平成7(ワ)4179 中華航空エアバス式B1816機事故損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年12月26日 名古屋地方裁判所
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判決文本文301,122 文字)

主文 1 被告中華航空股ブン有限公司(以下「被告中華航空」という。)は,別紙「請求金額及び認容金額一覧表」の原告欄記載の各原告(ただし,原告A112,同A177,同A190及び同A200を除く。)に対し,各原告に対応する同表の認容金額欄記載の各金員及びこれに対する平成6年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告A112,同A177,同A190及び同A200を除くその余の原告らの被告中華航空に対するその余の請求を,いずれも棄却する。 3 原告A112,同A177,同A190及び同A200の被告中華航空に対する請求を,いずれも棄却する。 4 原告らの被告エアバス・ジー・アイ・イーに対する請求を,いずれも棄却する。 5 訴訟費用は,原告A112,同A177,同A190及び同A200に生じた費用を同原告らの負担とし,原告A112,同A177,同A190及び同A200を除くその余の原告らに生じた費用の12分の11を同原告らの負担とし,同原告らに生じたその余の費用及び被告中華航空に生じた費用の6分の1を被告中華航空の負担とし,被告中華航空に生じたその余の費用及び被告エアバス・ジー・アイ・イーに生じた費用を原告らの負担とする。 6 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告ら(1) 被告らは,連帯して,別紙「請求金額及び認容金額一覧表」の原告欄記載の各原告に対し,各原告に対応する同表の請求金額欄記載の各金員及びこれに対する平成6年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 被告中華航空(1) 本案前の答弁別紙「原告グループ一覧表」グループⅠないしⅢ記載の原告らの被告中華航空に対する訴えを 員を支払え。 (2) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 被告中華航空(1) 本案前の答弁別紙「原告グループ一覧表」グループⅠないしⅢ記載の原告らの被告中華航空に対する訴えをいずれも却下する。 (2) 本案の答弁ア原告らの被告中華航空に対する請求をいずれも棄却する。 イ訴訟費用は原告らの負担とする。 3 被告エアバス・ジー・アイ・イー(以下「被告エアバス」という。)(1) 本案前の答弁ア原告らの被告エアバスに対する訴えをいずれも却下する。 イ訴訟費用は原告らの負担とする。 (2) 本案の答弁ア原告らの被告エアバスに対する請求をいずれも棄却する。 イ訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 事案の概要本件は,被告エアバスが製造し,被告中華航空が所有・運航するA300B4-622R型B1816旅客機(以下「本件事故機」という。)が,平成6年4月26日,台北発名古屋行き中華航空140便として,乗客256名及び乗員15名を乗せて,目的地である名古屋空港への着陸降下中,同日午後8時15分45秒(日本標準時。以下,同様とする。)ころ,同空港誘導路付近着陸帯内に墜落して機体が大破し,乗客249名及び乗員15名が死亡し,乗客7名が負傷し,手荷物等が滅失した事故(以下「本件事故」という。)について,死亡した乗客及び乗員の遺族並びに生存被害者1名が原告として,本件事故機の運航者である被告中華航空に対し,国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(昭和28年条約第17号。なお,以下,同条約を改正する議定書(昭和42年条約第11号。以下「ヘーグ議定書」という。)により改正されたものを「改正ワルソー条約」と,改正前のものを「改正前ワルソー条約」といい,これらを併せて「ワルソー条約」という。)17条,18条による損害賠償請求権 以下「ヘーグ議定書」という。)により改正されたものを「改正ワルソー条約」と,改正前のものを「改正前ワルソー条約」といい,これらを併せて「ワルソー条約」という。)17条,18条による損害賠償請求権又は不法行為による損害賠償請求権に基づき,本件事故機の製造者である被告エアバスに対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,連帯して,本件事故によって生じた損害である別紙「請求金額及び認容金額一覧表」の請求金額欄記載の各金員及びこれに対する本件事故の日の翌日である平成6年4月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実等(争いのない事実のほかは,各項に掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によって認める。)(1) 当事者ア原告ら原告A236(原告番号339)は,本件事故機の乗客で,本件事故により負傷した者である。 原告A236を除くその余の原告らは,本件事故機の乗客又は乗員で本件事故により死亡した別紙「損害認定一覧表Ⅰ」及び別紙「損害認定一覧表Ⅱ」の各被害者欄記載の者(以下「被害者B1」等といい,対応する原告らの原告番号を付記する。)と同表続柄欄記載の続柄又は関係を有する者である。 そして,原告A236並びに別紙「損害認定一覧表Ⅱ」の被害者欄に記載の被害者ら及びその遺族である原告らは,いずれも台湾に生活の本拠を置く中国人である(以下,原告A236及び別紙「損害認定一覧表Ⅱ」の被害者欄に記載の被害者らを「台湾居住被害者」といい,これに対し,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」の被害者欄に記載の被害者らを「日本居住被害者」という。)。 (甲イ1~4の①-1・2,5の①-4,6~8の①-3,9~11の①-4,12~14の①-3,15~17の①-3,18・19の①-2,③,20~22の①-6,23~26の① 居住被害者」という。)。 (甲イ1~4の①-1・2,5の①-4,6~8の①-3,9~11の①-4,12~14の①-3,15~17の①-3,18・19の①-2,③,20~22の①-6,23~26の①-3,27~30の①-2,31~33の①-2・3,34・35の①,36~39の①-4,40~42の①-2,43~45の①-2,46~48の①-3,49~52の①-2,53~55の①-3,56~58の①-3,59・60の①-3,60~62の①-2・3,63~65の①-2,66~68の①-3,69~71の①-3,72~78の①-1~3・6・7,79~82の①-2・3,83~85の①-2,86~88の①-4,89~92の①-4,93・94の①-3,98~103の①-3,104・105の①-6,106~108の①-4,109~111の①-5,112・113の①-2・3,114~118の①-1・2,137~141の①-1・2,④-6,150~154の①-2,④-1,157・158の①,④-1,159・160の①,④-1,161・162の①-2,④-1,163~168の①-4,④-1,169の④-1・5・6,176~178の①,④-1・7,179~181の①,④-1,188・189の①,④-1,200・201の①-2,④-1,202~206の①-5,207~210の①-3,211~213の①-5,214・215の①-2,216・217の①-2,219~224の①-1・2,225~227の①-4,228・276の①-1・2,229・230の①-3,236・237の①,238・239の①-1,243・244の①-1,245の①-2,246・247の①,250~254の①-3~7,255~257の①-2,258・259の①,265・266の①-1,267~ ①,238・239の①-1,243・244の①-1,245の①-2,246・247の①,250~254の①-3~7,255~257の①-2,258・259の①,265・266の①-1,267~269の①-2,270~272の①,273~275の①-2・3,281~283の①-2,284・285の①-3,288~290の①-3,295の①-2,296~301の①-2,302・303の①-1・2,306・307の①-2,316~318の①-2・3,319・320の①-2,321の①-1,322・323の①,④-1,334~338の①の1~5・11,339の④-1)イ被告中華航空被告中華航空は,航空機による旅客運送を業とする台湾法人であり,日本においては,東京,名古屋などに営業所を有し,その旨の登記を経ている。 被告中華航空は,平成8年当時において,旅客便45便,貨物便1便を日本と台湾との間に就航させていた(甲8)。 ウ被告エアバス被告エアバスは,航空機の製造・販売を業とするフランス共和国(以下「フランス」という。)法人であり,世界最大手の民間航空機メーカーの一つであって,近年の世界の航空機についてのシェアは約30パーセントで,ボーイング社に次いでおり,その製造の航空機は,世界中の運航に供されている。被告エアバスが平成7年に引き渡した航空機に関する売上高は合計約96億ドルであった。(甲9,丙9)被告エアバスは,アジアの国々においても活発な営業活動を展開しており,平成8年当時のこの地域における売上は,被告エアバスの全体の売上の約4分の1にあたる(甲10)。 被告エアバスは,日本国内に営業所を有したことはないが,本件訴訟が提起された時点においては,被告エアバスの本社従業員1名が東京連絡事務所に駐在し,秘書1名が東京で雇用され,マーケ たる(甲10)。 被告エアバスは,日本国内に営業所を有したことはないが,本件訴訟が提起された時点においては,被告エアバスの本社従業員1名が東京連絡事務所に駐在し,秘書1名が東京で雇用され,マーケット情報の収集及び宣伝に従事していたものの,航空機の売買契約を締結する権限は付与されておらず,全ての売買契約はフランスにある本社によって締結されていた。その後,この連絡事務所は廃止され,現在,日本には被告エアバスの営業所も連絡事務所も存在しない。 日本において,被告エアバスの航空機は,昭和54年から平成7年までの間に,株式会社日本エアシステム(以下「日本エアシステム」という。)が31機(ただし,このうち7機は第三者からの中古機の購入),全日本空輸株式会社(以下「全日空」という。)が22機を購入している。 (2) 国際運送契約の締結等ア別紙「原告グループ一覧表」グループⅠ記載の原告ら(以下「グループⅠの原告ら」という。)に対応する各被害者(以下「グループⅠの被害者ら」という。)のうち,被害者B71(原告番号258・259)は,被告中華航空との間で,本件事故に先立ち,ドイツ連邦共和国(以下「ドイツ」という。)において,出発地及び到達地をフランクフルト,予定寄航地を台北及び名古屋とする有償の国際旅客運送契約を締結した。 その余のグループⅠの被害者らは,被告中華航空との間で,本件事故に先立ち,フィリピン共和国(以下「フィリピン」という。)において,いずれも出発地及び到達地をマニラ,予定寄航地を台北及び名古屋とする有償の国際旅客運送契約を締結した。 イ別紙「原告グループ一覧表」グループⅡ記載の原告ら(以下「グループⅡの原告ら」という。)に対応する各被害者(以下「グループⅡの被害者ら」という。なお,台湾居住被害者と同一である。)のうち,被害者B45(原 原告グループ一覧表」グループⅡ記載の原告ら(以下「グループⅡの原告ら」という。)に対応する各被害者(以下「グループⅡの被害者ら」という。なお,台湾居住被害者と同一である。)のうち,被害者B45(原告番号157・158)及び同B46(同159・160)を除く被害者らは,被告中華航空との間で,本件事故に先立ち,台湾において,出発地及び到達地をともに台北,高雄又は台南,予定寄航地を名古屋(又は名古屋及び東京)とする有償の国際旅客運送契約を締結した。 また,被害者B45及び同B46は,被告中華航空の従業員であり,本件事故の際,客室乗務員として本件事故機に乗務していた。 ウ別紙「原告グループ一覧表」グループⅢ記載の原告ら(以下「グループⅢの原告ら」という。)に対応する各被害者(以下「グループⅢの被害者ら」という。)は,被告中華航空との間で,本件事故に先立ち,①被害者B24(原告番号66~68),同B25(同69~71),同B60(同225~227)及びB69(同250~254)については,台湾において,出発地及び到達地をともに台北又は高雄,予定寄航地を名古屋(又は台北及び名古屋)とする有償の国際旅客運送契約を,②被害者B61(原告番号228)については,台湾において,出発地を台北,到達地を名古屋とする有償の国際旅客運送契約を,③被害者B64(原告番号236・237)及び同B65(同238・239)については,オーストラリア連邦(以下「オーストラリア」という。)又はタイ王国(以下「タイ」という。)において,出発地をバンコク,予定寄航地を台北,到達地を名古屋とする有償の国際旅客運送契約をそれぞれ締結した。 エ別紙「原告グループ一覧表」グループⅣ記載の原告ら(以下「グループⅣの原告ら」という。)に対応する各被害者(以下「グループⅣの被害者ら」とい 古屋とする有償の国際旅客運送契約をそれぞれ締結した。 エ別紙「原告グループ一覧表」グループⅣ記載の原告ら(以下「グループⅣの原告ら」という。)に対応する各被害者(以下「グループⅣの被害者ら」という。)は,被告中華航空との間で,本件事故に先立ち,日本において,出発地及び到達地をともに名古屋等の日本国内とし,予定寄航地を台北等の台湾内とする有償の国際旅客運送契約を締結した。 オワルソー条約は,1条1項において,ワルソー条約が航空機による有償の国際運送に適用される旨を定め,同条2項において,同条約にいう「国際運送」とは,当事者間の約定により出発地及び到達地が二つの締約国の領域にあるか,又は出発地及び到達地が同一の締約国の領域にあっても,予定寄航地がその締約国以外の国の領域である運送をいうものと定めている。そして,ヘーグ議定書は,18条において,出発地及び到達地が,同議定書の二つの当事国の領域にあるか,又は同議定書の単一の当事国の領域にありかつ予定寄航地が他の国の領域にあることを要件として,改正ワルソー条約を改正前ワルソー条約1条に定める国際運送に適用すると定めている。 そして,日本,ドイツ,フィリピン及び中国は,いずれも改正ワルソー条約締約国であるが,タイは,ワルソー条約を批准していない。 カワルソー条約は,17条において,「運送人は,旅客の死亡又は負傷その他の身体の障害の場合における損害については,その損害の原因となった事故が航空機上で生じ,又は乗降のための作業中に生じたものであるときは,責任を負う。」と定めるとともに,18条1項において,「運送人は,託送手荷物の破壊,滅失又はき損の場合における損害については,その損害の原因となった事故が航空運送中に生じたものであるときは,責任を負う。」と定めているが,22条において,旅客運送におい 運送人は,託送手荷物の破壊,滅失又はき損の場合における損害については,その損害の原因となった事故が航空運送中に生じたものであるときは,責任を負う。」と定めているが,22条において,旅客運送においては,各旅客についての運送人の責任は,25万フランの額を限度とする旨などを定めた(以下,同条を「責任制限規定」ともいう。)上,25条において,22条に定める責任の限度は,損害が,損害を生じさせる意図をもって又は無謀にかつ損害の生ずるおそれがあることを認識して行った運送人又はその使用人の作為又は不作為により生じたことが証明されたときは適用されない旨を定めている。 キ被告中華航空の運送約款には,「ワルソー条約が適用される国際運送ではない運送においては,損害を生じさせる意図をもって又は無謀にかつ損害の生ずるおそれがあることを認識して作為又は不作為がなされた場合を除き,被告中華航空の責任は,乗客が死亡又は重傷を負った場合については,その損害の程度に応じて,最低75万台湾元から最高150万台湾元に制限される。」旨が定められている。また,同約款には,「ワルソー条約の適用の有無にかかわらず,損害をもたらす意図をもって又は無謀にかつ損害が生ずるおそれがあることを知りながら行った行為又は不作為の場合を除いて,被告中華航空の責任は,委託手荷物の場合においては1kg当たり20米ドルに制限され,機内持込手荷物の場合においては乗客1人当たり400米ドルに制限される。荷物の重量が手荷物点検において記録されていない場合には,当該委託手荷物の総重量は,当該運送サービスのクラスにつき中華航空規則が定めるところにより適用される無料手荷物の割当重量を超えないものとみなす。」旨が定められている(乙21)。 (3) 本件事故の発生等ア事故の発生本件事故機は,平成6年4月26日 き中華航空規則が定めるところにより適用される無料手荷物の割当重量を超えないものとみなす。」旨が定められている(乙21)。 (3) 本件事故の発生等ア事故の発生本件事故機は,平成6年4月26日午後5時53分ころ,台北発名古屋行き中華航空140便として,乗客256名及び乗員15名(運航乗務員2名,客室乗務員13名)を乗せて台北国際空港を離陸し,名古屋空港に向けて飛行し,同日午後8時12分19秒には名古屋空港のアウターマーカーを通過し,同13分39秒には名古屋タワーから着陸許可が出され,名古屋空港滑走路34へILS(InstrumentLandingSystem-計器着陸装置)進入を続けていたところ,同15分4秒に気圧高度約500フィートから上昇に転じ,同15分11秒ころから急上昇を始め,同15分31秒に気圧高度約1730フィートに達した後,急降下し,同15分45秒ころ,名古屋空港の着陸帯内に墜落して機体が大破し,乗客249名及び乗員15名が死亡し,乗客7名が重傷を負った(甲1)。 イ本件事故機の飛行システムの概要(甲1)(ア) 航空機の飛行a 操縦輪航空機の水平飛行を維持し,上昇し,降下するためには,操縦士は,操縦輪を操作し,昇降舵(水平尾翼の後部にある翼面)を動かす。一定の速度の下では,航空機を上昇させるには操縦輪を引き,降下させるには操縦輪を押す。水平飛行中に速度が増加した場合には,航空機は上昇するので,安定した姿勢を保つためには操縦士は操縦輪を押さなければならない。 b 水平安定板航空機の飛行経路又は速度を修正し,その飛行状態を維持するためには,操縦士は,絶え間なく操縦輪を動かす必要があるが,これを不要とするのがトリムである。トリムは,縦方向の第二のコントロールであって,いかなる状態の下でも操縦輪の力を漸次消去する 態を維持するためには,操縦士は,絶え間なく操縦輪を動かす必要があるが,これを不要とするのがトリムである。トリムは,縦方向の第二のコントロールであって,いかなる状態の下でも操縦輪の力を漸次消去する。トリム操作は,ピッチトリムコントロールスイッチ(以下「トリムスイッチ」という。)又はマニュアルピッチトリムコントロールホイール(以下「トリムホイール」という。)によって,水平安定板(水平尾翼の前部に位置)を手動で操作することによって行われる。 水平安定板の機械的な動作範囲は,機首上げ方向14度,機首下げ方向3度までに制限されており,水平安定板のコマンドは,機首上げ方向13度,機首下げ方向2度までに制限されている。 操縦士が操縦輪に絶え間なく力を加えなければならない場合には,航空機はアウトオブトリムの状態である。これは望ましくない状態であって,即刻イントリムの状態に正されなければならない。操縦士は,操縦輪の繰舵に要する力が無くなるまでトリムを操作する。これによって航空機はトリムされる。 c スラット及びフラップ航空機は,速度の作用により主翼に発生する揚力によって飛行するが,速度が低下し過ぎると,揚力が不十分となり,航空機は失速し,操縦士は航空機を制御できなくなり,航空機が墜落してしまうこととなる。このため,操縦士は,速度を監視し,これが低下し過ぎることのないように注意しなければならない。 特に,離着陸時には,低い高度を低速で飛行することとなるため,主翼の前縁及び後縁に設置されたスラット及びフラップが,連動して主翼を補助し,より高い揚力を発生させる。スラット及びフラップは,0/0,15/0,15/15,15/20,30/40の5段階が設けられ,1段階ずつ揚力を上げていく。 (イ) 本件事故機のコックピットの概要a 操縦席操縦席は2席あり,左側の席 ト及びフラップは,0/0,15/0,15/15,15/20,30/40の5段階が設けられ,1段階ずつ揚力を上げていく。 (イ) 本件事故機のコックピットの概要a 操縦席操縦席は2席あり,左側の席に機長が,右側の席に副操縦士が座る。 操縦席の前には,操縦輪があり,操縦輪には,トリムスイッチ及びオートパイロットディスコネクトプッシュボタンスイッチ(以下「オートパイロット解除ボタン」という。)が備え付けられている。 b センタペデスタル二つの操縦席の中間に設けられたセンタペデスタルには,機長用及び副操縦士用にそれぞれ,スロットル(スラストレバーともいう。エンジンの出力を手動で制御する。)及びスラット/フラップレバーが設置されるとともに,センタペデスタルの両側面にトリムホイールが設置されている。 スロットルには,赤い押しボタンのオートスロットルディスコネクトプッシュボタンスイッチ(以下「オートスロットル解除ボタン」という。)が付いている。また,スロットルには,その握りの下の位置に,ゴーレバーが組み込まれている。 c メイン計器パネル操縦席前面のメイン計器パネルは,中央パネル,機長用パネル,副操縦士用パネルに別れており,機長用パネルと副操縦士用パネルとは同じものである。 機長用パネル及び副操縦士用パネルには,それぞれ二つのディスプレイがあり,上の方がプライマリ・フライト・ディスプレイ(PFD-PrimaryFlightDisplay)である。 プライマリ・フライト・ディスプレイの上の部分は,フライトモード表示器(FMA-FlightModeAnnunciator)であり,左から右に5区画(以下「第1区画」などという。)に区切られ,それぞれ自動飛行システム(AFS-AutomaticFlightSystem)に関する情報を表示する。 d nciator)であり,左から右に5区画(以下「第1区画」などという。)に区切られ,それぞれ自動飛行システム(AFS-AutomaticFlightSystem)に関する情報を表示する。 d フライトコントロールユニット(FCU-FlightControlUnit)メイン計器パネルの上部に設置されているフライトコントロールユニットには,オートパイロットエンゲージレバー(以下「オートパイロット接続レバー」という。)のほか,自動飛行システムの様々なフライトモードを接続するためのスイッチが設けられている。 (ウ) 本件事故機の自動飛行システムa 本件事故機の自動飛行システムは,離陸から着陸までの全ての飛行段階で最適の飛行状況を実現し,操縦士を助けて,安全に飛行させることを目的として設計されている。 主な機能としては,飛行制御コンピューター(FCC-FlightControlComputer)の制御するオートパイロット/フライトディレクター・システム,推力制御コンピューター(TCC-ThrustControlComputer)の制御するオートスロットルシステム(ATS-Auto-ThrottleSystem),飛行増強コンピューター(FAC-FlightAugmentationComputer)の制御するオートトリム及び安全装置等が挙げられる。 b オートパイロット/フライトディレクター・システムオートパイロットは,フライトディレクター(FlightDirector-飛行指示器)で選択されたフライトモードに従い,航空機を自動制御する(なお,オートパイロットのモードには,CMD(Command)とCWS(ControlWheelSteering)があるが,以下,特に示さない限りCMDのモードに接続された場合をいう。)。 オ (なお,オートパイロットのモードには,CMD(Command)とCWS(ControlWheelSteering)があるが,以下,特に示さない限りCMDのモードに接続された場合をいう。)。 オートパイロットは,オートパイロット接続レバーをオンにすることで接続できる。また,オートパイロット接続レバーをオフにするか,オートパイロット解除ボタンを押すことにより解除される。フライトモード表示器の第5区画に,オートパイロットが接続されているか否かが表示される。 フライトディレクターは,指示されたフライトモードに応じて,命令を与える。オートパイロットに接続中は,この命令に従い,航空機が自動制御されるが,操縦士による手動操縦の場合も,この命令に従って操縦することができる。 フライトモードの選択は,フライトコントロールユニット上の該当するスイッチで行い,選択されたモードは,フライトモード表示器に表示される。フライトモードには,例えば,以下のものがある。 (a) ランドモード(着陸モード)ランドモードは,進入(approch)飛行経路を飛行するための命令を与える(なお,ランドモードにはLANDTrackフェーズ等のフェーズがあるが,以下,特に示さない限りLANDTrackフェーズをいう。)。 一定の条件下で,フライトコントロールユニット上のランドボタンを押すと,ランドモードに接続される。フライトモード表示器には,第2区画(縦方向モードを表示)と第3区画(横方向モードを表示)の両区画一杯に「LAND」と表示される。 ランドモードを解除するには,ゴーアラウンドモードを選択する方法等がある。 (b) ゴーアラウンドモード(着陸やり直しモード)ゴーアラウンドモードは,進入を中止して上昇するための命令を与える。 ゴーレバーを押すと,ゴーアラウンドモードに接続される ドを選択する方法等がある。 (b) ゴーアラウンドモード(着陸やり直しモード)ゴーアラウンドモードは,進入を中止して上昇するための命令を与える。 ゴーレバーを押すと,ゴーアラウンドモードに接続される。フライトモード表示器には,第2,第3区画一杯に「GOAROUND」と表示される。 ゴーアラウンドモードは,ランドモードを除く他の縦方向のモード及び横方向のモードを接続することにより解除されるが,ゴーアラウンドモードから直接ランドモードに接続することはできない。ゴーアラウンドモードからランドモードに切り替えるためには,まず,縦方向のモード及び横方向のモードをいずれも他のモードに接続した上で,その後に,ランドモードに接続する必要がある。 c オートスロットルシステムオートスロットルシステムは,操縦士により選択された安定した値の速度又はある段階の飛行に必要なエンジン出力を,自動的に保ち又は制御する。 フライトモード表示器の第1区画に,エンジン出力が手動でコントロールされているか自動であるか,自動の場合にはその作動中のモードが表示される。 操縦士は,スロットルに軽く力を加えることによりエンジンごとに手動でオートスロットルをオーバーライドしてエンジン出力を操作できる。また,オートスロットル解除ボタンを押すことにより,オートスロットルシステムを解除し,エンジン出力を手動で制御することができる。 d オートトリムオートパイロットが作動中は,オートパイロットが絶え間なくトリムを行い,トリムスイッチは作動しない。しかし,この場合もトリムホイールは作動し,操縦士がトリムホイールを動かすことにより,オートトリムはオーバーライドされる。 e 安全装置本件事故機には,アルファフロア(ALPHAFLOOR)と呼ばれる安全装置が備え付けられている。これは,低い対気速度が ホイールを動かすことにより,オートトリムはオーバーライドされる。 e 安全装置本件事故機には,アルファフロア(ALPHAFLOOR)と呼ばれる安全装置が備え付けられている。これは,低い対気速度が感知された場合に,オートスロットルが最大出力を命令し,失速を防止する機能である。アルファフロア機能が作動すると,フライトモード表示器の第1区画に,スラストがラッチされたことを示す「THR/L」の表示が出される。 f 操縦輪によるオーバーライド(a) オートパイロットがランドモード及びゴーアラウンドモード以外のいずれかのモードに接続されている場合,操縦士が操縦輪に縦方向(ピッチ方向ともいう。 機首の上下方向を意味する。)に大きな力を加えると,操縦士の操作力が15kg以上の力になればオートパイロットは自動的に解除される。 しかし,ランドモードあるいはゴーアラウンドモードである場合,操縦士の操作力のいかんにかかわらずオートパイロットは自動的に解除されることはないが,操縦士が操縦輪に縦方向に大きな力を加えると,オートパイロットの昇降舵制御をオーバーライドすることができる。 この場合,例えばオートパイロットがゴーアラウンドモードであれば,操縦士が操縦輪を機首下げ方向に操作すると,オートパイロットのオートトリム機能は当該オートパイロットの目的に沿うべく水平安定板に対し機首上げ方向の作動を指令することになる。 運航マニュアルは,オーバーライド機能は,オートパイロットの異常作動に対して操縦士を保護するために備えられたものであるとする一方で,ランドモード及びゴーアラウンドモードで操縦士がオートパイロットに対抗した操縦輪の操作を行うと,オートパイロットは昇降舵の動きに対抗して水平安定板を飛行経路を維持するように作動させ,アウトオブトリムの状態になり,危険な状態に陥る モードで操縦士がオートパイロットに対抗した操縦輪の操作を行うと,オートパイロットは昇降舵の動きに対抗して水平安定板を飛行経路を維持するように作動させ,アウトオブトリムの状態になり,危険な状態に陥る恐れがあるとして,その旨の注意を喚起している。 (b) 本件事故機の属するA300-600型機は,機体開発時においては,全てのモードにおいて,操縦輪に縦方向に力を加えてもオートパイロットは解除されない構造になっていた。 その後,1988年(昭和63年)3月に,ランドモード及びゴーアラウンドモード以外のモードにおいては,高度に関わりなく縦方向に15kg以上の力を加えることによりオートパイロットが解除され,ランドモードにおいては,高度400フィート以上であれば,同様の方法で解除されることとする改修策(MOD-Modification)7187が設けられ,これにより改修が行われた。 その後,1993年(平成5年)6月に,技術通報(SB-ServiceBulletin)6021により,さらに,高度400フィート以上であれば,ゴーアラウンドモードの場合でも,縦方向に15kg以上の力を加えることによりオートパイロットが解除されるという改修が行われることとなった。 しかし,本件事故機は,上記技術通報6021による改修が行われていなかったため,ゴーアラウンドモードの場合,縦方向に力を加えることでは,オートパイロットは切断されない構造になっていた。 ウ本件事故の原因本件事故機は,副操縦士が操縦して,着陸態勢をとり手動操縦により正常にILSによる進入を続けていたが,高度約1100フィートを通過したころ,ゴーレバーが押され,ゴーアラウンドモードとなってエンジン推力が増加したため,着陸進入路から上方に離脱し,着陸降下角を外れた。 副操縦士は,高くなった降下経路を修正 約1100フィートを通過したころ,ゴーレバーが押され,ゴーアラウンドモードとなってエンジン推力が増加したため,着陸進入路から上方に離脱し,着陸降下角を外れた。 副操縦士は,高くなった降下経路を修正しようとし,オートスロットルシステムを解除して,手動操縦が可能な状態とした。このころ,オートパイロットが接続されたが,ゴーアラウンドモードとなっていたため,オートパイロットはゴーアラウンドモードでの作動となった。 副操縦士は,操縦輪を押し,昇降舵を作動させて,機首下げの操作を行った。しかし,オートパイロットは,ゴーアラウンドモードの実行のため水平安定板を機首上げの状態に作動させた。このような状態が30秒以上継続した後,機長は着陸態勢の続行を断念し,ゴーアラウンドを決意して,エンジン推力を増加させて機体の上昇を図った。しかし,この時点では,ほぼ限界に達していた水平安定板の機首上げ方向の動きが,このエンジンの推力と合体することになり,機体の迎え角を急激に増加させ,その結果,機体は失速し,墜落するに至った。 エ本件事故機の機長及び副操縦士(以下「本件乗員ら」という。)の飛行経歴等(ア) 機長の飛行経歴機長は,1989年(平成元年)2月1日,被告中華航空に入社した。 入社以前は,台湾空軍の操縦士として1970年(昭和45年)9月から1989年(平成元年)1月まで勤務し,C-47型機等で4826時間30分飛行している。 入社後は,B747-200型機,B747-400型機の副操縦士(飛行時間はそれぞれ,668時間35分,1494時間47分)を経て,被告中華航空においてA300-600R型機の機長昇格訓練(飛行時間260時間53分)を受け,1992年(平成4年)7月31日に機長検定証を取得し,同年12月1日に被告中華航空のA300-600R型機の機長に昇 おいてA300-600R型機の機長昇格訓練(飛行時間260時間53分)を受け,1992年(平成4年)7月31日に機長検定証を取得し,同年12月1日に被告中華航空のA300-600R型機の機長に昇格した(事故前日の4月25日までの飛行時間1089時間34分)ものであり,総飛行時間は8340時間19分,被告中華航空入社後の飛行時間は3513時間49分,A300-600R型機での飛行時間は1350時間27分であった。 (イ) 副操縦士の飛行経歴副操縦士は,1990年(平成2年)4月16日,被告中華航空に操縦要員の学生として入社した。 その後,自社養成でアメリカ合衆国(以下「アメリカ」という。)にあるノースダコタ大学において1991年(平成3年)8月4日から1992年(平成4年)8月30日までの間C-90A型機,C-1900型機などで590時間12分訓練を受け,事業用操縦士の資格を取得した。 A300-600R型機については,フランスのアエロフォーメーション社(被告中華航空から訓練の委託を受けた被告エアバスが再委託)において地上学科,シミュレーターによる訓練及び実飛行時間3時間の訓練を受けた。 その後,台湾において基本飛行4時間の訓練を受けて,1992年(平成4年)12月29日に副操縦士の検定証を取得し,1993年(平成5年)3月22日にA300-600R型機の副操縦士に昇格し,事故前日の4月25日までの飛行時間は1033時間59分であった。 (ウ) 被告中華航空においては,台湾の法規等に基づき,社内規程を整備し,資格・昇格の要件を定めており,機長,副操縦士とも当該型式の機長,副操縦士としての資格要件を充たしていた。 オ本件事故当時の気象(ア) 平成6年4月26日午前11時名古屋地方気象台発表の中部地方の気象概況は,「朝鮮半島と東シナ海に 副操縦士とも当該型式の機長,副操縦士としての資格要件を充たしていた。 オ本件事故当時の気象(ア) 平成6年4月26日午前11時名古屋地方気象台発表の中部地方の気象概況は,「朝鮮半島と東シナ海に中心をもつ高気圧が日本付近を覆っている一方,日本の南海上には低気圧を伴う前線が停滞しており,北海道の北東海上には低気圧がある。このため,東日本の太平洋側の地方と北日本で曇っているほかは,ほぼ全国的に晴れている。東海・北陸ともに良く晴れており,気温が高くなっている。」というものであった。 (イ) 気象庁名古屋空港測候所の本件事故当時の定時及び特別観測値によれば,午後7時30分は風向280度,風速10ノット,午後8時は風向280度,風速8ノット,午後8時19分は風向280度,風速6ノット,午後8時30分は風向280度,風速7ノットであった。 (4) 事故後の状況ア見舞金等の受領(ア) 被告中華航空は,本件事故の見舞金等として,被害者の相続人ら及び原告A236に対して,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅰ」及び「原告主張損害額一覧表Ⅱ」の各既受領額欄記載の金員を支払った。 (イ) 以下の被害者の遺族に対しては,労働者災害補償保険法に基づいて,以下のとおり,遺族補償年金等が支払われた。 被害者B25(原告番号69~71) 765万9874円同B67(同245) 1413万4040円同B68(同246・247) 826万8680円同B74(同270~272) 968万2870円同B80(同296~301) 1012万7600円同B83(同316~318) 775万0590円(ウ) 以下の被害者の遺族に対しては,以下の金員が支払われた。 a 被害者B45(原告番号157・158)従業員団体傷害・死亡保 600円同B83(同316~318) 775万0590円(ウ) 以下の被害者の遺族に対しては,以下の金員が支払われた。 a 被害者B45(原告番号157・158)従業員団体傷害・死亡保険保険金 200万台湾元b 被害者B46(原告番号159・160)葬儀費用 30万台湾元弔慰金 10万台湾元労災保険による死亡補償金 149万8500台湾元従業員団体傷害・死亡保険保険金 200万台湾元乗務員団体傷害保険保険金 5万米ドルイグループⅣの原告らの被告中華航空に対する訴えにつき,被告中華航空は,管轄違いの抗弁を提出することなく,平成7年(ワ)第4179号事件につき平成8年7月8日の口頭弁論期日において同日付けの答弁書を,平成8年(ワ)第1423号事件につき平成9年12月22日の口頭弁論期日において同年11月17日付けの答弁書をそれぞれ陳述して,本案について弁論を行った。 2 争点(1) グループⅠないしⅢの原告らの被告中華航空に対する訴えの国際裁判管轄の有無(被告中華航空の本案前の主張)ア原告らの主張(ア) 国際裁判管轄の法理日本の国際裁判管轄の決定に当たっては,国際裁判管轄を直接規定する法規もなく,また,よるべき条約も一般に承認された明確な国際法上の原則もいまだ確立していない現状のもとにおいては,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念により条理に従って決定するのが相当であり,日本の民訴法の国内の土地管轄に関する規定,たとえば,被告の居所(平成8年6月26日法律第109号による改正前の民事訴訟法(以下「旧民訴法」という。)2条(民訴法4条2項)),法人その他の団体の事務所又は営業所(旧民訴法4条(民訴法 る規定,たとえば,被告の居所(平成8年6月26日法律第109号による改正前の民事訴訟法(以下「旧民訴法」という。)2条(民訴法4条2項)),法人その他の団体の事務所又は営業所(旧民訴法4条(民訴法4条4項)),不法行為地(旧民訴法15条(民訴法5条9号)),その他民訴法の規定する裁判籍のいずれかが日本国内にあるときは,これらに関する訴訟事件につき,被告を日本の裁判権に服させるのが上記条理にかなうものというべきであるとするのが確立された判例法理である(最高裁昭和56年10月16日判決・民集35巻7号1224頁,以下「マレーシア航空事件判決」という。)。この立場は,条理の内容として民訴法上の土地管轄の規定を取り込むとの立場を示したものである(逆推知説あるいは新逆推知説)。 この法理を本件に当てはめるならば,以下のとおり,グループⅠないしⅢの原告らの本件訴えについては,いずれも,民訴法上の土地管轄規定によって裁判籍が日本国内のいずれかの地にあるとされるので,日本の裁判所は国際裁判管轄を有することとなる。 (イ) グループⅠの原告らの訴えについてa グループⅠの原告ら(以下,(イ)項においては,単に「原告ら」ともいう。)の訴えについては,グループⅣの原告らの訴えとの併合管轄が認められるから,日本の裁判所に国際裁判管轄が認められると解すべきである。 これに対し,被告中華航空は,グループⅠの被害者らと締結した運送契約は,ワルソー条約にいう「国際運送」であるから,グループⅠの原告らの訴えについてはワルソー条約28条1項が適用されるところ,同項所定の4つの裁判地である「運送人住所地」,「運送人の主たる営業所所在地」,「運送契約締結地」及び「到達地」のいずれも日本国内にはないとして,日本の裁判所には国際裁判管轄はないと争っている。 しかし,ワルソー条約 地である「運送人住所地」,「運送人の主たる営業所所在地」,「運送契約締結地」及び「到達地」のいずれも日本国内にはないとして,日本の裁判所には国際裁判管轄はないと争っている。 しかし,ワルソー条約28条1項は,以下のとおり,国際裁判管轄の法理により併合管轄が認められる場合の,その訴訟についてまで提訴を禁止しているものとは解されない。 b すなわち,ワルソー条約は,航空運送事業の揺籃期であった1929年(昭和4年)に,航空運送人の保護を目的として,極めて低額な責任限度額を定める(ワルソー条約22条)とともに,事故発生地を管轄原因とする裁判を排除して,同条約の定める4つの裁判地に訴訟を限定させよう(同条約28条)としたものである。 しかし,ワルソー条約制定後70年を経過しようという今日では,航空運送事業は,他の輸送手段を凌駕する大事業へと成長を遂げ,その巨大化と地球規模での事業活動,航空路線とこれに伴う支店・営業所の世界的組織化,航空機の性能の向上による事故率の著しい低下,保険事業の発達による航空運送業の危険の分散の向上,利用者の飛躍的拡大等により,ワルソー条約の政策的妥当性はその基礎を根本的に喪失しており,責任限度額の条項とともに裁判地制限条項もまた,被害者遺族の救済に対して不当な足枷となっている。 被告中華航空は,年間売上1700億円を超え従業員8000人(1992年(平成4年)当時)を擁する世界的大企業であり,日本に乗り入れている外国航空事業者としては,アジア国際線においては,キャセイパシフィック航空に次ぐ第2位の発着便数を運行し,その数は全日空のアジア国際線便数の2倍を超えている(1993年(平成5年)当時)。また,その運行については,責任保険が付保されて危険の分散がはかられており,本件事故に関しても極めて巨額の責任保険が付保され 日空のアジア国際線便数の2倍を超えている(1993年(平成5年)当時)。また,その運行については,責任保険が付保されて危険の分散がはかられており,本件事故に関しても極めて巨額の責任保険が付保されている。 これに対して,本件事故の被害者又はその遺族である原告らは,被告中華航空,被告エアバスという巨大な資本力と資源を有する大企業を相手としての訴訟に踏み切るには,資力,資源ともに不十分であり,本件のように集団での提訴にして初めてこれが可能となった。本件の訴訟遂行のためには,事故原因の調査・証拠収集の作業を含めて多大な訴訟費用の負担が不可欠であり,少数の原告らでは到底負担できるものではないからである。 このような事実を考慮するならば,ワルソー条約28条の解釈に当たっても,今日の実情にできるだけ即した合理的な解釈によって真の公平を図る必要がある。 c 専属管轄性緩和の観点からワルソー条約28条1項をみると,同項は,同一の航空機事故により被害を被った遺族がある地の裁判所に提訴し,その地の裁判所の裁判権がワルソー条約により認められ,被告の応訴が避けられない場合であって,同じ地の裁判所に提訴するその他の遺族について国際裁判管轄の法理により併合管轄が認められる場合には,その裁判についてまで提訴を禁止しているものとは解されない。ワルソー条約の今日的意義とその背景にある世界的規模で事業を展開し各地に情報網と訴訟対応力を備えるに至った航空運送事業者の実情に照らせば,このような解釈が最も合理的である。 なぜなら,限定された提訴地の一つにおいて,現に他の遺族との関係でその地で訴訟が係属している限りは,被告中華航空にとって,これに応訴することは特別の追加負担にはならない。他方,原告らにマニラやフランクフルトでの提訴を強制することは,一旅客の遺族が受忍すべきものとして で訴訟が係属している限りは,被告中華航空にとって,これに応訴することは特別の追加負担にはならない。他方,原告らにマニラやフランクフルトでの提訴を強制することは,一旅客の遺族が受忍すべきものとしては甚だしい不合理を強いるものとなることは明らかである。 さらに,その場合,原告らは,被告エアバスを共同被告とすることができないため,国を異にする2か所で同時に訴訟を遂行しなければならないという著しい不合理が生ずることも明らかである(なお,現時点では,ワルソー条約上の除斥期間が徒過している。)。また,被告中華航空にとっても,同一の事故をめぐる同様の争点を有する訴訟について,むしろ提訴地が拡散・増加することになり,管轄地条項の趣旨にかえって反することになろう。 d 原告らは,ワルソー条約が国際的専属管轄を定めているということ自体に異議を唱えるものではない。しかし,国際的専属管轄といってもその性質は決して一義的ではない。例えば,不動産に関する訴訟では,その性質上不動産所在地国の裁判所に専属管轄が認められて,他国裁判所の裁判権は全く排除されており,当事者の意思によってもこれを変更できない。このような,いわば絶対的専属管轄の場合と比較すると,ワルソー条約28条1項は,4つの裁判地の中から選択できるとしている意味において,既に相対的な専属管轄規定である。 そして,この相対性は,ワルソー条約の解釈において応訴管轄や合意管轄が許容されることによりさらに強められているといえる。 ワルソー条約が,条約で定めた以外の裁判所に当事者の意思によって合意管轄や応訴管轄を生ぜしめることができるかという点は,解釈の分かれ得るところである。 しかし,ワルソー条約は運送人保護のために管轄を制限したのであるから,具体的事件において,運送人がこの利益を放棄することは自由なはずである。また とができるかという点は,解釈の分かれ得るところである。 しかし,ワルソー条約は運送人保護のために管轄を制限したのであるから,具体的事件において,運送人がこの利益を放棄することは自由なはずである。また,ワルソー条約32条は,運送契約の約款及び損害発生前の特約により裁判管轄に関する規則を変更することによってこの条約の規定に違反することを禁じているが,その文言上の反対解釈からも,損害発生後の問題である合意管轄や応訴管轄をワルソー条約が排除しているとみることには無理がある。さらに,ワルソー条約32条が同条に反する損害発生前の特約を無効とした趣旨は,損害発生前の特約ないし約款は,一般に運送人の一方的イニシアティブによって成立させられるので,被害者保護のためにその効力を否定したものと解される。この点,事後の合意管轄や応訴管轄は,むしろ被害者である原告のイニシアティブによって成立するものであるから,ワルソー条約32条の趣旨に即しても,合意管轄や応訴管轄は認められるべきことになるのである。 そして,本件において原告らが主張する原告の主観的併合による併合管轄も,応訴管轄・合意管轄と同様,28条1項において明文をもって禁止されているものではないという意味で,同条の専属管轄の相対性の表れの一つに属するものと解釈されねばならない。 e ワルソー条約の不当性は,責任制限にとどまらず管轄制限についても広く認識されており,1971年(昭和46年)3月8日に,グァテマラにおける外交会議で採択されたワルソー条約改定議定書(以下「グァテマラ議定書」という。)では,原告の便宜を図って原告の居住地を管轄原因と定め,IATA(国際航空運送協会)が1995年(平成7年)採択した「旅客責任に関する航空企業間協定」(以下「IATA協定」という。)及び1999年(平成11年)ICAO( て原告の居住地を管轄原因と定め,IATA(国際航空運送協会)が1995年(平成7年)採択した「旅客責任に関する航空企業間協定」(以下「IATA協定」という。)及び1999年(平成11年)ICAO(国際民間航空機構)の主催によりモントリオールで開催された国際航空法会議において成立した「国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約」(以下「モントリオール条約」という。)でも原告の居住地を第5の管轄原因として定めている。 このようにワルソー条約の管轄制限が不当であるとの国際的に確立している認識を反映させるべく解釈努力を行い,実定条項の趣旨に立ち返ってその趣旨に反しない限りで当該条項の妥当範囲を画するとの手法は,法律家の解釈態度として当然あるべきものである。 f なお,被告中華航空は,自己の主張を補強する外国裁判例として,アメリカのバッツ・ダフ対ブリティッシュエアウェイズ事件判決(以下「バッツ判決」という。)を援用する。 しかし,バッツ判決で争点となったのは,管轄条項における「到達地」の解釈のみであって,本件のような原告側の主観的併合による管轄の問題は一切争点になっていない。 さらに,バッツ判決は,実質的に見ても,アメリカの管轄を否定された乗客ダフは,頻繁にイギリスと行き来し,かえってアメリカにおける滞在期間の方が45日間以内という制約を受けていたのであって,本人にイギリスでの訴訟を強いても全く酷な事案ではなかったのである。これに対して,本件の原告らは,ドイツやフィリピンと全く関連がないか,あるいは少ないのであって,バッツ判決と全く事情が異なるのである。 (ウ) グループⅡ及びⅢの原告らの訴えについてa グループⅡの被害者ら(被害者B45(原告番号157・158)及び同B46(同159・160)を除く。)及びグループⅢの被害者らが被告中華航 ある。 (ウ) グループⅡ及びⅢの原告らの訴えについてa グループⅡの被害者ら(被害者B45(原告番号157・158)及び同B46(同159・160)を除く。)及びグループⅢの被害者らが被告中華航空と締結した運送契約は,ワルソー条約にいう国際運送ではなく,また,被害者B45及び同B46と被告中華航空との間に国際運送契約はないので,これらの者については,ワルソー条約28条は適用されず,国際裁判管轄の有無については,前記(ア)の判例法理に従って検討され,決定されることになる。 そして,これによれば,グループⅡ及びⅢの原告ら(以下,(ウ)項においては,単に「原告ら」ともいう。)の訴えについては,以下のとおり,日本の民訴法の規定する裁判籍が日本国内にあるから,日本に国際裁判管轄が存在するといえる。 (a) 被告の普通裁判籍(旧民訴法4条(民訴法4条4項))被告中華航空は,営業所登記をした営業所を名古屋市を含む日本国内各地に有しており,これら営業所は,外国人国際運送事業の許可において日本国内における主たる営業所(東京)及びその他の事業所として運輸大臣に申請されている(航空法129条,同法施行規則232条)。 したがって,同許可申請上の主たる営業所の所在地である東京は,旧民訴法4条の普通裁判籍所在地となり,日本の裁判所に国際裁判管轄が存するといえる。 (b) 営業所所在地(旧民訴法9条(民訴法5条5号))の特別裁判籍旧民訴法9条は,営業所所在地につき,当該営業所における業務に関連する訴えについて特別裁判籍を認めているところ,本件のような航空機事故による損害賠償請求においては,当該営業所の所在地が当該航空便の航行目的地(到達地あるいは寄航地)である場合には,業務関連性を認めるべきである。 なぜなら,日本における営業所の重要な業務の一つが,航空便の到着に伴 請求においては,当該営業所の所在地が当該航空便の航行目的地(到達地あるいは寄航地)である場合には,業務関連性を認めるべきである。 なぜなら,日本における営業所の重要な業務の一つが,航空便の到着に伴う旅客へのサービスの提供とその安全の確保にあるからである。 そして,本件において,被告中華航空は名古屋市に営業所を有しており,本件事故機の旅客運送の運航目的地は名古屋であったから,日本の裁判所には国際裁判管轄が存するといえる。 (c) 不法行為地(旧民訴法15条1項(民訴法5条9号))の特別裁判籍本件は,本件事故機が名古屋空港への着陸アプローチを開始した直後に発生したものであり,その原因の一つは被告中華航空の操縦士の誤った操縦にあったのであるから,名古屋地方裁判所が不法行為地を管轄する裁判所として国際裁判管轄を有する。 マレーシア航空事件判決も,国際裁判管轄が認められる場合として不法行為地を明示している。 (d) 原告の主観的併合旧民訴法上,原告の主観的併合については全面的にこれが認められていた。 被告中華航空としても,日本の裁判所で応訴せざるを得ない以上,他の原告らの訴えが併合されても応訴の負担が増大するということはないといってよい。むしろ,二つ以上の国における裁判所でそれぞれ事故原因を争わなければならない場合に比べて,応訴の負担は軽減されるともみられる。 (e) 被告の主観的併合旧民訴法上,被告側の主観的併合についても,同一の事実上法律上の原因に基づく請求である場合には認められていた。本件は,被告エアバスに対しては,後記のとおり不法行為地の特別裁判籍が日本国内に存する。したがって,同一の事実上法律上の原因に基づいて損害賠償請求がなされている被告中華航空に対しても,管轄原因が存するといえる。 b 特段の事情の存否について前記(ア)の判例法理 籍が日本国内に存する。したがって,同一の事実上法律上の原因に基づいて損害賠償請求がなされている被告中華航空に対しても,管轄原因が存するといえる。 b 特段の事情の存否について前記(ア)の判例法理のとおり,民訴法の土地管轄の規定による裁判籍が存在していれば,直ちにに日本の国際裁判管轄を認めるべきであるが,仮にこのような場合に,日本で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情の存否を考慮すべきであるとしても,本件においては,以下のとおり,このような特段の事情は認められず,むしろ,当事者間の公平,裁判の適正・迅速の点から,日本の国際裁判管轄を認めるべきことが明らかである。 (a) 当事者間の公平について被告エアバスに対する訴えと被告中華航空に対する訴えは,いずれも本件事故という同一事実を原因とするものである。そして,被告中華航空に対する訴えについて日本の裁判権を否定するとすれば,原告らは,被告エアバスに対する訴えとは別に,被告中華航空に対する訴えを,台湾に提起せざるを得ないことになる。しかし,同一事故を原因とする訴訟について別々に訴えを提起しなければならないとするのは,原告らにとって負担が著しく大きく,到底耐えられない。 これに対して,被告中華航空がこれらの原告らについて日本において応訴を余儀なくされることにより相応の負担を負わなければならないとしても,原告らの上記のような負担に比べれば,受忍すべき程度の不利益というべきである。 以上のとおり,当事者間の公平という観点からは,本件について日本の裁判所の裁判権を否定すべき特別の事情はない。 (b) 裁判の適正について本件審理では,被告中華航空と被告エアバスとの間で,原告らに対する責任の帰属を巡って対立が生じている。被告中華航空に対する請求と被告エアバスに 否定すべき特別の事情はない。 (b) 裁判の適正について本件審理では,被告中華航空と被告エアバスとの間で,原告らに対する責任の帰属を巡って対立が生じている。被告中華航空に対する請求と被告エアバスに対する請求とを別々の国に属する裁判所で審理した場合には,本件事故の発生及びその原因に対する各被告の責任の帰属と範囲について,各裁判所の判断に矛盾・抵触が生じるおそれがあり,原告らの請求の審理,被害の救済という観点からは,許されざることになる。本件が被告両社の共同不法行為によるものであるとの事実に照らせば,この点についての統一的判断は不可欠である。 そもそも,本件事故は日本において発生したものであり,証拠についても,事故調査委員会が日本に設けられ,同委員会の事故調査報告書が日本に存するほか,本件事故の原因態様に関する証拠のほとんど全ては日本に存在するものであり,本件事故の発生状況・被告中華航空の責任の程度について判断するうえで必要なことが予想される証拠のうち,台湾においてのみ取調べが可能であって原告らあるいは被告中華航空が日本の裁判所に提出できないような証拠は何ら存在しない。また,損害額のうち本件に固有の争点である航空機事故における恐怖等による慰謝料の算定のあり方は,全ての原告らに共通であり,日本で行う方が原告ら及び被告中華航空の双方にとって便宜である。 被告中華航空は,日本の裁判所においてグループⅡの原告らの本件訴えを審理した場合に,準拠法として台湾法の適用を主張する可能性を指摘するが,不法行為の準拠法は不法行為地法により,同法が,責任原因,損害賠償の事項全てを規律するというのが日本の法例の原則であるから,日本法がこれらを規律することとなる本件では,台湾法が適用されるという事態は想定できない。また,万一そのような事態があり得たと仮定しても,日 事項全てを規律するというのが日本の法例の原則であるから,日本法がこれらを規律することとなる本件では,台湾法が適用されるという事態は想定できない。また,万一そのような事態があり得たと仮定しても,日本の裁判所が台湾法を適正に適用することは困難ではない。 したがって,裁判の適正という観点からも,原告らについて日本の裁判所の国際裁判管轄を認めることは相当であり,被告エアバスに対する請求との統一的な判断を行うためには,日本の裁判所に裁判権を認めなければならない。 (c) 裁判の迅速について本件事故原因の審理については,裁判の迅速な遂行のためにも,被告中華航空及び被告エアバスを共同被告として審理を行うことが最も有効である。 損害立証についても,同一の証拠資料を用いることになる。 (d) なお,被告中華航空は,フォーラム・ノン・コンビニエンスの法理(不便宜法廷の法理)を持ち出すが,同法理は,法体系の異なるアメリカで発達したものであって,いわゆる最小接触理論やロング・アーム法により広がりすぎた法律上の裁判管轄を調整するために発達した法理なのである。 したがって,第1に,同法理は,法廷地裁判所の管轄の存在が前提となっているのであって,前提が異なる以上,同法理により管轄権の行使を放棄することは,アメリカと異なり,管轄を狭めすぎることになりかねない。また,第2に,同法理は法廷地裁判所での審理が不公正であるか著しく不便宜である場合に代替裁判地への事件の移送を行うとするものであるところ,本件では名古屋地方裁判所での審理が不公正であるか著しく不便宜であるという事情は存しない。 本件の主要な争点である事故原因と,損害額のうち本件に固有の争点である航空機事故における恐怖等による慰謝料の算定のあり方は,他の原告らと共通であり,同一の裁判で行う方が便宜である。そして,同法理 。 本件の主要な争点である事故原因と,損害額のうち本件に固有の争点である航空機事故における恐怖等による慰謝料の算定のあり方は,他の原告らと共通であり,同一の裁判で行う方が便宜である。そして,同法理においては,むしろ,原告らによる法廷地選択を重視し,その選択を尊重すべきとされており,これを否定するには代替裁判地に移送する強力な理由が必要なのである。本件にそのような強力な理由が存しないことはいうまでもない。 (e) また,被告中華航空は,本件事故機に乗員として搭乗して本件事故に遭った被害者B45(原告番号157・158)及び同B46(同159・160)については,被告中華航空との雇用契約における安全配慮義務の検討が必要となる可能性があるとして,台湾での審理が妥当であるとするが,本件訴訟における請求原因は不法行為であるから,この点においてこれらの原告らを他の原告らと区別すべき理由はない。 イ被告中華航空の主張(ア) グループⅠの原告らの訴えについてa グループⅠの被害者らは,日本以外の出発地より日本を予定寄航地として出発地と同一地である到達地への旅程の最中に本件事故に遭遇したものであるところ,改正ワルソー条約28条1項は,その適用のある国際運送に関する損害賠償請求の訴えの提起できる管轄地を「運送人の住所地」,「運送人の主たる営業所の所在地」若しくは「運送人が契約を締結した営業所の所在地」又は「到達地」の4箇所に限定しており,グループⅠの被害者らについては,「運送人の住所地」及び「運送人の主たる営業所の所在地」は台北,「運送人が契約を締結した営業所の所在地」及び「到達地」はマニラ又はフランクフルトであり,いずれも日本の裁判所の管轄地外であるから,グループⅠの原告ら(以下,(ア)項においては,単に「原告ら」ともいう。)は,日本において訴え の所在地」及び「到達地」はマニラ又はフランクフルトであり,いずれも日本の裁判所の管轄地外であるから,グループⅠの原告ら(以下,(ア)項においては,単に「原告ら」ともいう。)は,日本において訴えを提起する権利はなく,原告らの本件訴訟は,訴えの要件を欠くものといわざるを得ない。 b ワルソー条約28条1項の専属管轄性原告らは,グループⅣの原告らの請求との併合管轄を認めるべきであると主張する。 しかしながら,ワルソー条約28条1項は専属管轄を定めたものであり,同条により決定された裁判管轄以外の管轄を認めない趣旨であることは,その文言からして明らかであり,原告らもこれを明確に認めている。 そして,このように,国際裁判管轄の決定につき明確な基準を定める条約の拘束に日本が服している場合に,そのような拘束があってもなお,旧民訴法21条(民訴法7条)に基づく関連管轄による管轄権が日本の裁判所に与えられるかという点については,日本国憲法98条2項の趣旨から,条約と国内法とが抵触する場合は条約が優先することは,もはや争う余地のないところであり,関連管轄により管轄を与えるという国内法たる国際裁判管轄のルールは適用の余地が無いことは当然である。 アメリカのバッツ判決は,隣席したバッツとダフの2人のアメリカ人乗客がニューヨーク空港への着陸時に負傷した事故について,乗客バッツは,ロンドン発ニューヨーク行きの航空券を購入していたためにアメリカを到達地と認め,同国の裁判所に管轄を認める一方,乗客ダフは,ロンドン発ニューヨーク経由の往復航空券を購入したため,同人がバッツと同様アメリカペンシルバニア州の市民であり居住者であることを認めながらも,ロンドン発着ニューヨーク経由の航空券の往路のみに着目すれば到達地はニューヨークとみなすことができるという原告の主張を排斥した 様アメリカペンシルバニア州の市民であり居住者であることを認めながらも,ロンドン発着ニューヨーク経由の航空券の往路のみに着目すれば到達地はニューヨークとみなすことができるという原告の主張を排斥した上で,アメリカの裁判所の管轄は認められないとの判断を下している。このように,国際運送については,乗客ごとにその運航経路等に従って裁判管轄を決定するものであり,あくまで当該乗客について同条項を直接適用すべきものである。原告らの論法をもってすれば,当然に乗客ダフについても管轄が認められるべき事案ということになろうが,このような特異な解釈論は,この裁判ではおよそ問題にもならなかったのである。 以上のとおり,グループⅠの原告らの訴えについて,ワルソー条約28条により日本には管轄が認められないにもかかわらず,国内法のルールに従って関連管轄を認めることは,ワルソー条約28条に文理上明らかに抵触するものであって,条約が国内法に優先するとの原則からは関連管轄適用の余地はないということになる。 c また,原告らは,ワルソー条約28条により帰結される結果が不当であるという理由及びその解釈を同条が明文で禁じていないという理由で,その専属性を否定し,関連管轄を認めるべきであると主張する。 しかしながら,条約の解釈は,条約当事国の意思に適合するように条約の規定の意味と範囲を確定するものであり,その意思は,条約文に示された用語の自然又は通常の意味内容により客観的に解釈すべきであるというのが,国際判例上確立した解釈原則であり,日本も当事国である「条約法に関するウィーン条約」(以下「条約法条約」という。)31条の定めるところである。そして,用語の意味内容が不明確である場合には,当事国の意思に照らしその意味を確認するため,条約の準備作業,条約締結時の諸事情,条約締結後に条約の解釈 法条約」という。)31条の定めるところである。そして,用語の意味内容が不明確である場合には,当事国の意思に照らしその意味を確認するため,条約の準備作業,条約締結時の諸事情,条約締結後に条約の解釈,適用について当事国の間で行われた合意,慣行等を考慮することができると解されており,これも条約法条約31条及び32条に明文で採り入れられている。なお,条約法条約では,「用語の意味内容があいまい又は不明確である場合」に加え,「条約の解釈により明らかに常識に反した又は不合理な結果がもたらされる場合」を上記の各事情,つまり「解釈の補足的手段」を解釈上考慮し得る事由としている。 ワルソー条約28条が,各乗客につき同条に列挙した裁判所に限り裁判管轄を認め,それ以外の裁判管轄を認めないことは,その文言の意味内容から客観的に明らかであり,文言の意味内容から客観的に明らかである限りそれが条約当事国の意思である。 原告らの主張する上記理由が,百歩譲って,先ほど述べた「条約の解釈により常識に反した又は不合理な結果がもたらされる場合」あるいは「用語の意味内容が不明確である場合」に該当すると仮定しても,解釈の補足的手段といわれる条約の準備作業等を考慮する機縁にすぎず,かかる事由自体が条約の解釈そのものを左右することは,条約法条約の認めるところではない。 したがって,日本国憲法上,条約(ワルソー条約28条及び条約法条約の双方が含まれる。)が国内法に優先すると解される以上,ワルソー条約の裁判地制限が責任制限共々被害者に対する不当な足枷になっていることを理由に,条約の条項の意味を,国内法上のルールをもって根本的に変更することは,条約の解釈として到底許されるものではない。 d さらに,原告らは,ワルソー条約の管轄制限が不当であるとの認識が国際的に確立していることを示すものと ,国内法上のルールをもって根本的に変更することは,条約の解釈として到底許されるものではない。 d さらに,原告らは,ワルソー条約の管轄制限が不当であるとの認識が国際的に確立していることを示すものとして,グァテマラ議定書,IATA協定,モントリオール条約において,(航空会社が航空運送旅客業務を行なっている国のうちで)原告の居住地を第5の管轄原因として定めていることを挙げる。 しかし,これらは,ワルソー条約が原告の居住地の管轄を認めていないからこそ,この点を立法的に解決しようとしたのであり,グァテマラ議定書等がいわゆる第5の管轄を認めたからといって,それ以前の条約の内容が左右されることにはならない。 そもそも,ワルソー条約28条の管轄規定が不当な足枷となっていることが確立した国際的認識であるとの,原告らの事実認識自体が,以下のとおり誤っているものといえる。 まず,グァテマラ議定書では原告の居住地に裁判管轄が認められている。しかし,グァテマラ議定書は,150万フラン(1200万円相当額)の高い責任限度額を認め,かつ,その責任限度額には故意があっても破られることがないという絶対性を付与しており,これとの見返りで原告の住居地に裁判管轄を認めたものである。 また,IATA協定については,その内容そのものにおいて,原告の居住地に管轄が認められた事実はない。IATA協定は,補償的損害賠償の責任を制限することに主眼があり,この賠償を旅客の住所地法によって裁定することができるというにすぎず,管轄の問題は扱っていない。 さらに,モントリオール条約においては,原告らの主張するように,運送人が営業所を有する国に旅客が住所を有する場合,旅客が当該営業所で運送契約を締結しなかった場合でも,旅客の住所地において訴えを提起し得るものとされた。しかし,このことをもって,原告 するように,運送人が営業所を有する国に旅客が住所を有する場合,旅客が当該営業所で運送契約を締結しなかった場合でも,旅客の住所地において訴えを提起し得るものとされた。しかし,このことをもって,原告らのいう「ワルソー条約の管轄制限が不当であるとの国際的に確立している認識」などということはできない。上記管轄規定については,モントリオール条約が無制限の賠償責任を認めたことも相まって,発展途上国から強い反対があったのであり,これを強く主張したのは,どこで事故に遭おうとも旅客がその本国で訴訟を提起するようにするべきであるとかねがね唱えていたアメリカである。要するに,このような規定は,賠償水準の高い国では支持され,一方,賠償水準の低い国においては否定的に解されているのであり,これをもって,およそ「国際的に確立した認識」などというのは,事実に反している。現に,ワルソー条約やヘーグ議定書の加盟国(批准済の国である。)が120国を超えているのに,30国の批准をもって発効するとされているモントリオール条約は,今日でも批准数を満たすか否か(発効するか,しないか)という状況なのである。 以上のように,ワルソー条約28条の管轄規定は,運送人と旅客という当事者の訴訟遂行上の便宜,公平を図ったものであり,航空運送に関わる国際裁判管轄決定の指標となる「条理」を形成しているが,この条理のうちに,「被告の営業所が存在する場合の,原告の住所地」が含まれるか否かという点については,存在する条約の解釈としては勿論のこと,立法論のレベルですら,確立した国際認識は存在せず,むしろ現状ではこれに否定的なのである。 (イ) グループⅡの原告らの訴えについてa グループⅡの原告ら(以下,(イ)項では,単に「原告ら」ともいう。)及び被害者らは,いずれも台湾に居住していた中国人であり,被告 これに否定的なのである。 (イ) グループⅡの原告らの訴えについてa グループⅡの原告ら(以下,(イ)項では,単に「原告ら」ともいう。)及び被害者らは,いずれも台湾に居住していた中国人であり,被告中華航空は,台湾法によって設立を認められ,台湾の台北市内に本店を置く法人である。 台湾政府は,台湾及びその周辺諸島並びに同地域の居住者,滞在者を排他的,永続的に支配,統治しており,その憲法の下,立法・行政・司法の各制度が完備し,同地域の居住者,滞在者の権利擁護のための民事裁判制度が確立している。したがって,台湾居住者の権利に関する問題は,その裁判制度の下で解決されるべきものである。 他方,日本の裁判権は,その主権の一作用として行使されるものであり,裁判権の及ぶ範囲は原則として主権の及ぶ範囲と同一であるところ,原告ら及び被告中華航空には,台湾内の本支店に関する限り,専ら台湾の主権が及んでおり,日本の主権は関係するところではない。 よって,グループⅡの原告らの被告中華航空に対する訴えは,日本ではなく,台湾の裁判所において審理されるべきものであって,上記訴えは却下されるべきである。 b 仮に,原告らの主張するとおり,グループⅡの被害者らの運送契約については,ワルソー条約が適用されず,グループⅡの原告らの訴えにつき日本の裁判所に管轄を認めるべきかを,専ら国際的民事訴訟管轄の法理により決すべきであるとした場合でも,以下のとおり,日本には国際裁判管轄を認めることはできない。 なお,原告らは,マレーシア航空事件判決の文言に依拠し,民訴法の土地管轄の規定による裁判籍が存在しさえすれば,例外なく国際民事訴訟の管轄を肯定する立場(新逆推知説)を主張するが,このような硬直な判断あるいはマレーシア航空事件判決の皮相な理解は,同判決以前の最高裁判例も,また,同判決以降の日 在しさえすれば,例外なく国際民事訴訟の管轄を肯定する立場(新逆推知説)を主張するが,このような硬直な判断あるいはマレーシア航空事件判決の皮相な理解は,同判決以前の最高裁判例も,また,同判決以降の日本の下級審も行っていない。 現在の判例・通説の到達点は,最高裁平成9年11月11日判決(ジュリスト1133号182頁)が,「我が国の民訴法の規定する裁判籍のいずれかが我が国内にあるときは,原則として,我が国の裁判所に提起された訴訟事件につき,被告を我が国の裁判権に服させるのが相当であるが,我が国で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があると認められる場合には,我が国の裁判管轄を否定すべきである。」と明快に論じるとおりである。 c 次に,原告らが主張する管轄原因を根拠としては,日本の裁判所に国際管轄を認めることができないことは,以下のとおりである。 (a) 旧民訴法4条3項(民訴法4条5項)について原告らは,被告中華航空が東京,名古屋などに在日支店を有することを根拠として,旧民訴法4条3項の適用を主張する。 しかし,外国法人の在日支店の存在を理由に管轄の存在が認められるためには,当該支店と請求との業務関連性が必要であると解すべきである。マレーシア航空事件判決が,旧民訴法4条3項にいう営業所が日本にあるという一事をもって,同条項の適用を認めたことについては,ほとんどの学説が批判的であり,業務と無関係な従たる営業所の所在だけで管轄を肯定することは,当事者間の公平という訴訟法上の理念に反し,あるいは,日本における営業所等の業務と全く関連のない訴訟について,その応訴を強制することは,当事者間の公平に反する結果となる。 そして,グループⅡの原告らの訴えについて,上記業務関連性を認めることができないことは,後記 営業所等の業務と全く関連のない訴訟について,その応訴を強制することは,当事者間の公平に反する結果となる。 そして,グループⅡの原告らの訴えについて,上記業務関連性を認めることができないことは,後記(b)のとおりである。 (b) 旧民訴法9条(民訴法5条5号)について旧民訴法9条は,法人の事務所や営業所における業務に関するものに限って,その所在地においてこの法人に対し提訴し得ると規定するが,この業務関連性については,航空運送の場合,運送契約の締結,すなわち航空券の発券行為をもって,その営業所が当該航空運送にその業務として関与したというべきである。 そうすると,グループⅡの被害者らの運送契約はいずれも日本国外で締結されたものであるから,グループⅡの原告らの訴えは,被告中華航空在日支店の業務には関連性がないというべきであり,旧民訴法9条の適用を論ずる余地はない。 (c) 旧民訴法15条(民訴法5条9号)について旧民訴法15条が不法行為地に裁判管轄を認めた趣旨は,立証の便宜及び被害者が不法行為地に住んでいることが多く,その救済になるという2点があげられる。 ところが,国際線の航空機事故の場合,航空運送人は,事故が遠隔の地で,しかも裁判に対する信頼性の不明確な土地で応訴しなければならないという可能性がある一方,被害者が不法行為地に住んでいるというのは偶然であることが多く,また現在では,国際線の航空機の事故については,事故発生地の政府機関又は国際民間航空機構による事故原因に関する事故調査報告書が作成されることとなっており,原告はこれを証拠として利用することが可能であって,事故発生地が管轄原因となるべき必要性は,原告にとっても乏しいものといわざるを得ない。国際航空運送の統一ルールとして国際的に圧倒的な批准国数を誇るワルソー条約の管轄規定が不法行為地を認 能であって,事故発生地が管轄原因となるべき必要性は,原告にとっても乏しいものといわざるを得ない。国際航空運送の統一ルールとして国際的に圧倒的な批准国数を誇るワルソー条約の管轄規定が不法行為地を認めていないのも,上記の考え方を採用したものであり,これが,国際航空機事故に関する訴えに適用されるべき国際法上の原則であり条理であるというべきである。 したがって,マレーシア航空事件判決の一般論にもかかわらず,国際航空運送においては,不法行為地には,管轄は認められないというべきである。 現に,本件の審理においても,事故地である日本において「証拠収集の便宜」というメリットは全くなく,かえって,損害論について,台湾において収集すべき証拠が提出されないために,本件審理に甚だしい支障が生じているのが現実である。 (d) 主観的併合について主観的併合については,そもそもマレーシア航空事件判決の一般論においてすら明示的にはこれを認めていないのであって,判決の統一性の確保の要請より,無関係な国での訴訟を強いられる被告の保護を図るべき要請の方がより大きいと解される。 原告側の主観的併合については,台湾人乗客との関係に関し,被告中華航空の責任原因及び賠償額双方について台湾法及び同国の賠償実務の調査・検討及び同国内にある証拠の取調べを考慮せざるを得ないのであって,一般的に管轄が問題とされていない他の乗客の請求に比べて,被告中華航空及び裁判所の負担が大きくなることは否定すべくもないところである。 また,被告側の主観的併合の点については,相被告とされている被告エアバスと被告中華航空との間には何らの資本関係等はなく,日本の裁判例が関連請求にかかる特別裁判籍を肯定してきた例外的事例とは事案を大きく異にしており,このような場合に漫然と同一事故から発生した関連請求であるとして管 航空との間には何らの資本関係等はなく,日本の裁判例が関連請求にかかる特別裁判籍を肯定してきた例外的事例とは事案を大きく異にしており,このような場合に漫然と同一事故から発生した関連請求であるとして管轄を認めることは許されない。 この点について,東京高裁平成8年12月25日判決(高等裁判所民事判例集49巻3号109頁)は,「主観的併合の場合,国内裁判管轄については,旧民訴法59条前段(民訴法38条前段)の共同訴訟について旧民訴法21条(民訴法7条)の併合請求の裁判籍を認めるのが学説の多数であるが,国際裁判管轄に関しては,この基準をそのまま採用すべきではなく,当事者間の公平,裁判の迅速・適正の理念に合致する特段の事情がある場合でない限り,併合請求の裁判籍によって日本の裁判所に管轄を認めることはできないというべきである。」と判示している。したがって,原告らにおいて(通常とは異なり,管轄を基礎付けるための)「特段の事情」を主張・立証すべきところ,当事者間の公平,裁判の迅速・適正の理念に照らしてみても,このような事情は本件では見当たらない。 d 特段の事情の存在について仮に,グループⅡの原告らの訴えについて,日本の民訴法が土地管轄に関して規定する裁判籍のいずれかが日本国内にあると認められるとしても,日本の国際裁判管轄を否定すべき特段の事情が存するというべきことは,以下のとおりである。 (a) 当事者間の公平について〔1〕 まず,ワルソー条約28条1項の管轄制限は,国際航空という分野における実態を前提に,運送人,旅客双方の利害を調整した一つの条理というべきものであり,国際裁判管轄を決定するに当たり,十分考慮されるべきである。 また,当事者間の公平については,十分に準備して能動的な立場で訴えを提起する原告と,不意を突かれて防御に回る被告の立場の違いか ものであり,国際裁判管轄を決定するに当たり,十分考慮されるべきである。 また,当事者間の公平については,十分に準備して能動的な立場で訴えを提起する原告と,不意を突かれて防御に回る被告の立場の違いから,被告の生活・経済活動の本拠地での言語や司法制度に合わせることが合理的であり,原告への配慮は,他国で訴えを提起しなければならないという不利益によって裁判を断念させることのないようにとの観点から行うべきものである。 そして,本件において,グループⅡの原告らは,台湾において訴訟を提起することの方がより便利であり,かつ,何ら不利益は被らない。本来であれば,原告らは,自らも在住し,被告中華航空の本社所在地でもある台湾に,極めて容易に本件訴えを提訴できたのであって,この点はマレーシア航空事件の背景事情とは全く異なっている。時効に関しても,被告中華航空は,原告らの本訴の取下げ又は却下判決確定後6か月以内に原告らが台湾で訴訟を提起する場合には,時効の利益を放棄する旨を明らかにしており,何ら原告らに不利益とはならない。 また,原告らは,被告中華航空と専ら台湾において示談交渉をしていたのであるから,訴訟も台湾においてされるべきであって,従前の経緯と全く無関係な日本に突然訴えを提起すること自体不可解であり,仮にこれが,日本における賠償額が台湾のそれより高額であろうとの予想の下に,高額の賠償金を目指して訴えを提起したのであれば,それはいわゆるフォーラム・ショッピング(法廷地漁り)であり,当事者間の公平を害し,許されるべきではない。 〔2〕 原告らは,「一私人たる原告」と「大企業たる被告中華航空」という図式を殊更強調するが,現実には,原告らは,管轄の問題について,「一私人」であるが故の不利益を何ら被っていない。 また,原告らは,被告エアバスに対する裁判管轄が,日本には 企業たる被告中華航空」という図式を殊更強調するが,現実には,原告らは,管轄の問題について,「一私人」であるが故の不利益を何ら被っていない。 また,原告らは,被告エアバスに対する裁判管轄が,日本にはあるが,台湾にはないことを前提に,被告中華航空に対する訴えを台湾に提起せざるを得ないのは原告らにとって負担が著しく大きいと主張するが,被告中華航空がグループⅡの原告らを含む遺族と台湾において示談交渉し,示談が成立し,示談金を支払ってきた事実(原告らに対しても,台湾でかつ台湾通貨で仮払金が支払われている。),さらには,被告中華航空の準備書面の文言を原告らが誤解し,その削除を被告中華航空本社に直接申し出て,被告中華航空がこれに応じたという事実に照らせば,日本において,被告エアバスと被告中華航空を共同被告としなければ,原告らの救済が図れないという事案ではないことも明らかである。 (b) 裁判の適正・迅速について〔1〕 本件の重大な争点は,被告中華航空の責任の有無であり,被告中華航空の操縦士が誤った操縦をしたか否かであるところ,この点の主要な証拠方法は,被告中華航空の訓練体制に関するものとして,主としてその本社のある台北にあるというべきである。一方,少なくとも日本国内における本件事故の原因解明は,事故調査報告書の発表をもって完結し,一応の終結をみている。 また,損害についての証人,証拠も専ら台湾にあるというべきであり,しかも台湾と日本との間には司法共助もないことから,これらを日本の裁判所が調べることはできない。 そもそも,グループⅡの原告らは,台湾に居住しており,その提訴の便宜や,使用言語を含めた訴訟活動の充実という点からは,日本に訴訟の機会を求める理由は全くなく,台湾においてこれを行うことが妥当である。被告中華航空についても,台湾の方が充実した訴訟 り,その提訴の便宜や,使用言語を含めた訴訟活動の充実という点からは,日本に訴訟の機会を求める理由は全くなく,台湾においてこれを行うことが妥当である。被告中華航空についても,台湾の方が充実した訴訟活動が可能であることは疑いがない。 さらに,被告中華航空の運送約款の解釈,損害額の算定に当たって斟酌すべき台湾における賠償算定基準や賠償額の水準,相続の準拠法が台湾法となることなどからすると,日本において訴訟をした場合,日本の裁判所が過重な負担を負うこととなるというべきであって,台湾の裁判所においてより適確に判断されることはいうまでもない。 とくに,被害者B45(原告番号157・158)及び同B46(同159・160)に対応する原告らについては,これらの被害者は被告中華航空の従業員として勤務中に本件事故に遭遇したものであり,台湾法における雇用契約上の安全配慮義務等の問題を検討しなければならない可能性があり,これも台湾の裁判所において,より良く審理・判断されるべき事項であることは明らかである。 〔2〕 原告らは,本件について,両被告の共同不法行為によるものであり,統一的認定判断は不可欠であるというが,そもそも通常の共同訴訟において,日本の民訴法は,統一的判断は何ら担保しておらず,この点の原告らの主張は訴訟法の基礎的理解を欠くものである。 (c) フォーラム・ノン・コンビニエンスの法理アメリカにおいては,法廷地に管轄が認められても,代替管轄地が別に存在し,そこでの審理が妥当であると思われる場合には,法廷地裁判所がその裁量的な権限に基づいて,訴えの却下や訴訟の停止という形で処理することが認められており,これをフォーラム・ノン・コンビニエンスの法理(不便宜法廷の法理)という。 法体系の異なるアメリカで発達した法理を無批判に受け入れることはできないとしても 停止という形で処理することが認められており,これをフォーラム・ノン・コンビニエンスの法理(不便宜法廷の法理)という。 法体系の異なるアメリカで発達した法理を無批判に受け入れることはできないとしても,日本の裁判所の国際裁判管轄を否定すべき特段の事情の存否を検討するに当たり,特に代替管轄地が存在することが明らかな本件のような場合には,この法理の基本的な理念やこれに関する議論は大いに参考とすべき部分がある。 同法理の公的利益の局面は,国がその国とは関係の希薄な訴訟を審理せざるを得なくなることから生じる不合理な出費や負担から市民や納税者を保護するという局面(具体的には,裁判所の混雑・負担に起因する管理上の困難さ,地域的な争訟についてはその本国においてこれを解決するという地域的利害及び国際私法上又は外国法の適用に関する不必要な問題点の回避等)であり,私的利益の局面は,当事者間の訴訟が適切に審理され,最も適正な結論が出されるであろう方法で審理されるという当事者の利益である。 この法理は,外国人が訴訟を提起した場合には,他に裁判を遂行するのにより適した裁判管轄地がある場合には,当該外国へ訴訟を送り返す機能があると説明されているものである。 e 以上のとおり,いかなる観点からも,グループⅡの原告らについて日本の裁判所が審理を行う理由は全くなく,かえって,台湾において本来遂行されるべき訴訟であることは明らかであり,その訴えは却下されるべきである。 その場合,被告中華航空は,訴え却下後6か月であれば,グループⅡの原告らが台湾の権限ある裁判所に訴えた場合に,時効の援用をすることなく,訴えに応じる用意がある。また,その場合,当法廷における証拠調べの結果を,台湾の法廷で利用することに特段の異議はない。 (ウ) グループⅢの原告らの訴えについてa グループⅢの被害者 することなく,訴えに応じる用意がある。また,その場合,当法廷における証拠調べの結果を,台湾の法廷で利用することに特段の異議はない。 (ウ) グループⅢの原告らの訴えについてa グループⅢの被害者らと被告中華航空との間の運送契約については,ワルソー条約の適用がないため,グループⅢの原告らの訴えにつき,日本の裁判所が国際裁判管轄権を有するか否かは別途検討しなければならない。 b 本来,国の裁判権は,その主権の一作用としてなされるものであり,裁判権の及ぶ範囲は,原則として主権の及ぶ範囲と同一であるから,被告が外国に本店を有する外国法人である場合は,その法人が進んで服する場合のほか,日本の裁判権は及ばないのが原則である。その例外として,被告が日本と何らかの法的関連を有する事件については,被告の国籍,所在のいかんを問わず,その者を日本の裁判権に服させるのを相当とする場合もあるが,その例外的取扱いの範囲は,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念により,条理に従って決定するのが相当である。 グループⅢの被害者らについては,いずれも台湾をはじめとする日本国外で航空券を購入しており,当該運送契約と被告中華航空の日本国内の営業所とは関係がないため,グループⅢの原告らの訴えは却下されるべきである。 なお,国際航空機事故について,事故発生地が管轄発生原因とならないことは,条理たる改正ワルソー条約28条を見ても明らかであり,実際,日本は,事故発生地の通常の裁判管轄発生の根拠である,証拠収集の点から全く意味がないことが本件の審理の実態からも明らかである。 c なお,マレーシア航空事件判決は,多くの論者が,理論的には疑問を留保しつつも,実際的結論においてこれを肯定しているが,本件は,同事件とは事情が異なる。 すなわち,日本国民の海外への一般的なアクセスの なお,マレーシア航空事件判決は,多くの論者が,理論的には疑問を留保しつつも,実際的結論においてこれを肯定しているが,本件は,同事件とは事情が異なる。 すなわち,日本国民の海外への一般的なアクセスの観点から見ても,マレーシア航空事件が日本の裁判所に提起された昭和53年当時とは,海外渡航に対する考え方,時間・費用等の負担も大幅に変化している。さらに,台湾は,歴史的・地理的・経済的に見ても,マレーシアに比べて日本と密接な関係があり,日本国民にとってより身近なものとなっている。そのため,日本国民である原告らが台湾において訴訟を提起することは必ずしも困難とはいえず,原告らが日本国内において訴訟を提起することを認めなければ,その救済が閉ざされてしまうというような状況にはない。 したがって,国際民事訴訟法の基本原則やワルソー条約に見られる条理に対する例外を殊更認めてまで,本件を日本の裁判権に付す正当な理由はない。 (2) 被告エアバスに対する訴えの国際裁判管轄の有無(被告エアバスの本案前の主張)ア原告らの主張(ア) 不法行為地前記(1)ア(ア)の国際裁判管轄の法理によれば,被告エアバスに対する原告らの訴えは,旧民訴法15条1項(民訴法5条9号)所定の不法行為の特別裁判籍により,日本に国際裁判管轄が存在する。 本件の被告エアバスに対する訴えは,製造物責任に基づく損害賠償請求であるところ,製造物責任の法的性質は,報償責任と危険責任としての性質の両者を包含する不法行為責任であり,この性質からは,結果発生地も当然に不法行為地に含まれ,管轄が肯定される。これは,被害者の保護及びその事故に関する証拠収集の便宜等の配慮からも,裁判の適正・公平・迅速な遂行という観点にも合致するのであり,日本の判例上も確立している(東京地裁昭和49年7月24日中間判決・判例時報 被害者の保護及びその事故に関する証拠収集の便宜等の配慮からも,裁判の適正・公平・迅速な遂行という観点にも合致するのであり,日本の判例上も確立している(東京地裁昭和49年7月24日中間判決・判例時報754号58頁(以下「全日空ボーイング機事件判決」という。),東京地裁昭和59年3月27日中間判決・判例時報1113号26頁(以下「自衛隊ヘリ墜落事件判決」という。)参照)。 