平成17(行ク)3 執行停止申立事件(本案・平成17年(行ウ)第17号)

裁判年月日・裁判所
平成17年5月12日 福岡地方裁判所 公物・公企業など
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判決文本文15,726 文字)

主文 1 九州運輸局長が申立人に対し,平成17年4月25日付けでした海上運送法16条に基づく一般旅客定期航路事業の一部停止命令は,平成17年6月29日までその効力を停止する。 2 申立人のその余の申立てを却下する。 3 申立費用は相手方の負担とする。 理由 1 申立の趣旨九州運輸局長が,申立人に対し,平成17年4月25日付けでした,海上運送法16条に基づく事業の停止命令は,本案事件(当庁平成17年(行ウ)第17号海上運送法16条に基づく事業の停止命令取消請求事件)の判決が確定するまで停止する。 2 相手方の意見本件申立てを却下する。 3 前提となる事実本件疎明資料によれば,以下の事実が一応認められる。 (1) 申立人の前身である旧鹿児島商船株式会社は,大正8年8月に設立され,昭和25年10月18日,旧海上運送法に基づく一般旅客定期航路事業の免許を取得して,その後,船舶による旅客及び荷物の運送事業等を営み(疎甲1,22,23),昭和36年12月以降,鹿児島・種子島間及び鹿児島・屋久島間の各航路(以下,鹿児島・種子島間の航路を「種子島区間」,鹿児島・屋久島区間の航路を「屋久島区間」,両区間を併せて「本件各区間」という。)にフェリーを就航させてきた(疎甲23)。 (2) 海上運送法の平成12年改正前における申立人の事業状況申立人は,鹿児島市内に本店を有し,海上運送事業等を目的とする株式会社であるところ,平成12年10月1日の改正海上運送法(以下「法」という。)施行前には,種子島区間及び屋久島区間において,フェリー1隻,ジェットフォイル2隻により,一般旅客定期航路事業(ただし,屋久島区間におけるフェリーの運航は,上記法改正前の需 送法(以下「法」という。)施行前には,種子島区間及び屋久島区間において,フェリー1隻,ジェットフォイル2隻により,一般旅客定期航路事業(ただし,屋久島区間におけるフェリーの運航は,上記法改正前の需給調整の関係から,改正前の法21条による自動車航送貨物定期航路事業として運航していた。)を行っており,フェリーの運航形態は,本件各区間ともに2日で1航海となっていた(疎甲23,疎乙1)。 また,そのころ,種子島区間には九州商船株式会社(以下「九州商船」という。)が,屋久島区間には折田汽船株式会社(以下「折田汽船」という。)が,いずれもフェリー1隻により一般旅客定期航路事業を行っていた(疎乙1)。 ところが,申立人は,九州運輸局長の認可を得て,同日からフェリーを使用旅客船から外した(疎乙1,14)。 (3) 指定区間及びサービス基準の設定状況上記法改正により,新たに指定区間制度(法2条11項)が導入され,当該指定区間に係る船舶運行計画が,当該指定区間に係る離島その他の地域の住民が日常生活又は社会生活を営むために必要な船舶による輸送を確保するために適切であるか否かを判断する(法4条6号参照)ため,その指定区間毎に,船舶運航計画の記載事項(①運航日程,②運航時刻,③各運航毎の輸送能力,④季節運航を行う場合はその時季)のうち,航路毎に必要な項目を選択して,その基準を設定する(以下,設定された基準を「サービス基準」という。)こととされた。 そして,本件各区間は,運輸大臣(現国土交通大臣)によりそれぞれ指定区間に指定され(疎乙12),九州運輸局長は,次のとおりのサービス基準(以下「本件サービス基準」という。)を設定した(疎甲3,疎乙13)。 運航日程2日運航回数2日で1往復旅客200人 ),九州運輸局長は,次のとおりのサービス基準(以下「本件サービス基準」という。)を設定した(疎甲3,疎乙13)。 運航日程2日運航回数2日で1往復旅客200人乗用車20台(4) 上記法改正前における申立人の申請状況等しかし,申立人は,上記(1)のとおり,同年10月1日から,自動車航送ができないジェットフォイルだけによる運航を行うこととなり,本件サービス基準を充足しなくなったことから,これを充足するため,折田汽船及び九州商船との間でそれぞれ共同運航の協定を締結した(疎甲8,疎乙15,16)。 (5) 本件各区間への新規参入状況等平成15年12月10日,コスモライン株式会社(以下「コスモライン」という。)が,九州運輸局長に対し,種子島区間の一般旅客定期航路事業の航路開設に係る許可申請を行い(疎乙19),平成16年2月10日付けで,同局長はこれを許可した。そして,コスモラインは,同年12月12日からフェリー及びジェットフォイルにより事業を開始することとなった。