令和4(ワ)19636 代表役員の地位確認請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年12月22日 東京地方裁判所
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判決文本文20,971 文字)

令和4年12月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第19636号代表役員の地位確認請求事件口頭弁論終結日令和4年12月22日判決 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求原告が被告の代表役員の地位にあることを確認する。 第2 事案の概要本件は、被告の責任役員である原告が、被告の代表役員(総長)の選出方法を定めた被告の神社本庁庁規(後記1イ参照)12条2項の規定(以下、現行の同項の規定を「本件条項」という。)について、役員会における審議を経た後に統理が指名することにより代表役員が定まる旨を規定していると解し、 仮にそうでなくても、同審議を経た後に統理が相当な理由ないし合理的な判断に基づいて指名することにより代表役員が定まる旨を規定していると解した上で、令和4年5月28日開催の被告の役員会において審議を経た後に統理から指名を受けたこと等により、原告が被告の代表役員に就任したと主張して、被告に対し、その代表役員の地位にあることの確認を求める事案である。 1 前提事実(顕著な事実並びに掲記の証拠〔書証は、特に断らない限り、枝番号のものを含む。以下同じ。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者ア被告は、昭和21年2月3日に全国神社の包括団体として設立された宗教団体が、昭和27年2月2日に宗教法人として設立された団体であり、 神社の興隆を図り、神宮及び神社を包括するために必要な業務を行うこと などを目的としている(甲1、弁論の全趣旨)。 イ原告は、旭川市内にあるE神社の宮司であり、令和元年6月から被告の責任役員である理事を務め、令和4 を包括するために必要な業務を行うこと などを目的としている(甲1、弁論の全趣旨)。 イ原告は、旭川市内にあるE神社の宮司であり、令和元年6月から被告の責任役員である理事を務め、令和4年5月28日の評議員会において被告の責任役員である理事に選出された者である(弁論の全趣旨)。 ⑵ 宗教法人法及び被告の庁規における責任役員等に関する定め ア宗教法人法(以下「法」という。)18条1項は、宗教法人には3人以上の責任役員を置き、そのうち1人を代表役員とすることを、同条2項は、代表役員について、規則(宗教法人の設立に当たり作成及び所轄庁の認証を受けることが義務付けられているものであり、宗教法人の目的、名称、事務所の所在地、代表役員、責任役員等の呼称、資格及び任免等に関する 事項等を記載したもの。法12条1項)に別段の定めがなければ責任役員の互選によって定めることを、法18条3項は、代表役員が宗教法人を代表し、その事務を総理することを、同条4項は、責任役員が規則で定めるところにより宗教法人の事務を決定することを、それぞれ規定している。 イ被告は、法12条1項所定の規則として神社本庁庁規(以下、改正の前 後を問わず「庁規」という。)を定め、所轄庁の認証を受けている。現行の庁規は、平成28年6月27日改正後のもの(甲1、乙1。以下「現行庁規」という。)であり、要旨、別紙記載のような定めがある(甲1、乙1)。 ⑶ 被告の庁規等の変遷 ア被告の前身である宗教団体が設立されるに際して、庁規は、昭和21年1月23日に制定された。昭和22年3月26日改正後(後記イの昭和27年1月29日の認証より前)の庁規(甲3。以下「認証前庁規」という。)は、役員として統理、事務総長、理事15人及び監事2人 21年1月23日に制定された。昭和22年3月26日改正後(後記イの昭和27年1月29日の認証より前)の庁規(甲3。以下「認証前庁規」という。)は、役員として統理、事務総長、理事15人及び監事2人を置くこと、統理は本庁を主管しこれを代表すること並びに事務総長は統理の 命を受け事務を総管し常務を行うことを規定した上で、事務総長につい ては、理事の中から統理が指名することを規定していた(認証前庁規7条、8条、10条、14条。甲3)。 イ庁規は、被告が昭和27年2月2日に宗教法人として設立されたのに先立ち、同年1月29日、当時の文部大臣の認証を得た(甲4、弁論の全趣旨。以下、同日に認証を得た庁規を「原始庁規」という。)。原始庁規 は、責任役員として統理1人及び常務理事4人(うち1人を事務総長とする。)を置き、役員会を組織すること、統理が被告の代表役員として被告を総轄すること、事務総長は統理の命を受けて常務を総管すること並びに統理、常務理事、理事10人及び監事2人は評議員会で選任することを規定した上で、事務総長については、役員会の議を経て常務理事の うちから統理が指名することを規定していた(原始庁規5条~12条。 甲4)。 ウ 「宗教機能に関する規程」(甲8。以下「宗教機能規程」という。)は、昭和27年1月29日、統理によって、宗教上の機能に関する基本を定めるものとして制定された。宗教機能規程は、役員として統理1人、常 務理事4人(うち1人を事務総長とする。)及び理事10人を置くこと、統理は団体を総轄しこれを代表すること、事務総長は統理の命を受け庁務を総管すること並びに役員は庁規に規定する評議員会において選任することを規定した上で、事務総長については、常務理事のうちから統理が指名することを規定 これを代表すること、事務総長は統理の命を受け庁務を総管すること並びに役員は庁規に規定する評議員会において選任することを規定した上で、事務総長については、常務理事のうちから統理が指名することを規定していた(宗教機能規程4条、5条、7条)。なお、 宗教機能規程は、昭和55年7月1日、神社本庁憲章(甲6。以下「憲章」という。)の施行により、廃止された(憲章附則2条)(甲6、8)。 エ庁規は、制定後、繰り返し改正された。 