全日空ボーイング機事件判決は,航空機事故については「その加害者とされている被告が全世界を自由に航行し得る航空機の製造等を業とする大資本の会社であり,しかも,その製造にかかる航空機が日本国内においても多数運航されていることは公知の事実であること,および航空機に欠陥がある場合における人命事故等の発生は航空機の性質上不可避なものであることからして,本件事故の結果発生地である日本国が被告の全く予測しえない隔絶した土地であるとは到底いえないのであり,したがって,その結果発生地を不法行為地に含め,日本の裁判所に本件訴えの裁判管轄権を認めるとしても,被告に格別不当な不利益を強いることになるものではないというべきである。」と判示する。 全日空ボーイング機事件判決における航空機製造会社はボーイング社であったが,被告エアバスは,ボーイング社に次ぐ世界第2位の民間航空機製造販売会社であり,世界各国で販売活動を行っており,現に日本においても営業活動を展開して実績もあげているのであって,被告エアバスにとって,本件事故の発生地である日本が全く予測し得ない隔絶した土地であると到底いえないことは明らかである。 結果発生地を不法行為地の一つとして日本に裁判管轄を認める判例の立場はすでに確立したものというべきである。 また,一般に製造物責任の結果発生地に国際裁判管轄を認めることに消極的な論者も,客観的に見て 結果発生地を不法行為地の一つとして日本に裁判管轄を認める判例の立場はすでに確立したものというべきである。 また,一般に製造物責任の結果発生地に国際裁判管轄を認めることに消極的な論者も,客観的に見てそのものが流通することが合理的に予見できる国で損害が発生した場合,例えば,大型船舶,航空機については,その移動性からして,特に日本向けに輸入されたときでなくても,日本においてその物の使用から損害が生じた場合には,管轄を認めることができるとしている。 (イ) 特段の事情について前記(1)ア(ア)の国際裁判管轄の法理によれば,旧民訴法15条(民訴法5条9号)所定の不法行為地が日本である場合には,その余の特段の事情を考慮することなく日本に国際裁判管轄があると解されるところであるから,被告エアバスが主張している特段の事情を論議する余地はないが,仮にこれを考慮すべきであるとしても,このような特段の事情は認められないというべきである。 a 証拠について航空機事故の調査については,国際民間航空条約は,26条において,事故の起こった国が事故の事情の調査を行うものとするとの原則を定めた上で,関係国(本件では台湾とフランス)について,調査に立ち会う者を任命する機会や報告所見の通知を受ける機会を認めている。その外,上記条約と付属議定書は,国際的協力によって航空機事故の原因を追及し,もって事故の再発を防ぐために,具体的な手続規定を定めている。 この条約等に基づいて,本件事故については,日本の運輸省に設置された航空事故調査委員会が,関係各国に対し資料の提供を求めつつ事故原因の究明にあたったのである。もちろん他の国には,本件事故の原因について究明するための機関は置かれていない。 以上の事情によれば,本件事故の原因を究明して,本件事故機の設計製造上の欠陥の有無を審理するに 明にあたったのである。もちろん他の国には,本件事故の原因について究明するための機関は置かれていない。 以上の事情によれば,本件事故の原因を究明して,本件事故機の設計製造上の欠陥の有無を審理するについては,日本に最も多くの,かつ,重要な証拠が存することは多言を要しない。 b 防御の困難性について被告エアバスは,民間航空機のメーカーとして,ボーイング社に次ぐ世界第2位の製造販売実績を有しており,その販売実績は,最近のデータでも世界全体の約30パーセントのシェアを占め,年間96億ドル(約1兆円)の収入を上げている。また,被告エアバスは,フランスのアエロスパシアルとドイツのダイムラー・ベンツ航空宇宙両社がそれぞれ37.9パーセント,イギリスのエアロスペース社が20パーセント,スペインのCASA社が4.2パーセントの株式をそれぞれ保有するほか,イタリアのアレニア社とオランダのフッカー社,ベルギーのベルエアバス社の3社が準構成企業となっており,ヨーロッパ各国のリーディングカンパニーで構成された,他に例を見ない程の大企業である。 さらに,被告エアバスは,近年日本を含む極東地域を重要な販売市場であると位置づけ,中国,香港,韓国,マレーシア,フィリピン,台湾等に活発な販売活動を展開している。 このような世界的大企業で,世界各国において販売活動を行っている被告エアバスが,一旦同社製造航空機の事故が発生するや,法廷での防御の困難性を主張することは,著しく不当である。 被告エアバスは,日本にその連絡事務所を有し,そこではフランス人スタッフの外,日本人職員も常駐して稼動している。また,被告エアバスが自ら認めているとおり,被告エアバスは日本国内の航空会社に現に被告エアバス製の航空機を販売してきたし,現在でも販売のための営業活動を展開している。 ちなみに,被告エア 動している。また,被告エアバスが自ら認めているとおり,被告エアバスは日本国内の航空会社に現に被告エアバス製の航空機を販売してきたし,現在でも販売のための営業活動を展開している。 ちなみに,被告エアバスは,昭和54年から平成7年に至るまでの間,日本エアシステムに合計32機の,また全日空に合計22機の販売実績を有している。また,後記cのとおり,日本のメーカーから重要な部品の継続的購入もしているのであり,上記連絡事務所以外においても,被告エアバスの事業活動は日本国内で活発に展開されていることは明白である。このように,現に営業活動を展開して実績もあげている日本で応訴を強いられても,被告エアバスにとって何ら不当・不公正・不便であるとはいえない。 他方,原告らにとって,被告エアバスの本店たるフランスでの訴訟を強制されることは,実質的に救済を否定するのに等しく,著しく弱者保護に欠け,不当・不公正である。 c 訴訟手続の遅延について日本の航空会社各社に対しても自社製航空機の販売を果敢に展開している被告エアバスが,翻訳の手間と時間の負担による遅延を主張すること自体,航空機メーカーとしての社会的責任を一体どのように考えているのか根本的な疑念を抱かざるを得ない。 しかも,被告エアバスは,住友精密工業株式会社から着陸用ギアジャックを,また川崎重工業株式会社から胴体パネルを,大量かつ継続的に購入しているのであって,部品購入そして完成品の販売の両面において,日本企業と深く関係しているのである。もちろんこのような企業行動においては,言語の壁を克服して,敏速かつ緻密な交渉,協議が日常的にもたれている。 他方,原告らがフランスで本件訴訟を行うことによる負担増は致命的といってよい。 d 執行不能について被告エアバスは,本件のような事故に備えて賠償責任保険を付保しており, 協議が日常的にもたれている。 他方,原告らがフランスで本件訴訟を行うことによる負担増は致命的といってよい。 d 執行不能について被告エアバスは,本件のような事故に備えて賠償責任保険を付保しており,本件訴訟の判決や和解が成立した場合に対処している。被告エアバスの執行不能の主張は理由がない。 また,被告エアバスは,今後も日本の航空会社に対して,確定受注契約に基づき航空機を納入することを予定しており,将来においても確実に日本の企業に対する多額の売買代金債権を取得することに疑いはなく,これら売買代金債権は,日本国内に発生するのであり,これに対する執行も可能である。 e フランスにおける訴訟について被告エアバス主張にかかるフランスにおける訴訟は,本件訴訟とは,法的には全く関連性はなく,事実上もこれを管轄判断の事情として考慮すべき重要性はない。原告らは,被告中華航空と被告エアバス両者に責任があると主張しており,フランスでの訴訟においても被告エアバスの責任が追及されている点では同一であるといえるが,その訴訟の結論が,本件訴訟に対して何らの効果も及ぼさないものであることは明らかである。なぜなら,フランスにおける訴訟は,被告エアバスと被告中華航空を賠償代位した保険会社との間で争われているもので,本件訴訟とは当事者が異なるからである。 f 以上,いずれの観点からも,日本の国際裁判管轄を否定すべき特段の事情を認めることはできず,被告エアバスが日本の裁判所の管轄に服すべきものであることは法理上明らかであり,被告エアバスの本案前の主張は理由がない。 イ被告エアバスの主張(ア) 国際裁判管轄マレーシア航空事件判決及びそれ以降の下級審裁判例により,日本の裁判所は,国際裁判管轄の分配は,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念により,条理にしたがって決 張(ア) 国際裁判管轄マレーシア航空事件判決及びそれ以降の下級審裁判例により,日本の裁判所は,国際裁判管轄の分配は,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念により,条理にしたがって決定すべきであるとの立場を採っている。条理を具体化した実用的判断基準としては,ある事件につき,日本の民訴法の土地管轄に関する規定に定められている裁判籍のいずれかが日本国内にあるときは,原則として,その事件について,日本に国際裁判管轄を認めることが条理にかなうとする。ただし,日本に国際裁判管轄を認めることが,当該事件の具体的事実関係に照らして,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する結果となる特段の事情があるときはこの限りではないとする。 上記は現在の判例理論の理解として特に異論のないものと考えられ,航空事故損害賠償請求訴訟についてもあてはまる。このような判例の立場は,日本の民訴法の規定の国際裁判管轄への適用が必ずしも妥当でない場合があることを率直に認め,これを特段の事情によって具体的事件について諸事情を実質的・個別的に判断していこうというものであって,アメリカ法上の不便宜法廷の法理,すなわち,訴えの提起を受けた裁判所が,裁判管轄権を有するにも関わらず,当事者の便宜や正義の実現のためには,裁判管轄権を有する他の法域の裁判所で審理を行うほうが妥当であると考えた場合,裁量により裁判管轄権の行使をせず,訴えを却下することを認める法理と類似した機能を果たすものとして発展してきている。 以上に従って検討すると,以下に述べるとおり,本件訴訟においては,被告エアバスに関し,日本国内には民訴法の規定する裁判籍はないし,万一,日本に何らかの裁判籍があったとしても,管轄権を行使することを不適切とする特段の事情があるため,日本の裁判所は,本件について管 被告エアバスに関し,日本国内には民訴法の規定する裁判籍はないし,万一,日本に何らかの裁判籍があったとしても,管轄権を行使することを不適切とする特段の事情があるため,日本の裁判所は,本件について管轄権を行使することはできない。 (イ) 日本の民訴法の規定する裁判籍の有無a 被告エアバスに関する請求原因は,本件事故機製造に際しての設計上の欠陥によって本件事故が発生したというものである。しかしながら,本件事故機はフランスで製造されたのであるから,本件事故が日本で発生したという事実は,請求原因と全く関係がない。 したがって,被告エアバスに関しては,旧民訴法15条1項(民訴法5条9号)の不法行為地は,フランスであり,日本ではない。その根拠は以下のとおりである。 b すなわち,旧民訴法15条1項所定の不法行為地は,加害行為地と解釈すべきであり,本件のような製造物責任訴訟においては,本件事故機が製造されたフランスにあると解される。 なぜなら,仮に不法行為地に結果発生地も含まれるとすると,製造者と何ら接点のない場所で事故が発生した場合にも,製造者はその場所で応訴せざるを得ないことになるからである。 さらに,航空機については,しばしば転売されたり,リース会社によるリース及び航空会社による自社機のリースも極めて頻繁に行われているところ,航空機製造会社は,かかる転売及びリースにつき何らのコントロールも有していない。航空機事故の結果発生地を不法行為地に含ませると,管轄は当初の法律関係を離れて無制限に拡大し,航空機製造会社は世界中で応訴すべきこととなってしまう。航空機に移動性があるとはいえ,このような解釈は妥当ではない。 また,原告らが設計上の過失を主張する本件においては,事故が日本で発生したという事実は請求原因と全く関係がない。 c 原告らは,全日空ボーイング機 動性があるとはいえ,このような解釈は妥当ではない。 また,原告らが設計上の過失を主張する本件においては,事故が日本で発生したという事実は請求原因と全く関係がない。 c 原告らは,全日空ボーイング機事件判決及び自衛隊ヘリ墜落事件判決を引用し,旧民訴法15条1項の不法行為地には結果発生地が含まれるというのが判例法上確立されているところであると主張する。 しかしながら,この点については,原告らが引用した2件の地裁レベルの裁判例があるのみで,高裁・最高裁の判例は存在しない。 加えて,原告らが引用する2つの裁判例は,以下の点で大きく本件とは事実関係が異なり,本件の先例としては不適切である。すなわち,これらの裁判例は,いずれも航空機又はヘリコプターの機能の異常を原因として事故が発生した旨を原告が主張している事案であって,事故原因究明のため日本で証拠収集する意味もあった事案である。実際に全日空ボーイング機事件判決では,裁判所も,「まず,本件事故に関する証拠の収集の便宜についてみるに,本件事故の発生原因およびその事故による損害に関する証拠は,被告が本件航空機を製造したアメリ合衆国においても,また,本件事故が発生した日本国においても,これを収集する必要があるというべきであり・・・」と判示している。ところが,本件においては,本件事故機に何らの機器の性能異常も発生しておらず,機器は正常に機能していたのである。したがって,少なくとも被告エアバスに対し原告らが事故の発生原因として主張している「設計上の欠陥」の有無に関する証拠は日本には存在せず,日本において証拠を収集する意味は全く存しない。よって,原告らの引用する前記2件の裁判例は,本件には妥当しないというべきである。 しかも,日本の運輸省航空事故調査委員会による調査は既に終了しており,航空事故調査報告書も,日 意味は全く存しない。よって,原告らの引用する前記2件の裁判例は,本件には妥当しないというべきである。 しかも,日本の運輸省航空事故調査委員会による調査は既に終了しており,航空事故調査報告書も,日本語版及び英語版にて平成8年7月19日に公表されている。 したがって,現時点では,日本における更なる証拠収集の必要性は全くない。 (ウ) 特段の事情万一,日本に何らかの裁判籍があったとしても,被告エアバスに対して管轄権を行使することを不適切とする特段の事情があるため,日本の裁判所は,本件について管轄権を行使することはできない。 a 証拠本件事故機はフランスで製造されたため,設計・製造に関するほとんど全ての証拠及び証人はフランスに存在するから,本件が日本で審理されるとすると,事案を解明することが著しく困難である。 原告らは,本件の事故調査が日本で行われたことをもって日本での審理が証拠の面からも適切であると主張しているようである。しかしながら,日本の運輸省航空事故調査委員会による調査は既に終了し,航空事故調査報告書も公表されており,原告らは,平成8年8月5日の口頭弁論期日に,これを甲1号証として提出済みである。原告らが航空事故調査報告書を原告らの主張を立証するものとして提出している以上,審理においてはこれに対する被告エアバスの反証が重要となり,被告エアバスの証拠の検討及び証人尋問が中心となるのであって,証拠の存在及び収集の便宜という点からは,フランスで審理を行う方が適切である。 b 被告エアバスの防御の困難性国際裁判管轄の決定に当たっては,その土地で提起された訴訟に応訴しなければならないことになる被告の不利益が十分考慮されなければならない。 被告エアバスは,日本に営業所を有しておらず,本件事故機の設計・製造に関する被告エアバスの証拠も証人も日本には存 た訴訟に応訴しなければならないことになる被告の不利益が十分考慮されなければならない。 被告エアバスは,日本に営業所を有しておらず,本件事故機の設計・製造に関する被告エアバスの証拠も証人も日本には存在しない。被告エアバスは,日本での本件訴訟を防御することが極めて困難である。 c 訴訟手続の遅延被告エアバスは,証拠及び証人をフランス及び他の外国から提出し,呼び出さなければならないため,本件訴訟手続は遅延するものと予想される。 さらに,被告エアバスが裁判所に提出する書面は,フランス語又は英語から日本語に翻訳しなければならず,原告らから受領する書面は,日本語からフランス語又は英語に翻訳しなければならないため,被告エアバスは,訴訟手続の準備のために多くの時間が必要である。被告エアバスとしては,通常の間隔で期日の準備をすることが不可能である。 d 日本における執行の不能日本における執行可能性は,判決の実効性の観点から管轄の有無を判断する要素となるものである。特に給付判決を得た場合に,その給付内容を迅速・経済的に実現し得るということは,管轄肯定の一つの要素となる。旧民訴法8条(民訴法5条4号。財産所在地の裁判籍),17条(民訴法5条12号。不動産所在地の裁判籍),18条(民訴法5条13号。登記・登録地の裁判籍)は,判決の実効性の観点から規定されたものである。 なお,被告エアバスは,執行不能を管轄の有無の判断の一要素として述べているのであり,万一本件訴訟で請求認容判決がなされた場合にこれに従って義務を履行するか否かについて述べているわけではない。 e 国籍及び居住地グループⅡの原告らは,台湾籍を有し,台湾に居住しており,グループⅡの被害者らも,台湾籍を有し,台湾に居住していたとのことである。 国際裁判管轄の決定に当たっては,原告らの国籍等及び居住の有無 居住地グループⅡの原告らは,台湾籍を有し,台湾に居住しており,グループⅡの被害者らも,台湾籍を有し,台湾に居住していたとのことである。 国際裁判管轄の決定に当たっては,原告らの国籍等及び居住の有無も考慮に入れるべきである。そもそも管轄権を行使するか否かは,当該事件が法廷地にとれだけの関連があり,法廷地の司法制度が当該事件の解決についてどれだけの利害関係を有するかによって決せられるべきものであるからである。現に連邦最高裁判例を含むアメリカの判例は,アメリカ国籍及びアメリカ居住の事実をフォーラム・ノン・コンビニエンスの法理の判断に際して相当重視している。 f フランスにおける訴訟1995年(平成7年)6月9日,被告中華航空及びその保険者は,被告エアバス及びその保険者に対し,本件事故に関し,パリ商事裁判所に訴訟を提起した。フランスにおける訴訟手続において,フランスの裁判所は,鑑定人を選定するものと考えられる。鑑定人は,本件の事実的及び技術的側面並びにフランスの手続に関係している当事者の責任及び損害の点について,フランスの裁判所に事故調査報告書を提出し,助言する。仮に,日本の裁判所が本件について管轄権を行使した場合には,同じ争点がフランス及び日本の双方で審理されることとなる上,フランスの裁判所及び日本の裁判所の判決の間に矛盾が生ずる可能性がある。 (エ) 以上からすれば,名古屋地方裁判所は本件訴訟について管轄権を有せず,本件訴訟は不適法として却下されるべきである。 (3) 被告中華航空のワルソー条約17条,18条に基づく責任についてア原告らの主張被告中華航空は,ワルソー条約17条,18条に基づき,ワルソー条約の適用のある原告ら(以下,ア項においては,単に「原告ら」ともいう。)の本件事故により生じた損害について賠償する責任があるところ,被告中 告中華航空は,ワルソー条約17条,18条に基づき,ワルソー条約の適用のある原告ら(以下,ア項においては,単に「原告ら」ともいう。)の本件事故により生じた損害について賠償する責任があるところ,被告中華航空は,改正ワルソー条約22条の責任制限規定の適用を主張している。 しかしながら,そもそも責任制限規定は極めて不当であり,日本の憲法の諸条項に違反し,無効であるし,仮にそうでないとしても,改正ワルソー条約25条の適用により,責任制限規定の適用排除が認められるべきであることは,以下に述べるとおりであるから,いずれにせよ,被告中華航空は損害額全額の賠償責任を免れない。 (ア) 改正ワルソー条約22条の責任制限規定の違憲性a そもそも,航空機死亡事故の加害者の責任を制限すること自体が本質的に不当である。 航空機死亡事故による被害者の損害は,人の生命である。人の生命が人間にとって地球よりも重い最も貴重な権利であることはいうまでもなく,本来金銭によって償うことができないものである。改正ワルソー条約22条は,この最も本質的な人の権利の侵害に対する損害賠償の額を人為的に制限するものであり,しかも制限の額は現在の金額で約2万ドル(約240万円)である。 他方,賠償額の制限には何ら合理的理由は存在しない。制限は加害者たる巨大航空会社の経済的利益を図るだけである。特に現在では,賠償額は損害賠償保険でカバーされており,賠償額が制限されれば保険会社の利益が増えるだけなのである。 しかも,航空機事故を一般の交通事故と比較すると,後者の場合には,被害者側にも何らかの過失が認められる場合も少なくなく,また一人ひとりの市民が加害者になる可能性をもっているが,航空機事故の場合には,乗客には何の過失もなく,事故は加害者の一方的過失によって引き起こされ,加害者は常に航空会社である( る場合も少なくなく,また一人ひとりの市民が加害者になる可能性をもっているが,航空機事故の場合には,乗客には何の過失もなく,事故は加害者の一方的過失によって引き起こされ,加害者は常に航空会社である(特に,被告中華航空は,1991年(平成3年)12月29日台湾で事故を起こし,本件事故後も,1998年(平成10年)2月16日及び同年8月22日にいずれも香港において次々と事故を起こし,多数の乗客の命を奪っている。)。この責任の非対称性は,航空機事故の大きな特徴である。 さらに,航空機事故の場合,遺体の損傷が激しく,誰の遺体か判別できない場合も多く,また,墜落の場所によってはそもそも遺体が発見できないこともある。 以上のように,航空機事故による加害者の責任は極めて重い。それにもかかわらず,改正ワルソー条約22条は損害賠償額を約240万円に制限するものであって,その不当さは筆舌に尽し難いものがある。当然のことながら,このように不当な賠償制限を規定した条約も法律も他には全く存在しない。 b 責任制限規定は,今日,全く時代錯誤的存在となっているというべきである。 ワルソー条約が成立したのは74年前の1929年(昭和4年)であり,改正ワルソー条約25条を盛り込んだヘーグ議定書が成立したのは48年前の1955年(昭和30年)である。 1929年(昭和4年)には,航空産業は揺籃期にあり,航空機の事故率も極めて高かったから,航空運送人に一定の保護を与えることは,産業の発展のため不可欠であると認識された。そこで,各国はワルソー条約を成立させ,運送人の責任を推定する条項(17,18,20条)を設けるのと引換えに,旅客運送につき12万5000フランという責任制限規定を設けたのである。この12万5000フランという額は,当時の日本円で約1万円に相当したが,これは当時の日本 ,18,20条)を設けるのと引換えに,旅客運送につき12万5000フランという責任制限規定を設けたのである。この12万5000フランという額は,当時の日本円で約1万円に相当したが,これは当時の日本の賠償水準からみて極めて高額であり,実質的には完全賠償に等しかった。 しかし,1955年(昭和30年)になると,上記制限額は低すぎるという認識が高まり,ヘーグ議定書において25万フランに増額された。これは当時の換算レートで約600万円に相当し,日本においては十分機能し得る数字であった。しかし,このような賠償額の引上げにもかかわらず,アメリカはすでにこの額に不満を示してヘーグ議定書を批准しなかったのである。 前記のように,人の生命を侵害した者の責任を制限することは本質的に許されないものであるが,それでも改正前ワルソー条約及びヘーグ議定書成立時の日本においては,当時の死亡事故賠償額の水準からみて責任制限の不当性はさほど感じられなかったのであるが,ワルソー条約成立から74年,ヘーグ議定書成立から48年を経た今日においては,事態は一変している。この間の変化を見るための一つの指標として,交通事故の自賠責保険における死亡保険金の推移をみると,昭和30年12月1日には30万円だったのが,平成3年4月1日には3000万円となっており,ヘーグ議定書成立時の1955年(昭和30年)から1991年(平成3年)の間に実に100倍に増加している。 他方,航空運送の事故率は,条約成立時から今までに激減した。たとえば,ワルソー条約が成立した1929年(昭和4年)から7年を経た1936年(昭和11年)のアメリカの定期航空の事故率は1億乗客キロ当たり6.31件であったのに対し,近年は0.05件に減少した。また,1991年(平成3年)の各交通手段別の死亡率で表現した死亡リスクをみ 年(昭和11年)のアメリカの定期航空の事故率は1億乗客キロ当たり6.31件であったのに対し,近年は0.05件に減少した。また,1991年(平成3年)の各交通手段別の死亡率で表現した死亡リスクをみると,バイク及び自動車事故による死亡リスクはそれぞれ10-4及び10-5レベルであるのに対し,航空機事故の死亡リスクは10-7レベルであるといわれている。それにもかかわらず,バイク及び自動車事故の人身事故に対する賠償は無限責任であるのに対し,ワルソー条約はそれより数段死亡リスクの低い航空機事故に責任制限を設けているのである。 さらに,前記のとおり,現在では航空運送人の賠償責任は完全に保険でカバーされ,支払われる賠償金は保険会社,最終的には航空運賃への転嫁という形で乗客が負担する仕組みになっている。この点においても保険制度が未発達であった条約成立時とは状況が全く変わっているのである。 c 責任制限規定は,以下のとおり,もはや実効性を喪失したというべきである。 (a) 大多数の国際航空運送人による責任制限撤廃(IATA協定)ワルソー条約の責任制限規定の不当性があまりにも明白になったため,日本の国際航空運送人は1992年(平成4年),世界に先駆けて,人身事故における賠償責任限度額を廃止した。日本の国際航空運送人のこの動き(ジャパニーズ・イニシアティブ)に触発されて,各国国際航空運送人の間で責任制限撤廃の気運が高まり,ついに,IATAは,1995年(平成7年)にクアラルンプールで行われた第51回年次総会でIATA協定を採択した。同協定は,旅客の死亡,負傷その他身体の障害に対する補償請求について,改正ワルソー条約22条の責任限度額を廃棄する措置を決めた。 1999年(平成11年)6月時点で89の国際航空運送人がこの協定を実施しており,経済力の高い国又は地域 の障害に対する補償請求について,改正ワルソー条約22条の責任限度額を廃棄する措置を決めた。 1999年(平成11年)6月時点で89の国際航空運送人がこの協定を実施しており,経済力の高い国又は地域の国際航空運送人の中では,被告中華航空はこれを実施していない数少ない者の一つである。この協定の実施により,責任制限規定の実効性はほとんどなくなり,責任制限規定が適用されるのは,一部の運送人に限られるようになったのである。 (b) モントリオール条約の成立時代錯誤なワルソー条約の責任制限規定を撤廃する動きは,前記のような航空運送人の間の民間協定(IATA協定)の域にとどまらず,国家間の新条約作成へと発展していった。そして,1999年(平成11年)に,ICAOの主催によりモントリオールで開催された国際航空法会議において,モントリオール条約が成立し,53か国が署名した。 この条約においては,旅客の死傷に対する運送人の責任は無限責任とされている。 この条約は30か国の批准により発効するとされているが,現在のところ未発効である。しかし,この条約により,国際航空運送人の旅客の死傷に対する責任を無制限とする原則は完全に確立されたというべきである。 (c) 以上に加え,被告中華航空自身,改正ワルソー条約22条の責任制限を援用したり,しなかったりしており,責任制限規定が今日通用しないことを自認している。 すなわち,被告中華航空は,本件事故後に引き起した複数の航空機事故の被害者に対する損害賠償について,責任制限をはるかに上まわる金額を遺族に提示した。例えば,1998年(平成10年)2月に発生した桃園大園事故については,被害者1人当たり990万台湾元(約3960万円)で和解したとされており,また,2002年(平成14年)馬公海上で発生した事故については,被告中華航空は 10年)2月に発生した桃園大園事故については,被害者1人当たり990万台湾元(約3960万円)で和解したとされており,また,2002年(平成14年)馬公海上で発生した事故については,被告中華航空は台湾人遺族に対し1400万台湾元(約5600万円)もの金額を提示したのである(甲100)。 これは,被告中華航空自身,約240万円という責任限度が全く非現実的な金額であることを自認していることの証左である。それにもかかわらず,被告中華航空は,本件訴訟において執拗に責任制限を援用・主張しているのである。このような極めて恣意的かつ理不尽な責任制限の援用は断じて許されない。 d 以上からすれば,責任制限規定は,成立当初に想定された立法事実を明らかに欠いており,違憲であることを免れない。ワルソー条約の成立当時における立法事実に照らしてワルソー条約の規制が合理的なものであったかとの疑問はひとまずおくとしても,その後の長い歴史的経過の中で,もはや立法事実を欠くに至ったことは客観的に明らかとなり,国際的にもそのような認識が確立しているのである。 立法事実を欠くことが明らかである以上,もはや改正ワルソー条約22条を正当化する方法はないが,ワルソー条約の正当化が不可能であることについて,以下,違憲判断の基準に照らして規制目的,規制手段の点から検討する。 (a) 憲法13条,29条違反本件損害賠償請求権は,単なる金銭債権ではなく,人の生命や人生の尊厳に基礎をおき,これが転化したものである。人の生命や人生の尊厳は,改めて述べるまでもなく,最も基本的かつ尊重されるべきものであるが,これがひとたび失われると原状回復は不可能となるため,その尊重を貫くために,民事訴訟においては適切で十分な金銭賠償によって償うほかないのである。その金銭賠償が低額に止まることは,すなわち,人の が,これがひとたび失われると原状回復は不可能となるため,その尊重を貫くために,民事訴訟においては適切で十分な金銭賠償によって償うほかないのである。その金銭賠償が低額に止まることは,すなわち,人の生命や人生の尊厳に対する保障が十分でないことを意味せざるを得ない。このような権利の制限に当たっては,その制限の合憲性は極めて慎重に検討されなければならない。憲法29条のみならず,憲法13条に基礎をおくこのような権利は,憲法上の諸権利の中で,最も重要な人権であることはいうまでもない。 したがって,かかる権利を制限する法律行為や法令の合憲性判断については,厳格な審査基準が用いられなければならない。責任制限規定を純粋に財産権の制限に関する規定と捉えることは当を得ないものである。 このような観点から,ワルソー条約の合憲性については,その目的(重要な公共の利益のための措置といえるか。)及びその規制手段(目的に対応した必要かつ合理的な手段か,よりゆるやかな規制によってはその目的を達成することができないか。)の正当性を吟味することが必要となる。 まず,前述のように,航空産業の成長を保護するとの規制目的自体,すでに重要性を失っていることは明らかであり,すでにこの点で,ワルソー条約は正当化できない。他の航空会社が責任制限を撤廃した約款を定めていることからも明らかなように,賠償制限という手段によって航空産業保護を図ること自体,必要性を欠くに至っていることは明らかである。 次に,賠償制限という手段よりもゆるやかな規制によってはその目的を達成することができないとも到底いい得ない。航空会社は,賠償制限がなくとも保険をかけることによって十分に対処可能である。安全性の飛躍的な向上により,保険料も十分に下がっており,事実,日本の航空会社が責任制限を撤廃した際にも,保険料の増大 。航空会社は,賠償制限がなくとも保険をかけることによって十分に対処可能である。安全性の飛躍的な向上により,保険料も十分に下がっており,事実,日本の航空会社が責任制限を撤廃した際にも,保険料の増大による問題を生じさせたことはない。したがって,目的達成のための他の手段は,改めて制定する必要さえ乏しいのであるが,あえて考えられる他の手段を挙げるならば,保険については強制保険の制度を採ることも考えられ,また,条約による運送人の責任制限制度を採るならば,国家が補償制度を設立することも考えられる。賠償問題への対処としては,様々な別の方法が考えられるのである。 そもそも,航空産業保護という目的は,それ自体が究極の目的ではなく,あくまでも航空産業の保護を通じて,安全かつ高度の国際交通機関を発達させ,乗客に利便を与える点にその究極の目的があったはずである。これに対し,ワルソー条約の責任制限は,安全性確保に対する配慮を犠牲にしてきたという側面を有しているのである。前記のとおり,日本がいわゆるジャパニーズ・イニシアティブによって無限責任制度を採用した理由の一つに,航空企業が安全性の高い企業であることを示すという点があることからも明らかなように,ワルソー条約の責任制限は,航空産業の発展という目的に照らして必要最小限の手段といえないばかりか,この点では,むしろその目的に反する側面を有していたのである。 したがって,改正ワルソー条約22条が憲法13条,29条に違反することは明らかである。 (b) 憲法14条違反憲法14条違反については,合理的な区別であるか否かが問題となり,その区別(差別)をする目的の正当性及び目的に照らした手段の実質的関連性が検討されなければならない。 責任制限規定は,同一の飛行機に乗り,同一の航空事故に遭遇した被害者であっても,切符の買い方に ,その区別(差別)をする目的の正当性及び目的に照らした手段の実質的関連性が検討されなければならない。 責任制限規定は,同一の飛行機に乗り,同一の航空事故に遭遇した被害者であっても,切符の買い方によって(出発地,到達地又は予定寄航地の違いにより)適用の有無が左右される点で,極めて不合理で,不平等な規定である。航空産業保護という制限理由に合理的根拠はなく,また,両者の差別の根拠もないというほかない。 このように,条約の内容自体,不合理な差別を生み出しているが,ワルソー条約の存在により,この条約が適用されない関連領域との間でも不平等を生み出しており,これもまた,同条約によって国際航空運送の利用者のみが他の国民に比べて不利益を受けるという意味で憲法14条の問題ということができる。すなわち,責任制限規定は,国際航空運送の乗客と国内航空運送の乗客との間で著しい賠償額の違いをもたらすのであって,極めて不平等な規定である。 さらに,国内運送であれ,国際運送であれ,陸上交通,海上交通においては無限責任の原則が採用されているため,これらの死亡事故の賠償額とも著しく異なり,この点でも不平等を生じている。 責任制限規定による規制目的は,航空産業の保護にあるというが,以上の点に鑑みれば,このような規制目的に照らして必要最小限の合理的な区別とはいい得ないことは明らかであり,憲法14条に反するものである。 (c) イタリアも,1985年(昭和60年)5月2日のイタリア憲法裁判所の判決において,責任制限規定の違憲性を認めている。すなわち,同裁判所は,当該事件が人間の生命という至高の贈り物の安全性及び身体的尊厳の保全の不可侵性に関わる問題であること,継続的かつめざましい航空交通の成長があったために,航空機の安全性のレベルは経営の範囲内に達し,リスクの減少に従い保険コストの 高の贈り物の安全性及び身体的尊厳の保全の不可侵性に関わる問題であること,継続的かつめざましい航空交通の成長があったために,航空機の安全性のレベルは経営の範囲内に達し,リスクの減少に従い保険コストの減少をもたらしたことを述べた上で,国際的にワルソー条約の限度額が何度も引き上げられてきた歴史や,補償制度による補完に触れ,そのような調整がなされていない限りは,当該損害賠償制度は違憲となるとしている。 この判決においては,死亡による損害賠償請求権は単に財産権の問題ではなく,個人の生命及び身体的な尊厳に関して憲法上保障されている権利の問題であることが繰り返し述べられている。 (d) 以上からすれば,改正ワルソー条約22条の責任制限がもはや立法事実を欠くに至っており,それゆえに規制目的,規制手段のいずれの点から検討してもまったく正当化できなくなっていることは明らかというほかない。同条の規定は,日本の憲法に照らして全く不合理なものというほかなく,憲法13条,14条,29条に反し,無効である。 したがって,原告らについても,損害賠償制限は存在しない。 (イ) 改正ワルソー条約25条の意義a 責任制限規定は極めて不当かつ時代錯誤的なものであるから,これを違憲と解さないとしても,責任制限規定を排除するための要件を定めた改正ワルソー条約25条を可能な限り広く解釈することにより,航空機事故で死亡した被害者の損害が250万円にも満たないなどという著しく正義に反する結果を回避すべきである。 改正ワルソー条約25条の解釈については,同条に規定する「無謀にかつ損害が生ずるおそれがあることを認識して」という要件に,「損害が生ずるおそれがあることを認識すべきであった」場合を含めて解する立場(以下「客観説」という。)と含めない立場(以下「主観説」という。)の対立があるが,客観 があることを認識して」という要件に,「損害が生ずるおそれがあることを認識すべきであった」場合を含めて解する立場(以下「客観説」という。)と含めない立場(以下「主観説」という。)の対立があるが,客観説に立って解釈すべきである。 確かに,改正ワルソー条約25条の「無謀にかつ損害の生ずるおそれがあることを認識して行った行為」という文言自体からは,客観説はとりにくいように考えられるかも知れない。しかし,具体的事件の公正妥当な解決を任務とする裁判所が杓子定規な文理解釈にこだわるべきではない。責任制限規定が今日では全く時代錯誤的かつ著しく正義に反するものである以上,改正ワルソー条約25条は,以下のとおりのその成立した背景,各国裁判所の態度,これを広く解した場合の消極的影響の有無等,種々の要素を総合的に判断して,弾力的かつ合目的的に解すべきであり,この見地に立てば,客観説に立つことが妥当である。 b 改正経過(a) 改正ワルソー条約25条の文言が採択されたヘーグ会議の審議経過では,各国の代表の見解が対立,錯綜した。その結果,各国間の妥協が計られ,改正ワルソー条約25条の文言が採択されたが,この文言が何を意味するかについて,客観説を排除するというような統一が図られたことはない。 (b) ヘーグ会議第17回会議では,改正ワルソー条約25条で具体化すべき原則に関し,関係者が意図的に行為した場合に加え,無制限の責任が認められるべき場合についての中間的な投票がなされ,①「無謀に行為した場合」賛成3票,②「無謀にかつ損害が生ずるおそれがあることを認識し,又は認識すべきであったのに行為した場合」賛成11票,③「無謀にかつ損害が生ずるおそれがあることを認識して行為した場合」賛成13票,という結果となった。これによれば,明確に「客観説」の立場に立つ①案と②案との合計 あったのに行為した場合」賛成11票,③「無謀にかつ損害が生ずるおそれがあることを認識して行為した場合」賛成13票,という結果となった。これによれば,明確に「客観説」の立場に立つ①案と②案との合計は14票で,③案の13票を上回っていたのであり,原則の問題としても明確に客観説を支持する立場の方が多かった。 (c) また,この第1回目の投票はあくまで「中間的」投票であって,これによってヘーグ会議の最終結論が出されたのではなかった。 第1回目の投票の直後,フランス代表は,同投票は22条の責任限度額と25条の問題とを切り離して行われたが,このような投票は無意味であるから投票に参加しなかった旨発言した。これを受けて,議長は,25条の問題と22条の責任限度額の問題とを結びつけた形で再度中間的投票を実施した。 その結果は,改正前ワルソー条約の文言をそのまま継続し,限度額を20万フランとする案が最多数を占めた。この段階で既に,前記第1回目の中間的投票の意味は極めて薄弱なものになっていたのである。 (d) 第23回会議では,作業部会の案として,改正ワルソー条約25条と同一の文言,すなわち前記③案と同一の文言を採択すべきか否かに議論が集中したが,その際には,改正ワルソー条約25条にいう「認識」が,「現実の認識」に限られず,「客観的に擬制される認識」を含む概念であることが前提とされていたのであって,このことは,以下の審議経過からも明らかである。 まず,オーストラリア代表から,「認識」を「現実の認識」とする修正案が提出された。主観説の立場から,「現実の」(actual)という語を伴わない単なる「認識」(knowledge)では,裁判所によって擬制され(knowledgebeingimputedbythecourt),あるいは,何らかの形による推定によって簡 う語を伴わない単なる「認識」(knowledge)では,裁判所によって擬制され(knowledgebeingimputedbythecourt),あるいは,何らかの形による推定によって簡単に証明される「認識」が含まれてしまう可能性を懸念し,その可能性を排除するために提案されたものであった。この「擬制認識」(imputedknowledge)とは,「現実の認識」(actualknowledge)の対概念とされ,「状況からすれば,普通程度の常識のある者なら当然認識すべきであるような場合に,当該事実について擬制される認識」であって,当人が現実に認識していなくても,客観的に認識すべき場合であれば,その成立が認められる概念である。 しかし,この修正提案は,イスラエル,アメリカ及びフランスの反対にあい,撤回を余儀なくされ,最終投票の結果作業部会案が採択され,現行の改正ワルソー条約25条となったのである。 このようなオーストラリア代表による修正提案及びその撤回という経緯からすると,現行の改正ワルソー条約25条の「認識」が,「現実の認識」に限定されず,裁判所によって擬制され得る概念,すなわち「客観説」的解釈の可能性のある概念として採択されたことが明らかである。 また,同会議では,ベルギー代表が,「リオの文言の方が好ましいと考えているが,特に重大な過失(particularyseriousnegligence)があった場合にのみ無制限の責任追及ができるようにすべきだと誰もが感じていると理解されるので,作業部会案の文言を受け入れることも可能である。」と発言し,議事録上,他のいずれの国の代表も,このベルギー代表の発言に対し異論を差し挟んでいない。このベルギー代表の発言は,明確に「過失」(negligence)という客観的基準を前提にした文言 」と発言し,議事録上,他のいずれの国の代表も,このベルギー代表の発言に対し異論を差し挟んでいない。このベルギー代表の発言は,明確に「過失」(negligence)という客観的基準を前提にした文言を用いており,ヘーグ会議に出席した各国代表の間に,「特に重大な過失がある場合は,無制限の責任追及ができるようにすべき」(客観説)というコンセンサスがあったこと,そして,それを具体化する条文として現行の改正ワルソー条約25条が採択されたことを示している。 (e) この点について,ハーバードローレビューの論文は,「ヘーグ会議は『認識していたか又は認識すべきであった』という基準を採用すべきだと主張する者と,無謀さに加え現実の認識を必要とすると主張する者が半々に分れたのである。議事録からは最終的に採用された条文が何を意味するかは明らかでない。」としている。また,藤田勝利教授は,「責任限度額をいくらにするかという問題と責任制限適用排除の要件の問題がセットで(25条の要件を厳しくするのなら限度額を高くするし,前者を緩くすれば後者は低くてもよいという関係に立つ。)議論された。」,「ヘーグ会議には,39か国と5つの国際機関しか参加しておらず,改正条約25条について多数決で主観説を採用したといっても客観説との差はわずかであり,22条の責任限度額の金額設定いかんで主観説にも相当はばをもち得ることが明らかとなった。」と述べている。 c 各国裁判例(a) フランスの裁判例1987年(昭和62年)11月17日の破毀院判決(甲4)は,改正ワルソー条約25条の「許されざる過失」に該当するか否かの認定に当たっては,「通常の思慮分別を具えた人間の行動と比較して評価されるべきである」と判示して明確に客観基準説を採用し,1988年(昭和63年)12月20日の破毀院判決(甲5) 」に該当するか否かの認定に当たっては,「通常の思慮分別を具えた人間の行動と比較して評価されるべきである」と判示して明確に客観基準説を採用し,1988年(昭和63年)12月20日の破毀院判決(甲5)も,雲海に突入した際に,引き返す等の措置を採らず飛行を継続する行為そのものを「許されざる過失」に該当するとし,操縦士が飛行継続により損害発生の蓋然性があることを認識していたか否かを問題にしていない。 さらに,1992年(平成4年)2月18日の破毀院判決(甲6)においても,保険会社側の改正ワルソー条約25条の下での過失は単純な予見可能性でなく,損害発生の蓋然性(probabilit-)の認識を要するなどとの主張を排斥している。 (b) アメリカの裁判例テューラー事件判決(甲3)は,wilfulmisconductの適用の可否について,運送人であるKLM航空が救命胴衣の位置と使用方法を乗客に指示すべき義務を怠ったこと,墜落の可能性を通知することができたのにこれを怠ったこと,また,KLMの代理人であるサベナ航空が,緊急事態を通知するというKLMとの契約上の義務を怠ったことがそれぞれwilfulmisconductに該当するとしており,客観説の立場に立っている。 (c) ドイツの裁判例ドイツのケルン高等裁判所は,1997年(平成9年)3月25日の判決(甲99)において,「航空運送人の無限責任は,故意の場合は別として,特に重大な過失が関与した場合に適用される。これには運送人又はその使用人が特に粗野な形で彼らに委託された人又は物の安全を無視したことが必要であり,重大な過失行為は明白な注意義務が考慮されなかったことにより認めることができる。これに加え,損害が生ずるおそれの認識がなければならない。この認識(の存在)は,当該行動の内容及び当該行動を引き起 り,重大な過失行為は明白な注意義務が考慮されなかったことにより認めることができる。これに加え,損害が生ずるおそれの認識がなければならない。この認識(の存在)は,当該行動の内容及び当該行動を引き起こしそれに随伴した事情に照らし,不注意な行動が(認識があったという)結論を正当化する場合には,推定されなければならない。」と判断して,改正ワルソー条約25条を「重大な過失」を意味するものと解釈している。 (d) 韓国の裁判例韓国の釜山地方裁判所は1990年(平成2年)1月9日の判決(甲87)において,改正ワルソー条約25条の「損害がおそらく発生するであろうとの認識」というのは,改正前ワルソー条約25条の「故意に相当する過失」が韓国では重過失に該当するものと解釈できることに照らせば,重大な過失にあたるとの判断を示した。 (e) その他,ギリシアでも客観説が採用されており,また,ルクセンブルグ,ベルギー,オーストラリア等の判例にもフランスと同様客観説の立場をとるものがある。さらに,イギリスにおいても,ゴールドマン事件の一審判決は,実際に損害が生じていたことを認識していたか否かを問題とせずにwilfulmisconductを認めている。 d 上記のように,改正ワルソー条約25条の解釈につき,多くの国の裁判所は極めて弾力的に改正ワルソー条約25条に該当する事実を認めて責任制限を排除している。これらは,各国裁判所が,責任制限規定があまりにも不当かつ時代錯誤的であって,その適用を排除しなければ著しく正義に反する結果となることを強く認識しているからである。 のみならず,現在では,大多数の航空会社が改正ワルソー条約22条の責任制限を自ら放棄していて,改正ワルソー条約25条の実効性はほとんどなくなっている。 また,ワルソー条約に代り,責任制限を全面的に廃止した ならず,現在では,大多数の航空会社が改正ワルソー条約22条の責任制限を自ら放棄していて,改正ワルソー条約25条の実効性はほとんどなくなっている。 また,ワルソー条約に代り,責任制限を全面的に廃止したモントリオール条約も発効を待つばかりである。2003年(平成15年)5月末日現在で,29か国が批准しており,あと1か国の批准により発効となる。したがって,改正ワルソー条約25条を弾力的に解しても法的安定性を害する可能性はない。このような状況下において,不当にも未だに責任制限の放棄をしていない被告中華航空を,遺族の犠牲において救済する必要は全くない。 以上によれば,改正ワルソー条約25条の「損害の生ずるおそれがあることを認識して」という文言は,上記各国裁判所のように,客観説に立って,事故時の客観的状況に照らし,運送人又はその使用人が損害の生ずるおそれがあることを認識すべきであった場合を含むものと解すべきである。 (ウ) 改正ワルソー条約25条の適用の可否についてa 前記(イ)のとおり,改正ワルソー条約25条に該当するか否かは客観説に立って判断すべきところ,本件乗員らの行為は,以下のとおり,客観説に立てばもちろんのこと,仮に主観説に立っても,同条の「無謀にかつ損害の生ずるおそれがあることを認識して行った」行為(以下「無謀行為」という。)に該当するというべきであり,したがって,被告中華航空は,責任制限規定を援用することはできず,原告らに対し,全損害の賠償をすべき義務があるというべきである。 すなわち,本件事故の事実関係のうち,本件乗員らが行った,①副操縦士が着陸を意図しながら,ゴーレバーを誤って作動させたこと,②ゴーアラウンドモードが解除されていない状態で,オートパイロットを接続し進入を継続したこと,③ゴーアラウンドモードを解除できず,副操縦士はその 陸を意図しながら,ゴーレバーを誤って作動させたこと,②ゴーアラウンドモードが解除されていない状態で,オートパイロットを接続し進入を継続したこと,③ゴーアラウンドモードを解除できず,副操縦士はそのことを知っていたにもかかわらず機長に報告しないまま操縦を継続したこと,④操縦輪の操舵が重い状態であったにもかかわらず,進入を継続するために,乗員が操縦輪を押し続けたことのうち,①から④の各行為は,日本の法律上「重大な過失」に該当することはもちろん,改正ワルソー条約25条の無謀行為に該当するものであり,これらの操縦行為は全体として,無謀行為に該当するというべきである。 b 副操縦士が着陸を意図しながら,ゴーレバーを誤って作動させたこと(前記a①)について(a) 副操縦士は,ゴーレバーを作動させた際,着陸を意図していたものである。 本件事故機は,平成6年4月26日(以下,(ウ)項においては,同日中の出来事については時刻のみを表示する。)午後8時13分39秒,名古屋タワーから着陸許可を受け,着陸チェックリストの点検を終え,名古屋空港滑走路34へILS進入を継続していたところ,副操縦士は,午後8時14分5秒,ゴーレバーを誤って作動させた。 すなわち,ゴーレバーの作動は,本来ゴーアラウンドモードとする旨の呼唱がなされるべきところ,本件では呼唱がないままなされ,ゴーレバー作動後には「えっ,えっ,あれ。」(機長),「君,君はそのゴーレバーを引っ掛けたぞ。」(機長),「はい,はい,はい。少し触りました。」(副操縦士)という会話が交わされている。 したがって,ゴーレバー作動時には,本件乗員らは着陸を意図していたのであって,ゴーレバーを作動させる理由は全くなく,上記会話からも,副操縦士がゴーアラウンドを全く意図していなかったにもかかわらず,着陸目的に反して,ゴーレ 作動時には,本件乗員らは着陸を意図していたのであって,ゴーレバーを作動させる理由は全くなく,上記会話からも,副操縦士がゴーアラウンドを全く意図していなかったにもかかわらず,着陸目的に反して,ゴーレバーを気付かないまま操作したことが明らかである。 (b) 着陸を意図していながら,ゴーレバーを作動させる行為は重大な過失である。 航空機の着陸進入時の操縦には特に慎重さが要求され,操縦士は,着陸進入時に,その意図した行為に反する効果を与える操作を行うべきではない。ゴーレバー作動によって生じる効果は,①オートスロットルが全開になり,②フライトディレクターは,ゴーアラウンドをするための情報を与え,③ゴーアラウンドモードのときにオートパイロットが接続されると水平安定板は機首上げ方向に操作される,というものであって,着陸とは全く逆の効果を伴うものである。 本件乗員らが着陸を意図していながら,しかもわずかの注意を払えば容易に回避し得るのに,全く逆の効果を持つゴーレバーの作動をさせた行為は,航空機操縦における基本的な義務に違反するものであって,明らかな重大な過失行為である。 (c) なお,被告中華航空は,ゴーレバーは副操縦士が意図せず作動させたものであるが,ゴーレバーが操作中に誤って作動させやすい機構になっていたことも考え合わせると,乱気流による突然の揺れなどの不可抗力によってゴーレバーが作動した可能性があると主張する。 しかしながら,ゴーレバーを作動させるには,ハンドルから手を離してスイッチを入れる作業が必要なのであって,ゴーレバー自体が誤って引っ掛けやすい構造になっていたわけではない。 操縦士は,フライトデッキの構造を熟知した上で,誤って無関係の機器に触れることのないように注意して操縦しなければならないのであり,また,ゴーレバーがスラストレバーの下部にあ っていたわけではない。 操縦士は,フライトデッキの構造を熟知した上で,誤って無関係の機器に触れることのないように注意して操縦しなければならないのであり,また,ゴーレバーがスラストレバーの下部にあること自体が問題とはいえないのであって,誤ってゴーレバーを作動させた行為は,注意義務違反を構成する。 そして,副操縦士がゴーレバーを作動させた午後8時14分5秒より前の時点では乱気流が発生していないことは明らかである。 確かに,本件乗員らは,午後8時8分26秒から10分1秒ころまで,乱気流及びウィンドシアについて会話しており,午後8時10分ころまでは気流がやや乱れていた。しかし,この気流の乱れはごく弱いものであるし,さらに重要なことに,副操縦士がゴーレバーを作動させるまでのその後の4分間は,乱気流は全く発生していないのである。 午後8時14分ころに垂直加速度の変化が生じているが,これはゴーレバーの作動後であって,ゴーレバーの作動の結果であることは明らかである。 (d) また,被告中華航空は,①ゴーレバーの作動によってゴーアラウンドを行うこと自体は危険な行為ではなく,②本件乗員らは,オートスロットルを解除し,手動によりスラストレバーを操作して,操縦輪を機首下げ方向に操作するという適切な措置を採ったとも主張する。 しかしながら,着陸を意図して航空機を操縦する本件乗員らに対しては,その意図に対応した注意義務が課されている。注意義務は,一定の場面における一定の行為について生ずるものであり,乗員がゴーアラウンドを意図していた場合と着陸を意図していた場合とでその注意義務の内容は異なるのであって,周囲の客観的状況や乗員の主観をすべて捨象した条件の下で,抽象的なゴーアラウンドモードの起動の安全性やアプローチ及び着陸という場面における操縦士の選択の適否を一般論とし 務の内容は異なるのであって,周囲の客観的状況や乗員の主観をすべて捨象した条件の下で,抽象的なゴーアラウンドモードの起動の安全性やアプローチ及び着陸という場面における操縦士の選択の適否を一般論として論ずることは全く的外れである。特に多数の乗客が搭乗し,高い危険の伴う航空機の操縦においては,着陸を意図していた本件乗員らに対しては,当然,その着陸の意図に反してゴーレバーの作動操作を行わないという注意義務が課されていた。 ところが,副操縦士は,意図していた着陸のための操縦とは逆に,ゴーアラウンドモードを起動させるゴーレバーを誤って作動させたのである。 本件の副操縦士によるゴーレバーの作動は,極めて危険な行為であり,明らかに矛盾した行為であって,数百名の乗客の命を預かる航空機の操縦士が,最も危険なときとされている着陸進入時に,決して行ってはならないことである。そして,操縦士は高度の技術と知識を身に付けたプロフェッショナルであり,ゴーレバーの作動はわずかな注意を払うことで避けることができたのである。副操縦士には極めて重大な過失があったことは明らかである。 c ゴーアラウンドモードが解除されていない状態で,オートパイロットを接続し進入を継続したこと(前記a②)について(a) 本件乗員らは,着陸を意図しながら,その意図とは逆に,ゴーアラウンドモードを指定した状態で,乗員相互の意思表示,呼唱を行うことなく,オートパイロットを接続し,進入を継続した。 本件事故機においては,午後8時14分6秒以降,フライトモード表示器に,ずっとゴーアラウンドが表示されており,オートパイロットの接続前(14分10秒)に,機長が副操縦士に対して,副操縦士がゴーレバーを引っかけたことを指摘しているから,本件乗員らは,オートパイロット接続時点で,ゴーアラウンドモードが選択されてい パイロットの接続前(14分10秒)に,機長が副操縦士に対して,副操縦士がゴーレバーを引っかけたことを指摘しているから,本件乗員らは,オートパイロット接続時点で,ゴーアラウンドモードが選択されていることを認識していたことが明らかである。 ところが,このような状況を認識しながら,本件乗員らは,着陸の意図に反して,オートパイロットの接続を行った。また,本件乗員らは,オートパイロットを接続する旨の呼唱を行わなかった。 つまり,本件乗員らは,着陸を意図しながら,ゴーアラウンドモードに入っていることを認識していたにもかかわらず,オートパイロットを接続する旨の呼唱すら行わないで,着陸の意図に反して,オートパイロットを接続したのである。 (b) 着陸進入時は,最も危険なときとされている。オートパイロットが接続されると,航空機は選択されたモードに従って自動制御されるのであるから,操縦士は,オートパイロットを接続する際,どのような操縦を目的として,どの時点でオートパイロットを接続するかについて周到な注意を払って接続行為を行わなければならない。それゆえ,オートパイロットに接続する場合には,オートパイロットを接続すること及びその目的を明確に他の操縦士に告げて接続操作を行わなければならないとされているのである。 ところが,本件乗員らは,着陸を意図しながら,かつ,その意図とは逆にゴーアラウンドモードとなっていることを認識していたにもかかわらず,オートパイロットを接続する旨の呼唱すら行わないで,着陸の意図に反して,あえてオートパイロットを接続した。着陸目的で機体上昇のためのオートパイロットを働かせたということは,その結果航空機の操縦が不能となって,本件事故機の墜落という損害が生ずるおそれがあることを認識して行った行為であり,これは致命的な行為であって,まさに無謀行為 ートパイロットを働かせたということは,その結果航空機の操縦が不能となって,本件事故機の墜落という損害が生ずるおそれがあることを認識して行った行為であり,これは致命的な行為であって,まさに無謀行為そのものである。 なお,仮に,オートパイロットを接続した操縦士が,ゴーアラウンドモードが選択されていることを認識していなかったとすると,当該操縦士は,操縦制御内容すら知らずにオートパイロットの接続をしたことになるが,このような無謀な接続行為は,やはり致命的な行為として無謀行為そのものである。 (c) 被告中華航空は,オートパイロット使用の主体,目的は不明であって,事故調査報告書も「ランドモードを選択する操作とともに,オートパイロットの補助を得て正規の降下経路に戻ろうとした可能性がある」として操縦士がオートパイロット接続とともにランドモードに切り替える操作を行った可能性を指摘しており,この場合には運行上何ら問題はないと主張する。 しかしながら,このときの操縦士がランドモードに切り替える意図であったことを示す証拠は何もない。また,仮に,そのような意図があったと考えた場合には,操作としては,縦方向と横方向のサブモードを解除する方法によることになるが,要するに,本件乗員らは,それに失敗した,ということである。 すなわち,一般に,ゴーアラウンドモードは,最終的な,普通であれば覆すことのない判断であって,そこからランドモードに切り替えることは,日常の適用の範囲で使用することはないが,難しい手順ではない。なお,被告中華航空においては,そのような訓練もなされていなかった。 これらに鑑みれば,被告中華航空の主張は,結局のところ,ゴーアラウンドモードに入っていることを完全に認識していた状況の下で,ランドモードにする旨の呼唱も,オートパイロットを接続する旨の呼唱も全く行 これらに鑑みれば,被告中華航空の主張は,結局のところ,ゴーアラウンドモードに入っていることを完全に認識していた状況の下で,ランドモードにする旨の呼唱も,オートパイロットを接続する旨の呼唱も全く行わないまま,訓練ですら行ったことのないゴーアラウンドモードからランドモードへの切り替えにあえて挑み,難しくない手順を完全に失敗し,失敗したにもかかわらず,その状態を無視して,着陸の意図に反してゴーアラウンドモードを継続し,かつ,オートパイロットを接続したままにしたというに帰着する。 これもまた,著しい重過失であることはもちろん無謀行為というほかはない。 d ゴーアラウンドモードを解除できず,副操縦士はそのことを知っていたにもかかわらず,機長に報告しないまま操縦を継続したこと(前記a③)について(a) 本件乗員らがゴーアラウンドモードの解除を試みたが失敗したことは,以下の経過から明らかである。 〔1〕 機長は,副操縦士に対し,「君,君はそのゴーレバーを引っかけたぞ。」(午後8時14分10秒),「それを解除して。」(14分12秒),「君,君はゴーアラウンドモードを使ってるぞ。」(14分30秒),「今ゴーアラウンドモードになってるぞ。」(14分45秒),「私の,あのランドモードは。」(14分58秒)と,繰り返しゴーアラウンドモードになっていることを告げており,機長は,フライトモード表示器の表示を見つつ,ゴーアラウンドモードを解除してランドモードを選択することを明らかに意図して,副操縦士にもそのための操作を指示していた。 つまり,この間,一貫して,本件乗員らは,着陸進入を継続する意図を有していた。それゆえ,着陸進入継続のためには,オートパイロットが接続したままである限り,ゴーアラウンドモードの解除が必要である状況を認識していたのである。 〔2〕 しかるに 着陸進入を継続する意図を有していた。それゆえ,着陸進入継続のためには,オートパイロットが接続したままである限り,ゴーアラウンドモードの解除が必要である状況を認識していたのである。 〔2〕 しかるに,本件乗員らは,ゴーアラウンドモードを解除することに失敗した。しかも,副操縦士は,解除できないこと(解除方法が分からないこと)を認識していながら,全く機長に報告しておらず,また,機長は,機体の状況・異常についての確認を怠った。 つまり,本件乗員らは,ゴーアラウンドモードとなっていることを認識しつつ,副操縦士は,自らがコントロールを失っている状況を無視し,ゴーアラウンドモードが解除できないことを認識したまま機長には何ら報告をせず,機長は,自らがコントロールを保っているかを何ら確認せず,ゴーアラウンドモード解除の認識が不完全なまま,操縦を継続し,ゴーアラウンドモードの下で,着陸進入を継続することを意図し,かつ,進入継続のための操作に失敗し続けたのである。フライトモード表示器は,ゴーアラウンドの表示を午後8時15分11秒に機長が操縦を交替してスラストを増加するまで継続していた。 〔3〕 そもそも,ここで,本件乗員らは,①オートパイロットによってそのままゴーアラウンドを行う,②直ちにオートパイロットを解除する,③ゴーアラウンドモードを解除する(操縦モードをランドモードに変更するのもこの解除の一つである。)といういずれかの方法をとることで,本件事故を,容易に回避することができたのであるが,本件乗員らは,この3つの方法のうち,あえて③の操作を意図して実行しようとし,しかも,これに失敗したのである。 すなわち,本件乗員らは,自らの進入継続意図に照らしてゴーアラウンドモードの解除が必要な状況を,オートパイロットを接続した少なくとも14分18秒からこれが解除され ,しかも,これに失敗したのである。 すなわち,本件乗員らは,自らの進入継続意図に照らしてゴーアラウンドモードの解除が必要な状況を,オートパイロットを接続した少なくとも14分18秒からこれが解除される14分49秒まで認識していたが,それにもかかわらず,ゴーアラウンドモードの解除に一度として成功しなかった。副操縦士は,自らが本件事故機のコントロールを失っている状況を十分認識していた。また,それゆえ,そのままでは本件事故機を着陸させることができないことを間違いなく認識していたはずである。しかし,副操縦士は,機長への報告・確認をしないままあえて操縦を継続した。 (b) 本件乗員らの上記の失敗は無謀行為であるといえる。 旅客機の乗員には,基本的な操作方法を熟知して操作するという最も基本的な義務があり,通常想定されていない手順にせよ,自ら操作している航空機のコンピューターの基本的な操作方法を熟知して意図した操作を実行することは当然である(逆にいえば,そうでなければ意図してはならない。)。とりわけ自動飛行システムを搭載している航空機を操縦する場合は,自動飛行システムを十分に理解し,操縦モードを変更する操作方法を熟知して意図どおりの操縦を行う義務を有していた。 しかるに,上記のとおり,操縦を担当していた副操縦士は,本件事故機のコントロールを確保できていない状況の下,そのままでは本件事故機を着陸させることができないことを明らかに認識していたはずであるにもかかわらず,機長との間で何らクロスチェックを行わないまま,ゴーアラウンドモードの下でオートパイロットを接続したまま,前記(a)〔3〕に挙げた①の方法も②の方法も選択せず,ことさら進入継続を意図し,あえて③の方法を意図して実行しようとし,これに失敗したもので,自ら操縦する航空機の操縦の基本的操作方法を熟知して ま,前記(a)〔3〕に挙げた①の方法も②の方法も選択せず,ことさら進入継続を意図し,あえて③の方法を意図して実行しようとし,これに失敗したもので,自ら操縦する航空機の操縦の基本的操作方法を熟知して意図どおりの操縦(すなわちゴーアラウンドモードの解除)を行うという最も基本的な義務に違反した重大な過失であり,また,本件事故機を操縦士の意図の下で制御することが不能となって本件事故機の墜落という損害が生ずるおそれがあることを認識して行なった無謀行為そのものである。 (c) 被告中華航空は,乗員に期待される操縦方法の理解は,運航マニュアルに明確に記載され,訓練においても明確に教示されるものに限られるところ,事故調査報告書が運航マニュアルに記載されたゴーアラウンドモードの解除方法は不明確としており,また,訓練の対象ともされていないから,本件乗員らには操縦方法について理解が期待されるものではなく,過失はないと主張する。 〔1〕 しかしながら,ゴーアラウンドモードを解除するためには,縦方向,横方向ともに,ランドモード以外のモードを選択すればよい。このことは通常のゴーアラウンドの手順からも当然の手順であり,また,簡単な手順である。ゴーアラウンドモードは縦方向及び横方向の組み合わされたモードであって,このことは,フライトモード表示器上のゴーアラウンドモードの表示も縦方向及び横方向の部分を包含し,幅広い領域の表示になっていることから視覚的にも理解できるし,操縦士は当然そのことをよく知っている。 そもそも,本件事故機は,オートパイロットを接続した状態では,ゴーアラウンドモードを解除しなければ,着陸できないのであるから,操縦士は,ゴーアラウンドモード解除の方法について,当然知っているはずであり,副操縦士も,午後7時46分31秒にはゴーアラウンドモードを解除する ドモードを解除しなければ,着陸できないのであるから,操縦士は,ゴーアラウンドモード解除の方法について,当然知っているはずであり,副操縦士も,午後7時46分31秒にはゴーアラウンドモードを解除する方法について復唱しており,「ヘディングセレクト」(横方向)及び「レベルチェンジ」(縦方向)によってゴーアラウンドモードを解除できることを知っていたのである。なお,復唱されているのはゴーアラウンド完了後のゴーアラウンド解除手続であるが,ゴーアラウンド完了前であっても解除手続は同じである。 〔2〕 確かに,事故調査報告書には,運航マニュアルの記述には,縦方向のモードのみを選択した場合,ゴーアラウンドの機能は完全に解除されていないことが記載されていないため,モード選択とその表示及び各々の実際の機能についての関係が不明瞭であり,理解しにくいものとなっている旨の記述がある。 しかしながら,ゴーアラウンドモードの完全な解除とはならなくても,縦方向のモードを選択すればゴーアラウンドモードの重要な要件である機首上げの作用は解除されるのであり,ゴーアラウンドモードを完全に解除する必要はなかったのであるから,仮にゴーアラウンドモードを完全に解除するための運航マニュアルの上記記載が不明確であったとしても,被告中華航空の責任には何ら影響がない。 なお,上記記載により誤解があり得るとすれば,縦方向か横方向のモードの一つを解除すれば完全にゴーアラウンドが解除できるというものであろうが,そもそも,本件操縦士らがゴーアラウンドモードを解除しようとして,縦方向のモード又は横方向のモードのどちらかのみを選択したところ,それだけでは完全なゴーアラウンドモードの解除ができなかったといった事実がない以上,当該運航マニュアルの記載と本件事故との関係を問題とする余地はない。 〔3〕 また,確 どちらかのみを選択したところ,それだけでは完全なゴーアラウンドモードの解除ができなかったといった事実がない以上,当該運航マニュアルの記載と本件事故との関係を問題とする余地はない。 〔3〕 また,確かに,ゴーアラウンドモードからランドモードに切り替えることは,日常の適用の範囲で使用することはない。 しかし,まず,ここで原告らが回避行為の一つとして主張しているゴーアラウンドモードの解除は,被告中華航空が,オートパイロット接続行為に関連して主張するところの「オートパイロット接続とともにゴーアラウンドモードをランドモードに切り替える操作を行った」のとは異なり,単なるゴーアラウンドモードの解除である。この操作は,前記のとおり,全ての操縦士が知っており,本件乗員らも復唱しているとおり知っていたことが明らかな基本的操作手順である。 e 操縦輪の操舵が重い状態であるにかかわらず,進入を継続するために,乗員が操縦輪を押し続けたこと(前記a④)について(a) ゴーアラウンドモードでオートパイロットが接続された状態で,機長の繰り返しの指示の下に,副操縦士が操縦輪を押し続けたことにより,極めて危険なアウトオブトリムの状態を招いた。 すなわち,ゴーアラウンドモードでオートパイロットが接続されている場合,オートパイロットは水平安定板を機首上げ状態に作動させるが,この状態で,操縦士が操縦輪を押し続けると,昇降舵が機首下げ状態に作動し,異常なアウトオブトリムの状態に陥ることになる。 また,本件乗員らは,フライトモード表示器上のゴーアラウンドの表示が一向に変わらないことに加え,副操縦士が操縦輪を押し続けているのに押すことが困難であって押し下げられないことを継続的に認識し,操縦輪を押したにもかかわらず機首が下がらないという機体の異常,すなわち,操縦輪を押しても意図どおり反応 操縦士が操縦輪を押し続けているのに押すことが困難であって押し下げられないことを継続的に認識し,操縦輪を押したにもかかわらず機首が下がらないという機体の異常,すなわち,操縦輪を押しても意図どおり反応しないことを知り,機体の挙動の異常性を認識していた。また,この間,トリムホイールも音を立てて回転して機体の挙動の異常を示していた。 本件乗員らは,このような状況下でそのまま運行すれば,本件事故機を操縦士の意図の下で制御することが不能となって,本件事故機が墜落するという損害が生ずるおそれがあることを当然知っていた。 (b) 本件乗員らの上記のような行為は無謀行為というべきである。 機体姿勢に関して異常な反応がある場合に直ちに行わなければならない措置は,運航マニュアルで定められており,「①操縦輪を持ち,②トリムホイールをしっかりもち,③(もしオートパイロットが接続されていれば)オートパイロットを解除して操縦輪をしっかり持ち,④トリムホイールを用いて必要なトリムを行い,⑤両方のピッチトリムレバーが作動したことを確認すること」である。 クイック・レファレンス・ハンドブックにも同様の記述があり,後記イ(ウ)d(b)〔3〕の1989年(平成元年)のヘルシンキ空港におけるインシデントにおいても,乗員はこの解決法を用いてリカバリーに成功している。なお,もし,水平安定板のオーバーライドをしたいだけなら,トリムホイールを前に回すだけでよかった。 ところが,本件乗員らは,これらの操作を行わず,機長の繰り返しの指示の下に操縦輪を押し下げ続けて,アウトオブトリムの状態を招いた。オートパイロットが接続されている間,操縦輪を押し続けると,機体のトリム安定性を喪失し,極めて危険な状態になることは上記のインシデント後の運航マニュアルにおいて特に警告されている。 本件乗員らは,運航 トパイロットが接続されている間,操縦輪を押し続けると,機体のトリム安定性を喪失し,極めて危険な状態になることは上記のインシデント後の運航マニュアルにおいて特に警告されている。 本件乗員らは,運航マニュアルの「CAUTION」に記載されている危険な行為によって,しかも操縦輪の重さを完全に認識し,機体の挙動に異常がある危機状況,すなわち,このままでは本件事故機が墜落するという状況を認識しながら,何ら他の手段を講ずることなく,誤った手段にあくまで執着するという深刻な過ちを犯した結果,本件事故機を墜落させたものであって,本件乗員らの行為は,明白な重過失であることはもちろん,無謀行為にほかならない。 (c) 被告中華航空は,運航マニュアルの記載は分かりにくく,オートパイロットをオーバーライドすることによる危険は認識し得なかったと主張する。 しかしながら,運航マニュアルには「オートパイロットに逆らって操作することは決して通常の手順ではなく避けるべきである。」と記載され,これに続いて「CAUTION」では,「CMDに入っているオートパイロットに逆らって,縦軸上の操作を行う(縦方向にオートパイロットをオーバーライドする)ことは,ランドモード及びゴーアラウンドモードにある場合は危険な状況を引き起こす可能性がある。」と記述され,本件乗員らのとった行為を明確に禁じている。 また,後記イ(ウ)d(b)〔3〕の1991年(平成3年)のモスクワ空港におけるインシデント後の運航マニュアル速報では「オートパイロットがCMD状態にあるとき,もし,なんらかの異常な機械挙動の疑いがあれば,直ちにオートパイロットを解除すること」,「オートパイロットが解除されていない状態で,飛行経路を変更しようと試みないこと」など,オートパイロットのオーバーライドについて通告が行われている。 れば,直ちにオートパイロットを解除すること」,「オートパイロットが解除されていない状態で,飛行経路を変更しようと試みないこと」など,オートパイロットのオーバーライドについて通告が行われている。 (d) また,被告中華航空は,トリムホイールや水平安定板のモーションウォーニングなどの装置が有効に機能しておらず,アウトオブトリムになっていることを本件乗員らが認識できなかったこと,オートパイロットが接続されていないと考えていたことから,操縦輪を押し続けることも正常な行為であると主張する。 確かに,本件事故機には,オートパイロットがオーバーライドされ,水平安定板と昇降舵が相反して作動し,機体がアウトオブトリムの状態にあることを直接かつ積極的に示す警報装置がなかった。 しかしながら,本件事故のシミュレーションで経験されたように,本件乗員らは,操縦輪が押し下げられないことを継続的に認識し,機体の挙動の異常性を認識していた。それはまさにアウトオブトリムの状態にあることを示すものにほかならないのであるから,本件乗員らはアウトオブトリムの状態を当然認識していたはずである。もちろん,アウトオブトリムの状態が事故・人命に直結するものであることは論を待たない。 f 以上のとおり,上記bからeの各行為(上記a①から④の各行為)は,それぞれ一つだけを見ても,改正ワルソー条約25条の無謀行為に該当し,かつ,一連の行為が全体として無謀行為に該当するものというべきである。 イ被告中華航空の主張原告らの主張はいずれも争う。 (ア) 責任制限規定の違憲性について原告らのいわゆる条約違憲論は,そもそも,本件法律関係において憲法14条,29条がどのように適用されるのかが明らかではなく,かつ,各条項の解釈,先例に照らしどの点が違憲の疑いがあるのか一切明らかでなく,本件において被告 違憲論は,そもそも,本件法律関係において憲法14条,29条がどのように適用されるのかが明らかではなく,かつ,各条項の解釈,先例に照らしどの点が違憲の疑いがあるのか一切明らかでなく,本件において被告中華航空の主張する責任制限規定の適用を排除する理由になり得ない。 また,責任制限規定が条約上の規制として存在するにもかかわらず,これを違憲と判断することは,条約に対して極めて厳格な違憲審査基準をもって臨む最高裁の立場からして,容易に認められるものではないことが改めて確認されるべきである。 アメリカの連邦巡回裁判所は,コルツ対アメリカン航空事件判決(以下「コルツ判決」という。)において,改正ワルソー条約25条の文言が主観説で解釈されるべきこと,そして,こうした解釈は条約に関する立法府の立場を十分に尊重すべきことから帰結されることを明確に述べている。 仮に,原告らが主張するように,条約が乗客や遺族の損害賠償請求権を不当に制限しているというのであれば,それは財産権(憲法29条)の制限であって,そのような不当・違憲の条約を締結している日本政府に対する補償請求という形で問題にすべきであろう。 いずれにしろ,外国航空会社である被告中華航空が,日本の締結した条約について,日本国民による違憲問題の論争の相手方として対応すべき地位にないことだけは確かである。 (イ) 改正ワルソー条約25条の意義についてa 改正ワルソー条約25条の意義(a) 改正ワルソー条約25条の「無謀にかつ損害の生ずるおそれがあることを認識して行った」行為というためには,その行為が「無謀」であったこと,すなわち,どんな不注意な人間でも行動する際には有するような最低限の注意を欠くと評価されることに加え,さらに,実際の行為者が,現に損害発生の蓋然性が生じていることを認識していたこと(以下「認識の ,すなわち,どんな不注意な人間でも行動する際には有するような最低限の注意を欠くと評価されることに加え,さらに,実際の行為者が,現に損害発生の蓋然性が生じていることを認識していたこと(以下「認識の要件」という。)が必要であり,その行為者が「認識すべきであったが認識していなかった場合」では足りない。 (b) 改正ワルソー条約は,後記bに詳述するとおり,改正前ワルソー条約25条の解釈が国際的な統一を欠くところから,これを全ての改正ワルソー条約加盟国に普遍的に適用されるよう意図され,その具体的な条文の採択に際しては,三つの文案が検討されたが,「無謀に行為した」,「無謀にかつ損害が生ずるおそれがあることを認識し又は認識すべきであったのに行為した」という他の案を排して,現在の条文が最多数の支持を得て採用されたものである。 このような条約の制定過程に鑑みれば,認識の要件として,実際の行為者が作為・不作為を行うに当たって,「その作為・不作為から損害が発生する具体的な危険がある」ことを「現に認識していたこと」を要するのであり,単に「認識すべきであった場合」,すなわち「認識」に関する過失という要素を排除しているのである。 (c) 原告らは,改正ワルソー条約25条に関する審議過程で示された立法者の意思は,同条約所定の責任限度額を適用しない場合として,「無謀に」との要件に加え,実際の行為者が損害発生の具体的な危険性が発生していることを認識していた場合のみならず,行為者の能力等を考えれば,当然認識すべきであった場合も含む(客観説)と主張するが,これは,ヘーグ会議において行われた各国代表による討議の本質を全く無視した独自のものである。 b 改正経過について(a) 1953年(昭和28年)9月にリオ・デ・ジャネイロで開かれたICAO法務委員会会議において,改定議定書 われた各国代表による討議の本質を全く無視した独自のものである。 b 改正経過について(a) 1953年(昭和28年)9月にリオ・デ・ジャネイロで開かれたICAO法務委員会会議において,改定議定書草案第ⅩⅢ条として,「(責任限度額は,当該損害が)損害を生ぜしめる意図をもって行われた,故意の作為又は不作為によって発生した場合には適用しない。」との案(以下「リオ案」という。)が採択された。 ここでは,損害が,損害を発生させようという確定的な故意によって発生させられた場合のみが,責任制限規定の除外事由とされていたのであり,その後は,このリオ案をベースとして審議が重ねられていった。 (b) ヘーグ会議第16回会議リオ案は,ヘーグ会議出席国の過半数の支持までは得られなかったため,ヘーグ会議の作業部会は,第16回会議において,「(責任限度額は,当該作為又は不作為が)損害を生ぜしめる意図をもって又は無謀にかつ損害が恐らく生ずるであろうことに注意することなく行われた場合には適用しない。」との提案(以下「第一次案」という。)を行った。 同会議においては,ノルウェー,イギリス,イタリア,フランス(ただし,責任限度額を上げるという条件付)から賛成意見が,オーストラリア等から,これに反対して改正前ワルソー条約を支持する等の意見が表明された。 しかし,少なくとも第一次案について,改正ワルソー条約25条の「認識して」という表現に比べれば過失という要素を含んでいるようにもみえる「注意することなく」という表現であったにもかかわらず,「その行為者の能力等を考えれば,当然損害発生を認識すべきであった」という結果の認識に関する過失の要素が含まれているとはっきり述べた国は一つもなく,ただオランダがその危険性ありとして変更提案をし,またドイツがその点は明らかではない旨述べたに止 を認識すべきであった」という結果の認識に関する過失の要素が含まれているとはっきり述べた国は一つもなく,ただオランダがその危険性ありとして変更提案をし,またドイツがその点は明らかではない旨述べたに止まったのである。 逆に,フランス,スペイン,イギリスなどは,第一次案においてはそのような認識という主観的要素があくまで要求されている,とはっきり言明した。 (c) 同第17回会議アメリカ代表から,「行為者が故意に行った場合及び無謀にかつ損害が恐らく生ずるであろうことを認識していた,若しくは認識すべきであった場合は,責任は無制限となるべきこと」とする旨の提案がされた。これは,imputedknowledgeをactualknowledgeとは別の概念とはっきり区別した上で,このimputedknowledgeを含めるとの提案であり,原告らのいう客観説にほかならない。 その後行われた第1回の投票において,この二つが明確に別々の案として投票の対象とされ,その結果,現実に認識していたことを要するという立場,すなわち主観説が多数の賛同を得,最終的に採択された改正ワルソー条約25条も,まさにこの主観説に基づく表現そのものとなったのである。 なお,原告らは,第1回目の投票においても,明確に客観説の立場に立つ見解の方が多かったと主張するが,3案のうち,「無謀に」との案を客観説に立つものとする誤解に基づくものである。 また,原告らは,第2回目の投票の結果により,第1回目の中間投票の意味は極めて薄弱なものになったと主張するが,第2回目の投票の結果は,リオ案につき,責任限度額を37万5000フランとする案に3票,25万フランとする案に7票,20万フランとする案に17票,主観説につき,責任限度額を37万5000フランとする案に4票,30万フランとする案に5票,25万 度額を37万5000フランとする案に3票,25万フランとする案に7票,20万フランとする案に17票,主観説につき,責任限度額を37万5000フランとする案に4票,30万フランとする案に5票,25万フランとする案に8票,20万フランとする案に20票,改正前ワルソー条約維持として,責任限度額を37万5000フランとする案に2票,30万フランとする案に2票,25万フランとする案に2票,20万フランとする案に23票,という結果であり,25条の改定案文ごとに分類すれば主観説が最多数である。改正前ワルソー条約を維持しようとする立場を客観説であると仮定したとしても,第2回目の投票では,主観説及び主観説を更に限定した立場が客観説を大きく上回ったのであるし,いずれにしても,第2回目の投票でそもそも客観説の案文が独立の投票の対象にすらならなかったことに端的に表れているとおり,アメリカ代表のいう認識すべき場合を含むべしとする客観説は,ヘーグ会議出席国の中では,もしあったとしても少数意見の立場となったことが明らかである。 (d) 第23回会議第16回及び17回会議における経緯を踏まえて,ヘーグ会議の作業部会は,本会議に対し,改正ワルソー条約25条どおりの案文(以下「第二次案」という。)のみを討議のため提出した。この作業部会の提案は,主観説に立つ条文のみであり,この事実自体,ヘーグ会議出席国の大勢として,客観説は,もしあったとしてももはや無視し得るほどの少数意見にすぎなかったことを示すものといえよう。 これに対し,原告らは,オーストラリア代表の修正提案及びその撤回の経緯から,客観説的解釈の余地が残されていると主張する。確かに,オーストラリア代表は,第二次案中の「認識」の前に「現実の」という語句を挿入すべきことを提案したが,その理由は,単に「認識」という場合, 緯から,客観説的解釈の余地が残されていると主張する。確かに,オーストラリア代表は,第二次案中の「認識」の前に「現実の」という語句を挿入すべきことを提案したが,その理由は,単に「認識」という場合,その「認識」を認定するに当たってある推定が行われるかもしれないという立証方法の不明瞭性を排除しようとしたのであって,決して,客観説的解釈の可能性を排除しようとした訳ではない。よって,オーストラリア代表による修正提案及びその撤回の経緯が,客観説的解釈の余地を残したとの根拠となるものではない。 また,原告らは,ベルギー代表の発言を根拠に,ヘーグ会議出席国の間に客観説についてコンセンサスがあったと主張する。 しかし,ベルギー代表の発言は,自身の見解を述べたにすぎないものであるし,また,ベルギーとしては,行為者に損害発生を意図したという確定的な故意がある場合に限定して責任無制限とする考えに同意していたのであって,かかる立場をとっていることからすれば,ベルギー代表のいう「特に重大な過失」も,法的な意味での,義務違反としての「過失」などではなく,故意による行為のような「重大な誤ち」という意味の一般的な表現であると解釈すべきである。よって,ベルギー代表の発言が,客観説についてコンセンサスがあったことの根拠とはならないことは明らかである。 c 諸外国の裁判例について(a) イギリスの裁判例イギリスの裁判所は,ゴールドマン事件控訴院判決及びガートナー事件控訴院判決において,改正前ワルソー条約25条についてのヘーグ議定書(改正ワルソー条約25条)採択の経緯を詳細に検討の上,行為者が作為・不作為を行うに当たって,その作為・不作為から損害が発生する蓋然性があることを現に認識していたことを要求しており,行為者がその蓋然性を認識すべきであったのに認識していなかった場合 上,行為者が作為・不作為を行うに当たって,その作為・不作為から損害が発生する蓋然性があることを現に認識していたことを要求しており,行為者がその蓋然性を認識すべきであったのに認識していなかった場合,あるいは,行為者が無謀な行為により冒したリスクがもし現実化したなら損害が発生する蓋然性が生じることを認識しているにすぎない場合には改正ワルソー条約25条に該当しないとしている。 イギリスの裁判例は,制定者意思を探求した上で導き出されたものであり,日本の裁判所が当該条項の解釈作業を行うに際しても,その指針として十分な妥当性を有する。 (b) アメリカの裁判例について大韓航空事件控訴審判決及びその原審判決は,事故機の乗員は,悪い行為であることを知りながらその行為を行い,しかもその行為によってソ連戦闘機による撃墜の危険性が充分あることを認識していたと判断した上で,大韓航空のwilfulmisconductを認定しているのであって,行為の違法性(もしくは不法性)と行為によってもたらされるであろう結果の認識という点を離れて,航路逸脱という行為自体が,客観的に見て損害発生の蓋然性を包含するか否かを問題にした訳ではない。 コルツ判決では,改正ワルソー条約25条と同じ条文を採択したアメリカ議会の立法時における意思は,明らかに主観説に立つものであったことを理由の一つとして,同条は主観説の立場で解釈すべきであると結論した。かかる結論は連邦最高裁においても支持されている。そして,コルツ判決は,従前の裁判例を引用しつつ,「被告が自らの行為が原告に損害を引き起こす結果になるであろうことを主観的に知っていたことを原告の側が」証明すべきことを要求し,状況証拠から「気付くべきであった」では足りず,「知っていたはずである」という推論が成り立つことが必要とした。 (c) フラ あろうことを主観的に知っていたことを原告の側が」証明すべきことを要求し,状況証拠から「気付くべきであった」では足りず,「知っていたはずである」という推論が成り立つことが必要とした。 (c) フランスの裁判例についてフランスの判例は,「損害発生の蓋然性の認識」について,行為者の内心の意識とは別の客観的な状況や行動を前提として,しかも行為者を「通常の思慮分別をそなえた人間」として,いわば定型化してとらえたうえで,これを認定しようとするが,このような態度は,行為者を具体的な行為者自身の事情を考慮することなく定型化してしまうという点で,改正ワルソー条約25条の解釈に関する世界各国の裁判例を見ても極めて例外的であり,極めて異例のものである。フランスの判例は,改正ワルソー条約25条を客観説で理解することが許されるのかについては,全く何も語っていない。 また,そもそも,原告らの引用する判決は,いずれも客観説とは何の関連もない。 前二者の判決は,「許されざる過失」は,「損害発生の蓋然性を認識」していたことを要件とすることを前提としつつ,必ずしも行為者が結果発生の蓋然性そのものを直接認識したか否かははっきりしなくとも,特殊な危機的状況下で,本来行うべき行為を意図的に無視すれば,それは損害発生の蓋然性を認識し,これを無謀に容認したことにほかならないと判断したものであるし,後者の判決は,本来行うべからざる行為を,それと認識しながら,あえてこれを行えば,それは無謀な行為であり,損害発生の蓋然性を認識していたものと推定できると判断したものである。 (ウ) 改正ワルソー条約25条の適用の可否についてa 副操縦士が誤ってゴーレバーを作動させたことについて(a) 着陸進入を行おうとしているのにゴーレバーを作動させるということは,本来の操縦目的とは矛盾する事態ではある 約25条の適用の可否についてa 副操縦士が誤ってゴーレバーを作動させたことについて(a) 着陸進入を行おうとしているのにゴーレバーを作動させるということは,本来の操縦目的とは矛盾する事態ではあるが,着陸のための進入中にゴーレバーを作動させるという操作は,一定の状況下では必要な操作であって,乗客の死傷という結果を招く具体的な危険性を有するものではない。 すなわち,着陸のための手動操縦進入中にゴーレバーが作動しても,ゴーレバーを解除することなく,オートスロットルを解除してスラストを調整しつつ,操縦輪を機首下げの方向に操作して進入を継続しても何ら航空機の安全に影響しないのであって,本件乗員らは実際にこのような操作を行ったのである。そもそも,進入中のゴーレバー作動,すなわちゴーアラウンドの実行は,着陸の際に他機との衝突事故を回避するために設けられている安全策であって,通常想定されている手続であり,運航マニュアルに標準的な手続として記載されているものであって,およそ乗客の死傷などという結果を招来する類のものではない。したがって,着陸のための進入中にゴーレバーが作動することは,乗客の死傷という結果を招く危険を一切及ぼすようなものではない。 事故調査報告書は,本件事故発生に至る一連の事実連鎖の中で,端緒となった事実としてゴーレバーの作動を取り上げているにすぎず,しかも,その原因は,結局は特定できないと結論している。乗客の死傷という結果を招く危険があったかどうかという点を離れて,ゴーレバー作動そのものについても,事故調査報告書の見解としては,本件乗員らに非難されるべき点があったとはいっていない。 (b) また,ゴーレバーが作動した原因は,乱気流による不可抗力の可能性が高く,このことは,事故調査報告書における台湾当局の見解に既に示されており,本件事故 難されるべき点があったとはいっていない。 (b) また,ゴーレバーが作動した原因は,乱気流による不可抗力の可能性が高く,このことは,事故調査報告書における台湾当局の見解に既に示されており,本件事故調査に関与した事故調査官の見解とも一致する。そのように考えられる理由は以下のとおりであるが,この見解が正しいとすれば,本件乗員らを何ら非難できないことは明らかである。 〔1〕 当日進入中,全般にわたり後方乱気流の影響があり,実際,ゴーレバー作動の直前である午後8時8分26秒以降3分間にわたり本件乗員らが後方乱気流について議論している。 〔2〕 午後8時11分35秒には副操縦士がオートパイロットを切っているが,これは当日の名古屋空港の着陸機が多いことから,後方乱気流が頻発しかつ相当高いレベルに達しており,オートパイロットでは所望の進路を維持することが難しかったので,手動に操縦を切りかえる必要があったからと考えられ,副操縦士は,後方乱気流を強く意識していたので,後方乱気流に遭遇した場合には危険を避けるため,いつでもゴーアラウンドできるような態勢を取っていたと考えられる。 〔3〕 ゴーレバーが作動した午後8時11分14秒過ぎにフライトレコーダーに約0.2Gの垂直加速度が記録されている(測定や記録の誤差や精度から,この垂直加速度が発生したのはゴーレバー作動とほぼ同時といい得る。)。 これは,上記〔2〕のような意識態勢下にあった副操縦士が,その際の揺れにより意図せずにゴーレバーを作動させてしまった可能性が高い。ゴーレバーが作動した後に,本件乗員らの間でゴーレバー作動に関するやりとりがないのも,その原因について後方乱気流によるものとの共通の認識があったと考えなければ説明がつかない。 b ゴーアラウンドモードが解除されていない状態で,オートパイロットを接続し, に関するやりとりがないのも,その原因について後方乱気流によるものとの共通の認識があったと考えなければ説明がつかない。 b ゴーアラウンドモードが解除されていない状態で,オートパイロットを接続し,進入を継続したこと(オートパイロットの接続行為そのものには問題はなかったこと)について(a) オートパイロットを接続したのが機長か副操縦士かは特定できないというべきであるところ,どちらがオートパイロットを接続したにせよ,ランドモードを選択しようとするとともに,オートパイロットの補助を得て正規の降下経路に戻ろうとした可能性がある。 〔1〕 事故調査報告書は,オートパイロット接続に当たって,接続後どのようなモードで飛ぶことになるのか,本件乗員らが,呼唱するにせよほかの方法によるにせよ,お互いに確認しなかったか否か,あるいは本件乗員らのいずれか一方が,オートパイロット接続の事実又は接続後のフライトモードを認識していなかったか否か,については結論を下していない。 また,原告らの提出した証拠を全て考慮しても,機長又は副操縦士の一方がオートパイロットを接続した際に,同時にランドモードを選択しようとしながら,他方の操縦士はこれを認識していなかったという事実を裏付ける証拠はない。 〔2〕 そして,事故調査報告書は,機長が副操縦士にオートパイロットの接続を指示した可能性,機長又は副操縦士が自らの判断で行った可能性等,いくつかの可能性を指摘しながら,結局,いずれが最も可能性が高いかの特定はできない,機長又は副操縦士がオートパイロットを接続したことについては,ランドモードを選択する操作とともに,オートパイロットの補助を得て正規の降下経路に戻ろうとした可能性が考えられると結論しているのである。 機長が副操縦士にオートパイロットの接続を指示したのであれば,当然,機長も副 択する操作とともに,オートパイロットの補助を得て正規の降下経路に戻ろうとした可能性が考えられると結論しているのである。 機長が副操縦士にオートパイロットの接続を指示したのであれば,当然,機長も副操縦士も,オートパイロット接続の事実及び接続後のフライトモード(ランドモード)の認識があったと考えるのが合理的である。 (b) オートパイロットを接続すること自体は,注意義務が問題となるような危険な行為であるとはいえない。 〔1〕 オートパイロット接続及びランドモード選択という行為は,着陸進入のための行為として,運航規則上も何ら問題はなく,オートパイロットを接続したことそれ自体については,本件乗員らに何ら非難すべき点はない。 さらに,ゴーアラウンドモードのままオートパイロットを接続するという行為に限っても,自動操縦によるゴーアラウンドとなるというにすぎず,本来何らかの運航上の危険をもたらすようなものではない。着陸進入を継続しようとすれば,オートパイロット接続後でも,ゴーアラウンドモードをランドモード等に変更すればよいし,そのままモードを変更することなくゴーアラウンドしてもよい。 そもそも,オートパイロットを接続することで操縦を自動化でき,操縦士の負担は効果的に軽減されるのであり,運航の安全のためにこそなれ,危険な状況を招くようなものではない。製造メーカーである被告エアバスのマニュアルは,離陸直後より着陸の段階まで,なるべくオートパイロットを使うよう推奨している。 〔2〕 事故調査報告書は,ランドモードを選択しようとするとともにオートパイロットを接続したという行為自体については,安全であるとも,また逆に危険であるともいってはいないが,少なくともこのような行為は運航手続上問題があるとは指摘できないという見解というべきであろう。 したがって,ゴーアラウンド 行為自体については,安全であるとも,また逆に危険であるともいってはいないが,少なくともこのような行為は運航手続上問題があるとは指摘できないという見解というべきであろう。 したがって,ゴーアラウンドモードのまま2つのオートパイロットを接続したことについて,本件乗員らに何ら非難さるべき点はないのであって,このことは事故調査報告書の見解に裏付けられているといえる。 なにより,原告ら自身も,オートパイロット接続とともにランドモードを選択するという行為を,本件乗員らが取り得べき行為と認めており(ただし,ランドモードの選択操作が適切ではなかったことの問題点は,別途検討する必要がある。),オートパイロット接続自体には何らの問題もないことを明らかにしているのである。 c ゴーアラウンドモードを解除できず,そのことについて本件乗員らの認識が不完全だったこと(ゴーアラウンドモード解除に関する運航マニュアルの記述が明確ではなかったこと)について(a) 航空機の運航乗員に期待されるフライトコンピューターに関する理解は,具体的には運航マニュアルに明確に記載され,訓練においても明確に教示されるものに限定されるところ,運航マニュアル記載のゴーアラウンドモード解除方法は不明瞭で分かりにくいものであった。したがって,本件乗員らに,ゴーアラウンドモードの解除ができなかったことについて,非難されるべき点はない。 (b) ゴーアラウンドモードのままオートパイロット接続という状態で,本件乗員らとすれば,①そのままゴーアラウンドを行うか,②ゴーアラウンドモードをランドモードへ変更するか,あるいは③オートパイロットを解除して進入を継続するかという選択肢があった。このうち①と③は運航マニュアルに明確に記載されており,一般的な手続として訓練されていたが,②は,通常の航空会社においても訓練 るいは③オートパイロットを解除して進入を継続するかという選択肢があった。このうち①と③は運航マニュアルに明確に記載されており,一般的な手続として訓練されていたが,②は,通常の航空会社においても訓練が実施されない稀な手続であり,また,この手続に関する運航マニュアルの記載も不明確で理解し難いものであった。 本件乗員らが当初②の手続を試みたのは,①のゴーアラウンドを行うという操作は,それに費やされる経済的,時間的コスト及び顧客サービスの観点からして,避けられない事情でもない限り,商業的運航に携わる操縦士にとっては,避けたい操作だからであり,他方,②の操作は,通常想定はされていないものの禁止されていない操作であり,また,着陸継続という本件乗員らの目標に最もかなう手続だからである。 (c) 運航マニュアル記載のゴーアラウンドモード解除方法は,以下のとおり不明瞭で分かりにくいものであった。 〔1〕 事故調査報告書では,ゴーアラウンドモードは横方向と縦方向のそれぞれのモードを変更することによって完全に解除されるところ,運航マニュアルの記述には,縦方向のモードのみを選択した場合,ゴーアラウンドの機能は完全に解除されないことが記載されていないため,モード選択とその表示及び各々の実際の機能についての関係が不明瞭であり,理解しにくいものとなっていると結論している。 〔2〕 この記述に先だって,事故調査報告書は,意図どおりのモード変更ができなかったことは,乗員の本件事故機の自動飛行システムに関する理解の不充分さによるものと考えられるといっているが,ここでは理解の不充分さという客観的事実を述べているにすぎず,本件乗員らが当然理解しておくべきであるのに理解していなかったという批判をしているのではない。 〔3〕 ゴーアラウンドモードからランドモードへの変更が,通常の航 という客観的事実を述べているにすぎず,本件乗員らが当然理解しておくべきであるのに理解していなかったという批判をしているのではない。 〔3〕 ゴーアラウンドモードからランドモードへの変更が,通常の航空会社においてシミュレーター等による訓練が実施されない稀な手続であったことについて,事故調査報告書は,いったん接続されたゴーアラウンドモードを途中で解除し,再びランドモードを接続して進入するという手順は,進入着陸の最終フェーズにおいては通常想定されていない手続であると述べている。 〔4〕 事実,このような操作手順は,本件事故当時,A300―600型機を運航するいずれの航空会社においても,訓練の対象とはされていなかった。 〔5〕 事故調査報告書は,フランス耐空性管理当局に対し,ゴーアラウンドモード解除の手順について,運航マニュアルを改善すべく勧告している。 (d) 原告らは,運航マニュアルについての事故調査報告書の記載は,モード選択とその表示の不一致という点が明確に記載されていないということを指しているのであって,決してゴーアラウンドモードの解除の手順そのものが不明瞭であるとしているのではない,運航マニュアル上のゴーアラウンドモード変更手続は,事故調査報告書記載のとおり明確である旨主張する。 しかしながら,事故調査報告書は,「安全勧告」の中で,運航マニュアル記述の改善事項のうち「ゴーアラウンドモードの解除」の内容として,「フライトモード表示器上の表示の変更と実質的機能の変更の対応」とは別項目として,「ゴーアラウンドモードの解除方法」をも明記しているのであって,事故調査報告書が,実際に接続されているフライトモードとフライトモード表示器上の表示との関係のみならず,ゴーアラウンドモードの解除手続そのものの不明瞭さをも問題としていることは明らかである。 ま ,事故調査報告書が,実際に接続されているフライトモードとフライトモード表示器上の表示との関係のみならず,ゴーアラウンドモードの解除手続そのものの不明瞭さをも問題としていることは明らかである。 また,事故調査報告書は,「運航マニュアルの記述には,縦方向のモードを選択した場合,ゴーアラウンドの機能は完全に解除されないことが記載されていない。」と述べた上,そのために「モード選択とその表示及び各々の実際の機能についての関係が不明瞭であり,理解しにくいものとなっている。」と結論している。すなわち,運航マニュアルの記述上の問題点として,縦方向のモードを選択しても,ゴーアラウンドモードが解除されないことは書かれていないこと,ところが,ある縦方向のモードを選択しても,フライトモード表示器上はあたかもゴーアラウンドモードが解除されたかのように見えるため,そのモードによって実際はどのようなフライトモードになっているかが乗員には不明瞭であるという2つの事柄が指摘されており,ゴーアラウンドモード解除の記述に問題があることも明確に述べられているのである。 さらに,事故調査報告書は,上記記述に続き,本件事故後,被告エアバスから各オペレーター宛に,ゴーアラウンドモードを解除する方法は,オートパイロット解除ボタンによりオートパイロットを解除するか,他のモードを選択することである等の通知をしたことを挙げ,すみやかに運航マニュアル本文に反映すべきであると述べている。この一事をもってしても,事故調査報告書がゴーアラウンドモードの解除手続そのものについて運航マニュアルの記述が不明瞭であったと考えていたことは明らかである。 また,事故調査報告書は,「運航マニュアル」の項でも,ゴーアラウンドモードの解除の手順については理解しにくい記述であると再度指摘している。 本件事故機と同型 であったと考えていたことは明らかである。 また,事故調査報告書は,「運航マニュアル」の項でも,ゴーアラウンドモードの解除の手順については理解しにくい記述であると再度指摘している。 本件事故機と同型機の操縦経験豊富な操縦士も,「私もかなり詳しく読んでみました。そして,その結果,一部の操縦士がよく分からないと自問自答することもあり得るのではないかと思います。すなわち縦方向か横方向のサブモードの一つだけを解除すれば,ゴーアラウンドが完全に解除できるのではないかというふうに理解するかもしれないということを私も思います。」と証言している。 d 本件乗員らが進入を継続するため,操縦輪の操舵が重い状態であるにもかかわらず,操縦輪を押し続けたことについて(a) 本件乗員らは,以下のとおり,オートパイロットのオーバーライドの危険性を認識し得なかったというべきである。 〔1〕 運航マニュアルについて運航マニュアルには,オートパイロットがゴーアラウンドモードに接続された状態で操縦輪の押し下げ操作を行うと,操縦輪によって機首下げの方向に作動する昇降舵に反して,オートパイロットが水平安定板を機首上げの方向に作用させ,その結果機体のトリム安定性を喪失して危険な状態になるなどということは,明確な指針として示されておらず,およそ本件乗員らの認識外であり,また認識外であってもやむを得なかった。 事故調査報告書も,「オートパイロットがゴーアラウンドモードに接続されている状態で操縦輪を操作して昇降舵をオーバーライドすることの危険性は,運航マニュアルの『CAUTION』に記載されているとおりである。それにもかかわらず,乗員がこのように結果的にアウトオブトリムになる操作を行ったことは,運航マニュアルの『CAUTION』やその他の関連する記述の内容が乗員に十分に理解されていなかっ るとおりである。それにもかかわらず,乗員がこのように結果的にアウトオブトリムになる操作を行ったことは,運航マニュアルの『CAUTION』やその他の関連する記述の内容が乗員に十分に理解されていなかったことが考えられる。これは,後述するように,運航マニュアルの表現がわかりにくいことや水平安定板作動を乗員に知らせる方法が不十分なことなども背景要因として影響したと考えられる。」と述べた上,運航マニュアルの本文と「CAUTION」そのものが,オートパイロットのオーバーライドについて,「推奨と禁止の相矛盾する内容を混同して理解する可能性がある。」と指摘した上,「運航マニュアルに追加された『CAUTION』の内容は理解しにくい記述である。」と述べ,さらに,オートパイロットのオーバーライドに関して本件乗員らの理解が欠ける部分があったのは,運航マニュアルの自動飛行システムに関する記述が分かりにくいことが寄与した旨を断定している。 すなわち,事故調査報告書は,「CAUTION」を含む運航マニュアルの記述が理解しにくいということを具体的な理由を挙げて客観的な事実として断定したうえ,そのために,本件乗員らが,「CAUTION」の内容を相矛盾する記述として混同して理解した可能性があると結論しているのである。なお,運航マニュアルによれば,「WARNING」は文字通り即時な対応が要求されるのに対して,「CAUTION」は,即時の対応が要求されない,運航乗務員が操作時期を判断することが許される事態である。 〔2〕 訓練体制について事故調査報告書は,被告中華航空に対し,自動飛行システムに関する教育訓練の充実強化等を勧告しているが,フライトコンピューターを中心とする操縦士の訓練プログラムは,運航マニュアルと同様,まず第一にその航空機のメーカーが,当該航空機のメカニズム 行システムに関する教育訓練の充実強化等を勧告しているが,フライトコンピューターを中心とする操縦士の訓練プログラムは,運航マニュアルと同様,まず第一にその航空機のメーカーが,当該航空機のメカニズムに最も精通したものとしてその作成及び各航空会社に対する周知徹底を行うべきものである。このようなメーカーの行為を離れて航空会社が独自の訓練プログラムを作成・実行できるはずもなく,事故調査報告書の被告中華航空に対する勧告も,このようなメーカーの責任が果たされた後に初めて意味を持つものである。 シミュレーターによる訓練については,被告中華航空はタイのタイ国際航空及びフランスのアエロフォーメーション社のシミュレーターを利用してA300-600R型機の訓練を実施していた。 しかし,本件事故機機長がタイ国際航空のシミュレーターを使用して実施した訓練(1992年(平成4年)6月~7月)には,ゴーアラウンドモードでのオートパイロットのオーバーライド機能やトリム喪失からの回復の訓練は含まれていなかった。また,タイ国際航空のシミュレーターはゴーアラウンドモードでオートパイロットが接続されていても,操縦輪を押しても水平安定板がこれに反発してアウトオブトリムの状態になるようにシミュレートされていなかった。既に類似インシデント3件が発生していたにもかかわらず,少なくとも本件事故機の機長は,オートパイロットのオーバーライドの機能やアウトオブトリムからの回復の訓練を全く受けていなかったのである。 また,副操縦士がアエロフォーメーション社で受けたシミュレーター訓練(1992年(平成4年)10月~11月)では,同社の教官が使用したチェック・シートに「GO-AROUNDDEMONSTRATEAPMISUSEINGO-AROUND」の項目が設けられていて,実施欄に+マーク 年)10月~11月)では,同社の教官が使用したチェック・シートに「GO-AROUNDDEMONSTRATEAPMISUSEINGO-AROUND」の項目が設けられていて,実施欄に+マークが記入されていたものの,実際に副操縦士がどんな訓練を受けたかは明らかでない。 以上のように,本件のような事態を想定しての訓練項目の提供は各航空会社に対してなされておらず,このような状況に鑑みれば,本件乗員らが,「CAUTION」の内容について,その違反が本件のような墜落という深刻な事態を引き起こす緊急事態を引き起こすことを判断できなかったとしても,これを非難されるべきいわれはない。 〔3〕 当時の航空界の認識上記のように,運航マニュアルの内容が分かりにくかったり(推奨と禁止の共存),それが結果の深刻さに比して余り重きを置かれていなかったり,あるいは訓練体制においても重視されていなかったことに加え,以下の事情からすれば,本件当時,航空界自体が,オートパイロットのオーバーライドの危険性に対して深刻な認識がなかったといえる。 アメリカン航空の元操縦士である証人Cによれば,アメリカン航空ではどんな,いかなるモードでも決してオーバーライドするなと指導されていたが,これは,「オーバーライドに何らかの問題を感じたわけではありません。私たちは,オーバーライドする必要がないということであったわけです。」として,同社のオーバーライド禁止の意味が,特に,オーバーライドが危険と考えられていたことが理由ではないことを明確に認めている。 また,証人Cは,「CAUTION」が安全や人の死傷にかかわる「WARNING」と異なり,「機械,設備に関連する」ものであることを前提に,本件事故のような大惨事を引き起こしたことに鑑み,「当時,『WARNING』だったと理解されるんでしょう 人の死傷にかかわる「WARNING」と異なり,「機械,設備に関連する」ものであることを前提に,本件事故のような大惨事を引き起こしたことに鑑み,「当時,『WARNING』だったと理解されるんでしょうか。それとも,当時では,そこまでの理解はなかった。だから『CAUTION』にとどまっていたんでしょうか。」という質問に対して,「このような『CAUTION』という形で,しかも,それを枠で囲み,操縦士に対して,明確にこの部分が重要性を持っているということを分からせる形で書かれているという状態,これで十分であったと,私は思います。」と答えている。 要するに,当時の航空界においては,オートパイロットのオーバーライドが航空機の安全に直接の脅威をもたらすようなものとして理解されていなかったのである。 「CAUTION」の内容が,本件事故時に,それほど深刻なものと受け止められなかったのは,被告エアバスが発行した技術通報6021でも改修を強制的なものとしておらず,しかも,改修を推奨する理由について,専ら操作上の利便性や乗客の快適性のためと述べている点にもよく表れている。 また,改修期限も,「人的にも施設的にも可能になった段階でできるだけ早く」というだけで,具体的な指定はされていない。このような情報の下で,被告中華航空が緊急性がないと判断したのは,やむを得ないところといわざるを得ない。 以上,オートパイロットのオーバーライドの危険性なるものは,本件事故を契機に初めて航空界が認識するようになったのであり,本件事故当時のかかる状況を前提に,本件乗員らに対してオートパイロットのオーバーライドによるトリム喪失の危険性を認識すべきことを要求すること自体,不可能を強いるものである。 (b) 本件乗員らは機体の異常に気付いていたか,また,気付くべきであったかについては,いずれ オーバーライドによるトリム喪失の危険性を認識すべきことを要求すること自体,不可能を強いるものである。 (b) 本件乗員らは機体の異常に気付いていたか,また,気付くべきであったかについては,いずれも疑問がある。 〔1〕 本件において,機体を押し下げようとしても意図通りに押し下げられなかったことをもって,本件乗員らがいわゆるアウトオブトリムを認識していたとはいえない。 つまり,操縦輪にかかる力を理解することは乱気流,騒音,会話がある実際の条件下では難しいことであり,また操縦輪が重くなるのは風の変化や乱気流によっても重くなるものである。 したがって,操縦輪を押せないとか重いということから,直ちにアウトオブトリムを検知することはできない。実際,本件乗員らは,アウトオブトリムの状態に陥った状況,したがって,理論的には操縦輪が重いはずの状況で,手動によるトリム操作をほとんど行っていないことから(副操縦士が14分20秒,同34秒,同39秒に,機長が,明らかにオートパイロットが解除された後の15分11秒に,トリムスイッチによるトリム操作を行っているが,いずれも2,3回にすぎない。),本件乗員らが,操縦輪が重い状態を検知していなかったことが窺われる。 本件乗員らがアウトオブトリムを認識していなかったことは,本件事故についてアメリカ国家運輸安全委員会が同国連邦航空局宛に出した事故調査報告書において,「ボイスレコーダーは,本件乗員らが,なぜ本件事故機をコントロールしようとしてもできないのかを理解していなかったこと,及び,明らかに彼らがオートパイロットが機首上げ方向にトリムしていたことを気付いていなかったことを示している。」と明確に断定されている。 〔2〕 原告ら申請の証人D自身が,他の機種ではあるがアウトオブトリムの状態を経験しており,その場合,音声による「 トリムしていたことを気付いていなかったことを示している。」と明確に断定されている。 〔2〕 原告ら申請の証人D自身が,他の機種ではあるがアウトオブトリムの状態を経験しており,その場合,音声による「ウォーニングがあって本当に感謝した。」と証言しているが,このことは,操縦輪の重さだけでは,操縦士が,状況いかんでアウトオブトリムを検知できないことを端的に示している。証人Eも,水平安定板が長く働き,しかも同じ方向の場合は警告が必要であると証言している。 〔3〕 オートパイロットのオーバーライド機能により機体がアウトオブトリムの状態となるインシデントは,本件事故前に3件発生しているが,いずれも操縦士がかかる状況を認識できなかったことを示している。 1985年(昭和60年)3月1日に発生したインシデント(以下「1985年のインシデント」という。)では,乗員が,オートパイロットが高度維持モードに接続中(乗員はオートパイロットが解除されていると思っていた。)に操縦輪を押して昇降舵を機首下げとしたため,オートパイロットはオートトリムを働かせ設定高度に戻ろうとして水平安定板を機首上げ側に作動させた。この動きはそれぞれ作動限界まで達し,機体姿勢は10度近い機首上げとなったが,乗員はアウトオブトリムの状態となったことに気が付かなかった。乗員は機首を下げるため,エンジン出力を減じたところ,速度は119ノットまで低下した。再びエンジン出力が増加されたが,アウトオブトリムとの組み合わせにより機体の機首上げは24度に達した。 しかし乗員はこの段階でもアウトオブトリムに気が付かなかったが,水平安定板の作動が機首下げに働くモードにオートパイロットが切り替り,かつ,その数秒後に機長がテイクオーバーして手動でピッチトリムインプットを加えて回復をした。 事故調査報告書の記述からは かったが,水平安定板の作動が機首下げに働くモードにオートパイロットが切り替り,かつ,その数秒後に機長がテイクオーバーして手動でピッチトリムインプットを加えて回復をした。 事故調査報告書の記述からは,果たしてこの事例においてどれくらいの時間,乗員がアウトオブトリムの状態に気が付かなかったか正確に測れないが,アウトオブトリムの状態になってから乗員は出力を減じたり増加したりして操縦をし,さらにその後数秒して機長がテイクオーバーしたというのであるから,相当な時間,気が付かなかったと考えられる。 1989(平成元年)1月9日にヘルシンキ空港で発生したインシデント(以下「1989年のインシデント」という。)では,オートパイロットを使用して進入中,機長がゴーレバーを作動させ,ゴーアラウンドモードに入った。機長が機首上げを避けようとして操縦輪を約10秒押したところ,オートパイロットはオートトリムを働かせ,水平安定板を機首上げ側に作動させた。オートパイロットは解除された(ただし,乗員はオンになっていると思っていた。)が,そのとき水平安定板は-8度となり機首上げ側に作動していた。乗員はこの機首が上がった異常な状態に気付かなかった。機長は操縦輪を押したまま水平飛行を約7秒維持した。機長がその後進入を断念し,オートスロットルをゴーアラウンドモードにしたところエンジン出力が増加し,機首上げ姿勢となって上昇を始めた。乗員はフラップを15度に上げた。その後,機長は,15秒間操縦輪を最前方に押し,出力レバーも最前方のままで,機体姿勢が機首上げ35.5度に増加し,速度が94ノットになった。そのとき失速警報器が作動し,機長はトリムホイールを使用してトリムを回復した。 この事例においては約10秒間操縦輪を押したことで航空機はアウトオブトリムの状態になっているが,この間乗員 ットになった。そのとき失速警報器が作動し,機長はトリムホイールを使用してトリムを回復した。 この事例においては約10秒間操縦輪を押したことで航空機はアウトオブトリムの状態になっているが,この間乗員は水平安定板の作動を認識せず,さらに,かかる状態になってからも相当な時間,操縦輪を押している。なお機長であるFは,自動操縦に反して操縦すると機首が急激にあがることは知識としてあったが,「あんなに激しいとはとにかく驚きでした。」,「その作動の仕方があまりにすばやくて強力だったのに驚きました。」と述べている。この言葉は,乗員が気付くいとまもなく,極めて急激に強烈に航空機がアウトオブトリムになることを示すものである。 1991(平成3年)2月11日にモスクワで発生したインシデント(以下「1991年のインシデント」という。)では,オートパイロットを使用して進入中,ゴーアラウンドを指示された。乗員はゴーアラウンドによる機首上げ姿勢を少し押えようと,操縦輪を押し昇降舵を機首下げとした。これに対しオートパイロットはゴーアラウンドの上昇姿勢を維持しようと,オートトリムを働かせて水平安定板を機首上げ側に作動させた。その結果昇降舵が14度(機首下げ),水平安定板が-12度(機首上げ)に達した。また,エンジンはオートスロットルにより出力が増加されたこと及びフラップがフルダウンから15度に上げられたことにより,同機は急上昇した。オートパイロットは高度1503フィートに達した時点で高度獲得モードに自動的に切りかわり,乗員がこの時点でも操縦輪を押し下げていたためオートパイロットは解除された。しかしアウトオブトリムの状態が残り,乗員はこのアウトオブトリムの状態に気が付かず操縦を続けた。同機はこのため失速降下と急上昇を繰り返し,4回目の降下の際,乗員によりエンジン出力が減じ 解除された。しかしアウトオブトリムの状態が残り,乗員はこのアウトオブトリムの状態に気が付かず操縦を続けた。同機はこのため失速降下と急上昇を繰り返し,4回目の降下の際,乗員によりエンジン出力が減じられ,また昇降舵操作が行なわれ,乗員が無意識にエレクトリックトリムを作動させたことなどによりトリムを回復した。 この事件においては,9秒間でアウトオブトリムの状態になり,この間乗員はアウトオブトリムの状態になりつつあることに気が付かず,さらにアウトオブトリムの状態になってからも気が付かずに操縦し,それと認識せずに行なった乗員の操作によりアウトオブトリムから回復した。 以上3件のインシデントは,現実の飛行の中では操縦輪の重さを測ったり,またそれによりアウトオブトリムを認識することが容易でないことを示しているものである。アメリカ国家運輸安全委員会は,少なくとも1991年のインシデントについて,「明らかに,乗務員は,自動操縦が昇降舵への指示とは反対に水平安定板を支配しており,自分たちがその自動操縦に対抗していることに気付かなかった。」と認めている。 〔4〕 機首上げの原因である水平安定板と昇降舵の矛盾した動きがはっきり分かっていれば,本件乗員らとしても直接これに対処する方法を講ずることができたかもしれない。 しかしながら,事故調査報告書は,本件事故機の水平安定板の作動を示すものとして,トリムホイール等3つの装置を挙げたうえで,本件事故の場合はこれらの機能はいずれも作動しなかったか有効に機能しなかったと結論付けている。これは,アメリカ国家運輸安全委員会の結論と一致する。そのうえで事故調査報告書は,オートパイロットのオン,オフにかかわらず,水平安定板が,アウトオブトリムの状態になった場合若しくはこれに接近した場合,又は一定時間以上連続して作動した場合に 一致する。そのうえで事故調査報告書は,オートパイロットのオン,オフにかかわらず,水平安定板が,アウトオブトリムの状態になった場合若しくはこれに接近した場合,又は一定時間以上連続して作動した場合に,操縦士に直接的かつ積極的に当該状況を認識させることができる警報・認識機能のあり方について,メーカーたる被告エアバスの責任で検討せよと勧告を行なっている。 すなわち,事故調査報告書は,先に論じた運航マニュアルの記述の問題と併せて,そもそも本件事故の場合は,オートパイロットのオン・オフに関係なく,水平安定板と昇降舵との相反する動きを認識することができなかったことは本件乗員らの責任ではないと判断しているのである。要するに,事故調査報告書の結論としては,オートパイロットがゴーアラウンドモードに接続されたままで操縦輪を繰り返し押し続けるという操作は,少なくとも本件乗員らの責任という見地からはやむを得ないということである。 (c) 操縦輪を繰り返し押すという操作は,やむを得ないものであったというべきである。 〔1〕 本件乗員らにとって,操縦輪を繰り返し押すという操作は,全くやむを得ないものであった。事故調査報告書記述のとおり,①オートパイロットがオフ(接続されていないか,解除された)の状態であるか,②オートパイロットが接続されていることを認識していたが,操縦輪を押すことでオートパイロットをオーバーライドできると考えていたとすれば,繰り返し操縦輪を押すという操作も,正常な行為である。 〔2〕 また,本件事故機の自動飛行システムが,通常のユーザーからは予想できない論理構造になっていたことが,本件操縦士の操縦輪を押して降下を続けるという行為の根本的理由となっており,本件や本件に類似したインシデントを惹起してきた原因となっている。 すなわち,①本件事故機の機長が 理構造になっていたことが,本件操縦士の操縦輪を押して降下を続けるという行為の根本的理由となっており,本件や本件に類似したインシデントを惹起してきた原因となっている。 すなわち,①本件事故機の機長が他の機種のオーバーライド機能が本件事故機にも可能であると思っていた可能性,及び②スーパーバイザリー・オーバーライド機能と混同していた可能性について,事故調査報告書は,それがやむを得ない行為であるとも,非難すべき行為であるとも述べてはいない。ところが,事故調査報告書は,このような2つの可能性の考えられる原因の1つとして,オートパイロットが接続されているときの水平安定板の作動状況を操縦士に直接的かつ積極的に知らせる警報装置がなかったことも影響していたと論じ,さらに,「運航マニュアル」の項で,運航マニュアル上,オートパイロットのオーバーライド機能の本来の目的についての説明が体系的になされていないと述べている。 警報装置の欠如,運航マニュアルの記載の不適切という2つの要素について,本件乗員らに責任を問うことができないことはいうまでもない。 〔3〕 本件に類似した事故が何件もおきている原因の一つとして考えられるのは,本件事故機の自動飛行システムは,設計上,ゴーアラウンドモードにおいて,操縦士が操縦輪を押し下げるという行為によって,オートパイロットからの指令をオーバーライドする形で,昇降舵の動きをコントロールできるようになっていたということである。つまり,操縦輪を押すという操縦士の行為は,オートパイロットからの指令より優先して航空機の昇降舵の挙動を決定する要因となっていたのである。 これは,本件事故機の設計段階で,オートパイロットの作動がおかしくなった万一の場合を念頭において,操縦輪からの入力を許すことにしたためと考えられる。このように,航空機の自動飛行シ ていたのである。 これは,本件事故機の設計段階で,オートパイロットの作動がおかしくなった万一の場合を念頭において,操縦輪からの入力を許すことにしたためと考えられる。このように,航空機の自動飛行システムにどのような入力を許すかについては,極めて重要なシステムの仕様であり,設計段階で十分に議論が行われ,決定される事項である。本件でも,操縦輪による操作に昇降舵の上下動という意味をもたせておくべき意義が肯定されたからこそ,このような入力が航空機の挙動をコントロールする設計となったのである。 したがって,操縦輪を押し下げるという行為は,少なくとも本件事故機と同型機が設計され,製造開始となった時点では,禁忌事項などではなく,むしろ有意義な行為と考えられたのである(禁忌であったならば,そもそも入力としては無効とされたはずである。)。操縦輪押し下げによりアウトオブトリムに至るというインシデントが起きるようになり,その問題点が明らかとなったため,被告エアバスも,技術通報や運航マニュアルを通じて問題があることを指摘するようになったのである。 したがって,事故調査報告書が,オートパイロットのオーバーライドについて,推奨と禁止の相矛盾する内容を混同して理解する可能性があると指摘しているのも,自動飛行システムへの入力としては有効なものであり続ける操縦輪の押し下げ操作が,ただアウトオブトリムを招くという範囲で禁止されることを通常の操縦士は理解し難いことを明確にとらえてのことと考えられるのである。 e 因果関係について仮に,本件乗員らの行為が原告らの主張するように無謀行為に当たるとしても,本件乗員らの行為と本件事故との間に因果関係はなく,本件乗員らの行為により損害が生じたとはいえないから,改正ワルソー条約25条は適用されない。 すなわち,本件事故に至る着陸のための に当たるとしても,本件乗員らの行為と本件事故との間に因果関係はなく,本件乗員らの行為により損害が生じたとはいえないから,改正ワルソー条約25条は適用されない。 すなわち,本件事故に至る着陸のためのアプローチの最終段階で,機長がゴーアラウンドを最終的に行おうとした時に,本件乗員らには全く予想もし得ないような本件事故機の作動が発生し,これが本件事故の直接の原因となったのである。 (4) 被告中華航空の不法行為責任についてア原告らの主張(ア) 不法行為の成否前記(3)のとおり,本件事故は,被告中華航空の操縦士の無謀な操縦により生じたものであり,被告中華航空の過失及びその過失行為と損害との因果関係は明らかであるから,被告中華航空は,ワルソー条約の適用のない原告ら(以下,(4)項においては,単に「原告ら」ともいう。)に対し,不法行為責任を負う。 (イ) 責任制限約款の効力について被告中華航空は,航空運送約款に基づく賠償額制限を主張するが,人の生命を奪う事故について,このような極めて低額の責任制限を約款によって一方的に定めることは極めて不当な行為というべきであり,そのような契約は無効というべきである。その根拠は以下のとおりである。 a 約款と公序良俗違反一般に,約款の適用によって契約内容を規律することは認められているが,その内容が著しく不合理である場合は,その適用を強いることは公序良俗に反し許されないものとされる。 例えば,大阪高裁昭和38年10月30日判決(判例時報369号42頁)は,約款は,企業者がその経済的優位を利用して一方的に制定するもので,利用者に内容決定の自由はないから,これを具体的に適用した結果が利用者に著しい不利益を課し,正義・公平に反する場合には,公序良俗違反で無効とされる旨を判示している。 b 国内航空運送約款と公序良俗違 用者に内容決定の自由はないから,これを具体的に適用した結果が利用者に著しい不利益を課し,正義・公平に反する場合には,公序良俗違反で無効とされる旨を判示している。 b 国内航空運送約款と公序良俗違反上記の法理は,航空旅客運送約款に関しても同様に採用されている。 (a) 日東航空機墜落事故(つばめ号事件)(大阪地裁昭和42年6月12日判決・判例時報484号21頁)この判決は,国内航空運送における旅客の死亡事故について,運送人日東航空株式会社(当時)(以下「日東航空」という。)の賠償責任限度額を100万円に制限していた約款を公序良俗違反とし,全額の賠償を認めたものである。 当時,国際航空運送の領域においては,改正前ワルソー条約22条の定める航空運送人の責任制限額(日本円にして当時約300万円)が改正され,日本円で600万円となっていた。もっとも,日本はヘーグ議定書を批准していなかったため,当時の日本が認めていた国際航空運送の限度額は,改正前ワルソー条約22条が定めていた約300万円であった。 同判決は,このような批准済みの改正前ワルソー条約22条の水準及び未批准の改正ワルソー条約の水準による国際的な責任制限基準や,他の航空会社の定める約款の責任制限額,同事故の被害者で原告以外の者についての示談金等の比較をした上で,約款の公序良俗違反を結論づけた。 すなわち,同判決は,事故当時,自動車交通事故の賠償額は100万円を超えるものはわずかで,ほとんどが100万円以下であり,自動車賠償責任法による強制保険の最高限度額が50万円であって,また,全日空や日本航空は責任限度額を300万円としていたが他のローカル線運営会社は日東航空と同じく100万円であったにもかかわらず,100万円の責任制限を公序良俗違反としたのである。 (b) 雫石全日空機・自衛隊機衝突事 責任限度額を300万円としていたが他のローカル線運営会社は日東航空と同じく100万円であったにもかかわらず,100万円の責任制限を公序良俗違反としたのである。 (b) 雫石全日空機・自衛隊機衝突事件(東京地裁昭和53年9月20日・判例時報911号14頁)この判決は,やはり国内航空運送における旅客の死亡事故について,運送人全日空が賠償責任限度額を600万円に制限していた約款を公序良俗違反とした。当時,国際的な最高限度の水準はグァテマラ議定書の定める額(日本円で約3600万円)であり,控訴審は制限額としてはこの額を妥当とした。 同判決は,日本が未批准であったグァテマラ議定書による国際水準との比較,国内自動車事故との比較(逸失利益が1000万円を超える例や損害総額で3000万円を超える例も散見されることを顕著な事実としてあげている。),他の航空機事故の示談金との比較,原告以外のこの事件の被害者との示談金(1200万円等)との比較により,公序良俗違反と結論づけたものである。 当時,日本はグァテマラ議定書を未批准であったため,日本にとっては改正ワルソー条約の約600万円が国際航空運送における責任限度額であった。同判決は,上述のとおり,日本が批准しており,日本との関係では現に有効な条約である改正ワルソー条約の水準の限度額を定めた約款について,公序良俗違反とした点で極めて重要なものであった。 c その後の日本の航空業界の対応と国際的展開(a) ジャパニーズ・イニシアティブ雫石全日空機・自衛隊機衝突事件は昭和46年に起きた事故に関するものであったが,もはや,航空運送の責任限度額と自動車交通事故等との乖離が生じて責任限度額が機能しないものとなっているとの認識から,昭和50年には各国内航空会社により国内旅客運送約款すべてにつき2300万円まで責任限度額の 航空運送の責任限度額と自動車交通事故等との乖離が生じて責任限度額が機能しないものとなっているとの認識から,昭和50年には各国内航空会社により国内旅客運送約款すべてにつき2300万円まで責任限度額の引上げがなされ,ついで昭和51年には国際運送約款すべてについて,7万5000ドル(アメリカ路線に適用されるモントリオール協定と同額。当時の日本円で約2200万円)まで限度額の引上げがなされた。 そして,昭和53年の雫石全日空機・自衛隊機衝突事件第一審判決後,昭和57年には,国内旅客運送の死傷の場合の責任制限撤廃が行われ,10万SDR(特別引出権。昭和50年当時では約3600万円相当。日本国内航空の責任制限が撤廃された昭和57年当時では約2600万円相当。平成7年当時では約1400万円相当)までを無過失責任とし,同時にそれを超える損害についても過失推定責任を定めるいわゆる二層制を採用したのである。 1992年(平成4年),日本の航空会社は,国内運送で先行していた画期的な二層制を国際運送についても採用して,責任制限を撤廃した。これがジャパニーズ・イニシアティブと呼ばれ,後の国際的な流れをリードすることとなった。すなわち,その後,1995年(平成7年)・1996年(平成8年)IATA協定によって,ジャパニーズ・イニシアティブが国際協定化され,国際的にも責任制限撤廃が現実のものとなった。1995年IATA協定の前文においては,「ワルソー条約の責任限度が,1955年(昭和30年)以来改正されたことがなく,大多数の国において現在極めて不適当なものとなっていること,国際航空企業がこれまで旅客のために責任限度の増額のためにともに活動してきたこと」を確認した上,これを根拠として,第1条において責任制限を撤廃したのである。そして,この動きを受けて,モントリオー 国際航空企業がこれまで旅客のために責任限度の増額のためにともに活動してきたこと」を確認した上,これを根拠として,第1条において責任制限を撤廃したのである。そして,この動きを受けて,モントリオール条約が採択されたことにより,1995年・1996年IATA協定に取り込まれたジャパニーズ・イニシアティブは,ついに国際条約化されるに至ったのである。 日本は,国会での承認を経て,2000年(平成12年)6月に,3番目の締結国として同条約を批准した。 (b) ジャパニーズ・イニシアティブの理由日本が率先して責任制限撤廃に動いてきた理由は,ワルソー条約22条の責任制限が不当であるからにほかならない。 その理由として,まず,国内的に自動車事故等との均衡がとれなくなってきたことを挙げることができる。現在では自賠責の限度額は3000万円であり,かつ,この限度額は,実質的には最低保障額として機能している。 次に,国際的にも,航空産業の成長,安全性の高まりによる事故率の減少,それに伴う保険料の減少のため,責任制限の根拠は失われているとの認識が確立してきたことを挙げることができる。「無限責任にすると危険を織り込んだ高額の運賃を設定せざるをえず,社会一般が有効に使用し得る交通手段ではなくなってしまう。」との主張は,現実性を完全に失ったのである。 d 被告中華航空の約款について(a) 被告中華航空の約款の実質的不当性上記のような判例の展開により,被告中華航空の定める約款の定める150万台湾元という責任制限自体,公序良俗に反するとみなされる額であることは,確立しているといってよい。学説上も,10万SDRを制限額とする1975年モントリオール第3追加議定書について,日本が批准しても裁判所によって公序良俗に反するとされる可能性が極めて高いとされており,かつ,このことが ってよい。学説上も,10万SDRを制限額とする1975年モントリオール第3追加議定書について,日本が批准しても裁判所によって公序良俗に反するとされる可能性が極めて高いとされており,かつ,このことが,日本がモントリオール追加議定書の批准をできず,また,すべきでない理由とされていた。 本件の150万台湾元という水準は,日本で最低保障機能を果たしている自賠責の3000万円にはるか及ばず,また,日本の国内・国際運送人が負うべき責任からも圧倒的に乖離している。モントリオール条約に至る過程によっても明らかなように,国際的認識として,低額の有限責任を定めるワルソー体制の前近代性,不当性は,再三確認されてきた。 (b) 優越的地位の利用による公序良俗違反ないし権利濫用の理論そもそも,約款について公序良俗違反が問題となるのは,約款とは性質上,経済的に優位に立つ企業者が一方的に制定し,利用者は同約款を利用するか否かの自由しかなく,契約締結及び内容決定の自由は実質上奪われているからである。 この点については,行政規制によって不合理な内容の約款を排するとの手法があり得るが,本件においては,そのような手法すら妥当しない。すなわち,内国会社の約款は運輸省(現国土交通省)の認可を要するのに対して,日本に乗り入れる外国会社についての約款は本国が規制する建前となっていて,それ自体日本の行政規制の対象となっておらず,したがって,内国会社に対するような規制を外国会社に対してすることはできないのである。 また,被告中華航空は,1998年(平成10年)2月16日に発生した桃園大園事故については,被害者一人当たり150万台湾元をはるかに超える990万台湾元(1台湾元を約4円として約3960万円)で和解したと報じられ,2002年(平成14年)5月25日の澎湖事件について,被告中華航空 いては,被害者一人当たり150万台湾元をはるかに超える990万台湾元(1台湾元を約4円として約3960万円)で和解したと報じられ,2002年(平成14年)5月25日の澎湖事件について,被告中華航空は,被害者一人当たり1400万台湾元(約5600万円)を提示したと報じられている。このような状況は,150万台湾元という額が(最低保障額の機能を果たし得るかについては議論の余地があるとしても),最高限度額としての機能は全く有していないことを如実に表すものである。 客観的な原被告両者の利益を比較すれば,一方で,仮に責任制限がなくとも航空会社にとっては十分保険でまかなうことが考えられ,かつ,それは採算上も十分可能であること(保険掛金及びその転嫁による運賃の高騰を招かないこと)は,日本の航空会社がすでに実証済みであるのに対し,他方で,利用者側は,本件事故により著しい精神的苦痛を受け,その中で多くの者が生命を失ったのであり,両者の利益状況の格差は比べるまでもなく明らかである。 このような本件事案に照らすと,約款それ自体が優越的地位を濫用した公序良俗違反のものであり,あるいは,少なくとも,本件事案においてそのような免責を主張することは優越的地位を利用した権利の濫用にほかならないというべきである。 (c) 合理的意思仮に,一般乗客があらかじめ被告中華航空の制限限度額を知った場合,これを妥当な制限額として承認し,納得したとは考えがたい。この点については,好意同乗の人身事故による損害賠償請求権の事前放棄あるいは事前の免責の特約が無効とされた東京地裁昭和49年7月16日判決(判例時報459号66頁)が参考となる。 同判決では,①同乗の目的が専ら同乗者の利益のみに関し,②同乗者と運転者が極めて密接な関係にあり,③同乗後の同乗者の挙動が事故の発生原因に寄与しており, 判決(判例時報459号66頁)が参考となる。 同判決では,①同乗の目的が専ら同乗者の利益のみに関し,②同乗者と運転者が極めて密接な関係にあり,③同乗後の同乗者の挙動が事故の発生原因に寄与しており,④運転者の過失が軽過失の範囲に止まり,⑤被害者たる同乗者の被害の程度が軽微であるなどの要件を可及的相対的に充足し,免責を認めるのが社会通念上妥当と思料される場合に初めて,免責の効果を生じるものと解すべきとされれているのである。②の事情が存在しないのは当然として,さらに③や⑤の点から見て,航空機事故は免責特約の合意が認められる類型とはいい難い。 そうだとすれば,形式上,運送約款による契約が成立したからといって,あくまでその制限条項に従うべきものとすることは,結果的には,企業者たる被告中華航空が経済的優位にあることを利用して事実上これに対抗する手段を有しない乗客に対し,その合理的意思に反して不当な不利益を課することを承認することになり,衡平の観念に反する。 結局,被告中華航空の運送約款に定める150万台湾元は,乗客の死亡事故に関する責任の最高限度額としてはあまりに低額に過ぎ,かかる約款の適用を乗客に強いることは公序良俗に反し,あるいは,権利の濫用として許されないものというべきである。 なお,利用者の合理的意思としては,日本の航空運送会社の定める水準あるいは,自動車交通事故の水準に照らせば,責任制限は認められないというべきものであろう。 e 以上より,本件約款は,公序良俗に反し,あるいは権利の濫用として無効というべきであり,したがって,ワルソー条約の適用のない被害者らと被告中華航空との間の契約規律上,損害賠償制限は存在しない。 (ウ) 責任制限除外事由について被告中華航空の国際航空運送約款の責任制限規定が無効ではないとしても,同約款は「損害を生じさせ 被害者らと被告中華航空との間の契約規律上,損害賠償制限は存在しない。 (ウ) 責任制限除外事由について被告中華航空の国際航空運送約款の責任制限規定が無効ではないとしても,同約款は「損害を生じさせる意図をもって又は無謀にかつ損害の生ずるおそれがあることを認識して作為又は不作為がなされた場合」には責任制限が排除されると規定している。 この規定は,改正ワルソー条約25条と同一の文言であるので,その意義も改正ワルソー条約25条と同様であり,「認識すべき場合」も含まれる(客観説)と解すべきであるし,仮に主観説によるとしても,本件乗員らの行為が,上記約款に規定する責任制限が排除される要件に該当することは,前記(3)ア(ウ)のとおりである。 イ被告中華航空の主張(ア) 不法行為の成否について原告らの主張は争う。 本件乗員らの行為と本件事故との因果関係はない。すなわち,本件事故に至る着陸のためのアプローチの最終段階で,機長がゴーアラウンドを最終的に行おうとした時に,本件乗員らには全く予想もし得ないような本件事故機の作動が発生し,これが本件事故の直接の原因となったのである。 (イ) 責任制限約款の効力についてワルソー条約の適用がない原告らに対する責任の有無や賠償額は,被告中華航空の運送約款の解釈が問題となる。被告中華航空は,約款により責任限度額を150万台湾元と定め,航空券にその旨記載している。 原告らは,上記の約款につき,日本の国内航空運送の判例を引用して,これを「公序良俗に反して無効」と主張する。 しかし,同約款は,本来的に台湾の会社と台湾発着の乗客との関係を規律しているもので,単純に日本の社会通念で律することは不適切である。法例33条は,外国法の規定そのものが内国の公序に反するからその適用が排除されるのではなく,外国法の適用の結果が内国の公序に 係を規律しているもので,単純に日本の社会通念で律することは不適切である。法例33条は,外国法の規定そのものが内国の公序に反するからその適用が排除されるのではなく,外国法の適用の結果が内国の公序に反するからその適用が排除されるのであり,当事者の国籍,住所,年齢,職業,資力,心身の状態及び生活の状況その他一切の事情が考慮されるべきであるとされる。原告らは,およそ,台湾法によれば有効とされる被告中華航空の運送約款をして,それ自体が日本の公序に反するかの如く主張するが,それは,誤りである。 特に,台湾籍の乗客については,日本との関わりは単なる旅行先として立ち寄ろうとしたにすぎず,日本の公序良俗云々を持ち出すこと自体,不適切である。 また,仮に,日本の乗客に対して同約款が適用されるとしても,同約款は,国際的に承認されたワルソー条約を骨格としており,国際的な通念に合致しており,日本の国内線の約款解釈論がそのまま妥当しないことはいうまでもない。この意味で,外国法に基づく被告中華航空の運送約款の該当部分を公序良俗に反するということはできない。 (ウ) 責任制限除外事由について原告らの主張は争う。 被告中華航空の約款の「損害を生じさせる意図をもって又は無謀にかつ損害の生ずるおそれがあることを認識して作為又は不作為がなされた場合」は,改正ワルソー条約25条の解釈と同様,主観説によって解釈されるべきである。 そして,同約款に該当する事実がないことは,前記(3)イ(ウ)のとおりである。 (5) 被告エアバスの責任についてア原告らの主張被告エアバスの製造した本件事故機には欠陥があり,被告エアバスに課せられた高度の安全確保義務からすれば,被告エアバスは,上記欠陥から生じ得る損害を予見し,かつ,これを回避し得たのに,これを放置し,本件事故を生じさせたというべきで には欠陥があり,被告エアバスに課せられた高度の安全確保義務からすれば,被告エアバスは,上記欠陥から生じ得る損害を予見し,かつ,これを回避し得たのに,これを放置し,本件事故を生じさせたというべきであるから,原告らに対し,不法行為(製造物責任)に基づき,本件事故による損害を賠償する責任がある。 (ア) 欠陥本件事故機には,下記aに記載するとおりの欠陥が存在したというべきであって,このことは,下記b以下の事実からも裏付けられる。 a 欠陥の存在(a) 本件事故機は,高度1500フィート以下においてランドモード又はゴーアラウンドモードでオートパイロットに接続中,操縦士が飛行経路の修正を意図して操縦輪による手動操作を行った場合,オートパイロットのオーバーライドを認めるが,オートパイロットは解除されないという性質を有している(以下「本件設計」という。)。 本件設計においては,手動操作によるオーバーライドを認める一方で,手動操作を行った場合にもオートパイロットが解除されないこととされており,オートパイロットは手動操作に反した操作を継続する。すなわち,ゴーアラウンドモードでオートパイロット接続中に,操縦士が操縦輪を機首下げのために前に倒す操作を行うと,昇降舵を機首下げの側に作動させるが,オートパイロットは,なおもゴーアラウンドのための操作を継続し,水平安定板を機首上げの側に作動させる。 本件事故機は,このような性質を有する本件設計のため,手動操縦による操作とオートパイロットによる操作とが互いに反発しあうことになって,昇降舵と水平安定板がくの字型となり,機体は極めて不安定で危険な状態(アウトオブトリムの状態)に陥るという性質を有している。 このような危険な状態を惹起させる本件設計による自動飛行システムを装備する本件事故機は,安全に飛行するために航空機に 極めて不安定で危険な状態(アウトオブトリムの状態)に陥るという性質を有している。 このような危険な状態を惹起させる本件設計による自動飛行システムを装備する本件事故機は,安全に飛行するために航空機に求められている性能を欠くものであり,欠陥があるというべきである。 (b) また,A300-600型機には,開発当時,水平安定板が作動しているときにはウーラー音が鳴るという聴覚上の警告装置が備えられていたが,これを減らして欲しいというイギリス航空当局からの要望により,被告エアバスはこのような警告装置を全面的に削除してしまった。 そのため,本件事故機には,機体のアウトオブトリムに陥るような危険な状態を乗員に的確に伝達する機能が欠けているという欠陥があった。 b 事故調査報告書等における指摘(a) 事故調査報告書は,本件事故機が,本件設計並びに操縦士による制御及びオートパイロットによる制御が同時に入力されていることを操縦士に知らせるための警報装置が装備されていないという設計を採用していたことが,本件事故における異常なアウトオブトリムの要因の一つになっていると指摘している。 そして,事故調査報告書は,本件事故機のオートパイロットのオーバーライド機能は,操縦輪を操作し続けるとアウトオブトリムに至る特性があることから,被告エアバスは,オートパイロット接続中の水平安定板警報装置(ウーラー音)を残すか,又は削除するのであれば,水平安定板警報装置に代わる,直接的かつ積極的に乗員に水平安定板の作動状況を知らせる何らかの警報・認識機能を考慮する必要があったとしている。 結論として,事故調査報告書は,水平安定板と昇降舵が整合することなく作動し,異常なアウトオブトリムの状態になったこと,及び本件事故機に,異常なアウトオブトリムの状態への動きを直接的かつ積極的に操縦士に知ら して,事故調査報告書は,水平安定板と昇降舵が整合することなく作動し,異常なアウトオブトリムの状態になったこと,及び本件事故機に,異常なアウトオブトリムの状態への動きを直接的かつ積極的に操縦士に知らせる警報・認識機能がなかったことなどを事故原因として指摘している。 (b) また,1994年(平成6年)8月31日,アメリカ国家運輸安全委員会は,次の勧告をアメリカ連邦航空局宛に行った。この勧告は,A300型機及びA310型機系列機のオートパイロット系統のロジックについて再調査するとともに,操縦士が操縦装置すなわちトリム系統に特定の入力をした場合に,高度やオートパイロットのモードにかかわらず,オートパイロットが解除されるように必要により改修するよう要求するとともに,A300型機及びA310型機系列機のオートパイロット系統について,水平安定板が作動している場合にトリムコマンドにかかわりなく十分な知覚による警報を発するように改修するよう要求するものであった。 この勧告を受けて,アメリカ連邦航空局は同年11月2日付けで,60日を超えないうちに,飛行制御コンピューター(FCC)について,被告エアバスの技術通報の内容の改修を実施するよう指示している。 c 被告エアバスが本件事故後に採った措置(a) 被告エアバスは,本件事故後である1994年(平成6年)8月17日にフランス民間航空総局が耐空性改善命令を出したことを受けて,同年12月13日,既に発行済みの被告エアバスの技術通報6021の内容である飛行制御コンピューター(FCC)の改修(その内容は,ゴーアラウンドモードにおいても,対地高度400フィート以上で,操縦輪に縦方向へ15kg以上の力を加えた場合,オートパイロットが解除されるようにするというものである。)の適用について,「Recommended」(「 ドにおいても,対地高度400フィート以上で,操縦輪に縦方向へ15kg以上の力を加えた場合,オートパイロットが解除されるようにするというものである。)の適用について,「Recommended」(「推奨」の意)から「Mandatory」(「義務的な」の意)に改訂した。 さらに,被告エアバスは,1997年(平成9年)1月8日付けで技術通報の修正版を発行したが,その改修内容は,いかなるモードでも,また高度400フィート以下であっても,操縦輪に縦方向へ15kg以上の力を加えた場合,オートパイロットが解除されるようにするものであった。 (b) 技術情報のファックス送信被告エアバスは,まず,本件事故直後の1994年(平成6年)5月5日,A300型機及びA310型機の運航会社宛に,オートパイロットに反する操作をしないよう,同一文書内で繰り返し強調し,注意を喚起したファックスを送信している。 この内容は,これまでの警告と内容的には異ならないが,事故後10日でこのような措置がとられたことは,本件事故の発生直後に被告エアバスには事故原因が分かったこと,すなわち,このような事故の発生が危惧され,再発することを予想していたことを示している。 (c) 本件事故後,被告エアバス及びその関係者がとった以上の措置は,まさに上記欠陥を自ら認めた上で,これを改修するためのものであった。 d オーバーライド機能の不要性オーバーライド機能はコンピューターのハードオーバーに対応するために必要な機能であると説明される。ハードオーバーとはコンピューターが暴走をして航空機の飛行翼面が激しく不規則に動くような場合のことをいう。 しかしながら,ハードオーバーの原因はオートパイロットにあり,電気的な欠陥,ソフトウェアの欠陥,バグによって生ずるものであるところ,オートパイロットに起因して異常が 則に動くような場合のことをいう。 しかしながら,ハードオーバーの原因はオートパイロットにあり,電気的な欠陥,ソフトウェアの欠陥,バグによって生ずるものであるところ,オートパイロットに起因して異常が発生しているのに,それをそのままにして,手動操作をこれに付加してオーバーライドすることは,予測不可能な操作をしているオートパイロットと手動操作があいまって,危険な状態を生み出しかねないのであって,手動操作を加えることによってオートパイロットが自動的に解除される設計こそがハードオーバーに対しての最善の対応である。 オートパイロットのハードオーバーの際に必要な機能は,操縦士が本能的に反応して,オートパイロットを解除し,機体の運航を手動で替わることであり,A300型機,A310型機に特有なオートパイロットを温存してこれに手動操作を付加するようなオーバーライド機能は,全く必要とされていないのである。 e オートパイロット自動解除による危険性の不存在被告エアバスは,1972年(昭和47年)のイースタン航空機墜落事故を挙げて,操縦輪を押すことによってオートパイロットを自動的に解除することは常に最良の解決であるとは限らず,操縦士,ひいては航空機を極めて困難な状況に陥らせることになる場合があると主張する。 イースタン航空機墜落事故は,操縦士が着陸進入中に誤って操縦輪を押し,オートパイロットが解除されたがそのことに気付かず,機体が降下して墜落してしまったという事故である。 しかし,この事故の調査結果では,オートパイロットが簡単に解除され,そのことを正確に乗員に警告する装置がないことは問題とされたが,操縦輪の操作によってオートパイロットが解除される設計そのものの当否は全く問題ともされていない。 また,この事故の際,オートパイロット解除のための操縦輪に加えるべき力は副操 がないことは問題とされたが,操縦輪の操作によってオートパイロットが解除される設計そのものの当否は全く問題ともされていない。 また,この事故の際,オートパイロット解除のための操縦輪に加えるべき力は副操縦士が9kg,機長はわずか6kgであった。これに対して,本件で問題とされているA300型機の別のモードにおけるオートパイロット解除のため操縦輪に加えるべき力は15kgであり,この事故の原因となった6kgの2倍以上である。無意識に15kgもの力をかけることはあり得ないことであり,このような設計の改善後に,誤ってオートパイロットが解除されたために,飛行機が墜落したり,墜落しそうになった事例は報告されていない。 なお,このイースタン航空機墜落事故が発生したのは高度維持モードであり,1988年(昭和63年)の改修がなされた後のA300型機,A310型機の自動飛行システムでは,オートパイロットは解除されてしまう場合であったから,このような事故は,本件事故時に推奨されていたA300型機の設計によっても防ぐことはできないこととなる。 f 本件設計の特殊性本件設計は,航空機の操縦体系の下で極めて希なものであり,本件事故以前にはA300型機とA310型機だけで採用されていたものであって,本件事故後の改修でこのような設計の機体は世界の空から姿を消した。 ボーイング社等の製造する航空機は,手動で操縦輪に一定以上の力を加えると自動的にオートパイロットが解除される設計が一般的となっており,このほか,操縦輪を操作すると水平安定板も同じ方向で作用する設計,19ポンドの力を操縦輪に加えることでオートパイロットは解除されるが着陸までの最後の数秒間は30ポンドの力でオートパイロットが解除されるという設計及び操縦輪を押すことではオートパイロットは自動的には解除されないが,トリム 加えることでオートパイロットは解除されるが着陸までの最後の数秒間は30ポンドの力でオートパイロットが解除されるという設計及び操縦輪を押すことではオートパイロットは自動的には解除されないが,トリムスイッチを使えば解除され,また,視覚と聴覚に訴える二重の警告により自動操縦が継続していることを確実に操縦士に知らせる設計などが採用されている。 また,本件事故前に運行が開始されたA320型機においても,設計の当初から,オートパイロット中に一定の力以上の力を加えてスティックを操作すればオートパイロットが解除される設計となっており,オーバーライド機能を認めていない。 g オートパイロット解除のための他の方法被告エアバスは,本件事故機にはオートパイロットの解除についてオートパイロット解除ボタンとトリムホイールという別の解除方法があることを理由に,欠陥はないと主張する。 しかし,このような機能が存在してもなお,アウトオブトリムの状態,すなわち本件設計を原因とした本件事故と同様の危険が本件事故以前にも発生している。 また,操縦士は,緊急時に手動でコントロールをしなければならないことがあり,そのような場合にはオートパイロットが作動している状態であることを忘れることがあり,あるいは,様々な手段を使えるということを思い出せず,結果として本能的に操縦輪を引っ張ったり押したりすることによって,その状態に対応しようということがあり得る。 したがって,オートパイロットを解除する別の方法があったとしても,本件設計が欠陥であることを左右しない。操縦士が自ら手動で操縦を始めているときに,オートパイロットが継続し得る設計の危険性が問題となっているのであり,他にオートパイロットを解除することのできる手段があることは,設計の欠陥の存在を否定する根拠とはならない。 ボーイング社の航空 ,オートパイロットが継続し得る設計の危険性が問題となっているのであり,他にオートパイロットを解除することのできる手段があることは,設計の欠陥の存在を否定する根拠とはならない。 ボーイング社の航空機や改修後の被告エアバスの航空機が採用したように,オートパイロット接続中に手動操作が行われた場合,オートパイロットを自動的に解除する機能が備わっていれば,このような危険を本質的に避けることができる。 トリムホイールについては,これは危険からの回復手段にすぎない。いくら危険からの回復手段の存在を強調したところで,危険を発生させるという,設計上の欠陥が存在することには変わりはない。操縦士の操縦において危険からの回復手段が取られない場合でも,航空機の安全が保持されるよう設計されなければ,欠陥がないとはいえない。 h 本件設計を原因とする3件の先行する重大インシデント(a) オートパイロットのオーバーライドにより危険な状態が発生するのは例外的な事態ではない。オートパイロットに対抗して手動操作が行われ,アウトオブトリムの状態が発生し,墜落寸前にまで至る危険な状態を招いたという本件設計を原因とする重大インシデントが,本件事故以前に3件も発生している。 〔1〕 1985年のインシデントサウジアラビア航空の航空機が着陸のためオートパイロットを使用して降下していたところ,オートパイロットのモードが高度獲得モードから高度維持モードに切り替わった。 操縦士は,オートパイロットが解除されたと思い,更に降下を続けるために操縦輪を押し,昇降舵を機首下げ側に操作したため,機体は設定高度よりも下がることとなった。そのため,オートパイロットは設定高度の4200フィートを保持するために,オートトリムを働かせ,水平安定板を機首上げ方向に作動させることとなった。 この水平安定板の動き 度よりも下がることとなった。そのため,オートパイロットは設定高度の4200フィートを保持するために,オートトリムを働かせ,水平安定板を機首上げ方向に作動させることとなった。 この水平安定板の動きは,作動限界にまで達し,機体姿勢は10度近い機首上げとなった。 乗員が機首を下げようとエンジン出力を下げたところ,機首上げは更に助長されて24度にも達した。これは,危険なアウトオブトリムの状態である。 その後,水平安定板の作動が機首下げ側に働くモードに切り替わったため,機体の機首上げ姿勢は減少して正常な飛行にもどった(なお,この時点では,ランドモードとゴーアラウンドモード以外のモードでも操縦輪に一定の力を加えた場合,オートパイロットが解除されるという機能は備わっていなかった。)。 〔2〕 1989年のインシデントこのインシデントは,1989(平成元年)1月9日フィンランド航空機A300型機のヘルシンキ空港への進入の際に発生した。 同機が着陸のためにオートパイロットを使用してヘルシンキ空港に進入中,対地高度860フィートで,機長がうっかりゴーレバーを作動させた。そのため,同機はゴーアラウンドモードとなり,エンジン出力も自動的に増加した。機長は,オートスロットルを解除して,スロットルを引きエンジン出力を減じるとともに,乗客の快適性のためオートパイロットによる機首上げを避けようと,これに抗して手動で操縦輪を押し続けた。 このように,このインシデントは,経過として本件事故と酷似した経過でアウトオブトリムの状態を発生させた。 〔3〕 1991年のインシデントこの事故は,1991年(平成3年)2月11日に,ドイツインターフルーク航空機のモスクワ空港への着陸時に発生したインシデントである。同機は,着陸のためにオートパイロットを使用しながら,モスクワ空港に進入中 故は,1991年(平成3年)2月11日に,ドイツインターフルーク航空機のモスクワ空港への着陸時に発生したインシデントである。同機は,着陸のためにオートパイロットを使用しながら,モスクワ空港に進入中に,高度1550フィート付近で,航空交通管制からゴーアラウンドとその高度を指示された。操縦士は,ゴーアラウンドの高度を2260フィートにセットして,対地高度1275フィートで,ゴーアラウンドモードにした。 機体の重量が軽量であったことから上昇率が高くなりすぎたため,乗員は機首上げ姿勢を少し押さえようと手動で操縦輪を押し,昇降舵を機首下げとした。これに対して,オートパイロットは,ゴーアラウンド時の上昇姿勢を維持しようとオートトリムを働かせ,水平安定板を機首上げ側に作動させた。結果として,昇降舵は14度(機首下げ),水平安定板は-12度(機首上げ)にまで達した。 同機は急上昇し,高度1503フィートに達した時点で,高度獲得モードに自動的に替わり,この時点でも乗員が操縦輪を押し下げていたため,自動操縦は自動的に解除された(1985年のインシデント後の改修によって,高度獲得モードでは,操縦輪の操作によって自動操縦が解除されるよう,設計の改修がなされていた。)。 しかし,水平安定板の作動角度はそのままの状態で残ってしまった。その後,同機は失速降下と急上昇を繰り返した。この間,操縦士はオートパイロットはまだ解除されていないものと思っており,また,水平安定板がアウトオブトリムとなっていることは認識していなかった。 (b) 以上のように,各インシデントにおいては,操縦士による操縦輪の操作によるオーバーライドとオートパイロットの作動が相反することによって,アウトオブトリムの状態という本件設計を原因とする本件事故と同様の危険が発生していたのであり,本件設計によるア による操縦輪の操作によるオーバーライドとオートパイロットの作動が相反することによって,アウトオブトリムの状態という本件設計を原因とする本件事故と同様の危険が発生していたのであり,本件設計によるアウトオブトリムの状態の発生は例外的事態ではないし,このような事態を正確に操縦士が認識することが困難であることは明らかである。 確かに,これらのインシデントでは,アウトオブトリムが発生しても操縦士の適切な操作によって墜落しなかった。しかしながら,アウトオブトリムの状態の発生自体が航空機の安全運航のために絶対的に避けなければならない事態であり,過去のインシデントにおいて適切な操縦によって安全なコントロールが回復されたとしても,それはむしろ幸運の産物であったというべきである。 1989年のインシデントの際,F機長は,発生していた事態を正確に認識することができていなかったこと,たまたま旧式の飛行機ではトリムホイールで水平安定板を操作していたことを思い出すことができたため,とっさにトリムホイールを手動で回転させて機体の安定性を回復できたとしており,生還は幸運の産物であったことを端的に述べている。1991年のインシデントにおいても,操縦士は発生していた事態を正確に認識することができず,トリムの回復は無意識に操縦士がトリムスイッチに触れたためとされている。いずれのインシデントも,事態を正確に認識した上での適切な操作によって,危険な状態を脱することができたのではないのである。 被告エアバスの論理はこのような設計を放置すれば機体の安定性が失われる事態が不可避的に発生することを認識しながら,操縦士の幸運というべき操縦操作に機体の安全性をゆだねていたといわざるを得ないのである。 また,このような被告エアバスの主張は,先行インシデントの機体の操縦士が被告エアバスのいうと とを認識しながら,操縦士の幸運というべき操縦操作に機体の安全性をゆだねていたといわざるを得ないのである。 また,このような被告エアバスの主張は,先行インシデントの機体の操縦士が被告エアバスのいうところの「エアマンシップの原則」,「被告エアバスの公表した手順」に従った優秀な操縦士であったことを裏づけている。だとすれば,3件の先行インシデントは,このような優秀な操縦士であっても,オートパイロットに対するオーバーライドによってアウトオブトリムに陥る事態が起こり得るということ,操縦輪が重くなるという被告エアバスのいうところの警告はこのような事態を防ぐために有効に機能していないことを示していることとなる。 本件設計のもとでは通常あるいはそれ以上の操縦能力をもつ機長であっても,オーバーライドを行なえばアウトオブトリムの状態に陥る危険があるというべきである。 i 操縦輪の重さという警告について被告エアバスは,操縦士が操縦輪に加え,維持することを要求される大きくかつ異常なコントロールのための力が,アウトオブトリムの状態の発生を感知させる標識であること及び本件事故において,副操縦士はこの標識を感知したことは確実であると反論している。 しかし,後記のとおり,過去の3件のインシデントにおいて,いずれの操縦士も,オートパイロットが作動して操縦輪への力が要求されながらも,操縦輪を押し続けていた。いずれのインシデントにおいても,操縦士はオートパイロットが自らの意図に反して作動し続けていることを正確に認識することができなかったのである。 操縦輪への力は,操縦士に対して,異常な事態を知らせる警告の意味は持ち得るが,正確に事態を伝えるという警報装置として不十分である。 また,操縦輪が重いという事実は,実際に操縦輪を押している者にしか直接的に感知されない点においても不十分と 事態を知らせる警告の意味は持ち得るが,正確に事態を伝えるという警報装置として不十分である。 また,操縦輪が重いという事実は,実際に操縦輪を押している者にしか直接的に感知されない点においても不十分といわざるを得ない。 j 視覚・聴覚による警告について操縦輪の重さによる感知とは異なり,聴覚,視覚に訴える警告であれば,実際に操縦していないもう一人の操縦士にも直接に情報を伝えることができ,直ちに正しい操作に復帰できた可能性が高い。 被告エアバスは,水平安定板が作動しているときに,ウーラー音でこれを警告することは,不必要な騒音を生み,操縦士の注意を散漫にするなどと主張する。 確かに,水平安定板が少しでも動いた場合にすべて作動音が鳴るようにすることはうるさく感じられるかもしれない。 しかし,一定時間継続して水平安定板が作動して,しかもその作動方向が一定している場合は,アウトオブトリムの状態を示唆するものとして耳に聞こえる警告音でこのことを操縦士が察知できるようにすることが重要であり,それは操縦士を注意散漫にするものではない。 現実に,A300型機,A310型機以外の航空機は水平安定板が作動している場合には,何らかの警告装置があり,その多くは耳に聞こえる警告音が鳴る仕組みとなっている。水平安定板の動作について警告がないA300型機,A310型機の設計は独自のものである。 ボーイング社の航空機の多くは,操縦輪を手動で操作した場合には,オートパイロットは解除される設計となっているが,例外的に操縦輪の操作によって,オートパイロットが直ちに解除されない仕組みとなっているB757型機,B767型機については,オートパイロットにより水平安定板が作動したときは,警告は音と視覚の両方で与えられることとなっていた。 また,当初,A300型機には水平安定板が作動した場合にウ B757型機,B767型機については,オートパイロットにより水平安定板が作動したときは,警告は音と視覚の両方で与えられることとなっていた。 また,当初,A300型機には水平安定板が作動した場合にウーラー音によって,これを操縦士に知らせる警報装置が装備されていたのであって,警報がもともとあったという事実そのものが,警報の必要性を明らかにしている。音声による警報をうるさいという理由で取り外したとしても,視覚に訴える警報を設備することは可能だったはずである。 (イ) 安全確保義務被告エアバスは,航空機の設計・製造において操縦士の操縦ミスの発生を考慮にいれたうえで航空機の安全を確保する義務を負っている。 すなわち,大量の乗客を一度に乗せて高い高度を飛行する大型民間航空機は,地球規模で頻繁に運行されており,万一,その飛行中になんらかの事故が発生した場合には,多数の生命を一挙に失わせる大規模な惨事を招来する高度の危険性を有しているのであって,航空機の製造者は安全に運行する航空機を設計・製造する極めて高度の安全性確保義務を負う。 被告エアバスは,構造上の損壊を生じさせないよう航空機を設計製造する義務はもとより,航空機運航に当たる航空会社において航空機の整備上のミスや操縦上のミスが生じても,航空機が飛行を安全に継続し,また離着陸できるよう設計をしなければならない義務を負う。このような義務は通常フェールセーフ設計義務と呼ばれ,現代の航空機設計の基本をなす考え方である。 (ウ) 危険の予見又は予見可能性a 被告エアバスは,本件事故機の欠陥の存在を,本件事故以前から異例な飛行状態を示した先行インシデントの存在から十分に認識していた。 前記したとおり,1985年のインシデント,1989年のインシデント及び1991年のインシデントにおいては,いずれも手動操作によ 異例な飛行状態を示した先行インシデントの存在から十分に認識していた。 前記したとおり,1985年のインシデント,1989年のインシデント及び1991年のインシデントにおいては,いずれも手動操作によってオートパイロットが解除されないことから異常な飛行状態に陥ったものであり,被告エアバスは,遅くともこれらのインシデントの後には,手動操作によってオートパイロットが解除されないプログラムである本件設計の危険性を認識していた。 b 被告エアバスが本件事故において発生したような危険の発生を予測していたことは,先行する3件のインシデントの後にとった,以下に述べるような被告エアバスの対応を見ても明らかである。 (a) 運用技術速報の発行被告エアバスは,1985年のインシデントの後,同年6月に,エアバス機運航会社へ,「オートパイロットのオーバーライドについて」と題する運用技術速報を発行している。 この中には,「オートパイロットに反する操作は危険な状態を招く場合がある。」,「万一航空機に異常挙動の疑いがある場合に最初に執るべき措置はオートパイロット解除ボタンを押して,手動に切り替えることである。」旨が記載されている。 (b) FCC改修の指示及び運航マニュアルの改訂被告エアバスは,1985年のインシデントに鑑み,1988年(昭和63年)3月18日,飛行制御コンピューター(FCC)の改修を指示した。その改修策は,ゴーアラウンドモード及びランドモードを除く全てのモードにおいて,操縦輪に15kgを超える力を加えることによってオートパイロットが解除されるというものである。また,被告エアバスは,同年6月にこの改修策に伴い,運航マニュアルを改訂した。 (c) エアバスオペレーター会議被告エアバスは,1989年のインシデントの後,翌年5月に,エアバス機運航会社とエア 。また,被告エアバスは,同年6月にこの改修策に伴い,運航マニュアルを改訂した。 (c) エアバスオペレーター会議被告エアバスは,1989年のインシデントの後,翌年5月に,エアバス機運航会社とエアバスオペレーター会議を開催している。「アウトオブトリムの回避」と題する同会議の議事録では,被告エアバスが,本件設計の危険性を認識し,注意を喚起していたことがわかる。 すなわち,「オートパイロットを解除していない場合,オートパイロットはオートトリムを通じて作動状態を維持しており,予定した縦方向の飛行経路を維持しようとする。もし,操縦士がオートパイロットに反して操作すれば,オートパイロットは重大なアウトオブトリムの状態に陥り,異常な挙動に至る可能性がある。」,「オートパイロットに反して操作することは避けなければならない。それは重大かつ予想外の状況に至る可能性がある。」との記載がある。 ここに記されていることは,本件事故そのものであり,この記載は,被告エアバスが設計に欠陥があり,どのような条件の下でこの欠陥が故障に至るかを正確に認識していたことを示している。 (d) 運航マニュアルに「CAUTION」の記載を追加被告エアバスは,1991年(平成3年)1月には,A300-600型機の運航マニュアルに,以下のような「CAUTION」の記載を追加した。 「縦軸上では,オートパイロットに対するオーバーライドはオートパイロットのオートトリム命令を取り消さない。したがって,オートパイロットが接続中に,もし操縦士がオートパイロットに逆らう操舵を行うと,オートパイロットは水平安定板を作動して予定の飛行経路上で航空機を維持しようとする。アウトオブトリムという危険性は事実としてあり,ランドモード及びゴーアラウンドモードの場合に限り,危険な状況に至る可能性がある。」旨の記載 定板を作動して予定の飛行経路上で航空機を維持しようとする。アウトオブトリムという危険性は事実としてあり,ランドモード及びゴーアラウンドモードの場合に限り,危険な状況に至る可能性がある。」旨の記載がなされている。 しかし,このような「CAUTION」を追加した程度の微温的な対処によっては,前述した,同種の1991年のインシデントの発生を防ぐことはできなかったのである。 (e) オペレーターインフォメーションテレックスの発行被告エアバスは,1991年のインシデントの後,同年3月に,1991年のインシデントの情報及び運用手順に関して,エアバス機運航会社に宛てて,オペレーターインフォメーションテレックスを発信した。 (f) 運航マニュアル速報の発行被告エアバスは,1991年(平成3年)6月に,オートパイロットのオーバーライドに関する注意喚起のための運航マニュアル速報を発行した。 (g) 技術通報の発行被告エアバスは,1993年(平成5年)6月,3件の同種のインシデントについて,自動飛行システムに関する技術通報を発行し,ゴーアラウンドモードにおいても,対地高度400フィート以上で,操縦輪に15kg以上の力を加えた場合,自動操縦が解除されるようにする改修策を設け,新規製造機にはこの改修が適用された飛行制御コンピューター(FCC)を装備するとともに,運航会社に対しては,改修を「Recommended」とした。 c 被告エアバスは,本件事故は本件乗員らの重大な過失によって発生した例外的なものであり,被告エアバスにはこのような重大な過失についての予見可能性がないと主張する。 しかし,本件乗員らが犯したような無謀行為を予見し,又は予見することが可能である必要はなく,乗員がオートパイロットを手動でオーバーライドし,その結果として機体がアウトオブトリムの危険な と主張する。 しかし,本件乗員らが犯したような無謀行為を予見し,又は予見することが可能である必要はなく,乗員がオートパイロットを手動でオーバーライドし,その結果として機体がアウトオブトリムの危険な状態に陥ることが予見可能であればよいと解すべきである。 人間は時に,過ちを犯すものであり,その過ちにもかかわらず航空機が墜落しないようにするために,航空機の操縦の自動化が図られてきたのである。したがって,航空機の設計においては,乗員の過失を計算に入れて,そのフェールセーフ設計を行うことが強く求められるのである。 また,1991年のインシデントでは,オートパイロットはゴーアラウンドモードであり,手動での入力もこれを前提としつつ,機体が軽量であるための急上昇に対応して,上昇を少し押さえようとしただけであるのに,アウトオブトリムを引き起こした。このような操作は,決して乗員の重大な過失とはいえない。被告中華航空の本件乗員らが犯したような極めて重大な過失を想定しなくても,乗員のちょっとした手動操縦での入力によって,アウトオブトリムは現実の事態となることを1991年のインシデントは示している。これを受けて,1993年(平成5年)6月に技術通報6021が出された際,これを耐空性改善命令とすべきかが議論された。