判決上記の者に対する入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害、受託収賄、加重収賄、収賄被告事件について、当裁判所は、検察官唐澤英城及び私選弁護人工藤啓介各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人を懲役2年6月に処する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 前橋地方検察庁で保管中の焼酎1本(令和5年領第76号符号1)を没収する。 被告人から6万8355円を追徴する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、令和2年4月1日から令和4年10月31日までの間、a市副市長として、a市長を補佐し、同市長の命を受け政策及び企画をつかさどり、その補助機関である同市総務部契約監理課の職員が担任する建設工事等の入札及び契約等に関する事務を指揮監督する職務に従事していたもの、Aは、土木工事の請負、施工等を目的とするX株式会社の代表取締役として、同社の業務全般を統括していたもの、Bは、管工事業、水道施設工事業等を目的とするY株式会社の代表取締役として、同社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、第1 Bから、令和2年5月23日頃、a市●●所在の被告人方(以下「被告人方」という。)において、同市が同年6月1日に執行する予定の「上川淵地区配水管布設替工事(施震第3号)」の指名競争入札につき、入札に先立ち、その予定価格を教示してもらいたい旨の請託を受け、その趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、焼酎1本(販売価格9800円)の供与を受け、もって自己の職務に関し、請託を受けて賄賂を収受した 第2 同市が令和2年6月1日に開札執行した前記「上川淵地区配水管布設替工事(施震第3号)」の指名競争 格9800円)の供与を受け、もって自己の職務に関し、請託を受けて賄賂を収受した 第2 同市が令和2年6月1日に開札執行した前記「上川淵地区配水管布設替工事(施震第3号)」の指名競争入札に関し、Y株式会社に同工事を落札させようと企て、Bと共謀の上、前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、同年5月27日頃、同市内において、携帯電話により、Bに対し、前記入札に関する秘密事項である同工事の予定価格が1813万9000円(税込み)である旨教示し、よって、同社をして、同月28日、前記入札において、前記予定価格に近接する1610万円(税抜き)で入札させた上、同年6月1日、同社に同工事を落札させ、もって偽計を用いるとともに入札等に関する秘密を教示することにより、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした第3 Bから、別表の「謝礼対象の不正行為」欄記載のとおり、令和2年6月1日から令和3年1月26日までの間にa市が執行した3件の公共工事の各指名競争入札に関し、自己が職務上知ることができた入札に関する秘密事項である各予定価格をBに教示して職務上不正な行為をしたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、別表の「授受日」欄記載のとおり、令和2年6月10日頃から令和3年2月4日頃までの間、被告人方において、別表の「授受態様」欄記載の態様で、3回にわたり、別表の「物品」欄記載の果物2個等5点(販売価格合計3万8540円)の供与を受け、もって、それぞれ自己の職務上不正な行為をしたことに関し、賄賂を収受した第4 同市が令和2年6月26日に開札執行した「粕川地区配水管布設替工事(施道第2号)」の指名競争入札に関し、X株 与を受け、もって、それぞれ自己の職務上不正な行為をしたことに関し、賄賂を収受した第4 同市が令和2年6月26日に開札執行した「粕川地区配水管布設替工事(施道第2号)」の指名競争入札に関し、X株式会社に同工事を落札させようと企て、Aと共謀の上、前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、同月4日頃、同市内において、携帯電話により、Aに対し、前記入札に関する秘密事項である同工事の予定価格が2305万6000円(税込み)である旨教示し、よって、同社をして、同月2 