【DRY-RUN】○ 主文 一 昭和四六年(行ウ)第四号事件原告ら及び昭和四七年(行ウ)第二号事件原告 らの訴えをいずれも却下する。 二 訴訟費用は、右各事件を通じ各事件原告らの負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求
○ 主文一昭和四六年(行ウ)第四号事件原告ら及び昭和四七年(行ウ)第二号事件原告らの訴えをいずれも却下する。 二訴訟費用は、右各事件を通じ各事件原告らの負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一昭和四六年(行ウ)第四号事件原告ら及び昭和四七年(行ウ)第二号事件原告らの請求の趣旨 1 被告防衛庁長官は、別紙図面(一)記載の黒斜線部分に対する射撃訓練をしてはならない。 2 被告呉防衛施設局長は、原告らに対し、別紙図面(一)記載の赤線内の部分への立入を禁止してはならない。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 二被告らの本案前の主張主文と同旨三請求の趣旨に対する被告らの答弁 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 第二当事者の主張(以下においては、昭和四六年(行ウ)第四号事件を「甲事件」、昭和四七年(行ウ)第二号事件を「乙事件」といい、甲・乙各事件原告らを総称して「原告ら」、右各事件被告防衛庁長官を「被告長官」及び右各事件被告呉防衛施設局長を「被告局長」という。)一甲・乙各事件の原告らの請求原因 1 原告らはいずれも別紙当事者目録記載の肩書地に居住するものであつて、各自、後記の入会権・環境権を、甲事件原告1ないし38、乙事件原告1ないし34はそれぞれ後記の通行権を、甲事件原告3、10、18ないし20、22、24、27、28、30、31、35、42、43、乙事件原告3、12、13、31、はそれぞれ後記の耕作権を有するものである。 被告長官は自衛隊法八条に基づく自衛隊の総括者であり、被告局長は防衛庁設置法五三条、五四条に基づく自衛隊の用に供される財産の管理者である。 2 (一)被告長官は別紙図面(一)記載の黒斜線部分(以下「東弾着地域」という。)に対し、昭和四六年六月二四日、二五日、二九日、三 置法五三条、五四条に基づく自衛隊の用に供される財産の管理者である。 2 (一)被告長官は別紙図面(一)記載の黒斜線部分(以下「東弾着地域」という。)に対し、昭和四六年六月二四日、二五日、二九日、三〇日に自衛隊員八〇〇名を動員し、七五ミリ砲、一〇五ミリ砲、TNT火薬の火器類を使用して軽砲の実弾射撃訓練を行おうとしていた。また、同年七月においては一二日、一三日、一九日、二二日、二三日、二八日、二九日の七日間、同年八月においては一〇日、一一日、一二日、一六日、一七日、一八日、一九日、二〇日、二一日、二六日、二七日の一〇日間、同年九月においては八日、九日、一〇日、一一日、二〇日、二一日、二二日、二三日の八日間、それぞれ前記のような実弾射撃訓練が行われることが予定されておつたのであり、以後将来にわたり、継続反覆しさらに日をつめて同地域に対し実弾射撃訓練が行われることが予想される(以下、将来におけるそれを「本件射撃訓練(行為)」という。)。 (二) 前記の昭和四六年六月二四日、二五日、二九日、三〇日の実弾射撃訓練の実施に当たり、被告局長は、前各同日午前六時から午後七時までの間、別紙図面(一)記載の赤線内の部分(以下、この部分を、便宜上「日本原演習場」又は「本件演習場」という。実際の演習場は、同図面のうち赤斜線部分を含むものである。)への原告らの立入を全面的に禁止した。 このように前記(一)記載の実弾射撃訓練が行われるときには、被告局長は本件演習場内への原告らの立入を全面的に禁止するものと予想される(以下、将来におけるそれを「本件立入禁止措置」という。)。 3 (一)入会権について(1) 原告ら全員の有する入会権の対象地域は別紙図面(二)のうち黄線内の部分、原告らのうち宮内地区居住者の有するその対象地域は同図面(二)のうち青線内の部分、原告らのうち 3 (一)入会権について(1) 原告ら全員の有する入会権の対象地域は別紙図面(二)のうち黄線内の部分、原告らのうち宮内地区居住者の有するその対象地域は同図面(二)のうち青線内の部分、原告らのうち広岡及び豊沢地区居住者の有するその対象地域は同図面(二)のうち茶線内の部分である。ところで、宮内、広岡、豊沢の各部落民が有する入会権の対象である山林は、別紙「入会権の対象範囲」に記載のとおりであつて、その大部分は本件演習場内に存在する。 (2) 入会権の内容、形態原告らの有する入会権の内容は、肥料及び家畜の飼料のための採取を中心とするが、燃料用の雑木、下枝の採取も含まれる。 奈岐山一帯は、山頂までかなり豊富な草木に恵まれていたため、入会の規制はさして厳重なものではなく、毎年八十八夜ごろ「クチアケ」と称して、その日からいつせいに採草、採木のため入山していた。使用する道具の制限とか運搬する手段又は一度に採取する量についても別段の規制はなかつた。また、非農家、本家、分家の区別による差別もなかつた。 (3) 原告ら及びその先祖は、被告らが主張するような雑草・雑木・下枝の採取の許可申請や要望をしたのではなく、旧陸軍省による買収の前後を問わず、同一場所に対し同一内容の入会権の行使をしていたのである。したがつて、入会の期間、場所、数量、採取方法、運搬方法、採取物についても従来(江戸時代)からの慣行に従い、被告ら又は旧陸軍の指示や命令に従つたことはない。そして、旧陸軍の演習は、原告ら及びその先祖の入会権行使に支障のない範囲でされたり、又は原告らの権利を不法に侵害してされたりしたのである。 (二) 耕作権について(1) 甲事件原告3、10、18ないし20、22、24、27、28、30、31、35、42、43、乙事件原告3、12、13、31はおよそいずれも別紙図 れたりしたのである。 (二) 耕作権について(1) 甲事件原告3、10、18ないし20、22、24、27、28、30、31、35、42、43、乙事件原告3、12、13、31はおよそいずれも別紙図面(二)記載の緑線内の部分に存在する耕作地(以下「本件耕作地」という。)を、各自耕作している。 (2) 原告ら及びその先祖が、現行民法の制定その他近代法典の整備の時期以来今日まで連綿として本件耕作地の耕作を継続している事実は何人も否定しえない。 そして、原告らの耕作権の消長変化は、当事者の意思、適用法規の変遷という二つの観点から考察されなければならず特に、一方の当事者が国であるため、高権的原理の支配的な行政法規の変遷に伴い、右耕作権に何らかの特殊な変化を来たしたかを追究することが重要である。 (3) 普通財産当時の耕作関係本件耕作地については、旧陸軍省所管当事、「農作物耕作ノ為土地ノ使用及収益」を目的とする賃貸借契約が締結された。国有財産法の施行(昭和二三年)に伴い従前の国有財産の貸付は新法によつてしたものとみなされ(四二条一項)、しかも普通財産については私法上の賃貸借契約の目的とすることができる(二〇条一項)のであるから、右賃貸借契約に基づく原告らの耕作権は農地賃借権(小作権)として私権性を有することはいうまでもない。 原告らは国に対し土地使用の対価として毎年一回農業委員会の決定にかかる小作料標準額に準拠した金額(農地法二四条の二)を支払つてきたのみならず、国によつて右耕作権の処分(譲渡)につき通常小作権なみの扱いが与えられていたのである。 したがつて、右耕作権については、特殊の規制のない限りは農地法の適用を受くべきものである。 (三) 通行権について(1) 原告らが通行権を有する道路は、別紙図面(三)記載のAB1C1D1E1F1G1の各点を 、右耕作権については、特殊の規制のない限りは農地法の適用を受くべきものである。 (三) 通行権について(1) 原告らが通行権を有する道路は、別紙図面(三)記載のAB1C1D1E1F1G1の各点を結ぶ道路(以下「甲道路」という。)とAB2C2D2E2F2G2の各点を結ぶ道路(以下「乙道路」という。)の二つである。(2)原告ら主張の通行権は、合意に基づいて取得したものである。 原告ら(甲事件原告1ないし38、乙事件原告1ないし34)の所属する宮内部落は、不動産制度が創始される以前から甲道路の背後に所在する岡山県勝田郡<地名略>、六〇二番、<地名略>、<地名略>及び<地名略>の五筆の山林を所有し、さらに乙道路の背後に所在する<地名略>の山林に入会権を有していた(右山林は明治四三年五月宮内部落が買い取り所有権を取得したものである。)。右の各山林においては登記制度ができる前から採草、植林がなされ、宮内部落民は伐採した木材などの運搬用道路ないしは山林管理を行なうための道路としての甲乙の各道路を通行使用して現在に至つた。 ところで、甲乙の各道路用地は明治四一年に旧陸軍省に買収されるまでは私有地であり、各道路の通行は、道路敷所有者との合意に基づく通行地役権によるものであつた。旧陸軍省は右買収に当たり宮内部落民の通行地役権を承認したうえで所有権を取得したのである。 被告らは、旧陸軍省が宮内部落民の有した通行地役権を承認のうえで買収するはずがない旨主張するが、次の各事実に照らして旧陸軍省が通行地役権を承認のうえ買収したことは明白である。 イ宮内部落民が旧陸軍省による買収後も全く従前どおり公然と甲乙の各道路を通行してきたこと。 ロ木材などの運搬用具が、牛、荷車、自動車と移り変わるのに応じ通行権を有する宮内部落民が買収前と同様に道路の拡幅や整備を行つてきた よる買収後も全く従前どおり公然と甲乙の各道路を通行してきたこと。 ロ木材などの運搬用具が、牛、荷車、自動車と移り変わるのに応じ通行権を有する宮内部落民が買収前と同様に道路の拡幅や整備を行つてきたこと。 ハ買収後、宮内部落民の行う道路使用や拡幅整備について拒否されたり抗議を受けたことのないこと。 ニ旧陸軍省買収当時の農業は、もつぱら採草したものを唯一の肥料として営まれており、採草とその運搬用道路は農業経営の基礎であつたこと。 ホ甲道路のうち、C1D1間の道路の一メートルから三メートルへの拡幅は、原告らの要求に基づき行われたこと。 (3) 通行地役権の時効取得甲乙の各道路は、不動産登記制度創設以前に採草植林及び木材運搬用の道路として原告らの先祖が自己のためにする意思をもつて開設し、以来現在に至るまで、宮内部落民が、牛、荷車、自動車と運搬用具が変化するのに応じて、自己のためにする意思をもつて拡幅し、また補修や整備を行い、その費用と労力により維持、管理をしてきたものである。 