- 1 -平成23年12月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成20年(ワ)第12409号製造販売禁止等請求事件口頭弁論終結日平成23年10月20日判決スイス国<以下略>原告シノバ・ソシエテ・アノニム訴訟代理人弁護士橋口泰典同達野大輔同松本 慶同入野田泰彦補佐人弁理士高橋詔男同佐伯義文同渡邉 隆富山県魚津市<以下略>被告株式会社スギノマシン訴訟代理人弁護士松尾和子同藤井輝明同佐竹勝一同水沼 淳同小林正和訴訟代理人弁理士弟子丸健同渡邊 誠同鈴木博子主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 - 2 - 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙物件目録記載の各製品を製造,販売してはならない。 2 被告は,前項記載の各製品の販売の申出又は販売のための展示をしてはな を30日と定める。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙物件目録記載の各製品を製造,販売してはならない。 2 被告は,前項記載の各製品の販売の申出又は販売のための展示をしてはならない。 3 被告は,第1項記載の各製品及びその半製品を廃棄せよ。 4 被告は,原告に対し,500万円及びこれに対する平成20年5月27日から支払済みまで年5分の割合の金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,後記2ア記載の特許権を有する原告が,被告による別紙物件目録記載の各製品(以下「被告製品」と総称する。)の製造及び販売が上記特許権の侵害に当たる旨主張して,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,被告製品の製造,販売等の差止め並びに被告製品及びその半製品の廃棄を求めるとともに,特許権侵害の不法行為に基づく弁護士費用相当額の損害賠償を求めた事案である。 2 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。) 当事者ア原告は,工作機械,産業機械等の製造,販売等を目的とするスイス国法人である。 イ被告は,機械,装置,器工具及びそれらに関連する設備の製造,販売等を目的とする株式会社である。 特許庁における手続の経緯等ア原告は,平成7年5月22日,発明の名称を「レーザーによつて材料を - 3 -加工する装置」とする発明について国際特許出願(国際出願番号PCT/IB1995/000390,優先日平成6年5月30日,優先権主張国ドイツ,日本における出願番号特願平8-500602号。以下「本件出願」という。)をし,平成17年5月27日,特許第3680864号として特許権の設定登録を受けた(以下,この特許を「本件特許」,この特許権を「本件 ける出願番号特願平8-500602号。以下「本件出願」という。)をし,平成17年5月27日,特許第3680864号として特許権の設定登録を受けた(以下,この特許を「本件特許」,この特許権を「本件特許権」という。)。 イ本件特許に対し,被告が本件訴訟係属後の平成20年6月30日に無効審判請求(無効2008-800124号事件)をしたところ,特許庁は,平成21年5月11日,本件出願は平成6年法律第116号による改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)36条4項,5項2号に規定する要件を満たしていないとして,本件特許(設定登録時の請求項1ないし17に係る発明についての特許)を無効とする旨の審決(以下「第1次審決」という。)をした(乙6)。 原告が,これを不服として,同年9月15日に第1次審決の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成21年(行ケ)第10277号事件)を提起するとともに,同年12月11日付けで本件特許の特許請求の範囲の訂正を内容(請求項6を削除し,その余の請求項の内容を変更するもの)とする訂正審判請求(訂正2009-390151号事件)をしたところ,知的財産高等裁判所は,平成22年1月19日,特許法181条2項に基づき,第1次審決を取り消す旨の決定をした(甲17ないし19)。 特許庁は,上記決定を受けて,無効2008-800124号事件の審理を再開し,その審理の中で,上記訂正審判請求は,特許法134条の3第5項により訂正請求(以下「本件訂正」という。)とみなされた後,特許庁は,同年8月25日,本件訂正を適法と認めた上で,本件訂正後の請求項1ないし16に係る発明についての特許出願は同法29条2項に規 - 4 -定する要件を満たしていないとして,「訂正を認める。特許第3680864号の請求項1ないし 認めた上で,本件訂正後の請求項1ないし16に係る発明についての特許出願は同法29条2項に規 - 4 -定する要件を満たしていないとして,「訂正を認める。特許第3680864号の請求項1ないし16に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「第2次審決」という。)をした(乙15)。 これに対し,原告が,同年9月3日に第2次審決の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成22年(行ケ)第10282号事件)を提起したところ,知的財産高等裁判所は,平成23年10月12日,第2次審決には本件訂正後の請求項1ないし16に係る発明についての進歩性(特許法29条2項)の判断に誤りがあるとして,第2次審決を取り消す旨の判決を言い渡した(甲23,39)。 発明の内容ア設定登録時のもの 本件特許の設定登録時の特許請求の範囲は,請求項1ないし17から成り,その請求項1,5,10の記載は,次のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本件発明1」,請求項5に係る発明を「本件発明5」,請求項10に係る発明を「本件発明10」といい,これらを「本件各発明」と総称する。)。 「【請求項1】 収束されるレーザービームによる材料加工方法であって,レーザービーム(3)を導く液体ビーム(12)がノズル(43)により形成され,加工すべき加工片(9)へ向けられるものにおいて,レーザービームガイドとして作用する液体ビーム(12)へレーザービーム(3)を導入するため,レーザービーム(3)がノズル(43)のビーム通路(23)の入口開口(30)の所で収束され,液体供給空間(35)へ供給される液体が,ノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように導かれ,それによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が 収束され,液体供給空間(35)へ供給される液体が,ノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように導かれ,それによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く決められるようにし,したがってフォーカス円錐先端範囲(56) - 5 -において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧されることを特徴とする,材料を加工する方法。」「【請求項5】 レーザービーム(3)を送出するレーザー(1),及び液体ビーム(12)を形成するノズル通路(23)を備えたノズル(43)とビームガイドとしての液体ビーム(12)へレーザービーム(3)を導入する光学要素(21,25)とを有する加工モジュール(7)によって,請求項1ないし4の1つに記載の方法を実施する装置において,光学要素(21,25)が,レーザービーム(3)を,ノズル通路(23)の入口開口(30)の所で収束し,ノズル通路(23)のための液体供給空間(35)が,ノズル入口開口(30)の上においてディスク状に従って液体せき止め空間のないように形成されており,それによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高くあらかじめ与えることができ,したがってフォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,液体内における熱レンズの形成が抑圧されていることを特徴とする装置。」「【請求項10】 空間的に離れたところにあるレーザー(1)からフォーカスユニット(21,25)へレーザービームを供給するビームガイド(6)が設けられていることを特徴とする,請求項5ないし9の1つに記載の装置。」 本件各発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下 ト(21,25)へレーザービームを供給するビームガイド(6)が設けられていることを特徴とする,請求項5ないし9の1つに記載の装置。」 本件各発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件ア」,「構成要件イ」などという。)。 a 本件発明1「ア収束されるレーザービームによる材料加工方法であって,レーザービーム(3)を導く液体ビーム(12)がノズル(43)に - 6 -より形成され,加工すべき加工片(9)へ向けられるものにおいて,イレーザービームガイドとして作用する液体ビーム(12)へレーザービーム(3)を導入するため,ウレーザービーム(3)がノズル(43)のビーム通路(23)の入口開口(30)の所で収束され,エ液体供給空間(35)へ供給される液体が,ノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように導かれ,オそれによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く決められるようにし,カしたがってフォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧されることを特徴とする,キ材料を加工する方法。」b 本件発明5「クレーザービーム(3)を送出するレーザー(1),及び液体ビーム(12)を形成するノズル通路(23)を備えたノズル(43)とビームガイドとしての液体ビーム(12)へレーザービーム(3)を導入する光学要素(21,25)とを有する加工モジュール(7)によって,請求項1ないし4の1つに記載の方法を実施する装置において,ケ光学要素(21,25)が,レーザービーム(3)を,ノズル通路(23)の入口開口(30)の所で収束し,コノズル通路(23)の ,請求項1ないし4の1つに記載の方法を実施する装置において,ケ光学要素(21,25)が,レーザービーム(3)を,ノズル通路(23)の入口開口(30)の所で収束し,コノズル通路(23)のための液体供給空間(35)が,ノズル入口開口(30)の上においてディスク状に従って液体せき止め空間のないように形成されており, - 7 -サそれによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高くあらかじめ与えることができ,シしたがってフォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,液体内における熱レンズの形成が抑圧されていることを特徴とするス装置。」c 本件発明10「セ空間的に離れたところにあるレーザー(1)からフォーカスユニット(21,25)へレーザービームを供給するビームガイド(6)が設けられていることを特徴とする,ソ請求項5ないし9の1つに記載の装置。」イ本件訂正後のもの 本件訂正後の特許請求の範囲は,請求項1ないし16から成り(設定登録時の請求項6の削除に伴い,請求項7以下の項番号がそれぞれ繰り上がっている。),その請求項1,5,9の記載は,次のとおりである(甲18。以下,本件訂正後の請求項1に係る発明を「本件訂正発明1」,請求項5に係る発明を「本件訂正発明5」,請求項9に係る発明を「本件訂正発明9」といい,これらを「本件各訂正発明」と総称する。なお,下線部は訂正箇所である。)。 「【請求項1】 収束されるレーザービームによる材料加工方法であって,レーザービーム(3)を導く液体ビーム(12)がノズル(43)により形成され,加工すべき加工片(9)へ向けられるものにおいて,前記ノズル(43)の上面と,前記ノズル ームによる材料加工方法であって,レーザービーム(3)を導く液体ビーム(12)がノズル(43)により形成され,加工すべき加工片(9)へ向けられるものにおいて,前記ノズル(43)の上面と,前記ノズル(43)の上方に配置されるとともに前記レーザービーム(3)に対して透明な窓(36)の下面との間には,前記液体ビーム(12)を形成するための液体を供給 - 8 -するディスク状液体供給空間(35)が形成され,前記ノズル(43)は,ノズル通路(23)のノズル入口開口(30)を有し,レーザービームガイドとして作用する液体ビーム(12)へレーザービーム(3)を導入するため,前記レーザービーム(3)がノズル(43)のノズル通路(23)の前記ノズル入口開口(30)の所で収束され,前記ディスク状液体供給空間(35)へ供給される液体が,前記ノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように前記ノズル(43)からの前記窓(36)の高さを設定した前記ディスク状液体供給空間(35)内を前記ノズル入口開口(30)に向かって周辺から流れるように導かれ,それによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く決められるようにし,したがってフォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧されることを特徴とする,材料を加工する方法。」「【請求項5】 レーザービーム(3)を送出するレーザー(1),及び液体ビーム(12)を形成するノズル通路(23)を備えたノズル(43)とビームガイドとしての液体ビーム(12)へレーザービーム(3)を導入する光学要素(21,25)とを有する加工モジュール(7)によって,請求項1ないし4の1つに記載の方法を実施する装置において, )とビームガイドとしての液体ビーム(12)へレーザービーム(3)を導入する光学要素(21,25)とを有する加工モジュール(7)によって,請求項1ないし4の1つに記載の方法を実施する装置において,前記ノズル(43)の上面と,前記ノズル(43)の上方に配置されるとともに前記レーザービーム(3)に対して透明な窓(36)の下面との間には,前記液体ビーム(12)を形成するための液体を供給するディスク状液体供給空間(35)が形成され,前記ノズル(43)は,ノズル通路(23)のノズル入口開口(30)を有し,前記光学要素(21,25)が,レーザービーム(3)を,ノズル通路(23)の前記ノズル入口開口(30)の所で収束させ, - 9 -前記ディスク状液体供給空間(35)へ供給される液体が,前記ノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように前記ノズル(43)からの前記窓(36)の高さを設定した前記ディスク状液体供給空間(35)内を前記ノズル入口開口(30)に向かって周辺から流れるように導かれ,それによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高くあらかじめ与えることができ,したがってフォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,液体内における熱レンズの形成が抑圧されていることを特徴とする装置。」「【請求項9】 空間的に離れたところにあるレーザー(1)からフォーカスユニット(21,25)へレーザービームを供給するビームガイド(6)が設けられていることを特徴とする,請求項5ないし8の1つに記載の装置。」 本件各訂正発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件ア'」,「構成要件イ'」などという。)。 a 本件訂正発 とする,請求項5ないし8の1つに記載の装置。」 本件各訂正発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件ア'」,「構成要件イ'」などという。)。 a 本件訂正発明1「ア' 収束されるレーザービームによる材料加工方法であって,レーザービーム(3)を導く液体ビーム(12)がノズル(43)により形成され,加工すべき加工片(9)へ向けられるものにおいて,前記ノズル(43)の上面と,前記ノズル(43)の上方に配置されるとともに前記レーザービーム(3)に対して透明な窓(36)の下面との間には,前記液体ビーム(12)を形成するための液体を供給するディスク状液体供給空間(35)が形成され,前記ノズル(43)は,ノズル通路(23)のノズル入口開口(30)を有し, - 10 -イ' レーザービームガイドとして作用する液体ビーム(12)へレーザービーム(3)を導入するため,ウ' 前記レーザービーム(3)がノズル(43)のノズル通路(23)の前記ノズル入口開口(30)の所で収束され,エ' 前記ディスク状液体供給空間(35)へ供給される液体が,前記ノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように前記ノズル(43)からの前記窓(36)の高さを設定した前記ディスク状液体供給空間(35)内を前記ノズル入口開口(30)に向かって周辺から流れるように導かれ,オ' それによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く決められるようにし,カ' したがってフォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧されることを特徴とする,キ' 材料を加工する方法。」b 本件訂正発明5「ク' レーザービー 囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧されることを特徴とする,キ' 材料を加工する方法。」b 本件訂正発明5「ク' レーザービーム(3)を送出するレーザー(1),及び液体ビーム(12)を形成するノズル通路(23)を備えたノズル(43)とビームガイドとしての液体ビーム(12)へレーザービーム(3)を導入する光学要素(21,25)とを有する加工モジュール(7)によって,請求項1ないし4の1つに記載の方法を実施する装置において,前記ノズル(43)の上面と,前記ノズル(43)の上方に配置されるとともに前記レーザービーム(3)に対して透明な窓(36)の下面との間には,前記液体ビーム(12)を形成するための液体を供給するディスク状液体供給空間(35)が形成され,前記ノズル(43)は,ノズル通路(23) - 11 -のノズル入口開口(30)を有し,ケ' 前記光学要素(21,25)が,レーザービーム(3)を,ノズル通路(23)の前記ノズル入口開口(30)の所で収束させ,コ' 前記ディスク状液体供給空間(35)へ供給される液体が,前記ノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように前記ノズル(43)からの前記窓(36)の高さを設定した前記ディスク状液体供給空間(35)内を前記ノズル入口開口(30)に向かって周辺から流れるように導かれ,サ' それによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高くあらかじめ与えることができ,シ' したがってフォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,液体内における熱レンズの形成が抑圧されていることを特徴とするス' 装置。」c 本件 したがってフォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,液体内における熱レンズの形成が抑圧されていることを特徴とするス' 装置。」c 本件訂正発明9「セ' 空間的に離れたところにあるレーザー(1)からフォーカスユニット(21,25)へレーザービームを供給するビームガイド(6)が設けられていることを特徴とする,ソ' 請求項5ないし8の1つに記載の装置。」 被告の行為等ア被告は,被告製品を製造し,その販売の申出をしている(甲8)。 イ被告製品は,グリーンレーザー(Nd-YAGSHG(第2高調波)レーザー・波長532nm。以下同じ。)を発振するレーザー発振器と,高圧水(2~50MPaで加圧された水)を噴射するノズル,そのノズル - 12 -上流側に隣接して設けられ高圧水をノズルに供給する液体貯留室,レーザー光をノズルに導くための光学装置等を備えた加工ヘッドと,ノズルに高圧水を供給する液体供給手段とを構成に含んでいる。 被告製品は,ノズルから噴射される噴流液柱内に導かれたグリーンレーザー(レーザービーム)により材料を加工する装置である。 別紙1は,被告製品の組立図(乙8の1)であり,別紙2は,上記組立図記載の各部材の寸法等を記載した説明文(乙8の2の一部)である(なお,乙8の1及び2記載の情報については,平成21年6月19日付けで特許法105条の4第1項の規定による秘密保持命令(以下「本件秘密保持命令」という。)が発令されており,別紙1及び2には,本件秘密保持命令の対象とされた情報(営業秘密)が記載されている。)。 ウ被告製品を使用する加工方法又は被告製品それ自体は,本件各発明の構成要件のうち,アないしウ,キ,ケ,ス,セを充足し,また,被告製品を使用 令の対象とされた情報(営業秘密)が記載されている。)。 ウ被告製品を使用する加工方法又は被告製品それ自体は,本件各発明の構成要件のうち,アないしウ,キ,ケ,ス,セを充足し,また,被告製品を使用する加工方法又は被告製品それ自体は,本件各訂正発明の構成要件のうち,ア',イ'(「イ」と同じ),ウ',キ'(「キ」と同じ),ケ',ス'(「ス」と同じ),セ'(「セ」と同じ)を充足する(甲8,乙8の1,2,弁論の全趣旨)。 3 争点本件の争点は,被告製品を使用する加工方法及び被告製品が本件各発明の技術的範囲に属するか否か(争点1),本件各発明に係る本件特許に特許無効審判により無効にされるべき無効理由があり,原告の本件特許権の行使が特許法104条の3第1項に基づいて制限されるかどうか(争点2),上記無効理由による権利行使の制限を否定する本件訂正に係る対抗主張の成否(争点3),被告が賠償すべき原告の損害額(争点4)である。