した。(乙イ36)オ被告は、平成28年11月9日、Dに対し、ものづくり補助金の手続において、関連会社である「株式会社オウザン」の印鑑証明書が誤って提出されたため書類に不備があり、印鑑証明書の添付が抜けていたとして、櫻山の印鑑証明書を羽後町役場のE宛てに送付するよう依頼した。(甲21、被告本人・21頁)しかし、当該補助金に係る手続は、そもそも、秋田県中小企業団体中央会ものづくり補助金秋田県地域事務局(以下「補助金事務局」という。)が担当するものであり、羽後町役場が取り扱うものではなかった。その上、補助金事務局は、被告との間で、平成28年11月頃、ものづくり補助金に関してやり取りをした事実なく、そもそも同補助金に関する手続に印鑑証明書が必要となることはなく、もとより、補助金事務局が、被告に対し、印鑑証明書の提出を求めた事実はなかった。(甲22、66)カ被告は、その頃、Eに対し、櫻山からの郵送物を開封せずに櫻山に届けるように電話で依頼していた。そして、Eは、当該郵送物を櫻山の事務所に届け、被告は、最終的に、Dの送付した印鑑証明書を取得し )カ被告は、その頃、Eに対し、櫻山からの郵送物を開封せずに櫻山に届けるように電話で依頼していた。そして、Eは、当該郵送物を櫻山の事務所に届け、被告は、最終的に、Dの送付した印鑑証明書を取得した。(甲22、被告本人・15頁及び16頁)キ Cは、平成28年11月10日、被告に対し、前記エの要求を拒絶する旨の回答をし、被告は、同月14日、Cに対し、代表取締役を退任する旨 の通知をした。なお、Cは、当該要求について、もはや話合いの段階ではないと考えていた。(甲55、56、乙イ37、38、C・14頁)ク Bは、平成28年11月15日、前記ウの移転登録申請を取り下げた上、同月21日、前記オの経過で印鑑証明書を使用し、本件商標2を自らの名義に移転する申請をしたほか、平成29年1月18日、本件商標1を自らの名義に移転する申請をして、各登録を受けた。(甲8ないし11、15)⑶ 本件各商標権の移転以後の経過ア Bは、平成29年1月27日、櫻山が本件商標2を登録した際に委任したみなとみらい特許事務所の弁理士に委任し、特許庁長官に対し、B商標1ないし3の登録申請をした。このうち、B商標1は、櫻山の商品の包装に使用されてきた図案からなるものであり、同2及び3は、櫻山の販売してきた商品の種類を示す文言からなるものであった。(甲39、40、44ないし46、乙ロ3、B・17頁ないし21頁)イ原告代表者は、平成29年7月頃、櫻山の従業員となったが、被告が櫻山の商標権を移転させた旨の噂を聞き、原告と付き合いのあったみなとみらい特許事務所に調査等を依頼した。その後、同事務所は、原告代表者に対し、本件商標1及び2の名義移転、B商標1ないし3の申請代理に係る事実を告げた上、利益相反のおそれがあるとして、Bの代理人を辞任し、原告代表者からの依頼も 頼した。その後、同事務所は、原告代表者に対し、本件商標1及び2の名義移転、B商標1ないし3の申請代理に係る事実を告げた上、利益相反のおそれがあるとして、Bの代理人を辞任し、原告代表者からの依頼も辞退した。(甲44、原告代表者・2頁)ウ被告は、平成29年8月頃、櫻山が、工場(新工場)の敷地として、被告所有地を無権限で占有していることを警告する文書(甲56)を同工場の門扉等に貼り付けた。そして、Bは、同年11月頃、被告の指示を受け、同工場内にいた人物に退去するよう求め、同月12日、被告が当該人物に接触する際、その様子を動画撮影するなどした。(甲51ないし53、B・28頁及び29頁)エ被告は、平成29年10月12日頃、櫻山による上記ウの被告所有地の 占有などについて、東京地方裁判所に対し、建物収去明渡等請求事件の訴訟(乙イ11)を提起し、同地上に、「櫻山関係者」を名宛人とし、その旨を告知する文書(甲58)を掲示するなどした。その際、櫻山の元従業員であり、被告の実家に住んでいたことのあるHが、その作業を手伝った。 (甲59、被告本人・29頁及び30頁)その後、Hは、被告とも相談し、櫻山を辞めた他の従業員とともに、ラスク菓子を製造販売する「L’atelierMonei」と称する事業をするようになった。被告は、原告に対する契約上の競業避止義務を負っていたが、被告の実家に寝泊まりしていたBが、その事業に協力し、百貨店と出店交渉する際に同席するなどした。