令和元年7月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第33118号特許法第1条の違反,及び,特許権侵害,慰謝料等被害請求事件口頭弁論終結日令和元年5月27日判決 当事者の表示別紙1当事者目録記載のとおり 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して,3000万円及びこれに対する平成30年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告日本製鉄の関連会社であり,その後被告日鉄テクノロジーに吸収合 併された株式会社日鐵テクノリサーチ(以下「テクノリサーチ社」という。)に勤務していた原告が,①船舶の傾斜測定装置として被告日本製鉄の使用し,販売する装置は,原告の保有する特許権に係る発明の技術的範囲に属するものであり,被告日本製鉄の上記装置の使用及び販売は原告の特許権を侵害し,テクノリサーチ社は被告日本製鉄による原告の特許権の侵害行為の原因となる行為をした,②被告日本 製鉄及びテクノリサーチ社において,原告のテクノリサーチ社在勤中にした別件の発明につき,別件の訴訟で原告の職務を偽って主張するなどして裁判所に職務発明であるとの誤った判断をさせた,その後適切な内容での特許出願をせず拒絶査定を意図的に確定させたなどの不法行為をした,被告らにおいて,①の原告の特許権について,異議に理由がないことを知りながら特許異議の申立てをした(以下,②の 行為は,一連の不法行為として主張されているものと解され,これを「原告主張に 係るその他の不法行為」という。),被告日鉄テクノロジーはテクノリサ がら特許異議の申立てをした(以下,②の 行為は,一連の不法行為として主張されているものと解され,これを「原告主張に 係るその他の不法行為」という。),被告日鉄テクノロジーはテクノリサーチ社を吸収合併したことにより同社の権利義務を承継したと主張して,被告らに対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,①について損害額2億6300万円の一部である2720万円及び②について損害額607万円の一部である280万円の合計3000万円並びにこれに対する本件の訴状送達の日の翌日である平成30年1 2月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者 ア原告は,被告日本製鉄の関連会社であったテクノリサーチ社に勤務していた当時,別紙2発明目録(別件発明)記載の発明(以下「別件発明」という。)をした個人である。 イ被告日本製鉄は,鋼鉄の製造,販売等を目的とする株式会社である。 ウ被告日鉄テクノロジーは,鉄鋼業等における品質保証に関する業務等を目的 とする株式会社であり,吸収合併によりテクノリサーチ社の権利義務を承継した。 ⑵ 被告日本製鉄による特許出願ア被告日本製鉄は,別件発明について,テクノリサーチ社が有する特許を受ける権利を承継したとして,平成22年1月4日に特許出願(以下「別件出願」という。)をした。別件出願に係る公開特許公報には,別件発明の発明者として,原告 及び被告日本製鉄の従業員であるB1(以下「B」という。)が記載されている(甲11)。 イ特許庁審査官は,別件出願について拒絶査定(以下「別件拒絶査定」という。)をした。 として,原告 及び被告日本製鉄の従業員であるB1(以下「B」という。)が記載されている(甲11)。 イ特許庁審査官は,別件出願について拒絶査定(以下「別件拒絶査定」という。)をした。被告日本製鉄は,拒絶査定不服審判を請求せず,別件拒絶査定は確定した。 ⑶ 別件出願に係る先行訴訟 ア別件訴訟1(ア) 原告は,被告日本製鉄を被告として,別件発明に係る特許を受ける権利が原告に帰属することの確認を求める訴え(東京地裁平成24年(ワ)第14905号。以下「別件訴訟1」という。)を提起したが,東京地方裁判所は,平成25年5月16日,別件発明はテクノリサーチ社における職務発明に当た り,別件発明に係る特許を受ける権利は,原告から同社に承継された旨判示して,請求棄却判決(以下「別件判決1」という。)を言い渡した(甲45,乙1)。 (イ) 原告は,別件判決1に対して控訴した(知財高裁平成25年(ネ)第10054号)が,平成25年11月27日,控訴棄却判決を受け,その後,上 告及び上告受理申立てをした(最高裁平成26年(オ)第323号・同年(受)第411号)が,平成27年3月31日,上告棄却及び上告不受理決定を受けた(甲46,53)。 (ウ) 別件判決1は,前記(イ)の上告棄却及び上告不受理決定により確定した。 イ別件訴訟2 (ア) 原告は,被告日本製鉄及びBを被告とし,被告日本製鉄に対して,主位的に,①別件出願に係る願書の補正手続を求め,予備的に,②別件発明が原告の単独発明であることの確認を求めるとともに,Bに対して,③別件発明が原告の単独発明であることの確認を求め,④民法709条に基づき発明者名誉権の侵害に係る慰謝料150万円及び遅延損害金の支払を求める訴え(東京地裁 平成26年 とともに,Bに対して,③別件発明が原告の単独発明であることの確認を求め,④民法709条に基づき発明者名誉権の侵害に係る慰謝料150万円及び遅延損害金の支払を求める訴え(東京地裁 平成26年(ワ)第3672号。以下「別件訴訟2」という。)を提起したが,東京地方裁判所は,平成26年9月11日,上記②及び③の各訴えを却下し,上記①及び④の各請求を棄却する旨の判決(以下「別件判決2」という。)を言い渡した(甲47,乙2)。 (イ) 原告は,別件判決2に対して控訴した(知財高裁平成26年(ネ)第1 0099号)が,平成27年3月11日,控訴棄却判決を受け,その後,上告 及び上告受理申立てをした(最高裁平成27年(オ)第871号・同年(受)第1092号)が,平成27年7月22日,上告棄却及び上告不受理決定を受けた(甲13,48,54)。 (ウ) 別件判決2は,前記(イ)の上告棄却及び上告不受理決定により確定した。 ⑷ 原告による特許権の取得 原告は,発明の名称を「船舶の両舷ドラフト差測定装置」とする発明(以下,特許権の設定登録時の特許請求の範囲請求項1ないし5及び後述する訂正後の特許請求の範囲請求項2,4ないし9記載の各発明を一括して「本件発明」という。)について,平成27年4月17日(優先日同年3月24日,優先権主張国日本国)を国際出願日とする特許出願(特願2015-79588)をし,同年10月23日, 特許権の設定登録(特許第5827775号。以下,この特許権を「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」という。)を受けた(甲29ないし31)。 ⑸ 被告らによる異議申立てア被告らは,平成28年6月2日,本件特許権について,特許異議の申立て (異議2016-700505。以下「本件 」という。)を受けた(甲29ないし31)。 ⑸ 被告らによる異議申立てア被告らは,平成28年6月2日,本件特許権について,特許異議の申立て (異議2016-700505。以下「本件異議申立て」という。)をした(甲31,34)。 イ特許庁審判長は,平成28年8月5日を起案日とする取消理由通知書において,原告に対し,特許請求の範囲請求項1及び3に係る特許は特許法29条2項に違反してされたものであり,同法113条2号に該当し,取り消されるべきもので ある旨の取消理由を通知した(甲35)。 ウ原告は,前記イの取消理由の通知を受け,平成28年9月14日付けで,特許請求の範囲請求項1及び3を削除し,請求項4及び5に係る引用関係を改め,請求項6ないし9を追加する旨の訂正請求(以下「本件訂正」という。)をした(甲29,35,38)。 エ特許庁審判官は,平成28年11月16日,本件訂正を認めた上で,訂正後 の特許請求の範囲請求項2,4ないし9に係る特許を維持し,請求項1及び3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する旨の決定(以下「本件決定」という。)をし,本件決定の謄本は,その頃,原告及び被告らに送達された(甲39,乙3)。 ⑹ 本件特許に係る特許請求の範囲 本件決定により,本件特許に係る特許請求の範囲は,別紙3「特許請求の範囲(本件発明)」のとおり訂正された(甲39,乙3。下線部は訂正箇所であり,以下,請求項2,4ないし9記載の発明を一括して「本件訂正後発明」という。)。 