この時点で3件ものインシデントが続けて起きていること,1991年のインシデントは重大な過失によるものといえないことからすれば,このような事態は例外的なものとは到底いえず,被告エアバスには,このような事態の予見可能性は十分あったといえる。 (エ) 結果回避可能性a 本件事故機のオートパイロットのコンピュータープログラムの設計において,高度1500フィート以下でのランドモード又はゴーアラウンドモードにおいても,手動操作が行われた場合にはオートパイロットが解 a 本件事故機のオートパイロットのコンピュータープログラムの設計において,高度1500フィート以下でのランドモード又はゴーアラウンドモードにおいても,手動操作が行われた場合にはオートパイロットが解除されるように設計されていれば,アウトオブトリムの状態は発生せず,本件事故は回避し得た。 b 手動操作に反発してオートパイロットが作動する場合には,このことを乗員に知らせる警報装置が装備されていたなら,本件事故は回避し得た。 すなわち,アメリカ国家運輸安全委員会は,アメリカ連邦航空局に対する勧告において,他社製造の航空機における警報装置について,解除及び警報システムは,高度に関係なく,ランドモード又はゴーアラウンドモードであるかどうかにかかわりなく完全に作用しており,もし,操縦士が操縦輪を前方に押すと同時にオートパイロットが解除されるか,水平安定板の作動を知らせる警報装置が備わっていたなら,本件事故は避けられたであろうと述べている。 さらに,上記委員会は,アメリカ連邦航空局に対し,A300型機及びA310型機系列機のオートパイロット系統について,水平安定板が作動している場合にトリムコマンドにかかわりなく十分な知覚による警報を発するように改修するよう勧告している。 (オ) 結果発生回避措置a 技術通報の改修の義務づけ本件設計の危険性は,既に発生し,墜落寸前まで行った3件のインシデントからしても,機体の墜落事故に直結する極めて重大なものであったから,被告エアバスは,1993年(平成5年)に本件設計の改修を記載した技術通報6021を出すに当たっては,緊急性が高い「Mandatory」にするなど,確実に改修がなされるように措置を講ずるべきであったのに,これをしなかった。 被告エアバスは,事故後の1994年(平成6年)12月13日,技術通報6021の内容 高い「Mandatory」にするなど,確実に改修がなされるように措置を講ずるべきであったのに,これをしなかった。 被告エアバスは,事故後の1994年(平成6年)12月13日,技術通報6021の内容である飛行制御コンピューター(FCC)の改修の適用を「Recommended」から「Mandatory」に改訂することによって,本件設計を改修したもので,結果的に,本件事故前に本件設計の改修という危険を回避する措置を採っていなかったことを認めたというべきである。 なお,被告エアバスは,システムの取り替えや警報装置の取り付けを命ずる耐空性当局の勧告が出されていないことを,本件事故以前にオートパイロットを自動解除できるシステムを義務づけなかったことの最大の理由としている。 しかし,メーカーには航空機の安全性確保の第一次的な責任があり,耐空性当局の指示に従っていれば製造物責任を免れるわけではないことはむしろ当然のことである。航空機は極めて複雑なシステムであって,売却後もその安全運航を確保するため,事故,インシデント,故障,不具合に関する情報を顧客から継続的に収集し,これを検討,分析して,必要があれば,すみやかに機器の設計の変更,コンピューターのシステムの変更,機器の機能変更などを行い,また,操縦士にわかりやすい情報を提供して,類似事故・インシデントを未然に防止すべき義務がある。 各国の航空安全当局の規制は,メーカーやエアラインの情報を集めて航空機の安全確保のため,後見的に,二次的に行われるものであり,これに従っていたからといって,メーカーとしての製造物責任を免れることはできない。 b アウトオブトリムの状態の警告警報機能の付加本件事故機には,オートパイロットが手動操作に反して作動し,水平安定板と昇降舵が相反する動きをすることによる異常なアウトオブトリムの ることはできない。 b アウトオブトリムの状態の警告警報機能の付加本件事故機には,オートパイロットが手動操作に反して作動し,水平安定板と昇降舵が相反する動きをすることによる異常なアウトオブトリムの状態への動きを直接的かつ積極的に操縦士に知らせる警報・認識機能がなかった。 被告エアバスにとって,上記のような機能を付加することは極めて容易であったが,被告エアバスはこれを付加しなかったのである。 イ被告エアバスの主張原告らの主張は争う。 (ア) 本件事故機に欠陥がある旨の原告らの主張は否認する。 a 本件設計には,以下に述べるとおり,欠陥はない。 (a) オーバーライドの必要性本件事故機に採用された本件設計は,操縦士が操縦輪に力を加えると,オートパイロットをオーバーライドするようになっており,操縦士によりオートパイロットと矛盾する指示が出されることを許し,これにより発生する危険を許容するものであった。 しかし,他方で,本件設計は,航空機を特に地面に近い高度で危険な状況に陥れるハードオーバーを引き起こすオートパイロットの故障などの,航空機に重大な危険をもたらす状況から,航空機を保護している。 すなわち,本件設計のもとでは,着陸進入の最終段階に,地面に近い高度で,ハードオーバーが発生したら,操縦士は本能的に操縦輪を使って航空機の飛行経路を変更し,いったん所定の飛行経路に戻ってから,不具合の原因を究明して,オートパイロットが故障しているようであれば,オートパイロットを解除することができる。このように,本件設計は,オートパイロットのオーバーライドにより,操縦士がその問題の原因を診断する前に航空機を飛行範囲から逸脱させる危険を解消するものである。 (b) 本件設計を採用したことの合理性〔1〕 本件事故機であるA300-622R型機には,本件設計が採用さ がその問題の原因を診断する前に航空機を飛行範囲から逸脱させる危険を解消するものである。 (b) 本件設計を採用したことの合理性〔1〕 本件事故機であるA300-622R型機には,本件設計が採用され,航空機がランドモード又はゴーアラウンドモードの際には,オートパイロットを解除しなくても,操縦士の操縦指示が優先する設計となっていた。 本件設計の代わりに,操縦士が,予め設定した力より強い力を加えることにより,オートパイロットが解除される設計とすることも可能であった。 しかしながら,いずれの設計にも,それぞれ強みと弱みがあり,いくつもの互いに相いれない設計の選択肢がある場合には,設計の妥協が必要であるし,設計者はどの危険を受け入れ,どの危険を排除するかを選択しなければならない。残された危険は,例えば,訓練などのトータルシステムの観点から扱われることとなる。航空機の安全は総合的な問題であり,設計による対処方法のみでは確実にすることが不可能であって,航空機の安全には,訓練,適切なクルーリソースマネージメント,印刷された手順の厳格な遵守及び実施の経験が不可欠である。 〔2〕 オートパイロットのオーバーライドにより危険な状態が発生するのは,多くの出来事が積み重なった場合の例外的事態である。 第1に,オートパイロットのオーバーライドによって顕著なアウトオヴトリムが発生するのは,オートパイロットが長時間にわたってオーバーライドされた場合のみである。 第2に,オートパイロットを長時間にわたってオーバーライドすることは,操縦士が極めて大きいコントロールのための力を必要とすることによって感知が可能であり,また,これは,要求され公表された操縦の手順に反し,基本的なエアマンシップの原則に反し,かつ,訓練にも反するものである。 第3に,オートパイロットがオーバーライドさ することによって感知が可能であり,また,これは,要求され公表された操縦の手順に反し,基本的なエアマンシップの原則に反し,かつ,訓練にも反するものである。 第3に,オートパイロットがオーバーライドされて極めて大きいコントロールのための力が長時間にわたって維持された場合には,潜在的に危険な状態が,以下によって発生する可能性がある。すなわち,①オートパイロットが解除され(又は,オートパイロットの接続が維持された上にオーバーライドも維持され),②高出力の設定がなされ,かつ,③航空機をトリムするための一つ又はいくつかの方法を使用した措置が全くとられない場合である。 第4に,強いコントロールのための力に遭遇した場合には,いつでも航空機を手によるコントロールのための力の必要を除去するために,トリムすることが基本的な操縦の作業である。 以上のことから,オートパイロットのオーバーライドが潜在的に危険な状態を招来する可能性があるのは,いくつかの相互に関連した出来事が発生した場合のみであり,かつ,公表された手順に従わないこと,基本的なエアマンシップの原則を尊重しないこと及び基本的な操縦技術を適用しないことが含まれる場合であるから,例外的事態というべきことは明らかである。 〔3〕 これに対して,オートパイロットを自動的に解除する設計は,常に最良の解決であるとは限らない。例えば,激しい乱気流又は特にカテゴリーⅢb(滑走路視程150フィート以上で,外部視界に頼ることなく着陸し,引き続き外界を見ながら地上滑走を行うカテゴリー)の進入及び着陸中に,不注意で本能的な手動の操作がオートパイロットを自動的に解除する結果となる場合には,操縦士,ひいては航空機を極めて困難な状況に陥らせることになる。 〔4〕 1985年のインシデントの後に,安全な基本設計と誤使用の結果との間の妥 オートパイロットを自動的に解除する結果となる場合には,操縦士,ひいては航空機を極めて困難な状況に陥らせることになる。 〔4〕 1985年のインシデントの後に,安全な基本設計と誤使用の結果との間の妥協として,本件設計が採用され,操縦輪に15kgの対抗する力が加えられた際に,オートパイロットを自動解除するが,ランドモード及びゴーアラウンドモードにおいては,自動解除はされないものとされた。その理由は,以下のとおりである。 第1に,オーバーライドから回復するためには,基本的な操縦飛行技術のみで足りる。すなわち,アウトオブトリムの状態を感知するための主要な手段は,極めて大きく異常なレベルのコントロールのための力であって,この手段は,いかなる在来型の航空機においても同じである。また,極めて大きく異常なレベルのコントロールのための力を感知するのは極めて基本的なことであり,まさに最初の操縦のレッスンから学ぶものである。大きなコントロールのための力を取り除くためにはトリム操作が必要であるが,航空機をトリムすることは基本的な操縦の作業であり,トリムスイッチ又はトリムホイールのいずれかを用いることにより,いかなる在来型の航空機においても達成される。 第2に,オートパイロットのオーバーライドの結果については明確に平易に運航マニュアルに説明してある。これは,1985年のインシデントの後に,運航マニュアルに「CAUTION」を追加することによってなされた。この「CAUTION」は,オートパイロットのオーバーライドの結果を明確に記載した上,オーバーライドのインプットからの回復の迅速かつ容易な手順(すなわち,オートパイロットを解除し,必要なトリムを行うこと)を定めている。 第3に,変更の可能な他の設計も,他の危険を有している。操縦輪に一定のコントロールのための力が加え 復の迅速かつ容易な手順(すなわち,オートパイロットを解除し,必要なトリムを行うこと)を定めている。 第3に,変更の可能な他の設計も,他の危険を有している。操縦輪に一定のコントロールのための力が加えられるとすぐにオートパイロットを自動解除することにより,オーバーライドによって生じるアウトオブトリムの状態は防止されるが,このような設計に変更すると,特定の運航条件の下では不都合な結果をもたらす可能性がある。例えば,不注意な操作によって又は力の大きさを感知するために用いられているセンサーの故障によってオートパイロットを解除することは,こうした解除が,極めて低い高度で,極めて低い視界の困難な天候状態で発生した場合には,困難な状態をもたらす可能性がある。 以上のように,オートパイロットのオーバーライドは,基本的な飛行技術を適用することによって極めて容易に回復することが可能であること,結果及び回復の方法は,運航マニュアルにおいて明確に説明することが可能であること,航空機の設計の修正の適用は可能ではあるが,環境条件によっては好ましくない結果をもたらす可能性があることから,ランドモード及びゴーアラウンドモードにおいては,オートパイロットは自動解除されないように設計されたのである。 (c) 本件事故の後,耐空性当局から命令されたA300-600型機の設計変更によって,操縦輪に一定レベル以上の操縦のための力が加えられた場合には,あらゆるフライトモードで,オートパイロットが解除されるようになった。これにより,競合する指示によってアウトオブトリムの状態が引き起こされることはなくなった。操縦士が手動操作すると,オートパイロットは直ちに解除される。こうした特性を取り入れた航空機は,現在,最終進入時に,乱気流のため,あるいは操縦士による本能的な矯正行動のため,オートパ はなくなった。操縦士が手動操作すると,オートパイロットは直ちに解除される。こうした特性を取り入れた航空機は,現在,最終進入時に,乱気流のため,あるいは操縦士による本能的な矯正行動のため,オートパイロットが不注意に解除される可能性が高まっている。一定レベルの力が加わって初めて解除されるようになっており,これでリスクが軽減されてはいるが,解消はされていない。 要するに,A300-600型機の開発において最初に選択された特性が,逆にされた訳である。本件設計では,オートパイロットが思いがけず解除される危険性をなくし,進入末期では手動で操縦を引き継ぐ必要性をなくしていた。こうした点は,現在では訓練と操作手順でコントロールすることにしたのである。操縦士とオートパイロットとの矛盾する指示によってアウトオブトリムの状態が発生する危険性は,現在は設計で対策が講じられている。その結果,いずれの危険に設計で対処するか,いずれをその他の手段でコントールするかが変化した。このように対処法が逆になったことが,全体としてのシステムリスクの軽減にプラスになったのか,マイナスになったのかは,数量化することが不可能である。 b オートパイロットが航空機を飛行させるか,又は操縦士が飛行させるかのいずれかであること及び操縦士はオートパイロットに対抗して航空機を飛行させないことという基本的なエアマンシップの原則から,操縦士が手動操縦をする際にはオートパイロットを解除することが前提とされる。そして,操縦士は,オートパイロット解除ボタンを使用することによって,オートパイロットをいつでも解除することができた。 航空機の型式がいかなるものであれ,オートパイロットを解除するには赤い,オートパイロット解除ボタンを用いることが勧告されている。 c トリムホイールを用いて本件事故機をトリムする することができた。 航空機の型式がいかなるものであれ,オートパイロットを解除するには赤い,オートパイロット解除ボタンを用いることが勧告されている。 c トリムホイールを用いて本件事故機をトリムすることは極めて容易であった。 すべての航空機において,水平安定板の主要な機能は,操縦輪に力を加える必要をなくすことにあり,これによって操縦士は,操縦輪に継続的に力を加える必要がなくなっている。その結果,手動操縦で飛行している場合においては,操縦輪により機首の上げ下げを行なう度ごとに,操縦士は本能的にトリムスイッチを操作し,操縦輪に力を加える必要をなくすのである。このことは,操縦技術習得の最初の段階で操縦士が身につける基本的技能の一部である。 水平安定板は,各操縦輪の先端にあるトリムスイッチによって作動させることも,また,センタペデスタル両側にあるトリムホイールによって手動で作動させることもできる。 また,水平安定板の状態については,視覚的な指標以外に,操縦輪に加えなければならない力及び最大限まで押し下げられる操縦輪の位置(操縦士の腕は前方へ伸びきってしまう。)が,アウトオブトリムの状態を明確に示す標識である。この標識は,全てのタイプの航空機において共通である。 A300-600型機の運航マニュアルは,機体姿勢に関して異常な反応がある場合には,操縦輪を持ち,トリムホイールをしっかり持ち,(もしオートパイロットが接続されていれば)オートパイロットを解除して操縦輪をしっかり持ち,トリムホイールを用いて必要なトリムを行い,両方のピッチトリムレバーが作動したことを確認しなければならないとしている。トリムホイールの操作によって,水平安定板レバーは解除され,結果としてオートパイロットも解除される。かくして,この操作により水平安定板の変位の原因が除去され,それによ 認しなければならないとしている。トリムホイールの操作によって,水平安定板レバーは解除され,結果としてオートパイロットも解除される。かくして,この操作により水平安定板の変位の原因が除去され,それによる結果(アウトオブトリムの状態)も修正される。この修正操作には,乗員による一切の予備的分析を必要としない。1989年のインシデントにおいても,操縦士がこの解決法を用いることにより回復に成功している。 d 操縦輪の大きくかつ異常なコントロールのための力が操縦士に対してアウトオブトリムの状態を感知させる標識である。 操縦輪にかかる大きくかつ異常な力は,アウトオブトリムの状態を感知する主要な方法であって,この方法はいかなる型式の在来型の航空機においても同じである。 また,初期訓練の正に第一課で学ぶことの一つがこのような大きなコントロールのための力を取り除くことである。 にもかかわらず,本件事故においては,副操縦士がこの標識を感知し,さらに,機長に対して,「教官,やはり押し下げられません。」と言って,彼が直面していた操縦輪を押すことに関する困難に言及したが,機長は,この副操縦士からされた警告に対応することに失敗したのである。 (イ) 安全確保義務についての原告らの主張は争う。 原告らは,被告エアバスは,航空機の運航に当たる航空会社において整備上のミスや操縦上の誤操作が生じても,航空機が飛行を継続できるよう設計をしなければならない義務を負うと主張している。 しかしながら,航空機は,職業的操縦士に要求され期待されている最低限の基準を充たして飛行することを前提に設計されるものであり,本件事故における誤操作のような操縦士らの複数の誤操作までも許容する設計をしなければならない義務はなかった。これらの誤操作が主として基本的なエアマンシップの原則の違反及び基本的な操縦 るものであり,本件事故における誤操作のような操縦士らの複数の誤操作までも許容する設計をしなければならない義務はなかった。これらの誤操作が主として基本的なエアマンシップの原則の違反及び基本的な操縦任務の違反であったことからすれば,被告エアバスにこれらを許容する設計をしなければならない義務がなかったことは当然である。 (ウ) 危険の予見又は予見可能性についての原告らの主張は否認する。 a 過去のインシデントにおいては,全ての操縦士は,エアマンシップの原則及び被告エアバスの公表した手順により正常な飛行を回復したのであって,事実関係が本件事故とは異なる。本件乗員らは,エアマンシップの原則及び被告エアバスの公表した手順に従うことを怠り,その結果として本件事故が発生したものである。本件事故の事実関係は極めて特異なものであって,本件事故以前に予期することは不可能であった。 b 本件事故は,以下に述べる本件乗員らの複数の重過失を原因とするものであり,かかる重過失は被告エアバスにとって予見不可能であった。 (a) 着陸を意図しながら,ゴーアラウンドをする理由もなかったのにもかかわらずゴーレバーを作動させたこと本件乗員らは,意図に反したモードを作動させた場合には,運航乗務員のコミュニケーションの手順に従って正常な進入の飛行形態に戻るべき注意義務を有し,着陸を意図しながらゴーレバーを作動させた場合には,操縦士双方がフライトディレクター及びオートマティックスラストモードをクロスチェックすべき注意義務を有していた。 しかし,本件乗員らは,クロスチェックを行わないとういう著しい注意義務違反を引き起こしたため,状況を把握できなかった。 (b) オートパイロットにゴーアラウンドを命令していたにもかかわらず,手動による進入を継続したこと本件乗員らは,基本的なエアマンシッ しい注意義務違反を引き起こしたため,状況を把握できなかった。 (b) オートパイロットにゴーアラウンドを命令していたにもかかわらず,手動による進入を継続したこと本件乗員らは,基本的なエアマンシップの原則及び被告エアバスの手順を遵守し,副操縦士が機長にオートパイロットを接続するように求め,操縦士双方がフライトモード表示器で実際のモードをチェックする注意義務を有していた。 副操縦士が何らのコールアウトなしにオートパイロットを間違ったモードに接続したことによってこの注意義務に著しく違反したため,副操縦士は,自らオートパイロットに対してゴーアラウンドを実行するように命令したことに反して,着陸の意図で手動による進入を継続していたことを認識していなかった。 (c) ゴーアラウンドモードの解除に失敗し,フライトモード表示器を適切にチェックすることに失敗したこと本件乗員らは,フライトモード表示器を十分にチェックし,ゴーアラウンドモードでオートパイロットが接続されていたことを感知し,状況を分析し,オートパイロットによる進入,手動による進入又はゴーアラウンドをすべきかについて決断をする注意義務を有していた。 しかし,本件乗員らは,拙劣な手順及び不明瞭な発言をするという著しい注意義務違反を行ったために,次第に航空機の飛行パラメータ及びフライトモードの適切な認識を喪失し,その結果,本件乗員らは航空機の状態についての把握ができなくなり,適当な時点において適切な是正のための操作をすることが更に困難になってしまった。 (d) 操縦輪の操舵が重い状態であるにもかかわらず,進入を継続するために操縦輪を押し続けたこと本件乗員らは,通常のシステムが達成できないことが明らかな場合には,予備のシステムを用いる注意義務を有する。 しかし,副操縦士は,異常な事態を感知していたにも を継続するために操縦輪を押し続けたこと本件乗員らは,通常のシステムが達成できないことが明らかな場合には,予備のシステムを用いる注意義務を有する。 しかし,副操縦士は,異常な事態を感知していたにもかかわらず,トリムホイールによる手動のトリム又はトリムスイッチによる電動のトリムといったトリム操作を全くとらなかったという著しい注意義務違反を行った。また,機長は,副操縦士が航空機を制御する能力がないことを認識していたにもかかわらず,操縦を交替せず,状況の分析を全くなさず,また,状況の回復を全く試みなかったという著しい注意義務違反を行った。 本件乗員らは,操縦輪から手を離し,オートパイロットのオーバーライドを中止して,自動でゴーアラウンドすべきだった。また,トリムホイール又はトリムスイッチによって,トリム安定性を回復すべきであった。 また,ゴーアラウンドモードでオートパイロットが接続中,操縦輪を押し続けると,機体のトリム安定性を喪失し,極めて危険な状態になることが運航マニュアルにおいて特に警告されていたにもかかわらず,副操縦士が二つのオートパイロットを接続した後も,機長の指示によって操縦輪を押し下げ続けたことにより,アウトオブトリムの状態を招いた。かかる本件乗員らの行為は,運航マニュアルの「CAUTION」に記載されている危険な行為に該当する行為であり,被告中華航空の重過失を構成する。被告エアバスにとって,かかる事態は予見義務の範囲外である。 (エ) 結果回避可能性についての原告らの主張は否認又は争う。 a 原告らは,本件事故前に技術通報6021の改修が本件事故機に実施されていたら本件事故が防止できたと主張している。 しかしながら,上記改修を実施していれば本件事故が防止できたか否かは明らかではない。本件事故は,基本的な飛行の安全ルールを全く無視し 本件事故機に実施されていたら本件事故が防止できたと主張している。 しかしながら,上記改修を実施していれば本件事故が防止できたか否かは明らかではない。本件事故は,基本的な飛行の安全ルールを全く無視し,被告エアバスが勧告する手順に反するといった本件乗員らの操作に起因するものであって,本件設計と本件事故との間に因果関係はない。 (a) 副操縦士は,本件事故機の飛行経路を適切にコントロールしておらず,エンジン出力を十分にコントロールしておらず,本件事故機の速度が極めて基本的なパラメータであるにもかかわらず速度を適切に監視しておらず,フライトモード表示器を適切にクロスチェックしていなかった。 (b) 機長は,フライトモード表示器の適切なクロスチェックを怠り,機長が押し下げるように繰り返し勧告したにもかかわらず副操縦士が本件事故機の飛行経路をコントロールしなかった事実について適切な評価を怠り,本件事故機の速度を監視することを怠り,また,機長のPNF(操縦を担当しない方の操縦士)及びPIC(指揮者たる操縦士)としての義務を確実に遂行することを怠り,これらによって,自分自身を操縦の中心からはずれさせてしまった。 (c) 副操縦士は,劣ったエアマンシップによってのみならず,機長が副操縦士に対して,副操縦士の点数を付け評価すると言った後,機長からの速くて連続した命令によっても大きなストレスにさらされていた。機長は,PIC(指揮者たる操縦士)の義務として副操縦士のストレスのレベルを減少させる代わりに,機長はこれを実際上増加させた。 上記の状況の下で,仮に技術通報6021の改修が実施されていたとして,オートパイロットを接続した副操縦士が,操縦輪へ力を加えることによってオートパイロットが自動的に解除されたことを認識した際の反応については,慎重に検討する必要がある 1の改修が実施されていたとして,オートパイロットを接続した副操縦士が,操縦輪へ力を加えることによってオートパイロットが自動的に解除されたことを認識した際の反応については,慎重に検討する必要がある。副操縦士はオートパイロットの解除を理解することができずに,これが副操縦士にとって更なるストレスの原因となり,副操縦士にとって既に能力が試されていた極めて困難な状況の下では,このことを失敗と解釈した可能性が高いと考えられる。 さらに,技術通報6021の改修が実施されていたと仮定した場合,それでも,本件乗員らは,速度及び航空機の飛行経路のコントロールを含む是正のための操作を実行しなければならなかった。オートパイロットが接続されていたか否かという事実とは関わりなく,本件乗員らはこれらの操作を遂行していなかったことは明らかである。 以上の理由からすれば,技術通報6021の改修が実施されていたと仮定しても,本件事故を回避することができたかは極めて疑問である。 b 技術通報6021が1993年(平成5年)6月に「Mandatory」として発行されていたと仮定しても,本件事故時に本件事故機について改修が既に実施されていたかは疑問である。 なぜならば,本件事故後の1994年(平成6年)8月に発行された改修を「Mandatory」とした耐空性改善命令は,2年間のうちに改修をするように求めたものであり,技術通報6021が1993年(平成5年)6月の時点で「Mandatory」として発行されていたと仮定しても,航空会社はその技術通報を適用するのに2年間を有していたこととなる。航空会社は同時点から1995年(平成7年)6月までの間に技術通報を適用することを求められたはずである。この2年間が経過する前に本件事故が発生したのである。 c トリムインモーション又はアウトオブ 。航空会社は同時点から1995年(平成7年)6月までの間に技術通報を適用することを求められたはずである。この2年間が経過する前に本件事故が発生したのである。 c トリムインモーション又はアウトオブトリムの状態を示す警報があったとしても,本件乗員らは,これを感知することができたかは不明である。 航空の経験則によれば,ストレスの多い状況の下では,操縦士は,利用可能な視覚上の又は聴覚上の警報の全てを感知することが不可能な場合がある。操縦士の負担が過重である状況では,多過ぎる警報は目的達成のために生産的ではない可能性がある。 その例としては,1994年(平成6年)に生じたインシデントにおいて,操縦士が不注意により手動の機首上げのトリム操作を行ない,これが聴覚上のトリムインモーション警報を10秒以上にわたって作動させ,アウトオブトリムの状態となった。しかし,警報は操縦士によって感知されなかった。 本件事故においては,機長は,副操縦士に対して,数回にわたりもっと押し下げるように勧告しており,換言すれば,機長は,何らかの異常が発生していたことの証拠を有しており,それを認識していたものである。さらに,副操縦士は,縦軸に何らかの異常を感知していて,機長に対して「教官,やっぱり押し下げられません。」という明確な警告をしていた。機長は,操縦を交替することなしに,副操縦士から聴覚上の警報を受けていた。しかるに,機長は,何らの積極的な反応をしなかったのであって,追加の警報が助けになったか極めて疑問である。 したがって,本件事故において,アウトオブトリム警報が設置されていたとしても,操縦士がこれを感知することが可能であったとは認められない。 (オ) 結果回避措置を講じなかったとの原告らの主張は否認又は争う。 a 技術通報6021は「Rcommended」として発行され「 しても,操縦士がこれを感知することが可能であったとは認められない。 (オ) 結果回避措置を講じなかったとの原告らの主張は否認又は争う。 a 技術通報6021は「Rcommended」として発行され「Mandatory」としては発行されなかったが,それは,耐空性当局よりいかなる耐空性改善命令も発行されなかったためである。耐空性当局が技術通報を「Mandatory」に区分し,これを強制する責任を有しているのであり,被告エアバスは,耐空性当局が耐空性改善命令を発行しない限り,技術通報を「Mandatory」に区分し,これを強制することは不可能である。 b アウトオブトリムの状態を操縦士が感知するための様々な微候の一つとして,特に,操縦士が加えなければならない操縦輪を維持するために必要な極めて大きくかつ異常なコントロールのための力がある。 事故調査報告書は,操縦士にアウトオブトリムの状態を警告するために役立つ操縦輪への極めて大きなコントロールのための力等の全ての重要な要素についての適切な説明を含んでいるべきであったのにもかかわらず,水平安定板の作動及びアウトオブトリムウォーニングについて論じている段落において,この重要な要素に言及していない。かかる不完全な分析に基づき事故調査報告書は結論を下し,安全勧告を行ったのである。 c 聴覚上の警報について手動操縦においては,操縦士が1秒以上継続してトリムをするとすぐに聴覚上のトリムの警報がある。正規の操縦技術を用いる場合には,操縦士は,コントロールのための力を除去するために頻繁にトリムを調整する。しかしながら,それぞれにかかる調節は極めて短時間である。 オートパイロットが接続されている間,操縦士が手動操縦中に行うのと全く同様に,オートパイロットは頻繁にトリムをする。したがって,オートパイロットが自動的に れぞれにかかる調節は極めて短時間である。 オートパイロットが接続されている間,操縦士が手動操縦中に行うのと全く同様に,オートパイロットは頻繁にトリムをする。したがって,オートパイロットが自動的にトリムする時には,聴覚上の警報は不要である。なぜならそれは正常な作動であるからである。これについての聴覚上の表示は,邪魔な聴覚上の警報を作り出すことになってしまう。 ゴーアラウンドのような一時的な局面では,より長い時間にわたるトリムの作動が必要である。なぜなら航空機は降下の姿勢からゴーアラウンドの姿勢へ転換中であるからである。したがって,オートパイロットが接続中であれば,操縦士が手動によるゴーアラウンド中に行うのと全く同様に,オートパイロットは自動的にトリムするが,これは当初は1秒以上となる。降下からゴーアラウンドへの転換中のトリムの動作は正常な作動である。したがって,邪魔な警告となる聴覚上の警報の必要はない。 操縦士に対する警報は,異常な機能を示すもののみに限られなければならない。 「暗くて静かなコックピット」がコックピットの設計思想の基本原則である。実際,設計通りにシステムが機能していることを操縦士に示す聴覚上の警報は,操縦士に何らの操作も要求するものではないため,操縦士を誤解させるものである。また,操縦士はそれに慣れてしまい,したがって,もはや注意を払わなくなってしまい,真の警報を害することになるのである。 d 視覚上の警告について原告らは,代替的なものとして視覚上の警告が可能であったはずである旨指摘している。 本件事故中,本件乗員ら,特に機長は外界を見ることにかなり多くの時間を費やしていた。さらに,各プライマリ・フライト・ディスプレイ上の重要な視覚上の情報があり,その情報は本件乗員らに対して状況が正常ではないことを伝えていた。 本件事故の 界を見ることにかなり多くの時間を費やしていた。さらに,各プライマリ・フライト・ディスプレイ上の重要な視覚上の情報があり,その情報は本件乗員らに対して状況が正常ではないことを伝えていた。 本件事故の間,副操縦士は,操縦輪を前方いっぱいに押していたとき,極めて大きく異常なレベルの力を加えなければならなかった。これは,副操縦士が彼の腕を完全に前方に伸ばし切ったままに維持して操縦輪を押すことを余儀なくされていたことを意味する。操縦士は,本件事故の間に生じたように,かかる長い時間にわたって腕を完全に伸ばし切ったままで航空機を飛行させることは全くない。この異常な位置は,縦軸に何らかの異常が生じていたことを本件乗員らに対して知らせる明確な視覚上の目印であった。これは,視覚上の警報であったが,本件乗員らは考慮しなかった。本件事故の間,副操縦士は縦軸に何らかの異常を感知していて,副操縦士は機長に対して「教官,やっぱり押し下げられません。」という明確な警告をしていた。 (6) 日本居住被害者の損害についてア原告らの主張(ア) 逸失利益日本居住被害者の逸失利益は,以下に述べる算定方法によって算定すべきであり,これによると,別紙の各「損害主張対照表」及び同表添付の計算書記載のとおりとなるのであって,各被害者の逸失利益は,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載の金額を下らない(なお,被害者B58(原告番号216・217),同B73(同267~269),同B76(同281~283)及び同B84(同319・320)については,逸失利益につき内金を請求するものである。)。 a 基礎収入及び就労可能年数について(a) 人の稼ぎ出す収入のみによって損害賠償額を算定すると,給与所得のない者,稼働能力のない者の逸失利益はゼロという極端な結果をもたらし,人の命の値 る。)。 a 基礎収入及び就労可能年数について(a) 人の稼ぎ出す収入のみによって損害賠償額を算定すると,給与所得のない者,稼働能力のない者の逸失利益はゼロという極端な結果をもたらし,人の命の値段に著しい格差を生じて,憲法の保障する法の下の平等や,人間としての尊厳の尊重にも反する結果を招きかねない。人間の生活には多面性があり,職業生活はその一面にすぎない。 したがって,損害賠償の枠組みとしては原状回復を基本理念とし,被害者と遺族の個別事情に配慮しつつ,人の命はかけがえがないという厳然たる事実を踏まえ,人間の尊厳と平等の理念に合致した緻密な損害賠償方式を採用すべきであり,具体的には,あらゆる被害者に対して,平成5年の賃金センサスの平均賃金に基づいて計算された損害を最低限の逸失利益として認めつつ,個別事情とりわけ高額の収入の可能性があった者については,加算のための立証を認めるという方式を採用すべきである。 (b) また,昇給制度が整備されていなくても賃金の増加が確実であれば昇給に基づく基礎収入をもとに逸失利益を算定すべきである。 会社の昇給昇格制度が整備され,将来の賃金の増加が確実に見込まれる場合には,これを損害賠償に反映させるべきことに判例学説ともに,異論はない。また,明確な昇給規定が整備されていなくても,昇給が確実に予測される場合には考慮できるとするのが,最高裁の立場である。 (c) 以上から,逸失利益算定の方法は次のとおりとすべきである。 賃金センサスによる場合(なお,賃金センサスの「第1巻第1表の産業計・企業規模計」によることは共通するので,以下,この点の表記は省略する。),原則として,男性の被害者は平成5年の賃金センサスの大卒男子労働者の年齢別平均賃金(以下「大卒男子年齢別平均賃金」という。),女性の被害者は平成5年の賃金センサス 以下,この点の表記は省略する。),原則として,男性の被害者は平成5年の賃金センサスの大卒男子労働者の年齢別平均賃金(以下「大卒男子年齢別平均賃金」という。),女性の被害者は平成5年の賃金センサスの学歴計全労働者の年齢別平均賃金(以下「全労働者年齢別平均賃金」という。)により,いずれについても,死亡時満年齢に該当する年齢の平均賃金を初年分とし,以後各年に対応する年齢の平均賃金を用いる。死亡時満年齢が20歳以下である場合には,20歳から収入が発生するものとして算定し,稼働期間は75歳までとする。ただし,死亡時満年齢が50歳以上の被害者の逸失利益は,男性については,68歳から75歳までは,平成5年の賃金センサスの大卒男子労働者の全年齢平均賃金に基づき算定し,女性については,68歳から75歳までは,全労働者年齢別平均賃金の65歳時の平均賃金に基づき算定する。 年収証明による場合及び事業者の場合は,収入増加率を年3パーセントとして,各年別に年収総額を算出し,退職金がある場合は,退職年の年収総額に加算し,退職年の翌年から75歳までは,退職年の年収(ただし,退職金を控除。)の3分の2とする。 (d) 個別の日本居住被害者について,逸失利益算定のための基礎収入及び就労可能年数は,別紙の各「損害主張対照表」及び同表添付の計算書に記載のとおりである。 b 生活費控除率について(a) 生活費控除率は,被扶養者がいない場合,男性については40パーセント,女性については30パーセントとし,1人扶養の場合について男女とも30パーセント,2人以上扶養の場合について男女とも25パーセントとする。 被害者の妻は被害者の就労可能期間中すべて,被害者の子は22歳(22歳を含む。)まで,それぞれ被害者の被扶養者として扱う。被害者の両親は,平成4年平均余命表による平均余命ま も25パーセントとする。 被害者の妻は被害者の就労可能期間中すべて,被害者の子は22歳(22歳を含む。)まで,それぞれ被害者の被扶養者として扱う。被害者の両親は,平成4年平均余命表による平均余命までの期間,被害者の被扶養者とする。ただし,両親が生計を別にしている場合は,被扶養者としない。 (b) 東京三弁護士会の損害賠償算定基準の生活費控除率は,昭和50年ころから変わっておらず,その後,家計に占める生活費割合が低下しているという事実を一切反映していないため,現在利用するには相当でない。昭和50年から現在の変化率によれば,原告らが主張する数値こそ,現在の生活費控除率を適切に反映しているのである。 (c) 個別の日本居住被害者についての生活費控除率は,別紙の各「損害主張対照表」及び同表添付の計算書に記載のとおりである。 c 中間利息控除率について年2パーセントの新ホフマン係数によるべきである。 年5パーセントという利率が妥当したのは市中銀行の預金金利が年5パーセントを上回っていた平成5年1月までのことであり,その後は,日本銀行による公定歩合の切り下げに従って,預金金利も切り下げの一途を辿った。ゼロ金利政策が始められた平成7年9月以後は,各種金利を史上最低水準に据え置く超低金利状況が維持され,市中銀行の預金金利においても実質ゼロ金利状態が現在まで続くことになり,超低金利政策が改められる見通しはないのであって,中間利息控除率を年5パーセントとするのは妥当でない。 なお,供託法3条は,「供託金ニハ命令ノ定ムルトコロニ依リ利息ヲ付スルコトヲ要ス」と定め,供託規則33条は,「供託法第3条による供託金の利息は,1年について0.12パーセントとする」と定めている。この利率は,毎年の経済動向に即応して一定の期間をもって変えられているものであり,それを法的に 託規則33条は,「供託法第3条による供託金の利息は,1年について0.12パーセントとする」と定めている。この利率は,毎年の経済動向に即応して一定の期間をもって変えられているものであり,それを法的に承認したものといえる。したがって,少なくとも,民法404条の利率よりは,供託法の利率の方が法的にも経済的にも合理性を有しているといえる。中間利息の利率を年2パーセントとすべきであるとの主張は,上記供託法の利率よりは若干高いものであり,ある程度の期間を考えても十分に合理性を有する見方であるといえよう。 この点,中間利息の利率を年5パーセントとすることが問題であるならば,被害者が受け取る遅延損害金の利率が年5パーセントであることも問題とすべきとの考え方もあるが,遅延損害金は,一種の懲罰的趣旨をもつものであって,遅延損害金に法定の年5分の利率を適用することと,中間利息の利率を別に考えることは全く矛盾しない。また,実際上の問題として一部弁済や供託による遅延損害金の発生防止ができるという点から見ても,遅延損害金との均衡を理由に中間利息の控除の利率も年5パーセントであるべしという主張は成り立ち得ない。 以上のように,経済実態からも,法理論上も,中間利息の利率を年5パーセントとすることに固執する必然性は全くない。損害賠償法において中間利息を控除する趣旨に照らし,市場金利の実態に即して考えるならば,年2パーセント程度の利率とすることがきわめて至当であって,年5パーセントの利率はもはや到底妥当し得ない。年5パーセントの利率による中間利息の控除は違法であり,年2パーセントとすべきである。 d 固有の逸失利益について原告A204(原告番号281)については,被害者B76についての以上の算定方法による逸失利益の同原告相続分に加え,同原告の実母Gの世話をする主婦が居な すべきである。 d 固有の逸失利益について原告A204(原告番号281)については,被害者B76についての以上の算定方法による逸失利益の同原告相続分に加え,同原告の実母Gの世話をする主婦が居なくなったための同原告の収入減,娘A206の犠牲等の事情による固有の逸失利益として500万円を加算すべきである。 (イ) 慰謝料本件事故は,航空機事故によるものであり,考え得るあらゆる不法行為の形態の中で,最も凄惨かつ悪質なものの一つであって,被告らの行為の悪質性,事故死に至るまでの被害者の恐怖,原告ら遺族の遺体の確認時に受ける精神的苦痛や一度に家族を失ったことによる精神的苦痛,被告らの不誠実な態度,被告らの資力,事故の頻発性,事故の公知性による被害,苦痛の継続性などの事情を考えると,高額の慰謝料の支払いを命じることが事案の妥当な解決にかなうのであり,被害者1人当たり1億円が正当な慰謝料である。 また,原告A4(原告番号4),同A19(同19),同A112(同118),同A167(同224),同A177(同239),同A190(同257),同A200(同272),同A203(同275),同A217(同300)及び同A218(同301)は,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅰ」の各被害者欄記載の被害者と同表の各続柄欄記載の続柄を有する者であり,それぞれ1000万円の慰謝料請求権を固有の権利として取得した。 (ウ) 葬儀費用,手荷物料本件事故により,被害者1人当たり,葬儀費用として250万円の損害が生じ,手荷物が滅失したことにより150万円の損害が生じた。 なお,葬儀費用について,被害者B78(原告番号288~290)については,実際に葬儀費用として1330万7023円を要したが,内金250万円を請求する。 被害者B65(原告番号238・239),同B77( 儀費用について,被害者B78(原告番号288~290)については,実際に葬儀費用として1330万7023円を要したが,内金250万円を請求する。 被害者B65(原告番号238・239),同B77(同284・285),同B81(同302・303)及び同B83(同316~318)については,実際に要した葬儀費用として,被害者B65につき434万5620円を,同B77につき516万4832円を,同B81につき269万2390円,同B83につき629万5383円を,それぞれ請求する。 (エ) 相続別紙「原告主張損害額一覧表Ⅰ」記載の原告ら(ただし,原告A4(原告番号4),同A19(同19),同A112(同118),同A167(同224),同A177(同239),同A190(同257),同A200(同272),同A203(同275),同A217(同300)及び同A218(同301)を除く。)は,本件事故により死亡した同表の各被害者欄記載の被害者と同表の各続柄欄記載の続柄を有する者であり,本件事故により上記被害者に生じた損害賠償請求権を同表の各相続分欄記載の割合で相続した。 (オ) 損害の填補a 前記争いのない事実(4)アのとおり,日本居住被害者につき,その相続人である原告らは,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅰ」の各既受領額欄記載の金員の支払を受けた。 しかし,被害者B79(原告番号295)の遺族は160万円及び1000万円の合計1160万円を受け取ったが,原告A212は,そのうち,その相続分に応じて500万円及び80万円合計580万円を受け取ったのみである。 なお,原告A171(原告番号228)は,既受領額1160万円のうち1000万円については,損害の填補として控除しない。 b 被告中華航空は,労災給付について全額控除すべきであると主張するが,労災 。 なお,原告A171(原告番号228)は,既受領額1160万円のうち1000万円については,損害の填補として控除しない。 b 被告中華航空は,労災給付について全額控除すべきであると主張するが,労災給付の特別支給金は損益相殺の対象にならないのであって,損害賠償額から全額控除すべきではない。 (カ) 弁護士費用弁護士費用(原則として,逸失利益,慰謝料,葬儀費用及び手荷物料を合計した金額から既に受領した金額を差し引いた金額の10パーセント)として,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅰ」の各弁護士費用欄記載の損害が発生した。 (キ) 結論以上のとおり,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅰ」記載の原告らは,それぞれ,同表の請求金額欄記載の金額につき,日本居住被害者の損害賠償請求権を相続し,又は固有の慰謝料請求権を取得したものである。 イ被告中華航空の主張(ア) 逸失利益についてa 基礎収入について(a) 日本の損害賠償制度の本質が,発生した損害の填補にある以上,逸失利益の賠償は故人が生存していれば得られたであろう収入を合理的に算定し,填補するものであることはいうまでもない。したがって,逸失利益の算定にあたっては,当然のことながら本来事故前に得ていた実収入(労働の対価である収入)がその計算の基礎に置かれるべきことになる。賃金センサスは,あくまでも実収入によることを原則としつつ,事故前の実収入の証明が不可能もしくは著しく困難な場合であって,かつ,特定の賃金センサスによることを合理的とするだけの将来の収入についての然るべき蓋然性が認められる場合に限り,その適用が認められるべきである。 なお,この場合に用いられる賃金センサスは,逸失利益が損害発生時に算定されるべきものである以上,事故年度のものを用いるべきである。 (b) 給与所得者については,事故時の雇用主が明 れるべきである。 なお,この場合に用いられる賃金センサスは,逸失利益が損害発生時に算定されるべきものである以上,事故年度のものを用いるべきである。 (b) 給与所得者については,事故時の雇用主が明らかで,現実の収入の証明が極めて容易であるから,賃金センサスの数値よりも高いか低いかにかかわらず,現実の収入額を賠償額算定の基礎収入とすべきである。 個人事業主については,過去3年分の所得税確定申告所得額から算定すべきである。 家事従事者については,平成6年の賃金センサスの学歴計女子労働者の全年齢平均賃金(以下「平成6年の女子全年齢平均賃金」という。)によるべきである。 未就労の年少者については,将来平均的な収入を得る蓋然性が最も高いと認められるので,計算の基準を,平成6年の賃金センサスの学歴計・男女別の全年齢平均賃金におくのが妥当であると考えられる。なお,原告らは,年少者男子についても大卒男子年齢別平均賃金を基準にすべきことを主張するが,大学まで進学したであろう蓋然性を基礎づける事実について主張立証がなされていない以上,これを基準にすべきではない。 また,同様に,およそ賃金センサスが妥当する場合に関し,男性の被害者についておしなべて大卒男子年齢別平均賃金を利用する根拠はなく,各人の実際の学歴に基づいて算定すべきである。 女性の被害者については,女子労働者に関する統計が利用されるべきであり,全労働者年齢別平均賃金を適用すべきではない。 (c) 昇給について原告らは,昇給についての立証資料を一切提出していない場合であっても,通常想定される程度のレベルの昇給に基づく所得額を基礎収入として損害を算定すべきであるとするが,昇給が全く見込まれないような場合にまでこれがあったものと擬制することは妥当でないばかりか,原告らのいう通常想定される程度のレベルの昇給 に基づく所得額を基礎収入として損害を算定すべきであるとするが,昇給が全く見込まれないような場合にまでこれがあったものと擬制することは妥当でないばかりか,原告らのいう通常想定される程度のレベルの昇給とは具体的に何を意味するのか,またその根拠も不明である。 また,原告らは,賃金センサスを基礎年収のベースとするにあたり,各被害者につき将来の年齢毎にその年齢の平均賃金を用いてこれを積算するという方法を用いているが,これは妥当ではない。すなわち,賃金センサス所定の年齢別平均賃金は,企業における給与規定のごとく将来における昇給を規定したものではなく,あくまで当該年度における年齢毎の平均賃金を示したにすぎず,将来の賃金昇給を然るべき蓋然性をもって示すものではないからである。 (d) 逸失利益の基礎となる収入についての原告らの個別の主張に対する個々の認否反論は,別紙の各「損害主張対照表」記載のとおりである。 b 就労可能年数について原則として,67歳までが妥当であり,高齢者については,平均余命の2分の1が妥当である。 c 生活費控除率について生活費控除率は,被害者が一家の支柱である場合,被扶養者が1人であれば40パーセント,2人であれば30パーセントとし,その他の場合では,被害者が男性(独身,幼児を含む。)であれば50パーセント,女性(主婦,独身,幼児を含む。)であれば30パーセントとするのが相当である。 なお,両親が被扶養者か否かは個別の実態によるべきであり,一律に定まるものではない。また,子供が被扶養者とされるのは18歳までとすべきである。 生活費控除率についての原告らの個別の主張に対する個々の認否反論は,別紙の各「損害主張対照表」記載のとおりである。 d 中間利息の控除について中間利息の控除については,現実のわれわれの社会が複利で営まれている以上 ついての原告らの個別の主張に対する個々の認否反論は,別紙の各「損害主張対照表」記載のとおりである。 d 中間利息の控除について中間利息の控除については,現実のわれわれの社会が複利で営まれている以上,理論的にはライプニッツ方式の方が正しいといわざるを得ないのであり,ライプニッツ方式を用いるべきである。 また,控除率については,圧倒的多数の裁判例において採用されているとおり,年5パーセントとすべきである。原告らは,現在の経済状況を理由に年2パーセントとすべき旨主張するが,妥当ではない。控除率は,将来にわたり失われた利益が仮に得られていたとした場合に,その時点における利息を控除しようとするものであり,特にこの先長期間に及ぶ逸失利益については,遠い将来における経済状況の変化を予測することは不可能である。そして,現に過去(いわゆるバブル崩壊前である。)において預金金利が年5パーセントを大きく上回った時期が存在し,今後もこのようなことが十分起こり得る以上,数字としても妥当性の認められる年5パーセントの法定利率によりどころを求めることには十分な根拠がある。 原告らは,遅延損害金に年5パーセントの利率が適用されるのは一種の懲罰的趣旨によるものであるとして,遅延損害金の利率と控除率は別に考えるべき旨主張する。しかし,年5パーセントの遅延損害金が懲罰的と感ぜられるのは現在の経済状況にあっての話であり,前述したような預金金利が年5パーセントを大きく上回った時期においてはこれを懲罰と捉える考え方は成り立たない。そもそもの損害賠償制度の趣旨に鑑みても,遅延損害金が時の経過により発生した遅延利息にすぎないことは明らかであろう。とすれば,受領が遅れたことによる遅延損害金の利率と,早期に受領したことによる控除率とは,全く同じ理由から考慮されるものであって,基本的に同 過により発生した遅延利息にすぎないことは明らかであろう。とすれば,受領が遅れたことによる遅延損害金の利率と,早期に受領したことによる控除率とは,全く同じ理由から考慮されるものであって,基本的に同じ基準を用いるべきことになる。そして,将来における利率の変動が明らかでないのに対し,過去における低い金利の事実が客観的に明らかである以上,控除率を5パーセント以下とすることについて検討の余地があるとすれば,それ以前に遅延損害金の利率を過去の実際の金利まで下げることがまず検討されるべきである。 (イ) 慰謝料について慰謝料は,一般的にその算定要素として,当事者双方の社会的地位,職業,資産,加害の動機及び態様,被害者の年齢,学歴等諸事情のほか,事故原因,態様等が挙げられていることは周知のとおりである。 しかしながら,損害賠償制度の本質が損害の填補にあるとすれば,事故原因や態様等が何故慰謝料算定の斟酌事由となるかについて疑問が生じる。特に交通事故に関し,被害者の公平均衡,個々の裁判官の主観性・恣意性の排除,裁判の予測性,裁判の迅速適切な処理の要請等から慰謝料の定額化が有力に唱えられ,その結果裁判実務においても特に死亡の場合の慰謝料が定額化されてきている。そもそも精神的苦痛なるものは極めて主観的なものであり,ましてや被害感情なるものには大きな個人差があり,その金額による評価は恣意的なものに流れやすい。したがって,生命の侵害の慰謝料は,死者の財産収益能力等とはかかわりない一人の人間の死に対するものとして客観性を持つべきものであり,それはすべての死者につきほぼ同一であるのが理想とされるのは当然である。 本件においても,各被害者一人当たりの慰謝料は,すでに数多くの裁判例において定額化された基準に従うのが当然であり,被害者自身のものと遺族固有のものとを併せ であるのが理想とされるのは当然である。 本件においても,各被害者一人当たりの慰謝料は,すでに数多くの裁判例において定額化された基準に従うのが当然であり,被害者自身のものと遺族固有のものとを併せた慰謝料総額として,以下の金額とすべきである。すなわち,被害者が一家の支柱である場合には2100万円,一家の支柱に準じる場合は1900万円,その他の場合は1700万円とするのが相当である。そして,個々の被害者の慰謝料については,別紙の各「損害主張対照表」記載のとおりである。 (ウ) 葬儀費用について式典費用,仏壇・仏具購入等を含めて一律120万円とすべきである。 損害賠償における葬儀費用は,現実の支出額とは無関係に,上記の基準額に限定する方式が採られている。その根拠は,葬儀費用はいずれにせよ支出は避けられないものであり,現実の損害としては支出時期が早まったということによる利息分の損害しかないこと,人により支出の程度がまちまちであるために支出額全額を認めたのでは事案間の不公平が生ずること,実際には香典収入などがあること等を考慮した点にある。 したがって,本件においても現実の葬儀に要した費用が補償されるものではなく,これとは無関係に一律上記金額とすべきである。 (エ) 手荷物料についてa 原告らは損害内容を明らかにすることなく,手荷物について乗客1人当たり金150万円を請求している。 しかし,損害賠償を請求する以上,受けた損害内容について立証を要することは当然であり,死亡乗客については正確な荷物の中味を把握することは困難であるとしても,可能な限りの立証を尽くすべきである。なお,この際の損害額の算定には減価償却が考慮され,取得時の価格がそのまま損害額となるものではないことはいうまでもない。 b また,仮に損害内容が明らかにされたとしても,その額は被告中 すべきである。なお,この際の損害額の算定には減価償却が考慮され,取得時の価格がそのまま損害額となるものではないことはいうまでもない。 b また,仮に損害内容が明らかにされたとしても,その額は被告中華航空の約款に定める責任限度額を超えるものではない。同約款によれば,ワルソー条約の適用の有無にかかわらず,人身賠償の限度額を排除するための,いわゆる「損害を生じさせる意図をもって又は損害の生ずるおそれがあることを認識して」作為又は不作為がなされていない限り,被告中華航空の手荷物に関する責任は,携行品については乗客1人当たり400米ドル,委託手荷物については1kg当たり20米ドルに制限され,委託手荷物の重量が記録されていない場合は,無料手荷物の割当重量を超えないものとみなすとされている。 本件において,各被害者の無料手荷物の割当重量は,被害者B24(原告番号66~68),同B25(同69~71),同B60(同225~227),同B69(同250~254)及び同B75(同273~275)について30kgであった外は,すべて20kgであった。 したがって,手荷物料に関する被告中華航空の責任は,携行品については400米ドル,委託手荷物についてはその重量が明らかにされない場合には20kg又は30kgとされ,400米ドル又は600米ドルが最高限度額となり,合計800米ドル又は1000米ドルがその最高限度額となる。 c 仮に何らかの理由により被告中華航空の約款による賠償限度の定めが適用されない場合であっても,原告らが請求する150万円という金額が認められるものではない。 (オ) 損害の填補についてa 被害者B79(原告番号295)については,被告中華航空は,原告A212に対して,本件事故の見舞金として500万円を支払ったのに加え,160万円を同原告宛に支払 い。 (オ) 損害の填補についてa 被害者B79(原告番号295)については,被告中華航空は,原告A212に対して,本件事故の見舞金として500万円を支払ったのに加え,160万円を同原告宛に支払ったから,合計660万円が控除されるべきである。 b 労災給付を受けた被害者の遺族である原告らについては,給付を受けた金額について,いずれも損害賠償額から控除されるべきである。 ウ被告エアバスの主張原告らの主張は,不知又は争う。 (7) 台湾居住被害者の損害についてア原告らの主張(ア) 逸失利益本件事故により死亡又は負傷した台湾居住被害者の逸失利益は,以下に述べる算定方法によって算定すべきであり,これによると別紙の各「損害主張対照表」及び同表添付の計算書記載のとおりとなるのであって,各被害者の逸失利益は,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅱ」の各逸失利益欄記載の金額を下らない(なお,被害者B43(原告番号137~141),同B46(同159・160),同B47(同161・162)及び同B49(同169)については,逸失利益につき内金を請求するものである。)。 a 台湾居住被害者の逸失利益は,賃金統計における平均賃金又は事故発生時の実収入に基づき,事故後就労可能期間中の各年の被害者の基礎収入を算出し,これを合算する方法により算定する。 賃金統計における平均賃金による場合,台湾の行政院主計處編の「中華民國・臺灣地區薪資與生髙産力統計月報」(以下「台湾統計月報」という。)の職業別平均賃金を使用する。台湾居住被害者の就労可能期間は,20歳又は死亡時満年齢から75歳までとする。ただし,死亡時満年齢が50歳以上の被害者の基礎収入は,68歳から75歳までは,67歳時点の想定年収の3分の2とする。 事故発生時の収入証明による場合は,平成6年の収入証明を基礎として, 歳までとする。ただし,死亡時満年齢が50歳以上の被害者の基礎収入は,68歳から75歳までは,67歳時点の想定年収の3分の2とする。 事故発生時の収入証明による場合は,平成6年の収入証明を基礎として,平成7年以後,収入増加率を年3パーセントとして,就労可能期間の各年毎に年収総額を算出し,退職年の翌年から75歳までは,退職年の年収の3分の2とする。 生活費控除率及び中間利息控除率については,日本居住被害者の場合と同様とすべきである。 b 台湾統計月報によることの合理性について多くの台湾居住被害者に係る原告らは,逸失利益算定のための基礎収入として,台湾統計月報に記載された平均賃金を主張するものであるが,台湾統計月報は,以下のとおり,台湾居住被害者の基礎収入を立証するに足りる客観性と信頼性を備えた資料であり,これを基礎収入認定の証拠として採用すべきである。 台湾統計月報は,賃金及び生産力に関して,予算会計及び統計統括局が実施した統計調査を行政院主計處(内閣主計局)が編集発行しており,同統計調査の目的は,台湾政府が労働資源の配分を計画し,経済変動を予測し,また労働政策の指針を立てるために重要な基礎資料を提供することにあるとされている。同統計調査は,サンプリングの方法により抽出された事業所に対して実施され,その対象となるのは鉱業土砂採掘業,製造業,電気ガス水道業,建設業,卸売小売業飲食店,運輸倉庫通信業,金融保険不動産業,商工サービス業,公的私的サービス業の9業種である。統計調査は,毎月実施され,労働者の属性,賃金,労働時間,労働生産力に関するデータが収集される。収集されたデータは,厳格な統計処理手続を経て,研究と評価に資するための統計表にまとめられ,翌月末に公刊されるのである。 台湾統計月報の性格と意義が上記のとおりである以上,日本の賃金センサスと れる。収集されたデータは,厳格な統計処理手続を経て,研究と評価に資するための統計表にまとめられ,翌月末に公刊されるのである。 台湾統計月報の性格と意義が上記のとおりである以上,日本の賃金センサスと異ならない。台湾統計月報による平均賃金も,公的機関の権限と権威において作成公表されたものであって,客観性及び信頼性が担保されており,これに基づいて基礎収入を認定することの合理性は十分にある。 c 台湾における産業計・学歴計平均賃金について台湾統計月報には男女別の平均月収及び労働者数が記載されており,これをもとに平成6年における平均賃金を計算すると次のようになる。 すなわち,1994年(平成6年)における,全労働者・産業計・学歴計平均年収は40万4507台湾元,男子労働者・産業計・学歴計平均年収は46万7373台湾元,女子労働者・産業計・学歴計平均賃金は31万9136台湾元となる。 また,2000年(平成12年)においては,全労働者・産業計・学歴計平均年収は50万2485台湾元,男子労働者・産業計・学歴計平均年収は56万6941台湾元,女子労働者・産業計・学歴計平均賃金は41万9180台湾元となる。 d 個別の台湾居住被害者について,逸失利益算定の基礎となる基礎収入,就労可能年数,生活費控除率は,別紙の各「損害主張対照表」及び同表添付の計算書に記載のとおりである。 (イ) 慰謝料本件事故により死亡した台湾居住被害者については,日本居住被害者と同様に,被害者1人当たり1億円すなわち2780万台湾元が正当な慰謝料である。 また,原告A116(原告番号140),同A117(同141),同A121(同153),同A122(同154),同A133(同167)及び同A134(同168)は,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅱ」の各被害者欄記載の被害者と同表の各続柄欄記 A117(同141),同A121(同153),同A122(同154),同A133(同167)及び同A134(同168)は,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅱ」の各被害者欄記載の被害者と同表の各続柄欄記載の続柄を有する者であり,それぞれ1000万円すなわち278万台湾元の慰謝料請求権を固有の権利として取得した。 さらに,本件事故により負傷した原告A236(原告番号339)についての慰謝料は,別紙「損害主張対照表」に記載のとおりである。 その根拠は,以下のとおりである。 a 慰謝料は精神的苦痛を金銭的に評価したものであり,台湾居住被害者が受けた精神的苦痛と日本居住被害者が受けた精神的苦痛に違いはないから,両者の算定に適用すべき慰謝料額の基準も同一のものでなければならない。すなわち,精神的苦痛は,被害者又はその遺族の居住地,国籍により異なった取扱いをし得る性格のものではない。本件の被害者はいずれも,同一の時間に同一の場所で同一の航空機に乗り合わせて生命を奪われた人々であり,本件の遺族はこの被害者の死を同一の機会に共有せざるを得なかった人々であるから,その受けた精神的苦痛の程度が居住地や国籍に依存しないことは明らかである。その金銭的評価たる慰謝料額は少なくとも日本居住被害者と同額にならなければならない。 人間の尊厳・価値の平等という理念を徹底するなら,そもそも逸失利益を含めた損害賠償額の総額が台湾居住被害者と日本居住被害者との間で格差があってはならない。これに照らせば,仮に,逸失利益の算定において賃金水準の影響を認めるとしても,その格差は慰謝料で補填されなければならない。この法理からは,台湾居住被害者及びその遺族に対しては,日本居住被害者以上の慰謝料額が算定されてしかるべきであると考えられる。また,異国の地で凄惨な事故に遭遇した台湾居住被害者の方が精 ばならない。この法理からは,台湾居住被害者及びその遺族に対しては,日本居住被害者以上の慰謝料額が算定されてしかるべきであると考えられる。また,異国の地で凄惨な事故に遭遇した台湾居住被害者の方が精神的苦痛がむしろ大きいともいえることからしても,台湾居住被害者及びその遺族に対しては日本居住被害者以上に慰謝料が支払われなければならない。 b 被告中華航空は,台湾居住被害者及びその遺族の慰謝料額について,台湾の賃金・物価水準を考慮して,日本の慰謝料水準の2分の1ないし3分の1とすべきであると主張していた。 しかし,そもそも裁判実務では,日本国内における日本人被害者の場合の慰謝料算定にあたって,賃金・物価水準による被害者の個人的格差及び地域格差は考慮されていない。つまり,慰謝料算定にあたって,被害者の収入は全く考慮されていないし,被害者が貧者であるからといって差別的に救済を薄くしたことはない。物価水準についても,日本国内の地域間格差を慰謝料額に反映させていない。また,過去,日本において,アメリカのように日本より賃金・物価水準の高い国の被害者に対して,慰謝料を増額した例は全くない。にもかかわらず,日本より賃金・物価水準の低いアジアなどの被害者に対する慰謝料額だけを減額するというのは,まさにアジア諸国の人々に対する差別であるといわざるを得ない。 したがって,台湾の賃金・物価水準が日本のそれに比して低いということのみを理由として慰謝料額を下げることに合理性は何ら認められない。 c また,被告中華航空と台湾居住被害者の遺族との間には,台湾居住被害者が受け取るべき慰謝料額を含めた損害賠償額が日本人基準と同一額にならなければならないとの合意が存在する。 すなわち,台湾居住被害者の遺族が損害賠償基準につき国籍による差別をしないよう申し入れたのに対して,被告中華航 謝料額を含めた損害賠償額が日本人基準と同一額にならなければならないとの合意が存在する。 すなわち,台湾居住被害者の遺族が損害賠償基準につき国籍による差別をしないよう申し入れたのに対して,被告中華航空は,1994年(平成6年)5月15日,日本籍とフィリピン籍の乗客に対する賠償額は,台湾籍の乗客の賠償標準よりも優遇しない旨の書簡を遺族に対して送付し,台湾居住被害者の遺族と被告中華航空との間で,損害賠償額算定に当たって,国籍による差別を行わないとする合意が成立した。 そして,同月22日,台湾居住被害者の遺族と被告中華航空との間で,この合意の確認が行われた。すなわち,被告中華航空は,中外平等原則に基づいて継続的に賠償金額を協議することに同意することとしたのである。ここで,中外平等原則とは,台湾籍の旅客と外国籍の旅客の賠償標準を,同等待遇で処理することを意味する。この合意の席では,台湾国会議員であるH,被告中華航空社長であるIなどが立会人となり署名している。これはまさに,被告中華航空が正式に合意を受け入れた証であり,また,中外平等原則の重要性を意味するものでもある。 同月22日,被告中華航空は,「南北地区の第1回目の協議会での遺族の反応と情・理・法上の考慮と社会状況及び誠信原則等の原因に基づき外国籍の旅客に提供する賠償金の上限を,本国籍の旅客に対する賠償金額より高くしないものとする。」との声明を発した。 そして,この損害賠償額に関する中外平等原則及びそれを被告中華航空が方針として掲げた事実は,同月23日の台湾時報にも掲載され,台湾の国民に広く知れ渡るところとなった。 前述したように,損害賠償に関する中外平等原則は,人間の尊厳・価値の平等の理念に基づくものであり,たとえ合意が締結されずとも当然に尊重されなければならない根源的な法理である。そして,被 ろとなった。 前述したように,損害賠償に関する中外平等原則は,人間の尊厳・価値の平等の理念に基づくものであり,たとえ合意が締結されずとも当然に尊重されなければならない根源的な法理である。そして,被告中華航空も,損害賠償額算定において当然に遵守しなければならない約束事として,台湾居住被害者の遺族との間で,自ら進んで認め,これに拘束されるとの意思表示を行ったのである。被告中華航空は,人間の尊厳・価値の平等の理念に基づき,合意を誠実に履行すべく,台湾居住被害者の遺族の損害賠償額算定に当たらなければならない。台湾居住被害者の遺族の受け取るべき損害賠償額は,日本人基準と同一額にならなければならないのである。 (ウ) 葬儀費用,手荷物料本件事故により死亡した台湾居住被害者は,それぞれ,葬儀費用として250万円すなわち69万5000台湾元の,手荷物の滅失によって150万円すなわち41万7000台湾元の損害を被った。 (エ) 相続a 本件の両被告に対する不法行為に基づく損害賠償債権の発生に関する準拠法は,日本法である(法例11条1項)。 そして,責任要件,損害の発生要件,損害の種類,因果関係などはもちろん,不法行為の効力に関する諸問題であるところの,いかなる者が損害賠償請求権を有するか,賠償の方法のいかん,賠償すべき損害の範囲,共同不法行為者の責任分担等の問題も不法行為の準拠法である日本法によって決せられるものであり,その上で損害賠償請求権の相続について相続人及び相続分を法例26条により死亡者の本国法を適用して定めることになる。 したがって,死亡に基づく損害の賠償請求権が法例26条による被相続人の本国法上,相続財産に帰属すべきものとして扱われているかどうかは考慮する必要がない。 よって,本件では,本件事故により死亡した台湾居住被害者に係る損害賠償請求権 賠償請求権が法例26条による被相続人の本国法上,相続財産に帰属すべきものとして扱われているかどうかは考慮する必要がない。 よって,本件では,本件事故により死亡した台湾居住被害者に係る損害賠償請求権の成立,その効力は日本法により,当該賠償請求権の請求権者は被害者の相続人とされるから,被相続人たる被害者が台湾人である場合には,その本国法である台湾法によって決せられる相続人がその相続分に応じて賠償請求権を取得するものである。 なお,台湾法は,死亡者の損害賠償について,葬儀費用,扶養及び固有の慰謝料について請求できる者を規定しているが,これらの規定が,日本法により成立と効力を認められた損害賠償請求権の相続権を否定するものではない。 b 別紙「原告主張損害額一覧表Ⅱ」記載の原告ら(原告A116(原告番号140),同A117(同141),同A121(同153),同A122(同154),同A133(同167),同A134(同168)及び同A236(同339)を除く。)は,本件事故により死亡した同表の各被害者欄記載の被害者と同表の各続柄欄記載の続柄を有する者であり,本件事故により上記被害者に生じた損害賠償請求権を,同表の各相続分欄記載の割合で相続した。 (オ) 損害の填補a 前記争いのない事実等(4)アのとおり,本件事故により死亡した台湾居住被害者につき,その相続人である原告らは,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅱ」の各既受領額欄記載の金員の支払を受けた。 ただし,被害者B87(原告番号322・323)及び原告A236(原告番号339)は,既受領額につき損害の填補として控除しない。 b 被告中華航空は,被害者B45(原告番号157・158)について,さらに既払額があると主張するところ,その主張については,原告A123(原告番号157)及び同A124(同158 して控除しない。 b 被告中華航空は,被害者B45(原告番号157・158)について,さらに既払額があると主張するところ,その主張については,原告A123(原告番号157)及び同A124(同158)が従業員団体傷害・死亡保険保険金として200万台湾元を受領したことは認めるが,その余は否認する。 c また,被告中華航空は,被害者B46(原告番号159・160)についても既払額を主張するところ,原告A125(原告番号159)及び同A126(同160)がこれらの金員を受け取ったことは認める。 なお,葬儀費用(30万台湾元)及び弔慰金(10万台湾元)の合計40万台湾元については,損害賠償額から控除の上請求している。 (カ) 弁護士費用弁護士費用(原則として,逸失利益,慰謝料,葬儀費用及び手荷物料を合計した金額から既に受領した金額を差し引いた金額の10パーセント)として,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅱ」の各弁護士費用欄記載の損害が発生した。 (キ) 結論以上のとおり,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅱ」記載の原告らは,同表の各請求金額欄記載の金額につき,死亡した台湾居住被害者の損害賠償請求権を相続し,若しくは固有の慰謝料請求権を取得し,又は負傷による損害賠償請求権を取得したものである。 イ被告中華航空の主張(ア) 逸失利益について台湾居住被害者は,台湾に生活の本拠を有していた者であって,日本には観光又は商用目的等の短期滞在目的で来ていたにすぎないところ,たまたま本件事故に遭遇した者であるから,その損害賠償額の算定においては,台湾における物価水準,所得水準等の経済的格差が考慮されるべきであり,このことは憲法14条の保障する実質的平等に反するものではない。 台湾居住被害者の逸失利益算定については,事故前に台湾において得ていた実収入がまず考慮されるべきであ 経済的格差が考慮されるべきであり,このことは憲法14条の保障する実質的平等に反するものではない。 台湾居住被害者の逸失利益算定については,事故前に台湾において得ていた実収入がまず考慮されるべきである。 実収入の証明が不可能又は著しく困難な場合であり,かつ,特定の賃金統計によることが合理的であると認められる場合には,該当する賃金統計が適用される。台湾居住被害者に適用すべき賃金統計は,台湾・日本間の物価水準等の格差を考慮した収入金額に評価し直したものである。 なお,原告らは,台湾統計月報の数値を逸失利益の算定に用いているが,そもそも台湾統計月報においては労働者の年齢が全く配慮されていないことなどからしても,その機能するところを日本の賃金センサスと同様に考えることはできない上,どの台湾居住被害者にどの基準を適用すべきかという個別の賃金統計の該当性を正確に判断することは不可能であるから,このような資料によることはできない。 逸失利益算定の基礎となる収入についての原告らの個別の主張に対する個々の認否反論は,別紙の各「損害主張対照表」記載のとおりである。 (イ) 慰謝料について外国人の慰謝料についても,他の物的損害と同様に,日本に生活の本拠を有する者については日本国民と同様に算定できるとしても,日本国外において生活する者については日本国民と同様の算定方式に加えて,当該外国人の母国における物価水準等を加味した金額に引き直すことが必要である。 原告らは,国籍による差別であるとか,命の値段に格差をつけるべきではないなどと主張するが,台湾居住被害者とは台湾に生活の本拠を置く者を意味するのであって,国籍の違いに基づいて異なる取扱いをせよというものでは決してないし,また,損害賠償制度は命の値段を算定して賠償しようとするものではない。 また,原告らは,慰謝料に差を設 を置く者を意味するのであって,国籍の違いに基づいて異なる取扱いをせよというものでは決してないし,また,損害賠償制度は命の値段を算定して賠償しようとするものではない。 また,原告らは,慰謝料に差を設けることは憲法14条の法の下の平等に反すると主張するが,各人の死亡について同じ価値の金銭を慰謝料として補償しようとした場合に,各人において同額の金銭の価値が異なるのであれば,そのような価値の違いも考慮した上で慰謝料の金額を決することが,むしろ憲法14条の保障する実質的平等の趣旨に適うことになるというべきである。 慰謝料についての原告らの個別の主張に対する個々の認否反論は,別紙の各「損害主張対照表」記載のとおりである。 (ウ) 葬儀費用について本件事故により死亡した台湾居住被害者についての葬儀費用の額は,台湾における葬儀に現実に要する費用とは無関係に,120万円という額に日本と台湾と間の物価水準の相違等を反映させて算定した額とすべきである。 (エ) 相続について日本の法例26条は,相続は被相続人の本国法に依ると規定し,相続に関する問題はもっぱら被相続人の本国法によることを原則とする相続統一主義を採用する。ここにいう被相続人の本国法とは,その死亡当時における本国法であり,被相続人がその死亡当時国籍を有していた国の法を意味する。そして,相続に関する本国法の適用範囲は,何人が相続人となるかという相続人に関する諸問題及びかかる相続人の相続分の問題のみならず,相続財産の構成及び移転の問題,すなわち,被相続人のいかなる財産が相続財産を構成するかという相続財産の範囲の問題についても及ぶものである。 本件事故当時,台湾籍を有していた台湾居住被害者(原告A236(原告番号339)を除く。)の遺族である原告らは,明らかに固有損害を請求している者を除き,①被害者が死 問題についても及ぶものである。 本件事故当時,台湾籍を有していた台湾居住被害者(原告A236(原告番号339)を除く。)の遺族である原告らは,明らかに固有損害を請求している者を除き,①被害者が死亡に当たって不法行為による損害賠償請求権を取得し,②原告らがこれを相続によって取得したという,いわゆる相続構成によって賠償請求を主張しているところ,①については,本件事故が日本で発生したことを考えると,日本の法令である民法709条以下が適用されるものと思われるが,②その相続に関する問題については,本国法たる台湾法が適用される。 そして,台湾法の下では,死亡者について発生した自らの死亡に対する賠償請求権が遺族に相続されるという考え方は採用されておらず,死亡による賠償請求権は,相続財産の対象とはされていない。すなわち,台湾の最高裁にあたる最高法院は,明確に「被害者の生命が侵害を受け消滅した時,その権利主体の能力も失われるので,損害賠償請求権も成立しなくなるのが,一般の通説として皆が認めるところである。民法には過失により不法に他人を死に至らしめた場合について,特に192条及び194条にその請求範囲が定められており,被害者の生存していたら得るべき利益は,被害者以外の人は賠償請求できないと解釈されるべきである。」として,台湾民法が明確に認めるいわゆる固有損害の賠償のみを認め,原告らの主張する相続構成を排除したのである。 したがって,台湾居住被害者の遺族である原告らは,日本の民法に基づいて,扶養請求権を喪失したことに対する固有の経済的損害の賠償請求権及び固有の慰謝料請求権を主張するほかなく,原告らが主張している相続構成によっては何らの権利も取得しておらず,その部分に係る請求は棄却されるべきものである。 (オ) 損害の填補について乗員であった被害者B45( 料請求権を主張するほかなく,原告らが主張している相続構成によっては何らの権利も取得しておらず,その部分に係る請求は棄却されるべきものである。 (オ) 損害の填補について乗員であった被害者B45(原告番号157・158)及び同B46(同159・160)の遺族に対する損害賠償額から,以下の金員が控除されるべきである。 a 被告中華航空により積み立てられた支払済み遺族年金(被害者B45につき221万8050台湾元)日本の厚生年金保険法による遺族厚生年金は,補償金より控除されるものとされており,その他の各種社会保険給付も同様に控除の対象とされている。この被告中華航空により積み立てられた支払済み遺族年金も同様の性質を有するものと思われるので,控除の対象とされるべきである。 b 台湾の労働法により義務づけられた労災保険による死亡補償金(被害者B45につき149万8500台湾元,同B46につき149万8500台湾元)労働者災害補償保険法64条1項により,労働者の遺族が同法上の年金給付を受けるべき場合,同一の事由について,当該労働者を使用していた事業主から民法その他の法律による損害賠償を受けることができるときは,事業主はその遺族の年金給付を受ける権利が消滅するまでの間,損害賠償の履行を猶予され,また,年金給付の支給が行われたときは,その限度において損害賠償の責めを免れるとされている。 したがって,日本における労働者災害補償保険法上の遺族年金給付と同様の性質を有すると思われる台湾の労働法により義務づけられた労災保険による死亡補償金については,損害賠償額から控除されるべきである。 c 乗務員団体傷害保険保険金(被害者B45につき5万米ドル,同B46につき5万米ドル)及び従業員団体傷害・死亡保険保険金(被害者B45につき200万台湾元,同B46につき200 されるべきである。 c 乗務員団体傷害保険保険金(被害者B45につき5万米ドル,同B46につき5万米ドル)及び従業員団体傷害・死亡保険保険金(被害者B45につき200万台湾元,同B46につき200万台湾元)これらは,被告中華航空が,従業員の死亡・傷害時に生じる損害を填補する目的で,自ら保険料を負担し,任意に加入した保険であり,これにより填補された損害については,損害賠償額から控除されるべきである。 d 葬儀費用(被害者B45につき30万台湾元,同B46につき30万台湾元)及び弔慰金(被害者B45につき10万台湾元,同B46につき10万台湾元)これらについて控除されるべきことは,被害者B46の遺族である原告A123(原告番号159)及び同A124(同160)も認めている。 e 被告中華航空の遺族に対する示談に当たっての追加支払額(被害者B45につき120万台湾元)これらは,乗務員遺族との交渉の末に,被告中華航空が一律に支払ったものであり,その金額に鑑みても,いわば仮払いの性質を有するものとして,損害賠償額から控除されるべきものである。 ウ被告エアバスの主張原告らの主張は,不知又は争う。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(グループⅠないしⅢの原告らの被告中華航空に対する訴えの国際裁判管轄の有無)について(1) グループⅠないしⅢの原告らの被告中華航空に対する本件訴えについて,被告とされている被告中華航空は,前記争いのない事実等(1)イのとおり,台湾法人である。 ところで,このように外国法人を被告とする民事訴訟につき,わが国の裁判所に国際裁判管轄が認められるか否かについては,わが国にはこれを直接規定する成文法規はなく,また,この問題について明確な原則を定めた条約も,一般に承認された明確な国際法上の原則も確立していないのが現状である。 判管轄が認められるか否かについては,わが国にはこれを直接規定する成文法規はなく,また,この問題について明確な原則を定めた条約も,一般に承認された明確な国際法上の原則も確立していないのが現状である。このような現状のもとにおいて,いずれの国で裁判を行うことが適切であるかについては,適用されるべき国際的な裁判管轄を定めた条約等の明文の法規がある場合にはこれによることとなるが,これがない場合には,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念により,条理に従って決定するのが相当というべきである。 そして,わが国の民訴法が国内の土地管轄に関して規定する裁判籍のいずれかがわが国内にあると認められるときは,その訴訟につき,わが国の国際裁判管轄を肯定することによりかえって条理に反する結果を生ずることになるような特段の事情のない限り,わが国の裁判所に国際裁判管轄を認めるのが相当である。 また,わが国の旧民訴法21条(民訴法7条)の規定する併合請求の裁判籍がわが国内にある場合において,わが国の裁判所に国際裁判管轄を認めることが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという上記理念に合致する場合にも,わが国の裁判所に国際裁判管轄を認めるのが,上記条理にかなうものと解するのが相当である。 そこで,以下,各グループの原告らの訴えについて,順次検討する。 (2) グループⅠ及びⅢの原告らの訴えについてア原告A171(原告番号228)の訴えについて前記争いのない事実等(2)ウのとおり,グループⅢの被害者のうち,被害者B61(原告番号228)は,被告中華航空との間で,出発地を台北,到達地を名古屋とする有償の国際旅客運送契約を締結したものであり,出発地の中国及び到達地の日本はいずれもワルソー条約締約国であるので,同運送契約にはワルソー条約の適用がある。 そして,わ 地を台北,到達地を名古屋とする有償の国際旅客運送契約を締結したものであり,出発地の中国及び到達地の日本はいずれもワルソー条約締約国であるので,同運送契約にはワルソー条約の適用がある。 そして,わが国の裁判所は,ワルソー条約28条にいう「到達地の裁判所」に当たるので,被害者B61の遺族である原告A171の被告中華航空に対する訴えについては,わが国の裁判所に国際裁判管轄があると認められる。 イ原告A174(原告番号236),同A175(同237),同A176(同238)及び同A177(同239)(以下,イ項においては「当該原告ら」ともいう。)の訴えについて(ア) 前記争いのない事実等(2)によれば,グループⅢの被害者らのうち,被害者B64(原告番号236・237)及び同B65(同238・239)と被告中華航空との間の運送契約は,いずれも出発地がワルソー条約締約国ではないタイ国内であるので,ワルソー条約1条にいう「国際運送」に該当しない。 したがって,被害者B64及び同B65の遺族である当該原告らについては,ワルソー条約の適用がなく,その他本件に適用されるべき国際的な裁判管轄を定めた条約等の明文の法規はない。 そこで,当該原告らの被告中華航空に対する訴えについて,わが国の裁判所が国際裁判管轄を有するかどうかについては,前記(1)に説示したところに従い,検討すべきこととなる。 (イ) 本件においては,前記争いのない事実等(3)アのとおり,本件事故の原因行為地及び結果発生地は名古屋であるので,旧民訴法15条1項(民訴法5条9号)に規定する裁判籍がわが国内にあると認められる。 この点に関し,被告中華航空は,国際航空運送については,不法行為地に管轄を認めるべきでないと主張する。しかしながら,前記(1)のとおり,わが国の民訴法が国内の土地管轄に関して 内にあると認められる。 この点に関し,被告中華航空は,国際航空運送については,不法行為地に管轄を認めるべきでないと主張する。しかしながら,前記(1)のとおり,わが国の民訴法が国内の土地管轄に関して規定する裁判籍のいずれかがわが国内にあると認められるときは,その訴訟につき,わが国の国際裁判管轄を肯定することによりかえって条理に反する結果を生ずることになるような特段の事情のない限り,わが国の裁判所に国際裁判管轄を認めるのが相当であって,このことは被告中華航空も認めているところ,そうだとすれば,わが国の民訴法が土地管轄に関して規定する裁判籍として,不法行為地が含まれる以上,上記特段の事情のない限り,わが国の裁判所に国際裁判管轄を認めるのが相当であり,被告中華航空が上記主張の根拠として挙げる事情は,上記特段の事情の存否として検討すべき事情というべきである。 (ウ) そして,前記(1)のとおり,民訴法の規定による裁判籍が日本国内に存する場合であっても,当該事件をわが国の裁判所で審理した場合に,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという民事訴訟の基本理念に著しく反する結果をもたらすであろう特段の事情が存するときは,例外的にその裁判籍によるわが国の裁判所の管轄を否定するのが相当であると解すべきであるので,以下,特段の事情の存否について検討する。 