主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告広島信用金庫は,(1) 原告Aに対し,金52万8357円(2) 同Bに対し,金72万2109円(3) 同Cに対し,金112万2843円(4) 同Dに対し,金38万1880円(5) 同Eに対し,金40万7665円(6) 同Fに対し,金74万4640円(7) 同Gに対し,金36万9658円及びこれらに対する平成12年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告呉信用金庫は,(1) 原告Hに対し,金24万9374円(2) 同Iに対し,金43万4051円(3) 同Jに対し,金67万9518円及びこれらに対する平成12年5月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告らによる勧誘・媒介行為によって日産生命保険相互会社(以下「日産生命」という。)の保険に加入した原告らが,被告らの従業員による勧誘には説明義務違反等の違法があり,また,日産生命の経営が破綻したのは,同社と提携した被告らが積極的にその保険商品を販売し,同社に莫大な逆ざやを生じさせたり多額の募集手数料や協力預金等を負担させるなどして,同社を破綻に追い込んだためであり,被告らのこれらの行為は不法行為を構成すると主張するとともに,保険契約及び融資契約の錯誤,公序良俗違反による無効を主張して,不法行為に基づく損害賠償ないし不当利得返還を請求している事案である。 1 争いのない事実等(1) 当事者等ア日産生命は,生命保険業等を目的とする相互会社であったが,平成9年4月に経営が破綻した。 賠償ないし不当利得返還を請求している事案である。 1 争いのない事実等(1) 当事者等ア日産生命は,生命保険業等を目的とする相互会社であったが,平成9年4月に経営が破綻した。 イ被告広島信用金庫(以下「被告広信」という。)は,主に広島市内に営業の中心を置く信用金庫であり,被告呉信用金庫(以下「被告呉信」という。)は,主に広島県呉市内に営業の中心を置く信用金庫である。 (2) 原告らは,日産生命との間で,以下のとおりの保険契約を締結した(以下「本件保険契約」という。)。 ア原告A保険内容積立年金保険契約契約日平成元年2月27日基本年金額 50万円年金支給期間平成23年2月27日から終身(ただし,死亡にかかわらず10年間支給)保険料支払方法月払全期一括払い払込保険料総額 220万0459円イ原告B保険内容育英保険契約契約日平成元年8月25日基本年金額 100万円給付内容平成6年2月1日 10万円平成8年2月1日 10万円平成14年2月1日 10万円平成17年2月1日 40万円平成20年2月1日 70万円平成23年8月24日 60万円保険料支払方法月払全期一括払い払込保険料総額 157万6582円ウ原告C保険内容積立年金保険契約契約日平成3年1月10日基本年金額 一括払い払込保険料総額 157万6582円ウ原告C保険内容積立年金保険契約契約日平成3年1月10日基本年金額 50万円年金支給期間平成18年1月10日から終身(ただし,死亡にかかわらず10年間支給)保険料支払方法月払全期一括払い払込保険料総額 338万2243円エ原告Dは,以下の内容で2口契約した。 保険内容育英保険契約契約日昭和63年8月25日基本年金額 120万円給付内容平成5年2月1日 12万円平成7年2月1日 12万円平成13年2月1日 12万円平成16年2月1日 48万円平成19年2月1日 84万円平成22年8月24日 72万円保険料支払方法月払全期一括払い払込保険料総額 169万6688円オ原告H保険内容積立年金保険契約契約日平成元年8月25日基本年金額 30万円年金支給期間平成17年8月25日から終身(ただし,死亡にかかわらず10年間支給)保険料支払方法月払全期一括払い払込保険料総額 225万4784円カ原告E保険内容積立年金保険契約契約日昭和63年8月25日基本年金額 50万円年金支給期間平成16年8月25日から終身(ただし,死 保険内容積立年金保険契約契約日昭和63年8月25日基本年金額 50万円年金支給期間平成16年8月25日から終身(ただし,死亡にかかわらず10年間支給)保険料支払方法月払全期一括払い払込保険料総額 330万3573円キ原告F保険内容育英保険契約契約日昭和63年8月25日基本年金額 100万円給付内容平成9年2月1日 10万円平成12年2月1日 40万円平成15年2月1日 70万円平成18年8月24日 80万円保険料支払方法月払全期一括払い払込保険料総額 145万4112円ク原告I保険内容積立年金保険契約契約日平成元年10月25日基本年金額 30万円年金支給期間平成23年10月25日から終身(ただし,死亡にかかわらず10年間支給)保険料支払方法月払全期一括払い払込保険料総額 187万7615円ケ原告J(ア)保険内容積立年金保険契約契約日昭和63年3月10日基本年金額 50万円年金支給期間平成18年3月10日から終身(ただし,死亡にかかわらず10年間支給)保険料支払方法月払全期一括払い払込保険料総額 299万4629円(イ)保険内容積立年金保険契約契約日平 らず10年間支給)保険料支払方法月払全期一括払い払込保険料総額 299万4629円(イ)保険内容積立年金保険契約契約日平成元年3月27日基本年金額 30万円年金支給期間平成18年3月27日から終身(ただし,死亡にかかわらず10年間支給)保険料支払方法月払全期一括払い払込保険料総額 188万8046円コ原告G保険内容積立年金保険契約契約日平成2年6月25日基本年金額 50万円年金支給期間平成16年6月25日から終身(ただし,死亡にかかわらず10年間支給)保険料支払方法月払全期一括払い払込保険料総額 322万4270円(3) 原告らは,本件保険契約の締結に際し,被告らとの間で以下の内容の消費貸借契約を締結し(以下「本件融資契約」という。),借入金を本件保険契約の保険料の一括払いに充てた。 