3日、前記入札において、前記予定価格に近接する2050万円(税抜き)で入札させた上、同月26日、同社に同工事を落札させ、もって偽計を用いるとともに入札等に関する秘密を教示することにより、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした第5 Bから、令和2年9月2日頃、被告人方において、同市が同月9日に執行する予定の「桂萱地区溝蓋設置工事(道水第7号)」の指名競争入札につき、入札に先立ち、その予定価格を教示してもらいたい旨の請託を受け、その趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、焼酎1本(販売価格2万15円)の供与を受け、もって自己の職務に関し、請託を受けて賄賂を収受した第6 同市が令和2年9月9日に開札執行した前記「桂萱地区溝蓋設置工事(道水第7号)」の指名競争入札に関し、Y株式会社に同工事を落札させようと企て、Bと共謀の上、前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、同月3日頃、同市内において、携帯電話により、Bに対し、前記入札に関する秘密事項である同工事の予定価格が2356万2000円(税込み)である旨教示し、よって、同社をして、同月7日、前記入札 に反し、同月3日頃、同市内において、携帯電話により、Bに対し、前記入札に関する秘密事項である同工事の予定価格が2356万2000円(税込み)である旨教示し、よって、同社をして、同月7日、前記入札において、前記予定価格に近接する2100万円(税抜き)で入札させた上、同月9日、同社に同工事を落札させ、もって偽計を用いるとともに入札等に関する秘密を教示することにより、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした第7 同市が令和2年10月13日に開札執行した「農業水路等長寿命化・防災減災事業荒砥北部地区パイプライン弁類改修工事(第2号)」の指名競争入札に関し、同社に同工事を落札させようと企て、Bと共謀の上、前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、同月5日頃、同市内において、携帯電話により、Bに対し、前記入札に関する秘密事項である同工事の予定価格が1488万3000円(税込み)である旨教示し、よって、同社をして、同月9日、前記入札において、前記予定 価格に近接する1310万円(税抜き)で入札させた上、同月13日、同社に同工事を落札させ、もって偽計を用いるとともに入札等に関する秘密を教示することにより、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした第8 Bから、同市が執行した公共工事の指名競争入札に関し、入札に先立ち、その予定価格の教示を受けるなど同社に有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、令和2年12月14日頃、被告人方において、焼酎1本(販売価格2万15円。令和5年領第76号符号1)の供与を受け、もって自己の職務に関し、賄賂を収受した第9 されるものであることを知りながら、令和2年12月14日頃、被告人方において、焼酎1本(販売価格2万15円。令和5年領第76号符号1)の供与を受け、もって自己の職務に関し、賄賂を収受した第9 同市が令和3年1月26日に開札執行した「上川淵地区配水管布設替工事(施道第20号)」の指名競争入札に関し、同社に同工事を落札させようと企て、Bと共謀の上、前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、同月18日頃、同市内において、携帯電話により、Bに対し、前記入札に関する秘密事項である同工事の予定価格が2295万7000円(税込み)である旨教示し、よって、同社をして、同月22日、前記入札において、前記予定価格に近接する2020万円(税抜き)で入札させた上、同月26日、同社に同工事を落札させ、もって偽計を用いるとともに入札等に関する秘密を教示することにより、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をしたものである。 (事実認定の補足説明)第1 争点弁護人は、判示第1、第3の別表番号1ないし3、第5及び第8の事実について、いずれも判示記載の各日時場所で、被告人がBから判示記載の物品を受領した(判示第3の別表番号1については被告人の妻が受領)ことは争わないが、被 告人にはいずれも賄賂性の認識が無かったから無罪であると主張し、被告人もこれに沿う供述をする。 