判決平成14年6月13日神戸地方裁判所平成14年(レ)第17号未払い給料・解雇予告手当,損害賠償控訴請求事件(原審神戸簡易裁判所平成12年(少コ)第92号未払給料・解雇予告手当請求事件〔甲事件〕,同裁判所平成13年(ハ)380号損害賠償請求事件〔乙事件〕) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人会社(控訴の趣旨)(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人Aの請求を棄却する。 (3) 被控訴人らは,被控訴人会社に対し,連帯して金70万円,及びこれに対する平成13年3月1日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 訴訟費用は第1,2審を通じて被控訴人らの負担とする。 (5) 仮執行宣言。 2 被控訴人ら(控訴の趣旨に対する答弁)主文と同旨第2 当事者の主張 1 甲事件(未払給料・解雇予告手当)(1) 被控訴人A(請求原因)ア甲事件<A>(未払給料)(ア) 控訴人会社は,平成11年9月22日,被控訴人Aとの間で,次の約定により,同人の労務提供に対して控訴人会社が賃金を支払う旨の,学生アルバイトとしての労働契約を締結した。 a 業務内容控訴人会社の経営する店舗における飲物・料理の提供及び調理補助業務b 賃金基本給時給850円交通費月額1万6920円c 支払時期毎月15日締め,当月25日払い(イ) 被控訴人A 時給850円交通費月額1万6920円c 支払時期毎月15日締め,当月25日払い(イ) 被控訴人Aは,平成11年9月22日から平成12年7月14日までの間,控訴人会社に対し,上記(ア)の労働契約に基づいて労務の提供をした。 しかし,控訴人会社は,被控訴人Aに対して,平成12年6月16日から同年7月14日までの基本給金9万4775円,交通費1万6920円を支払わない。 (ウ) よって,被控訴人Aは,控訴人会社に対し,労働契約に基づいて未払給料金11万1695円(内訳・基本給金9万4775円,交通費1万6920円,合計金11万1695円),及びこれに対する平成12年7月26日(支払期限の翌日)から完済まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 イ甲事件<B>(解雇予告手当)(ア) 控訴人会社は,平成11年9月22日,被控訴人Aとの間で,前記ア(ア)のとおり,労働契約を締結した。 (イ) 控訴人会社は,平成12年7月14日,被控訴人Aに対し,事前に予告することなく解雇した。 (ウ) 被控訴人Aは,平成12年7月25日,控訴人会社に対し,解雇予告手当(それ以前の30日分以上の平均賃金)として金9万4403円の支払を求めた。 しかし,同社は,被控訴人Aに対してその支払をしない。 (エ) よって,被控訴人Aは,控訴人会社に対し,労働基準法20条1項本文後段に基づいて解雇予告手当金9万4403円,及びこれに対する平成12年7月26日(支払請求の日の翌日)から完済まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求 働基準法20条1項本文後段に基づいて解雇予告手当金9万4403円,及びこれに対する平成12年7月26日(支払請求の日の翌日)から完済まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (2) 控訴人会社(請求原因に対する認否・反論)ア請求原因ア(甲事件<A>-未払給料)について(ア) 認否a 請求原因ア(ア)(労働契約の締結)は認める。 b 同(イ)(労務の提供,賃金不払い)のうち,被控訴人Aが労働契約に基づいて,平成12年6月19日から同年7月14日までの間に労務の提供をしたことは否認し,その余は認める。 (イ) 主張a 被控訴人Aは,控訴人会社より平成12年6月19日付けで懲戒解雇されており,同月20日から同年7月14日までの間は,他のアルバイト店員への業務指導の為と称して,控訴人会社の承諾なく,同社の業務に事実上就労していたに過ぎない。 b 仮に,被控訴人Aが控訴人との労働契約に基づく労務の提供をしていたとすると,その未払給料等の合計額は同人主張の金額となる。 イ請求原因イ(甲事件<B>-解雇予告手当)について(ア) 請求原因(ア)(労働契約の締結)は認める。 (イ) 請求原因(イ)(予告なしの解雇)は否認する。 控訴人会社は,被控訴人Aを平成12年6月19日付けで懲戒解雇しており,同年7月14日付けで同人を予告なく解雇したのではない。従って,控訴人会社は,被控訴人Aに対して解雇予告手当を支払う義務はない。 (ウ) 請求原因(ウ)(解雇予告手当の支払請求)は認める。 仮に,控訴人会社に解雇予告手当の支払義務があるとすれば,その金額は被控訴人A主張の9万4403 。 (ウ) 請求原因(ウ)(解雇予告手当の支払請求)は認める。 仮に,控訴人会社に解雇予告手当の支払義務があるとすれば,その金額は被控訴人A主張の9万4403円となる。 (3) 控訴人会社(抗弁)ア懲戒解雇控訴人会社は,平成12年6月19日,被控訴人Aに対し,次のイのとおり,同人の責めに帰すべき事由に基づいて懲戒解雇した。よって,控訴人会社には,被控訴人Aに対する未払給料や解雇予告手当の支払義務はない。 イ責めに帰すべき事由による解雇-労働基準法20条1項ただし書被控訴人Aは,控訴人会社より学生アルバイトとして雇用され,同社の経営する店舗「E」の店長として,その業務(前記(1)ア(ア))に従事していたものであるが,以下のとおり,控訴人会社の代表者Dの指示を無視したり,反抗するなどの業務指示違反行為を多数回繰り返した。 (ア) 勤務時間の削減指示違反a 控訴人会社は,業務日報(乙4)を通じて,常々,客数の少ない日には手が空いたアルバイト店員は閉店時間まで勤務せず,早く帰宅するよう指示していた。 b ところが,被控訴人Aは,平成12年5月9日に勤務したアルバイト店員らが上記指示に違反しているのに,何らの改善策も示さなかった。 (イ) 売上金額誤差の改善指示違反控訴人会社は,業務日報を通じて,被控訴人Aに対し,平成12年5月10日に発生したレジ内の釣銭金額と伝票上の売上金額との誤差について改善するよう指示した。