令和7年3月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(ワ)第70449号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和7年2月28日判決 原告 X(以下「原告」という。)原告株式会社ストローグ(以下「原告会社」という。)上記両名訴訟代理人弁護士赤尾直人 上記両名補佐人弁理士岩 﨑 孝治氏原康宏伊藤昌哉被告株式会社タツミ同訴訟代理人弁護士細貝巌 同訴訟代理人弁理士吉井雅栄 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙物件目録記載の締結金物の製造及び販売を行ってはならない。 2 被告は、現在所有している別紙物件目録記載の締結金物を廃棄し、かつ別紙物件目録記載の締結金物の製造設備を除去せよ。 3 被告は、原告会社に対し、456万6400円及びこれに対する令和5年8 月30日から支払済みに至るまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、原告らが、別紙物件目録記載の締結金物(以下、同目録記載の番号に応じて「被告製品1」などといい、併せて「被告各製品」という。)を製造、販売する被告に対し、被告各製品が、発明の名称を「締結金具」とする発明の特許(特許第5634732号。以下「本件特許」 の番号に応じて「被告製品1」などといい、併せて「被告各製品」という。)を製造、販売する被告に対し、被告各製品が、発明の名称を「締結金具」とする発明の特許(特許第5634732号。以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲 の請求項1に記載された発明(以下「本件発明」という。)又はこれを訂正した後の発明の技術的範囲に属すると主張して、①本件特許に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が、特許法100条1項及び2項に基づき、被告各製品の製造及び販売の差止め並びに被告各製品の廃棄及び被告各製品の製造設備の除去を、②原告から本件発明の独占的通常実施権の許諾を受けたと する原告会社が、不法行為に基づく損害賠償金456万6400円(損害期間:令和2年7月1日から令和5年6月30日)及び遅延損害金の支払を、それぞれ求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。) (1) 当事者等原告は、本件特許権を有する者である。 原告会社及び被告は、建築資材の製造及び販売等を目的とする株式会社である。 (2) 本件特許 原告は、平成22年4月1日、本件特許に係る特許出願(特願2010-85426号。以下「本件出願」という。)をし、平成26年10月24日、本件特許権の設定登録(請求項の数6)を受けた(甲1。以下、本件出願の願書に添付した明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。また、本件明細書の発明の詳細な説明中の段落番号を【0001】、図面を【図1】など と記載する。)。 (3) 特許請求の範囲本件特許に係る特許請求の範囲の記載のうち、請求項1の記載は、次のとおりである。 「支持部材(51)の側面に結合部材(6 【図1】など と記載する。)。 (3) 特許請求の範囲本件特許に係る特許請求の範囲の記載のうち、請求項1の記載は、次のとおりである。 「支持部材(51)の側面に結合部材(61)の端面を丁字状に締結するための締結金物であって、 支持部材(51)の側面に接触し且つボルト(41)や釘(45)等で支持部材(51)に固定される前面部(11)と、結合部材(61)の端部に加工されたスリット(62)に差し込まれ且つドリフトピン(47)等の棒材で結合部材(61)に固定される後縁部(31)と、を有し、該前面部(11)と該後縁部(31)は離れて配置され、 前記前面部(11)には、ボルト(41)や釘(45)等を挿通するための前孔(19)を設け、前記後縁部(31)には、ドリフトピン(47)等を挿通するためのピン孔(36)またはドリフトピン(47)等を受け止めるピン溝(34)を設け、前記前面部(11)と前記後縁部(31)は、過大な荷重が作用した際 に変形を誘発させるため、帯状に延びる複数の枝状部(23、25、27)を介して一体化していることを特徴とする締結金物。」(4) 本件発明の構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると、以下のとおりである(以下、分説した各構成要件を「構成要件A」などという。)。 A 支持部材(51)の側面に結合部材(61)の端面を丁字状に締結するための締結金物であって、B 支持部材(51)の側面に接触し且つボルト(41)や釘(45)等で支持部材(51)に固定される前面部(11)と、結合部材(61)の端部に加工されたスリット(62)に差し込まれ且つドリフトピン(47) 等の棒材で結合部材(61)に固定される後縁部(31)と、を有し、該 前面部(11)と該後縁 、結合部材(61)の端部に加工されたスリット(62)に差し込まれ且つドリフトピン(47) 等の棒材で結合部材(61)に固定される後縁部(31)と、を有し、該 前面部(11)と該後縁部(31)は離れて配置され、C 前記前面部(11)には、ボルト(41)や釘(45)等を挿通するための前孔(19)を設け、前記後縁部(31)には、ドリフトピン(47)等を挿通するためのピン孔(36)またはドリフトピン(47)等を受け止めるピン溝(34)を設け、 D 前記前面部(11)と前記後縁部(31)は、過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため、帯状に延びる複数の枝状部(23、25、27)を介して一体化していることを特徴とする締結金物。 (5) 被告の行為ア被告は、業として、被告各製品を製造及び販売している。 