主文 被告人を懲役8か月に処する。 この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成14年3月25日午前11時30分ころ,神戸市a区b町c丁目d番e号先路上において,その直前にA(当時36歳)運転の普通乗用自動車が,被告人運転の普通乗用自動車の進路直前に割り込んできたとして立腹し,信号待ちで停車して運転席に乗車中の前記Aに対し,その顔面を右手でわしづかみにするとともに,手拳で殴打するなどの暴行を加え,よって,同人に加療約3日間を要する上下口唇挫創,顔面挫傷の傷害を負わせたものである。 (証拠の標目)―括弧内の甲・乙ではじまる数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―省略(補足説明)第1 弁護人の主張等弁護人は,被害者の傷害は,被告人が被害者に腕を掴まれて振りほどいた際に,被告人の手の甲が被害者の顎あたりに当たったために,その唇が切れて生じたものと思われるが,これは被告人が故意にしたのではなく,偶然に手が当たった結果であって,被告人は無罪か,せいぜい過失傷害罪に問われる程度にすぎない旨主張し,被告人も当公判廷でこれに沿う供述をするところ,当裁判所は,関係各証拠によれば,被告人が被害者に対し暴行を加え,よって被害者に判示傷害を負わせたものと優に認められると判断したので,緒論に鑑み若干補足して説明する。 第2 当裁判所の判断 1 前提事実まず,被害者とされるAが,神戸市職員であり,同市公用車である普通乗用自動車を,やはり同市職員のBをその助手席に同乗させて運転し,判示神戸市a区b町c丁目d番e号付近の道路であるf線を通称g交差点に向か ,被害者とされるAが,神戸市職員であり,同市公用車である普通乗用自動車を,やはり同市職員のBをその助手席に同乗させて運転し,判示神戸市a区b町c丁目d番e号付近の道路であるf線を通称g交差点に向かい進行中,車線変更等をしたため被告人運転車両前方に進出したこと,これについて被告人がAの運転方法に問題を感じたこと,Aがその後同交差点での信号待ちのためその手前の判示場所付近に停車したところ,被告人もこれに続いて被告人車両を停車させて降車し,前記A運転車両の運転席横に歩いていったことは関係証拠から明らかに認められ,これらは被告人も特に争っていないことである。 2 ところで,Aは被告人から判示事実のとおりの暴行を受けた事実を,Bはその大部分を目撃した旨の供述をしているところ,両名の公判供述は,極めて具体的,詳細であり,Aが供述する,被告人に顔面を掴まれた状況,口に指を突っ込まれた状況についての供述等をはじめ,迫真性に富んだものである。また,両名とも,事件直後に比べれば記憶が減退していることを素直に認め,記憶が定かでない事柄については素直にその旨供述している上,両名の供述は,反対尋問にも特に揺らぐところがなく,前記前提事実や診断書から認められるAの負傷状況ともよく符合しているなど合理的で,その内容上特に不自然,不合理な点もなかった。なお,Aは,事件の記憶がまだ鮮明に残っていたと認められる平成14年4月15日に実況見分に立ち会い,具体的な被害状況につき指示説明しているところ,同人の公判供述はこれとも符合し,一貫していると認められる。そして,Aが,被告人から特に暴行を受けてもおらず,また本件後被告人側からAの運転方法等について神戸市などに苦情を言われたというわけでもないのに,虚偽申告や偽証との指摘や制裁を受ける危険を冒しながら,また様々な手続が から特に暴行を受けてもおらず,また本件後被告人側からAの運転方法等について神戸市などに苦情を言われたというわけでもないのに,虚偽申告や偽証との指摘や制裁を受ける危険を冒しながら,また様々な手続が予想されるのにもかかわらず,あえて虚偽を並べ立てて被害等を申告し,虚偽の証言までする理由は全く考えられない。Bについても,ほとんど同様の危険を冒してAに協力するような必要性,必然性は全くない。そうすると,AとBの被害状況,目撃状況についての供述は十分信用できる。 3 これに対し,被告人の供述は,傷害の故意がなかったという点では一貫するものの,その内容は,それ自体としても,客観的状況に照らしても,不合理な点が極めて多く,また,例えば,被害者の顔面を掴んだか否かの点,被害者の口に指を突っ込んだか否かの点,その顔面を殴打したか否かの点等,追及されると身勝手な一般論を持ち出して自己の正当性の主張に終始するのみで合理的説明を全くなしえていないのであって,到底信用できない。なお,妻の供述中被告人の前記供述に沿う部分も不合理な点があり,被告人の弁解を聞いた後のものでもあって採用できない。 4 そうすると,被告人や妻の供述によっては2でみたAらの供述等の信用性は全く揺るがず,他に同人らの供述の信用性を疑うべき証拠や事情もないというべきであるから,結局,被告人の弁解やこれに基づく弁護人の主張は採用できず,Aらの供述をはじめとする前掲関係各証拠により,判示事実は優に認められる。 (法令の適用)被告人の判示所為は刑法204条に該当するので,所定刑中懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役8か月に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予することとし,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項本文により の所定刑期の範囲内で被告人を懲役8か月に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予することとし,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。 (量刑の理由)被告人は被害者が危険な運転方法をしておきながらこれをとがめた被告人に直ちに謝罪しなかった等という理由で興奮のあまり本件犯行に及んだものと認められるが,仮に被害者が被告人が主張するような運転をしていたとしても,被害者には暴力をふるわれるような落ち度はなく,その経緯や短絡的動機にはしん酌できる点が乏しく,犯行を正当化できるものはない。また,被告人は,明らかに不合理な弁解に終始して犯行を否認し,自己の刑事責任を免れようとしており,少なくとも外部的には本件犯行について反省する態度も全くない。被告人がいかなる理由でこのような態度をとるのかは不明であるが,慰謝の措置も全くとられておらず,このままではその見込みも乏しい。当然ながら,被害感情も厳しい。そうすると,被告人の刑事責任は軽視できず,被告人に対しては実刑をも考慮すべきと思われる。 しかし,幸いにも被害は軽微といえ,また,被告人の暴行そのものも,被害者に傷害を負わせることを目的として行われたものとは認められず,本件は偶発的犯行である。そして,被告人は懲役前科までは有さず,今回本件により相当期間拘束されている上,被告人には生活上の手助けを要する妻があり,被告人自身,妻が法廷で被告人をかばう供述を聞いたり不便を訴える姿を見て自己の軽率で乱暴な態度を内心反省する機会を得たと認められる。そこで,今回に限り,被告人に対して刑の執行を猶予することとする。 よって,主文のとおり判決する。 平成15年5月29日神戸地方裁判所第11刑事 反省する機会を得たと認められる。そこで,今回に限り,被告人に対して刑の執行を猶予することとする。 よって,主文のとおり判決する。 平成15年5月29日神戸地方裁判所第11刑事係乙裁判官橋本一【被告人控訴】
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