ア原告A借入先被告広信支店名 a支店借入日平成元年2月27日借入金額 221万円約定利率年7.7%返済期間平成11年2月15日返済金額毎月2万6455円(初回は2万0214円)イ原告B借入先被告広信支店名 b支店借入日平成元年8月25日借入金額 158万円約定利率年7.7%返済期間平成元年9月25日から平成11年8月25日返済金額毎月1万8913円(初回は1万9452 5日借入金額 158万円約定利率年7.7%返済期間平成元年9月25日から平成11年8月25日返済金額毎月1万8913円(初回は1万9452円)ウ原告C借入先被告広信支店名 c支店借入日平成3年1月10日借入金額 339万円約定利率年8.1%返済期間平成13年1月25日返済金額毎月4万1309円(初回は5万3785円)エ原告Dは,以下の内容で2口契約(借入金額合計340万円)した。 借入先被告広信支店名 d支店借入日昭和63年8月25日借入金額 170万円約定利率年7.7%返済期間昭和63年9月15日から平成10年8月15日まで返済金額毎月1万4364円(初回は1万2241円,毎年2月及び8月に3万6303円加算)オ原告H借入先被告呉信支店名 e支店借入日平成元年8月25日借入金額 226万円約定利率年7.7%返済期間平成元年9月27日から平成11年8月27日まで返済金額毎月2万7100円カ原告E借入先被告広信支店名 f支店借入日昭和63年8月25日借入金額 331万円約定利率年7.7%返済期間昭和63年9月5日から平成10年8月5日まで返済金額毎月3万9622円(初回は2万6784円)キ原告F借入先 約定利率年7.7%返済期間昭和63年9月5日から平成10年8月5日まで返済金額毎月3万9622円(初回は2万6784円)キ原告F借入先被告広信支店名 g支店借入日昭和63年8月25日借入金額 146万円約定利率年7.7%返済期間昭和63年9月25日から平成10年8月25日まで返済金額毎月1万7477円(初回は1万7975円)ク原告I借入先被告呉信支店名 e支店借入日平成元年10月25日借入金額 188万円約定利率年7.7%返済期間平成元年11月から平成11年10月まで返済金額毎月2万2600円(合計247万3859円)ケ原告J(ア)借入先被告呉信支店名 e支店借入日昭和63年3月10日借入金額 300万円約定利率年7.7%返済期間昭和63年3月24日から平成10年3月25日まで返済金額毎月3万6000円(合計422万2907円)(イ)借入先被告呉信支店名 e支店借入日平成元年3月27日借入金額 190万円約定利率年7.7%返済期間平成元年3月24日から平成11年3月27日まで返済金額毎月2万2800円(合計261万2561円)コ原告G借入先被告広信支店名 h支店借入日平成2年6月 3月27日まで返済金額毎月2万2800円(合計261万2561円)コ原告G借入先被告広信支店名 h支店借入日平成2年6月25日借入金額 323万円約定利率年8.1%返済期間平成2年11月から平成11年6月15日まで返済金額毎月4万2218円(合計448万8553円)(4) 日産生命の破綻日産生命は,平成9年4月25日,大蔵大臣から業務の一部停止を命ずる処分がなされ,その後,業務停止を命ずる処分の取消しと保険管理人による業務及び財産の管理を命ずる処分がなされ,保険管理人には社団法人生命保険協会(以下「生保協会」という。)が選任されて保険契約の移転計画の作成を命ぜられた。 生保協会は,保険契約者保護機構による資金援助のみでは日産生命の債務超過状態が解消できず,実効性のある移転計画は不可能と結論づけ,同年6月20日,生保協会の出資で資本金10億円のあおば生命保険株式会社(以下「あおば生命」という。)を設立し,契約条件を変更した上で同社に日産生命の保険契約を移転する計画を策定した。同計画は,大蔵大臣による承認を得た後,同年7月30日の生保協会の定時総代会で議決を経て確定した。 (5) 日産生命からあおば生命への契約移転に伴い,本件保険契約の条件が以下のとおり変更された。 ア原告A基本年金額が50万円から27万9300円に変更された。 イ原告B基本年金額が100万円から79万6004円に変更された。 ウ原告C基本年金額が50万円から31万0300円に変更された。 エ原告D2口いずれも,基本年金額が120万円から96万9 万円から79万6004円に変更された。 ウ原告C基本年金額が50万円から31万0300円に変更された。 エ原告D2口いずれも,基本年金額が120万円から96万9550円に変更された。 オ原告H基本年金額が30万円から17万4429円に変更された。 カ原告E基本年金額が50万円から30万0030円に変更された。 キ原告F基本年金額が100万円から81万円に変更された。 ク原告I基本年金額が30万円から15万2650円に変更された。 ケ原告J(ア)基本年金額が50万円から33万3815円に変更された。 (イ)基本年金額が30万円から15万2650円に変更された。 コ原告G基本年金額が50万円から33万3815円に変更された。 (6) 原告らは,以下の日付けで,本件保険契約を解約した。 ア原告A 平成10年3月19日付けイ原告B 同年4月9日付けウ原告C 平成9年11月5日付けエ原告D 2口いずれも同月20日付けオ原告H 平成12年4月17日付けカ原告E 平成10年7月9日付けキ原告F 平成9年11月17日付けク原告I 平成10年12月17日付けケ原告J 平成9年7月ころ((2)ケ(ア))及び同年10月22日(同(イ))コ原告G 同年12月10日付け 2 争点(1) 被告らの勧誘行為の違法性(原告らの主張)ア法規違反の保険勧誘行為旧保険募集の取締に関する法律(以下「募取法」という。)