(甲62、63、70、B・21頁及び22頁、被告本人・26頁及び27頁)オ被告は、平成29年11月頃、三越伊勢丹に対し、櫻山による被告所有地の不法占有の事実などを通知する文書を送付した。そして、原告は、同年12月15日の三越伊勢丹とのミーティングにおいて、三越伊勢丹から、 は、平成29年11月頃、三越伊勢丹に対し、櫻山による被告所有地の不法占有の事実などを通知する文書を送付した。そして、原告は、同年12月15日の三越伊勢丹とのミーティングにおいて、三越伊勢丹から、被告から文書が送付されたことを踏まえ、櫻山の商標登録に問題があり、これに問題があるとカタログを全部作り直さなければならないため、平成30年の御中元のカタログ掲載はできないことなどを告げられた。(甲28、被告本人・33頁、C・6頁) 2 争点1(被告の共謀の有無)について⑴ 前記前提事実及び認定事実によれば、被告とCとの関係は、Bが最初に本件商標2を自らの名義に移転しようと申請した平成28年10月11日までに、最後の話合いの機会を提案されるほどに破綻していたこと、そして、被告は、本件商標2の移転登録申請に係る却下理由通知書が発送された平成28年11月4日の直後である同月9日、真実は、補助金事務局から印鑑証明書の提出を求められていないにもかかわらず、Dに対し、同提出を求められた旨の虚偽の事実を伝え、上記却下理由通知書で提出を示唆された印鑑証明 書の取得を依頼したこと、その上で、被告は、その提出先が羽後町役場であるかのようにDを誤信させ、同役場の協力者を通じ、これを自らの手元に入手したこと、そして、Bは、同月21日、上記入手に係る印鑑証明書を添付した上、本件商標2を自らの名義に移転させたこと、その後、Bは、その後も被告と行動を共にし、櫻山の元従業員などとともに、櫻山と同様のラスク菓子の製造販売事業などを始め、また、ラスク菓子に係るB商標1ないし3の登録申請をしていること、以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば、Bは、被告がDに虚偽の説明をして入手した印鑑証明書を正に使用して、本件商標2の移転登録手続をしたことが認められ、その他 の登録申請をしていること、以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば、Bは、被告がDに虚偽の説明をして入手した印鑑証明書を正に使用して、本件商標2の移転登録手続をしたことが認められ、その他に、被告による印鑑証明書の取得時期、取得の経緯、被告とBとの関係等に照らすと、被告による上記印鑑証明書の取得依頼は、Bと共謀して本件商標2の移転登録を行うためのものであったと認めるのが相当である。そして、当該認定事実を踏まえると、被告は、Bと共謀しこれと一連の行為である本件商標1の移転登録手続をも行ったものと推認するのが相当である。 したがって、被告は、Bと共謀して本件商標1及び2に係る移転登録を行ったものと認めるのが相当であるから、共同不法行為責任を免れないというべきである。 ⑵ これに対し、Bは、本件商標2が第三者である櫻山の保有になったことに憤り、被告に抗議しても取り合ってもらえなかったから、単独で本件商標2の移転登録手続をした旨供述している(B・2頁及び6頁)。 しかし、Bの供述の信用性を検討するに、自らが本件商標1及びB商標1ないし3に係る一連の手続をした経緯について、よく覚えていないが思い起こすと、特許庁から申請の不備を指摘されてヒステリックになり、ADHD(乙ロ9)の症状で衝動的になっていた部分もあるように思うなどと供述するにとどまるなど、極めて曖昧なものであって、それ自体信用性を欠くというほかない(乙イロ12・3頁ないし5頁、B・3頁、4頁及び7頁)。し かも、Bは、本件商標1及び2の移転登録申請書における櫻山名義の印影は、これまで櫻山の事務手続でも行っていたように画像データを書面に印刷したものであり、それ以後も含め、櫻山の印鑑の実物を使用したことはないと断言するものの(同・2頁、13頁ないし15頁及び32頁)、上記 これまで櫻山の事務手続でも行っていたように画像データを書面に印刷したものであり、それ以後も含め、櫻山の印鑑の実物を使用したことはないと断言するものの(同・2頁、13頁ないし15頁及び32頁)、上記においてBが供述する櫻山の事務手続は、被告の説明内容とも相違する上(被告・48頁)、甲18及び19の文書の「株式会社櫻山代表取締役」の印影は、Bが、特許庁から書類を「直渡し」(甲16、17)された際、特許庁の窓口で押印したものであることは明らかであるから、Bの供述は、その重要な点において事実と異なるといわざるを得ない。