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件各発明の技術的範囲の属否)について - 13 - 原告の主張ア本件発明1について本件発明1の本質は,液体ビームを形成するノズルをレーザービームによって損傷することなく,レーザービームを材料加工のために液体ビーム内に光学的に結合するという課題を解決するために,ノズル損傷に至るような熱レンズの形成を抑圧しようというものであり,その具体的構成として,本件発明1は,「液体供給空間(35)へ供給される液体が,ノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように導かれ」(構成要件エ),「それによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く決められるようにし」(構成要件オ),「したがってフォーカス円錐先端範囲(56)におい れ」(構成要件エ),「それによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く決められるようにし」(構成要件オ),「したがってフォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される」(構成要件カ)との構成を採用したものである。 被告製品を使用する加工方法は,以下のとおり,本件発明1の構成要件エないしカをいずれも充足する。 構成要件エの充足性a 「せき止め空間のない」の意義本件出願の願書に添付された明細書(甲2。以下,図面を含めて「本件明細書」という。)の「発明の詳細な説明」の記載(3頁36行~42行,4頁21行~38行,43行~47行,7頁36行~39行)によれば,本件発明1は,熱レンズの発生原因となる「液体静止状態」を取り除くため「流速を高く」するものであると理解することができるから,「せき止め空間」なる用語は「液体静止状態」が生じる空間を意味するものであり,また,液体空間が一つの連通空間である場合,空間内で流速は連続的に変化し,流速が0になる点が存在しないことは技術常識であることからすると,この「液体静止状態」にいう「静 - 14 -止」は,流速0を意味するものでなく,「ほぼ0」程度の流速を意味するものと解される。 そうすると,構成要件エの「せき止め空間」とは,液体静止状態の空間,すなわち,「液体の流速がほぼ0の空間」,言い換えれば,「液体が淀んでいる空間」を意味する。 そして,構成要件エの「せき止め空間のない」とは,液体が淀まないこと,あるいは液体の流速がほぼ0になっている空間がないことを意味する。 このような解釈は,東京工業大学教授A作成の平成22年4月22日付け見解書(甲21)及び秋田大学教 」とは,液体が淀まないこと,あるいは液体の流速がほぼ0になっている空間がないことを意味する。 このような解釈は,東京工業大学教授A作成の平成22年4月22日付け見解書(甲21)及び秋田大学教授B作成の同月23日付け陳述書(甲22)の内容に合致し,第2次審決の解釈とも一致する。 b 被告製品を使用する加工方法における構成要件エの充足 液体供給空間において「せき止め空間」が存在し得るパターンとしては,①液体供給空間の体積が極めて大きい場合に,ノズルから離れた場所において「せき止め空間」が存在するパターン,②流体力学でいう「はく離域」あるいは「再循環領域」が発生する場合に,「せき止め空間」が発生するパターンがある。 この二つのパターンは,「流速がほぼ0」であるという点では同じである。はく離域,再循環領域が生じるような液体供給空間には「せき止め空間」が必ずあり(上記②のパターン),一方で,はく離域,再循環領域が生じない液体供給空間には「せき止め空間」は一般的にはないが,極めてノズルから離れたところでは,はく離域,再循環領域と同様に液体の流れがほぼ0になり,「せき止め空間」が存在することとなる。 「せき止め空間」の有無は,当業者であれば,流体の解析ソフトウェアを用いたシミュレーションにより液体の動きを解析するこ - 15 -とで容易に判断することが可能である。 例えば,甲14の参考図12及び13は,本件特許を実施した装置のモデル及び乙A1(ヨーロッパ特許第0515983A1号公報)の図2(別紙乙A1の図面参照)記載の装置(以下「乙A1記載の装置」という。)のモデルについて,ソフトウェア「FLUENT」(Version 6.3)を用いて行ったシミュレーション結果である。甲14の参考図13(乙A1記載の装置)のモデル 以下「乙A1記載の装置」という。)のモデルについて,ソフトウェア「FLUENT」(Version 6.3)を用いて行ったシミュレーション結果である。甲14の参考図13(乙A1記載の装置)のモデルでは,液体供給空間の上部にせき止め空間がある。この参考図13に同条件の下で流線ベクトルを加えた甲15のシミュレーション図から,液体供給空間の上部に,液体が循環する再循環領域があり,その再循環領域の中心部では液体の流速が極端に遅くなっていることを見て取ることができ,「液体が淀んでいる空間」,すなわち「せき止め空間」が存在することは明らかである。他方,参考図12(本件特許を実施した装置のモデル)は,「せき止め空間のない」構造の具体例である。かかる構造では,液体がノズル入口開口の周りにおいてせき止め空間のないように導かれている。 上記のとおり,乙A1記載の装置のように液体供給空間の形状が縦長のものは,「せき止め空間」が存在していると考えることができる。もっとも,「せき止め空間」の有無は,単純に液体供給空間の形状や寸法のみによって決定されるものではなく,むしろ,本件特許の目的がノズルの損傷を防ぐための熱レンズの形成の抑圧にあることからすると,レーザーと液体の組合せによって液体によるレーザーの吸収率が低い場合や,レーザー自体の出力が低い場合には,そもそもノズルの損傷を防ぐための熱レンズの形成の抑圧のための「十分な流速」が低いため,「せき止め空間のない」といい得るための基準も相対的に低くてよいと解すべきである。 - 16 -①被告製品の液体貯留室は,逆円錐台形状の空間であって,乙A1記載の装置の液体供給空間のように縦長の形状ではない。また,被告の後記主張によれば,被告製品は,乙7(特開2009-95884号公報)に記載された発明 体貯留室は,逆円錐台形状の空間であって,乙A1記載の装置の液体供給空間のように縦長の形状ではない。また,被告の後記主張によれば,被告製品は,乙7(特開2009-95884号公報)に記載された発明の実施形態の一つであるところ,乙7の実施形態の液体貯留室における流速分布のシミュレーション結果を示した図12及び13を見れば,ノズル入口開口の「周り」,すなわちフォーカス円錐先端範囲及びその近傍において,液体が淀みなく流れ出していることが分かる。 そして,乙7の図12及び13と乙A1記載の装置における液体の流れをシミュレーションした甲15とを比較すると,甲15においては,フォーカス円錐先端範囲及びその近傍において再循環領域があり,液体が淀んでいる箇所がフォーカス円錐先端範囲内にあることは明らかであるのに対し,乙7の図12及び13においては,流速は本件特許の実施例を前提とする構造と比して遅いようではあるが,フォーカス円錐先端範囲及びその近傍における流れが甲15における流れとは質的に異なり,順次液体がノズル入口開口に向かって流れ,噴射されることが示されている。むしろ,このように液体が淀むことなく流れ出るという点において,乙7の図12及び13における流れは,本件特許を実施した装置のモデルの流れ(乙7の図14及び15参照)と質的に同じであるといえる。 この点に関し,被告は,後記のとおり,乙14の資料7を根拠として,被告製品に「せき止め空間」があるかのような主張をするが,乙14の資料7は,単に相対的な流速の大きさの分布の比較を示しているにすぎないものであり,ベクトルプロットがないため,液体供給空間内(液体貯留室内)における具体的な流れ場 - 17 -を示したものとはいえないから,上記主張は失当である。 ② 次に,被告製品の液体貯留室 ものであり,ベクトルプロットがないため,液体供給空間内(液体貯留室内)における具体的な流れ場 - 17 -を示したものとはいえないから,上記主張は失当である。 ② 次に,被告製品の液体貯留室に液体を供給する連絡流路の配置及び液体貯留室の形状からすると,被告製品の液体貯留室においては,はく離域あるいは再循環領域が発生しない。 例えば,甲14の参考図13のように,液体供給空間への液体を供給する導管の取付口が液体供給空間の真ん中の高さ辺りにあるような形状の場合には,液体供給空間内の取付口より上部に位置する箇所において再循環領域が発生することが甲15から明らかである。しかし,被告製品の場合,その液体貯留室に液体を供給するための連絡流路は,液体貯留室の外周面に,段差がなく,これと同一面上に連続するように延設されており,液体供給空間(液体貯留室)の(ノズル)入口開口の周りにおいて再循環領域が発生するような構造になっていない。 また,液体供給空間自体において,曲線の部分が存するなど流路が変更するような形状である場合は,はく離域が発生することも考えられる。しかし,被告製品の液体貯留室の形状は,その内部の(ノズル)入口開口の周りにおいて,はく離域,あるいは再循環領域が発生するような構造にはなっていない。 ③ 以上によれば,被告製品の液体貯留室の構造は,「せき止め空間のない」構成のものであって,被告製品を使用する場合,その液体貯留室へ供給される「液体が,ノズル入口開口の周りにおいてせき止め空間のないように導かれ」ているものといえるから,構成要件エを充足する。 c 被告の主張に対する反論被告は,後記のとおり,「せき止め空間」の意義が不明瞭であるため,構成要件エの「せき止め空間のない」の判断基準も不明瞭である - 18 -こと 件エを充足する。 c 被告の主張に対する反論被告は,後記のとおり,「せき止め空間」の意義が不明瞭であるため,構成要件エの「せき止め空間のない」の判断基準も不明瞭である - 18 -ことを出発点として,本件明細書の記載から,「せき止め空間のない」とは,液体供給空間の高さが「ノズル径に対して,半分から数倍程度の低い高さしか有しないことである」と限定的に解釈すべきであり,そのような前提に立つと,被告製品の液体貯留室の構造は構成要件エの「せき止め空間のない」の構成を満たさない旨主張する。 しかしながら,前記aで述べたとおり,「せき止め空間」は「液体が淀んでいる空間」であり,「せき止め空間のない」とは,かかる空間がないこと,すなわち液体が淀まないことを意味することからすると,「せき止め空間のない」は,液体の流れを表現したものであり,文理上,液体供給空間の高さを制限するといった限定に馴染まないものであるから,被告主張の限定解釈は当を得ていない。 また,本件発明1の技術的思想は,熱レンズによるノズルの損傷を生じさせないため「せき止め空間のない」ように,すなわち淀み空間がないようにしたことを特徴とする技術的思想であって,「せき止め空間」がないといえる流速,「液体供給空間の高さ」は,使用するレーザービームの種類(波長),レーザーの出力(ワット数),使用する液体の種類,液体供給空間の構造,液体供給空間に液体を供給する圧力,ノズル径等の諸条件により変動するものであるから,具体的数値により示すことはできないものであり,また,示す必要もないものである。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 構成要件オ及びカの充足性a 「液体の流速が,十分に高く」の意義本件発明1の構成要件オの「レーザービームのフォーカス円錐先端範囲( ある。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 構成要件オ及びカの充足性a 「液体の流速が,十分に高く」の意義本件発明1の構成要件オの「レーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く決められるようにし」とは,それに続く構成要件カの記載を併せて読めば,「フォーカス円 - 19 -錐先端範囲において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される程度に,流速が十分に高い」という意味である。 b 被告製品を使用する加工方法の構成要件オ及びカの充足被告製品においては,グリーンレーザーが使用されている。 ところで,グリーンレーザーは,ND:YAG(基本波)(波長1064μm)の赤外線レーザー(以下「YAGレーザー」という。)と比べて,水に対する吸収率が低いとはいえ水に対する一定の吸収があり,加熱の進行が緩やかとはいえ熱レンズが発生するのであるから,流速が十分でなく,水がフォーカス円錐先端範囲内に長時間滞留している場合には,時間の経過によりかかる熱レンズがノズル壁を損傷する。このようにグリーンレーザーを使用する場合においても熱レンズ効果が起こり,それによるノズル壁の損傷が生じることは,甲32及び35の実験結果が示すとおりである。 もっとも,グリーンレーザーを使用する場合は,YAGレーザーを使用する場合に比して水への吸収率が低いため,熱レンズの形成の抑圧のために必要となる流速も低くなるが,構成要件オ及びカにおいては,絶対的な流速を記載するのではなく,「ノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧」するという目的のために十分な流速という機能的な記載がされており,かかる吸収率の違いによる絶対的な流速の違いにより構成要件オ及びカの充足性を否定 ズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧」するという目的のために十分な流速という機能的な記載がされており,かかる吸収率の違いによる絶対的な流速の違いにより構成要件オ及びカの充足性を否定することはできない。 そして,グリーンレーザーを使用する被告製品において熱レンズの形成が抑圧され,ノズル壁の損傷が防がれていることからすると,被告製品の液体貯留室内のフォーカス円錐先端範囲においては,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成 - 20 -が抑圧される程度に,流速が十分に高いものといえるから,被告製品を使用する加工方法は,構成要件オ及びカを充足する。 c 被告の主張に対する反論被告は,後記のとおり,構成要件カの「レーザービーム」を「熱レンズの形成が問題となるレーザービーム」と限定的に解釈し,被告製品において使用されているグリーンレーザーはそれに該当しない旨主張する。 しかしながら,本件特許の請求項3は,レーザービームの波長を「0.25μm~2.1μm」に限定しているところ,これは,YAGレーザーの基本波のみならず,その2倍波であるグリーンレーザーや3倍波を含むものであって,請求項1(本件発明1)について,波長0.532μm(532nm)のグリーンレーザーを除外するような被告主張の限定解釈は,請求項1に従属し,それを更に限定する請求項3と矛盾するものである。 また,前記bのとおり,グリーンレーザーを使用する場合においても熱レンズ効果が起こり,それによるノズル壁の損傷が生じるのであるから,仮に被告主張の限定解釈を前提としても,被告製品において使用されているグリーンレーザーは,構成要件カの「レーザービーム」に該当する。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 小括 ,仮に被告主張の限定解釈を前提としても,被告製品において使用されているグリーンレーザーは,構成要件カの「レーザービーム」に該当する。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 小括以上のとおり,被告製品を使用する加工方法は,本件発明1の構成要件エないしカをいずれも充足するものであり,また,上記加工方法が構成要件アないしウ,キを充足することは前記争いのない事実等ウのとおりである。 そうすると,被告製品を使用する加工方法は,本件発明1の構成要件 - 21 -をすべて充足するものといえるから,本件発明1の技術的範囲に属する。 イ本件発明5について 構成要件ク,ケ,サないしスの充足前記アのとおり,被告製品は,本件発明1の方法を実施する装置であり,「レーザービームを送出するレーザー,及び液体ビームを形成するノズル通路を備えたノズルとビームガイドとしての液体ビームへレーザービームを導入する光学要素とを有する加工モジュール」によって本件発明1の方法を実施するものであるから,本件発明5の構成要件クを充足する。 次に,被告製品が構成要件ケ及びスを充足することは,前記争いのない事実等ウのとおりである。 さらに,構成要件サ及びシはそれぞれ構成要件オ及びカと同内容の構成要件であるから,前記アで述べたところと同様に,被告製品は,構成要件サ及びシを充足する。 構成要件コの充足a 「ディスク状」の「液体供給空間」の意義構成要件コの「ノズル通路(23)のための液体供給空間(35)が,ノズル入口開口(30)の上においてディスク状に従って液体せき止め空間のないように形成されており」にいう「ディスク状に従って」とは,液体供給空間の高さを横より低くするという趣旨である。 そして,本件発明5において「ディス においてディスク状に従って液体せき止め空間のないように形成されており」にいう「ディスク状に従って」とは,液体供給空間の高さを横より低くするという趣旨である。 そして,本件発明5において「ディスク状」の「液体供給空間」を採用した技術的意義は,「せき止め空間」,すなわち液体が淀み,熱レンズの問題を生じさせる空間がないようにし(本件明細書の7頁36行~38行),フォーカス円錐先端範囲における流速を高くし,もって熱レンズの形成を抑圧するという点にある。 - 22 -b 被告製品の構成要件コの充足本件明細書においては,角頂点(円錐先端)を有する円錐とディスク状を区別しているが,ディスク状と円錐台形状については峻別していない。また,逆円錐台形状であっても,その断面はどこを切っても円形になるから,ディスク状であるといえる。 被告製品の液体貯留室は,円錐面の上面の直径が下面の直径よりも大きい逆円錐台形状の空間であり,その高さは円錐面の上面及び下面の直径よりも低い値が採用されており,扁平な逆円錐台形状であるといえる。このような扁平な逆円錐台形状は,構成要件コの「ディスク状」に該当する。 そして,前記アで述べたとおり,被告製品は,その液体貯留室へ供給される「液体が,ノズル入口開口の周りにおいてせき止め空間のないように導かれ」,液体貯留室内のフォーカス円錐先端範囲においては,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される程度に,流速が十分に高いものといえるのであり,被告製品の液体貯留室は,本件発明5において「ディスク状」の「液体供給空間」を採用した技術的意義と共通する技術的意義を有するのであるから,構成要件コの「ディスク状」の「液体供給空間」に当たる。このように被告製品が本件発明5と共通する技 いて「ディスク状」の「液体供給空間」を採用した技術的意義と共通する技術的意義を有するのであるから,構成要件コの「ディスク状」の「液体供給空間」に当たる。このように被告製品が本件発明5と共通する技術的意義を有し,液体供給空間(液体貯留室)の構造が同様の作用効果を発揮していることは,被告従業員C作成の平成22年11月1日付け陳述書(乙17)中の「なお,本レーザー光の水に対する吸収試験では,グリーンレーザーを使用した場合にも水の温度は上昇していますが,実際の被告製品WbMでは,液体供給空間内の水の温度上昇は無視できる程度です。すなわち,WbMでは,液体供給空間内の水は常にノズルから噴射されているので,この試験において温度上昇を観測してい - 23 -る時間よりも遙かに短い時間で新しく流入した水と入れ替わります。 このため,実際の被告製品の液体供給空間内において,この試験で測定されたような温度上昇が発生することはありません。」(3頁10行~17行)との記載からも明らかである。なお,被告製品の液体貯留室にはスロープ状の傾斜があるが,液体が「液体貯留室」に流入し,傾斜をつたうところからノズル入口開口までの距離が相当にあるため,その流入後の流れにほとんど影響を及ぼさないから(甲31),かかる傾斜に技術的意義はない。 そうすると,被告製品は,「ノズル通路のための液体供給空間が,ノズル入口開口の上においてディスク状に従って液体せき止め空間のないように形成されて」いるといえるから,構成要件コを充足する。 c 被告の主張に対する反論被告は,後記のとおり,構成要件コの「ディスク状」とは,直径が高さ(厚さ)に対して,オーダー(桁)が異なる程度(数十倍以上)に大きい形状をいうと解すべきであり,また,本件明細書の発明の詳細な説明では,「ディスク とおり,構成要件コの「ディスク状」とは,直径が高さ(厚さ)に対して,オーダー(桁)が異なる程度(数十倍以上)に大きい形状をいうと解すべきであり,また,本件明細書の発明の詳細な説明では,「ディスク状」と「円錐状」の形状を峻別して用いながら,特許請求の範囲としては,あえて「ディスク状」と限定していることからすれば,「円錐状」様のものは,「ディスク状」の概念には含まれないものと解すべきであるところ,被告製品の「液体貯留室」の形状は,逆円錐台形状であるから,そもそも「ディスク状」とはいえないし,「液体貯留室」の径に対してその高さは2分の1から4分の1程度であって,径に対する高さのオーダー(桁)が同じ程度であるから,被告製品の「液体貯留室」は,構成要件コの「ディスク状」の「液体供給空間」に当たらない旨主張する。 しかしながら,前記bで述べたとおり,被告製品の「液体貯留室」は,構成要件コの「ディスク状」の「液体供給空間」に当たるものと - 24 -いえるから,被告の上記主張は理由がない。 小括以上によれば,被告製品は,本件発明5の構成要件をすべて充足するものといえるから,本件発明5の技術的範囲に属する。 ウ本件発明10について被告製品が構成要件セを充足することは,前記争いのない事実等ウのとおりであり,また,被告製品が本件発明5の技術的範囲に属する装置であることは,前記イのとおりであるから,被告製品は構成要件ソを充足する。 したがって,被告製品は,本件発明10の構成要件をすべて充足するものといえるから,本件発明10の技術的範囲に属する。 エまとめ以上のとおり,被告製品を使用する加工方法は,本件発明1の技術的範囲に属し,また,被告製品は,本件発明5及び10の技術的範囲に属する。 そして,被告製品は,本件 的範囲に属する。 エまとめ以上のとおり,被告製品を使用する加工方法は,本件発明1の技術的範囲に属し,また,被告製品は,本件発明5及び10の技術的範囲に属する。 そして,被告製品は,本件発明1の方法の使用にのみ用いる物であるから,被告による被告製品の製造及びその譲渡等の申出は,本件発明1に係る本件特許の間接侵害(特許法101条4号)に該当するとともに,本件発明5及び10に係る本件特許の侵害行為に該当する。 