令和6年(ヨ)第30029号不正競争防止法違反に基づく差止仮処分申立事件決定当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 本件申立てを却下する。 2 申立費用は債権者の負担とする。 3 この決定に対する即時抗告のための付加期間を30日と定める。 理由 の要旨第1 申立ての趣旨債務者は、厚生労働省(以下「厚労省」という。)及び独立行政法人医薬品 医療機器総合機構(以下「PMDA」といい、厚労省と併せて「厚労省等」という。)に対し、別紙医薬品目録記載の医薬品(以下「債権者製品」という。)の製造販売行為が別紙特許権目録記載の特許権(以下、当該特許を「本件特許」といい、本件特許に係る特許権を「本件特許権」という。)を侵害する旨を告知してはならない。 第2 事案の概要等債務者は、厚労省等に対し、別紙債務者製品目録記載の医薬品(以下「債務者製品」という。)のいわゆるバイオ後続品を製造販売する行為が本件特許権を侵害する旨の告知をした。 本件は、債権者が、上記告知は不正競争防止法(以下「不競法」という。) 2条1項21号所定の不正競争に当たり、これによって債権者の営業上の利益が侵害されるおそれがあると主張して、不競法3条1項に基づく差止請求権を被保全権利として、債務者に対し、申立ての趣旨記載の行為の差止めの仮処分を求める事案である。 1 関係法令等の定め 別紙関係法令等の定め記載のとおり(なお、同別紙中に用いた略語は、本文 においても同様に用いることがある。)。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の疎明資料及び審尋の全趣旨により容易に認められる事実をいう。なお、疎明資料に係る枝番の記載は省略する。)⑴ 当事者等 に用いることがある。)。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の疎明資料及び審尋の全趣旨により容易に認められる事実をいう。なお、疎明資料に係る枝番の記載は省略する。)⑴ 当事者等(いずれも争いがない。) ア債権者は、製薬事業等を行う韓国法人である。 イ債務者は、製薬事業等を行う米国法人である。 ⑵ 債務者の有する特許ア債務者は本件特許を有している(疎甲2、疎乙1)。 イ本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである(以 下、請求項1に記載された発明を「本件発明」という。)。 「抗VEGF 剤としてアフリベルセプトを含む、フルオレセイン蛍光眼底造影によって決定される全病変サイズの50%未満の活動性CNV 病変サイズを有する湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)患者の治療における使用のための医薬組成物であって、 wAMD 患者が以下の重要な組み入れ基準・試験眼においてフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)によって明らかになる、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMD に続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変、・ETDRS の試験眼の最高矯正視力(BCVA)は73~25 文字(試験眼のスネレ ン等価視力は20/40~20/320)、及び・50 歳以上の年齢を満たし、wAMD 患者が以下の重要な除外基準・全病変サイズは、FA によって評価される12 の乳頭領域(30.5mm2、血液、 瘢痕および新生血管を含む。)より大きい、 ・網膜下出血は全病変領域の50%以上であるか、または血液が中心窩の下にある場合、1つまたは複数の乳頭領域のサイズである(血液が中心窩の下にある場合、中心窩は目に見えるCNV によって270 ・網膜下出血は全病変領域の50%以上であるか、または血液が中心窩の下にある場合、1つまたは複数の乳頭領域のサイズである(血液が中心窩の下にある場合、中心窩は目に見えるCNV によって270 度囲まれていなければならない)、・ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)を有する被験者を含む、wAMD 以外の起 源を持つCNV の存在、・実質的に不可逆的な視力喪失を示す中心窩を含む瘢痕、線維症または萎縮症の存在、・網膜色素上皮断裂または黄斑に関与する裂け目の存在、及び・糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫またはwAMD 以外の何らかの網膜血管 疾患の病歴または臨床的証拠を含む、wAMD 以外の起源を持つCNV の存在を満たす、医薬組成物。 ウ本件発明を構成要件に分説すると、次のとおりである。 A1 抗VEGF 剤としてアフリベルセプトを含む、A2 フルオレセイン蛍光眼底造影によって決定される全病変サイズの 50%未満の活動性CNV 病変サイズを有する湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)患者の治療における使用のための医薬組成物であって、B wAMD 患者が以下の重要な組み入れ基準・試験眼においてフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)によって明らかになる、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMD に続発するク ラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変、・ETDRS の試験眼の最高矯正視力(BCVA)は73~25 文字(試験眼のスネレン等価視力は20/40~20/320)、及び・50 歳以上の年齢を満たし、 C wAMD 患者が以下の重要な除外基準 ・全病変サイズは、FA によって評価される12 の乳頭領域(30.5mm2、血液、瘢痕および新生血管を含む。) 年齢を満たし、 C wAMD 患者が以下の重要な除外基準 ・全病変サイズは、FA によって評価される12 の乳頭領域(30.5mm2、血液、瘢痕および新生血管を含む。)より大きい、・網膜下出血は全病変領域の50%以上であるか、または血液が中心窩の下にある場合、1つまたは複数の乳頭領域のサイズである(血液が中心窩の下にある場合、中心窩は目に見えるCNV によって270 度囲まれ ていなければならない)、・ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)を有する被験者を含む、wAMD 以外の起源を持つCNV の存在、・実質的に不可逆的な視力喪失を示す中心窩を含む瘢痕、線維症または萎縮症の存在、 ・網膜色素上皮断裂または黄斑に関与する裂け目の存在、及び・糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫またはwAMD 以外の何らかの網膜血管疾患の病歴または臨床的証拠を含む、wAMD 以外の起源を持つCNV の存在を満たす、 D 医薬組成物。 ⑶ 本件訴訟に至る経緯ア債務者製品の販売(疎甲3、疎乙2)債務者及び申立外リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドは、債務者製品を共同開発し、債務者の関連会社であるバイ エル薬品株式会社(以下「バイエル薬品」という。)は、平成24年(2012年)11月、債務者製品の販売を開始した。債務者製品の添付文書には、【効能又は効果】、【用法及び用量】として、別紙債務者製品目録記載のとおりの記載がある。 イ債権者製品についての製造販売承認申請(疎甲4ないし6、8、9、1 2、13) 債権者製品の日本における製造販売業者であるグローバルレギュラトリーパートナーズ合同会社(以下「GRP」という。)は、令和5年5月31日、厚生 いし6、8、9、1 2、13) 債権者製品の日本における製造販売業者であるグローバルレギュラトリーパートナーズ合同会社(以下「GRP」という。)は、令和5年5月31日、厚生労働大臣に対し、薬機法14条1項に基づき、債務者製品のバイオ後続品(国内で既に新有効成分含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品〔以下「先行バイオ医薬品」という。〕と同等・同 質の品質、安全性、有効性を有する医薬品として、異なる製造販売業者により開発される医薬品、以下「バイオ後続品」という。)として、債権者製品の製造販売の承認申請(以下「本件承認申請」という。)をした。 GRPが本件承認申請に当たり提出した債権者製品の添付文書案には、【効能又は効果】として、「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」、 「網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫」、「病的近視における脈絡膜新生血管」、「糖尿病黄斑浮腫」との記載があり、【用法及び用量】として、債務者製品の添付文書と同一の記載がある。 なお、「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」が、本件特許におけるwAMD に相当することは、当事者間に争いがない(以下「中心窩下脈 絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」を「wAMD」ともいう。)。 ウ本件特許の設定登録及び医薬品特許情報報告票の提出(疎乙59、95)債務者は、令和5年7月27日、本件特許の設定登録を受けた。●(省略)●エ厚労省による本件承認申請への対応(疎甲17) 債権者、GRP及び厚労省は、令和5年9月21日、本件承認申請に関する会議を開いた。●(省略)●●(省略)●カ債権者側の対応(疎甲14ないし16)GRPは、令和5年11月9日、厚労省の指摘を踏まえて適応症から wAMD を削 本件承認申請に関する会議を開いた。●(省略)●●(省略)●カ債権者側の対応(疎甲14ないし16)GRPは、令和5年11月9日、厚労省の指摘を踏まえて適応症から wAMD を削除し、令和6年6月24日、適応症を網膜静脈閉塞症に伴う黄斑 浮腫、病的近視における脈絡膜新生血管及び糖尿病黄斑浮腫とする内容で債権者製品の製造販売の承認を受けた。 キ債務者による厚労省等への告知行為の内容(疎甲1、審尋の全趣旨)債権者は、前記エの会議の際に厚労省から言及があった債務者の見解の内容について厚労省に確認した。これに対し、厚労省の担当者は、令和5 年12月27日、GRPに対し、一般論として、「アイリーアBSが承認され、製造販売されれば」という言い方で確認をした旨の前置きをした上で、先行バイオ医薬品メーカー(以下「先発メーカー」という。)側の回答(以下、バイエル薬品を通じて行ったものを含め、債務者による厚労省等に対する一連の情報提供行為を「本件告知」という。)として、次のよ うにメールで返答した。 「貴省から、先発企業のバイエル薬品を通じて、特許権者であるBayerHealthCareLLCに、特許権者の意見についてお問い合わせいただいたところ、当該特許権者から、貴省に対して、アイリーアBSを承認および製造販売すれば、有効な特許である特許7320919号 を侵害するとの回答がなされた。アイリーアBSが製造販売されると、特許権者等とBSメーカーとの間で特許権侵害に係る法的紛争が生じることは必至です。そして、その紛争において裁判所が差止めを認めれば、BSメーカーに安定供給義務違反が生じます。そのような事態を避けるうえでも、特許8の存続期間満了まで特許権の存在には十分留意されるべきです。」 て、その紛争において裁判所が差止めを認めれば、BSメーカーに安定供給義務違反が生じます。そのような事態を避けるうえでも、特許8の存続期間満了まで特許権の存在には十分留意されるべきです。」 ●(省略)●⑷ 医薬品の製造販売に至る一般的な流れ一般に、医薬品の製造販売をしようとする者は、PMDAを経由して承認の申請を行い(薬機法14条17項)、製造販売についての厚生労働大臣の承認を受け(薬機法14条1項)、承認を受けた医薬品が薬価基準に収載さ れた後、当該医薬品の製造販売に至る。 3 争点⑴ 本件申立てが適法か(争点1)ア本件申立てが仮処分申立権の濫用に当たるか(争点1-1)イ本件申立てが行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)44条に反するか(争点1-2) ウ本件申立てが最高裁判決の趣旨に反し不適法か(争点1-3)エ本件申立てが申立ての利益を欠くか(争点1-4)⑵ 被保全権利の有無(争点2)本件の被保全権利は、不競法3条1項に基づく差止請求権であり、具体的な争点は次のとおりである。 ア不競法2条1項21号所定の不正競争該当性(争点2-1)「告知」に当たるか(争点2-1-1)「営業上の信用を害する」に当たるか(争点2-1-2)「虚偽の事実」の告知に当たるか(争点2-1-3)正当行為として違法性が阻却されるか(争点2-1-4) イ 「営業上の利益を侵害されるおそれ」の有無(争点2-2)⑶ 保全の必要性(争点3)第3 争点に対する当事者の主張 1 争点1-1(本件申立てが仮処分申立権の濫用に当たるか)について(債務者の主張) ⑴ 本件申立ては、日本におけるパテントリンケージ制度(環太平洋パートナーシップに関する包括的及 張 1 争点1-1(本件申立てが仮処分申立権の濫用に当たるか)について(債務者の主張) ⑴ 本件申立ては、日本におけるパテントリンケージ制度(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定〔以下「TPP11協定」という。