そうすると、被告とは無関係に本件商標2の移転登録手続をしたとするBの供述は、信用性が低いものというほかなく、上記推認を妨げるものとはいえない。 ⑶ また、被告は、本件商標2の移転登録手続は、Bによる単独の行為であるとして、縷々主張するものの、以下に説示するとおり、いずれも前記⑴の推認を覆すに足りない。その理由は、次のとおりである。 ア被告は、補助金事務局に指示に基づき、印鑑証明書の取得を依頼したにすぎず、Dを欺罔する意図はなかったと供述し、その旨主張する。 しかし、被告の供述自体(被告本人・6頁ないし8頁)も、当時の補助金事務局とのやり取りにつき、余り覚えていないなどと極めて曖昧なものである。その上、上記において認定したとおり、証拠(甲66)及び弁論の全趣旨によれば、補助金事務局は、被告との間で、平成28年11月頃、ものづくり補助金に関してやり取りをした事実がないのみならず、そもそも同補助金に関する手続に印鑑証明書が必要となることはなく、補助金事務局が、被告に対し、印鑑証明書の提出を求めた事実はなかったことが認められる。そうすると、被告の供述は、客観的事実に反するものであり、信用性が低いというほかない。 のみならず、被 はなく、補助金事務局が、被告に対し、印鑑証明書の提出を求めた事実はなかったことが認められる。そうすると、被告の供述は、客観的事実に反するものであり、信用性が低いというほかない。 のみならず、被告は、Dに対し、これを羽後町役場に送付させ、確実に 正当に使用されるかのようにDをあえて誤信させる行為までしているのであるから、正当な理由による依頼ではなかったことを当時認識していたというほかない。この点につき、被告は、そのようにしなければ、印鑑証明書の取得が遅滞するといった嫌がらせを受ける可能性があったと供述するものの(被告本人・9頁)、本来の提出先に直接送付するよう依頼すれば足りるのであるから、被告の供述内容は、それ自体合理的なものとはいえない。そもそも、被告は、平成28年11月7日、Dに対し、既に会社の印鑑を渡してしまった以上、当該補助金に係る手続は、Dがするよう述べていたことが認められるのであって(甲13・添付資料4)、被告が、同月9日になって、当該補助金に係る手続のため、羽後町役場を経由するという迂遠な方法を用いてまで、早急に印鑑証明書を取得しようとする動機があったとは、認め難い。しかも、被告は、結局、上記入手に係る当該印鑑証明書を補助金事務局に提出していないところ、被告は、当該印鑑証明書を入手した後、これを青山の事務所に保管したとしながら、これを提出しなかった経緯を具体的に供述することができないところである(被告本人・9頁ないし11頁)。 これらの事情を踏まえると、上記において説示したとおり、被告は、Bに使用させるため、補助金事務局に提出する必要性がないことを知りながら、その提出の必要があるかのようにDを誤信させ、櫻山の印鑑証明書を入手したものと認めるのが相当である。 したがって、被告の主張は、採用することができない。 務局に提出する必要性がないことを知りながら、その提出の必要があるかのようにDを誤信させ、櫻山の印鑑証明書を入手したものと認めるのが相当である。 したがって、被告の主張は、採用することができない。 イ被告は、Bが申請書に添付した印鑑証明書と、被告がDから入手した印鑑証明書との同一性を争う旨の主張をしている。 しかし、証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば、Bが申請書に添付した印鑑証明書は、被告がDに櫻山の印鑑証明書の取得を依頼したのと同日である平成28年11月9日、株式会社ホクショーの本店所在地を管轄す る福島地方法務局で発行されていることが認められる。そして、当のB自身も、上記にいう同一性自体は争っておらず、少なくともBが被告以外の者から入手したものとは認め難い。