平成6(う)1511 封印破棄、凶器準備集合、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反、公務執行妨害被告事件

裁判年月日・裁判所
平成8年5月29日 東京高等裁判所
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判決文本文38,590 文字)

主文 本件各控訴を棄却する。 当審における訴訟費用は、被告人四名の連帯負担とする。 理由 本件各控訴の趣意は、被告人四名の弁護人遠藤憲一、同大口昭彦、同秀嶋ゆかりが連名で提出した控訴趣意書及び被告人A、同B、同Cがそれぞれ提出した各控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する答弁は、検察官新井克美作成名義の答弁書記載のとおりであるから、これらを引用する。 そこで、記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも加えて検討する。 弁護人の控訴趣意について第一不法に公訴を受理したとの論旨について論旨は、要するに、本件公訴の提起は、違憲な新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(以下「緊急措置法」という。)の適用による反対運動潰しを目的とした国家権力の横暴であるから、公訴棄却の裁判がなされるべきであるのに、公訴棄却の申立てを排斥して実体審理を行った原判決には、不法に公訴を受理した違法があるというのである。 しかし、緊急措置法三条一項一号所定の使用禁止命令、同条六項所定の封鎖、同条八項所定の除去に関する各規定が違憲でないことは、後記第二の一において述べるとおりであり、また、関係各証拠によっても、本件において公訴の提起に瑕庇があるとして公訴棄却の裁判がなされるべき事情があるとは認められない。したがって、公訴棄却の申立てを排斥して実体審理を行った原判決に所論のいうような違法はない。論旨は理由がない。 第二緊急措置法の違憲等をいう論旨について一緊急措置法の規定の違憲をいう論旨について論旨は、要するに、本件は、緊急措置法に基づく除去処分等の過程で発生したものであるところ、同法は違憲であるから、公務執行妨害罪の成立について必要とされるところの職務執行の適法性がない、それにもかかわら 旨は、要するに、本件は、緊急措置法に基づく除去処分等の過程で発生したものであるところ、同法は違憲であるから、公務執行妨害罪の成立について必要とされるところの職務執行の適法性がない、それにもかかわらず、同罪の成立を認めた原判決には、法令の適用を誤った違法があるというのであり、緊急措置法の違憲性について、以下のように主張する。すなわち、(1)緊急措置法は、いわゆる管制塔占拠事件を契機として、緊急異常な事態に対処するために、例外中の例外として憲法上許容される立法として制定されたものであり、国際空港の安全を守るという至上命令のため、国会においても異例のスピード審議で成立に至ったものであって、この法律により侵害される権利が精神的自由権の根幹をなす権利であるという法の内容も考慮すると、このような立法経過の異常性により、同法は違憲とされるべきである。(2)言論及び集会の自由は、民主主義の根幹をなす特に重要な権利であり、その制約については、原判決が用いた「合理性の基準」は妥当しない。原判決は、同法の具体的な適用においても安易な解釈をしているが、そのような解釈を許してしまうこと自体、緊急措置法か法令そのものとして憲法二一条に違反することを示している。(3)緊急措置法が団結会館の使用行為一切を禁止するのみならす、その除去まで許容しているのは、立法目的に照らして手段の合理的関連性を認めることができず、法令そのものが憲法二九条に違反する。(4)原判決は、緊急措置法の立法目的が新東京国際空港(以下「新空港」という。)の設置、管理等の安全という国家的、社会経済的、公益的、人道的見地から極めて強く要請されているものであって、高度かつ緊急の必要性を有するものであることなどを理由として、告知、弁解、防御の機会を与える旨の規定がなくても、憲法三一条の法意に違反しないと 、人道的見地から極めて強く要請されているものであって、高度かつ緊急の必要性を有するものであることなどを理由として、告知、弁解、防御の機会を与える旨の規定がなくても、憲法三一条の法意に違反しないと判示しているが、右の必要性の判断は誤りであり、また、適正手続に関する一切の保障をしていない緊急措置法は、法令自体として憲法三一条に抵触して違憲であって、原判決の解釈は誤りである。さらに、緊急措置法三条一項の「暴力主義的破壊活動」などの文言は、不明瞭であって、憲法三一条に違反する。(5)原判決は、緊急措置法三条六項を解釈するに当たり、厳格な基準を用いておらず、「暴力主義的破壊活動者」との評価さえ受ければ、直ちに除去処分まで許容されるという危険性を示しているが、このことは、同条項の立法そのものが違憲であることを帰結する。 1 所論(1)についてみるに、緊急措置法が、衆議院及び参議院においてそれぞれ可決されたものとされ、所定の手続により、昭和五三年五月一三日、同年法律第四二号として公布されていることは、公知の事実であって、このように正規の手続に従って制定された緊急措置法が、所論のいうような立法経過の故に違憲になるものとは解されない。この結論は、同法の内容が所論のいうようなものである点を考慮しても、変わりはない。 2 所論(2)についてみるに、憲法二一条の保障する言論及び集会の自由は、民主主義社会における重要な基本的人権の一つであって、これが特に尊重されなければならないことは、改めていうまでもない。しかし、右のような自由も、あらゆる場合に無制限に保障されなければならないものではなく、一定の場合には公共の福祉による必要かつ合理的な制限を受けることがあるものと解されるところ、右のような自由に対する制限が必要かつ合理的なものとして是認されるかどうかは、制 ければならないものではなく、一定の場合には公共の福祉による必要かつ合理的な制限を受けることがあるものと解されるところ、右のような自由に対する制限が必要かつ合理的なものとして是認されるかどうかは、制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決すべきものと解するのが相当である(最高裁判所平成四年七月一日大法廷判決民集四六巻五号四三七頁参照)。したがって、これと同旨の見解に立脚して、緊急措置法三条一項一号所定の使用禁止命令等につきその合憲性を審査した原判決に所論のいうような誤りは認められない。 そこで進んで、緊急措置法三条一項一号所定の使用禁止命令の合憲性について検討すると、右の使用禁止命令によって保護される利益は、新空港若しくは航空保安施設等の設置、管理の安全の確保並びに新空港及びその周辺における航空機の航行の安全の確保であり、それに伴い新空港を利用する乗客等の生命、身体の安全の確保も図られるのであって、これらの安全の確保は、国家的、社会経済的、公益的、人道的見地から極めて強く要請されるところのものである。他方、右の使用禁止命令によって制限される利益は、多数の暴力主義的破壊活動者が、新空港の範囲内の区域及びその範囲の外側三〇〇〇メートルの線までの区域等同法二条三項所定の規制区域内に所在する当該工作物を集合の用に供する利益にすぎない。しかも、関係証拠によれば、新空港の開港を間近に控えた昭和五三年三月二六日、いわゆる過激派集団が空港内に乱入し、その一部が管制塔を占拠して管制機器類を破壊するという事件が発生し、このため開港が遅延する事態に至ったことがあり、右のような事件がかつて実際に発生していることに照らせば、暴力主義的破壊活動等を防止し、新空港の設置、管理等の安全を確保すること るという事件が発生し、このため開港が遅延する事態に至ったことがあり、右のような事件がかつて実際に発生していることに照らせば、暴力主義的破壊活動等を防止し、新空港の設置、管理等の安全を確保することには高度かつ緊急の必要性があるということができる。したがって、以上を総合して較量すれば、緊急措置法三条一項一号所定の使用禁止命令を発し得るとすることは、公共の福祉による必要かつ合理的な制限であるということができる。 次に、封鎖、除去の合憲性について検討するに当たっては、緊急措置法三条六項、八項所定の封鎖、除去が、いずれも使用禁止命令の履行を確保するための手段として位置付けられていることに留意されなければならない。すなわち、同法三条六項所定の封鎖は、運輸大臣において、右の使用禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して用に供されていると認められるときに限り講ずることのできる措置であり、また、同条八項所定の除去は、右の使用禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して用に供されている場合において、当該工作物の現在又は既往の使用状況、周辺の状況その他諸般の状況から判断して、暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認められ、かつ、他の手段によっては右の使用禁止命令の履行を確保することができないと認められるときであって、同法一条の目的を達成するため特に必要があると認められるときに限り講ずることのできる措置である。このように、封鎖、除去は、使用禁止命令に違反する事態が現に発生し、除去については、右の点のほか更に厳重な要件が具備されたときにのみ、使用禁止命令の履行を確保するために講ずることのできる措置であり、右の要件は、使用禁止命令より表現の自由に対する制約が強くなっている分だけ厳重となっており、それら要件の内容も合理的である。また、封鎖、除去は、右にみたと 保するために講ずることのできる措置であり、右の要件は、使用禁止命令より表現の自由に対する制約が強くなっている分だけ厳重となっており、それら要件の内容も合理的である。また、封鎖、除去は、右にみたとおり、使用禁止命令の履行確保を目的とするものであって、表現の自由の規制を目的とするものではなく、ただ、封鎖、除去が行われた場合、その結果として表現の自由に対する制約がもたらされるが、その制約の内容も、既に使用禁止命令の出ている当該特定の工作物における表現の自由にとどまる。そして、封鎖、除去の前提となる緊急措置法三条一項一号所定の使用禁止命令が憲法二一条に違反しないことは、既にみたとおりである。また、封鎖、除去の要件はいずれも明確であって、行政庁に恣意的な措置を許したり、国民に表現の自由の享受を躊躇させたりするおそれはない。以上を総合して前同様の較量をすれば、これらの封鎖や除去の措置も、なお公共の福祉による必要かつ合理的な制限であるということができる。 したがって、緊急措置法三条一項一号、同条六項、同条八項の各規定が憲法二一条に違反しないとした原判決に誤りはない。 3 所論(3)についてみるに、前記2のとおり、緊急措置法三条一項一号所定の使用禁止命令は、新空港の設置、管理等の安全を確保するという国家的、社会経済的、公益的、人道的見地からの極めて強い要請に基づくものであって、高度かつ緊急の必要性を有するものであり、同条六項所定の封鎖及び同条八項所定の除去も、使用禁止命令の履行を確保するためのものであって、その発動要件は、それぞれの措置が有する効果の強さに応じて極めて限定的に規定されている。