a 当事者間の公平について(a) 被告中華航空は,ワルソー条約28条1項の管轄制限は,国際航空という分野における実態を前提に,運送人,旅客双方の利害を調整した一つの条理というべきものであり,十分考慮されるべきであると主張するところ,ワルソー条約が不法行為地につき裁判管轄を認めていないことは,被告中華航空の指摘するとおりではあるが,このことから直ちに,国際航空運送について,不法行為地の管轄を否定する国際 あると主張するところ,ワルソー条約が不法行為地につき裁判管轄を認めていないことは,被告中華航空の指摘するとおりではあるが,このことから直ちに,国際航空運送について,不法行為地の管轄を否定する国際法上の慣習が成立しているとか,そのような条理が存在するということはできない。 (b) また,被告中華航空は,当事者間の公平を考慮するについては,訴えを提起され,防御に回る被告の立場を重視すべきであるし,国際線の航空機事故の場合,航空運送人は,事故が遠隔の地で,しかも裁判に対する信頼性の不明確な土地で応訴しなければならないという可能性がある一方,被害者が不法行為地に住んでいるというのは偶然であることが多いなどと主張する。 しかしながら,前記争いのない事実等(1)イのとおり,被告中華航空は,台湾法人であるが,わが国において,東京,名古屋などに営業所を有しており,平成8年当時において,旅客機だけで45便をわが国と台湾との間で就航させていたものであるから,被告中華航空において,わが国の裁判所で訴訟を遂行することが過大な負担となるとまではいえないし,わが国における訴訟も予測できないものではなかったといえる。 その上,前記争いのない事実等(4)イのとおり,グループⅣの原告らの訴えについて,被告中華航空は,管轄違いの抗弁を提出することなく,本案について弁論を行っており,これにより,わが国に国際裁判管轄が認められると解されるから,被告中華航空は,少なくともグループⅣの原告らの訴えについては応訴せざるを得ないのであって,当該原告らが,更にわが国において併合して訴えを提起したとしても,応訴の負担が著しく増えるともいい難い。 (c) 以上によれば,当該原告らの訴えについて,わが国の裁判所において裁判を行うことが,当事者間の公平という理念に著しく反する結果をもたらすよう たとしても,応訴の負担が著しく増えるともいい難い。 (c) 以上によれば,当該原告らの訴えについて,わが国の裁判所において裁判を行うことが,当事者間の公平という理念に著しく反する結果をもたらすような特段の事情の存在は,これを認めるに足りないというべきである。 b 裁判の適正・迅速について(a) 被告中華航空は,一般に不法行為地に裁判管轄が認められる理由の一つに立証の便宜があるところ,国際線の航空機事故の場合には,現在では,事故発生地の政府機関等により事故原因に関する事故調査報告書が作成されることとなっており,原告はこれを証拠として利用することが可能であって,事故発生地を管轄原因とすべき必要性が乏しくなっており,ワルソー条約の管轄規定が不法行為地を認めていないのも,こうした考え方によるもので,これがいわば条理というべきであると主張する。 しかしながら,ワルソー条約が不法行為地につき裁判管轄を認めていないことから直ちに,国際航空運送について,不法行為地の管轄を否定する国際法上の慣習が成立しているとか,そのような条理が存在するということはできないことは,既に説示したとおりである。 (b) また,被告中華航空は,本件の重大な争点である被告中華航空の責任の有無についての証拠はほとんどが台湾にあり,事故調査報告書の発表をもって少なくとも日本国内における本件事故の原因解明は完結しているなどと主張する。 しかしながら,本件においては,被告中華航空の責任の有無が重要な争点であるところ,その責任原因に関する証拠については,確かに現在においては重要な証拠である事故調査報告書が公表されているが,それは訴え提起後の事情であり,本件訴え提起時においては,事故原因に関する重要な証拠ないし証拠方法はわが国内に集中していたというべきである。 (c) そして,当該原告らの 査報告書が公表されているが,それは訴え提起後の事情であり,本件訴え提起時においては,事故原因に関する重要な証拠ないし証拠方法はわが国内に集中していたというべきである。 (c) そして,当該原告らの訴えは,被告中華航空の責任の有無等の重要な争点が共通するグループⅣの原告らの訴えと併合して審理する方が,審理の合理化,迅速化を図ることができるといえる上,損害についての審理も,その住所地であるわが国で行う方が,適正・迅速な裁判を期待できる。 (d) 以上のとおり,当該原告らの訴えにつき,わが国の裁判所で審理した場合に,裁判の適正・迅速を期するという民事訴訟の基本理念に著しく反する結果をもたらすであろう特段の事情については,これを認めるに足りない。 c よって,わが国の裁判所は,当該原告らの被告中華航空に対する訴えについて,国際裁判管轄を有する。 ウグループⅠ及びⅢの原告らのうち,前記ア及びイの原告らを除くその余の原告ら(以下,ウ項においては,単に「グループⅠ及びⅢの原告ら」ともいう。)について(ア) 前記争いのない事実等(2)アによれば,グループⅠの被害者らと被告中華航空との間の運送契約は,被害者B66(原告番号243・244)及び同B79(同295)については,いずれも出発地及び到達地がワルソー条約締約国であるフィリピン国内であり,被害者B71(原告番号258・259)については,出発及び到達地がドイツ国内であって,予定寄航地の台北や名古屋はフィリピン又はドイツ国外であるので,上記運送契約についてはいずれもワルソー条約の適用がある。 また,前記争いのない事実等(2)ウによれば,グループⅢの被害者らのうち,被害者B24(原告番号66~68),同B25(同69~71),同B60(同225~227)及び同B69(同250~254)と被告中華航空との ない事実等(2)ウによれば,グループⅢの被害者らのうち,被害者B24(原告番号66~68),同B25(同69~71),同B60(同225~227)及び同B69(同250~254)と被告中華航空との間の運送契約は,いずれも出発地及び到達地がワルソー条締約国である中国国内であり,予定寄航地はわが国であるので,いずれもワルソー条約の適用がある。 そして,ワルソー条約28条1項は,「責任に関する訴は,原告の選択により,いずれか一の締結国の領域において,運送人の住所地,運送人の主たる営業所の所在地若しくは運送人が契約を締結した営業所の所在地の裁判所又は到達地の裁判所のいずれかに提起しなければならない。」と定め,国際航空運送の責任に関する訴えについて4つの国際裁判管轄を定めているところ,この規定によれば,被害者B66の遺族である原告A178外1名(原告番号243・244)及び被害者B79の遺族である原告A212(原告番号295)についてはフィリピン及び台湾が,被害者B71の遺族である原告A191外1名(原告番号258・259)についてはドイツ及び台湾が,被害者B24の遺族である原告A66外2名(原告番号66~68),被害者B25の遺族である原告A69外2名(原告番号69~71),被害者B60の遺族である原告A168外2名(原告番号225~227)及び被害者B69の遺族である原告A183外4名(同250~254)については台湾が,明文上の管轄地となる。 (イ) ところで,グループⅣの原告らの訴えについては,被告中華航空は,管轄違いの抗弁を提出することなく本案について弁論を行っており,これにより,わが国に国際裁判管轄が認められると解されることは既に説示したとおりであるところ,グループⅠ及びⅢの原告らは,グループⅣの原告らの被告中華航空に対する訴えと 案について弁論を行っており,これにより,わが国に国際裁判管轄が認められると解されることは既に説示したとおりであるところ,グループⅠ及びⅢの原告らは,グループⅣの原告らの被告中華航空に対する訴えとの併合管轄が認められるべきだと主張するので,以下,検討する。 (ウ) この点について,被告中華航空は,ワルソー条約28条1項は専属管轄を定めたもので,併合管轄を認めない趣旨であると主張する。 しかしながら,ワルソー条約28条1項は,その文言上は,ある原告が責任に関する訴えの提起をするにつき,土地管轄をワルソー条約締結国に限定するとともに,4つの地に限定したものにすぎない趣旨であって,その土地管轄が認められる他の原告と共同で訴訟を提起した者についての併合管轄の発生について,これを明確に排除する趣旨の文言であるとまでは解されない。 また,ワルソー条約32条は,運送契約の約款及び損害の発生前の特約は,裁判管轄に関する規則を変更することによってこの条約の規定に違反するときは,無効とする旨を定めているところ,この規定の反対解釈によれば,損害の発生後の特約(合意)においては,ワルソー条約の管轄規定と異なる定めも有効であることとなるから,ワルソー条約は損害の発生後の合意管轄及び応訴管轄を許容しているものと,すなわち,ワルソー条約28条1項が定める4つの管轄地以外にも管轄を認めることを許容しているものと解される。 そもそも,ワルソー条約28条1項が土地管轄を限定した趣旨・目的は,裁判地を制限することによって,運送人が,遠隔の地や裁判制度の進んでいない地等,運送人にとって予想不可能な土地の裁判所で訴えを提起され,応訴の負担を生じる事態を防止し,もって,運送人の保護を図るというものであると考えられるところ,本件のような同一航空機事故に基づく多数当事者(原告)による損害 想不可能な土地の裁判所で訴えを提起され,応訴の負担を生じる事態を防止し,もって,運送人の保護を図るというものであると考えられるところ,本件のような同一航空機事故に基づく多数当事者(原告)による損害賠償請求については,「到達地」や「契約締結地」を異にする乗客が存し,運送人は,これらの異なる「到達地」や「契約締結地」の裁判所において訴えを提起され,応訴する必要性が生ずることを事前に予想することが可能であるし,他の原告によってある国の裁判所に訴えが提起され,適法に審理される場合には,その訴訟にその他の原告が併合して訴えを提起したとしても,被告たる運送人は新たな土地での応訴の負担が生じるわけではなく,かえって,併合審理がされることで,多くの国で応訴する負担が減少するということができる。 これらのことからすると,ワルソー条約は,共同訴訟についての併合管轄を原因とする国際裁判管轄については,これを排除しているものではなく,この点については,一般の国際裁判管轄法理に委ねているものと解するのが相当である。 なお,被告中華航空は,ワルソー条約28条1項が,各乗客につき同条に列挙した裁判所に限り裁判管轄を認め,それ以外の裁判管轄を認めないことは,その文言の意味内容から客観的に明らかであると主張するが,当裁判所と見解を異にするもので採用できないことは,以上に説示したとおりである。また,被告中華航空の引用するバッツ判決は,ワルソー条約28条1項所定の「到達地」の解釈が争われ,その点についてのみ判断した事案であって,ワルソー条約28条1項が主観的併合管轄を認めない趣旨であるか否かについて判断しているものではない。 (エ) そうすると,グループⅠ及びⅢの原告らの請求とグループⅣの原告らの請求は,本件事故という同一の原因に基づく損害賠償請求であり,グループⅠ及びⅢの であるか否かについて判断しているものではない。 (エ) そうすると,グループⅠ及びⅢの原告らの請求とグループⅣの原告らの請求は,本件事故という同一の原因に基づく損害賠償請求であり,グループⅠ及びⅢの原告らの訴えについて,旧民訴法21条,59条前段(民訴法7条,38条前段)の併合請求の裁判管轄がわが国にあると認められるから,前記(1)に説示したとおり,当該事件につきわが国の裁判所に国際裁判管轄を認めることが,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという民事訴訟の基本理念に合致する場合には,これを認めるのが相当と解される。 そこで,この点について,以下検討する。 a 当事者間の公平について前記(イ)のとおり,被告中華航空は,グループⅣの原告らの訴えにつき応訴しているのであるから,グループⅠ及びⅢの原告らの訴えにつき併合管轄を認めたとしても,原告が数名増えるだけで,応訴の負担が格別に増加するなどとはいえないばかりか,これらの原告らがフィリピン,ドイツ又は台湾で訴訟を提起するとすれば,かえって被告中華航空にとっても応訴の負担が増大するといえる。 他方,グループⅠ及びⅢの原告らは,そのほとんどが日本に在住している(弁論の全趣旨)ところ,これらの原告らについて,わが国の裁判所の国際裁判管轄を否定すると,他の原告らについては国内の裁判所で本件の審理がされているにもかかわらず,フィリピン,ドイツ又は台湾における訴訟遂行を余儀なくされることとなり,極めて不当な結果となってしまうものといえる。 以上によれば,グループⅠ及びⅢの原告らの訴えについて,わが国の裁判所において裁判を行うことが,当事者間の公平という理念に合致すると認めるべき事情が存在するということができる。 b 裁判の適正・迅速について本件事故は,わが国において生じたものであり,事故原因に関する重 いて裁判を行うことが,当事者間の公平という理念に合致すると認めるべき事情が存在するということができる。 b 裁判の適正・迅速について本件事故は,わが国において生じたものであり,事故原因に関する重要な証拠ないし証拠方法はわが国内に集中していたというべきことは前記イ(ウ)において見たとおりである上,損害の認定のための証拠も多くがわが国にあるものと考えられるのであって,フィリピン,ドイツ又は台湾においては,これらの証拠を収集・提出することが困難であるといえる。 その上,被告中華航空の責任の有無等の重要な争点が原告らに共通することからすれば,むしろ,グループⅠ及びⅢの原告らの訴えは,グループⅣの原告らと併合して審理することによってこそ,審理の合理化,迅速化を図ることができるといえる。 以上によれば,グループⅠ及びⅢの原告らの訴えについて,わが国の裁判所において裁判を行うことが,裁判の適正・迅速という理念に合致すると認めるべき事情もその存在を認めることができる。 (オ) よって,グループⅠ及びⅢの原告らの訴えについては,わが国の裁判所に国際裁判管轄を認めるのが相当である。 (3) グループⅡの原告らの訴えについてア被告中華航空は,グループⅡの原告らの訴えについては,同原告らは台湾籍を有し,台湾に居住する者であり,被告中華航空も台湾法人であるから,専ら台湾の主権が及んでおり,日本の主権は関係するところではなく,台湾の裁判所で審理されるべきものであると主張するが,グループⅡの被害者らと被告中華航空との間の運送契約は,台北と名古屋との間の国際的運送である上,グループⅡの原告らの訴えはわが国において生じた航空機事故についての損害賠償請求であるから,わが国の公序に関係するものであって,専ら台湾の国内問題であるなどとはいえないことは明らかであり,被告中 ,グループⅡの原告らの訴えはわが国において生じた航空機事故についての損害賠償請求であるから,わが国の公序に関係するものであって,専ら台湾の国内問題であるなどとはいえないことは明らかであり,被告中華航空の上記主張は採用できない。 イ原告A123(原告番号157),同A124(同158),同A125(同159)及び同A126(同160)(以下,イ項においては「当該原告ら」ともいう。)について(ア) 前記争いのない事実等(2)イのとおり,グループⅡの被害者らのうち,被害者B45(原告番号157・158)及び同B46(同159・160)は,本件事故機に乗務員として搭乗していたものであり,被告中華航空との間に運送契約はない。 したがって,被害者B45及び同B46の遺族である当該原告らについては,ワルソー条約の適用はなく,その他本件に適用されるべき国際的な裁判管轄を定めた条約等の明文の法規はない。 (イ) そこで,当該原告らの被告中華航空に対する訴えについては,前記(1)に説示したところに従い検討すべきところ,旧民訴法15条1項(民訴法5条9号)に規定する裁判籍がわが国に存すると認められるから,当該事件をわが国の裁判所で審理した場合に,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという民事訴訟の基本理念に著しく反する結果をもたらすであろう特段の事情のない限り,わが国の裁判所に国際裁判管轄を認めるのが相当であることは,前記(2)イ(イ)と同様である。 そこで,以下,特段の事情の存否について検討する。 a 当事者間の公平について(a) ワルソー条約が不法行為地につき裁判管轄を認めていないことから,直ちに,国際航空運送について,不法行為地の管轄を否定する国際法上の慣習が成立しているとか,そのような条理が存在するということはできないこと,被告中華航空におい つき裁判管轄を認めていないことから,直ちに,国際航空運送について,不法行為地の管轄を否定する国際法上の慣習が成立しているとか,そのような条理が存在するということはできないこと,被告中華航空において,わが国の裁判所で訴訟を遂行することが過大な負担となるとまではいえないし,わが国における訴訟も予測できないものではなかったこと,被告中華航空は,少なくともグループⅣの原告らの訴えについては応訴せざるを得ないのであるから,他の原告らが更にわが国において併合して訴えを提起したとしても,応訴の負担が著しく増えるともいい難いことは,既に前記(2)イ(ウ)において説示したところと同様である。 (b) 被告中華航空は,当該原告らは,台湾に居住しており,台湾で訴訟を提起する方がより便利であり,かつ,何ら不利益もないなどと主張する。 確かに,当該原告らは,その損害の主張立証については,わが国で審理する方が負担が増えることは否定できないものの,他方,本件の最も重要な争点である被告中華航空の責任の有無については,むしろ,他の原告らと共同原告となって訴えを提起することにより,その主張立証の負担が大幅に軽減されるということができる。 また,当該原告らの損害について,被告中華航空の反証の負担が増えることも肯定せざるを得ないとしても,重要な争点である被告中華航空の責任の有無の点について2か国において応訴する負担と比べた場合には,その負担は過大とまではいえない。 なお,被告中華航空は,当該原告らについて,高額の賠償金を目指したフォーラム・ショッピング(法廷地漁り)であれば,当事者間の公平を害し,許されるべきではないと主張するが,当該原告らがわが国で訴訟を提起することが条理に合致するものであるか否かが問題であって,法廷地漁りの可能性がその結論を左右するものではない。 (c) 公平を害し,許されるべきではないと主張するが,当該原告らがわが国で訴訟を提起することが条理に合致するものであるか否かが問題であって,法廷地漁りの可能性がその結論を左右するものではない。 (c) 以上によれば,当該原告らの訴えについて,わが国の裁判所において裁判を行うことが,当事者間の公平という理念に著しく反する結果をもたらすような特段の事情の存在は,これを認めるに足りないというべきである。 b 裁判の適正・迅速について(a) 本件訴え提起時においては,被告中華航空の責任の有無という本件の重要な争点について,その責任原因に関する証拠である事故原因に関する重要な証拠ないし証拠方法は本件事故の発生したわが国に集中していたというべきこと,グループⅣの原告らの訴えと併合して審理する方が,審理の合理化,迅速化を図ることができることは前記(2)イ(ウ)において説示したところと同様である。 (b) 被告中華航空は,当該原告らについて,台湾法における雇用契約上の安全配慮義務等の問題を検討しなければならない可能性があり,台湾の裁判所において審理・判断されるべきであると主張するが,可能性を指摘するのみで,具体的にどのような問題が生じるのかも明らかではないのであって,かかる主張を理由に裁判管轄権を否定することはできない。 また,当該原告らの損害についての主張立証の困難性については,その不利益は主に当該原告らが負担するものといえるのであり,この点の被告中華航空の反証の困難性についてはこれを肯定し得るとしても,当該原告らにつき台湾で訴訟を遂行すべきとした場合の責任原因の立証の困難性に比べれば,決して過大であるとはいえず,わが国において裁判を行うことが裁判の適正に著しく反する結果をもたらすものとはいえない。 (c) 以上のとおり,当該原告らの訴えにつき,わが国の裁判 証の困難性に比べれば,決して過大であるとはいえず,わが国において裁判を行うことが裁判の適正に著しく反する結果をもたらすものとはいえない。 (c) 以上のとおり,当該原告らの訴えにつき,わが国の裁判所で審理した場合に,裁判の適正・迅速を期するという民事訴訟の基本理念に著しく反する結果をもたらすであろう特段の事情については,これを認めるに足りない。 c 被告中華航空は,フォーラム・ノン・コンビニエンスの法理(不便宜法廷の法理)を参考にすべきであると主張するが,既に見たとおり,本件はわが国との関係が希薄な訴訟とはいえない上,当該原告らについても,わが国と比較して台湾においてより適切に審理することができるとは必ずしもいえないことからすれば,同法理を参酌したとしても,わが国における審理が相当というべきである。 (ウ) よって,わが国の裁判所は,当該原告らの被告中華航空に対する訴えについて,国際裁判管轄権を有する。 ウグループⅡの原告らのうち,前記イの原告らを除くその余の原告ら(以下,ウ項においては,単に「グループⅡの原告ら」という。)について(ア) 前記争いのない事実等(2)イのとおり,グループⅡの被害者らのうち,被害者B45(原告番号157・158)及び同B46(同159・160)を除くその余の被害者らと被告中華航空との間の運送契約は,いずれも,出発地及び到達地がワルソー条約締約国である中国であり,予定寄航地がわが国であるため,ワルソー条約の適用がある。 そして,ワルソー条約28条1項によれば,グループⅡの原告らの訴えについては,台湾のみが明文上の管轄地となる。 (イ) もっとも,前記(2)ウ(ウ)において説示したとおり,ワルソー条約は,併合管轄を原因とする国際裁判管轄については,一般の国際裁判管轄の法理に委ねていると解されるところ,グループⅡ 地となる。 (イ) もっとも,前記(2)ウ(ウ)において説示したとおり,ワルソー条約は,併合管轄を原因とする国際裁判管轄については,一般の国際裁判管轄の法理に委ねていると解されるところ,グループⅡの原告らは,グループⅣの原告らの訴えとの併合管轄をも主張しており,グループⅡの原告らの請求とグループⅣの原告らの請求は,本件事故という同一の原因に基づく損害賠償請求であるから,グループⅡの原告らの訴えについて旧民訴法21条,59条前段(民訴法7条,38条前段)の併合請求の裁判管轄がわが国にあると認められる。 よって,前記(1)に説示したとおり,当該事件につきわが国の裁判所に国際裁判管轄を認めることが,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという民事訴訟の基本理念に合致する場合には,これを認めるのが相当であるので,以下,この点について検討する。 a 当事者間の公平について被告中華航空において,わが国の裁判所で訴訟を遂行することが過大な負担となるとまではいえないし,わが国における訴訟も予測できないものではなかったといえること,少なくともグループⅣの原告らの訴えについては応訴せざるを得ないのであるから,他の原告らが更にわが国において併合して訴えを提起したとしても,応訴の負担が著しく増えるとはいい難いこと,なお,グループⅡの原告らは,その損害の主張立証については,わが国で審理する方が負担が大きいものの,本件の最も重要な争点である被告中華航空の責任の有無については,他の原告らと共同原告となって訴えを提起することにより,その主張立証の負担が大幅に軽減されること,被告中華航空においても,グループⅡの原告らの損害について,反証の負担が増えることは否定できないとしても,被告中華航空の責任の有無の点について,2か国において応訴する負担と比べた場合には,その負 被告中華航空においても,グループⅡの原告らの損害について,反証の負担が増えることは否定できないとしても,被告中華航空の責任の有無の点について,2か国において応訴する負担と比べた場合には,その負担は過大とまではいえないことは,既に説示したところと同様である。 特に,本件事故は,高度で複雑なシステムを有する航空旅客機の墜落事故であり,その事故原因の究明やその立証,被告中華航空の責任の立証などは非常に困難なものであるというべきであり,このような本件の特殊性からすれば,グループⅡの原告らにおいて,他の原告らと共同原告となって訴えを提起することにより,その主張立証の負担が軽減される利益は,十分斟酌すべき事情であるといえる。 さらに,グループⅡの原告らの被告中華航空に対する訴えについて,わが国の裁判所の国際裁判管轄を否定すると,グループⅡの原告らは,上記の被告中華航空に対する訴えと被告エアバスに対する訴えとを別々の国に提起することを余儀なくされることとなる可能性もあり,この点の不利益も考慮すべき事情というべきである。 以上によれば,グループⅡの原告らの訴えについて,わが国の裁判所において裁判を行うことが,当事者間の公平という理念に合致すると認めるべき事情が存在するということができる。 なお,被告中華航空は,グループⅡの原告らについても,フォーラム・ショッピングであれば許されるべきではないと主張するが,このような主張が採用できないことは,前記イ(イ)aのとおりである。 以上によれば,グループⅡの原告らの訴えについて,わが国の裁判所において裁判を行うことが,当事者間の公平という理念に合致すると認めるべき事情が存在するということができる。 b 裁判の適正・迅速について本件においては,被告中華航空の責任の有無が重要な争点であるところ,本件訴え提起時におい 事者間の公平という理念に合致すると認めるべき事情が存在するということができる。 b 裁判の適正・迅速について本件においては,被告中華航空の責任の有無が重要な争点であるところ,本件訴え提起時においては,事故原因に関する重要な証拠ないし証拠方法はわが国内に集中していたというべきことは既に見たとおりである。 また,グループⅡの原告らの被告中華航空に対する訴えについては,わが国で審理できないとすると,台湾で審理するほかないと考えられるところ,台湾の裁判所での審理に当たって事故調査にかかわった者等を尋問しようとした場合,わが国と台湾との間には正常な国交がなく,証拠等を司法共助により利用することができないため,証拠に基づく適正な裁判を行うことができないおそれがある。 さらに,被告中華航空の責任の有無等の重要な争点が共通することからすれば,グループⅡの原告らについても,グループⅣの原告らの訴えと併合審理することによってこそ,審理の合理化,迅速化を図ることができるといえる。 なお,グループⅡの原告らの損害についての審理は,グループⅡの原告らが住所を有する台湾に証拠が存在していることなどから,台湾の裁判所において審理をした方がより迅速化を図ることができることは否定できないものの,他方,被告中華航空の責任の有無については,上記のとおり,わが国において,より審理の迅速化を図ることができるといえるのであって,被告中華航空の責任の有無が本件の最大,重要な争点であり,かつ,これが高度に専門的で複雑な問題であることに鑑みれば,わが国の裁判所で審理することこそ,裁判の適正・迅速という理念にかなうものであるといえる。 以上によれば,グループⅡの原告らの訴えについても,わが国の裁判所において裁判を行うことが,裁判の適正・迅速という理念に合致すると認めるべき事情もその存在を という理念にかなうものであるといえる。 以上によれば,グループⅡの原告らの訴えについても,わが国の裁判所において裁判を行うことが,裁判の適正・迅速という理念に合致すると認めるべき事情もその存在を認めることができる。 c なお,被告中華航空の主張するフォーラム・ノン・コンビニエンスの法理を参酌したとしても,わが国における審理が相当というべきであることは,前記イ(イ)cに説示したところと同様である。 (ウ) よって,グループⅡの原告らの訴えについても,わが国の裁判所に国際裁判管轄を認めるのが相当である。 (4) 以上のとおり,グループⅠないしⅢの原告らの訴えについて,わが国の裁判所は国際裁判管轄を有するということができるのであって,被告中華航空の本案前の主張は理由がない。 2 争点(2)(原告らの被告エアバスに対する訴えの国際裁判管轄の有無)について(1) 原告らの被告エアバスに対する訴えについて,被告とされている被告エアバスは,前記争いのない事実等(1)ウのとおり,フランス法人であるから,上記訴えについても,前記1(1)に説示した国際裁判管轄の法理に従って,わが国の裁判所の国際裁判管轄の有無を判断すべきこととなる。 (2) まず,原告らの被告エアバスに対する訴えは,被告エアバスが製造した本件事故機に欠陥があったとして製造物責任に基づく損害賠償を請求するものであり,旧民訴法15条1項(民訴法5条9号)にいう不法行為に関する訴えに該当するところ,同条項所定の不法行為地とは,実行行為のなされた土地と損害の発生した土地の双方を含むものというべきである。そして,前記争いのない事実等(3)アのとおり,名古屋において本件事故が発生し,損害が発生したもので,損害発生地は名古屋であるから,同条1項に規定する裁判籍がわが国内にあると認められる。 この点について て,前記争いのない事実等(3)アのとおり,名古屋において本件事故が発生し,損害が発生したもので,損害発生地は名古屋であるから,同条1項に規定する裁判籍がわが国内にあると認められる。 この点について,被告エアバスは,本件のような製造物責任訴訟においては,旧民訴法15条1項(民訴法5条9号)所定の不法行為地は加害行為地と解すべきであり,本件事故機が製造されたフランスにあると主張し,その理由として,上記不法行為地に結果発生地も含まれるとすると,製造者とは何ら接点のない場所で事故が発生した場合にも,製造者はその場所で応訴せざるを得ないことになり,特に航空機事故の場合には,管轄が当初の法律関係を離れて無制限に拡大し,航空機製造会社は世界中で応訴すべきこととなり,不当であるし,そもそも,原告らが設計上の欠陥を主張する本件においては,本件事故が日本で発生したという事実は請求原因と全く関係がない旨を主張する。 しかしながら,その事故に関する証拠の収集の便宜や被害者の保護,救済等を併せ考慮すれば,製造物責任訴訟についても,不法行為地に結果発生地も含まれると解すべきである。 もっとも,被告エアバスの主張するように,上記のように解すると,被告エアバスにとっての応訴の負担による不利益が著しく大きくなる場合があることは否定できないところ,この点は,個別事案において,国際裁判管轄を認めることによりかえって条理に反する結果を生ずることになるような特段の事情の存否として,検討すべきものである。 (3) 次に,被告エアバスは,本件については,民訴法の規定による裁判籍がわが国内に存する場合であっても,わが国の国際裁判管轄を肯定することによりかえって条理に反する結果を生ずることになるような特段の事情があると主張するので,以下,検討する。 ア当事者間の公平について被告エア 存する場合であっても,わが国の国際裁判管轄を肯定することによりかえって条理に反する結果を生ずることになるような特段の事情があると主張するので,以下,検討する。 ア当事者間の公平について被告エアバスは,製造物責任訴訟において結果発生地について国際裁判管轄を認めるとすると,製造者とは何ら接点のない場所で事故が発生した場合にも,製造者はその場所で応訴せざるを得ないこととなり,特に航空機事故の場合には,管轄が当初の法律関係を離れて無制限に拡大し,航空機製造会社は世界中で応訴すべきこととなり不当である上,被告エアバスは日本に営業所を有しておらず,本件事故機の設計・製造に関する被告エアバスの証拠も証人も日本には存在せず,被告エアバスが日本で本件の防御をすることは極めて困難であると主張する。 しかしながら,前記争いのない事実等(3)アによれば,本件事故機は,270名を超える乗員乗客を乗せることが可能な大型旅客機であり,世界各国を移動することは当然に予定されているものであるし,被告エアバスは,前記争いのない事実等(1)ウのとおり,航空機をアジア諸国を含め世界中に販売しており,わが国の航空会社も被告エアバス製造にかかる航空機を相当程度購入している上,本件事故機は台湾とわが国との間を運航していたのであるから,被告エアバスにおいて,結果発生地たるわが国が全く予測しえないような隔絶した土地であるとは到底いえないのであって,被告エアバスにわが国における応訴の負担を課したとしても,それは特段不当なものとはいえない。 また,前記争いのない事実等(1)ウのとおり,被告エアバスは,近年の世界の航空機のシェアで,ボーイング社に次いで約30パーセントを占める世界最大手の民間航空機メーカーの一つであり,その製造した航空機は世界中で運航に供されていること,被告エアバスは,ア スは,近年の世界の航空機のシェアで,ボーイング社に次いで約30パーセントを占める世界最大手の民間航空機メーカーの一つであり,その製造した航空機は世界中で運航に供されていること,被告エアバスは,アジア地域に積極的に営業活動を展開し,本件訴訟提起時には,東京にも事務所を有していたこと,被告エアバスが平成7年に引き渡した航空機に関する売上高は96億ドルにも及んだことなど,被告エアバスの企業としての規模や日本も含めたアジア諸国へ進出している実態からすれば,被告エアバスがわが国において訴訟を遂行することについて,著しい困難が生じるともいい難い。 他方で,仮にわが国の裁判管轄権を否定した場合,原告らはフランスにおいて訴えを提起せざるをえないことになるが,乗客乗員として本件事故機に乗っただけの一私人たる原告らにとって,訴訟遂行について著しい困難を生じるであろうことは容易に予想し得るところである。 以上からすれば,当事者間の公平の点からは,わが国の国際裁判管轄を認めることがかえって条理に反する結果を生ずることになるような特段の事情の存在を認めるに足りず,むしろ,わが国の裁判所に国際裁判管轄を認めることが当事者間の公平の理念に合致するというべきである。 イ裁判の適正について被告エアバスは,本件事故機の設計・製造に関するほとんどすべての証拠及び証人はフランスに存在し,本件がわが国で審理されるとすると,事案を解明することが著しく困難であると主張する。 しかしながら,製造物責任訴訟においては,当該事故の原因の解明が重要となるところ,通常,事故発生地に事故原因に関する証拠が集中しているものと考えられ,本件事故の原因に関する様々な証拠は事故発生地である名古屋に集中していると考えられる。また,本件事故の犠牲者のうち多くの者がわが国で生活していた者であって,その各 証拠が集中しているものと考えられ,本件事故の原因に関する様々な証拠は事故発生地である名古屋に集中していると考えられる。また,本件事故の犠牲者のうち多くの者がわが国で生活していた者であって,その各損害の立証のための証拠もわが国に集中しているといえる。 被告エアバスの指摘するように,事故調査報告書に対する被告エアバスの反証や,本件事故機の設計・製造に関する立証についての証拠は,多くはフランスに存在すると思われるが,前記の被告エアバスの企業としての規模,世界各国へ進出している実態などからすれば,被告エアバスにとって,フランスに存在する証拠等を収集して,わが国の裁判所に提出することも著しく困難とまではいえず,わが国の裁判所で十分な立証・反証活動を行うことも十分可能であるというべきである。 また,被告エアバスは,被告中華航空とその保険者が被告エアバスに対して,本件事故に関してフランスにおいて訴訟を提起しており,このフランスの裁判所の判決とわが国の裁判所の判決との間に矛盾が生ずる可能性があると主張するが,フランスにおける訴訟と本件訴訟とは当事者を異にする上,合一確定が要請されているものでもないのであるから,このような事情から,わが国の国際裁判管轄を否定することは相当とはいえない。 以上からすれば,裁判の適正の点からも,わが国に国際裁判管轄を認めることがかえって条理に反する結果を生じることになるような特段の事情の存在を認めるに足りず,かえって,わが国の裁判所における審理においてこそ,双方の主張立証が尽くされ,適正な裁判の実現が期待できるものというべきである。 ウ裁判の迅速被告エアバスは,反証のための証拠等がフランス等に存在するため,訴訟が遅延すると主張するが,前記イのとおり,事故原因に関する証拠及び損害についての証拠は,いずれも日本に集中しており, ウ裁判の迅速被告エアバスは,反証のための証拠等がフランス等に存在するため,訴訟が遅延すると主張するが,前記イのとおり,事故原因に関する証拠及び損害についての証拠は,いずれも日本に集中しており,日本においてこれらの証拠を利用して審理を進めることについては何ら支障はなく,むしろ,わが国の国際裁判管轄を否定し,フランスで審理せざるを得ないとすると,数十人にのぼる日本居住被害者の損害立証のための証拠をフランス語に翻訳するなどしなければならず,迅速な審理を期待することが難しいといわざるを得ない。 そうすると,わが国に国際裁判管轄を認めることがかえって裁判の迅速という理念に著しく反する結果となるような特段の事情の存在は,これを認めるに足りないというべきである。 エその他の事情について被告エアバスは,判決の実効性の観点から,日本における執行可能性を考慮すべきと主張するが,外国においても相互の保証がある場合にはそこでの執行は可能であり,判決の実効性は確保されるのであって,被告エアバスの上記主張は理由がない。 また,被告エアバスは,グループⅡの原告らについては,国籍及び居住の有無も考慮すべきと主張するが,日本の管轄を否定した場合には,これらの原告らはフランスにおいてのみ訴訟を提起できることになると思われるのであって,これらの事情も,わが国の国際裁判管轄を否定すべき事情とはいえない。 オ以上のとおり,わが国の国際裁判管轄を認めることによりかえって当事者間の公平,裁判の適正・迅速といった民事訴訟の理念に反する結果を生ずることになるような特段の事情については,これを認めるに足りない。 (4) したがって,わが国の裁判所は,原告らの被告エアバスに対する訴えについて,国際裁判管轄を有するということができるのであって,被告エアバスの本案前の主張は理由がない。 これを認めるに足りない。 (4) したがって,わが国の裁判所は,原告らの被告エアバスに対する訴えについて,国際裁判管轄を有するということができるのであって,被告エアバスの本案前の主張は理由がない。 3 争点(3)(被告中華航空のワルソー条約17条,18条に基づく責任)について(1) 前記争いのない事実等(2)によれば,グループⅣの被害者らと被告中華航空との間の運送契約は,出発地及び到達地がともにワルソー条約の締約国である日本であり,予定寄航地の台湾は日本国外であるので,ワルソー条約の適用がある。また,グループⅠの被害者ら,グループⅡの被害者らのうち被害者B45(原告番号157・158)及び同B46(同159・160)を除くその余の被害者ら並びにグループⅢの被害者らのうち被害者B64(原告番号236・237)及び同B65(同238・239)を除くその余の被害者らと被告中華航空との間の運送契約は,ワルソー条約の適用があることは,前記1に見たとおりである。 そして,前記争いのない事実等(3)のとおり,以上のワルソー条約の適用のある被害者ら(以下「ワルソー条約の適用のある被害者ら」といい,これに対応する原告らを「ワルソー条約の適用のある原告ら」といい,3項においては,単に「原告ら」ともいう。)は,本件事故機上において生じた本件事故により死亡し,手荷物等が滅失したものであるから,被告中華航空は,ワルソー条約17条,18条に基づき,ワルソー条約の適用のある原告らに対し,損害賠償責任を負うこととなる。 ところが,被告中華航空は,改正ワルソー条約22条の責任制限規定の適用を主張しており,これに対し,原告らは,責任制限規定は違憲であるから,その適用はないと,また,本件の損害の発生は本件乗員らの「無謀にかつ損害が生ずるおそれがあることを認識して行った行為」に 定の適用を主張しており,これに対し,原告らは,責任制限規定は違憲であるから,その適用はないと,また,本件の損害の発生は本件乗員らの「無謀にかつ損害が生ずるおそれがあることを認識して行った行為」によるものであるとして,責任制限規定の適用排除を定める改正ワルソー条約25条の適用があると主張するので,まず,後者の点について検討する。 (2) 改正ワルソー条約25条の意義についてア改正ワルソー条約25条は,同条約22条の責任制限規定の適用を排除することができる場合を定めているところ,25条所定の「損害が生ずるおそれがあることを認識して」という要件に関しては,「損害が生ずるおそれがあることを認識していなかったが,認識すべき場合」が含まれるか(客観説),否か(主観説)が問題となる。 イまず,改正ワルソー条約25条の文言は,日本語翻訳文では,「第22条に定める責任の限度は,損害が,損害を生じさせる意図をもって又は無謀にかつ損害の生ずるおそれがあることを認識して行った運送人又はその使用人若しくは代理人の作為又は不作為から生じたことが証明されたときは,適用されない。もっとも,使用人の作為又は不作為の場合には,さらに,その者が自己の職務を遂行中であったことが証明されなければならない。」とされている(なお,上記の「認識」という語句については,ワルソー条約の正文であるフランス語では「conscience」という語句が,また,英語翻訳文では「knowledge」という語句が用いられている。)のであって,その文言上からは,運送人又はその使用人若しくは代理人(以下「運送人等」という。)の損害発生のおそれの認識という主観的事情を要件としているといわざるを得ない。 ウ次に,ワルソー条約25条の改正の経緯について,検討する。 (ア) 証拠(甲88,89,91,乙2 送人等」という。)の損害発生のおそれの認識という主観的事情を要件としているといわざるを得ない。 ウ次に,ワルソー条約25条の改正の経緯について,検討する。 (ア) 証拠(甲88,89,91,乙2)及び弁論の全趣旨を総合すると, 以下の事実が認められる。 a 改正前ワルソー条約では,国際航空運送人の責任は原則として有限であり,旅客についての責任は12万5000フランを限度とするが,損害が運送人又はその使用人の故意により生じたとき,又は訴えが係属する裁判所の属する国の法律によれば故意に相当する過失により生じたときは,運送人の責任制限は適用されないとされていた。 b ところが,国際航空運送を取り巻く状況が変化し,ワルソー条約についても,責任限度額が低すぎるとの声や,責任制限排除規定の適用についての解釈が国際的統一を欠くものであるとの批判がされたため,これに対応してワルソー条約を改正しようとする声が高まり,1953年(昭和28年)にリオ会議が開かれ,リオ案が採択された。これは,責任限度額を20万フランに引き上げるとともに,改正前ワルソー条約25条の「訴えが係属する裁判所の属する国の法律によれば故意に相当する過失」という規定を,「損害の発生が損害を生ずべき意図をもって行われた作為又は不作為によるものである場合」に改正し,限定しようとするものであった。 c 1955年(昭和30年)9月,オランダのヘーグにおいて,航空私法に関する国際会議(ヘーグ会議)が開催され,リオ案を踏まえてワルソー条約の改正についての討議が行われ,以下のとおりの経過で,改正ワルソー条約25条が採択された。 (a) 第16回会議(同月16日開催)において,作業部会は,「無謀にかつ損害が恐らく生ずるであろうことに注意することなく」という案を提案した。 (b) 第17回会議(同日開 約25条が採択された。 (a) 第16回会議(同月16日開催)において,作業部会は,「無謀にかつ損害が恐らく生ずるであろうことに注意することなく」という案を提案した。 (b) 第17回会議(同日開催)において,上記作業部会案につき,「注意することなく」との表現では,必ずしも当事者の認識が必要であるか否かが明確ではなかったところ,フランス代表は,「注意することなく」という語句を「認識して」という語句に置き換えるべきであると提案し,アメリカ代表は,損害が恐らく生ずることを認識していた場合,若しくは認識すべきであった場合には,責任は無制限となるべきことを提案した。 そこで,責任を無制限とする場合についての原則について投票することとなり,故意に基づく場合に加え,①無謀に行為した場合とする案,②無謀に行為し,かつ,おそらく損害が発生するであろうことを認識していたか又は認識するべきであった場合とする案,③無謀に行為し,かつ,おそらく損害が発生するであろうことを認識していた場合とする案の3案が投票にかけられ,①が3票,②が11票,③が13票となり,作業部会案としては,③の案が選択され,アメリカ代表の提案である②の案は採用されなかった。 引き続いて,この作業部会案がリオ案と改正前ワルソー条約25条を維持する案とともに,いくつかの責任限度額と組み合わせて,第2回目の投票にかけられ,その結果は,作業部会案が合計37票(責任限度額を37万5000フランとする案が4票,30万フランとする案が5票,25万フランとする案が8票,20万フランとする案が20票),改正前ワルソー条約25条を維持する案が合計29票(責任限度額を37万5000フランとする案が2票,30万フランとする案が2票,25万フランとする案が2票,20万フランとする案が23票),リオ案が合計27票( ー条約25条を維持する案が合計29票(責任限度額を37万5000フランとする案が2票,30万フランとする案が2票,25万フランとする案が2票,20万フランとする案が23票),リオ案が合計27票(責任限度額を37万8000フランとする案が3票,25万フランとする案が7票,20万フランとする案が17票)であった。 (c) 第22回会議(同月20日開催)においては,責任限度額について,アメリカ代表から,費用について別途定めるとの修正案が出され,責任限度額をいくらに設定すべきかについて議論がなされた後,①作業部会案,②リオ案及び③改正前ワルソー条約25条を維持する案と,5通りの責任限度額案(37万5000フラン(A案),30万フラン(B案),25万フランとするが費用は別の規定を設ける(C案),25万フラン(D案),20万フラン(E案))とが組み合わされて投票にかけられ,その結果は,①作業部会案が合計32票(A案1票,B案4票,C案10票,D案10票,E案7票),②リオ案が合計34票(A案2票,B案1票,C案7票,D案7票,E案17票),③改正前ワルソー条約25条を維持する案が合計24票(A案1票,B案1票,C案3票,D案4票,E案15票)となった。 そして,作業部会案について複数の言語で意味が一致するよう修正した上,最終的な投票を行うこととされた。 (d) 第23回会議(同月21日開催)において,作業部会は,複数の言語で意味が一致するよう作業部会案を修正した案として,改正ワルソー条約25条と同じ案文を提案した。 オーストラリア代表は,「知りながら」の前に「現実に」という文言を入れるよう提案し,その目的は,証拠法則の問題として,「認識」の要件を単なる推測によって認定することを排斥するためであると述べたが,討論の後,リオ案を支持する立場に立ち返ら に「現実に」という文言を入れるよう提案し,その目的は,証拠法則の問題として,「認識」の要件を単なる推測によって認定することを排斥するためであると述べたが,討論の後,リオ案を支持する立場に立ち返らなければならないとして,上記提案を撤回した。 また,上記討論の際,ベルギー代表は,リオ案を採用したいが,作業部会案も受け入れることができる,なぜなら,特に著しい過失があった場合にのみ責任無制限の請求を行うことができると誰もが考えると理解しているからである,と述べた。 そして,討論の後,まず,この作業部会案についての投票を行うことが決定され,持ち回りの投票により,賛成23票,反対16票,棄権1票で,作業部会案が採択され,これがヘーグ議定書に取り入れられた。 (イ) 以上のとおり,ワルソー条約25条の改正の経緯からすると,改正ワルソー条約25条所定の「損害が生ずるおそれがあることを認識して」という要件は,損害が生ずるおそれがあることを認識していたか又は認識するべきであった場合とは明確に区別された上で,討議・投票がなされ,採択されたもので,この結果,損害が生ずるおそれがあることを認識していなかったが認識するべきであった場合は排除され,主観説の立場が採用されたものと解するのが相当である。 これに対し,原告らは,①第17回会議における第1回目の投票において,客観説を支持する立場が多かった,②第17回会議における第2回目の投票では,改正前ワルソー条約25条の文言をそのまま維持し限度額を20万フランとするという案が最多数を占めたのであり,第1回目に行われた投票の意味は極めて薄弱になった,③第23回会議において,オーストラリア代表が作業部会案文中の「knowledge」という語句の前に「actual」という語句を挿入することを提案したが,撤回を余儀なくされた,④同 て薄弱になった,③第23回会議において,オーストラリア代表が作業部会案文中の「knowledge」という語句の前に「actual」という語句を挿入することを提案したが,撤回を余儀なくされた,④同会議において,ベルギー代表が,「特に重大な過失があった場合にのみ無制限の責任追求ができるようにすべきだと誰もが感じていると理解される。」と発言し,これに対して誰も異論を述べなかったなどとして,改正ワルソー条約25条の解釈につき結局は統一はなされず,客観説は排除されていないと主張する。 しかしながら,上記①の点について,原告らの主張は,無謀に行為した場合に責任無制限とする案を客観説と評価して,客観説が最多数を占めたと主張するものであるが,その主張の当否はともかくとして,前記(ア)c(b)のとおり,この第1回目の投票により,作業部会案における原則として,主観説である「無謀に行為し,かつ,おそらく損害が発生するであろうことを認識していた場合」に責任無制限とする案が採択されたことは明らかであるし,上記②の点については,前記(ア)c(b)のとおり,第17回会議における第2回目の投票は,第1回目の投票により主観説を採択した作業部会案,リオ案及び改正前ワルソー条約25条を維持する案のいずれとすべきかについて選択するための投票を行ったものであって,第1回目の投票の結果を前提とするものであり,第1回目の投票の意義を失わせるようなものではないというべきである。 また,上記③の点について,原告ら主張のオーストラリア代表の提案は,証拠法則に関するものであって,主観説であるか客観説であるかとの問題とは関係がないことは,前記(ア)c(d)に認定したところから明らかであるし,上記④について,前記(ア)c(d)のベルギー代表の発言からは,これが客観説を意味するものと断ずる 客観説であるかとの問題とは関係がないことは,前記(ア)c(d)に認定したところから明らかであるし,上記④について,前記(ア)c(d)のベルギー代表の発言からは,これが客観説を意味するものと断ずるのは困難である。 したがって,改正ワルソー条約25条の解釈につき結局は統一はなされず,客観説は排除されていない旨の原告らの主張は採用できない。 エ以上を併せ考慮すると,改正ワルソー条約25条の「損害が生ずるおそれがあることを認識して」という要件に,「損害が生ずるおそれがあることを認識していなかったが,認識すべきであった場合」を含めることは,その改正の経緯とも全く矛盾するものといわざるを得ないのであって,改正ワルソー条約25条は,その文言どおり,運送人等が損害が生ずるおそれがあることを認識していたことを要求しているもの(主観説)と解するのが相当である。 これに対し,原告らは,改正ワルソー条約22条の責任制限規定が今日では全く時代錯誤的でありかつ著しく正義に反するものである以上,改正ワルソー条約25条は,その成立した背景や各国裁判所の態度,大多数の航空会社が改正ワルソー条約22条の責任制限を放棄していること,ワルソー条約の責任制限を廃止したモントリオール条約が発効間近であることなどを理由に,弾力的かつ合目的的に解すべきであり,客観説に立つことが相当であると主張するが,改正ワルソー条約25条の文言は,運送人等の損害発生のおそれがあることについての認識があったことを要件としていることは明らかであるから,原告らの主張する客観説は,その文言に明らかに反し,採用できない。 (3) 改正ワルソー条約25条が適用されるか否かについてア本件事故の経緯について(ア) 前記争いのない事実等(3)に,証拠(甲1)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 ない。 (3) 改正ワルソー条約25条が適用されるか否かについてア本件事故の経緯について(ア) 前記争いのない事実等(3)に,証拠(甲1)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 a 本件事故機は,平成6年4月26日午後5時53分(以下,(3)項においては,同日中の出来事については時刻のみを表示する。)に台北国際空港を離陸し,午後6時14分ころ巡航高度(FL)330に達し,飛行計画に従い,名古屋空港へ向けて飛行した。なお,午後5時54分ころから,オートパイロットの№2が接続されていた。 午後7時47分35秒,副操縦士により操縦されていた本件事故機は,東京コントロールからFL210への降下を指示され,降下を開始したが,午後7時49分ころから56分ころまで,機長から副操縦士に対し,進入・着陸時の操縦・操作方法について一般的な指導が行われた。 午後7時58分18秒,本件事故機は,名古屋アプローチとの交信を始め,同アプローチの指示に従い,順次高度を下げ,速度を減じて行った。午後7時59分4秒に,副操縦士が「チェックリスト」と言い,機長にアプローチ・チェックリストの実施を要求し,午後8時0分5秒(以下,ア項においては,午後8時台の出来事については,分秒のみをもって表示する。),機長はチェックリストの完了を告げた。 b 0分11秒,機長は,副操縦士に対し,「君は,自分でやりなさい。」,「私は,君にうるさく言わないからね。私に聞かないで自分でやって,決定してごらん。私がカバーできないような状態になる前に,初めて注意するからね。」などと言って,自分で判断して操縦するように指示し,これに対して,副操縦士は,「はい。」と返事をした。 0分12秒,本件事故機のスラット/フラップレバーは,0/0から15/0へ操作され,2分35秒に,15/0か ,自分で判断して操縦するように指示し,これに対して,副操縦士は,「はい。」と返事をした。 0分12秒,本件事故機のスラット/フラップレバーは,0/0から15/0へ操作され,2分35秒に,15/0から15/15へ操作された。 7分22秒,これまで,オートパイロットの№2が接続されていたが,オートパイロットの№1も接続された。 c 8分ころから,副操縦士は,前方の航空機による後方乱気流のことを気にしていたので,機長は,後方乱気流に対する対処の方法を教示するとともに,先行機との間隔を広げるために,速度を180ノットから170ノットに減ずるよう指示した。そのやりとりは,以下のとおりである。 8分26秒副操縦士「いつもこの辺りで入るようですね。まともに他機の後流に入りますね。」8分29秒機長「そうだね。」8分30秒副操縦士「おかしいな,地形の関係かな。今日は,最初から最後まで後流に入っているようですね。」8分35秒機長「ラダーをしっかり踏んで。ラダーをしっかり踏むといいよ。揺れがそんなにひどくならないから。」8分55秒機長「・・・前方のあの機は,わー,君は,それを, そのスピードをもう少し殺した方がいいよ。」9分01秒機長「君,もう少しスピードを殺した方がいいよ。170まで減速した方がいいよ。」,「そうしないと,あれにくっついていったんじゃ,ひっくり返っちゃうよ。」9分50秒副操縦士「ウインドシア」10分01秒機長「気にするな。それは・・・」11分20秒副操縦士「入った,入った。グライドスロープからずっと入っていますね。」11分24秒機長「飛行機が多すぎるから,仕方がない。」11分28秒機長「気にするな。」d 11分34秒,副操縦士は,後方乱気流が気になったため,オートパイロットを解除して,手動操縦で飛行しようと 分24秒機長「飛行機が多すぎるから,仕方がない。」11分28秒機長「気にするな。」d 11分34秒,副操縦士は,後方乱気流が気になったため,オートパイロットを解除して,手動操縦で飛行しようと考え,機長に対して,「教官,じゃあ,私は,これを切りますよ。」と,オートパイロットを解除する旨を伝えたところ,機長も,「いいよ。マニュアルで飛べば。」と答えたため,11分35秒,副操縦士は,接続されていたオートパイロットの№1及び№2をいずれも解除した。 e 12分19秒,本件事故機は,アウターマーカーを通過し,副操縦士の手動操縦によりILS進入を継続した。 12分41秒,副操縦士は,機長に対し,「フラップ20」と要求し,機長は,スラット/フラップレバーを15/15から15/20へ操作した。 12分56秒,副操縦士は,機長に対し,「ギアダウン」と要求し,機長は,脚下げ操作を行った。 13分14秒,機長は,副操縦士の要求で,スラット/フラップレバーを15/20から30/40へ操作し,13分27秒,着陸のためのチェックリストを完了した。 この間,副操縦士は,本件事故機のトリムスイッチを,12分1秒に3回,同23秒に1回,同30秒に2回,同44秒に1回,13分10秒に5回,同21秒に5回操作した。 f 14分5秒,本件事故機が気圧高度約1070フィートを通過中,副操縦士は,誤って,ゴーレバーを作動させ,フライトモード表示器には「GOAROUND」と表示された。そのため,本件事故機は,エンジン推力が増加し始め,やや機首上げ傾向となり,ILS降下経路から上方に外れ,速度も少し増加した。機長は,本件事故機の上記変化を感じ,14分6秒に「えっ,えっ,あれ。」と声を上げた。 14分8秒ころ,副操縦士は,増加し始めた推力をエンジン圧力比1.21に抑え,その後,エン ,速度も少し増加した。機長は,本件事故機の上記変化を感じ,14分6秒に「えっ,えっ,あれ。」と声を上げた。 14分8秒ころ,副操縦士は,増加し始めた推力をエンジン圧力比1.21に抑え,その後,エンジン圧力比1.17あたりまで戻した。また,副操縦士は,正規の降下経路を回復すべく,操縦輪を押して機首下げ操作を行ったが,水平安定板は-5.3度の位置で変化はなく,本件事故機は,降下することなく,気圧高度約1040フィートで水平飛行状態となり,この状態が14分10秒ころから25秒ころまで続いた。 この間,14分9秒,ランドモードからゴーアラウンドモードに変わったことに対して警告音がなり,14分10秒,機長は,副操縦士に対し,「君,君はそのゴーレバーを引っかけたぞ。」と注意し,副操縦士は,「はい,はい,はい。少し触りました。」と,ゴーレバーを作動させてしまったことを認める返事をした。 14分12秒,機長は,副操縦士に対し,「それを解除して。」と言い,ゴーアラウンドモードの解除をするように指示し,副操縦士は,「ええ。」と返事をし,14分16秒,さらに,機長は,「それ。」と言い,副操縦士は,「ええ。」と返事をした。 g 副操縦士は,予測していなかった状況となったためオートパイロットの補助を得ようとして,ランドモードのスイッチを操作するとともに,これに前後して,14分18秒,オートパイロットの№1及び№2をほぼ同時に接続したが,これを機長に知らせなかった。本件事故機は,ゴーアラウンドモードの状態でランドモードのスイッチを操作しても,ランドモードにはならず,ゴーアラウンドモードの解除もできない仕組みになっていたため,オートパイロットも,ゴーアラウンドモードに接続された。 このときの昇降舵は,副操縦士により押し下げられた状態で機首下げ3.5度であり,14分1 ウンドモードの解除もできない仕組みになっていたため,オートパイロットも,ゴーアラウンドモードに接続された。 このときの昇降舵は,副操縦士により押し下げられた状態で機首下げ3.5度であり,14分19秒ころ,一時的に2.8度から2.4度に減少した後,次第に昇降舵の機首下げ角は増加していった。 h 14分20秒ころ,オートパイロットがゴーアラウンドモードに接続されたことにより,水平安定板が-5.3度の位置から機首上げ方向へ動き始めた。これとほぼ同時に,副操縦士は,操縦輪に重さを感じたため,操舵力を軽減しようとして,トリムスイッチを1回操作したが,オートパイロット接続中は,トリムスイッチを操作しても水平安定板は動かないため,これによる効果はなかった。 14分23秒,機長は,高くなった降下経路を修正するため,副操縦士に対し,「押して,それを押して,ええ。」と,操縦輪の押し下げを指示した。副操縦士は,オートパイロットが接続中であることを認識し,かつ,操縦輪が重いことを感じながらも,機長の指示に従って,操縦輪を押し続け,昇降舵の機首下げ方向への操作を継続した。 14分26秒,機長は,高くなった降下経路を修正するため,副操縦士に対し,「君,それを・・・スロットルを切って。」と,エンジン推力を手動で微速側へ調整するよう指示した。副操縦士は,その指示に従い,スラストレバーを引き,エンジン圧力比を1.0あたりまで減少させた。このため,本件事故機は,推力が減少して,機首上げ傾向は減少し,副操縦士による操縦輪を押し下げる操作も相まって,降下を始めた。 しかし,本件事故機は,依然,正規の降下経路に対して位置が高く,14分29秒,副操縦士は,「ええ,高すぎる。」と声を上げた。 i 14分30秒,機長は,フライトモード表示器の表示がゴーアラウンドのまま変わっていないの は,依然,正規の降下経路に対して位置が高く,14分29秒,副操縦士は,「ええ,高すぎる。」と声を上げた。 i 14分30秒,機長は,フライトモード表示器の表示がゴーアラウンドのまま変わっていないのを見て,副操縦士に対し,「君は,君はゴーアラウンドモードを使っているぞ。」と指摘し,さらに,14分34秒,「いいから,ゆっくり,また解除して,手を添えて。」と,ゴーアラウンドモードの解除を指示した。副操縦士は,再びランドモードのスイッチを操作して,ゴーアラウンドモードを解除しようとしたが,本件事故機は,このような操作では,ゴーアラウンドモードを解除することはできない仕組みであり,ゴーアラウンドモードの解除はできなかった。 14分39秒,機長は,副操縦士に対し,「エンジン推力は解除したんだな。」と尋ね,14分40秒,副操縦士は,「はい教官,解除しました。」と答えた。 副操縦士は,操縦輪の異常な重さを感じていたことから,トリムスイッチを,14分34秒に3回,同39秒に2回,続けて操作したが,これらも,オートパイロットが接続中であったため効果はなかった。 副操縦士による操縦輪の操作によって,昇降舵は,機首下げ方向に8.5度まで動かされていたが,これとは逆に,14分20秒から変位し始めた水平安定板は,14分37秒ころには,機首上げ一杯の-12.3度まで達していた。 j 機長は,依然として着陸を意図し,副操縦士に対し,14分41秒には,「もっと押して,もっと押して,もっと押して。」と,14分43秒には,「もっと押し下げて。」と言って,操縦輪を押して機体を降下させるよう指示した。 副操縦士は,オートパイロットが接続中であることを認識しながら,かつ,操縦輪が極めて重いことを感じながらも,それを機長に伝えることなく,機長の指示に従い,更に力をかけて操縦輪を押し続けた 指示した。 副操縦士は,オートパイロットが接続中であることを認識しながら,かつ,操縦輪が極めて重いことを感じながらも,それを機長に伝えることなく,機長の指示に従い,更に力をかけて操縦輪を押し続けた。 14分45秒,機長は,副操縦士に対し,「今,ゴーアラウンドモードになっているぞ。」と三度目の指摘をし,副操縦士は,「はい,教官・・・」と返事をした。 14分49秒,副操縦士は,オートパイロットの№1及び№2をいずれも解除し,機長に「教官,オートパイロット解除しました。」と告げたが,水平安定板は-12.3度のままであり,アウトオブトリムの状態が残った。 副操縦士は,操縦輪を一杯に押しても,機首が下がらないことから,14分51秒,機長に対し,「教官,やっぱり押し下げられません。ええ。」と伝えた。 k 本件事故機は,ピッチ角及び迎え角が増加し,速度が減少し続けながら名古屋空港への進入を続け,14分57秒,気圧高度約570フィートを通過中,迎え角が,スラット/フラップが30/40の形態に対する検知角である11.5度を超えたため,アルファフロア機能が作動し,出力が急激に増加した。 機長は,14分58秒,「私の,あのランドモードは。」と言い,15分1秒,副操縦士に,「いいから,あわてずに。」と言った。 15分2秒,副操縦士は,機長に対し,「教官,スロットルがまたラッチされました。」と告げた。このとき,本件事故機は,アルファフロア機能の作動で増加した出力により,速度及びピッチ角が増加し,降下から上昇に移った。 l 15分3秒,機長は,副操縦士に,「オーケー,私がやる。私がやる。私がやる。」と言って,操縦を交替した。このとき,本件事故機の出力は,アルファフロア機能により最大出力に達し,水平安定板は-12.3度,昇降舵は9.9度で,アウトオブトリムの状態であった。 やる。私がやる。」と言って,操縦を交替した。このとき,本件事故機の出力は,アルファフロア機能により最大出力に達し,水平安定板は-12.3度,昇降舵は9.9度で,アウトオブトリムの状態であった。 15分4秒,副操縦士は,機長に対し,「解除して,解除して。」と言い,オートスロットルの解除を要請した。 機長は,操縦を交替してから,なおも着陸を継続しようと操縦輪を機首下げの限界まで一杯に押し続け,また,一時的にスラストレバーを引いた。 このような操作にもかかわらず,本件事故機の機首上げの傾向が止まらないことから,機長は,「一体どうなってるんだ,これは。」と疑問の言葉を口にし,副操縦士は,「解除して,解・・・」と,再度オートスロットルの解除を口にした。 m 機長は,機首上げの傾向が止まらないことから,着陸を継続することをあきらめ,ゴーアラウンドすることを決定し,15分11秒,「ゴーレバー」と言って,ゴーレバーを作動させた。そのため,本件事故機のエンジン出力は,ほぼ最大出力となった。これとほぼ同時に,機長は,「ちくしょう,どうしてこうなるんだ。」と叫びながら,トリムスイッチを2回操作し,それまで-12.3度の限界位置にあった水平安定板は,15分19秒までに-10.9度に緩やかに戻ったが,依然,アウトオブトリムの状態は続いており,最大となった出力による推力のために,本件事故機は,急上昇するとともに,迎え角が急激に増加し,対気速度も減少した。 この間,副操縦士は,15分14秒,名古屋タワーに,ゴーアラウンドすることを伝えた。 スラット/フラップレバーは,30/40の状態であったのが,15分18秒には,15/0又は0/0へ操作され,15分28秒には,15/15に操作された。 機長は,15分21秒,「えっ,これじゃ失速するぞ。」と叫び,15分25秒,「終わ 0の状態であったのが,15分18秒には,15/0又は0/0へ操作され,15分28秒には,15/15に操作された。 機長は,15分21秒,「えっ,これじゃ失速するぞ。」と叫び,15分25秒,「終わりだ。」と叫んだ。 15分23秒の時点で,迎え角がアルファトリムの検知角を超えたため,アルファトリム機能が作動し,15分27秒に,水平安定板が-10.9度から-7.4度に変位した。しかし,15分25秒前後の時点で,迎え角の異常な増加により,本件事故機は,失速状態に陥り,その状態は墜落まで続いた。 15分26秒,本件事故機のピッチ角は,最大の52.6度となった。 15分31秒,本件事故機は,ピッチ角が43.8度で,気圧高度約1730フィートで最高点に達した後,急降下し始め,15分45秒,本件事故機は,墜落した。 (イ) オートパイロットを接続した者の特定について被告中華航空は,14分18秒にオートパイロットを接続した者は,機長か副操縦士かは特定できないと主張するところ,事故調査報告書(甲1)においても,①14分16秒の機長の「それ。」という言葉は,機長が副操縦士にオートパイロットの接続を指示したもので,それに従って,副操縦士が接続した可能性,②機長が自ら接続した可能性,③副操縦士が独断で接続した可能性が考えられ,いずれが最も可能性が高いかの特定はできないとされている。 しかしながら,①の可能性については,機長は,14分12秒に「それを解除して。」と副操縦士にゴーアラウンドモードを解除するよう指示している(前記(ア)f)のであるから,その直後の14分16秒の「それ。」という機長の発言は,上記指示にもかかわらずゴーアラウンドモードが解除されないため,もう一度,同様の指示を出したものと推認するのが自然である。また,機長と副操縦士は,11分35秒に,手動で それ。」という機長の発言は,上記指示にもかかわらずゴーアラウンドモードが解除されないため,もう一度,同様の指示を出したものと推認するのが自然である。また,機長と副操縦士は,11分35秒に,手動で操縦することを決定していた(前記(ア)d)のであり,かつ,ゴーレバーが作動しても手動で着陸することは可能であったのであるから,機長が「それ。」という言葉だけで,前に行った手動操縦により着陸するとの決定を変更する旨の指示をしたとは考え難い。したがって,機長の指示で副操縦士がオートパイロットを接続したとの可能性は低いというべきである。 次に,②の可能性について検討しても,本件事故機は,15分3秒に機長が操縦を交替するまでは,副操縦士により操縦が行われており,機長は,0分11秒に,「君は,自分でやりなさい。」,「私は,君にうるさく言わないからね。私に聞かないで自分でやって,決定してごらん。私がカバーできないような状態になる前に,初めて注意するからね。」などと言って,副操縦士に自分で判断して操縦するように指示していた(前記(ア)aないしl)のであって,それにもかかわらず,機長が,副操縦士に告げることもなく自らオートパイロットを接続したとは考え難い。また,仮に機長がオートパイロットを接続したとすると,機長は,ゴーアラウンドモードでオートパイロットを接続しながら,副操縦士に対し,操縦輪を押すことを繰り返し指示するという矛盾した行動をとったことになり,極めて不自然であって,この点からも,機長が自らオートパイロットを接続した可能性は低いというべきである。 これに対し,③の可能性については,副操縦士は,その意図に反してゴーレバーを作動させてしまった上,機長からゴーアラウンドモードの解除を指示されたにもかかわらず,指示どおり解除できなかった(前記(ア)f及びg) ,③の可能性については,副操縦士は,その意図に反してゴーレバーを作動させてしまった上,機長からゴーアラウンドモードの解除を指示されたにもかかわらず,指示どおり解除できなかった(前記(ア)f及びg)のであり,そのため,独断で,ランドモードに変更した上で,オートパイロットの補助を得ようとして,オートパイロットの接続をしたものと推測できる。 確かに,被告中華航空の指摘するように,オートパイロットの接続中はトリムスイッチによる操作は無効となるにもかかわらず,副操縦士がトリムスイッチを操作していることは,前記(ア)h及びiのとおりである。しかし,副操縦士は,上記のとおり,その意図に反してゴーレバーを作動させてしまったことや,機長からゴーアラウンドモードの解除を指示されるもその指示どおり解除できなかったことにより,相当程度動揺していたであろうことが窺われるのであり,必ずしも冷静な判断ができたとは思われない。また,前記(ア)のとおり,本件事故機の操縦において,副操縦士のトリムスイッチの使用は比較的頻回で,操縦輪の操舵の重さを感じると反射的にトリムスイッチを使用していることが窺われることから,副操縦士は,操縦輪の操舵の重さに直面したため,オートパイロットが接続中にもかかわらず反射的にトリムスイッチを使用したものとも推認できるのであって,副操縦士がトリムスイッチを操作していることをもって,直ちに副操縦士がオートパイロットを接続していないということはできない。 むしろ,上記のとおり,副操縦士は,その意図に反してゴーレバーを作動させてしまったことによる動揺などから,オートパイロットの補助を得て着陸しようと思い,とっさにオートパイロット接続レバーをオンにしたと考えるのが最も自然である。 以上から,前記(ア)gに認定したとおり,14分18秒にオートパイロットを ,オートパイロットの補助を得て着陸しようと思い,とっさにオートパイロット接続レバーをオンにしたと考えるのが最も自然である。 以上から,前記(ア)gに認定したとおり,14分18秒にオートパイロットを接続した者は,副操縦士であると認めるのが相当である。 (ウ) 副操縦士が操縦輪の重さを認識していたことについてa 被告中華航空は,乱気流,騒音,会話があった本件状況下では,操縦輪にかかる力を理解することは困難なことであり,本件乗員らがほとんどトリム操作を行っていないことから,本件乗員らは,操縦輪が重い状態を検知していなかった旨主張し,証人J及び証人Kは,同趣旨の証言をしている。 b しかしながら,証拠(甲1,26,証人L,証人C,証人M)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故機において,ゴーアラウンドモードでオートパイロット接続中に機首下げ方向にオーバーライドするためには,最低限20kgの力が必要であること,通常の状況においては,手動で降下したり上昇したりするための操縦輪への力は4から5kgの力を超えることがないことが認められるところ,副操縦士は,ゴーアラウンドモードでオートパイロット接続中の14分18秒から49秒までの約30秒の間,継続的に操縦輪を押すことによりオートパイロットをオーバーライドしていたことは,前記(ア)gないしjのとおりである。 これらの事実からすれば,副操縦士は,約30秒間継続して通常の4倍から5倍もの力を操縦輪にかけ続けたことになるのであって,このような状況からすれば,副操縦士は,操縦輪が極めて重いことを認識していたと推測できる。 また,副操縦士は,14分51秒に「教官,やっぱり押し下げられません。ええ。」と発言している(前記(ア)j)が,これは,副操縦士がその発言をする前に,同様に大きな力を操縦輪に加えても操縦輪を押すことがで ,副操縦士は,14分51秒に「教官,やっぱり押し下げられません。ええ。」と発言している(前記(ア)j)が,これは,副操縦士がその発言をする前に,同様に大きな力を操縦輪に加えても操縦輪を押すことができなかった事実があったことを示すものといえる。 以上から,前記(ア)hないしjに認定したとおり,副操縦士は,操縦輪が極めて重いことを明確に認識していたということができる。 c これに対し,被告中華航空は後方乱気流の影響について指摘する。 しかしながら,前記争いのない事実等(3)オのとおり,本件事故当時,名古屋周辺部は晴天で,風速は8ノットから7ノットであり,天候は本件事故機の運航に支障を来すものではなかった。 また,上記(ア)cの事実に証拠(甲1,証人C)を総合すると,8分ころから11分ころまでの間,副操縦士は,先行機の作る乱気流をしきりに気にしており,実際に,8分から10分ころまでの間は,本件事故機の垂直加速度や横揺れ角は,比較的変動があり,この間は,先行機の後方乱気流が存在していたと認められるものの,9分1秒に,先行機との距離をとるため,減速した後の,11分以降の垂直加速度や横揺れ角の変化は,ごく小さいものであったのであり,14分過ぎに,垂直加速度が約0.2G増加したのも,ゴーレバー作動による推力の上昇に伴う揚力の増加によるものであったことが認められる。 したがって,ゴーアラウンドモードでオートパイロット接続中に副操縦士が操縦輪を押していた14分18秒から49秒までの約30秒の間において,先行機による後方乱気流の影響が存在したとは認められない。 d さらに,被告中華航空は騒音及び会話の影響について指摘する。 しかしながら,騒音については,事故調査報告書(甲1)によれば,オートパイロット接続中に副操縦士が操縦輪を押している時間帯における他機の管制交 らに,被告中華航空は騒音及び会話の影響について指摘する。 しかしながら,騒音については,事故調査報告書(甲1)によれば,オートパイロット接続中に副操縦士が操縦輪を押している時間帯における他機の管制交信は,14分45秒に1回,数秒間あっただけであることが認められるし,前記cのとおり,11分以降の垂直加速度や横揺れ角の変化はごく小さいものであったことから,機体の振動による騒音も大きくはなかったと推測できる。 また,この間の副操縦士と機長との会話の内容は,操縦輪を押すようにとの指示が多くを占めており(前記(ア)gないしj),副操縦士は操縦輪を押すことに意識を向けていたと考えられるから,機長との会話のために操縦輪の重さを意識できなかったということは考え難い。 そもそも,前記bのとおり,副操縦士は,通常の4倍から5倍の力である20kgもの力を,約30秒間継続して操縦輪にかけ続けたのであって,このような状況からすれば,騒音や会話によってこの力を感じていなかったとは到底考えられず,現に,副操縦士は,14分51秒に,「教官,やっぱり押し下げられません。ええ。」と発言しているのである。 e さらに,被告中華航空は,本件乗員らが理論的には操縦輪が重いはずの状況で,手動によるトリム操作をほとんど行っていないことからすれば,本件乗員らは,操縦輪が重い状態を検知していなかった旨を主張する。 しかしながら,前記(イ)に認定したとおり,副操縦士は自らオートパイロットを接続したと認めるべきであって,オートパイロットが接続中であることを知っており,かつ,その際にはトリムスイッチの操作が無効であることを知っていた副操縦士が,それにもかかわらずトリムスイッチを6回も操作していることは前記(ア)のとおりであって,この事実からすれば,むしろ,副操縦士は,操縦輪の操舵の異常な重さに 作が無効であることを知っていた副操縦士が,それにもかかわらずトリムスイッチを6回も操作していることは前記(ア)のとおりであって,この事実からすれば,むしろ,副操縦士は,操縦輪の操舵の異常な重さに直面したからこそ,反射的にトリムスイッチを操作したものと推認するのが相当である。 したがって,副操縦士のトリムスイッチの操作が少ないことをもって,副操縦士が操縦輪の重さを検知していなかったことの根拠とすることはできない。 f なお,証人J及び証人Kは,被告中華航空の上記主張に沿う旨の供述をしているが,そもそも,副操縦士が,自分自身で,通常の4倍から5倍の力である20kgもの力を,約30秒間にわたり操縦輪にかけ続けていたのであるから,この重さを認識していなかったというのは,極めて例外的な事態であるところ,以上に説示したとおり,このような例外的な事態であったとは認められないことに照らすと,上記各供述を採用することはできない。 g 以上のとおり,副操縦士は操縦輪の重さに気付くことができなかったとの被告中華航空の主張は採用できない。 イそこで,以上の事実に基づいて,本件乗員らの行為が,無謀にかつ損害が生ずるおそれがあることを認識して行った行為といえるかどうかについて,以下,検討する。 (ア) 前記アのとおり,副操縦士は,午後8時14分18秒にオートパイロットを接続してから,機長と操縦を交替した同15分3秒までの間,操縦輪の操舵が極めて重いことを認識しながら,操縦輪を押し続けるという操作を行ったものであるところ,副操縦士は,自らオートパイロットを接続したのであるし,この間,フライトモード表示器上にはゴーアラウンドモードでオートパイロットが接続されていることが表示されていた上,3度にわたって機長からゴーアラウンドモードであることを指摘されたのであるから,副 ,この間,フライトモード表示器上にはゴーアラウンドモードでオートパイロットが接続されていることが表示されていた上,3度にわたって機長からゴーアラウンドモードであることを指摘されたのであるから,副操縦士は,オートパイロットを接続した午後8時14分18秒からこれを解除した同14分49秒までの間,オートパイロットがゴーアラウンドモードに接続されていたことを認識していたと認めることができ,したがって,その間に操縦輪を押すという行為がオートパイロットに反する操作であることも認識していたというべきである。 すなわち,副操縦士は,操縦輪の操舵が極めて重い状態であったにもかかわらず,オートパイロットに反して,操縦輪を押し続けるという行為をしたというべきである。 (イ) そこで,上記行為が,損害発生のおそれがあることを認識して行った行為といえるか否かについて,検討する。 a 前記争いのない事実等(3)イに,証拠(甲1,26,27,31,証人D,証人J,証人L,証人C,証人M)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 (a) 航空機をトリムすることは,最も基本的な操縦技術の基礎であり,常に航空機のトリムを保つことは,安全に航空機を飛行させるための基本的でかつ重要な操作である。 そして,操縦輪を操作するに当たって非常に大きな力が必要であるといった状態は,通常はアウトオブトリムの状態を示すのであり,このことは,操縦士が最初に学ぶ基本的事項で,操縦中常に念頭に置かれている事項である。 (b) 1991年(平成3年)1月に,本件事故機の運航マニュアルが改訂され,ランドモード又はゴーアラウンドモードでオートパイロット接続中に縦方向にオートパイロットをオーバーライドすると,アウトオブトリムとなって危険な状態に至るおそれがある旨の注意書きが追加された。こ れ,ランドモード又はゴーアラウンドモードでオートパイロット接続中に縦方向にオートパイロットをオーバーライドすると,アウトオブトリムとなって危険な状態に至るおそれがある旨の注意書きが追加された。この注意書きは,「CAUTION」という表題のもとに,四角の枠で囲まれ,他の記載と区別されて目立つようにされていた。 また,オートパイロットに逆らって操作することは通常の手順ではなく,避けるべきである旨も記載されていた。 (c) 本件事故前に,オートパイロットのオーバーライドについての背景情報及び操縦上の推奨事項を操縦士に提供することを目的として発行された運航マニュアル速報には,次のとおりの記載がされていた。 すなわち,オートパイロット接続中に,操縦士がオートパイロットに反する操作(昇降舵操作)を行った場合,オートパイロットは機体を予定の飛行経路に維持するため,水平安定板を作動させるので,ゴーアラウンドモードでは,操縦士が操縦輪を押せば,昇降舵と水平安定板とが相反する同時の動作をすることとなり,このような場合,水平安定板の効率が昇降舵の効率よりも高いので,機体は異常なピッチアップ角に達し,失速する旨,また,オートパイロットが解除されていない状態では,制御システムを操作して機体の飛行経路を変更しようと試みないようにとの注意が記載されていた。 (d) 副操縦士は,1992年(平成4年)10月から11月にかけて,アエロフォーメーション社において,1991年のインシデントを考慮して追加された「GO-AROUNDDEMONSTRATEAPMISUSEINGO-AROUND(ゴーアラウンド演習ゴーアラウンドにおけるオートパイロットの誤用)」という項目のシミュレーター訓練を受けていた。 b これらの認定事実からすれば,副操縦士は,ゴーアラウンドモードでオ -AROUND(ゴーアラウンド演習ゴーアラウンドにおけるオートパイロットの誤用)」という項目のシミュレーター訓練を受けていた。 b これらの認定事実からすれば,副操縦士は,ゴーアラウンドモードでオートパイロットに接続中,オートパイロットに反して操縦輪を押す行為が,アウトオブトリムの状態を招く危険な行為であることについて,運航マニュアルの記載やシミュレーター訓練により知らされていたものと認められる。そして,また,仮にこのことに気がつかなかったり,忘れたりしていたとしても,操縦輪を操作するに当たって非常に大きな力が必要であるという状態が通常はアウトオブトリムの状態を示すということは,操縦士にとって最も基本的な事項であるから,正当な資格を有していた副操縦士は,当然,このことを知っていたと認められる。 したがって,副操縦士は,操縦輪の操舵が極めて重い状態であったにもかかわらず,オートパイロットに反して,操縦輪を押し続けるという行為が,アウトオブトリムの状態を示し,墜落の危険(損害発生のおそれ)があるものであると認識していたものと認めるのが相当である。 すなわち,副操縦士は,操縦論の操舵が極めて重いことがアウトオブトリムの状態を示すものであること及びゴーアラウンドモードでオートパイロットに逆らって操縦輪を押す行為がアウトオブトリムの状態を招くことを知っていた(少なくとも,操縦論の操舵が極めて重い状態で,無理に操縦輪を操舵することがアウトオブトリムの状態を招く危険な行為であることは十分に知っていた)ところ,オートパイロットに反する操作であり,操縦輪の操舵が極めて重い状態であることを認識しつつ(少なくとも,操縦輪の操舵が極めて重い状態であることは認識しつつ),操縦輪を強く押し続けることがアウトオブトリムの状態を招き,墜落のおそれのある危険な行為であ 極めて重い状態であることを認識しつつ(少なくとも,操縦輪の操舵が極めて重い状態であることは認識しつつ),操縦輪を強く押し続けることがアウトオブトリムの状態を招き,墜落のおそれのある危険な行為であることを認識して,操縦輪を押し続けるという行為をしたというべきである。 c これに対して,被告中華航空は,操縦輪の重さからアウトオブトリムを認識することは容易でないし,本件事故機には,水平安定板と昇降舵との相反する動きを知らせる警報・認識装置がなかった上,操縦輪が重くなるのは風の変化や乱気流によっても重くなるものであり,アウトオブトリムの状態を直ちに検知することはできないのであって,本件乗員らはアウトオブトリムの状態を認識できなかった旨主張する。 しかしながら,前記a(a)のとおり,操縦輪の操舵が重いことがアウトオブトリムの状態を示すことは操縦士にとって基本的事項であり,操縦輪の操舵の重さを感じるという方法は,操縦士にとって,アウトオブトリムを知る最も直接的な認識方法である。 そして,副操縦士は,操縦輪の操舵が重い状態がアウトオブトリムの状態を示すということを知っており,その副操縦士が約30秒間にもわたって20kg以上の非常に強い力を操縦輪に加え続けても押し下げられないことを認識していたのであるから,当然,アウトオブトリムの状態を認識していたというべきである。 また,副操縦士が操縦輪を強く押し続けるという行為をした時点においては,乱気流は存在していなかった(前記ア(ウ)c)上,本件では約30秒間,継続的に操縦輪が極めて重い状態であったもので,風の変化や乱気流の影響による操縦輪の抵抗力とは明らかに異なるものであったといえる。 よって,副操縦士は,アウトオブトリムの状態を認識していたというべきであり,被告中華航空の主張は採用できない。 d また,被告 気流の影響による操縦輪の抵抗力とは明らかに異なるものであったといえる。 よって,副操縦士は,アウトオブトリムの状態を認識していたというべきであり,被告中華航空の主張は採用できない。 d また,被告中華航空は,運航マニュアルの記載が分かりにくいこと,本件事故のような事態を想定した訓練が被告エアバスから提供されていないこと及び本件事故当時の航空界においてオートパイロットのオーバーライドの危険性が認識されていなかったことなどを理由に,本件乗員らにおいてオートパイロットのオーバーライドの危険性を認識し得なかったと主張する。 確かに,被告中華航空が主張するように,事故調査報告書は,運航マニュアル(甲26)の記載について,同マニュアルが,オートパイロットのオーバーライドの目的はオートパイロットの異常な作動からパイロットを保護するものであるとする一方で,「CAUTION」に記述されている内容は,オートパイロットが正常に機能している場合のオーバーライドを禁止するものであり,これらの記述のみからは,「オーバーライド行為に対して,推奨と禁止の相矛盾する内容を混同して理解する可能性がある。」旨を指摘している。 しかしながら,以上の運航マニュアルの記述は,オートパイロットが異常な作動をする場合にはオーバーライドを推奨し,オートパイロットが正常に機能している場合にはこれを禁止しているものと容易に理解でき,必ずしも推奨と禁止の相矛盾する内容であるとはいい難い。その上,上記「CAUTION」は,四角の枠で囲まれて他の記載と明確に区別され,かつ,オートパイロットをオーバーライドすると,アウトオブトリムとなって,危険な状態に至るおそれがある旨が明確に記載されているものであって(前記a(b)),運航マニュアルの記載が分かりにくいとはいえない。 また,前記a(d)のとおり,副 すると,アウトオブトリムとなって,危険な状態に至るおそれがある旨が明確に記載されているものであって(前記a(b)),運航マニュアルの記載が分かりにくいとはいえない。 また,前記a(d)のとおり,副操縦士は,本件事故と類似のインシデントを考慮して追加された「ゴーアラウンド演習,ゴーアラウンドにおけるオートパイロットの誤用」というシミュレーター訓練を受けていたと認められ,本件事故のような事態を想定した訓練が被告エアバスから提供されていないとの被告中華航空の主張は採用できない。 