平成23(ネ)10042 特許権移転登録抹消登録請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成23年10月18日 知的財産高等裁判所 2部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 平成22(ワ)30074
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- 1 -平成23年10月18日判決言渡同日判決原本領収裁判所書記官平成23年(ネ)第10042号特許権移転登録抹消登録請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成22年(ワ)第30074号)口頭弁論終結日平成23年9月15日判決控訴人(被告) 株式会社セコー技研訴訟代理人弁護士滝田 裕被控訴人(原告) ロイズ・アンド・アソシエイツ株式会社訴訟代理人弁護士日野修男 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。」との判決 第2 事案の概要 1 原判決別紙特許権目録記載の本件各特許権の権利者である原告は,被告に本件各特許権を譲渡した事実はないのに,被告に対する不実の移転登録がされていると主張して,本件各特許権に基づき,被告に対して移転登録の抹消登録手続を求めた。 被告は,原告から被告に対する本件各特許権の譲渡がされたことはなく,移転登録手続も原告の意思に基づかない偽造の申請書に基づいてされた事実は認めたが,被告が権利者であったのに,被告から原告代表者に対して本件特許権1ないし5に - 2 -ついては特許権,本件特許権6については特許を受ける権利ないし特許権が譲渡された事実は存しないから,原告は特許権者ではないなどと主張して,原告の本件各請求を争った。 原審は,被告からA(後の原告代表者)への譲渡を証する本件譲渡契約書(甲7)の成立を肯定し,被告がAに対して本件特許権3,4及び本件特許権6に係る特許を受ける権利を譲渡した事実を認めるとともに,付記事項書(甲8の2)の成立を肯定し,被告がAに対して本件特許権1,2,5を譲渡した事実を認め, 告がAに対して本件特許権3,4及び本件特許権6に係る特許を受ける権利を譲渡した事実を認めるとともに,付記事項書(甲8の2)の成立を肯定し,被告がAに対して本件特許権1,2,5を譲渡した事実を認め,かつA(原告代表者)から原告に対する本件各特許権の譲渡の事実を認定して,原告の本件各請求を全部認容した。 2 本件の前提となる事実は原判決「事実及び理由」中の第2の2記載のとおりであり,争点は同第2の3記載のとおりである。 第3 当事者の主張当事者の主張は,控訴審での補充,追加主張を次のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」中の第2の4「争点に関する当事者の主張」に記載のとおりである。 【被告の補充主張】被告に長年勤務したB及びCに確認したところ,本件譲渡契約書等のDの署名が同人の自署による字体ではないとの回答を得ており,DがBに贈った書籍中の署名(乙9)と筆跡が違うことは明らかである。 また,本件譲渡契約書(甲7)では,本件特許権3,4,6を含む合計28件の特許権が合計166万円で原告に譲渡される内容となっているが,本件特許権3等は数億円の価値があるとされていたのに,かかる低額で譲渡されるはずはないし,譲渡代金につき受領証等が作成・提出されていないのは不合理である。 そして,公正証書(甲8,乙7)が作成された際,Dは体調不良であり,公証役場に出向いた事実はない。公証役場では被告の印鑑証明書しか確認されておらず, - 3 -Dが出向いた事実は公正証書の記載からも疑わしい。 【被告の追加主張】本件特許権1ないし5及び本件特許権6の特許を受ける権利等は,被告が当時有していた資産のほとんどすべてであって,これをAに譲渡するに当たっては,被告の取締役会の承認が必要であった。しかるに,本件特許権1等の譲渡につき被告の取締役 権6の特許を受ける権利等は,被告が当時有していた資産のほとんどすべてであって,これをAに譲渡するに当たっては,被告の取締役会の承認が必要であった。しかるに,本件特許権1等の譲渡につき被告の取締役会の承認がされた事実はなく,上記譲渡は無効である。 【被告の追加主張に対する原告の反論】被告の取締役会の承認の有無は,本件特許権1等のAへの譲渡の効力に影響を及ぼすものではない。 第4 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件譲渡契約書(甲7)の被告の当時の代表者Dの作成部分及び本件付記事項書(甲8の2)のD作成部分はいずれも真正に成立したものと推定でき,被告からAに対する本件各特許権(本件特許権6については特許を受ける権利)の譲渡合意がされたと認められ,Aから原告に対する本件各特許権の譲渡の事実も認められるから,特許権者として請求する本件抹消登録手続請求は理由があるものと判断する。 その理由は次のとおり付加して判断するほか,原判決「事実及び理由」中の「第 3 当裁判所の判断」記載のとおりである。 2 原判決が認定するとおり,本件譲渡契約書(甲7)の被告代表者(当時はD)作成部分には被告の登録印(甲17)の印影が顕出されているから,該印影は被告代表者Dによって押捺されたものと推認され,結局,上記作成部分はDの意思に基づき,真正に成立したものと推定される。 