-1-平成28年9月29日判決言渡し同日原本交付裁判所書記官平成25年(ワ)第10425号貸金返還請求事件(甲事件)平成25年(ワ)第10428号貸金返還請求事件(乙事件)口頭弁論終結日平成28年7月22日判決 原告株式会社太陽化学工業所同訴訟代理人弁護士明尾 寛同依藤祐介同宮藤幸一同黄 大洪甲事件被告株式会社KAZ乙事件被告ビルドテクニカルワークス株式会社上記2名訴訟代理人弁護士田中泰雄同溝上哲也同三嶋周治主文 1 大阪簡易裁判所平成25年(ロ)第5016号事件の仮執行宣言付支払督促につき,被告株式会社KAZに対し,6444万5443円及びうち6433万0673円に対する平成25年11月21日から支払済みまで年1割の割合による金員の支払を命じる限度で認可する。 2 大阪簡易裁判所平成25年(ロ)第5017号事件の仮執行宣言付支払督促を認可する。 3 督促異議申立て後の上記事件に関する訴訟費用は,被告らの負担とする。 事実 及び理由-2-第1 請求主文同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,①原告が,被告株式会社KAZ(以下「被告KAZ」という。)に対し金銭を貸し付けたと主張し,同被告との間で成立した金銭消費貸借契約に関して合意した返済期限 事案の概要等 1 事案の概要本件は,①原告が,被告株式会社KAZ(以下「被告KAZ」という。)に対し金銭を貸し付けたと主張し,同被告との間で成立した金銭消費貸借契約に関して合意した返済期限が経過したとして,被告KAZに対し,金銭消費貸借契約に基づく貸付金の残金及びこれに対する一部弁済日(平成25年8月14日)の翌日から支払済みまで約定による年1割の割合による遅延損害金の支払を求めて大阪簡易裁判所に支払督促の申立てをしたところ,被告KAZに対する支払督促が平成25年8月26日に発せられ,同年9月25日に仮執行宣言が付されたのに対し,被告KAZがこの仮執行宣言付支払督促に異議申立てをしたため,原告が,仮執行宣言付支払督促のうち,残元金,支払督促申立て手続費用及び仮執行宣言手続費用並びに残元金に対する最終一部弁済日(平成25年11月20日)の翌日である平成25年11月21日から支払済みまで約定の年1割の割合による遅延損害金の支払を求める限度での認可を求め(甲事件),②原告が,被告ビルドテクニカルワークス株式会社(以下「被告ビルド」という。)に対して金銭を貸し付けたと主張し,同被告との間で成立した金銭消費貸借契約に関し,合意した返済期限が経過したとして,被告ビルドに対し金銭消費貸借契約に基づく貸付金の残金及びこれに対する弁済期の翌日である平成25年8月1日から支払済みまで約定による年1割の割合による遅延損害金の支払を求めて大阪簡易裁判所に支払督促の申立てをしたところ,被告ビルドに対する支払督促が平成25年8月26日に発せられ,同年9月26日に仮執行宣言が付されたのに対し,被告ビルドがこの仮執行宣言付支払督促に異議申立てをしたため,原告が,仮執行宣言付支払督促の認可を求める(乙事件)事案である。 本件において被告らは,原告から交付され 執行宣言が付されたのに対し,被告ビルドがこの仮執行宣言付支払督促に異議申立てをしたため,原告が,仮執行宣言付支払督促の認可を求める(乙事件)事案である。 本件において被告らは,原告から交付された金銭につき返還約束がないこと等を理由に金銭消費貸借契約の成立を争うとともに,それぞれ,抗弁として,次の各不-3-正競争防止法違反行為又は不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権とし,原告の貸金返還請求権を受働債権として,これらを対当額で相殺する旨の意思表示をした。 (被告ビルド)① 原告又はその被用者が被告ビルド作成の設計図に係る営業秘密を不正に取得,使用した行為又は同設計図を流用した行為につき不正競争行為(不正競争防止法2条1項4号,5号,8号)又は不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求権② 原告の被用者が,被告ビルドの取引先等に対し,被告らが資金難のため被告ビルドが受注したトレーラーの製造を開始できない等虚偽の告知をした行為につき,不正競争行為(平成27年法律第54号による改正前の不正競争防止法2条1項14号(現行法の15号,以下「旧14号」という。))又は不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求権(被告KAZ)① 原告又はその被用者が被告KAZ作成の設計図に係る営業秘密を不正に取得,使用した行為又は同設計図を流用した行為につき,不正競争行為(不正競争防止法2条1項4号,5号又は8号)又は不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求権② 原告の被用者が被告KAZの取引先に対し,被告らが資金難のため倒産する等,虚偽の告知をした行為につき不正競争行為(不正競争防止法2条1 項旧14号)又は不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求権③ 原告の支払督促申立てにより発付された支払督促に対し,被告KAZがして 偽の告知をした行為につき不正競争行為(不正競争防止法2条1 項旧14号)又は不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求権③ 原告の支払督促申立てにより発付された支払督促に対し,被告KAZがしていた異議申立てを原告の被用者が違法に取下げたことにつき不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求権④ 被告KAZが他社に製造委託していたトレーラーにつき,原告の被用者が製造委託先から被告KAZに対し,法外な製造価格を請求させるよう仕向けたことにより被告KAZに損害を与えた行為につき不法行為(使用者責任)に基づく損害賠-4-償請求権⑤ 前記①ないし④の行為等を全体として一つの不法行為ととらえた場合の,不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求権 2 基礎となる事実(1) 当事者ア原告は,昭和38年8月21日に設立された,各種プラスチツクス中空成型,射出成型,直圧成型の製造加工販売業,繊維製品の製造販売業を事業の目的とする株式会社である。原告は,平成25年に被告KAZの元従業員が中心となってトレーラー部門を立ち上げ,以来,同部門においてトレーラーの製造販売を行っている(争いがない)。 原告では,従前,P1(以下「原告前代表者」という。)が代表取締役を務めていたが,平成27年7月24日に専務のP2が代表取締役に就任した(弁論の全趣旨)。 イ被告KAZは,平成22年5月6日に,①特殊車輌及びトレーラーの設計,製造,販売,②車輌の部品の設計,製造,販売,③建設機械の設計,製造,販売,④特殊製品の輸送コンサルティングを主たる事業の目的として設立された株式会社である。 被告KAZは,設立後まもなく上海に設計事務所を開設し,平成24年8月頃からは揚州の工場に従業員を派遣して,中国において日本向けのトレーラーを生産している(乙A3 して設立された株式会社である。 被告KAZは,設立後まもなく上海に設計事務所を開設し,平成24年8月頃からは揚州の工場に従業員を派遣して,中国において日本向けのトレーラーを生産している(乙A34,弁論の全趣旨)。 ウ被告ビルドは,被告ら代表者が,平成24年10月31日に,①特殊車輌及びトレーラーの設計,製造,販売,②車輌の部品の設計,製造,販売,③建設機械の設計,製造,販売,④特殊製品の輸送コンサルティングを主たる事業の目的として,中国における被告KAZのトレーラーの生産窓口となるべく設立した株式会社である(弁論の全趣旨)。 (2) 原告及び原告前代表者と被告ら及び被告ら代表者との関係原告は,平成14年に被告ら代表者が統括部長としてトレーラーの製造販売事業-5-を行っていた東洋車輌工業株式会社(以下「東洋車輌」という。)を買収し,平成19年まで,原告前代表者が東洋車輌の代表取締役,被告ら代表者が東洋車輌の統括部長を務めた。その後,同年9月,原告は,東洋車輌を今治造船の子会社である株式会社スチールハブに売却し(乙A3及び4),同社の子会社である株式会社トーヨートレーラー(以下「トーヨートレーラー」という。)がトレーラーの製造販売事業を行い,被告ら代表者が総括部長を務めていたが,被告ら代表者は,独立して事業を行うため,被告KAZを設立した。原告前代表者は,被告KAZの設立後は,被告ら代表者の要請により資金提供をしていた(甲A11)。 (3) 被告KAZの従業員らの退職平成25年7月から8月にかけて,被告KAZの従業員であった,P4,P5,P6,P7,P8が被告KAZを退職し,その直後に原告に入社した。また,同年10月頃には,被告KAZの中国責任者の立場にあったP9と,同社の設計員であったP10とが被告KAZを退職し,そ 4,P5,P6,P7,P8が被告KAZを退職し,その直後に原告に入社した。また,同年10月頃には,被告KAZの中国責任者の立場にあったP9と,同社の設計員であったP10とが被告KAZを退職し,その直後に原告に入社した。 (4) 関係者ア P4は,東洋車輌及びトーヨートレーラーでの勤務経歴はなく,金融機関での勤務経験があったところ,平成23年2月に被告KAZに入社し,経理・総務担当の管理部長となると共に,被告ビルド設立後はその代表取締役に就任していたが,平成25年8月1日付で辞任した。P4はその頃被告KAZを退職し,同月頃,原告に入社した。 P4は,現在原告において,トレーラーに関する業務を行っている(甲A97,弁論の全趣旨)。 イ P5は,東洋車輌及びトーヨートレーラーにおいて被告ら代表者の部下であったことから,平成24年8月に被告KAZに入社することになり,営業を担当して営業部長に就任していたが,平成25年7月31日に被告KAZを退職し,その後,原告に入社した。P5は現在,原告においてトレーラーの設計,製造及び販売に関する業務を行っている(甲A96,弁論の全趣旨)。 -6-ウ P6は,トーヨートレーラーの勤務を経て,平成24年10月に被告KAZに入社し,主に営業を担当していたが,平成25年7月に被告KAZを退職し,同年8月に原告に入社している。P6は現在,主にトレーラーの営業を行っている(甲A98)。 エ P9は,東洋車輌及びトーヨートレーラーの勤務を経て,平成24年3月頃に被告KAZに入社し,同年9月頃からは,中国での被告KAZの責任者に就任していたが,平成25年10月12日に被告KAZを退職し,その後,原告に入社した。P9は現在,原告において,トレーラーの設計,製造及び販売に関する業務を行っている(甲A95,弁論 AZの責任者に就任していたが,平成25年10月12日に被告KAZを退職し,その後,原告に入社した。P9は現在,原告において,トレーラーの設計,製造及び販売に関する業務を行っている(甲A95,弁論の全趣旨)。 オ P10は,トーヨートレーラー時代に被告ら代表者の部下であったことから,被告KAZ設立のすぐ後に入社し,一度退職したものの,平成25年3月頃,揚州工場の設計士として被告KAZに再入社した。P10は,同年10月頃,原告に入社した(弁論の全趣旨)。 カ P5,P6,P8及びP9は,原告前代表者が東洋車輌の代表者であった当時,同社の従業員であった(甲A11,甲A94,甲A95)。 (5) 被告KAZの体制ア被告KAZは,遅くとも平成24年7月頃には,上海事務所を設置し,主に設計業務に当たらせていた(甲A95,弁論の全趣旨)。 イ被告KAZは,被告ビルドを介してトレーラー製造を揚州通華に外注しており,遅くとも平成24年10月頃から揚州通華の製造工場の一角を借りて揚州事務所とし,同所を製造部門としていた(甲A95,弁論の全趣旨)。 ウ揚州事務所には,被告KAZの従業員である工員十数名が常駐しており,これに揚州通華所属の工員十数名を加えた30名程度でトレーラーの製造作業に当たっていた(甲A95)。 P9は,平成24年8月から,被告KAZの中国における製造部門の責任者の地位にあった。また,被告KAZ従業員であったP8とP7とが派遣されて同事務所-7-で勤務することがあった(甲A95)。 (6) 相殺の意思表示被告らは,平成26年5月15日の第2回弁論準備手続期日において,被告ら準備書面(3)を陳述し,同年7月3日の第3回弁論準備手続期日において,被告ら準備書面(4)を陳述し,平成28年7月22日の第5回口頭弁論期日にお 年5月15日の第2回弁論準備手続期日において,被告ら準備書面(3)を陳述し,同年7月3日の第3回弁論準備手続期日において,被告ら準備書面(4)を陳述し,平成28年7月22日の第5回口頭弁論期日において,被告ら準備書面19を陳述することにより,争点7,16記載のとおり,原告の貸金等返還請求権を受働債権とし,これと被告らの原告に対する債権とを対当額で相殺する旨の意思表示をした。 3 争点(被告ビルド関係)(1) 原告被告ビルド間の金銭消費貸借契約の成否(争点1)(2) 原告による不正競争行為(被告ビルドの営業秘密の不正取得,不正使用)の成否(争点2)(3) 原告による不正競争行為(虚偽告知)の成否(争点3)(4) 不法行為(被告ビルドの設計図の流用)の成否(争点4)(5) 不法行為(取引先への取引解除の仕向け)の成否(争点5)(6) 原告の使用者責任の成否(争点6)(7) 被告ビルドの損害額及び相殺(争点7)(被告KAZ関係)(8) 原告被告KAZ間の金銭消費貸借契約の成否(争点8)(9) 原告による不正競争行為(被告KAZの営業秘密の不正取得,不正使用)の成否(争点9)(10) 原告による不正競争行為(虚偽告知)の成否(争点10)(11) 不法行為(被告KAZの設計図の流用)の成否(争点11)(12) 不法行為(支払督促に対する異議申立ての無断取下げ)の成否(争点12)(13) 不法行為(製造委託先への高額請求の働きかけ)の成否(争点13)-8-(14) 被告KAZの事業壊滅等を目的とした全体として一連の不法行為の成否(争点14)(15) 原告の使用者責任の成否(争点15)(16) 被告KAZの損害額及び相殺(争点16) 4 争点に関する当事者の主張【被告ビルド関係】 体として一連の不法行為の成否(争点14)(15) 原告の使用者責任の成否(争点15)(16) 被告KAZの損害額及び相殺(争点16) 4 争点に関する当事者の主張【被告ビルド関係】(1) 原告被告ビルド間の金銭消費貸借契約の成否(争点1)(原告の主張)ア平成24年11月7日,原告は被告ビルドに対し,次の条件で1001万円を貸し付けたことにより,金銭消費貸借契約が成立した。 ・貸付金額 1001万円・弁済期定めなし・利息無利息・遅延損害金定めなしイ平成25年3月12日,原告と被告ビルドの間において,アに関し,次のとおりの債務承認及び弁済契約を内容とする「債務承認及び弁済契約書」を作成した。 ・債務額 1001万円・弁済期平成25年7月末日限り・利息無利息・遅延損害金年10%ウ被告ビルドの主張について原告が被告ビルドに対して,無償で資金提供する旨の明確な意思表示を行った事実は存在しない。 もともと被告ら代表者は,原告から交付された1001万円について返済義務があることは認識しており,平成25年9月9日に原告専務宛てに送信したメールでも,これが金銭消費貸借であることを認めている。 -9-(被告ビルドの主張)ア原告から被告ビルドに1001万円の交付があったことは認めるが,これは,原告による投資(出資)であり,返還約束がないことから,貸金ではない。 イ 「債務承認及び弁済契約書」を作成したことは認める。ただし,経済的支援を継続してもらうために,原告の求めに応じてやむを得ず署名したものである。 同日,原告前代表者は,彦根市内で,当時,被告ビルドの代表者であったP4と,被告KAZ代表者の被告ら代表者に対し,原告と被告ビルド間及 もらうために,原告の求めに応じてやむを得ず署名したものである。 同日,原告前代表者は,彦根市内で,当時,被告ビルドの代表者であったP4と,被告KAZ代表者の被告ら代表者に対し,原告と被告ビルド間及び原告と被告KAZ間の「債務承認及び弁済契約書」を突然示し,署名・押印を求めた。原告前代表者は,今後とも出資を継続するが,具体的なことは被告ビルド及び被告KAZの経営状況の改善を見て決めると述べた。 また,原告前代表者は,平成25年7月末日を一応の返済期限とすると言ったり,経営改善の見通しがあれば延期すると言ったり,曖昧な話をしつつ「債務承認及び弁済契約書」への署名押印を要求した。 被告らは,被告らの事業が原告の経済的支援によって維持されていることから,引き続き出資を続けてもらうために,署名押印の要求を断ることができなかった。 このように,「債務承認及び弁済契約書」は,本来債務として存在しないものにつき,原告が,何らかの意図をもって文書を用意し,P4と被告ら代表者に対し突然署名押印を求めたものであり,原告と被告ビルドに事前の協議や互いの了解があって作成されたものではない。