被告中華航空は,本件事故当時の航空界においては,オートパイロットに対するオーバーライドの危険性が認識されていなかったと主張するが,上記のとおり,運航マニュアルにもその危険性が指摘されていることからしても,かかる主張は到底採用できない。 e したがって,副操縦士が操縦輪の操舵が極めて重い状態であったにもかかわらず,オートパイロットに反して操縦輪を強く押し続けた行為は,損害が生ずるおそれがあることを認識して行った行為であると認めるのが相当である。 (ウ) そして,副操縦士が操縦輪の操舵が極めて重い状態であったにもかかわらず,オートパイロットに反して操縦輪を強く押し続けた行為は,以下のとおり,無謀な行為と認めるのが相当である。 すなわち,前記アに認定したとおり,副操縦士は,機長に対し,誤ってゴーレバーを作動させたことを,指摘されるまで報告せず,また,オートパイロットを接続したことや操縦輪の操舵が重いことも直ちに報告しなかったところ,速度も高度も低く,多くの航空機事故が発生している着陸進入時という危険の多い状況下で,誤ってゴーレバーを作動させてしまったのであるから,確実に安全に着陸できる場合を除き,ゴーアラウンドするか,機長に適切に報告し,その指示を受けて,機長と操縦を替わる 進入時という危険の多い状況下で,誤ってゴーレバーを作動させてしまったのであるから,確実に安全に着陸できる場合を除き,ゴーアラウンドするか,機長に適切に報告し,その指示を受けて,機長と操縦を替わるなどの適切な措置を採るべきであり,かつ,これらの措置は容易にとれるものであったにもかかわらず,副操縦士は,機体の状況を適切に機長に報告しないまま,経済的・時間的コストのかかるゴーアラウンドを回避して自らの失敗を挽回しようと,あえて操縦輪を強く押し続け,進入を継続するという行為を行ったものであって,その際,副操縦士は,機体を進入経路に戻すことのみを優先し,機体をイントリムの状態に保つという最も基本的な役割を放棄していたといわざるを得ない。 このように,副操縦士は,乗客の生命財産を安全に運送するという最も基本的かつ重要な義務を無視し,墜落のおそれのある行為であることを認識しながら,オートパイロットに逆らい,あえて極めて重い操縦輪を強く押し続け,着陸進入を継続しようとしたものであって,かかる行為は,まさに無謀というほかない。 (エ) そして,以上のとおり,オートパイロットに逆らって,極めて重い操縦輪を強く押し続けるといった副操縦士の行為によって,水平安定板が機首上げ限界に変位するといった深刻なアウトオブトリムの状態になっていたため,増加された推力によって迎え角が大きくなり,本件事故機が失速し,墜落したもので,この間の因果関係は極めて明瞭であり,本件事故及びこれに伴う損害が,副操縦士の上記行為により生じたものであることは明らかである。 これに対し,被告中華航空は,機長がゴーアラウンドしようとしたとき,本件乗員らには全く予想もし得ないような本件事故機の作動が発生し,これが本件事故の直接の原因であるとして,因果関係を争っているが,このような主張が採用できない ,機長がゴーアラウンドしようとしたとき,本件乗員らには全く予想もし得ないような本件事故機の作動が発生し,これが本件事故の直接の原因であるとして,因果関係を争っているが,このような主張が採用できないことは,既に説示したところから明らかである。 ウ以上からすれば,本件事故による損害は,本件乗員らの無謀にかつ損害が生ずるおそれがあることを知りながら行った行為により生じたと認められるから,改正ワルソー条約22条の違憲性を判断するまでもなく,同条約25条の適用により,被告中華航空は,本件事故により生じた損害の全額を賠償する責任があるというべきである。 4 争点(4)(被告中華航空の不法行為責任)について(1) 被害者B45(原告番号157・158),同B46(同159・160),同B64(原告番号236・237)及び同B65(同238・239)と被告中華航空との間の運送契約に,改正ワルソー条約の適用がないことは,前記1に見たとおりであり,これらの被害者らの遺族である原告らは,被告中華航空に対し,不法行為に基づく損害賠償請求をするものであるところ,前記3のとおり,本件事故は本件乗員らの無謀かつ損害の生ずるおそれがあることを認識して行った行為によって生じたものであることが認められるのであるから,被告中華航空の過失及びその過失と損害との因果関係は,当然に認められ,被告中華航空は,上記原告らに対し,不法行為責任を負う。 (2) したがって,被害者B45の遺族である原告A123(原告番号157)及び同A124(同158)並びに被害者B46の遺族である原告A125(原告番号159)及び同A126(同160)については,被告中華航空は,発生した全損害について,賠償する責任がある。 (3) 被告中華航空は,被害者B64の遺族である原告A174(原告番号236) (原告番号159)及び同A126(同160)については,被告中華航空は,発生した全損害について,賠償する責任がある。 (3) 被告中華航空は,被害者B64の遺族である原告A174(原告番号236)及び同A175(同237)並びに被害者B65の遺族である原告A176(原告番号238)及び同A177(同239)に対して,責任制限約款による責任制限を主張しているところ,前記争いのない事実等(2)キのとおり,被告中華航空の運送約款には,損害を生じさせる意図をもって又は無謀にかつ損害の生ずるおそれがあることを認識して作為又は不作為がなされた場合には責任が制限されない旨が定められている(前記3(2)に説示した改正ワルソー条約25条についての解釈と同様に,「認識していなかったが,認識すべき場合」は含まれないと解すべきである。)。 しかしながら,前記3(3)のとおり,本件事故は副操縦士の無謀かつ損害の生ずるおそれがあることを認識して行った行為によって生じたものであることが認められるのであるから,上記約款上の責任制限の除外事由に該当するというべきであって,被告中華航空は,上記原告らに対しても,本件事故により生じた損害について,その全額を賠償する責任がある。 5 争点(5)(被告エアバスの責任について)(1) 原告らは,本件事故機には,①アウトオブトリムの状態を招く性質を有する本件設計を採用しているという欠陥及び②アウトオブトリムの状態を知らせる警報がなかったという欠陥があり,これらの欠陥に起因して本件事故が発生したと主張するので,以下,検討する。 (2) 前記争いのない事実等(3)及び前記3に認定した各事実に,証拠(甲1,丙11,証人L)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア本件事故機は,オートパイロットがランドモード及びゴーアラウ 争いのない事実等(3)及び前記3に認定した各事実に,証拠(甲1,丙11,証人L)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア本件事故機は,オートパイロットがランドモード及びゴーアラウンドモード以外のモードに接続されている場合,操縦輪に縦方向に15kg以上の力を加えると,オートパイロットが自動的に解除される。他方,オートパイロットがランドモードあるいはゴーアラウンドモードに接続されている場合,縦方向に一定以上の力を加えるとオートパイロットの昇降舵制御をオーバーライドすることとなるが,オートパイロットが解除されることはない。そのため,オートパイロットがゴーアラウンドモードに接続されている場合に,操縦輪を機首下げに操作すると,昇降舵は機首下げに制御されるが,オートパイロットのオートトリム機能はゴーアラウンドの指令に従って水平安定板を機首上げ方向へ作動するよう指令することになり,アウトオブトリムの状態を招く危険がある(本件設計)。 本件事故機においてオートパイロットをオーバーライドするために必要な力は,機首下げ方向には20kg以上,機首上げ方向には46kg以上であった。 本件事故機は,オートパイロットがランドモード及びゴーアラウンドモードに接続されている場合,操縦輪をいくら強く押してもオートパイロットが解除されることはないので,オーバーライドすることを止めれば,オートパイロットのオートトリム機能により,自動的に機体はトリムされる。 イオーバーライド機能は,オートパイロットの異常作動が生じた際,オートパイロットを解除せずとも,操縦士によるとっさの操作を許容することによって危険から回避できるようにすることを目的として本件事故機に設けられたものであり,とっさの行使を超えて,オートパイロットに対抗して長時間行使されることは予定されてい とっさの操作を許容することによって危険から回避できるようにすることを目的として本件事故機に設けられたものであり,とっさの行使を超えて,オートパイロットに対抗して長時間行使されることは予定されていない。 ウ本件事故機には,2つの操縦席の間に位置するセンタペデスタル上に,ビジュアルトリムインジケータが設置され,水平安定板の位置を表示していた。また,両操縦席のすぐ脇にはそれぞれトリムホイールが取り付けられており,トリムホイールには縞模様のマーキングが施されていて,水平安定板が作動するにつれてトリムホイールが回転し,水平安定板の作動が認識できるようにされていた。 このトリムホイールを操作することにより,いつでも水平安定板を制御して機体をトリムすることが可能であり,これはオートパイロットが接続中であっても変わりがない。 エオートパイロットの解除は,オートパイロット接続レバーをオフの位置に操作するか,各操縦輪のいずれにもあるオートパイロット解除ボタンを押すことによって,いつでも可能である。 操縦士の意図によらずにオートパイロットが解除されると,特に離陸時や着陸時の低い高度を航行中の場合には,操縦士がオートパイロットが解除されたことに気づいて操縦を引き継ぐ前に,危険な状態に陥ってしまう可能性がある。 オ A300-600型機開発時においては,水平安定板の作動警報として,手動操縦の際もオートパイロット接続中も,ともに,水平安定板が作動したときにはウーラー音が鳴るように設計されていたが,その後,設計が変更され,本件事故機では,オートパイロット接続中においてはウーラー音が鳴らないようにされていた。 カ 1991年(平成3年)に運航マニュアルが改訂され,「CAUTION」として,四角く枠で囲んだ中に,ランドモード及びゴーアラウンドモード時に縦方向にオートパ ーラー音が鳴らないようにされていた。 カ 1991年(平成3年)に運航マニュアルが改訂され,「CAUTION」として,四角く枠で囲んだ中に,ランドモード及びゴーアラウンドモード時に縦方向にオートパイロットをオーバーライドすると,アウトオブトリムとなり危険な状態に至るおそれがある旨の注意書きが追加された。 (3) 本件事故機は,多数の乗客・乗員を乗せることができる旅客機であり,高速で高い高度を飛行するものであるから,墜落等の事故が生じると多数の人命を奪う大惨事となることは必至であり,このような危険性ゆえに高い安全性が強く求められるものである。そして,航空機を操縦するのは人間であり,それ故に多数回,長時間の飛行中には,本来の手順とは異なる誤った操作がなされることも当然に予想されるところであるから,航空機は,操縦士による誤った操作があっても安全に飛行を継続できるように設計されるべきである。 もっとも,いかなる場合にも絶対に事故が起きないように航空機を設計することが不可能であることは論をまたないところであって,航空機の安全は,設計のみによって確保することはできず,操縦士に対する教育,訓練等を通じて安全を確保することなども不可欠である。そして,航空機は,相当の訓練を受けた,資格を有する者が操縦することが予定されているものであるから,このような者であれば当然有する操縦に関する最低限の基本的知識及び技能に明らかに反するような操縦がなされることまでも予見して設計しなければならない法的義務を,製造者に負わせることは相当ではない。 したがって,本件事故機に設計上の欠陥があるといえるか否かについては,資格を有する者であれば当然有する操縦に関する最低限の基本的知識及び技能に基づいて操縦されることを前提にして,通常有すべき安全性を欠いているかどうかによって判断す 陥があるといえるか否かについては,資格を有する者であれば当然有する操縦に関する最低限の基本的知識及び技能に基づいて操縦されることを前提にして,通常有すべき安全性を欠いているかどうかによって判断すべきである。 (4) 本件設計についてア原告らは,本件設計はアウトオブトリムの状態を招くという危険性を有し,欠陥というべきであると主張するので,以下,検討する。 (ア) コンピューター技術の発達とその航空機への導入により,航空機の安全性は格段に高まったが,他方,コンピューターの故障による事故が発生することとなり,進んだ技術をもってしてもコンピューターの故障の発生の可能性を全くなくすことは不可能であるから,航空機は,コンピューターの故障が発生した際に操縦士が安全に操縦を引き継ぐことができるように設計されなくてはならない。 そして,操縦士がオートパイロットの異常作動に直面した場合,とっさに操縦輪を操作して対応しようとすることは最も自然な反応であるといえるから,そのような即座の対応ができるようにするために,オートパイロットが接続中であっても,操縦輪からの操作入力を許容するような設計は,合理的であり必要であると認められる。 本件設計のオーバーライド機能は,前記(2)イのとおり,このようなオートパイロットの故障による異常作動にとっさに対応するためのものであり,その目的は,ひとまず合理的であるということができる。 (イ) ところで,本件設計が,オートパイロットのオーバーライドを継続することによりアウトオブトリムを招くという危険を内包していることは前記(2)アのとおりであるところ,アウトオブトリムの状態は,機体の異常姿勢や異常作動の原因となるものであって,航空機の墜落といった極めて重大な結果が生じる可能性があることは否定できない。 しかしながら,本件設計は, であるところ,アウトオブトリムの状態は,機体の異常姿勢や異常作動の原因となるものであって,航空機の墜落といった極めて重大な結果が生じる可能性があることは否定できない。 しかしながら,本件設計は,オートパイロットの異常作動に対応するためのとっさの措置としてオーバーライドを許容したものであり,そもそもオーバーライドを長時間継続することは予定されていない(前記(2)イ)。 その上,前記3において詳述したとおり,航空機をトリムすることは,最も基本的な操縦技術であり,常に航空機のトリムを保つことは,安全に航空機を飛行させるための基本的かつ重要な操作であって,操縦輪を操作するに当たって非常に大きな力が必要であるといった状態が,通常はアウトオブトリムの状態を示すことは,操縦士が最初に学ぶ基本的事項であるところ,本件設計において,ゴーアラウンドモードでオートパイロット接続中に機首下げ方向にオーバーライドするためには,20kg以上の力が必要であるとされており,これは通常の場合における操縦輪にかける力の4倍から5倍であるから,本件設計において,操縦輪の重さを感知することなく継続してオーバーライドをするという事態は,通常考え難く,オーバーライドをしてアウトオブトリムの状態に陥ったとしても,オーバーライドすることを止めればオートパイロットが自動的にトリムするのであるし,また,オートパイロットを手元のオートパイロット解除ボタンで解除した上で,手元のトリムスイッチによってトリム操作することも容易であり,さらに,いずれの場合もトリムホイールによって手動でトリム操作することも可能である。 したがって,20kg以上もの力が必要となる操縦輪の重さにもかかわらず継続して操縦輪を押し続けるというような事態は,操縦に関する基本的知識及び技能を有する者が操縦することを前提にす とも可能である。 したがって,20kg以上もの力が必要となる操縦輪の重さにもかかわらず継続して操縦輪を押し続けるというような事態は,操縦に関する基本的知識及び技能を有する者が操縦することを前提にすれば,操縦士が危険を認識しつつあえて危険な行為を行ったともいうべき,極めて例外的な行動であるといえる。 (ウ) 本件設計の内包する危険であるアウトオブトリムの状態を招くには,操縦輪が非常に重いにもかかわらず強く操縦輪を押し続けることが必要であり,こうした行為は意図的になされる以外,想定し難いものである。この危険を招く行為が意図的になされるものであることからすれば,訓練や運航マニュアル等で操縦士にオートパイロットを長時間オーバーライドすることが危険であることを理解させることで,このような危険な行為をすることを防止することができるといえ,前記(2)カのとおり,実際に運航マニュアルにオートパイロットをオーバーライドすると危険な状態を招く旨の注意書きが記載されている。 また,オートパイロットが接続されているにもかかわらず接続されていないと思って,操縦輪を押してしまう事態も想定できるが,このような場合でも,操縦輪の操作に必要な大きな力を感じることによって機体の異常(アウトオブトリム)を感知することが可能であり,操縦の基本であるトリム操作が速やかにされることを期待できる。 (エ) 以上の事実によれば,本件設計は,オートパイロットの異常作動に対応するためのものであり,その必要性は肯定し得るところ,本件設計の内包するアウトオブトリムの状態を招くという危険は,航空機の墜落という重大な結果を生じる可能性があるものの,そのような重大な結果に至る蓋然性は極めて低く,通常は,操縦に関する最低限の基本的知識及び技能を有する者であれば,オートパイロットをオーバーライドして異 という重大な結果を生じる可能性があるものの,そのような重大な結果に至る蓋然性は極めて低く,通常は,操縦に関する最低限の基本的知識及び技能を有する者であれば,オートパイロットをオーバーライドして異常作動に対応した後,直ちにオーバーライドを中止し,オートパイロットを解除し,あるいはトリムホイールの操作等によりアウトオブトリムの状態に対処することが可能である上,訓練や運航マニュアル等により長時間のオーバーライドが危険であることを理解させることにより,上記のような重大な結果を防止することも可能であるのであるから,本件設計が合理性を有しないということはできず,これをもって直ちに欠陥であるということはできない。 イこれに対し,原告らは,本件事故に先行して,3件のアウトオブトリムに至ったインシデントが生じており,これらのインシデントからしても,本件設計は危険であり,欠陥があると主張する。 (ア) 証拠(甲1,24,28)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a 1985年のインシデント1985年(昭和60年)3月1日,エアバスA300-600型機は,高度維持モードでオートパイロットに接続中,操縦士が操縦輪を押して昇降舵を機首下げとしたため,オートパイロットは設定高度に戻ろうとして水平安定板を機首上げ側に作動させ,アウトオブトリムの状態となった。 その後,水平安定板が機首下げ側に働くモードヘの切り替わりがあり,オートパイロットのオートトリム機能により機体の機首上げ姿勢は減少し,正常な飛行に戻った。 b 1989年のインシデント1989年(平成元年)1月9日,エアバスA300B4-203FF型機は,ヘルシンキ・ヴァンター空港への着陸のため,オートパイロットを使用して空港へ進入中,機長がうっかりゴーレバーを作動させたため,同機はゴーアラ 成元年)1月9日,エアバスA300B4-203FF型機は,ヘルシンキ・ヴァンター空港への着陸のため,オートパイロットを使用して空港へ進入中,機長がうっかりゴーレバーを作動させたため,同機はゴーアラウンドモードとなった。機長は,オートパイロットによる機首上げを避けようとして,手動で操縦輪を押し続けた。これに対しオートパイロットは,水平安定板を機首上げ側に作動させ,アウトオブトリムの状態となった。 その後,機長はトリムホイールを使用し,さらに副操縦士にこの操作を続けさせたため,機体姿勢が徐々に機首下げとなり,正常な飛行に戻った。 c 1991年のインシデント1991年(平成3年)2月11日,エアバスA310-304型機は,着陸のため,オートパイロットを使用してモスクワ・シェレメーチェヴォ空港へ進入中,航空交通管制からゴーアラウンドを指示され,操縦士はゴーアラウンドモードにした。操縦士は,ゴーアラウンドによる機首上げ姿勢を少し押さえようとして,手動で操縦輪を押して昇降舵を機首下げとした。これに対し,オートパイロットは水平安定板を機首上げ側に作動させ,アウトオブトリムの状態となった。 その後,オートパイロットは,高度獲得モードに自動的に切り替わり,操縦輪が押されていたため解除されることとなったが,操縦士は,オートパイロットが解除されたことに気がつかなかった。そのため,操縦士は,機体のコントロールができないのはオートパイロットの故障が原因だと思い込み,オートパイロットを解除することに意識が集中し,また,手動によるトリムスイッチ操作は無効であると思っていたため,十分なトリム操作が行われず,4回の失速降下と急上昇を繰り返した。 操縦士が飛行制御コンピューター(FCC)の電源を遮断しようとブレーカーを引っ張った後は,トリム操作が行われ,正常な飛行に戻った ため,十分なトリム操作が行われず,4回の失速降下と急上昇を繰り返した。 操縦士が飛行制御コンピューター(FCC)の電源を遮断しようとブレーカーを引っ張った後は,トリム操作が行われ,正常な飛行に戻った。 (イ) 以上の3件のインシデントは,確かに原告らが主張するように,本件設計の持つアウトオブトリムの状態を招くという危険性が現実化した事例であるといえる。 しかしながら,アウトオブトリムの状態は,機体の異常姿勢や異常作動の原因となる危険な状態であるが,アウトオブトリムの状態に陥っても,その後トリム操作を行い機体をイントリムの状態とすれば,正常な飛行が続けられるのである。そして,実際に,上記1985年のインシデントにおいては,オートパイロットのオートトリム機能により,また,1989年のインシデントにおいては,機長によるトリムホイールの操作によって,自動又は手動のトリム操作が行われ,正常な飛行に戻っている。 なお,1991年のインシデントにおいては,4回の乱高下を繰り返した後に遅れてようやく十分なトリム操作が行われたが,これは,オートパイロットが解除されているにもかかわらず,操縦士が,オートパイロットが解除できず,手動のトリム操作が無効であると思っていたためであって,操縦士は,ブレーカーを引っ張りオートパイロットが解除されたと思った後は,十分なトリム操作を行っている。このインシデントでは,操縦士がオートパイロットが解除されたことを認識できなかったことが4度の乱高下という危険を生じさせた直接の原因であるというべきである。 (ウ) 以上のとおり,過去の3件のインシデントのいずれもが基本的な操縦知識及び技能に従ってトリム操作が行われ,これによって危険が回避されていることからすれば,これらのインシデントがあったことをもって,直ちに,本件設計が欠陥を有す インシデントのいずれもが基本的な操縦知識及び技能に従ってトリム操作が行われ,これによって危険が回避されていることからすれば,これらのインシデントがあったことをもって,直ちに,本件設計が欠陥を有するものであるということはできない。 ウさらに,原告らは,操縦輪を強く押すことによりオートパイロットが解除されるという設計の方が,オートパイロットの異常作動に対する対応としては適切であり,かつ,本件設計の有するアウトオブトリムの状態を招くという危険もなくなるから,このような設計ではなく,本件設計を採用した本件事故機には欠陥があると主張する。 (ア) 確かに,オートパイロットの異常作動に対応するためには,オートパイロットを解除せずにオーバーライドを許容するといった本件設計の他に,原告らが主張するような,操縦輪を強く押すことでオートパイロットが解除されるという設計も可能であり,このような設計においては,オートパイロットと手動による操作が相反することにより,アウトオブトリムの状態を招く危険は生じないということができる。 (イ) しかしながら,証拠(甲20,85,丙11,証人L)によれば,1972年(昭和47年)12月29日,イースタン航空の定期便が墜落し,ワイドボディ機では初めての事故を起こしたが,当該事故機は,機長の操縦輪に6kg以上又は副操縦士の操縦輪に9kg以上の力が加えられると,オートパイロットの高度維持機能が働かなくなるように設計されていたため,無意識に操縦輪が押されたことによってオートパイロットの高度維持機能が働かなくなり,機体が降下し,墜落に至ったものであったことが認められ,これによれば,この事故は,オートパイロットが意図せずに解除されたために航空機が墜落したものといえる。 この事故からも明らかなように,操縦輪を強く押すことによりオートパ ったものであったことが認められ,これによれば,この事故は,オートパイロットが意図せずに解除されたために航空機が墜落したものといえる。 この事故からも明らかなように,操縦輪を強く押すことによりオートパイロットが自動解除されるという設計では,他方で,本件設計では起こりえない,意図せずにオートパイロットが解除されてしまうという危険が生じることは否定できず,しかも,この危険も墜落にも至る重大なものであるといえる。 (ウ) この点について,原告らは,オートパイロットが自動解除されるために,15kg以上の力が必要であると設定すれば,意図せずにオートパイロットを解除することはあり得ないと主張する。 確かに,上記イースタン航空の墜落事故では,6kg又は9kgという力でオートパイロットが解除されるように設定されていたのであって,オートパイロットの解除のために必要な力をより大きく設定すれば,意図せずにオートパイロットを解除してしまう危険は減少すると考えられる。 しかしながら,航空機は,様々な気象状況の下で飛行することが予定されており,乱気流等によって大きく機体が揺れるなどの状況も考えられる。また,離陸から着陸までの間に機体は様々な動きをして,大きな加速度がかかったり,機体が大きく傾いたりすることも当然にあり得ることであって,このような状況で意図せずに操縦輪に一時的に大きな力が加わることも予想されるのであるから,原告らが主張するようにオートパイロットが解除されるために必要な力を高く設定したとしても,意図せずにオートパイロットが解除されてしまう危険は依然残るといわざるを得ない。 (エ) このように,本件設計も,操縦輪を強く押すことでオートパイロットが解除されるという設計も,どちらの設計もそれぞれ危険性を内包するものであって,どちらの設計を採用すべきかは,諸般の事 ない。 (エ) このように,本件設計も,操縦輪を強く押すことでオートパイロットが解除されるという設計も,どちらの設計もそれぞれ危険性を内包するものであって,どちらの設計を採用すべきかは,諸般の事情を考慮した上で総合的に決定されるべき高度に専門的な判断であるといえる。 したがって,本件設計を採用した本件事故機に欠陥があるというためには,設計が内包する危険により生じ得る結果の重大性,危険発生の蓋然性,危険防止のための方策等の点について,本件設計と操縦輪を強く押すことでオートパイロットが自動解除されるという設計とを比較して,本件設計を採用したことが安全性の点で不合理であるといえることが必要であると解すべきである。 a 設計が内包する危険により生じ得る結果の重大性本件設計の内包する危険により,墜落という極めて重大な結果が生じる可能性があることは,前記ア(イ)のとおりである。 一方,操縦輪を強く押すことによりオートパイロットが解除されるという設計も,意図せずにオートパイロットが解除されるという危険を内包しているところ,オートパイロットが解除されたことに操縦士が気がつかない場合,特に暗闇の中での飛行では,墜落という重大な結果が生じる可能性がある。さらに,ランドモードやゴーアラウンドモードにおいては,速度も高度も低いため,意図せずにオートパイロットが解除された場合,非常に困難な状況で操縦を引き継がなければならない危険があり,操縦士がオートパイロットが解除されたことに気づくのが遅れると,墜落の危険の可能性が高くなるのであって,こうした設計が内包する危険により生じ得る結果も重大であるといえる。 b 危険発生及び結果発生の蓋然性本件設計において,本件事故のように,20kg以上もの力が必要となる操縦輪の重さにもかかわらず継続して操縦輪を押し続け,かつ,何ら じ得る結果も重大であるといえる。 b 危険発生及び結果発生の蓋然性本件設計において,本件事故のように,20kg以上もの力が必要となる操縦輪の重さにもかかわらず継続して操縦輪を押し続け,かつ,何らトリム操作をしないというような事態が極めて例外的な行動であることは,前記ア(イ)のとおりである。 一方,操縦輪を強く押すことによりオートパイロットが解除されるという設計では,前記(ウ)のようにオートパイロットの解除に必要な力を大きく設定すれば,意図せずにオートパイロットを解除してしまう危険は減少するものの,その危険は完全に解消されるものではない。また,このような設計においては,意図せず,一時的に操縦輪に大きな力が加わったためにオートパイロットが解除されてしまう可能性があり,操縦士のあずかり知らないところで機体の動きの変化が生じることになり,ランドモード及びゴーアラウンドモードのような低い速度及び高度では,操縦士がオートパイロットが解除されたことに気づく前に,回復不可能な事態に陥ってしまうことも考えられる。 c 危険防止のための方策の有無本件設計の内包する危険を防止する方策については,前記ア(ウ)に見たとおりである。 一方,操縦輪を強く押すことでオートパイロットが解除されるという設計では,その内包する危険が,オートパイロットを意図せずに解除してしまうという危険であるが故に,これを訓練や運航マニュアルで周知徹底したとしても,何らかの原因で一時的にでも操縦輪に大きな力が加わることを防止することは困難であり,意図せずにオートパイロットが解除される危険を防止できるとはいえない。 (オ) このように,本件設計と,操縦輪を強く押すことによりオートパイロットが解除されるという設計とを各観点から比較しても,必ずしも本件設計の方が安全性の点で劣ると評価することはで るとはいえない。 (オ) このように,本件設計と,操縦輪を強く押すことによりオートパイロットが解除されるという設計とを各観点から比較しても,必ずしも本件設計の方が安全性の点で劣ると評価することはできず,オートパイロットを解除しようとするのであれば,別の手段によって容易に解除できることも考え併せれば,操縦輪を強く押すことによりオートパイロットが解除されるという設計ではなく,本件設計を採用することも,直ちに不合理とはいえない。 エなお,原告らは,事故調査報告書において,本件設計が本件事故においてアウトオブトリムの状態となった原因の一つであると指摘されていること,また,アメリカ国家運輸安全委員会が本件設計を,操縦輪を押すことによりオートパイロットが解除される設計に改修するよう要求し,アメリカ連邦航空局は改修の実施を指示したこと,さらに,被告エアバスが,フランス民間航空総局の耐空性改善命令を受けて,上記の設計に改修するようにしたことなども,本件設計の欠陥を肯定するものであるし,そもそも,本件設計は,航空機の操縦体系の下で極めて稀なものであったのであり,本件事故後の改修で,このような設計の機体は世界の空から姿を消したなどと主張する。 しかしながら,原告らの指摘する上記各事実は,結局,本件設計よりも操縦輪を強く押すことによりオートパイロットが解除されるという設計を選択した,又は選択すべきであるとした例と評価できるところ,そのような例があるとしても,本件設計を採用することが直ちに不合理といえないとの上記判断を左右するには足りないといわざるを得ない。 オ以上のとおり,本件設計は,オートパイロットの異常作動に対応するとともに,意図せずにオートパイロットを解除してしまう危険を防止するものであって,他の採りうる設計と比較しても,不合理な設計であるとまでは 上のとおり,本件設計は,オートパイロットの異常作動に対応するとともに,意図せずにオートパイロットを解除してしまう危険を防止するものであって,他の採りうる設計と比較しても,不合理な設計であるとまではいえないのであるから,本件設計を採用した本件事故機が通常有すべき安全性を欠くものとはいえない。 したがって,本件設計を採用したことに本件事故機の欠陥があるとの原告らの主張は採用できない。 (5) 警報について原告らは,本件事故機には,機体がアウトオブトリムに陥るような危険な状態を操縦士に的確に伝達する機能が欠けているという欠陥があったと主張する。 そこで検討するに,アウトオブトリムの状態は,機体の異常姿勢の原因となる危険な状態であるから,機体がアウトオブトリムの状態に陥った場合には,そのことを直ちに的確に操縦士に知らせる何らかの方法がなければ,通常有すべき安全性を欠くことになるというべきである。 そして,前記(2)オに認定したとおり,本件事故機は,オートパイロット接続中においては水平安定板が動いても警告音が鳴らないように設計されていたことが認められる。 しかしながら,これまで何度も述べてきたとおり,操縦輪の重さがアウトオブトリムの状態の発生を示すものであり,オートパイロットをオーバーライドするには機首下げに20kg以上,機首上げに46kg以上もの力が必要であって,通常の場合に必要な力が4kgから5kgであることからすれば,操縦輪の重さは,アウトオブトリムの状態を知らせる方法としては,十分なものというべきである。また,操縦輪の重さがアウトオブトリムの状態の発生を示すものであることは,航空機の操縦の基本であって,操縦輪の重さがアウトオブトリムの状態を操縦士に知らせる最も直接的で有効な警告であるということができる。 原告らは,操縦輪が重いという事実は の発生を示すものであることは,航空機の操縦の基本であって,操縦輪の重さがアウトオブトリムの状態を操縦士に知らせる最も直接的で有効な警告であるということができる。 原告らは,操縦輪が重いという事実は,操縦輪を押している者にしか感知されない点で不十分と主張する。しかし,操縦を担当している操縦士は,機体の異常を感知すれば,そのことを操縦を担当していない操縦士に知らせるものであるから,操縦を担当している操縦士が感知できれば,警告としては十分な機能を果たすといえる。 また,アウトオブトリムの状態を認識するための他の方法として,以下のものもある。まず,証拠(丙10,証人M)によれば,操縦輪が前方一杯の位置にあり,操縦士の腕が異常に伸びきっている状態もトリムの必要性を示すものであることが認められ,操縦を担当している操縦士をチェックする役割の操縦を担当していない操縦士にとっては,このような状態もアウトオブトリムの状態を認識する方法といえる。また,前記(2)ウのとおり,ビジュアルトリムインジケータは水平安定板の位置を表示し,縞模様のマーキングがされたトリムホイールは,その回転により水平安定板の作動を表示しており,これらの表示も,アウトオブトリムの状態を知るための有効な表示であると考えられる。 以上のように,アウトオブトリムの状態を操縦士に知らせる警告としては,操縦輪が非常に重いという最も直接的で有効な警告があり,また,その他にも,操縦士の運転姿勢,ビジュアルトリムインジケータ及びトリムホイールの回転なども警告として有効であったといえるから,アウトオブトリムに陥るような危険な状態を操縦士に的確に伝達する機能が欠けているという欠陥があったとの原告らの主張は採用できない。 現に,本件において,副操縦士は,「教官,やっぱり押し下げられません。」と発言しているも ような危険な状態を操縦士に的確に伝達する機能が欠けているという欠陥があったとの原告らの主張は採用できない。 現に,本件において,副操縦士は,「教官,やっぱり押し下げられません。」と発言しているものであって,副操縦士において,操縦輪が非常に重いという警告を感知していたことは明らかであるし,機長も,この発言等により,上記警告を感知したというべきであることは,前記3において認定したとおりである。 (6) 以上のとおり,本件事故機に欠陥があるとの原告らの主張は,採用することができない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告らの被告エアバスに対する請求はいずれも理由がない。 6 争点(6)(日本居住被害者の損害)について(1) 逸失利益及び慰謝料の算定における基本的考え方についてア逸失利益について(ア) 逸失利益の算定は,原則として,事故前の現実の収入額に基づき,将来にわたって得られたであろう収入額を認定し,これを基礎収入として算定することとするのが相当である。 なお,事故前の現実の収入額が賃金センサスの平均賃金に満たない場合に,当該被害者について,将来にわたって上記平均賃金を得られる蓋然性が認められるのであれば,上記平均賃金を基礎として算定するのが相当であるし,家事従事者は,平成6年の女子全年齢平均賃金を基礎とし,学生,生徒及び幼児は,同年の賃金センサスの学歴計・男女別又は全労働者の全年齢平均賃金を基礎とするのが相当である。 これに対し,原告らは,実収入のみにより逸失利益を算定することは相当でなく,損害賠償の枠組みとしては原状回復を基本理念とし,被害者遺族の個別事情に配慮しつつ,人の命はかけがえがないという厳然たる事実を踏まえ,人間の尊厳と平等の理念に合致した緻密な損害賠償方式を採用すべきであり,具体的には,あらゆる被害者 基本理念とし,被害者遺族の個別事情に配慮しつつ,人の命はかけがえがないという厳然たる事実を踏まえ,人間の尊厳と平等の理念に合致した緻密な損害賠償方式を採用すべきであり,具体的には,あらゆる被害者に対して,平成5年の賃金センサスの平均賃金に基づいて計算された損害(被害者の死亡時年齢を初年とし,以後就労可能期間の各年に対応する年齢の,男性につき大卒男子年齢別平均賃金,女性につき全労働者年齢別平均賃金により算定する。)を最低限の逸失利益として認めつつ,個別事情とりわけ高額の収入の可能性があった者については,加算のための立証を認めるという方式を採用すべきであると主張する。 しかしながら,逸失利益の算定は,当該事故がなければ得られたであろう経済的利益を算出するものであるから,当該被害者の現実の収入額やその他の個別事情に基づくことなく,一律に賃金センサスの平均賃金により算定される金額をもって最低限の逸失利益とすることは相当とはいえないし,また,就労可能期間の各年に対応する年齢の平均賃金によることは,何らの根拠もなくして当然にそのように昇給したであろうと認めるに等しく,やはり相当ではないことは明らかである。 したがって,逸失利益の算定に当たって,原告らの主張する算定方式を採用することはできない。なお,原告らにおいて主張する各個別事情については,これが認められる場合には,これに基づいて算定すべきであることはいうまでもない。 (イ) 就労可能年数については,原則として,67歳を終期とするが,平成6年簡易生命表の平均余命(以下,単に「平均余命」という。)の2分の1の年数(小数点以下切り捨て)の方が長期の場合には,これによるものとし,すなわち,男性にあっては,事故時年齢が56歳以下の場合は67歳までの年数,57歳以上の場合は平均余命の2分の1の年数とし,女性 年数(小数点以下切り捨て)の方が長期の場合には,これによるものとし,すなわち,男性にあっては,事故時年齢が56歳以下の場合は67歳までの年数,57歳以上の場合は平均余命の2分の1の年数とし,女性にあっては,51歳以下の場合は67歳までの年数,52歳以上の場合は平均余命の2分の1の年数とするのが相当である。 また,未就労者の就労の始期は,原則として18歳とするのが相当である。以上に対し,就労可能年数については75歳までとするのが相当であるとの原告らの主張は採用できない。 なお,年金収入については,事故時年齢から平均余命までの年数によって,逸失利益を算定するものとする。 (ウ) 生活費控除率については,男性の被害者は,一家の支柱の場合,被扶養者(子については,20歳未満の就労していない者に限る。)が1人のときは40パーセント,2人以上のときは30パーセントとし,それ以外の場合は50パーセントとし,女性の被害者は30パーセントとするのを相当と認める。 なお,原告らは,昭和50年ころと比べて生活費割合が低下したので,その当時と変わらない生活費控除率の基準は妥当せず,被扶養者のいない男性は40パーセント,女性は30パーセント,被扶養者1人の場合,男女とも30パーセント,2人以上の場合は,男女とも25パーセントとするのが相当であると主張するが,一般に生活費控除率については上記基準が相当とされており,これが相当でないというべき事情は何ら認められないから,原告らの主張は採用できない。 (エ) 中間利息の控除について中間利息の控除については,年5パーセントのライプニッツ方式によるのが相当である。 これに対し,原告らは,中間利息控除の計算方式として,年2パーセントの複式ホフマン方式によるべきであると主張する。 しかしながら,中間利息の控除は,被害者が将来得ら ニッツ方式によるのが相当である。 これに対し,原告らは,中間利息控除の計算方式として,年2パーセントの複式ホフマン方式によるべきであると主張する。 しかしながら,中間利息の控除は,被害者が将来得られたであろう収入を現価として算定するため,その収入が得られたであろう時点までの一般的な運用利益に相当する金員を控除する趣旨のものであるところ,損害賠償請求訴訟においては,この控除すべき中間利息の割合を民事法定利率である年5分(民法404条)とする運用が定着しているところ,この民事法定利率は一般的な運用利益を考慮して定められたものであって,現在に至るまで改正されていないことからすれば,こうした実務の運用も合理性がないとはいえない。確かに,現在のわが国の経済状況においては,一般の銀行預金の金利は年5パーセントを大きく下回っているが,逸失利益の算定は,被害者の就労可能期間にわたる将来の収入を現在価値に引き直す作業であって,中間利息の控除においては長期的な運用利益を考慮しなければならないのであるし,一般的な運用利益を考えるに当たってもわが国における金利のみが考慮されるべきものでもない。 また,中間利息の控除が一般的な運用利益に相当する金員を控除する趣旨であることからすれば,一般的な資金運用としては複利によるものと考えられる以上,複利方式とするライプニッツ方式を採用するのが相当である。 以上のとおり,損害賠償請求訴訟の実務においては,年5パーセントのライプニッツ方式により中間利息の控除を行う運用が定着しており,訴訟の統一的解決という見地からも,このような方式を採用することが相当であるといえる。 したがって,年2パーセントの複式ホフマン方式によるべきとする原告らの主張は採用できない。 (オ) なお,原告A204(原告番号281)は,固有の逸失利益として50 採用することが相当であるといえる。 したがって,年2パーセントの複式ホフマン方式によるべきとする原告らの主張は採用できない。 (オ) なお,原告A204(原告番号281)は,固有の逸失利益として500万円を請求するが,そもそも,逸失利益は,前記(ア)のとおり当該被害者について当該事故がなければ得られたであろう経済的利益をいうものであるから,同原告が主張するような事情は,慰謝料の算定に当たり斟酌すべき事情として考慮し得るとしても,同原告主張のような固有の逸失利益を認めることができないことは明らかである。 イ慰謝料について本件事故は,被告中華航空の従業員である本件乗員らが乗客の安全を無視した無謀な操縦により本件事故機を墜落させたものであって,何ら落ち度のない被害者らにとって,かかる無謀な行為によりかけがえのないその後の人生を奪われたことによる無念さは想像するに余りあるものであって,本件事故により被った精神的苦痛は計り知れない。 以上のような加害者の悪質性,本件事故の悲惨さなど,本件事故に関する一切の事情を総合考慮すると,本件事故により被った被害者の精神的苦痛に対する慰謝料は,原則として,被害者が一家の支柱である場合は2600万円,これに準ずる場合(一家の支柱である者の配偶者など)は2200万円,その他の場合は2000万円をもって相当と認める。ただし,他に固有の慰謝料を認めるべき者がいる場合には,後記(2)のとおり,それぞれ別途考慮することとする。 なお,原告らは,本件事故は航空機事故によるものであって,本件における一切の事情を考慮すると,高額の慰謝料の支払を命じることが相当であり,被害者1人当たり1億円が正当な慰謝料であると主張し,本件事故による精神的苦痛等について,各意見書(甲39,51)を提出するところ,上記各意見書によれば,本件事 謝料の支払を命じることが相当であり,被害者1人当たり1億円が正当な慰謝料であると主張し,本件事故による精神的苦痛等について,各意見書(甲39,51)を提出するところ,上記各意見書によれば,本件事故により被った被害者らの精神的苦痛が極めて多大なものであったことは十分認められるものの,これを考慮しても,本件事故による被害が交通事故その他の人身事故と質的に異なるものということはできず,原告らの主張は余りに過大であるというべきであって,採用できない。 (2) 日本居住被害者の個別の逸失利益及び慰謝料について(以下,(2)項における「原告」又は「原告ら」とは,標記の原告番号に該当する原告又は原告らを指す。)【被害者B1】(原告番号1~4)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ1~4の①-2,③,④-4・9)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B1は,本件事故当時44歳の男性であり,有限会社Z1の代表取締役として稼働し,一家の支柱として,妻及び2人の未成年の子を扶養していたもので,平成5年には600万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B1は,今後も67歳までの23年間にわたり,労務の対価として,少なくとも上記600万円の9割に相当する540万円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,540万円を基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,5098万6530円となる。 (イ) なお,原告らは,有限会社Z1からの報酬600万円及び有限会社Z2からの報酬360万円の合計960万円を基礎収入とすべきであるが,少なくとも大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張する。 しかしながら,有限会社Z1の報酬については からの報酬360万円の合計960万円を基礎収入とすべきであるが,少なくとも大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張する。 しかしながら,有限会社Z1の報酬については,平成5年分及び平成6年分の収入証明が提出されているのみであり,これだけでは,平成5年の報酬600万円の全額に相当する収入を将来にわたって得られたであろうとの蓋然性を認めるに足りないし,原告ら主張のとおり平成6年に有限会社Z2から360万円の報酬を得ていたものとしても,他方で,従前どおり有限会社Z1の代表取締役として労務についていたというのであって,これに加え有限会社Z2の取締役としても労務を提供するようになったことまでを認めるに足りる証拠はない。 そして,他に,被害者B1において,原告ら主張のような大卒男子年齢別平均賃金に基づく各年の平均賃金を得る蓋然性があったことを認めるに足りる証拠はない。 イ慰謝料被害者B1は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,原告A4につき下記のとおり固有の慰謝料を認めるべきであることに鑑み,被害者B1の慰謝料は2500万円をもって相当と認める。 また,原告A4は固有の慰謝料を請求するところ,前記争いのない事実等(1)アのとおり,原告A4は被害者B1の父であり,本件事故の態様その他一切の事情を併せ考慮すると,原告A4固有の慰謝料は100万円をもって相当と認める。 【被害者B2】(原告番号5)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ5の①-4,④-3~8)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B2は,本件事故当時,48歳の男性であり,Z3株式会社の取締役として稼働し,一家の支柱として,1人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年には630万円,平成4年には1085万円,平成5年には960万円の報酬 故当時,48歳の男性であり,Z3株式会社の取締役として稼働し,一家の支柱として,1人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年には630万円,平成4年には1085万円,平成5年には960万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B2は,今後も67歳までの19年間にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である891万6666円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,891万6666円を基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,6465万6350円となる。 (イ) なお,原告は,平成3年の収入は例外であり,平成4年及び平成5年の平均収入1022万5000円を基礎として,退職金を加算するなどした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,被害者B2について,上記(ア)の認定金額以上の収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性については,これを認めるに足りる証拠はなく,原告の主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B2は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B3】(原告番号6~8)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ6~8の①-3,③,④-4~7)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B3は,本件事故当時53歳の男性であり,有限会社Z4の代表取締役として稼働し,一家の支柱として妻を扶養していたもので,平成3年に535万円,平成4年に595万円,平成5年に600万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B3は,今後も67歳まで14年間にわたり,少なくとも上記の平均である576万6666円の収入を得られたであろうと認めるのが相当であ 600万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B3は,今後も67歳まで14年間にわたり,少なくとも上記の平均である576万6666円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,3424万9152円となる。 (イ) なお,原告らは,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額以上の収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性については,これを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B3は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B4】(原告番号9~11)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ9~11の①-4,③,④-4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B4は,本件事故当時51歳の男性であり,Z5株式会社の代表取締役として稼働し,一家の支柱として,妻及び1人の未成年の子を扶養していたもので,平成5年には465万円の役員報酬を得ていたことが認められる。 そして,被害者B4につき,今後も67歳までの16年間にわたり,少なくとも465万円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,465万円を基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,3527万6713円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B4の代表取締役の報酬は低く抑えられ,利益が会社に蓄えられていたから,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃 」逸失利益欄記載のとおり,3527万6713円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B4の代表取締役の報酬は低く抑えられ,利益が会社に蓄えられていたから,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,被害者B4が今後も465万円を超える収入を得られたであろう蓋然性については,これを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B4は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B5】(原告番号12~14)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ12~14の①-3,③,④-3~7)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B5は,本件事故当時48歳の男性であり,有限会社Z6の代表取締役として稼働し,一家の支柱として,妻及び1人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年には1220万円,平成4年には1248万円,平成5年には1248万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B5は,今後も67歳まで19年間にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である1238万6666円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,1238万6666円を基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1億0478万7602円となる。 (イ) なお,原告らは,平成4年及び平成5年の平均給与額1248万円を基礎とし,退職金を加算するなどした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額以上の収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性については,これを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰 した各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額以上の収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性については,これを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B5は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B6】(原告番号15~17)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ15~17の①-3,③,④-3の1・2,④-4~6)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B6は,本件事故当時68歳の男性であり,Z7株式会社の代表取締役として稼働していたほか,厚生年金を受け取っており,一家の支柱として,妻を扶養していたもので,平成3年には1257万円,平成4年には1282万円,平成5年には1293万円の報酬を得ていたほか,平成3年に284万7332円,平成4年に293万9164円,平成5年に300万3732円の厚生年金を受け取っていたことが認められる。 これによれば,被害者B6は,今後も7年間(平成6年当時の68歳男性の平均余命14.52年の2分の1(小数点以下切捨て。以下も同様とする。))にわたり,労務の対価として,上記報酬の平均である1277万3333円の収入を得られ,また,平均余命である14年間にわたり,上記年金の平均である293万0076円の年金収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これらを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,報酬につき4434万6202円,年金につき1740万2190円の合計6174万8392円となる。 (イ) なお,原告らは,平成5年の報酬額及び年金額合計1593万3732円を基礎とし,退職金を加算するな き4434万6202円,年金につき1740万2190円の合計6174万8392円となる。 (イ) なお,原告らは,平成5年の報酬額及び年金額合計1593万3732円を基礎とし,退職金を加算するなどした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額以上の収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性については,これを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B6は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B7】(原告番号18・19)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ18・19の①-2,③,④-4~7)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B7は,本件事故当時46歳の男性であり,Z8有限会社の専務取締役として稼働するとともに,平成4年に設立した有限会社Z9の代表取締役として稼働し,一家の支柱として,父及び内縁の妻を扶養していたもので,平成3年には784万円,平成4年には739万円,平成5年には822万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B7は,今後も67歳まで21年にわたり,労務の対価として,上記の平均である781万6666円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,7015万2779円となる。 (イ) なお,原告らは,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額以上の収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性については,これを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害 基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額以上の収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性については,これを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B7は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,後記ウのとおり,原告A19について固有の慰謝料を認めるべきであることに鑑み,被害者B7の慰謝料は1600万円をもって相当と認める。 ウ原告A19の固有の慰謝料証拠(甲イ18・19の③)及び弁論の全趣旨によれば,原告A19は,昭和49年6月から本件事故時まで約20年間もの間,被害者B7と内縁関係にあり,本件事故当時,被害者B7及びその父と同居していたことが認められ,このような事情を考慮すると,原告A19は,被害者との間に民法711条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係が存し,長年連れ添った内縁の夫である被害者B7が本件事故によって死亡したことにより甚大な精神的苦痛を受けたと認められるので,原告A19の固有の慰謝料は1000万円をもって相当と認める。 【被害者B8】(原告番号20~22)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ20~22の①-6,③,④-4~7)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B8は,本件事故当時51歳の男性であり,電気工事の下請業を営み,一家の支柱として,妻を扶養していたもので,平成3年には379万6652円,平成4年には380万2164円,平成5年には392万3455円の営業所得を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B8は,今後も67歳まで16年間にわたり,上記の平均である384万0757円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一 たり,上記の平均である384万0757円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2497万4983円となる。 (イ) なお,原告らは,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額以上の収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性については,これを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B8は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B9】(原告番号23~26)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ23~26の①-3,③,④-5・6)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B9は,本件事故当時51歳の男性であり,「Z10」の屋号で大工工事業を営み,一家の支柱として,妻及び1人の未成年の子を扶養していたもので,平成5年には326万7724円の営業所得を得ていたことが認められる。 そして,被害者B9が,今後も67歳まで16年間にわたり,少なくとも326万7724円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2479万0228円となる。 (イ) なお,原告らは,平成5年の修正申告後の所得は698万2950円であり,この所得も経費等を正確に反映していないとして,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張する。 しかしながら,証拠(甲イ23~26の④ 所得は698万2950円であり,この所得も経費等を正確に反映していないとして,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張する。 しかしながら,証拠(甲イ23~26の④-4)及び弁論の全趣旨によれば,原告ら主張の修正申告は,本件事故後の平成6年12月になされたものであって,信用性に疑問が残るといわざるを得ない上に,経費割合等についてもこれを認定するに足りる証拠は一切提出されておらず,上記修正申告後の所得額を採用することはできない。そして,他に,被害者B9において,原告ら主張のような大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を得る蓋然性があったことを認めるに足りる証拠はない。 イ慰謝料被害者B9は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円もって相当と認める。 【被害者B10】(原告番号27~30)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ27~30の①-2,③,④-4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B10は,本件事故当時46歳の男性であり,大工としてZ10に勤務し,一家の支柱として,妻及び2人の未成年の子を扶養していたもので,平成5年には535万6900円の給与収入を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B10は,今後も67歳まで21年にわたり,少なくとも,上記535万6900円の9割に相当する482万1210円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,4326万9250円となる。 (イ) なお,原告らは,少なくとも大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金 一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,4326万9250円となる。 (イ) なお,原告らは,少なくとも大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額以上の収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性については,これを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B10は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B11】(原告番号31~33)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ31~33の①-3,③,④-5)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B11は,本件事故当時34歳の男性であり,大工として,Z11の屋号で父が営む建築大工業に勤務し,一家の支柱として,妻を扶養していたもので,平成5年には280万円の給与収入を得ていたことが認められる。 そして,被害者B11について,今後も67歳まで33年間にわたり,少なくとも280万円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2688万4200円となる。 (イ) なお,原告らは,平成5年の修正申告後の所得は520万円であること,被害者が34歳と若年であること,優れた技能を有していたことなどを理由に,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張する。 しかしながら,証拠(甲イ31~33の④-5)及び弁論の全趣旨によれば,原告ら主張の修正申告は,本件事故後になされたものであって,信用性に疑問が残るといわざるを得ず,上記修正申告後の所得額を採用することはできな ,証拠(甲イ31~33の④-5)及び弁論の全趣旨によれば,原告ら主張の修正申告は,本件事故後になされたものであって,信用性に疑問が残るといわざるを得ず,上記修正申告後の所得額を採用することはできない。そして,他に,被害者B11において,原告ら主張のような大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を得る蓋然性があったことを認めるに足りる証拠はない。 イ慰謝料被害者B11は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B12】(原告番号34・35)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ34・35の①,③,④-4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B12は,本件事故当時25歳の独身男性であり,高校卒業後,4年間の畳職人としての修行を終え,平成5年からは父のもとで畳製造業の事業専従者として稼働し始めていたもので,平成5年の給与収入は47万円であったことが認められる。 これによれば,被害者B12は,平成5年の収入は低額であったものの,25歳と若年であり,畳職人としての技能を修得していたのであるから,今後も67歳まで42年間にわたり,少なくとも平成6年の賃金センサスの高卒男子労働者の全年齢平均賃金である524万3400円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を50パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,4567万8403円となる。 (イ) なお,原告らは,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性までは認めることができず,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害 各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性までは認めることができず,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B12は,前記アのとおり独身であったから,その慰謝料は2000万円をもって相当と認める。 【被害者B13】(原告番号36~39)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ36~39の①-4,③,④-3・4・6~8)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B13は,本件事故当時54歳の男性であり,Z12有限会社の代表取締役として稼働し,一家の支柱として,妻を扶養していたもので,平成3年には870万円,平成4年には1020万円,平成5年には1080万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B13は,今後も67歳まで13年間にわたり,労務の対価として,上記の平均である990万円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,5579万7390円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B13が平成6年の4か月間で475万円の報酬を得ていることから,この年額である1425万円を基礎とし,退職金を加算するなどした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性については,これを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B13は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B14】(原告番号40~42)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ40 3は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B14】(原告番号40~42)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ40~42の①-2,③,④-3-1・2,④-5~7)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B14は,本件事故当時72歳の男性であり,昭和59年に妻を亡くしたが,有限会社Z13の役員として稼働し,農業も営んでいたほか,年金収入も得ていたもので,平成3年に225万円,平成4年に195万円,平成5年に171万円の報酬を,また,平成3年に1万9691円,平成4年に1万8647円,平成5年に1万8867円の農業収入を得ており,さらに,平成3年に159万6196円,平成4年に164万7664円,平成5年に168万3894円の年金収入を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B14は,今後も5年間(平成6年当時の72歳男性の平均余命11.82年の2分の1)にわたり,労務の対価として,上記報酬及び農業収入の合計額の平均である198万9068円の収入を得られ,また,平均余命である11年間にわたり,上記年金額の平均である164万2584円の年金収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これらを基礎収入とし,生活費控除率を50パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,給与等につき430万5735円,年金につき682万1979円の合計1112万7714円となる。 (イ) なお,原告らは,平成5年の報酬,農業収入及び年金収入に,Z14からの報酬180万円,美術品販売27万円を加算した548万2761円を基礎とした基礎収入によるべきであると主張する。 しかしながら,Z14代表作成の証明書(甲イ40~42の④-4) 金収入に,Z14からの報酬180万円,美術品販売27万円を加算した548万2761円を基礎とした基礎収入によるべきであると主張する。 しかしながら,Z14代表作成の証明書(甲イ40~42の④-4)のみでは,Z14から,将来にわたって180万円の収入が得られたであろうことを認めるに足りない。また,美術品販売の平成5年の所得である27万円について,将来にわたって同額程度のものが得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はない。 このほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B14の慰謝料は,前記アの事情等から,2000万円をもって相当と認める。 【被害者B15】(原告番号43~45)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ43~45の①-2,③,④-3~5)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B15は,本件事故当時43歳の男性であり,有限会社Z15の代表取締役として稼働し,一家の支柱として,妻及び2人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年には964万6000円,平成4年には1201万2000円,平成5年には1320万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B15は,今後も67歳まで24年間にわたり,労務の対価として,上記の平均である1161万9333円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1億1223万1369円となる。 (イ) なお,原告らは,平成5年の収入額である1320万円を基礎とし,退職金を加算するなどした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の 載のとおり,1億1223万1369円となる。 (イ) なお,原告らは,平成5年の収入額である1320万円を基礎とし,退職金を加算するなどした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性までは認めることができず,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B15は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B16】(原告番号46~48)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ46~48の①-3,③,④-4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B16は,本件事故当時47歳の男性であり,株式会社Z16に従業員として勤務し(平成6年3月に営業部長に昇格),一家の支柱として,妻及び1人の未成年の子を扶養していたもので,平成5年に691万3152円の給与収入を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B16は,今後も67歳まで20年間にわたり,少なくとも上記691万3152円の9割に相当する622万1836円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,5427万6435円となる。 (イ) なお,原告らは,平成6年3月に被害者B16が営業部長に昇格したことなどを理由に,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,昇格したことによる昇給額は明らかとされておらず,そのほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B16は,前記ア は明らかとされておらず,そのほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B16は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたことが認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B17】(原告番号49~52)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ49~52の①-2,③,④-3~5)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B17は,本件事故当時41歳の男性であり,Z17有限会社の取締役として稼働し,一家の支柱として,妻及び3人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年に891万2800円,平成4年に1381万5800円,平成5年に2152万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B17は,今後も67歳まで26年間にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である1474万9533円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1億4841万8208円となる。 (イ) なお,原告らは,平成5年の収入額である2152万円を基礎として,退職金を加算するなどした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B17は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円もって相当と認める。 【被害者B18】(原告番号53~55)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ53~55の①-3,③,④ ,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円もって相当と認める。 【被害者B18】(原告番号53~55)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ53~55の①-3,③,④-4~8)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B18は,本件事故当時53歳の男性であり,株式会社Z18の代表取締役として稼働し,一家の支柱として,妻を扶養していたもので,平成3年に764万円,平成4年に850万円,平成5年に832万5000円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B18は,今後も67歳まで14年間にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である815万5000円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,4843万3849円となる。 (イ) なお,原告らは,株式会社Z18の業績が順調に伸びていたこと,関連会社からも役員報酬を得ることが確実であったことなどを理由に,大卒男子年齢別平均賃金に基づく各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,関連会社からの報酬を得られるようになったであろうことについては,これを認めるに足りる証拠はなく,このほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はないので,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B18は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B19】(原告番号56~58)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ56~58の①-3,③,④-4~10)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B19は, は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B19】(原告番号56~58)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ56~58の①-3,③,④-4~10)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B19は,本件事故当時50歳の男性であり,Z19の屋号で建築大工業を営み,一家の支柱として,妻を扶養していたもので,平成3年に291万4741円,平成4年に353万9833円,平成5年に250万9082円の所得を得ていたことが認められる。 そして,被害者B19について,今後も67歳まで17年間にわたり,少なくとも上記の平均である298万7885円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2021万1249円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B19は,その売上げを低く計上していたこと及び多彩な資格を有していたことなどを理由に,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B19は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B20】(原告番号59・60)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ59・60の①-3,③,④-3-1,④-4-1,④-5)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B20は,本件事故当時61歳の男性であり,Z20有限会社代表取締役として稼働し,一家の支柱として,妻を扶養していたもので,平成3年に858万円,平成4年に ④-5)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B20は,本件事故当時61歳の男性であり,Z20有限会社代表取締役として稼働し,一家の支柱として,妻を扶養していたもので,平成3年に858万円,平成4年に870万円,平成5年に876万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B20は,今後も9年間(平成6年当時の61歳男性の平均余命19.66年の2分の1)にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である868万円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセント(この点は原告らと被告中華航空との間で争いがない。)として,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,3701万7422円となる。 (イ) なお,原告らは,平成5年の報酬額876万円を基礎として,退職金を加算するなどした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B20は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B21】(原告番号59・60)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ59・60の①-3,③,④-4-2)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B21は,本件事故当時59歳の女性であり,主婦として家事労働に従事していたほか,着付教室の教師としての授業料収入等を得ており,平成5年には77万5500円の給与収入を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B21は,今後も13年間(平成6年当時の59歳女性の平均余命26.24年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年 5年には77万5500円の給与収入を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B21は,今後も13年間(平成6年当時の59歳女性の平均余命26.24年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である(基礎収入を上記のとおりとすべきことは,被告中華航空も認めている。)。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2133万3389円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B21は,家事労働をしていたほか,Z20有限会社の取締役として働いていたこと,着付け教室の教師として授業料収入があったことなどを理由として,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B21の慰謝料は,上記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B22】(原告番号60~62)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ60~62の①-2,③,④-4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B22は,本件事故当時34歳の男性であり,Z20有限会社に勤務し,一家の支柱として,妻及び1人の未成年の子を扶養していたもので,平成4年に374万1129円,平成5年に429万0952円の給与収入を得ていたことが認められる。 