2 争点⑴ 被告らによる本件特許権侵害の有無及び損害(争点1) ⑵ 被告らによる原告主張に係るその他の不法行為の有無及び損害(争点2) 3 争点に対する当事者の主張⑴ 争点1(被告らによる本件特許 被告らによる本件特許権侵害の有無及び損害(争点1) ⑵ 被告らによる原告主張に係るその他の不法行為の有無及び損害(争点2) 3 争点に対する当事者の主張⑴ 争点1(被告らによる本件特許権侵害の有無及び損害)について【原告の主張】ア別件発明に係る傾斜測定装置(以下「被告装置」という。)は本件発明の技 術的範囲に属する装置であり,喫水検査の際には必ず使用される。被告日本製鉄は,被告装置を使用し,販売して本件特許権を侵害している(甲60ないし64)。被告日本製鉄による本件特許権の侵害は,平成21年1月1日から継続しており,今後も令和11年12月31日まで継続することは確実である。 被告日本製鉄が被告装置を使用することにより,原告に6300万円の損害(特 許法102条1項)が生じる。また,被告装置に係る利益率は1台当たり年間1万円であるから,1000隻の船舶に本件発明が実施されているとすると,被告装置の販売によって得られる利益の額(特許法102条1項)は,2億円(1000隻×1万円×20年)である。 イテクノリサーチ社は,被告日本製鉄の関連会社であり,同社に対して別件発 明に係る特許を受ける権利を譲渡するなどした結果,前記アの損害が発生している から,テクノリサーチ社の行為は不法行為を構成し,テクノリサーチ社の権利義務を承継した被告日鉄テクノロジーも,前記アの損害について賠償責任を負う。 ウ原告は,被告らに対し,民法709条に基づき,前記損害金の一部である2720万円及びこれに対する平成30年12月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。 【被告らの主張】争う。 ⑵ 争点2(被告らによる原告主張に係るその他の不法行為の有無及び損害)につい 8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。 【被告らの主張】争う。 ⑵ 争点2(被告らによる原告主張に係るその他の不法行為の有無及び損害)について【原告の主張】 ア被告日本製鉄及びテクノリサーチ社の次の各行為は不法行為を構成する。すなわち,①被告日本製鉄及びテクノリサーチ社は,別件訴訟1において,原告の地位及び職務を偽り,裁判所に,別件発明はテクノリサーチ社における職務発明であり別件発明に係る特許を受ける権利は原告から同社に承継された旨の誤った判断をさせた(以下「被告日本製鉄ら行為①」という。)。②テクノリサーチ社は,別件 発明に係る特許を受ける権利を,同社の発明考案規定における単独発明の規定(甲16)に違反して,原告に無断で,被告日本製鉄に譲渡した(以下「テクノリサーチ社行為②」という。)。③被告日本製鉄は,別件発明に係る特許を受ける権利を不当に承継し,国際出願を経て我が国で特許を取得できるはずであった別件発明について,特許査定を受け得ない内容で特許出願し,別件拒絶査定を意図的に確定さ せたことにより,我が国で特許による保護を受けられないようにした(特許法1条違反。以下「被告日本製鉄行為③」という。)。④被告日本製鉄は,Bも別件発明の発明者であると偽って別件出願をした(以下「被告日本製鉄行為④」といい,これらの行為を「被告日本製鉄ら行為①ないし④」と総称する。)。 被告日本製鉄ら行為①ないし④により,原告は別件訴訟1及び2を提起すること を余儀なくされ,別件訴訟1及び2の裁判費用及び弁護士費用406万円に係る損 害を被った。また,被告日本製鉄ら行為①ないし④により,原告が本件発明に係る特許を取得するまでに長期間を要することとなったから,原告 件訴訟1及び2の裁判費用及び弁護士費用406万円に係る損 害を被った。また,被告日本製鉄ら行為①ないし④により,原告が本件発明に係る特許を取得するまでに長期間を要することとなったから,原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料は100万円を下らない。 イテクノリサーチ社の権利義務を承継した被告日鉄テクノロジーも,前記アの損害について賠償責任を負う。 ウまた,被告らは,原告に本件発明に係る特許取得を諦めさせる目的で,異議に理由がないことを知りながら,共同で本件異議申立てをした。もとより,特許異議の申立てをするのであれば,弁理士を有する企業として,発明者に迷惑がかからないように事案を見極めた上ですべきであるから,被告らの行為は不法行為を構成する。 