そのため,被告ビルドには,記名用のゴム印の用意さえなく,住所,商号,代表者名の全部が手書きになっている。 なお,代表者名の後に押なつされた印鑑も,被告ビルドが用意したものではない。 また,当時被告ビルドは,同年7月末までに1001万円も支払える状況にはなく,原告もそれを熟知していたものであるから,原告としても,被告ビルドに法的な支払義務を負わせる意思はなかった。 (2) 原告による不正競争行為(被告ビルドの営業秘密の不正取得,不正使用)の成否(争点2)-10-(被告ビルドの主張)ア原告は,P4,P9その他被告KAZの従業員だった者らと共謀し,被告KAZの元従 る不正競争行為(被告ビルドの営業秘密の不正取得,不正使用)の成否(争点2)-10-(被告ビルドの主張)ア原告は,P4,P9その他被告KAZの従業員だった者らと共謀し,被告KAZの元従業員らに被告KAZ及び被告ビルド作成の設計図を持ち出させた。具体的には,原告の意を受けたP9は,被告ら代表者に申し入れ,当時,被告KAZの揚州工場に配属されていた設計員のP10を,交流と研修の名目で被告KAZの上海設計事務所に派遣し,P10に,上海設計事務所で保管されていた設計図データを持ち出させた。 なお,P10は上海設計事務所から戻った平成25年9月初め以降,揚州工場には出社せず,その後,被告KAZを退職したものであり,P10が上海設計事務所を離れた後,被告KAZの上海設計事務所のサーバーに保管されていた設計図データが抜き取られ,納品済みの被告トレーラーの設計図データ全てが削除されていることが発覚した。 このように,原告は,P10,P9,その他被告KAZの従業員だった者らと共謀の上,不正の手段により営業秘密を取得する行為を行ったものである。 イ原告は,P11に被告ビルドとの契約を解除させた後,被告ビルドの設計図データ(工作番号2039)を使用し,被告ビルドの設計にかかるトレーラーと全く同じものを同社から受注して製造販売した。工作番号BC2039のトレーラーに関する営業秘密は,別紙「営業秘密目録」記載1のとおりであり,これらが秘密管理された公然と知られていない技術上有用な営業秘密であり,原告がP11に販売したトレーラーにおいて使用されたことは,別紙「営業秘密に関する当事者の主張」記載の【被告ビルドの営業秘密】欄の(被告ビルドの主張)のとおりである。 よって,原告には,不正競争防止法2条1項4号,5号,8号のいずれかに該当する不正競争行 別紙「営業秘密に関する当事者の主張」記載の【被告ビルドの営業秘密】欄の(被告ビルドの主張)のとおりである。 よって,原告には,不正競争防止法2条1項4号,5号,8号のいずれかに該当する不正競争行為があったことは明らかである。 ウ原告による不正競争行為により,被告ビルドは,P11に着手金531万3000円を返還することになり,P11との取引により得べかりし利益であった1087万9140円分の損害を被った。 -11-(原告の主張)ア否認する。 イ P11にトレーラーを販売したことは認める。 別紙「営業秘密目録」記載1の情報が営業秘密に該当しないこと,及び,原告がP11に販売したトレーラーにおいて,別紙「営業秘密目録」記載1(1),(2)が使用されていないことは,別紙「営業秘密に関する当事者の主張」記載の【被告ビルドの営業秘密】欄の(原告の主張)のとおりである。なお,被告ら主張に係る営業秘密に関する用語の説明は,別紙「用語説明」記載のとおりである。 ウ争う。 (3) 原告による不正競争行為(虚偽告知)の成否(争点3)(被告ビルドの主張)ア被告ビルドは,平成25年5月,P11から代金2656万5000円で2軸16輪伸縮ステアリング付トレーラー(50トン車)(工作番号BC2039)製造の注文を受け,着手金531万3000円を受領した。 被告ビルドは,同年8月にはほぼ設計を終え,揚州通華に製造委託予定であったが,この頃,株式会社小川建機(以下「小川建機」という。)へ出荷予定の工作番号BC2023のトレーラーの価格交渉がP9の妨害で難航していたことにより着手できないでいた。原告やP9による妨害が明らかになったため,被告ビルドは,中国での製造委託先を変更せざるをえず,平成26年1月に上海の浦東一汽有限公司(以下「 P9の妨害で難航していたことにより着手できないでいた。原告やP9による妨害が明らかになったため,被告ビルドは,中国での製造委託先を変更せざるをえず,平成26年1月に上海の浦東一汽有限公司(以下「浦東一汽」という。)と基本契約を締結して製造の準備を始め,同年2月5日には保証金を支払った。 しかし,原告と意を通じたP5とP6が,浦東一汽の副工場長と会い,被告KAZと被告ビルドは潰れるから取引をやめた方がよいなどと吹聴し,同工場での製造着手を妨害した。また,原告従業員のP5とP6は,平成25年9月以降,P11に対し,被告KAZと被告ビルドは潰れるから契約をキャンセルし,原告に注文をするよう働きかけるなどした。 -12-さらに,平成26年2月18日,P11の代表者P12が,製造状況を確認するため浦東一汽の工場を訪れた際には,同工場においてまさに製造を準備している状況であり,応対した副工場長が「被告KAZと契約ができ近日中に製造を始める」と言ったにもかかわらず,通訳としてその場に立ち会ったP9が,資金難のため被告KAZが製造開始できない旨,同副工場長が言っているように,P12に対して虚偽の通訳をし,さらに,実際の製造ラインとは異なる,作業が行われていないラインにP12を案内し,製造の準備もできていない旨認識させるなどした。 その結果,P11は被告ビルドに対し,同年2月27日付で製造委託契約を解除した。 原告の営業担当者やP9が,被告KAZ及び被告ビルドが資金難によりトレーラーの製造ができない旨告知したことが,不正競争防止法2条1項旧14号所定の不正競争行為に当たることは明らかである。 なお,原告のいう平成26年1月は納期の目安であり,これが後ろにずれ込むことはよく見受けられることである。 イ原告による不正競争行為により,被告ビルド 不正競争行為に当たることは明らかである。 なお,原告のいう平成26年1月は納期の目安であり,これが後ろにずれ込むことはよく見受けられることである。 イ原告による不正競争行為により,被告ビルドは,P11に着手金531万3000円を返還することになり,P11との取引により得べかりし利益であった1087万9140円分の損害を被った。 (原告の主張)ア不知ないし否認。 原告が,被告ビルド主張の虚偽の事実を告げたり,虚偽の通訳をしたりした事実はない。原告がP11に対して,被告ビルドとの契約を解除するように仕向けたこともない。P9は,「契約はできているが準備中」であるとP12に通訳をしたのみである。 平成26年2月18日に浦東一汽に行ったのはP9とP7であり,その経緯は,被告ビルドがP11に対するトレーラーの納期に遅れたことから,同工場に作業状況を確認しに行くというP12に依頼され,これに同行したものである。 -13-被告ビルドは,平成25年5月頃にトレーラーの製造販売を受注したにもかかわらず,納入予定の平成26年1月の時点で製造に着手すらしていなかった。P11が被告ビルドとの契約を解除したのは,被告ビルドの履行遅滞が原因であり,仮に被告ビルド主張の加害行為が存したとしても,解除との間に因果関係が認められる余地は全くない。 P5とP6が平成25年9月頃にP11を訪問したのは退職のあいさつのためにすぎず,被告ビルド主張の虚偽の事実を告げたことはない。 イ争う。 (4) 不法行為(被告ビルドの設計図の流用)の成否(争点4)(被告ビルドの主張)別紙「図面の流用についての当事者の主張」記載【被告らの主張】(被告ビルドの主張)のとおり,原告は,被告ビルド作成の設計図をそのまま流用してトレーラーを製造販売しているが,この 被告ビルドの主張)別紙「図面の流用についての当事者の主張」記載【被告らの主張】(被告ビルドの主張)のとおり,原告は,被告ビルド作成の設計図をそのまま流用してトレーラーを製造販売しているが,この行為は,被告ビルドの財産的成果にフリーライドする目的で当該情報を取得し,これを使用したものであるから,不法行為を構成する。 (原告の主張)争う。原告の主張は,別紙「図面の流用についての当事者の主張」記載【原告の主張】のとおりである。 (5) 不法行為(取引先への取引解除の仕向け)の成否(争点5)(被告ビルドの主張)前記(3)の行為,すなわち,被告ビルドと競争関係にある原告が,被告KAZと被告ビルドは潰れるという虚偽事実をP11に告げて,被告ビルドとの契約を解除するように仕向けた行為は,明らかに自由競争の範囲を逸脱して違法であり,不法行為を構成する。 (原告の主張)争う。 (6) 原告の使用者責任の成否(争点6)-14-(被告ビルドの主張)以上,被告ビルドに具体的損害を発生させた不法行為は,被告KAZの元従業員が実質上又は名実ともに原告の従業員として原告に所属したあと,原告のトレーラー事業の関係で行った不法行為である。原告は,事業のために被告KAZの元従業員らを使用する者であることから,民法715条の使用者責任も負う。 (原告の主張)争う。 (7) 被告ビルドの損害額及び相殺(争点7)(被告ビルドの主張)被告ビルドは,原告に対する前記(2),(3),(4)又は(5)の(被告ビルドの主張)記載の1087万9140円の損害賠償請求権を自働債権とし,原告の被告ビルドに対する貸金返還請求権を受働債権として,対当額で相殺する。 (原告の主張)争う。 【被告KAZ関係】(8) 原告被告KAZ間の金銭消費貸借 損害賠償請求権を自働債権とし,原告の被告ビルドに対する貸金返還請求権を受働債権として,対当額で相殺する。 (原告の主張)争う。 【被告KAZ関係】(8) 原告被告KAZ間の金銭消費貸借契約の成否(争点8)(原告の主張)ア平成24年5月2日,原告と被告KAZとの間において,口頭にて,次のとおり金銭消費貸借契約が成立した。 ・貸付金額 1億円を極度額とする。 ・弁済期定めなし・利息無利息・遅延損害金定めなしイ同日以降,原告と被告KAZとの間で,別紙取引一覧表の「日付」欄の「2012/5/2」から「2013/8/14」記載の年月日に,「貸付額(円)」欄及び「返済額(円)」欄記載のとおり,貸付け及び返済取引が行われた。 -15-ウ平成25年3月12日,原告と被告KAZの間において,アに関し,次のとおりの債務承認及び弁済契約を内容とする「債務承認及び弁済契約書」を作成した。 ・債務額 7164万8066円・弁済期平成25年7月末日限り・利息無利息・遅延損害金年10%エ被告KAZの主張に対して原告が被告KAZに対して,無償で資金提供する旨の明確な意思表示を行った事実は存在しない。 もともと被告ら代表者は,返済義務があることは認識しており,平成25年9月9日に原告専務宛てに送信したメールでも,前記取引が金銭消費貸借であることを認めている。 (被告KAZの主張)ア否認する。事業者が極度額1億円の金銭消費貸借を口頭で契約することなどあり得ない。 イ別紙取引一覧表記載の金銭の交付があったことは認める。 ただし,原告による金銭の交付の法的性質は貸金ではなく,被告KAZの事業に対する原告の出資である。また,被告KAZから原告への金銭の支払について 別紙取引一覧表記載の金銭の交付があったことは認める。 ただし,原告による金銭の交付の法的性質は貸金ではなく,被告KAZの事業に対する原告の出資である。また,被告KAZから原告への金銭の支払については,両者間に具体的な合意は何もなかったものであり,原告が,被告KAZに作らせた滋賀銀行の口座を支配し,同口座に入った金銭を,被告KAZの同意なく自由に引き出していたに過ぎない。このような行為は,法的な支払義務の履行とは異質のものである。また,被告ら代表者が交付した金銭であっても,被告ら代表者は,原告前代表者が回収を期待して出損したことを認識していたから,少しずつでも埋め合わせをしようと考えて原告に対して支出したにすぎず,返済とは異なる。 ウ 「債務承認及び弁済契約書」を作成したことは認める。ただし,経済的支援を継続してもらうために,原告の求めに応じてやむを得ず署名したものであり,前-16-記(1)(被告ビルドの主張)イと同様の事情である。 当時,被告KAZは,同年7月末までに7000万円を超える額を支払える状況にはなく,原告もそれを熟知していたものであるから,原告としても,被告KAZに法的な支払義務を負わせる意思はなかった。 エ原告は,平成25年3月12日付「債務承認及び弁済契約書」を取り交わしたことにより準消費貸借契約が成立すると主張するようであるが,争う。 同書面は,借入金債務の確認とその弁済方法等を記載しただけのものである。また,そもそも存在しない旧債務を新たな消費貸借の目的として準消費貸借契約を成立させることはできない。 (9) 原告による不正競争行為(被告KAZの営業秘密の不正取得,不正使用)の成否(争点9)(被告KAZの主張)ア原告は,P4,P9その他被告KAZの従業員だった者らと共謀し,被告KAZの元従業員 原告による不正競争行為(被告KAZの営業秘密の不正取得,不正使用)の成否(争点9)(被告KAZの主張)ア原告は,P4,P9その他被告KAZの従業員だった者らと共謀し,被告KAZの元従業員らに被告KAZ及び被告ビルド作成の設計図を持ち出させた。具体的には,原告の意を受けたP9は,被告ら代表者に申し入れ,当時,被告KAZの揚州工場に配属されていた設計員のP10を,交流と研修の名目で被告KAZの上海設計事務所に派遣し,P10に,上海設計事務所で保管されていた設計図データを持ち出させた。 なお,P10は上海設計事務所から戻った平成25年9月初め以降,揚州工場には出社せず,その後,被告KAZを退職したものであり,P10が上海設計事務所を離れた後,被告KAZの上海設計事務所のサーバーに保管されていた設計図データが抜き取られ,納品済みの被告らトレーラーの設計図データ全てが削除されていることが発覚した。 このように,原告は,P10,P9,その他被告KAZの従業員だった者らと共謀の上,不正の手段により営業秘密を取得する行為(不正競争法2条1項4号)を行ったものである。 -17-イ原告は,被告KAZの営業秘密であることを知りながら,P10やP9が持ち出した設計図を不正に使用した。工作番号BC2033,BC2035,BC2023及びBC2036のトレーラーに関する営業秘密は,別紙「営業秘密目録」記載2ないし5のとおりであり,これらが秘密管理された公然と知られていない技術上有用な営業秘密であること,別紙「営業秘密目録」記載2ないし4の営業秘密が原告により使用されたことは,別紙「営業秘密に関する当事者の主張」記載【被告KAZの営業秘密】欄の(被告KAZの主張)のとおりである。 なお,各トレーラーの名称,工作番号,これに関連する営業秘密,被告 告により使用されたことは,別紙「営業秘密に関する当事者の主張」記載【被告KAZの営業秘密】欄の(被告KAZの主張)のとおりである。 なお,各トレーラーの名称,工作番号,これに関連する営業秘密,被告KAZ又は被告ビルドの販売先,原告の販売先の対応関係は,別紙「トレーラー販売先一覧表」記載のとおりである。 ① 原告は,マルショウ運輸株式会社(以下「マルショウ」という。)からの受注により,被告KAZが小川建機から受注し,平成25年10月頃同社に納品したのと同じエアサストレーラー(工作番号BC2033)を,被告KAZの設計図を使用し,トレーラーの幅を変えただけのものを2台製造し,マルショウに販売した。 なお,平成25年9月11日にP9からP7へ送信されたメールに添付されたエアサストレーラー図面(乙A17)は,小川建機の依頼により設計した被告KAZのエアサストレーラー図面である。 ② 被告KAZは,平成25年10月初め頃,港南運輸株式会社(以下「港南運輸」という。)に重機を前方から搭載する構造で特殊な形状をしているネックリフト付2軸16輪中低床トレーラー(工作番号2035)を納品したものであるが,原告は,被告KAZの設計図を使用して,これと全く同じトレーラーを製造し,港南運輸に販売した。 ③ 原告は,被告KAZが平成25年に小川建機に納品した2軸×3軸コンビネーショントレーラー(工作番号BC2023)を模倣したトレーラーを,株式会社ヤマガタ(以下「ヤマガタ」という。)の発注により,被告KAZの設計図を使用して製造している。 -18-なお,被告KAZはヤマガタに対して2回メールを送るなどして,工作番号BC2023のトレーラーの製造販売について商談中であった。 以上のとおり,原告は,営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って,本 KAZはヤマガタに対して2回メールを送るなどして,工作番号BC2023のトレーラーの製造販売について商談中であった。 以上のとおり,原告は,営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って,本件営業秘密を取得するとともに,その取得した本件営業秘密を使用する行為を行っている(不正競争防止法2条1項5号)。