そうすると、前記認定事実⑵カのとおり、Bが申請書に添付した印鑑証明書と被告がDから入手した印鑑証明書とは、同一のものであると認めるのが相当である。 したがって、被告の主張は、採用することができない。 ウ被告は、本件各商標権の移転登録が問題となるまで、本件各商標権の存在を特には認識していなかったと主張する。 しかし、本件各商標権は、Bが櫻山の経営の前面から退いた後、被告が代表取締役であった間、被告が推し進めたラスク菓子の製造販売事業に係るものとして登録されたものであって、上記事業を支える重要な知的財産権であったのであるから、櫻山の経営が、被告の手元から離れようとする時期に、被告がその存在に思い及ばなかったとは認め難い。まして、被告も、代表取締役を退任する前、Bから本件各商標権を取り返すように求められたこと自体は認めているのであるから(被告本人・18頁)、被告が、当時、本件各商標権の存在を特には認識していなかったなどといえないことは明らかである。 したがって、 商標権を取り返すように求められたこと自体は認めているのであるから(被告本人・18頁)、被告が、当時、本件各商標権の存在を特には認識していなかったなどといえないことは明らかである。 したがって、被告の主張は、採用することができない。 エ被告は、被告には、本件各商標権を移転登録するなど、原告の業務を妨害しようと考える動機はなかったと主張する。 しかし、被告は、前記認定事実によれば、株式会社ホクショーの支援を受けたため、自らが考案したラスク菓子の製造販売に関する事業を同社に引き渡すに至り、しかも、その間の経緯について、当初の合意に反すると考えていたことになるのであるから、被告が、当該ラスク菓子に関する本件各商標権を取り戻したいと考えたとしても、そのこと自体を不自然ということはできない。そして、Bが、本件各商標権を自らの名義に移転した ことには争いがないところ、前記認定事実のとおり、被告は、代表取締役退任後の櫻山とのトラブルにおいて、Bの助力を受けており、Bは、櫻山の元従業員が新たに始めたラスク菓子の製造販売事業に関与しているのであるから、被告が、Bによる本件各商標の登録移転申請に協力し、B商標1ないし3の商標登録申請に同意することは、上記の事実経過に鑑みると、格別不自然なものとはいえない。 したがって、被告の主張は、採用することができない。 オ被告は、B個人が櫻山に恨みを抱くなどしていた可能性を指摘して、被告は、これに協力する関係にもなかったなどと主張する。 しかし、Bが、本件商標2の移転登録手続をする個人的な動機を有していたとしても、被告にも、これに関与する動機が認め得ることは、上記エにおいて説示したとおりである。そして、被告とBが、当該手続の頃、原告又は櫻山とのトラブルに関して、共同で行動することがあったことは被告 しても、被告にも、これに関与する動機が認め得ることは、上記エにおいて説示したとおりである。そして、被告とBが、当該手続の頃、原告又は櫻山とのトラブルに関して、共同で行動することがあったことは被告も自認するところ、前記アのとおり、被告が、当該手続のため、印鑑証明書を取得していたと認められる以上、被告とBは、少なくとも当該移転登録手続を協力する関係にあったといえる。そうすると、被告が、本件商標権1やB商標1ないし3に係る手続についても、Bと協力する関係にあったと推認するのが相当であり、これを覆すに足りる的確な証拠はない。 したがって、被告の主張は、採用することができない。 ⑷ 以上のとおり、被告の主張を十分に考慮しても、被告は、Bによる本件各商標権の移転登録手続を共謀し、B商標1ないし3の登録申請手続も容認していたというべきである。その他に、被告提出に係る準備書面及び証拠を改めて検討しても、上記において説示した事実経過に鑑みると、上記判断を左右するに至らない。なお、本件商標2の移転登録申請は、櫻山の代表者であった被告の意思に基づくことになるところ、弁論の全趣旨によれば、櫻山は、当時、Bに対し、本件商標2を移転する理由は何ら存在しなかったと認めら れるから、これは櫻山に対する不法行為を構成するものと認められ、また、櫻山が、Bに対し、本件商標1を譲渡するなどした事実が存在しないことにも格別争いがないことからすると、上記と同様に、これも櫻山に対する不法行為を構成することは明らかである。 