は,募集人登録をしていない者には保険の正確な知識を備えているという前提 法性(原告らの主張)ア法規違反の保険勧誘行為旧保険募集の取締に関する法律(以下「募取法」という。)は,募集人登録をしていない者には保険の正確な知識を備えているという前提条件が欠けるため,登録者以外の保険勧誘を禁じている。しかし,本件で原告らに本件保険契約を勧誘したのは,募集人登録をしていない被告らの従業員であった。 また,被告らの従業員は,募取法で禁止されている予定利回り(配当を加えた保険金受領予想金額)の記載がなされ,被告ら金融機関名を大きく入れたパンフレットを用いて原告らを勧誘し,本件保険契約に加入させており,日産生命の従業員は勧誘に一切関与していない。 さらに,信用金庫法に限定列挙されている信用金庫ができる業務には,保険勧誘はない。 これは,明らかに募取法9条(無資格勧誘),15条2項(記載禁止事項),信用金庫法53条(信用金庫の業務)に違反する違法な勧誘である。 イ説明義務違反及び虚偽説明(ア)消費者と契約勧誘者との間において,当該契約に関する知識,経験,情報収集能力及び分析能力に差がある場合,消費者は,契約を締結するにあたって契約勧誘者の提供する情報や助言等に依存することになり,他方,契約勧誘者は,消費者に契約を勧誘することで利益を得るのであるから,契約勧誘者は,信義則上,消費者の理解力などに照らしながら,当該取引の仕組みや危険性について説明する義務を負う。かかる説明義務は,投機性の高い証券取引,先物取引の勧誘のみに限られるものではなく,およそ消費者を対象とする契約においては,相手方たる企業は,契約締結過程において,その取引の内容,効果等を説明する義務を負う。 また,一般に生命保険という商品は安心な商品という認識が存在し,消費者は,生命保険契約 約においては,相手方たる企業は,契約締結過程において,その取引の内容,効果等を説明する義務を負う。 また,一般に生命保険という商品は安心な商品という認識が存在し,消費者は,生命保険契約において損をすることはない,将来的に保険料+αは保証されるとの認識があるし,本件保険契約及び本件融資契約(以下「本件各契約」という。)がセットになった保険商品は,被告ら金融機関への支払を定期的に行うという外形において共通する積立預金と誤解する可能性が高い状況にあった。さらに,被告らの従業員が本件保険契約を勧誘すれば,被告らがその契約主体であるか,あるいは本件保険契約の内容に関与しているのではないかとの誤解を生じさせる恐れがあった。 特に,一般に金融機関に対する信頼は絶大であり,消費者は,金融機関が消費者に損をさせるような商品を勧誘することはないと信頼しているし,原告らは,被告らとの間で,事業資金の借入れや預金等の取引を既に行っており,被告らに対する信頼は大きかったから,金融機関である被告らには,より高度な説明義務が課せられていた。 (イ)よって,被告らの従業員は,原告らに本件各契約を勧誘するに際し,単にパンフレットを見せたりローン契約書を見せるなどして本件各契約の内容について説明するだけではなく,①あくまでも日産生命が本件保険契約の契約主体であり,保険金を支払うのは日産生命であって被告らではないこと,②原告らが将来保険金を受領できるかどうかは,日産生命の資力に関わること,③本件保険契約と本件融資契約は全く別個の契約であるから,本件保険契約の履行の有無に関わらず被告らに対する支払をしなければならないこと,④被告らは,本件保険契約の履行に責任を負う立場にはないこと,⑤積立預金と異なり保険金が元本割れを起こす危険性もあること等を 険契約の履行の有無に関わらず被告らに対する支払をしなければならないこと,④被告らは,本件保険契約の履行に責任を負う立場にはないこと,⑤積立預金と異なり保険金が元本割れを起こす危険性もあること等を明示して説明しなければならなかった。 (ウ)しかるに,本件において,原告らは,日産生命の保険外交員とは全く顔を合わせておらず,もっぱら被告らの従業員と話をしており,信用金庫が勧める商品であるから損をするはずがないと信用して本件各契約の締結に至ったのであり,被告らの従業員による勧誘も,本件各契約に関するパンフレットを見せず,あるいはパンフレットを見せただけで交付せずに簡単な説明に終始し,また,見せたパンフレットには日産生命の文字はなく,本件保険契約が日産生命の保険契約であること,保険料を一括払いするため被告らとの間で本件融資契約を締結すること等の説明をしないなど,本件各契約が被告らによる積立商品だと思わせるような内容であって,被告らの持つ社会的信用を巧みに利用した商法であり,まさに信用金庫法が規制した違法なものだった。 仮に,被告らの従業員ではなく日産生命の保険外交員が原告らに本件保険契約を勧誘していれば,原告らは日産生命という社会的認知度の低い保険会社と契約を結ぶことをためらい,本件保険契約の内容や日産生命という会社自体の業績を保険外交員に聞いていた。 (被告広信の主張)ア説明義務違反等がないこと(ア)原告らは,本件のような積立型生命保険には元本割れを起こす危険があり,被告らにはこの点について説明義務があると主張するが,本件保険契約は,基本的に元本割れしない契約である(大蔵省による認可,登録番号日産-C-63-45,日産-C-63-72,乙1の1・2)。すなわち,積立年金保険においては,年金の最低保証 張するが,本件保険契約は,基本的に元本割れしない契約である(大蔵省による認可,登録番号日産-C-63-45,日産-C-63-72,乙1の1・2)。