〕第十八・五十三条に定められた締約国の義務を履行するための措置であり、具体的には二課長通知に基づいて実施されている。)の下で、債務者が厚労省に本件告知を行ったことを奇貨として、wAMD を適応症とする債権者製品が 本件特許権を侵害するかどうかについて司法判断を受け、これを厚労省等に 示すことによってwAMD についての製造販売承認を得ることを意図・目的としたものである。 しかしながら、バイオ後続品について製造販売承認をするか否かは、本来、厚生労働大臣と後発メーカーとの間の公法上の紛争であるから、抗告訴訟等の公法上の紛争解決手段によるべきであり(知的財産高等裁判所令和4年(ネ) 第10093号判決参照)、民事訴訟や民事仮処分によることは不競法に基づく場合も含めて許されない。具体的には、特許無効審判請求を行って特許庁又は裁判所から無効の審決又は判決を得て厚労省等に提出したり、承認の留保についての不服申立てや不作為の違法確認の訴えに併合して申請型の義務付けの訴え(行訴法37条の3)を提起し、仮の義務付けの申立て(行訴 法37条の5)を行ったりするなどという手段が用意されている。 本件申立ては、このような手段を尽くすことなく、上記のような意図・目的を実現するために不競法2条1項21号に仮託して債務者及び裁判所を巻き込むものであり、許されない。 ⑵ また、債務者が、厚労省等に特許抵触の有無について情報提供を行うこと は、パテントリンケージ制度の中核を構成する正当な権利主 に仮託して債務者及び裁判所を巻き込むものであり、許されない。 ⑵ また、債務者が、厚労省等に特許抵触の有無について情報提供を行うこと は、パテントリンケージ制度の中核を構成する正当な権利主張である。このような情報提供が「不正競争」であるとして差止めの対象となると、情報提供に萎縮効果が生じる。厚労省等も、特許について十分な情報収集を行うことができなくなり、承認申請に対して適正な判断を下すことができず、ひいては、パテントリンケージ制度の趣旨目的が没却され、TPP11協定の遵 守義務(憲法98条2項)にも反することになる。 ⑶ さらに、本件申立ては、債務者に極めて大きな損害を与える点で著しく相当性を欠くものである。すなわち、本件申立てにより、債務者は、代理人を選任した上で、反論や疎明についての調査検討を余儀なくされている。また、債務者は、外国に所在する企業であり、その負担は一層大きい。しかも、前 述のとおり、承認をめぐる紛争は、本来、厚生労働大臣と債権者との間にお ける公法上の紛争であり、債務者が紛争の当事者となる必然性はない。のみならず、本件申立ては、債務者による情報提供について「不正競争」であるとのレッテルを貼るものであり、そのような主張が、医薬品業界に知れ渡れば、それ自体、債務者の社会的評価の低下につながる。 ⑷ これに対し、債権者は、本件申立てはパテントリンケージ制度の趣旨目的 に沿うものであるなどと主張する。しかしながら、パテントリンケージ制度は、医薬品の承認に当たり司法判断を前置することは予定していない。 仮に、不競法を理由とした司法判断の前置を許せば、他の救済手段と比べて安易な救済手段が認められることになり、不競法違反の仮処分申立てが頻発することが懸念され、特許権侵害の判断を行政手続に委 ない。 仮に、不競法を理由とした司法判断の前置を許せば、他の救済手段と比べて安易な救済手段が認められることになり、不競法違反の仮処分申立てが頻発することが懸念され、特許権侵害の判断を行政手続に委ねたことの合理性 が損なわれる。また、仮処分による司法判断については、後に判断が覆る可能性もあり、バイオ後続品が差し止められるという事態を回避できるわけではなく、仮に司法判断を前置させる必要があると考えるとしても、特許権侵害に基づく差止請求権等の不存在確認訴訟において正面から判断されるべきであり、知的財産高等裁判所の判断を変更するか、あるいは、新たな立法に よって対処するべきである。 ⑸ 以上のとおり、本件申立ては、パテントリンケージ制度の趣旨目的に反するのみならず、著しい弊害を生じさせるものであるから、不競法の予定しない濫用的な申立てというべきである。 (債権者の主張) ⑴ 本件申立ては、信用毀損行為からの救済を求めるものであり、濫用には当たらないし、訴権の濫用といえるような事情は存在しない。したがって、本件申立てが申立権の濫用に該当する余地はない。 なお、債務者が引用する知的財産高等裁判所の判決は、債務不存在確認訴訟の確認の利益について判断したものであり、その内容も確認を求めた対象 が公法上の紛争であると述べたものにすぎない。本件は、法律関係の存否の 確認を求めるものではないし、私法上の請求権の保全を求めるものであるから、上記判決とは関係がない。 ⑵ 債務者は、本件申立てがパテントリンケージ制度の趣旨目的に反するなどと主張する。しかしながら、同制度の趣旨目的は、後発医薬品の安定供給を確保する観点から、後発医薬品上市後に特許権侵害訴訟が提起され、製品回 収等により医療現場や患者に影響が生じ 目的に反するなどと主張する。しかしながら、同制度の趣旨目的は、後発医薬品の安定供給を確保する観点から、後発医薬品上市後に特許権侵害訴訟が提起され、製品回 収等により医療現場や患者に影響が生じるのを回避することにあり、厚労省が特許庁や裁判所の判断を参照することも予定している。裁判所の判断が介在することによって同制度がゆがめられるということはないし、むしろ、裁判所の判断が早期に介在することは上記のような影響を回避することに資するから、同制度の趣旨目的に合致するものである。したがって、本件申立 ては、パテントリンケージ制度の趣旨目的にも沿うものであり、何ら不当な申立てではない。 また、債務者は、本件告知が正当な権利主張である旨主張するが、先発メーカーによる特許情報提供は任意のものとされており、権利主張の機会として法律上保障されたものではない。さらに、パテントリンケージ制度を考慮 するとしても、後記8⑶のように、故意又は重大な過失により、明らかな虚偽を伝えて債権者の信用を毀損する行為が許容されるはずはなく、正当な権利主張どころか、適正な情報提供にすら該当しない。 2 争点1-2(本件申立てが行訴法44条に反するか)について(債務者の主張) ⑴ 前記1のとおり、本件申立ては、債権者製品についてwAMD を適応症とする製造販売承認を得ることを意図・目的としたものであり、その対象は厚生労働大臣による債権者製品の承認に関する行政処分である。また、本件申立てが認められると、厚生労働大臣は、司法判断を尊重して債権者製品を承認すると考えられるから、債権者製品の承認に関する厚生労働大臣の判断を阻害 するものである。加えて、本件申立てが認められると、債務者から厚労省等 への情報提供が禁止され、TPP11協定 と考えられるから、債権者製品の承認に関する厚生労働大臣の判断を阻害 するものである。加えて、本件申立てが認められると、債務者から厚労省等 への情報提供が禁止され、TPP11協定の規定に反することになるし、債務者に対する情報提供の機会を与えずに行った厚生労働大臣の処分も違法となるから、債務者の情報提供を差し止める行為は、厚労省等が情報提供の機会を与えるという公権力の行使を阻害するものである。 したがって、本件申立ては、行政処分又は公権力の行使に当たる行政活動 を対象とするものであり、かつ、行政活動を阻害する効果をもたらすものであるから、行訴法44条に反し、許されない。 ⑵ また、最高裁平成23年(行ツ)第177号同24年2月9日第一小法廷判決及び最高裁平成30年(行ヒ)第195号令和元年7月22日第一小法廷判決の趣旨に照らすと、私人が行政庁に対して法律関係に関する主張をす ることが処分の前提となっている場合において、当該処分の予防を目的として当該私人に当該主張をしないよう求める訴えは、法定抗告訴訟たる当該処分の差止訴訟を法律関係に関する給付の訴えの形式に引き直した無名抗告訴訟と位置付けられる。 本件申立てに係る本案の訴えは、債務者が厚労省等への特許権侵害の情報 提供を行っていることが不承認又は承認留保の前提となっている場合において、当該不承認又は承認留保の予防を目的として、債務者に情報提供を行わないように求める訴えであって、上記の各最高裁判決の趣旨に照らし、法定抗告訴訟たる不承認の差止請求又は承認の義務付け訴訟を法律関係に関する給付の訴えの形式に引き直した無名抗告訴訟として位置付けられる。 したがって、本件申立ては、無名抗告訴訟を本案の訴えとするものであり、「公権力の行使に当たる行為」に け訴訟を法律関係に関する給付の訴えの形式に引き直した無名抗告訴訟として位置付けられる。 したがって、本件申立ては、無名抗告訴訟を本案の訴えとするものであり、「公権力の行使に当たる行為」について行われる仮処分であるから、行訴法44条に違反する。 (債権者の主張)否認ないし争う。 3 争点1-3(本件申立てが最高裁判決の趣旨に反し不適法か)について (債務者の主張)最高裁昭和51年(オ)第395号同56年12月16日大法廷判決(民集35巻10号1369頁)の趣旨に照らせば、ある具体的な紛争が、実体法上、行訴法が適用されるべき公法上の法律関係に係るものであれば、当該紛争に係る訴訟形式や訴えの適否は、行訴法の定めるところによって判断すべきであり、 当該紛争の解決手段として民事訴訟によることは許されない。そのため、民事上の給付請求訴訟として提起された訴訟であっても、当該請求が必然的に行政庁の公権力の行使を求める請求を包含するような場合には、当該訴訟は不適法というべきである。 そして、法令上、私法上の行為が「処分その他公権力の行使に当たる行為」 (行訴法3条2項)の前提となっているため、行政庁以外の者が私法上の行為をするのに続いて、行政庁が「処分その他公権力の行使に当たる行為」をしなければならないこととされている場合には、当該行政庁以外の者に対し当該私法上の行為をしないよう求める請求は、当該行政庁以外の者に対し当該私法上の行為をしないよう求めるとともに国に対し当該「処分その他の公権力の行使 に当たる行為」をしないよう求める請求とならざるを得ないため、民事上の請求としては不適法である。 前記1のとおり、本件申立ての対象は、厚生労働大臣と債権者との間における公法上の紛争であるから、債権者 当たる行為」をしないよう求める請求とならざるを得ないため、民事上の請求としては不適法である。 前記1のとおり、本件申立ての対象は、厚生労働大臣と債権者との間における公法上の紛争であるから、債権者は、厚生労働大臣に対して、債権者製品についての承認の留保に対する不作為の違法確認の訴え及び承認の義務付けの 訴えを提起すべきである。そして、本件申立てに係る本案の訴えは、債務者による意見を述べる行為が不承認又は承認留保の前提となっているため、債務者の意見を述べる行為に続いて厚生労働大臣が不承認又は承認留保をしなければならないこととされている場合において、債務者に当該意見を述べる行為をしないよう求める請求であるため、債務者に対し当該行為をしないよう求める とともに国(厚生労働大臣)に対し不承認又は承認留保をしないよう求める請 求とならざるを得ない。したがって、本件申立ては、上記最高裁判決の趣旨に反するものとして、不適法である。 (債務者の主張)否認ないし争う。 4 争点1-4(本件申立てが申立ての利益を欠くか)について (債務者の主張)⑴ 前記1のとおり、債権者は、本件紛争の解決のために厚労省等と交渉するほか、特許無効審判請求を行って特許庁又は裁判所から無効の審決又は判決を得て厚労省等に提出したり、承認の留保に対する不服申立てや不作為の違法確認の訴えに併合して申請型の義務付けの訴え(行訴法37条の3)を提 起し、仮の義務付けの申立て(行訴法37条の5)を行ったりするなどの手段が用意されている。債権者はこれらの手段をとるべきあって、本件申立ては、申立ての利益を欠く。 ⑵ TPP11協定第十八・五十三条第2項によれば、パテントリンケージ制度は、司法上の手続以外の制度として、独立して採用・維持されるも らの手段をとるべきあって、本件申立ては、申立ての利益を欠く。 ⑵ TPP11協定第十八・五十三条第2項によれば、パテントリンケージ制度は、司法上の手続以外の制度として、独立して採用・維持されるものであ り、これをめぐる争訟も同制度の枠内で解決することが想定されている。しかるに、特許権者による情報提供を仮処分によって差し止めることが可能であるとすると、同制度が司法上の手続に従属することとなり、このような事態は想定されていない。したがって、本件申立ては、申立ての利益を欠く。 (債権者の主張) いずれも否認ないし争う。 5 争点2-1-1(「告知」に当たるか)について(債権者の主張)⑴ 債務者は、厚労省の担当者に対し、債務者製品のバイオ後続品を承認及び製造販売すれば、本件特許権を侵害する旨を伝えており、これは「告知」に 該当する。 ⑵ これに対し、債務者は、「告知」は「競争関係にある他人」を特定してされる必要がある旨主張するが、告知を受けた者において「他人」が誰を指すのかが理解できれば足りる。本件において、厚労省は、GRPから本件承認申請がされていることを認識しており、本件告知の対象が債権者製品を指すことを理解していたから、本件告知は、「競争関係にある他人」に関する「告 知」に当たる。なお、債権者と債務者らとの間には、現在、債権者製品と特許の関係に関し、米国、ドイツ、韓国を含むグローバルな法的紛争が生じており、債務者自身も、債権者によりバイオ後続品参入が試みられていることを当然に認識していた。 (債務者の主張) ⑴ 不競法の予定する不正競争に当たらないこと前記1のとおり、本件は、厚生労働大臣と債権者の間の公法上の紛争であるし、パテントリンケージ制度の下で、先発メーカー側が厚 (債務者の主張) ⑴ 不競法の予定する不正競争に当たらないこと前記1のとおり、本件は、厚生労働大臣と債権者の間の公法上の紛争であるし、パテントリンケージ制度の下で、先発メーカー側が厚労省等に対し特許侵害の成否について情報提供を行うことは、同制度の中核を構成する正当な権利主張行為であり、これを差し止めることは不競法上予定されていない から、不正競争に当たることはあり得ない。