被告の主張ア本件発明1について 構成要件エの非充足a 「せき止め」とは,通常の用語の意味からすれば,「流れを堰(せき)で止め,流れを溜める」ことを意味するが,本件発明1において,「堰」を設けたり,流れを止めて溜めたりするということは,技術的に意味不明であり,また,「せき止め空間」という用語は,流体力学において通常使用されている用語ではないこと(乙14)からすると, - 25 -本件発明1(請求項1)の構成要件エにいう「せき止め空間」なる用語は,その技術的意義が不明瞭であり,その結果,「せき止め空間」が「ある」,「ない」の判断基準(発明の外延)も不明瞭となっているため,構成要件エの「せき止め空間のない」の用語を解釈するに当たっては,請求項における他の記載,発明の詳細な説明等を参酌し,限定的に解釈すべきである。 本件発明1(請求項1)の構成要件エないしカ及び本件発明5(請求項5)の構成要件コないしシの記載からすれば,「せき止め空間のない」とは,「液体供給空間」(のノズル入口開口(30)の周り)を限定する形容句であり,「液体の流速が十分に高くなり,ノズルを損傷しない程度に熱レンズの形成が抑圧されることを実現するための」何らかの限定であるといえる。 そこで,本件明細書の発明の詳細な説明をみると,① 容句であり,「液体の流速が十分に高くなり,ノズルを損傷しない程度に熱レンズの形成が抑圧されることを実現するための」何らかの限定であるといえる。 そこで,本件明細書の発明の詳細な説明をみると,①「レーザービームを伝達する窓の,ノズル開口の方に向いた下側は,100μmのノズル直径の際に200μmないし500μmの距離のところにあるようにする。それにより熱レンズの形成を助長する液体せき止め空間が避けられる。」(6頁7行~9行),②「液体供給空間35は,ノズル入口開口30の周囲にせき止め空間として作用する液体空間を持たない。液体供給空間35の高さは,理論的にはノズル通路23の横断面の半分を有するだけでよい。しかし,これは,液体の管摩擦損失を減少するため及び渦形成を避けるために,それよりいくらか大きく選定されている。」(7頁37行~41行)との記載があり,上記各記載からすれば,液体供給空間の高さを,ノズル径(例えば,100μm)の半分強(50μm強)から,5倍程度とした場合に,(熱レンズを形成しない)「せき止め空間がない」状態であることがわかる。 - 26 -したがって,構成要件エの「せき止め空間のない」とは,「液体供給空間の高さが,ノズルの直径の半分ないし数倍程度の低い高さしか有しない構成」を意味するものと解される。 このような解釈は,原告が,本件特許の優先権主張の基礎となる出願に係るドイツ国特許(DE4418845C1)についての連邦特許裁判所の無効審判(乙19のA11)において,新規性欠如の無効理由を解消するため,液体供給空間の高さ(「液体を充填した室(12)の長さ」)について,「1.6 液体を充填した室(12)の長さが,ノズル(3)の前における液体内における熱レンズの効果を避けるために,ビーム軸線に対して平行に, 間の高さ(「液体を充填した室(12)の長さ」)について,「1.6 液体を充填した室(12)の長さが,ノズル(3)の前における液体内における熱レンズの効果を避けるために,ビーム軸線に対して平行に,ノズル通路(6)の直径の半分と2mmとの間の値であることを特徴としている。」(乙19のA12の訳文6頁4行~7行)として,ノズル通路の直径の半分と2mmとの間の値の範囲に請求項を限定することにより,熱レンズの効果を避けることができることを明確に示していることなどと整合する。 b 被告製品は,乙7に記載された発明の実施形態の一つであるところ,被告製品の構成の概要は,別紙3のとおりである。 しかるところ,被告製品においては,ノズル径は40~200μmのものが使われているのに対し,液体貯留室の高さは,ノズル径とは明らかにオーダー(桁)の異なる大きな高さとなっている(乙7の段落【0071】では,液体貯留室の高さは,ノズル径の20~400倍の間に設定されている。)。 このように被告製品は,液体供給空間の高さが大きいため,乙14の資料7のシミュレーション結果が示すように,「ノズル入口開口の周り」に当たる「ノズル入口開口の上部の流速が0に近い濃い青色を示している部分」(資料7の図1の中央部分)において原告が主張す - 27 -る「液体の流速がほぼ0である状態」が生じている。 c この点に関し原告は,「せき止め空間」がある場合について,一般的に二つのパターンが想定できるという前提に立って,「せき止め空間」の有無を判断できる旨主張するが,本件明細書には,そのように「せき止め空間」に二つのパターンがあることについて一切記載がなく,また,それが技術常識であることを示す証拠も存在しないため,原告の主張はその前提において誤っているといわざるを得ない。 ,そのように「せき止め空間」に二つのパターンがあることについて一切記載がなく,また,それが技術常識であることを示す証拠も存在しないため,原告の主張はその前提において誤っているといわざるを得ない。 d 以上によれば,被告製品においては,「液体供給空間の高さが,ノズルの直径の半分ないし数倍程度の低い高さしか有しない構成」を有するものとはいえないから,被告製品を使用する加工方法は,構成要件エの「せき止め空間のない」を充足しない。 構成要件オの非充足被告製品の技術思想は,液体貯留室内の流速を低下させることにより,噴流液柱内において安定した層流状態を作り出して表面乱れがないようにし,レーザー光の伝搬効率を向上させるものである(乙7の段落【0006】,【0012】,【0071】等参照)。 そのため,被告製品においては,前記bのとおり,ノズルの直径と比べて,液体貯留室(液体供給空間)の高さを十分に高くし,その結果,むしろ流速を遅くしていることからすると,被告製品を使用する加工方法は,構成要件オの「液体の流速が,十分に高く決められるようにし」との構成を充足しない。 構成要件カの非充足a 構成要件カの「したがってフォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される」との構成は,本件発明1の目的ないし効果を規定しているにすぎず,本来的には不明瞭な記載である。 - 28 -また,本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び5等では,レーザーの波長について何らの限定がなく,請求項3及び11では,レーザービームの波長を「0.25μmと2.1μmの間」(すなわち,250nmから2100nm)と広く記載しているが,本件明細書の発明の詳細な説明には,YAGレーザー基 なく,請求項3及び11では,レーザービームの波長を「0.25μmと2.1μmの間」(すなわち,250nmから2100nm)と広く記載しているが,本件明細書の発明の詳細な説明には,YAGレーザー基本波(1.064μmすなわち1064nm)を用いた実施例が記載されているのみであり(7頁15行~17行),「0.25μmと2.1μmの間」の波長について記載はない。 しかしながら,構成要件カの中に「熱レンズの形成が抑圧される」と明記されている以上,構成要件カにおける「レーザー」は,「熱レンズの形成が問題となるレーザー」をいうものと限定的に解釈されるべきである。 b 被告製品では,レーザービームとして,グリーンレーザーを使用している。グリーンレーザーは水に対する吸収率が極端に小さく,水に極めて吸収されにくい性質を有することから,グリーンレーザーを使用する被告製品においては,ノズル壁を損傷する程度の熱レンズは,そもそも形成されない。もっとも,グリーンレーザーにおいても,水に対する吸収が物理的にゼロではないから,(レーザーのエネルギーを吸収することに起因する)水の温度の上昇は,わずかながら見られるが,たとえ水が滞留している(流れていない)場合であっても,「ノズル壁を損傷」するに至る程度の「熱レンズ」は,そもそも「形成」されない。このことは,乙16(富山県工業技術センター所長作成の平成22年10月28日付け試験成績通知書),乙17(被告従業員C作成の平成22年11月1日付け陳述書),乙26(特許第2896908号公報),乙A3(Dほか「医療用赤外中空ファイバの開発」日立電線№24(2005-1))等に示すとおりである。 - 29 -このように被告製品においては,ノズル壁を損傷する程度の「熱レンズの形成」という前提が存在しない以上, 空ファイバの開発」日立電線№24(2005-1))等に示すとおりである。 - 29 -このように被告製品においては,ノズル壁を損傷する程度の「熱レンズの形成」という前提が存在しない以上,「熱レンズの形成」が「抑圧される」こともあり得ない。 c この点に関し原告は,甲32等の実験によって,グリーンレーザーであっても,「ノズル壁を損傷」するに至る程度の「熱レンズ」の形成が生じ得ることが明らかである旨主張するが,ノズル壁の損傷は,装置の調整の不備やずれ(アラインメントエラー)に起因するもの,水の中のイオン又は粒子により水が光を吸収して発生するプラズマ及び衝撃波に起因するもの等の様々な要因が考えられるにもかかわらず,原告は,それらの他の要因について何ら検証することなく,ノズル壁の損傷が「熱レンズ」が原因であると断定しているにすぎないものである。 また,そもそも原告は,被告製品において「ノズル壁を損傷」する程度の「熱レンズの形成」が問題となることについての具体的な立証をしていない。 d 以上のとおり,グリーンレーザーを使用する被告製品においては,「ノズル壁を損傷」するに至る程度の「熱レンズ」は,「形成」されないのであるから,被告製品を使用する加工方法は,構成要件カの「レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される」との構成を充足しない。 小括以上のとおり,被告製品を使用する加工方法は,構成要件エないしカを充足しないから,本件発明1の技術的範囲に属さない。 イ本件発明5について 構成要件コの「液体供給空間」については,「ディスク状」との限定が付されている。 - 30 -「ディスク」とは,「①円盤。円板。②レコード。音盤。また,コンパクト・ディスク。③フロッピー・デ 成要件コの「液体供給空間」については,「ディスク状」との限定が付されている。 - 30 -「ディスク」とは,「①円盤。円板。②レコード。音盤。また,コンパクト・ディスク。③フロッピー・ディスク,ハードディスクなどの略。」を意味するから(甲20),これらの形状を意味する「ディスク状」とは,直径が高さ(厚さ)に対して,オーダー(桁)が異なる程度(数十倍以上)に大きい形状をいう。 この点,本件明細書には,「ディスク状」についての具体的な意義の記載はないが,図面を参照すると,高さに対して,直径が10倍以上の大きさとなっており,まさに「ディスク状」といえる。 また,発明の詳細な説明では「液体供給空間35をディスク状に構成する代わりに,この液体供給空間は,鋭角半角を有する円錐状に製造してもよく」と記載され,「ディスク状」と「円錐状」の形状を峻別して用いている。その上で,原告は,本件訂正において請求項1の液体供給空間についてあえて「ディスク状」と限定して訂正をしていることからすれば,「円錐状」様のものは,「ディスク状」の概念には含まれないものと解される。 これを被告製品についてみると,被告製品の「液体貯留室」は「円錐台形状」であり,そもそも円盤・円板・レコードのような「ディスク状」の概念には含まれないし,しかも,径に対して高さは2分の1から4分の1程度であり,径と高さは,そのオーダーが同じ程度である。 したがって,被告製品の「液体供給空間」は「ディスク状」ではないから,被告製品は,構成要件コの「ディスク状」の「液体供給空間」を充足しない。 以上のとおり,被告製品は,構成要件コを充足せず,また,前記ア及びと同様の理由により,構成要件サ及びシも充足しない。 したがって,被告製品は,本件発明5の技術的範囲に属さない。 しない。 以上のとおり,被告製品は,構成要件コを充足せず,また,前記ア及びと同様の理由により,構成要件サ及びシも充足しない。 したがって,被告製品は,本件発明5の技術的範囲に属さない。 ウ本件発明10について - 31 -前記イのとおり,被告製品は,本件発明5(請求項5)の技術的範囲に属せず,構成要件ソの「請求項5ないし9の1つに記載の装置」を充足しない。 したがって,被告製品は,本件発明10の技術的範囲に属さない。 エまとめ以上のとおり,被告製品を使用する加工方法は,本件発明1の技術的範囲に属せず,また,被告製品は,本件発明5及び10の技術的範囲に属さないから,被告による被告製品の製造及び販売の申出等は,本件各発明に係る本件特許の侵害行為に当たらない。 2 争点2(本件特許権に基づく権利行使の制限の成否)について 被告の主張本件各発明に係る本件特許には,以下のとおりの無効理由があり,特許無効審判により無効とされるべきものであるから,特許法104条の3第1項の規定により,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することはできない。 ア無効理由1(実施可能要件違反)本件明細書の発明の詳細な説明は,以下のとおり,当業者が容易に本件各発明の実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果の記載があるとはいえず,旧特許法36条4項に適合しないから,本件各発明に係る本件特許には,同項に違反する無効理由(同法123条1項4号)がある。 本件明細書(甲2)の発明の詳細な説明には,①従来技術であるヨーロッパ特許第0515983A1号公報(乙A1)に記載された装置においては,「ノズル通路入口の上のフォーカス円錐先端の範囲に,熱レンズが生じ,この熱レンズは,ここに示された焦点の場所を上方 あるヨーロッパ特許第0515983A1号公報(乙A1)に記載された装置においては,「ノズル通路入口の上のフォーカス円錐先端の範囲に,熱レンズが生じ,この熱レンズは,ここに示された焦点の場所を上方へずらし,かつ焦点直径を大幅に増加する。それによりフォーカス円錐内のレーザービームの一部は,ノズル壁に,とくにここにおいて利用された液 - 32 -体せき止め空間の方に向いたノズル表面に当たる。この時一方において材料加工のために必要な高い強度によって,この時ノズルの壁が損傷する」(4頁6行~12行)という問題が発生すること,②「本発明の課題は,液体ビームを形成するノズルをレーザーのビームによって損傷することなく,レーザービームを材料加工のために液体ビーム内に光学的に結合することができる装置を提供すること」(3頁45行~47行)にあり,「できるだけ熱レンズを生じることがなく,又はその作用を大幅に小さくすること」(4頁28行~29行)を目的とすること,③「本発明」は,上記課題を解決するため,「加熱時間をそもそもできるだけ短く維持するために,液体が,レーザービームのフォーカス円錐の範囲から,とくにその先端範囲からできるだけ迅速に運び出される。明らかに最善の結果は,わずかな吸収を有するフォーカス円錐における液体の短い滞在時間の際に達成される」(4頁35行~38行)という構成を採用することが記載されている。 そして,本件各発明においては,液体供給空間へ供給され,ノズルから噴射される液体を,ノズル入口開口の周りにおいて「せき止め空間のない」ように導き,これにより液体供給空間内のレーザービームが通る部分であるフォーカス円錐先端範囲における液体の流速を十分に高くし,フォーカス円錐先端範囲において熱レンズが形成されるのを抑圧し,これによりレーザー ,これにより液体供給空間内のレーザービームが通る部分であるフォーカス円錐先端範囲における液体の流速を十分に高くし,フォーカス円錐先端範囲において熱レンズが形成されるのを抑圧し,これによりレーザービームの一部がノズル壁を損傷しないという効果を奏するようにしている(請求項1及び5参照)。 しかしながら,熱レンズの形成を抑圧するという本件各発明の効果は,使用するレーザービームの種類(波長),レーザーの出力(ワット数),使用する液体の種類,液体供給空間の構造,液体供給空間に液体を供給する圧力,液体の流速等の実施条件を適切に組み合わせることによって初めて得られるものであるところ,本件明細書には,上記効果を - 33 -得るために必要な実施条件の一部が個別に記載されてはいるものの,それらの各実施条件をいかに組み合せるべきかについての記載は一切なく,当業者が本件明細書を参照しても本件各発明を容易に実施できないことは明らかである。 以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件各発明の目的を実現する構成の記載がなく,本件明細書の記載のみから当業者が容易に本件各発明を実施することができないから,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,旧特許法36条4項に適合せず,実施可能要件に違反している。 イ無効理由2(特許請求の範囲の記載不備)本件発明1及び5の特許請求の範囲(請求項1及び5)の記載は,以下のとおり,「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみ」を記載したものとはいえず,請求項5を引用する本件発明10の特許請求の範囲(請求項10)の記載もこれと同様であるから,本件各発明に係る本件特許には,旧特許法36条5項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた無効理由(同法123条1項4号)がある。 の範囲(請求項10)の記載もこれと同様であるから,本件各発明に係る本件特許には,旧特許法36条5項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた無効理由(同法123条1項4号)がある。 「せき止め空間」についてa 本件発明1及び5の特許請求の範囲(請求項1及び5)の「せき止め空間」(構成要件エ,コ)なる用語は,その技術的意義が不明瞭である。 また,「せき止め空間」の有無の判断基準は,本件明細書の発明の詳細な説明を参照しても,何ら示されていない。 b この点に関し,原告は,「せき止め空間」とは,「液体静止状態の空間」あるいは「液体の流速がほぼ0程度の状態が生じる空間」であり,このような解釈は第2次審決の解釈と一致する旨主張する。 しかし,本件明細書には,「液体静止状態」と「せき止め空間」の - 34 -対応関係・関連性が何ら開示されない。本件明細書(甲2)において,「せき止め空間」と「(液体)静止状態」は,別個の箇所に記載されており(「せき止め空間」につき7頁36行~39行,「(液体)静止状態」につき3頁36行~42行,4頁20行~23行),また,熱レンズや,液体の流速を高くするという概念が「(液体)静止状態」と「せき止め空間」とを結び付けている趣旨の記載もない。 仮に原告が主張するように「せき止め空間」を「液体の流速がほぼ0程度の状態が生じる空間」と解釈したとしても,その意味が不明確であり,結局のところ,「せき止め空間」との不明確な文言を,別の不明確な文言で更に置き換えたものにすぎない。 「せき止め空間のない」について前記のとおり,「せき止め空間」の意義が不明確なものである以上,請求項1及び5の「せき止め空間のない」(構成要件エ,コ)なる用語の意義も,不明確であるといわざるを得ない。 のない」について前記のとおり,「せき止め空間」の意義が不明確なものである以上,請求項1及び5の「せき止め空間のない」(構成要件エ,コ)なる用語の意義も,不明確であるといわざるを得ない。 この「せき止め空間のない」という表現は,否定的な表現であり,特許庁の「特許・実用新案審査基準」(乙5。以下「審査基準」という。)の「特許法第36条第5項第2号違反の類型①」(審査基準6頁)に照らし,旧特許法36条5項2号に違反するものである。 「液体の流速が,十分に高く」について請求項1及び5の「液体の流速が,十分に高く」(構成要件オ,サ)という表現は,その比較の基準,程度が不明瞭である。 「フォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く」について請求項1及び5の「フォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く」(構成要件オ,サ)という記載は,技術的に明瞭でない。 - 35 -すなわち,「フォーカス円錐先端範囲」は,所定の容積を有する空間であり,この空間内の各部において液体の流速が異なるものとなっていることは自明であるが,「フォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く」との記載は,フォーカス円錐先端範囲内のある1点の流速を十分高くするとの意味であるのか,フォーカス円錐先端範囲内のすべての点において流速を十分高くするとの意味であるのか,あるいは,フォーカス円錐先端範囲内の平均流速を十分高くするとの意味であるのか不明であり,かかる記載は,特許請求の範囲を画する客観的な構成要件として機能し得ない。 小括以上のとおり,請求項1及び5は,「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみ」を明確に記載したものとはいえず,請求項5を引用する請求項1 成要件として機能し得ない。 小括以上のとおり,請求項1及び5は,「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみ」を明確に記載したものとはいえず,請求項5を引用する請求項10もこれと同様であるから,本件各発明の特許請求の範囲の記載は,旧特許法36条5項2号に適合しない。 ウ無効理由3(乙A1に基づく新規性欠如)本件各発明は,以下のとおり,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である乙A1(ヨーロッパ特許第0515983A1号公報)に記載された発明と実質的に同一であるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条1項3号に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 乙A1に記載された発明乙A1には,材料アブレーション装置に係る発明が記載されている。 「材料アブレーション」とは,材料を除去(削摩,溶発,融除)することを意味し,乙A1に記載された「材料アブレーション装置」は,材料にレーザービームを照射して材料を溶融させて除去する加工を行うための装置である。乙A1には,歯科治療を行うための材料アブレーション装置が実施形態として記載されているが,それ以外の工具類にも適用 - 36 -できることが示唆されている(訳文5頁18行~20行)。 乙A1に記載された発明と本件各発明との対比a 乙A1の記載事項乙A1の記載事項(訳文1頁4行~11行,14行~16行,4頁4行~9行,5頁3行~6行,18行~20行,21行~29行,6頁27行~36行,7頁26行~27行,7頁35行~8頁5行,8頁18行~20行,26行~31行)によれば,乙A1には,本件発明1の構成要件アないしウ及びキ,本件発明5の構成要件ク,ケ及びス,本件発明10の構成要件セがそれぞれ開示されている。 