すなわち,積立年金保険においては,年金の最低保証金として50万円,最低保証期間として10年間が設定されており,500万円の受取りが保証され(基本保険金の10倍),それ以上受け取ることができるかどうかはその後の運用如何に関わるという内容であり,受取金額が払込総額を割込むことはない(乙1の1)。育英保険においても,入学祝い金と最低満期受取金は決まっており,合計240万円の受取りが保証され(基本保険金の2倍),増加保険金をどれくらい受け取ることができるかはその後の運用如何に関わるという内容であり,受取金額が払込総額を割り込むことは基本的にはない(乙2の2)。 この点において,本件保険契約は,運用如何によって元本割れを起こす可能性のある変額保険とは決定的に異なるのであり,投機性の高い金融商品の販売に要求される高度な説明義務は要求されない。 (イ)本件保険契約の性質は上記のとおりであるから,元本割れを起こす場合とは,日産生命が破綻した場合ということになる。 しかし,本件各契約の締結当時(昭和63年ないし平成3年)の経済状況はバブルの時期であり,金融機関の破綻など全く予測し得ない状況で,まして,決して零細な保険会社ではなく80年以上の歴史ある中堅保険会社として全国展開していた日産生命が破綻することは,予測不可能であった。 かかる状況を考慮すれば,本件各契約当時に被告広信に日産生命の破綻についての説明義務を要求することは不可能を強いるものであり,この点について説明義務はないというべきである。 (ウ)被告広信の従業員は,原告らに対し,パンフレットを持参して示し 日産生命の破綻についての説明義務を要求することは不可能を強いるものであり,この点について説明義務はないというべきである。 (ウ)被告広信の従業員は,原告らに対し,パンフレットを持参して示した上で,本件保険契約は日産生命との保険契約であり,保険金を支払うのは日産生命であって被告らではないこと,保険料の支払を被告広信のローンを利用して行うため,本件保険契約と本件融資契約が別個の契約であること,その場合の支払金額等について,具体的に説明している。 それにより,原告らはいずれも本件各契約の内容を十分理解し,保険金を将来受領できるかは日産生命の資力に関わるものであることを認識して本件各契約を締結した。 したがって,被告広信の従業員に何ら説明義務違反や虚偽説明はない。 イまた,募取法違反,信用金庫法違反の主張についても,本件保険契約はあくまでも日産生命との間で締結されるもので,被告広信は代理も媒介もしていたわけではないから,被告広信には何らの違法も認められない。 仮に,この点につき違法があったとしても,それは行政法規上の問題であり,本件で被告広信の私法上の行為が違法と評価される理由はない。 (被告呉信の主張)ア被告呉信の従業員は,本件各契約を顧客に勧めた際,日産生命が作成したパンフレット(丙1,2)を必ず渡した上,本件融資契約を締結すると保険料がいくらになるか,いくらの利益となるか等の要点を個別の計算書(丙3)に記載して顧客に手渡し,説明している。 その際,被告呉信の従業員は,原告らに対し,日産生命からパンフレットに記載された内容の年金保険が売り出されたので,被告呉信がこれとセットで契約者に保険料一括払いのための融資を行うこと,月々の保険料を日産生命に支払うより被告呉信から融 対し,日産生命からパンフレットに記載された内容の年金保険が売り出されたので,被告呉信がこれとセットで契約者に保険料一括払いのための融資を行うこと,月々の保険料を日産生命に支払うより被告呉信から融資を受けて一括払いする方が得になること等を説明した。また,増額年金について,本件保険契約のパンフレットや計算書には,記載の数値は今後変動することがあり将来の支払額を約束するものではないことの記載があって(丙1ないし3),将来支払額の変動があり得ることが明記されていた。 イ日産生命が販売した本件保険契約は,当時の資金運用状況を基にして計算され,当時の監督官庁である大蔵省の認可を得ていたもので(登録番号日産-D-62-48),同社は,当時揺るぎなき中堅生命保険会社として評価されており(甲3),また,本件各契約が締結された時期は大型金融機関の破綻など誰も考えていなかったバブル前兆時であり,客観的状況から見ても,同社が将来破綻することは予測不可能であった。したがって,本件保険契約の締結後10年も経過した後において,中途解約した場合に元本割れが生じる恐れがあること自体,関係者は誰も予見していなかった。 以上から,本件各契約の販売に際して説明に不足があったかどうかは,当時の経済情勢を踏まえて十分な説明があったか否かを判断すれば足り,被告呉信には日産生命が破綻することを予見できたことを前提とする説明義務がないことは明らかであるから,原告らの主張は理由がない。 (2) 日産生命の破綻の責任(原告らの主張)ア日産生命の破綻原因日産生命は,長期の高利回り(年利5.5ないし6.25%)を約束した年金保険等の比重が他社よりも圧倒的に高く,しかもほとんどが一括払いにより保険料を割り引いているため,実際に契約者に約束した利回 日産生命は,長期の高利回り(年利5.5ないし6.25%)を約束した年金保険等の比重が他社よりも圧倒的に高く,しかもほとんどが一括払いにより保険料を割り引いているため,実際に契約者に約束した利回りは年利8%程度と推測され,莫大な逆ざやを生じていた。 かかる年金保険が成立するためには,年5.5%以上の運用利回りと契約高の着実な拡大が不可欠であったが,バブル経済の崩壊等の経済環境の悪化により,日産生命は,他社と比較しても,証券投資・不動産投資等の投資成績が悪化し,不良資産・不良債権が増大した。 