平成13年(行ヶ)第29号審決取消請求事件(平成13年10月25日口頭弁論終結)判決原告アトフィナ訴訟代理人弁理士越場隆被告三井・デュポンポリケミカル株式会社訴訟代理人弁理士山口和同中嶋重光 主文 特許庁が平成10年審判第35608号事件について平成12年10月24日にした審決のうち、特許第2619347号の請求項1、2、3、5及び6に係る特許を無効とするとの部分を取り消す。 訴訟費用は、各自の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の求めた裁判 1 原告主文第1項と同旨訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯原告は、名称を「結晶化度の低いエチレン共重合体をベースとした粘着防止特性および光学特性に優れた滑り易い組成物からなるフィルム」とする特許第2619347号の発明(平成3年2月19日出願、平成9年3月11日設定登録、以下「本件発明」といい、その特許を「本件特許」という。)の特許権者である。被告は、平成10年12月4日、原告を被請求人として、特許庁に対し、本件特許について無効審判を請求し、平成10年審判第35608号事件として審理された結果、「特許第2619347号の請求項1、2、3、5及び6に係る特許を無効とする。同請求項4に係る特許に対する審判請求は成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)があり、その謄 て審理された結果、「特許第2619347号の請求項1、2、3、5及び6に係る特許を無効とする。同請求項4に係る特許に対する審判請求は成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)があり、その謄本は平成12年11月13日原告に送達された。なお、出訴期間として90日が附加された。 原告は、本件訴訟提起後の平成13年5月16日に本件特許明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載の訂正(以下「本件訂正」という。)を請求する訂正審判を請求し、訂正2001-39075号として審理された結果、同年7月16日に「本件訂正を認める。」旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)があり、その謄本は同年8月1日に原告に送達された。 2 特許請求の範囲(1) 本件訂正前の特許請求の範囲(なお、請求項4に記載の発明は本件審決により無効とはされていない。)【請求項1】結晶化度が30%未満の少なくとも一種のエチレン共重合体を含む粘着防止特性および光学特性に優れた滑り易い組成物で作られた厚さが10~500μmのフィルムにおいて、結晶化度が30%未満の上記エチレン共重合体に対して0.1~0.6重量%のエチレン-ビス-オレアミドを含む組成物からなることを特徴とするフィルム。 【請求項2】エチレン共重合体が、コモノマーの含有量が共重合体100g当たり少なくとも0.09モルであるエチレンの極性共重合体である請求項1に記載のフィルム。 【請求項3】エチレンの極性共重合体がエチレンとアルキル基が1~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルキルアクリレートまたはメタクリレートとの共重合体、エチレンと少なくとも1種のビニルエステルとの共重合体、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/不飽和ジカルボン酸無水物のターポリマー、エチレン/不飽和グリシジルモ たはメタクリレートとの共重合体、エチレンと少なくとも1種のビニルエステルとの共重合体、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/不飽和ジカルボン酸無水物のターポリマー、エチレン/不飽和グリシジルモノマーの共重合体、エチレン/不飽和エチレン系モノマー/不飽和グリシジルモノマーのターポリマー、エチレン/不飽和ジカルボン酸無水物/ポリオールのポリ(メタ)アクリレートの共重合体およびエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/不飽和ジカルボン酸のN-カルボキシアルキルアミドの共重合体の中から選択される請求項2に記載のフィルム。 【請求項4】エチレン共重合体が、エチレンと炭素原子3~8個を有する少なくとも1種のα-オレフィンとの密度が0.910以下の共重合体である請求項1に記載のフィルム。 【請求項5】エチレン共重合体のメルトインデックスが0.1~10dg/分の範囲にある請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。 【請求項6】粘着防止剤、滑り特性向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機顔料および有機顔料の中から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム。 (2) 本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲(下線部は訂正箇所)【請求項1】結晶化度が30%未満の少なくとも一種のエチレン共重合体を含む粘着防止特性および光学特性に優れた滑り易い組成物で作られた厚さが10~500μmのフィルムにおいて、上記エチレン共重合体がコモノマーの含有量が共重合体100g当たり少なくとも0.09モルであるエチレンとアルキル基が1~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートとの極性共重合体であり、上記組成物が上記エチレン共重合体に対して0.1~0.6重量% ンとアルキル基が1~10個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートとの極性共重合体であり、上記組成物が上記エチレン共重合体に対して0.1~0.6重量%のエチレン-ビス-オレアミドを含むことを特徴とするフィルム。 