3 争点3(原告に生じた損害)について⑴ 営業上の損害ア前記認定事実1⑶オのとおり、原告は、三越伊勢丹から、原告の商標登録の問題を指摘され、商標登録に問題があるとカタログ等を作り直さなければならないとして、平成30年の御中元のカタログ等の掲載 害ア前記認定事実1⑶オのとおり、原告は、三越伊勢丹から、原告の商標登録の問題を指摘され、商標登録に問題があるとカタログ等を作り直さなければならないとして、平成30年の御中元のカタログ等の掲載はできないことなどを告げられ、当該カタログ等の掲載による売上げを計上することができなかったことが認められる。 そうすると、少なくとも、原告がB商標2及び3に係る無効審決を得た令和2年5月まで、原告の商品を当該カタログに掲載し得なかったことによる損害は、被告による本件各商標権の移転に係る不法行為と相当因果関係がある損害と認めるのが相当である。 これに対し、被告は、原告が、三越伊勢丹の実店舗での販売を継続し得ていることからすれば、商標登録が問題であったとは考えられず、また、原告が、原告の商品を当該カタログに掲載し得なかったのは、原告が、経営陣を被告から交代するに当たり、三越伊勢丹の信頼を失ったことが主たる原因であるなどと主張する。しかし、被告も主張するとおり、原告は、以後も実店舗での販売は継続し得ているのであるから、三越伊勢丹にカタログ等の掲載を拒否された理由が、原告がそもそも三越伊勢丹の信頼を失ったことによるものとは、直ちに認め難い。そして、実店舗は、原告の従業員が、原告専用のブースで販売するものであるのに対し(原告代表者・14頁)、カタログ等は、他の店舗の商品と一緒に掲載され、問題があれば全体を作り直さなければならないものであると認められることからする と(C・14頁から15頁)、商標登録に問題があるためにカタログ等の掲載を拒否されたとするCの証言は、その内容に照らして信用することができる。そうすると、上記拒否により生じた損害は、本件各商標権の移転に係る不法行為と相当因果関係がある損害というべきである。 したがって、被告の主張は るCの証言は、その内容に照らして信用することができる。そうすると、上記拒否により生じた損害は、本件各商標権の移転に係る不法行為と相当因果関係がある損害というべきである。 したがって、被告の主張は、採用することができない。 イそして、証拠(甲65)及び弁論の全趣旨によれば、原告(櫻山)の平成27年4月から平成29年10月の3年間におけるカタログ等による平均営業利益は、月額約30万円であるものと認めるのが相当であり、これを覆すに足りる的確な証拠はない。そうすると、上記営業利益に基づき逸失利益の算定するのが相当である。 これに対し、原告は、平成28年の実績のみを前提として、営業利益は月額55万円であると主張するが、同年は、他の年の数倍の利益を上げ、特に同年11月において、前年の11倍以上の利益を上げるなど例年とは異なる特別な事情があったことが認められることからすると、逸失利益の算定に当たっては同年のみの実績によるのは相当ではない。 これに対し、被告は、原告提出に係る証拠(甲65)の記載は、営業利益の計算過程も明らかにされていないなどと主張するが、原告は、被告が櫻山の元代表取締役であった当時の計算過程と同様であるとして、その内容を説明しているのに対し(原告準備書面(5))、被告は、被告は櫻山の元代表取締役でありながら抽象的な指摘をするにとどまり、何ら具体的に実質的な反論しないでいたのであるから、本件訴訟の経過及び弁論の全趣旨を踏まえても、被告の主張は、採用の限りではない。 ウもっとも、証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告は、引継ぎが十分でなかったなど商標とは別の問題で、平成29年の御歳暮のカタログ等の掲載をすることができず、平成30年の御中元のカタログを掲載しようとしたところ、平成29年12月15日、その掲載を拒絶されたという事実を かったなど商標とは別の問題で、平成29年の御歳暮のカタログ等の掲載をすることができず、平成30年の御中元のカタログを掲載しようとしたところ、平成29年12月15日、その掲載を拒絶されたという事実を認 めることができる(甲65、C・5頁)。