そうしてみると、これらの制限は、財産の使用に対する公共の福祉による必要かつ合理的な制限であるということができ、立法目的に照らして合理的関連性に欠けるとはいえな に応じて極めて限定的に規定されている。そうしてみると、これらの制限は、財産の使用に対する公共の福祉による必要かつ合理的な制限であるということができ、立法目的に照らして合理的関連性に欠けるとはいえない。また、緊急措置法には、除去された物件の保管や、封鎖、除去などの措置が講じられたことにより損失を受けた者に対する損失補償に関する規定も設けられている(三条一一項以下、四条一。したがって、使用禁止命令、封鎖及び除去の措置を規定する緊急措置法が憲法二九条に違反しないとした原判決に誤りはない。 4 所論(4)についてみるに、緊急措置法の立法目的が新空港の設置、管理等の安全という国家的、社会経済的、公益的、人道的見地から極めて強く要請されているものであって、高度かつ緊急の必要性を有するものであることは明らかであり、右の必要性に関する原判決の判断が誤りであるとはいえない。 また、行政手続についても憲法三一条の法意が尊重されるべきであるが、行政庁が公権力の行使に当たる行為をするに際し、相手方に対して事前に告知、弁解、防御の機会を与えるべきか否かは、行政手続が刑事手続とその性質を異にし、行政目的に応じて多種多様であることにもかんがみ、当該行為により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、当該行為により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるものと解される。緊急措置法三条一項一号所定の使用禁止命令、同条六項所定の封鎖、同条八項所定の除去により制限される権利利益の内容、性質及びこれらにより達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等は、いずれも前記2で検討したとおりのものであって、使用禁止命令、封鎖、除去の要件が充足されるような場合には、これらを緊急措置法一条の目的を達成するため事態に即応した実効あるものとすべき緊急の必要性が 、いずれも前記2で検討したとおりのものであって、使用禁止命令、封鎖、除去の要件が充足されるような場合には、これらを緊急措置法一条の目的を達成するため事態に即応した実効あるものとすべき緊急の必要性が存在することが認められる。以上を総合して較量すれば、使用禁止命令、封鎖、除去に際し、その相手方に対して事前に告知、弁解、防御の機会を与える旨の規定が設けられていないとしても、そのことが憲法三一条の法意に反するものとは解されない。 さらに、緊急措置法三条一項の「暴力主義的破壊活動者」については、「暴力主義的破壊活動等」及び「暴力主義的破壊活動者」に関する同法二条一項、二項の定義規定及び同法の趣旨、目的等に照らし、十分合理的に解釈することが可能であり、これが不明瞭であるとは解されないから、所論は、前提を欠く。 5 所論(5)についてみるに、原判決が採用した合憲性審査の手法に誤りがないことは、前記2で検討したとおりであるから、所論は、前提を欠く。 以上のとおり、緊急措置法の規定の違憲をいう論旨は、いずれも採用できない。 二緊急措置法の解釈適用の違憲等をいう論旨について論旨は、要するに、仮に緊急措置法自体は、法令として合憲であるとしても、これを発動してなされた本件除去処分は違憲、違法である、具体的には、D会館が緊急措置法三条六項にいう暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されておらず、同条八項の除去に関して必要とされる非代替性の要件も満たされておらず、本件封鎖、除去は、反対運動の拠点を破壊し、土地を強奪するために行われたものにほかならないのに、原判決が公務の適法性を認めたのは誤りであるというのである。 そこで、検討すると、関係各証拠によれば、本件をめぐる経緯は、概略以下のとおりと認められる。 (1) 千葉県成田市a字bc番の土地は、緊急措置法二条 の適法性を認めたのは誤りであるというのである。 そこで、検討すると、関係各証拠によれば、本件をめぐる経緯は、概略以下のとおりと認められる。 (1) 千葉県成田市a字bc番の土地は、緊急措置法二条三項一号の規制区域にあり、新東京国際空港公団(以下「空港公団」という。)が一二九分の一〇四の持分権を有し、その余は、多数の者の共有となっていた。E派は、かねてよりF空港反対同盟G派を支援して新空港反対運動を展開していたが、昭和五八年ころ、右上地上に自らが中心となってD会館を建設し、同会館は、主として同派の空港反対運動の拠点に使われていた。(2)昭和六三年七月、空港公団は、E派が機関紙等でD会館の要塞化を標榜するなどしていた状況にかんがみ、右土地の持分権に基づく建物等収去土地明渡請求権を保全するため、同会館の占有者を債務者として、占有移転禁止等の仮処分を申請し、同月五日決定を得た。そして、同月六日、執行官により原判示第一記載の土地、建物二棟、櫓二基について占有移転禁止の仮処分が執行され、その旨の公示書が掲示された。(3)平成元年九月、運輸大臣は、緊急措置法三条一六項に基づき、D会館が同法三条一項所定の使用禁止命令の要件を満たしているか否かを判断するために、警察庁長官から資料の提供及び意見の提出を受けたが、そこでは、D会館はE派がH派、Iの協力のもとに建設したものであること、昭和六二年四月から平成元年三月の間にE派、H派、Iの構成員ら約二〇名の常駐又は出入りが確認され、その約半数について新空港反対闘争関連の検挙歴があったこと、同会館が反対同盟の集会、デモの出発拠点となっていること、E派、H派、Iが新空港反対闘争に関連してテロ、ゲリラ事件を起こしていたこと、その他同会館の外形、構造の説明、新空港反対運動に関する右各派の主張の内容などが報告され、同 の出発拠点となっていること、E派、H派、Iが新空港反対闘争に関連してテロ、ゲリラ事件を起こしていたこと、その他同会館の外形、構造の説明、新空港反対運動に関する右各派の主張の内容などが報告され、同法三条一項一号の要件を具備するとの意見が付されていた。運輸省航空局飛行場部新東京国際空港課長Jらは、右資料及び意見等に基づき検討した結果、D会館が多数の暴力主義的破壊活動者(同法二条二項に定義されている暴力主義的破壊活動者のうち、暴力主義的破壊活動等を行うおそれがあると認められる者)の集合の用に供されるおそれがあると判断し、運輸大臣も、J課長らの報告を受けてこれと同様の判断をし、平成元年九月一九日付け官報による公告をもって、D会館の建築物三棟、櫓二基、付属工作物につき、平成二年九月一八日までの間、同法三条一項一号の用に供することを禁ずる使用禁止命令を発した。(4)使用禁止命令が発せられたことに対し、E派は、D会館の要塞化を唱え、平成元年一〇月二一日から二三日にかけて、従来高さ約五メートルであった櫓一基を高さ約一四メートルに増築するとともに、新たに高さ約一三メートルと約一五メートルの櫓二基を構築した。新増築された櫓は、いずれもコンクリート基礎の上に直径約五センチメートルの金属製パイプをジョイント、クランプ等を用いて組み立てたものであり、その最上部に見張り台が設けられていた。(5)K派は、平成元年一一月五日付け機関紙「L」第五六九号に「D会館を拠点に、用地内反対同盟と命運をともにし土地収用攻撃を粉砕する武装闘争を炸裂させよ。K派はD会館を死守してたたかいぬく。」などとする記事を、同年一一月二〇日付け同第五七〇号に「わがK派はなみなみならぬ決意のもと、東峰要塞化―死守体制に突入した。」とする記事を掲載するなどし、H派は、同年一一月二七日付け機関紙「 ぬく。」などとする記事を、同年一一月二〇日付け同第五七〇号に「わがK派はなみなみならぬ決意のもと、東峰要塞化―死守体制に突入した。」とする記事を掲載するなどし、H派は、同年一一月二七日付け機関紙「前進」第一四五八号に「全学連の戦士は、D会館にろう城し、団結小屋をめぐる攻防戦の最先頭に立って決起した。全学連死守隊の決起は、わが革命軍戦士の決起に勝るとも劣らぬ英雄主義の発揮であり、軍の全戦士はその英雄的決起を圧倒的にたたえるものである。」とする記事を掲載するなどし、Iは、同年一一月一日付け機関紙「解放」第四六四号に「D会館砦化をともに闘い、治安法攻撃を真正面から迎えうち、実力闘争・武装闘争の大爆発でそれを粉砕する。」とする記事を、同年一二月一日付け同第四六六号に「11・23を期して死守態勢にはいったD会館」との説明を付した写真を掲載するなどし、右各派は、そのころまでに運輸大臣のD会館に対する封鎖、除去の措置を予測して、実力でこれに対抗する方針を固めた。同年一〇月二九日ころ同会館内で行われたK派の集会では被告人C、同M、同Bがいわゆる死守隊員として紹介され、またIから被告人A、H派から原審相被告人Nが死守隊員として加わり、同年一一月一〇日ころ以降は、右の死守隊員五名のみが同会館に常駐するようになった。(6)前記使用禁止命令の後、運輸省では、報告等から、使用禁止命令が出たにもかかわらず会館への出入り等の状況に変化がなく、かえって櫓の新増築が行われ、更にその後はH派やIの関係者も常駐していることが確認されたこと、E派等が機関紙等でD会館の要塞化を標榜し、会館死守の武装闘争を行う旨表明したこと、会館内にびんや鉄筋片様の物の搬入が確認されたこと等の事情を把握していたが、平成元年一一月三〇日から翌一二月一日にかけて、運輸大臣が緊急措置法三条一六項に 、会館死守の武装闘争を行う旨表明したこと、会館内にびんや鉄筋片様の物の搬入が確認されたこと等の事情を把握していたが、平成元年一一月三〇日から翌一二月一日にかけて、運輸大臣が緊急措置法三条一六項に基づき、D会館が同法三条六項所定の封鎖の要件を満たしているか否かを判断するために、警察庁長官から資料の提供及び意見の提出を受けたところ、前記事情と同様の事情が報告され、同法三条六項の要件を具備するとの意見が付されていた。J課長らは、右資料及び意見等に基づき検討した結果、D会館が現に多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されていると判断し、運輸大臣も、J課長らの報告を受けてこれと同様の判断をし、同日、使用禁止命令の対象とされた前記建築物等に対する封鎖の措置を決定し、下命した。併せて、使用禁止命令後に新増築された櫓三基、付属工作物についても、同月四日付け官報による公告をもって、同法三条一項一号に基づき前同様の使用禁止命令が発せられた。(7)平成元年一二月四日早朝、緊急措置法七条一項により運輸大臣から封鎖等を行う権限を有する職員として指定されていたJ課長ほか二名の運輸省職員、同法六条一項によりその実施に当たることとされていた多数の空港公団職員及び空港公団から作業を請け負った民間業者の作業員多数は、封鎖を実施するため、D会館周辺に到着し、午前六時五〇分ころ、J課長が同会館に向かって封鎖を実施すること及び同法三条一〇項に基づく退去命令が発せられていることを通告したところ、同会館の櫓上にいた被告人らから、前記運輸省職員、空港公団職員、作業員及び警戒警備の任に当たっていた多数の警察官に対し、一斉に火炎びん、鉄筋片等の投擲、弓式火炎びん等発射器、パチンコ器具による火炎びん、鉄筋片の発射が開始され、以後、原判示第三の二のとおり、犯行が続けられた。