b 本件発明1との対比 20行,26行~31行)によれば,乙A1には,本件発明1の構成要件アないしウ及びキ,本件発明5の構成要件ク,ケ及びス,本件発明10の構成要件セがそれぞれ開示されている。 b 本件発明1との対比 乙A1には,本件発明1の構成要件エないしカは明示されていないが,これらの構成は,乙A2(日本洗浄協会「産業洗浄」昭和57年9月10日発行)及び乙A3(Dほか「医療用赤外中空ファイバの開発」日立電線No.24(2005-1))をも参酌すれば,乙A1に実質的に開示されているといえる。 ① まず,本件明細書(甲2)には,本件発明1の実施形態である装置の具体的構成として,ノズル径100μm(6頁7行),液体圧力10~1000バール(6頁48行~7頁4行),液体として水(5頁31行~32行),レーザービームとして波長1. 064μmの「ND:YAGレーザー」(7頁15行~16行)を使用することが記載されている。一方で,前記aの乙A1の記載事項によれば,乙A1には,ノズル径10~500μm,液体圧力0.5~100bar,液体として水,レーザービームとして「Nd:YAGレーザー」(「ND:YAGレーザー」)を使用することが記載されている。 本件発明1に係る装置と乙A1記載の装置は,ノズル径及び液 - 37 -体圧力の値が重複するところ,乙A2の111頁7行に示された,ノズルからの噴射水量とノズル口径及び噴射圧力の関係を示す数式からすると,時間当たりにノズルから噴射される噴射水量Qは,ノズル径(ノズルの口径)d及び液体圧力(噴射圧力)Pにより規定されることが理解できるから,乙A1記載の装置は,本件発明1に係る装置と同一の水量をノズルから噴射するものといえる。 【乙A2に記載された数式】nPdQ×× れることが理解できるから,乙A1記載の装置は,本件発明1に係る装置と同一の水量をノズルから噴射するものといえる。 【乙A2に記載された数式】nPdQ××= .0 η (d:ノズル口径[mm],P:噴射圧力[kgf/cm2],Q:噴射水量[l/min],n:ノズル孔数,η:ノズル効率係数,噴射ガンノズル1.05~1.1,スチールランス・高圧ホース用ノズル1.2~1. 3)このように乙A1記載の装置と本件発明1に係る装置は,時間当たり同量の水を噴射するものであることからすると,同一口径のノズルから噴射される水の流速,ひいてはノズル入口,すなわち本件発明1におけるフォーカス円錐先端範囲の頂点に位置する部分の水の流速が,両装置において同一となることは明らかである。 そうすると,乙A1記載の装置と本件発明1に係る装置は,フォーカス円錐先端範囲における水の流速が等しいものと理解できる。 ② 前記①のとおり,乙A1記載の装置と本件発明1に係る装置は,フォーカス円錐先端範囲における水の流速が等しいのであるから,本件発明1において熱レンズの形成が抑圧されていれば, - 38 -乙A1記載の装置においても,本件発明1と同様に,熱レンズの形成が抑圧されていることは明らかである。その結果,乙A1記載の装置においても,「せき止め空間がなく」,さらには「液体の流速が十分に高い」ことになる。 したがって,乙A1記載の装置においても,乙A2を参酌すれば,実質的に本件発明1の構成要件エないしカを具備しているものと理解することができる。 ③ 仮に乙A1記載の装置における水の流速が本件発明1における水の流速よりも遅く,波長1.064μmの「Nd:YAGレーザー」を使用した場合に熱レンズが 具備しているものと理解することができる。 ③ 仮に乙A1記載の装置における水の流速が本件発明1における水の流速よりも遅く,波長1.064μmの「Nd:YAGレーザー」を使用した場合に熱レンズが形成されたとしても,乙A1には,一例として「Nd:YAGレーザー」が挙げられているにすぎず,種々のレーザーを使用することが可能であることが記載されていること(訳文5頁),乙A3の7頁の図1には,各種レーザーの水に対する吸収係数がレーザーの波長により大幅に異なっていることが明らかにされていることに照らすならば,乙A1記載の装置において,吸収係数の低いレーザーを適宜選択することにより,熱レンズの形成を十分に抑圧することができるといえる。 以上のとおり,乙A2及び乙A3を参酌すれば,乙A1には,実質的に本件発明1の構成要件エないしカが開示されていると理解することができる。 そうすると,乙A1記載の装置を使用する加工方法は,構成要件アないしキの構成をすべて具備するものといえるから,本件発明1と実質的に同一である。 c 本件発明5との対比乙A1には,本件発明5の構成要件コないしシは明示されていない - 39 -が,上記bと同様の理由により,これらが実質的に開示されていると理解することができる。 そうすると,乙A1記載の装置は,構成要件クないしスの構成をすべて具備するものといえるから,本件発明5と実質的に同一である。 d 本件発明10との対比乙A1には,「コヒーレント光ビーム10を光ファイバー6の端部8まで伝播および案内するための手段となる光ファイバーが設置される」(訳文5頁)ことが記載されており,本件発明10の構成要件セが開示されている。 また,上記cのとおり,乙A1記載の装置は,本件発明5と実質的に同一であり, の手段となる光ファイバーが設置される」(訳文5頁)ことが記載されており,本件発明10の構成要件セが開示されている。 また,上記cのとおり,乙A1記載の装置は,本件発明5と実質的に同一であり,構成要件ソに含まれる「請求項5記載の装置」といえる。 したがって,乙A1記載の装置は,構成要件セ及びソの構成をいずれも具備するものといえるから,本件発明10と実質的に同一である。 小括以上によれば,本件各発明は,乙A1に記載された発明と同一のものであって,新規性が欠如している。 エ無効理由4(乙A1を主引例とする進歩性欠如)仮に無効理由3が認められないとしても,本件各発明は,以下のとおり,乙A1に記載された発明と乙A4(特開昭60-193452号公報)又は乙A5(特公平1-38372号公報)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,本件各発明に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 本件発明1について - 40 -a 乙A1に記載された発明と本件発明1との一致点及び相違点本件発明1と乙A1に記載された発明とは,構成要件アないしウ及びキを具備する点で一致するが,乙A1に記載された発明が構成要件エないしカの構成を備えているのかどうか明らかでない点で相違する。 b 相違点の容易想到性 乙A4には,レーザー光をウォータージェットにより導く装置において,水による吸収の少ない波長を選択すること(2頁左上欄10行~20行,右上欄10行~19行,左下欄5行~7行)が記載されている。 したがって,仮に乙A1記載の装置において熱レンズが形成されていたとしても,乙A1記載の装置に使用するレーザーの種類を,乙A4の記載事項に基づい ~19行,左下欄5行~7行)が記載されている。 したがって,仮に乙A1記載の装置において熱レンズが形成されていたとしても,乙A1記載の装置に使用するレーザーの種類を,乙A4の記載事項に基づいて,水による吸収の少ない波長のレーザーを選択することにより,熱レンズの形成を抑圧することができる。このような水による吸収の少ない波長のレーザーに対しては,遅い流速であっても,熱レンズの形成を抑制することができる「十分に高い流速」であるということができる。 そうすると,当業者は,乙A1に記載された発明に使用するレーザーを,乙A4の記載に基づいて選択することによって,相違点に係る本件発明1の構成を容易に想到することができたものといえる。 また,乙A5には,レーザーをジェットにより導く装置において,水による吸収の非常に少ないアルゴンレーザーが使用されていること(1欄13行~18行,7欄11行~8欄4行,10欄19行~27行,11欄30行~36行)が記載されている。 したがって,仮に乙A1記載の装置において熱レンズが形成され - 41 -ていたとしても,乙A1記載の装置に使用するレーザーの種類を,乙A5の記載事項に基づいて,乙A5の装置において使用されているアルゴンレーザーに置き換えることにより,熱レンズの形成を抑圧することができる。 そうすると,当業者は,乙A1に記載された発明に使用するレーザーを,乙A5に記載されているアルゴンレーザーに置き換えることにより,相違点に係る本件発明1の構成を容易に想到することができたものといえる。 本件発明5について本件発明5と乙A1に記載された発明とは,構成要件ク,ケ及びスを具備する点で一致するが,乙A1に記載された発明が構成要件コないしシの構成を備えているのかどうか明らかでない 本件発明5について本件発明5と乙A1に記載された発明とは,構成要件ク,ケ及びスを具備する点で一致するが,乙A1に記載された発明が構成要件コないしシの構成を備えているのかどうか明らかでない点で相違する。 しかるところ,前記bで述べたところと同様の理由により,当業者は,乙A1と乙A4又は乙5Aに基づいて,相違点に係る本件発明5の構成を容易に想到することができたものといえる。 本件発明10について前記ウdのとおり,乙A1には,本件発明10の構成要件セが開示されている。 そして,前記bで述べたところと同様の理由により,当業者は,乙A1と乙A4又は乙5Aに基づいて,本件発明10の構成要件ソの構成を容易に想到することができたものといえる。 小括以上によれば,本件各発明は,乙A1に記載された発明と乙A4又は乙A5に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから,進歩性が欠如している。 原告の主張 - 42 -ア無効理由1に対し 本件明細書(甲2)の発明の詳細な説明には,「本発明の課題は,液体ビームを形成するノズルをレーザーのビームによって損傷することなく,レーザービームを材料加工のために液体ビーム内に光学的に結合することができる装置を提供することにある。」(3頁45行~47行),「有利な構成変形において,ノズル入口に対抗する壁に,ヨーロッパ特許出願公開第0515983号明細書におけるようなフォーカスレンズも組込まれず,レーザービームを損失なく伝達する窓が組込まれるだけである。ノズル入口のほぼ真上にあるこの窓だけによって,フォーカス円錐の先端における液体容量をそもそもできるだけ少なく,かつ流速をそもそもできるだけ高く維持することが可能である。」(4頁43行 けである。ノズル入口のほぼ真上にあるこの窓だけによって,フォーカス円錐の先端における液体容量をそもそもできるだけ少なく,かつ流速をそもそもできるだけ高く維持することが可能である。」(4頁43行~47行)との記載がある。 これらの記載や本件明細書の「発明の詳細な説明」の他の記載を参照すれば,例えば,ノズル入口に対抗する壁にレーザービームを損失なく伝達する窓を組込み,ノズル入口開口の周りにおいて,熱レンズの発生を抑圧できるように,フォーカス円錐の先端における液体容量を少なくして,流速を高く維持することにより,当業者であれば,本件各発明を容易に実施することができる。 また,「使用するレーザービームの種類(波長)」,「レーザーの出力(ワット数)」,「使用する液体の種類」,「液体供給空間に液体を供給する圧力」等の実施条件については,主として,被加工材料の材質,形状,大きさに依存するところが大きく,被加工材料が決まれば,それに応じて,これら諸条件が決まるものであるから,本件各発明を実施することに困難はない。 これに対し被告は,本件明細書には,本件各発明に係る効果を得るために必要な実施条件の一部が個別に記載されてはいるものの,それらの - 43 -各実施条件をいかに組み合せるべきかについての記載は一切なく,当業者が本件明細書を参照しても本件各発明を容易に実施できない旨主張する。 しかしながら,本件各発明の技術分野においては,化学分野における発明とは異なり,ありとあらゆる実施条件の組合せをすべて明示して説明する必要性はなく,代表的なものが例示されていれば,当業者において結果予測可能性が担保され,本件各発明を過度の試行錯誤を経なくとも実施することが可能であるというべきであるところ,本件明細書には,「ND:YAGレーザー」の基 ものが例示されていれば,当業者において結果予測可能性が担保され,本件各発明を過度の試行錯誤を経なくとも実施することが可能であるというべきであるところ,本件明細書には,「ND:YAGレーザー」の基本波である「1.064μmの波長を有するレーザービーム3」(7頁15行)が開示されているほか,液体としては,水,シリコンオイル及びコロイド状の溶液も開示されているし(8頁30行~31行),液体の圧力の例示としては,「10バール」(6頁48行),「80バール」(5頁31行),「100バール」(6頁50行)及び「1000バール」(7頁3行)が記載されており,当業者が本件各発明を実施するために十分な開示があるといえる。 したがって,被告主張の無効理由1は理由がない。 イ無効理由2に対し 旧特許法36条5項2号違反の無効理由の有無を検討するに当たっては,学術的に厳密な用語の使用,発明の外延を明確にすることが望ましいことはいうまでもないが,必ずしもそれが求められているものではなく,技術的思想の創作として明確かどうかが問題とされるべきであって,そのような観点から,以下のとおり,各構成要件の意義を解釈すべきである。 a 「せき止め空間」について請求項1及び5(本件発明1及び5)にいう「せき止め空間」の技術的意義は,液体静止状態の空間,液体の淀む空間,すなわち,流体 - 44 -の流速がほぼ0になっている空間を意味していることは明らかであり,発明の構成に欠くことのできない事項として明確であるといえる。 b 「せき止め空間のない」について請求項1及び5にいう「せき止め空間のない」とは,「せき止め空間」がないこと,つまり,液体静止状態の空間,液体の淀む空間,流体の流速がほぼ0になっている空間がないことを意味していることは明らか 請求項1及び5にいう「せき止め空間のない」とは,「せき止め空間」がないこと,つまり,液体静止状態の空間,液体の淀む空間,流体の流速がほぼ0になっている空間がないことを意味していることは明らかであり,発明の構成に欠くことのできない事項として明確であるといえる。 審査基準には,否定的な表現が「特許法36条第5項第2号違反の類型①」に該当する旨が記載されているが,これは,否定的な表現があることにより,特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項が不明瞭になる場合を例示しているにすぎず,否定的な表現を用いたすべての発明がこれに違反するとするものではなく,否定的表現を使用したとしても,発明の構成に欠くことのできない事項が明確になっていれば,何らの問題もない。 c 「液体の流速が,十分に高く」及び「フォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く」について請求項1及び5にいう「液体の流速が,十分に高く」という表現は,何の比較対象もなく「十分に高く」というものではなく,液体の流速が,構成要件カ(シ)にあるように,「フォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,(液体内における)熱レンズの形成が抑圧される」だけ十分に高いことを意味しており,これらを併せてみれば,何ら不明瞭な表現ではない。 また,請求項1及び5にいう「フォーカス円錐先端範囲(56)に - 45 -おける液体の流速が,十分に高く」とは,当該文言を忠実に文理解釈すれば,フォーカス円錐先端範囲全体において液体の流速を十分に高くすることを意味していることは明らかである。 以上によれば,被告主張の無効理由2は理由がない。 ウ無効理由3に対しa 乙A1は,意図的に,膨張チャンバーに液体 いて液体の流速を十分に高くすることを意味していることは明らかである。 以上によれば,被告主張の無効理由2は理由がない。 ウ無効理由3に対しa 乙A1は,意図的に,膨張チャンバーに液体を停留させて,層流の液体ジェットを得られるようにした点にポイントがあったのに対し,そのように液体が停留する空間がある構造においては,熱レンズが形成され,これにより発散したレーザーがノズル壁を損傷し,破壊するという問題が生じることが確認されたので,本件各発明は,あらゆる加工対象物を念頭に置くレーザー加工装置において,熱レンズによるノズル壁の損傷を回避するために,そのような熱レンズ効果が生じることなく,又はその作用を大幅に小さくすることを意図したものであり,レーザービームの吸収によって液体が加熱される時間を短くするために,従来技術(乙A1)の思想とは反対に,液体が,停留することなく,レーザービームのフォーカス円錐先端の範囲からできるだけ迅速に運び出されるようにするという構成を採った点に技術的な意義がある。 したがって,乙A1に記載された発明を,本件各発明の新規性欠如の基礎引用技術とすることは誤りである。 このことは,乙A1には,本件発明1の構成要件エないしカ,本件発明5の構成要件コないしシについて,全く記載されていないばかりか,その示唆もされていないことから明らかである。 b これに対し被告は,本件各発明と同様に,乙A1に記載された発明において,熱レンズの形成が抑圧されていることが認められれば,その結果,「せき止め空間がなく」,さらに「液体の流速が十分に高い」 - 46 -ことになるという前提に立ち,乙A2や乙A3を参酌すれば,乙A1に記載された発明においても熱レンズの形成が抑圧されている,あるいは熱レンズの形成が抑圧されるよう 流速が十分に高い」 - 46 -ことになるという前提に立ち,乙A2や乙A3を参酌すれば,乙A1に記載された発明においても熱レンズの形成が抑圧されている,あるいは熱レンズの形成が抑圧されるように適宜レーザーの種類を選択することができる旨主張する。 しかしながら,乙A1に記載された発明においては「せき止め空間」が意図的に設けられているのであるから,被告の主張はその前提において失当である。 また,そもそも,本件各発明における「せき止め空間」の有無は,液体に関する構成要件であって,レーザーの種類,つまり吸収係数の低いレーザーを使用して熱レンズの形成を抑圧するか否かとは無関係であり,本件各発明の技術思想は,そのようなレーザーの種類により熱レンズの形成を抑圧しようとするものではなく,被告の主張は,本件各発明の技術思想を正解しないものといわざるを得ない。 以上によれば,被告主張の無効理由3は理由がない。 エ無効理由4に対しa 前記ウのとおり,本件各発明と乙A1に記載された発明とは,全く異なる技術思想に立脚するもので,乙A1には,本件発明1の構成要件エないしカ及び本件発明5の構成要件コないしシについて記載も示唆もない。 b 乙A4には,「ウォータージェット型レーザー治療装置」がその図面とともに記載されているが,本件各発明の課題について何ら記載や示唆もされていないほか,熱レンズの形成を抑圧するために,液体供給空間に供給される液体が,ノズル入口開口の周りにおいてせき止め空間のないように導かれるようにしたことについても何ら記載されていない。 また,乙A5にもそのような記載は一切ない。 - 47 -c このように乙A1はもとより,乙A4及び乙A5にも,本件各発明の課題と共通する事項や本件発明1の構成要件エないしカ( ていない。 また,乙A5にもそのような記載は一切ない。 - 47 -c このように乙A1はもとより,乙A4及び乙A5にも,本件各発明の課題と共通する事項や本件発明1の構成要件エないしカ(本件発明5の構成要件コないしシ)に相当する事項が一切記載されていないのであるから,乙A1と乙A4又は乙A5を組み合わせる動機付けがそもそも存在しない。 仮にこれらを組み合わせたとしても,いずれにも上記各構成要件が示唆されていない以上,本件各発明の構成を容易に想到することはできないといわざるを得ない。 これに対し被告は,仮に乙A1に記載された発明において熱レンズが形成されていたとしても,乙A1に記載された発明に使用するレーザーの種類を,乙A4の記載に基づいて,水による吸収の少ない波長のレーザーを選択することにより,又は,乙A5の装置において使用されているアルゴンレーザーに置き換えることにより,熱レンズの形成を抑圧することができるのであるから,当業者は,乙A1に記載された発明に,乙A4又は乙A5を適用することにより,本件発明1の構成要件エないしカ(本件発明5の構成要件コないしシ)を容易に想到することができた旨主張する。 しかしながら,そもそも本件各発明における「せき止め空間」の有無は,液体に関する構成要件であって,レーザーの種類,つまり吸収係数の低いレーザーを使用して熱レンズの形成を抑圧するか否かとは無関係であり,本件各発明の技術思想は,そのようなレーザーの種類により熱レンズの形成を抑圧しようとするものではない。 したがって,被告の上記主張は,本件各発明の技術思想を正解しないものとして失当である。 以上によれば,被告主張の無効理由4は理由がない。 3 争点3(訂正による対抗主張の成否)について - 48 - 原 記主張は,本件各発明の技術思想を正解しないものとして失当である。 以上によれば,被告主張の無効理由4は理由がない。 3 争点3(訂正による対抗主張の成否)について - 48 - 原告の主張ア本件訂正による無効理由の解消本件各発明に係る本件特許に無効理由がないことは,前記2のとおりであるが,仮に被告主張の無効理由のいずれかによって本件特許が無効になり得るとしても,以下のとおり,本件訂正によって当該無効理由は解消している。 無効理由1(実施可能要件違反)の解消a 前記2アのとおり,本件各発明の実施条件は,加工対象によって,レーザーの種類,レーザーの圧力,ノズル径,液体を供給する圧力等がほぼ決まるものであるし,これに加えて,本件訂正により,本件訂正発明1において熱レンズの形成を抑圧するための大きな要因である「液体供給空間の構造」が「ディスク状」とされたことで,結果の予測可能性がより担保されることからすると,当業者は,技術常識を考慮することにより,過度の試行錯誤をすることなく,本件各訂正発明を容易に実施することができるものである。これは,第2次審決の結論に沿うものである。 b 以上によれば,本件訂正によって,被告主張の無効理由1は解消される。 無効理由2(特許請求の範囲の記載不備)の解消a 「せき止め空間」,「せき止め空間のない」,「液体の流速が,十分に高く」及び「フォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く」の意義が,いずれも明確であることは,前記2イで述べたとおりであり,第2次審決の解釈はこれに沿うものである。 b 被告は,後記のとおり,本件訂正後の構成要件エ'及びコ'の「ノズル入口開口の周り」及び「周辺から流れる」の意義が不明確である旨 - 49 -主張する 次審決の解釈はこれに沿うものである。 