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主文 本件再抗告を棄却する。再抗告費用は抗告人の負担とする。理由 再抗告理由第一点について。原裁判所は、Aは同人と抗告人との間の大阪簡易裁判所昭和三〇年(ニ)第一一四号建物収去土地明渡調停事件調書の執行文刊与に対する異義の訴(同裁判所昭和三一年(ハ)第六五四号)につき、同裁判所昭和三一年(サ)第五一七号強制執行停止決定申請事件の保証として昭和三一年五月二八日三〇〇、〇〇〇円を供託することこより同日その停止決定を受け、ついで前示異議の訴(以下本案事件という。)につきA敗訴の判決を受けたので、Aは原裁判所に控訴の申立をし同裁判所昭和三二年(モ)第四五二号強制執行停止決定申請事件の保証として昭和三二年一〇月五日三〇〇、〇〇〇円を供託してその停止決定を受けたところ、大阪簡易裁判所は昭和三三年一月一六日前示同簡易裁判所昭和三一年(サ)第五一七号事件の保証は、前示原裁判所昭和三二年(モ)第四五二号事件の保証(供託により担保)事由が消滅したものとして、これを取り消したこと、昭和三〇年六月一日以降の係争土地の約定地代は月額五、〇〇〇円(年額六〇、〇〇〇円)であつて強制執行を停止されたことによつて抗告人の被る損害はほぼ右地代相当額であり、本案事件は五年間でその第一審及び第二審手続が終了するであろうことを認定したうえ、一般的に特別の事情のないかぎり第二審裁判所のした債務名義に基く強制執行の停止のための保証は、第一審裁判所における執行停止によつて生じた損害をも含めて担保すべきものと解し、本案事件の第二審裁判所の停止決定において第二審裁判所が命じた前示保証三〇〇、〇〇〇円は五カ年間の前示地代相当の損害額にあたるから第一審裁判所における執行停止決定によつて生じた損害をも<要旨>担保する趣旨であると判 判所の停止決定において第二審裁判所が命じた前示保証三〇〇、〇〇〇円は五カ年間の前示地代相当の損害額にあたるから第一審裁判所における執行停止決定によつて生じた損害をも<要旨>担保する趣旨であると判断したものである。 止決定において第二審裁判所が命じた前示保証三〇〇、〇〇〇円は五カ年間の前示地代相当の損害額にあたるから第一審裁判所における執行停止決定によつて生じた損害をも<要旨>担保する趣旨であると判 判所の停止決定において第二審裁判所が命じた前示保証三〇〇、〇〇〇円は五カ年間の前示地代相当の損害額にあたるから第一審裁判所における執行停止決定によつて生じた損害をも<要旨>担保する趣旨であると判断したものである。思うに強制執行法上の訴提起による執行停止決定は、常に当該審</要旨>級における判決言渡あるまで、執行を停止するものであるから、下級審が執行停止の保証を立てさせる場合、当該執行の停止による損害の額を予測し、その自由裁量によりこれを定めるべく、上級審においてなすであろう執行停止による損害の額を予測してこれを定めるべきものでないことはいうまでもない。同様に上級審が執行停止をする場合の保証は、特別の事情のないかぎり、上級審における執行停止の時からその判決言渡あるまでの間の執行停止による損害のみを担保するものであつて、その損害の額を予測して保証の額を定めるべきである(上訴による執行停止の保証において、(1)仮執行宣言付判決に対し上告があつたときに、第二審判決のみならず第一審判決の執行をも全部停止し、したがつてその保証は控訴審、上告審を通じての停止期間中の損害を担保させる場合《大審院昭和三年(ク)第九八九号事件同年一一月一五日決定・民集七巻九九三ページ・大正一一年(ク)第一九号事件同年四月四日決定・民集一巻一六三ページ》と(2)第二審判決のみの執行を停止させて上告審の停止期間中の損害を担保させる場合《大審院昭和一一年(ク)第四九号事件同年二月二二日決定・評論二五巻民訴三三ページ》とにつき二つの異る大審院決定があり、後者はもちろん前者の決定もまた強制執行法上の訴提起による執行停止の保証の担保すべき損害の範囲ついての前示見解に抵触するものではない。)。それゆえ、特別の事情のないかぎり、上級審において立てさせた保証は、下級審における執行停止期 制執行法上の訴提起による執行停止の保証の担保すべき損害の範囲ついての前示見解に抵触するものではない。)。それゆえ、特別の事情のないかぎり、上級審において立てさせた保証は、下級審における執行停止期間中の損害を担保するものではないと認むべきである(前示(2)の大審院決定参照)。 示見解に抵触するものではない。)。それゆえ、特別の事情のないかぎり、上級審において立てさせた保証は、下級審における執行停止期 制執行法上の訴提起による執行停止の保証の担保すべき損害の範囲ついての前示見解に抵触するものではない。)