そうすると、その損害算定期間の計算上の始期は、通常の御中元のカタログの掲載時期その他の上記事情を総合すると、平成30年5月とするのが相当であるから、原告の主張する終期である令和2年5月までの25か月間に相当する750万円の限度で損害を認めるのが相当である。 ⑵ 訴訟及び仮処分手続の費用ア証拠(甲24、29ないし32)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告及びBによって、Bに対する本件各商標権の移転登録がされたため、弁護士に委任し、Bに対し、当該移転登録を抹消する訴訟を提起し、これに係る仮処分手続(以下、上記訴訟と併せて「別件訴訟」という。)をしたことが認められる。 そして、上記認定事実を前提として、被告は、印紙、郵券及び仮処分登録免許税に係る上記の費用は、別件訴訟に係る訴訟費用額等の確定処分による回収を図るべきであると主張する。 イそこで検討するに、原告は、Bとの関係においては、別件訴訟において民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目のものについて、別件訴訟に係る訴訟費用額等の確定処分を経て取り立てることが予定されているのであるから、原告が、もとより、これをBに対する不法行為に基づく損害賠償請求において損害として主張することは許されない(最高裁平成31年(受)第606号令和2年4月7日判決・民集74巻3号646頁参照)。 もっとも、別件訴訟の当事者以外の者に負担を求める場合には、別件訴訟に係る訴訟費用額等の確定処分を経て取り立てることが予定されていないのであるから、上 月7日判決・民集74巻3号646頁参照)。 もっとも、別件訴訟の当事者以外の者に負担を求める場合には、別件訴訟に係る訴訟費用額等の確定処分を経て取り立てることが予定されていないのであるから、上記の理が直ちに当てはまるものと解するのは相当ではなく、共同不法行為に係る損害賠償債務が連帯債務とされている趣旨に照らしても、原告は、被告との関係においては、上記費目のものについて、 原告が、これを被告及びBに対する共同不法行為に基づく損害賠償請求において損害として主張することは、許されるというべきである。 そうすると、少なくとも証拠から認定することができる印紙代18万5000円(甲24)及び登録免許税16万3300円(甲31)の合計34万8300円の限度で、被告とBの共同不法行為と相当因果関係がある損害であると認めるのが相当であるウそして、別件訴訟の難易度、審理の経過、認容する請求の内容その他の諸般の事情を考慮すれば、前記認定に係る本件商標1及び2の移転登録の態様の悪質性及び当該抹消登録手続の難易性に照らしても、被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、50万円と認めるのが相当である。 ⑶ 特許庁での手続に係る費用ア原告は、B商標1ないし3の商標登録の申請がされたことを知ったことから、これを阻止するため、特許庁に情報提供をしたとして、これに要した弁理士費用が損害であると主張する。 しかし、証拠(甲40ないし49)及び弁論の全趣旨によれば、B商標1は、Bが本件商標1及び2の権利者であることを前提としても、原告が行った情報提供の程度にかかわらず、客観的に登録が拒絶されるものといえ、他方、B商標2及び3は、Bが本件商標1及び2の名義人である以上、原告が行った情報提供の程度では、その登録を阻止し得ないものであったと認めるの 程度にかかわらず、客観的に登録が拒絶されるものといえ、他方、B商標2及び3は、Bが本件商標1及び2の名義人である以上、原告が行った情報提供の程度では、その登録を阻止し得ないものであったと認めるのが相当である。したがって、これらの情報提供に係る費用を被告の不法行為と相当因果関係ある損害であると認めることはできない。 イ原告は、原告が商標登録を申請した花柄ロゴ等について、審査官に対して応答期間の延長を求めた手続に係る費用が損害であり、また、これらの商標登録の申請が拒絶査定を受けたことから、これに対応するため、印紙代及び意見書作成費用の弁理士費用を出捐したとして、これが損害であると主張する。 しかし、応答期間の延長を必要とする当時の事情や及び原告提出に係る意見書の内容が具体的には明らかにされていないことを踏まえると、原告主張の費用についてまで、被告の不法行為と相当因果関係がある損害であると認めるに足りないというべきである。 