これに対し、債権者は、先発メーカー側による情報提供は単なる事実上の情報提供にすぎないと主張するが、TPP11協定の規定に鑑みれば、特許権者に権利主張の機会を与えたものと解するのが合理的である。 ⑵ 「告知」に当たらないこと 厚労省等は、高度かつ専門的な裁量に基づいて中立的な立場から医薬品の承認審査を行う国家機関であり、取引上の社会的評価等を形成する主体ではないし、情報提供の内容について守秘義務を負っているから、厚労省等に情報提供を行うことによって債権者の社会的評価が低下することはあり得ない。 しかも、債務者による厚労省等への情報提供は、いかなる場合に本件特許 の侵害が生じるかについて一般的に説明したものであり、債権者及び債権者 製品を特定して、それらにより特許侵害が生じると伝えたものではない。 以上によれば、債務者による厚労省等への情報提供を差し止めることは、不競法の予定するところではなく、当該情報提供は、「告知」には当たらない。 ⑶ 「競争関係にある他人」の特定がないこと 「告知」においては、「競争関係にある他人」を特定して行う必要がある。 しかしながら、本件告知は、債権者及び債権者製品を特定して行ったものではなく、本件特許の侵害が生じる場合を一般的に説明したにすぎない。 これに対し、債権者は、告知を受けた を特定して行う必要がある。 しかしながら、本件告知は、債権者及び債権者製品を特定して行ったものではなく、本件特許の侵害が生じる場合を一般的に説明したにすぎない。 これに対し、債権者は、告知を受けた者において「他人」が誰を指すのかが理解できるのであれば足りると主張するが、本件告知当時、債務者製品の バイオ後続品を開発しているメーカーは債権者を含め多数存在したと考えられ、厚労省等においても、本件告知の対象について、債権者及び債権者製品と特定することは困難であった。 6 争点2-1-2(「営業上の信用を害する」に当たるか)について(債権者の主張) 「営業上の信用」には、他人の権利を侵害するものではないとの法的評価や商品供給能力も含まれる。そうすると、本件告知は、本件特許権の侵害を告知するものであるから、正に、債権者ないし債権者製品が他者の権利を侵害するものではないという「営業上の信用」を害するものであり、承認後に債権者製品が安定的に供給されるかどうかに関して、厚労省等に懸念を生じさせるおそ れがあるという点で「営業上の信用」を害するものである。 また、不競法2条1項21号は、告知の客体を限定しておらず、客体が私人に限られる根拠はないから、国家機関への告知であっても、債権者の「営業上の信用」が害される以上、同号の要件を満たす。したがって、債務者の主張は、「営業上の信用」について根拠のない限定解釈を行うものである。 そして、本件告知は、特許権侵害を明確に告知するものであり、少なくとも債権者製品が他者の権利を侵害するか否かに係る厚労省等の法的評価を低下させるおそれがあるから、明らかに「営業上の信用を害する」ものである。 (債務者の主張)⑴ 「営業上の信用を害する」に当たらないこと 不競 利を侵害するか否かに係る厚労省等の法的評価を低下させるおそれがあるから、明らかに「営業上の信用を害する」ものである。 (債務者の主張)⑴ 「営業上の信用を害する」に当たらないこと 不競法2条1項21号の趣旨は、事業者に対する取引先の社会的評価が適正に構築され、取引が公正に行われるようにすることであるから、「営業上の信用を害する」といえるには、その告知により当該事業者に対する取引先の社会的評価を低下させるおそれがあることを要する。 しかしながら、本件告知は、厚労省の担当者に対して行ったものであり、 厚労省は債権者の社会的評価を形成する主体ではないから、「営業上の信用を害する」とはいえない。また、前記5⑵のとおり、厚労省等は、高度かつ専門的な裁量に基づいて中立的な立場から医薬品の承認審査を行う判断の主体であるから、情報提供のみによって債権者に対して何らかの評価を行うものではなく、情報の提供を受けて「営業上の信用」を低下させることはあり 得ない。さらに、厚労省等は、守秘義務を負っているから厚労省等以外の第三者に情報提供の内容が漏れることはない。加えて、前記5⑴のとおり、パテントリンケージ制度の下で、情報提供を行うことは制度の中核を構成する行為である以上、不正競争に当たるものではない。仮に、厚労省等が承認をしないことによって、債権者による特許権侵害が推測され、債権者の社会的 評価が低下し得るとしても、債務者による情報提供と厚労省等による不承認との間には、厚労省等による専門的・裁量的判断が介在しており、債務者による情報提供と債権者の社会的評価の低下との間の因果関係は、切断されている。 したがって、本件告知は「営業上の信用を害する」には当たらない。 ⑵ 債権者の主張に対する反論 債権者は 供と債権者の社会的評価の低下との間の因果関係は、切断されている。 したがって、本件告知は「営業上の信用を害する」には当たらない。 ⑵ 債権者の主張に対する反論 債権者は、厚労省等自身が債権者についての「営業上の信用」を形成し、これを低下させることを前提とした主張をしている。しかしながら、厚労省等が「営業上の信用」を形成することはないから、債務者による回答が「営業上の信用を害する」ことはない。そして、債務者の回答によって、行政手続又は行政過程に何らかのゆがみを生じさせるものであったとしても、市場 における取引の公正な競争秩序を形成することを目的とする不競法により是正されるべきものではない。仮に、厚労省等自身が債権者についての「営業上の信用」を形成したとしても、厚労省等は、特許侵害の有無について一定の判断能力、裁量を有する第一次的な判断権利者であり、債務者による回答も一方当事者の見解として受け止めるから、これによって厚労省等の「営業 上の信用」を害することはない。 7 争点2-1-3(「虚偽の事実」の告知に当たるか)について(債権者の主張)以下に述べるとおり、債権者製品が本件特許権を侵害していないことは明らかであるから、本件告知の内容は、明らかに虚偽の事実である。 ⑴ 充足論について債権者製品の構成は「抗VEGF 剤としてアフリベルセプトを含む医薬組成物」であるから、債権者製品は、本件発明の構成要件A1及びDを充足するものの、構成要件A2、B及びCを充足しない。 これに対し、債務者は、債権者製品が本件発明の用途に使用されるかどう かは薬機法上の承認申請に係る添付文書等の記載のみで判断すべきではない、債権者は、債権者製品を製造販売するための資料から本件発明の用途を除外すること 者製品が本件発明の用途に使用されるかどう かは薬機法上の承認申請に係る添付文書等の記載のみで判断すべきではない、債権者は、債権者製品を製造販売するための資料から本件発明の用途を除外することができるのにそのような区別をしない以上、債権者製品についてwAMD を適応症とする承認をすれば、その製造販売は本件発明の実施に当たると主張する。しかしながら、債権者製品は、債務者製品のバイオ後続品であ り、これと同等、同質の品質、安全性、有効性が確保されていることが要求 されており、実質的に先行バイオ医薬品と同内容の添付文書が付されることになる。そして、投与における異なる指示を添付文書その他の書類で行うことは許容されていない。実際に、債権者製品の添付文書案の内容は、先行バイオ医薬品である債務者製品の添付文書と実質的に同内容であり、本件発明の構成要件A2、B、Cで定める「病変サイズ」、「組み入れ基準」、「除 外基準」等の限定は全く存在しない。また、このような限定に関する指示もないし、そのような指示をする意図もない。 したがって、債権者が、債務者製品と実質的に同内容の添付文書を付して債権者製品を製造販売等したとしても、本件発明の構成要件A2、B、Cは充足し得ない。 これに対し、債務者は、債権者において、債権者製品の製造販売資料から、本件発明の用途を除外するなど、本件発明の用途と他用途を区別することは可能であったのに、区別しなかったなどと主張する。しかしながら、厚労省の取扱い上、適応症単位ではなく特定の適応症の一部のみについて、切り出して承認を得たり、適応対象を限定したりすることはできず、また、添付文 書その他の文書で勝手に適応対象を限定することは許容されていない。債務者は、製薬会社としてこのような取扱いに いて、切り出して承認を得たり、適応対象を限定したりすることはできず、また、添付文 書その他の文書で勝手に適応対象を限定することは許容されていない。債務者は、製薬会社としてこのような取扱いについて認識しているはずであり、上記の主張は、極めて不適切な主張である。 また、債務者は、wAMD 患者の中に客観的に本件発明の構成要件を充足する患者が含まれ得ることを根拠に債権者製品が本件発明の構成要件を充足する 旨主張する。しかしながら、この主張を前提とすれば、後記⑵のとおり、本件特許の優先権主張日(以下「本件優先日」という。)前に販売されていた債務者製品も本件発明の構成要件を全て充足することになるから本件特許は必然的に無効となるし、債権者製品と債務者製品とで充足の判断が異なることを根拠づける用途に関する技術常識の違いについて何ら具体的な主張疎明 はない。 ⑵ 無効論について仮に、債権者製品が本件発明の構成要件を充足すると解すると、バイエル薬品は、本件優先日前に、債権者製品と実質的に同内容の添付文書を付され、対象となる患者を同じくする債務者製品を販売していた以上、公然と本件特許の実施行為を行っていたことになるから、本件特許は、新規性を欠き無効 とならざるを得ない(特許法29条1項2号)。 ⑶ 結論上記⑴、⑵のとおり、債権者製品は本件特許の構成要件を充足しないし、仮に債権者製品が本件特許の構成要件を充足するとすれば、本件特許は公然実施により無効であり、債権者製品が本件特許権を侵害するとの解釈は成り 立ち得ない。したがって、債権者製品の製造販売が本件特許の侵害を構成する旨の本件告知の内容は、明らかに虚偽である。 これに対し、債務者は、技術常識が変遷しているなどとして、本件特許が充足、有効である ち得ない。したがって、債権者製品の製造販売が本件特許の侵害を構成する旨の本件告知の内容は、明らかに虚偽である。 これに対し、債務者は、技術常識が変遷しているなどとして、本件特許が充足、有効である旨を主張するが、債務者は、充足の理由として一貫して患者の客観的な割合についてしか説明をしておらず、技術常識の変遷について 厚労省等に説明をした形跡はない。この点を措くとしても、債務者が主張するような技術常識の変遷を裏付ける客観的な疎明資料はなく、本件特許に係る明細書(以下「本件明細書」という。)の実施例に係る実験結果(疎乙67)も、アフリベルセプトによる治療と光線力学療法という異なる治療間の優越を示そうとした中国における治験の結果であって、CNV 病変のサイズに 着目して行われたものではなく、このような論文が従来の認識を覆した画期的なものではないことは明白である。そして、本件発明の組入基準及び除外基準は、上記論文の治験の被験者の選別基準をそのままクレームに入れたものであるが、臨床において、医師がこのような基準で患者を選別することなどあり得ず、本件特許の組入基準及び除外基準に係る技術常識が、臨床で治 療する際の基準として医師において広がっているという主張は荒唐無稽であ る。 なお、債務者は、本件告知が「事実」の告知に当たらないなどと主張するが、たとえ本件告知が法的見解の表明であったとしても、裁判所が知的財産権侵害に係る判断を示す前に、当該判断とは異なる法的な見解を事前に告知した行為は、不競法2条1項21号にいう信用毀損行為に該当する。 (債務者の主張)⑴ 「事実」の告知には当たらないこと厚労省等は、債務者から受けた情報提供については、一方当事者の見解の表明又は判断材料として理解するにすぎないから、 行為に該当する。 (債務者の主張)⑴ 「事実」の告知には当たらないこと厚労省等は、債務者から受けた情報提供については、一方当事者の見解の表明又は判断材料として理解するにすぎないから、債務者による情報提供は、虚偽の「事実」を告知する行為には該当しない。 ⑵ 「虚偽」には当たらないこと本件告知の内容は、①債権者製品が本件特許権の構成要件を充足すること、②本件特許については無効審判請求が行われておらず、本件特許が第三者による刊行物等の提出にもかかわらず設定登録に至ったことから無効審判請求が行われたとしても、奏功する可能性が低いと思われることを説明したもの である。②については、客観的な事実及び一方当事者の見解を表明したにすぎないし、①については、以下に述べるとおり、債権者製品が本件特許権を侵害している以上、客観的な真実に反しておらず、「虚偽」の事実の告知には当たらない。 ア債権者製品が本件発明の構成要件を充足すること 本件発明は、アフリベルセプトという既知の物質について、wAMD 患者のうち、一定の組入基準及び除外基準を満たす「全病変サイズの50%未満の活動性CNV 病変サイズ」を有するwAMD 患者(以下「sCNVwAMD 患者」という。)において、「全病変サイズの50%以上の活動性CNV 病変サイズ」を有するwAMD 患者(以下「pCNVwAMD 患者」という。)よりも優れた 治療効果を発揮するという未知の性質の発見に基づき、当該sCNVwAMD 患 者に投与することによって、 このような顕著な効果を有する新規な用途を創作したことを特徴とする用途発明である。 そして、用途発明の「実施」に当たるかどうかは、添付文書等に当該用途が記載されているかのみを考慮要素とするのではな このような顕著な効果を有する新規な用途を創作したことを特徴とする用途発明である。 そして、用途発明の「実施」に当たるかどうかは、添付文書等に当該用途が記載されているかのみを考慮要素とするのではなく、特許発明の用途と他の用途が区別されているかなどの事例ごとに主張立証された要 素を柔軟に考慮して、特許発明の用途に使用するために被疑侵害製品を製造販売していると評価できるか否かを検討するべきである。 