一方,申立人と上記協定(以下「本件協定」という。)を締結し,同区間においてフェリーによる一般旅客定期航路事業を行っていた九州商船は,同局長に対し,同年12月11日をもって同事業を廃止する旨の同年6月11日付け事業廃止届(疎乙20)を提出した。 (6) 申立人に対する事業停止命令の経緯ア申立人は,平成16年12月12日以降,種子島区間における九州商船の事業廃止に伴う本件協定の解消により,本件サービス基準を充足し得なくなったが,ジェットフォイルのみによる運航を継続していた。 イそこで,九州運輸局長は,同月21日,申立人に対し,行政手続法30条による弁明の機会の付与の通知をしたところ,平成17年1月 得なくなったが,ジェットフォイルのみによる運航を継続していた。 イそこで,九州運輸局長は,同月21日,申立人に対し,行政手続法30条による弁明の機会の付与の通知をしたところ,平成17年1月11日,申立人から,本件サービス基準の違法性等を主張する一方,佐渡汽船株式会社からフェリーを購入し,同年夏には就航させるとの弁明書が提出された(疎甲9)。 ウ同局長は,同年2月9日,申立人に対し,法19条1項に基づき,「速やかに指定区間「種子島」のサービス基準を満たすよう事業計画及び船舶運航計画を是正すること」などを内容とするサービスの改善に関する命令(以下「本件改善命令」という。)を発出した(疎甲2)。 エこれに対し,申立人からは,同月28日,「フェリーの就航時期を,当初予定の本年9月から本年6月30日に前倒しする」旨の報告がなされた(疎甲13)が,同局長は,かかる報告内容では「速やかにサービス基準を満たす」とは言い難いと判断し,法16条に基づく事業停止命令又は許可の取消しを予定して,行政手続法13条に基づき,同年3月末,申立人の関係者について聴聞を行った(疎甲17)。その結果,同局長は,申立人が本件改善命令に違反するものとして,法16条に基づき,同年4月25日,申立人に対し,申立人が経営する種子島区間に係る一般旅客定期航路事業を同年5月25日から本件サービス基準を満たして運行を開始する日の前日まで停止することを命ずる旨の一般旅客定期航路事業の一部停止命令(以下「本件事業停止命令」という。)を発出した(疎甲21,疎乙28)。 4 当事者の主張の要旨(1) 申立人ア重大な損害を避けるための緊急の必要性(ア) 申立人の事業のほとんどは,本件各区間のジェットフォイルによる旅客の輸送であるところ,平成17年6月 張の要旨(1) 申立人ア重大な損害を避けるための緊急の必要性(ア) 申立人の事業のほとんどは,本件各区間のジェットフォイルによる旅客の輸送であるところ,平成17年6月下旬までジェットフォイルを運行できないと,代理店や顧客に多大な損失,迷惑を被らせることになり,申立人の信用は著しく毀損され,回復困難な重大な損害を被る。 (イ) 本件事業停止命令が発効した場合,申立人は売上げの大部分を得ることができず,経営状況が悪化し,従業員も従事する業務が失われれる。 イ 「本案について理由がないとみえるとき」に当たらないこと(本件事業停止命令の違法性)(ア) サービス基準の違法性及びサービス基準の性質a サービス基準の設定に際しては既存業者の営業の自由の保障の観点から,その内容を十分考慮すべきであるところ,本件サービス基準の設定に当たっては,申立人の行っている輸送サービスを考慮しておらず,本件サービス基準の内容は明らかに不合理であって,法4条6号の趣旨に反する。 なお,生活必要物資については,内航貨物事業者による定期運行が確保されている。 b 本件サービス基準が設定された当時,五島航路においても九州商船がジェットフォイルによる輸送事業を行っていたところ,同航路についてはジェットフォイルによる輸送サービスを考慮した内容のサービス基準を設定しており,平等原則に反する。 c 本件サービス基準の設定に当たっては,事業者からの聴聞等が必要であったところ,申立人は何ら意見聴取されておらず,その設定手続に瑕疵があり,申立人の営業の自由を侵害するものである。 d サービス基準は,申立人のような既存事業者については,事業計画変更の際に満 ろ,申立人は何ら意見聴取されておらず,その設定手続に瑕疵があり,申立人の営業の自由を侵害するものである。 d サービス基準は,申立人のような既存事業者については,事業計画変更の際に満たすことが必要とされるのであって,運航継続のために満たすことを必要とされるものではなく,これまでも,申立人に対しては,九州運輸局長らにより,それを前提とした手続がなされてきた。 (イ) 本件改善命令の違法性同命令を発出できるのは,「利用者の利便とその他公共の利益を阻害している事実」があると認められるときであるところ,申立人については本件協定が解消されたにすぎず,申立人は,平成17年夏ころには本件サービス基準を満たすことを弁明していたのであるから,これに当たる事実はない。 また,申立人は,九州運輸局長に対し,本件改善命令における「速やかに」とはどの程度の期間をいうのか再三照会したが,一切回答がなかった。このような対応は,「処分基準の設定・公表」を求める行政手続法12条の趣旨に違反する。 さらに,鹿児島運輸支局の職員は,本件改善命令が何らかの処分の前提であるなどと述べており,同命令の発出前に既に申立人に対する不利益処分を決定していたものである。これは,それまでの行政指導に応じなかったことを理由に申立人に対する事業停止命令を決定していたことにほかならず,行政手続法32条2項,34条に反し,聴聞手続を定めた同法13条1項及び法45条の4にも反する。九州運輸局の職員のこれまでの対応は,行政手続法15条,24条,26条,35条にも違反し,本件事業停止命令は違法である。 (ウ) 申立人にサービスの改善に関する命令違反がないこと申立人は,九州商船がフェリーを運航廃止した平成1 4条,26条,35条にも違反し,本件事業停止命令は違法である。 (ウ) 申立人にサービスの改善に関する命令違反がないこと申立人は,九州商船がフェリーを運航廃止した平成16年12月以前から,フェリーの運航を検討し,本件サービス基準を満たすえっさ丸を購入することとしたが,同船は佐渡汽船株式会社において平成17年6月まで運行に供している上,改造等に3か月が必要であった。ところが,本件改善命令が出されたため,平成17年9月に本件サービス基準を満たすのでは遅いということであるものと考え,コスモラインに協定締結の申入れをするなどしたが,他社の協力によって本件サービス基準を満たす日を早めることはできなかった。そこで,えっさ丸の改造工事について代替策を講じることとし,同年6月には本件サービス基準を満たすことが可能になるようにした。かかる申立人の措置は,最短かつ最善の措置であり,「速やかに」是正措置を講じているものというべきである。 また,「速やかに」の起算点は,サービスの改善に関する命令が発出された平成17年2月9日である。 (エ) 聴聞手続の違法性申立人代表者は,聴聞手続において,申立人の意見は陳述書記載のとおりである旨述べたにもかかわらず,聴聞調書には陳述の要旨が明らかにされておらず,陳述書も添付されていない。 よって,本件聴聞手続は行政手続法24条1項に反する。 (オ) 指定区間制度の趣旨に反する申立人は佐渡汽船株式会社からフェリーを購入しており,平成17年6月末には本件サービス基準を満たすことは確実であり,他方,申立人が運行停止した場合には,種子島,屋久島の地域住民の日常生活及び社会生活に重大な支障が生じる。 した おり,平成17年6月末には本件サービス基準を満たすことは確実であり,他方,申立人が運行停止した場合には,種子島,屋久島の地域住民の日常生活及び社会生活に重大な支障が生じる。 したがって,本件事業停止命令は,地域住民の日常生活及び社会生活に必要な輸送の確保という指定区間制度の趣旨に反する。 ウよって,本件事業停止命令により,申立人に行政事件訴訟法25条2項にいう「重大な損害」が生じるとともに,本件は,同条4項にいう「本案に理由がないとみえるとき」に該当しない。 (2) 相手方ア 「本案について理由がないとみえるとき」に該当すること(ア) 本件サービス基準の適法性法2条11項に規定する指定区間を含む航路において一般旅客定期航路事業(法2条5項)を営もうとする者は,「当該指定区間に係る船舶運航計画が,当該指定区間に係る離島その他の地域の住民が日常生活又は社会生活を営むために必要な船舶による輸送を確保するために適切なものであること。」(法4条6号)の要件を満たした上で運航しなければならないところ,この要件の充足性を判断するための具体的基準として,サービス基準が設定されたものである。 そして,本件各区間においては,上記のような観点から,本件サービス基準の内容として,旅客の運送だけでなく自動車航送を義務付けたものであり,仮に自動車航送の設定がなかった場合には,離島住民が日常生活又は社会生活を営むために不可欠である生活必需物資等の輸送の確保が極めて困難になり,離島住民の民生安定に支障を来すおそれがある。 したがって,本件サービス基準は,法4条6号の趣旨に適合するものであり,何ら違法性はない。 (イ) 本件サービス基準設定手続の適法性及び営業権侵害の有無について に支障を来すおそれがある。 したがって,本件サービス基準は,法4条6号の趣旨に適合するものであり,何ら違法性はない。 (イ) 本件サービス基準設定手続の適法性及び営業権侵害の有無についてa サービス基準の設定に当たって,既存事業者の意見を聴取することは手続上必要ではない。 しかも,本件サービス基準設定前,九州運輸局鹿児島支局職員が,サービス基準の内容等について,申立人の専務らに対し説明を行い,同人らから質問も受けているのであって,申立人らが意見を述べる機会が全くなかったものではない。 b 一般旅客定期航路事業は,法の許可(法3条ないし5条)に基づき,その範囲内において経営されるものであり,その限りにおいて制限を受ける。そして,同事業は,サービス基準に基づいて経営されるべきものであるから,これによる制限は合理的理由に基づく正当なものであって,営業権を不当に侵害するものではない。 (ウ) 本件改善命令の適法性についてサービス基準は,離島住民の生活に欠かせない運航を確保しようとするものであって,これを下回ったまま運航を続ける既存事業者に対しては,必要に応じ,サービス改善命令を発出するなどして,サービス基準を満足するような運航を確保させるのは当然である。 平成12年10月1日に施行された改正法は,すべての海上運送事業者に適用され,本件サービス基準を満たさないまま運航を継続することは,離島住民の生活の利便という公共の利益を著しく阻害する。 (エ) 本件事業停止命令の適法性についてa サービス改善命令の趣旨指定区間制度の上記趣旨にかんがみれば,指定区間において,サービス基準を満たす事業者と,これ (エ) 本件事業停止命令の適法性についてa サービス改善命令の趣旨指定区間制度の上記趣旨にかんがみれば,指定区間において,サービス基準を満たす事業者と,これを満たさずに採算性のよい事業のみを行う事業者とが競合した場合には,公正な競争が行われないのみならず,採算性の悪いサービス部分の継続が困難となり,指定区間制度及びサービス基準の趣旨を没却することとなるため,可能な限り速やかに,サービス基準を満たさない状態を解消することが必要である。 本件改善命令もかかる趣旨から発出されたものであり,同命令にいう「速やかに是正」するとは,サービス基準を満たすために合理的な手段を採用した際に必要な最短の期間での是正を求めるものであり,また,様々な方策を検討して最善の取組を行うことを求めるものである。 b 申立人の本件改善命令違反の事実本件サービス基準を早期に充足するための方策としては,協定の締結や用船等が最も合理的かつ有効な手段であり,本件においても,これが実現していれば,平成17年6月30日より早い時期に本件サービス基準を満たすことのできる可能性は相当高かったと考えられる。しかし,申立人は,折田汽船等から用船及び協定締結が困難等の回答があったことをもって,直ちにこれらを不可能と判断したものであって,協議の成立に向けた実質的かつ継続的な取組を行ったとは認められず,本件改善命令の求める「速やかに是正」するための最善の取組を行ったとは到底認められない。 また,本件協定の相手方であった九州商船は,平成16年4月26日に種子島区間における一般定期運送業の廃止を申立人に通告しており,申立人は,遅くとも同日には,現状のままでは同年12月12日以降本件サービス ,本件協定の相手方であった九州商船は,平成16年4月26日に種子島区間における一般定期運送業の廃止を申立人に通告しており,申立人は,遅くとも同日には,現状のままでは同年12月12日以降本件サービス基準を充足しなくなることを十二分に認識していたし,九州運輸局長からも,本件サービス基準を充足するための取組を行うべきこと,充足しない運航にはサービス改善命令が発出され,これに従わない場合には,許可の取消等もあり得るとの指導を受けている。それにもかかわらず,申立人は,その後長期間にわたり,本件サービス基準を充足するための取組を行っていない。こうした経緯を踏まえれば,申立人がより早い段階から本件サービス基準を満たすための取組を行っていれば,本件サービス基準を溝たさない運航が回避され,あるいは短期間で本件サービス基準を充足することができたと考えられる。 さらに,本件サービス基準を満たすのは,既存船の用船,購入等によっても十分可能であり,平成17年6月30日という本件サービス基準充足時期は相当なものとはいえない。 c 以上のとおり,申立人は,既存事業者からの用船や協定の締結によって,平成17年6月30日以前のより早い時期に本件サービス基準を満たすことのできる可能性が相当程度高かったにもかかわらず,十分な努力をせず,本件サービス基準を満たすために最善の取組を行ったとは到底認められないから,本件サービス改善命令に違反したものである。 (オ) 本件事業停止命令の手続等の適法性について聴聞調書において明らかにするよう要求されているのは,聴聞において当事者が陳述した要旨である(行政手続法24条1項)ところ,本件においては,申立人代表者の陳述がそのまま記載されており,不備はない。 