被告らの本件異議申立てにより,原告は弁理士費用101万円に係る損害を被った。 エ原告は,被告らに対し,民法709条に基づき,前記損害金の一部である280万円及びこれに対する平成30年12月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。 【被告らの主張】ア被告日本製鉄ら行為①ないし④に係る原告の主張は,別件判決1及び2の主文に包含される判断を蒸し返して争うに等しいものであり,確定した別件判決1及び2の既判力により許されない。 もとより,被告日本製鉄は,別件訴訟1及び2において,虚偽の主張立証はして おらず,別件出願において,Bを別件発明の発明者であると記載したのも虚偽ではない。また,別件発明に係る特許を受ける権利は,原告及びBからテクノリサーチ社を経て被告日本製鉄に承継されたから,別件発明について特許を取得できなかったことなどについて,被告らが原告に対する損害賠償責任を負うことはない。 イ本件異議申立ても,十 及びBからテクノリサーチ社を経て被告日本製鉄に承継されたから,別件発明について特許を取得できなかったことなどについて,被告らが原告に対する損害賠償責任を負うことはない。 イ本件異議申立ても,十分な調査に基づくものであり,被告らの主張の一部が 取消理由として採用されたこと,進歩性の判断はもとより微妙なものであることな どに照らせば,事実的又は法律的の根拠を欠き,著しく相当性を欠くものであるとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告らによる本件特許権侵害の有無及び損害)について⑴ 被告日本製鉄に対する請求 原告は,別件発明に係る傾斜測定装置である被告装置は本件発明の技術的範囲に属する旨主張しており,前記第2の1⑸及び⑹のとおり,本件特許に係る特許請求の範囲は本件決定によって訂正されているから,被告装置は本件訂正後発明の技術的範囲に属する旨を主張するものと解される。また,原告は,本件口頭弁論終結日である令和元年5月27日までの不法行為に係る損害賠償請求権を主張するものと 解される。 しかしながら,別件発明は別紙2発明目録(別件発明)該当欄のとおりのものであるのに対し,本件訂正後発明は別紙3特許請求の範囲(本件発明)記載のとおりのものであり,それぞれ異なる発明特定事項を有しており,仮に,被告装置が別件発明の技術的範囲に属するとの前提に立つとしても,そのことから直ちに被告装置 が本件訂正後発明の技術的範囲に属するということはできない。そして,被告装置の具体的構成やこれと本件訂正後発明との対比についての主張はなく,被告装置が本件訂正後発明の技術的範囲に属することを認めるに足りる証拠はない。 被告装置が本件訂正後発明の技術的範囲に属すること,被告日本製鉄において被告装置を使用していること ついての主張はなく,被告装置が本件訂正後発明の技術的範囲に属することを認めるに足りる証拠はない。 被告装置が本件訂正後発明の技術的範囲に属すること,被告日本製鉄において被告装置を使用していることを示すものであるとして原告が提出する証拠(甲60~ 64)についても,「デンマーク国の特許証と願書」(甲61),「傾斜測定装置(JP2011-137776)が,実際に使用されている物理的証拠その2」(甲63)及び「傾斜測定装置(JP2011-137776)が,実際に使用されている物理的証拠その3」(甲64)には,被告装置の構成をうかがわせる記載が見当たらないものであるし,その他の証拠(甲60,62)も,被告装置を撮 影したとされている各写真であるものの,これによっても,被告装置の具体的構成 は明らかではなく,被告日本製鉄が本件特許の設定登録後に本件訂正後発明の技術的範囲に属する装置を使用し,又は販売していることを示すものと認めることはできない。 本件全証拠によっても,被告日本製鉄が本件訂正後発明の技術的範囲に属する装置を使用し,販売していると認めることはできないから,被告日本製鉄に対する本 件特許権の侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求は認められない。 ⑵ 被告日鉄テクノロジーに対する請求被告日鉄テクノロジーに対する損害賠償請求に係る原告の主張の趣旨は明確ではなく,被告日本製鉄による本件特許権の侵害行為の原因となる行為をした旨の主張であると解する余地はあるが,いずれにしても,被告日本製鉄による本件特許権の 侵害行為の存在を前提とするものであると解されるところ,前記⑴のとおり,被告日本製鉄による本件特許権の侵害行為を認めることはできないのであるから,被告日鉄テクノロジーによる不法行為は認められな 侵害行為の存在を前提とするものであると解されるところ,前記⑴のとおり,被告日本製鉄による本件特許権の侵害行為を認めることはできないのであるから,被告日鉄テクノロジーによる不法行為は認められない。 2 争点2(被告らによる原告主張に係るその他の不法行為の有無及び損害)について ⑴ 被告日本製鉄ら行為①ないし④に係る不法行為ア原告は,被告日本製鉄及びテクノリサーチ社による不法行為を基礎付ける一連の事実として,①被告日本製鉄ら行為①,すなわち,被告日本製鉄及びテクノリサーチ社は,別件訴訟1において,原告の地位及び職務を偽り,裁判所に,別件発明はテクノリサーチ社における職務発明であり別件発明に係る特許を受ける権利は 原告から同社に承継された旨の誤った判断をさせたこと,②テクノリサーチ社行為②,すなわち,テクノリサーチ社は,別件発明に係る特許を受ける権利を,同社の発明考案規定における単独発明の規定(甲16)に違反して,原告に無断で,被告日本製鉄に譲渡したこと,③被告日本製鉄行為③,すなわち,被告日本製鉄は,別件発明に係る特許を受ける権利を不当に承継し,国際出願を経て我が国で特許を取 得できるはずであった別件発明について,特許査定を受け得ない内容で特許出願し, 別件拒絶査定を意図的に確定させたことにより,我が国で特許による保護を受けられないようにしたこと(特許法1条違反),④被告日本製鉄行為④,すなわち,被告日本製鉄は,Bも別件発明の発明者であると偽って別件出願をしたことを主張する。 イ原告の主張の趣旨は明確でないが,以下のとおり,いずれにしても,被告日 本製鉄ら行為①ないし④を原告に対する不法行為を基礎付ける事情として採用することはできないというべきである。 (ア) 被告日本製鉄ら行為① 明確でないが,以下のとおり,いずれにしても,被告日 本製鉄ら行為①ないし④を原告に対する不法行為を基礎付ける事情として採用することはできないというべきである。 (ア) 被告日本製鉄ら行為①a 前記第2の1⑶アのとおり,原告と被告日本製鉄の間には,別件発明に係る特許を受ける権利が原告に帰属することの確認を求める別件訴訟1において原告の 請求を棄却する旨の別件判決1が確定しているから,原告が,被告日本製鉄が別件判決1の成立過程で事実を偽ったことを理由として不法行為を主張しているのであれば,確定判決の既判力ある判断と実質的に矛盾する損害賠償請求をするものとして,原則として許されるべきではない。そして,このような損害賠償請求は,当事者の一方が,虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔するなどの不正な行為を行い,そ の結果本来あり得べからざる内容の確定判決を取得し,かつ,これを執行したなど,その行為が著しく正義に反し,確定判決の既判力による法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別の事情がある場合に限って許されるものと解される(最高裁昭和43年(オ)第906号同44年7月8日第三小法廷判決・民集23巻8号1407頁,最高裁平成5年(オ)第1211号・第1212号同10年9 月10日第一小法廷判決・裁判集民事189号743頁,最高裁平成21年(受)第1216号同22年4月13日第三小法廷判決・裁判集民事234号31頁参照)ところ,もとより,被告日本製鉄が別件訴訟1において裁判所を欺罔するなどの不正な行為を行ったと認めるに足る証拠はなく,上記の特別の事情は認められないから,原告の主張は認められない。 b 原告は,別件訴訟1の成立過程におけるテクノリサーチ社の行為が不法行為 となることを基礎付ける事 証拠はなく,上記の特別の事情は認められないから,原告の主張は認められない。 b 原告は,別件訴訟1の成立過程におけるテクノリサーチ社の行為が不法行為 となることを基礎付ける事実関係を具体的に主張していないから,テクノリサーチ社の行為が不法行為となる旨の原告の主張は失当である。 (イ) テクノリサーチ社行為②別件判決1は前記のとおりのものであり,本件全証拠によっても,テクノリサーチ社が別件発明に係る特許を受ける権利を被告日本製鉄に譲渡した時点で,原告に おいて別件発明に係る特許を受ける権利を有していたとは認められないから,テクノリサーチ社の行為によって,原告の別件発明に係る特許を受ける権利が侵害されたと認めることはできない。 原告は,テクノリサーチ社による不法行為を基礎付ける事実として,同社が,その発明考案規定(甲16)における単独発明の規定に違反したことを指摘するが, 同規定は,同社が従業員の職務発明に係る特許を受ける権利を第三者に譲渡する場合に,当該従業員の合意を得ることを要する旨を定めるものと認めることはできないから,テクノリサーチ社が上記規定に違反して別件発明に係る特許を受ける権利を譲渡したとも認められない。 (ウ) 被告日本製鉄行為③ 被告日本製鉄が別件発明に係る特許を受ける権利の譲渡を受け,別件出願をしたことや,別件拒絶査定を確定させたことなどにより,原告の別件発明に係る特許を受ける権利が侵害されたことをいう原告の主張は,前記(ア)aのとおり,別件判決1の既判力ある判断と実質的に矛盾する損害賠償請求をするものであり,これを認めるべき特別の事情も認められないから,原告の主張は,認められない。 (エ) 被告日本製鉄行為④原告は,Bも別件発明の発明者であるとして別件出願 する損害賠償請求をするものであり,これを認めるべき特別の事情も認められないから,原告の主張は,認められない。 (エ) 被告日本製鉄行為④原告は,Bも別件発明の発明者であるとして別件出願をした被告日本製鉄の行為が被告日本製鉄による不法行為である旨主張するが,原告のいかなる権利又は法律上保護された利益が侵害されたかの具体的な主張はなく,被告日本製鉄行為④を原告に対する不法行為と認めることはできないというべきである。 ウしたがって,被告らに対する被告日本製鉄ら行為①ないし④を理由とする不 法行為に基づく損害賠償請求はいずれも認められない。 ⑵ 本件異議申立てに係る不法行為原告は,被告らによる本件異議申立ては原告に対する不法行為となる旨主張する。 しかしながら,特許異議の申立てが事実上又は法律上の根拠を欠き,特許異議の申立てが制度の趣旨目的に照らし著しく相当性を欠くと認められる場合などに不法 行為が成立し得るとしても,本件異議申立てに係る審理の経過に照らせば,本件異議申立てについて上記の場合に当たることをうかがわせる事情は認められず,原告の主張を認めることはできない。 すなわち,前記第2の1⑸のとおり,①本件異議申立てを受けて,特許庁審判長は,原告に対し,特許請求の範囲請求項1及び3に係る特許は特許法29条2項に 違反してされたものであり,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである旨の取消理由を通知したこと,②同取消理由の通知を受けて,原告は,請求項1及び3を削除し,請求項4及び5に係る引用関係を改め,請求項6ないし9を追加する旨の訂正請求(本件訂正)をしたこと,③特許庁審判官は,本件訂正を認めた上で,訂正後の特許請求の範囲請求項2,4ないし9に係る特許を維持し,同請 求項1及 係を改め,請求項6ないし9を追加する旨の訂正請求(本件訂正)をしたこと,③特許庁審判官は,本件訂正を認めた上で,訂正後の特許請求の範囲請求項2,4ないし9に係る特許を維持し,同請求項1及び3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する旨の本件決定をしたことが認められるから,本件異議申立てが事実上又は法律上の根拠を欠くものであったとはいえず,不法行為を構成するとは認められない。 第4 結論以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 山田真紀 裁判官 神谷厚毅 裁判官 西山芳樹 (別紙一覧) 別紙1 当事者目録 別紙2 発明目録(別件発明) 別紙3 特許請求の範囲(本件発明) (別紙1)当事者目録 原告A 同訴訟代理人弁護士謙一 旧商号新日鐵住金株式会社 被告日本製鉄株式会社(以下「被告日本製鉄」という。) 旧商号日鉄住金テクノロジー株式会社 被告 製鉄株式会社(以下「被告日本製鉄」という。)旧商号日鉄住金テクノロジー株式会社被告日鉄テクノロジー株式会社 (以下「被告日鉄テクノロジー」という。)