平成28年9月23日判決言渡平成26年(行ウ)第70号年金債権差押処分等取消請求事件主文 1 本件訴えのうち,豊島区長が原告に対して平成19年度から平成21年度分までの特別区民税・都民税徴収のためにした平成25年4月25日付け老齢年金に係る債権の差押処分のうち平成25年6月から平成28年8月までに支給された老齢年金に係る部分の取消しを求める部分を却下する。 2 本件訴えのうちその余の部分に係る請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 豊島区長が原告に対して平成19年度から平成21年度分までの特別区民税・都民税徴収のためにした平成25年4月25日付け老齢年金に係る債権の差押処分(以下「本件年金債権差押処分」という。)を取り消す。 2(1) 主位的請求被告は,原告に対し,616万2627円及びうち24万5038円に対する平成25年4月15日から,うち35万0389円に対する平成25年4月16日から,うち10万円に対する平成25年4月25日から,うち30万円に対する平成25年6月17日から,うち30万円に対する平成25年8月16日から,うち30万円に対する平成25年10月16日から,うち29万7000円に対する平成25年12月13日から,うち29万7000円に対する平成26年2月17日から,うち29万7000円に対する平成26年4月16日から,うち29万6000円に対する平成26年6月16日から,うち29万6000円に対する平成26年8月18日から,うち29万6000円に対する平成26年10月16日から,うち29万6000円に対する平成26年12月15日から,うち29万6000円に対す る平成27年2月16日から,うち29万6000円に対する平成27年 0円に対する平成26年10月16日から,うち29万6000円に対する平成26年12月15日から,うち29万6000円に対す る平成27年2月16日から,うち29万6000円に対する平成27年4月16日から,うち29万7000円に対する平成27年6月16日から,うち29万7000円に対する平成27年8月17日から,うち29万7000円に対する平成27年10月16日から,うち29万7000円に対する平成27年12月15日から,うち29万7000円に対する平成28年2月15日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 予備的請求被告は,原告に対し,360万2389円及びうち25万0389円に対する平成25年4月23日から,うち20万円に対する平成25年6月24日から,うち20万円に対する平成25年8月23日から,うち20万円に対する平成25年10月23日から,うち19万7000円に対する平成25年12月20日から,うち19万7000円に対する平成26年2月24日から,うち19万7000円に対する平成26年4月23日から,うち19万6000円に対する平成26年6月23日から,うち19万6000円に対する平成26年8月25日から,うち19万6000円に対する平成26年10月23日から,うち19万6000円に対する平成26年12月22日から,うち19万6000円に対する平成27年2月23日から,うち19万6000円に対する平成27年4月23日から,うち19万7000円に対する平成27年6月23日から,うち19万7000円に対する平成27年8月24日から,うち19万7000円に対する平成27年10月23日から,うち19万7000円に対する平成27年12月22日から,うち19万7000円に対する平成28年2月22日から各 る平成27年8月24日から,うち19万7000円に対する平成27年10月23日から,うち19万7000円に対する平成27年12月22日から,うち19万7000円に対する平成28年2月22日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告は,豊島区長により,滞納していた平成19年度分から平成21年度分までの特別区民税・都民税につき,平成25年4月15日付けで原告の銀行に 対する預金に係る債権の差押えを受け(以下「本件預金債権差押処分」という。),同月16日付けで第三債務者から給付を受けた金銭の全額を被告に配当され(以下「本件預金債権配当処分」という。),さらに同月25日付けで原告の老齢年金の支払請求権の差押えを受け(本件年金債権差押処分),同年6月以降2か月おきに第三債務者から給付を受けた金銭の全額を被告に配当された(以下,平成25年6月以降平成28年2月までにされた配当処分を総称して「本件各年金債権配当処分」という。)。 本件は,原告が,平成24年11月以降,専務理事又は代表理事をしていた一般財団法人P1協会(以下「本件協会」という。)から,報酬の支払を実際には受けていなかった,あるいは,平成25年4月からは報酬が減額されていたなどとして,被告に対し,①本件年金債権差押処分は,原告が上記報酬として月額15万円の支払を受けていたことを前提として,国税徴収法(以下「徴収法」という。)77条及び76条の規定に基づいて計算をしたものであって,差し押さえることができない部分について差し押さえたものであるから違法であるとしてその取消しを求めるとともに,②本件預金債権差押処分は,年金を原資とする預金を差し押さえたもので違法であって,これに後続する本件預金債権配当処分も違法であり,本件各年金債権配当処分も本件年 あるとしてその取消しを求めるとともに,②本件預金債権差押処分は,年金を原資とする預金を差し押さえたもので違法であって,これに後続する本件預金債権配当処分も違法であり,本件各年金債権配当処分も本件年金債権差押処分に後続するもので違法であるなどとして,主位的に国家賠償として,被告が上記各配当処分により平成28年2月までに配当を受けた金額相当,慰謝料等の損害賠償を,予備的に不当利得として,被告が同各配当処分により平成28年2月までに配当を受けた金額相当の返還を求める事案である。 1 関係法令の定め別紙「関係法令の定め」に記載したとおりである(なお,同別紙で定める略称等は,以下においても用いることとする。)。 2 前提事実(証拠等を掲記しない事実は,当事者間に争いがない。)(1) 本件協会は,昭和46年7月9日に設立され,平成24年7月2日に財 団法人P2協会からその名称を変更した,栄養,運動,休養等を総合した健康生活の実践に関する調査研究等の事業を行う一般財団法人であり,原告は,遅くとも平成24年7月以降,本件協会の専務理事を務め,平成25年11月以降,本件協会の代表理事を務めている(乙10)。 (2) 豊島区長は,原告の平成17年度から平成21年度までの特別区民税・都民税(平成16年から平成20年までの原告の所得に係るもの)について,以下のとおり決定し,それぞれ原告に通知した。 ア豊島区長は,原告の平成17年度特別区民税・都民税について,平成17年5月10日,給与支払報告書に基づき76万3200円と賦課決定し,同月27日,確定申告書に基づき82万1600円と賦課決定し,さらに平成20年5月9日,所得税の更正に基づき156万2600円と賦課決定した。 イ豊島区長は,原告の平成18年度特別区民税・都民税について,平成1 告書に基づき82万1600円と賦課決定し,さらに平成20年5月9日,所得税の更正に基づき156万2600円と賦課決定した。 イ豊島区長は,原告の平成18年度特別区民税・都民税について,平成18年4月7日,給与支払報告書に基づき83万0800円と賦課決定し,その後,平成20年5月9日,所得税の更正に基づき212万7600円と賦課決定した。 ウ豊島区長は,原告の平成19年度特別区民税・都民税について,平成19年5月9日,給与支払報告書及び確定申告書に基づき59万8800円と賦課決定し,その後,同年12月6日,修正申告書に基づき83万8800円と賦課決定した。 エ豊島区長は,原告の平成20年度特別区民税・都民税について,平成20年6月9日,確定申告書に基づき9万円と賦課決定した。 オ豊島区長は,原告の平成21年度特別区民税・都民税について,平成21年6月9日,確定申告書に基づき4万2800円と賦課決定した。 (3) 豊島区長は,前記(2)の特別区民税・都民税について,各納期限までに原告からの納付がなかったため,原告に対し,以下のとおりの年月日に延滞金 も含め,督促状を発した。 ア平成19年10月9日平成19年8月31日を納期限とする本税14万9000円イ平成20年3月3日平成20年1月31日を納期限とする本税38万9000円ウ平成20年8月4日平成20年6月30日を納期限とする本税74万1000円平成20年6月30日を納期限とする本税129万6800円平成20年6月30日を納期限とする本税2万4000円エ平成20年10月6日平成20年9月1日を納期限とする本税2万2000円オ平成20年12月8日平成20年10月31日を納期限とする本税2万2000円カ平成21年8月3日 円エ平成20年10月6日平成20年9月1日を納期限とする本税2万2000円オ平成20年12月8日平成20年10月31日を納期限とする本税2万2000円カ平成21年8月3日平成21年6月30日を納期限とする本税1万2800円キ平成21年12月7日平成21年11月2日を納期限とする本税1万円ク平成22年3月8日平成22年2月1日を納期限とする本税1万円(4) 豊島区長は,平成25年4月15日,前記(3)で督促状を発した特別区民税・都民税(ただし,前記(3)アについては本税3万4000円)につき,第三債務者を株式会社みずほ銀行(以下「みずほ銀行」という。)とし,差押債権を原告がみずほ銀行(取扱店名・P3支店)に対して有する預金の払戻請求権25万0389円とする本件預金債権差押処分をした(甲1)。 (5) 豊島区長は,本件預金債権差押処分により差し押さえ,第三債務者から給付を受けた25万0389円について,平成25年4月16日,全額を前 記(3)アに記載した本税のうち3万4000円及び前記(3)イに記載した本税のうち21万6389円の合計25万0389円に配当する旨の配当処分をし(本件預金債権配当処分),同月23日,被告に対し,その交付をした(甲2)。 (6) 豊島区長は,平成25年4月25日,前記(3)で督促状を発した特別区民税・都民税(ただし,前記(3)アについては本税0円,前記(3)イについては本税17万2611円)につき,第三債務者を厚生労働省年金局事業企画課長とし,差押債権を「原告が支払を受けるべき,平成25年6月以降に支給される老齢年金のうち,徴収法76条1項各号に掲げる金額を控除した金額の支払請求権(ただし,滞納金額(本税231万1211円,延滞金180万6400円の合計41 受けるべき,平成25年6月以降に支給される老齢年金のうち,徴収法76条1項各号に掲げる金額を控除した金額の支払請求権(ただし,滞納金額(本税231万1211円,延滞金180万6400円の合計411万7611円)に満つるまで)」とする本件年金債権差押処分をした。 (7) 豊島区長は,本件年金債権差押処分により差し押さえ,第三債務者から給付を受けた老齢年金について,以下のとおり,全額を前記(6)の特別区民税・都民税の配当をした当時の残額に配当する旨の配当処分をし(本件各年金債権配当処分),被告に交付したところ,更に平成28年4月分及び同年6月分として,第三債務者から給付を受けた老齢年金各19万7000円について,全額を前記(6)の特別区民税・都民税の配当をした当時の残額に配当する旨の配当処分をし,被告に交付した(乙71)。 前記(2)の特別区民税・都民税は,本件各年金債権配当処分により,平成27年4月15日,本税が完納となったところ,口頭弁論の終結の日である平成28年7月1日現在における未納の延滞金の額は,46万5811円である(乙71)。 