当裁判所は、上記いずれの事実についても、被告人には賄賂性の認識があったと判断したので、以下、理由を説明する。 第2 判示第1の事実について 1 関係各証拠によれば、以下の各事実が認められる。 ⑴ 平成29年頃、当時a市の公営企業管理者であった被告人は、Y株式会社の代表取締役であるBに対し、初めて公共工事の予定価格を 1の事実について 1 関係各証拠によれば、以下の各事実が認められる。 ⑴ 平成29年頃、当時a市の公営企業管理者であった被告人は、Y株式会社の代表取締役であるBに対し、初めて公共工事の予定価格を教示し、公営企業管理者を辞職した後である平成30年7月及び同年8月頃にも、Bに対し、公共工事の予定価格を教示したことがあった。 ⑵ 令和2年2月実施のa市長選挙で、Bは、被告人が応援する候補者とは別の候補者を応援し、Bと被告人は対立する関係になった。同選挙では、被告人が応援する候補者が当選し、被告人は同年4月にa市副市長に就任した。 ⑶ Bは、令和2年6月1日に開札執行予定の上川淵地区配水管布設替工事(施震第3号。以下「上川淵第3号工事」という。)を落札したいと考え、被告人に同工事の予定価格を再び教えてもらいたいと思った。そこで、同年5月23日頃、Y株式会社の当時の会長であったCとともに被告人方を訪問し、被告人に対して、持参した焼酎1本(販売価格9800円)を渡した。 ⑷ 同月27日頃、被告人は、Bに対し、電話をかけ、上川淵第3号工事の予定価格を教示した。なお、同月23日頃の訪問から同月27日頃の電話までの間に、Bと被告人が連絡をとったことはなかった。 2 Bが被告人に焼酎1本を渡した際の状況について⑴ Bの供述Bは、公判廷において、同月23日頃の訪問は、被告人の副市長就任のお祝いと上川淵第3号工事の予定価格を教示してもらう趣旨であったが、Cには予定価格の話は伝えていなかったので、応接間で選挙の話をしてから、帰 る際、先にCが玄関外へ退出した後、被告人に対し、「また金額のほうをお願いしたい」との旨を言いながら焼酎1本を渡し、その際、上川淵の工事であることは伝えたと思う旨供述する。 上川淵第3号工事の予定価格を教示 玄関外へ退出した後、被告人に対し、「また金額のほうをお願いしたい」との旨を言いながら焼酎1本を渡し、その際、上川淵の工事であることは伝えたと思う旨供述する。 上川淵第3号工事の予定価格を教示してもらう趣旨で訪問したBが、工事名を被告人に伝えることは自然である。加えて、訪問日から同工事の開札予定日まで1週間程度しかないのであるから、訪問時に工事名を伝えて具体的な依頼をしていなければ、Bから再度速やかに、被告人に対して連絡をしなければならないところ、Bはそのような連絡はしていない。それにもかかわらず、Bの訪問からわずか4日後に、被告人がBに電話をし、同工事の予定価格を教えたというのであるから、同月23日頃の時点で、Bが焼酎を渡す際に、被告人に対して上川淵という工事名を伝えた上で、「また金額のほうをお願いしたい」との旨を言ったとの供述は信用できる。 ⑵ 被告人の供述被告人は、公判廷において、Bが焼酎を渡す際に、工事名については言及しなかった旨供述するが、被告人の公判供述を前提とすると、Bから工事名等を特定した具体的な依頼がないにもかかわらず、被告人の方からわざわざBに電話をしていることになり、不自然である上、工事名に言及していたという捜査段階の供述から変遷があり、被告人の公判供述は信用できない。 ⑶ 以上によれば、Bが、被告人に対し、焼酎1本を渡した際、上川淵の工事であることを伝えた上で、また金額をお願いしたいと伝えたことが認められる。 3 被告人の認識について前記1及び2⑶で認定した事実によれば、被告人は、従前から公共工事の予定価格を教示していたBから、「また金額のほうをお願いしたい」との旨を言われたのであるから、公共工事の予定価格を教示してもらいたいという意味であることは容易に理解できるし、さらに、上川淵の 工事の予定価格を教示していたBから、「また金額のほうをお願いしたい」との旨を言われたのであるから、公共工事の予定価格を教示してもらいたいという意味であることは容易に理解できるし、さらに、上川淵の工事名も伝えられて、焼酎 を渡されれば、Bが、同工事の入札に先立って、その予定価格を教示して欲しいために焼酎を渡してきたことは容易に認識し得たといえる。 