債権者製品は、「抗VEGF 剤としてアフリベルセプトを含む」(構成要件A1)「医薬組成物」(構成要件D)に相当する。また、「湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)」(構成要件A2)とは、本件承認申請時の債権者 製品の添付文書案において【効能又は効果】として記載された「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」と実質的に同じである。さらに、wAMD 患者又は「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」の患者の中には、構成要件Bの組入基準及び構成要件Cの除外基準を満たす、「フルオレセイン蛍光眼底造影によって決定される全病変サイズの50%未満 の活動性CNV 病変サイズを有する湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)患者」(構成要件A2)が含まれ、その割合は、本件明細書の実施例(【0022】ないし【0028】)及び当該実施例であるSIGHT試験について報告した文献(疎乙67)によれば、少なくとも約24.2%であると算定される。 また、債権者は、債権者製品を製造販売するための資料から、sCNVwAMD患者の治療に使用できるという本件発明の用途を除外するなど、本件発明の用途と他の用途を区別することが可能であったのに、区別しなかった。現に、添付文書の「効能又は効果に関連する使用上の注意」に用途に関する記載をする余地があることは、債権者も認めて するなど、本件発明の用途と他の用途を区別することが可能であったのに、区別しなかった。現に、添付文書の「効能又は効果に関連する使用上の注意」に用途に関する記載をする余地があることは、債権者も認めている。 したがって、債権者製品を「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑 変性」の効能・効果について承認し、製造販売すれば、本件発明の用途に使用される蓋然性が高いから、債権者製品の製造販売は、本件発明の「実施」に該当する。 イ本件特許が有効であること債務者製品が公然実施に当たらないこと 前記アのとおり、本件発明は、アフリベルセプトという既知の物質について、一定の組入基準及び除外基準を満たすsCNVwAMD 患者において、pCNVwAMD 患者よりも優れた治療効果を発揮するという未知の性質の発見に基づき、当該sCNVwAMD 患者に投与することによって、このような顕著な効果を有する新規な用途を創作したことを特徴とする用途発明で ある。 これに対し、債務者製品は、wAMD 患者の治療に使用するという用途が認定されるにとどまる。 上記の各用途は相違しており、また、本件優先日当時の技術常識によれば、一定の組入基準及び除外基準を満たすsCNVwAMD 患者において、 pCNVwAMD 患者よりも優れた治療効果を発揮するという点は、本件優先日当時においては明らかではなかったから、本件発明は、公然実施により無効にはならない。 充足性と公然実施とは判断基準が異なること上記のとおり、債務者製品及び債権者製品の製造販売は、現時点では いずれも本件発明の実施に当たるが、本件優先日当時において、債務者製品は本件特許の公然実施には当たらない。充足論における用途特許の実施の判断と、無効論における用途発明 製造販売は、現時点では いずれも本件発明の実施に当たるが、本件優先日当時において、債務者製品は本件特許の公然実施には当たらない。充足論における用途特許の実施の判断と、無効論における用途発明の公然実施の判断との間で、判断基準が異なることは、特許庁の審査基準や従来の裁判例からも明らかであり、それによって結論が異なったとしても何ら矛盾するものではな い。 本件においては、本件優先日当時と現時点とでは、技術常識、すなわち、一定の組入基準及び除外基準を満たすsCNVwAMD 患者にアフリベルセプトを使用することに関する知見及び使用態様に変化が生じている。 具体的には、本件優先日当時は、sCNVwAMD 患者は、抗VEGF 剤が作用しやすい活動性CNV 病変の割合が50%未満しか存在せず、抗VEGF 剤が作 用しづらいその他の病変が高い割合で存在すること、逆に、pCNVwAMD 患者は抗VEGF 剤が作用しやすい活動性CNV 病変の割合が高いことから、sCNVwAMD 患者に対するアフリベルセプトの治療効果、特に視力が回復する見込みは乏しいと予想されていた。そのため、sCNVwAMD 患者については、金銭面や治療面での患者の負担を考慮して、アフリベルセプトによ る治療を中断、中止することが広く一般的に行われていた(もっとも、sCNVwAMD 患者の中でも活動性CNV 病変の割合が比較的大きいなど、治療効果、特に視力の回復がある程度見込まれる患者についてはアフリベルセプトの使用を試み、継続するという判断もあり得た。)。 他方で、本件優先日後、本件明細書記載の実施例に係る臨床試験(S IGHT試験)の結果を報告した学術論文が従来の認識を覆した。その結果、眼科医は、従前は治療面、金銭面での負担を考慮して )。 他方で、本件優先日後、本件明細書記載の実施例に係る臨床試験(S IGHT試験)の結果を報告した学術論文が従来の認識を覆した。その結果、眼科医は、従前は治療面、金銭面での負担を考慮して治療を断念するなどしていたsCNVwAMD 患者についても、視力の回復を含む相当の治療効果が見込まれるという知見の変化を踏まえて、アフリベルセプトを用いた治療を試みたり、継続したりするようになった。 このように、本件優先日当時と現時点とでは、一定の組入基準及び除外基準を満たすsCNVwAMD 患者にアフリベルセプトを使用することに関する知見及び使用態様、すなわち、技術常識に変化が生じているから、債務者製品と同一の債権者製品であっても、上記のように充足論の判断と無効論の判断とで結論が異なることは、何ら不合理ではない。 8 争点2-1-4(正当行為として違法性が阻却されるか)について (債務者の主張)前記5⑴のとおり、本件告知は、そもそも不正競争には当たり得ないが、仮に、不正競争に当たり、かつ、本件告知の内容に虚偽の事実が含まれていたとしても、以下に述べるとおり、本件告知は、正当な行為であり、違法性が阻却される。 ⑴ 前記1及び5のとおり、パテントリンケージ制度における先発メーカー側による情報提供は、TPP11協定に定められたものであり、特許権者の正当な権利主張として認められた法令上保障された権利である。これを差し止めることは、先発メーカー側の情報提供を萎縮させることになり、ひいては、厚労省等による特許に関する情報収集や承認に関する適正な判断を阻害し、 パテントリンケージ制度の趣旨目的が没却され、TPP11協定の遵守義務(憲法98条2項)にも反することになる。また、本件のような差止めを許容する る情報収集や承認に関する適正な判断を阻害し、 パテントリンケージ制度の趣旨目的が没却され、TPP11協定の遵守義務(憲法98条2項)にも反することになる。また、本件のような差止めを許容すると、債務者は、債権者側の情報提供等に対して反論することが許されないことになり、当事者間の公平性を欠く。 ⑵ 不競法2条1項21号で典型的に問題となるのは、競業者の取引先に対し て侵害告知を行う場合であるが、パテントリンケージ制度の下で先発メーカー側が厚労省等に特許侵害の情報提供を行ったとしても、特許権者が市場において優位に立つことを目的とする、又は、内容ないし態様において社会通念上著しく不相当であるということは生じ得ないし、本件における債務者の情報提供の態様も何ら不相当なものではなく、取引先からの社会的評価の適 正な構築を妨げるようなものでもない。 ⑶ 本件告知の内容を見ても、前記7のとおり、債務者の主張は、十分に取り得る見解であり、本件告知の内容が虚偽であることを通常人であれば容易に知り得たとは到底いえないから、本件告知が、著しく相当性を欠くものとはいえないことは明らかである。 ⑷ 以上の事情は、裁判所がレビュー期日において示した判断基準(第4の2 ⑴参照)にいう「特段の事情」が認められないことを裏付けるものともいえる。 (債権者の主張)⑴ 本件のような差止請求権の有無の判断において、条文に規定のない要件を持ち出して違法性阻却を判断することは許されず、損害賠償請求の過失判断 においてのみ検討すべきである。前記7のとおり、本件告知は、不競法2条1項21号に該当する以上、違法性が阻却される余地はない。 ⑵ 仮に、違法性が阻却される余地があるとしても、パテントリンケージ制度は、法令上の制度ではなく、 。前記7のとおり、本件告知は、不競法2条1項21号に該当する以上、違法性が阻却される余地はない。 ⑵ 仮に、違法性が阻却される余地があるとしても、パテントリンケージ制度は、法令上の制度ではなく、単なる通知に基づいて運用されている制度である。そして、先発メーカー側による特許情報の提供は、任意のものとされて おり、法律上保障された権利主張の機会ではなく、単なる事実上の情報提供にすぎない。他方で、虚偽事実の告知により営業上の信用を毀損されないという利益は不競法によって保護された重要な法的利益であり、単なる事実上の情報提供より大きく優越すべきである。加えて、厚労省は、本件のような事案においては、裁判所の判断がなければ情報提供の真偽の判断をしないの であり、パテントリンケージ制度の適切な運営のためには提供される情報の適切性の確保は必要不可欠である。しかも、「虚偽の告知」であっても、債権者が「パテントリンケージの趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものと認められる特段の事情」(後記第4の2⑴参照)を主張、疎明できない限り、不競法2条1項21号該当性が認められないとすると、余りにも信用を 毀損された側の不利益が大きい。 以上によれば、営業上の信用を毀損する虚偽事実の告知は、原則として違法であり、告知者の側でこれが違法性を欠く特段の事情を主張立証しない限り、違法性は阻却されないと解すべきである。 ⑶ 前記7のとおり、本件では、債務者自らが、本件優先日前からその完全子 会社を通じて債権者製品と全く同一の債務者製品を製造販売していたとい う特別な事情がある。そのため、本件特許は、債務者製品により公然実施をされたものではないという前提でなければ成立し得ないはずであり、債務者製品と同一である債権者製品の製造販売が本 い う特別な事情がある。そのため、本件特許は、債務者製品により公然実施をされたものではないという前提でなければ成立し得ないはずであり、債務者製品と同一である債権者製品の製造販売が本件特許の実施に当たることはあり得ない。また、厚労省は、本件告知以前に、バイエル薬品に対し、バイオ後続品が本件特許を侵害するのであれば、債務者製品が本件優先日前に製 造販売されていたのであるから公然実施により本件特許は無効になるのではないかという見解を指摘していた。これらの事情から、債務者は、債権者製品が有効な本件特許権を侵害するはずがないことは当然認識していたはずである。仮に知らなかったとすると、債務者は、慎重な検討が必要な厚労省への告知に当たり、ごく簡単な検討すら行わずに極めて無責任に債権者製 品の信用を毀損する内容を通知したことになり、これは故意に匹敵する重過失にほかならない。 それにもかかわらず、債務者は、厚労省が特許を専門とせず、裁判所の判断がなければ特許侵害の成否を判断できないとしていることを奇貨として、明らかに虚偽の事実を告げることにより、債権者の信用を毀損し、その市場 参入を阻止しようとしたものである。このような行為を許せば、先発メーカーが、特許庁に対しては、先行バイオ医薬品の製造販売行為は公然実施に当たらないという前提で特殊な用途特許を後から出願しつつ、厚労省に対しては先行バイオ医薬品と同一内容のバイオ後続品の製造販売行為は当該用途特許を侵害するという二枚舌を使うことによって、用途特許の出願日から更に 20年間、バイオ後続品の参入を阻止できることになり、パテントリンケージ制度が適切に運用されないことになる。パテントリンケージ制度が、このような事態を予定したものではないことは明らかであり、本件告知は、パ 間、バイオ後続品の参入を阻止できることになり、パテントリンケージ制度が適切に運用されないことになる。パテントリンケージ制度が、このような事態を予定したものではないことは明らかであり、本件告知は、パテントリンケージ制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く以上、違法性が阻却されることはありえない。 ⑷ 以上の事情は、裁判所がレビュー期日において示した判断基準(第4の2 ⑴参照)にいう「特段の事情」が認められることを裏付けるものともいえる。 9 争点2-2(「営業上の利益を侵害されるおそれ」の有無)について(債権者の主張)後記10のとおり、債権者は、債務者の信用毀損行為によって「営業上の利益」を著しく侵害されている。その結果、債権者は、本件告知によりやむを得 ずwAMD を承認申請の対象から一旦外すことを余儀なくされたが、今後、速やかに承認申請をする予定であるところ、債務者の主張に照らしても、債務者が、今後、本件告知と同内容の告知をするおそれがあることは明らかである。したがって、「営業上の利益を侵害されるおそれ」がある。 (債務者の主張) ⑴ 債権者は、債権者製品についてwAMD を適応症とする承認申請を行っていないし、承認申請を行ったとしても未だ承認がされていない以上、債権者の営業上の利益が近い将来において侵害される蓋然性はない。したがって、「営業上の利益を侵害されるおそれ」があるとはいえない。 ⑵ 債権者の主張に対する反論 債権者は、本件告知によって、厚労省等は、債権者が債権者製品を安定的に供給できるかどうかに関して不安があるとして、wAMD の承認を見送ったから、債権者の「営業上の利益」は既に著しく侵害されている旨主張する。