配当処分の日金額交付の日平成25年6月17日 20万円同月24日平成25年8月16日 20万円同月23日 平成25年10月16日 20万円同月23日平成25年12月13日 19万7000円同月20日平成26年2月17日 19万7000円同月24日平成26年4月16日 19万7000円同月23日平成26年6月16日 19万6000円同月23日平成26年8月18日 19万6000円同月25日平成26年10月16日 19万6000円同月23日平成26年12月15日 19万6 6年6月16日 19万6000円同月23日平成26年8月18日 19万6000円同月25日平成26年10月16日 19万6000円同月23日平成26年12月15日 19万6000円同月22日平成27年2月16日 19万6000円同月23日平成27年4月16日 19万6000円同月23日平成27年6月16日 19万7000円同月23日平成27年8月17日 19万7000円同月24日平成27年10月16日 19万7000円同月23日平成27年12月15日 19万7000円同月22日平成28年2月16日 19万7000円同月23日(8) 原告は,平成25年6月14日,豊島区長に対し,本件年金債権差押処分について,異議申立てをしたところ,豊島区長は,同年8月13日,同異議申立てを棄却する旨の決定をした。 (9) 原告は,平成26年2月12日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点(1) 本件年金債権差押処分の適法性(2) 国家賠償法に基づく損害賠償請求権の存否(3) 不当利得返還請求権の存否 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件年金債権差押処分の適法性)について(被告の主張の要旨) ア本件年金債権差押処分の効力給料等の差押禁止額は,第三債務者である給料等の支払者において,その手許にある資料により安易に計算できるよう措置されており,徴収法76条1項1号から4号までの金額が定まれば,同項5号の金額も自動的に定まるところ,差押時点では,給料等の総支給額が確定していないのが通例であり,具体的な差押金額を差押通知書に記載することは著しく困難であるから,給料等の差押通知書には,差押額の計算方法を記載するにとどまり, ろ,差押時点では,給料等の総支給額が確定していないのが通例であり,具体的な差押金額を差押通知書に記載することは著しく困難であるから,給料等の差押通知書には,差押額の計算方法を記載するにとどまり,具体的な金額は原則として記載されない。 徴収法76条1項は,滞納者が同一の期間につき,二以上の給料等の支払を受けるときは,その合計額につき,4号及び5号に掲げる金額に係る限度を計算するものとする旨を定めるところ,給料等の支払者は,差押えが禁止された他の給料等の額を知り得ないため,税務署長等において,給料等の支払者に対し,適当な方法により,差押えが禁止された他の給料等の額を通知することとされており,本件においても,豊島区長は,厚生労働省年金局事業企画課長に対し,差押通知書とともに,年金等差押債権の差押可能額の算定についてと題する書面を送付して,「年金とは別に月平均10万円以上の給与収入があるため,差押可能額の計算においては,国税徴収法76条第1項第4号の金額は0円で算定してください。」と通知した。 税務署長等が,給料等の支払者に対して通知した他の給料等の額及び差押可能金額に誤りがあった場合,その差押えの効力は,通知に係る差押可能金額ではなく,客観的な他の給料等の額を前提とした実際の差押可能金額の範囲にのみ生じると解すべきである。 したがって,税務署長等の通知に係る他の給料等の額及び差押可能金額が誤っていたとしても,その一事をもって,差押え自体が違法となることはないと解すべきところ,本件においても,仮に豊島区長による厚生労働 省年金局事業企画課長に対する通知に誤りがあったとしても,本件年金債権差押処分が違法となることはない。 イ差し押さえることができない金額についてまた,本件においては,豊島区長が,第三債務者から,本件年金債権差 課長に対する通知に誤りがあったとしても,本件年金債権差押処分が違法となることはない。 イ差し押さえることができない金額についてまた,本件においては,豊島区長が,第三債務者から,本件年金債権差押処分により,差押えが及んでいるものとして給付を受けた金額は,客観的に差押えが可能な金額の範囲内であるから,この点からしても,本件年金債権差押処分に違法はない。 後記ウで主張するとおり,原告の本件協会からの報酬について,平成25年4月以降,月額5万円に減額されたとの原告の主張は事実に反しており,平成24年11月以降,支払われていないとの原告の主張も信用することができないから,差し押さえることができない金額を計算するに当たっては,次の(ア),(イ)のとおり,原告の本件協会からの報酬を月額15万円として計算すべきであり,これを2か月単位で計算すると25万円となり,次の(ウ)のとおり,その余の20万円は差し押さえることができることとなる。 (ア) 収入(2か月分) 計45万円(1000円未満切捨て)a 給料等月額10万円(報酬月額15万円から,各種控除を想定して念のため5万円を控除した金額)×2か月=20万円b 老齢年金 2か月分で25万0224円(イ) 徴収法76条1項各号に掲げる金額計25万円a 1号~3号なしb 4号 10万円×2か月=20万円c 5号 {45万円-(0円+20万円)}×20%=5万円(ウ) 差し押さえることができる金額 45万円-25万円=20万円ウ原告の報酬額の減額及び受領の有無等について前記イのとおり,本件年金債権差押処分においては,原告の本件協会か らの報酬を月額15万円として差し押さえることのできない金額を計算すべきところ,下記(ア)のとおり,原告が主張するように,平成2 イのとおり,本件年金債権差押処分においては,原告の本件協会か らの報酬を月額15万円として差し押さえることのできない金額を計算すべきところ,下記(ア)のとおり,原告が主張するように,平成25年4月以降報酬が月額5万円に減額されたとの事実は認められない。 そして,徴収法76条1項の柱書き後段は,「二以上の給料等の支払を受けるときは,その合計額」と規定しているところ,同条による差押えの対象は将来の受給権であり,「合計額」を算定する際に合算する給料等についても将来の受給権であって,差押えの時点においては,将来,実際に支払がされるかどうかは不明であるから,滞納者等が給料等の請求権を有している場合には,現実の支払の有無にかかわらず,原則として「給料等の支払を受けるとき」に該当すると解すべきであり,差押後に現実に支払がないことで滞納者の生活が困窮する場合には,差押えの解除(地方税法15条の7第3項等)で対応すれば足りる。そうすると,仮に原告が本件協会から報酬を受け取っていないとしても,平成25年4月以降の報酬の支払が見込めないといった事情も存在していない以上,報酬月額を15万円として差し押さえることができる金額を算定することに違法はない。 さらに,平成24年11月以降,報酬を一切受け取っていないとの原告の主張は,次の(イ)のとおり,信用することができないし,仮に未払であっても,差し押さえることのできる金額を算定するに当たり,上記報酬金額を合算することは許容されると解される。 したがって,本件年金債権差押処分は適法にされたというべきである。 (ア) 原告の報酬額が月額5万円に減額された事実が認められないこと原告は,被告に対し,平成25年7月16日,「平成25年3月37日」に開催された理事会において「専務理事の受けるべき報酬金額決定 (ア) 原告の報酬額が月額5万円に減額された事実が認められないこと原告は,被告に対し,平成25年7月16日,「平成25年3月37日」に開催された理事会において「専務理事の受けるべき報酬金額決定の件」につき可決決定したとの議事録(甲12,13。以下「本件議事録2」という。)を提出したが,それ以前に本件年金債権差押処分に係る同年6月14日付け異議申立書の添付資料として提出していた同一の 日時(平成25年3月27日)場所で開催されたという理事会の議事録(乙4。以下「本件議事録1」という。)では,本件議事録2とは出席者や内容が異なっており,本件議事録1に添付されていた「平成25年度収支予算-支出-(案)」では役員報酬が500万円から60万円に減額されているものの,本件議事録1と割り印がされるなどして一体となったものではない。 そして,豊島区長において,本件協会の監事であるP4税理士に聴取したところによれば,P4税理士は,平成25年3月27日に開催された理事会(以下「本件理事会」という。)に出席したところ,同理事会では専務理事の受けるべき報酬金額の決定についての議案は出されておらず,予算書(案)の議案の中でも専務理事の報酬については話し合われなかったと述べている。 また,本件協会の平成23年度以降の予算額が増加していることからすると,本件協会が資金難であるとは到底認め難く,資金難により原告の報酬が減額されたとの原告の主張は信用することができない。 加えて,原告の具体的な報酬額についても,世田谷税務署に提出された給与支払報告書からすると,原告は,平成23年度中には,役員報酬の予算額よりも多くの収入を得ていた可能性が高く,平成24年度中も,役員報酬の予算額から想定される収入を上回っている。 以上からすると,原告の報酬が月額5万円 ,原告は,平成23年度中には,役員報酬の予算額よりも多くの収入を得ていた可能性が高く,平成24年度中も,役員報酬の予算額から想定される収入を上回っている。 以上からすると,原告の報酬が月額5万円に減額されたとは認められない。 (イ) 報酬を受け取っていないとの点について原告が,本件訴え提起時には証拠として通帳を提出しなかった預金口座として,三井住友銀行P5支店の預金口座があるところ,同口座には,本件協会の理事長ないし代表理事であるP6から,平成25年8月28日,同年9月30日及び同年11月1日に各50万円の振込みがされ, 即日又は翌日にいずれも引き出されており,他にも多数の入金記録が存在する。このうち,P6からの振込みは,実質的には本件協会からの報酬である可能性が高い。 また,原告は,平成24年7月2日から平成25年11月20日までは本件協会の専務理事であり,同日以降は代表理事であるところ,平成24年12月20日以降は,給与担当にもなっており,事実上,本件協会の資金を意のままに動かせる地位にある。 上記預金口座以外にも豊島区長が把握していない隠し口座等が存在する可能性や,豊島区長の調査を免れるために現金による受け渡しがされている可能性も想定されるところ,本件協会においては,同一の日時場所で開催された議事録が二つ存在し,原告において預金口座の存在を秘匿するなど,滞納処分の免脱が疑われるような行為がされていることからすれば,平成24年11月以降,報酬を一切受け取っていないとの原告の主張は信用することができない。 そして,原告は,本件協会の代表者であり,経理を掌握していて,その自由意思によって本件協会から報酬を支出できる立場にあることからすれば,仮に本件協会から原告への報酬が未払であったとしても,差し押さえることがで は,本件協会の代表者であり,経理を掌握していて,その自由意思によって本件協会から報酬を支出できる立場にあることからすれば,仮に本件協会から原告への報酬が未払であったとしても,差し押さえることができる金額を算定するに当たっては,当該報酬を合算することは許容されると解される。 エ本件年金債権差押処分の適法性本件年金債権差押処分は,前記アのとおり,仮に豊島区長のした第三債務者に対する通知において差押可能金額を誤っていたとしても違法とはなり得ないものである上,前記イ,ウのとおり,差押可能金額の範囲内でされたものであることを含め,滞納処分による差押えに必要な手続を履践した上でしたものであるから,適法である。 (原告の主張の要旨) ア本件年金債権差押処分の効力豊島区長は,本件年金債権差押処分に際し,第三債務者に対し,「年金とは別に月平均10万円以上の給与収入があるため,差押可能額の計算においては,国税徴収法76条第1項4号の金額は0円で算定してください。」とした書面の送付及び口頭での説明により,差押可能金額の計算方法を通知したところ,これは,複数の給料等の債権が存在する場合における差押処分の仕組み上,処分と計算方法の通知が一体不可分であることを表している。 そして,豊島区長による上記通知がされた後,その計算方法を改める旨の別途の通知がされない限り,第三債務者は,当初の通知内容に基づいて差押可能金額を算定し,豊島区長への支払を継続するのであるから,上記通知は,本件年金債権差押処分とあいまって,原告の年金債権に対する差押金額の範囲を具体的に規律するものである。 したがって,本件年金債権差押処分の効力は,通知に係る差押可能金額の全体に及ぶのであって,実際の差押可能金額の範囲に限定されるわけではないから,通知内容が実際の差 囲を具体的に規律するものである。 