。それゆえ、特別の事情のないかぎり、上級審において立てさせた保証は、下級審における執行停止期間中の損害を担保するものではないと認むべきである(前示(2)の大審院決定参照)。しかしながら上級審が強制執行法上の訴の目的たる債務名義に基く執行の停止をするに当り、特に下級審におけるその執行停止期間中の損害を担保する趣旨で保証を立てさせることは法の禁ずるところではないと解せざるを得ない。したがつて特に上級審が下級審における執行停止期間中の損害も併せて担保する趣旨で保証を立てさせた場合は、下級審は当然その立てさせた保証につき担保の事由がやんだものとして担保取消決定をなすべきである(前示(2)の大審院決定参照)。ところで、原裁判所の確定した事実によれば、大阪地方裁判所の立てさせた保証額三〇〇、〇〇〇円は五年間に抗告人が執行停止によつて被るであろう損害の額に相当するものであり、他方本案事件は特に繁雑なものではなく、五年間にはその第一審及び第二審手続が終了するものと推定されるものである。とすると、大阪地方裁判所が前示保証を立てさせるにあたり、特に第一審における執行停止期間中の損害をも担保させる趣旨で保証の額を決めたものと原裁判所が判示したことをもつて法令の解釈ないし適用を誤つたものということはできない。また第二審裁判所が停止決定をするに当り前示趣旨を明示しなければならないものでもない。たとえ大阪簡易裁判所がその立てさせた保証三〇〇、〇〇〇円は、第一審判決の言渡のあるまでの期間中の、つまり第一審手続中のみの損害を担保する趣旨であるとしても、第二審裁判所はその自由裁量に基いて同額の三〇〇、〇〇〇円をもつて第一審及び第二審手続中の損害を担保しうる額であると 渡のあるまでの期間中の、つまり第一審手続中のみの損害を担保する趣旨であるとしても、第二審裁判所はその自由裁量に基いて同額の三〇〇、〇〇〇円をもつて第一審及び第二審手続中の損害を担保しうる額であると認めたものであつて、違法ではない。第二審裁判所が特に第一審における停止期間中の損害をも担保させる趣旨で保証を立てさせる場合、担保権利者を審尋しその意見を述べさせることは必ずしも必要ではない。 る額であると 渡のあるまでの期間中の、つまり第一審手続中のみの損害を担保する趣旨であるとしても、第二審裁判所はその自由裁量に基いて同額の三〇〇、〇〇〇円をもつて第一審及び第二審手続中の損害を担保しうる額であると認めたものであつて、違法ではない。第二審裁判所が特に第一審における停止期間中の損害をも担保させる趣旨で保証を立てさせる場合、担保権利者を審尋しその意見を述べさせることは必ずしも必要ではない。たとえ担保供与者たるAが本件供託金三〇〇、〇〇〇円の取戻請求権を二井蓄電器株式会社に譲渡しその旨大阪法務局に通知しているとしても、右取戻請求権は担保権利者の有する担保権(民訴法一一三条)の消滅を条件としてこれを行使しうるものであつて、その権利を行使しうる者がなん人か不明確ということはできない。抗告人の右主張はすべて採るをえない。再抗告理由第二点について。およそ強制執行手続上の訴提起等による執行停止の保証の額は、当該裁判所が本案事件の審理期間、不動産明渡などの場合はその賃料額など、あるいは疎明からうかがわれる経済事情等を考慮したうえ、その自由な裁量によつて決めるべきものであるが、たとえ抗告人の主張するように、その後抗告人が本件土地を八〇〇万円以下では他に売り渡さないほどその価額に変動があり、あるいはAが本件土地上の建物等を高額の賃料で他に賃貸しており、原裁判所認定の昭和三〇年六月一日現在の地代がその後の経済状勢にそわなくなつたとしても、そのことは直ちに大阪地方裁判所がその自由裁量によつて前示保証の額を決めたことを違法ならしめるものでなく、したがつて同裁判所が前示保証をもつて第一審における執行停止期間中の損害をも担保せしめたことを違法ならしめるものではない。抗告人のその余の主張は、原裁判所のした事実認定を非難するに帰するものであつて適法な再抗告理由と が前示保証をもつて第一審における執行停止期間中の損害をも担保せしめたことを違法ならしめるものではない。抗告人のその余の主張は、原裁判所のした事実認定を非難するに帰するものであつて適法な再抗告理由とすることができない。抗告人の右主張は採用できない。そこで、民訴法四一三条四一四条四〇一条八九条九五条を適用し主文のとおり決定する。(裁判長裁判官熊野啓五郎裁判官岡野幸之助裁判官山内敏彦)
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