そして,本件付記事項書(甲8の2)のDの自署部分の成立をさらに検討するに,乙第9号証はDが著作し,Bに贈った書籍であり,Dが「謹呈 D」と署名したものであるところ(乙10),乙第9号証中のDの自署と本件付記事項書のDの自署と - 4 -は筆致において酷似していることが明らかであるから,乙第9号証は,本件付記事項書における当時の被告代表者自署部分の成立の認定(原判決説示(5頁17~2 自署と本件付記事項書のDの自署と - 4 -は筆致において酷似していることが明らかであるから,乙第9号証は,本件付記事項書における当時の被告代表者自署部分の成立の認定(原判決説示(5頁17~22行)のとおり)を裏付けるものである。 他方,B及びCの陳述書(乙10,11)は,具体的な根拠に基づくものではないので,上記判断を左右するに足りるものではない。 被告は,本件特許権3等は数億円の価値があるから166万円といった低額で譲渡されるはずはないとか,受領証等が作成・提出されていないのは不合理であるなどと主張するが,本件特許権3等に数億円といった極めて高額の取引価値があることを裏付けるに足りる証拠はないし,Aの陳述書(甲18)や預かり証(甲19~23)によれば,Aが従前,被告に代わって特許年金や特許事務所に対する未払金を立替払いしており,当時の被告代表者であるDとの間でAの被告に対する立替金残金の合計額をもって本件特許権3等の譲渡代金額と定め,譲渡代金債務と立替金請求権とで相殺する旨合意したことが認められるから,本件譲渡契約書上譲渡代金額が合計166万円とされている(2条)としても不合理でないし,Aと被告の間で現金のやり取りがなかった点に照らせば,受領書やこれに代わるべき確認書等が作成されなかったとしても必ずしも不自然ではない。 なお,被告は,本件口頭弁論終結後に簡易鑑定書(乙12)を提出し,譲渡証書(甲10)中のDの署名とDの著作(乙9)中のDの署名とは異なる旨の証拠説明書を提出して,乙第12号証提出のため弁論再開を申し立てた。しかし,上記簡易鑑定書中には「取り扱い厳守事項重要」として,「2.この簡易鑑定『判断書』を相手方をはじめ,第3者或いは裁判所や警察署などへは,提出したり公開したり見せたりコピーしたり渡したり等一切禁止しま 簡易鑑定書中には「取り扱い厳守事項重要」として,「2.この簡易鑑定『判断書』を相手方をはじめ,第3者或いは裁判所や警察署などへは,提出したり公開したり見せたりコピーしたり渡したり等一切禁止します。3.この『判断書』は,依頼人のみへの判断を伝えるものであり,分析説明がないことから,依頼人以外には,内容を伝えたり公表や提示を禁じます。」との記載があるから(1枚目),上記簡易鑑定書自体が簡易な判断であることを自認し,内容につき疑念を持たざるを得ない。加えて,被告自身がDの自署であることを認めている付箋(乙4)中のDの署名と比 - 5 -べれば,Dの著作(乙9)中のDの署名は,大きく崩して書いたものであることが明らかで,しかも両署名の間で崩し方が必ずしも同様でないから,大きく崩した署名とそうでない署名とを対照することには自ずから限界があるというべきである。 しかも,原判決は譲渡証書(甲10)や委任状(甲9の2)のDの署名部分の真正に基づいて被告からAへの本件特許権1等の譲渡の事実を認定したのではなく,別の書面である本件譲渡契約書(甲7)のしかも被告の代表者印(印鑑登録印)の印影の真正に基づいて本件特許権3等の譲渡の事実を認定し,また別の書面である本件付記事項書(甲8の2)のDの署名の真正に基づいて本件特許権1等の譲渡の事実を認定したものであるが,上記簡易鑑定書はこれらについて触れるものではない。 そして,原告の代表者であるAの陳述書(甲18)には,本件譲渡契約書(甲7)の被告代表者印はDの意思に基づいて押捺され,本件付記事項書(甲8の2)のDの署名部分はDがAの面前で自ら署名したことの具体的陳述記載がある一方,これに反する事実を裏付ける証拠はない。 したがって,上記簡易鑑定書(乙12)を考慮したとしても,本件譲渡契約書及び本件付記事項書 名部分はDがAの面前で自ら署名したことの具体的陳述記載がある一方,これに反する事実を裏付ける証拠はない。 したがって,上記簡易鑑定書(乙12)を考慮したとしても,本件譲渡契約書及び本件付記事項書の被告代表者作成部分の真正の推定が揺らぐものではない。 以上のとおりの次第で,当裁判所は弁論再開の必要はないと判断する。 3 被告は,本件特許権1等をAに譲渡するに当たっては,被告の取締役会の承認が必要であったところ,被告の取締役会の承認がされた事実はないから,上記譲渡は無効であると主張する。 しかしながら,仮に本件特許権1等の譲渡につき被告の取締役会の承認決議を経た事実が存しないとしても,上記承認決議の不存在の事実を取引の相手方であるAが知っていたか又は知り得たことの主張立証はない。また,本件特許権1等が,譲渡当時被告の「重要なる財産」に当たることも認めることはできない。そうすると,本件において上記譲渡をもって無効とすることはできない。 4 結局,本件譲渡契約書及び本件付記事項書の被告代表者作成部分の成立を肯定し,被告とAとの間の譲渡合意の効果を認めた原判決は正当である。 - 6 - 第5 結論以上によれば,本件控訴は理由がないから,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官塩月秀平 裁判官古 谷 健二郎 裁判官田邉 実 古谷健二郎 裁判官田邉実

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