(8)J課長 っていた多数の警察官に対し、一斉に火炎びん、鉄筋片等の投擲、弓式火炎びん等発射器、パチンコ器具による火炎びん、鉄筋片の発射が開始され、以後、原判示第三の二のとおり、犯行が続けられた。(8)J課長は、右犯行が開始された直後に、諸般の状況に照らして封鎖の実施は困難で他の方法では使用禁止命令の履行の確保はできないと考え、千葉県警本部長に緊急措置法三条八項の除去についての資料の提供及び意見の提出を求めたところ、間もなく、櫓の上から現場にいる関係職員らに多数の火炎びん、鉄筋片等が投擲されている旨の資料及び同法三条八項の要件を満たしている旨の意見が伝えられた。運輸大臣は、J課長らの報告に基づき、封鎖の対象となっていた建築物等に対する除去の措置を決定し、下命した。J課長らは、同日午前七時ころ、前同様に被告人らに対して除去を実施することを通告した。 (9)同日午前八時三〇分ころ、前記の新増築された櫓に対する使用禁止命令の官報公告がなされたことが確認され、前同様の過程を経て同日午後一時一五分ころまでに、新増築櫓に対する除去の実施が決定されて通告された。(9)被告人らによる犯行は、翌五日に被告人Mが、翌六日に被告人A、同C、同B、原審相被告人Nが順次逮捕されるまで続いた。翌七日、D会館に対する除去に係る作業が終了した。 以上の事実関係に基づいて考察すると、D会館が緊急措置法三条六項にいう暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されており、また同条八項の除去に関して必要とされる非代替性の要件も満たされているとした運輸大臣の判断について、これが相当である旨判示した原判決の認定に誤りかあるとは認められない。なお、右の非代替性の要件が満たされていることについては、後記第四の八の3で更に検討する。 また、関係各証拠によっても、本件封鎖、除去が所論のいうような目的で行われ の認定に誤りかあるとは認められない。なお、右の非代替性の要件が満たされていることについては、後記第四の八の3で更に検討する。 また、関係各証拠によっても、本件封鎖、除去が所論のいうような目的で行われたものとは認められないから、違憲、違法の主張は、前提を欠き、採用できない。 三公訴権濫用の論旨について論旨は、要するに、本件公訴は新空港反対闘争の解体等特定の政治的弾圧の意図に基づいて行われたものであるのに、原判決が、この間の事情を示す多数の証拠に目をつぶり、公訴権の濫用を認めなかったのは、不当であるというのである。 しかし、関係各証拠によっても、本件公訴が所論のいうような意図に基づいて行われたものとは認められないから、所論は、前提を欠き、採用できない。 四違法捜査をいう論旨について論旨は、要するに、本件捜査は、新空港反対闘争の解体、反対運動家の転向強要という特定の政治的弾圧の意図に基づく違法なものであり、本件の公訴自体が違法であるというのである。 しかし、関係各証拠によれば、本件捜査において被告人らに対しいわゆる転向の慫慂があったとしても、本件捜査が所論のいうような意図に基づく違法なものとは認められないから、所論は、前提を欠き、採用できない。 第三訴訟手続の法令違反をいう論旨について一 O、Pの検察官調書に関する論旨について 1 起訴後の取調べの違法をいう論旨について論旨は、要するに、次のようにいう。Pの検察官調書(一八通のうち一五通)及びOの検察官調書(一四通のうち一二通)は、違法な起訴後の取調べに基づき作成されたものであり、証拠能力がない。すなわち、これらの供述調書の作成に際しては、任意捜査であることの形式的な説明がなされただけで、取調室への出頭を拒み、又は出頭後いつでも退去できることが十分に知らされておらず、また 、証拠能力がない。すなわち、これらの供述調書の作成に際しては、任意捜査であることの形式的な説明がなされただけで、取調室への出頭を拒み、又は出頭後いつでも退去できることが十分に知らされておらず、また、内容上も起訴前と同様の高密度で集中的な取調べが行われている。したがって、そもそも起訴後の取調べは許されないとする有力学説によるときはもとより、判例又は裁判例で示されている基準に照らしても、その取調べは違法である。特に、第一回公判後の取調べについては、判例(最高裁判所昭和三六年一一月二一日第三小法廷決定刑集一五巻一〇号一七六四頁)をいかに緩やかに解釈しても、許容の余地はない。 しかるに、前記各供述調書を採用した原審の訴訟手続には重大な法令違反がある。 <要旨>そこで検討すると、関係各証拠によれば、所論が指摘するP及びOの各検察官調書については、次の事</要旨>実を認めることができる。すなわち、Pは、平成元年一二月二六日D会館に係る封印破棄罪により千葉地方裁判所へ勾留中起訴され、平成二年三月一日第一回公判が開かれて即日結審し、同月一四日懲役八月、二年間執行猶予の判決が宣告され、同判決は、同月一六日確定した。取調済みのPの検察官調書(謄本)は、全部で一八通あり、うち二通が起訴前のもの、一通が起訴当日のもの、一〇通が起訴後第一回公判までのもの、五通か第一回公判後判決宣告までのものである。また、Oは、平成二年四月一〇日D会館に係る封印破棄、木の根育苗ハウスに係る凶器準備集合、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反、公務執行妨害罪により千葉地方裁判所へ勾留中起訴され、同年六月二八日第一回公判が開かれて即日結審し、同年七月一二日懲役二年六月、三年間執行猶予の判決が宣告され、同判決は、同月一八日確定した。取調済みのOの検察官調書(謄本)は、特信性立証の疎明 され、同年六月二八日第一回公判が開かれて即日結審し、同年七月一二日懲役二年六月、三年間執行猶予の判決が宣告され、同判決は、同月一八日確定した。取調済みのOの検察官調書(謄本)は、特信性立証の疎明資料である一通を除き、全部で一四通あり、うち一通が起訴前のもの、一通が起訴当日のもの、一二通が起訴後第一回公判までのものである。 ところで、本件では、起訴後の取調べに基づく供述調書を当該供述者以外の者の被告事件において証拠として許容できるか否かが問題とされているから、当該供述者の被告事件における場合と全く同一に論ずるのは適当でなく、供述者にとっては起訴後の取調べであったという点を含めて、供述調書の作成過程にこれを本件における証拠として許容できない違法があるか否かという観点から、その証拠能力を決するのが相当と解される。 関係各証拠によれば、本件においては、(1)取調担当官は、起訴後の取調べに際し、P、Oに対し、起訴後の取調べは任意であるから無理に応ずる義務はない旨告げており、両名とも、その趣旨を十分理解した上で自分から進んで供述したこと、(2)それぞれの事件が事案複雑で関係者多数のため、事実関係について所要の取調べをした上供述調書を作成するには相当の時間が必要であったこと、(3)P、Oに対する起訴後の取調べは、右両名の起訴済みの事件に関する取調べという面のほか、右両名以外の共犯者を被疑者又は被告人とする事件の捜査という面も有していたこと、(4)Pの検察官に対する供述調書のうち五通は、前記のとおり、Pに対する封印破棄被告事件の第一回公判後の取調べに基づき作成されたものであるが、右第一回公判においては、Pが事実関係を全面的に認め、所要の手続を経て即日結審されており、右取調べは、第一回公判後になされたものではあるが、要するに、結審後の取調べにほかな 作成されたものであるが、右第一回公判においては、Pが事実関係を全面的に認め、所要の手続を経て即日結審されており、右取調べは、第一回公判後になされたものではあるが、要するに、結審後の取調べにほかならないのであって、専らP以外の共犯者を被疑者又は被告人とする事件の捜査という面からなされたものと考えられること等の事情が認められる。右のような事情に照らせば、起訴後に作成された前記各供述調書は、第一回公判後に作成されたPの検察官に対する供述調書五通を含め、許されない起訴後の取調べに基づき作成されたものとは認められない。所論は、最高裁判所の前記判例をいかに緩やかに解しても第一回公判後の取調べは許されないというのであるが、右判例は、起訴後においては、被告人の当事者たる地位にかんがみ、捜査官が当該公訴事実について被告人を取り調べることは、なるべく避けなければならないが、これによって直ちにその取調べを違法とし、その取調べの上作成された供述調書の証拠能力を否定すべきではない旨判示しているところ、供述者に対する被告事件の第一回公判後に当該公訴事実について作成された捜査官に対する供述調書であっても、前記のように、任意の取調べであることが確保されていたほか、同被告事件が第一回公判で公訴事実に争いがなく即日結審されており、同調書が専ら供述者以外の者に対する事件の捜査という面から作成されたものであるなどの事情が認められる本件においては、これを許されない起訴後の取調べに基づき作成されたものとみるのは相当でなく、このように解しても、前記判例と抵触するとは考えられない。 そうすると、前記各供述調書の作成過程には、これらを本件における証拠として許容できない違法があるとはいえないから、これらに証拠能力を認めた原判決に所論のいうような誤りがあるとは認められない。 2 い うすると、前記各供述調書の作成過程には、これらを本件における証拠として許容できない違法があるとはいえないから、これらに証拠能力を認めた原判決に所論のいうような誤りがあるとは認められない。 2 いわゆる二号書面に関する論旨について論旨は、要するに、P、Oの検察官調書を刑訴法三二一条一項二号前段により採用したのは違法であるとし、(1)同号は、証人審問権を保障した憲法三七条二項に違反する、(2)供述拒否は、そもそも刑訴法三二一条一項二号所定の供述不能の場合に当たらず、仮にこの場合に含めるとの見解をとるとしても、供述拒否の後になお任意に供述する可能性が残されているときは、供述不能の場合に当たらない、(3)刑訴法三二一条一項二号前段の書面についても、特信情況の要件は必要であり、また、その特信情況は、供述のなされた際の外部的付随的事情によって判定されるべきものであるというのである。 (一) 所論(1)についてみるに、原裁判所は、P、Oの各検察官調書(謄本)を刑訴法三二一条一項二号前段により証拠として採用したものであるところ、憲法三七条二項は、刑訴法三二一条一項二号前段所定の事由がある場合において同号にいう検察官調書を証拠として採用することを禁ずる趣旨までも含むものとは解されないから(最高裁判所昭和二七年四月九日大法廷判決刑集六巻四号五八四頁参照)、所論は採用できない。 (二) 所論(2)についてみるに、供述者が裁判所に証人として喚問されながらその証言を拒否した場合においては、供述不能という点では「供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができない」と規定する刑訴法三二一条一項二号前段の場合と変わるところはないから、その検察官調書は、同号前段により証拠とすることができる は国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができない」と規定する刑訴法三二一条一項二号前段の場合と変わるところはないから、その検察官調書は、同号前段により証拠とすることができるものと解するのが相当である(右最高裁判所大法廷判決参照)。