昭和50年6月30日改正後の庁規(甲9の1。以下「昭和50年庁規」という。)は、責任役員として統理1人及び理事17人(うち1人を事務 総長とする。)を置き、役員会を組織すること、統理は被告の代表役員と して被告を総括すること、事務総長は統理の命を受けて常務を総管すること並びに統理、理事及び監事は評議員会で選任することを規定した上で、事務総長については、役員会の議を経て、理事のうちから統理が指名することを規定していた(昭和50年庁規5条~8条、10条、12条。甲9)。 オ昭和40年代~50年代に社会情勢が不安定化し、被告が外部勢力と対峙するおそれが生じたとして、統理が外部勢力との対抗関係の矢面に立つ事態が生じないようにする目的で、庁規の改正が検討され、昭和51年6月14日に庁規の改正が行われた(甲10の1。以下、この改正を「昭和51年改正」という。)。昭和51年改正後の庁規(以下「昭和5 1年庁規」という。)は、責任役員として理事17人(うち1人を総長とする。)を置き、役員会を組織すること、総長が被告の代表役員として被告を代表し、その事務を総管すること並びに理事及び監事は評議員会で選任することを規定した上で、総長については、役員会の議を経て、理事のうちから統理が 員会を組織すること、総長が被告の代表役員として被告を代表し、その事務を総管すること並びに理事及び監事は評議員会で選任することを規定した上で、総長については、役員会の議を経て、理事のうちから統理が指名することを規定していた(昭和51年庁規5条 ~8条、10条、12条)。また、昭和51年庁規は、統理について、その全ての行為が総長の補佐を得て行われるものとし、その責任を役員会が負う旨の規定(40条5項)を新設した(甲10、弁論の全趣旨)。 カ被告の評議員会は、昭和55年5月21日、議決により、精神的統合の紐帯としての基本的規範を確立整備するため、その大綱を成文化して、 憲章(甲6)を制定した。憲章は、神社本庁に統理以下の役員、その他の機関を置くこと、統理は神社本庁を総理し、これを代表すること及び役員その他の機関については規程で定めることを規定している(憲章5条。甲6)。 ⑷ 被告における令和4年5月、6月及び10月の評議員会及び役員会 ア被告は、令和4年5月28日、評議員会を開催し、A(以下「A統理」 という。)が被告の統理に選任され、原告及びB(以下「B理事」という。)が被告の責任役員である理事に選任された(弁論の全趣旨)。 イ被告は、令和4年5月28日、臨時役員会(15名の理事が出席)を開催した。当該臨時役員会においては、同年6月で当時の総長であったB理事が任期満了になることから、次期総長に関して審議が行われ、A統 理が原告を被告の次期総長としたい旨の発言をしたが、B理事が総長を続投すべきである旨の意見も出され、また、本件条項の解釈をめぐって紛糾し、次期総長を確定させるには至らないまま閉会した(甲12、乙2、弁論の全趣旨)。 ウ A統理は、令和4年5月30日付け新 続投すべきである旨の意見も出され、また、本件条項の解釈をめぐって紛糾し、次期総長を確定させるには至らないまま閉会した(甲12、乙2、弁論の全趣旨)。 ウ A統理は、令和4年5月30日付け新総長指名書を作成して、本件条項 の解釈につき、本件条項の「役員会の議を経て」とは、役員会の相談・協議を経れば足りるとして、統理として原告を新総長に指名した旨を記載し、同月31日、これを被告の事務局に交付した(甲2、弁論の全趣旨)。 エ被告は、令和4年6月23日、同年5月28日の臨時役員会に引き続き、 臨時役員会(15名の理事が出席)を開催した。当該臨時役員会においては、本件条項の解釈について議論がされた上で、総長の選考を議題とするか否かについて評決が行われたところ、賛成9名、反対6名の賛成多数であった。続いて、原告又は同年6月23日時点で被告の総長であったB理事を次期総長とすることについて審議が行われ、原告又はB理事のいずれ を次期総長とするかにつき評決をすることについて賛成多数であったため、B理事を総長に選任することについて議決を行ったところ、賛成の責任役員が多数であった。その後、上記議決のとおりB理事を総長に指名するようA統理に対して要請する旨の議決が行われ、9名の責任役員が賛成した。 もっとも、A統理は、上記議決を踏まえても、原告を被告の総長に指名す る旨を改めて明言した(甲14、弁論の全趣旨)。 オ被告の総務部長は、令和4年7月1日、神社庁長に対し、同年6月23日開催の被告の臨時役員会において決定したこととして、①賛成多数によりB理事を総長に指名することと議決され、A統理にB理事を総長に指名していただくこととなり、それまでの間はB理事がなお総長の地位にあること、②原告が総長の地位にないこ したこととして、①賛成多数によりB理事を総長に指名することと議決され、A統理にB理事を総長に指名していただくこととなり、それまでの間はB理事がなお総長の地位にあること、②原告が総長の地位にないことを確認する旨の議決につい て賛成多数であったことを連絡した(甲15)。 カ被告は、令和4年10月13日、評議員会を開催した。A統理は、同評議員会において、被告のa職舎の売却に関して行われた被告の職員に対する懲戒解雇処分を違法・無効と判断した東京高等裁判所の確定判決(東京高等裁判所令和3年(ネ)第1585号。以下「本件高裁判決」 という。)の中で、B理事が総長であった期間に被告において情報操作による恣意的な庁務運営や濫用的な懲戒権の行使がされたことが指摘されており、被告の歴史に大きな汚点を残したため、これまでの庁務運営の在り方を抜本的に見直し、透明性と公平性が確保された正常な庁務運営を取り戻すことが急務であると考えているところ、B理事からは反省の 弁も再発防止策も示されていないことから、令和4年6月23日開催の役員会においてB理事を総長とすべきとする議決が行われたことを踏まえても、B理事を次期総長に指名することはできず、透明性及び公平性の確保された庁務運営を期待できる人物として原告を次期総長に指名することを述べた(甲17、27)。 ⑸ 被告の代表役員の地位に関する仮処分申立事件及び本件訴えの提起ア原告は、令和4年6月6日、東京法務局渋谷出張所に対し、原告が被告の代表役員に就任した旨の変更登記申請を行った。これを受けて被告は、旭川地方裁判所において、原告を債務者として、原告が被告の代表役員の地位にないことを仮に定める仮処分命令の申立てを行い、同裁判所は、 同年7月8日、これを認める決定を た。これを受けて被告は、旭川地方裁判所において、原告を債務者として、原告が被告の代表役員の地位にないことを仮に定める仮処分命令の申立てを行い、同裁判所は、 同年7月8日、これを認める決定を行った(旭川地方裁判所令和4年 (ヨ)第5号地位保全仮処分申立事件。甲19の1)。 イ原告は、令和4年7月22日頃、前記アの決定に対して保全異議の申立てを行い、旭川地方裁判所は、同年10月5日、これに対して、前記アの決定を認可する決定を行った(旭川地方裁判所令和4年(モ)第16号保全異議申立事件。甲19の2、22)。 ウ原告は、令和4年10月21日、前記イの決定に対して保全抗告の申立てを行った(弁論の全趣旨)。 エ原告は、前記イの決定に先立つ令和4年8月5日、本件訴えを東京地方裁判所に提起した(顕著な事実)。 ⑹ 過去の被告の総長選任の経緯 ア被告は、令和元年5月25日、総長等選考のための臨時役員会を開催し、A統理及び被告の責任役員である理事17名がこれに出席した。当該理事らは、誰が次期総長を務めるかについてそれぞれ発言した。これを受けて、A統理が、B理事が総長を務めることについて異議がない者に対し挙手をするよう求めたところ、10名の理事が挙手した。その後、総 務部長は、A統理にB理事を総長に指名してもらうことになる旨を発言し、役員会の議決として、B理事を総長と決定することに異議がないことを確認した(乙4の1)。 イ被告は、平成28年5月28日、総長等選考のための臨時役員会を開催し、C統理(以下「C統理」という。)及び被告の責任役員である理事1 5名がこれに出席した。C統理が、役員会に対し、本件条項により統理が総長を指名することになっているため、そのようにし を開催し、C統理(以下「C統理」という。)及び被告の責任役員である理事1 5名がこれに出席した。C統理が、役員会に対し、本件条項により統理が総長を指名することになっているため、そのようにして良いか諮ったところ、異議がなかった。これを受けて、C統理は、役員会に対し、B理事を総長に指名したいと思う旨を述べ、異議がないか諮ったところ、異議はなかった(乙4の2)。 ウ被告は、平成25年5月25日、総長等選考のための臨時役員会を開催 し、C統理及び被告の責任役員である理事14名がこれに出席した。C統理が、役員会に対し、本件条項に規定された総長の選任についてどのようにするか諮ったところ、理事から統理に一任する旨の発言があり、他の理事からも異議がなかった。これを受けて、C統理は、役員会に対し、B理事を総長に指名したい旨を述べて、異議がないか諮ったところ、 異議がなかった(乙4の3)。 エ被告は、平成22年5月29日、総長等選考のための臨時役員会を開催し、D統理(以下「D統理」という。)及び被告の責任役員である理事15名がこれに出席した。D統理が、役員会に対し、本件条項に規定された総長の選任についてどのようにするか諮ったところ、理事から統理に 一任する旨の発言があり、他の理事からも異議がなかった。これを受けて、D統理は、役員会に対し、B理事を総長に指名したい旨を述べて、異議がないか諮ったところ、異議がなかった(乙4の4)。 ⑺ 被告の規程被告の各種規程(現行庁規106条参照)には、要旨次のア~カのような 定め(以下、併せて「本件各種規程」という。)がある(乙3)。 ア財務規程17条(乙3の1)歳入歳出は、全て予算に編入しなければならない。ただし、特別会計 ア~カのような 定め(以下、併せて「本件各種規程」という。)がある(乙3)。 ア財務規程17条(乙3の1)歳入歳出は、全て予算に編入しなければならない。ただし、特別会計のうち予算の編成に適しないものは、評議員会の議を経て、その編成を省くことができる。 イ施設維持対策資金に関する規程5条1項(乙3の2)この資金は、1条の対策実施に必要な場合、評議員会の議決を経て、その一部を費消することができる。ただし、やむを得ない事由があり、緊急を要する場合には、年度内1億円を上限として、役員会の議を経て、費消することができる。 ウ神社本庁災害等対策資金貸付規程5条2項(乙3の3) 前項の貸付総額は、3億円以内とする。ただし、特別の事情により神社本庁審査会が必要と認めた場合は、役員会の議を経て貸付限度額及び貸付総額の限度を超えることができる。 エ神社本庁災害等対策資金に関する規程2条4項(乙3の4)この資金の総額が10億円を超え、かつ、資金の運営に支障がないと認 められる場合には、1項に定める繰入金2億円の一部又は全部を、役員会の議を経て、財政特別資金特別会計に繰り戻すものとする。 オ神社本庁災害等対策資金の緊急支出に関する規程2条1項(乙3の5)この資金は、1条に定める緊急対策及び支援活動に経費を必要とする場合、評議員会の議決を経て、その一部を神社本庁一般会計(災害対策費) へ繰り入れて費消することができる。ただし、やむを得ない事由があり、緊急を要する場合には、年度内3000万円を上限として、役員会の議を経て、当該対策のために費消することができる。 カ懲戒規程10条2項(乙3の7) し、やむを得ない事由があり、緊急を要する場合には、年度内3000万円を上限として、役員会の議を経て、当該対策のために費消することができる。 カ懲戒規程10条2項(乙3の7)前項により懲戒の処分解除を求めるときは、神職を退いた名誉宮司並び に神職にあっては当該神社庁長より、神職を退いた長老にあっては総長よりそれぞれ具申し、懲戒委員会の議を経て統理の承認を得なければならない。 2 争点及びこれに関する当事者の主張本件の争点は、本件条項の解釈であり、本件条項の「役員会の議を経て」と いう文言の意義について、単に「役員会の議論を経て」という意味にすぎず、同議論の内容が統理の指名を法的に拘束しない、又は統理の指名が相当な理由ないし合理的な判断によるものである限り法的に拘束しないと解すべきなのか、それとも、「役員会の議決を経て(同議決に基づいて)」という意味であり、同議決の内容が統理の指名を拘束すると解すべきなのかという点が主に争われて いる。