また,上 るよう要求されているのは,聴聞において当事者が陳述した要旨である(行政手続法24条1項)ところ,本件においては,申立人代表者の陳述がそのまま記載されており,不備はない。 また,上記陳述書については,聴聞調書に「提出された証拠書類」として明記されており,その存在は調書上も明らかであるとともに,当事者又は参加人から聴聞調書の閲覧が申請された場合には,当事者又は参加人の求めにより,「提出された証拠書類」として上記陳述書を閲覧することも可能である(同条4項)から,当事者又は参加人にとっても何ら不都合はない。 さらに,サービス改善命令違反を判断する際には,聴聞調書や報告書(同条3項)のみならず,聴聞の際に提出された陳述書等の証拠書類も含めて判断材料とするのであるから,かかる点においても,不都合はない。 したがって,本件の聴聞手続における聴聞調書作成方法には不備はなく,適法である。 (カ) 以上のとおり,申立人の主張はいずれも失当であるから,行政事件訴訟法25条4項にいう「本案について理由がないとみえるとき」に該当する。 イ 「重大な損害を避けるための緊急の必要性」がないことについて行政事件訴訟法25条は,社会通念上金銭賠償による回復をもって満足させるのが相当か否かの判断が,損害の性質のみによって行われることなく,損害の程度並びに処分の内容及び性質をも総合考慮して相対的に行われるべきことを明らかにする趣旨で,「重大な損害」とし,上記のような考慮事項を明文で定めることにより,財産的な損害も含めた様々な損害について,個々の事案ごとの事情に即し,社会通念上金銭賠償による回復をもって満足させるのが相当か否かについての判断が適切に確保されるように配慮したものと解することができる 産的な損害も含めた様々な損害について,個々の事案ごとの事情に即し,社会通念上金銭賠償による回復をもって満足させるのが相当か否かについての判断が適切に確保されるように配慮したものと解することができる。 (ア) 本件事業停止命令及び本件改善命令の内容及び性質法は,海上運送事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより,海上運送の利用者の利益を保護するとともに,同事業の健全な発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的とするものである(1条)。 そして,法16条1号は,法若しくはこれに基づく処分又は許認可に付した条件に違反したときには,国土交通大臣は,当該事業の停止を命じることができる旨規定しているところ,この「法に基づく処分」には,法19条1項のサービス改善命令が含まれるものであり,事業者が当該命令に違反する場合には,国土交通大臣は,当該事業の停止を命じることができる。このように,法が,サービス改善命令に違反する事業者に対して当該事業の停止を命じる権限を国土交通大臣に与えた趣旨は,「利用者の利便その他の公共の利益を阻害している事実があると認める」(法19条1項)事業の継続を認めれば,法の上記目的を著しく阻害することとなるためであり,法は,上記目的を達成するために,事業停止命令により当該事業者に経済的損失等の不利益が生じることも当然に予定している。 本件事業停止命令は,離島住民の生活の利便という公共の利益を確保する上で極めて重要な意味を持つものである。それにもかかわらず,安易に同命令の効力が停止されるようなことになれば,法の上記目的を阻害する事業を継続している事業者が,執行停止の名の下にこれを継続するという,上記の目的を無にするに等しい状態を招来するおそれがあるから,仮に,事業者 力が停止されるようなことになれば,法の上記目的を阻害する事業を継続している事業者が,執行停止の名の下にこれを継続するという,上記の目的を無にするに等しい状態を招来するおそれがあるから,仮に,事業者が損害を被ることを理由として,事業停止命令の効力を停止すべき場合があるとしても,それは,法の上記目的達成の必要性を犠牲にしてもなお救済しなければならない程度に重大な損害を避ける緊急の必要性がある場合に限られる。 (イ) 本件事業停止命令の執行によって申立人に生じる損害の性質及び程度a 申立人は,本件事業停止命令により申立人の信用が著しく毀損され,また,多額の売上を得ることができなくなるため,回復困難な重大な損害が生じるなどと主張するところ,上記の主張事実を裏付ける客観的な疎明資料を提出するなど,何ら具体的な立証をしておらず,申立人に生じるとする損害の具体的内容は不明であって,申立人に「重大な損害」が生じるとは認められない。 