しかし,被控訴人Aは何らの改善策も示さなかった。 (ウ) 伝票欠落の理由報告指示違反控訴人会社は,業務日報を通じて,被控訴人Aに対し,平成12年5月15日及び同月16日分 かし,被控訴人Aは何らの改善策も示さなかった。 (ウ) 伝票欠落の理由報告指示違反控訴人会社は,業務日報を通じて,被控訴人Aに対し,平成12年5月15日及び同月16日分の売上伝票が欠落している理由を報告するよう指示した。しかし,被控訴人Aはその報告をしなかった。 (エ) 勤務スタッフの減員指示違反a 控訴人会社は,業務日報を通じて,被控訴人Aに対し,土曜日の勤務態勢を従前の2人勤務から1人勤務に切り替えるよう指示した。 b しかし,被控訴人Aは,平成12年6月3日,同月10日と2日続けて従前の2人勤務を維持した上,控訴人会社から再度同じ指示を受けた後である同月17日も,漫然と2人勤務を継続した。 (オ) メニュー変更指示違反a 控訴人会社は,平成12年3月末,被控訴人Aに対し,「梅ゴボウ」をメニューからはずすよう指示した。 b しかし,被控訴人Aは,平成12年6月7日当時まで「梅ゴボウ」を客に提供していた。 (カ) 害虫駆除の連絡指示違反被控訴人会社は,業務日報を通じて,被控訴人Aに対し,平成12年6月19日に「E」の害虫駆除を行う旨を,当日のアルバイト店員らに連絡するよう指示した。しかし,被控訴人Aはこれを怠った。 (キ) 開店時間の不遵守被控訴人Aは,開店時間(午後6時)になっても「E」を開店しないことが少なからずあり,平成12年6月19日も,開店時間を守らなかった。 (ク) 被控訴人Bへの指導指示違反a 控訴人会社は,業務日報を通じて,被控訴人Aに対し,被控訴人Bの仕事の手際の悪さを改善するよう命令した。 b しかし,被控 (ク) 被控訴人Bへの指導指示違反a 控訴人会社は,業務日報を通じて,被控訴人Aに対し,被控訴人Bの仕事の手際の悪さを改善するよう命令した。 b しかし,被控訴人Aは何らの改善策も示さなかった。 (4) 被控訴人A(抗弁に対する認否・反論)ア抗弁ア(懲戒解雇)について(ア) 抗弁アは否認する。 (イ) 控訴人会社が,被控訴人Aに対し,平成12年6月19日付けで解雇を言い渡したとの事実はない。しかも,被控訴人Aには,懲戒解雇される理由も帰責事由も存在しない。 イ抗弁イ(責めに帰すべき事由に基づく解雇)について(ア) 同(ア)(勤務時間の削減指示)について抗弁イ(ア)のうち,aは認めるが,bは否認する。なお,被控訴人Aは,自らなるべく早く帰宅するなど,控訴人会社の業務指示を遵守している。 (イ) 同(イ)(売上金額誤差の改善指示)について同(イ)は認めるが,業務指示違反であるとの評価は争う。被控訴人Aは,「E」のレジの締めに関与しておらず,控訴人会社に対して改善策を示す立場になかった。 (ウ) 同(ウ)(伝票欠落の理由報告指示)について同(ウ)は認めるが,業務指示違反であるとの評価は争う。同指示は,平成12年5月15日及び同月16日の両当日に勤務していたアルバイト店員ら全員に向けられており,被控訴人Aにのみ向けられたものではなかった。 (エ) 同(エ)(勤務スタッフの減員指示)について同(エ)のうち,aは認め,bは否認し,業務指示違反であるとの評価は争う。被控訴人Aは,経験の浅い被控訴人B及び同Cが「E」を1人で運営するのは実際上不可能 同(エ)のうち,aは認め,bは否認し,業務指示違反であるとの評価は争う。被控訴人Aは,経験の浅い被控訴人B及び同Cが「E」を1人で運営するのは実際上不可能であったことから,やむを得ず2人勤務を継続していた。 (オ) 同(オ)(メニュー変更指示)について同(オ)のうち,aは認め,bは否認し,業務指示違反であるとの評価は争う。控訴人会社は,平成12年6月7日当時,代わりのメニューができるまでの間「梅ゴボウ」を続けることを了解していた。 (カ) 同(カ)(害虫駆除の連絡指示)について同(カ)のうち,控訴人会社が,平成12年6月19日に「E」の害虫駆除を行う旨の事前通告をしていたことは認めるが,その余は否認する。害虫駆除の事前予告は業務日報に記載されており,アルバイト店員らが各自で確認すべきものであるから,被控訴人Aが改めて連絡する必要などなかった。 (キ) 同(キ)(開店時間の不遵守)について同(キ)のうち,平成12年6月19日の開店時間が遅れたことは認め,その余は否認する。「E」の開店が遅れたのは平成12年6月19日のみであり,その日は,控訴人会社の指示によるメニューの書替作業が間に合わず,やむなく午後7時からの開店となった。なお,被控訴人Aは,開店が遅れる旨を控訴人会社に報告しようとしたが,連絡がつかなかった。 (ク) 同(ク)(被控訴人Bへの指導指示)について同(ク)のうち,aは認めるが,bは否認する。被控訴人Aは,同Bに対する業務指導を怠っていない。 2 乙事件(損害賠償)(1) 控訴人会社(請求原因)ア労働契約の締結被控訴人Bは,平成12年4月17日に,被 被控訴人Aは,同Bに対する業務指導を怠っていない。 2 乙事件(損害賠償)(1) 控訴人会社(請求原因)ア労働契約の締結被控訴人Bは,平成12年4月17日に,被控訴人Cは,同月19日に,いずれも控訴人会社との間で,被控訴人Aと同様の約定(前記1(1)ア(ア))で,学生アルバイトとしての労働契約を締結した。 イ不法行為ないし債務不履行(ア) 被控訴人B及び同Cは,同Aと共謀の上,平成12年7月15日当時,「E」の店員は被控訴人B及び同Cのみであり,2人が同時に退職すれば「E」の営業が不可能になり,控訴人会社に損害が発生することを認識しながら,同店の業務を混乱させることを主目的として,同日午後8時ころ,控訴人会社に対し,同日付けで退職する旨の申し入れをした。 なお,その際の話し合いにより,被控訴人Bは,一旦は退職の申し入れを撤回するかのような発言をしたが,同日午後10時ころ,再度,同日付けで「E」を退職する旨の申し入れをした。 (イ) そして,被控訴人B及び同Cは,代表者Dの懇願にもかかわらず,また,少なくとも平成12年7月16日から2週間に亘り,労務提供義務を負担している(民法627条1項)にもかかわらず,同日以降,「E」に全く出勤しなくなった。 ウ控訴人会社の損害(ア) 財産的損害 30万円控訴人会社は,被控訴人B及び同Cが突然同時に退職したため,同人らに代わる新店員を確保するための余計な出費を強いられた。