これに関する当事者の主張は次のとおりである。 (原告の主張)⑴ 本件条項は、役員会における総長資格を有する者との話し合いの後に、統理が次期総長を誰にするか決める(同話し合いの内容が統理の指名を法的に拘束しない)旨を定めたものであると解される。その根拠は、次のア~エのとおりである。 ア本件条項は、役員会ではなく、統理が総長を「指名」する旨を規定するところ、「指名」とは、文理上、ある職に就くものを選ぶという意味である。日本国憲法6条1項及び同条2項においても、「指名」は上記意味で用いられている。 イ本件条項について役員会が多数決で総長を選ぶ旨を規定していると解す ると、代表役員について「責任役員の互選」 法6条1項及び同条2項においても、「指名」は上記意味で用いられている。 イ本件条項について役員会が多数決で総長を選ぶ旨を規定していると解す ると、代表役員について「責任役員の互選」で定める旨を規定する法18条2項と同旨となり、本件条項が同項の例外規定として定められたことと整合しない。 ウ本件条項の「議を経て」は、「議」が相談や議論を意味する言葉であることや、庁規を認証した文部科学大臣も公式見解においてその意味を 「審議を経て」と解していることからすれば、「過半数の決議を経て」又は「議決に基づき」という意味とは解されない。 また、副総長の選任については、現行庁規12条3項が「総長の意見を聞いて、理事のうちから統理が指名する」と規定するが、これは、総長が自然人だからであり、本件条項においては、意見を聞く対象が役員会 という合議体であるため「役員会の議を経て」という別の文言が用いられているにすぎない。 エ包括宗教法人である被告の代表役員たる総長の指名は、宗教団体としての在り方そのものに大きな影響を与える宗教上の意味を伴う極めて重要な行為である。そのため、総長の指名は、統理が、統理の宗教上の地位 を背景に、総長となる資格を持った次期役員を集めて自らが議長を務め る臨時役員会を開催し、そこで総長の指名を一任されて、指名する慣行であった。このように、被告においては、設立以降、統理がその判断に基づき自由に総長を決めることは当然のこととされていた。 ⑵ 仮に、役員会において次期総長に係る議決がされた場合には統理の指名においても同議決を尊重すべきであるとの考え方を前提としても、本件条項が 法18条2項の「互選」を排除し、被告を総理・代表する統理に総長の指名権を与えた趣旨( 係る議決がされた場合には統理の指名においても同議決を尊重すべきであるとの考え方を前提としても、本件条項が 法18条2項の「互選」を排除し、被告を総理・代表する統理に総長の指名権を与えた趣旨(前記⑴イ参照)に照らせば、本件条項は、統理が相当な理由ないし合理的な判断に基づいて同議決と異なる指名を行った場合には、同指名が有効となる旨を定めたものであると解される。 そして、A統理は、①本件高裁判決によれば、B理事が総長を務めた12 年間、人事権を背景として情報操作による恣意的な庁務運営が行われたこと、②本件高裁判決においてB理事の陳述が信用できないとされており、B理事が裁判所に対して不誠実な姿勢をとったといえること、③令和4年5月28日及び同年6月23日開催の役員会等においてB理事を総長に推挙する役員は、本件高裁判決を真摯に受け止めた上での発言や、恣意的な庁務運営及び 違法な懲戒処分の再発を防止する策を講ずるべきであるとの発言をしていなかったこと、④同日開催の役員会以降も、被告の機関誌を利用した原告に対する一方的な誹謗中傷が行われたことを根拠として、B理事の下で行われてきた庁務運営の在り方を抜本的に見直す必要があると考え、役員会の意見(議決)がB理事を次期総長に推すものであったことも踏まえた上で、遅く とも同年10月13日の評議員会において、B理事ではなく原告を次期総長として指名した。したがって、同指名は有効である。 ⑶ 被告は、現行庁規40条5項との関係から、本件条項の「役員会の議を経て」という文言について、「役員会が決めたところに基づいて」という意味であると主張する。 しかし、現行庁規40条5項は、昭和40年代~50年代に社会情勢が不 安定化し、被告が外部勢力と対峙するおそれが生じたため、 決めたところに基づいて」という意味であると主張する。 しかし、現行庁規40条5項は、昭和40年代~50年代に社会情勢が不 安定化し、被告が外部勢力と対峙するおそれが生じたため、統理が代表役員として法廷に出頭したり、個人責任を負わされたりすることを避けるために、昭和51年庁規において、被告の代表役員を統理から総長に変更し、世俗的事務(契約事務や財産事務)について、世俗事務担当者である総長が被告の代表者として直接統理を補佐する役割を担うようにした際に、上記変更と一 体として設けられた規定である。一方、統理が総長を指名する旨を規定する本件条項は、原始庁規以降、概ね変更されていない。 したがって、現行庁規40条5項は、統理の世俗的事務への直接的関与をなくすことによって宗教団体としての被告の最高機関たる統理の権威と地位を守ることを意図したものであって、統理の地位を総長、責任役員等との関 係で低くすることは意図されていないから、統理の総長指名権に影響を与えるものではない。 ⑷ 被告は、庁規その他の関係諸規程において「議を経て」と定められている事項について、実際に議決がされていたことを主張の根拠とするが、これらは、当該事項についても議決がされたことがあったことを示すにすぎず、本 件条項について、議決が必要であるとの解釈や、当該議決の内容が決定権者による決定に優先するとの解釈を裏付けるものではない。 (被告の主張)⑴ 本件条項は、総長の選任について、役員会の議決及び同議決内容に沿った統理の指名が行われることが必要である旨を定めたものであると解される。 その根拠は、次のア~オのとおりである。 ア被告が定めた庁規その他の関係諸規程のうち、本件各種規程においては、「議を経て」という同一 ことが必要である旨を定めたものであると解される。 