このように宮内部落民の通行は、継続かつ表現のものであるばかりか、平穏かつ公然とされ、当初から善意・無過夫であつた。 すなわち、甲乙の各道路敷が旧陸軍省に買収され国有地となつた明治四一年以降も、平穏かつ公然と占有し、善意・無過失であつたから、国有地となつたのも一〇年の経過により甲乙の各道路の通行地役権を時効により取得している。 よつて、本訴において右通行地役権の時効取得を援用する。 (4) 囲繞地通行権原告らは、予備的に、甲乙の各道路につき囲繞地通行権の主張をする。宮内部落所有の前記(2)の各山林は、いずれも宮内部落民が利用する公道に至るまでは右道路以外に通行の方途のない袋地であるから、原告らは囲繞地通行権を有する。 (四) 環境権について(1) 原告らはいずれも東弾着地 前記(2)の各山林は、いずれも宮内部落民が利用する公道に至るまでは右道路以外に通行の方途のない袋地であるから、原告らは囲繞地通行権を有する。 (四) 環境権について(1) 原告らはいずれも東弾着地域に近接する<地名略>、<地名略>、<地名略>の各部落に居住し、平穏かつ安全に農業、牧畜、酪農等の業を営んで生活している者である。 (2) 環境権は憲法一三条・二五条に依拠するものである。 憲法一三条は、国家の国民に対するその生命、自由及び幸福追求の権利(基本的人権)の保障規定である。そして、右の基本的人権の実現は、国民が健康な心身を保持し、安全かつ快適な生活を営むことができる環境、すなわち良好な環境の確保なくしてはありえない。良好な環境の条件としては、種々考えられるが、少なくとも次の四項目が満たされる必要がある。すなわち、(イ)現在及び将来の人が健康で安全かつ快適な生活を営むために必要で十分な自然的・文化的・社会的環境及び環境資源が確保されていること、(ロ)動植物及びその生育環境など自然の生態系が良好に保全されていること、(ハ)人が健康で安全かつ快適な生活を営むために必要で十分な生活環境(人の生活に密接な関係がある財産及び公的設備、施設を含む。)が保全、整備されていることである。そして、国家が良好な環境の確保に悖る行為をしようとする場合、国民が国家に対してその行為の阻止を憲法一三条に基づき請求できることは当然である。 憲法二五条は、国家がすべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(基本的人権)を保障した規定である。右の基本的人権も良好な環境の確保なくしては、とうてい実現しえない。したがつて、国家により良好な環境の破壊行為がされようとする場合、国民が国家に対してその行為の阻止を憲法二五条に基づき請求できることも当然である。 ところで、 確保なくしては、とうてい実現しえない。したがつて、国家により良好な環境の破壊行為がされようとする場合、国民が国家に対してその行為の阻止を憲法二五条に基づき請求できることも当然である。 ところで、憲法一三条及び二五条はいわゆるプログラム規定ではない。憲法の右各条項は、いずれも国民の権利として宣言規定されている。本条の権利は正しく憲法上の権利であつて、憲法の規範が裁判の規範にならないいわれはなく、右各条項に基づいて裁判による救済を求めうることは当然である。 4 原告らへの影響本件射撃訓練及び本件立入禁止措置を事前に差し止めなければ、原告らは、これらによつて回復不可能な損害を被るに至る。 (一) 被告長官の予定している実弾射撃訓練が実施された暁にはその火器の性質からして東弾着地域はその現状を全く一変するほどの損害を被るであろうことは確実であり、東弾着地域の下枝、下草の成育を不可能ならしめ、もつて原告らの有する右地域の入会権を侵害し、原告らに回復不能の損害を生じさせる。 (二) 東弾着地域は前記部落有の山林地域に至る甲乙の各道路に近接しており、右山林には部落において植林をし、常に維持管理する必要があるにもかかわらず、実弾射撃訓練期間中は右各道路の通行は事実上全く不可能に至る。 (三) 本件耕作地は、実弾射撃訓練の弾道下にあり、かつ東弾着地域に近接しており、実弾射撃訓練中は誤射又は流れ弾による不慮の事故の発生する危険性は高く、またその爆発音も高く、原告らは安んじて農作業に従事できない。 (四) 被告長官のする実弾射撃訓練は、その使用火薬の巨大性からみて、その発射音、爆発音等は、原告らの平穏かつ安全な生活をおびやかし、その受忍限度をはるかに超えるものであり、かつ家畜類の生育、乳牛の搾乳に対して著しく悪影響を及ぼすことは明らかである。 被告らは、環境 の発射音、爆発音等は、原告らの平穏かつ安全な生活をおびやかし、その受忍限度をはるかに超えるものであり、かつ家畜類の生育、乳牛の搾乳に対して著しく悪影響を及ぼすことは明らかである。 被告らは、環境破壊の具体的事実が乏しいと主張するが、試射が行われたときの射撃音響のすさまじさは顕著な事実であつて、現に試射の行われている西地区では射撃音が聞こえないように公会堂に特殊施設を施しているぐらいである。実弾射撃訓練は、原告らの生活を徹底的に破壊する。弾道下にある耕作地の耕作は、訓練期間中は危険なため、全く不可能となる。農耕は、それに着手する時期によつて収穫量が大きく左右されるのであつて、一日なり二日なり予定変更を余儀なくされたにすぎない場合にも、結果として収穫の大半を失つてしまうということもまれではない。 被告らは、逐次訓練期間を延ばし、遂には一年の大半を訓練期間として予定しようとしているのである。また、牧畜及び酪農に対する悪影響もはかり知ることができない。動物は極度に神経質であるから、実弾のすさまじい破壊音がいかなる結果をもたらすかはすでに明らかであつて、原告ら居住地区内にある水島牧場の乳牛の搾乳量が試射のきい激減したことは公知の事実である。 試射なるが故に誤射の可能性も当然考えられる。旧陸軍時代に住居のすぐ近くに砲弾が打ち込まれたことは、原告ら地域においても有名な話であり、また、射撃に供された不発弾をもて遊んでいた二人の子供が、その破裂によつて死亡したことも原告らの脳裏を離れないのである。昭和四四年に陸上自衛隊が試射を行つたとき、下草刈をしていた農民の至近距離に試射弾が落下し、後日、その無暴ぶりが国会で取り上げられ、その結果、当時の中曽根防衛庁長官は、地元部落の諒解なしには試射を行わない旨を宣言するに至つた。 良好な環境といえるためには、まず の至近距離に試射弾が落下し、後日、その無暴ぶりが国会で取り上げられ、その結果、当時の中曽根防衛庁長官は、地元部落の諒解なしには試射を行わない旨を宣言するに至つた。 良好な環境といえるためには、まず安全であることが必要であるが、原告らの安全は全く剥奪されている。安全とは結果として危険が発生しないことのみを意味するものではなく、危険の発生に対する危惧感が存しないことの方がより重要である。 口径一〇〇ミリを越す超長距離弾道弾の実射が予定されているのであるから、わずかの誤差によつても、原告らの安全はたちまちにして剥奪されてしまうのである。 誤差が生じないことに対する保障はどこにもない。原告らは、射撃訓練が行われれば、常に安全に対する心からの憂慮や不安をもつて生活することを余儀なくされるのである。このように原告らの生命身体に対する直接的危険性は大であるのみならず、この危険に対する原告らの不安は、はかり知れないものがある。 (五) 被告局長のする立入禁止措置によつて、原告らの入会権、耕作権及び通行権の行使は妨げられ、実質上その権利の行使は不可能となる。 5 本件射撃訓練及び立入禁止措置の違法性について(一) 自衛隊法及び防衛庁設置法は日本国憲法九条に反し、違憲無効であるから、被告らの前記行為もその根拠法規が違憲であつて無効な行為である。 その詳細は以下に述べるとおりであるが、本件訴訟において、自衛隊及びその関連法規が違憲であるか否かという点は実体に対する判断を含めて回避することのできない争点である。 (1) イ憲法九条の規定は憲法前文に掲げる平和主義に立脚して定められており、その一項において、自衛戦争、制裁戦争をも含めたいかなる戦争をも放棄することを定め、その二項において、右戦争の全面的放棄を現実に保障すべく陸海空軍の一切を、そしてまた陸海空軍以外の められており、その一項において、自衛戦争、制裁戦争をも含めたいかなる戦争をも放棄することを定め、その二項において、右戦争の全面的放棄を現実に保障すべく陸海空軍の一切を、そしてまた陸海空軍以外の軍隊か又は軍という名称をもたなくとも、これに準じ、若しくはこれに匹敵する実力をもち必要ある場合には戦争目的に転化できる人的物的手段としての組織体力一切を保持しないと定めたものである。したがつて、本項において一切の「戦力」の保持が禁じられたものである。なお、右の「陸海空軍」とは通常の観念で考えられる軍隊の形態であり、それは「外敵に対する実力的な戦闘行動を目的とする人的・物的手段としての組織体」である。 ロ陸海空の各自衛隊は以下に記述するその編成・行動・規模・装備・軍事能力・演習訓練及び対米軍関係等に照らし、明らかに「外敵に対する実力的な戦闘行動を目的とする人的物的手段としての組織体」であるから軍隊であり、したがつて、陸海空の各自衛隊は憲法九条二項によつてその保持を禁じられた「陸海空軍」という「戦力」である。そして、このような各自衛隊の組織・編成・装備及び行動などを規定している自衛隊法(昭和二九年六月九日法律第一六五号)その他これに関連する法規は、いずれも同様に憲法の右条項に違反し、憲法九八条により効力を有しえないものである。 A 陸上自衛隊について陸上自衛隊の定員は一七万九〇〇〇人、自衛官以外の定員は一万二八七九人、計一九万一八七九人であり、昭和四五年末現在の自衛官は一五万七五七一人である。 その組織及び編成は、幕僚監部のほか、長官の直属部隊として五方面隊(北部・東北・東部・中部・西部)等を配し、方面隊総監部のほか師団(二~四)を基幹とし、これを支援する特科団(砲兵)又は特科群、戦車群、施設団、航空隊、教育団又は教育連隊、地区補給処及び地区病院 隊(北部・東北・東部・中部・西部)等を配し、方面隊総監部のほか師団(二~四)を基幹とし、これを支援する特科団(砲兵)又は特科群、戦車群、施設団、航空隊、教育団又は教育連隊、地区補給処及び地区病院を基準として編成されている。 その装備及び能力としては、迫撃砲、榴弾砲、加農砲、ロケツト、無反動砲及び対戦車誘導弾ホークなど列国陸軍の保有する火器のほとんどを保有し、戦車、自走砲、装甲車、固定翼航空機、ヘリコプター等を有しており、旧陸軍と自衛隊の実力を比較すれば、陸上自衛隊の二次防完成時においてさえ、すでに次のとおりである。 