そして,被害者B22について,今後も67歳まで33年間にわたり,少なくとも上記の平均である401万6040円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで, して,被害者B22について,今後も67歳まで33年間にわたり,少なくとも上記の平均である401万6040円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,4498万6676円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B22が近い将来Z20有限会社の代表者に就任することが確実視されていたことなどを理由に,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B22は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B23】(原告番号63~65)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ63~65の①-2,③,④-3~5)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B23は,本件事故当時44歳の男性であり,有限会社Z21及び有限会社Z22の代表取締役として稼働していたほか,個人としてレンタカー営業を営んでおり,一家の支柱として,妻及び1人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年には807万9385円の報酬及び営業所得,平成4年には1158万0521円の報酬及び営業所得,平成5年には1087万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B23は,今後も67歳まで23年間にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である1017万6635円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パ 今後も67歳まで23年間にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である1017万6635円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,9608万7278円となる。 (イ) なお,原告らは,少なくとも平成5年の収入程度は得られたことは確実であるとして,1087万円を基礎とし,退職金を加算するなどした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,前記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B23は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B24】(原告番号66~68)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ66~68の①-3・4,③,④-5~7)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B24は,本件事故当時42歳の男性であり,平成5年まで株式会社Z23に勤務し,平成6年に同社を退職した後,独立して台湾に新会社を設立し,その業務開始に向けて準備中であったが,一家の支柱として,両親を扶養していたもので,株式会社Z23から,平成3年に659万3600円,平成4年に664万8100円,平成5年に635万5200円の給与を得ていたことが認められる。 そして,被害者B24について,今後も67歳までの25年間にわたり,少なくとも上記の平均である653万2300円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害 3万2300円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,6444万5908円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者が台湾に設立した新会社は必ず成功していたとして,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B24は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B25】(原告番号69~71)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ69~71の①-3,③,④-3・4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B25は,本件事故当時45歳の男性であり,Z24株式会社の従業員として勤務し,一家の支柱として,妻及び1人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年に752万7813円,平成4年に1151万9292円,平成5年に1080万円の給与を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B25は,今後も67歳まで22年間にわたり,少なくとも上記の平均である994万9035円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,9167万1403円となる。 (イ) なお,原告らは,平成4年及び平成5年の平均収入である1115万9646円を基礎とし,退職金を加算するなどした基礎収入によるべきであると主張す 益欄記載のとおり,9167万1403円となる。 (イ) なお,原告らは,平成4年及び平成5年の平均収入である1115万9646円を基礎とし,退職金を加算するなどした基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B25は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B26】(原告番号72~78,334~338)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲72~78の①-2)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B26は,本件事故当時60歳の独身女性であり,子もおらず,独り暮らしであったことが認められる。 そして,被害者B26について,今後12年間(平成6年当時の60歳女性の平均余命25.34年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2012万9036円となる。 (イ) なお,原告らは,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B26の慰謝料は,前記アの事情等から,2000万円をもって相当と認める。 【被害者B27】(原告番号79~82)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ79~82の①-2,③-1~5)及び弁論 害者B26の慰謝料は,前記アの事情等から,2000万円をもって相当と認める。 【被害者B27】(原告番号79~82)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ79~82の①-2,③-1~5)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B27は,本件事故当時55歳の女性であり,亡夫Nの営んでいたZ25米穀店を娘婿が継いだ後もこれを手伝っていたことが認められる。 そして,被害者B27について,今後も14年間(平成6年当時の55歳女性の平均余命29.87年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2248万0512円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B27は,娘婿が経営する米穀小売事業に対して2分の1程度の寄与をしていたなどとして,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B27の慰謝料は,前記アの事情等から,2000万円をもって相当と認める。 【被害者B28】(原告番号83~85)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ83~85の①-2,④-4-1~5)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B28は,本件事故当時52歳の既婚女性であり,Z26の保険外交員として稼働していたことが認められる。 そして,被害者B28について,今後も16年間(平成6年当時の52歳女性の平均余命32.63年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の女 り,Z26の保険外交員として稼働していたことが認められる。 そして,被害者B28について,今後も16年間(平成6年当時の52歳女性の平均余命32.63年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2461万3283円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B28は,Z26岡崎支社から,平成2年に820万5392円,平成3年に877万6393円,平成4年に706万4015円,平成5年に706万5500円の外交員報酬を得ており,保険外交員の経費は多額に上るものではないから,少なくとも全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張する。 しかしながら,証拠(甲イ83~85の④-4-1~4)によれば,その主張のとおりの外交員報酬を得たことは認められるものの,それについての経費がいくらであったかを認めるに足りる証拠の提出がなく,結局,実収入を認定することができず,このほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠もないから,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B28の慰謝料は,前記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B29】(原告番号86~88)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ86~88の①-2~4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B29は,本件事故当時51歳の既婚女性であり,家事に従事していたことが認められる。 そして,被害者B29は,今後も67歳までの16年間にわたり,少なくとも -2~4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B29は,本件事故当時51歳の既婚女性であり,家事に従事していたことが認められる。 そして,被害者B29は,今後も67歳までの16年間にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2461万3283円となる。 (イ) なお,原告らは,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B29の慰謝料は,上記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B30】(原告番号89~92)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ89~92の①-4,③-1・2)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B30は,本件事故当時56歳の既婚女性であり,有限会社Z27を経営する夫を手伝いながら,家事に従事していたことが認められる。 これによれば,被害者B30は,今後も14年間(平成6年当時の56歳女性の平均余命28.95年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である(基礎収入を上記のとおりとすべきことは,被告中華航空も認めている。)。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2248万0512円となる。 (イ) なお めている。)。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2248万0512円となる。 (イ) なお,原告らは,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B30の慰謝料は,前記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B31】(原告番号93・94)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ93・94の①-3,③,④-4-1)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B31は,本件事故当時63歳の男性であり,作業用手袋の生産業を営んでいたほか,年金も受け取っており,一家の支柱として,妻を扶養していたもので,平成5年の営業所得はマイナスであったが,254万4600円の年金収入があったことが認められる。 これによれば,被害者B31は,今後も14年(平成6年当時の63歳男性の平均余命)にわたり,上記年金収入を得られたであろうと認められる(上記年金収入を基礎収入とすべきであることは,被告中華航空も認めている。)。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセント(この点は,原告らと被告中華航空との間で争いがない。)として,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1511万2786円となる。 (イ) なお,原告らは,作業用手袋の生産業について,平成5年の営業所得はマイナスであったが,これは多くの減価償却費等が生じていたためであり,実際は多くの収入を得ていたなどとして,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきで いて,平成5年の営業所得はマイナスであったが,これは多くの減価償却費等が生じていたためであり,実際は多くの収入を得ていたなどとして,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記生産業の売上額や経費について客観的な資料は提出されておらず,このほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B31は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B32】(原告番号93・94)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ93・94の①-3,③)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B32は,本件事故当時61歳の既婚女性であり,家事に従事していたことが認められる。 そして,被害者B32について,今後も12年間(平成6年当時の61歳女性の平均余命24.45年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2012万9036円となる。 (イ) なお,原告らは,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B32の慰謝料は,前記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B33】(原告番号98~100)についてア るに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B32の慰謝料は,前記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B33】(原告番号98~100)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ98~103の①-3,③,④-4-1)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B33は,本件事故当時67歳の男性であり,長男の経営するZ28有限会社に勤務し,農業も営んでいたほか,年金収入も得ており,一家の支柱として,妻を扶養していたもので,平成5年には,給与収入176万3600円,農業収入39万1074円の合計215万4674円の所得のほか,年金収入116万9294円を得ていたことが認められる。 そして,被害者B33が,少なくとも年金を含め収入総額332万3968円を将来にわたって得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 これによれば,被害者B33は,今後も7年間(平成6年当時の67歳男性の平均余命15.23年の2分の1)にわたり,上記給与等215万4674円の収入を得られ,また,平均余命である15年間にわたり,上記年金116万9294円の年金収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これらを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセント(この点は,原告らと被告中華航空との間で争いがない。)として,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,給与等につき748万0554円,年金につき728万2082円の合計1476万2636円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B33の給与は勤務先が長男の会社であったことから低額に抑えられていたなどとして,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入 害者B33の給与は勤務先が長男の会社であったことから低額に抑えられていたなどとして,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B33は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B34】(原告番号98~100)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ98~103の①-3)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B34は,本件事故当時67歳の既婚女性であり,家事に従事していたことが認められる。 そして,被害者B34について,今後も9年間(平成6年当時の67歳女性の平均余命19.26年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1614万2382円となる。 (イ) なお,原告らは,全労働者年齢別平均賃金による平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B34の慰謝料は,前記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B35】(原告番号104・105)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ104・105の①-5,③-1・3,④-4-1・2,④-5-1)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B3 と認める。 【被害者B35】(原告番号104・105)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ104・105の①-5,③-1・3,④-4-1・2,④-5-1)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B35は,本件事故当時57歳の男性であり,中学及びZ29株式会社の養成学校を卒業後,平成5年6月までZ29株式会社・Z30株式会社で勤務し,平成5年7月からはZ30株式会社と関連のある学校法人Z31で勤務しており,一家の支柱として,妻を扶養していたもので,平成5年にZ30株式会社から324万7363円,学校法人Z31から325万6750円の合計650万4113円の給与収入を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B35は,今後も11年間(平成6年当時の57歳男性の平均余命22.88年の2分の1)にわたり,少なくとも上記の650万4113円の9割に相当する585万3701円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセント(この点は,原告らと被告中華航空との間で争いがない。)として,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2917万3909円となる。 (イ) なお,原告らは,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B35は,上記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B36】(原告番号104・105)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ104・105の①-5・7・8,③の1~3)及び弁論の全趣旨によ ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B36】(原告番号104・105)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ104・105の①-5・7・8,③の1~3)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B36は,本件事故当時56歳の既婚女性であり,家事に従事していたことが認められる。 そして,被害者B36が,今後も14年間(平成6年当時の56歳女性の平均余命28.95年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2248万0512円となる。 (イ) なお,原告らは,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はない。 イ慰謝料被害者B36の慰謝料は,上記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B37】(原告番号106~108)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ106~108の①-4~6)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B37は,本件事故当時67歳の既婚女性であり,家事に従事していたことが認められる。 そして,被害者B37が,今後も9年間(平成6年当時の67歳女性の平均余命19.26年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算 平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1614万2382円となる。 (イ) なお,原告らは,全労働者年齢別平均賃金による平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はない。 イ慰謝料被害者B37の慰謝料は,上記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B38】(原告番号106~108)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ106~108の①-4,④-4-1)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B38は,本件事故当時67歳の男性であり,給与収入を得て,一家の支柱として,妻を扶養していたことが認められる。 そして,被害者B38は,今後も7年間(平成6年当時の67歳男性の平均余命15.23年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の賃金センサスの学歴計男子労働者65歳以上の平均賃金376万7100円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセント(この点は,原告らと被告中華航空との間で争いがない。)として,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1307万8542円となる。 (イ) なお,原告らは,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B38は,上記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B39】(原告番号109~111)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ109~111の①-5,④-4-1~3・5)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B39は,本件事故当時65歳の男性であり,有限会社Z32の代表取締役として稼働し,一家の支柱として,妻を扶養していたもので,平成4年に550万円,平成5年に480万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B39は,今後も8年間(平成6年当時の65歳男性の平均余命16.67年の2分の1)にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である515万円の9割に相当する463万5000円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセント(この点は,原告らと被告中華航空との間で争いがない。)として,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1797万4159円となる。 (イ) なお,原告らは,過去5年間の報酬の平均である556万円を基礎とした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,平成3年以前の収入の額については,公的な収入証明を提出しておらず,収入証明書(甲イ109~111の④-3-1,④-4-6)ではこれを認めるに足りず,このほか,上記(ア)の認定額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 ~111の④-3-1,④-4-6)ではこれを認めるに足りず,このほか,上記(ア)の認定額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B39は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B40】(原告番号109~111)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ109~111の①-5~8,③)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B40は,本件事故当時61歳の既婚女性であり,家事に従事していたことが認められる。 そして,被害者B40が,今後も12年間(平成6年当時の61歳女性の平均余命24.45年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2012万9036円となる。 (イ) なお,原告らは,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はない。 イ慰謝料被害者B40の慰謝料は,上記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B41】(原告番号112・113)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ112・113の①-4,④-4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B41は,本件事故当時53歳の女性であり,前夫と離婚後,犬の美容室を経営するなどしていたことが認められる。 そして,被害者B41が,今後も1 113の①-4,④-4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B41は,本件事故当時53歳の女性であり,前夫と離婚後,犬の美容室を経営するなどしていたことが認められる。 そして,被害者B41が,今後も15年間(平成6年当時の53歳女性の平均余命31.71年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2357万2901円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B41の事故前年の事業収入は689万2480円であり,経費も少なかったので,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,証拠(甲イ112・113の④-4)によれば,平成5年の営業収入は689万2480円とされているものの,営業所得は219万2894円とされており,経費については証拠上明らかではなく,このほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B41の慰謝料は,前記アの事情等から,2000万円をもって相当と認める。 【被害者B42】(原告番号114~118)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ114~118の①-2,③-1・2,④-3-2・3)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B42は,本件事故当時41歳の男性であり,「Z33」の屋号で呉服の小売業を営んできた後,株式会社Z33を設立させるなどし,一家の支柱として,妻及び3人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年に904万6095円の 時41歳の男性であり,「Z33」の屋号で呉服の小売業を営んできた後,株式会社Z33を設立させるなどし,一家の支柱として,妻及び3人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年に904万6095円の営業所得,平成4年に1354万2004円の営業所得に加え,株式会社Z33から300万円の給与収入を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B42は,今後も67歳まで26年間にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である1279万4049円の9割に相当する1151万4644円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1億1586万6911円となる。 (イ) なお,原告らは,平成2年及び平成3年の収入は事業が軌道に乗る前であったことから,平成2年から平成4年の総収入を2.5で割った額である1288万7195円を基礎とした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B42は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 ウ原告A112の固有の慰謝料について原告A112は,固有の慰謝料を請求するところ,同原告が被害者B42の兄であることは,前記争いのない事実等(1)アのとおりであるが,両者の間に民法711条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係があったと認めるに足りる証拠はなく,原告A112固有の慰謝料については,これを認めることができない。 【被害者B54】(原告番号202~206)について 11条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係があったと認めるに足りる証拠はなく,原告A112固有の慰謝料については,これを認めることができない。 【被害者B54】(原告番号202~206)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ202~206の①-5,③-1・2,④-3~9)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B54は,本件事故当時43歳の男性であり,有限会社Z34の代表取締役として稼働し,一家の支柱として,妻及び3人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年に840万円,平成4年に840万円,平成5年に870万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B54は,今後も67歳まで24年間にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である850万円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,8210万1670円となる。 (イ) なお,原告らは,平成5年の収入である870万円を基礎とした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B54は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B55】(原告番号207~210)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ207~210の①-3,③-1・2,④-4~8)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B55は,本件事故当時45歳の男性であり,板金業を営んできた後,平成4年に有限会社Z35を設立するなどし,一家の支柱として,妻及び3人の未 ③-1・2,④-4~8)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B55は,本件事故当時45歳の男性であり,板金業を営んできた後,平成4年に有限会社Z35を設立するなどし,一家の支柱として,妻及び3人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年に728万5296円の営業所得,平成4年に436万7497円の営業所得及び250万円の報酬,平成5年に620万円の報酬を得ていたことが認められる。 そして,被害者B55について,今後も67歳まで22年間にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である678万4264円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,6251万0886円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B55は有限会社Z35を設立し個人の節税を図っており,実質的収入は多かったなどを理由として,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,前記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B55は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B56】(原告番号211~213)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ211~213の①-3,③-1・2,④-3)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B56は,本件事故当時46歳の男性であり,建築業を営み,一家の支柱として,妻及び2人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年に1027万0755円,平成4年に1207万1321円, よれば,被害者B56は,本件事故当時46歳の男性であり,建築業を営み,一家の支柱として,妻及び2人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年に1027万0755円,平成4年に1207万1321円,平成5年に747万6587円の所得を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B56は,今後も67歳まで21年間にわたり,少なくとも上記の平均である993万9554円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,8920万5211円となる。 (イ) なお,原告らは,上記993万9554円を基礎とした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B56は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B57】(原告番号214・215)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ214~215の①-2,③-1・2,④-4~6)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B57は,本件事故当時46歳の男性であり,平成3年秋ころまでZ36に勤務し,平成4年に舗装道路切断工事業を興すなどし,一家の支柱として,妻及び1人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年には312万4918円の給与収入を得,平成4年に210万円,平成5年に350万円の営業所得を上げていたことが認められる。 これによれば,被害者B57は,今後も67歳まで21年間にわたり,少なくとも,その事業が軌道に乗ったと考えられる平成5年の営業所得である350 年に350万円の営業所得を上げていたことが認められる。 これによれば,被害者B57は,今後も67歳まで21年間にわたり,少なくとも,その事業が軌道に乗ったと考えられる平成5年の営業所得である350万円の9割に相当する315万円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2827万0525円となる。 (イ) なお,原告らは,数年後には大卒男子並の収入を得ることは確実であったので,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B57は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B58】(原告番号216・217)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ216・217の①-2,③-2,④-3・4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B58は,本件事故当時21歳の独身男性であり,高校を卒業し,専門学校に通った後,有限会社Z37の従業員として勤務し,両親,祖父母,弟及び妹との7人家族で暮らしていたもので,平成5年には400万円の給与を得ていたことが認められる。 以上のとおり被害者B58が若年であることなどから,被害者B58は,今後も67歳まで46年間にわたり,少なくとも,平成6年の賃金センサスの高卒男子労働者の全年齢平均賃金である524万3400円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を50パーセントとして,逸失 平成6年の賃金センサスの高卒男子労働者の全年齢平均賃金である524万3400円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を50パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,4687万5996円となる。 (イ) なお,原告らは,上記524万3400円を基礎とした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B58の慰謝料は,上記アの事情等から,2000万円をもって相当と認める。 【被害者B59】(原告番号219~224)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ219~224の①-2,③-1・2,④-4~14)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B59は,本件事故当時37歳の男性であり,父の経営する建設業に従事していたが,平成4年に父とともに株式会社Z38を設立した後は取締役として稼働しており,一家の支柱として,妻及び4人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年に480万円,平成4年に480万円,平成5年に495万円の報酬を得ていたことが認められる。 そして,被害者B59について,今後も67歳まで30年間にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である485万円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,5218万9298円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B59の実質的収入は報酬額より多かったことなどを理由として,大卒男子 の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,5218万9298円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B59の実質的収入は報酬額より多かったことなどを理由として,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B59は前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,原告A167につき下記のとおり固有の慰謝料を認めるべきであることに鑑み,被害者B59の慰謝料は2500万円をもって相当と認める。 また,原告A167は固有の慰謝料を請求するところ,前記争いのない事実等(1)アのとおり,原告A167は被害者B59の父であり,本件事故の態様その他一切の事情を併せ考慮すると,原告A167固有の慰謝料は100万円をもって相当と認める。 【被害者B60】(原告番号225~227)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ225~227の①-3・4,③,④-1~3,④-4-1~4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B60は,本件事故当時53歳の男性であり,株式会社Z39に勤務し,一家の支柱として,妻及び本件事故当時85歳で寝たきりであった母を扶養していたもので,平成3年に1624万6000円,平成4年に1624万6000円,平成5年に1681万6000円の給与所得を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B60は,今後も67歳まで14年間にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である1643万6000円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定 務の対価として,少なくとも上記の平均である1643万6000円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1億1388万5372円となる。 (イ) なお,原告らは,平成6年の所得金額である1682万円を基礎とした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B60は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B61】(原告番号228)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ228・276の①-1・2,③)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B61は,本件事故当時1歳の男児であり,母とともに台湾へ里帰りした後,帰国する際に本件事故に遭遇したことが認められる。 そして,被害者B61について,今後就労可能な18歳から67歳までの間,少なくとも平成6年の賃金センサスの学歴計男子労働者の全年齢平均賃金である557万2800円の収入を得られたであろうことについては,原告と被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を50パーセントとして,逸失利益の額を算定すると(ライプニッツ係数は,1歳から67歳までの66年間のライプニッツ係数19.2010から,1歳から18歳までの17年間のライプニッツ係数11.2740を差し引いた7.9270),別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2208万7792円となる。 (イ) なお,原告は,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均 ライプニッツ係数11.2740を差し引いた7.9270),別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2208万7792円となる。 (イ) なお,原告は,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告の主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B61の慰謝料は,前記アの事情等から,2000万円をもって相当と認める。 【被害者B62】(原告番号229・230)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ229・230の①-2・3,④-3-1-1・3,④-5-2)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B62は,本件事故当時60歳の男性であり,Z40株式会社の代表取締役として稼働し,一家の支柱として,妻及び本件事故当時87歳の母と同居して扶養していたもので,平成5年に828万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B62は,今後も10年間(平成6年当時の60歳男性の平均余命20.44年の2分の1)にわたり,労務の対価として,少なくとも上記828万円の9割に相当する745万2000円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,4027万9475円となる。 (イ) なお,原告らは,896万円を基礎とした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B62は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600 わたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B62は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B63】(原告番号229・230)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ229・230の①-3)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B63は,本件事故当時59歳の既婚女性であり,家事に従事しながら,夫の経営する会社の手伝いもしていたことが認められる。 そして,被害者B63について,今後も13年間(平成6年当時の59歳女性の平均余命26.24年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2133万3389円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B63はZ40株式会社で働くとともに,義母の世話,畑仕事及び家事労働を行っていたのであるから,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はない。 イ慰謝料被害者B63の慰謝料は,上記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B64】(原告番号236・237)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ236・237の①,③-1~6)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B64は,本件事故当時21歳の独身男性であり,高校を卒業後,南方仏教に帰依するようになり,ビルマにおいて仏教の修行 (ア) 証拠(甲イ236・237の①,③-1~6)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B64は,本件事故当時21歳の独身男性であり,高校を卒業後,南方仏教に帰依するようになり,ビルマにおいて仏教の修行中,体調を崩し,帰国する際に本件事故に遭遇したものである。 そして,被害者B64について,今後67歳まで46年間にわたり,少なくとも平成6年の賃金センサスの高卒男子労働者の全年齢平均賃金である524万3400円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を50パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,4687万5996円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B64は日本とビルマとの架け橋となって活躍したであろうとして,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B64の慰謝料は,前記アの事情等から,2000万円をもって相当と認める。 【被害者B65】(原告番号238・239)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ238・239の①-1,③-1~3,③-4-1~8,③-5~13,③-14-1~6,③-15)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B65は,本件事故当時24歳の独身女性であり,高校を卒業後,Z41株式会社に勤務していたが,平成5年4月から1年間のオーストラリアへの語学留学をし,留学を終えて帰国する際に本件事故に遭遇したものであることが認められる。 そして,被害者B65について,今後67歳まで43年間にわたり,少なくとも平成6年の女子 年間のオーストラリアへの語学留学をし,留学を終えて帰国する際に本件事故に遭遇したものであることが認められる。 そして,被害者B65について,今後67歳まで43年間にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,3984万8142円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B65は貿易関係の仕事に就き,平均収入をはるかに超える収入を得たであろうとして,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B65の慰謝料は,前記アの事情等から,2000万円をもって相当と認める。 ウ原告A177の固有の慰謝料について原告A177は,固有の慰謝料を請求するところ,同原告が被害者B65の姉であることは,前記争いのない事実等(1)アのとおりであるが,両者の間に民法711条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係があったと認めるに足りる証拠はなく,原告A177固有の慰謝料については,これを認めることができない。 【被害者B66】(原告番号243・244)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ243・244の①-3-1・2,③-1~4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B66は,本件事故当時30歳の既婚女性であり,日本人の夫との間の長男とともに,夫と日本で生活するために帰国する際に本件事故に遭遇したが,長男は一命をとりとめたことが認められる。 そし よれば,被害者B66は,本件事故当時30歳の既婚女性であり,日本人の夫との間の長男とともに,夫と日本で生活するために帰国する際に本件事故に遭遇したが,長男は一命をとりとめたことが認められる。 そして,被害者B66について,今後67歳まで37年間にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,3795万2472円となる。 (イ) なお,原告らは,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B66の慰謝料は,前記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B67】(原告番号245)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ245の①-3,③-1,④-4-1~6)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B67は,本件事故当時40歳の男性であり,Z42大学を卒業後,昭和60年から本件事故に遭うまで株式会社Z43の従業員として勤務し,一家の支柱として妻を扶養していたもので,平成5年に674万9946円の給与を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B67は,今後も67歳まで27年にわたり,少なくとも上記の674万9946円の9割に相当する607万4951円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセント(この点は,原告と被告中華航空との間で争いがない。)として 9割に相当する607万4951円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセント(この点は,原告と被告中華航空との間で争いがない。)として,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,5337万3304円となる。 (イ) なお,原告は,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告の主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B67は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B68】(原告番号246・247)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ246・247の①,③-1~5,④-4-2・3)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B68は,本件事故当時31歳の独身男性であり,Z44に勤務し,両親と暮らしていたもので,平成5年に360万2000円の給与を得ていたことが認められる。 そして,被害者B68について,今後も67歳まで36年間にわたり,少なくとも上記の360万2000円の収入を得られたであろうことについては,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を50パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2980万0786円となる。 (イ) なお,原告らは,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰 金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B68の慰謝料は,前記アの事情等から,2000万円をもって相当と認める。 【被害者B69】(原告番号250~254)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ250~254の①-3・7,③-1,④-4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B69は,本件事故当時63歳の男性であり,「Z45」で錦鯉の育成・売買の仕事をし,一家の支柱として,妻及び1人の未成年の子を扶養していたものであることが認められる。 そして,被害者B69について,今後も9年間(平成6年当時の63歳男性の平均余命18.14年の2分の1)にわたり,少なくとも平成6年の賃金センサスの小・中卒男子労働者の60歳以上の平均賃金である381万9600円の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1900万4267円となる。 (イ) なお,原告らは,錦鯉の販売等の事業を日本及び台湾で行っていたこと及び複数の者を扶養していたことなどからすれば,相当の収入があったと考えられるのであるから,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B69は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【 性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B69は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B70】(原告番号255~257)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ255~257の①-3,③-1,④-3-1~3,④-4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B70は,本件事故当時30歳の男性であり,高校卒業後,株式会社Z46に勤務し,一家の支柱として妻を扶養していたもので,平成5年に537万0800円の給与を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B70は,今後も67歳まで37年間にわたり,少なくとも上記の537万0800円の9割に相当する483万3720円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,4846万6356円となる。 (イ) なお,原告らは,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 また,被告中華航空は,被害者B70の遺産分割調停において,妻が200万円を取得し,その余の財産を両親が取得していることを理由に,同被害者は一家の支柱として扱われるべきでないと主張するが,一家の支柱かどうかは,本件事故当時において,被扶養者がいたか否かで決定されるべきものであり,本件事故後の事情によって左右されるものではないから,被告中華航空の主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B70は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えて いたか否かで決定されるべきものであり,本件事故後の事情によって左右されるものではないから,被告中華航空の主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B70は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 ウ原告A190の固有の慰謝料について原告A190は,固有の慰謝料を請求するところ,同原告が被害者B70の姉であることは,前記争いのない事実等(1)アのとおりであるが,両者の間に民法711条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係があったと認めるに足りる証拠はなく,原告A190固有の慰謝料については,これを認めることができない。 【被害者B71】(原告番号258・259)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ258・259の①,③-3・11)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B71は,本件事故当時23歳の独身女性であり,Z47大学夜間部で学び,平成4年4月からドイツのZ48大学に留学した後,Z47大学に1年間復学して卒業するために帰国する途上で本件事故に遭ったものであることが認められる。 そして,被害者B71について,今後,24歳から67歳までの間,少なくとも平成6年の賃金センサスの大卒女子の全年齢平均賃金である433万6900円の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると(ライプニッツ係数は,23歳から67歳までの44年間のライプニッツ係数17.6627から23歳から24歳までの1年間のライプニッツ係数0.9523を差し引いた16.7104),別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,5072万9933円となる。 (イ) なお,原告らは,平成5年の賃金センサスの での1年間のライプニッツ係数0.9523を差し引いた16.7104),別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,5072万9933円となる。 (イ) なお,原告らは,平成5年の賃金センサスの大卒女子の年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入が得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B71の慰謝料は,前記アの事情等から,2000万円をもって相当と認める。 【被害者B72】(原告番号265・266)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ265・266の①-1,③-1~3,④-3-1,④-3-4~7,④-4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B72は,本件事故当時45歳の男性であり,株式会社Z49及び有限会社Z50を経営し,一家の支柱として,両親を扶養していたもので,平成3年に1280万円,平成4年に1750万円,平成5年に1620万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B72は,今後も67歳まで22年間にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である1550万円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1億4281万8550円となる。 (イ) なお,原告らは,平成5年の収入である1620万円を基礎とした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記アの認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B72は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認め 定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B72は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B73】(原告番号267~269)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ267~269の①-2,③-1~3・6)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B73は,本件事故当時60歳の男性であり,Z51にトラック運転手として勤務していたが定年となり,その後はアルバイトをする傍ら,Z52協会の活動を行うなどしており,また,一家の支柱として妻を扶養していたものであることが認められる。 そして,被害者B73について,今後も10年間(平成6年当時の60歳男性の平均余命20.44の2分の1)にわたり,少なくとも,平成6年の賃金センサスの小・中卒男子労働者の60歳以上の平均賃金である381万9600円の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1769万6283円となる。 (イ) なお,原告らは,大卒男子年齢別平均賃金を基礎とした各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B73は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B74】(原告番号270~272)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ270~272の① り,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B74】(原告番号270~272)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ270~272の①,③-2~7,④-3-1)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B74は,本件事故当時29歳の独身男性であり,株式会社Z53の従業員として勤務し,平成5年に467万1630円の給与を得ていたことが認められる。 以上のとおり被害者B74が若年であることなどから,被害者B74は,今後も67歳まで38年間にわたり,少なくとも,平成6年の賃金センサスの高卒男子労働者の全年齢平均賃金である524万3400円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を50パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,4422万2311円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B74が勤務していた株式会社Z53の作成に係る生涯賃金予測,退職給与金予測(甲イ270~272の④-3-2,3)に基づく各年の基礎収入によるべきであると主張するが,この予測は,毎年平均3パーセント昇給し,昇格時は5パーセントから7パーセント昇給することを前提にしているが,このような昇給がされるであろう蓋然性については明らかではないこと,この予測においては手当についても3年から5年で5パーセントから15パーセント増額されるとしていること,配偶者と2人の子を持つことを前提にしていること,退職金については31年も後に支給されるものであり,退職金を得られる蓋然性を認めることができないことなどから,この給与予測や退職金予測を逸失利益算定の基礎とすべきとの原告らの主張は採用できない。 また,原告らは,被害者B74には婚約者が のであり,退職金を得られる蓋然性を認めることができないことなどから,この給与予測や退職金予測を逸失利益算定の基礎とすべきとの原告らの主張は採用できない。 また,原告らは,被害者B74には婚約者がいたから,妻がいる前提で,生活費控除率は40パーセントとすべきであると主張するが,婚約者がいたことをもって,妻がいる場合と同視することはできず,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B74の慰謝料は,前記アの事情等から,2000万円をもって相当と認める。 ウ原告A200固有の慰謝料原告A200は,固有の慰謝料を請求するところ,同原告が被害者B74の弟であることは前記争いのない事実等(1)アのとおりであるが,両者の間に民法711条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係があったと認めるに足りる証拠はなく,原告A200固有の慰謝料については,これを認めることができない。 【被害者B75】(原告番号273~275)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ273~275の①-2・3,④-3-2・3,④-4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B75は,本件事故当時61歳の男性であり,Z54株式会社,Z55株式会社及びZ56株式会社を経営し,一家の支柱として,本件事故当時82歳の母を扶養していたもので,これらの会社から平成4年に合計3960万円,平成5年に合計4310万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B75は,今後も9年間(平成6年当時の61歳男性の平均余命19.66年の2分の1)にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である4135万円の5割に相当する2067万5000円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「 る4135万円の5割に相当する2067万5000円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,8817万2259円となる。 (イ) なお,原告らは,平成5年の不動産所得を含む総所得金額である5362万9376円を基礎収入とすべきであると主張するが,不動産所得は被害者の労務提供の対価ではなく,逸失利益算定の基礎と認めることはできないし,複数の会社を経営し,これらから多額の給与を得ていることから,その給与には労務提供の対価以外の部分が含まれている可能性が高いと考えられるところ,上記(ア)の認定金額を超える収入部分については,これが労務提供の対価であると認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B75は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,原告A203につき,下記のとおり固有の慰謝料を認めるべきであることに鑑み,被害者B75の慰謝料は2500万円をもって相当と認める。 また,原告A203は固有の慰謝料を請求するところ,前記争いのない事実等(1)アのとおり,原告A203は被害者B75の母であり,本件事故の態様その他一切の事情を併せ考慮すると,原告A203固有の慰謝料は100万円をもって相当と認める。 【被害者B76】(原告番号281~283)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ281~283の①-2,③-1・2・14,④-3-2)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B76は,本件事故当時58歳の既婚女性であり,家事に従事していたもので,平成6年から,少なくとも年額184万3600円の年金の支給が見込まれていたことが認められる。 これによれば,被害者B ,被害者B76は,本件事故当時58歳の既婚女性であり,家事に従事していたもので,平成6年から,少なくとも年額184万3600円の年金の支給が見込まれていたことが認められる。 これによれば,被害者B76は,今後13年間(平成6年当時の58歳女性の平均余命27.14年の2分の1)にわたり,平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られ,また,平均余命である27年間にわたり,少なくとも上記の184万3600円の年金収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これらを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,家事労働について2133万3389円,年金につき1889万7084円の合計4023万0473円となる。 (イ) なお,原告らは,上記年金収入に,平成5年の賃金センサスの大卒女子の年齢別平均賃金による各年の平均賃金を加算した額を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性については,これを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B76の慰謝料は,前記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B77】(原告番号284・285)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ284・285の①-3,③-1・2,④-5)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B77は,本件事故当時60歳の男性であり,平成6年3月に長年勤めた株式会社Z57を定年退職したばかりであり,一家の支柱として妻を扶養していたもので,平成5年に同社から433万1444円の給与を得ていたことが認められる。 そして,被害者B77について,今後も10年間(平成6年当時の60歳男 たばかりであり,一家の支柱として妻を扶養していたもので,平成5年に同社から433万1444円の給与を得ていたことが認められる。 そして,被害者B77について,今後も10年間(平成6年当時の60歳男性の平均余命20.44の2分の1)にわたり,少なくとも上記の433万1444円の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセント(原告らと被告中華航空との間で争いがない。)として,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,2006万7666円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B77が相当の収入を得る新たな職に就く蓋然性が高く,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B77は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B78】(原告番号288~290)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ288~290の①-2・3,③-1,④-3・5・7)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B78は,本件事故当時54歳の男性であり,歯科医師として稼働し,同じ歯科医師である妻やその手伝いをしている母とともに生活し,一家の支柱として父を扶養していたもので,平成3年に1141万6435円,平成4年に1083万9850円,平成5年に1334万7157円の収入を得ていた(以上の平均は1186万7814円)ことが認められる。 そして,被害者B78について,今後も67歳まで13年間にわたり,少なくとも1186 9850円,平成5年に1334万7157円の収入を得ていた(以上の平均は1186万7814円)ことが認められる。 そして,被害者B78について,今後も67歳まで13年間にわたり,少なくとも1186万7814円の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,6688万8186円となる。 (イ) なお,原告らは,事故前の実収入である1634万6250円を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 また,原告らは,被害者B78の父親が歯科医師として75歳まで働いたこと及び被害者B78の居住していた地区に他に歯科医師がないことから,被害者B78も75歳まで稼働できたはずであって就労可能年数は21年とすべきであると主張するが,これらの事実から,被害者B78も75歳まで稼働できたとまではいえず,67歳まで就労可能であったとするのが相当であり,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B78は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B79】(原告番号295)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ295の①-2,③)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B79は,本件事故当時21歳の既婚女性であり,平成6年2月にフィリピンで日本人の夫と婚姻し,ビザを取得後,日本で夫と生活するために来日する際に本件事故に遭遇したものであることが認められる。 そして,被害者B79について,今後67歳まで46年間にわた 年2月にフィリピンで日本人の夫と婚姻し,ビザを取得後,日本で夫と生活するために来日する際に本件事故に遭遇したものであることが認められる。 そして,被害者B79について,今後67歳まで46年間にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことは,原告と被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,4060万6910円となる。 (イ) なお,原告は,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告の主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B79の慰謝料は,前記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B80】(原告番号296~301)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ296~301の①-2,③,④-3~6)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B80は,本件事故当時45歳の男性であり,株式会社Z58を経営し,一家の支柱として,妻及び3人の未成年の子を扶養していたもので,平成3年に1660万円,平成4年に1410万円,平成5年に1458万円の報酬を得ていたことが認められる。 これによれば,被害者B80は,今後も67歳まで22年間にわたり,労務の対価として,少なくとも上記の平均である1509万3333円の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1億3907万1479円となる。 ( めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,1億3907万1479円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B80の逸失利益の額は上記(ア)の認定金額を超えるものであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はない。 イ慰謝料被害者B80は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,原告A217及び同A218につき下記のとおり固有の慰謝料を認めるべきであることに鑑み,被害者B80の慰謝料は2400万円をもって相当と認める。 また,原告A217及び同A218は固有の慰謝料を請求するところ,前記争いのない事実等(1)アのとおり,原告A217及び同A218は被害者B80の両親であり,本件事故の態様その他一切の事情を併せ考慮すると,原告A217及び同A218の固有の慰謝料は,各100万円をもって相当と認める。 【被害者B81】(原告番号302・303)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ302・303の①-2,③-1)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B81は,本件事故当時29歳の既婚女性であり,平成5年12月に婚姻し,家事に従事するなどしていたことが認められる。 そして,被害者B81について,今後67歳まで38年間にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,3830万8123円となる。 (イ) なお,原告らは,全 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,3830万8123円となる。 (イ) なお,原告らは,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B81の慰謝料は,前記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B82】(原告番号306・307)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ306・307の①-2,③-1)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B82は,本件事故当時21歳の既婚女性であり,日本人の夫とともに日本で生活し,家事に従事していたことが認められる。 そして,被害者B82について,今後67歳まで46年間にわたり,少なくとも平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,4060万6910円となる。 (イ) なお,原告らは,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B82の慰謝料は,上記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B83】(原告番号316~318)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ316~318の①-3,③-1・2, 害者B82の慰謝料は,上記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B83】(原告番号316~318)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ316~318の①-3,③-1・2,③-4-2,④-3-1-1~3)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B83は,本件事故当時26歳の男性であり,アメリカのZ59大学経済学部を卒業後,株式会社Z60に従業員として勤務し,一家の支柱として妻を扶養していたもので,平成4年に286万4660円,平成5年に332万2180円の給与収入を得ていたことが認められる。 以上のとおり,被害者B83が若年であることなどから,被害者B83は,今後も67歳まで41年間にわたり,少なくとも,平成6年の賃金センサスの学歴計男子労働者の全年齢平均賃金である557万2800円を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,5782万6605円となる。 (イ) なお,原告らは,株式会社Z60が作成した年度別給与所得試算表(甲イ316~318の④-3-1-5)を提出し,これを基礎とした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記試算表は,家族構成や昇格,人事異動等不確定要素を多分に含んだ試算であって,その数値をそのまま採用することは困難であり,そのほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B83は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B84】(原告番号319・320)についてア逸失利益(ア) 被害者B83は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B84】(原告番号319・320)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ319・320の①-2,③-1~3,④-4-1~6)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B84は,本件事故当時67歳の男性であり,平成3年12月にZ61株式会社を退職した後は,年金収入を得るなどして,一家の支柱として妻を扶養していたもので,平成5年の年金受給額は247万5400円であったことが認められる。 