その根拠は、次のア~オのとおりである。 ア被告が定めた庁規その他の関係諸規程のうち、本件各種規程においては、「議を経て」という同一の文言が用いられているところ、それらは、単に議論をすればよいという意味ではなく、議決を経ることを必要とする趣旨と解するほかなく、実際に、それらに関し議決が行われている。し たがって、本件条項の「議を経て」についても同様の趣旨と解される。 イ令和元年の被告の総長選任については、役員会において議決が行われ、その内容に基づいて統理による総長の指名が行われた。また、平成22年、平成25年及び平成28年の被告の総長選任についても、役員会で統理の指名を求めることに異議がないことを確認した上で、統理が総長を指名し、責任役員においてこれに異議のないことを確認していた。こ のように、被告の過去における総長選任についても、役員会において議決が行われ、その内容に基づいて総長が選任されていたものである。 ウ宗教法人たる被告においては、その事務を役員会の過半数により決定することとされ(現行庁規10条1項、法19条)、代表役員はその決定に基づいて事務を執行するのが役割であるから、そのようなガバナンス構 造からして、役員会の過半数の意思に反する者が総長に就任しても事務が成り立たない以上、そのような事態が生じ得る選任方法とすることは考えられない。 エ都市計画法18条1項、私立学校法14条、皇室典範10条、健康保険法160条11項、建築基準法42条1項等の我が国の法令において、 「議を経て」という文言は、議決機関の議決が必要であり、かつ、議決の内容に拘束されるという意味で用いられている。被告の庁規その他の関係諸規 項、建築基準法42条1項等の我が国の法令において、 「議を経て」という文言は、議決機関の議決が必要であり、かつ、議決の内容に拘束されるという意味で用いられている。被告の庁規その他の関係諸規程は、その内容も我が国の法令に倣って定められているから、本件条項の「議を経て」という文言も、同様に解釈されるべきである。 オ統理が被告の象徴的地位として教団の最高位にあるのに対し、被告の代 表者として事務に関する一切の責任を執るのは総長であり、現行庁規40条5項において役員会が統理の全ての行為の責任を負う旨を規定していることからすれば、統理が役員会の判断や総長の補佐に基づくことなく、被告の事務等に関して何らかの具体的な権限行使を独自に行うことは想定されていない。実際、庁規において統理に一定の権限が付与され ている事務に関しても、事務決裁に関する内規により、総長及び副総長 等の決裁が必要とされているし、統理が総長その他の議決機関の意思に反して決裁を拒むことは想定されていない。 ⑵ 原告の本件条項の解釈は、被告の歴史において主張されたことのない新規かつ無根拠なものであり、重要な事実を考慮することなく、誤った前提事実に基づいて主張されたものである。 また、原告は、本件条項について、予備的に、統理が相当な理由ないし合理的な判断に基づいて同議決と異なる指名を行った場合には同指名が有効となる旨を定めたものであるとも主張するが、上記の理由に加え、この解釈では、誰がいかなる基準に基づいて上記相当性又は合理性を判断するのかが不明であり、総長の選任の有効性について司法判断によっても結論が出ないこ とにもなりかねないから、そのような解釈は採用し得ない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(本件条項の解釈)について⑴ であり、総長の選任の有効性について司法判断によっても結論が出ないこ とにもなりかねないから、そのような解釈は採用し得ない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(本件条項の解釈)について⑴ 本件条項の解釈ア前提事実⑵イ、⑺によれば、本件条項は、総長の選任について「役員会 の議を経て、理事のうちから統理が指名する」と規定するところ、本件条項の「議を経て」という文言は、被告の庁規及びこれに基づいて定められる規程である本件各種規程においても用いられている。 まず、現行庁規103条をみると、本文において、現行庁規102条所定の事業のために置かれた職員を当該事業の管理及び運営に当たらせ るものと定めつつ、ただし書において、重要事項については「役員会の議を経るものとする」と規定している(前提事実⑵イ)。このような現行庁規103条の本文とただし書の関係に加え、現行庁規105条が上記事業の管理及び運営について必要な事項を役員会において定める旨規定していること(前提事実⑵イ)からすれば、現行庁規103条ただし書 は、上記事業のうち重要事項については、上記職員の管理及び運営に任 せるのではなく、かつ、単に役員会において議論をすれば足りるのではなく、役員会において決定することを予定していると解するのが自然かつ合理的である。そして、役員会が複数の自然人から成る会議体である(現行庁規6条、前提事実⑵イ)以上、決定のための手続として議決を行うことが予定されていると解されるから、以上を踏まえれば、現行庁 規103条所定の「役員会の議を経る」とは、役員会の議決により決定することを意味すると解するのが相当であることは明らかである(このことは、上記事業に係る重要事項について役員会の議決が行われた事実(乙5)とも整合してい 員会の議を経る」とは、役員会の議決により決定することを意味すると解するのが相当であることは明らかである(このことは、上記事業に係る重要事項について役員会の議決が行われた事実(乙5)とも整合している。)。そこで、現行庁規においては、103条のみならず本件条項(12条2項)についても、「役員会の議を経」ると は、同じく役員会の議決により決定することを意味すると解するのが自然かつ整合的である。 次に、本件各種規程を見ると、前提事実⑺ア、イ、エ、オ記載の各規程においては、その文言として、「評議員会の議決を経て」(同イ〔本文〕、オ〔本文〕)のほかに、「評議員会の議を経て」(同ア)又は「役員会の議 を経て」(同イ〔ただし書〕、エ、オ〔ただし書〕)、各種行為をすることが定められている。