自衛隊の師団火力(一分間の発射弾量)二〇・五トン、火力密度(戦闘正面一平方メートルに対する一分間の銃砲による有効破片弾子)一・九、火力の効力比三、機動力一〇旧陸軍の師団火力一一分間の発射弾量)九・五トン、火力密度(戦闘正面一平方メートルに対する一分間の銃砲による有効破片弾子一〇・六、火力の効力比一、機動力一演習及び訓練としては、一九七一年に北海道で行われた陸上自衛隊北部方面隊航空科運用演習(ヘリコプターを中心とし、ベトナム戦争の戦訓を学び、航空機の運用を中心とした近代戦のあり方について、実際の演習で確かめ、四次防計画の資料とするのが目的である。)、又は一九六八年一〇月三日に東富士演習場で行われた公開治安演習(暴徒の鎮圧を目的とする。)など戦闘行為を目的とする演習及び訓練が随時行われている。 B 海上自衛隊について海上自衛隊の定員は三万七八一三人、自衛官以外の隊員の定員は四七五九人、計四万二五七二人であり、昭和四五年末現在の自衛官は三万六八六九人である。 その組織及び編成は、海上幕僚監部のほか、長官直轄部隊として自衛艦隊、地方隊、教育航空集団、練習艦隊及び中央通信隊群その他がある。 その装備及び能力としては、警備艦として 衛官は三万六八六九人である。 その組織及び編成は、海上幕僚監部のほか、長官直轄部隊として自衛艦隊、地方隊、教育航空集団、練習艦隊及び中央通信隊群その他がある。 その装備及び能力としては、警備艦として護衛艦、潜水艦、駆潜艦、魚雷艇など、その他特務艦、支援船を含め総トン数として一六万一〇〇〇トンの艦艇を有しており、また対潜しよう戒機、ヘリコプター等を保有し、海上戦力はトン数において世界第一〇位、隻数で第八位である。その総トン数においては旧海軍よりも少ないが、艦船武器の進歩により旧海軍と比較しその戦闘力の過小評価は許されない。 その演習及び訓練としては、米海軍との合同演習を重視して実施しており、米極東戦略に組み込まれた演習をしている。 C 航空自衛隊について航空自衛隊の定員は四万六六一七人である。 その組織及び編成は、幕僚監部のほか、長官の直轄部隊として航空総体、飛行教育集団、航空団及び保安管制気象団その他がある。 その装備及び能力としては、F一〇四J、F4EJフアントム、F86Fなどの戦闘機、ナイキアジヤツクス及びナイキJなどの地対空ミサイル、情報兵器としてのバツジシステムを保有し、世界的にみてもインド、イタリアについで第九位の空中戦力を有している。 そして航空自衛隊は、米戦略のもとに組み込まれ、米空軍との共同軍事行動を前提として装備及び訓練の施されているものである。 D 自衛隊総体について「陸海空軍」とはその実体に則して言えば、名称の如何を問わず、対外戦闘行為を目的として組織訓練された武装集団をもつて構成される国家機関であり、陸海空の各自衛隊は右に述べたとおりの人員装備、編成からして、又、その機動力、火力等戦闘能力、演習訓練の実態からみてもまさに右にいう陸海空軍にほかならない。現在、東アジアにおいては社会主義諸国をのぞいて第一位の軍隊であると べたとおりの人員装備、編成からして、又、その機動力、火力等戦闘能力、演習訓練の実態からみてもまさに右にいう陸海空軍にほかならない。現在、東アジアにおいては社会主義諸国をのぞいて第一位の軍隊であるといわれている。又、旧陸海軍と比較しても装備、戦闘力(とくに火力、機動力)の点ではるかに優位にあるといいうるものである。 そして、自衛隊は、日米安保条約、MSA協定、その他諸条約、協定及び合意議事録等により、米軍の極東戦略の一環として位置づけられ、米軍との共同作戦が準備計画され、さらには三矢研究にも現われているように、韓国軍隊との共同作戦も準備計画されている。 ところで、自衛隊が共同作戦を予定している米軍の極東戦略の本質は、ベトナム戦争に明らかなとおり社会主義国又は民族解放運動に対し戦略と干渉を目的とし、アジアにおける反共諸国軍隊(日本も含まれる。)を合わせ用いることにより、その使用する兵器、戦術、戦法において大量殺りくを特徴としている。したがつて、これと共同作戦を行う役割をもつ自衛隊は米軍の不法かつ残虐な対外侵略行動の共犯者たる性格を帯有することとなり、このような自衛隊の保持は憲法をいかに解釈しようともその違憲性は明白である。 また、自衛隊はその予算規模においても、各年平均して第一次防一五一〇億円、第二次防二三〇〇億円、第三次防四六八〇億円、第四次防は一兆四〇〇億円であり、その予算の伸び率は世界の諸外国においてもその例を見ず、第四次防の予算をもつてすれば、わが国の防衛費は、米・ソ・中国・西ドイツ・フランス・イギリスについで世界第七位であつて、列強と何ら異なるところがない。 ところで、自衛隊の精神教育は旧軍隊の軍人精神の承継、反共反人民の教育であり、終局的には上官の命令に絶対服従して敵と戦闘し、このため自己の生命をも投げ打つ軍人、軍隊をつくること 異なるところがない。 ところで、自衛隊の精神教育は旧軍隊の軍人精神の承継、反共反人民の教育であり、終局的には上官の命令に絶対服従して敵と戦闘し、このため自己の生命をも投げ打つ軍人、軍隊をつくることにある。そして、旧軍隊の精神面での伝統の承継、皇国史観的歴史教育による祖国愛、社会主義国家、革新政党、労働組合に対する敵対意識の植えつけがその内容であり、この教育内容に照らしても自衛隊は帝国主義的軍隊というべきである。 さらに、前記の自衛隊の予算規模の拡大増加(軍事費の増加拡大)は日本における軍需産業体制の確立、成長と相まつており、又、一方では三菱グループ(三菱重工、三菱電気)による兵器産業の独占的支配を生み出しており、産・軍複合の途を歩んでいる。 (2) 本件演習場及び陸上自衛隊日本原駐屯地についてイ昭和三九年三月、本件演習場は防衛庁の行政財産とされ、昭和四〇年三月から六月にかけて陸上自衛隊第一三師団特科連隊第二大隊と第一三戦車大隊の隊員合計六〇〇名が移駐し、「陸上自衛隊日本原駐屯地」なるものができあがり、昭和四六年三月には第一三特科連隊の主力が移駐を完了し、同月現在の隊員合計二一五〇名、一〇五ミリ榴弾砲四門、一五五ミリ榴弾砲一六門、高射機関砲二四門、戦車四〇両を保有する中四国では最大かつ第一級の陸上自衛隊基地となつたものである。 ロところで、右の特科とはいわゆる砲兵のことであるが、対地火力の基幹として敵の縦横にわたる火力戦闘を行うものであり、一〇五ミリ、一五五ミリ榴弾砲はそのための中距離の目標をカバーするための火器として機動性、発射速度、弾丸効率等に優れている(なお、実弾射撃訓練に使用される一〇五ミリ榴弾砲の有効射程距離は九・五キロメートルであり、一五五ミリ榴弾砲にあつては一二・七キロメートルであり、その射程距離のため従来の弾着地域で 率等に優れている(なお、実弾射撃訓練に使用される一〇五ミリ榴弾砲の有効射程距離は九・五キロメートルであり、一五五ミリ榴弾砲にあつては一二・七キロメートルであり、その射程距離のため従来の弾着地域では射撃訓練をまかなえず、東弾着地域を新設したものである。)。 また、右戦車のうち国産六一式戦車は九〇ミリ戦車砲を有し、その射程は二〇キロに及び、装甲貫徹力は一〇〇〇メートルで約二〇センチメートルであり、列国現有のあらゆる戦車を撃破できる能力をもつ。 これらに明らかなとおり、陸上部隊のうちでもその基幹である特科機甲部隊を中心とする「陸上自衛隊日本原駐屯部隊」は破壊的な威力を有しており、まさに憲法で禁じられた「戦力」の具現にほかならない。 (3) また、被告局長のする実弾射撃訓練のための本件立入禁止措置は、防衛庁設置法四一条一項に定める「演習場の施設を・・・・・・管理すること」との権限規走によりされたものであるが、防衛庁設置法もまた前述のとおり憲法に違反し効力を有しない法律であるから、防衛庁設置法の右法条に根拠を有する本件立入禁止措置は、有効なる法令上の権限規定を欠く許されざる行為である。 (二) 合意の存在(1) 被告らと原告らとの間には、被告らは原告らの同意なくしては射撃訓練を行わない旨の合意が存在するところ、原告らは、いまだかつて一度も被告らの右射撃訓練に同意したことはない。 したがつて、被告長官が射撃訓練を行うこと及びそれが前提となる被告局長の本件演習場内への立入禁止措置は、違法であつて許されない。 (2) 昭和四〇年七月一〇日、被告らの代表者陸上自衛隊中部方面総監と奈義町長Aとの間に、「日本原演習場の使用等に関する協定」(以下「使用協定」という。)が締結された。右使用協定五条は「この演習場地域における実弾射撃は、諸般の情勢が整い、関係地元当 隊中部方面総監と奈義町長Aとの間に、「日本原演習場の使用等に関する協定」(以下「使用協定」という。)が締結された。右使用協定五条は「この演習場地域における実弾射撃は、諸般の情勢が整い、関係地元当局との相互了解に達するまで、実施しないものとする。」と規定している。右五条中の「関係地元町当局」とは、演習場に関係ある地元部落及び奈義町を指すことは明らかである。 奈義町長の右の締結行為は原告ら地元部落民に対する関係では無権代理行為であつたが、原告らの意思に沿うものであつたので、原告ら地元関係部落はこれを追認し、現在に至つているものである。 被告らは、使用協定が演習場の使用・管理及び地元の利害関係の調整・相互便益化を図ることを本旨とする、と述べているが、演習場内での原告らの耕作権及び通行権との相互調整・便益化を除外しては、その本旨に権悖ることになる。したがつて、奈義町長が演習場内での相互の利害関係の調整・便益化を図るところのその地位は、明示ないし黙示にしろ、原告らの代理又は機関としてしか意味を有しない。 原告らは、右協定五条を肯定したからこそ、町長をもつて原告らの代理人として黙示の承認(追認)を与えたのである。したがつて、代理人たる町長は、原告らの承認なくして、勝手に右五条を撤回したり削除したりすることはできないのであつて、勝手な行動は無権代理行為となり、法的効果は発生しない。原告らは、町長に、右五条の撤回ないし削除の権限を付与したことは一度もない。 (3) 使用協定五条は、地元の同意がない限り自衛隊は実弾射撃をしないことを取り決めているのであるから、協定当事者の具体的義務を定めたものというべきである。 6 結論以上の次第で、被告長官の実弾射撃訓練行為及び被告局長の立入禁止措置は違法であるばかりか、将米これを継続することが明らかであり、一旦これら 当事者の具体的義務を定めたものというべきである。 