その額は30万円を下らない。 (イ) 慰謝料 30万円代表者Dは,短期間のうちに全従業員がいなくなったこと,新店員を早急に確保するために多大な労力を使った その額は30万円を下らない。 (イ) 慰謝料 30万円代表者Dは,短期間のうちに全従業員がいなくなったこと,新店員を早急に確保するために多大な労力を使ったこと,被控訴人らの度重なる業務命令違反などにより著しい精神的苦痛を受けた。その精神的苦痛の大きさを考えると,慰謝料は30万円が相当である。 (ウ) 弁護士費用 10万円エ結論よって,控訴人会社は,被控訴人らに対し,共同不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償金70万円,及びこれに対する平成13年3月1日(訴状送達の日の翌日)から完済まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (2) 被控訴人ら(請求原因に対する認否・反論)ア請求原因ア(労働契約の締結)は認める。 イ請求原因イ(不法行為ないし債務不履行)について(ア) 認否請求原因イのうち,次の事実は認め,その余は否認する。 a 「E」の店員は,平成12年7月15日当時,被控訴人B及び同Cのみであったこと。 b 被控訴人B及び同Cは,平成12年7月15日,控訴人会社に対し,同日付けで退職したいと申し入れたこと。その際,被控訴人Bは,一旦は退職の申し入れを撤回するかのような発言をしたこと。 c 被控訴人B及び同Cは,平成12年7月16日以降,控訴人会社「E」に全く出勤していないこと。 (イ) 反論まず,被控訴人Cは,同Bの勤務継続と引き替えに,代表者Dより退職の了承を得ており,その時点以後の労務提供義務はない。 次に,被控訴人Bは,同Cの退職と引き替えに少なくとも1か月は勤務を継続する予定であったにもかかわらず,平成1 えに,代表者Dより退職の了承を得ており,その時点以後の労務提供義務はない。 次に,被控訴人Bは,同Cの退職と引き替えに少なくとも1か月は勤務を継続する予定であったにもかかわらず,平成12年7月15日午後10時ころ,退職申し入れとは別の用件(被控訴人Bらの賃金から新店員の人件費を差し引く件)で代表者Dに電話したところ,同月16日午前0時30分ころ,同人より勤務継続を拒否されたのであり,その時点以後の労務提供義務はない。 さらに,被控訴人Aは,同B及び同Cに対して退職を勧めるような言動は一切しておらず,被控訴人らには,控訴人会社の主張するような共謀及び業務混乱目的などなかった。 ウ請求原因ウ(被控訴人会社の損害)は否認する。 理由 第1 争いのない事実 1 甲事件(未払給料・解雇予告手当請求)について次の事実は,当事者間に争いがない。 (1) 請求原因についてア請求原因ア及びイの各(ア)(労働契約の締結)の事実。 イ被控訴人Aは,平成11年9月22日から少なくとも平成12年6月19日までの間,控訴人会社に対し,労働契約に基づく労務の提供をしたこと。 ウ控訴人会社は,被控訴人Aに対して,平成12年6月16日から同年7月14日までの基本給金9万4775円及び交通費1万6920円を支払わなかったこと。そして,仮に,被控訴人Aが,労働契約に基づいて上記期間中労務の提供をしていたとすれば,その間の基本給及び交通費の額は上記金額であること。 エ被控訴人Aは,平成12年7月25日,控訴人会社に対して,解雇予告手当(それ以前の30日分以上の平均賃金)として9万4403円の支払を求めたが,控訴人会社は,被控訴人Aに対してその支払をしなかったこと。そして は,平成12年7月25日,控訴人会社に対して,解雇予告手当(それ以前の30日分以上の平均賃金)として9万4403円の支払を求めたが,控訴人会社は,被控訴人Aに対してその支払をしなかったこと。そして,仮に,控訴人会社に解雇予告手当の支払義務があるとすれば,解雇予告手当の額は上記金額となること。 (2) 抗弁についてア同イ(ア)(勤務時間の削減指示)aの事実。 イ同イ(イ)(売上金額誤差の改善指示)の事実。 ウ同イ(ウ)(伝票欠落の理由報告指示)の事実。 エ同イ(エ)(勤務スタッフの減員指示)aの事実。 オ同イ(オ)(メニュー変更指示)aの事実。 カ同イ(カ)(害虫駆除の連絡指示)のうち,控訴人会社が,平成12年6月19日に「E」の害虫駆除を行う旨の事前通告をしていたこと。 キ同イ(キ)(開店時間の不遵守)のうち,平成12年6月19日の開店時間が遅れたこと。 ク同イ(ク)(被控訴人Bへの指導指示)aの事実。 2 乙事件(損害賠償)について次の事実は,当事者間に争いがない。 (1) 請求原因(ア)(労働契約の締結)の事実。 (2) 「E」の店員は,平成12年7月15日当時,被控訴人B及び同Cのみであったこと。 (3) 被控訴人B及び同Cは,平成12年7月15日,控訴人会社に対し,同日付けで退職したいと申し入れたこと。その際,被控訴人Bは,一旦は退職の申し入れを撤回する発言をしたこと。 (4) 被控訴人B及び同Cは,平成12年7月16日以降,控訴人会社(E)に全く出勤していないこと。 第2 事実の認定上記第1の当事者間に争いがない事実に,証拠(甲1~16〔枝番を含む〕,乙1及び2〔一部〕,乙4及び5〔枝番を含む〕,乙6及び7〔一部〕,証人H〔一部〕,控訴人 ていないこと。 第2 事実の認定上記第1の当事者間に争いがない事実に,証拠(甲1~16〔枝番を含む〕,乙1及び2〔一部〕,乙4及び5〔枝番を含む〕,乙6及び7〔一部〕,証人H〔一部〕,控訴人会社代表者本人〔一部〕,被控訴人A,同B,同C)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 1 被控訴人Aの雇用等(1) 控訴人会社は,平成11年9月22日,当時経営していた和風立ち飲み店「F」の学生アルバイト店員として,被控訴人Aを雇用した。そして,控訴人会社は,同年12月13日,上記「F」を洋風立ち飲み店「E」としてリニューアルの上,同店を開店した。 (2) 控訴人会社は,「F」当時から勤務していた被控訴人Aを含むアルバイト店員5名を,引き続き「E」のアルバイト店員として雇用すると共に,彼らのうち最年長かつ最古参であった被控訴人Aを「E」の店長に据え,同店の運営の責任者とした(甲8・16)。 (3) 控訴人会社は,「E」の開店当時から,同店の運営のほとんどを被控訴人Aらアルバイト店員に任せていた。そのため,平成12年に入ると,店長である被控訴人Aは,「E」の運営の実務面をほぼ取り仕切るようになった。 (4) そして,被控訴人Aは,平成12年5月ころより,Gからの食材の仕入れについても任されるようになり,その後約2か月に亘り,被控訴人Aの判断で,Gへの食材の発注が行われた(甲16。このことは,乙5により,控訴人会社は,少なくとも平成12年5月13日以降,Gから食材の仕入れをしていたことが認められるものの,当該仕入については,代表者Dが仕入中止を決定した同年7月4日に至るまで,同人への報告事項とされていないこと〔乙4の36参照〕などに照らし,是認しうる。)。 2 被控訴人B,同Cの雇用(1) 仕入については,代表者Dが仕入中止を決定した同年7月4日に至るまで,同人への報告事項とされていないこと〔乙4の36参照〕などに照らし,是認しうる。)。 2 被控訴人B,同Cの雇用(1) 控訴人会社は,「E」の学生アルバイト店員として,平成12年4月17日付けで被控訴人Bを,同月19日付けで被控訴人Cを各々雇用した。 (2) しかし,「E」も店員の入れ替わりが激しく,平成12年5月27日以降,同店の店員は被控訴人らのみとなり,3名で同店を切り盛りせざるを得ない状態となった。 3 被控訴人Aの「E」における勤務状況(1) 勤務時間の削減指示について代表者Dは,アルバイト店員らに対し,客数が少ないときには,手が空いたアルバイト店員は閉店時間まで残らず早く帰宅するよう再三指示していたにもかかわらず(乙4の3・同5など),平成12年5月9日,当日のアルバイト店員らが,客数が少ないのに閉店時間まで全員が勤務を継続したことを知り,再度,業務日報を通じて改善するよう指示した(乙4の9)。 これに対し,被控訴人Aは,Dの上記指示を翌10日の業務日報上に記載して他の店員らに伝えた上(乙4の10),同月15日,同月27日,同月29日などにおいては,自ら,通常のアルバイト終了時刻(午後10時)よりも早めに帰宅しするなどして,代表者Dの指示に従って勤務時間を削減する努力をした(乙4の13・18・19)。 (2) 売上金額誤差の改善指示について代表者Dは,業務日報を通じて,被控訴人Aに対し,平成12年5月10日に生じたレジ内の釣銭金額と伝票上の売上金額との誤差を改善するよう指示した(乙4の10)。 しかし,被控訴人Aは,都合により「E」の閉店時間(午後11時)よりも前(午後10時ころ)に 日に生じたレジ内の釣銭金額と伝票上の売上金額との誤差を改善するよう指示した(乙4の10)。 しかし,被控訴人Aは,都合により「E」の閉店時間(午後11時)よりも前(午後10時ころ)に帰宅することが多く(甲1・同8),閉店時間後のレジの締めにはほとんど関与していなかったため,この件について代表者Dの指示どおり,改善策を示すことはできなかった。 (3) 伝票欠落の理由報告指示について代表者Dは,業務日報を通じて,平成12年5月15日及び同月16日分の各売上伝票の一部が抜けている理由を報告するよう指示した(乙4の13・14)が,被控訴人Aは,この件について報告しなかった(もっとも,同月16日については,同人の出勤日ではなかった〔乙4の14〕。)。 なお,伝票の集計は被控訴人Aのみではなく,当日勤務していた全員が取り扱う事務であった(乙4の11・同15など)。 (4) 勤務スタッフの減員指示について代表者Dは,平成12年5月27日土曜日の売上げが2万円に達しなかったことを機に,土曜日の勤務態勢を従前の2人勤務から1人勤務に切り替えることを検討するよう指示した(乙4の18)。 しかし,被控訴人Aは,同Bらの「E」での勤務経験が浅く,被控訴人Aの指導により,何とか勤務を遂行している状態であることを考慮し,同人らが1人で「E」を開店し,運営することは実際上不可能であると考え,代表者Dの上記指示後の同年6月3日,同月10日も,従前と同様,2人勤務の態勢を維持した(乙4の22・同24)。 代表者Dは,平成12年6月10日にも,再度上記指示を出したが(乙4の22),被控訴人Aは,同月17日,上記と同様の理由により2人勤務を継続した(乙4の28)。 (5) メニュー変更指示につ 代表者Dは,平成12年6月10日にも,再度上記指示を出したが(乙4の22),被控訴人Aは,同月17日,上記と同様の理由により2人勤務を継続した(乙4の28)。 (5) メニュー変更指示について代表者Dは,平成12年3月末ころ,一旦は「梅ゴボウ」を「E」のメニューからはずすよう指示したが,被控訴人Aより,代わりのメニューができるまでは続けさせて欲しいと頼まれ,これを了承した(甲8。このことは,平成12年4月11日及び同年5月27日の伝票に「梅ゴボウ」を提供したと思われる記載があるにもかかわらず〔乙4の5・18〕,代表者Dが特に苦情を申し述べていないことからも推認できる。)。 それ故,被控訴人Aは,平成12年6月7日当時まで,引き続き「梅ゴボウ」を客に提供していた(乙4の23)。 (6) 害虫駆除の連絡指示について代表者Dは,平成12年6月13日,業務日報を通じて,同月20日の午前中に「E」の害虫駆除をする旨の事前予告をした(乙4の25)。 しかし,被控訴人Aは,平成12年6月20日当日勤務するアルバイト店員らは,全員業務日報を見ているはずであるから,改めて連絡する必要はないと考え,個別に連絡することはしなかった。 もっとも,そのことが,上記害虫駆除の実施に特に影響することはなかった。 (7) 被控訴人Bへの指導指示について代表者Dは,業務日報を通じて,被控訴人Aに対し,被控訴人Bの仕事の手際の悪さを改善するよう再三指示しており(乙4の30),平成12年6月27日も,再度同じ指示をしている(乙4の31)。 しかし,被控訴人Aは,被控訴人Bが「E」での勤務を開始した当初から,同人に対し,仕事のやり方全般について熱心に指導を行ってきた(甲15)。 ,再度同じ指示をしている(乙4の31)。 しかし,被控訴人Aは,被控訴人Bが「E」での勤務を開始した当初から,同人に対し,仕事のやり方全般について熱心に指導を行ってきた(甲15)。 4 平成12年6月19日の話し合いの状況(1) 代表者Dは,平成12年6月19日,「E」の客から,「午後7時になっているのに『E』が開店していない。」