また、関係各証拠によれば、Pは、証言する意思のないことが明らかであり、Oは、具体的な事実関係については記憶があいまいなので話したくないなどとも証言するが、要するに供述を拒否していることに変わりはなく、いずれについても前記各供述調書の採用決定をした時点においてなお任意に供述する可能性が残されていたとは認められない。所論は採用できない。 (三) 所論(3)についてみるに、刑訴法三二一条一項二号前段の書面については、その文理等に照らし、同号後段の書面の場合とは異なり、同号ただし書にいう「特別の情況」の存在は要件とされていないものと解するのが相当である。のみならず、本件においては、関係各証拠によれば、P、Oとも、検察官の取調べに際し、自らの犯行について真摯に反省するとともに、体験した事実をありのままに述べている様子が明らかであって、各検察官調書の供述には、高度の信用性が存在するものと認められ、いずれにしても、右両名の検察官調書を刑訴法三二一条一項二号前段により証拠として採用した原判決に誤りは認められない。 3 Oの検察官調書に関する論旨について論旨は、要するに、(1)Oの証言は、供述拒否ではなく、記憶にないというものであって、その検察官調書の証拠能力については、相反供述に関する刑訴法三二一条一項二号後段によって判断すべきである、(2)Oの検察官調書における供述は、改悛による真実の吐露などではなく、自己保身と利害得失の打算、捜査官との駆け引きの反映にほかならないのであって、特信情況は存在しな 号後段によって判断すべきである、(2)Oの検察官調書における供述は、改悛による真実の吐露などではなく、自己保身と利害得失の打算、捜査官との駆け引きの反映にほかならないのであって、特信情況は存在しないというのである。 所論(1)については、Oの証言が供述拒否に当たることは、前記2の(二)で述べたとおりであり、所論(2)については、刑訴法三二一条一項二号前段では特別の情況の存在が要件とされていないものと解されるが、Oの検察官調書の供述には高度の信用性も存在すると認められることは、前記2の(三)で述べたとおりであり、所論は、いずれも採用できない。 4 Pの検察官調書に関する論旨について論旨は、要するに、(1)Pの証言は、Oに比べれば供述拒否の態度が強いが、検察官及び裁判所は、Pから証言を得るための努力を十分に行っておらず、Pについて供述不能の要件があるとはいえない、(2)Pの検察官調書における供述は、改悛による真実の吐露などではなく、捜査官による利益誘導や威嚇等の影響を受ける状況下で作成されたものであつて、特信情況は存在しないというのである。 所論(1)については、Pの証言が供述拒否に当たることは、前記2の(二)で述べたとおりであり、またPの証言態度に照らせば、関係者が証言を得るための努力を十分に行っていないとはいえず、所論(2)については、刑訴法三二一条一項二号前段では特別の情況の存在が要件とされていないものと解されるが、Pの検察官調書の供述には高度の信用性も存在すると認められることは、前記2の(三)で述べたとおりであり、所論は、いずれも採用できない。 二検証申立ての却下に関する論旨について論旨は、要するに、原裁判所は、弁護人の請求に係る本件D会館跡地及び封鎖処分実施中のQ現地闘争本部についての現場検証を却下したが、右は、本件 用できない。 二検証申立ての却下に関する論旨について論旨は、要するに、原裁判所は、弁護人の請求に係る本件D会館跡地及び封鎖処分実施中のQ現地闘争本部についての現場検証を却下したが、右は、本件において、封鎖処分にとどまらず除去処分まで必要であったか否かなどの点につき判断する上で必須不可欠の証拠調べを行わすに審理を終結したものであって、違法な訴訟手続であり、また審理を尽くさなかつた違法があるというのである。 しかしながら、原裁判所が所論指摘の現場検証を却下したことは、所論のとおりであるが、原裁判所は、弁護人が立証趣旨を「除去処分後のD会館跡地の状況、青年行動隊団結の家の状況」、「封鎖処分後のQ現地闘争本部の状況」として請求した被告人C作成のD会館跡地等、Q現地闘争本部の状況に関する各写真撮影報告書を証拠として取り調べているのであって、原審における訴訟手続に所論のいうような違法があるとは認められない。 第四事実誤認の論旨について一基本的事実関係・事件の構造に関する論旨について論旨は、要するに、原判決は、本件使用禁止命令、封鎖処分、除去処分の判断に当たり、二期工事推進の目的が特別に含意されたり、この目的のためにその判断が不当に歪められたといった事実を認めることはできないとし、また、本件公訴の提起に当たって、国家権力による犯罪を不問に付して新空港反対闘争の解体の意図、反対運動家の転向強要の意図という特定の政治的弾圧の意図の存在をうかがわせる証拠は存在しないと認定しているが、右は、明らかな事実誤認であるというのである。 しかしながら、関係証拠によれば、本件の使用禁止命令、封鎖、除去の措置は、いずれも緊急措置法の趣旨、目的に沿う法の執行としてなされたものと認められ、また、本件公訴の提起が所論のいうような意図に出たものとは認められ 関係証拠によれば、本件の使用禁止命令、封鎖、除去の措置は、いずれも緊急措置法の趣旨、目的に沿う法の執行としてなされたものと認められ、また、本件公訴の提起が所論のいうような意図に出たものとは認められないから、所論指摘の原判示に事実誤認があるとはいえない。論旨は理由がない。 二被告人の党派所属に関する論旨について論旨は、要するに、原判決は、被告人M、同B、同CはR同盟E派に、同AはIS派に所属する旨認定しているが、現実にはそのような党派は存在せず、被告人らがこれらに所属するという根拠もない、機関紙、ビラ、ヘルメットなどは、右のような認定の根拠たり得ないというのである。 しかしながら、原判決は、一般にその存在が知られている党派名を認定するとともに、被告人らの所属関係を認定したものと解されるところ、右認定は、関係証拠に照らして肯認し得る。右認定に際して、関連する機関紙、ビラ、ヘルメットなどを証拠に供することが採証法則に反するものとも認められない。論旨は理由がない。 三 D会館に関する論旨について論旨は、要するに、原判決は、D会館は、E派が空港周辺の活動拠点とすべく、自ら中心となって建設した旨認定しているが、同会館の建設を決定し、建設作業に従事し、完成後の管理主体となっているのは、反対同盟であり、また、原判決は、D会館の建物につき、過激派らの拠点の一つと位置づけ、運輸大臣が多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれがあると判断したことは相当である旨認定しているが、同会館は、農作業の手伝いや農民との交流等のために使われていたものであって、これらの点に事実誤認があり、緊急措置法を違憲的に解釈する誤りを犯しているというのである。 しかしながら、所論は、違憲をいう点を含め、その実質は事実誤認の主張であるところ、関係各証拠によれば って、これらの点に事実誤認があり、緊急措置法を違憲的に解釈する誤りを犯しているというのである。 しかしながら、所論は、違憲をいう点を含め、その実質は事実誤認の主張であるところ、関係各証拠によれば、D会館は、前記第二の二の(1)のとおり、E派の者らが中心となって建設し、主として同派の空港反対運動の拠点に使われていたことが認められ、また、前記第二の二の(3)の経緯により、D会館が多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれがあるとした運輸大臣の判断について、これが相当である旨判示した原判決の認定に誤りがあるとは認められない。なお、関係証拠によれば、D会館が農民及び支援者の交流の場などに使用された形跡もうかがわれるが、そのことは、前記認定を排除する事情とは認められない。論旨は理由がない。 四仮処分の目的に関する論旨について論旨は、要するに、原判決は、仮処分の目的を土地の持分権に基づく建物等収去土地明渡請求権の保全と認定しているが、最終的な目的は、仮処分、使用禁止命令、封鎖、除去という過程によって団結会館を除去することにあったのであり、事実を誤認しているというのである。 しかしながら、関係証拠によれば、空港公団は、空港建設予定地内にあるD会館の敷地につき、その持分権を順次取得し、昭和六三年七月には約八〇パーセントの持分権を取得したが、同年六月ころから空港反対運動のためD会館を要塞化するという動きがあり、将来同公団が完全に持分権を取得したとしても、敷地の明渡しが困難となるおそれがあったことから、そのような事態に至ることを防止するため、本件仮処分が申請されたものであることが認められる。したがって、本件仮処分の目的が土地の持分権に基づく建物等収去土地明渡請求権の保全である旨の原判決の認定に誤りがあるとは認められない。論旨は理由がな 本件仮処分が申請されたものであることが認められる。したがって、本件仮処分の目的が土地の持分権に基づく建物等収去土地明渡請求権の保全である旨の原判決の認定に誤りがあるとは認められない。論旨は理由がない。 五九・一九使用禁止命令に関する論旨について 1 原判決の認定手法に関する論旨について論旨は、要するに、使用禁止命令の発出要件の存在は、その後の除去処分の適法性、ひいては公務執行妨害罪における公務の適法性を基礎付ける事項であるから、裁判所は、これを自ら積極的に認定する必要があるのに、原判決は、警察資料に基づく運輸大臣の認定に依拠するのみであり、刑罰権発動の前提事実を行政権の認定によって代替させている点において、憲法七六条一項に違反しているというのである。 しかしながら、原判決は、使用禁止命令の発出要件の存在について、警察資料等に基づく運輸大臣の認定を関係証拠に照らして是認し得るものと認めたものであって、右判断は相当であり、自らの判断を行政権の認定によって代替させているものとは認められないから、違憲の主張は、前提を欠き、採用できない。 2 緊急措置法三条一項一号の要件の存在に関する論旨について論旨は、要するに、原判決は、「1」D会館は、E派が建設したものであること、「2」昭和六二年四月から平成元年三月の間に約二〇名の者が同会館に常駐又は出入りし、その半数程度に空港反対闘争関連の前科前歴等があること、「3」同会館が反対同盟の集会、デモの出発拠点となっていること、「4」E派が昭和六一年に千葉県警車両整備工場放火事件を起こしたことという四つの事実を認定し、緊急措置法三条一項一号の要件があるとしたJ課長の判断が妥当であったと認定しているが、「1」「2」の認定は誤りであり、「3」をかかる認定に利用するのは憲法二一条に照らし違憲な解釈運用で 実を認定し、緊急措置法三条一項一号の要件があるとしたJ課長の判断が妥当であったと認定しているが、「1」「2」の認定は誤りであり、「3」をかかる認定に利用するのは憲法二一条に照らし違憲な解釈運用であり、「4」は緊急措置法三条一項一号の解釈と無関係である、原判決が依拠するJ課長の証言によれば、空港建設に反対するすべての運動が暴力主義的破壊活動と認定されることになるが、これは、違憲な解釈運用であるというのである。 しかしながら、前記三において述べたとおり、関係各証拠によれば、「1」については、D会館は、前記第二の二の(1)のとおり、E派の者らが中心となって建設し、主として同派の空港反対運動の拠点に使われていたことが認められ、「2」については、前記第二の二の(3)の経緯により、D会館が多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれがあるとした運輸大臣の判断について、これが相当である旨判示した原判決の認定に誤りがあるとは認められない。