したがって,本件年金債権差押処分の効力は,通知に係る差押可能金額の全体に及ぶのであって,実際の差押可能金額の範囲に限定されるわけではないから,通知内容が実際の差押可能金額を超過している場合,本件年金債権差押処分全体が違法となる。 被告の主張するように,通知内容が実際の差押可能金額を超過していても,差押えの効力は,実際の差押可能金額の限度で及ぶとすれば,差押えがされた範囲を司法手続で争うことができず,処分庁が差押可能金額についての通知内容の誤りを自ら認めない限り,差押可能金額を超過した違法な権利侵害が継続されることとなるが,これが被処分者の手続保障に照らして不当な解釈であることは明らかである。 イ差し押さえることができない金額について本件協会は,原告の報酬につき,平成24年11月までは月額50万円としていたが,同月は資金難のため支給することができず,同年12月以 降は月額15万円にしたものの,やはり資金難のため支給することができなかった。そして,本件協会は,平成25年4月以降,原告の報酬を更に月額5万円に減額したが,これも支給することができていない。 そうすると,本件年金債権差押処分においては,原告が本件協会から報酬を受けていない前提で差し押さえることができない金額について計算すべきであって,その金額は,以下のとおり,1か月当たり10万5000円となり,差し押さえることができるのは1か月当たり2万円であるから,本件年金債権差押処分は違法である。 (ア) 収入(1か月分) 12万5000円老齢年金 1か月12万5000円(イ) 徴収法76条1項各号に掲げる金額 10万5000円a 1号~3号なしb 4号 10万円c 5号 (12万5000円-10万円)×20%=500 老齢年金 1か月12万5000円(イ) 徴収法76条1項各号に掲げる金額 10万5000円a 1号~3号なしb 4号 10万円c 5号 (12万5000円-10万円)×20%=5000円(ウ) 差し押さえることができる金額12万5000円-10万5000円=2万円ウ原告の報酬額の減額及び受領の有無等について下記(ア)及び(イ)のとおり,本件協会の資金状況に鑑み,本件協会からの原告の報酬は減額されている上,平成24年11月以降,一切支払われていない。 差押禁止財産の制度は,滞納者の生活保障の趣旨に基づくもので,生活権を侵害していないかという点は,抽象的な請求権を有しているか否かではなく,あくまでも現実の収入を得られるかどうかによって判断すべきものである。さらに,本件において豊島区長は,原告が平成24年11月以降,本件協会から報酬の支払を受けていないことを知っており,平成25年4月以降も現実に支払われる可能性が著しく低かったのであるから,徴 収法76条1項柱書きの「給料等」が将来の請求権であって,現実の支払がされるかどうか不確実であるという一般論とは,全く状況を異にしており,同列に論じられるべきものではない。差押えの解除(地方税法15条の7)は,飽くまでも裁量的な措置であって,行政庁の裁量判断に委ねられることからすると,差押えの時点において,給料等の現実の支払可能性が低い場合には,差し押さえることができる金額の算定においても,そのことを考慮に入れるべきである。 したがって,本件年金債権差押処分は,差押禁止債権を対象とするものであって,違法である。 (ア) 原告の報酬額が月額5万円に減額されたこと本件協会は,平成25年3月27日,P6,原告及びP7の3名の理事と,P4税理士,P8の2名の監事が出 権を対象とするものであって,違法である。 (ア) 原告の報酬額が月額5万円に減額されたこと本件協会は,平成25年3月27日,P6,原告及びP7の3名の理事と,P4税理士,P8の2名の監事が出席して開かれた本件理事会において,原告の報酬を同年4月から月額5万円に変更することを承認した。この点につき,本件議事録1(乙6)には,本件協会の平成25年度予算収支案が承認された旨記載されており,同予算案では,役員報酬が前年度の500万円から60万円に減額された旨記載されている。 本件議事録2(甲12,13)は,原告の健康保険・厚生年金保険の報酬額変更手続をするに当たり,社会保険労務士から,役員報酬金額について明確に決定した理事会の議事録が必要であると言われたところ,本件協会の理事3名において,原告の報酬減額については既に上記理事会において適法に承認されていたため,便宜上報酬金額を明示したものとして作成されたものである。 P4税理士は,本件理事会において,原告の報酬について話し合われなかったと説明しているようであるが,同理事会が開催される前に理事らは原告の報酬減額について説明を受けて納得しており,同理事会において質疑なく承認されたため,そのことをもって「話し合われなかった」 と述べたのである。 また,本件協会の予算額が増加していたとしても,予算は不確定な事業計画に基づき金額を割り振るものにすぎず,決算書によって示される実際の収益状況からすると,本件協会が資金難に苦しんでいることは明らかである。 そして,原告の平成23年の本件協会からの報酬は,理事会で決定された役員報酬の金額に沿ったものであり,平成24年の本件協会からの報酬についても,経理のミスで現実には支払われていない15万円が多く計上されているほかは,予算に従ったものであ 報酬は,理事会で決定された役員報酬の金額に沿ったものであり,平成24年の本件協会からの報酬についても,経理のミスで現実には支払われていない15万円が多く計上されているほかは,予算に従ったものである。 以上のとおり,原告の報酬は月額5万円に減額されている。 (イ) 報酬を受け取っていないことについて原告は,平成24年11月以降,本件協会から報酬を受領していない。 原告が,本件訴え提起時において,三井住友銀行P5支店の預金口座を証拠として提出していなかったのは,失念していたからにすぎず,豊島区長において全金融機関の預金口座を把握している以上,あえて秘匿するはずがない。 そして,上記預金口座へのP6からの3回にわたる各50万円の振込みは,平成25年5月21日の現金による50万円の貸付けと併せた200万円について,P6が,生活資金に困る原告に対して貸付けをしたものであり,本件協会から出たものではない。 そして,被告は,原告が本件協会の経理を掌握しており,本件協会から給与を支出することがきるにもかかわらず,未払にしているにすぎないとして,差し押さえることができる金額を計算するに当たっては,未払の給与を合算することは許容されると主張するが,事実に反する上,かかる主張は本件協会を私物化せよと主張するものであるし,滞納者の生活保障の趣旨に基づく差押禁止財産の制度からすれば,抽象的な請求 権の有無ではなく,現実の収入の有無によって生活権の侵害を判断すべきものであるから,被告の主張は理由がない。 (2) 争点(2)(国家賠償法に基づく損害賠償請求権の存否)について(原告の主張の要旨)ア本件預金債権差押処分及び本件預金債権配当処分の違法性本件預金債権差押処分の対象とされた,原告のみずほ銀行に対する預金債権25万0389円のう 請求権の存否)について(原告の主張の要旨)ア本件預金債権差押処分及び本件預金債権配当処分の違法性本件預金債権差押処分の対象とされた,原告のみずほ銀行に対する預金債権25万0389円のうち,25万0224円は,原告が生活維持のために受給していた老齢年金に相当するものであり,原告が,平成24年11月以降,本件協会から一切報酬を受けることなく職務に従事し,年金と知人からの借入金のみで生活していたことからすれば,本件預金債権差押処分は,原告の生活の途を閉ざすものに他ならない。 豊島区長による本件預金債権差押処分は,差押えが可能な範囲が制限されている原告の年金債権を狙い撃ちしたもので,他に原告に目立った財産がなく,原告の最低限度の生活を侵害するものであるから,預金口座に振り込まれた以上,預金債権に転化するため,差押禁止の対象とならないと機械的に解釈すべきではなかったし,差押えの禁止された児童手当が振り込まれた直後の預金口座を差し押さえた場合について,差押えが違法であるとした鳥取地判平成25年3月29日(金融商事判例1419号51頁)が存在することを認識しながら,十分に検討せずに本件預金債権差押をした。さらに,豊島区長は,本件預金債権差押処分をするに当たり,平成25年6月分以降の年金債権のみを差し押さえたり,預金債権のうち,徴収法76条,77条に従い計算した差押可能金額のみを差し押さえたりするなどの配慮もしていない。 また,豊島区長は,本件預金債権差押処分に至る前に原告の経済状況についての調査も十分に行っておらず,これは「狙い撃ち」の違法性を高める事情である。また,被告の徴税担当者は,抽象的な「経緯全体」,「滞 納者の行動」を本件預金債権差押処分における判断の一材料としたことを認めているところ,結局のところ原告に対する疑 性を高める事情である。また,被告の徴税担当者は,抽象的な「経緯全体」,「滞 納者の行動」を本件預金債権差押処分における判断の一材料としたことを認めているところ,結局のところ原告に対する疑惑の域を出ておらず,調査の結果具体的な財産の存在(困窮状況の否定)につながる事実が発見できなかったことを逆に裏付けている。また,豊島区長は,原告の「何らかの財産」を発見,特定することができないまま,抽象的な経緯や原告の行動に対する独自の推測に基づいて,原告には生活を維持するための「何らかの財産」があるとし,それを考慮事情として処分を行うという判断を行っているところ,これが,本来考慮すべきでない事情を処分の考慮要素に取り込んだものであることは明らかである。 以上のとおり,本件預金債権差押処分・同配当処分は,本来考慮すべきでない事情を考慮対象に入れ,反対に考慮すべき事情を考慮対象から外して行われたものであるから,裁量権の逸脱・濫用であることは明らかである。これは職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件預金債権差押処分をしたというほかなく,本件預金債権差押処分及び後続する同配当処分が国家賠償法上も違法であり,担当者に過失があったことは明らかである。 イ本件年金債権差押処分及び本件各年金債権配当処分の違法性前記(1)(原告の主張の要旨)のとおり,本件年金債権差押処分は違法であるところ,前記アのとおり,豊島区長は,原告の経済状況についての調査も十分に行わず,原告に他に財産が存するかどうかを考慮すべきではないにもかかわらず,これを考慮して本件年金債権差押処分をしており,豊島区長において,職務上通常尽くすべき注意義務が尽くしておらず,国家賠償法上違法と評価されるのであり,これに続く本件各年金債権配当処分も違法である。 また,本件 本件年金債権差押処分をしており,豊島区長において,職務上通常尽くすべき注意義務が尽くしておらず,国家賠償法上違法と評価されるのであり,これに続く本件各年金債権配当処分も違法である。 また,本件年金債権配当処分については,その1回目が平成25年6月24日に行われているところ,豊島区長は,原告から,それ以前の同月1 4日に本件年金債権差押処分の異議申立てを受け,本件協会からの原告の報酬が減額されたとの報告がされていたのであるから,遅くともこの報告以降は,差押可能金額の計算を修正し,客観的に差押可能な範囲についてのみ配当すべきであったのに,これをしておらず,この点においても国家賠償法上の違法がある。 ウ原告は,上記ア,イにより,本件預金債権差押処分及び本件預金債権配当処分に係る25万0389円,本件年金債権差押処分及び本件各年金債権配当処分(平成28年2月までに支給された老齢年金についてのもの)に係る335万2000円,慰謝料200万円,これらの1割に当たる弁護士費用56万0238円の損害を被った。 (被告の主張の要旨)ア本件預金債権差押処分及び本件預金債権配当処分について差押えが禁止される公的年金等であっても,債務者の預金口座に振り込まれて預金債権に転化した場合には,債務者の一般財産になっており,差押禁止債権としての属性を承継するものではないと解されているから,本件預金債権差押処分をもって年金債権に対する差押えと同視することはできず,また,前記(1)(被告の主張の要旨)のとおり,原告は,本件預金債権差押処分を受けた預金口座以外にも預金口座を有しており,本件預金債権差押処分を受けると生活を維持することができない状況にもなかったから,本件預金債権差押処分は何ら違法ではない。 