b また,申立人は,種子島区間について事業が停止されたとしても,屋久島区間及び種子島・屋久島間の航路については事業が停止されないのであるから,船舶運航計画の変更認可がされれば,種子島区間の事業停止後も,上記各区間における事業を継続することが可能であり,申立人の言うような「売上の大部分を占める多額の売上を得ることができない」事態は生じない。 さらに,申立人の主張によれば,申立人の事業が停止される期間は,申立人が本件サービス基準を確実に満たす平成17年6月末までのわずか1か月間に過ぎないのであり,この間,事業が停止されたからといって,「著しく重大な損害」を被るとは考えられない。 しかも,申立人が本件事業停止命令により生じるとする損害は,結局,売上が落ちる ぎないのであり,この間,事業が停止されたからといって,「著しく重大な損害」を被るとは考えられない。 しかも,申立人が本件事業停止命令により生じるとする損害は,結局,売上が落ちるという財産的損害に集約されるのであり,かかる損害は,将来の金銭賠償により回復可能であって,「回復困難な損害」とは到底認められない。 c なお,行政事件訴訟法25条2項の「重大な損害」とは,民衆訴訟や機関訴訟の場合を除いて,申立人の個人的損害に限定されるものであって,第三者の被る損害や公共的損害はこれに当たらない。 (ウ) 以上によれば,本件事業停止命令の効力を停止させることとすれば,法の目的を無にするに等しい重大な影響が生じるおそれが大きい一方で,本件事業停止命令により申立人が被る損害は財産的損害に尽きるものであり,将来の金銭賠償で回復可能な程度にとどまるのであって,本件事業停止命令の効力が停止された場合に生じる上記重大な影響を考慮すると,社会通念上,申立人において受忍することができないような性質,程度のものとはいい難い。 してみると,本件事業停止命令により申立人が被るおそれのある損害は,同命令により維持される法の目的達成の必要性を一次的に犠牲にしてもなお,救済しなければならないほどの重大なものとはいえないから,本件事業停止命令により申立人に「重大な損害」(行政事件訴訟法25条2項)が生じるとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 本件事業停止命令により生ずる重大な損害を避けるための緊急性の有無行政事件訴訟法25条2項は,処分により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは,処分の効力の停止をすることができると規定し,その重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては,損害の回復の困難の程度 法25条2項は,処分により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは,処分の効力の停止をすることができると規定し,その重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては,損害の回復の困難の程度を考慮するものとし,損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとされている(同条3項)。 (1) 損害の回復の困難の程度並びに損害の性質及び程度について申立人の「種子島」区間における平成15年,平成16年のいずれも5月25日から6月29日までの売上額は,それぞれ1億5223万3860円,1億4232万9200円であり,その平均額は1億4728万1530円であることが一応認められる(甲47,48)。そして,同区間の運航が停止されることにより,鹿児島・屋久島間,種子島・屋久島間の旅客数も相当程度減少することが一応認められ,本件事業停止命令により,申立人が5月25日から6月29日まで「種子島」区間の運送事業を行えなくなった場合,相当多額の損害を被ることが一応認められる。 また,上記認定のとおり,申立人は約43年間にわたって「種子島」区間で船舶による運送事業を営んできたこと,平成元年から先駆的に同区間におけるジェットフォイルによる運航を行っており,平成12年12月からはその運航を1日5往復としていること,本件事業停止命令の効力発生の始期とされている平成17年5月25日から6月29日までの同区間のジェットフォイルの予約客は,5月9日現在で4万9011名であり,中途でのキャンセルは予定されるものの,申立人の事業停止に伴う運航停止による影響を受ける予約客は相当多数に上ると認められること(甲64)からすると,同区間における運航事業が停止されることは申立人の社会的信用を大きく損なうことになるものと認められる。 