【請求項2】エチレン共重合体のメルトインデックスが0.1~10dg/分の範囲にある請求項1に記載のフィルム。 【請求項3】粘着防止剤、滑り特性向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機顔料および有機顔料の中から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む請求項1または2に記載のフィルム。 【請求項4】結晶化度が30%未満の少なくとも一種のエチレン共重合体を含む粘着防止特性および光学特性に優れた滑り易い組成物で造られた厚さが10~500μmのフィルムにおいて、エチレン共重合体が、エチレンと炭素原子3~8個を有する少なくとも1種のα-オレフィンとの密度が0.910以下の共重合体であり、結晶化度が30%未満の上記エチレン共重合体に対して0.1~0.6重量%のエチレン-ビス-オレアミドを含む組成物からなることを特徴とするフィルム。 【請求項5】エチレン共重合体のメルトインデックスが0.1~10dg/分の範囲にある請求項4に記載のフィルム。 【請求項6】粘着防止剤、滑り特性向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機顔料および有機顔料の中から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む請求項4または5に記載のフィルム。 3 審決の理由の要点別紙審決書の理由写しのとおり、審決は、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の記載のとおりと認定した上、本件特許の請求項1及び2に係る各発明は、本件特許出願日前の刊行物である甲第1号証(特公昭49-18619号公報) り、審決は、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の記載のとおりと認定した上、本件特許の請求項1及び2に係る各発明は、本件特許出願日前の刊行物である甲第1号証(特公昭49-18619号公報)に記載の発明と同一であるか、下記の甲第3ないし第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号及び同条2項の規定に違反して特許されたものであり、請求項3、5及び6に係る各発明は、下記甲第3号ないし第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであるとした(なお、審決は、請求項4に係る特許は無効とすることができないと判断した。)。 甲第3号証:「新版プラスチック配合剤、基礎と応用」283~295頁(昭和59年1月30日発行)甲第4号証:「オレフィン系およびスチレン系合成樹脂製食品容器包装等に関する自主規制基準第1版」目次、1~5頁、15~17頁(1974年11月発行)甲第5号証:「プラスチック包装材料要覧」100~106頁(昭和49年3月28日発行)第3 原告主張の審決取消事由本件発明の要旨は、本件訂正審決の確定により、遡って本件訂正後の特許請求の範囲の記載のとおりとなった。したがって、審決が本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1、2、3、5及び6記載のとおり認定したことは、結果的に本件発明の要旨を誤って認定したことに帰し、その要旨認定の誤りは審決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、審決のうち、請求項1、2、3、5及び6に係る特許を無効とするとの部分は、違法として取り消されるべきである。 第4 被告の主張の要点被告は、本件訂正審決において、本件訂正後の本件発 かであるから、審決のうち、請求項1、2、3、5及び6に係る特許を無効とするとの部分は、違法として取り消されるべきである。 第4 被告の主張の要点被告は、本件訂正審決において、本件訂正後の本件発明に係わる発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができる発明であると認定した特許庁の判断には同意することができないが、審決は本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の記載のとおり認定してなされたものであり、本件訂正審決が確定した結果、本件訴訟の審理の対象が審決時のものと異なったものとなったことは認める。 第5 当裁判所の判断本件訂正審決の確定により、本件発明の特許請求の範囲が遡って前記第2の2(2)のとおり訂正されたことは当事者間に争いがない。 そうすると、審決が本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1、2、3、5及び6記載のとおり認定したことは、結果的に本件発明の要旨を誤って認定したことに帰し、その要旨認定の誤りは審決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、審決のうち、請求項1、2、3、5及び6に係る特許を無効とするとの部分は、瑕疵があるものとして取り消されるべきである。 よって、原告の請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法62条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第18民事部裁判長裁判官永井紀昭 裁判官古城春実裁判官橋本英史 本英史
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