さらに,仮に本件預金債権差押処分が行政処 座以外にも預金口座を有しており,本件預金債権差押処分を受けると生活を維持することができない状況にもなかったから,本件預金債権差押処分は何ら違法ではない。 さらに,仮に本件預金債権差押処分が行政処分として違法であるとしても,国家賠償法上は,ある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立して疑義が生じ,よるべき明確な判例,学説がなく,実務上の取扱いも分かれていて,そのいずれについても一応の論拠が認められる場合に,公務員がその一方の解釈に立脚して公務を執行したときは,後にその執行が違法と判断されたからといって,ただちに同公務員に過失があったものとす ることは相当でないところ,年金債権を原資とする預金債権の差押えを明確に否定する最高裁判所の判例ないし下級審の裁判例は見当たらず,被告の職員は,差押えを可能とする解釈に立脚して本件預金債権差押処分をしたから,公務員としての注意義務違反がないことは明らかである。 したがって,本件預金債権差押処分及びこれに続く本件預金債権配当処分について,国家賠償法上の損害賠償責任は生じない。 イ本件年金債権差押処分及び本件各年金債権配当処分について前記(1)(被告の主張の要旨)のとおり,本件年金債権差押処分及びこれに続く本件各年金債権配当処分に何ら違法はない。 また,豊島区長は,原告が滞納するようになっても,直ちには滞納処分を実施しておらず,その結果,滞納している住民税及び延滞金の一部が時効消滅しているところ,原告は,平成22年の12月頃に本件協会に復帰した後,原告の主張を前提としても,平成23年1月から3月までは月額108万円,同年4月から12月までは月額50万円と相当程度の報酬を得ているにもかかわらず,平成22年以降,滞納税等を全く支払っていないのであり,しかも,それだけの収入を得ているにも 3月までは月額108万円,同年4月から12月までは月額50万円と相当程度の報酬を得ているにもかかわらず,平成22年以降,滞納税等を全く支払っていないのであり,しかも,それだけの収入を得ているにもかかわらず,まとまった資産が発見されない状況にあった。このような状況において,被告の職員は,原告から,平成24年12月から,本件協会からの報酬が月額15万円に減額された旨の主張を受け,その根拠資料の提出が遅れたものの,虚偽と断ずることはできなかったから,給与減額があったことは認めることとした。さらに,被告の職員は,原告から,平成25年6月になって初めて,同年4月から本件協会からの報酬が更に月額5万円に減額された旨の主張を受けたが,その資料も信用性に欠けるものであったため,その主張を信用しなかったものであり,報酬が未払である旨の原告の主張も,信用し難いものであった。 以上の経緯等に照らせば,被告の職員において,原告は納税の意識が低 く,納税逃れのためにあらゆる方策を駆使しており,報酬の減額や未払いもその主張の一環であると考えたことは不合理ではなく,国家賠償法上の注意義務違反はない。 (3) 争点(3)(不当利得返還請求権の成否)について(原告の主張の要旨)前記(1),(2)(原告の主張の要旨)のとおり,本件預金債権配当処分及び本件各年金債権配当処分(平成28年2月までに支給された老齢年金についてのもの)は違法であり,原告は,被告に対し,これらにより配当された金銭相当額について不当利得返還請求権を有するところ,処分庁である豊島区長と被告は事実上一体であって,被告は,配当金の交付を受けた時点から,悪意の受益者となる。 (被告の主張の要旨)前記(1),(2)(被告の主張の要旨)のとおり,本件預金債権配当処分及び本件各年金債権 告は事実上一体であって,被告は,配当金の交付を受けた時点から,悪意の受益者となる。 (被告の主張の要旨)前記(1),(2)(被告の主張の要旨)のとおり,本件預金債権配当処分及び本件各年金債権配当処分は適法であるから,原告の主張は前提を欠く。 仮に本件預金債権配当処分や本件各年金債権差押処分が違法であるとしても,差押可能金額を超過する部分のみが,不当利得返還請求の対象となる。 また,仮に本件預金債権配当処分及び本件各年金債権配当処分に何らかの違法性があったとしても,被告には違法であることの認識も原告の生活権を侵害することの認識もない以上,悪意の受益者には当たらない。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を併せると,以下の事実が認められる。 (1) 原告の報酬等ア本件協会は,平成23年分の原告に対する報酬等の支払金額につき,同年1月から同年3月までは各月108万円,同年4月から同年12月までは各月50万円の合計774万円であるとして,特別区民税・都民税の賦 課決定の資料となる特別区に対する給与支払報告書を作成した(甲39,乙14)。 イ本件協会は,平成24年11月16日の理事会において,人件費の削減のため,同年12月から原告の報酬を月額50万円から月額15万円にする旨の決議をし,その旨を記載した議事録を作成した上で,同月5日,日本年金機構に対し,原告の報酬が同月1日から15万円になったとの届出をした(甲9~11)。 ウ本件協会は,平成24年12月14日,豊島区長に対し,同月5日付けで送付を受けた原告に対する給与等の支給についての照会について,書面(乙23)をもって,同年9月分及び同年10月分として,各月25日に本給を月額50万円,給料等から差し引かれる所得税,住民税及び社会保険料 受けた原告に対する給与等の支給についての照会について,書面(乙23)をもって,同年9月分及び同年10月分として,各月25日に本給を月額50万円,給料等から差し引かれる所得税,住民税及び社会保険料の金額を合計12万8100円として支給したが,同年11月分は支給していない旨の回答をした。なお,上記の書面には,同年12月から報酬が減額される旨の記載はされていない。(乙23,35)エ原告名義の興産信用金庫の普通預金口座には,本件協会から,平成23年11月から平成24年5月まで,毎月25日頃に41万円を超える振込入金があり(ただし,平成23年12月については50万円を超える振込入金があり,これとは別に,同月19日に246万3600円の振込入金がある。),平成24年6月以降も同年10月まで,毎月25日頃に37万円を超える振込入金があり,その金額は平成24年9月25日には37万1900円,同年10月25日には37万1015円となっている(乙7)。 (2) 本件報酬債権差押処分等ア豊島区長は,平成24年12月19日,前提事実(3)で督促状を発した特別区民税・都民税(ただし,前提事実(3)アについては本税3万4000円)につき,本件協会を第三債務者とし,差押債権を「原告が支払を受 けるべき平成24年12月以降支給の毎月の給料等のうち,国税徴収法第76条第1項各号に掲げる金額を控除した金額の支払請求権。ただし,上記滞納金額(本税256万1600円,延滞金167万7400円の合計423万9000円)に充つるまで。」とする差押処分(以下「本件報酬債権差押処分」という。)をし,併せて原告の報酬が月額50万円であることを前提に差押可能金額を計算すると,毎月の取立額は21万6000円になる旨の通知をし,その通知に,給与等の支払金額等が変更と 酬債権差押処分」という。)をし,併せて原告の報酬が月額50万円であることを前提に差押可能金額を計算すると,毎月の取立額は21万6000円になる旨の通知をし,その通知に,給与等の支払金額等が変更となった場合は必ず連絡するよう付記した(甲16,乙25)。 イ豊島区長は,平成24年12月26日,原告から報酬の額が変更された旨の話がされたため,同月27日,本件協会に対し,本件報酬債権差押処分に係る毎月の取立額は,徴収法76条の規定に従い計算した差押可能金額になる旨の通知をした(乙26,35,証人P9)。 ウ本件協会は,平成24年分の原告に対する報酬等の支払金額につき,合計515万円であるとして,特別区に対する給与支払報告書を作成した(乙15)。 エ豊島区長は,原告に対し,本件報酬債権差押処分をした後,本件協会から,報酬が未払である旨の報告を受けたことから,原告に対し,生活状況の調査を照会したところ,原告は,平成25年3月11日,豊島区長に対し,同照会について,平成24年11月から平成25年2月までの収入及び支出の状況を書面(乙27)により,回答した。回答を記載した書面中には,原告が,平成24年12月30日,大韓民国ソウル市において,P10から100万円を借り受けた旨の記載がある。(乙27,35)(3) 本件議事録1及び2等ア本件協会の平成25年3月27日付け予算承認理事会議事録(本件議事録1)には,平成25年度事業計画書(案)及び収支予算書(案)が承認されたとの記載があり,理事長であるP6,専務理事である原告及び理事 であるP7に加え,監事であるP4税理士及びP8の署名押印がされ,2枚ある議事録にこれら5名の印鑑による割り印がされている(乙4)。 イ 「平成25年度収支予算 -支出-(案)」と題する書面には,役 あるP7に加え,監事であるP4税理士及びP8の署名押印がされ,2枚ある議事録にこれら5名の印鑑による割り印がされている(乙4)。 イ 「平成25年度収支予算 -支出-(案)」と題する書面には,役員報酬につき,前回予算額500万円,予算額60万円との記載がある(乙4)。 ウ本件協会の平成25年3月27日付け理事会議事録(本件議事録2)には,「平成25年3月37日」に理事会が開催され,専務理事の受けるべき報酬金額決定の件についての議案として,取締役の受けるべき報酬金額の決定につき,理事長に一任する旨の決議を行った旨の記載があり,理事長であるP6,専務理事である原告及び理事であるP7の記名押印がされている(甲12)。 エ本件協会の理事長であるP6名義の平成25年3月27日付け「専務理事の報酬金額に関する決定書」には,同日開催の理事会において,専務理事の受けるべき報酬金額については,変更前の15万円から月額5万円とすることを決定し,同年4月1日以降支給される報酬金額より適用する旨の記載があり,P6の記名押印がされている(甲13)。 オ原告は,豊島区長に対し,平成25年4月1日,生活状況の調査についての再調査への回答として,本件協会からの報酬月額が15万円に決定された金額算出の根拠として,「財団資金状況の悪化により,本人からの要望があり,本人からの要請を受け入れたものである。」と回答した(乙29)。 (4) 本件預金債権差押処分及び本件預金債権配当処分ア豊島区長は,平成25年4月5日,世田谷年金事務所に対する照会の回答により,みずほ銀行P3支店の原告名義の預金口座に対し,同月15日,老齢年金25万0299円が支払われる予定であることを把握した(乙35)。 イみずほ銀行P3支店の原告名義の預金口座に,平成25 ほ銀行P3支店の原告名義の預金口座に対し,同月15日,老齢年金25万0299円が支払われる予定であることを把握した(乙35)。 イみずほ銀行P3支店の原告名義の預金口座に,平成25年4月15日,「国民厚生年金」として,25万0224円が支払われた(甲7)。 ウ豊島区長は,平成25年4月15日,前提事実(3)で督促状を発した特別区民税・都民税(ただし,前提事実(3)アについては本税3万4000円)につき,みずほ銀行を第三債務者として,原告のみずほ銀行P3支店の普通預金25万0389円を差し押さえ(本件預金債権差押処分),同月16日,第三債務者から給付を受けた同額の金銭の全額を上記の本税のうちの合計25万0389円に配当する旨の配当処分(本件預金債権配当処分)をし,同月23日,被告に対し,その交付をした(前提事実(4),(5))。 (5) 本件年金債権差押処分ア豊島区長は,平成25年4月25日,第三債務者を厚生労働省年金局事業企画課長とし,差押債権を「原告が支払を受けるべき,平成25年6月以降に支給される老齢年金のうち,徴収法76条1項各号に掲げる金額を控除した金額の支払請求権(ただし,滞納金額(本税231万1211円,延滞金180万6400円の合計411万7611円)に満つるまで)」とする本件年金債権差押処分をし,原告に本件年金債権差押処分をした旨を通知した(前提事実(6),甲3)。 