6 結論以上の次第で、被告長官の実弾射撃訓練行為及び被告局長の立入禁止措置は違法であるばかりか、将米これを継続することが明らかであり、一旦これらが実施されれば原告らの権利は現状に回復することが不可能であつて、事前の差止めを認めないことによる損害は回復すべからざるものがあり、かつ、現行法上他に適切な救済方法も存在しないので、原告らは被告らに対し、請求の趣旨記載のとおり前記各行為の差止めを請求するものである。 二被告らの本案前の主張 1 請求の趣旨第一項について陸上自衛隊が実施する本件射撃訓練は、防衛庁設置法五条二一号に基づき実施する内部職員に対する教育訓練行為の一つであり、その実施の場所、方法、態様からみて、国がその公用財産を、その供用目的に従つてみずから使用する場合にはかならず、その使用の方法、態様は国の有する権利(所有権その他の権利)の範囲内にとどまるものであり、したがつて、その使用関係は公法上の行為であるが本質的には私法上の関係と異ならず、非権力的作用に属する。よつて、本件射撃訓練は、抗告訴訟の対象となる公権力の行使には当たらない。 2 請求の趣旨第二項について(一) (1)原告らは、被告局長が昭和四六年六月二四日、二五日、二九日、三〇日の四日間本件演習場内への原告らの立入を禁止した措置を、公権力の行使に該当する行為であるとし、今後に予想される同様の立入禁止の措置も当然に公権力の行使に該当するとの前提にたつて、その事前の差止めを求める抗告訴訟を提起しているけれども、右の過去及び将来における立入禁止の措置は、以下に述べるように、抗告訴訟の対象となる公権力の行使には該当しないものである。 まず、昭和四六年六月二四日、二五日、二九日、三〇日の立入禁止の措置状況をみると、陸上自衛隊日本 ける立入禁止の措置は、以下に述べるように、抗告訴訟の対象となる公権力の行使には該当しないものである。 まず、昭和四六年六月二四日、二五日、二九日、三〇日の立入禁止の措置状況をみると、陸上自衛隊日本原駐屯地業務隊長(以下「業務隊長」という。)は、同月一七日に地元の奈義町長に対して、前記の各日に原告らが請求原因2(一)に述べているような内容の射撃訓練を行なう予定であること、及び射撃訓練の当日は、本件演習場のうち東弾着地周辺地域(別紙図面(一)のうち「東弾着地域」の周辺に太い黒線で囲んだ部分)については午前六時から午後七時まで立入りが禁止されること、その他の地域についても午前六時から午後七時まで立入りが禁止されるが、午前六時から午前一〇時までは警戒員に届け出れば立入りが認められることを文書で通知している。そして、奈義町長は原告らを含む奈義町民に右の通知の内容を周知させている。また、業務隊長は、そのころ、右の立入禁止の趣旨を記載した立看板を本件演習場内の要所要所に設置して周知を図つている。 右のような立入禁止の措置は、公用物である本件演習場に対する管理権に基づく作用である。その管理権の作用は、演習場本来の目的の達成ないしはこれに対する障害の除去などのために、行政主体がその管理主体としての立場で行なう公の管理、支配の権能、したがつて行政権の作用であつて、私的所有権又は占有権の主体が、物の経済的価値を維持保全するために有する私法上の支配、管理の作用と性質を異にするものである。しかし、管理権の作用であるからといつて、当然にそれが公権力の行使に当たる行為であるとはいえないのであつて、ある管理権に基づく作用が公権力の行使に当たるかどうかは抽象的には、それが法的根拠のもとに行政権の優越的な意思の発動としてされたものであるかどうかによつて決定されるべきもの とはいえないのであつて、ある管理権に基づく作用が公権力の行使に当たるかどうかは抽象的には、それが法的根拠のもとに行政権の優越的な意思の発動としてされたものであるかどうかによつて決定されるべきものである。それを具体的に言えば、当該行為を行政主体の権限と認めた法の趣旨、目的に照らし、その行為や、それに伴つて生ずる効果ないし法律関係を私人相互間の関係と区別して取り扱うだけの合理的根拠があるかどうか、その行為が私人相互間にはみられない関係のものであるかどうかなどを総合して決定されることになる。 ところで、本件演習場の管理主体が演習場の本来の目的である射撃訓練に対する障害を除去、予防するため立入禁止の措置をとりうることができるように、一般私人でもその所有地について右と同様の目的で同様の措置をとりうることも当然できるところである。このような演習場への立入禁止と私人の所有地への立入禁止とを比較すれば、前者は管理権の作用であり、後者は私的所有権の作用である点に差異があるけれども、その行為の実質や、それがもたらす法律上の効果においてはほとんど異なるところがない。 ことに、本件演習場内への立入禁止に関して、原告らに対し公法上の不作為義務や受忍義務を認めた規定も存在しないのであるから、両者を相異なる法規の適用に服させなければならない合理的な理由を見出すことはできない。してみると、本件演習場の管理主体が演習場の本来の目的を達成するために行なう立入禁止の措置は、公法上の行為ではあるけれども、それ自体としては、あたかも私的所有権に基づく保全行為と同視しても差支えないものであり、その意味において公権力の行使に当たる行為ではないというべきである。 あるいは、原告らは、本件演習場への立入禁止の措置により原告らの演習場に対する入会権、耕作権、通行権が制限されるので、公権 であり、その意味において公権力の行使に当たる行為ではないというべきである。 あるいは、原告らは、本件演習場への立入禁止の措置により原告らの演習場に対する入会権、耕作権、通行権が制限されるので、公権力の行使に該当する旨主張するかもしれない。しかし、私人の所有地について、そのような権利が設定されている場合に、その土地所有者が立入禁止の措置をとつたときは、本件演習場と同様の問題が生ずるのであつて、これらの権利が制限されることを理由として公権力の行使に当たるとする主張も失当である。 (2) 国有財産の管理の法律関係は、講学上「管理関係」と称される関係にある。そこでは、法が公共の福祉の実現という行政目的の達成のために特殊な法的取扱を認めているが、その規制対象の実質から言えば、私法の規律対象との間に本質的な差異がないのである。したがつて、管理関係において、法律上別段の定めがある限りにおいては、その規制に従うべきことは当然であるが、それ以外においては、私法規定及び私法原理の類進適用が認められる。本件演習場について、立入禁止を行政処分又は公権力の行使として行い得るものではなく、行政訴訟の対象とならない旨の主張は、かかる特殊な取扱いをすべき実定法上の根拠がないため、基本的な私法規定及び私法原理によるべきであるとすることに基づくのである。 (3) 以上のとおり本件演習場は対する立入禁止の措置は公権力の行使に該当しないので、その事前の差止めを求める本件抗告訴訟は不適法として却下を免れない。 (二) 原告らの請求が本件演習場への立入を妨害してはならないことを訴求する民事訴訟であるとすると、被告局長は当事者能力を有しない。 3 請求の趣旨第一、二項について被告長官に対する関係において、本件射撃訓練の禁止を、被告局長に対する関係において、本件演習場内への立入禁止の 事訴訟であるとすると、被告局長は当事者能力を有しない。 3 請求の趣旨第一、二項について被告長官に対する関係において、本件射撃訓練の禁止を、被告局長に対する関係において、本件演習場内への立入禁止の措置をとることの禁止をそれぞれ求める本件訴えは、行政庁の公権力の発動をまつことなく、裁判所に対しあらかじめ行政庁の行為のいわば差止めを求めるものであつて、いずれもいわゆる予防的不作為命令訴訟の範ちゆうに属するものである。 ところで、このような予防的不作為命令訴訟は、司法権と行政権の所管事項の分配の原理ないしはそれぞれの機能の特質に照らして、後記のような特段の事情の存する場合にはともかくとして、制度上許されないものである。すなわち、元来、行政権を発動するかしないかは、行政機関の所管とされ、行政庁においてまず決定すべき事柄である。司法機関としての裁判所の権限は、現にされた行政庁の決定が法律に適合するか否かを判定するという事後審査の限度にとどまるのが原則である。したがつて、行政機関の所管とされている事項について裁判所が行政庁に対し権限の行使不行使を命じうるものとすることは、裁判所が行政権の上に立つてこれに一般的な監督作用を及ぼすことを認めるものと同一に帰着し、行政庁の第一次的判断権を無視し、三権分立の建前に抵触する結果を承認することとなり許されないのである。司法国家体制をとる憲法の下では、あらゆる形態の訴訟を無名抗告訴訟として認めることによつて司法的救済の幅を拡大し、司法による行政統制の実を挙げるように解釈運用すべきであるとの批判があるとしても、司法国家の意味内容がいかなるものであるかは、憲法を頂点とする実定法規によつて具体的、解釈論的に解明されなければならないものであることに留意すべきである。行政訴訟の管轄が裁判所に帰属させられたことと裁判所が法 味内容がいかなるものであるかは、憲法を頂点とする実定法規によつて具体的、解釈論的に解明されなければならないものであることに留意すべきである。行政訴訟の管轄が裁判所に帰属させられたことと裁判所が法令審査権を与えられたこととをみれば、その限りにおける司法の優位を肯定すべきであろうが、このことから、無名抗告訴訟の名のもとに無制約に裁判上の救済を求めうるものと考えるべきではなく、裁判所の判断権には行政権との関連において、また一定の訴訟構造のもとにおける一定のルールとの関連において一定の限界が認められなければならない。抗告訴訟は、公権的に下された行政庁の第一次的判断を媒介として個人の利益を侵害した場合にその違法状態の排除を目的とするものであり、この手続を通じて司法審査による行政に対する介入的・統制的機能ないしこれに代わる代替的機能を期待すべきものでもなければ、期待しうるものでもないのである。予防的不作為命令訴訟は原則として制度上許されないとしたのは、行政権と司法権それぞれの本質ないし使命に基づく機能的分担を認める憲法の趣旨に沿う公正妥当な解釈というべきである。 このようにみてくると、本件各訴えが予防的不作為命令訴訟でありながら、なお適法として承認されうるか否かは、本件が、右に述べた原則論にもかかわらず、なおこのような訴訟形態が許容されるものとされている場合、すなわち、イ公権力の行使に関して、行政庁の義務が一義的に裁量の余地がないほど明白であつて、裁判所の判断に適する事項であるとか、すでに行政庁が第一次的判断権を行使したに等しい状態にあるというように、行政庁の第一次的判断権を留保する必要がなく、しかも、ロ個人の救済のためには、事前の司法審査が不可欠であり、これによらなければ回復しがたい損害を生ずるというような緊急の必要がある場合に該当するか 行政庁の第一次的判断権を留保する必要がなく、しかも、ロ個人の救済のためには、事前の司法審査が不可欠であり、これによらなければ回復しがたい損害を生ずるというような緊急の必要がある場合に該当するか否かにかかるものというべきである。 