そして,被害者B84について,今後7年間(平成6年の67歳男性の平均余命15.23年の2分の1)にわたり,少なくとも,上記年金収入を含めた総額で,平成6年の賃金センサスの小・中卒男子労働者の65歳以上の平均賃金である304万1300円の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。したがって,被害者B84については,今後7年間にわたり,年金以外の収入として上記の差額である56万5900円の収入を得られ,また,平均余命である15年間にわたり,247万5400円の年金収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これらを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセント(この点は,原告らと被告中華航空との間で争いがない。)として,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,年金以外の収入につき196万4680円,年金収入につき1541万6197円の合計1738万0877円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B84は,Z62から月額5万円の支給を受けていたと主張するが,平成6年の収入証明(甲イ319・320の④-6-1,2)のみではこれを認めるに足りない。また,原告らは,被害者B84 ,原告らは,被害者B84は,Z62から月額5万円の支給を受けていたと主張するが,平成6年の収入証明(甲イ319・320の④-6-1,2)のみではこれを認めるに足りない。また,原告らは,被害者B84は,体力・気力とも充実しており,大卒男子年齢別平均賃金の65歳以上の平均賃金を得ることが可能であったと主張するが,就労の蓋然性を認めるに足る証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B84は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められるので,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 【被害者B85】(原告番号319・320)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ319・320の①-2,③-1~3,④-5-1~7)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B85は,本件事故当時63歳の既婚女性であり,家事に従事していたもので,平成5年には39万2900円の年金を受給していたことが認められる。 そして,被害者B85について,今後11年間(平成6年当時の63歳女性の平均余命22.70年の2分の1)にわたり,少なくとも,平成6年の女子全年齢平均賃金である324万4400円の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがなく,また,上記から,今後,平均余命である22年間にわたり,少なくとも上記年金39万2900円を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これらを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,家事労働につき1886万4498円,年金につき362万0219円の合計2248万4717円となる。 (イ) なお,原告らは,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア) 86万4498円,年金につき362万0219円の合計2248万4717円となる。 (イ) なお,原告らは,全労働者年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B85の慰謝料は,前記アの事情等から,2200万円をもって相当と認める。 【被害者B86】(原告番号321)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ321の①-1,④-4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B86は,本件事故当時32歳の独身男性であり,Z63株式会社に勤務し,一家の支柱として母を扶養していたもので,平成5年に377万5000円の給与を得ていたことが認められる。 そして,被害者B86について,今後も67歳まで35年間にわたり,少なくとも上記の377万5000円の収入を得られたであろうことは,原告と被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」逸失利益欄記載のとおり,3708万7336円となる。 (イ) なお,原告は,大卒男子年齢別平均賃金による各年の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告の主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B86は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 (3) 葬儀費用等ア葬儀費用本件事故と相当因果関係のある葬儀費用としての損害は,被害者1人当たり150万円を相当と認める。 なお,原告らは,被害者B 慰謝料は2600万円をもって相当と認める。 (3) 葬儀費用等ア葬儀費用本件事故と相当因果関係のある葬儀費用としての損害は,被害者1人当たり150万円を相当と認める。 なお,原告らは,被害者B65(原告番号238・239),同B77(同284・285),同B78(同288~290),同B81(同302・303)及び同B83(同316~318)については,それぞれ,上記金額を超える葬儀費用を実際に費消した旨の主張をするが,これらの全額が本件事故と相当因果関係のある葬儀費用であることを認めるに足りない。 また,原告らは,その余の被害者についても,葬儀費用として1人当たり250万円の損害を被ったと主張するが,上記認定額を超える損害があったことを認めるに足りる証拠はない。 イ手荷物の滅失による損害証拠(乙24の1~32,35~49,51~55,57~64,66~72,74~77,81~84)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故によって,被害者らの携行品及び委託手荷物が滅失したことが認められ,これによる損害は日本居住被害者1人当たり20万円と認める。 これに対し,原告らは,本件事故により日本居住被害者1人当たり150万円の損害を被ったと主張するが,上記認定額を超える損害があったことを認めるに足りる証拠はない。 他方,被告中華航空は,責任制限約款によって賠償額が制限されると主張するが,前記3のとおり,ワルソー条約25条に該当する事実が認められるのであって,被告中華航空について,手荷物の滅失による損害に対する賠償額の制限を認めることはできない。 (4) 相続以上を合計した日本居住被害者の各損害額は,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」の各損害額合計欄記載の金額となるところ,その相続人である原告らは,それぞれ,同表の各相続分欄記載の割合で,同表の各「弁護士費 相続以上を合計した日本居住被害者の各損害額は,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」の各損害額合計欄記載の金額となるところ,その相続人である原告らは,それぞれ,同表の各相続分欄記載の割合で,同表の各「弁護士費用以外の損害額」欄記載の金額を相続した。 なお,被害者B57(原告番号214・215)は,大韓民国の国籍を有するので,相続の準拠法は大韓民国法であり,これにより,被害者の妻である原告A158(原告番号214)は5分の3,被害者の子である原告A159(同215)は5分の2の割合で損害賠償請求権を相続した。 被害者B66(原告番号243・244)は,フィリピンの国籍を有するので,相続の準拠法はフィリピン法であり,これにより,被害者の夫である原告A178(原告番号243)及び被害者の嫡出子である同A179(同244)は,各2分の1の割合で損害賠償請求権を相続した。 被害者B70(原告番号255・256)については,その妻であったOと,原告A188(原告番号255)及び同A189(同256)との間で,被害者B70の一切の遺産(被告中華航空に対する補償金請求権を含む。)は,原告A188及び同A189が取得し,その持分は各2分の1とする旨の遺産分割調停が成立した(甲イ255~257の①-4)から,本件の被告中華航空に対する損害賠償請求権は原告A188及び同A189がそれぞれ2分の1ずつ取得した。 被害者B79(原告番号295)は,フィリピンの国籍を有するので,相続の準拠法はフィリピン法であり,これによれば,相続人は被害者の両親及び夫であり,被害者の夫である原告A212(原告番号295)は2分の1の割合で損害賠償請求権を相続した。 被害者B82(原告番号306・307)は,フィリピンの国籍を有するので,相続の準拠法はフィリピン法であり,これにより,被害者の夫で 2(原告番号295)は2分の1の割合で損害賠償請求権を相続した。 被害者B82(原告番号306・307)は,フィリピンの国籍を有するので,相続の準拠法はフィリピン法であり,これにより,被害者の夫である原告A221(原告番号306)及び被害者の嫡出子である同A222(同307)は,各2分の1の割合で損害賠償請求権を相続した。 (5) 損害の填補ア見舞金(ア) 被告中華航空が,被害者B79(原告番号295),同B84(同319・320)及び同B85(同319・320)を除く日本居住被害者の相続人である原告らに対し,本件事故の見舞金として,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅰ」の各既受領額欄記載のとおりの金員を支払ったことは,前記争いのない事実等(4)ア(ア)のとおりである。 (イ) 被害者B79(原告番号295)について被告中華航空は,本件事故の見舞金として,原告A212(原告番号295)に対して,500万円及び160万円の合計660万円を支払ったと主張するところ,原告A212は,前者の500万円及び後者の160万円のうち原告A212の相続分である80万円の合計580万円を受け取ったことは認めるものの,後者の残り80万円については受け取ったことを否認している。 そして,争いのある80万円について,この支払があったと認めるに足りる証拠はないから,原告A212については,上記争いのない580万円の限度で損害の填補があったものとする。 (ウ) また,原告A171(原告番号228)は,既受領額1160万円のうち1000万円については,損害の填補として控除しないと主張するが,その根拠については何らの主張立証もないから,既受領額全額について損害の填補があったものというべきである。 イ労災給付以下の被害者の遺族に対して,労働者災害補償保険法に基づいて,遺 と主張するが,その根拠については何らの主張立証もないから,既受領額全額について損害の填補があったものというべきである。 イ労災給付以下の被害者の遺族に対して,労働者災害補償保険法に基づいて,遺族補償年金等が以下のとおり支払われたことは,前記争いのない事実等(4)ア(イ)のとおりである。 被害者B25(原告番号69~71)  765万9874円同B67(同245) 1413万4040円同B68(同246・247) 826万8680円同B74(同270・271) 968万2870円同B80(同296~299) 1012万7600円同B83(同316~318) 775万0590円そして,証拠(乙22の1~6)によれば,被害者B25については原告A69(原告番号69),被害者B67については原告A180(同245),被害者B68については原告A181(同246),被害者B74については原告A198(同270),被害者B80についてはA213(同296)がそれぞれ上記の遺族補償年金等を受け取り,被害者B83については原告A223(同316)が49万7590円,同A225(同318)が725万3000円を受け取ったことが認められる。 ところで,上記遺族補償年金等は,死亡した労働者の損害の填補をも目的としているものと解されるところ,少なくとも現実に遺族補償年金等が給付された金額については,損害賠償額から控除する必要があると解される。 したがって,原告A69は765万9874円,同A180は1413万4040円,同A181は826万8680円,同A198は968万2870円,同A213は1012万7600円,同A223は49万7590円,同A225は725万3000円が,それぞれの損害賠償額から控除さ 円,同A181は826万8680円,同A198は968万2870円,同A213は1012万7600円,同A223は49万7590円,同A225は725万3000円が,それぞれの損害賠償額から控除されるべきである。 ウ以上によれば,被害者B84及び同B85を除く日本居住被害者に対応する各原告らについては,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」の各損害の填補欄記載のとおり,上記見舞金及び労災給付金が,原告らの相続分に応じて填補されたものと認められる。 (6) 弁護士費用本件訴訟における弁護士費用は,本件の内容,審理経過その他の一切の事情を総合すると,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」の各「弁護士費用以外の損害額」欄記載の金額から同表の各「損害の填補」欄記載の金額を控除した額の5パーセントをもって,本件事故と相当因果関係のある損害として認めるのが相当であり,したがって,原告らにつき,それぞれ,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」の各弁護士費用欄記載の金額を認めるのが相当である。 (7) 結論以上によれば,被告中華航空は,別紙「損害認定一覧表Ⅰ」記載の原告ら(ただし,原告A112(原告番号118),同A177(同239),同A190(同257)及び同A200(同272)を除く。)に対し,それぞれ,同表の各認容金額欄記載の金員及びこれに対する不法行為の日の後(本件事故の日の翌日)である平成6年4月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。 7 争点(7)(台湾居住被害者の損害)について(1) 逸失利益及び慰謝料の算定における基本的考え方についてア逸失利益について(ア) 逸失利益の算定について,原則として,事故前の現実の収入額に基づき,将来にわたって得られたであろう収入額を認定し,これを基礎収入として算定すべきであることは,日本居住 ア逸失利益について(ア) 逸失利益の算定について,原則として,事故前の現実の収入額に基づき,将来にわたって得られたであろう収入額を認定し,これを基礎収入として算定すべきであることは,日本居住被害者の場合と台湾居住被害者の場合とで何ら異なるところはない。 もっとも,本件事故当時における被害者の現実の収入額が,台湾における平均収入に満たない場合であっても,被害者が将来にわたって平均的な収入を得られるであろう蓋然性が認められる場合や,被害者が家事従事者,学生,生徒及び幼児等である場合については,その現実の収入額を逸失利益算定の基礎とするのではなく,以下に述べるとおりの台湾において認められる平均収入を逸失利益算定の基礎とするのが相当である。 そして,証拠(甲74の1・2,75~77)に弁論の全趣旨を総合すると,台湾統計月報は,賃金及び生産力に関して,予算会計及び統計統括局が実施する統計調査を,行政院計處(内閣主計局)が編集発行しているもので,その目的は,台湾政府が,労働資源の配分を計画し,経済変動を予測し,また労働政策の指針を立てるための重要な基礎資料を提供することにあるとされていること,上記統計調査は,①鉱業土砂採掘業,②製造業,③電気ガス水道業,④建設業,⑤卸売小売業飲食店,⑥運輸倉庫通信業,⑦金融保険不動産業,⑧商工サービス業,⑨公的私的サービス業の9業種について,労働者の属性,賃金,労働時間,労働生産力に関するデータを収集したもので,これらをまとめた統計資料が登載されていること,台湾統計月報の中華民国90年(平成13年)3月号には,同70年(昭和56年)から同90年(平成13年)までの暦年の,上記9業種毎の男女別の平均月収及び労働者数が登載されていること,この資料から,平成6年における全業種の男女別労働者の平均収入を算定すると 0年(昭和56年)から同90年(平成13年)までの暦年の,上記9業種毎の男女別の平均月収及び労働者数が登載されていること,この資料から,平成6年における全業種の男女別労働者の平均収入を算定すると,男子労働者につき46万7373台湾元,女子労働者につき31万9136台湾元となることが認められる。 以上によれば,上記の台湾統計月報の資料に基づく全業種の男女別労働者の平均収入の数値(以下「台湾の男子平均賃金」及び「台湾の女子平均賃金」という。)は,わが国における賃金センサスの学歴計・男女別・全年齢平均賃金に相当し,逸失利益の算定に当たり用いるにつき十分信頼性を有する数値であると解される。 したがって,台湾居住被害者が,本件事故がなかったとしたら台湾において少なくとも平均賃金を得られたであろう蓋然性が認められる場合等には,上記の台湾の男子平均賃金又は台湾の女子平均賃金を基礎として逸失利益を算定するのが相当である。 なお,原告らは,台湾統計月報に登載されている業種別・男女別の平均月収の数値を,逸失利益算定の基礎とすべきであると主張するが,台湾統計月報(甲74の1・2,75~77)のみでは,当該台湾居住被害者にどの業種等の基準を適用すべきかは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はないから,上記業種別・男女平均月収の数値を用いることは不相当であるといわざるを得ない。 (イ) 就労可能年数について台湾居住被害者の就労可能年数については,原則として,67歳を終期とするが,台湾における簡易生命表(甲70)の余命年数(以下「台湾平均余命」という。)の2分の1の年数(小数点以下切り捨て)の方が長期の場合には,これによるものとし,すなわち,男性にあっては,事故時年齢が58歳以下の場合は67歳までの年数,59歳以上の場合は台湾平均余命の2分の1の年数とし, の年数(小数点以下切り捨て)の方が長期の場合には,これによるものとし,すなわち,男性にあっては,事故時年齢が58歳以下の場合は67歳までの年数,59歳以上の場合は台湾平均余命の2分の1の年数とし,女性にあっては,55歳以下の場合は67歳までの年数,56歳以上の場合は台湾平均余命の2分の1の年数とするのが相当である。なお,未就労者の就労の始期については18歳とするのが相当である。 なお,年金収入については,事故時年齢から台湾平均余命までの年数によって,逸失利益を算定するものとする。 (ウ) 生活費控除率及び中間利息控除について生活費控除率及び中間利息控除については,日本居住被害者と同様とするのが相当である。 (エ) 換算率口頭弁論終結日である平成15年6月13日現在のレートは,1台湾元が3.3918円である(公知の事実である。)から,これに従って換算する(円未満切捨て)。 イ慰謝料について(ア) 前記6(1)イのとおり,本件事故の悪質性,悲惨さからすれば,被害者の無念さは想像するに余りあり,本件事故により被った精神的苦痛は計り知れないものであって,その精神的苦痛の程度は,被害者の国籍にかかわらず,また,わが国に居住していたか外国に居住していたかにかかわらず,何ら異なるところはない。 しかしながら,この精神的苦痛を慰謝するために支払われるべき慰謝料の金額を算定するについては,別途の考慮が必要となるといわざるを得ない。 すなわち,慰謝料はそれを受け取ることによる満足感や慰謝料を費消することにより得られる満足感をもって,被った精神的苦痛を軽減し,精神的損害を賠償しようとするものであると考えられるところ,慰謝料を受け取る者の居住地がどこであり,慰謝料がどこで費消されるかによって,その地とわが国との間の経済的事情の相違から,慰謝料として支払われ 的損害を賠償しようとするものであると考えられるところ,慰謝料を受け取る者の居住地がどこであり,慰謝料がどこで費消されるかによって,その地とわが国との間の経済的事情の相違から,慰謝料として支払われる金銭の実質的価値が大きく異なる結果となることは否定できない。そして,台湾居住被害者本人である原告A236(原告番号339)並びにその余の台湾居住被害者及びその遺族である原告らは,前記争いのない事実等(1)アのとおり,台湾に生活の基盤をおいていたことが認められるのであって,その生活の基盤が台湾にあり,支払われる慰謝料が台湾において費消されるものと考えられる以上,台湾とわが国との物価水準や所得水準,生活水準等の経済的事情の相違を考慮せざるを得ないというべきである。 以上から,本件事故に関する一切の事情,台湾とわが国との物価水準や所得水準,生活水準等の経済的事情の相違等を総合考慮すると,本件事故により死亡した台湾居住被害者の被った精神的苦痛に対する慰謝料は,原則として,被害者が一家の支柱である場合は1300万円,これに準ずる場合は1100万円,その他の場合は1000万円をもって相当と認める。ただし,他に固有の慰謝料を認めるべき者がいる場合には,後記(2)のとおり,それぞれ別途考慮することとし,また,本件事故により負傷した原告A236(原告番号339)については,後記(2)の該当欄のとおりとする。 (イ) なお,原告らは,本件事故によって受けた被害者の精神的苦痛に違いはなく,その賠償額も同一であるべきであると主張するが,前記のとおり,精神的苦痛が同程度であると考えられる場合であっても,慰謝料として支払われる金銭の実質的価値が受け取る者の居住地等で異なる以上,その地とわが国との間の経済的事情の相違等を考慮せざるを得ないのであって,原告らの主張は採用で ると考えられる場合であっても,慰謝料として支払われる金銭の実質的価値が受け取る者の居住地等で異なる以上,その地とわが国との間の経済的事情の相違等を考慮せざるを得ないのであって,原告らの主張は採用できない。 また,原告らは,人間の尊厳・価値の平等という理念を徹底するなら,賠償額は同一とすべきであり,台湾居住被害者の逸失利益は賃金水準の影響がある分,慰謝料で填補されるべきである,また,台湾居住被害者は,異国の地で,凄惨な事故に遭遇したのであって日本居住被害者よりも精神的苦痛がむしろ大きいなどとして,日本人より多額の慰謝料が認められるべきであると主張する。 しかし,損害賠償額の算定は,各人が被った損害を金銭的に評価するものであって,それぞれ損害額が異なることは当然であり,賠償額を同一とすべきとはいえない。また,確かに,台湾居住被害者が異国の地で本件事故に遭遇したことは,その精神的苦痛を増大させる要因となり得ることは首肯できるところではあるが,このことのみをもって,日本居住被害者の慰謝料より多額又はこれと同額とすべき根拠となるとまではいえないのであって,原告らの主張は採用できない。 さらに,原告らは,日本国内における日本人被害者の場合の慰謝料算定に当たって,賃金・物価水準による被害者の個人的格差及び地域格差は考慮されていないこと,日本の裁判実務において,アメリカのように日本より賃金・物価水準の高い国の被害者に対して,慰謝料を増額した例は全くないにもかかわらず,日本より賃金・物価水準の低いアジア諸国の被害者に対する慰謝料額だけを減額するというのは,アジア諸国の人々に対する差別といわざるを得ないなどとして,台湾居住被害者についても,日本居住被害者の慰謝料と同額とすべきであると主張する。 しかしながら,慰謝料が費消される地とわが国との間の経済的事情の相違 国の人々に対する差別といわざるを得ないなどとして,台湾居住被害者についても,日本居住被害者の慰謝料と同額とすべきであると主張する。 しかしながら,慰謝料が費消される地とわが国との間の経済的事情の相違から,慰謝料として支払われる金銭の実質的価値が大きく異なることとなることは前記のとおりであって,そうである以上,このような経済的事情の相違を慰謝料算定に当たって考慮することは,慰謝料として支払われる金銭の実質的価値に着目して,損害賠償における実質的公平を図ろうとするものであって,決して原告らが主張するような賃金水準や物価水準が低い国に居住する者に対する差別というものではない。 (ウ) また,原告らは,被告中華航空との合意により,台湾居住被害者の遺族が受け取るべき損害賠償額は,日本居住被害者の慰謝料基準と同一にならなければならないと主張する。 しかしながら,証拠(甲65)に弁論の全趣旨を総合すると,1994年(平成6年)5月15日,被告中華航空は,和解案を提示した書簡において,「日本籍とフィリピン籍の旅客に対する賠償額は,本国籍の旅客の賠償基準より優遇しないものとします。」と記載していることが認められるものの,これは,上記和解協議に当たっては,日本国籍とフィリピン国籍の乗客を優遇しない旨を確認したにすぎないと解され,原告ら主張のような訴訟において台湾居住被害者の損害賠償額を日本人等と同一額とする内容の合意があったとまでは認められない。 また,証拠(甲66~68)に弁論の全趣旨を総合すると,被告中華航空は,同月22日,中外平等原則に基づいて,継続的に賠償金額について協議することに同意したことが認められるものの,この合意は,本件事故の示談交渉中における中間的な確認にすぎないものと解され,このような確認が,示談交渉決裂後に提起された本件訴訟においてまで について協議することに同意したことが認められるものの,この合意は,本件事故の示談交渉中における中間的な確認にすぎないものと解され,このような確認が,示談交渉決裂後に提起された本件訴訟においてまで,当事者を法的に拘束するといった効力を有するものとは認めることができず,原告らの主張は採用できない。 (2) 台湾居住被害者の個別の逸失利益及び慰謝料について(本項における「原告」又は「原告ら」とは,標記の原告番号に該当する原告又は原告らを指す。)【被害者B43】(原告番号137~141)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ137~141の①-1・2,③-2・6・7,④-4-2)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B43は,本件事故当時36歳の男性であり,Z64有限公司の業務代表として,海外旅行のガイドをして生計を立てており,一家の支柱として,妻及び2人の未成年の子を扶養していたことが認められる。 これによれば,被害者B43は,今後も67歳まで31年間にわたり,少なくとも,台湾の男子平均賃金である46万7373台湾元の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益欄記載のとおり,510万1357台湾元となり,これを円に換算すると,1730万2782円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者がキャリアのある日本旅行専門のガイドであったことなどから,少なくとも240万台湾元を基礎とし,年収の増加を加味した各年の基礎収入によるべきであると主張するが,かかる主張を認めるに足りる客観的な証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B43は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,原告A116及び同 主張するが,かかる主張を認めるに足りる客観的な証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B43は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,原告A116及び同A117につき下記のとおり固有の慰謝料を認めるべきであることに鑑み,被害者B43の慰謝料は1200万円をもって相当と認める。 また,原告A116及び同A117は固有の慰謝料を請求するところ,前記争いのない事実等(1)アのとおり,原告A116及び同A117は被害者B43の両親であり,本件事故の態様その他一切の事情を併せ考慮すると,原告A116及び同A117固有の慰謝料は,各50万円をもって相当と認める。 【被害者B44】(原告番号150~154)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ150~154の①-2,③-1・2,④-4-1~5)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B44は,本件事故当時43歳の男性であり,Z65股ブン有限公司の代表取締役及びZ66有限公司の取締役として稼働し,一家の支柱として,妻及び2人の未成年の子を扶養していたもので,平成5年にZ65股ブン有限公司から83万1000台湾元,Z66有限公司から10万0800台湾元の合計93万1800台湾元の報酬を得ていたことが認められるこれによれば,被害者B44は,今後も67歳まで24年間にわたり,労務の対価として,少なくとも,上記報酬額93万1800台湾元の9割に相当する83万8620台湾元の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益欄記載のとおり,810万0247台湾元となり,これを円に換算すると2747万4417円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B44はZ6 逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益欄記載のとおり,810万0247台湾元となり,これを円に換算すると2747万4417円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B44はZ66有限公司から年額15万1200台湾元の報酬を得ていたが,この報酬は低くされており,実際は給与をはるかに上回る業務を提供していた上,父の死亡後は後継者として業務を行う予定であったものであるし,また,被害者B44は,Z67股ブン有限公司の最大株主であり,代表取締役であったことなどを理由に,台湾統計月報の土木建築業・監督職・男性の平均賃金146万9748台湾元を基礎として,増収を加味した各年の基礎収入によるべきであると主張する。しかしながら,Z66有限公司から年額で15万1200台湾元の給与を得ていたと認めるに足りる証拠はなく,このほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はないから,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B44は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,原告A121及び同A122につき下記のとおり固有の慰謝料を認めるべきであることに鑑み,被害者B44の慰謝料は1200万円をもって相当と認める。 また,原告A121及び同A122は固有の慰謝料を請求するところ,前記争いのない事実等(1)アのとおり,原告A121及び同A122は被害者B44の両親であり,本件事故の態様その他一切の事情を併せ考慮すると,原告A121及び同A122固有の慰謝料としては各50万円をもって相当と認める。 【被害者B45】(原告番号157・158)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ157・158の①,③-1,④-4-1・2)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B45は,本件事故当時27歳の既婚 。 【被害者B45】(原告番号157・158)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ157・158の①,③-1,④-4-1・2)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B45は,本件事故当時27歳の既婚女性であり,被告中華航空に客室乗務員として勤務し,夫とともに両親を扶養していたもので,少なくとも,平成4年に74万8959台湾元,平成5年に73万0822台湾元の収入を得ていた(以上の平均73万9890台湾元)ことが認められる。 そして,被害者B45について,今後も67歳まで40年間にわたり,少なくとも,上記平均である73万9890台湾元の収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益欄記載のとおり,888万7040台湾元となり,これを円に換算すると,3014万3062円となる。 (イ) なお,原告らは,所得税税額証明書に記載されている金額のほかに,免税とされている収入があったことから,台湾統計月報の航空運輸業・平均・女性の平均賃金である92万5092台湾元を超える96万台湾元を基礎とし,増収を加味した各年の基礎収入によるべきであると主張する。確かに,給与票明細表(同④-4-3・5・7・10・12)によれば,免税とされている所得があったことが窺われるが,実費支給の性格が含まれていることを否定できず,また,この所得について就労可能年数にわたって得られたであろう蓋然性について認めるに足りる証拠はなく,このほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はないから,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B45の慰謝料は,前記アの事情等から,1100万円をもって相当と 記(ア)の認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はないから,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B45の慰謝料は,前記アの事情等から,1100万円をもって相当と認める。 【被害者B46】(原告番号159・160)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ159・160の①,③-1~5,④-4-1~4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B46は,本件事故当時23歳の独身女性であり,平成5年10月に被告中華航空に入社し,客室乗務員として勤務していたもので,平成6年2月に3万3962台湾元及び439米ドル,同年3月に3万8216台湾元及び371米ドルの収入を得ていた(これらの月収の平均を年額にすると,43万3068台湾元及び4860米ドル)ことが認められる。 そして,被害者B46について,今後も67歳まで44年間にわたり,少なくとも,上記43万3068台湾元及び4860米ドルの収入を得られたであろうことは,原告らと被告中華航空との間で争いがない。 そこで,上記金額(口頭弁論終結日の換算レートでは1米ドルは34.710台湾元である(公知の事実である。)ので,合計60万1758台湾元(1台湾元未満切捨て)となる。)を基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益欄記載のとおり,744万0069台湾元となり,これを円に換算すると,2523万5226円となる。 (イ) なお,原告らは,ボーナス等がつくなどして収入が増えるはずであったとして,台湾統計月報の航空運輸業・平均・女性の平均賃金である92万5092台湾元を基礎とし,増収を加味した各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認める 平均・女性の平均賃金である92万5092台湾元を基礎とし,増収を加味した各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記(ア)の認定金額を超える収入を将来にわたって得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B46の慰謝料は,前記アの事情等から,1000万円をもって相当と認める。 【被害者B47】(原告番号161・162)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ161・162の①-2,③)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B47は,本件事故当時27歳の独身女性であり,その家族が経営するZ68股ブン有限公司の従業員及びZ69有限公司の従業員として稼働していたことが認められる。 以上のとおり被害者B47が27歳と若年であったことなどからすると,被害者B47は,今後も67歳まで40年間にわたり,少なくとも,台湾の女子平均賃金である31万9136台湾元の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益欄記載のとおり,383万3238台湾元となり,これを円に換算すると,1300万1576円となる。 (イ) なお,原告らは,所得税確定申告書等の書類(同④-3-1~12)によれば,被害者B47は,平成6年1月から4月までの間に165万台湾元の収入を得ていたから,年間495万台湾元を基礎として,増収を加味した各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記の各書類のほとんどが本件事故後に作成されたものであり,客観性に欠け,原告ら主張の年間収入額を認めるに足りず,このほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はないから,原告らの主張は採用できない れたものであり,客観性に欠け,原告ら主張の年間収入額を認めるに足りず,このほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はないから,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B47の慰謝料は,前記アの事情などから,1000万円をもって相当と認める。 【被害者B48】(原告番号163~168)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ163~168の①-4,③-1・2,④-4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B48は,本件事故当時40歳の男性であり,平成6年3月18日にZ70有限公司を設立し,従業員を雇うなどの開業準備行為を行い,一家の支柱として,妻及び3人の未成年の子を扶養していたものであることが認められる。 これによれば,被害者B48は,今後も67歳まで27年間にわたり,少なくとも,台湾の男子平均賃金である46万7373台湾元の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益欄記載のとおり,479万0619台湾元となり,これを円に換算すると,1624万8821円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B48がZ70有限公司を設立するまで勤務していたZ71股ブン有限公司から,利益配当及び賃金として平成5年には合計200万台湾元を得ていたのであるから,台湾統計月報の合板製造業・正規職員・男性の平均賃金である76万0056台湾元を基礎とした各年の基礎収入によるべきであると主張するが,逸失利益の算定につきZ70有限公司の設立前の収入を参考とするとしても,原告らが主張する平成5年の所得については,これを認めるに足りる客観的な証拠はなく,むしろ,「各種所得源泉徴収控除及び控除免除票」(甲 益の算定につきZ70有限公司の設立前の収入を参考とするとしても,原告らが主張する平成5年の所得については,これを認めるに足りる客観的な証拠はなく,むしろ,「各種所得源泉徴収控除及び控除免除票」(甲イ163~168の④-6-1)によれば,平成6年1月から4月までの給与は8万台湾元とされているにすぎず,このほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はないから,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B48は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えてきたと認められ,原告A133及び同A134につき下記のとおり固有の慰謝料を認めるべきであることに鑑み,被害者B48の慰謝料は1200万円をもって相当と認める。 また,原告A133及び同A134は固有の慰謝料を請求するところ,前記争いのない事実等(1)アのとおり,原告A133及び同A134は被害者B48の両親であり,本件事故の態様その他一切の事情を併せ考慮すると,原告A133及び同A134の固有の慰謝料としては各50万円をもって相当と認める。 【被害者B49】(原告番号169)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ169の③-1・3,④-6,200・201の④-4-3)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B49は,本件事故当時25歳の既婚女性であり,訴訟書類作成代行業を行うとともに,学習塾の講師として稼働し,平成6年4月23日に結婚したものであることが認められる。 これによれば,被害者B49は,今後も67歳まで42年間にわたり,少なくとも,台湾の女子平均賃金である31万9136台湾元の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益 ある31万9136台湾元の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益欄記載のとおり,389万2259台湾元となり,これを円に換算すると,1320万1764円となる。 (イ) なお,原告らは,「各種所得源泉徴収控除及び控除免除票」(同④-4-2)及び所得税確定申告書(同④-4-5)を根拠に,平成6年1月から4月には合計46万台湾元の収入があったとして,年額138万台湾元を基礎として,増収を加味した各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記4か月分の収入証明のみでは,将来にわたってその金額が得られたであろう蓋然性を認めるに足りず,そのほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はないから,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B49の慰謝料は,前記アの事情等から,1100万円をもって相当と認める。 【被害者B50】(原告番号176~178)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ176~178の①,③-1・2,④-4・10)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B50は,本件事故当時本件事故当時41歳の男性であり,電化製品・部品売買業を営み,一家の支柱として,妻及び2人の未成年の子を扶養していたものであることが認められる。 これによれば,被害者B50は,今後も67歳まで26年間にわたり,少なくとも,台湾の男子平均賃金である46万7373台湾元の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益欄記載のとおり,470万2973台湾元となり,これを円に換算 相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益欄記載のとおり,470万2973台湾元となり,これを円に換算すると,1595万1543円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B50は,平成6年1月から4月の間に,電化製品・部品売買業の給与として32万台湾元,漁業所得として6万台湾元,家庭教師の報酬として8万元を得ており,また,電化製品・部品売買業の実質的収入は給与より大きかったなどとして,台湾統計月報の国際貿易業・監督職・男性の平均賃金である159万8208台湾元を基礎とし,増収を加味した各年の基礎収入によるべきであると主張するが,原告らの主張に沿う旨の記載のある所得税確定申告書(同④-5-2)は,本件事故後に作成されたもので,客観性に乏しく,また,4か月間の収入のみから,将来にわたって同金額が得られたであろう蓋然性を認めることはできず,このほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はないから,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B50は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は1300万円をもって相当と認める。 【被害者B51】(原告番号179~181)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ179~181の①,③-1・2,④-4-1)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B51は,本件事故当時30歳の男性であり,中古事務機械売買を内容とする事業を営み,一家の支柱として,妻及び2人の未成年の子を扶養していたものであることが認められる。 これによれば,被害者B51は,今後も67歳まで37年間にわたり,少なくとも,台湾の男子平均賃金である46万7373台湾元の収入を得られたで 人の未成年の子を扶養していたものであることが認められる。 これによれば,被害者B51は,今後も67歳まで37年間にわたり,少なくとも,台湾の男子平均賃金である46万7373台湾元の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益欄記載のとおり,546万7254台湾元となり,これを円に換算すると,1854万3832円となる。 (イ) なお,原告らは,中古事務機械売買による利益は年間360万台湾元から480万台湾元であったとして,台湾統計月報の国際貿易業・監督職・男性の平均賃金である159万8208台湾元を基礎として,増収を加味した各年の基礎収入によるべきであると主張するが,上記主張のような利益があることを認めるに足りる客観的証拠は一切なく,そのほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はないから,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B51は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は1300万円をもって相当と認める。 【被害者B52】(原告番号188・189)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ188・189の①,③-1・3)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B52は,本件事故当時29歳の独身女性であり,Z72股ブン有限公司,Z73股ブン有限公司及びZ74股ブン有限公司の従業員として稼働していたことが認められる。 以上のとおり被害者B52が29歳と若年であったことなどからすると,被害者B52は,今後も67歳まで38年間にわたり,少なくとも,台湾の女子平均賃金である31万9136台湾元の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで, 若年であったことなどからすると,被害者B52は,今後も67歳まで38年間にわたり,少なくとも,台湾の女子平均賃金である31万9136台湾元の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益欄記載のとおり,376万8185台湾元となり,これを円に換算すると,1278万0929円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B52が勤務していた3社からの収入を加算した106万9723台湾元を基礎として,増収を加味した各年の基礎収入によるべきであると主張する。 しかしながら,その根拠とされる各「各種所得源泉徴収控除及び控除免除票」(同④-3-1~5)のうち,同④-3-1及び2は,所得類別が企業借入金となっており,労務提供の対価と認めることができない。 また,同④-3-3及び4は,いずれもZ72股ブン有限公司からの同じ期間の給与に関するものでありながら,給付額を異にするもので,その関係が明らかでないため,これらを信用することはできない。 さらに,同④-3-5も,Z72股ブン有限公司の関連会社であるZ74股ブン有限公司(同③-3)の各種所得源泉徴収控除及び控除免除票であって,上記のとおりZ72股ブン有限公司からの各種所得源泉徴収控除及び控除免除票が信用できない以上,全体として信用することができない。 被害者B52は確定申告を行っていると思われるところ,最も直接的な立証方法である確定申告書を提出していないことも考え併せると,結局,原告らの主張の収入額を認めるに足りない。 そのほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はない。 イ慰謝料被害者B52の慰謝料は,前記アのとおりの事情等から,1000万円 額を認めるに足りない。 そのほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はない。 イ慰謝料被害者B52の慰謝料は,前記アのとおりの事情等から,1000万円をもって相当と認める。 なお,原告らは,被害者B52がその父及び母を扶養していたと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。 【被害者B53】(原告番号200・201)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ200・201の①-2,③-1・2,④-4-3~5)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B53は,本件事故当時27歳の男性であり,平成5年に台湾における司法試験に合格し,平成6年5月から台湾の司法研修所に進む予定であり,同年4月23日に結婚して,一家の支柱として妻を扶養していたものであることが認められる。 これによれば,被害者B53は,今後も67歳まで40年間にわたり,少なくとも,台湾の男子平均賃金である46万7373台湾元の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を40パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益欄記載のとおり,481万1791台湾元となり,これを円に換算すると,1632万0632円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B53は法律家資格を得ることが確実であり,また,Z75銀行に勤務し,月7万台湾元の給与及びボーナスを得る予定であったとして,台湾統計月報の法律・専門職・男性の平均賃金である92万6916台湾元を基礎とし,増収を加味した各年の基礎収入によるべきであると主張するが,台湾における司法試験に合格したことのみをもって,原告ら主張の平均賃金を得られたであろうと認めることはできず,また,Z75銀行での収入については,これを認めるに足りる証拠は べきであると主張するが,台湾における司法試験に合格したことのみをもって,原告ら主張の平均賃金を得られたであろうと認めることはできず,また,Z75銀行での収入については,これを認めるに足りる証拠はなく,そのほか,上記(ア)の認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はないから,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B53は,前記アのとおり,一家の支柱として家族を支えていたと認められ,その慰謝料は1300万円をもって相当と認める。 【被害者B87】(原告番号322・323)についてア逸失利益(ア) 証拠(甲イ322・323の①,③-1・2,④-4-2~4・6・7)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B87は,本件事故当時26歳の独身女性であり,平成3年にZ76大学ロサンゼルス分校において公衆衛生学修士学位を取得し,同年から平成6年始めころまで,台湾のZ77に技官として勤務していたが,博士号取得のために退職し,本件事故当時は無職であったが,働きながら大学に通学する意思を有し,稼働先も決まっていたことが認められる。 以上のとおり被害者B87が26歳と若年であったことなどからすれば,被害者B87は,今後67歳まで41年間にわたり,少なくとも,台湾の女子平均賃金である31万9136台湾元の収入を得られたであろうと認めるのが相当である。 そこで,これを基礎収入とし,生活費控除率を30パーセントとして,逸失利益の額を算定すると,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」逸失利益欄記載のとおり,386万3463台湾元となり,これを円に換算すると,1310万4093円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B87は本件事故当時無職であったものの,Z77勤務により収入を得ていたのであり,また,博士号取得後も高収入を得られる職に就くことが確実であった 0万4093円となる。 (イ) なお,原告らは,被害者B87は本件事故当時無職であったものの,Z77勤務により収入を得ていたのであり,また,博士号取得後も高収入を得られる職に就くことが確実であったとして,台湾統計月報の医療保健・専門職・女性の平均賃金である78万3312台湾元を基礎として,増収を加味した各年の基礎収入によるべきである主張するが,被害者が上記(ア)の認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性については,これを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 イ慰謝料被害者B87の慰謝料は,前記アのとおりの事情等から,1000万円をもって相当と認める。 【原告A236】(原告番号339)についてア逸失利益について(ア) 本件事故による傷害及びその治療の経緯について証拠(甲イ339の③-1~3・5,④-3-9・10・13~30,④-5-10,④-6-1~3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a 原告A236は,平成6年4月26日,本件事故により,第1腰椎破裂骨折,左足関節脱臼骨折,右大腿骨骨折,頭部外傷等の傷害を負い,同日,春日井市民病院に入院し,同年5月10日に手足の骨折部分の手術を,同月24日に頭部及び腰部の手術を受けるなどの治療を受け,同年8月16日に同病院を退院した。 b 原告は,同日,台湾に帰国後,直ちに長庚紀念医院に入院し,同年11月8日に鼻の手術を受けるなどの治療を受けたほか,リハビリ治療を受け,同年12月12日に退院した。 しかし,原告は,退院時においても,しゃがむのが困難で,力がなく,力の要る仕事ができない状態で,退院後も継続治療が必要であると診断された。 原告は,退院後,同病院に通院し,週3回程度のリハビリ治療を続け,平成7年2月21日には,台湾政府から,種別「肢障」,程度「中 の要る仕事ができない状態で,退院後も継続治療が必要であると診断された。 原告は,退院後,同病院に通院し,週3回程度のリハビリ治療を続け,平成7年2月21日には,台湾政府から,種別「肢障」,程度「中度」の障害認定を受けた。 c その後も,原告は,同病院でリハビリ治療を継続し,平成14年2月15日には,「背中の下部に痛みがあり,背中の部分は著しく運動障害がある,脊髄の活動度は25度,うずくまることが困難。」などの診断を受けた。 (イ) 以上の事実に,前項に掲記の各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,原告は,遅くとも平成14年2月15日において,症状固定に至ったもので,脊椎固定術により脊柱の強直があり脊柱の可動域が25度と通常の2分の1程度に制限されていること,さらに,左足の可動域の制限や,頭痛,めまい等といった神経症状などの後遺障害が生じており,その障害の程度は後遺障害等級6級に相当し,労働能力喪失率は67パーセントと解するのが相当である。 (ウ) 基礎収入及び労働能力喪失期間について証拠(甲イ339の③-1~4,④-3-1~5・11)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件事故当時41歳であり,Z78有限公司に従業員として勤務しつつ,自営業者として日本で廃棄された貴金属等を購入して台湾で販売する事業に従事し,一家の支柱として,妻及び子を扶養していたこと,しかし,本件事故後は,長期のリハビリのための通院を余儀なくされ,上記事業も廃業せざるを得なかったことが認められる。 以上によれば,原告は,本件事故がなければ,67歳までの26年間にわたり,少なくとも台湾の男子平均賃金である46万7373台湾元を得られたであろうと認めるのが相当である。 なお,原告は,台湾統計月報の国際貿易業・監督職・男性の平均収入159万8208台湾元を基礎収入とすべきであると主 の男子平均賃金である46万7373台湾元を得られたであろうと認めるのが相当である。 なお,原告は,台湾統計月報の国際貿易業・監督職・男性の平均収入159万8208台湾元を基礎収入とすべきであると主張する。 確かに,原告の平成5年の総合所得税自主申告納付税額は2万0540台湾元であることが認められ(甲イ339の④-5-4),同じ総合所得税自主申告納付税額が平成7年は2万0302台湾元,平成8年は1万8438台湾元,平成10年は1万8082台湾元であり,その基礎となる所得総額が,平成7年は124万2858台湾元,平成8年は121万9816台湾元,平成10年は123万9654台湾元であったこと(同5-1~3・6~8)からすると,原告の平成5年の収入も100万台湾元を超える相当多額のものであったことが一応窺える。しかしながら,他方で,以上からすると,原告は,本件事故後の就労もできない状態の時期に事故前と同様の収入を得ているといえるから,これらの収入は労務の対価ではなかったものと推認せざるを得ず,結局,以上からは,原告の労務の対価としての収入額を認めることは困難である。そして,このほかに,上記認定金額を超える収入を得られたであろう蓋然性を認めるに足りる証拠はないから,原告の主張は採用できない。 (エ) そして,以上からすると,原告について,平成14年2月15日の症状固定に至るまで,上記認定の労働能力喪失率を超える休業損害が生じたことは明らかであるから,原告の休業損害及び後遺障害による原告A236の逸失利益は,少なくとも450万1417台湾元(46万7373台湾元×0.67×14.3751(26年のライプニッツ係数))となり,前記換算率によると,1526万7906円となる。 イ慰謝料について前記アの事実に,証拠(甲イ339の③-1・2,③-4) 3台湾元×0.67×14.3751(26年のライプニッツ係数))となり,前記換算率によると,1526万7906円となる。 イ慰謝料について前記アの事実に,証拠(甲イ339の③-1・2,③-4)及び弁論の全趣旨を総合すると,原告A236は,本件事故により,平成6年4月26日から同年8月16日まで春日井市民病院に入院し,同日から同年12月12日まで台湾の長庚紀念医院に入院した上,同月15日から平成14年2月15日まで通院を余儀なくされたこと,本件事故により後遺障害等級6級に該当する後遺障害を負ったこと,本件事故後も,台湾に生活の基盤を置いていることなどが認められ,これらの事実に,台湾居住被害者の死亡慰謝料と同様,台湾と日本との物価水準や所得水準等の経済的事情の相違等を併せ考慮すると,入通院慰謝料としては360万円,後遺障害慰謝料としては550万円の合計910万円をもって相当と認める。 (3) 葬儀費用等ア葬儀費用日本と台湾との間の物価水準等の経済事情の相違,その他諸般の事情を考慮して,本件事故と相当因果関係のある葬儀費用としての損害は,本件事故により死亡した台湾居住被害者1人当たり90万円を相当と認める。 ただし,被害者B45(原告番号157・158)については,後記(5)イのとおり,原告A123(原告番号157)及び同A124(同158)は葬儀費用に関する損害賠償請求権は取得していないと解するのが相当である。 なお,原告らは,葬儀費用として,本件事故により死亡した台湾居住被害者1人当たり250万円すなわち69万5000台湾元の損害を被ったと主張するが,上記認定額を超える損害があったことを認めるに足りる証拠はない。 イ手荷物の滅失による損害証拠(乙24の92,97,99~101,104,105,108,111,112)及び弁論の全 主張するが,上記認定額を超える損害があったことを認めるに足りる証拠はない。 イ手荷物の滅失による損害証拠(乙24の92,97,99~101,104,105,108,111,112)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故によって,原告A236(原告番号339)を除く台湾居住被害者の携行品並びに原告A236,被害者B45(原告番号157・158)及び同B46(同159・160)を除く台湾居住被害者の委託手荷物が滅失したことが認められ,これによる損害は,上記アと同様の事情を考慮して,上記台湾居住被害者1人当たり15万円を相当と認める。 これに対し,原告らは,上記台湾居住被害者1人当たり150万円すなわち41万7000台湾元の損害を被ったと主張するが,上記認定額を超える損害があったことを認めるに足りる証拠はない。 また,被告中華航空が主張する賠償額の制限が認められないことは前記6(3)イのとおりである。 (4) 相続ア本件事故により死亡した台湾居住被害者がいずれも台湾に生活の本拠を置く中国人であったことは,前記争いのない事実等(1)アのとおりであり,相続人及びその相続分の決定に関しての準拠法としては,その本国法である台湾において現に行われている法律の規定が適用されることとなる。 そして,この台湾において現に行われている法律の規定によれば,相続順位は,直系卑属,父母,兄弟姉妹の順とされ,直系卑属については親等の近い者が先とされ,被相続人の直系卑属が相続開始前に死亡したときは,その直系卑属が代襲相続するとされ,同一順位の相続人が数人あるときは,人数に応じて均等に相続することとされ,また,配偶者は,直系卑属と共同相続をするときは,その相続分は他の相続人と均等とされている。 そうすると,上記台湾居住被害者の各損害額は,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」の各損害 均等に相続することとされ,また,配偶者は,直系卑属と共同相続をするときは,その相続分は他の相続人と均等とされている。 そうすると,上記台湾居住被害者の各損害額は,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」の各損害額合計欄記載の金額となるところ,その相続人である原告らは,それぞれ,同表の各相続分欄記載の割合で,同表の各「弁護士費用以外の損害額」欄記載の金額を相続した。 イこれに対して,被告中華航空は,台湾法の下では死亡による損害賠償請求権は,相続財産の対象とはされていないとして,台湾居住被害者の遺族である原告らは,損害賠償請求権を相続により取得しないと主張する。 しかしながら,不法行為に基づく損害賠償請求権の成立についての準拠法は日本法であり,日本法により本件事故についての損害賠償請求権の成立が認められる以上,改めて損害賠償請求権が台湾において現に行われている法律の規定により相続性を有するとされているか否かを検討するまでもなく,相続の対象となると解すべきであり,被告中華航空の主張は採用できない。 (5) 遺産分割ア台湾において現に行われている法律の規定によれば,共同相続における遺産は,債権も含め,各相続人の「公同共有」(合有)とされているところ,被害者B45(原告番号157・158)を除き,本件事故により死亡した台湾居住被害者については,それぞれ,相続人全員が各自の法定相続分に従って分割した損害賠償請求権に基づき本件損害賠償請求訴訟を提起しているのであるから,これを提起した事実をもって,少なくとも当該損害賠償請求権についての一部遺産分割協議があったと認めるのが相当である。 イまた,被害者B45についても,相続人の1人である被害者B45の夫は被告中華航空と別途和解しており(弁論の全趣旨),この夫と原告A123(原告番号157)及び同A124(同158 が相当である。 イまた,被害者B45についても,相続人の1人である被害者B45の夫は被告中華航空と別途和解しており(弁論の全趣旨),この夫と原告A123(原告番号157)及び同A124(同158)との間において,被告らに対する損害賠償請求権は,被害者B45の夫は台湾において,同原告らは日本において,各自が個別に行使する旨の合意,すなわち,被告らに対する損害賠償請求権についての一部遺産分割協議があったものと認めるのが相当である。なお,葬儀費用については,被害者B45の夫が被告中華航空から30万台湾元を受け取ったことが認められ(乙27),葬儀費用は夫が支出したものと考えられるから,被害者B45の夫と同原告らの間の遺産分割協議において,葬儀費用に関する損害賠償請求権は,被害者B45の夫のものとするとの合意がされたものと解するのが相当であり,同原告らが葬儀費用についての損害賠償請求権を取得したと認めることはできない。 (6) 損害の填補ア前記争いのない事実等(4)アのとおり,被告中華航空は,被害者B45(原告番号157・158)及び同B46(同159・160)を除く台湾居住被害者本人又はその相続人らである原告らに対し,本件事故についての損害の填補として,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅱ」の各既受領額欄記載のとおりの金員を支払ったものであるから,上記相続人らである原告らについては,これが原告らの相続分に応じて填補されたと認め,換算率を前記と同様に1台湾元を3.3918円として算定すると,結局,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」の各損害の填補欄記載のとおり,損害が填補されたものと認められる。 イ被害者B45(原告番号157・158)について(ア) 被告中華航空は,被告中華航空により積み立てられた支払済み遺族年金(221万8050台湾元),労働法により義 填補されたものと認められる。 イ被害者B45(原告番号157・158)について(ア) 被告中華航空は,被告中華航空により積み立てられた支払済み遺族年金(221万8050台湾元),労働法により義務づけられた労災保険による死亡補償金(149万8500台湾元),乗務員団体傷害保険保険金(5万米ドル),葬儀費用(30万台湾元),弔慰金(10万台湾元)及び遺族に対する示談に当たっての被告中華航空の追加支払金(120万台湾元)を,被害者B45の相続人である原告A123(原告番号157)及び同A124(同158)(以下,イ項においては「原告ら」という。)が受領しているとして,損害賠償額から控除されるべきと主張しているところ,原告らは,これらの金員の受領を否認して争っている。 そこで,判断するに,上記各金員を原告らが受領したことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,被告中華航空も,明細書(乙27)に関する証拠説明において,上記の各金員を受領したのは,原告らではなく,被害者B45の配偶者(夫)であるとしている。 そして,前記(5)イのとおり,夫と原告らとの間において,被告らに対する損害賠償請求権についての一部の遺産分割協議があったものと認められるところ,上記各金員がこの遺産分割協議の前に支払われたことの主張・立証がない以上,分割された債権について債権者の1人である被害者B45の夫に上記金員を支払ったことによっては,他の債権者である原告らの被告中華航空に対する損害賠償請求権に何ら影響は及ばないものといわざるを得ない。 したがって,上記金員については,原告らの損害賠償額から控除すべきであるということはできない。 (イ) 被告中華航空は,従業員団体傷害・死亡保険保険金(200万台湾元)を,原告らが受領しており,これは,被告中華航空が自ら保険料を負担し,任意に 賠償額から控除すべきであるということはできない。 (イ) 被告中華航空は,従業員団体傷害・死亡保険保険金(200万台湾元)を,原告らが受領しており,これは,被告中華航空が自ら保険料を負担し,任意に加入したものであって,同金額は原告らの損害賠償額から控除されるべきと主張しているところ,原告らは,同金額を受領したことについては認めている。 しかしながら,この保険につき,被告中華航空が保険料を支払っていたことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,証拠(甲イ157・158の④-4-3~12)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B45の毎月の給与及び飛行手当から「団体保険料」又は「保険料」が控除されていたことが認められる。 したがって,上記保険金については,損害の填補として控除すべきものであることを認めるに足りない。 ウ被害者B46(原告番号159・160)について(ア) 被害者B46の損害賠償額から葬儀費用(30万台湾元)及び弔慰金(10万台湾元)を控除すべきことについては,その相続人である原告A125(原告番号159)及び同A126(同160)(以下,ウ項においては「原告ら」という。)と被告中華航空との間で争いはない。 (イ) 被告中華航空は,台湾の労働法により義務づけられた労災保険による死亡補償金(149万8500台湾元)を原告らが受領しており,これは日本の労働者災害補償保険法の遺族年金給付と同様の性質を有すると思われるとして,同金額を損害賠償額から控除するべきであると主張し,原告らは,同金額を受領したことについては認めている。 そして,労働者災害補償保険法の遺族年金給付と被告中華航空が主張する労働法により義務づけられた労災保険による死亡補償金とが,その性質を異にすることを窺わせるような証拠はないのであって,前記6(5)イのとおり,労働者災害補 保険法の遺族年金給付と被告中華航空が主張する労働法により義務づけられた労災保険による死亡補償金とが,その性質を異にすることを窺わせるような証拠はないのであって,前記6(5)イのとおり,労働者災害補償保険法の遺族年金給付が控除の対象となると解すべきであるのと同様に,台湾の労働法により義務づけられた労災保険による死亡補償金も控除の対象とするのが相当である。 (ウ) 被告中華航空は,乗務員団体傷害保険保険金(5万米ドル)及び従業員団体傷害・死亡保険保険金(200万台湾元)を,原告らが受領しており,これは,被告中華航空が自ら保険料を負担し,任意に加入したものであって,同金額は原告らの損害賠償額から控除されるべきと主張しているところ,原告らは,同金額を受領したことについては認めている。 しかしながら,この保険につき,被告中華航空が保険料を支払っていたことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,証拠(甲イ159・160の④-4-3・4)及び弁論の全趣旨によれば,被害者B46は,飛行手当から「保険料」を控除されていたことが認められる。 したがって,上記保険料については,損害の填補として控除すべきものであることを認めるに足りない。 (エ) 以上によれば,被害者B46に関しては,葬儀費用(30万台湾元),弔慰金(10万台湾元)及び労働法により義務づけられた労災保険による死亡補償金(149万8500台湾元)の合計189万8500台湾元が原告らに支払われているのであるから,原告らが取得した損害賠償請求権から,それぞれ94万9250台湾元(前記と同様の換算率により,321万9666円)を控除すべきである。 (7) 弁護士費用弁護士費用は,日本居住被害者と同様,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」の各「弁護士費用以外の損害額」欄記載の金額から同表の各「損害の填補」欄記載の金 1万9666円)を控除すべきである。 (7) 弁護士費用弁護士費用は,日本居住被害者と同様,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」の各「弁護士費用以外の損害額」欄記載の金額から同表の各「損害の填補」欄記載の金額を控除した額の5パーセントをもって,本件事故と相当因果関係のある損害として認めるのが相当であり,したがって,原告らにつき,それぞれ,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」の各弁護士費用欄記載の金額を認めるのが相当である。 (8) 結論以上によれば,被告中華航空は,別紙「損害認定一覧表Ⅱ」記載の原告らに対し,それぞれ,同表の各認容金額欄記載の金員及びこれに対する不法行為の日の後(本件事故の日の翌日)である平成6年4月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。 8 よって,原告A112(原告番号118),同A177(同239),同A190(同257)及び同A200(同272)を除くその余の原告らの被告中華航空に対する請求は,別紙「請求金額及び認容金額一覧表」の各認容金額欄記載の金員及びこれに対する平成6年4月27日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,同原告らの被告中華航空に対するその余の請求,原告A112,同A177,同A190及び同A200の被告中華航空に対する請求並びに原告らの被告エアバスに対する請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第7部裁判長裁判官筏津順子裁判官長谷川恭弘裁判官舟橋伸行(別紙「原告グループ一覧表」,別紙「原告主張損害額一覧表Ⅰ」及び別紙「原告主張損害額一覧表Ⅱ」,別紙「損害主張対照表」及び同表添付の計算書並びに別紙「損害認定一覧表Ⅰ」及び別紙「損害認定一覧表Ⅱ」省略) グループ一覧表 別紙「原告主張損害額一覧表Ⅰ」及び別紙「原告主張損害額一覧表Ⅱ」 別紙「損害主張対照表」及び同表添付の計算書並びに別紙「損害認定一覧表Ⅰ」及び別紙「損害認定一覧表Ⅱ」省略 請求金額及び認容金額一覧表 原告番号 原告被害者 請求金額 認容金額 A1 121,022,750 34,695,428 A2 60,511,375 17,347,713 A3 60,511,375 17,347,713 A4 11,000,000 1,050,000 A5 B2 235,536,417 84,794,167 A6 101,558,180 26,433,304 A7 50,779,090 13,216,652 A8 50,779,090 13,216,652 A9 106,046,956 26,972,773 A10 53,023,478 13,486,386 A11 53,023,478 13,486,386 A12 149,462,319 63,465,991 A13 74,731,159 31,732,995 A14 74,731,159 31,732,995 A15 106,511,592 40,870,405 A16 53,255,796 20,435,202 A17 53,255,796 20,435,202 A18 236,326,258 80,065,417 A19 11,000,000 10,500,000 A20 106,046,956 21,564,365 A21 53,023,478 10,782,182 A22 53,023,478 10,782,182 A20106,046,95621,564,365 A2153,023,47810,782,182 A2253,023,47810,782,182 A23104,774,02321,467,369 A2434,924,6747,155,789 A2534,924,6747,155,789 A2634,924,6747,155,789 A27116,825,79031,168,856 A2838,941,93010,389,618 A2938,941,93010,389,618 A3038,941,93010,389,618 A2534,924,6747,155,789 A2634,924,6747,155,789 A27116,825,79031,168,856 A2838,941,93010,389,618 A2938,941,93010,389,618 A3038,941,93010,389,618 A31171,477,96030,088,939 A3242,869,4907,522,234 A3342,869,4907,522,234 A34124,550,81229,283,661 A35124,550,81229,283,661 A36123,119,47037,746,129 A3741,039,82312,582,042 A3841,03 ``` 29,283,661 B10 B11 B12 A36 123,119,470 37,746,129 A37 41,039,823 12,582,042 A38 41,039,823 12,582,042 A39 41,039,823 12,582,042 A40 41,030,459 7,429,700 A41 41,030,459 7,429,700 A42 41,030,459 7,429,700 A43 183,249,468 67,373,968 A44 91,624,734 33,686,984 A45 91,624,734 33,686,984 A46 116,631,302 36,947,627 A47 58,315,651 18,473,813 A48 58,315,651 18,473,813 A49 266,198,018 86,372,059 A50 88,732,672 28,790,686 A51 88,732,672 28,790,686 A52 88,732,672 28,790,686 A53 98,698,183 33,880,270 A54 49,349,091 16,940,135 A55 49,349,091 16,940,135 A56 106,537,918 19,063,405 A57 53,268,959 9,531,702 A58 53,268,959 9,531,702 B20 83,856,493 B21 69,800,195 A59 B13 B14 B15 B16 B17 B18 B19 45,439,174 A69 137,933,540 48,537,11 ``` ``` 83,856,493B2169,800,195A59B13B14B15B16B17B18B19 45,439,174 A69137,933,54048,537,118 A7068,966,77028,289,992 A7168,966,77028,289,992 A7221,027,9994,883,152 A7321,027,9994,883,152 A7421,027,9994,883,152 A7521,027,9994,883,152 A7621,027,9994,883,152 A7710,513,9992,441,576 A7810,513,9992,441,576 A7937,615,6268,552,384 A8037,615,6268,552,384 A8137,615,6268,552,384 A8237,615,6268,552,384 A8379,643,52919,274,473 A8439,821,7649,637,236 A8539,821,7649,637,236B26B25B27B28 A7937,615,6268,552,384 A8037,615,6268,552,384 A8137,615,6268,552,384 A8237,615,6268,552,384 A8379,643,52919,274,473 A8439,821,7649,637,236 A8539,821,7649,637,236 A8681,023,50719,274,473 ``` 9,274,473 A8439,821,7649,637,236 A8539,821,7649,637,236 A8681,023,50719,274,473 A8740,511,7539,637,236 A8840,511,7539,637,236 A8973,943,28518,154,768 A9024,647,7616,051,589 A9124,647,7616,051,589 A9224,647,7616,051,589B29B30B27B28B3171,445,519B3267,376,151合計138,821,670B3171,445,519B3267,376,151合計138,821,670B3342,680,468B3440,875,125合計83,555,593B3342,680,468B3440,875,125合計83,555,593B3342,680,468B3440,875,125合計83,555,593B3583,283,902B3673,943,285合計157,227,187B3583,283,902B3673,943,285合計157,227,187B3740,875,125A99A93A94 A97A98 A95A96 33,306,95533,306,95520,686,75720,686,75720,686,75741,923,56941,923,569 A10678,218,09817,678,272 A10778,218,09817,678,272 ``` 20,686,757 41,923,569 41,923,569 A106 78,218,098 17,678,272 A107 78,218,098 17,678,272 A108 146,244,871 69,282,627 A109 48,748,290 23,094,209 A110 48,748,290 23,094,209 A111 48,748,290 23,094,209 A112 11,000,000 (請求棄却)B42 B41 A113 77,261,363 6,563,489 A114 77,261,363 6,563,489 A115 77,261,363 6,563,489 A116 11,000,000 525,000 A117 11,000,000 525,000 B43 A144 108,899,823 9,854,604 A145 108,899,823 9,854,604 A146 128,401,156 51,555,876 A147 32,100,289 12,888,968 B53 A174 111,684,478 29,912,397 A175 111,684,478 29,912,397 A176 201,318,527 52,445,549 A177 11,000,000 (請求棄却) A178 99,087,983 26,277,547 A179 99,087,983 26,277,547 A180 B67 224,544,032 58,106,227 A181 114,548,750 12,265,798 ``` A17999,087,98326,277,547 A180B67224,544,03258,106,227 A181114,548,75012,265,798 A182114,548,75020,947,912 A18376,246,84418,429,739 A18419,061,7115,265,640 A18519,061,7115,265,640 A18619,061,7115,265,640 A18719,061,7112,632,820 A188124,460,20833,897,336 A189124,460,20833,897,336 A19011,000,000(請求棄却) A191111,495,19031,935,714 A192111,495,19031,935,714 A193166,212,19383,432,238 A194166,212,19383,432,238 A19580,591,27717,743,048 A19640,295,6388,871,523 A19740,295,6388,871,523 A198171,231,77218,352,199 A199171,231,77228,519,212 A20011,000,000(請求棄却) A201283,255,90654,217,935 A202283,255,90654,217,935 A20311,000,000 請求棄却 A201283,255,90654,217,935 A202283,255,90654,217,935 A20311,000,0001,050,000 A20492,874,40527,473,497 A20543,937,20213,736,748 A20643,937,20213,736,748 A20777,803,89418,988,024 A20877,803,89418,988,024 A209156,235,75043,568,797 A21078,117,87521,784,398 A21178,117,87521,784,398 A212B7999,188,80427,671,127 A213165,251,28569,781,045 A21455,083,76126,805,009 A21555,083,76126,805,009 A21655,083,76126,805,009 A21711,000,0001,050,000 A21811,000,0001,050,000 A21999,328,27626,464,264 A22099,328,27626,464,264 A22199,188,80427,671,127 A22299,188,80427,671,127 A22343,086,56312,414,686 A22443,086,56312,937,156 A225 99,188,80427,671,127 A22343,086,56312,414,686 A22443,086,56312,937,156 A225172,346,25244,132,973B8470,400,702B8571,796,077合計142,196,779B8470,400,702B8571,796,077合計142,196,779 A228B86241,682,08055,846,702 A229107,785,1946,590,921 A230107,785,1946,590,921 A2312,102,799488,315 A2322,102,799488,315 A2332,102,799488,315 A2342,102,799488,315 A2352,102,799488,315 A236本人131,755,51725,230,162B82B83B26B87B81 A226A22747,914,43447,914,434

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