このように債権者が主張する「営業上の利益」とは、①厚 的に供給できるかどうかに関して不安があるとして、wAMD の承認を見送ったから、債権者の「営業上の利益」は既に著しく侵害されている旨主張する。このように債権者が主張する「営業上の利益」とは、①厚労省等自身が債権者について形成するとされる「営業上の信用」か、②市場において債権者製品 をwAMD について製造販売することで得られる利益か、いずれかの一方又は双方を想定するものと解されるが、①については、前記6のとおり、厚労省等自身がそのような「営業上の信用」を形成することはない。②については、上記⑴のとおり、債権者製品がwAMD について承認されていない以上、債権者が近い将来において債権者製品を製造販売する蓋然性がなく、法的に保護さ れる利益は存在しないから、「営業上の利益」が侵害されるおそれはない。 また、債務者の厚労省等への情報提供と、債権者製品をwAMD について製造販売することで得られる利益との間には、厚労省等の承認に関する独立した判断が介在しているため、因果関係が認められる余地もないから、債務者の情報提供「によって」当該利益が害されることはない。 10 争点3(保全の必要性)について (債権者の主張)債務者は、特許の専門ではない厚労省等に対して、債権者製品の市場参入を不当に阻止、遅延させるために、明らかに虚偽の告知を行ったものであり、債権者は、これによって、wAMD について別途の承認申請を行わざるを得ない事態に追い込まれ、市場参入の機会を不当に奪われている。このように市場参入が 遅れると、マーケットシェア獲得は日々難しくなるため、本件申立てにより差止命令等を早急に得なければ、債権者が債務者に対する本案訴訟で勝訴判決を得たとしても、債権者に回復不能な損害が生じることは不可避である。他方 ーケットシェア獲得は日々難しくなるため、本件申立てにより差止命令等を早急に得なければ、債権者が債務者に対する本案訴訟で勝訴判決を得たとしても、債権者に回復不能な損害が生じることは不可避である。他方で、債権者は、虚偽事実の告知を行わないように求めているにすぎず、これによって債務者の被る不利益はなく、不利益があったとしても極めて小さい。 これに対し、債務者は、債権者がwAMD の承認申請を一旦取り下げたから保全の必要性がないと主張するが、本件告知によりやむを得ず取り下げたものであるし、債務者の主張を踏まえると、債務者は今後も信用毀損行為を行う可能性がある。 したがって、保全の必要性は当然に認められる。 (債務者の主張)⑴ 債権者は、現時点で、wAMD の効能・効果について債権者製品の承認申請を行っておらず、債権者製品についてパテントリンケージ制度に基づく手続が開始されることはないから、保全の必要性はない。 ⑵ 仮に、債権者が、wAMD の効能・効果について債権者製品の承認申請を再度 行ったとしても、承認申請の段階では、承認や上市について期待的利益を有 するにとどまり、承認を得られるとは限らないから、債権者に何らかの損害が生じたとしても法的保護に値するものではない。この点を措くとしても、債権者が主張する損害は、財産的損害にすぎず事後的な金銭賠償をもって回復可能であるし、前記6のとおり、本件告知によって債権者の営業上の信用が害されることはあり得ない。また、債権者は、本件の紛争の解決のために 用意された手段を尽くして損害を低減できる可能性があったにもかかわらず、それらを尽くすことを怠っている点で帰責性がある。他方、債務者の行為は正当な権利主張であるし、本件申立てが認められ、債権者製品の承認や上市 段を尽くして損害を低減できる可能性があったにもかかわらず、それらを尽くすことを怠っている点で帰責性がある。他方、債務者の行為は正当な権利主張であるし、本件申立てが認められ、債権者製品の承認や上市に至れば、債務者の市場が現実に浸食されるから、その後に債務者が本案訴訟で勝訴しても、それらを回復することは不可能であって、これによっ て被る損害は極めて大きい。 また、本件は、先発メーカー側及び後発メーカー側に与える実務上のインパクトが極めて大きく、その点からも、簡易迅速に進められ、疎明のみで足りる保全手続ではなく、慎重に進められ証明が必要となる本案訴訟に委ねられるべきである。さらに、事案の重要性に鑑みると、第三者意見募集(特許 法105条の2の11)や、知財高裁大合議(民事訴訟法310条の2)による判断に適するものということができ、これらの制度を活用することが望ましい。 第4 当裁判所の判断 1 本件審理の経過 当裁判所は、当事者双方による主張疎明の終了後、裁判所の検討結果を示すレビュー期日において、当事者双方に対し、後記2に掲げる判断基準を事前に示した上、本件における中核的争点が、当該判断基準にいう「特段の事情」該当性であることを示した。その上で、当裁判所は、当事者双方に対し、上記該当性を中心として主張疎明の補充を更に求めた上、当事者双方による当該補充 の終了後、当事者双方の合意の下で本件審理を終了した。このような審理経過に鑑み、当裁判所は、まず中核的争点である争点2を以下判断する。 2 争点2について⑴ 判断基準(争点2)日本におけるパテントリンケージとは、厚労省の通知(別紙関係法令等の 定めにいう「平成6年通知」及び「二課長通知」参照)に基づき、厚労省等が、後発医薬品の安定供 いて⑴ 判断基準(争点2)日本におけるパテントリンケージとは、厚労省の通知(別紙関係法令等の 定めにいう「平成6年通知」及び「二課長通知」参照)に基づき、厚労省等が、後発医薬品の安定供給を確保する観点から、既承認の医療用医薬品の有効成分に係る物質特許又は用途特許についての情報の収集等を行い、後発医薬品の薬事法上の承認審査に当たり、後発医薬品につき、先発医薬品に係る特許との抵触の有無を確認するものである。 そして、上記通知によれば、上記物質特許若しくは用途特許に係る特許権者又は当該特許に係る成分を有効成分として医薬品の承認を取得している者(以下「特許権者等」という。)は、医薬品特許情報報告票に必要事項を記入しこれを任意で提出することとされている。その上で、上記通知によれば、薬事法上の承認審査に当たっては、先発医薬品の有効成分に特許が存在する ことによって、当該有効成分の製造そのものができない場合には、後発医薬品を承認しないとされ、また、先発医薬品の一部の効能・効果等に特許が存在し、その他の効能・効果等を標ぼうする医薬品の製造が可能である場合については、後発医薬品を承認できることとし、この場合、特許が存在する効能・効果等については、承認しない方針であるとされている。 このように、医薬品特許情報報告票は、後発医薬品の製造販売承認の申請の際に、厚労省等が後発医薬品の安定供給を確保し得るか否かの判断を行うための内部資料として、先発医薬品を製造販売する特許権者等から任意に提出されるものであり、その記載内容等に係る特段の制限はなく、上記特許権者等が先発医薬品に係る特許と後発医薬品との特許抵触の有無に関する自己 の見解を記載すること自体を妨げるものではない。 他方、競争関係にある者が、競業者 制限はなく、上記特許権者等が先発医薬品に係る特許と後発医薬品との特許抵触の有無に関する自己 の見解を記載すること自体を妨げるものではない。 他方、競争関係にある者が、競業者の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し又は流布する行為は、競業者を不利な立場に置き、自ら競争上有利な地位に立とうとするものであるから、事業者間の公正な競争を阻害することは明らかである。このような結果を防止し、事業者間の公正な競争を確保する観点から、不競法2条1項21号は、上記行為を不正競争の一類型と定め るものである。そして、先発医薬品に係る特許権者等と、後発医薬品の製造販売承認を申請する者との間には、当該医薬品市場において競争関係にあるところ、仮に、パテントリンケージの下で、上記特許権者等が、その後に確定した裁判所の判断とは異なり、先発医薬品に係る特許と後発医薬品との特許抵触がある旨の回答をする行為が、虚偽の事実を告知するものとして直ち に違法になるのであれば、上記特許権者等は、医薬品特許情報報告票に特許抵触の有無につき自己の見解を十分に記載することができなくなる。そのため、厚労省等が後発医薬品の安定供給を確保し得るか否かの判断を的確に行うことができず、ひいてはパテントリンケージの趣旨目的を阻害するおそれがある。 もっとも、パテントリンケージは、後発医薬品の安定供給を確保する観点から、後発医薬品の承認審査に当たり先発医薬品に係る特許と後発医薬品との特許抵触の有無を確認することを趣旨目的とするものであるから、先発医薬品に係る特許権者等に対し恣意的な情報提供を許容したり、これに広く免責を与えたりするものではないことは明らかである。 そうすると、パテントリンケージの下において、先発医薬品に係る特許権者等が先発医薬 許権者等に対し恣意的な情報提供を許容したり、これに広く免責を与えたりするものではないことは明らかである。 そうすると、パテントリンケージの下において、先発医薬品に係る特許権者等が先発医薬品に係る特許と後発医薬品との特許抵触がある旨の虚偽の回答をする行為が、外形的にはパテントリンケージの下における情報提供という形式をとりつつも、実質的には後発医薬品の製造販売承認を申請する者を不利な立場に置き、自ら競争上有利な地位に立とうとするものである場合に は、上記行為は、事業者間の公正な競争を阻害するものとして、不競法2条 1項21号の上記趣旨目的に鑑み、不正競争の一類型に含まれると解するのが相当である。 以上の観点からすると、先発医薬品に係る特許権者等がパテントリンケージにおいて先発医薬品に係る特許と後発医薬品との特許抵触がある旨の虚偽の回答をする行為は、パテントリンケージの趣旨目的に照らして著しく相当 性を欠くものと認められる特段の事情がある場合には、競争関係にある後発医薬品の製造販売承認を申請する者の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知するものとして、不競法2条1項21号に掲げる不正競争に該当すると解するのが相当である。 これに対し、債務者は、パテントリンケージにおける先行バイオ医薬品に 係る特許権者等の情報提供行為はおよそ不正競争に該当し得ない旨主張する。 しかしながら、パテントリンケージは、後発医薬品の安定供給を確保する観点から、後発医薬品の承認審査に当たり先発医薬品に係る特許と後発医薬品との特許抵触の有無を確認することを趣旨目的とするものであるから、先発医薬品に係る特許権者等に対し恣意的な情報提供を許容したり、これに広く 免責を与えたりするものではないことは、上記において説示したとおりであ 無を確認することを趣旨目的とするものであるから、先発医薬品に係る特許権者等に対し恣意的な情報提供を許容したり、これに広く 免責を与えたりするものではないことは、上記において説示したとおりである。したがって、債務者の主張は、採用することができない。 他方、債権者は、パテントリンケージにおける先行バイオ医薬品に係る特許権者等の情報提供が不競法2条1項21号に該当すれば、違法性が阻却される余地はない旨主張する。しかしながら、パテントリンケージは、後発医 薬品の承認審査に当たり先発医薬品に係る特許と後発医薬品との特許抵触の有無を確認することを趣旨目的とするものであるところ、特許権者等が、その後に確定した裁判所の判断とは異なり、特許抵触がある旨の回答をすることが直ちに違法になるのであれば、特許権者等は、特許抵触に関する自己の見解を医薬品特許情報報告票に記載することを差し控え、ひいては、後発医 薬品の安定供給の確保というパテントリンケージの趣旨目的を阻害するおそ れがあることは、上記において説示したとおりである。そうすると、先行バイオ医薬品に係る特許権者等が、結果的には裁判所の判断とは異なる虚偽の回答をしたとしても、パテントリンケージ及び不競法の趣旨目的に照らし、当該回答が事業者間の公正な競争を阻害するものかどうかを実質的にみて違法性を判断するのが相当である。したがって、債権者の主張は、採用するこ とができない。 その他に、パテントリンケージ及び不競法の趣旨目的に鑑みると、上記判断基準とは異なる当事者双方の主張は、いずれも採用の限りではない。 ⑵ 判断基準該当性以下、上記にいう判断基準該当性を順次検討する。 ア本件明細書の記載疎明資料(疎甲2、疎乙1)によれば、本件明細書には、次のとおりの いずれも採用の限りではない。 ⑵ 判断基準該当性以下、上記にいう判断基準該当性を順次検討する。 ア本件明細書の記載疎明資料(疎甲2、疎乙1)によれば、本件明細書には、次のとおりの記載があることが認められる。 背景技術「加齢黄斑変性(AMD)は、通常、高齢者に影響を及ぼし、網膜の損傷 のために視野の中心(黄斑)の視力を失う病状である。それは「乾燥」および「湿潤」形態で生じる。乾燥形態では、ドルーゼンと呼ばれる細胞破片が網膜と脈絡膜との間に蓄積し、網膜が剥離することがある。より重篤な湿潤形態(wAMD)では、脈絡膜新生血管(CNV)とも呼ばれる網膜の背後の脈絡膜から血管が成長する。CNV の結果、網膜も剥離するこ とがある。」(【0001】)「網膜における異常な血管の増殖は、血管内皮増殖因子(VEGF)によって刺激される。抗血管新生剤または抗VEGF 剤は、異常な血管の退行を引き起こし、硝子体内投与されたときに視力を改善し得る。