との連絡を受けた。 (2) そこで,代表者Dは,開店が遅れた理由を確かめるため,被控訴人Aに電話連絡したところ,同人は,「メニューの書替作業が開店時間までに間に合わず,完了するまで開店時間を延ばした。」と回答した。 被控訴人Aは,前日に,代表者Dより店内に貼るメニューの札を書き替えるよう指示を受けていたため,同日,通常の出勤時間(午後5時ころ)より早め(午後3時51分)に出勤して(甲1の1,乙4の29)作業したが間に合わず,やむなく7時から「E」を開店することにしたため(甲8),午後6時の開店時間が1時間遅れたのである。 しかし,代表者Dは,書替作業に必要な時間を考慮して余裕を持って出勤するか,開店後業務の合間を見ながら書替作業をするなど臨機応変に対応すれば,決められた午後6時に開店できたのではないかとの思いが強く(乙1),また,被控訴人Aには業務指示違反行為が多いと認識していたこともあり,これを機に被控訴人Aが「E」を辞めてくれればよいと考えた。 (3) そこで,代表者Dは,平成12年6月19日午後9時ころ,「E」に出向き,被控訴人Aを店の奥の控え室に呼び,「勤務態度を改めることができないのならば,アルバイトを辞めて欲しい。」と告げた。すると,被控訴人Aは,被控訴人B及び同Cがまだ十分に業務内容を把握しておらず,自分が勤務を続ける必要がある旨申し述べた 務態度を改めることができないのならば,アルバイトを辞めて欲しい。」と告げた。すると,被控訴人Aは,被控訴人B及び同Cがまだ十分に業務内容を把握しておらず,自分が勤務を続ける必要がある旨申し述べた。 代表者Dも,当時「E」の店員は被控訴人らしかおらず,かつ,被控訴人Bらが未だ業務になれていないことを認識していたため(乙4の30など),被控訴人Aが今後もこれまでどおり「E」の店長として勤務を続ける必要を認めざるを得ず,同日付けで同人を解雇することはできなかった。 そのようなことから,被控訴人Aは,その後の平成12年7月14日まで,「E」での勤務を続けた。 5 被控訴人らの不満の発生(1) 被控訴人Aは,平成12年6月20日以降も,「E」の店長として,これまでと同様に勤務を継続した(乙4の30以降)。 (2) 控訴人会社は,被控訴人Aに仕入を任せていたGの食材につき,在庫が多数生じたため,平成12年7月4日,被控訴人Aに対し,Gからの仕入れを当分の間中止するよう指示した(乙5)。 これに対し,被控訴人Aは,上記指示に従い,Gからの仕入れを中断したが,それに伴ってGの食材を使用したメニューが減ったことで客から苦情が出たり(乙4の37・同39・同42),売上も減少していること(乙4の43)を,業務日報を通じて再三に渡り,代表者Dに報告した。 (3) ところが,控訴人会社は,Gからの仕入中止を見直そうとしなかったため,被控訴人らの代表者Dの経営方針全般に対する不満が高まっていった(乙4の37・41・43)。 6 被控訴人Aの解雇(1) 代表者Dは,Gの一件以来,被控訴人Aへの反発を強め,同人に対して初めて解雇の話を持ち出して以降1か月近くが経過し,被控訴人B及び同Cもある程度業 ・43)。 6 被控訴人Aの解雇(1) 代表者Dは,Gの一件以来,被控訴人Aへの反発を強め,同人に対して初めて解雇の話を持ち出して以降1か月近くが経過し,被控訴人B及び同Cもある程度業務に慣れてきたこともあって,被控訴人Aに退職してもらいたいと考えた(乙1)。 (2) そこで,代表者Dは,平成12年7月14日午後9時55分ころ,被控訴人Aを店の奥の控え室に呼び,店の売り上げが悪いこと,被控訴人Aとは考え方が合わないことなどを説明し(甲5・甲8・16),「今日は給料の締切日直前できりが良いから,本日付けで退職して欲しい。」と申し渡した。 そして,被控訴人Aがこれを承諾したので,この時点で,控訴人会社は,被控訴人Aを解雇するに至った。 7 被控訴人B,同Cの退職の決断(1) 被控訴人Aは,平成12年5月27日以降,被控訴人らのみで「E」を切り盛りしている状態にあったため,店長である自分が解雇されれば,被控訴人B及び同Cにとって,勤務態勢や業務引継などの点で重大な影響を及ぼすので,早急にこれを伝えておく必要があると考えた。 そこで,被控訴人Aは,まず,平成12年7月14日の深夜,一緒に勤務していた被控訴人Cに対し,控訴人会社より本日付けで退職させられた旨を告げた(甲8・16)。 被控訴人Cは,これを聞いて,店長である被控訴人Aがいなければ「E」を運営していく自信がなく,また,これまで長い間「E」を支えてきた被控訴人Aを,たいした理由もなく突然解雇した代表者Dの経営方針について行けないとの気持ちになり,これを機に自らも退職することを決意した(甲14)。 (2) 被控訴人Aは,上記と同様の理由から,被控訴人Bにも,退職させられたことを連絡した(甲8)。 これを聞いた 持ちになり,これを機に自らも退職することを決意した(甲14)。 (2) 被控訴人Aは,上記と同様の理由から,被控訴人Bにも,退職させられたことを連絡した(甲8)。 これを聞いた被控訴人Bも,これまで「E」に尽くしてきた被控訴人Aを一方的に首にするような代表者Dのやり方に不信感を抱き,その場で,自身も「E」を退職する決意をし(甲15),被控訴人Aにその旨を告げた(甲8・16)。 (3) その後,被控訴人B及び同Cは連絡を取り合い,2人共「E」を退職しようと相談した。 8 被控訴人Bの解雇,同Cの退職(1) 被控訴人B,同Cは,平成12年7月15日午後8時ころ,代表者Dに対し,「本日付けで退職させて欲しい。」と申し出た。 (2) 代表者Dは,2人が同時に退職してしまうと店員がいなくなり,「E」の業務遂行が不可能となり,控訴人会社に損害が発生する旨を被控訴人Bらに説明し,あと1か月は勤務するよう求めた(甲4・甲9・甲11)。 その過程で,代表者Dは,被控訴人B及び同Cに対し,「2人同時に辞められると店の運営ができなくなるので,派遣会社から人材を登用するための人件費を,その原因を作った被控訴人Bらのこれまでの賃金から差し引くから。」などと発言した(甲12・13・14・15)。 被控訴人Bは,未払給料を支払ってもらえないのは困ること,また,被控訴人Cが平成12年6月より祖母の看護等を理由として退職を希望していたこと(甲10)を考慮し,代表者Dに対し,「私が引き続きあと1か月勤務しますので,Cさんの退職申し入れを認めて欲しい。」