これに対し、被告人は、公判廷において、Bから渡された焼酎は、市長選のお詫びと副市長就任のお祝いの趣旨であって、賄賂であるとは全く思わなかったとの供述をする。しかし、副市長就任から1か月以上経っていることに加え、前記で認定した被告人とBの当日のやり取りに照らせば、焼酎を渡してきた理由が、副市長の就任祝いなどだけではなく、公共工事の予定価格を教示してもらいたいという趣旨を含むことは容易に認識できるのであって、賄賂の趣旨が全くないと思ったとの供述は不合理であり信用できない。 4 小括その他弁護人の主張を踏まえても、前記3の被告人の認識の推認を覆すような事情はなく、被告人は、令和2年5月23日頃に焼酎を渡された際、それが上川淵第3号工事の予定価格を教えてほしいという請託の下に供与されるものであることを知りながら、焼酎1本の供与を受けたといえ、賄賂性の認識が認められる。 第3 判示第3の別表番号1の事実について 1 関係各証拠によれば、以下の各事実が認められる。 ⑴ 令和2年5月27日頃、被告人はBに対し、上川淵第3号工事の予定価格を教示し、その結果、同年6月1日、Y株式会社が同工事を落札した。 ⑵ 同日、Bは被告人に対し、「色々ありがとうございました無事に落札出来ました、今後とも宜しくお願いします。」とラインでメッセージを送り、その頃、被告人もそのメッセージを 社が同工事を落札した。 ⑵ 同日、Bは被告人に対し、「色々ありがとうございました無事に落札出来ました、今後とも宜しくお願いします。」とラインでメッセージを送り、その頃、被告人もそのメッセージを認識した。 ⑶ 同月10日頃、Bは、被告人から予定価格を教えてもらったことで落札ができたことに対するお礼と、今後も予定価格を教えてもらいたいという趣旨で、メロン2個(販売価格合計1万2960円)と、耶馬美人という焼酎1本(販売価格3980円)を被告人方に持参したが、被告人が不在だったの で、被告人の妻に対して渡した。 2 被告人の認識について前記認定事実によれば、被告人は、令和2年6月1日のBからのラインのメッセージで、被告人が上川淵第3号工事の予定価格を教示した結果、Y株式会社が同工事の落札をしたことを認識できたのであるから、その9日後に被告人が妻を介してBから受け取った物品が、予定価格を教示したことに対する謝礼であることは容易に認識し得たといえる。加えて、被告人は、Bから「今後とも宜しくお願いします」という内容のメッセージも受け取っていたのであるから、Bから受け取った物品が、予定価格を教示したことに対する謝礼だけでなく、今後も同様の取り計らいを受けたい趣旨の下に供与される賄賂であることも容易に認識し得たといえる。 これに対し、被告人は、公判廷において、6月に渡されたからお中元の趣旨だと思い、賄賂ではないと思った旨の供述をする。しかし、6月10日頃はお中元と考えるには時期が早すぎる上、Bから、お礼等のメッセージが来て、その9日後に物品を渡されたのであるから、予定価格を教えたことに対するお礼等の趣旨を含むことは当然認識できるのであって、その趣旨を全く含まないと考えるのは不合理であり、被告人の前記供述は信用できない。 日後に物品を渡されたのであるから、予定価格を教えたことに対するお礼等の趣旨を含むことは当然認識できるのであって、その趣旨を全く含まないと考えるのは不合理であり、被告人の前記供述は信用できない。 3 小括その他弁護人の主張を踏まえても、前記2の推認を覆すような事情はなく、被告人は、令和2年6月10日頃に供与されたメロンと焼酎が、上川淵第3号工事の予定価格の教示に対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたい旨の趣旨の下に渡されたものだと認識したといえ、賄賂性の認識が認められる。 第4 判示第5の事実について 1 関係各証拠によれば、以下の各事実が認められる。 ⑴ Bは、令和2年9月9日に開札執行予定の桂萱地区溝蓋設置工事(道水第7号。以下「桂萱工事」という。)を落札したいと考え、被告人に同工事の 予定価格を教えてもらうため、同月2日頃に被告人方を訪問した。 Bは、被告人に対し、桂萱工事について、金額のほうをお願いしたいと言い、焼酎「森伊蔵」1本(販売価格2万15円)を手渡した。 ⑵ 同年9月3日頃、被告人は、Bに対し、電話をかけ、桂萱工事の予定価格を教示した。 2 被告人の認識について前記認定事実によれば、被告人は、桂萱工事の予定価格について不正に教示を受けたいという趣旨で、森伊蔵が渡されたことを容易に認識し得たといえる。 