b 被告は,後記のとおり,本件訂正後の構成要件エ'及びコ'の「ノズル入口開口の周り」及び「周辺から流れる」の意義が不明確である旨 - 49 -主張する。 しかしながら,本件各訂正発明は,液体供給空間の構造を従来技術(乙A1)の膨張チャンバーから,「せき止め空間のない」「ディスク状液体供給空間」へと改良することにより,フォーカス円錐先端範囲における液体の静止状態を回避して液体供給空間内の液体を淀むことなくスムーズに噴出させ,熱レンズ効果を抑圧し,ノズル壁の損傷を防止することができるようにしたことに意義があり,このようにフォーカス円錐先端範囲における液体の流速を十分に高くするためには,液体の連続性からフォーカス円錐先端範囲の近傍において,液体が淀む空間がないことが必要であることからすると,「ノズル入口開口の周り」とは,「フォーカス円錐先端範囲及びその近傍」を意味することは明らかであり,このような解釈は,流体力学的観点(甲25(A教授作成の平成22年6月8日付け見解書))からも正しいことが証明されている。 また,構成要件エ'及びコ'の文言(「前記ディスク状液体供給空間(35)内を前記ノズル入口開口(30)に向かって周辺から流れるように導かれ」)を素直に読めば,「周辺」は,「前記ディスク状液体供給空間(35)内」にあることは自明であるし,これに加えて,本件明細書(甲2)の図2(特に矢印)の記載,及び,本件明細書における液体が「同軸的に分配された複数の軸線方向液体通路61a及び61b」から液体供給空間35に流れ込む旨の記載(8頁15行~16行)を参酌すれば,「周辺」とは,「ディスク状液体供給空間内の内周壁の近傍」であると理解でき,このような解釈は,流体力学的観点(甲25)からも正しいこ 給空間35に流れ込む旨の記載(8頁15行~16行)を参酌すれば,「周辺」とは,「ディスク状液体供給空間内の内周壁の近傍」であると理解でき,このような解釈は,流体力学的観点(甲25)からも正しいことが証明されている。 したがって,被告の上記主張は,失当である。 c 以上によれば,本件各訂正発明の特許請求の範囲の記載に不備はな - 50 -く,被告主張の無効理由2は理由がない。 無効理由3(乙A1に基づく新規性欠如)の解消a 第2次審決(乙15)は,本件各訂正発明と乙A1に記載された発明とを対比して,両者(本件訂正発明1と乙A1に記載された発明)が,「収束されるレーザービームによる材料加工方法であって,レーザービームを導く液体ビームがノズルにより形成され,加工すべき加工片へ向けられるものにおいて,前記ノズルの上面と,前記ノズルの上方に配置されるとともに前記レーザービームに対して透明な窓の下面との間には,前記液体ビームを形成するための液体を供給する液体供給空間が形成され,前記ノズルは,ノズル通路のノズル入口開口を有し,レーザービームガイドとして作用する液体ビームへレーザービームを導入するため,前記レーザービームがノズルのノズル通路の前記ノズル入口開口の所で収束され,液体供給空間へ液体が供給される,材料を加工する方法。」である点で一致するが(59頁1行~13行),一方で,①「液体供給空間」について,本件訂正発明1は「ディスク状」であるが,乙A1に記載された発明はそのようなものではない点,②液体供給空間への液体の供給について,本件訂正発明1は,「ディスク状液体供給空間(35)へ供給される液体が,ノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように前記ノズル(43)からの前記窓(36)の高さを設定した前記ディスク状液 正発明1は,「ディスク状液体供給空間(35)へ供給される液体が,ノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように前記ノズル(43)からの前記窓(36)の高さを設定した前記ディスク状液体供給空間(35)内を前記ノズル入口開口(30)に向かって周辺から流れるように導かれ,それによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く決められるようにし,したがってフォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される」ものであるが,乙A1に記載された発明は,「チャンバー3 - 51 -0内に加圧液状流体の準停留,順定常状態が確保される」ものであり,「熱レンズの形成が抑圧される」か不明である点で相違すると判断している(59頁14行~27行)。 第2次審決が示すとおり,本件各訂正発明と乙A1記載の発明には,相違点がある。 b 以上によれば,本件各訂正発明は乙A1記載の発明と同一のものといえないから,本件各訂正発明には新規性があり,本件訂正によって被告主張の無効理由3は解消される。 無効理由4(乙A1を主引例とする進歩性欠如)の解消a 第2次審決が認定するように,本件各訂正発明と乙A1に記載された発明とを対比すると,両者が2つの点において相違することは,前記a①及び②のとおりであり(以下,同①及び②に係る相違点をそれぞれ「相違点1」,「相違点2」という。),これらの相違点に関して本件各訂正発明の構成が容易に想到できるものではなく,本件各訂正発明には進歩性がある。 b 被告は,相違点1に関し,「ディスク状」の「液体供給空間」それ自体は,乙20のA13(特開昭50-118121号公報),乙20のA14(特開平6-424 ,本件各訂正発明には進歩性がある。 b 被告は,相違点1に関し,「ディスク状」の「液体供給空間」それ自体は,乙20のA13(特開昭50-118121号公報),乙20のA14(特開平6-42432号公報)にみられるごとく周知である旨主張し,第2次審決の結論もこれに沿うものである。 しかしながら,乙20のA13及びA14は,いずれも本件特許と全く技術分野の異なる「燃料用の噴出ノズル」について記載したものであり,燃料を霧状に噴霧する技術が開示されているが,本件特許の技術分野のように,いわゆるウォータージェット,特にウォータージェットの中でも層流の噴流を形成する技術については開示も示唆もされていないのであるから,乙20のA13及びA14に「ディスク状」の「液体供給空間」が開示されているからといっ - 52 -て,本件特許の技術分野において,「ディスク状」の「液体供給空間」が,公知あるいは周知であるなどということは到底できない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 被告は,相違点2に関し,①レーザービームの利用において熱レンズ現象が生じ,それが乙A1に記載された発明のノズル損傷の原因であると究明すること,②熱レンズの形成を抑圧する手段として,レーザービームが透過する範囲において,液体が淀むことなく流れるという思想を想到すること,③液体が淀むことなく流れるようにするため,液体供給空間の形状を「ディスク状」とし,「周辺から」液体を供給するという構成を採用することを想到することは,いずれも容易である旨主張し,第2次審決の結論もこれに沿うものである。 しかしながら,まず①についてみるに,レーザービームの利用により,程度の差こそあれ,物理現象として熱レンズが一般的に発生することは,原告においても争うものではないが,そう れに沿うものである。 しかしながら,まず①についてみるに,レーザービームの利用により,程度の差こそあれ,物理現象として熱レンズが一般的に発生することは,原告においても争うものではないが,そうであるからといって,乙A1に記載された発明において,ノズル損傷が発生したとしても,その原因が熱レンズであると容易に想到できるものではなく,設定の不具合(アラインメントエラー),プラズマ等の種々の原因が考えられるところ,原告代表者が度重なる実証実験によって,熱レンズ現象に起因してノズル損傷が発生するという知見を得たのである(甲26,甲A5(いずれも原告代表者作成の陳述書))。 また,②についてみるに,従来技術である乙A1では意図的に液体を停留させるという思想であったにもかかわらず,これとは正反対の「液体が淀むことなく流れる」という発想に転換するには,主引例又は他の引例による示唆等の動機付けが不可欠であると思われるが,そのような示唆等の動機付けは全く存在せず,第2次審決 - 53 -でもそのような示唆等の動機付けが存在したことを何ら示さないままに,容易に想到できると決めつけたものにしかすぎない。 さらに,③についてみるに,これも②と同様に,従来技術からの発想の転換が必要となるところ,それに関する示唆等の動機付けは全く存在せず,第2次審決もそのような示唆等の動機付けが存在したことを何ら示さないままに,証拠に基づかず,「設計的事項」の語を濫用し,容易に想到できると決めつけたものにしかすぎない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 c 以上によれば,本件各訂正発明には進歩性があり,本件訂正によって被告主張の無効理由4は解消される。 イ本件各訂正発明の技術的範囲に属すること前記1で述べたことと同様の理由により(なお,本件 以上によれば,本件各訂正発明には進歩性があり,本件訂正によって被告主張の無効理由4は解消される。 イ本件各訂正発明の技術的範囲に属すること前記1で述べたことと同様の理由により(なお,本件訂正発明1の構成要件エ'は,「液体供給空間」の形状を「ディスク状」と限定したが,被告製品の液体貯留室がディスク状に含まれることは,前記1イで本件発明5の構成要件コについて述べたことと同様である。),被告製品を使用する加工方法及び被告製品が本件各訂正発明の技術的範囲に属することは明らかである。 ウまとめ以上のとおり,本件訂正によって被告が主張する無効理由はいずれも解消され,かつ,被告製品を使用する加工方法及び被告製品はそれぞれ本件各訂正発明の技術的範囲に属するものであるから,被告主張の本件特許権の権利行使の制限は,いずれも理由がない。 被告の主張ア本件訂正による無効理由の解消の主張に対し 無効理由1について本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が容易に本件各発明の実施 - 54 -をすることができる程度にその発明の目的,構成及び効果を記載したものとはいえず,また,実施条件の設定次第ではそもそも本件各発明を実施することが不可能な場合もあるから,旧特許法36条4項に適合せず,実施可能要件に違反していることは,前記2アで述べたとおりである。 本件訂正発明1は,「液体供給空間」の構造を「ディスク状」と限定したものの,そのような限定は,熱レンズの形成を抑圧するという効果との関係では何らの技術的意義はないし,結局のところ,「ディスク状」以外の実施条件について何らの特定がされていないことは本件訂正前と変わりがないのであるから,本件訂正によっても,無効理由1は解消されるものではない。 無効理由2について ろ,「ディスク状」以外の実施条件について何らの特定がされていないことは本件訂正前と変わりがないのであるから,本件訂正によっても,無効理由1は解消されるものではない。 無効理由2についてa 「せき止め空間」,「せき止め空間のない」,「液体の流速が,十分に高く」及び「フォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く」の意義が不明確であることは,前記2イのとおりであり,これらは,本件訂正に関わるものではない。 b 本件訂正後の構成要件エ'及びコ'の「ノズル入口開口の周り」及び「周辺から流れる」の意義は不明確である。 原告は,「ノズル入口開口の周り」とは,「フォーカス円錐先端範囲及びその近傍」の意味である旨主張するが,そのように解釈すべき根拠はなく,このような解釈は,特許請求の範囲にある文言を同じ特許請求の範囲にある別の文言と同じ概念と捉えるもので不自然であるし,その点を措くとしても,「その近傍」の範囲が曖昧で不明確である。 原告は,「周辺」とは,「ディスク状液体供給空間内の内周壁の近傍」の意味である旨主張する。 - 55 -しかしながら,「…前記ディスク状液体供給空間(35)内を前記ノズル入口開口(30)に向かって周辺から流れるように導かれ」という記載は,「…前記ディスク状液体供給空間(35)内を前記ノズル入口開口(30)に向かって「その(ノズル入口開口)」周辺から流れるように導かれ」と読むのが日本語として自然である。 また,原告は,「ノズル入口開口(30)の周り」については,「フォーカス円錐先端範囲及びその近傍」の意味であるとしながら,一方で,「ノズル入口開口(30)に向かって周辺から流れる」の「周辺」については,「ディスク状液体供給空間の内周壁の近傍」としており,「周り」と「周辺」 端範囲及びその近傍」の意味であるとしながら,一方で,「ノズル入口開口(30)に向かって周辺から流れる」の「周辺」については,「ディスク状液体供給空間の内周壁の近傍」としており,「周り」と「周辺」という同じ意義の用語について,不自然にその意味を峻別しているといわざるを得ない。 さらに,いかなる根拠で「内周壁」という概念を請求項の文言解釈として持ち出し得るのか理解不能である。 c 以上によれば,本件訂正によっても,無効理由2は解消されるものではない。 無効理由3について原告は,第2次審決に沿って,本件各訂正発明と乙A1に記載された発明を対比すると,相違点1及び2があるので,本件各訂正発明には新規性がある旨主張するが,以下のとおり,原告の主張は理由がなく,本件訂正によっても無効理由3は解消されない。 a 相違点1について,「ディスク状」は,「液体供給空間」の構造に関する限定であって,「せき止め空間」や熱レンズの抑圧とは直接関係のない構成であり,これを限定することによってあたかも乙A1に記載された発明と差異があるかのように見せかける原告の主張は理由がない。 「ディスク状」とは,「液体供給空間」を横長にしただけの限定で - 56 -あり,これは乙A1のチャンバーの形状と何ら異なるものではなく,例えば,乙A1の図3ないし図5(別紙乙A1の図面参照)に「ディスク状」の「液体供給空間」(光ファイバー50の端面54,56,58からノズル64の入口までの間の部分)は開示されている。 b 相違点2について,乙A1に記載された発明においても,水に対する吸収率の少ないグリーンレーザーを用いた場合には,熱レンズによるノズル壁の損傷は発生しないのであるから,前記aのとおりの乙A1の図3ないし図5(別紙乙A1の図面参照)にある「ディスク も,水に対する吸収率の少ないグリーンレーザーを用いた場合には,熱レンズによるノズル壁の損傷は発生しないのであるから,前記aのとおりの乙A1の図3ないし図5(別紙乙A1の図面参照)にある「ディスク状」の「液体供給空間」(光ファイバー50の端面54,56,58からノズル64の入口までの間の部分)においては,液体の流速が十分に高くなっていることは明らかであり,相違点2は,乙A1に開示されている。 c 以上によれば,本件各訂正発明においても,無効理由3は解消されるものではない。 無効理由4について本件各訂正発明と乙A1に記載された発明を対比すると,相違点1及び2が存在するが,以下のとおり,これらの各相違点にかかわらず,周知技術を参酌すれば,本件各訂正発明の構成を想到することは容易であり,本件各訂正発明は進歩性を欠いたものであるから,本件訂正によっても無効理由4は解消されない。 a 第2次審決においても認定されているように,「ディスク状」の「液体供給空間」は,乙20のA13及びA14に記載されているとおり周知であるし,加えて,乙A4の第2図,第3図にも記載された構成であるから,相違点1にかかわらず,当業者であれば,乙A1に記載された発明において,「液体供給空間」を本件訂正発明1のように「ディスク状」の構成にすることは容易に想到できたも - 57 -のである。 原告は,乙20のA13及びA14が,本件各訂正発明と異なる技術分野であることを問題とするが,本件明細書(甲2)には,「液体供給空間」を「ディスク状」に構成しても「円錐状」に構成してもよいことが記載されていること(8頁32行~33行)からすると,これは,元来,任意的な設計事項にしかすぎず,かかる構成にしたことによる作用効果が何ら記載されていないことからして, 錐状」に構成してもよいことが記載されていること(8頁32行~33行)からすると,これは,元来,任意的な設計事項にしかすぎず,かかる構成にしたことによる作用効果が何ら記載されていないことからして,特段の技術的意義があるものではないから,「ディスク状」の「液体供給空間」を例示する文献の技術分野は問題とはならないというべきである。 b 相違点2に関して,第2次審決の結論は妥当であり,①レーザービームの利用において熱レンズ現象が生じ,それが乙A1に記載された発明のノズル損傷の原因であると究明すること,②熱レンズの形成を抑圧する手段として,レーザービームが透過する範囲において,液体が淀むことなく流れるという思想を想到すること,③液体が淀むことなく流れるようにするため,液体供給空間の形状を「ディスク状」とし,「周辺から」液体を供給するという構成を採用することを想到することは,いずれも容易であるから,当業者であれば,乙A1に記載された発明において,本件訂正発明1の構成要件エ'ないしカ'(本件訂正発明5の構成要件コ'ないしシ')のような構成にすることは容易に想到できたものである。 原告は,上記①について,乙A1に記載された発明において,ノズル損傷が発生したとしても,その原因が熱レンズであると容易に想到できるものではない旨主張する。 しかしながら,乙24(被告従業員C作成の平成22年11月18日付け陳述書)によれば,水に対する吸収が大きいYAGレーザ - 58 -ーの基本波を照射しているビーカーを斜め上方から覗き込むと,ビーカーの底部等が揺らいで見えることが確認されているように,水中に照射したYAGレーザー基本波が水を加熱し,水の屈折率を変化させることは,目視で容易に観察できるのであるから,原告の主張は理由がない。 原告は 揺らいで見えることが確認されているように,水中に照射したYAGレーザー基本波が水を加熱し,水の屈折率を変化させることは,目視で容易に観察できるのであるから,原告の主張は理由がない。 原告は,上記②及び③について,乙A1の構成から本件各訂正発明の構成にするには発想の転換が必要であること,つまり乙A1には,「液体が淀みなく流れるディスク状の液体供給空間」を着想することに対する阻害要因がある旨主張する。 しかしながら,原告が主張する従来技術である「リザーバタイプのチャンバー」とは,「膨張チャンバー」と称されているように,大きな体積を有し,流入した液体が膨張されるチャンバーを意味するものであり,チャンバーの形状を規定する用語ではないから,チャンバーの直径よりも高さが低く,チャンバーが「ディスク状」であったとしても,十分な体積を備えていれば,そのチャンバーは従来技術である「リザーバタイプのチャンバー」に該当するし,「液体が淀みなく流れる」については,具体的にいかなる速度でチャンバー内を流れると「液体が淀みなく流れる」に該当するのか,本件明細書を参酌しても判断することができないものであって,従来の「リザーバタイプのチャンバー」において,内部を「液体が淀みなく流れ」ている可能性は排除するものではないから,原告の主張は,その前提において誤りであるといわざるを得ない。 c 以上によれば,本件各訂正発明においても,無効理由4は解消されるものではない。 イ本件各訂正発明の技術的範囲に属するとの主張に対し前記1で述べたことと同様の理由により,被告製品を使用する加工方 - 59 -法及び被告製品は,少なくとも,本件訂正発明1の構成要件エ'ないしカ',本件訂正発明5の構成要件コ'ないしシ'を充足せず(なお,構成要件エ'は,「液体供 ,被告製品を使用する加工方 - 59 -法及び被告製品は,少なくとも,本件訂正発明1の構成要件エ'ないしカ',本件訂正発明5の構成要件コ'ないしシ'を充足せず(なお,構成要件エ'は,「液体供給空間」の形状を「ディスク状」と限定したが,被告製品の液体貯留室がディスク状でないことは,前記1イで本件発明5の構成要件コについて述べたことと同様である。),その結果として,本件訂正発明5を引用する本件訂正発明9の訂正構成要件ソ'も充足しないから,本件各訂正発明の技術的範囲に属さないものである。 ウまとめ以上のとおり,本件訂正によっても本件特許の無効理由は解消されず,また,被告製品を使用する加工方法及び被告製品はいずれも本件各訂正発明の技術的範囲に属さないものであるから,原告の本件訂正による対抗主張は理由がない。 4 争点4(原告の損害額)について 原告の主張ア本件特許に係る技術の複雑性,本件の経緯の調査の必要性,原告がスイス国法人であり,証拠等の提出に翻訳が必要となること等に鑑みれば,被告による本件特許権の侵害行為と相当因果関係のある原告の弁護士費用相当額の損害は,500万円を下らない。 イしたがって,原告は,被告に対し,本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償として,500万円及びこれに対する平成20年5月27日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 被告の主張原告の主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件各発明の技術的範囲の属否) - 60 - 本件発明1について被告製品を使用する加工方法が本件発明1の構成要件アないしウ及びキを充足することは,前記争いのない事実等ウのとおりである。 そこで,以下にお 否) - 60 - 本件発明1について被告製品を使用する加工方法が本件発明1の構成要件アないしウ及びキを充足することは,前記争いのない事実等ウのとおりである。 そこで,以下においては,被告製品を使用する加工方法における構成要件エないしカの充足の有無について判断する。 ア本件明細書の記載事項等 本件明細書(甲2)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある。 a 「本発明は,特許請求の範囲第1項の上位概念に記載された装置に関する。レーザービームは,種々の方法で工業における材料加工-切断,穴あけ,溶接,マーキング及び材料切除-のために利用される。 …ほぼこれらすべての方法においてレーザービームは,加工過程に必要な強度を発生するために,例えばレンズのような光学要素によって加工すべき材料上に収束される。この強制的なビーム収束に基づいて,作業は,焦点の場所又はそのすぐ近くの周囲においてしか可能ではない。」(3頁12行~19行)b 「ドイツ連邦共和国特許出願公開第3643284号明細書によれば,レーザービームにより材料を切断する方法が公知であり,ここではこのレーザービームは,切断すべき材料に向けられた水ビーム内に結合され,かつこの中において案内されている。ビームの供給は,ビームガイド(ファイバ)を介して行なわれ,このビームガイドの一方の端部は,ノズル内において発生される水ビーム内に突出している。 水ビームの直径は,ビームガイドのものより大きい。公知の装置は,水ビームの直径が,決してビームガイドのものより小さくてはいけないという欠点を有する。