いくつかの抗VEGF 薬は眼内使用が認可されており、以下の特許出願に記載されて いる:」(【0002】) 「アフリベルセプト(Eylea(登録商標)) WO 2000/75319ベバシズマブ(Avastin(登録商標)) WO 9845331ラニビズマブ(Lucentis(登録商標)) WO 9845331ペガプタニブ(Macugen(登録商標)) WO 9818480KH-902/conbercept(Langmu(登録商標)) WO 2007112675」 (【0003】)「抗VEGF 剤を用いて実施された臨床試験では、全病変の少なくとも50%を占めなけれ conbercept(Langmu(登録商標)) WO 2007112675」 (【0003】)「抗VEGF 剤を用いて実施された臨床試験では、全病変の少なくとも50%を占めなければならないクラシック主体型活動性中心窩下CNV 領域(activepredominantlyclassic、subfovealCNVarea)を有する患者を含める必要があった[Rosenfeld ら、NEnglJMed 2006、355:1419- 1431;Brown ら、NEnglJMed 2006、355:1432-1444;Heier ら、Ophthalmology 2012、119:2537-2548;Regillo ら、AmJOphthalmol2008、145:239-248]。したがって、全病変の50%未満を占めるクラシック主体型活動性中心窩下CNV 領域を有する眼の、抗VEGF 療法に対する反応に関する情報は不足している。」(【0005】) 「CATT 研究グループは、加齢性黄斑変性症治療試験(CATT)の比較に登録した、血液で構成される病変を50%を超えて有する眼(B50 群)と他のすべての眼(他の群)のベースライン特性、治療頻度、視力(VA)および形態学的予後を比較した。試験眼の治療は、ラニビズマブまたはベバシズマブのいずれかにランダムに割り当てられ、2 年間にわたって 異なる3 つの投与レジメンに割り当てられた。リーディングセンターのグレーダーは、カラー眼底写真、フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)および光干渉断層撮影(OCT)においてベースラインおよびフォローアップ形態を評価した。平均視力(VA)の上昇は、「B50 群」および「他の群」において、1 年目(+9.3 対+7.2 影(FA)および光干渉断層撮影(OCT)においてベースラインおよびフォローアップ形態を評価した。平均視力(VA)の上昇は、「B50 群」および「他の群」において、1 年目(+9.3 対+7.2 文字;P=0.22)および2 年目(9. 0 対6.1 文字;P=0.17)で同等であった。「B50 群」の平均病変サイ ズは、1 年目と2 年目のいずれも1.2 DA 減少(主に出血の回復による。)し、「その他の群」では1 年目に0.33 DA、2 年目に0.91 DA 増加した(P<0.001)。著者らは、「B50 群」は「他の群」と同様の視覚予後を有していると結論付けた。病変サイズは2 年間で著しく減少した。50%を超える血液で構成される血管新生性AMD 病変を有する、CATT に登録さ れたもののような眼は、血液が少ないかまたは全くないものと同様に管理することができる。[AltaweelMM ら、Ophthalmology.2015 122(2):391-398]。」(【0006】)課題を解決するための手段「しかし、血液で構成される病変を50%を超えて有する上記の評価さ れた亜集団は、本出願(実施例1)に記載された調査の全病変サイズの50%未満の活動性CNV 病変を有する患者の亜集団と同等ではない。」(【0008】)「本発明では、CNV 病変の小さい活動性部分を有する病変(全病変サイズの50%未満;「sCNVwAMD」)が、抗VEGF 治療、すなわちアフリベ ルセプトまたはPDT を用いる治療に良好に反応することが示されている。 この結論は、アフリベルセプトまたはV(登録商標)-PDT の硝子体内注射のいずれかで治療された、「sCNVwAMD」および「pCNVwAMD」を有する患 療に良好に反応することが示されている。 この結論は、アフリベルセプトまたはV(登録商標)-PDT の硝子体内注射のいずれかで治療された、「sCNVwAMD」および「pCNVwAMD」を有する患者の臨床試験での観察に基づく。驚くべきことに、「sCNVwAMD」患者の視力によって測定されるアフリベルセプト治療に対する反応は、 「pCNVwAMD」患者の反応に対して数値的に高かった。これは、CNV 病変の大きな活動性部分を有する病変が、CNV 病変の小さい活動性部分を有する病変よりも、抗VEGF 治療の漏出防止作用に対してより受容性があると推定されるため、予想されていなかった。さらに、「sCNVwAMD」患者のV(登録商標)-PDT 治療に対する反応は、「pCNVwAMD」患者の反 応に対して数値的に高く、これも予想されていなかった。」(【001 8】)イ本件発明の実施該当性(争点2-1-3〔「虚偽の事実」の告知に当たるか〕との関係)用途発明とは、既知の物質について未知の性質を発見し当該性質に基づき顕著な効果を有する新規な用途を創作したことを技術的特徴とする ものである。そうすると、用途発明についての特許法2条3項にいう「実施」とは、専ら新規な用途に使用するために既知の物質を生産、使用、譲渡等をする行為をいうものと解するのが相当である。 これを本件発明についてみると、本件発明に係る特許請求の範囲の記載及び本件明細書(【0005】、【0006】、【0018】)の記 載によれば、既知の物質である抗VEGF 剤は、従来、全病変サイズの少なくとも50%を占めるクラシック主体型活動性中心窩下CNV 領域を有するwAMD 患者(pCNVwAMD 患者)に有効なものとして認識されていたところ、 る抗VEGF 剤は、従来、全病変サイズの少なくとも50%を占めるクラシック主体型活動性中心窩下CNV 領域を有するwAMD 患者(pCNVwAMD 患者)に有効なものとして認識されていたところ、本件発明は、一定の組入基準及び除外基準を満たす全病変サイズの50%未満の活動性CNV 病変サイズを有するwAMD 患者(sCNVwAMD 患者。以下 「本件特定患者群」ともいう。)において、pCNVwAMD 患者よりも優れた治療効果を発揮するという抗VEGF 剤の未知の性質の発見に基づき、本件特定患者群に投与することによって顕著な効果を有する新規な用途を創作したことを特徴とするものと認められる。 そうすると、本件発明における特許法2条3項にいう「実施」とは、 専ら本件特定患者群に投与するために、抗VEGF 剤を生産、使用、譲渡等をする行為をいうものと解するのが相当である。 これを本件における債権者製品についてみると、前記前提事実によれば、債権者製品は、そもそも債務者製品のバイオ後続品であり、本件承認申請時に提出された債権者製品の添付文書案には、適応症として「中 心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」という記載があるにとどま り、【効能又は効果】及び【用法及び用量】の各欄においても、本件特定患者群に関する記載は一切認められず、本件特定患者群に投与することによって顕著な効果を有する趣旨をいう記載も一切認めることはできない。 上記認定事実によれば、債権者製品は、本件発明の構成要件A2、B、 Cによって規定される患者群(本件特定患者群)に投与するものとして承認申請がされているものとはいえない。 そうすると、債権者が、本件承認申請とは異なる用途で債権者製品をあえて販売等する蓋然性が認められる特段の事情があれ 者群(本件特定患者群)に投与するものとして承認申請がされているものとはいえない。 そうすると、債権者が、本件承認申請とは異なる用途で債権者製品をあえて販売等する蓋然性が認められる特段の事情があれば格別、本件全疎明資料によっても、当該特段の事情を明らかに認めるに足りない。 これらの事情の下においては、債権者による債権者製品の製造販売等は、専ら本件特定患者群に投与するために抗VEGF 剤を生産、使用、譲渡等をする行為とはいえず、本件特許権を侵害するものと認めるに足りない。 のみならず、仮に債権者製品が結果的に一定割合の本件特定患者群に 投与される可能性を理由として、債権者製品の製造販売等が本件特許権を侵害するという債務者の見解に立ったとしても、前記前提事実によれば、債権者製品は、債務者製品のバイオ後続品であって、債務者製品と同等性、同質性を有するものであり、かつ、債務者製品は、本件優先日よりも前の時点において製造販売されていたのであるから、債務者製品 についても、債権者製品と同様に、一定割合の本件特定患者群に投与されていたものと認められる。そうすると、債務者製品の製造販売は、特許法29条1項2号にいう公然実施に該当し、本件特許が無効にされるべきものであることは、自明である。 したがって、債務者において、債務者製品のバイオ後続品を製造販売 すれば、本件特許を侵害する旨の回答をした行為(本件告知)は、虚偽 の回答をしたものと認めるのが相当である。 これに対し、債務者は、現時点では債務者製品を本件特定患者群に投与すると優れた治療効果が得られることが技術常識になっていることを踏まえると、債務者製品と債権者製品に同等性、同質性があったとしても、技術常識の変遷により、本件優先日前の債務者製品に係る製 者群に投与すると優れた治療効果が得られることが技術常識になっていることを踏まえると、債務者製品と債権者製品に同等性、同質性があったとしても、技術常識の変遷により、本件優先日前の債務者製品に係る製造販売 は本件特許の公然実施に該当しない一方、現時点の債権者製品に係る製造販売は本件特許を充足する旨主張する。 しかしながら、本件全疎明資料をみても、債務者主張に係る技術常識の変遷を示すような診療ガイドライン等が存在すると認めるに足りる客観的な証拠はなく、債務者提出に係る眼科医の意見書(疎乙103ない し105)も、特定の医師の個人的見解の域を出るものではなく、上記にいう技術常識の変遷を認めるには明らかに足りない。 したがって、債務者の主張は、採用することができない。 ウ 「特段の事情」該当性(争点2-1-4関係)前記において認定したとおり、債務者が、債務者製品のバイオ後続品を 製造販売すれば、本件特許を侵害する旨の回答をした行為(本件告知)は、虚偽の回答をしたものと認めるのが相当である。 他方で、前記のとおり、パテントリンケージにおける医薬品特許情報報告票の提出は、厚労省等が後発医薬品の安定供給を確保し得るか否かの判断を行うための内部資料として提供するという位置付けのものであり、特 許抵触の有無に係る裁判所の判断が確定する前にこれとは異なる回答をすることが直ちに違法になるものではないことは、前記において説示したとおりである。 そして、前記前提事実及び本件明細書の記載によれば、先行バイオ医薬品(債務者製品)とバイオ後続品(債権者製品)が同一の適応症(wAMD) に係るものであり、かつ、先行バイオ医薬品とバイオ後続品に係る対象患 者群は、いずれも本件発明の対象患者群(本件特定患者群)を必然的に 品(債権者製品)が同一の適応症(wAMD) に係るものであり、かつ、先行バイオ医薬品とバイオ後続品に係る対象患 者群は、いずれも本件発明の対象患者群(本件特定患者群)を必然的に包含する関係にあるから、債権者製品の少なくとも一部は、本件特定患者群に使用されることが認められる。 そうすると、仮に用途発明の構成要件充足性に係る債務者の見解に立った場合には、これが独自見解であったとしても、本件特許権の侵害をいう ものとして主張としては一応成り立ち得るのであるから、これを直ちに排斥するような最高裁判例が未だ形成されていないことに鑑みると、債務者の上記見解が直ちに主張自体失当であるとまでいうことはできない。 仮に、債務者の充足性に係る見解に立った場合には、債務者は、本件優先日前の債務者製品に係る製造販売は本件特許の公然実施に該当しない一 方、その後の技術常識の変遷により、債権者製品に係る製造販売は本件特許を充足するに至ったと主張するのであるから、この場合には、上記技術常識の変遷が一応の中核的争点になる。この点については、当業者の専門的知見を踏まえた審理判断が必要不可欠であり、本案において主張立証を尽くした上、専門委員などを選任し専門的知見も踏まえるなど十分な審理 を尽くしていない段階において、債務者の上記主張が直ちに失当であるということはできない。のみならず、従前には、パテントリンケージにおける特許権者等の情報提供について、不競法の虚偽告知該当性が問題となった裁判例はなく、同種事例における裁判規範が示されていなかったのであり、しかも、本件特許権とそのバイオ後続品との関係については、世界各 国において同種の特許権侵害訴訟が提起されており、本件もそのグローバルな紛争の一環として位置付けられるので いなかったのであり、しかも、本件特許権とそのバイオ後続品との関係については、世界各 国において同種の特許権侵害訴訟が提起されており、本件もそのグローバルな紛争の一環として位置付けられるのであるから、債務者が、厚労省等に対し、自己の見解として本件告知をしたのにはやむを得ない側面があったともいえる。 これらの事情のほかに、本件に現れた諸事情を総合考慮すれば、債務者 が本件告知をした行為は軽率の誹りを免れないものの、今後も本件告知を 繰り返すような場合は格別、本件告知がパテントリンケージの趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものということはできず、前記特段の事情を認めることはできない。 したがって、債務者が本件告知をした行為は、不競法2条1項21号に掲げる不正競争に該当するものとはいえない。 これに対し、債権者は、債務者において本件優先日前から債権者製品と全く同一の債務者製品を製造販売しており、本件特許は、債務者製品により公然実施をされたものではないという前提でなければ成り立ち得ないはずであるから、債務者製品と同一である債権者製品の製造販売が本件特許の実施に当たることはあり得ず、現に厚労省等も、本件告知以前に、バイ エル薬品に対し、同様の見解を指摘していたのであるから、債務者は、債権者製品が有効な本件特許権を侵害するはずがないことは当然認識していたはずである旨主張する。 