これに対し、被告人は、公判廷において、夏に話した焼酎を買ってきてくれたんだと思い、予定価格を教えてほしいという話とはつながっていない旨の供述をする。しかし、工事名を告げられた上で、金額を教えて欲しいとBから言われながら物品を渡されたのであれば、従前からの経緯がある以上、予定価格を教えてほしいという話とつながるはずであり、被告人の前記供述は信用できない。 なお、弁護人は、具体的な請託が しいとBから言われながら物品を渡されたのであれば、従前からの経緯がある以上、予定価格を教えてほしいという話とつながるはずであり、被告人の前記供述は信用できない。 なお、弁護人は、具体的な請託がないと主張するが、桂萱工事について予定価格を教えてほしいとBが言ったことについては、被告人自身も公判廷において供述するに至っているのであり、弁護人の主張は前提を欠くものである。 3 小括その他弁護人の主張を踏まえても、前記2の推認を覆すような事情はなく、被告人は、令和2年9月2日頃に焼酎を渡された際、それが桂萱工事の予定価格を教えてほしいという請託の下に供与されることを知りながら、物品の供与を受けたといえ、賄賂性の認識が認められる。 第5 判示第3の別表番号2の事実について 1 関係各証拠によれば、以下の各事実が認められる。 ⑴ Bは、令和2年10月13日に開札執行予定の農業水路等長寿命化・防災減災事業荒砥北部地区パイプライン弁類改修工事(第2号。以下「パイプラ イン工事」という。)を確実に落札するため、被告人から予定価格を教えてもらおうと考え、同年9月30日、a市役所を訪ね、被告人に対し、パイプライン工事の予定価格の教示を依頼した。 ⑵ 同年10月5日頃、被告人は、Bに電話をかけ、パイプライン工事の予定価格を教示した。 ⑶ 同月13日、Y株式会社がパイプライン工事を落札することができたので、Bは、同日、被告人に対し、「お世話になります。ありがとうございました無事に落札出来ました、後日改めてご挨拶に伺いたいと思いますので、宜しくお願いします。」とラインでメッセージを送り、その頃、被告人もメッセージを認識した。 ⑷ 同月16日頃、Bは、被告人方を訪問し、牛肉1箱(販売価格1万800円)を被告人に渡した。 2 そして くお願いします。」とラインでメッセージを送り、その頃、被告人もメッセージを認識した。 ⑷ 同月16日頃、Bは、被告人方を訪問し、牛肉1箱(販売価格1万800円)を被告人に渡した。 2 そして、Bは、公判廷において、被告人に牛肉1箱を渡した(前記1⑷)際、「先日はお世話になりありがとうございました。今後ともよろしくお願いします」というふうに言った旨供述する。被告人から教示を受けたことで、工事が落札できたことの謝礼であることからすれば、Bが被告人にこのような発言をしたことは自然であって、信用できる。 3 被告人の認識について前記1で認定した事実及び前記の信用できるB供述によれば、被告人は、パイプライン工事の予定価格を教えたBから、落札できたことのお礼や、改めてあいさつに伺う旨の連絡を受けた上で、実際にその3日後に牛肉を手渡され、「先日はお世話になりありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。」との旨を言われ、牛肉を渡されたのであるから、当該牛肉が同工事の予定価格を教えたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたい旨の趣旨の下に供与されるものであることが容易に認識できたといえる。 これに対し、被告人は、牛肉が1万円もするとは思わず、四、五千円くらい の食べ物だから賄賂になるとは思わなかった旨供述する。 しかし、賄賂に当たるか否かについては、物品の種類や金額に限定はなく、職務行為との対価性を有する物品が賄賂に該当することは明らかであり、賄賂にならないと思ったのは被告人の個人的な価値判断にすぎない。被告人が、当該物品が被告人の不正行為に対する対価であること自体を認識していた以上、賄賂性の認識は否定されない。 4 小括その他弁護人の主張を踏まえても、前記3の推認を覆すような事情はなく、被告人は、令 該物品が被告人の不正行為に対する対価であること自体を認識していた以上、賄賂性の認識は否定されない。 4 小括その他弁護人の主張を踏まえても、前記3の推認を覆すような事情はなく、被告人は、令和2年10月16日頃に供与された牛肉が、パイプライン工事の予定価格を教えたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたい旨の趣旨の下に渡されたものであると認識したといえ、賄賂性の認識が認められる。 