ウ他方、B商標2及び3は、Bが本件商標1及び2の権利者であることを前提に登録されたものであり、原告のラスク菓子の製造販売事業等に関連するものであると認められるところ、前記2⑴のとおり、被告も、その登録を容認していたと推認されるものであるから、その無効審判請求に係る印紙代(申立手数料)及び弁理士費用については、被告の不法行為と相当因果関係がある損害であると認めるのが相当である。 そして、Bが原告の無効審判請求に対し何らの答弁をしなかったこと、当該無効審判請求に先立ってBに対する本件商標1及び2の移転登録の抹消手続を命ずる判決(甲24)が確定していたこと、その他の上記無効審判請求の難易度、審理の経過、認容する請求の内容(甲48、49)等を考慮すると、被告の不法行為と相当因果関係がある費用は、申立手数料等 続を命ずる判決(甲24)が確定していたこと、その他の上記無効審判請求の難易度、審理の経過、認容する請求の内容(甲48、49)等を考慮すると、被告の不法行為と相当因果関係がある費用は、申立手数料等11万2400円(甲33の14、15)に、上記の事情を踏まえた弁理士費用相当損害額30万円を加えた41万2400円の限度で認めるのが相当である。 ⑷ 小括以上によれば、原告に生じた損害は、上記合計876万0700円に、本件訴訟の難易度、審理の経過、認容する請求の内容その他本件において認められる諸般の事情を考慮して、本件訴訟に係る弁護士費用相当損害額87万6070円を加えた963万6770円であると認めるのが相当である。 4 その他⑴ 原告は、本件弁論準備手続が終結した後である令和4年1月8日、被告を文書の所持者とし、被告が三越伊勢丹に代理人弁護士名で送付した文書(前 記1⑶オ)に係る文書提出命令の申立て(当庁令和4年(モ)第45号)をし、被告は、これが時機に遅れた攻撃防御方法であるとして、その却下を求める申立てをしている。 そこで検討するに、前記3までに認定判断したところによれば、その取調べの必要性を認めることができない上、前記文書提出命令の対象文書は、被告が三越伊勢丹に送付した文書の控えを意味するものと理解されるところ、これを被告が所持していると認めるべき証拠は存在せず、むしろ、証拠(乙イ43、被告本人・14頁)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、これを所持していないと認めるのが相当である。そうすると、上記文書提出命令の申立ては訴訟の完結を遅延させるものとは認められないから、被告の時機に後れた攻撃防御方法の申立てを却下するとともに、上記の理由をもって、上記文書提出命令の申立てを却下することとする。 ⑵ その他に、当事者双方 の完結を遅延させるものとは認められないから、被告の時機に後れた攻撃防御方法の申立てを却下するとともに、上記の理由をもって、上記文書提出命令の申立てを却下することとする。 ⑵ その他に、当事者双方提出に係る準備書面及び証拠(Bの提出したものを含む。)を改めて検討しても、本件事案の経過及び内容に鑑みると、前記判断を左右するに至らない。したがって、上記判断に反する原告及び被告の主張は、いずれも採用することができない。 5 結論よって、原告の請求は、主文記載の限度で理由があるから、その限度で認容し、その余は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部裁判長裁判官 中島基至 裁判官𠮷野俊太郎は、転補につき、裁判官齊藤敦は、退官につき、いずれも署名押印することができない。 裁判長裁判官 中島基至 (別紙)別紙商標目録 1 本件商標1登録商標オウザンのクロワッサン・ラスク(標準文字)登録番号第5511786号出願日平成24年1月30日登録日平成24年1月30日商品及び役務の区分第30類指定商品又は指定役務クロワッサン、ラスク 2 本件商標2登録商標 (下図のとおり)登録番号第5511808号出願日平成24年2月6日登録日平成24年2月6日商品及び役務の区分第30類指定商品又は指定役務クロワッサン、ラスク

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