以上のとおり, 影響を受ける予約客は相当多数に上ると認められること(甲64)からすると,同区間における運航事業が停止されることは申立人の社会的信用を大きく損なうことになるものと認められる。 以上のとおり,本件事業停止命令により原告は多大な経済的損害を被り,その社会的信用も大きく毀損されることになることが認められ,特に後者の回復は,その性質上,容易でないものである。 なお,申立人は,本件事業停止命令により,申立人のジェットフォイルが運行停止した場合には,種子島及び屋久島の地域住民が公共交通機関を奪われ,その日常生活及び社会生活に重大な支障が生じるし,両島への観光客が半減し,地域に著しい経済的損失を与えるほか,ジェットフォイルの乗務員として勤務する従業員にも従事する業務が失われると主張するが,これらはいずれも申立人の被る損害ではないから,行政事件訴訟法25条2項にいう「重大な損害」には当たらない。 (2) 処分の内容及び性質についてア海上運送法(以下「法」という。)は,「海上運送事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより,海上運送の利用者の利益を保護するとともに,海上運送事業の健全な発達を図り,もって公共の福祉を増進する」ことを目的とし(1条),法16条1号は,法若しくはこれに基づく処分又は許可若しくは認可に付した条件に違反したときには,国土交通大臣は,当該事業の停止を命じることができる旨規定する。そして,この法に基づく処分には,法19条1項の命令が含まれる。 上記のような法の趣旨及び規定からすると,法が国土交通大臣に事業の停止を命じることを認めた趣旨は,「利用者の利便その他の公共の利益を阻害している事実があると認める」事業の継続を認めることは,法の目的に反することになるためである。そして,本件サービス基準は,離島住民の日 命じることを認めた趣旨は,「利用者の利便その他の公共の利益を阻害している事実があると認める」事業の継続を認めることは,法の目的に反することになるためである。そして,本件サービス基準は,離島住民の日常生活又は社会生活を営むために不可欠である生活必需物資等の輸送を確保し,離島住民の民生安定を図る目的から設けられたものと解される。したがって,本件事業停止命令は,法の目的に沿うよう,具体的な上記の目的を達成しようとするものである。 イしかし,そもそも本件サービス基準は,これを満たした運送事業者にのみ当該航路の運航をさせることによって,離島住民等に自動車や他の生活必需物資の輸送を確保することを企図したものというべきであって,これに違反する運送事業者の事業の停止を命ずることが直接的に上記のような法の目的を達成することになるものではないし,申立人の事業を緊急に停止しなければならない事情も見当たらない。 また,本件事業停止命令によって事業の停止を命じられる期間は,5月25日からサービス基準を満たして運航を開始する日の前日までであるところ,上記認定のとおり,申立人は遅くとも6月30日までには本件サービス基準を満たすことができると認められ,これを満たさないで運航することになるのは約1か月余りという一時的なものであるから,相手方の主張するように,執行停止の名の下に当該事業を継続するという,法の目的を無にするに等しい状態を招来するおそれがあるとはいえない。 以上のように本件事業停止命令によって申立人が被る損害の回復が困難であることを考慮し,その損害の性質及び程度並びに同命令の内容及び性質を勘案すると,「重大な損害」に該当するというべきである。 2 「本案について理由がないとみえるとき」(行政事件訴訟法25条4項)に該当するか ,その損害の性質及び程度並びに同命令の内容及び性質を勘案すると,「重大な損害」に該当するというべきである。 2 「本案について理由がないとみえるとき」(行政事件訴訟法25条4項)に該当するか本件事業停止命令は,申立人が,海上運送法19条1項に基づく本件改善命令に違反しているとして,同法16条に基づいてされたものである。そこで,まず,実体的な要件としての本件改善命令違反の有無,本件事業停止命令が裁量違反により違法となるかについて,判断する。 (1) 本件改善命令違反について申立人は,九州運輸局長に対し,2月28日,佐渡汽船株式会社からフェリーを購入して,6月30日にこれを就航させる旨の報告がされたことは上記のとおりである。そして,上記報告内容による事業計画及び船舶運航計画が本件サービス基準を満たすものであることは明らかであるから,上記報告内容が実行されることが,本件改善命令にいう,「速やかに(中略)是正する」との部分に反するか否かが問題となる。 