と提案した(甲4・9・11・14・15)。 代表者Dは,上記提案を受け入れ(甲4・9・11・15),被控訴人Bが引き続き1か月勤務することを条件 ,Cさんの退職申し入れを認めて欲しい。」と提案した(甲4・9・11・14・15)。 代表者Dは,上記提案を受け入れ(甲4・9・11・15),被控訴人Bが引き続き1か月勤務することを条件として,被控訴人Cの退職を了承した(甲14・15)。 (3) 一方,被控訴人Bは,上記話し合いの後,被控訴人Bらの未払給料から新店員の人件費を差し引くという代表者Dの考えは,労働者の権利を無視した考えであると思い,平成12年7月15日午後10時ころ,代表者Dに電話をして,その点を問い質した(甲15・甲12)。 代表者Dは,賃金から人件費を差し引くことは納得できないとの被控訴人Bの言葉から,同人はもはや勤務を継続する意思はない旨主張するものと受け止め(甲13の三),「被控訴人Bらによる同時退職の申入れは,控訴人会社にとって営業妨害であり,被控訴人Aが関与しているのではないかと疑っている。」「未払給料は被控訴人Aから支払ってもらえ。」などと言った(甲15)。 (4) 被控訴人Aは,同Bから代表者Dの上記暴言を聞き,事情を確かめるため,翌16日(平成12年7月16日)午前0時20分ころ,代表者Dに電話をした。被控訴人Aは,「被控訴人Bらの同時退職の申し入れは,自分と関係なく,両名が勝手にやったことである。」と告げたが,代表者Dは,「被控訴人らは共謀しており,被控訴人Aが煽動した。営業妨害で訴える。あとの2人に言っておいて。」などと主張するばかりであった(甲16)。 (5) 被控訴人Aから,上記事態を聞いた被控訴人Bは,代表者Dに対して勤務を継続することを改めて連絡しておく方が良いと考え,同日(平成12年7月16日)午前0時30分ころ,再び代表者Dに電話したが,被控訴人らが共謀して営業妨害しようとしていると信じ込んだ同 に対して勤務を継続することを改めて連絡しておく方が良いと考え,同日(平成12年7月16日)午前0時30分ころ,再び代表者Dに電話したが,被控訴人らが共謀して営業妨害しようとしていると信じ込んだ同人より,「辞めると言ったり働くと言ったりころころ考えを変え,信用できないから,これ以上勤務を継続させることはできない。」と言い渡され,勤務継続を拒否された(甲12・13・15)。 (6) 以上の次第で,被控訴人Cは,代表者Dより退職を了承されたため,同Bは,同人より勤務継続を拒否され,解雇を言い渡されたため,同月16日以降控訴人会社(E)に出勤しなくなった。 第3 判断 1 甲事件(未払給料・解雇予告手当)の検討(1) 甲事件<A>(未払給料)の検討ア当裁判所の認定前示第1の1(1)ア及びウ,第2の4(3),第2の6(2)のとおり,控訴人会社が被控訴人Aを解雇したのは,平成12年7月14日の勤務が終わってからであること,被控訴人Aは,平成12年6月16日から同年7月14日までの間,同社に対し,労働契約に基づく労務の提供をしたのに,控訴人会社は,被控訴人Aに対して,その間の基本給金9万4775円及び交通費1万6920円を支払わないこと,被控訴人Aの給料等は,毎月15日締めで,当月25日支払いであったことが認められる。 イ控訴人会社の主張を採用できない理由(ア) 控訴人会社は,被控訴人Aを解雇したのは,平成12年6月19日である旨主張する。 (イ) しかし,前記第2の4(3),5(1)(2),6(1)(2)で認定したとおり,被控訴人Aは,平成12年6月20日以降も,連日,従前と同様に「E」の店員として出勤しており,そのことを代表者Dも認識しながら,その 記第2の4(3),5(1)(2),6(1)(2)で認定したとおり,被控訴人Aは,平成12年6月20日以降も,連日,従前と同様に「E」の店員として出勤しており,そのことを代表者Dも認識しながら,その出勤を停止しようとする等,何らかの異議を唱えた形跡は全くない。 もし,代表者Dが,平成12年6月19日の時点で被控訴人Aを解雇したのであれば,少なくとも業務日報等を通じて,同人の就労に異議を唱えたり,被控訴人B及び同Cに対し,同Aを懲戒解雇した旨を周知させるはずである。ところが,代表者Dは,そのような措置をとることなく,かえって,被控訴人B及び同Cをして被控訴人Aの指示を受けさせている。 しかも,代表者Dは,平成12年6月20日以降も,被控訴人Aを「(『E』の)店長」と呼び,従前と同様に指示を与え続けている(乙4の34,乙5)。 また,代表者D自身が被控訴人らに宛てて作成した各書面の中にも,控訴人会社が,被控訴人Aを平成12年6月19日の時点で懲戒解雇していたことに触れる記述は,全くない(甲4,11など)。 (ウ) そのうえ,被控訴人A自身が,その後の平成12年7月10日の業務日報の中で,「私達は首になるのでしょうか。」などと記載しており(乙4の41),同年6月19日の時点で解雇されたとの自覚をもっていなかったことが窺える。 (エ) 以上を総合すれば,控訴人会社が,平成12年6月19日の時点で被控訴人Aを解雇したものとは認められず,同社の前記(ア)の主張は採用できない。 ウ小括そうすると,控訴人会社は,被控訴人Aに対し,平成12年6月16日から同年7月14日までの未払給料など合計金11 記(ア)の主張は採用できない。 ウ小括そうすると,控訴人会社は,被控訴人Aに対し,平成12年6月16日から同年7月14日までの未払給料など合計金11万1695円,及びこれに対する同年7月26日(支払期限の翌日)から完済まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払義務がある。 (2) 甲事件<B>(解雇予告手当)の検討ア請求原因の検討前示第1の1(1)ア及びエ,第2の4(3),第2の6(2)のとおり,請求原因イの(ア)ないし(ウ)の事実が認められる。 イ抗弁(責めに帰すべき事由による解雇)の検討(ア) 各業務指示違反行為について控訴人会社の主張する各業務指示違反行為につき,以下検討する。 a 勤務時間の削減指示違反について前記第2の3(1)で認定したとおり,被控訴人Aは,代表者Dから勤務時間の削減指示を受けた翌日(平成12年5月10日),業務日報を通じて他の店員らに上記指示を周知させた上,その後,自ら率先して早めに勤務を終えるなど,勤務時間の削減を実践する努力をしていた。 