しかしながら、債務者が有効な本件特許権を侵害する理由として、用途発明の構成要件充足性に係る債務者の見解を一応示すとともに、公然実施 非該当性に係る技術常識の変遷を一応主張しているのであるから、現時点までの疎明資料によっては、債務者において債権者製品が有効な本件特許権を侵害するはずがないことを当然認識していたとまでは、 非該当性に係る技術常識の変遷を一応主張しているのであるから、現時点までの疎明資料によっては、債務者において債権者製品が有効な本件特許権を侵害するはずがないことを当然認識していたとまでは、必ずしもいうに足りず、上記に掲げた事情を総合考慮すれば、パテントリンケージ及び不競法の趣旨目的に照らし、前記特段の事情があるとまで認めることはで きない。 したがって、債権者の主張は、採用することができない。 3 以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、本件申立ては理由がないことに帰するが、本件の事案に鑑み、その余の争点についても、念のため、必要な限度で簡潔に以下判断を示す。 ⑴ 争点1-1(本件申立てが仮処分申立権の濫用に当たるか)について ア民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、当該訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起し たなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られる(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁参照)。この理は、仮処分申立てについても異なるものではない。 イこれを本件についてみると、前記2のとおり、債権者の主張は、特段の 事情を欠くものとして最終的には排斥されたものの、本件告知は虚偽であると認められたのであるから、債権者の主張した権利等が事実的、法律的根拠を欠くものと直ちにいうことはできず、本件申立てが民事保全制度の趣旨目的に照 して最終的には排斥されたものの、本件告知は虚偽であると認められたのであるから、債権者の主張した権利等が事実的、法律的根拠を欠くものと直ちにいうことはできず、本件申立てが民事保全制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものであると認めることはできない。 したがって、本件申立てが仮処分申立権の濫用に当たるということはできない。 ウこれに対し、債務者は、本件申立てが債権者製品についての製造販売承認を得ることを意図、目的としたものであり、その対象が公法上の紛争であるから、抗告訴訟等の公法上の紛争解決手段によるべきであり、民事保 全法に基づく仮処分の申立ては、不適法であると主張する。しかしながら、本件申立ては、債権者が不競法に基づき私人たる債務者による信用毀損行為の差止めを求めるものであるから、公法上の紛争とはいえず、債務者の主張は、その前提を欠く。したがって、債務者の主張は、採用することができない。 その他に、債務者の主張を改めて検討しても、債務者の主張は、本件申 立ての対象が公法上の紛争に係るというものに帰し、本件申立ての法的性質を正解するものとはいえず、いずれも採用の限りではない。 ⑵ 争点1-2(本件申立てが行訴法44条に反するか)について債務者は、本件申立ての対象が厚生労働大臣による債権者製品の製造販売承認に関する行政処分であり、最高裁平成24年2月9日第一小法廷判決及 び最高裁令和元年7月22日第一小法廷判決の趣旨に照らしても、本件申立てに係る本案の訴えは、無名抗告訴訟と位置付けられるから、本件申立ては、行訴法44条に反する旨主張する。 しかしながら、本件申立ては、債権者が不競法に基づき私人たる債務者による信用毀損行為の差止めを求めるものであり、これが認められたとしても るから、本件申立ては、行訴法44条に反する旨主張する。 しかしながら、本件申立ては、債権者が不競法に基づき私人たる債務者による信用毀損行為の差止めを求めるものであり、これが認められたとしても 債権者製品の製造販売の承認が直ちに義務付けられるものではなく、本件申立てが行政処分を対象とするものではないことは明らかである。また、本件申立ての本案も、上記差止めを求める民事訴訟であるから、上記と同様に、無名抗告訴訟と解することができないことは明らかである。 したがって、債務者の主張は、採用することができない。 ⑶ 争点1-3(本件申立てが最高裁判決の趣旨に反し不適法か)について債務者は、本件申立てが最高裁昭和56年12月16日大法廷判決の趣旨に照らして不適法である旨主張する。しかしながら、上記判決は、国に対する人格権又は環境権に基づく妨害排除又は妨害予防の請求内容が不可避的に行政権の行使の取消変更ないしその発動を求める請求を包含することを理由 として不適法であると判断したものである。これに対し、本件申立ては、債権者が不競法に基づき私人たる債務者による信用毀損行為の差止めを求めるものにすぎないから、行政権の行使の取消変更ないしその発動を求める請求を包含するものではなく、上記判決は、本件に適切ではない。 したがって、債務者の主張は、採用することはできない。 ⑷ 争点1-4(本件申立てが申立ての利益を欠くか)について 債務者は、債権者は承認申請に対して不作為の違法確認の訴えの提起や厚生労働大臣等に対する不服申立て等を行うなどの他の手段が取り得る以上、これらの手段を取らずに行った本件申立ては、申立ての利益を欠く旨主張する。しかしながら、本件申立ては、債権者が不競法に基づき私人たる債務者による信用毀 服申立て等を行うなどの他の手段が取り得る以上、これらの手段を取らずに行った本件申立ては、申立ての利益を欠く旨主張する。しかしながら、本件申立ては、債権者が不競法に基づき私人たる債務者による信用毀損行為の差止めを求めるものであるから、公法上の紛争ではな く、他の手段が取り得るとする債務者の主張は、その前提を欠く。 また、債務者は、TPP11協定第十八・五十三条第2項によれば、パテントリンケージは、司法上の手続以外の制度として、独立して採用、維持されるものであり、これをめぐる争訟も同制度の枠内で解決することが想定されているから、特許権者等による情報提供を仮処分によって差し止めるよう な事態は想定されていないと主張する。しかしながら、TPP11協定第十八・五十三条2項は、後発医薬品の承認時に有効特許を考慮する仕組みとして司法制度以外の制度を採用、維持することを規定するにとどまり、信用毀損の回復を趣旨目的とする不競法に基づく差止請求を提起することまでをも排除するものとはいえない。 したがって、債務者の主張は、いずれも採用することができない。 ⑸ その余の不正競争該当性に関する固有の争点(争点2-1-1、2-1-2、2-1-3)についてア争点2-1-1(「告知」に当たるか)について前記前提事実によれば、債権者と債務者とは、同じく製薬事業を行う会 社であり、債権者は、債務者の関連会社が販売する債務者製品の医薬品市場に参入するために、債権者製品を上市しようとしているのであるから、債権者と債務者は、需要者又は取引者を共通にするといえる。そうすると、債権者は、不競法2条1項21号にいう「競争関係にある他人」に該当する。 そして、不競法2条1項21号にいう「告知」とは、特定の人に対して 個別的 するといえる。そうすると、債権者は、不競法2条1項21号にいう「競争関係にある他人」に該当する。 そして、不競法2条1項21号にいう「告知」とは、特定の人に対して 個別的に伝達する行為をいうところ、前記前提事実によれば、債務者は、厚労省等の担当者に対し、債務者製品のバイオ後続品を承認及び製造販売すれば本件特許を侵害することになる旨を個別的に伝達していることが認められる。そうすると、本件告知は、同号にいう「告知」に当たるものと認められる。 これに対し、債務者は、同号にいう「告知」には「競争関係にある他人」が特定される必要があると主張する。 しかしながら、不競法2条1項21号は、競業者の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し又は流布する行為が、競業者を不利な立場に置き、自ら競争上有利な地位に立とうとするものであり、事業者間の公正な競争 を阻害することになるから、このような結果を防止し、事業者間の公正な競争を確保する観点から上記行為を不正競争の一類型と定めるものである。 そうすると、告知に当たり他人を明示しない場合であっても、当該告知の内容、業界内における周知の情報から、告知の相手方が当該他人を特定することができるときは、競業者間の公正な競争を阻害することになるこ とは明らかであり、同号にいう「告知」に該当するというべきである。 これを本件についてみると、前記前提事実に加え、疎明資料(疎乙59、96)及び審尋の全趣旨によれば、医薬品特許情報報告票は、先発医薬品に係る特許と後発医薬品との特許抵触の有無を判断するための内部資料として位置付けられており、債務者は、少なくとも、本件告知時において、 医薬品特許情報報告票の上記の意義に加え、債務者製品のバイオ後続品を開発している後発メーカーが複数 判断するための内部資料として位置付けられており、債務者は、少なくとも、本件告知時において、 医薬品特許情報報告票の上記の意義に加え、債務者製品のバイオ後続品を開発している後発メーカーが複数存在することを十分認識していたことが認められ、その他に本件告知の態様を踏まえると、債務者は、債務者製品に係るバイオ後続品を開発している後発メーカーを意図して本件告知を行ったものと認められる。他方、前記前提事実によれば、厚労省等は、本件 告知時において、既に本件承認申請を受けていたことが認められる。 上記認定事実によれば、厚労省等は、債務者において、債務者製品のバイオ後続品の承認申請を行う債権者を想定して本件告知を行っていることにつき、十分に理解することが可能であったといえる。そうすると、本件告知において必ずしも債権者又は債権者製品を明示していなかったとしても、本件告知の相手方である厚労省等において債権者又は債権者製品をい うものとして十分に特定できるのであるから、本件告知は、不競法2条1項21号にいう「告知」に該当するものといえる。 したがって、債務者の主張は、採用することができない。 イ争点2-1-2(「営業上の信用を害する」に当たるか)について前記前提事実及び別紙関係法令等の定めによれば、本件告知は、厚労省 等の担当者に対し、債務者製品のバイオ後続品が製造販売されれば本件特許を侵害する旨告知するものであること、二課長通知によれば、厚労省の基本的な方針は、医薬品の安定供給を図る観点から、先発医薬品の一部の効能・効果等に特許が存在する場合、特許が存在する効能・効果等については承認しないというものであること、以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば、本件告知は、厚労省等の担当者に対し、競争関 ・効果等に特許が存在する場合、特許が存在する効能・効果等については承認しないというものであること、以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば、本件告知は、厚労省等の担当者に対し、競争関係にある債務者が、債権者製品のバイオ後続品を製造販売する者が本件特許権を侵害するなどとして、当裁判所の判断とは異なる虚偽の見解を事前に告知したものであるから、特許権侵害の結果の重大性に鑑みると、債権者による債権者製品の安定供給に疑念を抱かせるものとして、営業上の信 用を害することは明らかである。 これに対し、債務者は、本件告知の相手方である厚労省等の担当者が医薬品の需要者や取引者ではないこと、厚労省等の担当者は守秘義務を負っており第三者に本件告知の内容が伝播するおそれはないこと、厚労省等の担当者は先発メーカー側からの情報提供のみに基づいて何らかの評価を行 うものではないことから、本件告知は、不競法2条1項21号にいう「営 業上の信用を害する」ものではないと主張する。しかしながら、本件告知は、虚偽告知をもって債権者による債権者製品の安定供給に疑念を抱かせるものであるから、特許権侵害の結果の重大性に鑑みると、営業上の信用を不当に害するものといえる。 したがって、債務者の主張は、採用することができない。 ウ争点2-1-3(虚偽の「事実」の告知に当たるか)について前記アのとおり、競争関係にある者が、競業者の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し又は流布する行為は、競業者を不利な立場に置き、自ら競争上有利な地位に立とうとするものであるから、公正な競争を阻害することになる。このような結果を防止し、事業者間の公正な競争を確保する観点か ら、不競法2条1項21号は、上記行為を不正競争の一類型と定めるものである とするものであるから、公正な競争を阻害することになる。このような結果を防止し、事業者間の公正な競争を確保する観点か ら、不競法2条1項21号は、上記行為を不正競争の一類型と定めるものである。そして、競争関係にある者において、知的財産権を侵害しないという裁判所の判断が示される前に、当該知的財産権を侵害する旨を事前に告知し又は流布する行為は、知的財産権侵害の結果の重大性に鑑みると、競業者の営業上の信用を害することによって、上記と同様に、公正な競争を阻害する ことは明らかである。 上記の同号に係る趣旨目的に鑑みると、法的な見解の表明それ自体は、意見ないし論評の表明に当たるものであるとしても(最高裁平成15年(受)第1793号、第1794号同16年7月15日第一小法廷判決・民集58巻5号1615頁参照)、上記行為は、不正競争の一類型に含まれると解す るのが相当である。 そうすると、競争関係にある者が、知的財産権を侵害しないという裁判所の判断が示される前に、当該知的財産権を侵害する旨を告知又は流布する行為は、同号にいう「虚偽の事実」の告知又は流布に該当するものと解するのが相当である。したがって、本件告知は、同号にいう「虚偽の事実」の告知 に該当するものといえる。 