イ保険勧誘による金融機関の巨額の利益被告らは,本件年金保険の勧誘により,以下のとおり多大な利益を手中にした。 (ア)融資金利被告らは,原告らに対し,保険料を一括払いする資金を融資し,多大な融資利息を得た。 (イ)募集手数料被告広信は,日産生命の保険を勧誘することにより,同社から自らの子会社の東栄に保険募集手数料を支払わせ,多大な利益を得た。その金額は,昭和62年から平成8年までに8億3800万円に上った。 (ウ)協力預金被告らは,日産生命の保険勧誘の見返りとして,同社に低金利での協力預金をさせ,融資利息との大きな利ざやを稼いで多大な利益を手にすると同時に,日産生命の運用を悪化させた。 その金額は,保険料収入の10倍に上るとされており,そのため日産生命の年金保険は,発足当初から逆ざやを余儀なくされたのであり,協力預金は日産生命の経営破綻の主因ともされている。 ウ以上のとおり,被告らは,提携ローンにより日産生命の高利回りの年金保険等を積極的に販売し,日産生命に他社よりも多い逆ざやを生じさせ,多額の募集手数料を支払わせ,被告ら金融機関への低金利の ウ以上のとおり,被告らは,提携ローンにより日産生命の高利回りの年金保険等を積極的に販売し,日産生命に他社よりも多い逆ざやを生じさせ,多額の募集手数料を支払わせ,被告ら金融機関への低金利の巨額の協力預金をさせ,これによって巨額の利益を上げたが,日産生命にはそのしわ寄せが行き,同社はそれを挽回しようとして無理な外債投資等に追い込まれ,これに失敗して破綻したのであり,この破綻原因に対する被告らの関与は多大なものであった。 日産生命は,被告ら金融機関との提携を推進しつつ,大蔵省からの行政指導もあり,被告ら金融機関に本件保険契約の販売の自粛を要請することもあった。特に,平成2年には,高利回りを終身保証する年金保険の巨額の逆ざやにより深刻な事態に陥り,日産生命は,被告ら金融機関に対し,年金保険の販売・勧誘の抑制を求めた。それにもかかわらず,被告らは,それ以降も日産生命の年金保険を販売し続けたのであるから,違法勧誘の結果として顧客にどのような損害が生ずるかを予見していたか,少なくとも予見が可能であったことは明らかである。 (被告らの主張)原告らは,日産生命の破綻の原因に被告らが関与したと主張するが,否認する。そもそも,被告らは,日産生命がどのような原因で破綻したのか知らない。 被告らが日産生命と本件各契約について提携していたことは事実であるが,日産生命との関係は一取引先にすぎず,何ら日産生命の経営に関与できる立場にはない。 日産生命の破綻は,全て日産生命が独自に意思決定した結果であって,被告らはこれに全く関与していないし,関与できるはずもない。 (3) 契約の無効(原告らの主張)原告らは,被告らの年金商品に加入したと誤信していたのであるから,本件各契約は錯誤により無効である。また,上記諸事情を考慮する きるはずもない。 (3) 契約の無効(原告らの主張)原告らは,被告らの年金商品に加入したと誤信していたのであるから,本件各契約は錯誤により無効である。また,上記諸事情を考慮すると,本件各契約の違法性は極めて高度であり,本件各契約は公序良俗に違反するものであって無効である。 (被告広信の主張)原告らの主張は,否認ないし争う。 被告広信の各従業員は,日産生命との保険契約であることや被告広信との本件融資契約は別個のものであることを原告らに説明したのであるから,原告らが被告広信の年金商品に加入していたものと誤信したということはあり得ない。原告らのこれまでの主張を見ても,本件保険契約が被告広信との保険契約であると誤信していたという主張は全くなく,むしろ,本件保険契約と保険料の支払のための本件融資契約であることを認識していたという主張さえしている。 また,本件融資契約が公序良俗に反する反社会性を帯びるような事情は全くない。 (被告呉信の主張)原告らの主張は,否認ないし争う。 原告らは,被告らの年金商品に加入したものと誤信して契約を締結したため錯誤があったとするが,上記のとおり,被告呉信の各従業員は,本件保険契約が日産生命との契約であること,被告呉信との本件融資契約とは別のものであることを原告らに対して説明しており,原告らが被告呉信の年金商品に加入したものと誤信することはあり得ない。 また,本件融資契約が反社会性を帯びるような事情は全くなく,本件融資契約に公序良俗違反はない。 (4) 不法行為による損害及び因果関係ないし不当利得額(原告らの主張)ア損害(ア) 原告らは,被告らの不法行為により,以下のとおり,被告らに対する返済額と返 はない。 (4) 不法行為による損害及び因果関係ないし不当利得額(原告らの主張)ア損害(ア) 原告らは,被告らの不法行為により,以下のとおり,被告らに対する返済額と返戻金等との差額相当の損害を被った。 a 原告A 差額 42万8357円返済額 314万3296円返還総額 271万4939円b 原告B 差額 62万2109円返済額 194万8578円既受領額 20万円返還総額 142万6089円残債務との相殺額 29万9620円c 原告C 差額 102万2843円返済額 331万0452円返還総額 373万1001円残債務との相殺額 144万3392円d 原告D 差額 118万5720円(一部請求)返済額 391万5338円既受領額 48万円返還総額 315万3454円残債務との相殺額 90万3836円e 原告H 差額 14万9374円返済額 287万4269円返還総額 272万4895円f 原告E 差額 30万7665円返済額 469万0207円 返還総額 272万4895円f 原告E 差額 30万7665円返済額 469万0207円返還総額 438万2542円g 原告F 差額 