しかしながら、自衛隊が実施する教育訓練は、その態様、日時、場所等々についての広範な裁量判断により決せられるべき事柄であり、本件において、射撃訓練を実施するための訓練計画は、陸上自衛隊が使用協定により、地元町当局と本件演習場の使用について十分協議、調整し、その結果を踏まえて、隊員を訓練する必要度に応じ、訓練の参加人員、使用火器の種類及び訓練日程等を、その裁量によつて決定するのである。また、演習場内への立入禁止措置は、陸上自衛隊の具体的訓練計画に基づいて、立入禁止措置を行うかどうか、行うとすれば、その日時、場所、範囲等をその裁量によつて決定するのである。したがつて、これらの事項については一義的に決しうるものではなく、まして行政庁の判断を待つことなしに裁判所が判断を下すに適する事項とする余地は存しない。のみならず、本件射撃訓練及び本件立入禁止措置が行われた場合において原告らが被る不利益は、原告らの主張する入会権、耕作権等(これらが真実認められるか否かは別論として)が一時的に制約されるにすぎないものであり、原告らに事前の司法審査による救済を与えないと回復しがたい損害が生じ、これを防止する緊急の必要があるとはとうてい認められないものである。 以上述べたところによれば、本件各訴えは、いわゆる予防的不作為命令を求めるものであるが、これを許容すべき特段の事情の存しないことが明らかであり、いずれも不適法というべきである。 三本案前の主張に対する原告らの反論 1 本件射撃訓練は公権力の行使に当たる。 被告らは行政庁の公用財産の利 これを許容すべき特段の事情の存しないことが明らかであり、いずれも不適法というべきである。 三本案前の主張に対する原告らの反論 1 本件射撃訓練は公権力の行使に当たる。 被告らは行政庁の公用財産の利用行為はすべて非権力的作用と主張するが、その利用行為が権力作用であるか否かはその利用行為の内容・形態等によつて決せられなければならないというべきである。本件射撃訓練は、国家機関が単に国有財産を管理するというにとどまらず、一般国民にはとうてい許容されることのない軍事行動のための訓練として行うものであり、それが公権力の行使であることは明らかである。しかも、本件射撃訓練は公用財産の一般使用の場合と異なり、原告らの入会権・耕作権及び通行権などの権利の行使を不可能にするものであつて、その会権力性はいつそう明白である。 また、原告らの右主張が正当であることは最高裁昭和五一年(オ)第三九五号大阪国際空港夜間飛行禁止等請求事件・昭和五六年一二月一六日大法廷判決・民集三五巻一〇号一三六九頁(以下「大阪空港事件大法廷判決」という。)によつて明らかである。 2 本件立入禁止措置は公権力の行使に当たる。 (一) 被告局長のする立入禁止措置についても、それによつて国有財産を権力的に使用するものであり、単に行政庁の内部的利用にとどまらず、原告らの入会権・耕作権及び通行権などの行使を不可能にする形態においてされるものである。また、立入禁止の期間中、被告らは武装した自衛隊員を随所に配置し、立ち入ろうとする一般民衆を実力によつて排除するのである。このような行為は、行政機関である被告局長の名をもつてするものであり、権力的行政作用である。しかも、それは違憲・違法な軍事行動の訓練を行うためにされる。 結局、本件立入禁止措置は、違法な国家機関が立入禁止により、実力をもつて、国民の正当な の名をもつてするものであり、権力的行政作用である。しかも、それは違憲・違法な軍事行動の訓練を行うためにされる。 結局、本件立入禁止措置は、違法な国家機関が立入禁止により、実力をもつて、国民の正当な権利行使を不可能にするものであるから、まさに公権力の行使である。 それは私人相互間の権利が相抵触する場合とは、その目的・態様・強制力などにおいて異なるものがあるのである。 なお、本件立入禁止措置が公権力の行使に当たることは、本件射撃訓練の場合と同様、大阪空港事件大法廷判決により明らかである。 (二) 被告らが本件演習場を自衛隊の演習のために使用することは、被告ら主張の「管理関係」に該当しない。 3 行政事件訴訟法三条一項は抗告訴訟を「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」と定義していて、いわゆる「無名抗告訴訟」もこれを許容している。 本件各訴えは予防的不作為命令訴訟であるが、これは、違法な行政処分が行なわれようとする明白かつ現在の危険がある場合、行政庁に対し実体法上その行政処分をしないことを要求する不作為請求権があるとして、その不作為を求める給付訴訟であつて、広義の義務づけ訴訟である。そして本件訴えのような予防的不作為命令訴訟が無名抗告訴訟として許されることは判例通説でもある。 被告らの主張する三権分立論は古典的な権力分立論の形式的原則に固執しすぎている。憲法の基本的指導理念である基本的人権の擁護の精神は法治国における行政の指導理念でなければならないのは当然である。したがつて、裁判による権利侵害の排除が事後的でなければならないとする考えはあまりにも古すざるということになる。 被告らは予防的不作為命令訴訟が許されるための要件として次の二つを指摘する。 すなわち、イ、行政庁の第一次的判断権を留保する必要がないこと、ロ、個人救済のために事前の司法審査が不可 いうことになる。 被告らは予防的不作為命令訴訟が許されるための要件として次の二つを指摘する。 すなわち、イ、行政庁の第一次的判断権を留保する必要がないこと、ロ、個人救済のために事前の司法審査が不可欠で、これによらなければ回復しがたい損害を生ずるというような緊急の必要がある場合であることがこれである。右はやや厳格にすぎ不当りである。仮に被告らの主張するとおりであるとしても原告らの本件訴えは右の要件を充足している。つまり、自衛隊が日本国憲法九条で禁止する軍隊であることについては疑問の余地がなく、その演習行為が憲法上禁止されていることは明白である。したがつて、被告らが請求の趣旨掲記の行為の裁量性を根拠づけるために挙げている地元町当局との間の本件演習場の使用についての協議、調整、被告らのする訓練への参加人員、供用火器の種類及び訓練日程等の具体的事項についての決定判断の裁量性について検討を加える必要はない。さらに被告らは原告らの被る不利益は一時的なもので回復しがたいとはいえないので緊急性がないと主張するが、現実に本件演習場において射撃訓練及び立入禁止がされていないから直ちに右のように断言することはできないと思われる。入会権、耕作権、環境権等に対する侵害の発生、程度、回復の可能性の有無等は直接の当事者である原告らこそ最もよく知つている。例えば、稲作について言えば、その成育過程は大切であり田に水がなくなれば半日にして稲は大打撃をうける。生物を相手にする原告らの生活はその一瞬一瞬が代替性を許さないものである。また射撃訓練によつて砲弾が誤つて人体に当たればその人の生命は失われ、回復しがたい損害を生ずるのである。そして原告らは、如上の損害を避けるために、本件各訴えを提起するよりほかに方法がなかつたのである。 四請求原因に対する被告らの答弁 1 請求原因 人の生命は失われ、回復しがたい損害を生ずるのである。そして原告らは、如上の損害を避けるために、本件各訴えを提起するよりほかに方法がなかつたのである。 四請求原因に対する被告らの答弁 1 請求原因1の事実のうち、原告らが入会権、耕作権及び通行権を有すること、法律上保護を受ける権利としての環境権を有することは否認し、その余は認める。 なお、原告ら主張の耕作権は行政上の許可に基づくものであつて、私法上の権利ではない。 2 (一)同2(一)の事実のうち、被告長官が昭和四六年六月の原告ら主張の日に原告ら主張の軽砲による射撃訓練及びTNT火薬の爆破訓練の実施を計画していたことは認める。また、同年七月、八月及び九月の原告ら主張の日に射撃訓練等を実施したい希望を有していたこと、今後も何らかの射撃訓練が実施される可能性のあることは認める。なお、昭和四六年六月から同年八月までは右射撃訓練等は実施していない。また同年九月にも実施の予定はない。 (二) 同2(二)の事実は否認する。なお、原告ら主張の日に、立入禁止時間を本件演習場のうち東弾着地周辺地域(別紙図面(一)のうち「東弾着地域」の周辺に太い黒線で囲んだ部分)については午前六時から午後七時までとし、その他の地域については午前六時から午後七時(午前六時から同一〇時までは警戒員に届け出れば立入を認める。)までとする立入の全面的禁止をする予定であつたところ、射撃訓練等の中止に伴い、右立入の全面的禁止をしなかつたものである。しかしながら、将来射撃訓練が行われるときは、所要の立入禁止をすることはありうる。 3 (一)同3(一)の事実は否認する。 本件演習場は、明治四一年に旧陸軍省が買収したものであるが、その後、昭和二一年一一月一日に大蔵省所管の普通財産となるまでは旧陸軍が、また、それから同三九年三月三一日に総理府(防 )の事実は否認する。 本件演習場は、明治四一年に旧陸軍省が買収したものであるが、その後、昭和二一年一一月一日に大蔵省所管の普通財産となるまでは旧陸軍が、また、それから同三九年三月三一日に総理府(防衛庁)所管の行政財産になるまでは中国財務局岡山財務部(以下「岡山財務部」という。)が、それ以後現在まで業務隊長がそれぞれ、地元の要望を容れて、一年毎の許可により期間・場所・数量を定め、演習に支障を及ぼさない限度で、周辺農民に本件演習場内での雑草・雑木・下枝の採取を認めてきたところである。このように、原告らが本件演習場内で雑草・雑木・下枝を採取しうる地位は、一年毎の許可によるものであつて、入会権に基づくものではない。 しかもその地位は、演習に支障を及ぼさない限度において認められているにすぎないのであるから、そもそも射撃訓練によりその地位が侵害されるということ自体はありえないことである。 なお、入会権の対象範囲として原告らが主張する土地のうち、三筆の土地(別紙-「人会権の対象範囲について」-記載中※を付した土地)は本件演習場内に存在するが、その余の土地は同所には存在しない。 (二) 同3(二)の事実のうち、原告らが主張するような耕作権が存在することは否認する。但し、原告らのうち、甲事件原告3、10、18ないし20、22、24、25、27ないし31、35、42、43、乙事件原告13の各原告が行政上の使用許可に基づき本件耕作地を耕作している事実はある。 原告らの本件耕作地の耕作は、行政上の許可に基づくものであつて私法上の権利に基づくものではない。すなわち、(1) 旧陸軍との貸付契約が仮に存在するとしても、それは、演習場としての効用を妨げないかぎりにおいて認められるにすぎないのであつて、右の貸付契約の存在が、本件の請求の趣旨を根拠づけるものではない。すなわ 旧陸軍との貸付契約が仮に存在するとしても、それは、演習場としての効用を妨げないかぎりにおいて認められるにすぎないのであつて、右の貸付契約の存在が、本件の請求の趣旨を根拠づけるものではない。すなわち、旧陸軍の貸付については、旧国有財産法(大正一〇年四月八日法律第四三号)によるが、同法四条は、「国有財産ハ雑種財産ヲ除タ外之ヲ譲渡シ又ハ之ニ私権ヲ設定スルコトヲ得ス」「但シ其ノ用途又ハ目的ヲ妨ケサル限度ニ於テ其ノ使用又ハ収益ヲ為サシムルハ此ノ限ニ在ラス」と規定していた。したがつて、旧陸軍が、会用財産である本件演習場を使用、収益させていたとしても、その本来の用途、目的を阻害するような契約をすることはできなかつたのである。また仮に、旧陸軍が、原告らの先祖に本件演習場の貸付をしていたとしでも、右貸付は、いずれも期間一年程度のものであり、順次更新されていても、終戦による旧陸軍の消滅とともに消滅したものである。 (2) 本件演習場は、旧国有財産法施行令二条によつて、昭和二〇年一一月一日旧陸軍省から大蔵省が引継を受け、大蔵省(中国財務局)所管の普通財産となつたが、同二一年三月一五日アメリカ合衆国軍隊等に演習場用地として接収された。そしてその後、昭和二七年に講和条約締結により、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安保条約」という。)三条に基づく日米行政協定二条一項」に基づく施設としてアメリカ軍への提供施設となり、同三二年一〇月一四日大蔵省(中国財務局)に返還されるまで、引き続きアメリカ軍の演習場として使用された。右返還後、防衛庁は本件演習場を自衛隊施設として利用するため、大蔵省に所管換方を申し入れるとともに、関係機関及び地元町当局と折衝を重ねた結果、これらの同意をえたので、昭和三三年四月一日から同三九年三月三〇日までの間 本件演習場を自衛隊施設として利用するため、大蔵省に所管換方を申し入れるとともに、関係機関及び地元町当局と折衝を重ねた結果、これらの同意をえたので、昭和三三年四月一日から同三九年三月三〇日までの間、大蔵省(中国財務局)から三か月毎に更新の特別使用承認をえて陸上自衛隊の演習場として使用してきた。そして、本件演習場は、昭和三九年三月三一日総理府(防衛庁)所管の行政財産となつたが、引き続き陸上自衛隊の演習場として現在に至つているものである。 (3) ところで、原告らの本件演習場内の耕作については、本件演習場が昭和二七年にアメリカ軍への提供施設とされたことに伴い、岡山財務部が現地調査を行つた際、原告らが無断で使用していることを発見したものである。そこで、岡山財務部は、原告ら無断耕作者に対する耕作中止についての接衝方を関係町村当局に依頼したが、原告らはその後も引き続き無断使用し耕作を続けた。そのため岡山財務部は、やむなく原告ら無断耕作者に対し、右無断使用にかかる不当利得による使用料相当額の損害金を請求し、これを徴収してきた。原告らに対する右損害金の徴収は、昭和三九年三月三一日本件演習場が行政財産に所管換になるまで、おおむね各年度毎に継続して行つてきたものである。 (4) その後、本件演習場は、前記のとおり昭和三九年三月三一日大蔵省から総理府(防衛庁)に所管換され、総理府(防衛庁)所管の行政財産になつたが、右所管換に当たり、地元奈義町当局から演習場内耕作地の使用について再三にわたり強い要望がなされた。 そこで、被告局長は、やむなく岡山財務部が不当利得による損害金を徴収していた耕作地についてのみ、国有財産法一八条三項の規定に基づき陸上自衛隊の演習場に供するという行政目的を妨げない限度内で、原告らに耕作を許可しているものである。右許可は一年の期間を限り 害金を徴収していた耕作地についてのみ、国有財産法一八条三項の規定に基づき陸上自衛隊の演習場に供するという行政目的を妨げない限度内で、原告らに耕作を許可しているものである。右許可は一年の期間を限りでされ、更新してきたところであるが、その許可書においても、六条一項において「使用を許可した物件は、国有財産法一八条三項に規定する制限の範囲内で使用させるものであり、使用を許可された者は、常に善良なる管理者の注意をもつて継持保存しなければならない。」とあり、さらに同条三項において「使用を許可された者は、使用期間中であつても、業務隊長が演習場内への立入を禁止したときは、使用許可物件の使用を禁ずる。」と明記してあるところである。 したがつて、原告らの有する耕作権は、行政上の許可に基づくものであつて、私法上の賃借権ではない。また、耕作権の内容は、もともと陸上自衛隊の演習場に供するという行政目的を妨げない限度内で耕作することが認められているにすぎないのであるから、被告らの射撃訓練及びそのための演習場内への立入禁止の措置によつて、原告らの耕作が制約されることがあつても、それは許可に伴う当然の制約であつて、何ら違法視されるいわれはない。 なお、被告らにおいて、実弾射撃訓練及びそのための演習場内への立入禁止の措置をするに当たつては、地元関係者と十分協議のうえ、農耕に実質的な支障を与えないよう、日時・期間等を定めてきたところであり、今後もそのように運用する方針である。したがつて、実質的にみても、原告らの農耕に支障を生ずることはありえないところである。 (5) 被告らは、先に国有財産の管理関係においては、法律上別段の定めがある場合にはその規制に従うが、それ以外においては私法規定及び私法原理の類推適用が認められるべきであると述べたが、右の行政財産である本件演習場につ 先に国有財産の管理関係においては、法律上別段の定めがある場合にはその規制に従うが、それ以外においては私法規定及び私法原理の類推適用が認められるべきであると述べたが、右の行政財産である本件演習場については私法上の貨貸借関係が成立しうる余地がない旨の主張は、国有財産法等の法規による特殊な規制によることに基づくのである。 (三) 同3(三)の事実はすべて否認する。 (1) イ宮内部落から那美池北西部を経て奈義川上流に至る道路(別紙図面(三)記載のAからD2を経てG2に至るまで)について那美池北西部から奈義川上流に至る道路(D2からG2まで)は、F2からG2に至る部分を除き、従来からあつた道路(以下「旧道」という。)を昭和四一年に自衛隊が拡幅整備し、また、一部は旧道に併行して自衛隊が新設したものである。しかも、この旧道は民有林林道現況台帳及び同平面見取図によれば、路線名を奈美線といい、D2からE2を経てF2と結ぶ部分については昭和一九年に、また、F2とG2を結ぶ部分については昭和二一年にそれぞれ豊田村森林組合が岡山県の補助を受けて新設したものである。 宮内部落から那美池に至る道路(AからD2)は明治四一年に旧陸軍省が本件演習場を買収した当時から存在していたかどうか明らかでないが、峻険曲折した道であつたものを、昭和一八年に当時の豊田村森林組合が岡山県の補助を受け、幅員三メートルの道路に改修した。右森林組合は、その後も右道路の改良、災害復旧等の維持管理を行つてきたが、昭和四一年に幅員六メートルに拡幅されてから後は、陸上自衛隊が維持管理を行つて現在に至つている。 ロ成松川西側から背後地境界に至る道路(同図面記載のF1からG1まで)について成松川西側から背後地境界に至る道路は、昭和四一年及び同四五年に陸上自衛隊が施設道路として新設したジープ道で ている。 ロ成松川西側から背後地境界に至る道路(同図面記載のF1からG1まで)について成松川西側から背後地境界に至る道路は、昭和四一年及び同四五年に陸上自衛隊が施設道路として新設したジープ道であり、その後現在まで陸上自衛隊によつて維持管理されている。 ハ宮内部落から那美池東側馬天嶺線交差点に至る道路(同図面記載のAからB2B1を経てE1まで)について宮内部落から那美池に至る道路の途中から分岐して那美神社に接続する幅員約三メートルの道路(B2からB1を経てC1まで)が存在するが、この道路は、陸上自衛隊が、昭和四三年の日本原演習場東地区進入路整備計画により施設道路として新設したものである。続いて、那美神社から那美池東側に至る道路(C1からD1まで)は、幅員約一メートルの山道(以下「山道」という。)であつたが、陸上自衛隊が前記の整備計画を立てた際、地元住民の要望を考慮に入れ、これを幅員三メートルの道路に拡幅した。これに続く那美池東測から馬天嶺線交差点に至る道路(D1からE1まで)は、右山道と同じく、陸上自衛隊が前記昭和四三年の整備計画により、施設道路として新設したものである。そして、その後現在まで拡幅した右山道及び右新設の道路は陸上自衛隊が維持管理してきている。 なおAB1間の道路については、原告らの図示が不正確であるため現地のどの部分を示すのか明らかでない。右の付近には、那美神社又は耕作地に至る道路らしいものはあるが、徒歩通行が漸く可能な程度のもので現状はほとんど使用されている形跡はなく、まして車両等の通行のできるものではない。 ニ宮内部落から那美池に至る道路(同図面記載のAからD2)及び那美神社から那美池東側山道に至る道路(同図面記載のC1からD1)については、旧陸軍省が本件演習場を買収する以前に宮内部落民が右道路敷所有者との合意 から那美池に至る道路(同図面記載のAからD2)及び那美神社から那美池東側山道に至る道路(同図面記載のC1からD1)については、旧陸軍省が本件演習場を買収する以前に宮内部落民が右道路敷所有者との合意に基づく通行地役権を有していたということは全く不明というほかはない。 仮に、宮内部落民が、かつてそのような通行地役権を有していたことがあつたとしても、本件演習場買収後にそのような通行地役権の存続を認めては演習場としての効用を十分に発揮することができず、買収の目的を達することができないのであるから、旧陸軍省が、原告ら主張のように宮内部落民の有した通行地役権を承認のうえで買収するということをするはずがない。 