裁判所
昭和45年11月6日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄差戻 福岡高等裁判所 昭和37(ネ)91
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主文 原判決を破棄する。本件を福岡高等裁判所に差し戻す。理由 上告代理人野島豊志の上告理由第一点、第二点の(五)および第三点について。商法二七〇条の規定により取締役の職務の執行を停止しその代行者を選任する仮処分は、民訴法七六〇条のいわゆる仮の地位を定める仮処分の性質を有するものであつて、商法二五八条二項の規定により裁判所が一時取締役の職務を行なう者を選任する裁判とはその性質を異にするものである。そして前示職務執行停止代行者選任の仮処分決定は、その本案判決が確定したときは当然その効力を失うものと解すべきであるが、右仮処分により職務の執行を停止された取締役が辞任し、株主総会の決議によりあらたに後任の取締役が選任された場合、このことのみによつて、直ちに右仮処分決定が失効したり、右代行者の権限が消滅したりするものと解すべきではなく、右後任取締役の選任等により事情の変更があるとして仮処分決定を取り消す判決があつてはじめて右のごとき効果が生ずるものというべきである。けだし、仮処分の後、職務の執行を停止された取締役が辞任し後任の取締役が選任されたときは、右仮処分による職務執行停止はその対象を失い、代行者選任はその必要がなくなつたものというべきであるが、法は、かように事情が変更した場合でも、これを訴訟手続により認定したうえ判決により仮処分決定を取り消すべきものとしており(民訴法七五六条、七四七条)、右取消のない以上、仮処分によつて与えられた代行者の権限が消滅するいわれはないのであつて、本件のような仮処分につきその例外を認めなければならない理由を見出しえないからである。所論商業登記規則(昭和二六年法務府令第一一二号)六一条または商業登記規則(昭和三九年法務省令第二三号)八四条が、その第一項にお 分につきその例外を認めなければならない理由を見出しえないからである。所論商業登記規則(昭和二六年法務府令第一一二号)六一条または商業登記規則(昭和三九年法務省令第二三号)八四条が、その第一項において、取締役等の職務を一時行なう者に関す- 1 -る登記は、取締役等の選任の登記をしたときは、朱抹しなければならない旨規定しながら、取締役の職務の執行停止または職務代行者に関する登記について右と同様の措置を定めなかつたことも、前述のような見解を前提とするものというべきである。 論商業登記規則(昭和二六年法務府令第一一二号)六一条または商業登記規則(昭和三九年法務省令第二三号)八四条が、その第一項において、取締役等の職務を一時行なう者に関す- 1 -る登記は、取締役等の選任の登記をしたときは、朱抹しなければならない旨規定しながら、取締役の職務の執行停止または職務代行者に関する登記について右と同様の措置を定めなかつたことも、前述のような見解を前提とするものというべきである。そして、事情変更による取消申立について事実上困難が伴う旨の所論も右例外を認める理由とするに足りず、また所論は、後任取締役の登記の申請を受理しながら、一方でその者に取締役としての権限がないとするならば、不実の登記の存在を認めることになり不当である旨主張するが、右後任取締役の登記の前に仮処分の登記が経由されているのであるから、右後任取締役の権限が取締役代行者の権限と牴触する範囲で制限されていることはおのずから明らかであつて、不実の登記であるとの非難は当たらないというべきである。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。同第二点の(一)ないし(四)、第四点および第五点について。取締役の職務執行停止代行者選任の仮処分により取締役の職務代行者が選任されている場合には、右職務の執行を停止された取締役が辞任し、その後任の取締役が選任されたとしても、会社の取締役の職務は、原則として職務代行者が行なうべきものであつて、その限度において右後任取締役は職務の執行を制限されるものと解するのが相当である。けだし、前記仮処分が、後任取締役の選任により当然失効するものでないことは前述のとおりであるところ、右仮処分は、職務の執行を停止した当該取締役の職務に関するかぎり、これを のと解するのが相当である。けだし、前記仮処分が、後任取締役の選任により当然失効するものでないことは前述のとおりであるところ、右仮処分は、職務の執行を停止した当該取締役の職務に関するかぎり、これを職務代行者に行なわせることとしているのであり、後任の取締役は直接右仮処分の名宛人とされた者ではないが、右仮処分の性質上、その効力が及び、したがつて職務代行者の権限を承認せざるをえないものであるからである。