64万4640円返済額 193万9050円総返還額 146万4530円残債務との相殺額 17万0120円h 原告I 差額 33万4051円返済額 245万1255円返還総額 211万7204円i 原告J 差額 57万9518円(ア)返済額 421万7536円返還総額 390万9926円(イ)返済額 260万1607円返還総額 232万9699円j 原告G 差額 26万9658円返済額 390万4658円返還総額 363万5000円(イ) 慰謝料各5万円(ウ) 弁護士費用各5万円イ利息付き消費貸借契約のすべての債務が履行された場合,元本の交付と返済は,双方が履行され精算済みであり,その後無効となって原状回復が必要となった場合には,利息及び使用利益のみが不当利得として返還されるべきであるが,善意の利得者たる原告らは現存利益の範囲で返還すればよく,何ら利益が現存していない本件では,原告らが返還すべきものはない。したがって,原告らは,本件 用利益のみが不当利得として返還されるべきであるが,善意の利得者たる原告らは現存利益の範囲で返還すればよく,何ら利益が現存していない本件では,原告らが返還すべきものはない。したがって,原告らは,本件融資契約の無効により,被告らに支払った利息相当額の不当利得返還請求権を有し,被告らは,悪意の受益者として不当利得返還義務を負う。 ウ被告らは,原告らが自らの意思により本件保険契約を解約したために損害が生じたにすぎないと主張するが,原告らが本件保険契約を解約した当時のあおば生命の経営状況は,生保協会が再度の支援はしないとしたことなどから,再度の破綻を招来する危険があって,解約しなければ将来においてより大きな損害を被る危険性が高かったのであるから,本件保険契約の解約は,やむを得ない合理的な行動であったというべきである。 (被告広信の主張)ア原告らは,被告広信の従業員による虚偽の説明がなければ本件保険契約を締結することはなかったから,日産生命の破綻後の解約によって生じた損害を賠償すべきであると主張するが,原告らは被告広信の従業員の説明により本件保険契約が日産生命との契約であることを認識して締結したのであるから,一体どのような説明がなされれば契約を締結しなかったのかが明確でなく,原告らの主張は失当である。 イまた,原告らは,日産生命の破綻後に相次いで自らの意思で本件保険契約を解約し,被告広信への返済額と保険会社からの受領額との差額を損害として主張する。 しかし,平成9年10月1日,日産生命の保険契約は,契約条件の変更があったものの,全てあおば生命に移転し,その際に原告らが本件保険契約を解約せず引き続きあおば生命との契約を継続していれば,保険金受領額が払込保険料を下回ることはなかった。年金保険については,本件融資 あったものの,全てあおば生命に移転し,その際に原告らが本件保険契約を解約せず引き続きあおば生命との契約を継続していれば,保険金受領額が払込保険料を下回ることはなかった。年金保険については,本件融資契約による利息を考慮しても,受取年金額の減少によって損害を被ることはまずあり得ないし,育英保険については,基本年金額が2割程度カットされ,本件融資契約による利息を考慮すると若干損をする計算になるが,予定利率での運用による増加保険金を考慮すれば,受取年金額の減少によって損害を被ることはあり得ない(甲4)。 そして,あおば生命の提示した契約条件の変更が,生保協会により作成され大蔵大臣の認可を受けてなされたものであることを考慮すれば,あおば生命の契約変更案が無理のない堅実なものであることは容易に想像できる。また,あおば生命は,平成11年11月30日,仏アルテミス社の傘下に入り,健全な経営を続けている。 ウよって,仮に,原告らがその主張のような損害を被ったとしても,その損害は原告らが自らの意思で本件保険契約を早期に解約したことに起因するものであり,被告広信の説明義務違反等とは因果関係がない。 (被告呉信の主張)ア日産生命は,破綻後にあおば生命となり,外資と提携して再建の途上にあり,解約されていない保険契約は,大蔵省の認めた契約条件の変更はあったものの,あおば生命に承継されて存続している。そして,この変更された契約条件によっても,元本割れは生じないばかりか受取年金額は払込保険料を大きく上回る(甲4)。 新しい契約条件が提示されたことについて,契約を継続している保険契約者から不服の訴訟が提起されたということはなく,各契約者は,経済事情の変動によるやむを得ない新たな契約条件として了承しているものと思料される。 示されたことについて,契約を継続している保険契約者から不服の訴訟が提起されたということはなく,各契約者は,経済事情の変動によるやむを得ない新たな契約条件として了承しているものと思料される。 イ原告らは,自らの意思で本件保険契約を中途解約しながら損害を受けたと主張しているが,そのようにさせた者があるとすればそれは日産生命であって,被告らには何の責任もない。原告らが中途解約をしていなければ,原告らには他に責任を問うような損害は発生していない。 ウよって,原告らの主張する損害は理由のないもので,自ら早まってなした中途解約による損失を被告呉信に転嫁しようとしているにすぎない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)について(1) 上記争いのない事実等及び証拠(甲1,2,18ないし27,乙1ないし3の各1・2,4,5の1・2,6ないし13,丙1ないし3,4ないし7の各1・2,8ないし10,証人K,同L,同M,同N,同O,原告F本人,同E本人,同D本人,同H本人,同A本人)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。 