そうすると,被控訴人Aに,控訴人会社の主張するような業務指示違反行為があったとまでは評価できない。 b 売上金額誤差の改善指示違反について前記第2の3(2)で認定したとおり,被控訴人Aは,閉店時間よりも早く帰宅していたこともあって,レジ締めにはほとんど関与していなかった。 そうすると,この件について,被控訴人Aが改善策を示すことができなかったとしてもその違反の程度は少なく,この違反は,悪質な業務指示違反行為とまで評価することは なかった。 そうすると,この件について,被控訴人Aが改善策を示すことができなかったとしてもその違反の程度は少なく,この違反は,悪質な業務指示違反行為とまで評価することはできない。 c 伝票欠落の理由報告指示違反について前記第2の3(3)で認定したとおり,被控訴人Aは,控訴人会社の伝票欠落の理由を報告するようにとの指示に従った行動をしていない。 しかし,平成12年5月16日の指示については,同日は被控訴人Aの出勤日ではなかったのである。また,平成12年5月15日の指示については,伝票の集計が,被控訴人Aのみではなく,当日勤務していたアルバイト店員の全員が取り扱う事務であったことからすると,被控訴人Aが,控訴人会社の上記指示を当日勤務していたアルバイト店員全員に向けられたものであると理解し,自ら報告しなかったことについて,同人を一方的に責めることはできない。 したがって,被控訴人Aが平成12年5月15日分の伝票欠落の理由を報告しなかったことについて,業務指示違反があったとしても,悪質な業務指示違反行為とまで評価することはできない。 d 勤務スタッフの減員指示違反について前記第2の2(1),3(4)で認定したとおり,被控訴人B及び同Cは,平成12年5月ないし6月当時,未だ「E」の業務に慣れていなかった。故に,被控訴人Aが,土曜日に同B及び同Cが1人勤務をして「E」を開店するのは無理であると判断したことには,一応の理由がある。 しかも,被控訴人A自身は,平成12年5月29日など,自ら率先して早めに帰宅するなど,代表者Dの指示に従って勤務時間の削減を実践すると共に, ことには,一応の理由がある。 しかも,被控訴人A自身は,平成12年5月29日など,自ら率先して早めに帰宅するなど,代表者Dの指示に従って勤務時間の削減を実践すると共に,勤務態勢を変更する方向での努力をしている。 以上を総合すると,被控訴人Aに,控訴人会社の主張するような業務指示違反行為があったとまでは評価できない。 e メニュー変更指示違反について前記第2の3(5)で認定したとおり,「梅ゴボウ」をメニューとして継続することについては,代表者Dの了承があった。したがって,被控訴人Aには,控訴人会社の主張する業務指示違反行為はない。 f 害虫駆除の連絡指示違反について前記第2の3(6)で認定したとおり,被控訴人Aは,害虫駆除が行われる前夜である平成12年6月19日に勤務するアルバイト店員らは,全員業務日報を見ているはずであるから,改めて連絡する必要はないと考え,個別に連絡することはしなかったのであり,被控訴人A側にも一応の言い分がある。 しかも,害虫駆除の件は業務日報を通じて事前に予告され,アルバイト店員らは,各自それを見て害虫駆除が行われることを知ることができた上に,被控訴人Aの不連絡によって害虫駆除の実施に支障を来した事実もない。 従って,被控訴人Aに,控訴人会社の主張するような業務指示違反行為があったとまでは評価できない。 g 開店時間の不遵守について前記第2の4(2)で認定したとおり,平成12年6月19日は,「E」の開店時間が1時間遅れたが,同日以外に開店時間が遅れたことは証拠上窺えないうえ,同日開店時間が遅れた理由 前記第2の4(2)で認定したとおり,平成12年6月19日は,「E」の開店時間が1時間遅れたが,同日以外に開店時間が遅れたことは証拠上窺えないうえ,同日開店時間が遅れた理由は,被控訴人Aが,控訴人会社から受けた指示に基づいてメニュー札の書替をするため,通常よりも早めに出勤して対応したが,間にあわなかったというものであった。 したがって,被控訴人Aが「E」の開店時間を1時間遅らせた行為は,悪質な業務命令違反行為とまでは評価できない。 h 被控訴人Bへの指導指示違反について前記第2の3(7)で認定したとおり,被控訴人Aは,被控訴人Bが「E」での勤務を開始した当初から,同人に対し,仕事のやり方全般について熱心に指導を行ってきたことが認められる。 したがって,被控訴人Aには,被控訴人Bへの指導指示違反があったものとは認められない。 (イ) 総合的評価について前記(ア)の認定判断によると,前記(ア)b(売上金額誤差の改善指示違反),同c(伝票欠落の理由報告指示違反),同d(勤務スタッフの減員指示違反),同f(害虫駆除の連絡指示違反),同g(開店時間の不遵守)について,被控訴人Aの業務指示違反行為が問題となる余地はある。 しかし,前記(ア)d(勤務スタッフの減員指示違反),同f(害虫駆除の連絡指示違反)については,被控訴人Aの言い分にも一応の理由があり,被控訴人Aに業務指示違反行為があったとまでは断定できない。 そして,残りの前記(ア)b(売上金額誤差の改善指示違反),同c(伝票欠落の理由報告指示違反) 被控訴人Aに業務指示違反行為があったとまでは断定できない。 そして,残りの前記(ア)b(売上金額誤差の改善指示違反),同c(伝票欠落の理由報告指示違反),同g(開店時間の不遵守)についても,被控訴人Aに業務指示違反行為があったとしても,いずれも相応の理由が存するものであり,その違反の程度は軽微であって,控訴人会社がこれにより大きな損害を被ったものとも到底認められないものばかりであって,悪質な業務指示違反行為と評価することはできない。 その他,被控訴人Aに,「E」での勤務に関し,咎めるべき怠勤的態度や違法行為があったと認めるに足りる証拠はない。 そうすると,被控訴人Aの上記認定に係る3件の業務指示違反行為は,懲戒解雇を正当化させるほどの事実ではなく,被控訴人Aには,労働基準法20条1項ただし書後段の「労働者の責めに帰すべき事由」の存在を認めることはできない。 (ウ) まとめしたがって,控訴人会社主張の抗弁(責めに帰すべき事由による解雇-労働基準法20条1項ただし書の適用)は理由がない。 