イ被告製品1は別紙被告製品図記載の図面1、被告製品2は同記載の図面2、被告製品3は同記載の図面3、被告製品4は同記載の図面4の1、被告製品5は同記載の図面4の2、被告製品6は同記載の図面4の3のとおりの構成であり、被告各製品は、次の構成を備える締結金物である。 a 支持部材(51)の側面に結合部材(61)の端面を丁字状に締結す るための締結金物であって、c 前面部(11)には、ボルト(41)を挿通するための前孔(19)を設け、後縁部(31)には、ドリフトピン(47)を挿通するためのピン孔(36)及びドリフトピン(47)を受け止めるピン溝(34)が設けられている。 3 争点(1) 技術的範囲の属否ア構成要件Bの充足性(争点1)イ構成要件Dの充足性(争点2)(2) 無効の抗弁の成否 ア甲5に基づく新規性欠如(争点3) イ甲4に基づく進歩性欠如(争点4 属否ア構成要件Bの充足性(争点1)イ構成要件Dの充足性(争点2)(2) 無効の抗弁の成否 ア甲5に基づく新規性欠如(争点3) イ甲4に基づく進歩性欠如(争点4)(3) 損害の発生及びその額(争点5)(4) 訂正に係る請求項に基づく請求(争点6)第3 争点に関する当事者の主張 1 構成要件Bの充足性(争点1)について (原告らの主張)(1) 構成要件Bにおいて、該前面部(11)と該後縁部(31)が「離れて配置」されているというのは、該前面部(11)と該後縁部(31)が「複数の枝状部を介して一体化」していることにより(構成要件D)、必然的に所定の距離をもって分離されることを意味している。本件明細書の「前面部11 と後縁部31は、空間的に分離している」(【0029】)との記載及び【図1】も、この趣旨をいうものである。 (2) 被告各製品は、①支持部材(51)の側面に接触し、ボルト(41)で支持部材(51)に固定される板状の前面部(11)と、②結合部材(61)の端部に加工されたスリット(62)に差し込まれ、ドリフトピン(47) で結合部材(61)に固定される一枚の板であって、前面部(11)において両側に延設されている面の中途部位と直交状態を形成している後縁部(31)を有し、前面部(11)と後縁部(31)は離れて配置されている。 したがって、被告各製品において、前面部(11)と後縁部(31)は「離れて配置」されているから、被告各製品は構成要件Bを充足する。 (被告の主張)被告各製品は、後縁部の前面部側端部に窓孔が上下方向に間隔をおいて複数設けられ、後縁部は前面部と近接一体連設しているから、前面部と後縁部が「離れて配置」されているとはいえない。 2 構成要 張)被告各製品は、後縁部の前面部側端部に窓孔が上下方向に間隔をおいて複数設けられ、後縁部は前面部と近接一体連設しているから、前面部と後縁部が「離れて配置」されているとはいえない。 2 構成要件Dの充足性(争点2)について (原告らの主張) (1) 構成要件Dの「帯状」は、【図3】によれば、細長い状態に限定されるものではなく、長さ方向の方が幅方向よりも短い状態も含む。したがって、枝状部が、帯と同様に所定の長さと幅を有する状態を形成していることをいう。 「帯状に延びる」とは、本件明細書の【0023】の記載及び【図11】によれば、後縁部が下降し、前面部と後縁部の前後方向の距離は変化せずに 全体の長さ方向が延長し、幅方向が縮小することを意味するものであって、「帯状の延長状態を形成する」という動的な変形態様を表現する。 「変形」は、弾性変形、塑性変形及び破壊に至る変形を含む。 (2) 被告各製品は、過大な荷重の作用を受けることを想定しているはずであり、被告各製品の窓枠は、過大な荷重が作用した際、弾性変形、塑性変形及 び破壊までの変形を免れない。そして、被告各製品は、前面部(11)と後縁部(31)は、支持部材(51)と結合部材(61)との間に、過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため、複数の枝状部(被告の主張における窓孔間部)を介して一体化しているという構成を備え、これは、「帯状に延びる複数の枝状部」に当たるから、被告各製品は構成要件Dを充足する。 (被告の主張)(1) 「帯状に延びる」について、動的な変形態様を表現するとの原告らの解釈は本件明細書に基づくものとはいえない。 (2) 被告各製品は、後縁部の前面部側端部に窓孔が上下方向に、間隔をおいて複数設けられている構成であり、前面部と後縁 的な変形態様を表現するとの原告らの解釈は本件明細書に基づくものとはいえない。 (2) 被告各製品は、後縁部の前面部側端部に窓孔が上下方向に、間隔をおいて複数設けられている構成であり、前面部と後縁部が、「枝状部を介して一体化 している」構成を備えていない。被告各製品の上下の窓孔の間に、幅の狭い窓孔間部はあるが、この窓孔間部の前後方向の長さは上下方向の幅とほぼ同等であり、かつ、窓孔の前後幅に合致した長さであるから、窓孔間部は、「帯状に延びる・・・枝状部」に当たらない。 3 甲5に基づく新規性欠如(争点3)について (被告の主張) (1) 意匠登録第1179101号公報(甲5。平成15年7月7日発行。以下「甲5文献」という。)には以下のとおりの構成を備える柱材連結金具の発明(以下「甲5発明」という。)が開示されており、構成要件A~Cの構成を備えている。 5a 柱材の側面に、梁材の端面を丁字状に連結するための連結金具である点。 5b 前記柱材の側面に接触し且つボルトで前記柱材に固定される取付板部と、前記梁材の端部に加工されたスリットに差し込まれ且つドリフトピンで前記梁材に固定される支持板部とを有し、前記取付板部と前記支持板部は離れて配置されている点。 5c 前記取付板部には、ボルトを挿通するためのポルト孔が設けられ、前記 支持板部には、ドリフトピンを挿通係止するための係止孔と、ドリフトピンを受け止める溝状切欠部とが設けられている点。 5d 前記取付板部と前記支持板部は、帯状に延びる複数の細板部を介して一体化している点。 (2) 本件発明と甲5発明とは、以下の点で一応相違する。 [相違点1]「複数の枝状部(細板部)」について、本件発明は、「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させる 一体化している点。 (2) 本件発明と甲5発明とは、以下の点で一応相違する。 [相違点1]「複数の枝状部(細板部)」について、本件発明は、「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため」との目的(枝状部の作用・効果)が記載されているが、甲5発明は、過大な荷重が作用した際に枝状部(細板部)がどのような目的・作用・効果を奏するか明確な言及がない点。 (3) 過大な荷重(耐力強度を超えた荷重)が作用した場合に、細板部(枝状部)が根元部から斜め下方に向かって折れ曲がり傾斜するように塑性変形することは明白であるから、相違点に係る構成は実質的に同一であり、構成要件Dの構成も備えている。 (原告らの主張) (1) 甲5発明が構成要件A〜Cの構成を備えていることは認める。 (2) 本件発明の基本的技術思想は、①破壊に至る場合を含む「過大な荷重」が作用した際に「変形を誘発させる」「枝状部」の介在によって部材の破壊を遅延すること、②「枝状部」の介在によって、締結金物及び部材が破壊せずに、耐えることのできる荷重の上限値である短期許容耐力が従来製品より向上することにある。部材の破壊の遅延(①)は、締結金物が破壊しない場合を前 提としているのに対し、短期許容耐力の向上(②)における「破壊」は、締結金物及び部材の双方の破壊を想定している。 また、構成要件Dの「過大な荷重」は、支持部材又は結合部材の少なくとも一方において、ひび割れが発生するように作用する荷重を客観的な基準とし、「変形」は、塑性変形を意味するが、枝状部に塑性変形が生じるかは金属 の種類に左右され、構成要件Dは、所定の数、長さ、幅、厚さを有する枝状部が、過大な荷重に対応して塑性変形を可能とするような種類の金属を採用していることを前提としてい 塑性変形が生じるかは金属 の種類に左右され、構成要件Dは、所定の数、長さ、幅、厚さを有する枝状部が、過大な荷重に対応して塑性変形を可能とするような種類の金属を採用していることを前提としている。 (3) 甲5文献は柱材連結金具の意匠を開示する文献であり、意匠に関する文献である以上、前記(2)のとおりの本件発明の基本的技術思想も、柱材連結金 物に作用する荷重が支持部材又は結合部材の少なくとも一方において、ひび割れが発生するように作用する荷重であることも、使用する金属の種類も明らかにしておらず、甲5発明において、過大な加重の作用に対応して枝状部が塑性変形するか否かは不明である。 したがって、本件発明と甲5発明が実質的に同一であるとはいえない。 4 甲4に基づく進歩性欠如(争点4)について(被告の主張)(1) 特開平10-331261号公報(甲4。平成10年12月15日発行。 以下「甲4文献」という。)には以下のとおりの構成を備える建築用接合金物の発明(以下「甲4発明」という。)が開示されており、構成要件A~Cの構 成を備えている。 4a 柱や胴差などの構造材の側面に、梁などの横架材の端面を丁字状に連結するための接合金物である点。 4b 構造材の側面に接触し且つボルトで構造材に固定される金物基板と、横架材の端部に加工されたスリットに差し込まれ且つドリフトピンで横架材に固定される接合板とを有し、前記金物基板と前記接合板は突出片部を介 して離れて配置されている点。 4c 前記金物基板には、ボルトを挿通するための透孔が設けられ、前記接合板には、ドリフトピンを挿通するための透孔と、ドリフトピンを受け止める係合切欠とが設けられている点。 4d 前記金物基板と前記接合板は、帯状に延びる複数の突出片 通するための透孔が設けられ、前記接合板には、ドリフトピンを挿通するための透孔と、ドリフトピンを受け止める係合切欠とが設けられている点。 4d 前記金物基板と前記接合板は、帯状に延びる複数の突出片部を介して一 体化している点。 (2) 本件発明と甲4発明とは、以下の点で相違する。 [相違点2]「複数の枝状部(突出片部)」について、本件発明は、「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため」のものと目的(枝状部の作用・効果) が記載されているが、甲4発明は、過大な荷重が作用した際に枝状部(突出片部)がどのような目的・作用・効果を奏するか明確な言及がない点。 (3) 相違点の容易想到性甲4発明の突出片部は、本件発明と同様に、帯状に延びていてこの複数の突出片部を介して金物基板(前面部)と接合板(後縁部)が一体化している ので、突出片部は枝状部に相当し、過大な荷重が作用した際には、金具基板や接合板に比して細く脆弱なこの突出片部(枝状部)が変形することは明らかである。 本件出願前に公知の甲5文献、実用新案登録第3098278号公報(乙4。平成16年2月26日発行)、意匠登録第1199654号公報(乙5。 平成16年3月15日発行)、意匠登録第1228978号公報(乙6。平成 17年1月31日発行)、意匠登録第1229411号公報(乙7。平成17年2月7日発行)、意匠登録第1228947号(乙8。平成17年1月31日発行)、株式会社栗山百造の「栗山百造総合カタログ vol.0912」(乙9。平成21年12月20日発行)には、甲4発明と同等の前面部と後縁部が複数の枝状部を介して一体化し、過大な荷重が作用した際に枝状部の変形が誘発 される締結金物が記載され、このような締結金物は本件出願前の周知技術で 20日発行)には、甲4発明と同等の前面部と後縁部が複数の枝状部を介して一体化し、過大な荷重が作用した際に枝状部の変形が誘発 される締結金物が記載され、このような締結金物は本件出願前の周知技術である。 したがって、本件発明は、甲4発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 (原告らの主張) (1) 甲4発明が構成要件A〜Cの構成を備えていることは認める。 (2) 甲4文献は、窓口4の存在によって、固定ボルト5の組付け作業及び固定ボルト5に対する固定ナット6の螺合作業の円滑化を作用効果とし、その作用効果を奏するために塑性変形を不可欠とするものではないから、塑性変形することは記載されていない。かえって、甲4発明において、塑性変形が生 じると、きしみ音の発生防止という甲4発明の固有の効果を発揮することができない。また、甲4文献には、前記3(原告らの主張)(2)のとおりの本件発明の基本的技術思想は開示されていない。 乙5〜7は甲5文献と同様に意匠に関する文献であるから、前記3(原告らの主張)(3)と同様のことがいえる。乙4についても、過大な荷重の作用に ついての開示はなく、乙4の記載によれば、塑性変形を想定していない。乙9は、周知技術を裏付ける文献とはいえない。 したがって、本件発明は、甲4発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 5 損害の発生及びその額(争点5)について (原告会社の主張) (1) 原告会社は、令和2年7月1日より前までに、原告から、本件特許権について独占的通常実施権の許諾を受けた。 (2) 被告は、令和2年7月1 日から令和5年6月30日までの間、被告各製品を販売し、456万6400円の利益を得たから、原 までに、原告から、本件特許権について独占的通常実施権の許諾を受けた。 (2) 被告は、令和2年7月1 日から令和5年6月30日までの間、被告各製品を販売し、456万6400円の利益を得たから、原告会社の損害は、456万6400円である(特許法102条2項類推適用)。 (被告の主張)独占的通常実施権の許諾は不知。損害の発生及びその額は、否認ないし争う。 6 訂正に係る請求項に基づく請求(争点6)について(原告らの主張)(1) 原告は、構成要件Dについて、「前記前面部(11)と前記後縁部(31) は、過大な荷重が作用した際に塑性変形を誘発させると共に、支持部材(51)及び/又は結合部材(61)におけるヒビ割れの成長によって生ずる破壊を遅くさせるため、帯状に延びる複数の枝状部(23、25、27)を介して一体化していることを特徴とする締結金物。」(変更部分に下線を付した)とする訂正請求をした。 (2) 被告各製品は、上記訂正に係る請求項に記載された発明の技術的範囲に属する。 (被告の主張)否認し争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載本件明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。また、本件明細書の図面は別紙明細書図面のとおりである。(甲1)(1) 【技術分野】【0001】 本発明は、各種の木構造において、柱と梁などの二部材を丁 字状に締結する際に用いる締結金物に関する。 (2) 【背景技術】【0002】 住宅などの建築方法として広く普及している木造軸組工法は、土台や柱や梁などの部材を組み合わせて建物の骨格を構築している。この工法は、骨格の強度を確保するため、部材同士を強固に締結する必要があり、古くから部材の端面にホゾを加工するなどの対 木造軸組工法は、土台や柱や梁などの部材を組み合わせて建物の骨格を構築している。この工法は、骨格の強度を確保するため、部材同士を強固に締結する必要があり、古くから部材の端面にホゾを加工するなどの対策を講じているが、近年はプ レカット技術などの導入に伴い、各種締結金物の利用が進んでいる。 【0003】 柱と梁などの二部材を丁字状に締結する際に用いる締結金物の形状例を図12に示す。この締結金物は、鋼板を二箇所で折り曲げた「コ」の字状で、中央に位置する前面板と、その左右両端から突出する側面板と、で構成され、前面板には、円柱状に突出した二個の凸部が上下に並んで形成 してある。なお凸部の内部は、ボルトの頭部などを収容するため中空になっており、また凸部の中心には、ボルトを挿通するための前孔が形成してある。 そのほか、側面板は二枚とも同一形状で、上面にはV字状に切り抜かれたピン溝が形成してあり、その下には二組のピン孔が上下に並んで形成してある。 (3) 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 図12のような締結部に過大な荷重が作用すると、まずドリフトピンの周囲で木材にヒビ割れが発生して、これが次第に成長して梁が破壊されることが多い。したがって締結金物単体の強度を向上するだけでは、締結部の強度向上には結び付かない場合がある。しかも木材は、節の有無や含水率などの様々な要因で強度に個体差があり、破壊に至るまでの過程も不 規則である。そこで締結部の安全性や安定性を確保するには、締結金物を意図的に変形させてエネルギーを吸収して、部材のヒビ割れの発生や成長をできるだけ遅くすることが好ましい。 【0009】 図12のような締結金物は、需要者の経済的負担を軽減するため、できるだけ安価に提供することが好ましい。また締結金物は既に広く ビ割れの発生や成長をできるだけ遅くすることが好ましい。 【0009】 図12のような締結金物は、需要者の経済的負担を軽減するため、できるだけ安価に提供することが好ましい。また締結金物は既に広く 普及しており、取り付けのためのボルトやドリフトピンなどの配置は定形化 されている。そのため新しい締結金物についても、従来の物と互換性を確保できるよう、ピン孔やピン溝の位置は変更しないことが好ましい。 【0010】 本発明はこうした実情を基に開発されたもので、梁などの部材に過大な荷重が作用した際、部材の破壊をできるだけ遅くすることができ、安全性や安定性に優れた締結金物の提供を目的としている。 (4) 【課題を解決するための手段】【0011】 前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、支持部材の側面に結合部材の端面を丁字状に締結するための締結金物であって、支持部材の側面に接触し且つボルトや釘等で支持部材に固定される前面部と、結合部材の端部に加工されたスリットに差し込まれ且つドリフトピン等の棒 材で結合部材に固定される後縁部と、を有し、該前面部と該後縁部は離れて配置され、前記前面部には、ボルトや釘等を挿通するための前孔を設け、前記後縁部には、ドリフトピン等を挿通するためのピン孔またはドリフトピン等を受け止めるピン溝を設け、前記前面部と前記後縁部は、過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため、帯状に延びる複数の枝状部を介して一体 化していることを特徴とする締結金物である。 【0012】 本発明による締結金物は、各種の木構造において、棒状の木材を丁字状に締結するために使用され、前記の従来技術と同様、柱などの支持部材の側面に接触する前面部と、梁などの結合部材のスリットに差し込まれる後縁部と、で構成される。 各種の木構造において、棒状の木材を丁字状に締結するために使用され、前記の従来技術と同様、柱などの支持部材の側面に接触する前面部と、梁などの結合部材のスリットに差し込まれる後縁部と、で構成される。前面部は、支持部材の側面に面接触して、ボ ルトや釘やビスなどを介して支持部材に固定される部位であり、位置決めのための凸部は必須ではない。ただしボルトや釘やビスなどを挿通できるよう、前孔は必ず設けるものとする。 【0013】 締結金物の形状は、前面部の両側部から一対の後縁部が突出する「コ」の字状のほか、前面部の中央から一枚の後縁部が突出する丁字状 も存在する。… 【0014】 後縁部は、ドリフトピンやボルトなどの棒材を介して結合部材に固定される部位であり、全体が結合部材に加工したスリットの中に差し込まれる。また後縁部には、ドリフトピン等を挿通するためのピン孔と、半円形に削り取られてドリフトピン等を受け止めるピン溝と、が形成してある。 …そして本発明は、前面部と後縁部が単純につながっているのではなく、前 面部と後縁部は空間的に分離しており、双方は枝状部を介して一体化していることを特徴とする。 【0015】 枝状部は、前面部と後縁部を一体化する機能を担っており、文字通り前面部を根元として枝状に突出する部位である。枝状とは、有限の幅(延在方向に対して直交する方向)を有しており、前面部の外縁から局地 的に突き出た半島状であることを意味している。また枝状部は、必ず二本以上設けることを前提とするが、個々の枝状部の形状を統一する必要はなく、自在に決めることができる。…【0016】 前面部は、単純な平面状とすることもできるが、枝状部との兼ね合いで「コ」の字状または丁字状とすることもある。この場合、前面部 は、支持 要はなく、自在に決めることができる。…【0016】 前面部は、単純な平面状とすることもできるが、枝状部との兼ね合いで「コ」の字状または丁字状とすることもある。この場合、前面部 は、支持部材に面接触する板状の前面板と、前面板から直角に突出して枝状部につながる前縁板と、で構成される。 【0017】 このように、前面部と後縁部を複数の枝状部で一体化することで、ドリフトピン等に過大な荷重が作用した際、枝状部の根元付近を支点として、枝状部が押し下げられるように塑性変形していく。これによってエ ネルギーが吸収され、部材に作用する負荷が軽減して、部材のヒビ割れの発生や成長をできるだけ遅くすることができる。 【0020】 請求項4記載の発明は、後縁部の形状を特定するもので、後縁部は、上下に延びる帯状の縦板であり、該縦板にピン孔とピン溝を設けていることを特徴とする。縦板は、上下方向に延びる矩形状の一枚の板で、そ の内部にピン孔が形成してあり、さらに必要に応じて上下面の一方または両 方にピン溝が形成してある。…(5) 【発明の効果】【0023】 請求項1記載の発明のように、二部材を丁字状に締結する締結金物について、支持部材の側面に固定される前面部と、結合部材のスリットに差し込まれてドリフトピン等で固定される後縁部と、を空間的に分離し て、前面部と後縁部を複数の枝状部だけで一体化することで、支持部材と結合部材との間に過大な荷重が作用した際、枝状部の応力が高くなる。その結果、枝状部は、部材のヒビ割れが成長する前に塑性変形していき、エネルギーが吸収され、部材の破壊をできるだけ遅くすることができる。さらに枝状部の形状や本数を調整することで、あらゆる条件に対して理想的な塑性変形 を実現でき、汎用性の確保も容易で していき、エネルギーが吸収され、部材の破壊をできるだけ遅くすることができる。さらに枝状部の形状や本数を調整することで、あらゆる条件に対して理想的な塑性変形 を実現でき、汎用性の確保も容易である。なお本発明は、鋼板の切断形状を変える以外、従来と同様の製造工程で対応でき、製品価格も抑制可能である。 (6) 【発明を実施するための形態】【0029】 図1は、本発明による締結金物の形状例とその使用状態を示している。締結金物は、垂直に敷設された柱の側面に梁の端面を固定して、 丁字状の締結部を構築するために使用する。なお締結される二部材は、柱と梁に限定されるものではなく、汎用性を持たせるため、柱は支持部材51、梁は結合部材61と称するものとする。そして締結金物は大別して、前面部11と後縁部31と枝状部23、25、27の三要素で構成され、前面部11と後縁部31は、空間的に分離していることを特徴とする。 【0032】 枝状部23、25、27は、前縁板13から突き出た部位であり、有限幅の枝状で、前面部11と後縁部31を一体化している。枝状部23、25、27は、上下に五個が並んでおり、一番上の枝状部27は、斜め上方に突き出ており、ピン溝34が形成してある島状部37につながっている。また一番下の枝状部25は、水平に突き出ており、継板35につなが っており、島状部33、37が存在しない。そのほか中間の三本の枝状部2 3は、斜め上方に突き出ており、ほぼ円盤状の島状部33につながっている。 【0033】 枝状部23、25、27は、後縁部31に作用する荷重を前面部11に伝達する機能を担うが、枝状部23、25、27の断面積は有限であり、必然的に強度が劣る。そのため結合部材61に過大な荷重が作用すると、枝状部23、25、27 、後縁部31に作用する荷重を前面部11に伝達する機能を担うが、枝状部23、25、27の断面積は有限であり、必然的に強度が劣る。