本件年金債権差押処分に当たり,豊島区長は,次の(ア)ないし(ウ)のとおり,原告の平成25年6月以降2か月ごとに支給される老齢年金に係る各請求権について,原告の2か月分の収入を45万円とし,徴収法76条1項各号に掲げる金額を2か月分で25万円として,上記各請求権のうち,差し押さえることができる金額を20万円程度であると判断し,厚 各請求権について,原告の2か月分の収入を45万円とし,徴収法76条1項各号に掲げる金額を2か月分で25万円として,上記各請求権のうち,差し押さえることができる金額を20万円程度であると判断し,厚生労働省年金局債権差押事務担当課に対し,「年金とは別に月平均10万円以上の給与収入があるため,差押可能金額の計算においては,国税徴収法76条第1項4号の金額は0円で算定してください。」と書面により通知(以 下「本件年金債権差押処分算定通知」という。)し,口頭でも同様の説明をした(乙35,46)。 (ア) 収入(2か月分) 計45万円(1000円未満切捨て)① 給料等月額10万円(報酬月額15万円から,各種控除を想定して念のため5万円を控除した金額)×2か月=20万円② 老齢年金 2か月分で25万0224円(イ) 徴収法76条1項各号に掲げる金額計25万円① 1号~3号なし② 4号 10万円×2か月=20万円③ 5号 {45万円-(0円+20万円)}×20%=5万円(ウ) 差し押さえることができる金額 45万円-25万円=20万円イ豊島区長は,平成25年5月8日,原告に対し,平成25年4月25日付けの本件年金債権差押処分の差押調書(謄本)を交付し,併せて平成25年5月7日付け「年金等に係る債権の差押えについて」と題する書面により,本件年金債権差押処分につき,取立額は年金支給日ごとに20万円程度の見込みであること,年金とは別に,月10万円以上の給与収入があるため,月10万円の給与収入を合算して算定したこと,等を通知した(甲3,乙48,49)。 ウ原告は,平成25年6月14日,豊島区長に対し,本件預金債権差押処分,本件預金債権配当処分及び本件年金債権差押処分に対する異議申立てをし,本件年金債権差押処分に した(甲3,乙48,49)。 ウ原告は,平成25年6月14日,豊島区長に対し,本件預金債権差押処分,本件預金債権配当処分及び本件年金債権差押処分に対する異議申立てをし,本件年金債権差押処分に対する異議の理由として,本件協会からの原告の報酬は,平成25年4月,月額15万円から月額5万円に変更された旨を記載し,本件議事録1を資料として添付した(乙3,4)。 (6) 本件各年金債権配当処分及びその後の経緯ア豊島区長は,本件年金債権差押処分により差し押さえ,第三債務者から給付を受けた平成25年6月支給分の老齢年金20万円について,平成2 5年6月17日,全額を前提事実(6)の特別区民税・都民税の残額に配当する旨の配当処分をし(本件各年金債権配当処分のうちの一つ),同月24日,被告に対し,その交付した(前提事実(7))。 イ原告は,平成25年6月21日,豊島区長に対し,本件各年金債権配当処分のうち,前記アの配当処分に対する異議申立てをし,本件議事録1を資料として添付した(乙31)。 ウ本件協会は,平成25年7月4日,日本年金機構に対し,原告の報酬が,同年4月から月額5万円である旨の被保険者報酬月額変更届を提出した(乙32)。 エ豊島区長は,本件年金債権差押処分により差し押さえ,第三債務者から給付を受けた平成25年8月支給分の老齢年金20万円について,平成25年8月16日,全額を前提事実(6)の特別区民税・都民税の残額に配当する旨の配当処分をし(本件各年金債権配当処分のうちの一つ),同月23日,被告に対し,その交付をした(前提事実(7))。 オ原告は,平成25年8月22日,豊島区長に対し,本件各年金債権配当処分のうち,前記エの配当処分に対する異議申立てをし,本件議事録1に加え,本件議事録2を資料として添付した(乙 提事実(7))。 オ原告は,平成25年8月22日,豊島区長に対し,本件各年金債権配当処分のうち,前記エの配当処分に対する異議申立てをし,本件議事録1に加え,本件議事録2を資料として添付した(乙32)。 (7) P6から原告名義の預金口座に対する振込入金原告は,P6から,平成25年8月28日,同年9月30日及び同年11月1日,原告名義の三井住友銀行P5支店の普通預金口座に,各50万円の合計150万円の振込みを受けた(乙8の1~3)。 2 本件訴えのうち本件年金債権差押処分の取消しを求める部分に係る適法性について(1)ア債権差押処分は,第三債務者に対しその履行を,滞納者に対し債権の取立てその他の処分をそれぞれ禁止する(徴収法62条2項)とともに,徴収職員において差し押さえた債権の取立てをすることができるようにす る(同法67条1項)という法的効果を有するものであるということができるところ,税務署長は,債権の差押えにより第三債務者等から給付を受けた金銭を,差押えに係る国税等に配当しなければならず(同法128条1項,129条1項),交付期日に上記金銭等を交付するものとするとされている(同法133条1項)ことからすれば,徴収職員や税務署長は,債権差押処分の効力により,配当処分の後に第三債務者等から給付を受けた金銭等の交付をするまでは,同金銭等を保持することができるものと解されるが,遅くとも,税務署長が,第三債務者等から給付を受けた金銭について,これを配当し,その交付をしたときは,当該債権差押処分の有する上記の法的効果は消滅するものというべきである。 イそこで,このような場合にも,なお債権差押処分の取消しを求める訴えの利益があるか否かを検討するに,上記のような債権差押処分の法的効果に照らせば,債権差押処分によって,差押 のというべきである。 イそこで,このような場合にも,なお債権差押処分の取消しを求める訴えの利益があるか否かを検討するに,上記のような債権差押処分の法的効果に照らせば,債権差押処分によって,差押えに係る国税の存否が確定されるものでないことは明らかであり,また,第三債務者等から給付を受けた金銭について配当処分がされ,その金銭等が交付されることにより,配当を受けた差押えに係る国税等の存否を確定するなどの法的効果が生ずるものでもないというべきであるから,債権差押処分がされ,その後,第三債務者等から給付を受けた金銭について配当処分がされ,その金銭等が交付された後は,なお債権差押処分の取消しによって回復すべき法律上の利益があるということはできない(なお,後記5のとおり,滞納者において,不当利得返還請求をすることができるかどうかについては,第三債務者等から給付を受けた金銭について配当処分がされ,その金銭等が交付された後においては,債権差押処分及び配当処分の存在が,不当利得返還請求の要件である「法律上の原因」となるものではないと解されるから,これらの違法を理由として取り消すまでもなく,不当利得返還請求権の要件の存否によって解決することができるものというべきである。したがって,不 当利得返還請求権の行使を理由として,債権差押処分の取消しによって回復すべき法律上の利益があるということはできない。)。 そして,徴収法66条は,給料若しくは年金又はこれらに類する継続収入の債権の差押えの効力は,徴収すべき国税の額を限度として,差押え後に収入すべき金額に及ぶ旨を規定するところ,継続収入の債権を差し押さえると,差押え後に支払期の到来したそれぞれの支分権について差押えの効力が及び,徴収職員においてこれを取り立てることができることとなり,その取立てを 及ぶ旨を規定するところ,継続収入の債権を差し押さえると,差押え後に支払期の到来したそれぞれの支分権について差押えの効力が及び,徴収職員においてこれを取り立てることができることとなり,その取立てを完了し,税務署長において第三債務者等から給付を受けた金銭について配当処分をし,その金銭等を交付したときには,既に金銭の交付の完了した部分の継続収入の債権の差押えの効力は消滅するに至るから,その部分については債権差押処分の取消しを求める訴えの利益も消滅すると解される。 ウ地方税法331条6項は,市町村民税に係る地方団体の徴収金の滞納処分については,徴収法に規定する滞納処分の例による旨を定め,地方税法1条2項,41条1項の規定により,都民税及び特別区民税に係る徴収金の滞納処分についても,徴収法に規定する滞納処分の例によることとなるのであるから,特別区の徴税吏員の行う滞納処分についても,上記のとおり徴収法について述べたところが当てはまるものというべきである。 (2) 本件においては,前提事実(6),(7)のとおり,豊島区長は,平成25年4月25日,第三債務者を厚生労働省年金局事業企画課長とし,差押債権を「原告が支払を受けるべき,平成25年6月以降に支給される老齢年金のうち,徴収法76条1項各号に掲げる金額を控除した金額の支払請求権(ただし,滞納金額(本税231万1211円,延滞金180万6400円の合計411万7611円)に満つるまで)」とする本件年金債権差押処分をしたところ,平成28年6月までの間,平成25年6月から平成28年6月まで2か月ごとに第三債務者から取立てがされ,その後の配当処分により,被告 に対し,その金銭が交付されたのであり,平成28年7月1日時点において,なお46万5811円の延滞金が未納となっている。 そして,一 三債務者から取立てがされ,その後の配当処分により,被告 に対し,その金銭が交付されたのであり,平成28年7月1日時点において,なお46万5811円の延滞金が未納となっている。 そして,一件記録によれば,本件年金債権差押処分に基づき,平成28年8月支給に係る老齢年金についても取立てがされ,その後の配当処分により,被告に対し,その金銭が交付され,これにより,なお26万8811円の延滞金が未納となっていることが認められる。 上記のとおり,本件年金債権差押処分により差し押さえられた老齢年金のうち,平成25年6月から平成28年8月分までに支給された老齢年金については,既に取立てが完了し,その後の配当処分により,その金銭の交付も完了しているのであるから,これらに係る本件年金債権差押処分については,その取消しを求める訴えの利益が消滅しているといわざるを得ない。 (3) したがって,本件訴えのうち,本件年金債権差押処分(ただし,平成25年6月から平成28年8月までに支給された老齢年金に係るもの)の取消しを求める部分については,却下すべきである。 3 争点(1)(本件年金債権差押処分の適法性)(1) 前記2のとおり,本件年金債権差押処分のうち,平成25年6月から平成28年8月までに支給された老齢年金に係る部分は,取立てが完了し,配当処分がされ,金銭の交付が完了しているから,本件訴えのうち,この部分の取消しを求める請求については却下すべきである。したがって,以下においては,平成28年10月以降に支給される老齢年金に係る部分の本件年金債権差押処分の適法性について検討する。 (2)ア債権の差押処分は,第三債務者に対しその履行を,滞納者に対し債権の取立てその他の処分をそれぞれ禁止する(徴収法62条2項)ものであるところ,第三債務者に対する債 適法性について検討する。 (2)ア債権の差押処分は,第三債務者に対しその履行を,滞納者に対し債権の取立てその他の処分をそれぞれ禁止する(徴収法62条2項)ものであるところ,第三債務者に対する債権差押通知書の送達により行い,債権差押通知書が第三債務者に送達された時に効力が生じるものとされ(徴収法62条1項,3項),債権差押通知書には,差し押さえる債権の種類及び 額を記載しなければならない(徴収法施行令27条1項)とされている。 これらの徴収法及び徴収法施行令の定めに鑑みると,債権の差押処分においては,差押債権を特定しなければならず,その特定とは,債権差押通知書の送達を受けた第三債務者において,差押債権及びその額を識別し得るものであることを要するというべきである。 イこの点,継続収入の債権のうち給料等に対する差押え(徴収法66条)については,①差押処分の時点において,第三債務者が滞納者に支払うべき給料等の額が確定していないことがあること,及び②徴収法76条1項各号に掲げる差し押さえることのできない金額もあることから,差押債権の特定の方法として,債権差押通知書には,「滞納者が債務者から支払を受けるべき平成○○年○○月分以降の給料のうち,徴収法76条1項各号に掲げる金額を控除した金額の支払請求権(ただし,滞納国税に満つるまで)」などと記載するほかはないところ,このような記載方法であっても,上記のように差押債権を特定する債権差押通知書の送達を受けた第三債務者は,自らが滞納者に対して支給すべき給料等の額を前提に,徴収法76条1項1号ないし3号に掲げる金額については,第三債務者が給料等から徴収する金額であるから当然に算定することができ,同様に同項4号に掲げる金額も滞納者の親族の状況を把握することにより算定することができ,これらを し3号に掲げる金額については,第三債務者が給料等から徴収する金額であるから当然に算定することができ,同様に同項4号に掲げる金額も滞納者の親族の状況を把握することにより算定することができ,これらを前提に同項5号に掲げる金額も算定することが可能であるから,同項各号に掲げる金額を算定し,差押えの効力が及ぶ範囲を識別することができる。 