本件改善命令が申立人に対してされたのは2月9日であるところ,上記報告によれば,申立人が購入したフェリーを就航させて本件サービス基準を満たすのは6月30日とされているから,4か月と20日程度の後である。そして,申立人は,平成16年4月26日には,本件協定の相手方である九州商船から,「種子島区間」のフェリー運航を停止するとの通告を受けており(乙32),その後も同区間にジェットフォイルを引き続き就航させる予定であったことからすると,その運航停止後,速やかに本件サービス基準を満たすことができるよう準備をする期間はあったとも言え,こうした事情も考慮すると,6月末日になって本件サービス基準を充足することができるという状況は,速やかな是正とはいえないと考えられなくもない。 しかし,上記 う準備をする期間はあったとも言え,こうした事情も考慮すると,6月末日になって本件サービス基準を充足することができるという状況は,速やかな是正とはいえないと考えられなくもない。 しかし,上記のとおり,この間,申立人としても他にフェリー運航の協定を締結すべき運送業者に対して打診をしたり,購入すべきフェリーを探し(甲31),数度の交渉を経て平成16年12月9日には,佐渡汽船株式会社との間で同会社所有のカーフェリーを購入し,平成17年6月10日以降可及的速やかに引き渡す旨の覚書(甲33)を取り交わし,本件改善命令が出された前日である2月8日には上記覚書に従った売買契約を締結するに至っているところ(甲35),これらについては,その交渉等も含めるとある程度の時間を要する場合があることもあり,また,本件のように現に運航しているフェリーを購入するに当たっては,購入先において当該フェリーの運航を停止するついてもそれまでにある程度の期間を要するものであると考えられるし,これを新たな航路において運航に供するについても,当該フェリーを当該航路における港まで運送し,その停泊のための施設等の工事を要するなど,ある程度の期間を要することからすると,そうした一切の事情を考慮して判断すべき事柄である。したがって,申立人が本件改善命令に違反したことが明白であるとまではいえない。 (2) 本件事業停止命令の違法性また,仮に上記報告内容の実行が「速やか」な是正とはいえず,本件改善命令に違反するとしても,これを理由に事業の停止を命じるか否かは運輸局長の裁量に委ねられていると解されるところ,本件事業停止命令がされた時点においても,同命令が効力を発する約1か月後である6月末には申立人が本件サービス基準を充足する状況にあり,本件サービス基準が目的とする,離島住民の日常生活 解されるところ,本件事業停止命令がされた時点においても,同命令が効力を発する約1か月後である6月末には申立人が本件サービス基準を充足する状況にあり,本件サービス基準が目的とする,離島住民の日常生活又は社会生活を営むために不可欠である生活必需物資等の輸送を確保し,離島住民の民生安定を図ることについては,そもそも申立人の運送事業を停止すること自体によってその目的を直接達成することができるものではないところ,本件サービス基準が定められた趣旨からすると変則的であるとはいえ,コスモラインの運航するフェリーによってそうした輸送が確保されるし,こうした変則的な形態は約1か月という一時的なものであること,本件事業停止命令が運輸局長の裁量の範囲内といえるか否かは一義的に明らかとまではいえない。 以上によれば,本件事業停止命令に何らの瑕疵がないことが疎明されているとまではいえず,本件申立てが「本案について理由がないとみえるとき」(行政事件訴訟法25条4項)に当たるということはできない。 3 執行停止の期間以上によれば,行政事件訴訟法25条2項により,本件事業停止命令の効力を停止すべきところ,上記認定のとおり,申立人は遅くとも平成17年6月29日までには本件サービス基準を充足するがい然性が高いと認められるから,その効力を停止する期間は同日までとするのが相当である。 4 結論よって,本件申立ては,本件事業停止命令の効力を平成17年6月29日までの間停止を求める限度で理由があるから認容し,その余の申立ては理由がないから却下することとし,申立費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条ただし書を適用して,主文のとおり決定する。 平成17年5月12日福岡地方裁判所第1民事部 ,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条ただし書を適用して,主文のとおり決定する。 平成17年5月12日福岡地方裁判所第1民事部裁判長裁判官須田啓之裁判官秋信治也裁判官光本洋

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