「3」については、緊急措置法三条一項一号の要件の有無について判定するに当たり、D会館が反対同盟の集会、デモの出発拠点となっていることを総合判断の一要素として考慮することは相当であって、そのように解しても憲法二一条に違反するものでないことは、前記第二の一の2で検討したところに照らして明らかであり、「4」については、緊急措置法三条一項一号の要件の有無について判定するに当たり、E派が昭和六一年に千葉県警車両整備工場放火事件を起こしたことを総合判断の一要素として考慮することは相当である。所論は、いずれも採用できない。また、原判決が空港建設に反対するすべての運動を暴力主義的破壊活動等と認定するものとは認められないから、違憲な解釈運用をいう所論は、前提を欠き、採用できない。 3 使用禁止命令発出の目的・意図に関する論 原判決が空港建設に反対するすべての運動を暴力主義的破壊活動等と認定するものとは認められないから、違憲な解釈運用をいう所論は、前提を欠き、採用できない。 3 使用禁止命令発出の目的・意図に関する論旨について論旨は、要するに、原判決は、本件使用禁止命令の発出につき、新空港の二期工事促進の目的が特別に含意されたり、この目的のためにその判断が不当に歪められたといった事実を認めることはできないというが、当時の運輸省、空港公団側関係者は、同命令の発出が過激派の排除や二期工事の推進を念頭に置いたものである旨発言しており、原判決の認定は、誤りであるというのである。 しかしながら、本件使用禁止命令が緊急措置法の趣旨、目的に沿う法の執行としてなされたものであることは、前記一で述べたとおりであり、所論指摘の原判示に誤りはない。論旨は理由がない。 六櫓構築後封鎖・除去処分までの会館等の状況に関する論旨について論旨は、要するに、原判決は、櫓構築後封鎖・除去処分までの会館等の状況につき、運輸大臣のD会館に対する封鎖・除去処分を予測して、実力でこれに対抗する方針を固めたなどと、変化があったかの如く認定しているが、右は事実誤認であるというのである。 しかしながら、関係各証拠によれば、櫓の新増築後、封鎖及び除去に至るまでの経過は、前記第二の二の(5)のとおりであり、この点につき、原判決が「争点に対する判断」第二の六「櫓構築後、本件封鎖・除去処分までのD会館等の状況」の項において、その挙示する関係各証拠(日刊T「第三三六九号」とあるのは同「第三二六九号」の誤記と認める。)に基づき説示するところは、運輸大臣のD会館に対する封鎖・除去を予測して実力でこれに対抗する方針を固めた旨認定する点も含め、相当であって、事実誤認は認められない。 七封鎖処分に関する論旨に る。)に基づき説示するところは、運輸大臣のD会館に対する封鎖・除去を予測して実力でこれに対抗する方針を固めた旨認定する点も含め、相当であって、事実誤認は認められない。 七封鎖処分に関する論旨について 1 原判決の認定手法に関する論旨について論旨は、要するに、封鎖処分の要件の存在は、公務執行妨害罪における公務の適法性を基礎付ける事項であるから、裁判所は、これを自ら積極的に認定する必要があるのに、原判決は、警察資料に基づく運輸大臣の認定に依拠するのみであり、刑罰権発動の前提事実を行政権の認定によって代替させている点において、憲法七六条一項に違反しているというのである。 しかしながら、原判決は、封鎖の要件の存在について、警察資料等に基づく運輸大臣の認定を関係証拠に照らして是認し得るものと認めたものであって、右判断は相当であり、自らの判断を行政権の認定によって代替させているものとは認められないから、違憲の主張は、前提を欠き、採用できない。 2 封鎖処分の決定手続の立証に関する論旨について論旨は、要するに、原裁判所は、運輸大臣が封鎖処分を決定した手続過程を、判断主体である運輸大臣の供述によることなく、専らJ課長の証言によって認定しており、立証されていない事項を認定した事実誤認があり、また、審理不尽の違法もあるというのである。 しかしながら、封鎖を決定した手続過程を認定するに当たり、判断主体である運輸大臣の供述に依拠することが不可欠であるとはいえないのであって、J課長の地位、右手続過程への関与の状況、その証言内容等に照らせば、同人の証言に依拠して右手続過程の事実を認定した原裁判所の判断に誤りはなく、その点で事実誤認、審理不尽の違法があるとはいえない。論旨は理由がない。 3 封鎖処分の要件を充足する事実に関する論旨について論旨は、 して右手続過程の事実を認定した原裁判所の判断に誤りはなく、その点で事実誤認、審理不尽の違法があるとはいえない。論旨は理由がない。 3 封鎖処分の要件を充足する事実に関する論旨について論旨は、要するに、次のようにいう。原判決は、資料の内容、当時の状況を踏まえると、運輸大臣が封鎖処分の要件が充足されていると判断したことは相当であると判示している。しかし、J課長が判断の参考とした警察の資料は、それ自体が原審において証拠として取り調べられたわけではなく、元々が書面化されたものである上、J課長の証言に出てくるだけの再伝聞証拠であって、十分な証拠があるとはいえない。また、原判決がいう「当時の状況」は、「1」会館への出入り状況、「2」櫓の新増築、「3」H・I関係者の常駐、「4」K派等による会館要塞化の標傍、「会館死守の武装闘争」の表明、「5」会館内へのびんや鉄筋片様の物の搬入確認とされているが、「1」については、出入者の氏名も特定されておらず、暴力主義的破壊活動者であるかどうか認定できないはずであり、「2」については、仮処分に違反するかどうかの問題は生じても、それ自体は暴力主義的破壊活動には該当せず、「3」については、籠城自体は暴力主義的破壊活動には該当せず、「4」については、政治団体の機関紙が掲げる政治的スローガンは暴力主義的破壊活動には該当せず、「5」については、再々伝聞の証言に基づくものである上、緊急措置法三条一項一号の「集合の用」とは関係なく、また搬入自体は暴力主義的破壊活動には該当せず、いずれの点も封鎖処分の発動を正当化させるものではない。 原判決には、これらの点で事実誤認がある。 しかしながら、まず、本件のように、公務執行妨害罪の対象となった公務が緊急措置法の要件を満たして適法になされたか否かが問題となる場合において、所管省の担当 原判決には、これらの点で事実誤認がある。 しかしながら、まず、本件のように、公務執行妨害罪の対象となった公務が緊急措置法の要件を満たして適法になされたか否かが問題となる場合において、所管省の担当職員が公判廷に証人として出廷し、当該公務が緊急措置法の要件を満たしている旨判断した理由を具体的に証言し、かつその証言が十分信用し得るものと認められるときは、必ずしも右判断の参考にした資料を更に証拠として取り調べなくても、公務の適法性を肯定することができるものと解するのが相当である。したがって、J課長が判断の参考とした警察の資料それ自体が証拠として取り調べられていないからといって、十分な証拠がないとはいえない。そして、J課長の地位、封鎖への関与の状況、その証言内容等に照らせば、同人の証言に依拠して、運輸大臣が封鎖の要件が充足されていると判断したことは相当である旨判示した原判決の認定に誤りがあるとはいえない。また、関係各証拠に照らし、前記第二の二の(6)の資料、意見等を総合してD会館は現に多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されていると判断したJ課長からの報告を受けて、運輸大臣が右同様の判断をしたことについて、これが相当である旨判示した原判決の認定に誤りがあるとはいえない。論旨は理由がない。 4 封鎖処分実施の虚構性をいう論旨について論旨は、要するに、原判決は、一二月四日午前六時四五分ころまでに運輸省職員、空港公団職員らが封鎖処分を実施するために会館周辺に到着した旨認定しているが、そのような事実はないというのである。 しかしながら、関係証拠によれば、運輸省職員、空港公団職員らが所論指摘の日時に封鎖を実施するため会館周辺に到着した事実が認められる。もっとも、関係証拠によれば、空港公団は、封鎖を実施することができないときは除去のあり得ること ば、運輸省職員、空港公団職員らが所論指摘の日時に封鎖を実施するため会館周辺に到着した事実が認められる。もっとも、関係証拠によれば、空港公団は、封鎖を実施することができないときは除去のあり得ることを想定していたことは認められるが、右は、空港公団が第一次的には封鎖の実施を予定していたことを排除するものではなく、原判決に事実誤認があるとは認められない。論旨は理由がない。 八除去処分に関する論旨について論旨は、要するに、除去処分の要件を充足する事実は存在しないにもかかわらず、これを認めた原判決には、重大な事実誤認又は審理不尽の違法があるとし、(1)運輸大臣の認定をそのまま下敷きにしてその判断の当否を論ずるのは失当である上、わずか一〇分間という限られた時間では、運輸大臣が除去について実質的な判断をしているとは考えられないのに、運輸大臣の証人申請を却下し、専らJ課長の証言に依拠して除去の決定過程を認定している点で、原判決には事実誤認、審理不尽の違法がある、(2)除去処分発動の当時、会館が暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されているとは認められない、櫓の上からの抵抗行為は暴力主義的破壊活動に該当しない、(3)非代替性の要件についても、封鎖の障害とされた抵抗行為は、一二月六日午前一一時一二分ころ籠城者全員の逮捕をもって終了しているから、その後封鎖処分は容易に実施できたものであつて、抵抗行為があったから封鎖は困難である等というJ課長の説明は、誕弁であり、抵抗行為の渦中にのみあえて封鎖処分を想定し、それが不可能だから除去という論理は、破綻しているというのである。 1 所論(1)については、J課長の地位、除去への関与の状況、その証言内容等に照らせば、同人の証言に依拠して、除去の手続過程を認定し、運輸大臣が除去の要件が充足されていると判断したことは である。 1 所論(1)については、J課長の地位、除去への関与の状況、その証言内容等に照らせば、同人の証言に依拠して、除去の手続過程を認定し、運輸大臣が除去の要件が充足されていると判断したことは相当である旨判示した原判決に誤りがあるとはいえない。また、関係証拠によれば、封鎖の実施ができない場合に除去へと移行することは、事前に想定されていた事態であって、運輸省及び警察等においては、そのような事態への対応も含めて準備を整えていたことが認められるから、一〇分間では運輸大臣が除去について実質的な判断をなし得ないものとはいえない。 したがって、原判決に所論のいうような事実誤認、審理不尽の違法は認められない。 2 所論(2)についてみるに、封鎖を実施するに当たり、J課長がD会館は現に多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されていると判断し、またその旨の報告を受けた運輸大臣が右同様の判断をしたことについて、これが相当である旨判示した原判決の認定に誤りがないことは、前記七の3で述べたとおりであり、櫓の上から所論のいう抵抗行為があった段階においては、右判断の相当性は、更に明らかになったものと認められる。