平成15(ネ)335 根抵当権設定登記抹消登記手続請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成15年8月8日 名古屋高等裁判所 棄却 津地方裁判所 平成12(ワ)7
ファイル
hanrei-pdf-3170.txt

判決文本文6,463 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求める裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 控訴人の被控訴人に対する原判決別紙債務目録記載の債務が存在しないことを確認する。 (3) 訴訟費用は,第1,第2審を通じ,被控訴人の負担とする。 2 被控訴人主文と同旨第2 事実関係 1 事実関係は,次のとおり補正し,下記2の当審における控訴人の主張を付加するほか,原判決「事実及び理由」欄の第2記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決2頁2行目の「離婚訴訟が当裁判所に係属している(平成8年(タ)第24号事件)。」を「離婚訴訟(平成8年(タ)第24号事件)が津地方裁判所に係属していたが,平成15年2月27日(本件の原判決言渡日と同じ。),控訴人とAを離婚し,控訴人とAの間の長男B及び二男Cの親権者をいずれも控訴人とし,Aは控訴人に対し離婚に伴う財産分与として白山ヴィレッジカントリークラブのゴルフ会員権及び三重白山ゴルフクラブの会員権並びに1500万円を分与し,Aが控訴人に対し1500万円を支払うことを命じること等を内容とする第1審判決が言い渡され,同事件も現在控訴審係属中(平成15年(ネ)第331号)である(甲68,69,弁論の全趣旨)。」と改める。 (2) 同2頁26行目の「同月27日,」の次に「本件建物の同人持分2分の1について被控訴人を権利者として平成元年11月1日消費貸借同日設定を原因とする債権額2000万円の抵当権設定仮登記をした上で,」を付加する。 (3) 同3頁5行目から6行目にかけての「同月28日,被告に対し,根抵当権移転の付記登記をした。」を「本件根抵当権につき,同月28日,被控訴人に対し,根抵当権移転の付記登記をし,被控 付加する。 (3) 同3頁5行目から6行目にかけての「同月28日,被告に対し,根抵当権移転の付記登記をした。」を「本件根抵当権につき,同月28日,被控訴人に対し,根抵当権移転の付記登記をし,被控訴人は,そのうち本件建物の根抵当権について,平成6年1月10日,平成5年12月28日Aの持分に対する根抵当権放棄を原因として,本件根抵当権を控訴人持分の根抵当権とする変更登記をした。」と改める。 (4) 同3頁8行目の「登記手続をした。」を「登記手続をし,同代物弁済を原因として,前記抵当権設定仮登記は抹消された。」と改める。 2 当審における控訴人の主張(1) 控訴人は,夫婦間の実質的共有財産は,具体的に財産分与が決定するまでは,夫婦各2分の1ずつの共有であるとする前訴における名古屋高等裁判所及び最高裁判所の判断に従い,本件において,相殺の自働債権を,原判決別紙自働債権一覧表その1の郵便貯金,生命保険等の金額の2分の1(予備的に同一覧表その2の簡易生命保険も含む金額の2分の1)と主張したところ,原判決は,財産分与請求権が審判,調停,判決などで具体化,現実化されない限りその持分は未だ具体的に特定していないから,相殺の対象にすることはできないとして控訴人の請求を棄却したものであり,この原判決の判断は,上記前訴における名古屋高等裁判所及び最高裁判所の判断に抵触するものである。 そもそも,夫婦共有財産は,具体的に財産分与が決定するまでは,特に持分が定められていなければ,夫婦が各2分の1ずつ持分を有するものと推定されるべきであるし,仮に,夫婦間では,財産分与が具体的に決定されるまで持分割合が決まらないとしても,対第三者間では,所有名義をもって所有者と定めるか,夫婦各2分の1ずつの共有持分を有すると定めるかのいずれかしかないところ,本件訴訟の被告はA が具体的に決定されるまで持分割合が決まらないとしても,対第三者間では,所有名義をもって所有者と定めるか,夫婦各2分の1ずつの共有持分を有すると定めるかのいずれかしかないところ,本件訴訟の被告はAではなく,第三者の立場にある被控訴人であり,同人はAの包括承継者でもないのであるから,原判決の上記のような判断はできない筈である。 (2) 夫婦の一方が別居の際に夫婦共有財産を持ち出しても,財産分与請求権が具体的に決定されていない限り,ただちに不法行為や不当利得は成立しないとしても,持ち出した財産が将来の財産分与として考えられる対象,範囲を著しく逸脱するとか,他方を困惑させる等不当な目的で持ち出したなどの特段の事情があれば,不法行為や不当利得は成立するべきところ,本件でのAや被控訴人の夫婦共有財産の持ち出しは,将来財産分与として考えられる対象,範囲を著しく逸脱し,他方を困惑させる等不当な目的で行われたものであるから,不当利得が成立する。 (3) 原審は,控訴人とAとの間の前記離婚訴訟(平成8年(タ)第24号事件)と併行して審理され,原判決も,これと関連し一体をなすものとして判断がなされている。