しかし加工場所における大きな強度を維持するために,できるだけ小さなビーム直径が必要である。ビーム直径が - 61 -小さくなるほど,レーザービーム源のわずかな出力で加工 いという欠点を有する。しかし加工場所における大きな強度を維持するために,できるだけ小さなビーム直径が必要である。ビーム直径が - 61 -小さくなるほど,レーザービーム源のわずかな出力で加工を行なうことができる。」(3頁20行~29行),「ドイツ連邦共和国特許出願公開第3643284号明細書の装置のその他の欠点は,水ビーム内に突出したビームガイド端部によって明らかである。すなわちガイド端部の下に死水領域が生じ,この死水領域は,とりわけ流れ内に妨害を形成し,これら妨害は,水ビームの長さにわたって指数状に増大し,かつ最終的に水ビームの分離水滴を生じる。それ故にこの装置によって,30mmを越す層状のコンパクトなビーム長さを得ることは不可能である。」(3頁30行~35行)c 「この時,ヨーロッパ特許出願公開第0515983号明細書において,もはやビームガイドを直接含まない水ノズルを構成することによって,前記の欠点を解消することが試みられている。水ビームを形成するノズルの前に,水入口とノズル入口に対して空間を閉じるフォーカスレンズとを有する水空間がある。このフォーカスレンズは,光学系の一部であり,それによりビームガイドから出たビームは,ノズルのノズル通路内に収束することができる。空間は,水ビームのためにその中にある水が,擬似的に静止状態に,すなわち緊張解除した状態にあるように構成されている。この時,水ビーム内に結合されたレーザービームのこの第2の構成変形は,ノズル通路入口の周範囲におけるノズルの壁に管理できない損傷を引起こすことがわかった。」(3頁36行~44行)d 「本発明の課題は,液体ビームを形成するノズルをレーザーのビームによって損傷することなく,レーザービームを材料加工のために液体ビーム内に光学的に結合することができ 。」(3頁36行~44行)d 「本発明の課題は,液体ビームを形成するノズルをレーザーのビームによって損傷することなく,レーザービームを材料加工のために液体ビーム内に光学的に結合することができる装置を提供することにある。」(3頁45行~47行)e 「本発明は,フォーカス光学系によってノズルの範囲に収束したレ - 62 -ーザービームが,液体における強度の分布に応じてこの液体を多かれ少なかれ強力に加熱することができるという知識に基づいている。異なった温度,空間的温度勾配を有する液体範囲は,空間的に固有の密度分布を有するだけでなく,空間的な屈折率分布も有する。すなわち空間的な温度勾配を有する液体は,光学的にレンズとして反応し,かつ収束したレーザービームのフォーカス円錐内において,通常発散レンズとして反応する。」,「この時,ヨーロッパ特許出願公開第0515983号明細書の図2に示されたように,ノズル通路内において形成される液体(水)ビーム内へのレーザービーム“製図的に最適な”結合は,残念ながら推測したようには作用しない。すなわちヨーロッパ特許出願公開第0515983号明細書に示された装置において,ノズル通路入口の上のフォーカス円錐先端の範囲に,熱レンズが生じ,この熱レンズは,ここに示された焦点の場所を上方へずらし,かつ焦点直径を大幅に増加する。それによりフォーカス円錐内のレーザービームの一部は,ノズル壁に,とくにここにおいて利用された液体せき止め空間の方に向いたノズル表面に当たる。この時一方において材料加工のために必要な高い強度によって,この時ノズルの壁が損傷する。」(以上,3頁48行~4頁12行)f 「ヨーロッパ特許出願公開第0515983号明細書により公知の構造において,さらに液体として水を利用し,かつレーザービーム って,この時ノズルの壁が損傷する。」(以上,3頁48行~4頁12行)f 「ヨーロッパ特許出願公開第0515983号明細書により公知の構造において,さらに液体として水を利用し,かつレーザービームとして,1.064μmのND:YAGのものを利用することは,不利に作用する。この時,このビームは,ちょうど水中において無視できない吸収を有する。収束したビームのピラミッド先端の上側範囲(フォーカス円錐の先端範囲)における水の範囲は,強度分布(軸線における高い強度及び縁におけるわずかなもの)に相応して加熱され,かつ前に予想された熱レンズが生じ,この熱レンズは,ノズル壁の,と - 63 -くにノズル入口の範囲におけるノズル表面の損傷を引起こし,かつ結局液体ビームを形成するノズルの破壊を引起こす。」(4頁13行~20行),「水の使用だけが,結合効率を悪化するのではなく,ノズル入口前の液体空間の全構造的構成も悪化する。…ノズル入口前においてできるだけ液体の静止状態を達成する努力が試みられた。まさしくこの液体静止状態は,熱レンズの構成を可能にし,又は強化する。 すなわち(すでにわずかな)吸収によって加熱される液体は,なお強力に加熱されることがなく,それによりレンズ効果を減少するようにするため,できるだけ早く運び去るのではなく,逆に進行する加熱によってなお生じる熱レンズの屈折力の増強が行なわれる。」(4頁21行~27行)g 「しかし本発明は,別の方法をとる。ここではすべてのことは,できるだけ熱レンズを生じることがなく,又はその作用を大幅に小さくすることにかけている。」,「本発明において,利用したレーザービームにおいてできるだけ小さな吸収を有する液体が使用され,すなわちND:YAGレーザーのビームにおいてシリコンオイルが利用される。」,「さら とにかけている。」,「本発明において,利用したレーザービームにおいてできるだけ小さな吸収を有する液体が使用され,すなわちND:YAGレーザーのビームにおいてシリコンオイルが利用される。」,「さらにノズル装置及びフォーカスユニットを含む加工モジュールの構造的構成は,無視できない小さなビーム吸収の場合にも,熱レンズの効果が,そもそも生じるかぎり,最小に,したがって無視できる程度に維持されるように選択されている。」(以上,4頁28行~34行),h 「本発明は,次のことを提案する。すなわち加熱時間をそもそもできるだけ短く維持するために,液体が,レーザービームのフォーカス円錐の範囲から,とくにその先端範囲からできるだけ迅速に運び出される。明らかに最善の結果は,わずかな吸収を有するフォーカス円錐における液体の短い滞在時間の際に達成される。」(4頁35行~3 - 64 -8行)i 「前記の条件を達成するために,ヨーロッパ特許出願公開第0515983号明細書において利用された。液体を静止状態に維持するここに普及された液体せき止め空間を有する液体空間は,完全に回避される。ノズルへの液体供給の高さは,流れの渦形成を減少するために,ほぼノズル通路の直径を有し,又はそれよりわずかだけ大きい。」(4頁39行~42行),「ノズル入口に対向する壁に,ヨーロッパ特許出願公開第0515983号明細書におけるようなフォーカスレンズも組込まれず,レーザービームを損失なく伝達する窓が組込まれるだけである。ノズル入口のほぼ真上にあるこの窓だけによって,フォーカス円錐の先端における液体容量をそもそもできるだけ少なく,かつ流速をそもそもできるだけ高く維持することが可能である。」(4頁43行~47行)j 「提案された装置は,…ノズル通路への入口における支障ない の先端における液体容量をそもそもできるだけ少なく,かつ流速をそもそもできるだけ高く維持することが可能である。」(4頁43行~47行)j 「提案された装置は,…ノズル通路への入口における支障ない流れが保証されるならば,液体圧力を上昇することができ,かつコンパクトな液体ビーム長さは,とりわけ利用した液体とノズル直径に依存する最大値にまで増加する。例えば水及び150μmのノズル通路直径に対して,80バールの液体圧力の際に150mmの最大のコンパクトなビーム長さが得られる。…コンパクトな液体ビーム長さとは,“分離水滴”の始まる前の長さのことである。この分離水滴は,周囲空気及び表面張力によって引起こされる不可避の渦形成に基づいている。」(5頁28行~36行)k 「レーザービームの最適な結合は,焦点が,ノズル開口の平面内に置かれたときに達成される。レーザービームを伝達する窓の,ノズル開口の方に向いた下側は,100μmのノズル直径の際に200μmないし500μmの距離のところにあるようにする。それにより熱レ - 65 -ンズの形成を助長する液体せき止め空間が避けられる。」(6頁6行~9行)l 「次に本発明による装置の例を図面により詳細に説明する。」(7頁7行),「図1に示された材料加工装置は,ビーム源としてND:YAGレーザー1を有し,このレーザーは,1.064μmの波長を有するレーザービーム3を送出する。ここではレーザー1は,100Wの出力を有する。このレーザービーム3は,フォーカスユニット5によって…ビームガイド6に結合される。…加工モジュール7の下に,加工すべき,ここでは切断すべき加工片9が配置されている。」(7頁15行~25行),「加工モジュール7は,ビームガイド6によって近くに案内されるレーザービームを平行化するコリ 工モジュール7の下に,加工すべき,ここでは切断すべき加工片9が配置されている。」(7頁15行~25行),「加工モジュール7は,ビームガイド6によって近くに案内されるレーザービームを平行化するコリメータ21,加工片9上の加工位置24に向けられた液体ビーム12を形成するノズル通路23を有するノズルブロック43,及び図3に拡大して示すように,ノズルブロック43のノズル通路23のノズル軸線31の場所における入口開口30の平面29に平行化されたレーザービーム27を収束するフォーカスレンズ25を有する。」(7頁32行~36行)m 「ノズル入口開口30の上に,液体供給導管としてディスク状の液体供給空間35がある。液体供給空間35は,ノズル入口開口30の周囲にせき止め空間として作用する液体空間を持たない。」(7頁36行~39行),「液体供給空間35の高さは,理論的にはノズル通路23の横断面の半分を有するだけでよい。しかしこれは,液体の管摩擦損失を減少するため及び渦形成を避けるために,それよりいくらか大きく選定されている。」(7頁39行~41行),「液体供給空間35をディスク状に構成する代わりに,この液体供給空間は,鋭角半角を有する円錐状に製造してもよく,その際,角頂点(円錐先端) - 66 -は,この時ノズル入口開口の上方にあるようにする。」(8頁32行~34行)n 「液体供給空間35の壁内に,ノズル入口開口30の上においてなるべく反射防止コーティングされた窓36が挿入されており,これを通ってレーザービームは,フォーカスレンズ25によってノズル通路23の入口開口30の平面内の収束することができる。」(7頁41行~44行),「液体ビーム12を形成する“ノズルブロック”43のノズル通路23は,図2に示すように,加工モジュール7の底部要 ズル通路23の入口開口30の平面内の収束することができる。」(7頁41行~44行),「液体ビーム12を形成する“ノズルブロック”43のノズル通路23は,図2に示すように,加工モジュール7の底部要素47において液体ビーム12のための中心貫通穴45を有するノズルブロック保持体46内に保持されている。…窓36は,挿入体53の中心切り欠き51内に配置されている。…挿入体53は,同軸的に分配された複数の軸線方向液体通路61a及び61bを有し,これら液体通路の幅は,液体を確実に液体供給空間35内に移すように選定されている。液体供給空間35の高さは,挿入体53のねじ込み深さによって調節される。」(8頁5行~18行) 上記の本件明細書の記載事項及び請求項1の記載(前記争いのない事実等ア参照)を総合すれば,本件明細書には,①従来,レーザービームを導く液体ビームがノズルにより形成される材料加工方法及びその方法を実施した装置においては,水ビーム(液体ビーム)の直径をビームガイドの直径よりも小さくすることができないという欠点や,ビームガイド端部の下に死水領域が生じるため,水ビームの長さが増大すると,水ビームの分離水滴を生じて,30mmを超える層状のコンパクトなビーム長さを得ることができないといった欠点があったことから,ビームガイドを直接含まない水ノズルを構成することで,これらの欠点を解消することが試みられたが,かかる従来技術(「ヨーロッパ特許出願公開第0515983号明細書」に示された装置)では,フォーカス光 - 67 -学系によってノズルの範囲に収束したレーザービームが,液体における強度の分布に応じて液体を多かれ少なかれ強力に加熱し,この空間的な温度勾配を有する液体範囲が,空間的に固有の密度分布を有するだけでなく,空間的な屈折率分布も に収束したレーザービームが,液体における強度の分布に応じて液体を多かれ少なかれ強力に加熱し,この空間的な温度勾配を有する液体範囲が,空間的に固有の密度分布を有するだけでなく,空間的な屈折率分布も有し,光学的に発散レンズとして反応し(いわゆる熱レンズ効果),ノズル通路入口の上のフォーカス円錐先端の範囲に熱レンズが生じ,この熱レンズがノズル通路入口の周範囲におけるノズル壁に管理できない損傷を引き起こすという問題があったこと,②本件発明1は,上記問題を解消し,液体ビームを形成するノズルをレーザービームによって損傷することなく,レーザービームを材料加工のために液体ビーム内に光学的に結合することができる装置を提供することを課題とし,上記課題を解決するための手段として,「液体供給空間へ供給される液体が,ノズル入口開口の周りにおいてせき止め空間のないように導かれ,それによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲における液体の流速が十分に高く決められるようにし,そうすることによって,フォーカス円錐先端範囲において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで熱レンズの形成が抑圧される」構成(構成要件エないしカの構成)を一体的に採用した点に技術的意義があることが開示されていることが認められる。 イ構成要件エないしカの解釈 「せき止め空間のない」(構成要件エ)の用語の意義について原告は,本件発明1が熱レンズの発生原因となる「液体静止状態」を取り除くため「流速を高く」するものであること及び技術常識によれば,構成要件エの「せき止め空間」とは,液体静止状態の空間,すなわち,「液体の流速がほぼ0の空間」,言い換えれば,「液体が淀んでいる空間」を意味し,構成要件エの「せき止め空間のない」とは,液体が淀まないこと,あるいは流体の流速がほぼ ,液体静止状態の空間,すなわち,「液体の流速がほぼ0の空間」,言い換えれば,「液体が淀んでいる空間」を意味し,構成要件エの「せき止め空間のない」とは,液体が淀まないこと,あるいは流体の流速がほぼ0になっている空間がないことを - 68 -意味する旨主張する。 これに対し被告は,「せき止め空間」なる用語は,流体力学の分野において通常用いられているものではなく,「せき止め空間」及び「せき止め空間のない」の各用語は,いずれも技術的に不明瞭であることに照らすならば,本件明細書の請求項の他の記載,発明の詳細な説明等を参酌して限定的に解釈すべきであるとして,構成要件エの「せき止め空間のない」とは,「液体供給空間の高さが,ノズルの直径の半分ないし数倍程度の低い高さしか有しない構成」と解すべきである旨主張するので,以下において検討する。 a 本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,「せき止め空間」あるいは「せき止め空間のない」の用語を規定する記載はない。 また,「せき止め空間」という用語それ自体は,本件発明1の技術分野に係る流体力学の分野における学術用語ではなく,通常使用されている用語でもない(甲21の3頁,乙14の12頁~13頁)。他方で,「せきとめる」には,一般に,「さえぎりとめる。さえぎる。」の意味があり(広辞苑第6版(甲20)),流体力学の分野では「せき」とは,「水路を板又は壁でせき止め,これを越えて水が流れる場合」を意味するが(甲21の資料8(「改訂版流体の力学」)の64頁),これらの意味から直ちに「せき止め空間」あるいは「せき止め空間のない」の用語の意義を見出すことはできない。 b そこで,本件明細書の記載事項を参酌するに,本件明細書には,「せき止め空間」あるいは「せき止め空間のない」に関し,①従来技術である「ヨー 止め空間のない」の用語の意義を見出すことはできない。 b そこで,本件明細書の記載事項を参酌するに,本件明細書には,「せき止め空間」あるいは「せき止め空間のない」に関し,①従来技術である「ヨーロッパ特許出願公開第0515983号明細書」に示された装置においては,「空間」(水入口とノズル入口に対して空間を閉じるフォーカスレンズとを有する水空間)は,「水ビームのためにその中にある水が,擬似的に静止状態に・・・構成されている。この時, - 69 -水ビーム内に結合されたレーザービームのこの第2の構成変形は,ノズル通路入口の周範囲におけるノズルの壁に管理できない損傷を引起こすことがわかった。」(前記アc),②上記装置においては,「ノズル通路入口の上のフォーカス円錐先端の範囲に,熱レンズが生じ,・・・それによりフォーカス円錐内のレーザービームの一部は,・・・とくにここにおいて利用された液体せき止め空間の方に向いたノズル表面に当たる。」(前記アe),③「ヨーロッパ特許出願公開第0515983号明細書において利用された。液体を静止状態に維持する…液体せき止め空間を有する液体空間…」(前記アi),④「本発明」による装置においては,「加熱時間をそもそもできるだけ短く維持するために,液体が,レーザービームのフォーカス円錐の範囲から,とくにその先端範囲からできるだけ迅速に運び出される。明らかに最善の結果は,わずかな吸収を有するフォーカス円錐における液体の短い滞在時間の際に達成される。」(前記アh),「熱レンズの形成を助長する液体せき止め空間が避けられる。」(同k),「ノズル入口開口30の上に,液体供給導管としてディスク状の液体供給空間35がある。液体供給空間35は,ノズル入口開口30の周囲にせき止め空間として作用する液体空間を持たない けられる。」(同k),「ノズル入口開口30の上に,液体供給導管としてディスク状の液体供給空間35がある。液体供給空間35は,ノズル入口開口30の周囲にせき止め空間として作用する液体空間を持たない。」(同m)との記載がある。 上記①ないし④を総合すると,本件明細書において,「せき止め空間」(液体せき止め空間)の用語は,「液体を静止状態に維持」し,あるいは「その中にある水が,擬似的に静止状態」となり,これにより「ノズル通路入口の上のフォーカス円錐先端の範囲に,熱レンズが生じ」あるいは「熱レンズの形成を助長」し,これによって「水ビーム内に結合されたレーザービーム」の一部が「ノズル通路入口の周範囲におけるノズルの壁に管理できない損傷を引起こす」作用を有する - 70 -ものとして用いられていることを理解できる。 加えて,請求項1中には,「液体供給空間(35)へ供給される液体が,ノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように導かれ」,「それによりレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(56)における液体の流速が,十分に高く決められるようにし」,「したがってフォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧されること」(構成要件エないしカ)との記載があるところ,上記記載が,「それにより」及び「したがって」といった接続詞を用いながら,「せき止め空間のない」ようにすること,液体の流速を「十分に高く」すること及び「ノズル壁の損傷」を生じさせない程度の「熱レンズの形成の抑圧」がされることを一体的なものとして,作用的,機能的に捉えていることに鑑みれば,構成要件エの「せき止め空間のない」とは,液体供給空間内のレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(の領域)におい の抑圧」がされることを一体的なものとして,作用的,機能的に捉えていることに鑑みれば,構成要件エの「せき止め空間のない」とは,液体供給空間内のレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(の領域)において,ノズル壁の損傷に至る原因となる熱レンズの形成を抑圧する程度に液体の流速を十分に高くし,当該液体が「静止状態」あるいは「擬似的に静止状態」にないことをいうものと解される。 また,このような解釈によれば,構成要件オの「液体の流速が,十分に高く」とは,「フォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される」程度に流速が高いことを意味するものと解される。 そして,この「液体の流速が,十分に高く」するとの構成は,構成要件エの「液体が,ノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように導かれ」る構成によってもたらされることによれば,被告製品を使用する加工方法における構成要件エないしカの充足性 - 71 -を判断するに当たっては,各構成要件を個別に検討するのではなく,これらを一体的なものとして判断するのが妥当である。このような判断手法は,前記アで認定した本件明細書に開示されている本件発明1の技術的意義からみても合理性があるというべきである。 原告及び被告の各主張についてa 原告は,構成要件エの「せき止め空間」とは,液体静止状態の空間,すなわち,「液体の流速がほぼ0の空間」,言い換えれば,「液体が淀んでいる空間」を意味し,構成要件エの「せき止め空間のない」とは,液体が淀まないこと,あるいは流体の流速がほぼ0になっている空間がないことを意味する旨主張する。 しかし,上記bのとおり,請求項1の構成要件エないしカが,「せき止め空間のない」ようにすること,液体 が淀まないこと,あるいは流体の流速がほぼ0になっている空間がないことを意味する旨主張する。 しかし,上記bのとおり,請求項1の構成要件エないしカが,「せき止め空間のない」ようにすること,液体の流速を「十分に高く」すること及び「ノズル壁の損傷」を生じさせない程度の「熱レンズの形成の抑圧」がされることを一体的なものとして,作用的,機能的に捉えていることに鑑みれば,「せき止め空間」あるいは「せき止め空間のない」の意義を単に液体の流速との関係だけを捉えて解釈する原告の上記主張は,採用することができない。 b 一方,被告は,「せき止め空間」及び「せき止め空間のない」の各用語がいずれも技術的に不明瞭であることを出発点として,構成要件エの「せき止め空間のない」とは,「液体供給空間の高さが,ノズルの直径の半分ないし数倍程度の低い高さしか有しない構成」と限定的に解すべきである旨主張する。 しかしながら,「せき止め空間」及び「せき止め空間のない」という語を液体供給空間の高さに関する数値的な限定を加える語と理解することは,請求項1の文理に照らし,明らかに不自然である。 