そのため結合部材61に過大な荷重が作用すると、枝状部23、25、27は屈曲するように塑性変形していく。この際、 荷重によるエネルギーを吸収して、部材の破壊をできるだけ遅くすることができる。 【0042】 図8は、締結金物の強度を評価する際の試験方法を示す側面図である。これまでに記載したように、本発明による締結金物は、過大な荷重が作用した際、枝状部23、25、27が塑性変形することでエネルギー を吸収して、部材の破壊をできるだけ遅くすることを特徴としている。これを確認するため、図8に示す方法でせん断試験を行った。この試験は、財団法人日本住宅・木材技術センターが定めた方法に基づいている。 【0043】 試験は図8に示すように、一本の梁を二本の柱で支えた門形の試験体を用いており、柱と梁が丁字状に接する二箇所の締結部に、同一の 締結金物を組み込んでいる。そして梁の上面に鋼製の加圧板を敷設して、その中心に集中荷重を作用させる。また梁の変位を測定するため、梁の端部近傍の下面に変位計を取り付けている。変位計は、木材のヒビ割れなどの影響を抑制するため、梁の手前側と奥側の二箇所に取り付けており、計四箇所の測定値の平均を変位量とする。 【0044】 図8に示す方法で試験を行うと、図9のような変位-荷重のグラフが作成でき、これに基づいて、締結金物の短期許容耐力(せん断荷重に対する)を算出することができる。短期許容耐力とは、何らの破壊も生じることなく耐えることのできる荷重の上限値であり、短期とあるのは、腐食などの長期的要因を考慮していないためである。なおグラフの横軸は変位を 示しているが、この値は 容耐力とは、何らの破壊も生じることなく耐えることのできる荷重の上限値であり、短期とあるのは、腐食などの長期的要因を考慮していないためである。なおグラフの横軸は変位を 示しているが、この値は四箇所の平均である。また縦軸は、梁の中央に作用 させた荷重であり、最大荷重(Pmax)は、グラフの最も高い位置である。 さらに降伏耐力(Py)は、グラフの線形から幾何学的に算出した値であり、金属材料における降伏点に相当している。 【0045】 木材は天然由来であり、集成材を含めて様々な要因で強度に個体差があることは避けられない。そのため試験に際しては、最低でも六個 の試験体を用いて、個別にグラフを作成して、都度、最大荷重と降伏耐力を読み取るものとする。 【0046】 短期許容耐力は、図9の下方に示す方法で算出する。具体的には、Pmaxに2/3を乗じた値の平均値とそのバラツキ係数を算出する。 さらにPyの平均値とそのバラツキ係数を算出する。そして両者(Pmax ×2/3と、Py)とも、平均値にそのバラツキ係数を乗じた値を算出して、そのうち、値の小さい方を短期許容耐力とする。なおバラツキ係数は、図9の最下方に示す式で算出され、1以下の値となる。したがって短期許容耐力を向上するには、PmaxやPyの標準偏差を小さくして、バラツキ係数を1に近づけて、安定性を高める必要がある。 【0047】 図10は、図8による方法で得られた試験結果である。試験は、図2に示す締結金物のほか、比較のため従来の締結金物でも行った。いずれの締結金物も、凸部やピン孔などの配置や形状は同じである。本発明による締結金物は、従来のものに比べて降伏耐力(Py)の平均値が劣っている。これは、枝状部を設けたことで、早い段階で塑性変形が発生したことを 示 部やピン孔などの配置や形状は同じである。本発明による締結金物は、従来のものに比べて降伏耐力(Py)の平均値が劣っている。これは、枝状部を設けたことで、早い段階で塑性変形が発生したことを 示しており、部材の破壊を遅らせる効果がある。枝状部を含む締結金物は、鋼板を所定の形状に仕上げており、塑性変形などの特性に個体差がほとんどない。そのため本発明による締結金物は、最終段階を除いてグラフ毎の差が小さく、降伏耐力と最大荷重のいずれもバラツキ係数が1に近くなる。その結果、試験結果の太枠内に示すように、本願発明によるものは、従来のもの に比べて短期許容耐力が向上している。 【0048】 本発明による締結金物の試験結果に基づいて変位-荷重のグラフを作成すると、試験開始から終了までの間で、グラフとX軸で囲まれる面積(試験結果の積分値)が、従来のものに比べて大きくなった。つまり締結金物の塑性変形によって、より多くのエネルギーが吸収されていることが判明した。 【0049】 図11は、図2に示す締結金物に過大な荷重が作用して塑性変形した状態を示している。変形前の枝状部23、27は、前面部11から後縁部31に向けて、上向きに傾斜している。しかし後縁部31に過大な垂直荷重が作用すると、前縁板13と枝状部23、25、27との接続部分を中心として、枝状部23、25、27が回転するように変形して、右側の図 のように、枝状部23、25、27が下向きになる。さらにピン孔36やピン溝34は、下側に押し込まれるように変形して、ピン孔34は楕円形になり大径化する。 2 甲5に基づく新規性欠如(争点3)について事案に鑑み、争点3から判断する。 (1) 本件発明と甲5発明の相違点ア意匠に係る物品を柱材連結金具とする意匠登録 になり大径化する。 2 甲5に基づく新規性欠如(争点3)について事案に鑑み、争点3から判断する。 (1) 本件発明と甲5発明の相違点ア意匠に係る物品を柱材連結金具とする意匠登録公報である甲5文献には、別紙甲5図面記載のとおりの図面の記載がある(甲5)。これによれば、甲5文献には次の発明の開示があるといえる。 5a 柱材の側面に、梁材の端面を丁字状に連結するための連結金具であっ て、5b 前記柱材の側面に接触し且つボルトで前記柱材に固定される取付板部と、前記梁材の端部に加工されたスリットに差し込まれ且つドリフトピンで前記梁材に固定される支持板部とを有し、前記取付板部と前記支持板部は離れて配置され、 5c 前記取付板部には、ボルトを挿通するためのボルト孔が設けられ、前 記支持板部には、ドリフトピンを挿通係止するための係止孔と、ドリフトピンを受け止める溝状切欠部とが設けられ、5d 前記取付板部と前記支持板部は、帯状に延びる複数の細板部を介して一体化している柱材連結金具。 