そして、もし後任取締役は、仮処分により職務の執行を停止された者でなく、取締役である以上取締役としての権限を行使できるのは当然で- 2 -あるとの見解のもとに、無制限の職務執行を認めるならば、職務代行者の職務執行と競合して、取締役会の決議等につき困難を生ずることを免れないであろう。 れた者ではないが、右仮処分の性質上、その効力が及び、したがつて職務代行者の権限を承認せざるをえないものであるからである。そして、もし後任取締役は、仮処分により職務の執行を停止された者でなく、取締役である以上取締役としての権限を行使できるのは当然で- 2 -あるとの見解のもとに、無制限の職務執行を認めるならば、職務代行者の職務執行と競合して、取締役会の決議等につき困難を生ずることを免れないであろう。しかし、仮処分の後、職務の執行を停止された取締役が辞任し後任の取締役が選任された場合に、もし代表取締役が欠けているときは、これら取締役が構成する取締役会の決議をもつて代表取締役を定めることができると解すべきである。けだし、会社を代表すべき取締役を後任取締役らが定めることは、何ら前記仮処分の趣旨、内容に牴触するものでないばかりでなく、実際上の見地から考えても、かような場合は、職務代行者が代表取締役を定めるよりも後任取締役がその意思によつて定めるべきものとするのが、商法が代表取締役の制度を設けた趣旨に合致することは明白であるからである。これを本件についてみるに、原審が適法に確定した事実関係のもとにおいては、Dは、右にいう後任取締役の構成する取締役会によつて、適法に補助参加人会社の代表取締役に選任されたものというべきである。すなわち原判決によれば、同会社の前任取締役は仮処分によりその職務の執行を停止され、Eほか三名がその職務代行者に選任され、また右Eが、商法二六一条 会社の代表取締役に選任されたものというべきである。すなわち原判決によれば、同会社の前任取締役は仮処分によりその職務の執行を停止され、Eほか三名がその職務代行者に選任され、また右Eが、商法二六一条三項、二五八条二項により一時代表取締役の職務を行なう者に選任されていたが、右前任取締役が辞任し、昭和三一年一二月二四日開催の株主総会においてDほか三名が取締役に選任され、右Dほか三名の取締役が同年同月二七日取締役会を開催し、DおよびFを右会社の代表取締役に選任した(右各就任の登記は昭和三二年一月一二日経由された)というのであるから、Dは有効に代表取締役に選任されたものというべきである。そして、前述したところによれば、右代表取締役Dは、仮処分の存続中、取締役たる資格においてその職務を執行できない制約を受ける者であるから、代表取締役としての権限も直ちに行使できないものというべく、したがつて同人が補助参加人会社を代表して上告人との間に本件各土地の売買契約を締結したとしても、その効- 3 -果を生じないものであるが、原判決によれば、前記仮処分申請は昭和三二年一月一四日その申請が取り下げられたというのであるから、その後は、Dにおいて、補助参加人会社を代表して前記売買契約を追認し、あるいはあらたに売買契約を締結することができるといわなければならない。 に行使できないものというべく、したがつて同人が補助参加人会社を代表して上告人との間に本件各土地の売買契約を締結したとしても、その効- 3 -果を生じないものであるが、原判決によれば、前記仮処分申請は昭和三二年一月一四日その申請が取り下げられたというのであるから、その後は、Dにおいて、補助参加人会社を代表して前記売買契約を追認し、あるいはあらたに売買契約を締結することができるといわなければならない。しかるに原審が、右と見解を異にし、後任取締役Dほか三名が前記代表取締役を選任した行為は無効であり、代表取締役でないDによつて、本件仮処分申請の取下後である昭和三二年一月一七日あるいは同年四月二五日に本件売買契約につき追認またはあらたな行為がなされたとしても、その効力がないことは明らかであると判示し、たやすく上告人の本訴請求を排斥したのは違法であることを免れず、この点に関する論旨は理由があるに帰する。につき追認またはあらたな行為がなされたとしても、その効力がないことは明らかであると判示し、たやすく上告人の本訴請求を排斥したのは違法であることを免れず、この点に関する論旨は理由があるに帰する。よつて、原判決を破棄し、さらに審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すべきものとし、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官草鹿浅之介裁判官城戸芳彦裁判官色川幸太郎裁判官村上朝一- 4 -
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