所論のいう抵抗行為それ自体は、所論のいうとおり緊急措置法二条一項の「暴力主義的破壊活動等」には該当しないが、「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されている」か否かを判定する際には考慮に入れられてよい事情の一つになると解される。原判決に所論のいうような違法はない。 3 所論(3)についてみるに、緊急措置法三条六項、八項の規定を含む緊急措置法の法意に照らせば、運輸大臣が同法三条六項に基づき、封鎖その他その用に供させないために必要な措置を講じようとしたものの、これを阻止しようとする者らが本件のように暴行脅迫等を行って抵抗するため、右措置を講ずることが ば、運輸大臣が同法三条六項に基づき、封鎖その他その用に供させないために必要な措置を講じようとしたものの、これを阻止しようとする者らが本件のように暴行脅迫等を行って抵抗するため、右措置を講ずることができない場合には、同法三条八項にいう「他の手段によつては同項の禁止命令の履行を確保することができないと認められるとき」との要件は、満たされているものと解するのが相当である。当該工作物を保存して行う必要がある封鎖等の措置は、抵抗がある場合には実施し難いとしても、除去については、そのような必要がないため、抵抗がある場合でもこれを実施し得るばかりでなく、前記第二の二で摘示したとおり、当該抵抗がD会館を死守して実力闘争を行う旨標榜していた団体による組織的、計画的な行動の一環と認められる本件においては、仮に被告人らの抵抗を排除して封鎖等の措置を講じたとしても、なお奪還のおそれがあるからである。所論は、抵抗している者らを警察か逮捕した後に封鎖等の措置を講ずることも可能であった旨いうが、それは、本末転倒の議論であって、封鎖等の措置に抵抗する者らを逮捕するかどうかは、司法警察の職務を担う警察官によって、逮捕者及び被逮捕者の安全等をも考慮の上、独自に決定されるべきことがらであり、緊急措置法上、三条八項の要件が満たされているか否かを判定するに当たっては、直接関係がないものというべきである。また、所論は、封鎖措置により鉄板や鉄条網で覆われているQ現闘本部の例を挙げ、抵抗が終息してしまえば、このような封鎖措置により使用禁止命令の履行を確保し得ることは明白である旨いうが、関係各証拠によれば、Q現闘本部に対する封鎖措置の実施に当たっては、実力による抵抗行為が存在しなかったものであって、封鎖措置を実施することが可能か否か、封鎖措置を実施した後奪還のおそれがあるか否かにつ 各証拠によれば、Q現闘本部に対する封鎖措置の実施に当たっては、実力による抵抗行為が存在しなかったものであって、封鎖措置を実施することが可能か否か、封鎖措置を実施した後奪還のおそれがあるか否かについて、本件とは基本的な事実関係を異にすることが明らかであり、除去の要件について検討するに際し、両者を同列に論ずるのは失当である。そして、緊急措置法上、除去の要件が満たされ、除去の実施が開始された後、司法警察による逮捕活動のため抵抗がやむに至ったとしても、引き続き除去の要件が具備されていると認められる以上、除去の実施を継続し得ることは当然である。関係各証拠によれば、本件除去は、まさに以上のような場合に実施されたものであり、したがって、運輸大臣が除去の要件が満たされていると判断したことは相当であるとした原判決の判断に誤りは認められない。原判決に所論のいうような違法はない。 九本件除去処分の政治的意図に関する論旨について論旨は、要するに、本件除去処分は、政府・空港公団のいう過激派ないしG派の活動拠点を一掃するという政治的意図をもって発動されたことは明白であるのに、この点を誤認した原判決には、重大な事実誤認があるというのである。 しかしながら、本件除去の措置が緊急措置法の趣旨、目的に沿う法の執行としてなされたものであることは、前記一で述べたとおりであり、所論のような見方は当たっていないというのほかなく、その点で原判決に事実誤認があるとはいえない。 論旨は理由がない。 一〇 差押の標示の存在に関する論旨について 1 本件仮処分の申請・決定・執行手続の違法性をいう論旨について論旨は、要するに、原判決は、本件仮処分の申請、決定、執行の各過程の手続について事実誤認又は審理不尽の誤りがあり、その結果、本件仮処分の目的、手続の違法性(違法な仮処分による 性をいう論旨について論旨は、要するに、原判決は、本件仮処分の申請、決定、執行の各過程の手続について事実誤認又は審理不尽の誤りがあり、その結果、本件仮処分の目的、手続の違法性(違法な仮処分による差押の標示の有効性の欠如)を見誤っているとして、次のようにいう。すなわち、(1)原判決は、本件仮処分が土地所有権に基づき建物収去土地明渡請求権を保全するために申請されたものであるとしているが、実際には、空港反対運動の最重要拠点であったD会館の機能を封じ、その強化を抑止し、その後の除去を準備するためのものであった。(2)本件仮処分申請は、本件土地(bc番地)に住民票を置いていたUら一〇名を占有者としてなされているが、本件土地の所有者かつ占有者は反対同盟である。同申請は、右のような事情を知りながらあえて虚偽の占有者を掲げたものであり、違法である。しかるに、原判決は、本件仮処分が右のように本件土地の占有主体を偽って申請されたとの弁護人の主張立証を全く無視している。(3)原判決は、本件仮処分決定が債務者の審訊もせず拙速審理でなされたという点についても、全く考慮していない。(4)原判決は、本件仮処分につき、占有関係を確認しない執行、占有範囲の縮小変更についての公示の欠缺等の諸点を弁護人が指摘してその違法無効なことを主張したにもかかわらず、これらを無視して適法と即断している。 所論(1)については、前記第四の四において述べたとおり、本件仮処分が土地所有権に基づき建物収去土地明渡請求権を保全するために申請されたものであることが認められる。所論(2)については、本件仮処分を申請するに当たり、D会館を占有していると目されたUら一〇名を債務者としたことに違法な点は認められず、原判決も同旨であることは、その判文自体に照らして明らかである。所論(3)については、本 仮処分を申請するに当たり、D会館を占有していると目されたUら一〇名を債務者としたことに違法な点は認められず、原判決も同旨であることは、その判文自体に照らして明らかである。所論(3)については、本件仮処分決定に際して債務者の審訊がなされていないからといって、同決定が違法であるとはいえない。所論(4)についてみるに、関係証拠によれば、本件仮処分の執行に当たり、執行官が現場で個別に占有関係を調査確認していることは、原判決が「争点に対する判断」第二の三の2において説示するとおりであり、また、所論指摘の占有範囲の縮小変更について公示が欠けているからといって、現に行われた本件仮処分執行が、刑法(平成七年法律第九一号による改正前の原判決において適用されているものをいう。以下同じ。)上、封印破棄罪における差押として違法無効になるなどとは到底解されないのであって、原判決もこれと同旨であることは明らかである。論旨は採用できない。 2 差押の標示の不存在をいう論旨について論旨は、要するに、本件実行行為時には、本件で問題となる土地の公示書三枚及び二番櫓に対する公示書は、いずれも汚損により有効に存続していなかったのに、原判決は、この点を誤認しているというのである。 しかしながら、関係各証拠によれば、原判決が「争点に対する判断」第四の三で説示するとおり、本件実行行為時において、全文が全く同一である土地の公示書三枚のうち二枚は元来の位置に立っており、また二番櫓の公示書も同櫓上に付いており、いずれも多少の汚損等はあったものの、判読可能な部分と各公示書の位置からしてその意味するところは十分理解できたと認められるから、有効な差押の標示があったとする原判断は相当であり、その点に誤りがあるとは認められない。論旨は理由がない。 一一封印破棄罪への関与に関する論旨につ 意味するところは十分理解できたと認められるから、有効な差押の標示があったとする原判断は相当であり、その点に誤りがあるとは認められない。論旨は理由がない。 一一封印破棄罪への関与に関する論旨について論旨は、要するに、(1)被告人Cの関係において、一〇月二一日午後七時ころからD会館において櫓構築の打合せが行われたとの証拠はない、その際のVの話は法的に共謀と評価されるようなものではない、同被告人の存在についてはPの検察官調書には出ておらず、Oの検察官調書には言及があるが信用性がない、仮にその場に同被告人が居合わせたとしても、謀議への関与状況は全く解明されておらず、直ちに封印破棄罪の共謀に関与したとすることはできない、一〇月二二日午後一時ころから同被告人が構築中の櫓の上にいる状況が確認できることから、直ちに共同実行を認めることはできない、(2)被告人Aの関係において、原判決は同被告人について少なくとも共謀共同正犯の成立を認めることができるとしているが、同被告人が封印破棄罪の謀議にいつどのように参加し、どのように共謀が形成されたのか明らかにされておらず、原判決が共同正犯と認定した点も、同被告人が封印破棄罪の実行の分担をどのようになしたのか明らかにされていないから、事実誤認又は理由不備があるというのである。 そこで、検討すると、原判決が「争点に対する判断」第四の五「被告人C及び同Aの関与」の項で説示するとおり、(1)被告人Cについては、櫓の構築状況に関する司法警察員作成の写真撮影報告書謄本(甲18)、証人W、同Xの各供述、P及びOの各検察官調書(謄本)を総合して、封印破棄の公訴事実全部について、共同正犯の成立を認めることができるか、少なくとも共謀共同正犯の成立を認めることができる旨判示した原判断は、正当であり、(2)被告人Aについては、前 謄本)を総合して、封印破棄の公訴事実全部について、共同正犯の成立を認めることができるか、少なくとも共謀共同正犯の成立を認めることができる旨判示した原判断は、正当であり、(2)被告人Aについては、前記各証拠を総合して、三番櫓及び四番櫓に係る封印破棄についての共同正犯の成立を認めることができるか、少なくとも共謀共同正犯の成立を認めることができる旨判示した原判断は、正当である。また、謀議の内容の詳細や実行行為の分担についてまで具体的に判示することを要しないことは、改めていうまでもない。原判決に所論のいうような事実誤認や理由不備はない。 第五法令の解釈適用の誤りをいう論旨について一凶器準備集合罪の適用に関する論旨について論旨は、要するに、凶器準備集合罪は、その立法経過等に照らし、暴力団の抗争事案に限定して適用されるべきであり、その他の大衆運動等に対しては適用されるべきではなく、本件に凶器準備集合罪の適用を認めた原判決には、刑法二〇八条の二の解釈を誤った違法があるというのである。 しかしながら、凶器準備集合罪は暴力団の抗争事案に限定して適用されるべきであるとの所論は、独自の見解であって、その構成要件に該当する以上、そのように限定されることなく適用があるものと解するのが相当である。論旨は理由がない。 二公務執行妨害罪の適用に関する論旨について論旨は、要するに、本件除去処分は、その要件を欠く違憲・違法なものであり、公務執行妨害罪における公務の適法性を基礎付ける事実が存在しないから、原判決が本件に公務執行妨害罪を適用したのは、法令の適用を誤ったものであるというのである。 しかしながら、本件除去の措置がその要件を欠く違憲・違法なものではなく、適法なものと認められることは、前記第二の二、第四の七の3、八の3で述べたとおりであるから、所 たものであるというのである。 