イ本件発明は、前記前提事実(3)の特許請求の範囲の請求項1記載のとおり であり、甲5発明が本件発明の構成要件A~Cの構成を備えていることには争いがないところ、本件発明と甲5発明は、次の点で一応相違する。 [相違点1]本件発明は、「複数の枝状部」について、「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため」との目的(枝状部の作用・効果)が記載されて いるが、甲5発明は、「複数の細板部」について、過大な荷重が作用した際にどのような目的・作用・効果を奏するか明確な言及がない点。 (2) 相違点1についてア構成要件Dの「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため」の意義 本件明細書によれば、 際にどのような目的・作用・効果を奏するか明確な言及がない点。 (2) 相違点1についてア構成要件Dの「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため」の意義 本件明細書によれば、本件発明が解決しようとする課題は、締結部に過大な荷重が作用すると、まずドリフトピンの周囲で木材にヒビ割れが発生して、これが次第に成長して梁が破壊されることが多いため、締結金物単体の強度を向上するだけでは、締結部の強度向上には結び付かない場合があるところ、木材は、節の有無や含水率などの様々な要因で強度に個体差 があり、破壊に至るまでの過程も不規則であるので、締結部の安全性や安定性を確保するには、締結金物を意図的に変形させてエネルギーを吸収して、部材のヒビ割れの発生や成長をできるだけ遅くすることが好ましいことから、梁などの部材に過大な荷重が作用した際、部材の破壊をできるだけ遅くすることができ、安全性や安定性に優れた締結金物を提供すること であり(【0008】、【0010】)、このような課題を解決するための手段 として、前面部と後縁部を複数の枝状部で一体化し、そうすることで、ドリフトピン等に過大な荷重が作用した際、枝状部の根元付近を支点として、枝状部が押し下げられるように塑性変形していくことによって、エネルギーが吸収され、部材に作用する負荷が軽減して、部材のヒビ割れの発生や成長をできるだけ遅くすることとし(【0017】)、これによる本件発明の 効果は、支持部材と結合部材との間に過大な荷重が作用した際、枝状部の応力が高くなり、その結果、枝状部は、部材のヒビ割れが成長する前に塑性変形していき、エネルギーが吸収され、部材の破壊をできるだけ遅くすることができることである(【0023】)。 また、本件明細書の【発明を実施する 結果、枝状部は、部材のヒビ割れが成長する前に塑性変形していき、エネルギーが吸収され、部材の破壊をできるだけ遅くすることができることである(【0023】)。 また、本件明細書の【発明を実施するための形態】には、枝状部23、 25、27の断面積は有限であり、必然的に強度が劣るため、結合部材61に過大な荷重が作用すると、枝状部23、25、27は屈曲するように塑性変形していき、その際、荷重によるエネルギーを吸収して、部材の破壊をできるだけ遅くすることができること(【0033】)及び本件発明に係る枝状部を有する締結金物と、枝状部のない従来の締結金物に荷重をか けて比較する試験に基づき、本件発明に係る締結金物は、枝状部を設けたことで、早い段階で塑性変形が発生し、より多くのエネルギーが吸収され、部材の破壊を遅らせる効果があり、また、短期許容耐力が向上すること(【0042】〜【0048】)が記載されている。 以上の記載によれば、本件発明は、前面部と後縁部を複数の枝状部で一 体化する構成を備える締結金物が、このような枝状部の構成を備えない従来の締結金物より必然的に強度が劣ることを踏まえて、このような枝状部の構成を、課題を解決するための手段として採用したものであり、その結果、過大な荷重が作用した際に、枝状部が塑性変形していくことによって、エネルギーが吸収され、部材の破壊をできるだけ遅くするという作用・効 果が得られることにより、課題を解決するものであるといえる。 そして、本件明細書には、上記の作用・効果を得るために必要な構成として、前面部と後縁部を複数の枝状部で一体化する以上の構成は開示されていないから、構成要件Dの「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため」との記載は、前面部と後縁部を複数の枝状部で 必要な構成として、前面部と後縁部を複数の枝状部で一体化する以上の構成は開示されていないから、構成要件Dの「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため」との記載は、前面部と後縁部を複数の枝状部で一体化する構成により果たそうとする目的ないし必然的に得られる作用・効果を示すものに すぎず、発明の構成を限定する意味をもたない。 イ相違点1が実質的な相違点といえるか柱材連結金具は締結金物であり、その性質上、過大な荷重が作用する場合があることは自明であるところ、前記(1)に説示したところに照らせば、甲5発明の柱材連結金具は、本件発明の締結金物と、形状において、同一 の構成を備えている。 そして、金属製の部材の使用時に、締結金物に耐力強度を超える荷重が作用した場合、締結金物に塑性変形が生じること、及び、枝状部の構成を備える締結金物は、枝状部の構成を備えない締結金物より、耐力強度が劣り塑性変形しやすいことは本件出願時における技術常識であり(当事者間 に争いがない。)、これらの技術常識を踏まえれば、甲5発明の複数の細板部は、本件発明と形状において同一の構成を備えることにより、「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため」と表現される作用・効果を必然的に得られるものである。