第6 判示第8の事実について 1 関係各証拠によれば、以下の各事実が認められる。 ⑴ 被告人は、Bに対し、令和2年5月27日頃に上川淵第3号工事の予定価格を、同年9月3日頃に桂萱工事の予定価格を、同年10月5日頃にパイプライン工事の予定価格を教示し、その結果、いずれの工事もY株式会社が落札した。 ⑵ 令和2年12月14日頃、Bは、被告人方を訪問し、被告人に対して、焼酎「森伊蔵」1本(販売価格2万15円)と海苔を渡した。 2 Bが被告人に焼酎等を渡した際の状況について⑴ Bの供述ア Bは、公判廷において、被告人から、年間で3回も予定価格の教示を受けたのが初めてだったため、1年間本当にお世話になりましたという気持ちなどから、被告人方の玄関で、被告人に対し、「1年間いろいろお世話になりました。来年もよろしくお願いします。」と言って、森伊蔵と海苔 を渡した旨供述する。 イ年間で3回もの予定価格の教示を受けたBが、被告人に対し、「1年間いろいろお世話になりました。来年もよろしくお願いします。」と伝えることはごく自然なあいさつであり、このような発言をしたことは信用できる。 ⑵ 被告人の供述被告人は、公判廷において、Bが森伊蔵を渡す際に、「これどうぞ。」とだけ言われたので、お歳暮の趣旨で森伊蔵を渡されたのだと思った旨 り、このような発言をしたことは信用できる。 ⑵ 被告人の供述被告人は、公判廷において、Bが森伊蔵を渡す際に、「これどうぞ。」とだけ言われたので、お歳暮の趣旨で森伊蔵を渡されたのだと思った旨の供述をする。しかし、Bが前記の謝礼等の発言をしていた旨の捜査段階の供述から変遷がある上、既に何度も予定価格を教示したことに関して焼酎を含む食品を受け取っていたBから、焼酎を含む物品を渡された上、銘柄を確認して入手が困難な焼酎であることが分かった後も、返品や返礼などをしていないことからすれば、被告人も渡された森伊蔵が予定価格を教示した謝礼の趣旨を含むものと理解していたものと認められ、被告人の公判供述は信用できない。 3 被告人の認識前記認定事実1及び前記の信用できるB供述によれば、被告人は、年間3回も予定価格の教示をし、かつ、その対価として焼酎を含む食品を渡されていたBから、「1年間いろいろお世話になりました、来年もよろしくお願いします。」と言われ、入手が困難な焼酎である森伊蔵を渡されたのであるから、令和2年内に予定価格を教えてくれたことに対する謝礼及び来年も同様の取り計らいを受けたい旨の趣旨の下に物品を渡されたものであることは認識したものと認められる。 4 小括その他弁護人の主張を踏まえても、前記3の推認を覆すような事情はなく、被告人は、令和2年12月14日頃に供与された焼酎が、同年内に被告人がB に対して予定価格を教えたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたい旨の趣旨の下に渡された物だと認識したといえ、賄賂性の認識が認められる。 第7 判示第3の別表番号3の事実について 1 関係各証拠によれば、以下の各事実が認められる。 ⑴ Bは、令和3年1月26日に開札執行予定であった上川淵地区配水管布設 賄賂性の認識が認められる。 第7 判示第3の別表番号3の事実について 1 関係各証拠によれば、以下の各事実が認められる。 ⑴ Bは、令和3年1月26日に開札執行予定であった上川淵地区配水管布設替工事(施道第20号。以下「上川淵第20号工事」という。)について、落札したいと考え、同月18日頃、被告人に電話をし、被告人から、同工事の予定価格の教示を受けた。 ⑵ 同月26日、Y株式会社が同工事を落札することができたので、Bは、同日、被告人に対し、「ありがとうございました無事に落札出来ました、今後とも宜しくお願いします。」とラインでメッセージを送り、その頃、被告人もメッセージを認識した。 ⑶ 同年2月4日頃、Bは、被告人方を訪問し、被告人に対し、牛肉1箱(販売価格1万800円)を手渡した。 2 そして、Bは、公判廷において、被告人に牛肉1箱を渡した(前記1⑶)際、「いろいろお世話になって、ありがとうございました。また今後ともよろしくお願いします。」と言った旨供述する。被告人から教示を受けたことで、工事が落札できたことの謝礼であることからすれば、Bが被告人にこのような発言をしたことは自然であって、信用できる。 これに対し、被告人は、公判廷において、「これ食べて下さい。」