上記両名訴訟代理人弁護士増井和夫同橋口尚幸同齋藤誠二郎 (別紙2)発明目録(別件発明) 発明の名称傾斜測定装置出願日平成22年1月4日 出願番号特願2010-17公開日平成23年7月14日公開番号 2011-137776特許請求の範囲【請求項1】 被測定物の傾斜を測定する装置であって,(a)気泡が発生しない液体を,両端部に空間を残し,気泡が存在しないように収容した樹脂製の長尺透明チューブ,及び,(b)上記長尺透明チューブの両端部に取り付けた,上記液体の液位を測定する液位測定器, を備えることを特徴とする傾斜測定装置。 【請求項2】前記長尺透明チューブの両端部が,透明直管で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の傾斜測定装置。 【請求項3】 前記長尺透明チューブが,両端部に,開閉弁を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の傾斜測定装置。 【請求項4】前記長尺透明チューブが,中央部を止端とする2本巻きでリールに巻き付けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の傾斜測定装置。 【請 の傾斜測定装置。 【請求項4】前記長尺透明チューブが,中央部を止端とする2本巻きでリールに巻き付けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の傾斜測定装置。 【請求項5】 前記リールが,液位測定器と長尺透明チューブの端部を保持する保持部材を備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の傾斜測定装置。 【請求項6】前記液位測定器の下端に,固定用部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の傾斜測定装置。 【請求項7】前記固定用部材が磁石であることを特徴とする請求項6に記載の傾斜測定装置。 (別紙3)特許請求の範囲(本件発明) 【請求項1】(削除) 【請求項2】船舶の両舷のドラフト差を測定するべく,左舷と右舷にそれぞれ取付ける2つの液位測定管(11)と,前記2つの液位測定管(11)を互いに連通させる連通ホース(41)と,前記連通ホース(41)の中央部が固定されかつ左ホース部分(41a)と右ホース部分(41b)を同時に巻き取るドラム(51)と,を備え た測定装置(1)であって,前記ドラム(51)の軸部材(51a)の外周面上に固定された複数のシート片から構成されかつ前記シート片同士の間の隙間により溝が形成されたホース保持シート(45)を有し,前記連通ホース(41)の中央部は,前記ホース保持シート(45)の前記溝に 嵌め込まれることにより前記ドラム(51)に固定されることを特徴とする船舶の両舷のドラフト差測定装置。 【請求項3】(削除)【請求項4】 前記液位測定管(11)及び前記連通ホース(41)に充填される測定液(W)が, れることを特徴とする船舶の両舷のドラフト差測定装置。 【請求項3】(削除)【請求項4】 前記液位測定管(11)及び前記連通ホース(41)に充填される測定液(W)が,水と着色されたエチレングリコールとからなり,着色されたエチレングリコールは測定液(W)の3体積%~5体積%含まれることを特徴とする請求項2のいずれかに記載の船舶の両舷ドラフト差測定装置。 【請求項5】 前記液位測定管(11)と前記連通ホース(41)の間に接続された透明な弾性 体からなる空気抜き操作チューブ(13)をさらに有し,前記空気抜き操作チューブ(13)は前記連通ホース(41)内に存在する空気を排出させるべく外部から押圧操作されることを特徴とする請求項2又は4のいずれかに記載の船舶の両舷ドラフト差測定装置。 【請求項6】 船舶の両舷のドラフト差を測定するべく,左舷と右舷にそれぞれ取付ける2つの液位測定管(11)と,前記2つの液位測定管(11)を互いに連通させる連通ホース(41)と,前記連通ホース(41)の中央部が固定されかつ左ホース部分(41a)と右ホース部分(41b)を同時に巻き取るドラム(51)と,を備えた測定装置(1)であって, 前記連通ホース(41)の中央部をU字状に湾曲させて引っ掛けるために,前記ドラム(51)の軸部材(51a)の外周面から突出するホース掛け突起(51c)と,前記連通ホース(41)の中央部に装着された樹脂製コイルスプリング(42)と,を有し, 前記液位測定管(11)及び前記連通ホース(41)に充填される測定液(W)が,水と着色されたエチレングリコールとからなり,着色されたエチレングリコールは測定液(W)の3体積%~5体積%含まれることを特徴とする 定管(11)及び前記連通ホース(41)に充填される測定液(W)が,水と着色されたエチレングリコールとからなり,着色されたエチレングリコールは測定液(W)の3体積%~5体積%含まれることを特徴とする船舶の両舷ドラフト差測定装置。 