また、甲5文献において前記⑴アの構成5d を備えることの目的又は作用・効果について明確な言及がないとしても、甲5 発明の構成により得られる作用・効果が変わるものではない。 そうすると、相違点1は、実質的な相違点ではなく、本件発明は、甲5発明と実質的に同一の構成を備えるといえるから、新規性を欠く。 ウ以上に対し、原告らは、①本件発明の基本的技術思想は、枝状部の介在によって、締結金物が破壊しない場合を前提とする部材の破壊を遅延させ、 締結 一の構成を備えるといえるから、新規性を欠く。 ウ以上に対し、原告らは、①本件発明の基本的技術思想は、枝状部の介在によって、締結金物が破壊しない場合を前提とする部材の破壊を遅延させ、 締結金物及び部材の双方の破壊を想定する短期許容耐力を向上させるとい う二つの意味で、部材の破壊を生じ難くすることであり、②構成要件Dの「過大な荷重」は、支持部材又は結合部材の少なくとも一方において、ひび割れが発生するように作用する荷重を客観的な基準とし、構成要件Dは、所定の数、長さ、幅、厚さを有する枝状部が、このような過大な荷重に対応して塑性変形を可能とするような種類の金属を採用していることを前提 としているとして、意匠を開示する文献である甲5文献に、上記①②の点の開示があるといえないから、本件発明と甲5発明が実質的に同一であるとはいえないと主張する。 しかしながら、上記①の点について、前記アによれば、本件発明の技術思想は、前面部と後縁部を複数の枝状部で一体化する構成を備える締結金 物が、このような枝状部の構成を備えない従来の締結金物より必然的に強度が劣ることを踏まえて、このような枝状部の構成を採用し、その結果、過大な荷重が作用した際に、枝状部が塑性変形していくことによって、エネルギーが吸収され、部材の破壊をできるだけ遅くするというものであり、原告らの主張は、本件明細書に基づくものではない。また、上記②の点に ついて、本件明細書に、枝状部の数、長さ、幅、厚さ等に応じた「過大な荷重」の程度を特定する記載はなく、まして、原告らの主張する客観的な基準に基づくものであることの記載はないし、締結金物の金属の種類についての記載もない。本件発明に上記①②の事項が含まれていると解することはできないから、原告らの主張は前提を欠く。 主張する客観的な基準に基づくものであることの記載はないし、締結金物の金属の種類についての記載もない。本件発明に上記①②の事項が含まれていると解することはできないから、原告らの主張は前提を欠く。 甲5発明の柱材連結金具の複数の細板部は、本件発明の締結金物の複数の枝状部と形状において同一の構成を備えることにより、「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため」と表現される作用・効果を必然的に得られるのは前記イのとおりであり、甲5文献が意匠を開示する文献であることや、甲5文献に「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため」 との記載がないことは、前記イの判断を左右するものではない。 したがって、原告らの主張を採用することはできない。 (3) その他、原告らが主張するところを検討しても、前記(2)の結論を左右するものとはいえず、本件発明は、甲5発明と実質的に同一の構成を備えているから、新規性を欠いており、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。 よって、原告らは被告に対してその権利を行使することができない。 3 訂正に係る請求項に基づく請求(争点6)について原告らは、令和6年4月24日の第4回弁論準備手続期日において、訂正の再抗弁は主張しない旨を述べ、同年12月24日の第6回弁論準備手続期日において、原告が特許請求の範囲の請求項1の訂正請求をし、被告各製品がその 技術的範囲に属することを訂正の再抗弁として主張するものではなく、上記訂正に係る請求項の充足性の判断は求めない旨及び侵害論についての主張立証は以上である旨を述べた。同日の侵害論の心証開示を経た後、原告らは、同月26日付け訴えの変更申立書を提出し、被告各製品が上記訂正請求に係る請求項に記載された発明の ない旨及び侵害論についての主張立証は以上である旨を述べた。同日の侵害論の心証開示を経た後、原告らは、同月26日付け訴えの変更申立書を提出し、被告各製品が上記訂正請求に係る請求項に記載された発明の技術的範囲に属することを、請求原因として追加する旨を述べた。 そこで検討するに、原告は、令和6年3月25日、本件特許の特許無効審判請求事件(無効2023―800081)において訂正請求をしたが、当該訂正請求に対する判断はされておらず、訂正は確定していない(甲12、弁論の全趣旨)。そうすると、本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は前記第2の2(3)に認定したとおりであって、訂正請求に係る請求項とは異なるものであるから、原告らの主張は、前提を欠く。 4 以上によれば、その余の点を判断するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がない。 第5 よって、原告らの請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官髙橋彩 裁判官勝又来未子 裁判官吉川慶は、差支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官髙橋彩 (別紙)物件目録 1 TN-18 2 TN-24 3 TN-33 4 TMA-09・90 5 TMA-18・90 6 TMA-24・90以上 (別紙)被告製品図 8・90 6 TMA-24・90以上 (別紙)被告製品図 (別紙)明細書図面 【図1】 【図2】 【図3】 【図8】 【図9】 【図10】 【図11】 【図12】 (別紙)甲5図面 【斜視図】 【正面図】 【使用状態を示す参考図】
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