また,P10,P9その他被告KAZの従業員だった者らが不正の利益を得る目的で,又は,その保有者である被告KAZに損害を加える目的で,その営業秘密を原告に開示したことを知って,本件営業秘密を取得し,使用する行為を行っている(不正競争防止法2条1項8号)。 ウ原告が被告KAZの設計図等を使って製造したトレーラーの販売先は,被告KAZの得意先であり,原告の違法な製造販売により,被告KAZは,本来ならこれら得意先から得られたはずの受注ができなくなった。これにより,被告KAZは,トレーラー販売価格の40%相当額に当たる5836万円(マルショウ分につき340万円×2台分,港南運輸につき756万円,ヤマガタにつき4400万円)の損害を被った。 (原告の主張)ア原告は,P10,P9,その他被告KAZの元従業員と共謀して被告KAZの設計図を無断で持ち出したことはなく,不正競争防止法2条1項4号の取得などしていない。 P10が上海設計事務所に派遣されたのは,被告KAZの設計部門が上海にあり,製造部門が揚州にあったことから,両部門の連携がうまく図れず,製造するトレーラーに不具合が多発していた事態の解消のためであり,被告ら代表者の指示によるものである。 イ別紙「営業秘密目録」記載の情報が営業秘密に当たらないこと,及び,原告のこれら情報の使用についての主張は,別紙「営業秘密に関する当事者の主張」記載の【被告KAZの営業秘密】欄の(原告の主張) イ別紙「営業秘密目録」記載の情報が営業秘密に当たらないこと,及び,原告のこれら情報の使用についての主張は,別紙「営業秘密に関する当事者の主張」記載の【被告KAZの営業秘密】欄の(原告の主張)のとおりである。 P9がP7に送付した乙A17添付の設計図データは,P9が被告ら代表者から-19-USBで入手し,保存していたものであり,被告KAZが主張するような不正取得行為により取得したものではない。 また,同データは,平成25年9月当時,被告KAZを退職することを決めており,原告又はその他の中国の会社のいずれかに就職することを検討している最中であったP9が,原告に対する売り込みの趣旨で一方的に送付してきたものであり,原告はその入手経緯については不知であった。よって,原告は,不正競争防止法2条1項5号,8号規定の悪意重過失による取得,使用,開示はいずれもしていない。 原告がマルショウ,港南運輸及びヤマガタに対し,トレーラーを製造販売したことは認める。 ウ損害については争う。 (10) 原告による不正競争行為(虚偽告知)の成否(争点10)(被告KAZの主張)ア競業関係原告は,平成25年6月初めの時点で,被告KAZ社員らと頻繁に会議を開き,中国出張の予定を立てたり,中国の提携工場の確保を進めるなどして事業として特殊車両の製造を行うことを明確に認識しており,その後,被告KAZと同じ特殊トレーラーの製造販売の事業を立ち上げた。よって,同年6月初め頃から,原告は被告KAZと競業関係にあった。 イ虚偽の事実の告知平成25年9月上旬頃,被告KAZの得意先であった港南運輸に対し,P5が,被告KAZは資金難であり,トレーラーの製造ができないこと,被告KAZはトーヨートレーラーの図面で生産していること,したがって,被告KAZの代 旬頃,被告KAZの得意先であった港南運輸に対し,P5が,被告KAZは資金難であり,トレーラーの製造ができないこと,被告KAZはトーヨートレーラーの図面で生産していること,したがって,被告KAZの代わりに原告において低価格によるトレーラー製造が可能であることなど,虚偽の事実を告げて勧誘し,実際に港南運輸からトレーラーの受注をした。 また,P5は,その頃マルショウを訪問し,同様の虚偽の事実を告げ,同月25日にマルショウからトレーラーの受注をした。 -20-ヤマガタに対しても,同様の営業活動が行われたものと思われる。 原告営業担当者であるP5によるこれら虚偽の事実の告知が,不正競争防止法2条1項旧14号所定の不正競争行為にあたることは明らかである。 ウ原告の不正競争行為により,被告KAZは,得意先のマルショウ,港南運輸及びヤマガタから受注できなくなり,トレーラーの販売価格の40%に相当する合計5836万円(マルショウにつき340万円×2台分,港南運輸につき756万円,ヤマガタにつき4400万円)の損害を被った。 (原告の主張)ア否認ないし争う。 イ否認する。 P5が平成25年9月頃に港南運輸及びマルショウを訪問したのは退職のあいさつのためであり,被告KAZ主張のようなことは言っていない。 ウ争う。マルショウ,港南運輸については,過去に被告らと取引をしたことがあることは認めるが,これらはもともと東洋車輌の取引先であり,被告KAZの得意先ではない。 (11) 不法行為(被告KAZの設計図の流用)の成否(争点11)(被告KAZの主張)ア原告は,別紙「図面の流用についての当事者の主張」記載【被告らの主張】(被告KAZの主張)のとおり,被告KAZの元から持ち出された設計図を使用してトレーラーを製造販売することにより, 主張)ア原告は,別紙「図面の流用についての当事者の主張」記載【被告らの主張】(被告KAZの主張)のとおり,被告KAZの元から持ち出された設計図を使用してトレーラーを製造販売することにより,新たな設計を創造するという困難を一切負わず,それに必要な労力や費用を負担することもなく,被告KAZの財産的効果にただ乗りして利益を得たものであり,これが不法行為となるのは明らかである。 イ原告が被告KAZの図面を使って製造したトレーラーを売り込み,販売した先は,もとからの被告KAZの得意先である。被告KAZの特殊トレーラーは,被告KAZが独自に設計し被告KAZ以外の業者には作れないものであるから,原告の販売行為がなければ,得意先が注文する相手は必然的に本来の設計,製造,販売-21-者である被告KAZになる。原告が被告KAZから持ち出した図面を使って複製品を作ったため,得意先は被告KAZと同じトレーラーを購入できると信じて原告から購入したものであるから,原告の不正な製造販売行為がなければ,これらの得意先はトレーラーを被告KAZから購入していた。 したがって,被告KAZは原告の違法な製造販売により,本来なら自社が受注できたはずのトレーラーを受注できず,受注できたとすれば得られたはずの利益相当額の損害を被った。 原告が販売したトレーラーを被告KAZが販売する場合,被告KAZの利益は販売価格の40パーセント相当であったから,被告KAZは合計5836万円(マルショウ分につき340万円×2台分,港南運輸につき756万円,ヤマガタにつき4400万円)の損害を被った。 なお,設計図データを流用してトレーラーを製造すれば,製造期間は半分に,製造コストは3割減になることが見込まれる。 (原告の主張)原告の主張は,別紙「図面の流用についての当事者の を被った。 なお,設計図データを流用してトレーラーを製造すれば,製造期間は半分に,製造コストは3割減になることが見込まれる。 (原告の主張)原告の主張は,別紙「図面の流用についての当事者の主張」記載【原告の主張】のとおりである。被告らの設計図データは,営業秘密として管理もされていない,保護に値しない情報であるから,仮に持ち出し使用があっても,違法でない。 被告KAZは,東洋車輌やトーヨートレーラーの設計図を所持しており,設計図の作成において,上記二社の設計図を参考にしたり,トレーラーの設計製造業界の先進国であるヨーロッパ諸国のトレーラーの構造等も参考にしている。また,設計図自体の作成は,他の業者に委託して作成している。このように,被告KAZは,何もかも一から多大な時間と労力をかけて,被告KAZの創造のみで設計図を完成しているのではない。原告と被告KAZはいずれも東洋車輌又はトーヨートレーラーでの業務経験,ノウハウに基づき業務を行っているにすぎず,原告が被告KAZの財産的成果にフリーライドしているという関係にはない。 (12) 不法行為(支払督促に対する異議申立ての無断取下げ)の成否(争点12)-22-(被告KAZの主張)原告は,平成25年8月29日,被告KAZのトレーラー事業部の一員であったP4に,支払督促に対して被告KAZがした異議申立てを取り下げさせた上,同年9月24日付で仮執行宣言の申立てをし,違法に債務名義を取得して,被告KAZに対する強制執行を違法に行い,港南運輸から438万9040円を取り立て,被告KAZに同額の損害を与えた。 当時,P4は,既に被告KAZを退職し,事務引継業務に従事するため被告KAZの事務所に出入りしていたが,他方で,既に原告にトレーラー事業部を設立すべく原告のために行動し,原告の一 の損害を与えた。 当時,P4は,既に被告KAZを退職し,事務引継業務に従事するため被告KAZの事務所に出入りしていたが,他方で,既に原告にトレーラー事業部を設立すべく原告のために行動し,原告の一員といえる地位にあった。 被告は,P4による異議の取下げに同意を与えていない。前日に行った異議申立てを,さしたる理由もなく被告が取り下げるわけがない。P4は,取下げの直前,被告KAZの事務所において,被告ら代表者に対し,「示談の話をしているからこんなことする必要ない。時間がない」という言葉を発したが,一方的に言い残して走り出たもので,被告ら代表者の了解を得たものではない。 P4は,被告ら代表者に対して,債務名義を取得されれば執行されるおそれがあることを説明したこともなかったことから,被告ら代表者には,同日に何が行われたのか意味がわからなかったものである。 原告前代表者とP4との緊密な連絡体制からすれば,P4が原告前代表者の意向を受けて異議申立ての取下げをしたことは明らかである。 (原告の主張)原告は,異議申立ての取下げには全く関与していないし,P4が被告ら代表者に無断で異議申立てを取り下げた事実もない。また,被告KAZが主張する支払督促手続は訴訟に移行しているのであるから,被告KAZは訴訟手続に関与する機会を奪われたともいえない。 仮に被告ら代表者が,P4による督促異議の取下げの事実を知らなかったとしても,P4は,被告KAZが支払督促に異議があるのに仮執行宣言付支払督促を放置-23-するということまでは全く予見できなかったから,督促異議の取下げと,被告KAZが主張する損害との間には因果関係がない。 原告が第三債務者である港南運輸から438万9040円を取り立てたことは認める。 (13) 不法行為(製造委託先への高額請求の働きかけ 下げと,被告KAZが主張する損害との間には因果関係がない。 原告が第三債務者である港南運輸から438万9040円を取り立てたことは認める。 (13) 不法行為(製造委託先への高額請求の働きかけ)の成否(争点13)(被告KAZの主張)被告KAZは,小川建機から代金1億1000万円(消費税別)で注文を受けたトレーラー(2軸×3軸コンビネーショントレーラー,工作番号BC2023)の製造を中国の被告KAZの提携工場で行っており,P9は,被告KAZの現地責任者(従業員)であった。 遅くとも平成25年9月12日には,原告のトレーラー事業部の一員として活動していたP9は,原告と共謀し,被告KAZの製造委託先である揚州通華に働きかけ,自ら関与するトンネル会社から原価の3倍にも昇る高額で部品を仕入れさせ,被告KAZの希望代金額(5500万円),実際の出荷価格(6540万円)のいずれをも大きく上回る額の製造代金1億2000万円を揚州通華から被告KAZに請求させた。 被告KAZは,揚州通華に出荷価格を支払わなければ,完成したトレーラーを日本に輸入することができず,小川建機に納品することができなかったものであるが,揚州通華からの提示額が法外であったためにこれを支払うことができず,結局,小川建機は被告KAZに支払うはずであった8000万円を,揚州通華に直接支払うこととなった。 これにより,被告KAZは,小川建機から残代金8000万円を受け取ることができず,これと実際の出荷価格との差額1460万円の損害を被った。 (原告の主張)否認する。 そもそも,出荷価格は揚州通華が決定するものであって,当該取引の相手方でも-24-ない原告や,被告KAZの一従業員にすぎないP9が,揚州通華に対し高価格提示させることなどできるはずがない。また,部品の も,出荷価格は揚州通華が決定するものであって,当該取引の相手方でも-24-ない原告や,被告KAZの一従業員にすぎないP9が,揚州通華に対し高価格提示させることなどできるはずがない。また,部品の仕入れも,被告ら代表者の指定又は揚州通華自らの判断で業者を選定して行っていたものであり,原告やP9が関与する余地はなかった。 なお,P9が平成25年9月12日頃に原告のトレーラー事業部の一員として活動していた事実はない。 (14) 被告KAZの事業壊滅等を目的とした全体として一連の不法行為の成否(争点14)(被告KAZの主張)前記(10)ないし(13)の行為は,それぞれが独立の不法行為として成り立つものであるが,それだけでなく,本件における原告の一連の行為は,包括して一つの不法行為を構成する。 原告が行ってきた違法な行為は,前記(10)ないし(13)の他に,①被告KAZの従業員の引き抜き,②P4やP9による被告らの売掛金等重要な情報の不正な取得(例えば,被告KAZに在籍しながら,遅くとも平成25年9月12日には原告のトレーラー事業部で活動していたP9は,平成25年9月11日には,P7に対し,被告KAZのエアサストレーラーの図面(乙A17)を送付するなどしている),③P4とP5が中組代表者に対し,被告ら代表者が会社の金を使い込んでいるなどの悪口を言い触らし,被告KAZが進めていた中組からの資金援助を妨害した行為などがある。 これらは全て被告KAZの事業を壊滅させ,その後は被告KAZから持ち出した設計図を使って特殊トレーラーの製造販売を自由に行うことを企図したものであり,原告の行為は,同じ目的に向けられた一連の行為であり,個々の行為が個別に不法行為を構成しつつも,それらの行為が一体となり,包括的な一個の不法行為をも構成する。 由に行うことを企図したものであり,原告の行為は,同じ目的に向けられた一連の行為であり,個々の行為が個別に不法行為を構成しつつも,それらの行為が一体となり,包括的な一個の不法行為をも構成する。 そうすると,各不法行為の損害も,この一体としての不法行為から生じた各種の-25-損害と位置付けることができ,この不法行為による被告KAZの損害は,個別の不法行為による損害の合計額のほか,別途,被告KAZの無形損害として300万円が認められるべきである。 (原告の主張)争う。 被告ら代表者は,平成25年7月頃,被告KAZの資金繰りが悪化していたことなどから,従業員に対し,一方的に労働条件の変更を申し入れ,当該変更を受け入れるか否かについて回答するよう求めた。従業員はこれに従い,被告KAZを退職することを決めたものである。したがって,原告が被告KAZの従業員を引き抜いたとの主張は誤りである。また,P9についても,給料の支払が遅滞したことから平成25年10月頃に自ら任意に退職したにすぎない。 被告KAZを退職した元従業員らのうち複数名(P5,P4,P6,P7,及びP8,以下総称して「出席元従業員ら」という。)は,平成25年7月26日,原告前代表者の下に集まり,食事会が開かれた。その席で,出席元従業員らから,原告においてトレーラー事業がしたいとの声が上がり,翌日(同月27日),出席元従業員らは,再度,協力してトレーラーの仕事を行いたい旨を原告前代表者に述べて,原告においてトレーラー事業を立ち上げる意思があることを原告前代表者に伝えた。 これに対し,原告前代表者も,了承し,この時点(同月27日)で,初めて,原告においてトレーラー事業部を立ち上げることが決まったものである。 P4らの被告KAZ退職及び原告への入社の経緯は以上のとおりであり,原告 原告前代表者も,了承し,この時点(同月27日)で,初めて,原告においてトレーラー事業部を立ち上げることが決まったものである。 P4らの被告KAZ退職及び原告への入社の経緯は以上のとおりであり,原告による引き抜きというべきものではない。 P4らが原告前代表者に宛てた電子メールは,被告らとして,原告に追加の貸付けをお願いするべく,原告前代表者の指示で逐一,被告らの業務状況の詳細を報告していたのであって,P4が,同年9月11日付電子メール(乙A17)で原告前代表者及び専務宛てにP9作成P7宛電子メールを転送したのは,中国の開楽事務所の生産までの当面の工程計画を報告するためにすぎない。たしかに,P9作成の-26-電子メールにはエアサス図面データが添付されていたが,これはP9が独断で添付したものにすぎない。 (15) 原告の使用者責任の成否(争点15)(被告KAZの主張)以上,被告KAZに具体的損害を発生させた不法行為は,被告KAZの元従業員が実質上又は名実ともに原告の従業員として原告に所属したあと,原告のトレーラー事業の関係で行った不法行為である。原告は,事業のために被告KAZの元従業員らを使用する者であることから,民法715条の使用者責任も負う。 (原告の主張)争う。 (16) 被告KAZの損害額及び相殺(争点16)(被告KAZの主張)被告KAZは原告に対する前記(12)(被告KAZの主張)記載の438万9040円の損害賠償請求権,前記(13)(被告KAZの主張)記載の1460万円の損害賠償請求権並びに前記(9)又は(10)又は(11)(被告KAZの主張)記載のマルショウへの販売分340万円の2台分,港南運輸への販売分756万円,ヤマガタへの販売分4400万円の損害賠償請求権及び被告KAZに生じた無形損害300万円の 又は(11)(被告KAZの主張)記載のマルショウへの販売分340万円の2台分,港南運輸への販売分756万円,ヤマガタへの販売分4400万円の損害賠償請求権及び被告KAZに生じた無形損害300万円の損害賠償請求権を,この順序で,原告の被告KAZに対する貸金返還請求権と対当額で相殺する。 第3 当裁判所の判断 1 事実経過前記基礎となる事実に加え,証拠(後掲書証[枝番の全てを含むときはその記載を省略する。],甲A11,94ないし97及び99,乙A34,35及び117,証人P5,証人P9,証人P4,証人P12,証人P1[原告前代表者],被告ら代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば,平成26年11月頃までの経緯として以下の事実が認められる。 -27-【平成25年3月までの経緯】(1) 原告前代表者は,被告KAZの設立後,被告ら代表者の要請により資金提供をしており,当初は個人間で無利息で貸借がされ,借用証書は作成されなかったが,被告ら代表者はその全額を返済した(被告ら代表者本人27頁及び28頁,証人P12頁)。 その後,原告は,被告KAZに対し,平成24年5月2日以降,別紙取引一覧表「日付」欄記載の年月日に,「貸付額」欄記載の金銭を交付した。 他方,被告KAZは,同年6月18日,原告に対し,預金通帳(乙A129)と銀行届出印を預けた(甲A13の1)。 また,被告ビルドも,同年11月7日,原告から1001万円の交付を受け,同日,原告に対し,預金通帳と銀行届出印を預けた(甲A13の2)。 (2) こうして,原告と被告KAZとの間では,平成25年3月6日までの間,別紙取引一覧表「日付」欄記載の年月日に,「貸付額」欄及び「返済額」欄の金額が授受され,原告から交付された額は合計1億2346万5114円,被告KAZから交付された額は合計5 5年3月6日までの間,別紙取引一覧表「日付」欄記載の年月日に,「貸付額」欄及び「返済額」欄の金額が授受され,原告から交付された額は合計1億2346万5114円,被告KAZから交付された額は合計5181万7048円であった。 なお,これらの間に,借用証書が作成されることはなかったが,平成24年7月31日付けの「(株)KAZへの貸付金明細」と題する書面が作成されており(甲A12),そこには,同年7月5日までの金銭の授受が「貸付金」,「返済」として記載され,被告KAZの記名押印があり,同年8月1日付けでP4による「貸付残高に相違ありません。」との手書きの記載がされている。また,上記の被告KAZからの交付は全て同被告が原告に預けていた通帳の預金口座から出金される形で交付されており(乙A129),同月31日の3400万円の出金の際には,原告から被告KAZに対し,いったん返してもらうとの話があった(被告ら代表者本人4頁)。 (3) その間,被告KAZでは従業員の給料の遅配が続くようになった(証人P52頁,被告ら代表者本人42頁)ところ,平成25年3月6日と7日,P4は,P6及びP5に対し,再建計画の策定について,被告ら代表者がいない場所で打合せ-28-したい旨のメールを送信した(乙A78,79)。 (4) 原告前代表者は,被告らの経営状態が思わしくないことから,これ以上の資金提供をせず,逆にこれまで提供した資金を回収しようと考え,同月12日,被告ら代表者及びP4(当時の被告ビルドの代表者)と彦根市のホテルで面談し,支援を打ち切る旨を告げるとともに,被告らに関する「債務承認及び弁済契約書」2通,「(株)KAZへの貸付金明細」及び「ビルドテクニカルワークス(株)への貸付金明細」と題する書面(甲A1及び2,甲B1及び2)を示して署名押印を求め,預 被告らに関する「債務承認及び弁済契約書」2通,「(株)KAZへの貸付金明細」及び「ビルドテクニカルワークス(株)への貸付金明細」と題する書面(甲A1及び2,甲B1及び2)を示して署名押印を求め,預かっていた預金通帳と銀行届出印を返還すると申し出て念書(甲A13)への署名押印を求めた。そして,被告ら代表者及びP4は,それら書面を読んだ上で署名押印し,原告は,預金通帳等を返還した。 このうち,被告KAZ関係の「債務承認及び弁済契約書」には,被告KAZの原告に対する債務が同日において7164万8066円存すること,被告KAZは同債務を同年7月末日限り弁済すること,弁済期限を徒過した場合には,年10%の割合の遅延損害金を支払うこと等が記載されている(甲A1)。また,「(株)KAZへの貸付金明細」と題する書面には,別紙取引一覧表記載と同様,金銭の授受の日時及び金額等が記載され,その下に,被告ら代表者の自署で,「(株)太陽化学工業所に対する借入金及び残高は上記金額に相違いございません」と記載されている(甲A2)。なお,これらの書面作成時において,被告ら代表者は,返済期限について,具体的に提案はしなかった。 また,被告ビルド関係の「債務承認及び弁済契約書」と題する書面には,被告ビルドの原告に対する債務が同年3月12日において1001万円存すること,被告ビルドは同債務を同年7月末日限り弁済すること,弁済期限を徒過した場合には,年10%の割合の遅延損害金を支払うこと等が記載されている(甲B1)。また,「ビルドテクニカルワークス(株)への貸付金明細」と題する書面には,平成24年11月7日,1001万円を貸し付け,残高が同金額であることが記載されており,その下に,P4の自署で,「(株)太陽化学工業所に対する借入金及び残高は上記金額-29-に相違ご 書面には,平成24年11月7日,1001万円を貸し付け,残高が同金額であることが記載されており,その下に,P4の自署で,「(株)太陽化学工業所に対する借入金及び残高は上記金額-29-に相違ございません」と記載されている(甲B2)。 また,「念書」には,被告らが原告に対して実印兼銀行印及び通帳を預けていたのは,原告から多額の借入(無利息)を受けたために,会計監査を目的として預けていたこと,それらを還付して頂くに当たり,預け期間中の出金手続については,全て被告らの意向又は同意のもとに行われていることに間違いなく,出金手続に何らかの問題があっても,すべて被告らの責任で解決し,原告に一切の請求をしないことを証明し,誓約することが記載されている(甲A13)。 (5) 同年3月頃,小川建機は,被告KAZに対し,2軸×3軸コンビネーショントレーラー(工作番号BC2023)を,完成予定日を受注後約12か月,代金1億1550万円で注文した(乙A16)。 また,同年,P11は,同年5月10日,被告ビルドに対し,2軸16輪伸縮ステアリング付きトレーラー(工作番号BC2039)を,納入予定日平成26年1月,代金2656万5000円で発注した(乙B2)。P11は,以前はトーヨートレーラーと取引しており,その当時からP5及びP6が営業担当として懇意にしていた。 また,港南運輸は,平成24年12月12日付け計画図(乙A28)のネックリフト付き2軸16輪中低床トレーラー(工作番号BC2035)をその頃発注していた。港南運輸は,以前はトーヨートレーラーと取引しており,その当時からP5が営業担当として懇意にしていた(甲A100)。 【平成25年6月以降,食事会までの経緯】(6) 同年6月3日,P4は原告前代表者に対し,「設計のP13さんの件」と題するメール その当時からP5が営業担当として懇意にしていた(甲A100)。 【平成25年6月以降,食事会までの経緯】(6) 同年6月3日,P4は原告前代表者に対し,「設計のP13さんの件」と題するメールを送信し,「土曜日はお時間を頂きありがとうございました。」と記載した上で,同日夜にP5及びP6が設計士のP13と会う予定であることや,被告らのトレーラーの中国での生産状況,鳥居運輸向けトレーラーの改修状況,被告ら代表者の営業予定等を伝えた(乙A7)。 (7) 同月12日,P4は,原告前代表者に対し,P13から前向きに考えるとの-30-連絡があったことのほか,大和重機(小川建機経由)向けトレーラーの改修作業状況,港南運輸による揚州工場視察やTHTとの価格交渉予定,当月の入金予定等を伝える内容のメールを送信した(乙A80)。 (8) 同月14日,P4は原告前代表者に対し,同月22日にP13に会ってもらいたい旨のメールを送信した(乙A19)。これに対し,同月15日,原告前代表者はこれを了解した旨のメールを返信した(乙A19)。 (9) 同月24日,P4は原告前代表者に対し,同月22日に時間をとってもらったお礼と,「皆,不安感もありますが落ち着いたのではと思います。今,踏ん張ってくれているP7さん,P9さんについては心配しております。お話の中にありましたパスポートの件につきまして,写真と合わせてよろしくお願い致します。取りに上がっても結構ですので,ご連絡お願い致します。」と記載したメールを送信した(乙A20)。なお,P13は,同年10月頃には,原告トレーラー事業部で設計員として勤務を始めている(乙A25)。 (10) 同月29日,被告ら代表者は,P4に対し,メールを送信し,「KAZの再建の為に話し合いの場を設けたいと思います。現在会社の状況は資 ラー事業部で設計員として勤務を始めている(乙A25)。 (10) 同月29日,被告ら代表者は,P4に対し,メールを送信し,「KAZの再建の為に話し合いの場を設けたいと思います。現在会社の状況は資金難で自転車操業の状態が続いています,この状況を改善する為に全体で何をしたらいいのか考えていきたいと思います。」とした上で,7月から失業保険受給者等は正社員として雇用しないこと,7月から非正規雇用者の形態を変えるとして,アルバイト,請負,外注のそれぞれの労働条件等を記載した(乙A21)。 (11) 同年7月3日,原告は,被告KAZに対し,7214万8906円の貸金債務を同月末日までに返済するよう求める内容の通知書を送付した(甲A3)。 (12) 同月6日,被告ら代表者とP4ら従業員は,被告KAZの経営状況改善に向け話合いをした。この場で,被告ら代表者は従業員らに対し,営業担当者を外注する意向であること,会って説明したいこと等を告げた(乙A22)。 (13) 同月20日,被告ら代表者は,P4に対してメールを送信し,7月末を期限に雇用契約をし,来月から契約をしていない人には給料を支給しないこと,P6-31-は販売実績が少ないこと等から社員としては雇用せず外注なら引き受けること,P5は社員でも外注でも引き受けること,P7とP8は本人の意思で決めればよいこと,全員離職する場合は全国ネットの会社があるのでメンテナンス契約を結ぶこと,営業は当面自分がして将来的に増員することを伝えた(乙A120)。 (14) 被告ら代表者はP4に対し,社員らの退職の意向について取りまとめを求めた。これに対し,P4は,同月22日,P5,P6,P7,P8及びP4は同月31日,P14及びP15は同年8月20日をもって退職の意向であること等を記載した文案を作成し,他の社員ら て取りまとめを求めた。これに対し,P4は,同月22日,P5,P6,P7,P8及びP4は同月31日,P14及びP15は同年8月20日をもって退職の意向であること等を記載した文案を作成し,他の社員らに確認を求めた(乙A23)。 (15) 同年7月23日,P4は原告前代表者に対し,被告KAZの給与支払状況,フジトランスからのヒアリングへの対応予定,港南運輸向けトレーラーの完成と輸入は価格と資金手当が未済だが当局に申請を行い,港南運輸もヒアリングに同行すること等について報告するとともに,被告ら代表者がP9を解雇する方針であること,工場の作業員も選別して再雇用するか精査すること,被告ら代表者から社員らの退職の意向を取りまとめるように依頼されたこと等を報告した(乙A121)。 (16) 同月24日,P4は,原告前代表者に,同月26日に予定する打合せについて場所等を連絡した(乙A81)。 (17) 同月25日,原告は,被告KAZに対し,7214万8906円の貸金債務を7月末日までに返済するよう求める内容の通知書を送付した(甲A4)。 (18) 同月26日,原告前代表者は,P4,P5,P6,P7,P8を招き,能登川駅前のホテルで食事会を行った。この食事会の席で,原告前代表者は出席者らに10万円ずつを手渡し,これ以後,P4は,原告でのトレーラー事業に関する出納帳を作成するようになった(乙A127)。 【食事会以後の経緯】(19) 同月29日,P4は,原告前代表者らに宛て,原告前代表者から上海第一汽車有限公司(以下「上海一汽」という。)社長宛てのメール文案を送信した。同文案の内容は,原告が特殊車両販売を手掛ける新会社を設立したので,上海一汽に特-32-殊車両をOEM生産してもらいたい,必要であれば,原告前代表者が上海まで打合せに出向く,という を送信した。同文案の内容は,原告が特殊車両販売を手掛ける新会社を設立したので,上海一汽に特-32-殊車両をOEM生産してもらいたい,必要であれば,原告前代表者が上海まで打合せに出向く,という趣旨である(乙A5の1)。 (20) 原告前代表者は,同月29日,中国での滞在許可証を取得するための代金をP4に預けた(乙A127)。 (21) 同月30日,P7は,P5,P4らに対し,上海一汽との打合せの趣旨は,現地で時間をかけて視察することであるというのが原告前代表者の意向であり,機材,工具,治具等の打合せ,人員の確認をする予定である旨記載したメールを送信した(乙A82)。 (22) 同月31日,P5,P6らが被告KAZを退職した。退職した従業員の同月分の給与は,同年8月中旬に支払われた(証人P56頁)。P4もその頃に被告KAZを退職したが,残務業務を続けた。 (23) その頃,中組が被告KAZに資金援助をするという話が出ていた(証人P513頁)。 (24) 同年8月8日,P4は,原告前代表者及びP5に向け,原告前代表者から中航有限公司社長宛てのFAX文案をメール送信した。同文案の内容は,原告は被告KAZの資金提供者であったが,方針の違いから被告KAZから独立して特殊車両生産を行うことになったこと,ついては,中航有限公司にOEM生産をお願いしたこと,同社は被告KAZ,被告ビルドと1年ほど前にOEM生産に関する提携を検討していたことを承知していること,打ち合わせのために,同月14日から20日頃まで,同社まで出向く意向であること,この申出内容については,被告KAZ,被告ビルドには秘密にしてもらいたいこと,などである(乙A6)。 (25) 同月14日,被告KAZは原告に対し,500万円を支払った。 (26) 同月15日,P4はP5,P7, いては,被告KAZ,被告ビルドには秘密にしてもらいたいこと,などである(乙A6)。 (25) 同月14日,被告KAZは原告に対し,500万円を支払った。 (26) 同月15日,P4はP5,P7,P8の名刺作成を手配した(乙A123)。 (27) 同月18日,P4は原告前代表者とP5に対し,原告前代表者から安徽開楽車両有限公司(以下「開楽トレーラー」という。)宛てのメール文案をメール送信した。同文案の内容は,原告において,特殊車両生産を行うことになったこと,つ-33-いては,開楽トレーラーにOEM生産してもらいたいこと,P9による調整の結果,自分は同月22日から24日まで開楽トレーラーに訪問することになっていること,などである(乙A124)。 (28) 同月22日,原告は,被告KAZ及び被告ビルドに対し前記(1)に係る貸金返還を求め,大阪簡易裁判所に対し,支払督促の申立てを行った。 (29) 同月23日,P4はP7,P8,P5に対し,「P9さんと,今後の計画や,待遇面,給与面の話を夜にも行い,P9さんにもサインをもらってください」という原告前代表者の伝言を送信した(乙A8)。 (30) 同月24日,P7はP4に対し,同月22日の開楽トレーラー訪問の報告として,「こちらでの立ち上げの際に揚州から連れて行く工員の人数が最初の予定より増えそうです」,「開楽側のレベルの低さが浮き彫りになった感じです。どうしても短期間で生産,車両の年内完成までを考えると,多少の増員は覚悟をしていましたが,今日の細かい打ち合わせの中で,各工種に熟練工を入れないと始まらないと痛感しました」,「前もってP1には多少の手荒いやり方になるかもと,一応伝えてはいる」というメールを送信した(乙A8)。 (31) 同月27日,P9はP4に対し,開楽トレーラーとのトレ 始まらないと痛感しました」,「前もってP1には多少の手荒いやり方になるかもと,一応伝えてはいる」というメールを送信した(乙A8)。 (31) 同月27日,P9はP4に対し,開楽トレーラーとのトレーラー生産契約書をメール添付して送付した(乙A86)。 (32) 被告らに対する支払督促は同月26日に発付され,同月28日にその正本が被告らに送達された(甲A5の1ないし3,甲B5の1ないし3)。 これに対し,P4は,被告ら代表者と協議して,同日,管理していた被告らの会社印を用いて支払督促に対する異議申立書を作成して裁判所に郵送した。被告KAZ作成の督促異議申立書及び被告ビルド作成の督促異議申立書には,いずれも,「話合いによる解決を希望します。」「分割払を希望します。」の欄にチェックが入れられている(乙A1,乙B1)。 その後,P4は,同月29日,督促異議申立書の取下書を作成して提出し,被告らの支払督促に対する異議申立てを取り下げた。 -34-(33) 同月31日,P5,P8,P7,P4らは会議を開き,各人の仕事の分担を決めた(乙A24)。そこでは,P7は毎日P9と連絡をとっており,P5は9月上旬に港南運輸とP11に訪問することとされた。そして,P5は同月に港南運輸とP11を訪問した(甲A99及び100)。 (34) 被告ら代表者は,同年9月9日,P4に対し,「中組さんから聞きました。 何の目的で会社を退職した社員がお客さんの会社に行きおかしな話をするのか目的を聞かせてください。」,「話をしたお客さん数社から話を聞いています。」等と記載したメールを送信した(乙A87)。 (35) 被告ら代表者は,同日,原告前代表者に対し,「借入金のお支払いの件」と題するメールを送信した。同メールには,「借入金の返済方法と現状説明を書きました。案として ルを送信した(乙A87)。 (35) 被告ら代表者は,同日,原告前代表者に対し,「借入金のお支払いの件」と題するメールを送信した。同メールには,「借入金の返済方法と現状説明を書きました。案として書きましたので宜しくお願い致します。」,「ガンと化した社員に半年間苦しめられこの社員を今回一掃しました」,「嘘と横着がしみこんだトーヨーの社員を雇う余裕は無い 3月から営業を始めて分かったのですがP5とP6がP1に提出していた営業報告は全て嘘と分かりました」などと記載されている(甲A6)。 (36) 同月11日,P7は,P9に対し,原告前代表者から中国での開楽事務所の立上げ経費の明細と生産までの当面の工程計画表を出すよう指示があった旨のメールを送信し,P9はP7,P4らに対し,新工場の立上げ予定表(10月1日スタート)と,小川建機の依頼により被告KAZが作成したエアサストレーラー(工作番号BC2032,2033)の設計図21枚分のCADデータをメールに添付して送信し,P4は同メールを原告前代表者及び原告の専務に送信した(乙A17)。 (37) 同月11日,P4は,原告の従業員P18に対し,原告トレーラー部門の売上予定表等をメールに添付して送信した。同予定表には,同月9日時点で,原告がマルショウから3台,港南運輸から2台,山広運輸,協栄運送,ユタカ,中組及びモリから各1台のトレーラー製造を受注予定であること,並びに,製造機種,販売金額,納期及び原価率等が記載されている(乙A18)。 (38) 同月12日,原告の従業員は,P4に対し,P5,P7,P4,P6,P-35-8,P9らの原告のトレーラー事業部でのメールアドレスを送信した(乙A10)。 同日,P4は,P5,P7及び原告前代表者に対し,その日の被告ら代表者の動静,被告KAZの預金残高,ア ,P-35-8,P9らの原告のトレーラー事業部でのメールアドレスを送信した(乙A10)。 同日,P4は,P5,P7及び原告前代表者に対し,その日の被告ら代表者の動静,被告KAZの預金残高,アチハ向けトレーラーの残金予定,港南運輸向けトレーラーは顧客の手元にあり,シリンダー交換し,稼働・登録できれば支払の旨,月末の資金予定についてメールで連絡した(乙A11)。 (39) 同月14日,P4は,原告前代表者,P7,P5に対し,P9からの報告に基づき,採用予定者4名による中国の工場見学の状況,被告ら代表者らが揚州工場に来た状況,アチハ関係の入金見込み等をメールで報告した(乙A83)。 (40) 同月17日,P4は,原告前代表者に対し,被告KAZでの小川建機関係やフジトランス関係の出荷予定のほか,「P9さんと4名の移動について移転し動きはじめてから,P3社長に連絡する予定とのこと。先に連絡すると邪魔されたり面倒なので,逃げ道を確保してから連絡したいとのこと。9/20に移動予定であり,費用等の催促あり。」としたメールを送信した(乙A12)。 (41) 同月19日,原告の専務らとP5,P7,P4,P8らは,原告でのトレーラー事業に関する経理関係の打合せを行った(乙A25)。 (42) 同月20日,P7はP9に対し,P8から受信したマルショウ向け車両の計画図が添付されたメールを転送した(乙A88)。 (43) 同月23日 P9はP4,P5,P7に対し,開楽工場に設置した原告事務所及び車両製作場所の写真をメールに添付して送信した(乙A88)。 (44) 原告は,同月25日に仮執行宣言の申立てを行った。同月25日には,被告KAZに対する支払督促に仮執行宣言が付され,同月27日,被告KAZに対し,仮執行宣言付支払督促正本が送達された。同月26日 4) 原告は,同月25日に仮執行宣言の申立てを行った。同月25日には,被告KAZに対する支払督促に仮執行宣言が付され,同月27日,被告KAZに対し,仮執行宣言付支払督促正本が送達された。同月26日には,被告ビルドに対する支払督促に仮執行宣言が付され,同月28日,被告ビルドに対し,仮執行宣言付支払督促正本が送達された(甲A5の3,4,甲B5の3,4)。 (45) 同月25日,P4が原告前代表者に送信したメールには,「本日の状況まとめましたので報告いたします。」とした上で,「1. 中国の状況・P9さんは揚州-36-に戻り,日本から提示した図面の調整を設計者と打ち合わせ。 ・KAZの小川建機2023の買取価格の調整実施」「3. 営業本日,P5さんがマルショウ運輸へ往訪し,仕様の最終確認中。」,「5. 10/5 一斉開始までの動き開楽に提示する図面は本日中に完成見込み。開楽の見積りが出次第,生産体制に入る。P9さんは揚州での図面打ち合わせ等完了させて27日にも開楽に一人もどり,定盤作成している3名と合流し開楽と打ち合わせ予定」との記載がある(乙A13)。 (46) P7は,同日,P4に対し,小川建機発注の工作番号BC2023の出荷価格は約6540万円で,やり直しの人件費等が膨らんでおり,間違いなく6000万円は下らないらしいと連絡をした(乙A14)。 (47) P4は,同月30日に作成した原告前代表者宛てのメールの下書きで,「売掛債権があるということでは,フジトランス・日置運送・昭和組およびP11についても中間金・最終金があります。各社へのKAZの債権差押え通知を行うと一定効果はある反面で,今後の営業活動では風評リスクが避けられません。特に港南運輸は様々な情報を逐次提供頂き,注文も来週もらえる見込みであります。」と記載した(乙A1 KAZの債権差押え通知を行うと一定効果はある反面で,今後の営業活動では風評リスクが避けられません。特に港南運輸は様々な情報を逐次提供頂き,注文も来週もらえる見込みであります。」と記載した(乙A15)。 (48) 原告は,同年10月1日,港南運輸からネックリフト付2軸16輪中低床トレーラーを受注し,同月8日,マルショウから3軸低床エアサストレーラーを受注した。 (49) 被告らは,同月9日,仮執行宣言付支払督促に対する異議申立てをし,本件各訴訟に移行した。 (50) 同日,原告は,被告KAZを債務者,港南運輸を第三債務者,被告KAZに対する前記(44)の仮執行宣言付支払督促記載の債権及び執行費用を請求債権,被告KAZが港南運輸に対して有するトレーラー製造の請負代金債権を差押債権として債権差押命令申立てをし,同月11日に債権差押命令の発付を受け,これに基づき,同年11月20日に,港南運輸から438万9040円を取り立てた(甲A116の1ないし4)。 -37-(51) 同年10月25日,P9は原告を退社した。 2 争点1(原告被告ビルド間の金銭消費貸借契約の成否),争点8(原告被告KAZ間の金銭消費貸借契約の成否)について(1) 原告と被告らとの間で,別紙取引一覧表のとおり金員の授受がされたことは当事者間に争いがないところ,前記事実経過によれば,被告ら名義で作成された各「債務承認及び弁済契約書」及び「貸付金明細」は被告らの意思に基づき作成されたものと認められるから,原告と被告らとの間では,上記金員の授受につき金銭消費貸借契約が成立したと認められる。 (2) これに対し,被告らは,多額の金銭消費貸借が無利息で行われ,借用書も作成されていないのは不自然であるなどとして,原告から被告らに交付された金員は,貸金ではなく出資である したと認められる。 (2) これに対し,被告らは,多額の金銭消費貸借が無利息で行われ,借用書も作成されていないのは不自然であるなどとして,原告から被告らに交付された金員は,貸金ではなく出資であると主張する。 しかし,原告前代表者は,当初,被告ら代表者に個人的に貸付けをしていたものであるが,これについても借用書は作成せず,利息も付されなかったこと(事実経過(1))に照らせば,被告らが指摘する点は,前記認定を覆すには足りない。また,原告は,上記の「債務承認及び弁済契約書」を作成する以前においても,預かっていた被告KAZの預金通帳から,いったん返してもらうと話して自ら出金して返金を受けており(同(2)),このことについて被告ら側が異議を述べたことは何らうかがえない。さらに,被告KAZは,同年7月に,原告から本件支払督促に係る金員について,同月末日までに返済するよう求める通知書の送付を受けた(同(11)(17))のを受け,同年8月14日に任意に500万円を支払っており(同(25)),さらに督促異議申立ての際には,分割払いを希望する旨表明し(同(32)),さらに,同年9月9日には,借入債務があることを前提とし,その返済方法について提案するメールを原告に送信する(同(35))など,原告からの借入金があることを認める前提の行動をとっていることが認められる。 これらからすると,原告及び被告らは,一貫して貸付けであることを前提とする行動をとっていたといえるから,被告らの上記主張は採用できず,前記のとおり,-38-消費貸借契約の成立を認めるのが相当である。 (3) よって,平成25年7月31日時点における被告ビルドの原告に対する貸金返還債務残額は1001万円であると認められる。 また,同日時点における被告KAZの原告に対する貸金返還債務残額は7 (3) よって,平成25年7月31日時点における被告ビルドの原告に対する貸金返還債務残額は1001万円であると認められる。 また,同日時点における被告KAZの原告に対する貸金返還債務残額は7164万8066円であったところ,被告KAZは,同年8月14日に500万円を返済したことから,原告がこれを同日時点における遅延損害金,残債務の順に充当し,さらに,原告は,平成25年11月20日,債権差押命令の執行手続をとり,港南運輸から438万9040円を取り立てたものであり,これを,同日時点における遅延損害金,残債務の順に充当したものであることから,同日における被告KAZの原告に対する債務残額は,別紙取引一覧表記載のとおり,6433万0673円であると認められる。 そこで,以下,被告らの相殺の抗弁について検討する。 3 争点10(原告による不正競争行為(虚偽告知)の成否)について(1) 被告KAZは,平成25年9月頃,P5が港南運輸,マルショウ及びヤマガタに対し,被告KAZは資金難であり,トレーラーの製造ができないこと,被告KAZはトーヨートレーラーの図面で製造していることから原告において低価格によるトレーラーの製造が可能である旨の事実を告知したと主張する。 (2) 確かに,前記事実経過によれば,P5らは,同年7月26日の食事会(事実経過(18))以降,本格的に原告でのトレーラー事業の立上げ準備を開始して被告KAZを退職し,同年8月31日の仕事分担を確認する会議では,P5は同年9月上旬に港南運輸とP11を訪問することとなり,実際に訪問したこと(同(33)),被告ら代表者は,同月9日,P4に対し,退職した従業員が被告KAZの取引先を訪問しておかしな話をしていると聞いたとのメールを送信し(同(34)),その後,原告は,同年10月初旬に港南 同(33)),被告ら代表者は,同月9日,P4に対し,退職した従業員が被告KAZの取引先を訪問しておかしな話をしていると聞いたとのメールを送信し(同(34)),その後,原告は,同年10月初旬に港南運輸とマルショウからトレーラーを受注したこと(同(48))が認められる。 しかし,同年9月下旬にP5が訪問したP11の社長である証人P12は,P5-39-が被告KAZの上記主張のような話をしたことを明確に否定する証言をしている(証人P12・2頁及び5頁)。また,港南運輸の代表者の陳述書(甲A100)にも,訪問したP5が被告KAZが倒産するなどと告げた事実はないとの記載がある。 また,港南運輸の代表者の同陳述書には,同社が原告にトレーラーを発注したのは,被告KAZに発注したトレーラーの納品が遅れた上に,一部未完成の部分があり,登録手続も被告KAZが行うべきところを同社が自ら行う必要があったからであるとの記載があるが,前記事実経過(15)(38)での港南運輸向けトレーラーの状況は,この記載に沿うものであり,原告が港南運輸から受注したからといって,P5が被告KAZ主張のような事実を告知したとは直ちに認められない。そして,このように平成25年9月当時にP5らが訪問していた客先に対して被告KAZ主張のような事実を告知したとは認めるに足りず,他に被告KAZ主張の事実を裏付ける告知先の陳述も存しないことも考慮すると,港南運輸,マルショウ,ヤマガタ等に対して原告関係者により虚偽事実の告知が行われたとは認められないというべきである。 したがって,被告KAZ関係での不正競争行為(虚偽告知)は認められない。 4 争点12(不法行為(支払督促に対する異議申立ての無断取下げ)の成否)について(1) 被告KAZは,平成25年8月29日にP4が被告ら代表者に無断で支 正競争行為(虚偽告知)は認められない。 4 争点12(不法行為(支払督促に対する異議申立ての無断取下げ)の成否)について(1) 被告KAZは,平成25年8月29日にP4が被告ら代表者に無断で支払督促に対する被告KAZの異議申立てを取り下げたことが不法行為を構成し,その結果,仮執行宣言が付されて仮執行(債権執行)がされたことにより,取立金と同額の損害が生じたと主張する。 (2) 事実経過(32)のとおり,P4は,督促異議申立てを取り下げる手続をしているところ,確かに,前記事実経過によれば,督促異議申立ての取下げがされた当時,P4は,被告KAZを退職して残務業務をしつつ,原告のトレーラー事業の立上げを本格化させていた時期であるから,原告の利益を慮って督促異議申立てを取り下げたのではないかと疑う素地はある。 しかし,この点について,証人P4は,取下書を裁判所に提出するに当たっては,-40-被告ら代表者と話をし,異議申立てをいったん取り下げて原告前代表者と誠意を見せて話し,納得してもらえなければ再度異議申立てをすればよいと説明したと証言している(証人P4・2頁及び3頁)。また,乙事件の被告ビルドの平成26年1月16日付け準備書面(1)では,「P4は,「分割払いの話をしているのだから示談すればよい。異議申立を取り下げてくる」という言葉を発したが,一方的に言い残して被告会社から走り出たもので,被告代表者の了解を得たものではない。」と主張しており,この主張は,原告から事実経過の主張がされるより前に被告ビルドからされたものである。さらに,被告ら代表者の本人尋問での供述においても,P4が何を言っているのか分からなかったとしながらも,「示談してるんだから,こんなんやる必要ない」と言って出ていった限度では認めている(被告ら代表者本人51頁)。ま 者の本人尋問での供述においても,P4が何を言っているのか分からなかったとしながらも,「示談してるんだから,こんなんやる必要ない」と言って出ていった限度では認めている(被告ら代表者本人51頁)。また,P4は,被告らの会社印を管理していたのであるから,被告らに無断で督促異議申立てを取り下げるのであれば,わざわざ被告ら代表者と話をせずに取下げ手続をすればよいはずであるから,P4が,被告ら代表者らに対し,督促異議申立てに関する話をしたことからすると,P4は,その取下げを説得しようとしたと考えられ,その旨を被告ら代表者に告げたと考えるのが合理的である。 以上からすると,被告ら代表者は,督促異議申立てについてP4が必要ないと考え,それを取り下げるために事務所を出て行ったことを認識していたものと認められ,これに反する被告ら代表者の供述は採用できない。