とだけ言われて手渡された旨供述しているが、被告人自身も予定価格を教えたことに対するお礼であるとの認識はあったというのであるから、上川淵第20号工事の予定価格の教示と結びつきのある言葉をBが述べた可能性は高く、被告人の供述は信用できない。 3 被告人の認識 前記認定事実によれば、被告人は、Bのメッセージを受け取った9日後に牛肉を手渡され、世話になった謝礼と今後ともよろしくお願いしますとの旨を言われたのであるから、謝礼及び今後も同様の取り計 前記認定事実によれば、被告人は、Bのメッセージを受け取った9日後に牛肉を手渡され、世話になった謝礼と今後ともよろしくお願いしますとの旨を言われたのであるから、謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたい旨の趣旨の下に供与されたものであることが容易に認識できたといえる。 これに対し、被告人は、四、五千円の食べ物だからもらっていいと思った旨供述する。しかし、前記第5で記載したとおり、職務行為との対価性を有する物品が賄賂に該当することは明らかであり、賄賂にならないと思ったというのは被告人の個人的な価値判断にすぎず、被告人が、当該物品が被告人の不正行為に対する対価であること自体を認識していた以上、賄賂性の認識は否定されない。 4 小括その他弁護人の主張を踏まえても、前記3の推認を覆すような事情はなく、被告人は、令和3年2月4日頃に供与された牛肉が、上川淵第20号工事の予定価格を教えたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたい旨の趣旨の下に渡される物だと認識したといえ、賄賂性の認識が認められる。 第8 結論以上により、被告人は、判示第1、第3の別表番号1ないし3、第5及び第8の各事実について、Bから渡される物品が賄賂であるとの認識を有していたと認められる。 (量刑の理由) 1 本件は、a市副市長であった被告人が、同市発注の公共工事について、工事業者2社の代表取締役にそれぞれ指名競争入札の予定価格を教示し、両社に、予定価格に近接した価格で落札させたという入札談合等関与行為防止法違反、公契約関係競売入札妨害5件(判示第2、第4、第6、第7、第9)と、その教示依頼や謝礼等の趣旨で、うち1社の代表取締役から、賄賂を収受したという加重収賄3件(判示第3の別表番号1ないし3)、受託収賄2件(判示第1、第5)、単純 、第4、第6、第7、第9)と、その教示依頼や謝礼等の趣旨で、うち1社の代表取締役から、賄賂を収受したという加重収賄3件(判示第3の別表番号1ないし3)、受託収賄2件(判示第1、第5)、単純 収賄1件(判示第8)の事案である。 2 入札談合等関与行為防止法違反等についてみると、被告人は、副市長という市政を担う重要な地位にあったにもかかわらず、その立場を利用し、自己が知り得た予定価格を、工事業者から頼まれるままに教示しており、入札の公正さを軽視したものと言わざるを得ない。そして、被告人が予定価格を教示した結果、工事業者は、予定価格に近接した価格で実際に落札しており、本件各犯行は、いずれも公契約に関する入札の公正を現実に害し、その公正に対する社会の信頼を大きく損なう悪質なものである。 3 収賄についてみると、被告人は、副市長として市長を補佐し、市の職員を監督すべき立場にあったにもかかわらず、予定価格の教示をめぐり、6回にもわたって賄賂を受け取ったのであって、公務員の職務の公正及びこれに対する社会の信頼を著しく害する悪質な行為である。また、公判においては、受け取った物品が賄賂だとは思わなかった旨の弁解に終始し、規範意識が鈍麻していると言わざるを得ない。 4 以上によれば、被告人の刑事責任を軽く見ることはできないが、被告人が入札談合等関与行為防止法違反等の点については罪を認めて反省の弁を述べていること、既に副市長を辞職しており、今後は市政に関わらないと述べていること、被告人が高齢であり、前科前歴がないことなどの被告人に酌むべき事情もあるので、これらの事情を総合考慮し、被告人に対しては、主文の懲役刑に処した上、今回に限り、その刑の執行を猶予することとした。 (求刑懲役2年6月、主文同旨の没収及び追徴)令和6年5月14日 るので、これらの事情を総合考慮し、被告人に対しては、主文の懲役刑に処した上、今回に限り、その刑の執行を猶予することとした。 (求刑懲役2年6月、主文同旨の没収及び追徴) 令和6年5月14日 前橋地方裁判所刑事第2部 裁判長 裁判官 山下博司 裁判官 黒田真紀 裁判官 小川梢
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