しかしながら、本件除去の措置がその要件を欠く違憲・違法なものではなく、適法なものと認められることは、前記第二の二、第四の七の3、八の3で述べたとおりであるから、所論は、前提を欠き、採用できない。 三封印破棄罪の適用に関する論旨について論旨は、要するに、次のようにいう。(1)不動産占有移転禁止仮処分における執行官保管は、観念的なものであり、物の所持を本質的要素とする占有ではない。 それにもかかわらず、執行官の占有に移す処分がなされた等とした上、封印破棄罪における差押の要件が充たされているとした原判決は、同罪における「差押」の解釈を誤っている。(2)仮処分に違反する重大な現状変更がなされたとしても、公示書の警告としての機能に基本的変化がなければ、右現状変更が公示書を無効たらしめた等と解することはできない。原判決は、目的物件に重大な変更を加えたり、その同一性を害するに至るような客観的現状を変更する行為は、本執行を不能又は著しく困難にし、仮処分執行の実質的な効力を滅却、減殺するものとして、刑法九六条にいう差押の標示を無効たらしめたものに該当すると判示しているが、誤りである。また、「重大」「同一性」といった判断者の恣意、主観によりいかようにでも解釈し得る基準を構成要件解釈に持ち込むのは、不当である。原判決は、二番櫓については工作物としての同一性を失わしめる増築であるとし、三番櫓、四番櫓の規模、構造、二番櫓の増築の程度からすれば、これら新増築は本件土地に対する重大な変更であるとしているが、原判決の掲げる基準を本件櫓の新増築に当てはめてみても、原判決のような結論を導くことはできない。(3)現行保全制度においては、保全処分の侵害に対しては、刑事罰をもってではなく、保全制度内部で解決すべきことが予定されているのであ 増築に当てはめてみても、原判決のような結論を導くことはできない。(3)現行保全制度においては、保全処分の侵害に対しては、刑事罰をもってではなく、保全制度内部で解決すべきことが予定されているのであり、不動産占有移転禁止仮処分における現状変更に刑事罰を科することは、法秩序全体の整合性の見地からしても、不当である。 1 所論(1)についてみるに、関係各証拠によれば、前記第二の二の(2)の仮処分決定においては、債務者らの当該土地、建物等に対する占有を解いて執行官にその保管を命ずる、執行官は債務者らにその使用を許さなければならない、ただし、この場合においては執行官はその保管に係ることを公示するため適当な方法をとるべく、債務者らはその占有を他人に移転し又は占有名義を変更してはならない旨及び債務者らは当該土地上に建物又は工作物を設置する等現状を変更する一切の行為をしてはならない旨が命じられたこと、執行官が右占有移転禁止の仮処分を執行した際、土地に掲示された同(2)の公示書には、この土地は債権者新東京国際空港公団、下記債務者間の千葉地方裁判所昭和六三年(ヨ)第二七九号仮処分命令に基づき債務者の占有を解いて、執行官が保管中である、ただし、債務者に限り現状を変更しないことを条件としてその使用を許す旨の記載があり、櫓に掲示された同(2)の公示書には、この物件は債権者新東京国際空港公団、債務者U外九名間の千葉地方裁判所昭和六三年(ヨ)第二七九号仮処分命令に基づき債務者の占有を解いて、執行官が保管中である、ただし、債務者に限り使用を許した旨の記載があったこと、右各公示書には注意書として、いかなる者も執行官の占有を犯すことは許されず、この公示に違反して執行官の占有を犯した者は、刑罰に処せられる旨等が付記されていたことが認められる。このように、執行官が仮処分決定 示書には注意書として、いかなる者も執行官の占有を犯すことは許されず、この公示に違反して執行官の占有を犯した者は、刑罰に処せられる旨等が付記されていたことが認められる。このように、執行官が仮処分決定に基づきその職務上保全すべき土地等を自己の占有に移す処分を行い、これによって取得した占有を明らかにする公示書を右土地等に掲示した場合には、右処分は、刑法九六条にいう差押に当たるものと解するのが相当である。したがって、これと同旨の原判断は正当である。所論は、独自の見解であって、採用できない。 2 所論(2)についてみるに、刑法九六条にその他の方法を以て差押の標示を無効たらしめたとあるのは、差押の標示によって示されている公務執行を保護するという同条の趣旨、目的やその文理等に徴し、差押の標示そのものに対する場合のみならず、被差押物件に対して差押の標示の効力を事実上滅却又は減殺する行為をした場合を含むものと解するのが相当である。原判決が、執行官保管債務者使用許可の占有移転禁止の仮処分においては、債務者に目的物件の使用を許す以上、通常の使用に付随する修理保存行為や多少の改良行為などの客観的現状変更は当然許容されるものと解されるが、一方、右仮処分の目的が将来の明渡し等の本執行を保全するものであることに照らせば、更に進んで目的物件に重大な変更を加えたり、その同一性を害するに至るような客観的現状を変更する行為は、本執行を不能又は著しく困難にし、仮処分執行の実質的な効力を滅却、減殺するものとして、刑法九六条にいう差押の標示を無効たらしめる行為に該当する旨説示するところも、これと同趣旨に出たものと認められるから、原判決の解釈に誤りはない。また、「重大」「同一性」という点は、刑法九六条の趣旨、目的等に照らし、社会通念上十分合理的に解釈できるものであって、判断者の も、これと同趣旨に出たものと認められるから、原判決の解釈に誤りはない。また、「重大」「同一性」という点は、刑法九六条の趣旨、目的等に照らし、社会通念上十分合理的に解釈できるものであって、判断者の恋意、主観によりいかようにでも解釈できるものとは認められない。さらに、原判決が二番櫓につき、工作物としての同一性を失わしめる増築であるとし、三番櫓、四番櫓の新築、二番櫓の増築につき、本件土地に対する重大な変更であるとしているのは、前記第二の二の(4)に摘示した事実のほか、原判決が「争点に対する判断」第四の四の2で認定する新築櫓の規模、構造、増築櫓の増築の程度等に照らし、相当であって、その点に誤りがあるとはいえない。三番櫓、四番櫓の土台となるコンクリートの基礎が仮処分前にできていたとの点は、右判断を左右するものとは認められない。 3 所論(3)については、仮処分に違反する行為が刑法九六条の構成要件に該当する場合、これに刑事罰を科することが不当であるとはいえない。論旨は理由がない。 四封印破棄罪に対する共謀共同正犯の適用に関する論旨について論旨は、要するに、共謀共同正犯の理論は、罪刑法定主義を定めた憲法三一条に違反し、刑法六〇条の解釈としては採り得ないというのである。 しかしながら、刑法六〇条にいう共同正犯は、いわゆる共謀共同正犯を含むものと解されるところであり、そのように解しても憲法三一条に違反するものとは認められない。所論は、独自の見解であって、採用できない。 五正当防衛、抵抗権に関する解釈の誤りをいう論旨について論旨は、要するに、原判決は、凶器準備集合罪等について、正当防衛が成立するとの主張を排斥しているが、正当防衛に関する解釈、適用を誤っており、また、原判決は、抵抗権の適用を排斥しているが、本件封鎖、除去処分が憲法秩序に対する は、凶器準備集合罪等について、正当防衛が成立するとの主張を排斥しているが、正当防衛に関する解釈、適用を誤っており、また、原判決は、抵抗権の適用を排斥しているが、本件封鎖、除去処分が憲法秩序に対する重大な侵害であることは明らかであって、原判決は、超法規的違法性阻却事由に関する解釈、適用を誤っているというのである。 しかしながら、既に述べたところがら明らかなように、本件封鎖及び除去の措置並びにこれに関連する警察活動は、いずれも適法な行為であって、不正な侵害とは認められないから、所論は、前提を欠き、採用できない。 第六量刑不当の論旨について本件は、(1)いわゆるD会館につき占有移転禁止の仮処分の執行がなされていることを知りながら、ほか多数と共謀の上、被告人Cが既存の櫓のうち一基を増築するとともに、同被告人及び被告人Aが新たに櫓二基を構築して、差押の標示を無効たらしめ、(2)被告人四名がほか多数と共謀の上、緊急措置法に基づく同会館に対する封鎖及び除去の措置に際し、これに抗して櫓上に立てこもり、これらの措置を実施中の運輸省職員及び空港公団職員等並びに現場で警戒警備及び違法行為の規制検挙等の任務に従事中の警察官に対し、共同して危害を加える目的で、多数の火炎びん、鉄筋片及び火炎放射器等の凶器を準備して集合し、また、右の者らに向けて火炎びん、鉄筋片等を投擲又は発射するなどし、火炎びんを使用するとともに、右の公務員らによる公務の執行を妨害したという事案である。(1)の封印破棄は、仮処分執行を無視して右会館の要塞化を図った計画的かつ組織的な犯行である。また、(2)の凶器準備集合、火炎びんの使用、公務執行妨害も、計画的かつ組織的な犯行である上、危険性が高く、しかも逮捕されるまで二日間以上にわたって執拗に続けられた。そして、被告人らは、今日に至るまで た、(2)の凶器準備集合、火炎びんの使用、公務執行妨害も、計画的かつ組織的な犯行である上、危険性が高く、しかも逮捕されるまで二日間以上にわたって執拗に続けられた。そして、被告人らは、今日に至るまで自らの行為の正当性を主張しており、各犯行について反省する様子はみられない。 そうしてみると、被告人らが新空港の建設及びその拡張工事に反対する地域農民らからなるF空港反対同盟G派の反対運動を支援する過程で本件各犯行に及んだものであること、本件犯行によって運輸省職員、空港公団職員等及び警察官が負傷するような被害は生じなかったこと、被告人らには前科がないこと等の事情を考慮しても、被告人A、同Cを懲役三年に、被告人M、同Bを懲役二年六月に処し、各被告人に対し、五年間その刑の執行を猶予した原判決の量刑は、刑期及び執行猶予期間とも、やむを得ないものであって、これが重過ぎて不当であるとは認められない。論旨は理由がない。 その他、所論に即し逐一検討しても、原判決に破棄事由があるとは認められない。 被告人Aの控訴趣意について一緊急措置法は合憲との判断を批判する論旨について論旨は、要するに、原判決は、使用禁止命令については最高裁判所平成四年七月一日大法廷判決に依拠し、封鎖、除去処分についてはこれを敷衍して、緊急措置法の関連規定を合憲としているが、不当であるというのである。 しかしながら、緊急措置法所定の使用禁止命令、封鎖及び除去がいずれも憲法に違反しないことは、前記第二の一で述べたとおりであり、論旨は採用できない。 二緊急措置法の適用を違法とする論旨について論旨は、要するに、D会館に対する使用禁止命令の要件が備わっていたか否かにつき、原審では、判定の根拠に使われた警察資料が証拠として提出されておらず、Y運輸大臣の証人尋問も行われておらず、十分な て論旨は、要するに、D会館に対する使用禁止命令の要件が備わっていたか否かにつき、原審では、判定の根拠に使われた警察資料が証拠として提出されておらず、Y運輸大臣の証人尋問も行われておらず、十分な審理が尽くされていないというのである。 しかしながら、原判決は、使用禁止命令の発出要件の存在について、警察資料等に基づく運輸大臣の認定を関係証拠に照らして是認し得るものと認めたものであって、十分な審理が尽くされていないとは認められない。警察資料を証拠として取り調べなくても違法でないことは、前記第四の七の3で述べたとおりである。論旨は理由がない。 