上記各規程において、評議員会又は役員会という会議体のみが各規程に係る事項の決定過程に関与することとされ、それ以外の者がこれに関与することは予定されていないから、当該会議体が各規程に係る事項を決定することが予定されていると解するほかなく、ま た、その主体が会議体である以上、上記各文言の「議を経て」(前提事実⑺ア、イ〔ただし書〕、エ、オ〔ただし書〕)とは、「議決を経て」(同イ〔本文〕、オ〔本文〕)と同様、決定のための手続として議決を行うことが予定されていると解される。さらに、前提事実⑺カ記載の規程においても、「懲戒委員会の議を経て統理の承認を得なければならない」と規定 されているから、統理の承認の対象とされる事項を懲戒委員会が決定す ることが予定されていると解するほかなく、上記文言の「議を経て」については、懲戒委員会が会議体である以上、決定のための手続として議決を行うことが予定されていることは同様である(これらの解釈は、前提事実⑺ が予定されていると解するほかなく、上記文言の「議を経て」については、懲戒委員会が会議体である以上、決定のための手続として議決を行うことが予定されていることは同様である(これらの解釈は、前提事実⑺ア、イ〔ただし書〕、ウ及びオ〔ただし書〕記載の各規程に係る事項について、評議員会又は役員会の議決が行われた事実が認められる こと(乙6~9)とも整合している。)。加えて、前提事実⑵イ、⑺アによれば、特別会計のうち予算の編成に適しないものについて、現行庁規51条1項は、「評議員会の議決を経て」その編成を省くことができると規定し、(編成を省く旨の)議決が必要であることを定めている一方、財務規程17条は、「評議員会の議を経て」その編成を省くことができると 規定しており、その文言は異なるが、財務規程を含む規程が庁規の施行に関し必要な事項を定めたものであり(現行庁規106条、前提事実⑵イ)、庁規の下位規範であることからすれば、上位規範である現行庁規51条1項と同様に議決が必要であると解されるから、財務規程17条所定の「議を経て」とは、(編成を省く旨の)議決が必要であるとの趣旨で あると解される。そして、本件各種規程と本件条項を含む現行庁規とは整合的に解釈するのが相当であるから、本件各種規程と同様に、本件条項における「役員会の議を経」るとは、役員会の議決により決定することを意味すると解するのが合理的である。 以上によれば、本件条項を含め、被告の庁規及びこれに基づいて定め られる規程等における「議を経て」という文言は、「議決を経て」という文言と同趣旨であり、議決により決定するという意味であると解するのが相当である。 イ続いて、現行庁規における各機関の権限分配の観点から検討する。 前提事実⑵イによれば、本件条項が含まれる現行庁 文言と同趣旨であり、議決により決定するという意味であると解するのが相当である。 イ続いて、現行庁規における各機関の権限分配の観点から検討する。 前提事実⑵イによれば、本件条項が含まれる現行庁規は、①評議員 会が法18条1項所定の責任役員である理事を選任し、理事のうち1 人が同項所定の代表役員である総長を務めること(6条、7条、12条1項)、②責任役員である理事が役員会を組織して、被告の事務を決定すること(10条1項)、③総長が被告の事務を総管すること(8条1項)を定める一方、④統理については、評議員会が選任すること(40条2項)、被告及び神社庁並び神社の職員を統督すること(同条 3項)を定めた上で、⑤統理の全ての行為が総長の補佐を得て行われるものとし、役員会がその責任を負うこと(同条5項)を規定している。 このような現行庁規の責任役員たる理事、代表役員たる総長及び統理の選任、権限等に関する規定を整合的に解するならば、現行庁規は、 法18条1項所定の責任役員及び代表役員である理事及び総長と統理とを、いずれも評議員会において選任する異なる権限分野の機関として設置していると解される。その上で、現行庁規は、機関の権限と責任の分配の在り方としては、10条1項において、責任役員たる理事が役員会を組織して被告の事務を決定するものとする一方、40条5 項において、統理については、その全ての行為が役員会の一員である総長の補佐を要するものとした上で、統理の全ての行為に係る責任は役員会が負うものとしているのであるから、被告の宗教法人としての事務の遂行及びそのための機関の選任等に関する統理の行為については、役員会ないしその一員である総長の判断に基づくことを前提とし ていると解することが合理的である。このこ 被告の宗教法人としての事務の遂行及びそのための機関の選任等に関する統理の行為については、役員会ないしその一員である総長の判断に基づくことを前提とし ていると解することが合理的である。このことは、統理及び総長の権限に属する業務に関する事務処理規定である「本庁事務決裁に関する内規」において、統理の決裁が、しかるべき議決機関若しくは委員会の決定又は総長の助言に基づいて行われるものと規定されていること(9条1項)が認められ(乙21)、統理の行為の一つである決裁が、 議決機関若しくは委員会の決定又は総長の助言に基づくものとされて いることとも整合的である。 以上のような現行庁規の各規定の内容及びその解釈からすれば、本件条項については、統理の「指名」という行為についても、現行庁規40条5項に基づき役員会が責任を負うことになる以上、その前提として、当該行為が実質的には役員会の判断で行われることを予定していると解 される。 この点、原告は、現行庁規40条5項について、昭和51年改正の際に、統理が代表役員として法廷に出廷するなどの事態を避けるために定められたものにすぎず、統理の地位を低下させることを意図するものではない一方、昭和51年改正の前後を通じて本件条項が概ね変更されて いないことからすれば、同項を根拠として本件条項を解釈することはできない旨を主張する。 