これに対し,滞納者が,同一の期間につき二以上の給料等の支払を受けるときについては,徴収法76条1項柱書き後段が,その合計額につき,4号又は5号に掲げる金額に係る限度を計算するものとする旨を規定しているところ,第三債務者において,上記のように差押債権を特定する債権差押通知書の送達を受けたのみでは,当該第三債務者のほかに滞納者に対 して給料等を支払う者がいるかどうか,その給料等の額がいくらか,これらを前提に税務署長において,徴収法76条1項4号に掲げる金額を当該第三債務者とそれ以外の滞納者に対して給料等を支払う者にどのように割り振るかを認識することができない。したがって,給料等に対する差押えをする税務署長は,滞納者が,同一の期間につき二以上の給料等の支払を受けている場合においては,債権差押通知書における差押債権の特定を補完するものとして,第三債務者に対し,差し押さえることができない金額の計算において,滞納者が他の支払者から受ける給料等の額や徴収法76条1項4号に掲げる金額をいくらで計算するかについて通知することを要すると解すべきである。そして,このような通知がされれば,第三債務者において,自らが滞納者に対して支給すべき給料等の額を前提に,徴収法76条1項各号に掲げる金額を算定し,差し押さえられた金額を識別することができることとなる(なお,滞納者が二以上の給料等の支払を受ける場合において,税務署長が, 支給すべき給料等の額を前提に,徴収法76条1項各号に掲げる金額を算定し,差し押さえられた金額を識別することができることとなる(なお,滞納者が二以上の給料等の支払を受ける場合において,税務署長が,第三債務者に対し,上記の通知をしないときは,具体的に発生した支分権について,他に滞納者に対して給料等を支払う者がいることを考慮することなく,徴収法76条1項各号に掲げる金額を算定し,これらを控除した金額を限度として,当該支分権に対する差押債権額が特定し差押えが効力を有するものと解すべきである。)。 ウそして,このように滞納者の継続収入の債権に対して差押処分がされ,当該滞納者が二以上の給料等の支払を受けている場合において,税務署長から上記の通知がされたときは,当該差押処分に係る各支分権について,一定の時期に金額が確定して具体的に発生すると,その都度,第三債務者は,現実に差押可能金額を計算することができ,これによって差押債権額が確定し,当該支分権に対する差押えが具体的に効力を有することになるところ,上記の通知において,当該第三債務者以外の者から支払われる給料等の額や差押可能金額の計算方法に誤りがあり,このため,具体的に発 生する当該支分権について,差押可能金額を超えて差押えをすることになる場合には,上記の通知を通じて差押可能金額を超えて過大な差押債権額が特定されるというべきであるから,過大となる金額の限度において,違法な差押えがあったものと解するのが相当である。したがって,上記の通知に誤りがあり,差押可能金額を超えて過大な差押えがされる可能性がある場合には,そのような差押処分自体,違法なものとして,取り消し得べきものというべきである(被告は,上記の場合にも,法令の範囲内で差押えの効力が生じるにすぎないとして,差押処分自体が違法となる がある場合には,そのような差押処分自体,違法なものとして,取り消し得べきものというべきである(被告は,上記の場合にも,法令の範囲内で差押えの効力が生じるにすぎないとして,差押処分自体が違法となることはない旨主張するが,上記に述べたところに照らし,採用することができない。)。 エそして,地方税法331条6項は,市町村民税に係る地方団体の徴収金の滞納処分については,徴収法に規定する滞納処分の例による旨を定め,地方税法1条2項,41条1項により,都民税及び特別区民税に係る徴収金の滞納処分についても,徴収法に規定する滞納処分の例によることとなるのであるから,特別区の徴税吏員の行う滞納処分についても,上記のとおり徴収法について述べたところが当てはまるものというべきである。 (3)ア本件においては,前記1(1)イ,(5)アのとおり,原告の本件協会からの報酬は,平成24年11月に支払われる分までは月額50万円であったが,理事会の決議により,同年12月に支払われる分からは月額15万円になったものとされているところ,豊島区長は,平成25年4月25日の本件年金債権差押処分に際し,年金とは別に月平均10万円以上の給与収入があることを前提に,徴収法76条1項4号に掲げる金額を0円として算定するよう求める本件年金債権差押処分算定通知をしたことが明らかである。 そして,原告は,平成25年4月に支払われる報酬は,上記の月額15万円から更に月額5万円に減額されたのであり,それ以前である平成24 年11月以降,本件協会から報酬の支払を受けていないのに本件年金債権差押処分を受けた旨主張するところ,被告は,原告の主張する報酬の減額の事実は認められず,仮に報酬が未払であっても,本件年金債権差押処分の差押可能金額の算定に当たり,かかる報酬を合算することが 金債権差押処分を受けた旨主張するところ,被告は,原告の主張する報酬の減額の事実は認められず,仮に報酬が未払であっても,本件年金債権差押処分の差押可能金額の算定に当たり,かかる報酬を合算することができるから,本件年金債権差押処分に違法はない旨主張する。 イ(ア) 前記1(3)ア~エのとおり,本件協会の平成25年3月27日に開催された理事会において,本件議事録1によると平成25年度収支予算(案)が承認されたとされ,収支予算案と題する書面には,平成25年度の役員報酬について,前回予算額500万円,予算額60万円の記載がある上,本件議事録2によると,原告の報酬が平成25年4月以降,月額5万円に減額されたとされているところ,これら議事録等の記載は,原告の報酬が平成25年4月以降,月額5万円に減額されたとの原告の主張に沿うものであるといえる。 また,原告も,本件協会の運営が思わしくないことから,平成25年4月以降,報酬を減額することとなった一方で,原告の健康上の理由から,健康保険の被保険者である必要があったため,報酬を月額5万円とすることとされたなどと,原告の主張に沿う内容を陳述書(甲33,42)に記載し,本人尋問において供述している。 (イ) しかしながら,前記1(1)イ,(2)ア,イ,(3)オ,(5)ウによれば,本件協会を第三債務者としてされた平成24年12月19日付けの本件報酬債権差押処分においては,支払金額等が変更となった場合は必ず連絡するよう付記のされた通知がされていたところ,原告は,その後の同月26日,豊島区長に対し,本件報酬債権差押処分以前に原告の報酬が月額50万円から月額15万円に減額された旨を伝え,これを受けて豊島区長は,本件協会に対し,本件報酬債権差押処分の差押可能金額について,取立額を21万6000円としていたのを 処分以前に原告の報酬が月額50万円から月額15万円に減額された旨を伝え,これを受けて豊島区長は,本件協会に対し,本件報酬債権差押処分の差押可能金額について,取立額を21万6000円としていたのを徴収法 76条に従い計算した金額と改めて再度通知をしたのに対し,本件協会ないし原告は,平成25年3月27日に原告の月額報酬を減額することが決定されたというのに,同年4月1日の生活状況の調査についての再調査への回答にその旨の記載をせず,同年6月14日,豊島区長に対し,本件預金債権差押処分,本件預金債権配当処分及び本件年金債権差押処分に対して異議申立てをした際に初めて,本件協会からの原告の報酬が,平成25年4月から月額15万円から5万円に変更された旨を伝えるまで,再度の報酬の減額について伝えていないことが明らかである。 さらに,証拠(乙4,5,11,証人P11)によれば,被告担当職員は,平成25年8月1日,P4税理士の下に,平成25年3月27日に開催されたという本件理事会の議事内容等について確認に赴いたところ,「平成25年度収支予算 -支出-(案)」と題する書面(前記1(3)イ)を示したり,予算案の具体的な内容を示したりしての確認はしていないものの,P4税理士は,本件理事会においては,専務理事の受けるべき報酬金額の決定についての議案は出されておらず,予算書(案)の議案の中でも専務理事の報酬については話し合われなかったと述べたことが認められる。この点につき,P4税理士の陳述書(甲23)には,本件理事会での議事以前に,原告の報酬を減らすことにしている旨を聞いており,予算案の中で役員報酬が60万円となっていることを理解していたのであって,議案としては原告の報酬が年間500万円から60万円に減額されることは承知しており,特段の意見も述べ している旨を聞いており,予算案の中で役員報酬が60万円となっていることを理解していたのであって,議案としては原告の報酬が年間500万円から60万円に減額されることは承知しており,特段の意見も述べなかったとの記載がある。しかしながら,前記1(5)ウのとおり,平成25年6月14日に本件年金債権差押処分に対する異議申立てがされているところ,P4税理士は,同年8月1日の時点で,同日付け「確認書」(乙5)において,「専務理事の受けるべき報酬金額の決議について」「議 案は出されていない」とし,被告職員において手書きで「予算書(案)の議案の中でも専務理事の報酬については,話し合われなかった」と追記したのを了承の上署名押印しているのであって(乙11,証人P11),P4税理士が税理士であることも併せ考えれば,本件理事会において,原告の報酬を月額5万円に減額することが承認されたということ自体,極めて不自然であるといわざるを得ない。 これに加え,証拠(乙13)によれば,本件協会は,財団法人P2協会の名称であった平成24年3月22日に開催された役員会において,役員報酬の前回予算額を500万円とする「平成24年度収支予算-支出-(案)」とする資料が配付されたことが認められるから,平成23年4月から平成24年3月までの役員報酬は,予算案としては500万円とされていたと考えられるところ,前記1(1)ア,エ,(2)ウ及び証拠(乙69)によれば,本件協会は,原告に対し,この期間月額50万円の合計600万円の役員報酬を支払ったことが認められ,本件協会においては,予算案どおりに役員報酬を支出していなかったといえるのであって,このように本件協会においては,過去にも役員報酬の予算額と実際の支払額が異なっていたことがあることからすれば,本件理事会に提出され は,予算案どおりに役員報酬を支出していなかったといえるのであって,このように本件協会においては,過去にも役員報酬の予算額と実際の支払額が異なっていたことがあることからすれば,本件理事会に提出された予算案中に,仮に役員報酬について記載がされており,これが承認されたとしても,このことをもって原告の役員報酬が決定されたということは困難である。 そうすると,前記(ア)の事情等から,実際に本件理事会において原告の報酬の減額が承認され,このように本件理事会において承認されていた内容に沿って本件議事録2が作成され,原告の報酬が減額されたと認めることはできず,この点について,原告が記載した陳述書(甲33,42)の内容や本人尋問における供述も信用することができないのであって,その他,本件理事会において原告の報酬が月額15万円から5万 円に減額されたと認めるに足りる的確な証拠はない。 ウ(ア) 前記1(2)ア,エ及び弁論の全趣旨によれば,本件協会は,平成24年12月19日に本件報酬債権差押処分がされて以降,原告に対して報酬を支払っていないものとして,豊島区長からの取立てに応じていないことが認められる。 (イ) しかしながら,前記1(1)ア,(2)ウのとおり,本件協会は,原告に対し,平成23年1月から同年3月までは月額108万円,同年4月から平成24年10月までは月額50万円を支払っていたところ,前記イのとおり,原告の報酬が平成25年4月以降,月額5万円に減額されたことが認められないことに照らしても,原告の報酬を月額15万円から月額5万円に減額する必要があったとはうかがわれないし,平成24年11月以降,全く報酬の支払ができなくなるほど本件協会の資金繰り等が悪化したというのであれば,相応の事情が存在するはずであるのに,かかる具体的事情につい 必要があったとはうかがわれないし,平成24年11月以降,全く報酬の支払ができなくなるほど本件協会の資金繰り等が悪化したというのであれば,相応の事情が存在するはずであるのに,かかる具体的事情についても何らうかがわれない。 また,仮に,本件協会において,原告に対し,平成24年11月以降,報酬の支払をしていないとしても,前記のとおり,報酬請求権として有効に成立している同月分の50万円及び同年12月以降の月額15万円について,これらを支払えない状況にあるとは認められないというべきところ,前提事実のとおり,原告は遅くとも同年7月以降,本件協会の専務理事を務め,平成25年11月以降,代表理事を務めているのであって,証拠(乙35)によれば,原告は,平成24年12月20日以降,本件協会の給与担当にもなったことが認められることにも鑑みると,本件協会において,既に成立した報酬請求権の支払をさせることができる立場にあるというべきであるから,結局は,支払を受けることができる報酬を自ら受け取っていないことになるといわざるを得ない。 このように,本件協会が,原告に対し,既に成立した報酬請求権の支 払もできない状況にあるとはうかがわれず,原告が本件協会の給与担当者として,既に成立した報酬請求権の支払をさせることのできる立場にあることに鑑みると,仮に,本件協会において,原告に対し,平成24年12月以降,月額15万円の報酬を支払っていないとしても,徴収法76条1項柱書き後段にいう「二以上の給料等の支払を受けるとき」に該当しないと解することはできず,原告が本件協会から支払を受けるべき月額15万円の報酬が存するものとして,差し押さえることのできない金額を計算することができるものというべきである。 エ以上検討のとおり,原告が本件協会から支払を受ける報酬につ から支払を受けるべき月額15万円の報酬が存するものとして,差し押さえることのできない金額を計算することができるものというべきである。 エ以上検討のとおり,原告が本件協会から支払を受ける報酬については,平成25年4月から月額5万円に減額されたということはできず,月額15万円であると認められるから,月額15万円として本件年金債権差押処分における差し押さえることのできる金額を算定すべきものであって,仮に原告が本件協会から上記月額15万円の報酬の支払を現実には受けていないとしても,本件年金債権差押処分における差し押さえることのできない金額が変動するものではなく,前記1(5)アのとおりの豊島区長による本件年金債権差押処分における差し押さえることのできない金額の計算は,徴収法76条等の規定に沿ったものであるから,本件の口頭弁論の終結の日までの事情において,本件年金債権差押処分(ただし,平成28年10月以降に支給される老齢年金に係るもの)について,差押可能金額を超えて過大な差押えのされる可能性があるということはできない。 (4) よって,本件年金債権差押処分(ただし,平成28年10月以降に支給される老齢年金に係るもの)は適法である。 4 争点(2)(国家賠償法に基づく損害賠償請求権の存否)(1) 本件預金債権差押処分及び本件預金債権配当処分についてア原告は,本件預金債権差押処分の対象とされた預金債権の大部分は老齢 年金に相当するもので,本件預金債権差押処分は年金債権を狙い撃ちし,原告の生活権を侵害するものであるのに,豊島区長は,徴収法76条の規定に従い計算した差押可能金額の限度で差し押さえるなどの配慮もせず,原告の経済状況を十分に調査しなかったのであって,職務上尽くすべき注意義務を尽くしていないから,本件預金債権差押処分及 法76条の規定に従い計算した差押可能金額の限度で差し押さえるなどの配慮もせず,原告の経済状況を十分に調査しなかったのであって,職務上尽くすべき注意義務を尽くしていないから,本件預金債権差押処分及びこれに後続する本件預金債権配当処分は,国家賠償法上,違法である旨主張する。 イ国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものである。 (ア) 本件においては,前提事実(3),前記1(2)ア,エ,(4)ウのとおり,豊島区長は,本件預金債権差押処分をした平成25年4月15日当時,平成19年10月から平成22年3月にかけて,原告に対し,特別区民税・都民税について督促状を発し,平成24年12月19日に本件報酬債権差押処分をしたが,その取立てができていない状況にあった。 そして,前記1(4)ア及び証拠(乙35,65,証人P9)によれば,豊島区長は,平成25年4月5日,世田谷年金事務所からの回答により,同月15日,みずほ銀行P3支店の原告名義の預金口座に老齢年金25万0299円が支払われる予定であることを把握したところ,日本年金機構が,年金に対する差押えをするには,振込みのされる日の前月5日までに債権差押通知書を送付するよう求めており,平成25年4月分の老齢年金を差し押さえるのは困難な状況にあったことから,豊島区長は,老齢年金の振り込まれる上記原告名義の預金口座に係る預金債権を差し押さえることとし,差し押さえることのできない債権が預金口座へ振り込まれた場合,かかる預金債権も差し押さえることのできない債権としての属性を承継するものではないとする最高裁平成9年(オ)第196 3号同 し,差し押さえることのできない債権が預金口座へ振り込まれた場合,かかる預金債権も差し押さえることのできない債権としての属性を承継するものではないとする最高裁平成9年(オ)第196 3号同10年2月10日第三小法廷判決の趣旨を踏まえ,預金債権の全額を差し押さえることとしたことが認められる。 (イ) 本件預金債権差押処分は,原告がみずほ銀行(取扱店名・P3支店)に対して有する預金債権を差し押さえるものであり,この債権が,徴収法76条1項の規定により差押えが一部禁止されている給料等に該当しないことは明らかである。 また,原告が厚生労働省年金局事業企画課長から支払を受ける老齢年金は,徴収法77条の規定により,徴収法76条1項に規定する給料等とみなされるものであるが,一般に,老齢年金が預金口座に振り込まれた場合などのように,差し押さえることのできない部分を含む債権が預金口座へ振り込まれた場合は,かかる預金債権は差し押さえることのできない債権としての属性を承継するものではないと解される(前掲最高裁平成10年2月10日判決参照)から,本件においても,本件預金債権差押処分の効力は,差し押さえた預金債権25万0389円の全額に及ぶというべきであり,本件預金債権差押処分が差し押さえることのできない財産も含めてされたものであるということはできず,この点について違法はない。 そして,本件預金債権差押処分の効力が,差し押さえた預金債権25万0389円の全額に及ぶ以上,これに従い取り立てた同金額の全額を配当する本件預金債権配当処分にも配当すべきでない金額も含めて配当したものであるということはできず,本件預金債権配当処分にも,この点について違法はない。 (ウ) なお,原告は,本件において,本件預金債権差押処分を選択したこと自体に違法がある旨の主 も含めて配当したものであるということはできず,本件預金債権配当処分にも,この点について違法はない。 (ウ) なお,原告は,本件において,本件預金債権差押処分を選択したこと自体に違法がある旨の主張をしているとも解されるので,この点について更に検討する。 地方税法331条1項は,滞納者が督促を受け,その督促状を発した 日から起算して10日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方公共団体の徴収金を完納しないときは,徴税吏員は滞納者の財産を差し押さえなければならない旨を規定するところ,本件においては,前記(ア)のとおり,豊島区長は,原告に対して督促状を発したにもかかわらず,特別区民税・都民税が完納されず,本件報酬債権差押処分をしても取立てができていなかったのであるから,更に原告の財産を差し押さえるべき状況にあったということができる。 そして,前記(ア)のとおり,本件預金債権差押処分をした平成25年4月15日時点では,同日に支払われる老齢年金債権を差し押さえることが困難であった上,前提事実(6),(7),前記1(5)ア,イ,(6)ア,エのとおり,豊島区長は,本件預金債権差押処分をした後,同月25日に本件年金債権差押処分をし,これに続く本件各年金債権配当処分においては,徴収法76条1項各号に掲げる差し押さえることのできない金額を除いた金額について差し押さえ,配当をしていることからすると,豊島区長において,原告が支給を受ける老齢年金について,あえて一旦預金口座に振り込ませ,その預金債権を差し押さえることにより,結果的に老齢年金相当額の全額を差し押さえようとする意図があったとみることは困難である。 さらに,前記1(2)エのとおり,原告は,平成24年12月,P10から,大韓民国において100万円を借り入れているところ,こ 相当額の全額を差し押さえようとする意図があったとみることは困難である。 さらに,前記1(2)エのとおり,原告は,平成24年12月,P10から,大韓民国において100万円を借り入れているところ,これは,原告が,平成24年11月以降,本件協会から現実に報酬を受領していたとした場合の金額(平成24年11月の50万円と平成24年12月から平成25年3月までの各月15万円の合計は110万円となるところ,原告が平成24年12月分の報酬から本件報酬債権差押処分を受けていることにも鑑みると,原告の手取額はこれより更に低くなる。)に近い金額であって,このことからすれば,本件預金債権差押処分をした 平成25年4月15日当時,原告が生活に困窮する状況にあったとも認められない。 このように,本件預金債権差押処分をした当時,豊島区長は,更に原告の財産を差し押さえるべき状況にあり,あえて老齢年金が預金口座に振り込まれた後に差し押さえることにより,その全額を差し押さえる意図があったとみることはできない上,原告が直ちに生活に困窮する状況にあったとも認められないことからすれば,本件預金債権差押処分を選択したことについて同処分を取り消すべき違法事由があったと評価することはできないし,豊島区長が原告に対して負担する法的義務に違背したと評価することもできないというべきである。 そして,本件預金債権差押処分に続く本件預金債権配当処分についても,同処分を取り消すべき違法事由があったとは評価できないし,豊島区長が原告に対して負担する法的義務に違背したとも評価することはできない。 ウ原告は,下級審の裁判例(鳥取地判平成25年3月29日)において,差押えの禁止された児童手当が銀行口座に振り込まれた場合の預金債権について,これを差し押さえることが国家賠償法上違法で きない。 ウ原告は,下級審の裁判例(鳥取地判平成25年3月29日)において,差押えの禁止された児童手当が銀行口座に振り込まれた場合の預金債権について,これを差し押さえることが国家賠償法上違法である旨の判決があることを指摘し,本件預金債権差押処分は国家賠償法1条1項の違法があり,被告の担当職員には過失がある旨の主張をするが,上記のとおり,差し押さえることのできない部分を含む債権が預金口座へ振り込まれた場合は,かかる預金債権は差し押さえることのできない債権としての属性を承継するものではないと解されるし,本件預金債権差押処分を選択したことにも違法はないから,上記の下級審の裁判例があることは,上記判断を左右するものではない。 エしたがって,豊島区長がした本件預金債権差押処分及び本件預金債権配当処分につき,国家賠償法上の違法があるとは認められない。 (2) 本件年金債権差押処分及び本件各年金債権配当処分についてア原告は,①本件年金債権差押処分が違法であることを前提に,豊島区長は,原告の経済状況についての調査も十分に行わず,原告に他に財産が存するかどうかという考慮すべきでない事項を考慮して本件年金債権差押処分をしたものであるから,これに続く平成28年2月までに支給された老齢年金についての本件各年金債権配当処分と併せて,国家賠償法上違法と評価される,②本件各年金債権配当処分については,その1回目よりも前に,原告から,本件協会からの報酬が減額されたとの報告がされていたのに,差押可能金額の計算を修正せずに配当したものであって,国家賠償法上違法と評価される旨の主張をする。 