ア本件各契約は,原告ら顧客と日産生命との間の年金保険・育英保険契約と,被告ら金融機関との保険料支払のための借入契約を組み合わせた金融商品であった。 本件保険契約は,日産生命に対して保険料の月払いを継続するよりも全期一括払いをした方が支払保険料の総額が少なくなり,受取保険金が多くなる内容であった。また,本件融資契約により一括払い保険料を支払う資金を借り入れたとしても,日産生命に対する月払い保険料の総額より,被告らに対する借入金の返済総額が低額となり,契約者にとって二重に有利な内容となっていた。 イ被告らは,本件融資契約により多額の融資高を獲得するため,日産生命と提携して本件各契約を 総額より,被告らに対する借入金の返済総額が低額となり,契約者にとって二重に有利な内容となっていた。 イ被告らは,本件融資契約により多額の融資高を獲得するため,日産生命と提携して本件各契約を一体の金融商品として取引先に勧誘・販売することとし,従業員らに対し,本件各契約についての日産生命と連名のパンフレットを配布して,取引先に持参して本件各契約を勧誘するよう指示した。 ウ本件各契約のパンフレットの表紙下部には,日産生命と被告らの名称が並んで明記され,その上には「日産の積立年金」「保険料一括払は,『ひろしん年金保険ローン』で,余裕のシルバーライフを。」「保険料一括払は,『くれしん年金保険ローン』で,余裕のシルバーライフを。」,「日産の育英保険」「保険料一括払は,『ひろしん育英保険ローン』で,余裕のライフプラン。」などと記載されており,裏表紙下部には日産生命の名称及び連絡先等が記載されていた。 エ被告らの従業員は,昭和63年から平成3年にかけて,従前から預金や融資等の取引関係のあった原告らないしその家族に対して,本件各契約を勧誘した。その際,日産生命の保険外交員は同行せず,被告らの従業員のみが日常の取引業務に付随する形で勧誘を行った。 被告らの従業員は,上記パンフレット及び本件融資契約の返済試算表を持参し,パンフレットを示しながら本件保険契約の内容を説明するとともに,試算表を参照して返済総額を試算しながら本件各契約がどれだけ原告らの利益となるかの概算結果を示して,本件各契約を締結するよう勧誘した。 オ原告らの中には,被告らの従業員の説明を聞いてもすぐには本件各契約の締結には至らず,本件保険契約の保険者である日産生命がいかなる規模・系列の保険会社であるかを尋ねる者や,ローンを組まないことにしているとの理由で本 ,被告らの従業員の説明を聞いてもすぐには本件各契約の締結には至らず,本件保険契約の保険者である日産生命がいかなる規模・系列の保険会社であるかを尋ねる者や,ローンを組まないことにしているとの理由で本件融資契約の締結に躊躇する者もいた。 しかし,原告らは,被告らから事業資金の融資を受けていたことや,契約内容を有利なものと判断したことなどから,最終的には本件各契約を締結することとした。 カ本件各契約を締結することを決めた原告らは,日産生命との間の本件保険契約に係る契約申込書と被告らとの間の本件融資契約に係る契約申込書にそれぞれ署名・捺印した上,それらを被告らの従業員に交付した。 その後,日産生命が破綻した平成9年ころに至るまで,原告らは,被告らに対して,本件融資契約に基づく借入金の分割返済を継続し,又は,借入金の繰上返済をしており,原告B及び同Dについては,育英保険の給付金の一部を受領した。 (2) なお,原告らは,被告らの従業員から本件各契約に関するパンフレットを見せられなかったり,パンフレットの交付を受けなかった者がいたこと,あるいは,見せられたパンフレットには日産生命の文字はなかったこと等を主張し,原告ら本人は,それぞれこれらの主張に沿う供述をしたり,同内容の陳述書(甲18ないし27)を提出しているが,被告らの従業員が本件各契約に関するパンフレットを示さずにその内容を具体的に説明することは困難であるし,本件各契約を締結して欲しいと考えている被告らの従業員が,原告らにとって有利な契約内容であることを説明したパンフレットを示さず,あるいは交付せずに勧誘する必要性も合理性もない。本件各契約の利点を説明するために原告らにパンフレットを示し,内容を十分に検討してもらうためにこれを交付したとする被告らの従業員である証 ットを示さず,あるいは交付せずに勧誘する必要性も合理性もない。本件各契約の利点を説明するために原告らにパンフレットを示し,内容を十分に検討してもらうためにこれを交付したとする被告らの従業員である証人Kらの各証言は,十分信用できる。 また,本件保険契約が日産生命の保険であることに鑑みれば,本件各契約に関するパンフレットで日産生命の文字が入っていないものがあることは容易に想定し難く,これを認めるに足りる証拠もない。 よって,この点に関する原告らの供述等は,にわかに信用し難い。 (3)ア上記認定事実によれば,被告らの従業員は,原告らに対し,本件保険契約と本件融資契約をそれぞれ個別に勧誘したのではなく,本件各契約を一体として契約することによってより有利な内容となる金融商品であることを説明して勧誘したことが認められ,単に融資の勧誘のみを行ったとはいえないから,被告ら信用金庫の従業員が日産生命の保険の勧誘を行ったと認めるのが相当であり,これは募取法・信用金庫法に違反する行為であったというべきである。 しかしながら,被告らの従業員がこれら行政法規に違反して本件保険契約の勧誘を行ったからといって,そのことから直ちに民事上の不法行為責任が発生するものではなく,被告らが不法行為責任を負うかどうかは,さらに,従業員らによる具体的な勧誘内容において,説明義務違反や虚偽説明に該当する行為があったか否かをも考慮して判断するのが相当である。 