しかし、原告の上記主張は、昭和51年改正前の本件条項に係る解釈について、原告の主張を採用できることが前提となるところ、前記アで説示したところを踏まえれば、上記解釈について原告の主張を直ちに採 用することはできない(なお、前提事実⑶ア、イのとおり、原始庁規において、本件条項に総長(昭和51年改正前の名称は事務総長)の選任につ ころを踏まえれば、上記解釈について原告の主張を直ちに採 用することはできない(なお、前提事実⑶ア、イのとおり、原始庁規において、本件条項に総長(昭和51年改正前の名称は事務総長)の選任について「役員会の議を経」ることが必要である旨が加わったことからすれば、昭和51年改正前から、総長の選任については役員会の決議によって判断することが前提であったとも解されるところである。)。 また、いずれにせよ、前提事実⑶ウ~カのとおり、昭和51年改正により、統理が宗教的地位を維持しつつも被告の法18条1項所定の責任役員及び代表役員ではなくなり、宗教法人としての被告に係る法的権限を失い、一方で現行庁規40条5項の規定が新設されたことからすれば、少なくとも現行庁規における本件条項に係る解釈においては、 現行庁規40条5項を踏まえることが相当である。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ウ以上によれば、本件条項は、総長の選任に関し、統理による総長の指名という行為が必要であることを定めつつ、統理による当該指名について責任を負う役員会が総長を実質的に決定することを予定しており、その決定のための手続として、会議体である役員会の議決を経ることを予定してい る(すなわち、役員会の議決に基づいて統理が指名することが総長選任の効力発生要件となる旨を定めている)と解するのが相当である。 ⑵ 原告の主張についてア原告は、「指名」、「議」及び「議を経て」の各用語の意味等が本件条項の解釈に係る原告の主張を裏付けると主張するが、上記各用語の意味は原 告が主張するような意味と一義的に解されるものではない。むしろ、「議を経て」という用語については、法令等において、議決を行うことを意味することが少なくなく、さらに るが、上記各用語の意味は原 告が主張するような意味と一義的に解されるものではない。むしろ、「議を経て」という用語については、法令等において、議決を行うことを意味することが少なくなく、さらには当該議決がこれに続く執行機関の行為を拘束する意味で用いられる場合もある(乙13~18参照)のであるから、上記用語の意味等から原告が主張するような本件条項の解釈が導かれるも のとはいえない。 イまた、原告は、本件条項が、被告の代表役員の選任について、責任役員から成る会議体である役員会の議決に加え、統理による指名という行為を要求していることから、上記指名について役員会の議決に沿うものでなければならないと解するならば、本件条項は法18条2項所定の「責任役員 の互選」と同旨を定めていることとなり、本件条項が法18条2項の例外規定として定められたことと整合しなくなるとも主張する。しかし、代表役員の選任について規則に法18条2項と同旨の内容を確認的に定めることもあり得るところであり、本件条項についても、代表役員である総長の選任について法18条2項に定めのない「統理が指名すること」が必要で あることを規定しつつ、総長の実質的な決定については同項と同旨を定め たものとみることができるから、本件条項が、役員会の議決により総長を実質的に決定することを排除するものであると解すべき根拠はなく、原告の上記主張は採用することができない。 ウさらに、原告は、本件条項の解釈に係る原告の主張の裏付けとして、被告においては、統理が、その宗教上の地位を背景に、臨時役員会において 役員から総長の指名を一任されて、総長を指名することが慣行であったことを挙げる。しかし、前提事実⑹によれば、平成22年から令和元年までの被告の総長選任の経緯は 地位を背景に、臨時役員会において 役員から総長の指名を一任されて、総長を指名することが慣行であったことを挙げる。しかし、前提事実⑹によれば、平成22年から令和元年までの被告の総長選任の経緯は、役員会が統理に総長の指名を一任するとの判断を議決により行ったために、統理が総長を指名したものとも評価できるのであって、必ずしも本件条項の解釈に係る原告の主張を裏付けるものと はいえない。 エ加えて、原告は、予備的主張として、本件条項について、統理が相当な理由ないし合理的な判断に基づいて、役員会における総長の選任に係る決議と異なる指名を行った場合には、同指名が有効となる旨を定めたものであるとも主張するが、原告が上記主張の前提とする本件条項と法18条2 項との関係に係る主張を採用できないことは前記イのとおりである上、原告が主張するような本件条項の解釈は、本件条項の文言から導くことが困難であるといわざるを得ない。 また、被告の庁規等において統理による総長の指名が相当な理由ないし合理的な判断に基づくか否かを区別する基準は規定されておらず、総 長の人選に係る判断内容の相当性・合理性の有無の判定には実際上困難を来す場合が少なくないことは容易に想定されるところである。仮に、「相当な理由ないし合理的な判断」に基づくか否かというような不明確な基準により総長選任の効力が左右されるとすれば、被告の組織運営に無用な混乱を招きかねないことは明らかであるから、本件条項が、その ようなことを想定しているものとは解し難い。 さらに、現行庁規における各機関の権限分配の観点から検討しても、前記⑴イ、のとおり、現行庁規は、機関の権限と責任の分配の在り方として、被告の宗教法人としての事務の遂行及びそのための機関の選任等に関する統 行庁規における各機関の権限分配の観点から検討しても、前記⑴イ、のとおり、現行庁規は、機関の権限と責任の分配の在り方として、被告の宗教法人としての事務の遂行及びそのための機関の選任等に関する統理の行為については、役員会ないしその一員である総長の判断に基づくことを前提としていると解されることからすれば、庁規 等において客観的かつ具体的な条項として上記判断に基づくべきことが否定されていない総長の選任に関する事項について、役員会の判断に基づかずに統理の行為が行われることが予定されているとは解されない。 加えて、被告の庁規及びこれに基づいて定められる規程の文言との整合性の観点から見ても、庁規に含まれる本件条項について原告が主張す るような解釈を行うことができないことは、前記⑴アで説示したとおりである。 