これに対し、債務者は、本件告知は一方当事者による法律上及び事実上の見解を述べたものであり、同号にいう「事実」には当たらないと主張する。 しかしながら、競争関係にある者が、知的財産権を侵害しないという裁判所の判断が示される前に、当該知的財産権を侵害する旨の見解を告知又は流布する行為は、競業者の営業上の信用を害することによって、公正な競争を阻 害することは明らかであるから、上記見解は、同号にいう「事実」に含まれると解するのが相当である。 旨の見解を告知又は流布する行為は、競業者の営業上の信用を害することによって、公正な競争を阻害することは明らかであるから、上記見解は、同号にいう「事実」に含まれると解するのが相当である。したがって、債務者の主張は、採用することができない。 第5 結論 よって、本件申立ては理由がないからこれを却下することとして、主文のとおり決定する。 令和6年10月28日 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 中島基至 裁判官 武富可南 裁判官 坂本達也 (別紙)当事者目録 債権者 サムスンバイオエピスカンパニーリミテッド 同代理人弁護士 大野聖二 同 多田宏文 同 盛田真智子 同復代理人弁理士 佐藤眞紀 同補佐人弁理士 大木信人 債務者 バイエル・ヘルスケア・エルエルシー 同代理人弁護士 阿部隆徳 同 落合馨 同 浦井久蔵 同補佐人弁理士 松井仁志 (別紙)医薬品目録 債権者の製造販売承認申請に係る医薬品であるアフリベルセプト硝子体内注射液40mg/mL「GRP」(「SB15」)以上 (別紙)特許権目録 1 特許番号 特許第7320919号 2 発明の名 フリベルセプト硝子体内注射液40mg/mL「GRP」(「SB15」)以上 (別紙)特許権目録 1 特許番号特許第7320919号 2 発明の名称小さい活動性脈絡膜新生血管病変を有する加齢黄斑変性症の治療 3 優先日平成26年(2014年)12月11日平成27年(2015年)9月9日 4 出願日平成27年(2015年)12月10日 5 登録日令和5年(2023年)7月27日以上 (別紙)債務者製品目録 1 販売名アイリーア硝子体内注射液40mg/mL 2 承認番号 22400AMX01389000 3 販売開始 2012年11月 4 添付文書の記載【効能又は効果】〇中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性〇網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫〇病的近視における脈絡膜新生血管 〇糖尿病黄斑浮腫〇血管新生緑内障〇未熟児網膜症【用法及び用量】<中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性> アフリベルセプト(遺伝子組換え)として2mg(0.05mL)を1カ月ごとに1回、連続3回(導入期)硝子体内投与する。その後の維持期においては、通常、2カ月ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調整するが、1カ月以上あけること。 <網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、病的近視における脈絡膜新生血管> (以下省略) 以上 (別紙)関係法令等の定め 1 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」という。)⑴ 医薬品、医薬部外品及び化粧品の製造販売の承認(14 (別紙)関係法令等の定め 1 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」という。)⑴ 医薬品、医薬部外品及び化粧品の製造販売の承認(14条) ア 1項医薬品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬品を除く。)、医薬部外品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬部外品を除く。)又は厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなけ ればならない。 イ 2項次の各号のいずれかに該当するときは、前項の承認は、与えない。 1号申請者が、第十二条第一項の許可(申請をした品目の種類に応じた許 可に限る。)を受けていないとき。 2号申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品を製造する製造所が、第十三条第一項の許可(申請をした品目について製造ができる区分に係るものに限る。)、第十三条の三第一項の認定(申請をした品目について製 造ができる区分に係るものに限る。)又は第十三条の二の二第一項若しくは前条第一項の登録を受けていないとき。 3号申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品の名称、成分、分量、用法、用量、効能、効果、副作用その他の品質、有効性及び安全性に関する事 項の審査の結果、その物が次のイからハまでのいずれかに該当するとき。 イ申請に係る医薬品又は医薬部外品が、その申請に係る効能又は効果を有すると認められないとき。 ロ申請に係る医薬品又は医薬部外品が、その効能又は効果に比して著しく有害な作用を有することにより、医薬品又は医薬部外品として使用価値がないと認められるとき。 ハイ又はロに掲げる場合のほか、医薬品、医薬部外品又は化 薬部外品が、その効能又は効果に比して著しく有害な作用を有することにより、医薬品又は医薬部外品として使用価値がないと認められるとき。 ハイ又はロに掲げる場合のほか、医薬品、医薬部外品又は化粧品として不適当なものとして厚生労働省令で定める場合に該当するとき。 4号申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品が政令で定めるものであるときは、その物の製造所における製造管理又は品質管理の方法が、厚生 労働省令で定める基準に適合していると認められないとき。 ウ 15項第一項の承認を受けた者は、当該品目について承認された事項の一部を変更しようとするとき(当該変更が厚生労働省令で定める軽微な変更であるときを除く。)は、その変更について厚生労働大臣の承認を受けなけれ ばならない。この場合においては、第二項から第七項まで及び第十項から前項までの規定を準用する。 エ 17項第一項及び第十五項の承認の申請(政令で定めるものを除く。)は、機構(裁判所注:独立行政法人医薬品医療機器総合機構)を経由して行うも のとする。 2 「承認審査に係る医薬品特許情報の取扱いについて」(平成6年10月4日付け薬審第762号厚生省薬務局審査課長通知をいい、以下「平成6年通知」という。)(疎乙8)医薬品の承認審査段階における特許情報の考慮については、平成5年5月 「21世紀の医薬品のあり方に関する懇談会」報告において提言があったと ころであるが、医薬品の安定供給を確保する観点から先発品と後発品との特許抵触の有無について確認するため、本年11月1日より下記により医療用医薬品に係る特許情報の収集等を行うこととしたので貴管下関係業者に対する指導方御配慮願いたい。 記 ⑴ 収集する特許情報の対象については、当面、既 るため、本年11月1日より下記により医療用医薬品に係る特許情報の収集等を行うこととしたので貴管下関係業者に対する指導方御配慮願いたい。 記 ⑴ 収集する特許情報の対象については、当面、既承認の医療用医薬品(体外診断用医薬品を除く。以下同じ。)の有効成分に係る物質特許(ただし、特許期間が満了しているものを除く。)についての情報とすること。 ⑵ 上記⑴に係る特許権者(特許出願人)又は当該特許に係る成分を有効成分として医薬品の承認を取得している者は、再審査の調査期間終了前(既に再 審査の調査期間が終了しているものであっても特許期間が満了していない場合には本年12月末日まで)に、別紙の医薬品特許情報報告票に必要事項を記入し、当課あて直接提出すること。ただし、提出は任意とし、一般には公開しないものとする。 ⑶ 新有効成分含有医薬品の再審査の調査期間終了後に同一有効成分の医療 用医薬品の製造(輸入)承認申請を行う者は、当該有効成分に係る物質特許の有無及び物質特許がある場合には承認後速やかに製造又は輸入販売できることを示す資料を添付すること。 3 「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取扱いについて」(平成21年6月5日医政経発第0605001号、薬食審 査発第0605014号厚生労働省医政局経済課長及び厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知、以下「二課長通知」という。)(疎乙7)医療用後発医薬品(以下、「後発医薬品」という)の薬事法上の承認審査に係る特許情報については、平成6年10月4日付け薬審第762号審査課長通知「承認審査に係る医薬品特許情報の取扱いについて」に示したとおり、医薬 品の安定供給を図る観点から、承認審査の中で、先発医薬品と後発医薬品との 特許抵触 審第762号審査課長通知「承認審査に係る医薬品特許情報の取扱いについて」に示したとおり、医薬 品の安定供給を図る観点から、承認審査の中で、先発医薬品と後発医薬品との 特許抵触の有無について確認を行っているところである。今般、後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取扱いについて、下記のとおり定めたので、貴管下関係事業者に対し指導方、よろしくお願いいたしたい。また、併せて、平成6年10月4日付け薬審第762号審査課長通知「承認審査に係る医薬品特許情報の取扱いについて」の一部改正を行うこととする。 記⑴ 後発医薬品の薬事法上の承認審査にあたっては次のとおり取り扱うこと。 なお、以下について、特許の存否は承認予定日で判断するものであること。 ア先発医薬品の有効成分に特許が存在することによって、当該有効成分の製造そのものができない場合には、後発医薬品を承認しないこと。 イ先発医薬品の一部の効能・効果、用法・用量(以下、「効能・効果等」という。)に特許が存在し、その他の効能・効果等を標ぼうする医薬品の製造が可能である場合については、後発医薬品を承認できることとすること。この場合、特許が存在する効能・効果等については承認しない方針であるので、後発医薬品の申請者は事前に十分確認を行うこと。 ウ (省略)⑵ 後発医薬品の薬価基準収載に当たり、特許に関する懸念がある品目については、従来、事前に当事者間で調整を行い、安定供給が可能と思われる品目についてのみ収載手続きをとるよう求めているところ(「後発医薬品の薬価基準への収載等について〔平成21年1月15日付け医政経発第01150 01号〕」参照)、上記⑴に係わらず、本件について引き続き遺漏ないよう対応すること。 ⑶ その他 ろ(「後発医薬品の薬価基準への収載等について〔平成21年1月15日付け医政経発第01150 01号〕」参照)、上記⑴に係わらず、本件について引き続き遺漏ないよう対応すること。 ⑶ その他ア (省略)イ平成6年10月4日付け薬審第762号審査課長通知「承認審査に係る 医薬品特許情報の取扱いについて」は以下のから(コ)のとおり改正する。 記の⑴及び⑶中の「物質特許」を「物質特許又は用途特許」とする。 記の⑵の「本年12月末日まで」、「当課あて直接」をそれぞれ「特許期間満了まで」、「独立行政法人医薬品医療機器総合機構一般薬等審査部あてに」とする。 (以下略) 4 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の当事国(日本国)及び同協定第一条1の環太平洋パートナーシップ協定(平成30年外務省告示第416号)⑴ 第十八・五十三条特定の医薬品の販売に関する措置 1 締約国は、医薬品の販売を承認する条件として、安全性及び有効性に関 する情報を最初に提出した者以外の者が、以前に承認された製品の安全性又は有効性に関する証拠又は情報(例えば、先行する販売承認であって、当該締約国によるもの又は他の国若しくは地域の領域におけるもの)に依拠することを認める場合には、次のものを定める。 (a) 当該最初に提出した者以外の者が当該承認された製品又はその承認 された使用の方法が請求の範囲に記載されている適用される特許の期間中に当該医薬品を販売しようとしていることについて、当該医薬品が販売される前に、特許権者(注)に通知し、又は特許権者が通知を受けられるようにする制度注 (省略) (b) 特許権者が、侵害しているとされる製品の販売(注)前に、(c)に規定する利用可能 れる前に、特許権者(注)に通知し、又は特許権者が通知を受けられるようにする制度注 (省略) (b) 特許権者が、侵害しているとされる製品の販売(注)前に、(c)に規定する利用可能な救済手段を求めるための十分な期間及び機会注 (省略)(c) 承認された医薬品又はその承認された使用の方法が請求の範囲に記載されている適用される特許の有効性又は侵害に関する紛争を適時に解 決するための手続(司法上又は行政上の手続等)及び迅速な救済措置(予 備的差止命令又はこれと同等の効果的な暫定措置等) 2 締約国は、1の規定の実施に代えて、特許権者若しくは販売承認の申請者により販売承認を行う当局に提出された特許に関連する情報に基づき又は販売承認を行う当局と特許官庁との間の直接の調整に基づき、当該特許権者の承諾又は黙認を得ない限り、請求の範囲に記載されている特許の対 象である医薬品を販売しようとする第三者に販売承認を与えない司法上の手続以外の制度を採用し、又は維持する。 以上
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