ウ小括以上の認定判断によると,控訴人会社は,被控訴人Aに対し,解雇予告手当金9万4403円,及びこれに対する平成12年7月26日(支払請求の日の翌日)から完済まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務がある。 2 乙事件(損害賠償)の検討(1) 請求原因イ(不法行為ないし債務不履行)の検討ア被控訴人B及び同Cの退職申出の相当性被控訴人B及び同Cは,平成12年7月14日の夜,店長である被控訴人Aから,控訴人会社より同日付けで一方的に解雇された旨を告げられ,同Aがいなければ「E」を運営 の退職申出の相当性被控訴人B及び同Cは,平成12年7月14日の夜,店長である被控訴人Aから,控訴人会社より同日付けで一方的に解雇された旨を告げられ,同Aがいなければ「E」を運営していく自信がない上,これまで長い間「E」を支えてきた被控訴人Aを,たいした理由もなく突然解雇した代表者Dの非情な仕打ちにはついて行けないとの気持ちになり,これを機に自らも退職することを決意したものである(前記第2の7)。 このように,被控訴人B及び同Cが控訴人会社に同時退職の申し入れをした背景には,代表者Dが被控訴人Aの労働者としての権利や誇りを軽く見た行動が遠因になっており,被控訴人B及び同Cの退職申出には,相当な理由があったことが認められる。 イ被控訴人Cへの退職同意,同Bの解雇(ア) 被控訴人Cの即時退職への同意しかも,代表者Dは,平成12年7月15日午後8時からの話し合いで,被控訴人Cがかねてより控訴人会社に対して退職の意向を示していたことも考慮して,被控訴人Cは即時に退職し,翌16日以降「E」に出勤しなくともよいと認めるに至っている(前記第2の8(1)(2))。 (イ) 被控訴人Bの解雇被控訴人Bは,平成12年7月15日午後8時からの話し合いで,一旦申し出た退職の意向を撤回し,あと1か月は勤務を継続する意向を示したが,その際,代表者Dが,被控訴人B及び同Cに対し,「2人同時に辞められると店の経営できなくなるので,派遣会社から人材を登用するための人件費を,その原因を作った被控訴人Bらのこれまでの賃金から差し引く。」などという暴言を吐いた(前記第2の8(2))。 そこで,被控訴人Bは,同人らへの未払給料から新店員の人件費を差し引くという代 った被控訴人Bらのこれまでの賃金から差し引く。」などという暴言を吐いた(前記第2の8(2))。 そこで,被控訴人Bは,同人らへの未払給料から新店員の人件費を差し引くという代表者Dの考えは,労働者の権利を無視した考えであると思い,同日(平成12年7月15日)午後10時ころ,代表者Dに電話をして,その点を問い質した。さらに,被控訴人Bは,翌日(平成12年7月16日)午前0時30分ころにも,代表者Dに電話して,重ねて就労の意思があることを伝えた(前記第2の8(3)(5))。 ところが,代表者Dは,被控訴人Bにはもはや就労の意思はないものと誤解し,同人からの度重なる就労の申出を拒否して,平成12年7月16日午前0時30分ころ,正当な理由もなく被控訴人Bを解雇するに至ったものである(前記第2の8(3)(5))。 ウ被控訴人らの共謀及び業務混乱目的の不存在(ア) 被控訴人Bは,代表者Dから,2人が同時に退職してしまうと店員がいなくなり,「E」の業務遂行が不可能となるので,あと1か月は勤務するようにと要請された。そこで,被控訴人Bは,被控訴人Cへの退職同意を条件に,引き続き控訴人会社に就労することを約し,一旦は就労継続の意思を表明している(前記第2の8(2))。 ところが,その後,代表者Dの方で,被控訴人Bの真意を誤解して,一方的に被控訴人Bに解雇を言い渡したのである(前記第2の8(3)(5))。 したがって,被控訴人らが,共謀の上,控訴人会社の業務を混乱させる目的で,代表者Dに退職を申し出たものではないことは明らかである。 (イ) 被控訴人B及び同Cは,平成12年7月14日,店長である被控訴人Aが,控訴人会社より正当な理由もなく一方的に解雇された 代表者Dに退職を申し出たものではないことは明らかである。 (イ) 被控訴人B及び同Cは,平成12年7月14日,店長である被控訴人Aが,控訴人会社より正当な理由もなく一方的に解雇されたことを告げられ,自らも退職することを決意したものである(前記第2の7)。すなわち,被控訴人B及び同Cは,同Aから退職を唆されて,退職を決断したものではない。 その他,被控訴人Aが,同B及び同Cに対して退職を勧め,唆した言動をしたことを裏付ける証拠はない。 エまとめ被控訴人Cは,代表者Dより退職を了承されたため,同Bは,同人より勤務継続を拒否され,解雇を言い渡されたため,同月16日以降控訴人会社(E)に出勤しなくなくなったのである(前記第2の8(6))。 そして,前記第3の2(1)ア(被控訴人B及び同Cの退職申出の相当性),同イ(被控訴人Cへの退職同意,同Bの解雇),同ウ(被控訴人らの共謀及び業務混乱目的の不存在)の認定判断に照らせば,被控訴人B及び同Cが,平成12年7月15日,控訴人会社に対して同時に退職申出を行い,翌16日から控訴人会社に出勤しなくなったからといって,被控訴人Bらが民法627条1項の趣旨に悖る違法な行為をしたものとは認められない。 したがって,被控訴人B及び同Cが,平成12年7月16日以降,「E」に出勤しなくなったからといって,同人らには,就労義務を履行しなかった債務不履行責任があるものとは認められないし,不法行為による損害賠償責任があるものとも認められない。 (2) 小括そうすると,控訴人会社の被控訴人らに対する損害賠償請求は理由がない。 第4 結論以上の次第で,被控訴人Aの甲事件(未払給料・解雇予告手当)請求を認容し, 小括そうすると,控訴人会社の被控訴人らに対する損害賠償請求は理由がない。 第4 結論以上の次第で,被控訴人Aの甲事件(未払給料・解雇予告手当)請求を認容し,控訴人の乙事件(損害賠償)請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないのでこれを棄却し,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官紙浦健二 裁判官中村哲 裁判官秋田志保
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