また,被告が主張する本件特許の優先権主張の基礎となる出願に係 - 72 -るドイツ国特許(DE4418845C1)についての連邦特許裁判所の無効審判において行われた液体供給空間の高さに係る請求項の限定は,あくまで当該ドイツ国特許に関わるものにすぎないから,上記限定がされたことから直ちに被告主張の限定解釈の正当性が裏付けられるものではない。 したがって,被告の上記主張は,採用することはできない。 ウ構成要件エないしカの充足の有無原告は,被告製品を使用する加工方法は本件発明1の構成要件エないしカをいずれも充足する旨主張するので,原告が挙げる上記主張の根拠について ることはできない。 ウ構成要件エないしカの充足の有無原告は,被告製品を使用する加工方法は本件発明1の構成要件エないしカをいずれも充足する旨主張するので,原告が挙げる上記主張の根拠について,以下において順次検討する。 原告は,構成要件エについて,「せき止め空間のない」とは,液体が淀まないこと,あるいは流体の流速がほぼ0になっている空間がないことを意味するという前提に立った上で,①本件特許を実施した装置のモデルと本件明細書で従来技術として示された「ヨーロッパ特許出願公開第0515983号明細書」(乙A1(ヨーロッパ特許第0515983A1号公報))の図2記載の装置(乙A1記載の装置)のモデルを対象とした液体の動きのシミュレーション結果を対比すると,乙A1記載の装置のモデルでは,液体供給空間の上部に,液体が循環する再循環領域があり,その再循環領域の中心部では液体の流速が極端に遅くなっており(甲14の参考図13,甲15),「液体が淀んでいる空間」,すなわち「せき止め空間」が存在するのに対し,本件特許を実施した装置のモデルでは,液体供給空間内に「せき止め空間」が存在せず,液体がノズル入口開口(30)の周りにおいてせき止め空間のないように導かれている(甲14の参考図12),②被告製品は,乙7(特開2009-95884号公報)に記載された発明の実施形態の一つであるところ,乙7の図12及び13(乙7の実施形態の液体貯留室における流速 - 73 -分布のシミュレーション結果を示した図)と乙A1記載の装置における液体の流れをシミュレーションした甲15とを比較すると,甲15においては,フォーカス円錐先端範囲及びその近傍において再循環領域があり,液体が淀んでいる箇所がフォーカス円錐先端範囲内にあるのに対し,乙7の図12及び13において した甲15とを比較すると,甲15においては,フォーカス円錐先端範囲及びその近傍において再循環領域があり,液体が淀んでいる箇所がフォーカス円錐先端範囲内にあるのに対し,乙7の図12及び13においては,流速は本件特許の実施例を前提とする構造と比して遅いようではあるが,フォーカス円錐先端範囲及びその近傍における流れが甲15における流れとは質的に異なり,順次液体がノズル入口開口に向かって流れており,このように液体が淀むことなく流れ出るという点において,乙7の図12及び13における流れは,本件特許を実施した装置のモデルの流れ(乙7の図14及び15参照)と質的に同じである,③被告製品の液体貯留室に液体を供給する連絡流路の配置及び液体貯留室の形状からすると,被告製品の液体貯留室においては,はく離域あるいは再循環領域が発生するような構造になっていないから,「せき止め空間」が発生しないなどとして,被告製品の液体貯留室の構造は,「せき止め空間のない」構成のものであって,被告製品を使用する場合,その液体貯留室へ供給される「液体が,ノズル入口開口の周りにおいてせき止め空間のないように導かれ」ているものといえるから,被告製品を使用する加工方法は,構成要件エを充足する旨主張する。 a 上記①及び②の点について「せき止め空間」及び「せき止め空間のない」の意義についての原告の主張を採用することができないことは,前記イaのとおりであるから,被告製品を使用する加工方法が構成要件エを充足するとの原告の主張は,その前提において誤りがあるといわざるを得ない。 その点を措くとしても,甲14の参考図12及び13に示されたシミュレーションは,本件特許を実施した装置のモデル(条件・ノズル - 74 -孔直径100μm,液体供給空間の高さ300μm,液体供給空間の を措くとしても,甲14の参考図12及び13に示されたシミュレーションは,本件特許を実施した装置のモデル(条件・ノズル - 74 -孔直径100μm,液体供給空間の高さ300μm,液体供給空間の直径10mm,圧力100bar,液体水)と乙A1記載の装置のモデル(条件・ノズル孔直径100μm,液体供給空間の高さ10mm,液体供給空間の直径10mm,圧力100bar,液体水)について液体供給空間内の位置ごとの液体の流速を解析したものであって,これらと液体供給空間の高さ等の構造が異なる被告製品あるいは乙7に記載された装置における液体の流速を解析したものではないのであるから,上記シミュレーションの結果から,被告製品の液体供給空間(液体貯留室)における液体の流速分布ひいては原告主張のせき止め空間の有無を判断することはできない。また,原告が主張する乙7の図12及び13は,乙7の実施例に係る液体貯留室のモデルを使用した場合における水の流速分布のシミュレーションの結果を示したものであるが(乙7の段落【0094】),流速の大きさ等や具体的な実験条件の記載がないことからすると,上記シミュレーションの結果と甲15のシミュレーションの結果との対比により,原告主張のせき止め空間の有無を判断することもできない。 かえって,乙14の資料7の図1(乙7に記載されている装置のモデルの液体供給空間のシミュレーションの結果を示したもの)においては,フォーカス円錐先端範囲における液体の流速が0.0~2.5cm/s(0~0.025m/s)となっている空間があることが示されており,これは,乙7に記載された装置においても原告主張のせき止め空間が存在することをうかがわせるものといえる。この点に関し,甲31(B教授作成の平成23年3月31日付け陳述書)中には,乙14の資 ており,これは,乙7に記載された装置においても原告主張のせき止め空間が存在することをうかがわせるものといえる。この点に関し,甲31(B教授作成の平成23年3月31日付け陳述書)中には,乙14の資料7の図1について,「シミュレーションによって得られた速度の大きさが色分けされておりますが,ベクトルプロットが示されていないため,どのような流れになっているか具体的に分かりませ - 75 -ん。」(3頁末行~4頁2行)との記載があり,これは,乙A1記載の装置のシミュレーションについては,甲15のようにベクトルプロットを示した図から,液体供給空間の上部に再循環領域があることが見て取れるものの,乙14の資料7の図1では,再循環領域の有無を確認できないことを問題視する趣旨の指摘であるものと解される。しかし,他方で,原告において乙14の資料7に開示された当該装置の寸法を基にシミュレーションを行い,ベクトルプロットを示した図を示すなどして反証を行うことも必ずしも困難なことではないにもかかわらず,そのような反証を行っていないことに照らすならば,甲31記載の上記指摘を勘案しても,乙14の資料7が示すシミュレーション結果についての上記評価が左右されるものではないというべきである。 したがって,原告の上記①及び②の主張は,採用することができない。 b 上記③の点について原告は,流体力学でいう「はく離域」あるいは「再循環領域」が生じるような液体供給空間には,「流速がほぼ0」となる「せき止め空間」が必ずあり,一方で,はく離域,再循環領域が生じない液体供給空間には「せき止め空間」は一般的にはないという前提に立った上で,被告製品の液体貯留室においては,はく離域あるいは再循環領域が発生するような構造になっていないから,「せき止め空間」が発生しない旨 空間には「せき止め空間」は一般的にはないという前提に立った上で,被告製品の液体貯留室においては,はく離域あるいは再循環領域が発生するような構造になっていないから,「せき止め空間」が発生しない旨主張する。 しかしながら,「はく離域」や「再循環領域」という概念自体は,流体力学の分野では慣用されており,そのような「域」においては,流速が遅くなる点が生じるものといえるが(甲21,乙14,弁論の全趣旨),逆に,「はく離域」や「再循環領域」が存在しない空間に - 76 -おいては流速が遅くなる点が存在しないことが技術常識であることを認めるに足りる証拠はない。 また,仮に原告が主張するように被告製品の液体貯留室においてははく離域あるいは再循環領域が発生するような構造になっていないとしても,このことから直ちに被告製品の液体貯留室内の液体がノズル開口の周りにおいて「せき止め空間のない」ように導かれていること,すなわち,液体供給空間内のレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(の領域)において,ノズル壁の損傷に至る原因となる熱レンズの形成を抑圧する程度に液体の流速を十分に高くし,当該液体が「静止状態」あるいは「擬似的に静止状態」にないように導かれていることを認めることはできない。 したがって,原告の上記③の主張は,採用することができない。 次に,原告は,構成要件オ及びカについて,①被告製品においては,グリーンレーザーが使用されているところ,グリーンレーザーは,YAGレーザーと比べて,水に対する吸収率が低いとはいえ水に対する一定の吸収があり,加熱の進行が緩やかとはいえ熱レンズが発生するのであるから,流速が十分でなく,水がフォーカス円錐先端範囲内に長時間滞留している場合には,時間の経過によりかかる熱レンズがノズル壁を損傷することは, ,加熱の進行が緩やかとはいえ熱レンズが発生するのであるから,流速が十分でなく,水がフォーカス円錐先端範囲内に長時間滞留している場合には,時間の経過によりかかる熱レンズがノズル壁を損傷することは,甲32及び35の実験結果が示すとおりである,②グリーンレーザーを使用する被告製品において熱レンズの形成が抑圧され,ノズル壁の損傷が防がれていることからすると,被告製品の液体貯留室内のフォーカス円錐先端範囲においては,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される程度に,流速が十分に高いものといえるから,被告製品は,構成要件オ及びカを充足する旨主張する。 a 上記①の点について - 77 -被告は,原告の上記主張を争い,グリーンレーザーは,水に対する吸収率が極端に小さいことから,グリーンレーザーを使用する被告製品においては,ノズル壁を損傷する程度の熱レンズが形成されることはない旨主張するので,以下において検討する。 原告作成の2011年(平成23年)3月29日付け「ImpactofthermallensingonLaser-Microjet」(訳文・「レーザ・マイクロジェットにおける熱レンズ効果」)と題する書面(甲32)は,グリンレーザー(532nm波長)と熱レンズの実験結果を記載した実験結果報告書であり,同書面には,次のような記載がある。 ① 「1 はじめにこのレポートは水ジェット誘導レーザーシステム(レーザー・マイクロジェット,あるいはLMJ)における熱レンズの影響を評価したものである。…レーザー・マイクロジェットの基本原理は,レーザービームの全てのエネルギーを水ジェットに焦点させることである。寄生的な熱レンズ効果によりノズル開口部でのレーザースポットが大きくなり,このこと る。…レーザー・マイクロジェットの基本原理は,レーザービームの全てのエネルギーを水ジェットに焦点させることである。寄生的な熱レンズ効果によりノズル開口部でのレーザースポットが大きくなり,このことによるノズルの寿命が短くなる。本報告はこの現象が1064nmより水の吸収が少ない532nm波長のレーザーにも成り立っていることを示す。」(訳文1頁1行~10行)② 「2 実験的研究-熱的な焦点ずれのノズル寿命への影響淀み空間のノズル寿命に対する影響を確認するために,以下の二つのチャンバーを用いて実験を行った。 a)高さ(H)25mm,直径25mm,流入口は直径1.5mmで一箇所だけ側壁についている。 b)Synovaの水チャンバー,高さ0.5mm,直径10mm,側方24箇所から均等に直径1mmの流入口を持つ。 - 78 -2.1 実験装置以下の実験では全て波長532nm,平均レーザー出力100W,パルス繰り返し周波数10kHzを用いた。レーザービームはコア径dfが100μmの光ファイバーにカップリングさせた。ファイバー端でのレーザービーム発散の半角θは0.088radである。…収束レンズ後のビームウェストの直径(ds)は下記の式で計算される。ds=…=41.7μmチャンバーでのビーム拡がり半角は0.16radである。着脱可能なサファイヤ製のノズル開口部が80μmのノズルを使用した。100気圧の超純水を二種類のチャンバーに供給した。 …ビームウェストが正確にノズルオリフィスにアライメントされるように,チャンバーをビームに対して垂直,水平に動かして水ジェットに伝達されるレーザー強度を最適化した。」(訳文1頁25行~2頁12行)③ 「2.2 結果上記の実験構成で大きなチャンバーとSYNOVAチャンバーでノズル寿命を 直,水平に動かして水ジェットに伝達されるレーザー強度を最適化した。」(訳文1頁25行~2頁12行)③ 「2.2 結果上記の実験構成で大きなチャンバーとSYNOVAチャンバーでノズル寿命を測定した。80μmノズルではノズル寿命に顕著な違いが認められた。a)大きなチャンバーでは5個の異なる測定したノズルの寿命は最大で240秒であったが,b)SYNOVAチャンバーではノズル破壊は認められなかった(600秒後に実験終了)。」(訳文3頁1行~5行)④ 「3 理論的考察文献値によると532nm波長では1064nmより相当小さな吸収しか起きない。このことは決まった距離に対してより小さな強度減少(即ちパワー密度)しかもたらさないことを意味する。しかしながら,熱効果による焦点ずれは,吸収されるエ - 79 -ネルギーに依るものであり減少したエネルギー強度によるものではない。…このことにより水は非常に局所的に加熱され,レーザービーム中に大きな熱勾配を発生する。この考察によりチャンバー全体でのレーザー出力の吸収は小さく,従って平均的な温度上昇が無視できても,レーザービーム内には局所的な吸収による大きな熱勾配が存在することがわかる。一方,レーザーのエネルギーは吸収係数だけではなく,照射の時間にも依存する。吸収されるエネルギーは,連続波であれ,パルスであれ時間と伴に増加する。」(訳文3頁7行~4頁4行)⑤ 「3.4 ノズル破壊のメカニズム…また光学系では常に収差があり,レーザーのスポットの周辺領域では強度が増加する。その結果,ある量のレーザーのエネルギーは,たとえ理論的なビーム径がノズルよりのはるかに(判決注・「ノズルよりはるかに」の誤記と認める。)小さくても,ノズルエッジにもたらされる。熱によりビームウェストでビームが拡が ーザーのエネルギーは,たとえ理論的なビーム径がノズルよりのはるかに(判決注・「ノズルよりはるかに」の誤記と認める。)小さくても,ノズルエッジにもたらされる。熱によりビームウェストでビームが拡がり平坦化するので,ビームの周辺にはよりパワーがもたらされる。 増加した光学パワーがノズルエッジで吸収され,応力が増加する。これらの応力があるパワー以上でパルス的に周期的に負荷されるとノズルを劣化させると同時に水ジェットを不安定にする。破壊が起こるまでの時間はノズルオリフィスに対するビームウェストのアライメント(中心あわせ)の正確さに依存する。」(訳文7頁5行~13行)⑥ 「4 結論本報告書の第2節にある実験により,80μmノズルの寿命はチャンバーの構造に大きく依存して変わることがわかった。大 - 80 -きなチャンバーを使うとノズル寿命が短くなり,SYNOVA特許の淀みのないチャンバーだと長いノズル寿命が得られる。 解析的な結果では,大きなチャンバーでは532nmにおいても熱レズ効果(判決注・「熱レンズ効果」の誤記と認める。)が発生しうることを示した。この効果によりノズル開口部でレーザースポットが大きくなりノズル破壊に至る。 以上の計算および実験事実に基づき,淀みのある水チャンバーでは波長に関係なく熱レンズ効果が起こりノズル破壊による短寿命化が起こることは疑いがない。」(訳文7頁14行~21行) 原告作成の2011年(平成23年)9月1日付け「Impactofthermallensingonwaterjetguidedlaser」(訳文・「水ジェット誘導レーザーにおける熱レンズ効果の影響」)と題する書面(甲35)は,甲32の実験の追加実験結果等を記載した実験結果報告書であり,同書面には,次のような記載 dedlaser」(訳文・「水ジェット誘導レーザーにおける熱レンズ効果の影響」)と題する書面(甲35)は,甲32の実験の追加実験結果等を記載した実験結果報告書であり,同書面には,次のような記載がある。 ① 「2 実験的検証2.1 実験条件Picture1は,今回の実験に用いた光学系の配置を示すが,これは,前回(判決注・甲32の実験)と同じものである。今回も高さ25mm(水の淀み有り),532nmグリーンレーザー,繰り返し周波数は5あるいは10kHz,水圧100気圧の条件である。選択された80μmノズル口径に対してノズルオリフィスでのビームスポットサイズが50μmになるようにした。この光学系で異なるレーザー出力レベルで2つの実験を行った。以下のノズルの写真は,実験前後に撮影され,比較結果を示すものである。」(訳文1頁30行~2頁2行) - 81 -② 「2.2 観察結果Pictures2と3の実験前後のノズルの顕微鏡写真をみると,熱効果による焦点ボケのノズルへの影響した損傷を,Picture3のオリフィス境界の左下に明瞭に目視することができる。実験前の整った境界…は,実験後には,荒れて,層流水ジェットを作り出すことはできない。このように水が淀んでいると,熱効果による焦点ボケを引き起こした。532nmにおける僅か40Wの出力でもノズルを損傷させた。 この結果の後,同じ条件,但し,532nmのレーザーでレーザー出力のみ20Wに下げて実験を行った。実験前後の結果をPicture4と5にそれぞれ示す。 ここでもまた,Picture5の境界右上に目視できるように,熱効果による焦点ボケによりノズルが損傷を受けている。…実験で用いたパラメータのまとめ:レーザー出力 20W及び40Wパルス繰り返し周波数 ture5の境界右上に目視できるように,熱効果による焦点ボケによりノズルが損傷を受けている。…実験で用いたパラメータのまとめ:レーザー出力 20W及び40Wパルス繰り返し周波数 5及び10kHzレーザー波長 532nmレーザースポット径 50μm(ファイバー径150μm,縮小比3:1)チャンバー高さ 25mm(淀み空間有り)ノズル径 80μm40W,10kHzでのノズル損傷に至る時間:400秒20W,5kHzでのノズル損傷に至る時間…:720s」(訳文2頁3行~3頁18行)③ 「…高出力のレーザーを(訳注:水中の)ノズルに意図的にアライメントをずらせて照射した場合を視覚化するための実験 - 82 -を行った。これにより,アライメントをずらせた場合とレーザービームの熱効果による焦点ボケの場合との違いが示される。 ここでは,標準的な装置(ここでは示さない)を用いノズルオリフィスに対して意図的にずらし,40Wのグリーンレーザーを照射した。明らかに,ノズルは直ぐに損傷を受けた。実験前後における損傷の激しさを示すノズル写真をPicture6,7にそれぞれ示す。」(訳文3頁20行~4頁2行)④ 「3 理論的分析…今回の実験で,レーザーの出力が小さくても,(訳注:水の流れの)淀みのない構造の光と水のカップリング・ユニットを使わない限り(訳注:ノズルに対して)損傷をもたらすことが示された。確かに,ある範囲では,より程度が大きいあるいは小さい淀み空間と都合のよいレーザー出力の組み合わせにより,ノズルの損傷を回避することは可能かもしれない。それにもかかわらず,水の淀みをなくして動作させることによって熱効果による焦点ボケを避けることは明確に利点がある。なぜなら,そのことによ わせにより,ノズルの損傷を回避することは可能かもしれない。それにもかかわらず,水の淀みをなくして動作させることによって熱効果による焦点ボケを避けることは明確に利点がある。なぜなら,そのことにより如何なる種類のレーザー光に対しても,パラメーター条件を広くすることができるからである。」(訳文4頁3行,17行~末行) 富山県工業技術センター所長作成の平成22年10月28日付け試験成績通知書(乙16)は,同センター所長が被告の依頼により被告の工場で行った「レーザー光の吸収特性試験」の試験結果を記載した試験成績通知書であり,同通知書には,次のような記載がある。 ① 「1.レーザ光の水に対する吸収試験1-1.試験方法 - 83 -試験装置…試験条件:出射レンズユニット集光側焦点距離:100mmガラスビーカー容量:50ml(外径:φ46.5mm,高さ:61mm)水の深さ:36mmレーザの焦点位置:水面より下方18mm室温:25℃レーザ波長(発振周波数):グリーンレーザ532nm(20kHz) YAGレーザ1064nm(20kHz)…レーザ吸収試験は,各レーザを上記レーザ出力でガラスビーカー(50ml)中の水(50ml)に照射して,ガラス容器の表面温度を表面温度計(T型熱電対)で測定した。また,ガラス容器表面の温度は照射前(0分),3分後,10分後,30分後の温度をデータロガーに記録した。」(1頁)② 「1-2.試験結果…次に,各レーザ照射前(0分),3分,10分,30分後のガラスビーカーの表面温度の測定結果を表2に示す。」,「表2 ガラスビーカー表面温度の測定結果グリーンレーザ YAGレーザ基本波経過時間(分) 表面温度(℃) 定結果を表2に示す。」,「表2 ガラスビーカー表面温度の測定結果グリーンレーザ YAGレーザ基本波経過時間(分) 表面温度(℃) 0 26.2 26.0 3 29.4 30.5 10 30.5 39.0 30 33.3 51.6」(以上,2頁。ただし,上記②は,乙16の「表2」の罫線等 - 84 -を省略して表記している。) 被告従業員C作成の平成22年11月1日付け陳述書(乙17)には,乙16の試験結果に関し,次のような記載がある。 ① 「表2(判決注・乙16の「表2」)は,表面温度計によって測定された温度の時間に対する変化を示しています。表2から明らかなように,ビーカー内の水の温度上昇は,各経過時間において何れもYAGレーザーの基本波の方がグリーンレーザーよりも大きく,YAGレーザーの基本波では水温が急激に上昇しているのに対し,グリーンレーザーでは水温が緩やかに上昇しています。この結果から,グリーンレーザーの水による吸収は,YAGレーザー基本波の水による吸収よりも小さく,グリーンレーザーはYAGレーザー基本波よりも水に吸収されにくいレーザーであることが確認されました。」(3頁2行~9行)② 「なお,本レーザー光の水に対する吸収試験では,グリーンレーザーを使用した場合にも水の温度は上昇していますが,実際の被告製品WbMでは,液体供給空間内の水の温度上昇は無視できる程度です。