しかるところ,本件において控訴人が主債務者,Aが連帯保証人として百五銀行に対して負担していた債務は消極的な夫婦共有財産であり,控訴人が本件求償権に対する相殺の自働債権として主張する別紙自働債権一覧表その1及びその2記載の各種預貯金債権等も積極的な夫婦共有財産であり,本件提訴は,第三者である被控訴人がAと共謀して本件求償権や本件根抵当権を取得して夫婦共有財産に関わってきたことに端を発しているのであるから,控訴人とAとの間の財産分与に当たっては,夫婦共有財産を確定し,第三者からの債務を返済や相殺等によって消滅させた上で,残余の積極財産を夫婦間で財産分与する ってきたことに端を発しているのであるから,控訴人とAとの間の財産分与に当たっては,夫婦共有財産を確定し,第三者からの債務を返済や相殺等によって消滅させた上で,残余の積極財産を夫婦間で財産分与するべきである。このような方法を採らなかった原判決は,優先順位を誤り,裁量の範囲を著しく逸脱し,公平を失した違法がある。 (4) Aが取得した別紙自働債権一覧表その1の郵便貯金等については財産分与が具体的に決定しなければ,不当利得は成立しないとしても,同表その2の各控訴人名義の簡易生命保険は,財産分与の当事者でない被控訴人が取得したものであるから,不当利得の成立が妨げられる理由はない。 上記各簡易生命保険は,被控訴人が平成4年11月5日に控訴人に無断で契約者名義を自己に変更した上で解約して合計1572万5741円を利得したものであり,控訴人は,平成6年4月23日到達の書面(甲70の1,3)及び平成9年12月3日到達の書面(甲5)で上記不当利得返還請求権を自働債権として本件求償権と対当額において相殺する旨の意思表示をした。 したがって,本件債務2747万5337円は,少なくとも,上記自働債権1572万5741円で相殺された残額1174万9596円を超えて存在することはない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断するが,その理由は,次のとおり補正し,下記2の当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほか,原判決「事実及び理由」欄の第3記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決7頁26行目から8頁1行目にかけての「本件求償権」を「控訴人の株式会社百五銀行に対する債務」と改める。 (2) 同8頁1行目の「発生したものであるから」の次に「控訴人のAに対する求償債務も」を付加する。 (3) 同8頁2行目 かけての「本件求償権」を「控訴人の株式会社百五銀行に対する債務」と改める。 (2) 同8頁1行目の「発生したものであるから」の次に「控訴人のAに対する求償債務も」を付加する。 (3) 同8頁2行目の「その」を「求償債務の」と改める。 (4) 同9頁24行目の「場合においても」を「場合における不法行為損害賠償請求権や不当利得返還請求権についても」と改める。 2 当審における控訴人の主張に対する判断(1) 控訴人は,夫婦共有財産は,具体的に財産分与が決定するまでは,特に持分が定められていなければ,夫婦が各2分の1ずつ持分を有するものと推定されるべきであると主張するが,具体的に財産分与が決定していなければ,夫婦の一方が夫婦共有財産である預貯金等を無断解約等しても,それにより不法行為損害賠償請求権や不当利得返還請求権が具体的に生じたものとしてこれを相殺の対象とすることができないことは前記(原判決「事実及び理由」欄第3の4(2))のとおりであって,財産分与の割合が未だ決定していない段階で,夫婦の一方が夫婦共有財産である預貯金等を無断解約等すると,ただちに他の一方の財産分与請求権が2分の1の割合で侵害されたとするのは相当でないから,控訴人の上記主張は採用できない。 なお,控訴人は,上記のような判断は,前訴における名古屋高等裁判所及び最高裁判所の判断に抵触するものであると主張するが,前訴における最高裁判所の判決は,上告理由を採用することができないとして上告を棄却したものに過ぎず,これを夫婦間の実質的共有財産に関し具体的に財産分与が決定する前に,その一方が同共有財産の2分の1について具体的な権利として行使することを認めた判例と見ることはできないので,本件における上記の判断が前訴における最高裁判所の判断と抵触するものとはいえないし,前訴における名古 同共有財産の2分の1について具体的な権利として行使することを認めた判例と見ることはできないので,本件における上記の判断が前訴における最高裁判所の判断と抵触するものとはいえないし,前訴における名古屋高等裁判所の判断は本件の原審の判断に対して覊束力を持つものではないから,これと原判決の判断に抵触があっても違法となるものではなく,控訴人の上記主張は,何ら原判決の判断の相当性を左右するものではない。 さらに,控訴人は,夫婦共有財産の所有者は,対第三者との関係では,所有名義をもって定めるか,夫婦各2分の1ずつの共有とするかのいずれかしかなく,本件訴訟の被告は,Aではなく,第三者の立場にある被控訴人であるから,原判決のように財産分与請求権が具体化されていない限り上記不法行為損害賠償請求権や不当利得返還請求権を相殺の自働債権にすることはできないとすることは誤りであると主張するが,本件求償債権はAから被控訴人に債権譲渡されているため,本件債務の不存在確認請求訴訟の被告適格を有するのは被控訴人であるが,控訴人の主張する相殺の相殺適状は控訴人とAとの間に生じているのであるから,控訴人の上記主張は前提を失し,採用することができない。 (2) 控訴人は,控訴人とAの間で財産分与が具体的に決定されていないとしても,本件でのAや被控訴人の夫婦共有財産の持ち出しは,将来財産分与として考えられる対象,範囲を著しく逸脱し,他方を困惑させる等不当な目的で行われたものであるから,不当利得が成立すると主張する。 しかしながら,仮に,控訴人が主張するように,A及び被控訴人が別紙自働債権一覧表その1及びその2記載の各種預貯金債権等合計7564万0522円を取得していたとしても,甲68によれば,前記控訴人とAの間の離婚訴訟(平成8年(タ)第24号事件)において,津地方裁判所 働債権一覧表その1及びその2記載の各種預貯金債権等合計7564万0522円を取得していたとしても,甲68によれば,前記控訴人とAの間の離婚訴訟(平成8年(タ)第24号事件)において,津地方裁判所は,控訴人とAの預貯金,保険契約等の共有財産は合計9538万8152円であり,このうちAは既に8749万7678円相当分を解約するなどして取得し,控訴人は787万6770円相当分を解約するなどして取得したと認定した上で,両者の夫婦共有財産の形成の過程,不動産,預金等,株式,ゴルフ会員権,自動車,負債の状況や,控訴人がAに対し平成4年9月の別居以来婚姻費用の負担をしていないこと,控訴人が株式の信用取引で多大な損失を生じさせていることが窺われることなど同事件に現れた一切の事情を勘案すれば,控訴人とAとの離婚に伴う財産分与として白山ヴィレッジカントリークラブのゴルフ会員権(250万円相当)及び三重白山ゴルフクラブの会員権(200万円相当)並びに1500万円を分与し,Aが控訴人に対し1500万円を支払うことが相当であると判断して,その旨の財産分与を命じる旨の判決を言い渡したことが認められ,このように,未確定判決ではあるものの,裁判所が,Aについて上記控訴人の主張する額を超える夫婦共有財産の持ち出しを認めた上で,持ち出し額の2割強にすぎない額の財産分与しか認めていないことなどに照らすと,その夫婦共有財産の持ち出しが,将来財産分与として考えられる対象,範囲を著しく逸脱したものと認めるのは困難というべきであるし,これが他方を困惑させる等不当な目的で行われたものであることを認めるに足りる証拠はないから,控訴人の前記主張は採用できない。 (3) 控訴人は,被控訴人とAとの間の財産分与を考えるに当たっては,夫婦共有財産を確定し,第三者からの債務を返済や相殺等 であることを認めるに足りる証拠はないから,控訴人の前記主張は採用できない。 (3) 控訴人は,被控訴人とAとの間の財産分与を考えるに当たっては,夫婦共有財産を確定し,第三者からの債務を返済や相殺等によって消滅させた上で,残余の積極財産を夫婦間で財産分与するべきであり,このような方法を採らなかった本件の原判決は,優先順位を誤り,裁量の範囲を著しく逸脱し,公平を失した違法があると主張するが,本件は,夫婦共有財産に属さない消極財産たる本件債務が,控訴人に分与されるべき夫婦財産をAが持ち出したことによって生ずる不当利得返還請求権を自働債権としてする相殺によって消滅したことを理由の1つとする債務不存在確認訴訟であって,いわば財産分与の具体的決定が第三者からの債務の消滅の先決関係になっているのであるから,控訴人の主張するような方法を採ることは困難であり,その主張を採用することはできない。 (4) 控訴人は,財産分与が具体的に決定されていない限り,夫婦共有財産の持ち出しがあっても,不当利得は成立しないとしても,別紙自働債権一覧表その2の各控訴人名義の簡易生命保険は,財産分与の当事者でない被控訴人が取得したものであるから,不当利得の成立が妨げられる理由はないと主張し,乙24,25によれば,被控訴人が保険契約を解約して還付金の交付を受けていることが認められるが,同各書証によれば,これらの保険契約は保険契約者が控訴人或いはDとなってはいるものの,契約手続をしているのも契約証書の交付を受けているのもAの親である被控訴人であることが認められ,これを控訴人及びAの夫婦共有財産と見る以上,被控訴人が保険契約を解約し還付金の交付を受けているのもAに代わってしたことと見るのが相当であって,これだけを採り上げて,財産分与の当事者でない被控訴人がこれを取得したものと 婦共有財産と見る以上,被控訴人が保険契約を解約し還付金の交付を受けているのもAに代わってしたことと見るのが相当であって,これだけを採り上げて,財産分与の当事者でない被控訴人がこれを取得したものとして不当利得の成立を認めることはできず,控訴人の上記主張は採用できない。 3 結論したがって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 (別紙添付省略)名古屋高等裁判所民事第2部裁判長裁判官熊田士朗裁判官川添利賢裁判官玉越義雄

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る