以上によれば、本件条項の解釈に係る原告の上記予備的主張も採用することはできない。 ⑶ 本件条項の解釈の結論とそれによる本件の帰すう 以上のとおり、本件条項は、総長の選任に関し、役員会が議決により次期総長を決定し、それに基づいて統理が当該次期総長を指名することが必要である旨を定めていると解するのが相当であり、これに反する原告の主張は採用することができない。 そうすると、A統理が原告を次期総長に指名したとしても、役員会が議決 により原告を次期総長に決定していない以上(前提事実⑷イ~エ、カ)、原告は、総長には就任しておらず、被告の代表役員の地位にはないというべきである(現行庁規7条)。 2 結論よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のと おり判決する。 東京地方裁判所民事第8部 裁判長裁判官笹本哲朗 裁 理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第8部 裁判長裁判官笹本哲朗 裁判官内林尚久 裁判官川村久美子 理由 (別紙)現行庁規の定め6条1項本庁に次の責任役員(以下「役員」と称する。)を置き、そのうち1人を代表役員とする。ただし、代表役員以外の役員が、代表役員代務者となったときは、役員の定数は16人とする。理事17人2項理事のうち1人を総長、1人を副総長、2人を常務理事とする。7条役員のうち総長は、宗教法人神社本庁の代表役員とし、法人を代表する。8条1項総長は、本庁の事務を総管し、及び統理に事故があるときは、その職務を代理する。2項副総長は、総長の職務を補佐し、その命を受けて、常務を掌理し、及び総長に事故があるときはその職務を代理する。9条常務理事は、常務を処理するにつき、総長を補佐する。 10条1項役員は、役員会を組織し、共同の責任を負い、及び本庁の事務を決定する。2項役員会は、統理が招集する。3項役員会は、事務を決定する場合において、評議員会の議決を経た事項について正当の理由がなければ、評議員会の決議を尊重しなければならない。11条1項本庁に監事3人を置く。2項監事の職務は次の通りとする。1号本庁の財産の状況及び役員の業務執行の状況を監査すること。2号本庁の財産の状況又は役員の業務執行の状況について監査した結果、不整の点があることを発見した場合に、これを評議員会に報告すること。3号本庁の財産の状況又は役員の業務 2号本庁の財産の状況又は役員の業務執行の状況について監査した結果、不 整の点があることを発見した場合に、これを評議員会に報告すること。 3号本庁の財産の状況又は役員の業務執行の状況について、役員会に意見を述べること。 12条1項理事及び監事は、評議員会で選任する。 2項総長は、役員会の議を経て、理事のうちから統理が指名する(本件条項)。 3項副総長は、総長の意見を聞いて、理事のうちから統理が指名する。 4項常務理事は、役員が互選する。 13条1項役員及び監事の任期は、3年とする。ただし、後任者が就任する時まで、 なお在任する。 2項補欠の役員及び監事の任期は、前任者の残任期間とする。 14条役員又は監事が欠けたときは、評議員会でその補欠の選任を行う。 21条1項本庁に評議員会を置く。 2項評議員会は、次の評議員で組織する。 1号神宮で選ばれた者 2人2号神社庁長の職にある者 47人3号神職のうちから選ばれた者 47人4号前号に規定する者の外、特に員数の指定を受けた神社庁で、神職のうち から選ばれた者 25人以内5号神職以外の神社の役員及び総代のうちから選ばれた者 47人3項前項3号又は5号に該当する評議員は、各神社庁の協議員会でそれぞれ1人を選挙する。 4項 2項4号の員数は、昭和27年から3年ごとに統理が指定する。 5項神社庁の協議員会は、3項の規定による評議員の員数に、前項の規定によ り指定を受けた員数を加えて選挙する。 25条評議員会は、次の事項及び本条の外特に評議員会の権限と定められた事項を議決する。 1号庁規を変更すること。 2号規程を制定し、及び変更すること。 けた員数を加えて選挙する。 25条評議員会は、次の事項及び本条の外特に評議員会の権限と定められた事項を議決する。 1号庁規を変更すること。 2号規程を制定し、及び変更すること。 3号前2号の外、統理が必要と認めたこと。 40条1項本庁に統理1人を置く。 2項統理は、評議員会において選任し、その任期は13条に規定する役員及び監事の例によるものとする。 3項統理は、神社本庁及び神社庁並びに神社の職員を統督する。 4項統理は、規程を布達し、懲戒を行い、及び総裁が欠けた場合において表彰を行う。 5項統理のすべての行為は、総長の補佐を得て行われるものとし、その責任は、役員会が負う。 51条1項一切の収入を歳入とし、一切の支出を歳出とし、歳入歳出は、予算に編入しなければならない。ただし、特別会計のうち予算の編成に適しないと認められるものについては、評議員会の議決を経て、その編成を省くことができる。 2項予算及びその補正は、評議員会の決議を経なければならない。 60条神社庁は、庁規の規定に従い、当該神社庁の規則を作成し、その規則について協議員会の議決を経て、統理の承認を受けなければならない。その規則を変更しようとするときも、また同様とする。 102条本庁はその目的達成に資するために祭祀及び教化に必要な図書、物品の 販売、並びに神社参拝を奨励するための旅行のあっ旋の事業を行う。 103条前条に定める事業のために必要な職員を置き、その管理、運営に当らせる。ただし、重要事項については、役員会の議を経るものとする。 105条前各条《判決注:102条から104条までを指す。》に定めるほか、この事業の管理、運営について必要な事項は役員会において定める。 ただし、重要事項については、役員会の議を経るものとする。 105条前各条《判決注:102条から104条までを指す。》に定めるほか、この事業の管理、運営について必要な事項は役員会において定める。 106条庁規の施行に関し必要な事項は、規程で定める。 以上

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