すなわち,WbMでは,液体供給空間内の水は常にノズルから噴射されているので,この試験において温度上昇を観測している時間よりも遙かに短い時間で新しく流入した水と入れ替 度上昇は無視できる程度です。すなわち,WbMでは,液体供給空間内の水は常にノズルから噴射されているので,この試験において温度上昇を観測している時間よりも遙かに短い時間で新しく流入した水と入れ替わります。このため,実際の被告製品の液体供給空間内において,この試験で測定されたような温度上昇が発生することはありません。」(3頁10行~17行) 富山県工業技術センター所長作成の平成23年5月31日付け試験成績通知書(乙30)は,同センター所長が被告の依頼により被告の工場で被告製品(WbM4032)を用いて行った「レーザー光の液体貯留室透過試験」の試験結果を記載した試験成績通知書 - 85 -であり,同通知書には,次のような記載がある。 ① 「レーザー光の液体貯留室透過試験1.試験方法試験装置:レーザー・ウォータージェット複合加工機:(株)スギノマシン製WbM4032…試験条件:ウォータージェットノズル径:φ100μm水圧:10MPa使用液体:純水コリメートレンズ焦点距離:250mm集光レンズ焦点距離:50mm液体貯留室高さ:10,15,25mm試験時温度:室温レーザー波長(発振周波数):グリーンレーザー532nm(10kHz)レーザー入力設定値:40W(実測値39.6W)…試験は,液体貯留室(ウォータージェット噴射ノズルの手前で水を留める空間)の内部高さ(H)を10,15,25mmと変え,それぞれについて5分毎に30分間ウォータージェット透過後のレーザー出力(W)をレーザーパワーメータにより測定した。また,液体貯留室透過前のレーザー出力も測定した。 加えて,試験開始時(0分経過)と試験終了時(30分経過)でステンレス板(厚さ0.1mm)の加工を行った。」(1頁)② 「2.試験結果貯 した。また,液体貯留室透過前のレーザー出力も測定した。 加えて,試験開始時(0分経過)と試験終了時(30分経過)でステンレス板(厚さ0.1mm)の加工を行った。」(1頁)② 「2.試験結果貯留室高さ(H)が10,15,25mmの場合のウォータージェット透過後のレーザー出力測定結果を表1に,グラフを図3に示す。」(3頁),「…すべての貯留室高さにおいて,ス - 86 -テンレス板(厚さ0.1mm)をφ10mmの円盤状に切り出した加工ワーク外観を写真2に示す。」(4頁) 被告従業員C作成の平成23年6月1日付け陳述書(乙31)には,乙30の試験結果に関し,次のような記載がある。 ① 「試験結果は試験成績通知書の表1及び図3に示されています。図3のグラフに示されているように,高さ10mm,15mm,25mmの何れの液体供給空間においても,実験開始から30分間に亘り,水ジェットにより導光されるレーザーの出力はほぼ一定です。また,実験終了後,ノズル壁の損傷も見られませんでした。」(2頁9行~13行)② 「試験成績通知書の写真2は,透過試験の前後に加工したステンレス板の写真です。この加工は,厚さ0.1mmのステンレス板を直径10mmの円形に切り抜くもので,1つの円形の加工時間は約6.5秒でした。写真から明らかなように,ステンレス板の加工状態は30分の導光の前後で特に変化はなく,バリ等のない良好な切断面が得られています。このことからも,30分の導光によりノズル壁に損傷がないことは明らかです。」(2頁30行~35行) 上記ないしを前提に,レーザービームを材料加工のために液体ビーム内に光学的に結合する装置において,レーザービームとしてグリーンレーザーを使用する場合に,液体ビームを形成するノズルの壁を損傷する程度の熱レ しを前提に,レーザービームを材料加工のために液体ビーム内に光学的に結合する装置において,レーザービームとしてグリーンレーザーを使用する場合に,液体ビームを形成するノズルの壁を損傷する程度の熱レンズが液体供給空間に形成されることがあり得るかどうかについて検討する。 しかるところ,①甲32によれば,原告の製品である「SYNOVAチャンバー」(高さ0.5mm,直径10mm,側方24箇所から均等に直径1mmの流入口)とこれよりも大きなチャンバー - 87 -(高さ25mm,直径25mm,側壁の一箇所に直径1.5mmの流入口)について,波長532nmのグリーンレーザーを用いて,平均レーザー出力100W,パルス繰り返し周波数10kHz,水圧100気圧,ノズル直径80μm,収束レンズ後のビームウェストの直径41.7μmの条件で,ノズル寿命を測定する実験を行ったところ,大きなチャンバーでは,ノズル破壊に至るまで最大で240秒であったのに対し,「SYNOVAチャンバー」では,600秒後の実験終了時までにノズル破壊が認められなかったこと(前記),②甲35によれば,甲32と同様の「大きなチャンバー」について,平均レーザー出力を甲32の100Wよりも低い40W又は20Wに設定し,平均レーザー出力が40Wの場合はパルス繰り返し周波数10kHz,平均レーザー出力が20Wの場合はパルス繰り返し周波数5kHzとし,それ以外の条件は甲32の実験と同様の条件(ただし,レーザースポット径は50μm)で,グリーンレーザーを用いた実験を行ったところ,平均レーザー出力が40Wの条件の場合はノズル損傷に至る時間が400秒,平均レーザー出力が20Wの条件の場合はノズル損傷に至る時間が720秒であり,さらに,平均レーザー出力が40Wの条件の場合に意図的にノズルの が40Wの条件の場合はノズル損傷に至る時間が400秒,平均レーザー出力が20Wの条件の場合はノズル損傷に至る時間が720秒であり,さらに,平均レーザー出力が40Wの条件の場合に意図的にノズルのアラインメントをずらして照射したところ,ノズルは直ぐに損傷を受けたこと(前記)を総合すると,少なくとも,甲32にいう「大きなチャンバー」(高さ25mm,直径25mm,流入口は直径1.5mmで一箇所だけ側壁についている。)においては,グリーンレーザーを使用した場合であっても,ノズル壁を損傷する程度の熱レンズが形成されることがあり得るものと推認される。 他方で,乙30には,グリーンレーザーを使用する被告製品において,その液体貯留室の高さを10,15,25mmと変えた上で, - 88 -レーザービーム照射開始時(0分経過)と照射開始後30分経過時におけるステンレス板(厚さ0.1mm)の加工を行う試験を行い,その加工ワークの外観を「写真2」を示して比較した旨の記載(前記)があり,また,乙31には,上記加工ワークの外観において,照射開始時と照射開始後30分経過時の両者ともに,バリ等のない良好な切断面が得られていることから,照射開始後30分経過しても,ノズルに損傷が生じなかったものと評価できる旨の記載(前記)がある。これらの記載は,グリーンレーザーを使用した乙30の試験においては,レーザービームの照射開始後30分経過時までにノズル壁の損傷が生じなかったことを示すものといえる。 しかし,甲32及び35の各実験と乙30の試験を対比すると,甲32及び35の各実験では直径80μmのノズルが使用されているのに対し,乙30の試験では直径100μmのノズルが使用されていること,甲32及び35の各実験ではビームスポット径が明らかにされている(41. び35の各実験では直径80μmのノズルが使用されているのに対し,乙30の試験では直径100μmのノズルが使用されていること,甲32及び35の各実験ではビームスポット径が明らかにされている(41.7μm,50μm)のに対し,乙30の試験ではこれが明らかにされていないことなどに照らすならば,甲32及び35の各実験と乙30の試験では,実施条件が同一であるとはいえないことがうかがわれ,両者の実験結果及び試験結果は必ずしも矛盾するものと断定することができるものではない。そうすると,乙30の試験結果をもって上記推認を妨げるものではないというべきである。 以上によれば,レーザービームとしてグリーンレーザーを使用した場合であっても,液体供給空間内にノズル壁を損傷する程度の熱レンズが形成されることがあり得るものと認められる。 b 上記②の点について原告は,グリーンレーザーを使用する被告製品において熱レンズの - 89 -形成が抑圧され,ノズル壁の損傷が防がれていることからすると,被告製品の液体貯留室内のフォーカス円錐先端範囲においては,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される程度に,流速が十分に高いものといえる旨主張する。 前記イbの認定のとおり,構成要件エの「せき止め空間のない」とは,液体供給空間内のレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(の領域)において,ノズル壁の損傷に至る原因となる熱レンズの形成を抑圧する程度に液体の流速を十分に高くし,当該液体が「静止状態」あるいは「擬似的に静止状態」にないことをいい,また,構成要件オの「液体の流速が,十分に高く」とは,上記「せき止め空間のない」構成を採用したことにより,「フォーカス円錐先端範囲において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しない いことをいい,また,構成要件オの「液体の流速が,十分に高く」とは,上記「せき止め空間のない」構成を採用したことにより,「フォーカス円錐先端範囲において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される」程度に流速が高いことを意味する。 ところで,ノズル壁が損傷しない要因として,熱レンズの形成が抑圧されること以外に,ノズル径がレーザースポットサイズよりも相当程度大きいことや,ノズルの耐久性が高いこと等が考えられ,また,そもそも,ノズル壁の損傷に至る熱レンズの形成は,液体供給空間内のレーザービームのフォーカス円錐先端範囲(の領域)における液体の流速のみならず,使用するレーザービームの種類(液体による吸収率の違い),レーザー出力,使用する液体の種類,液体供給空間に液体を供給する圧力,液体供給空間の高さ等の諸条件にも依存するものと考えられる(甲2,32,35,甲A5,乙16,17,30ないし32,弁論の全趣旨)。 そうすると,被告製品を使用する加工方法が本件発明1の構成要件エないしカを充足するというためには,被告製品ではノズル壁の損傷が防がれているということだけでは十分ではなく,そのようにノズル - 90 -壁が損傷していないという結果が,被告製品において上記「せき止め空間のない」構成が採用され,それによって「フォーカス円錐先端範囲において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される」程度に流速が十分に高くされたことによってもたされたものであることを明らかにする必要があるというべきである。 しかるところ,本件の全証拠によっても,そのような事実を認めるに足りない。 この点に関し,被告従業員のCの平成22年11月1日付け陳述書(乙17)中には,「…Wb があるというべきである。 しかるところ,本件の全証拠によっても,そのような事実を認めるに足りない。 この点に関し,被告従業員のCの平成22年11月1日付け陳述書(乙17)中には,「…WbMでは,液体供給空間内の水は常にノズルから噴射されているので,この試験において温度上昇を観測している時間よりも遙かに短い時間で新しく流入した水と入れ替わります。 このため,実際の被告製品の液体供給空間内において,この試験で測定されたような温度上昇が発生することはありません。」との記載(前記a②)がある。しかし,上記記載箇所は,乙16の試験結果について説明したものであり,乙16の試験条件(前記a①)等を勘案すると,乙16の試験では,「ガラスビーカー容量:50ml(外径:φ46.5mm,高さ:61mm)」,「水の深さ:36mm」のビーカーを用いたレーザー光の吸収特性試験が行われており,このビーカー内では,「観測している時間」中に,新たに水が流入することはなく,水の流れがないこと,他方,被告製品の使用中には絶えず液体貯留室内に水が流入し,液体貯留室内の水がノズルから液体ビームとして噴射されることを踏まえて,「このため,被告製品の液体供給空間内において,この試験で測定されたような温度上昇が発生することはありません。」と述べたものと理解されるから,上記記載箇所は,被告製品においてノズル壁が損傷していないという結果が,上記「せ - 91 -き止め空間のない」構成を採用したことにより,「フォーカス円錐先端範囲において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される」程度に流速が高いことによってもたされたものであることをうかがわせる事情となるものではない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告 しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される」程度に流速が高いことによってもたされたものであることをうかがわせる事情となるものではない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 c なお,原告は,本件の審理の過程において,被告製品の組立図及びその部材の詳細な寸法等に係る情報(乙8の1,2)を対象とする本件秘密保持命令の名宛人が原告訴訟代理人弁護士と補佐人弁理士のみに限られ,本件特許について専門的な知識を有する原告代表者や原告の担当者がそれらの内容を知ることができないことによって,原告における上記情報を前提としたシミュレーション等による侵害論の立証に困難を来している旨述べている(平成22年11月5日付け原告準備書面の「第6」等)。 しかしながら,原告代表者や原告の担当者が本件秘密保持命令の名宛人となっていないとしても,被告製品が乙7記載の装置の実施品であることは被告が認めるところであるから,原告において,乙7に開示された乙7記載の装置の液体貯留室の構造を用いた実験(原告は,甲32,35において,高さ25mm,直径25mm,流入口は直径1.5mmで一箇所だけ側壁についているチャンバーを用いて熱レンズ効果の影響に係る実験を行っていることからすると,乙7記載の装置の液体貯留室の構造を用いた実験を行うことは可能であるものとうかがわれる。)や,当該構造に係る数値範囲を前提にしたモデルのシミュレーション等を行うことにより,被告製品の液体貯留室内の液体の流速がノズル壁の損傷に至る原因となる熱レンズの形成を抑圧する程度に十分に高いことなどについて立証をすることは妨げられ - 92 -るものではないというべきであるから,原告が述べる上記事情は,前記bの判断を左右する事情には当たらな レンズの形成を抑圧する程度に十分に高いことなどについて立証をすることは妨げられ - 92 -るものではないというべきであるから,原告が述べる上記事情は,前記bの判断を左右する事情には当たらない。 (もっとも,本件発明1の構成要件カの「したがってフォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧されること」にいうノズル壁の「損傷」とは,層流から成るビームガイドとして機能する液体ビーム(本件明細書にいう「層状のコンパクトなビーム」)が形成できなくなる程度のノズル壁の損傷を意味するものと認められるが,他方で,本件発明1を実施した装置においても,装置の継続使用による液体供給間内の熱レンズの形成そのものは不可避であり,いずれは,熱レンズの形成によって発散したレーザービームがノズル壁の表面に当たることによって層流から成るビームガイドとして機能する液体ビームが形成できなくなる程度の損傷を生ずることは避けられないものと考えられることからすると(甲32(前記a②ないし⑥),弁論の全趣旨),ノズル壁の「損傷」という観点からみた場合に,本件発明1が従来技術と比較して技術的に意義を有するのは,熱レンズの形成をできるだけ抑圧することで,熱レンズによって発散されてノズル壁に当たるレーザービームの量を減少させて,層流から成るビームガイドとして機能する液体ビームが形成できなくなる程度の損傷に至るまでのノズル壁の寿命,すなわち時間的な耐久性を相対的に延ばしたことにあるというべきである。しかるところ,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)や本件明細書の「発明の詳細な説明」においては,そのようなノズル壁の寿命(時間的な耐久性)についての従来技術との具体的な対比や「閾値」に関する記載は存在せず, 本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)や本件明細書の「発明の詳細な説明」においては,そのようなノズル壁の寿命(時間的な耐久性)についての従来技術との具体的な対比や「閾値」に関する記載は存在せず,ノズル壁の「損傷」がいかなる程度のことをいうのか明瞭とはいえない面があることからすると,原告における被告製品を使用する加工方法が構 - 93 -成要件エないしカを充足することの立証には,このような観点からの困難が伴うものといわざるを得ない。) 以上のとおり,被告製品を使用する加工方法は本件発明1の構成要件エないしカをいずれも充足するとの原告の主張を認めるに足りる証拠はない。 エ小括したがって,被告製品を使用する加工方法は,構成要件エないしカを充足するものと認められないから,本件発明1の技術的範囲に属するものと認めることはできない。 本件発明5及び10についてア前記のとおり,被告製品を使用する加工方法は構成要件エないしカを充足せず,本件発明1の技術的範囲に属するものと認めることはできないから,被告製品は,本件発明5の構成要件コないしシ(構成要件サ及びシは,それぞれ構成要件オ及びカと同内容である。)を充足するものとは認められない。 したがって,被告製品は,本件発明5の技術的範囲に属するものと認めることはできない。 イ前記アのとおり,被告製品は,本件発明5(請求項5)の技術的範囲に属するものと認めることはできないから,本件発明10の構成要件ソの「請求項5ないし9の1つに記載の装置」を充足するものとは認められない。 したがって,被告製品は,本件発明10の技術的範囲に属するものと認めることはできない。 まとめ以上のとおり,被告製品を使用する加工方法は,本件発明1の技術的範囲に属するものと認めるこ したがって,被告製品は,本件発明10の技術的範囲に属するものと認めることはできない。 まとめ以上のとおり,被告製品を使用する加工方法は,本件発明1の技術的範囲に属するものと認めることはできず,また,被告製品は,本件発明5及び1 - 94 -0の技術的範囲に属するものと認めることはできない。 2 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官大西勝滋 裁判官上田真史 - 95 -(別紙) 物件目録製品名ウオータービームマシン製品番号 WbM4032,WbM3025 - 96 -(別紙) 本件明細書の図面【図1】 【図2】 【図3】 - 97 -(別紙) 乙A1の図面【図1】 【図2】 - 98 -【図3】,【図4】,【図5】 - 99 -(別紙1)及び(別紙2)●(省略)● - 100 -(別紙3) 被告製品の概要 1 全体構成被告製品は,噴流液柱内に導かれたレーザー光により熱影響の少ない加工を目的とする加工装置である。 全体構成は,別添模式図1に示すとおり,主要構成はグリーンレーザー発振器1と,高圧水を噴射するノズル7及びそのノズル7上流側に隣接して設けられ高圧水をノズル7に供給する液体貯留空間を備えた加工ヘッド6と,レーザー光11をノズル7に導くための光学装置2と,ノズル7に高 1と,高圧水を噴射するノズル7及びそのノズル7上流側に隣接して設けられ高圧水をノズル7に供給する液体貯留空間を備えた加工ヘッド6と,レーザー光11をノズル7に導くための光学装置2と,ノズル7に高圧水を供給する液体供給手段3と,からなる。 2 各構成部分の説明 加工ヘッド部の構成(別添模式図2参照)略円筒形状に形成されたハウジング5と,ハウジング5内の上部に収容された光学装置2と,光学装置2の下方に配設された液体貯留空間と,下方に配設されたノズル7と,からなる。 ア光学部の構成(別添模式図2-1参照)光ファイバ10に結合された光学装置2は,ハウジング5の頂部から放射されたレーザー光11を平行光に変換するコリメートレンズ12と,コリメートレンズ12で変換された平行光をノズル7の入口開口部に集光する集光レンズ13と,液体貯留空間の上方に隣接して配設されレーザー光11を導入するウインド14と,からなる。 イノズル部の構成(別添模式図2-2参照)ノズル7は,いわゆるオリフィスノズルを使用している。また,ノズル径は40~200μmのものが使われる。 ウ配管流路(層流形成流路)の構成液体貯留空間は,液体供給手段3から供給された噴流液体である高圧水を貯留してノズル7に供給する液体貯留室23を備えている。 液体貯留室23は,ノズルの軸線G方向下流側が上流側よりも縮径された逆円錐台形状として形成されている。 また,連絡流路22の外周面と液体貯留室23の外周面とは,段差がなく同一面上に連続するように延設されている。また,外周面に沿う方向は,ノズル7の軸線G方向に対して内側(ノズル7側)に傾斜している。 かかる構成により,分配流路21に貯留された高圧水は連絡流路22から液体貯留室23の外周面の傾斜を伝わるように 外周面に沿う方向は,ノズル7の軸線G方向に対して内側(ノズル7側)に傾斜している。 かかる構成により,分配流路21に貯留された高圧水は連絡流路22から液体貯留室23の外周面の傾斜を伝わるように導入されることで,流体の流 - 101 -れが整えられ,液体貯留室23に貯留されノズル7に高圧水が供給される。 ポンプ高圧水ポンプは,サーボ駆動式のポンプを採用し,ポンプの吐出圧力を検出して吐出圧力が一定となるようにフィードバック制御を行なうことで,サーボモータとボールねじにより一定の流速で水を押し出すように構成されている。 このような構成により,安定した高圧水の流れを発生して液体貯留室23に送り出すことができる。 高圧水ポンプの仕様としては(甲8)発生圧力2~50MPa,最大流量0.5L/minのタイプが使用され,高圧水ポンプで発生した高圧水は高圧ホースを通して加工ヘッド6に供給される。 レーザー発振器本装置で典型的に用いられているグリーンレーザー(532nm)を得るための通常のレーザー発振器1を使用している。 レーザー発振器1は(甲8記載のとおり)LD励起パルスレーザーを使用。 この場合,平均出力20~100W,パルス周波数5~20kHzの仕様となる。 レーザー光11は,レーザー発振器1から光ファイバ10を通して加工ヘッド6に導かれる。 - 102 -(別添) 模式図 - 103 -2-1 2-2
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