そして,それにもかかわらず,被告ら代表者において,P4に反対意見を述べたり,裁判所に問い合わせたり,再度,異議申立てをしたりした事実は認められないこと,同年9月9日には,原告前代表者に対して借入金の返済方法を連絡していることからすると,被告ら代表者は,異議申立てを取り下げることについて,少なくとも黙示に同意していたものというべきであるし,仮にそうでないとしても,P4は被告ら代表者にその旨を告げた上で取下げ手続をしたのであるから,被告ら代表者の了解を得たと考えることに合理的理由があるといえ,P4の行為に違法性を認めることはできない。 よって,P4が被告ら代表者の意に反し,違法に被告KAZの異議申立てを取り-41-下げたものとは認められない。 なお,仮にP4が異議申立てを取り下げたことが不法行為を構成するとしても,被告らが原告に対し,支払督促に係る貸金債務を負っていたことは前記認定判断のとおりである -下げたものとは認められない。 なお,仮にP4が異議申立てを取り下げたことが不法行為を構成するとしても,被告らが原告に対し,支払督促に係る貸金債務を負っていたことは前記認定判断のとおりであるから,当該貸金債務を請求債権として債権執行をされたからといって,それにより取り立てた債権の額が直ちに被告KAZの損害となるものとは認められない。 以上より,原告による違法な異議申立て取下げに基づく不法行為を認めることはできない。 5 争点13(不法行為(製造委託先への高額請求の働きかけ)の成否)について(1) 被告KAZは,P9は,平成25年9月頃,被告KAZが小川建機から1億1000万円で注文を受けたトレーラー(工作番号BC2023)につき,原告と共謀し,製造委託先である揚州通華に働きかけ,自ら関与するトンネル会社から原価の3倍にも上る額で高額で部品を仕入れさせ,被告KAZの希望代金額及び実際の出荷価格のいずれも大きく上回る額の製造代金1億2000万円を被告KAZに請求させたと主張し,被告ら代表者も同趣旨の供述をする。 (2) しかし,証人P9は,被告ら代表者が業者指定をしていない部品について,OEM工場から購入先を問われた際に業者を紹介したことはあるが,自らの主導で仕入金額を決定したり,当該金額による購入を決定させたりしたことはないと証言しており(証人P9・16頁),他に,P9が不当に高額な部品購入価格を決定させたことを裏付ける的確な証拠はない。また,乙A135及び136は,これに表れた金額が不当に高額であることや,P9が被告KAZを害する目的でその金額での部品購入をしたことを認めるには足りない。 この点について,被告らは,前記事実経過(45)のとおり,平成25年9月25日,P4が原告前代表者に対するメールにおいて,P9による る目的でその金額での部品購入をしたことを認めるには足りない。 この点について,被告らは,前記事実経過(45)のとおり,平成25年9月25日,P4が原告前代表者に対するメールにおいて,P9による被告KAZの小川建機発注のトレーラー(工作番号2023)の買取価格の調整実施について報告している-42-ことをもって,原告がP9を通じて小川建機が発注したトレーラーの製造代金の不当請求に関与していた証左であると主張する。しかし,そこでは,単に「買取価格の調整実施」とされているにすぎない上,前記事実経過(6)(15)(38)のとおり,P4は,原告前代表者に対し,日頃から被告KAZの業務状況を報告しており,この報告もその一環であると見る余地があるから,上記の報告をもって,直ちにP9が揚州通華に対して製造代金の高額請求を働きかけたと認めることはできない。 なお,被告KAZは,P9が,平成24年12月ないし平成25年3月頃,別のトレーラーのタイヤについて,被告ら代表者が指定した以外の業者から,水準を上回る金額で仕入れが行われたと主張し,証拠(乙A131ないし134)によればそのことがうかがわれる。しかし,その時期は,事実経過(3)のとおりP4らが被告KAZの再建計画を協議していた時期であり,未だ原告でのトレーラー事業が検討されていない時期であるから,この時期のP9の行動が原告と関連するものであるとは認められず,そうである以上,仮にP9が小川建機関係でも同様の行動をとったとしても,直ちに原告と共謀関係があると認めることはできない。 よって,P9による製造委託先への高額請求の働きかけに基づく不法行為を認めることはできない。 6 争点3(原告による不正競争行為(虚偽告知)の成否)及び争点5(不法行為(取引先への取引解除の仕向け)の成否)について 委託先への高額請求の働きかけに基づく不法行為を認めることはできない。 6 争点3(原告による不正競争行為(虚偽告知)の成否)及び争点5(不法行為(取引先への取引解除の仕向け)の成否)について(1) 被告ビルドは,P5及びP6が,原告と意を通じ,平成25年9月頃,被告KAZにトレーラーを発注していたP11に対し,被告らは潰れると述べて契約をキャンセルするよう働きかけたり,製造委託先の浦東一汽の副社長に対して,被告らは潰れるから取引をやめた方がよいと吹聴し,また,P11の代表者が平成26年2月に製造委託先の浦東一汽の工場を訪問した際には,立ち会ったP9が,被告らは資金難のために製造開始できない旨の虚偽の通訳をし,P11をして契約を解除させたと主張する。 (2) 前記事実経過及び証拠(甲A35,乙A99,乙B2及び4,証人P12)-43-及び弁論の全趣旨によれば,①P11は,被告ビルドに対し,納期を平成26年1月としてトレーラーを発注していたところ,代表者のP12は,納期が過ぎ,被告ら側が中国の浦東一汽にOEM製造を委託する契約書の送付は受けたものの,被告ら代表者に問い合わせても製造状況が不明であったことから,同年2月半ばに抜き打ちで,浦東一汽に製造の様子を確認しに行くこととし,現地で旧知のP6の紹介で案内者及び通訳としてP7及びP9と合流したこと,②その際,P9の通訳を介し,同社の副工場長から聴取したところでは,発注に係るトレーラーを製造する準備はしているとの説明であったこと,③副工場長からは,被告KAZが資金難であるために着手できないという話は出なかったが,被告KAZとのOEM契約の契約金がまだ支払われていないという説明はあったこと,④P12が同工場のラインを確認したところ,何も製造工程が進んでおらず,資材も見当たらなかったの という話は出なかったが,被告KAZとのOEM契約の契約金がまだ支払われていないという説明はあったこと,④P12が同工場のラインを確認したところ,何も製造工程が進んでおらず,資材も見当たらなかったので,製造が全く進んでいないと考え,被告ビルドとの契約解除を決意したこと,工場訪問が終わり,P12は被告ら代表者に苦情の電話をかけたが,被告ら代表者が特段の対同日,P12は,一緒に工場に来ていたP7に対して,同じトレーラーの発注を持ちかけ,P11は被告ビルドに対し,平成26年2月27日,被告ビルドとの間で締結していた2軸16輪伸縮ステアリング付き50トン車の製造請負契約を解除する旨の意思表示をするとともに,頭金531万3000円の返却を求める内容の通知書を送付したこと,⑦原告は,P11からの発注を受けてトレーラーを製造し,同年6月2日に輸入許可を受けたこと,以上の事実が認められる。 (3) 以上を前提に検討するに,まず,原告側が,平成25年9月頃,被告KAZにトレーラーを発注していたP11に対し,被告らは潰れると述べたとの点については,証人P12が明確にこれを否定する証言をしており,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 次に,P12が浦東一汽の工場を訪問した際に,P9が,被告らは資金難のために製造開始できない旨の虚偽の通訳をしたとの点については,前記のように,P9-44-の通訳を介しP12が認識したのは,被告KAZから浦東一汽に対し,OEM契約の契約金がその時点で未だ支払われていないということであるにすぎない。そして,この点につき,被告ビルドは,契約金は同年2月初めには支払ったと主張するが,これを裏付ける証拠はなく,直ちに採用することはできない。したがって,P9の上記通訳が,虚偽であることを認めるに足りる証拠はない。また,この点を ルドは,契約金は同年2月初めには支払ったと主張するが,これを裏付ける証拠はなく,直ちに採用することはできない。したがって,P9の上記通訳が,虚偽であることを認めるに足りる証拠はない。また,この点を措くとしても,P12が,被告ビルドとの契約解除を決意したのは,被告KAZの資金繰りの問題ではなく,浦東一汽の工場に行った時点で発注したトレーラーの製造が全く進んでいなかったためであるから,仮にP9の通訳が上記の点で虚偽であったとしても,それによって契約解除がされたとは認められない。 また,被告ビルドは,P12が訪問した当時,浦東一汽においては,既に被告KAZの作業員が入っており,組立てを開始できる状況にまで準備がなされていたにもかかわらず,P9とP7がP12に別の無関係なラインを見せ,P12に,被告KAZの資金難により,発注に係るトレーラーの製造開始ができない状況にあると信じ込ませたものと主張する。しかし,この点を裏付ける証拠はなく,P12から苦情の連絡を受けた被告ら代表者が特段の対応をとらなかったこととも整合しない。 また,被告ビルドのいう製造準備の具体的な程度は必ずしも明らかではないが,被告ら代表者の供述としても,平成26年2月18日において,浦東一汽において製造が始まっていたというものではなく,製造の準備段階にまで至っていたというにすぎないこと(被告ら代表者本人17頁及び18頁)からすると,P12が見た,何も製造工程が進んでおらず,資材も見当たらなかったラインが,P11から受注したトレーラーの製造ラインとは無関係のものであったと認めるには足りない。したがって,この点でP9やP7が虚偽の説明をしたとも認められない。 また,P5とP6が浦東一汽の副工場長に対し,被告KAZと被告ビルドは潰れるから取引をやめた方がよいなどと吹聴したことを認め い。したがって,この点でP9やP7が虚偽の説明をしたとも認められない。 また,P5とP6が浦東一汽の副工場長に対し,被告KAZと被告ビルドは潰れるから取引をやめた方がよいなどと吹聴したことを認めるに足りる的確な証拠はない。 以上より,原告側によるP11関係での虚偽事実の告知,契約解除への仕向けに-45-基づく損害賠償請求権は認められない。 7 争点2(原告による不正競争行為(被告ビルドの営業秘密の不正取得,不正使用)の成否),争点9(原告による不正競争行為(被告KAZの営業秘密の不正取得,不正使用)の成否)について(1) 営業秘密目録記載1(1),(2)についてこれについては,原告が使用していないことにつき争いがないから,その余の点について検討するまでもなく,被告ビルドにその主張に係る損害が発生したとは認められない。 (2) 営業秘密目録記載1(3)についてア被告ビルドが主張するこの営業秘密は,従来よりも車軸に強度を持たせるために,車軸の製作順序及び製作条件を営業秘密目録記載1(3)のようにしたというものであり,被告ビルド作成の平成25年6月10日付け「車軸」という名称の図面には,「●(省略)●」と記載されている(乙A55)。 イ証拠によれば,次の事実が認められる。 ① 東洋車輌作成の平成18年1月21日付け「車軸」という名称の図面には,「製作順序 1.SCM435材を型切り(板厚100mm) 2.ボスを溶接後,荒仕上げ及び焼入れ焼き戻し 3.仕上げ加工」「注記注1) 素材焼入れ焼戻しHB 390~409 注2) 太線部高周波焼入れ硬度 HRC 50~60深さ3mm」と記載されている(甲A41)。 ② 昭和58年頃アメリカ自動車技術者協会が作成した「技術データ焼入れと表面処理及び硬さ試験法の種類」 太線部高周波焼入れ硬度 HRC 50~60深さ3mm」と記載されている(甲A41)。 ② 昭和58年頃アメリカ自動車技術者協会が作成した「技術データ焼入れと表面処理及び硬さ試験法の種類」と題する書面には,鉄鋼材料の熱処理として,高周波焼入れの場合の焼入れの深さが「1~2mm」と記載されている(甲A20)。 ウ以上の事実によれば,営業秘密目録記載1(3)のうち,「●(省略)●」という部分については,原告による不正取得等の基準時以前である平成18年作成の東洋車輌図面に記載されていた内容と同一であり,被告ら代表者は東洋車輌の総括部長,原告代表者はその代表取締役であったことからすると,これらの技術情報-46-については,東洋車輌が保有である可能性が十分に考えられ,そうでないとしても,原告にとっては既知の情報であることからすると,原告が不正取得等したとも認められない。もっとも,「●(省略)●」との点は東洋車輌図面に記載されていないが,この点は上記アメリカ自動車技術者協会の書面に記載されている公知技術である上,上記の東洋車輌図面の製作順序及び製作条件において焼入れの深さを公知の●(省略)●とすることにつき,公知技術を組み合わせた以上の格別の有用性を認めるに足りる証拠もない。 そうすると,営業秘密目録記載1(3)の情報については,保有者性,不正取得等又は非公知性ないし有用性を認めることができない。 (3) 営業秘密目録記載1(4)について被告ビルドが主張するこの営業秘密は,従来の伸縮タイプのトレーラーでは,後方から重機が車輪を乗り越えて積載される際に,幅狭の伸縮フレーム部分に正確に載せる必要があり,安定して運ぶのが困難であったのを,営業秘密目録記載1(4)のようにしたというものである(乙A56及び57)。 しかし,証拠( えて積載される際に,幅狭の伸縮フレーム部分に正確に載せる必要があり,安定して運ぶのが困難であったのを,営業秘密目録記載1(4)のようにしたというものである(乙A56及び57)。 しかし,証拠(甲A22,甲A43)によれば,株式会社上陣のウェブサイトに掲載されたトレーラーの図面には,営業秘密目録記載1(4)と同内容の記載,すなわち,●(省略)●構造のトレーラーが記載されていること,同図面には重機を意味する「KOBELKOsk3500D」との記載があることから,同図面に記載されたトレーラーは,重機積載用のものであること(甲A43の1,甲A43の3),同図面の作成日付は平成24年7月17日であることが認められる。 そうすると,原告による不正取得等の基準時において,当該情報の非公知性を認めることはできず,営業秘密目録記載1(4)の情報について営業秘密性を認めることはできない。 (4) 営業秘密目録記載2(1),(2)について被告KAZが主張するこの営業秘密は,従来の固定式グースネックでは,重機をトレーラーの後方から載せるしかなかったのを,営業秘密目録記載2(1),(2)のよ-47-うに,グースネックを油圧シリンダーで可動式にすることで,前方からも積み降ろしができるようにし,その際にロックシリンダーの先端部の形状を●(省略)●にしたというものである(乙A58,59)。 しかし,証拠(甲A33)によれば,原告が港南運輸に販売したトレーラーである「中低床式セミトレーラー」のネック部の構造の設計図においては,グースネックが可動式ではなく,「油圧シリンダー」及び「ロックシリンダー」に該当するものが存在しない点で,営業秘密目録記載2(1),(2)の構造とは異なるものとなっている。 そして,他に本件において,原告が港南運輸に販売したトレー 圧シリンダー」及び「ロックシリンダー」に該当するものが存在しない点で,営業秘密目録記載2(1),(2)の構造とは異なるものとなっている。 そして,他に本件において,原告が港南運輸に販売したトレーラーが営業秘密目録記載2(1),(2)の構造を備えたものであったことを認めるに足りる証拠はない。 よって,原告が営業秘密目録記載2(1),(2)の情報を使用した事実を認めることはできないから,その余の点について検討するまでもなく,被告KAZにその主張に係る損害が発生したとは認められない。 (5) 営業秘密目録記載2(3)についてア被告KAZが主張するこの営業秘密は,●(省略)●を用いたというものである。 イ証拠によれば,次の事実が認められる。 ① 「●(省略)●」は,現在では「WEL‐TEN780」と称されており,両者は同一の物である(甲A48,弁論の全趣旨)。 ② 「●(省略)●」(「WEL‐TEN780」)は,約50年前から販売されていた高張力鋼であり,現在も新日鐵住金株式会社により販売されている(甲A24(6頁),甲A47)。 ウ前記のとおり,「●(省略)●」は,少なくとも50年にわたって製造販売されているものであることから,それが高張力鋼として優れたものであることが一般に認識されているものと推認される。 そうすると,ネックフレームの材質として同素材を用いることは,誰しもが容易-48-に想起することができる事項というべきであり,仮にこれを採用する前提として車体の構造を変える工夫等をしたのだとしても,これを選択したこと自体に有用性を認めることはできない。 なお,被告KAZが指摘する「●(省略)●」が入手困難であるという事情は,現実に同素材を使用したトレーラーを製造することが可能かという問題にすぎず,これを素材として 用性を認めることはできない。 なお,被告KAZが指摘する「●(省略)●」が入手困難であるという事情は,現実に同素材を使用したトレーラーを製造することが可能かという問題にすぎず,これを素材として用いることの有用性の判断とは直接関係しない。 