イそこで,原告らに対する具体的な勧誘の状況についてみるに,上記認定事実によれば,原告らの中には,被告らの従業員から,本件保険契約の相手方が日産生命である旨の説明を受け,同社の系列・信用について尋ねた者や,本件融資契約が組み合わされていることの説明を受け,ローンを組むことを躊躇した者がいたこと 告らの従業員から,本件保険契約の相手方が日産生命である旨の説明を受け,同社の系列・信用について尋ねた者や,本件融資契約が組み合わされていることの説明を受け,ローンを組むことを躊躇した者がいたこと,原告らは,本件各契約の締結段階において,日産生命宛ての本件保険契約に関する保険契約申込書と,被告ら宛ての本件融資契約に関するローン申込書の2通の書面に署名・捺印しており,少なくともその段階では契約相手を明確に認識し得たこと,その後の被告らに対する借入金の返済や,日産生命からの育英保険の給付金を受領等を通じ,被告らないし日産生命に異議を唱えた者はいなかったことが認められ,これらの事実からすれば,原告らは,本件保険契約の相手方が被告らではなく日産生命であること,本件保険契約と本件融資契約が別個の契約であることや,本件各契約の内容等を理解した上で本件各契約を締結したと認めるのが相当である。 また,他にも,被告らの従業員による説明・勧誘が本件各契約の内容を正確に示すものではなかったことを認めるに足りる証拠はない。 ウしたがって,被告らの従業員には,原告らに本件各契約が被告らに対する積立預金であると誤解させるような説明・勧誘を行った説明義務違反ないし虚偽説明の事実は認めることはできない。 (4) この点,原告らは,被告らには,本件保険契約は日産生命が破綻した場合に元本割れを起こす危険があり,被告らに対する積立預金とは異なるものであることを説明する義務があったと主張するが,原告らが本件各契約を締結した昭和63年から平成3年ころは,日本がいわゆるバブル経済の時期にあったことは公知の事実であり,たとえ中堅規模であっても保険会社が破綻することを予想しうる状況にはなかったというべきである。 したがって,被告らの従業員は,原告らから日産 るバブル経済の時期にあったことは公知の事実であり,たとえ中堅規模であっても保険会社が破綻することを予想しうる状況にはなかったというべきである。 したがって,被告らの従業員は,原告らから日産生命がいかなる系列・規模の保険会社であるかの説明を求められた際にこれに応じて説明すべき義務はあったが,日産生命が破綻した場合に契約どおりの保険給付を受けられない可能性があることについてまで説明する義務は負っていなかったと認めるのが相当である。 もっとも,証拠(甲20,22,原告E本人,同A本人,同H本人)によれば,被告らの従業員の中には,日産生命が日立グループの系列会社であるにもかかわらず,日産自動車の系列会社である旨の誤った説明をした者がいたことが認められ,この点の説明は不適切であったというべきである。しかし,日産生命が破綻した場合には日産自動車や日立等の系列会社が支援するであろうとの説明を受けたとの上記原告ら本人の供述等は,にわかに信用し難いし,仮に,そのような説明があったとしても,系列会社に法的な支援義務があるということではなく,事実上支援の可能性があるという程度の趣旨であることは通常人において容易に理解しうることである。したがって,これらの説明が,上記原告らの意思決定に格別大きな影響を与えたとは考えられない。 2 争点(2)について証拠(甲3ないし13)及び弁論の全趣旨によれば,日産生命の破綻は,同社の経営陣による経済見通しの誤りや経営判断の誤り,日本の経済状勢の著しい変化等の諸要因により,保険契約上の予定利率を運用利率が下回る逆ざやの発生が膨大な額に上ったことが大きな原因となったと推認される。 この点,原告らは,被告らが日産生命と提携して本件各契約を販売し,それによって日産生命から募集手数料を得たり,協力預金をさ 逆ざやの発生が膨大な額に上ったことが大きな原因となったと推認される。 この点,原告らは,被告らが日産生命と提携して本件各契約を販売し,それによって日産生命から募集手数料を得たり,協力預金をさせるなどして,逆ざやを拡大させたことが日産生命が破綻した一要因であったとし,被告らにも日産生命破綻の法的責任がある旨主張するが,そもそも被告らは,日産生命の経営に関与し,責任を負うべき立場にはなかったのであり,日産生命がいかなる内容の保険契約をどれだけ販売し,それが同社の経営や財務内容にどのような影響を及ぼすかを確かめた上で同社との契約や取引をなすべき法的義務があったとは到底考え難い。 よって,日産生命が被告らとの契約ないし取引によって逆ざやを拡大させ,それが破綻の一因となったとしても,被告らが責任を負う理由はない。 他にも,被告らが日産生命の破綻につき責任を負うべき理由があることを認めるに足りる証拠はなく,この点に関する原告らの主張は失当である。 3 争点(3)について上記1の認定説示によれば,原告らが本件各契約の内容を十分理解しないまま,錯誤により本件各契約を締結したと認めることはできないし,上記1及び2の認定説示を総合しても,本件各契約が公序良俗に反する反社会性を帯びていたことを認めるべき事情もない。 その他,本件各契約が無効であることを認めるに足りる証拠はない。 よって,この点に関する原告らの主張はいずれも理由がない。 4 結論以上の次第で,その余の争点につき判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第一部裁判長裁判官 由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第一部裁判長裁判官田中澄夫裁判官次田和明裁判官小崎賢司
▼ クリックして全文を表示