【請求項7】 船舶の両舷のドラフト差を測定するべく,左舷と右舷にそれぞれ取付ける2つの液位測定管(11)と,前記2つの液位測定管(11)を互いに連通させる連通ホース(41)と,前記連通ホース(41)の中央部が固定されかつ左ホース部分(41a)と右ホース部分(41b)を同時に巻き取るドラム(51)と,を備えた測定装置(1)であって, 前記連通ホース(41)の中央部をU字状に湾曲させて引っ掛けるために,前記 ドラム(51)の軸部材(51a)の外周面から突出するホース掛け突起(51c)と,前記連通ホース(41)の中央部に装着された樹脂製コイルスプリング(42)と,を有し,前記連通ホース(41)及び前記樹脂製コイルスプリング(42)を覆うように 前記軸部材(51a)の周囲に巻き付けられ固定された補助固定テープ(43)をさらに有し,前記液位測定管(11)及び前記連通ホース(41)に充填される測定液(W)が,水と着色されたエチレングリコールとからなり,着色されたエチレングリコールは測定液(W)の3体積%~5体積%含まれることを特徴とする 船舶の両舷ドラフト差測定装置。 【請求項8】船舶の両舷のドラフト差を測定するべく,左舷と右舷にそれぞれ取付ける2つの液位測定管(11)と,前記2つの液位測定管(11)を互いに連通させる連通ホース(41)と,前記連通ホース(41)の中央部が固定されかつ左ホース部分 (41a)と右ホース部分(41b)を同時に巻き 測定管(11)と,前記2つの液位測定管(11)を互いに連通させる連通ホース(41)と,前記連通ホース(41)の中央部が固定されかつ左ホース部分 (41a)と右ホース部分(41b)を同時に巻き取るドラム(51)と,を備えた測定装置(1)であって,前記連通ホース(41)の中央部をU字状に湾曲させて引っ掛けるために,前記ドラム(51)の軸部材(51a)の外周面から突出するホース掛け突起(51c)と, 前記連通ホース(41)の中央部に装着された樹脂製コイルスプリング(42)と,を有し,前記液位測定管(11)と前記連通ホース(41)の間に接続された透明な弾性体からなる空気抜き操作チューブ(13)をさらに有し,前記空気抜き操作チューブ(13)は前記連通ホース(41)内に存在する空気を排出させるべく外部から 押圧操作されることを特徴とする 船舶の両舷ドラフト差測定装置。 【請求項9】船舶の両舷のドラフト差を測定するべく,左舷と右舷にそれぞれ取付ける2つの液位測定管(11)と,前記2つの液位測定管(11)を互いに連通させる連通ホース(41)と,前記連通ホース(41)の中央部が固定されかつ左ホース部分 (41a)と右ホース部分(41b)を同時に巻き取るドラム(51)と,を備えた測定装置(1)であって,前記連通ホース(41)の中央部をU字状に湾曲させて引っ掛けるために,前記ドラム(51)の軸部材(51a)の外周面から突出するホース掛け突起(51c)と, 前記連通ホース(41)の中央部に装着された樹脂製コイルスプリング(42)と,を有し,前記連通ホース(41)及び前記樹脂製コイルスプリング(42)を覆うように前記軸部材(51a)の周囲に巻き付けられ固定された補助固定テープ(4 着された樹脂製コイルスプリング(42)と,を有し,前記連通ホース(41)及び前記樹脂製コイルスプリング(42)を覆うように前記軸部材(51a)の周囲に巻き付けられ固定された補助固定テープ(43)をさらに有し, 前記液位測定管(11)と前記連通ホース(41)の間に接続された透明な弾性体からなる空気抜き操作チューブ(13)をさらに有し,前記空気抜き操作チューブ(13)は前記連通ホース(41)内に存在する空気を排出させるべく外部から押圧操作されることを特徴とする船舶の両舷ドラフト差測定装置。
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