さらに,被告KAZは,「●(省略)●」の使用は被告ら代表者が東洋車輌に在籍中に,車体の構造を変えるなどの工夫をした結果,採用するに至ったと主張するが,仮にそのとおりであるとすれば,この営業秘密の保有者は東洋車輌であることが十分に考えられ,そうでないとしても,原告には既知の情報であるから,原告が不正取得等したとは認められない。 よって,営業秘密目録記載2(3)の情報について営業秘密性,保有者性及び不正取得等を認めることはできない。 (6) 営業秘密目録記載3(1)について被告KAZが主張するこの営業秘密は,トレーラーの●(省略)●とすることにより,集中荷重に対応できるようにしたというものである。 しかし,厚さに伴ってフレームの強度が増すのは明らかであるから,板厚を従来より厚くすること自体に有用性は認めがたく,●(省略)●という数字に格別の有用性ないし臨界的な意義があると認めるに足りる証拠もない。 そうすると,この点について有用性を認めることはできず,営業秘密目録記載3(1)の情報について営業秘密性は認められない。 (7) 営業秘密目録記載3(2)についてア被告KAZが主張するこの営業秘密は,従来のリフトアクスル装置は最遠軸の車輪を接地させていたのを,●(省略)●としたというものである(乙A60,61)。 イ証拠によれば,次の事実が認められる。 -49-① 平成24年4月19日の時点で,最遠軸の一つ手前の車輪を接地させる方式としたリフトアクスル装置を備えたトレーラーは,公 0,61)。 イ証拠によれば,次の事実が認められる。 -49-① 平成24年4月19日の時点で,最遠軸の一つ手前の車輪を接地させる方式としたリフトアクスル装置を備えたトレーラーは,公道上を走行していた(甲A49の2)。 ② 平成22年9月頃に,オランダのトレーラー部品販売会社であるSAF-HOLLANDが作成した「Centreaxlelift」と題する書面には,リフトアクスル装置に関する図面が掲載されており,同図面には,エアベローズを膨らませることにより,てこの原理で車軸が持ち上がる構造が記載されている(甲A49の3)。 ウ前記イ①,②によれば,原告による不正取得等の基準時において,●(省略)●も公知となっていたものと認められ,両者を組み合わせることに特段の有用性があるとも認められないから,営業秘密目録記載3(2)は全体として非公知性が欠けるというべきである。 よって,営業秘密目録記載3(2)の情報については,非公知性が認められず,営業秘密性が認められない。 (8) 営業秘密目録記載3(3)についてア被告KAZが主張するこの営業秘密は,強度を上げるために,スタビライザの製作順序及び製作条件を営業秘密目録記載3(3)のようにしたというものであり,被告ビルド作成の平成25年3月25日付「スタビライザ」と題する図面には,●(省略)●との記載がある(乙A62)。 イしかし,証拠(甲A51)によれば,東洋車輌作成の平成17年6月6日付「スタビライザー」という名称の図面には,スタビライザの外径は50mmとすること,及び,「注記 1) 素材外径仕上→軸受溶接→折り曲げ→先端金具溶接→焼入れ焼戻し 2) 焼入れ焼戻硬度 HRC 44~48 3) 全面ショットピーニング仕上げのこと」との記載がされており,弁 と,及び,「注記 1) 素材外径仕上→軸受溶接→折り曲げ→先端金具溶接→焼入れ焼戻し 2) 焼入れ焼戻硬度 HRC 44~48 3) 全面ショットピーニング仕上げのこと」との記載がされており,弁論の全趣旨によれば,「先端金具溶接」とは,「ボス溶接」と同趣旨であると認められる。 そうすると,営業秘密目録記載3(3)のうち,●(省略)●という部分については,-50-原告による不正取得等の基準時以前である平成17年作成の東洋車輌図面に記載されていた内容と同一であり,これらの技術情報については,東洋車輌が保有者である可能性が十分にあり,そうでないとしても,原告にとっては既知の情報であることからすると,原告が不正取得等したとも認められない。 もっとも,営業秘密目録記載3(3)において,●(省略)●とされている点は,東洋車輌の図面では,スタビライザの外径は50mmとした上で,「2) 焼入れ焼戻し硬度 HRC 44~48」とされているが,スタビライザの外径を●(省略)●すること及び焼入れ焼戻し硬度の下限値を●(省略)●ことの特段の有用性について,これを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,営業秘密目録記載3(3)の情報については,保有者性,不正取得等又は有用性を認めることができず,営業秘密と認めることはできない。 (9) 営業秘密目録記載4(1)についてア被告KAZが主張するこの営業秘密は,多軸車であるトレーラーは早く舵が切れないとトラクターに追随できないことから,●(省略)●ネック部の操舵機構としたというものである(乙A63)。 イ証拠によれば,次の事実が認められる。 ① 日通商事株式会社は,平成18年3月頃,オランダのトレーラー部品販売会社である「TRIDEC」製のステアリングシステムを備えたトレーラーを販売した(甲A5 証拠によれば,次の事実が認められる。 ① 日通商事株式会社は,平成18年3月頃,オランダのトレーラー部品販売会社である「TRIDEC」製のステアリングシステムを備えたトレーラーを販売した(甲A52及び53)。同ステアリングシステムは,ステアリングロッドがスライドする機構によって,左右の油圧リングが伸縮し,車輪が傾く操舵機構である。 ② リング機構をスライドロットがスライドする機構のトレーラーの場合は,通常の寸法的制約の下では,ステアリングを●(省略)●切ったときに後輪が最大の傾きになる(甲A32,弁論の全趣旨。なお,乙A63の左上の図面では,甲A32のAに相当部分の長さが●(省略)●,同Bに相当する部分の長さが●(省略)●とされていることから,甲A32の表に当てはめると,舵を●(省略)●切ったときに最大旋回角度90度になることになる。)。 -51-ウ前記イ①のとおり,営業秘密目録記載4(1)と同様の構造を有したトレーラーが平成18年に販売されていることからすれば,その基本構造は公知であるということができる。そして,前記イ②のとおり,同営業秘密は,この公知の基本構造に,通常の寸法的制約下での寸法を採用したにすぎないから,被告らが主張する不正取得等の基準時において,営業秘密目録記載4(1)については公知であるというべきである。この点につき被告KAZは縷々主張するが,その趣旨は明らかでなく,前記認定を覆すに足りない。 よって,営業秘密目録記載4(1)の情報については,営業秘密性を認めることはできない。 (10) 営業秘密目録記載4(2)についてア被告KAZが主張するこの営業秘密は,工作番号BC2023のロット組み換え図面(乙A43)において,各車輪を何度回すかを算出したステアリングの角度とその角度に対応するステアリングロッ についてア被告KAZが主張するこの営業秘密は,工作番号BC2023のロット組み換え図面(乙A43)において,各車輪を何度回すかを算出したステアリングの角度とその角度に対応するステアリングロッドの穴の位置の組合せをいうものである。 イ証拠(甲A34の1ないし3,乙A43の1ないし3)によれば,原告がヤマガタに納入したトレーラーのロット部分の図面と,上記BC2023のロット組み換え図面とでは,設定されているステアリングの角度が全く異なるものであることが認められる。そして,被告KAZの主張によれば,ステアリングロットの穴の位置は,ステアリングの角度に対応するのであるから,ステアリングの角度が異なれば,穴の位置も異なるものと推認される。 よって,原告が営業秘密目録記載4(2)の情報を使用した事実を認めることはできないから,その余の点について検討するまでもなく,被告KAZにその主張に係る損害が発生したとは認められない。 (11) 営業秘密目録記載4(3)について被告KAZが主張するこの営業秘密は,小ネックのリレー配線(乙A44)をいうものである。 -52-しかし,被告KAZは,配線は,トラクタ側とトレーラー側の電極の配置・構造により基本的に定まると考えられるところ,乙A44の配線がそれが特殊なもので,特段の有用性があると認めるに足りる証拠はない。また,原告の配線図(甲A85の1)は,被告KAZの上記配線図と異なる部分もあり,被告KAZの配線図の特徴的部分が不明である以上,原告がそれを使用していると認めることもできない。 よって,営業秘密目録記載4(3)の情報については,営業秘密性を認めることはできず,また,使用の事実も認められないから,被告KAZにその主張に係る損害が発生したとは認められない。 (12) 営業秘密目録記 業秘密目録記載4(3)の情報については,営業秘密性を認めることはできず,また,使用の事実も認められないから,被告KAZにその主張に係る損害が発生したとは認められない。 (12) 営業秘密目録記載5について被告らは,営業秘密目録記載5に係る工作番号BC2036に対応するトレーラーを原告が製造,販売した旨の主張はしておらず,本件において,これを認めるに足りる証拠もない。 よって,原告が営業秘密目録記載5の情報を使用した事実を認めることはできないから,その余の点について検討するまでもなく,被告KAZにその主張に係る損害が発生したとは認められない。 (13) 小括以上によれば,被告らの営業秘密の不正取得・不正使用に基づく不正競争行為の主張は理由がない。 8 争点4(不法行為(被告ビルドの設計図の流用)の成否),争点11(不法行為(被告KAZの設計図の流用)の成否)について(1) 被告らは,原告が被告らから持ち出された設計図を使用してトレーラーを製造販売したとして,原告が,新たな設計図を創造するという困難を一切負わず,それに必要な労力や費用を負担することもなく,被告らの財産的効果にただ乗りして利益を上げたことが不法行為を構成すると主張する。 被告ら自身,被告らの設計図は電子データとして保管されており,そのデータが持ち出されて使用されたと主張していることからすると,被告らの上記主張が,有-53-体物たる設計図についての被告らの所有権に基づく排他的支配権能が侵されたという趣旨でないことは明らかである。したがって,被告らの上記主張は,無体情報としての設計図の記載を原告が無断で取得・使用したことが不法行為を構成するとの趣旨であると解される。 ところで,無体情報としての設計図の利用に関しては,現行法上,それに化体された技術上又は営 情報としての設計図の記載を原告が無断で取得・使用したことが不法行為を構成するとの趣旨であると解される。 ところで,無体情報としての設計図の利用に関しては,現行法上,それに化体された技術上又は営業上の情報を保護する観点から不正競争防止法が営業秘密として保護し,また,その記載の創作性を保護する観点から著作権法が図形の著作物としての保護を与える場合があることにより,一定の要件の下に排他的な使用権ないし使用利益を認めているが,その反面として,その使用権等の付与が国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約することのないようにするため,各法律は,それぞれの知的財産権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,その排他的な使用権等の及ぶ範囲,限界を明確にしている。 上記各法律の趣旨,目的に鑑みると,設計図に記載された無体情報の利用行為が,上記各法律の保護対象とならない場合には,当該設計図上の無体情報を独占的に利用する利益は法的保護の対象とならず,その利用行為は,上記各法律が規律の対象とする無体情報の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である(以上の点につき直接に判示するものではないが,最高裁判所平成23年12月8日判決・民集65巻9号3275頁参照)。 本件での被告らの上記主張は,設計図について営業秘密の不正取得・使用等をいうものではなく,また,著作物としての保護をいうものでもない。したがって,被告らの上記主張の趣旨が,原告が被告らの設計図を無断で取得・使用等すれば,成果へのただ乗りの観点から直ちに不法行為が成立するというのであれば,設計図上の無体情報を独占的に利用する利益を被告らが有するというに等しいから,そのような利益は,たとえ被告らの設計図が多大 れば,成果へのただ乗りの観点から直ちに不法行為が成立するというのであれば,設計図上の無体情報を独占的に利用する利益を被告らが有するというに等しいから,そのような利益は,たとえ被告らの設計図が多大な努力と費用の下に作成されたものであ-54-ったとしても,上記の知的財産権関係の各法律が規律の対象とする無体情報の利用による利益とは異なる法的に保護された利益とはいえない。 もっとも,被告らの上記主張は,原告の無断取得・使用等行為によって,被告らが設計図を使用して営業活動を行う利益を侵害されたとの趣旨であると解する余地があり,その趣旨であれば,営業秘密の保護や著作物の保護とは異なる法的に保護された利益を主張するものと解される。ただし,我が国では憲法上営業の自由が保障され,各人が自由競争原理の下で営業活動を行うことが保障されていることからすると,他人の営業上の行為によって自己の営業活動を行う利益が侵害されたことをもって不法行為法上違法と評価されるためには,その行為が公序良俗違反とみられる程度までに自由競争の範囲を逸脱する場合であることを要すると解するのが相当である。 (2)アそこで,上記の観点から検討するに,本件で被告らが設計図の流用により損害を受けたと主張する原告の行為は,別紙トレーラー販売先一覧表のうち,2軸エアーサスセミトレーラーを除く4社に対するトレーラーの製造販売行為であるところ,原告が受注した各トレーラーの車種,受注時期及び販売時期は次のとおりである(甲A35ないし38,弁論の全趣旨)。 ・ P11 2軸16輪伸縮ステアリング付トレーラー平成26年2月24日受注,平成26年6月2日輸入許可後,納入・港南運輸ネックリフト付2軸16輪中低床トレーラー平成25年10月1日受注,平成26年3月12日輸入許可後,納入 レーラー平成26年2月24日受注,平成26年6月2日輸入許可後,納入・港南運輸ネックリフト付2軸16輪中低床トレーラー平成25年10月1日受注,平成26年3月12日輸入許可後,納入・マルショウ 3軸低床エアサストレーラー平成25年10月8日受注,平成26年1月8日に輸入許可後,納入・ヤマガタ 2軸×3軸コンビネーショントレーラー平成26年4月25日受注,平成27年4月30日輸入許可後,納入イこれらのうち,P11関係については,前記争点3及び5のうち取引先への取引解除の仕向けに関する判断で述べたとおり,P11は,もともと被告ビルドに-55-2軸16輪伸縮ステアリング付トレーラーを発注し,納入予定日が平成26年1月となっていたにもかかわらず,同年2月時点においても未だ中国の工場での製造に着手もされていなかったことを理由に,被告ビルドとの契約を解除し,原告に対し,同種のトレーラーを発注したものである。また,社長のP12は,被告ビルドとの契約解除を決意するに至った浦東一汽の工場訪問の際,同行していたP7に対し,原告において,同種のトレーラーの製造は可能かと問い,そのまま原告に発注したものであり,原告の側からP11に対し,積極的に営業行為をしたことにより受注に至ったような事情を認めるに足りる証拠はない。 これらの経緯からすると,原告が,その設計図面を使用して,被告ビルドの営業活動を妨げたと認めることはできない。 ウまた,港南運輸関係については,同社と被告KAZとの既存の契約が解除されたとの事情はなく,原告の受注当時に,原告と被告KAZとが同じ設計のトレーラーの受注をめぐって具体的に競争をしていたとの事情も認められない。また,先に争点10に関する判断で述べたとおり,港南運輸の代表者の陳述書(乙A100) 当時に,原告と被告KAZとが同じ設計のトレーラーの受注をめぐって具体的に競争をしていたとの事情も認められない。また,先に争点10に関する判断で述べたとおり,港南運輸の代表者の陳述書(乙A100)には,同社が原告にトレーラーを発注したのは,被告KAZに発注したトレーラーの納品が遅れた上に,一部未完成の部分があり,登録手続も被告KAZが行うべきところを同社が自ら行う必要があったからであるとの記載があり,事実経過(15)(38)での港南運輸向けトレーラーの状況は,この記載に沿うものである。 これらからすると,原告が,その設計図面を使用して,被告KAZの営業活動を妨げたと認めることはできない。 エまた,マルショウ及びヤマガタの関係でも,両社と被告KAZとの既存の契約が解除されたとの事情はなく,また,原告の受注当時に原告と被告KAZとが同じ設計のトレーラーの受注をめぐって現実に競争をしていたとの事情も認められないから,原告が,その設計図面を利用して営業活動を行ったとしても,それをもって原告が被告KAZの営業活動を不当に妨げたと認めることはできない。 (3) なお,被告らは,P10が上海事務所で平成25年7月8日から1か月半の-56-間勤務した後,同事務所のCADデータが消去されていたことが発覚した(乙A39及び40)として,P9がP10に上海事務所で保管されていた被告ら作成の設計図のCADデータを持ち出させ,これをP9がCADデータの状態で原告に送付したものと主張し,その理由として,P9は,職務上,正当にCADデータを入手しえないものであるから,P9がCADデータを有しているとすれば,それは不当な方法により入手したことの証左である,と主張する。 本件において,被告ら代表者がP9に対して,職務に関して設計図のデータを交付することがあった ,P9がCADデータを有しているとすれば,それは不当な方法により入手したことの証左である,と主張する。 本件において,被告ら代表者がP9に対して,職務に関して設計図のデータを交付することがあったことについては争いがないところ,そのデータがCADであったか,PDF又は紙媒体であったかについては争いがある。 この点について,被告ら代表者は,P9が勤務する製造部門ではCADデータは必要ないことから,P9にCADデータを送付するなどありえないと供述する(被告ら代表者本人21頁)。しかし,被告ら代表者は,同時に,被告KAZでは,設計部門から製造部門に設計図を送付する際,転送防止措置を講じたり,設計図に直接パスワードをかけたりする措置は講じておらず,図面の廃棄回収についても,ルール上は適正に回収ないし焼却させることになっていたものの,実際はP9に任せており,廃棄状況の確認も,1,2年に1回程度しかしていなかったとも供述しており(被告ら代表者本人44頁ないし47頁),この供述に照らすと,CADデータを製造部門に送付しないという理由の中に,図面の流用防止という観点を見出すことはできない。また,この供述からすると,被告KAZでは,所定のルールとは異なり,図面の管理を含め,かなりの部分で製造部門の責任者であるP9に一任していたという事情が見受けられることから,P9が紙媒体として現場に配布するなど適切な措置を講じることを見込んで,被告ら代表者からP9に対し設計図のCADデータが送付された可能性を排斥することはできない。 そして,本件においては,実際にP9に設計図が送付されていたメールも証拠として提出されておらず,P10が上海事務所からCADデータを持ち出した事実を裏付ける的確な証拠がないことも併せ考慮すると,結局,P9が原告に送付したC-57-AD が送付されていたメールも証拠として提出されておらず,P10が上海事務所からCADデータを持ち出した事実を裏付ける的確な証拠がないことも併せ考慮すると,結局,P9が原告に送付したC-57-ADデータについては,P9が職務上被告ら代表者から受け取り,所持していたものである可能性を否定することはできない。 なお,被告らは,P9が原告に送付したエアサス図面21枚(乙A17)のうち12枚は,被告らが小川建機向けに作成した図面そのものではなく,平成25年9月10日付けで,原告がその頃に受注を予定していたマルショウの意向に沿う形状に修正が加えられたものであり,このことは,P9が独断で乙A17に係るエアサス図面を送付したものではなく,原告がP9に命じて送付させたものであることの証左であると主張するが,そうであるとしても,前記の判断を左右するものではない。 (4) 以上のとおり,原告が,被告らの設計図を利用して,被告らの営業活動を妨げたと認めることはできず,設計図自体も,P9が職務上被告ら代表者から交付され,手元にあった図面のCADデータを原告に送付した可能性が否定できないのであって,これらに加え,原告が作成した設計図と被告らが作成した設計図には原告が主張するような相違があり,原告が被告らの設計図をそのまま流用してトレーラーを製造したわけではないこと(別紙図面対応表掲記の各書証)も考慮すると,原告が被告らの設計図を使用して原告作成図面を作成したのだとしても,それが自由競争の範囲を超えた公序良俗に反する行為とは認められないから,不法行為を構成するとはいえない。 9 争点14(被告KAZの事業壊滅等を目的とした全体として一連の不法行為の成否)について(1) 被告KAZは,本争点において,これまで不法行為ないし不正競争行為として主張してきた行為 ない。 9 争点14(被告KAZの事業壊滅等を目的とした全体として一連の不法行為の成否)について(1) 被告KAZは,本争点において,これまで不法行為ないし不正競争行為として主張してきた行為のほかに,複数の行為が不法行為を構成するとした上で,さらに,それら行為は,全て被告KAZの事業を壊滅させ,その後は被告KAZから持ち出した設計図を使って特殊トレーラーの製造販売を自由に行うことを企図した一連の不法行為を構成すると主張する。そこで,本争点においては,まず,本争点で被告らが主張する個別の行為の不法行為の成否につき検討し,その上で,原告の行-58-為が全体として不法行為が成立するかにつき検討する。 (2) 原告による引き抜きについて被告KAZは,原告が被告KAZの従業員を引き抜いたことが不法行為を構成すると主張する。 確かに,事実経過によれば,P4らは,平成25年6月頃から,原告前代表者に対して相談をし,設計担当者のP13との面接を求めたり,海外出張に必要なパスポート取得準備を促したりする(事実経過(6)(8)(9))など,原告におけるトレーラー事業部立上げを意識した行動に出ていたことが認められる(この点,証人P5及び証人P4は,この時期に原告前代表者に相談していたのは,被告KAZの再建についてであり,設計担当者のP13と原告前代表者を面会させようとしたのは,被告KAZにおいてP13の採用を検討するという前提であったと証言するが,被告KAZの経営再建の相談のために原告代表者にパスポート取得準備を促すことは考え難い上,P13を被告ら代表者と面会させたことも被告ら代表者にP13の話をしたこともないというのであり,また,P13は同年10月頃には原告に入社していることからすれば,この証言に信用性はなく,採用することができない。)。そ 表者と面会させたことも被告ら代表者にP13の話をしたこともないというのであり,また,P13は同年10月頃には原告に入社していることからすれば,この証言に信用性はなく,採用することができない。)。そして,同年7月26日の食事会以降,P4らは,原告のトレーラー事業の準備を急速に本格化させ,被告KAZを退職して原告に入社したと認められる。しかし,事実経過からすれば,被告KAZでは従業員らの給与の遅配も生じるような状況であった(同(3))ところ,同年6月29日には,被告ら代表者は,経営改善のために従業員の雇用形態及び労働条件を変更する方針を決め(同(10)),同年7月6日には被告ら代表者と従業員らとの間で話し合いが持たれた(同(12))が,被告ら代表者から労働条件の変更の提案がなされたのを受け,従業員らが退職の意向を示すと,被告ら代表者は,同月20日に,P4に対し,各従業員について雇用を継続するか否かの意見を述べ,全員が離職した場合の方針まで述べた(同(13))上で,退職条件等を取りまとめるようP4に指示し,これを受け,同月22日に,P4が,P5,P6,P7,P8,P4,P14及びP15の各退職希望時期をまとめて被告ら代表-59-者に報告して退職するに至り(同(14)),その後の同年9月9日には,原告前代表者に対し,ガンと化した社員に半年間苦しめられたがこの社員を一掃したと述べたこと(同(35))が認められる。 これらの事情からすれば,もともとP4らが被告KAZからの退職を決意したのには,被告KAZにおける給与の遅配や労働条件変更の提案が影響しており,被告ら代表者も,「ガンと化した社員」として,全員が退職することを許容する姿勢であったと認められる。そして,P4らは,退職の意向を固める以前から,原告前代表者と接触していたものの,その時点で おり,被告ら代表者も,「ガンと化した社員」として,全員が退職することを許容する姿勢であったと認められる。そして,P4らは,退職の意向を固める以前から,原告前代表者と接触していたものの,その時点では原告におけるトレーラー事業立上げの準備は具体化していないから,その可能性を探るにとどまっていたと認められ,その後に退職を決意し,食事会を経て,トレーラー事業立上げの具体的準備が開始されたものと認められる。そうすると,P4らが被告KAZを退職して原告に入社したことが,原告による引き抜きによるものということはできず,むしろ,被告KAZを退職する意向を固めたP4らの要請により,原告前代表者が原告においてトレーラー部門の立上げ及びP4らの採用を最終的に決意するに至ったものというべきである。 また,P9に関しても,同人が,原告と開楽トレーラーとの契約締結に向けて協力したり,原告に対して設計図面を送付したりした時期は,いずれも同年8月以降であるところ,事実経過(15)のとおり,被告ら代表者は,同年7月23日の時点で既にP9を解雇する意向を有していたというのであるから,原告がP9を引き抜いたと認めることはできない。 なお,事実経過(30)のとおり,同年8月24日において,P7がP4に宛てたメールでは,揚州通華からの工員引き抜きを示唆する内容の記載があるが,これが被告らの従業員であるか否かは不明であり,製造委託先の従業員を引き抜くことが直ちに被告KAZに対する不法行為を構成するとはいえない。 よって,原告による被告KAZ従業員の引き抜き行為による不法行為を認めることはできない。 -60-(3) 中組代表者に対する虚偽事実の告知について被告KAZは,P4とP5が中組代表者に対し被告ら代表者が会社の金を使い込んでいるなどと言いふらし,中組からの資金 ことはできない。 -60-(3) 中組代表者に対する虚偽事実の告知について被告KAZは,P4とP5が中組代表者に対し被告ら代表者が会社の金を使い込んでいるなどと言いふらし,中組からの資金援助を妨害したなどと主張し,事実経過(34)のとおり,平成25年9月9日に,被告ら代表者がP4に対し,中組から聞いたとして,退職した社員が客先でおかしな話をするとのメールをしたことが認められる。 しかし,このメールによってもP4らがどのような話をしたのかは不明であり,他に上記主張事実を認めるに足りる的確な証拠はない。 よって,原告による中組代表者に対する虚偽事実の告知による不法行為を認めることはできない。 (4) 被告らの重要な情報の不正取得についてア事実経過のとおり,P4は,原告前代表者に対し,平成25年6月12日(事実経過(7)),同年7月23日(同(15)),同年9月17日(同(40))及び同月25日(同(45))に,被告KAZの業務状況を報告していたと認められる。 ところで,証人P4は,これらの業務報告をしていた目的は,同年3月12日に原告が被告らに預金通帳と銀行取引印を返還するに当たり,原告前代表者から,今後は被告らの資金情報が入らなくなることから,その報告をするよう求められたためであると証言している(同証人6,7頁)。そして,この証言は,それまで原告が,被告らの預金通帳と銀行取引印を預かることにより,被告らへの入金状況を把握でき,その預金口座から貸付金の返済を受けることもできていたことからすると,原告が求めたこととして合理的であり,上記のP4の報告が,受注したトレーラーの製造・納品状況やそれに伴う入金見込みを主たる内容としていることとも合致している(これらの報告でされている取引先との交渉状況の報告も,資金見込みを把握する ,上記のP4の報告が,受注したトレーラーの製造・納品状況やそれに伴う入金見込みを主たる内容としていることとも合致している(これらの報告でされている取引先との交渉状況の報告も,資金見込みを把握するためのものであると見ることが十分可能である。)。また,被告ら代表者も,同年9月9日の原告前代表者へのメールにおいて,P5とP6が原告前代表者に営業報告をしていたことを前提としていること(事実経過(35))からしても,自然なこ-61-とである。したがって,上記の証人P4の証言は信用でき,被告ら代表者は,P4が被告らの資金状況及び業務状況を報告することを承認していたと認められる。そうすると,P4が被告KAZの従業員であった時期の上記報告については,被告KAZの業務として,被告ら代表者の承認の下に行っていたものと認められるから,違法性を認めることはできない。 他方,P4は,被告KAZを退職し,残務業務をしつつ原告のトレーラー事業の準備を本格的に行うようになった平成25年9月以降においても,上記の報告を行っているが,その趣旨については,P4自身,退職後は原告で働くことになっていたことから,原告の貸付金回収のために被告KAZの資金情報を報告していたと証言している(同証人7頁)。そして,P4は,同月30日の原告前代表者宛てのメールの下書きでは,原告による被告KAZの売掛債権差押えの影響について記載している(事実経過(47))ことからすると,P4は,残務業務のために被告KAZに出入りしていた立場を利用して,専ら原告の業務として,原告が債権差押えをするための対象債権の情報を原告に提供していたものということができる。 しかし,争点1についての判断のとおり,被告KAZは,原告に対して貸金債務を負っており,その弁済期も経過していたと認められるから,任意に弁済を 債権の情報を原告に提供していたものということができる。 しかし,争点1についての判断のとおり,被告KAZは,原告に対して貸金債務を負っており,その弁済期も経過していたと認められるから,任意に弁済をしないときには,最終的に強制執行を受けてもやむを得ない立場にあったといえる。また,上記のようなP4による情報提供の結果,原告が債権差押えをするに至ったのは,被告KAZの港南運輸に対する売掛債権のみである(同(50))ところ,被告KAZが港南運輸からトレーラーを受注し,製造していることは,既に同年6月12日及び7月23日に報告されていたことからすると,原告は,被告KAZが港南運輸に対して売掛債権を有していることを既に把握していたと認められ,P4が同年9月にした報告や下書きでは,港南運輸関係での売掛債権については改めて触れられていない。これらの事情からすると,P4が被告KAZを退職した後に原告に対してした報告は,結局において被告KAZの被害に具体的なつながりを持たなかったと認められる。さらに,P4は,同月30日のメールの下書きでは,原告前代表者に-62-対し,被告KAZの売掛債権を差し押さえることの問題点を指摘し,その動きを止めようとしていることがうかがえる。これらの事情を勘案すると,P4の平成25年9月以降の報告行為も,なお違法性を有するとまでは認められないというべきである。 イ P9のP7に対するエアサス図面の送付(事実経過(36))は,先に争点4及び11について述べたところからすると,不法行為を構成するとは認められない。 (5) 以上のとおり,被告KAZが主張する個別の不法行為については,いずれもその成立を認めることはできない。 また,これまで検討してきた行為を一連のものとして見ると,確かに原告前代表者は,被告らに対する貸付金の回収 ,被告KAZが主張する個別の不法行為については,いずれもその成立を認めることはできない。 また,これまで検討してきた行為を一連のものとして見ると,確かに原告前代表者は,被告らに対する貸付金の回収を図るときには,被告らの事業が継続できなくなるおそれがあると認識していたとは認められる(証人P1・13頁)。しかし,被告らに対して多額の貸付金を有し,その回収を図っていた原告が,被告らを壊滅させる目的を有していたとは直ちに考え難く,自らが債権を回収し,トレーラー事業において利益を上げるという目的を超えて,専ら原告を壊滅させることを企図して種々の行為に及んでいたとまで認めることはできない。したがって,全体を一連の行為として捉えてみても,自由競争の範囲を逸脱した不法行為を構成するとは認められない。 10 結論以上の次第で,その余の争点につき検討するまでもなく,大阪簡易裁判所平成25年(ロ)第5016号事件の仮執行宣言付支払督促のうち,平成25年11月20日時点の被告KAZの原告に対する残債務6433万0673円及びこれに対する同月21日から支払済みまで約定の年1割の遅延損害金並びに支払督促申立手続費用11万3630円及び仮執行宣言手続費用1140円の支払を命じる限度で認可を求め,大阪簡易裁判所平成25年(ロ)第5017号事件の仮執行宣言付支払督促の認可を求める原告の請求にはいずれも理由があることからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 -63- 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官髙松宏之 裁判官田原 髙松宏之 裁判官田原美奈子 裁判官大川潤子
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