平成13(わ)135 傷害致死被告

裁判年月日・裁判所
平成13年11月15日 福岡地方裁判所 飯塚支部
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判決文本文2,923 文字)

判決 主文 被告人を懲役5年に処する。 未決勾留日数のうち110日を刑に算入する。 理由 (犯行に至る経緯等)被告人は,平成12年5月に2児をもうけた前妻と離婚し,被告人がアルバイトをしていたスナックで知り合った現在の妻Aと交際を始め,同年7月ころには肩書住居地でA及びその子供であるB,Cとともに同居するようになり,同年9月にAと婚姻したが,2人の子供との養子縁組はしていなかった。被告人は,Aの2人の子供になついてほしいと考え,2人の遊び相手をしたりあやしたりしていたが,同年暮れにAが専業主婦となったこともあり,被告人があやしてもCがあまり笑わずに泣いたりするようになり,次第にCをかわいくないなどと思うようになった。被告人は,被告人になつかず,顔を見て泣くCを次第に憎らしく思うようになり,加えて,Aに頼まれてCの実父であるDを自己の勤務先に頼み込んで就職させたのに,遅刻を繰り返すなどして1週間もしないうちに解雇されたことなどからDを嫌っていたが,CがだんだんDに似ているように感じ,ますますCに悪感情を抱くようになり,平成13年2月ころからは,Cの顔を叩いたり,足首を持って逆さ吊りにするなどの暴行を加えるようになった。被告人は,平成13年5月13日昼過ぎころ,被告人及びAの母親に贈る母の日のプレゼントを買うために大型ショッピングセンターで買い物をしている時に,偶然にDを見掛け,Aの言葉からAがまだDを気にかけていると思って立腹し,そこで買ったプレゼントを各実家を回って双方の母親に渡し,被告 トを買うために大型ショッピングセンターで買い物をしている時に,偶然にDを見掛け,Aの言葉からAがまだDを気にかけていると思って立腹し,そこで買ったプレゼントを各実家を回って双方の母親に渡し,被告人の両親と6名で食事をして同日午後9時ころに自宅に帰った。 (犯罪事実)被告人は,平成13年5月13日午後9時ころ,福岡県嘉穂郡a町大字bc番地d町営b団地e棟f号被告人方において,C(当時1歳3か月)が被告人の顔を見て泣きだした上,Cの顔がDと重なって見えたことから激高し,Cに対し,Cの顔面を手拳で数回殴打し,その両足首を掴んで逆さ吊りにしてCの頭部を畳上に敷かれたカーペットに数回叩き付け,Cの両足首を掴んだまま数回振り上げ,そのままCの後頭部を1回カーペットに叩き付けるなどの暴行を加え,よって,Cに外傷性脳浮腫,硬膜下血腫等の傷害を負わせ,同月14日午前4時14分ころ,同県飯塚市g町h番i号所在のE病院において,Cを外傷性脳浮腫により死亡するに至らしめた。 (法令の適用)罰条刑法205条未決勾留日数の算入刑法21条(量刑事情)本件は,被告人が,前記のとおり,妻の連れ子の1人である被害児が被告人になつかなくなったことから被害児に暴行を加えるようになっていたところ,偶然に被害児の実父に会ったこともあり,被告人を見て泣き出した被害児がその実父と重なって見えたことに激高し,わずか1歳3か月の被害児に対して前記のとおりの暴行を加えて死亡するに至らせたという傷害致死の事案であるが,自分の子供ではない被害児の父親になろうとする者としては余りにも短絡的で,その動機に酌量の余地は全くなく,被告人になつかなかったのもわずか1歳3か月の被害児としては余りにも当然のことで,被害児には何らの落ち度も見られず,かかる幼ない被害児に る者としては余りにも短絡的で,その動機に酌量の余地は全くなく,被告人になつかなかったのもわずか1歳3か月の被害児としては余りにも当然のことで,被害児には何らの落ち度も見られず,かかる幼ない被害児に対して加えられた暴行は執拗で危険極まりない行為であり,それまでにも長期間被害児に対する暴行(虐待)が加えられていたもので,犯行態様は極めて悪く,本来であれば,両親の深い愛情のもとで育てられ,輝かしい可能性が存しているはずであったのに,自らの言葉で自らの意思を伝えることすらできない段階で人生の最後を迎えなければならなかった被害児の無念さは筆舌に尽くし難く,被害児が受けた肉体的・精神的苦痛には甚大なものがあり,発生した結果はまことに重大なもので,犯情は悪く,被告人の刑事責任は重大である。 しかしながら,被告人は,当初こそ否認するかのような供述をしていたものの,捜査段階より事実関係を認め,被害児に謝罪の意思を示し,日々被害児の霊前に手を合わせる生活を続けているなど反省の態度を示していること,今回の初めての逮捕・勾留・正式裁判を通じて被害児に対する謝罪の気持ちを強め,自己の行為を後悔しているものと推察されること,被告人にはこれまで前科・前歴はなく,比較的真面目に社会生活を送ってきていること,一家の支柱として今後も稼働しなければならない立場にあるところ,土木・建築に従事する者として必要な各種資格を取得していること,被告人の雇用主が当公判廷において社会復帰後の被告人の再雇用を考えており,更生に協力する旨を述べていること,被告人の妻であり,被害児の実母は,本件判決後には長女とともに被告人の両親のもとで生活しながら被告人の社会復帰を待ち,被告人の実父ともども,当公判廷において社会復帰後の被告人の更生に協力する旨を述べていることなど,被告人に有利または酌むべ 決後には長女とともに被告人の両親のもとで生活しながら被告人の社会復帰を待ち,被告人の実父ともども,当公判廷において社会復帰後の被告人の更生に協力する旨を述べていることなど,被告人に有利または酌むべき事情も認められる。その他,記録上窺える被告人に有利または酌むべき事情を最大限に考慮したとしても,主文程度の刑の量定をなすことはまことにやむを得ないものといわなければならない。 なお,弁護人の指摘するとおり,子育ての社会環境が変化しており,昨今,親としての自覚のない親,親として何をなすべきなのかを考えない,考えられない親が増え,幼児虐待の事例が散聞され,その一因としての社会的責任がいわれることがあるが,かかる社会現象の存在をもって被告人の刑事責任が軽減されるものではないことはいうまでもない。また,本件についていえば,被害児を身をもって守るべき存在の被告人の妻が,被告人の虐待を止めることができなかったばかりか,本件犯行の後にも安易に大丈夫と考えて病院に被害児を連れて行かなかったことが被害児の死亡に至る一因にもなっていること,被害児の周囲にいる祖父母等の関係者が被告人の被害児への虐待に気付かなかったということも本件結果を惹起していることは否定できず,法的責任はともかくとして,かかる関係者の責任を無視することはできないが,これも被告人の刑事責任を軽減するものではない。 以上の検討の結果を総合して,主文のとおり判決する。 (検察官駒方琢也,弁護人吉村拓出席)(求刑懲役7年)平成13年11月15日福岡地方裁判所飯塚支部裁判長裁判官有吉一郎裁判官大島明裁判官川上宏 裁判長 裁判官 有吉一郎 裁判官 大島明 裁判官 川上宏

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