イまず,本件年金債権差押処分が違法であるかどうか(上記ア①)については,前記3で説示したとおり,本件年金債権差押処分(ただし,平成28年10月以降に支給さ 上違法と評価される旨の主張をする。 イまず,本件年金債権差押処分が違法であるかどうか(上記ア①)については,前記3で説示したとおり,本件年金債権差押処分(ただし,平成28年10月以降に支給される老齢年金に係るもの)は適法であって,その説示したところからすれば,原告について,平成25年4月以降,本件協会からの報酬が減額されたとの事実は認められず,また,現実にその報酬の支払を受けていないとしても,本件年金債権差押処分における差し押さえることのできない金額が変動するものではないのであるから,本件年金債権差押処分(ただし,平成25年6月から平成28年2月までに支給された老齢年金に係るもの)についても適法であるというべきである。 そうすると,本件年金債権差押処分が違法であることを前提に,これと本件各年金債権配当処分に国家賠償法上の違法がある旨の原告の主張は採用することができない。 ウまた,本件各年金債権配当処分について別個に違法事由があるかどうか(上記ア②)については,前記3で説示したところからすれば,原告について,平成25年4月以降,本件協会からの報酬が減額されたとの事実は認められないのであるから,その旨の原告の申出を考慮して,本来差し押 さえることができなかった金額については被告に配当するべきではなかったということはできず,本件年金債権配当処分に国家賠償法上の違法がある旨の原告の主張は採用することができない。 エしたがって,豊島区長がした本件年金債権差押処分及び本件各年金債権配当処分につき,国家賠償法上の違法があるとは認められない。 (3) 以上検討のとおり,原告の国家賠償法に基づく損害賠償請求は理由がない。 5 争点(3)(不当利得返還請求権の成否)(1) 原告は,本件預金債権配当処分及び本件各年金債権配当処分 ない。 (3) 以上検討のとおり,原告の国家賠償法に基づく損害賠償請求は理由がない。 5 争点(3)(不当利得返還請求権の成否)(1) 原告は,本件預金債権配当処分及び本件各年金債権配当処分は違法であるとし,これを前提に,被告に対し,不当利得返還請求権を有する旨主張する。 (2) しかしながら,前記4のとおり,本件預金債権配当処分及び本件各年金債権配当処分に違法となるべき点はないから,これらの処分が違法であることを前提とする原告の主張は採用することができない。 その上で,債権差押処分は,第三債務者に対しその履行を,滞納者に対し債権の取立てその他の処分をそれぞれ禁止する(徴収法62条2項)とともに,徴収職員において差し押さえた債権の取立てをすることができるようにする(同法67条1項)というものであり,これに続く配当処分は,税務署長が,債権の差押えにより第三債務者等から給付を受けた金銭を,差押えに係る国税等に配当するもので(同法128条1項,129条1項),その後,交付期日に上記金銭等を交付するものとするとされている(同法133条1項)ことからすれば,徴収職員や税務署長は,債権差押処分の効力により,配当処分の後に金銭等の交付をするまでは,第三債務者等から給付を受けた金銭を保持することができるものと解されるが,上記の金銭等の交付をした後には,もはや第三債務者等から給付を受けた金銭を保持しておらず,また,債権差押処分の効力が消滅することにより,その権限も有しないこととなる と解される。そして,上記の債権差押処分及び配当処分の効力からすれば,債権差押処分によって差押えに係る国税の存否が確定されるものではなく,配当処分によって配当を受けた差押えに係る国税等の存否が確定されるものでもない。 したがって,配当処分により租税債権の すれば,債権差押処分によって差押えに係る国税の存否が確定されるものではなく,配当処分によって配当を受けた差押えに係る国税等の存否が確定されるものでもない。 したがって,配当処分により租税債権の主体(債権者)が交付を受けた金銭について,滞納者の不当利得返還請求権が成立するか否かについては,配当処分が利得の「法律上の原因」となるものではなく,租税債権が存在したことが利得の「法律上の原因」となるというべきであるから,租税債権が存在した場合には,特段の事情のない限り,「法律上の原因」があることになる。他方,「法律上の原因」がないといえる場合においては,第三債務者等から給付を受けた金銭について配当処分がされ,その金銭等が交付された後は,滞納者は債権差押処分及び配当処分の違法を理由として取り消すまでもなく,不当利得返還請求権を行使することができることになるものと解される。 (3) 本件においては,前提事実によれば,本件預金債権配当処分に先立つ本件預金債権差押処分は,原告が特別区民税・都民税を納期限までに納付しなかったことから,これを徴収するためにされたものであって,滞納額に争いはなく,豊島区長は,これにより第三債務者から給付を受けた金銭について,本件預金債権配当処分により,租税債権の主体である被告に交付したものである。そして,前記4で説示したところからすれば,豊島区長において,本件預金債権配当処分に先立つ本件預金債権差押処分につき,差し押さえることのできない債権であると認識しながらあえて差し押さえたものであるなどの「特段の事情」も認められない。そうすると,被告は,租税債権を法律上の原因として金銭の交付を受けたものというべきであって,法律上の原因なく,配当金の交付を受けたということはできない。 また,同様に,本件各年金債権配当処分に先立つ うすると,被告は,租税債権を法律上の原因として金銭の交付を受けたものというべきであって,法律上の原因なく,配当金の交付を受けたということはできない。 また,同様に,本件各年金債権配当処分に先立つ本件年金債権差押処分は, 原告が特別区民税・都民税を納期限までに納付しなかったことから,これを徴収するためにされたものであって,滞納額に争いはなく,豊島区長は,これにより第三債務者から給付を受けた金銭について,本件各年金債権配当処分により,租税債権の主体である被告に交付したものである。そして,前記3で説示したところからすれば,豊島区長において,本件各年金債権配当処分に先立つ本件年金債権差押処分につき,差し押さえることのできない債権であると認識しながらあえて差し押さえたものであるなどの「特段の事情」も認められないから,被告は,租税債権を法律上の原因として金銭の交付を受けたものというべきであって,法律上の原因なく,配当金の交付を受けたものということはできない。 したがって,原告の不当利得返還請求には理由がない。 6 よって,本件訴えのうち,本件年金債権差押処分(ただし,平成25年6月から平成28年8月までに支給された老齢年金に係るもの)の取消しを求める部分は不適法であるからこれを却下し,その余の部分に係る請求は理由がないからこれらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官舘 内 比佐志 裁判官荒谷謙介 裁判官宮端謙一は,差支えのため,署名押印をすることができない。 裁判長裁判官舘 内 比佐志 (別紙)関係法令の定め 1 地方税法(1) 地方税法1条2項は,この法律中道府県 差支えのため,署名押印をすることができない。 裁判長裁判官舘 内 比佐志 (別紙)関係法令の定め 1 地方税法(1) 地方税法1条2項は,この法律中道府県に関する規定は都に,市町村に関する規定は特別区に準用する旨を定める。 (2) 地方税法41条1項は,個人の道府県民税の賦課徴収は,本款に特別の定めがある場合を除くほか,当該都道府県の区域内の市町村が,当該市町村の個人の市町村民税の賦課徴収の例により,当該市町村の個人の市町村民税の賦課徴収と併せて行うものとする旨を定める。 (3) 地方税法331条1項は,市町村民税に係る滞納者が,督促を受け,その督促状を発した日から起算して10日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないときは,市町村の徴税吏員は,滞納者の財産を差し押さえなければならない旨を定める。 (4) 地方税法331条6項は,市町村民税に係る地方団体の徴収金の滞納処分については,徴収法に規定する滞納処分の例による旨を定める。 2 徴収法(1)ア徴収法62条1項は,債権の差押えは,第三債務者に対する債権差押通知書の送達により行う旨を定める。 イ徴収法62条2項は,徴収職員は,債権を差し押さえるときは,債務者に対しその履行を,滞納者に対し債権の取立てその他の処分を禁じなければならない旨を定める。 ウ徴収法62条3項は,同条1項の差押えの効力は,債権差押通知書が第三債務者に送達された時に生ずる旨を定める。 (2) 徴収法66条は,給料若しくは年金又はこれらに類する継続収入の債権の差押えの効力は,徴収すべき国税の額を限度として,差押え後に収入すべき金額に及ぶ旨を定める。 (3) 徴収法76条1項のいわゆる柱書きの前段は,給料,賃金,俸 れらに類する継続収入の債権の差押えの効力は,徴収すべき国税の額を限度として,差押え後に収入すべき金額に及ぶ旨を定める。 (3) 徴収法76条1項のいわゆる柱書きの前段は,給料,賃金,俸給,歳費,退職年金及びこれらの性質を有する給与に係る債権(以下「給料等」という。)については,次に掲げる金額の合計額に達するまでの部分の金額は,差し押さえることができない旨を定め,同項の柱書きの後段は,この場合において,滞納者が同一の期間につき二以上の給料等の支払を受けるときは,その合計額につき,4号及び5号に掲げる金額に係る限度を計算するものとする旨を定める。 1号所得税法183条(給与所得に係る源泉徴収義務),190条(年末調整),192条(年末調整に係る不足額の徴収)又は212条(非居住者等の所得に係る源泉徴収義務)の規定によりその給料等につき徴収される所得税に相当する金額2号地方税法321条の3(個人の市町村民税の特別徴収)その他の規定によりその給料等につき特別徴収の方法によって徴収される道府県民税及び市町村民税に相当する金額3号健康保険法167条1項(報酬からの保険料の控除)その他の法令の規定によりその給料等から控除される社会保険料に相当する金額4号滞納者に対し,これらの者が所得を有しないものとして,生活保護法12条(生活扶助)に規定する生活扶助の給付を行うこととした場合におけるその扶助の基準となる金額で給料等の支給の基礎となった期間に応ずるものを勘案して政令で定める金額5号その給料等の金額から前各号に掲げる金額の合計額を控除した金額の100分の20に相当する金額(4)ア徴収法77条1項は,社会保険制度に基づき支給される老齢年金に係る債権は給料等とみなして,前条の規定を適用する旨を定める。 イ徴収 合計額を控除した金額の100分の20に相当する金額(4)ア徴収法77条1項は,社会保険制度に基づき支給される老齢年金に係る債権は給料等とみなして,前条の規定を適用する旨を定める。 イ徴収法77条2項は,前項に規定する社会保険制度とは,厚生年金保険法,国民年金保険法等に基づく保険に関する制度をいう旨を定める。 3 国税徴収法施行令(以下「徴収法施行令」という。)(1) 徴収法施行令27条1項は,徴収法62条1項(債権の差押えの手続)に規定する債権差押通知書には,次の事項を記載しなければならない旨を定める。 1号滞納者の氏名及び住所又は居所2号差押えに係る国税の年度,税目,納期限及び金額3号差し押さえる債権の種類及び額4号前号の債権につき滞納者に対する債務の履行を禁ずる旨及び徴収職員に対しその履行をすべき旨(2) 徴収法施行令34条は,徴収法76条1項4号に規定する政令で定める金額は,滞納者の給料等に係る債権の支給の基礎となった期間1月ごとに10万円(滞納者と生計を一にする配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)その他の親族があるときは、これらの者一人につき4万5000円を加算した金額)とする旨を定める。 以上
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