三封印破棄罪に関する論旨について論旨は、要するに、(1)空港公団は、会館の土地の持分権をもとに仮処分を得ているが、会館の土地建物は反対同盟の所有であって、右仮処分は違法である、(2)不動産の占有移転禁止仮処分における執行官の保管は、実態の伴わぬ観念的なものである、(3)土地の公示書の一枚はなくなっており、残りのものも汚損されているなど、差押の標示が不十分であった、(4)櫓の新増設は、差押の標示を無効たらしめていない、(5)O、Pの各検察官調書については、起訴後の取調べ、代用監獄の下における転向強要の取調べという違法な取調べによって得られたものであり、信用性がない、(6)これらの調書によって本件に関与した人物を特定することはできないというのである。 しかしながら、(1)については、前記第二の二の(1)でみたとおり、空港公団は、本件仮処分申請時において、成田市a字bc番の土地の所有権につき約八〇パーセントの持分権を有するものと認められ、(2)については、前記第五の三の一において述べたとおりであり、(3)については、前記第四の一〇の2において述べたとおりであり、(4)については、前記第五の三の2に トの持分権を有するものと認められ、(2)については、前記第五の三の一において述べたとおりであり、(3)については、前記第四の一〇の2において述べたとおりであり、(4)については、前記第五の三の2において述べたとおりであり、(5)及び(6)については、O、Pの各検察官調書(謄本)が刑訴法三二一条一項二号の書面として証拠能力を有することは、前記第三の一において述べたとおりであり、また右各供述調書は、その内容自体及び関係証拠に照らし、十分信用することができるものと認められる。論旨は理由がない。 四 D会館破壊の違法、不当性をいう論旨について論旨は、要するに、(1)一二月四日から同月六日にかけて行われた警察の行為は、鉄製の円形ケージ、ゴンドラ、高圧放水車などを用いた過剰な弾圧であるのに、これを適法な行為と認めた原判決は、不当である、(2)封鎖処分の要件が満たされていることにつき、判断の前提とされたと思われる警察資料は、原審で証拠調べされておらず、暴力主義的破壊活動者を認定するに足る証拠はなく、櫓の新増築は、暴力主義的破壊活動には当たらないから、緊急措置法にいう封鎖処分の要件は満たされていない、(3)除去処分については、封鎖では不十分であるとする根拠が明らかにされていないから、除去は違法、不当であるというのである。 (1) については、関係証拠上明らかな原判示第三の犯行態様等に照らし、本件における各逮捕行為が違法なものであったとは認められず、原判決に所論のいうような不当はない。(2)については、前記第四の七の3において述べたとおりであり、(3)については、前記第四の八の3において述べたとおりである。論旨は理由がない。 五取調べの不当性をいう論旨について論旨は、要するに、被告人Aに対する捜査官の転向強要は、違法、不当であり、また、拘置 いては、前記第四の八の3において述べたとおりである。論旨は理由がない。 五取調べの不当性をいう論旨について論旨は、要するに、被告人Aに対する捜査官の転向強要は、違法、不当であり、また、拘置所へ一年一〇か月勾留され、刑の先取的執行が行われたというのである。 しかしながら、同被告人の捜査官に対する供述調書は、罪証に供されていないのであって、右取調べの違法、不当をいう点は、原判決を論難するものではなく、また、記録に照らし、同被告人に対する未決勾留に違法な点があったとは認められない。論旨は理由がない。 その他、所論に即し逐一検討しても、原判決に破棄事由があるとは認められない。 被告人Bの控訴趣意について一事実誤認の論旨について論旨は、要するに、(1)被告人らがE派などに属するとの立証はなされていないのに、原判決は、安易にこれを認定している、(2)原判決は、本件が歴史的なZ空港反対運動の一環であることを看過しているというのである。 しかしながら、(1)については、前記第四の二において述べたとおりであり、(2)については、原判決は、被告人らが新空港の建設及びその拡張工事に反対する地域農民らからなるF空港反対同盟G派の反対運動を支援する中で本件各犯行に及んだものである旨説示しており、所論のようには解されない。 二法令の解釈適用の誤りをいう論旨について論旨は、要するに、(1)抵抗があったから封鎖処分を除去処分に変更するというが、抵抗があるならそれを排除してから封鎖処分を行えばよい、(2)緊急措置法は、事前の告知、弁解、防御を保障していない異端の法律であるから、この法律に関しては、正当防衛権及び抵抗権の適用が認められるべきであるというのである。 しかしながら、(1)については、前記第四の八の3において述べたとおりであり、( いない異端の法律であるから、この法律に関しては、正当防衛権及び抵抗権の適用が認められるべきであるというのである。 しかしながら、(1)については、前記第四の八の3において述べたとおりであり、(2)については、緊急措置法上、事前に告知、弁解、防御の機会を与える旨の規定が設けられていないとしても、そのことが憲法三一条の法意に反するものとは解されないことは、前記第二の一の4において述べたとおりであり、本件において正当防衛や抵抗権の主張が採り得ないことは、前記第五の五において述べたとおりである。論旨は理由がない。 その他、所論に即し逐一検討しても、原判決に破棄事由があるとは認められない。 被告人Cの控訴趣意について一緊急措置法合憲論の誤りをいう論旨について論旨は、要するに、(1)緊急措置法の合憲性につき、最高裁判所平成四年七月一日大法廷判決に依拠した原判決は、憲法解釈を誤っている、(2)原判決は、使用禁止命令のみに関する前記最高裁判決の判断を封鎖処分、除去処分にまで拡大して合憲としたが、憲法解釈を誤っている、(3)緊急措置法においては、犯罪構成要件中に「暴力主義的破壊活動」などの用語があるが、これらは明確性を欠いており、このため限りない類推解釈がなされているのであって、違憲であるというのである。 しかしながら、(1)については、緊急措置法の合憲性に関する原判決の解釈に誤りがないことは、前記第二の一において述べたとおりである。(2)については、使用禁止命令のみならず、封鎖や除去の措置を規定する緊急措置法が憲法に違反しないことは、同じく前記第二の一において述べたとおりである。(3)については、前記第二の一の4において述べたとおりである。論旨は採用できない。 二事実誤認ないし法令違反をいう論旨について論旨は、要するに、(1)使 記第二の一において述べたとおりである。(3)については、前記第二の一の4において述べたとおりである。論旨は採用できない。 二事実誤認ないし法令違反をいう論旨について論旨は、要するに、(1)使用禁止命令の要件が満たされていることにつき、運輸省が依拠した警察庁長官からの資料及び意見には十分な根拠がなく、使用禁止命令の要件が満たされていることは、立証されていない、(2)封鎖処分の要件も満たされていなかった、(3)封鎖処分発令から除去処分発令に至る手続が一〇分間でなされたというのは、事実に反する、(4)封鎖処分の実施に対する妨害、抵抗があったからといって、除去処分が許されることにはならない、(5)緊急措置法三条九項、一〇項によれば、封鎖処分を行う場合にも抵抗行為が想定されているから、封鎖というのは物理的抵抗がある状態で行うものではないというJ課長の証言は誤りである、(6)本件においては、緊急措置法三条九項に基づく部分破壊と同条一〇項に基づく退去させる措置によって封鎖が可能であったから、除去処分の要件はなかった、(7)緊急措置法が悪辣な政治目的達成のために拡大解釈して適用されたなどというのである。 しかしながら、(1)については、前記第四の五の1及び2において述べたとおりであり、(2)については、前記第四の七の3において述べたとおりであり、(3)については、前記第四の八の1で述べたとおりであり、(4)については、前記第四の八の3において述べたとおりである。(5)及び(6)についてみるに、緊急措置法三条九項は、「運輸大臣は、第六項又は前項の措置を講じようとするときは、必要な限度において、これらの項の工作物の所在する土地並びに当該工作物及び土地以外の物件及び土地を使用し、除去その他の処分をし、又はその使用を制限することができる。」と規定し、 じようとするときは、必要な限度において、これらの項の工作物の所在する土地並びに当該工作物及び土地以外の物件及び土地を使用し、除去その他の処分をし、又はその使用を制限することができる。」と規定し、同条一〇項は、「運輸大臣は、第六項又は第八項の措置を講じようとする場合において必要があると認めるときは、その現場にある者を退去させることができる。」と規定している。しかし、これらの規定は、運輸大臣にそのような行政上の権限があることを定めたものにほかならない上、同条九項は所論のいうような抵抗行為を想定した規定ではなく、同条一〇項は司法警察による逮捕活動について規定したものではない。したがって、これらの規定が存在するからといって、原判示第三のような激しい抵抗行為に直面したため封鎖を実施することができない場合においても、運輸大臣が自ら抵抗を排除した上封鎖を実施することや、運輸大臣が司法警察による逮捕活動をまって抵抗を排除した上封鎖を実施することが、緊急措置法上当然に予定されていると解することはできない。(7)については、前記第四の一において述べたとおりである。論旨は採用できない。 三封印破棄罪の適用の誤りをいう論旨について論旨は、要するに、(1)本件においては「差押」及び「差押の標示」に該当するものがない、(2)「差押の標示」の有効性についての認定は誤りである、(3)「差押の標示を無効たらしめる行為」の解釈が恣意的である、(4)仮処分につき将来の明渡等の本執行を保全するためというが、本執行は予定されていなかった、(5)櫓の新増築は刑法九六条に該当しない、(6)O、Pの各検察官調書を証拠として採用したのは違法である、(7)被告人C、同Aは櫓の新増築に関与していないと主張し、これらの点で原判決には誤りがあるというのである。 しかしながら、(1) い、(6)O、Pの各検察官調書を証拠として採用したのは違法である、(7)被告人C、同Aは櫓の新増築に関与していないと主張し、これらの点で原判決には誤りがあるというのである。 しかしながら、(1)及び(2)については、前記第四の一〇の2及び第五の三の1において述べたとおりであり、(3)については、前記第五の三の2において述べたとおりであり、(4)については、関係証拠によれば、平成元年一二月八日に、緊急措置法による除去との関係から仮処分が取り下げられているものの、当初から本執行が予定されていなかったものとは認められず、(5)については、前記第五の三の2において述べたとおりであり、(6)については、前記第三の一において述べたとおりであり、(7)については、前記第四の一一において述べたとおりである。論旨は採用できない。 その他、所論に即し逐一検討しても、原判決に破棄事由があるとは認められない。 よって、刑訴法三九六条により本件各控訴を棄却し、当審における訴訟費用については、刑訴法一八一条一項本文、一八二条により被告人四名に連帯して負担させることとし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官佐藤文哉裁判官金山薫裁判官永井敏雄)

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