したがつて、明治四一年以後に地元住民が前記道路を通行していた事実が仮にあつたとしても、それは旧陸軍が演習に支障とならない範囲内において、地元住民が演習場背後地の山林経営等のため通行することを黙認してきたにすぎないものである。 また、B2からC1、D1からE1及びF1からG1に至る道路は、いずれも昭和四一年以降に陸上自衛隊が新設した道路であるから、これらの道路につき、旧陸軍による宮内部落民の有した通行地役権の承認の有無を論ずる余地は全くない。 (2) 旧陸軍は、演習に支障のないかぎり、関係地元民に対し、演習場内の通行を認めていたものであり、無制約に通行を認めたことはない。 さらに、甲乙の各道路は、前記のとおり、いずれも原告らが開設したものではなく、かつ、原告らの費用、労力により維持管理されているものでもないから、原告らの右道路の通行は、民法二八三条にいう「継続」の要件を欠くものであり、他の点を論ずるまでもなく通行地役権の時効取得ということはありえないのである。 (3) 原告ら主張の各山林は、多少の不便はあつても、他の道路をもつて通行することができる。 続」の要件を欠くものであり、他の点を論ずるまでもなく通行地役権の時効取得ということはありえないのである。 (3) 原告ら主張の各山林は、多少の不便はあつても、他の道路をもつて通行することができる。 仮に、囲繞地であるとしても、囲繞地通行権は、他の土地の必要最小限の犠牲において認められるべきものであり、被告らは、本件演習場における射撃訓練を効率的に実施するため、地元住民の背後地山林経営等を配慮のうえ、地元奈義町当局と演習場内への立入(道路の通行を含む。)の日数及び日時について十分協議のうえ決定し、射撃訓練の計画を作成している。射撃訓練時以外は、演習場内に地元住民の立入を容認しているものであり、また、背後地山林経営上施設道路を通行することを望めば、これを容認してきているものであつて、背後地山林経営等に何ら支障を来たすものではない。したがつて、右通行権の存在することをもつて、原告らの請求の理由とすることはできない。 (四) 同3(四)の事実のうち、原告らが、いずれも東弾着地域に近接する宮内・広岡・豊沢の各部落に居住し、平穏かつ安全に農業、牧畜、酪農等の業を営んで生活していることは認める。但し、原告らが法律上保護を受けうる権利としての環境権を有する旨の主張は争う。 この点に関する被告らの主張の詳細は次のとおりである。 (1) 原告らは、環境権は憲法上認められている権利であると主張し、その主張するところによれば、憲法二五条に依拠するものと推察される。 しかし、憲法二五条は、立法の指針を示す、いわゆるプログラム規定であつて、これに基づいて直接被告らに対して実体法上の請求権が発生するものでないことはいうまでもない。原告らは、健康な心身を保持し、安全かつ快適な生活を営むことができる環境を享受する権利を有するというが、これは同条の「健康で文化的な最低限度の 法上の請求権が発生するものでないことはいうまでもない。原告らは、健康な心身を保持し、安全かつ快適な生活を営むことができる環境を享受する権利を有するというが、これは同条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を若干用語を変えて表現したにすぎず、なんら実体法上認められた権利ではない。 行政訴訟は私人と行政庁との間の法律的紛争を客観的な法律を基準にして解決するものであり、なかでも、差止請求訴訟は、私人の請求に応じて行政庁に一定の不作為を命ずるものであるから、これを認容するには、行政庁の行政行為を制約するに足るだけの客観的かつ明確な合理的根拠が必要である。実定法上権利としての根拠の全く存しない環境権というようなものにより行政庁の行政行為を無制約に拘束することはとうてい許されるものではない。右に述べたとおり原告ら主張の環境権そのものが根拠薄弱であるのみならず、原告ら主張の環境権破壊の事実なるものも、具体性に乏しいものである。 (2) 原告らは憲法一三条及び二五条に依拠して環境権を有すると主張するが、憲法一三条の法意は、国家は国民一般に対して概括的に生命、自由及び幸福追求に対する権利を立法その他の国政の上で尊重すべき責務を負担しているとの趣旨であり、また、憲法二五条の決意は、国家は国民一般に対して概括的に、健康で文化的な最低限度の生活を営なましめる責務を負担し、これを国政上の任務とすべきであるとの趣旨であつて、いずれの規定も国家の任務を宣言したにとどまり、その規定により直接に、個々の国民に対し、国家に対する具体的、現実的にかかる権利を有することを認めた趣旨ではないのであつて、原告らの所論は失当である。 4 同4の主張は争う。 特に同4(四)について言うならば、被告長官の実施しようとする実弾射撃は、国の行政財産たる本件演習場内において、かつ、一般 た趣旨ではないのであつて、原告らの所論は失当である。 4 同4の主張は争う。 特に同4(四)について言うならば、被告長官の実施しようとする実弾射撃は、国の行政財産たる本件演習場内において、かつ、一般住宅から相当に離隔した場所で行おうとするものであるから、射撃によつて生ずる音響の一般住民への影響は微々たるものにすぎない。 仮に、住民の一部について損害が発生するとしても、射撃訓練の公共性からみて社会生活上一般に受忍すべき限度にとどまるものであるから、差止めを求むべき性質のものではない。 5 (一)同5(一)の主張、すなわち、自衛隊法及び防衛庁設置法は違憲無効であるから本件射撃訓練及び立入禁止措置も違憲であるとする原告らの主張は争う。 (1) 原告らは、自衛隊及び防衛庁設置法(当然にこれに関連する法規を含む。)が違憲無効であると主張し、その理由として、自衛隊が憲法九条にいう「戦力」に該当するとしている。 しかしながら、自衛隊の存在が憲法に違反するか否かは、司法裁判所の審査の範囲に属しないものであり、これが司法裁判所の審査の範囲に属することを前提とする原告らの主張は失当である。 イおよそ独立国が固有の自衛権をもつことは自明のことであり、憲法九条も、わが国が自国の平和と安全を維持し、その存在をまつとうするために必要な自衛のための措置をとることまでも禁止したものでないことは明らかである。そして、この自衛のための措置として、みずから自衛隊を保持して自衛の措置を講ずるか否か、また自衛隊を保持するにしても、いかなる程度の規模、装備、能力等を備えるかなどは、わが国の存立の基礎にきわめて重大な関係を持つ事柄であつて、流動する国際環境、国際情勢及び科学技術の進歩等を将来の展望をも含めて総合的に判断し、わが国の国力、国情に応じて決すべききわめて高度の政治問題である 存立の基礎にきわめて重大な関係を持つ事柄であつて、流動する国際環境、国際情勢及び科学技術の進歩等を将来の展望をも含めて総合的に判断し、わが国の国力、国情に応じて決すべききわめて高度の政治問題である。 わが国は、自衛のための措置として、みずから自衛隊を保持して自衛の措置を講ずることとし、防衛庁設置法をはじめとして自衛隊法等の関連法を制定している。そして、自衛隊の規模、装備等は、国会に提案された関係法律及び予算等につき、国会における慎重な審議を経たうえ、その承認をえて逐次形成されたものである。 このように、わが国の自衛をいかなる措置によつて確保するかは、わが国の国家統治の基本に関するものであり、主権者たる国民に対し、直接責任を負うところの国会及び政府が、流動する国際環境、国際情勢又は科学技術の進歩等諸般の事情を総合的に考慮し、高度の政治的裁量によつて決定すべきものであり、その当否は、最終的には、主権者たる国民の政治判断に委ねられるべきものである。わが国の司法裁判所は、その構成上、国民に対し、直接責任を負わず、また、その権限は具体的な紛争を解決すべきものであり、自衛隊の存立自体のごとき国家の統治基本にかかわり、かつ、高度の政治的裁量を要する事項について判断を及ぼすことはその使命を超えるものである。 ロこのことは、「統治行為」ないしは「統治問題」として、広く諸外国の判例及び学説上認められているうえ、わが国の最高裁判所の判例とするところでもある。 (2) 原告らの、自衛隊法及び防衛庁設置法の違憲無効に関する主張は、以下に述べるとおり正当でない。 すなわち、憲法九条一項は、国際紛争解決の手段としての戦争を放棄することを規定しているが、右により放棄したものは、あくまで国際紛争解決の手段、すなわち自国の主張を他国に認めさせるための圧迫手段としての戦争であ 憲法九条一項は、国際紛争解決の手段としての戦争を放棄することを規定しているが、右により放棄したものは、あくまで国際紛争解決の手段、すなわち自国の主張を他国に認めさせるための圧迫手段としての戦争であつて、単に侵人に抵抗し、自衛するための戦闘行為までも放棄したものではなく、このような点は、当然の事理として判例学説においても異論のないところである。 そして、憲法九条一項は、同条全体の実体規定であり、続く二項はその方法論的保障規定であるから、同項は一項と総合的に解釈されなければならない。 しかるときは、同条二項は一項によつて放棄することを定めた国際紛争解決の手段としての戦争を引き起こすことのないようにするために、国際紛争解決の手段たる同条項にいわゆる戦力を保持しないことを定めたものと解しなければならない。 したがつて、同項は自衛のための必要最小限度の実力の保持については何らこれを禁じているものではなく、自衛力を保持することは、何ら違憲というべきではない。 しかるところ、自衛力としてどの程度の必要最小限度の実力を具備すべきかは一定ではなく、かつ、その最終判断は流動する国際政治、軍事情勢に適応しつつ、わが国と国民の安全と生存について、現在及び将来にわたつて直接の責任を負う立法機関及び行政機関の裁量に属するところである。 そして、自衛隊は国会及び内閣においてそれが憲法に適合するものとの判断に従い、自衛隊法をもつて自衛のためにこれを設け、その目的に適合させて、その組織、編成を定めたものであるから、それは合憲であり、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的とする陸上自衛隊、海上自衛隊航空自衛隊を管理運営する事務を定めた防衛庁設置法が合憲であることも論をまたない。 (3) 本件演習場において、陸上自衛隊は、昭和二五年以来その前身である警察予備隊及び保 とする陸上自衛隊、海上自衛隊航空自衛隊を管理運営する事務を定めた防衛庁設置法が合憲であることも論をまたない。 (3) 本件演習場において、陸上自衛隊は、昭和二五年以来その前身である警察予備隊及び保安隊が占領軍の承認をえて射撃訓練を実施し、昭和三二年の在日合衆国軍隊から日本政府に返還以降は三か月毎に大蔵省の承認をえ、同演習場西地区において射撃訓練を実施してきたところ、昭和三六年七月五日地元奈義町議会が、「演習場の奈義町地内に対し陸上自衛隊常駐部隊を誘致するため努力する」旨の議決をしたため、日本原駐屯地開設問題が表面化した。そして防衛庁が奈義町に対し本件演習場東地区を含む同演習場を全面使用したい旨の意向を示したことから、両者間等において協議等を続けた後、奈義町当局が演習場の全面使用に協力するということで、陸上自衛隊の部隊移駐が決定し、昭和三九年一二月三一日本件演習場は大蔵省から行政財産として総理府(防衛庁)に移管され、昭和四〇年三月陸上自衛隊日本原駐屯地が奈義町地内の国有地上に開設され、同月三一日陸上自衛隊姫路駐屯地から第一三特科連隊第二大隊(定員約二六〇人)が、同年六月一四日陸上自衛隊今津駐屯地(滋賀県)から第一三戦車大隊(定員約三五〇人)が、それぞれ日本原駐屯地に移駐した。 その後、奈義町当局の防衛庁に対する主力部隊移駐の陳情等の動きが活発となり、岡山県知事の仲介等もあつて、主力部隊の日本原駐屯地移駐問題具体化の方向に進展し、従来実施していなかつた本件演習場東地区に対する射撃訓練の実施について、昭和四五年四月九日奈義町議会が、東地区に対する試射訓練の実施に同意する旨を議決し、同月二一日束弾着地域に対し、一〇五ミリ榴弾砲により三発の実弾を射撃した。 同年五月、本件演習場に隣接する部落は、原告ら一部が居住する宮内部落を除き、右演習場東地区 訓練の実施に同意する旨を議決し、同月二一日束弾着地域に対し、一〇五ミリ榴弾砲により三発の実弾を射撃した。 同年五月、本件演習場に隣接する部落は、原告ら一部が居住する宮内部落を除き、右演習場東地区への射撃訓練実施に同意した。同年八月五日奈義町議会は右東地区への射撃訓練実施について諸般の事情が整つたとして、これに同意する旨の議決をした。 これにより、第一三特科連隊(当時姫路駐屯地所在)主力の移駐が決定し、昭和四六年一二月日本原駐屯地は拡張され、同月二四日、同連隊主力(定員約一四五〇人)が、姫路から同駐屯地に移駐し、現在に至つている。 日本原駐屯地に所在する第一三特科連隊は、五個の特科大隊その他から編成され、一〇五ミリ榴弾砲、一五五ミリ榴弾砲、高射機関砲等を装備し、定員約一七〇〇人である。また、同じく同駐屯地に所在する第一三戦車大隊は、四個の戦車中隊その他から編成され、六一式戦車、M四一戦車等を装備し、定員約四五〇人である。 なお、本件演習場の使用に関し、陸上自衛隊と地元との間の利害関係の調和をはかるため、昭和四〇年七月から同四六年三月までの間、陸上自衛隊と地元奈義町及び勝北町との間には数次にわたつて協定書又は覚書等が取りかわされている。 (二) 同5(二)の事実のうち、原告らの同意なくしては射撃訓練を行わない旨の合意の存在はこれを否認する。 (1) 原告らは、「被告らと原告らとの間には、被告らは原告らの同意なくしては射撃訓練を行わない旨の合意が存在するところ、原告らは、いまだかつて一度も被告らの右射撃訓練に同意したことはない。と主張するが、以下に述べるとおり、被告らは原告らとこのような合意をしたことがない。 (2) イ原告ら主張の日時及び当事者間において、原告らが主張するような内容の協定が締結された事実はない。但し、昭和四〇年七月一〇日、業務 とおり、被告らは原告らとこのような合意をしたことがない。 (2) イ原告ら主張の日時及び当事者間において、原告らが主張するような内容の協定が締結された事実はない。但し、昭和四〇年七月一〇日、業務隊長Bと奈義町長Aとの間において(立会人陸上自衛隊中部方面総監C、呉防衛施設局長D及び岡山県知事E)使用協定が締結されている。右使用協定は、本件演習場の使用及び管理に関し、陸上自衛隊と地元の利害関係を調整し相互の便益を図ることを目的とし、右演習場の供用事務担当官である業務隊長と奈義町の行政執行機関としての右町長との間において締結されたものである。 ロ使用協定の締結当初、同協定五条は、「この演習場地域において自衛隊の使用する武器は、通常部隊装備の火砲火器とする。但し、東地区における実弾射撃は諸般の情勢が整い、関係地元当局との相互了解に達するまで実施しないものとする。」と規定されていたが、昭和四五年四月八日奈義町長Fは、同町議会に対し使用協定五条但し書の規定にかかわらず、東地区への射撃に同意する。」旨の提案をして、同町議会は翌九日この提案に同意する旨の議決を行つた。 さらに同町長は、同年八月八日同町議会に対し、「使用協定五条のうち『但し書』を削除する。」旨の提案をして、同日同町議会はこの提案に同意する旨の議決を行つた。 そこで、この議決をうけて、同月一〇日業務隊長Gと奈義町長Fとの間において(立会人陸上自衛隊中部方面総監H、呉防衛施設局長I及び岡山県知事E)、「使用協定の一部を改定する協定」が締結され、使用協定の五条中、但し書の部分は削除された。 ハ原告らは使用協定五条但し書中の「関係地元町当局」とは「演習場に関係ある地元部落及び奈義町を指すことは明らかである。」と主張するが、ここにいう「関係地元町当局」とは奈義町当局を指すのである。 すなわち 告らは使用協定五条但し書中の「関係地元町当局」とは「演習場に関係ある地元部落及び奈義町を指すことは明らかである。」と主張するが、ここにいう「関係地元町当局」とは奈義町当局を指すのである。 すなわち、本件演習場については、業務隊長と関係地元町である奈義町及び勝北町の各町長との間において、同一内容の使用協定が各別に締結されているのであり、そのような関係から、使用協定五条但し書では、奈義町当局を「関係地元当局」と表現しているのであつて、原告ら主張のように、地元部落をも含める趣旨は全くなく、このことは「町当局」という文言自体からも明らかである。 ニ (2)イにおいて述べたとおり、使用協定は、本件演習場の使用及び管理に関し、陸上自衛隊と関係地元町の利害関係を調整し、相互の便益を図ることを目的として締結されたものである。 したがつて使用協定の一方の当事者である奈義町長は、陸上自衛隊と奈義町の利害関係を調整し相互の便益を図り、民生の安定に資するという目的及び配慮から、もつぱら公共の利益のために使用協定を締結したものであつて、特定の地元部落の私的利益のために締結したものでもなければ、地元部落の代理人として、締結したものでもない。 また、使用協定の条項に協定当事者がなすべきこととして掲げられている事項は、一般的ないし抽象的であつて、協定当事者に具体的な義務を課するものとはとうてい認められないのであり、この点から見ても、使用協定が私法上の契約としての法的拘束力を有するものでないことは明らかである。 したかつて、奈義町長が使用協定を締結した行為を、原告らが主張するように原告らに対する無権代理行為であると解することはできず、また、これの追認ということもありえない。のみならず、(2)ロにおいて述べたとおり、使用協定五条但し書は、すでに昭和四五年八月一〇日に削除され 原告らに対する無権代理行為であると解することはできず、また、これの追認ということもありえない。のみならず、(2)ロにおいて述べたとおり、使用協定五条但し書は、すでに昭和四五年八月一〇日に削除されているのであるから、原告らの主張はいずれの点からみても失当というべきである。 6 同6の主張は争う。 五被告らの抗弁 1 原告ら主張の入会権について本件演習場内に原告らが主張するような入会権の性質を有する権利があるか否かは詳らかではないが、仮にそのような権利があつたとしても、旧陸軍省が明治四一年に演習場用地として買収した際に消滅している。すなわち、入会権の存続を認めては、演習場としての効用を十分に発揮することはできず、買収の目的を達することができないので、旧陸軍省かそのような買収をするはずがない。さらに、買収対価の分配方法をみても、地盤所有者と雑草・雑木・下枝の採取を行つていた者との間で、おおむね買収対価を折半しており、このことからも、入会権が消滅していることが十分に推測されるところである。 2 原告ら主張の耕作権及び通行権について原告らは、耕作権、通行権の成立の時期について必ずしも明確に主張をしないが、仮に右の権利が成立していたとしても、それらの権利は、旧陸軍省が明治四一年に本件演習場を買収した際に消滅している。その間の事情は、被告らが入会権について主張したのと同様である。すなわち、それらの権利の存続を認めては、演習場としての効用を十分に発揮することはできず買収の目的を達することができないので、旧陸軍省がそのような買収をするはずがない。 3 原告ら主張の耕作権についで(一) 原告らが主張する耕作地の賃貸借契約が仮に存在したとしても、本件演習場が総理府(防衛庁)所管の行政財産になつたのに伴い当然に、又は合意のうえ消滅している。すなわち、本件 主張の耕作権についで(一) 原告らが主張する耕作地の賃貸借契約が仮に存在したとしても、本件演習場が総理府(防衛庁)所管の行政財産になつたのに伴い当然に、又は合意のうえ消滅している。すなわち、本件演習場が昭和三九年三月三一日総理府(防衛庁)所管の行政財産となつたこと及び呉防衛施設局長が原告らからの申請に基づき国有財産法一八条三項による許可をしていることは、前記のとおりである。そして、行政財産に対しては、賃借権等の権利を設定することはできず(国有財産法一八条一項)、右に違反する行為は無効とされ(同法一八条二項)、同法施行前にされた同法に抵触する行為は、その効力を有しない(同法四二条二項)のであるから、仮に、右の行政財産になる以前に賃借権が設定されていたとしても、それは本件演習場が行政財産になると同時に消滅したものである。仮にそうでないとしても、その後原告らはみずから本件演習場の一部について行政財産であることを認めたうえ、使用許可の申請をした以上、それ以前の私法上の契約は合意のうえ解除されたものである。 (二) 前記(四請求原因に対する被告らの答弁3(二)(3)のとおり、原告らが本件演習場の一部を耕作している土地は、大蔵省所管の普通財産当時は原告らにおいて無断で使用していたものであり、右土地につき国と原告らとの間には、何らの契約関係も存在しなかつたのであるから、原告らは小作権を有するものではなく、農地法適用の余地はない。 したがつて、本件演習場が普通財産から行政財産へ移行された際に、原告らに所管換通知や離作補償をする必要はなかつたのである。そして、本件演習場が昭和三九年三月三一日総理府(防衛庁)所管の行政財産になつてからは、被告局長が管理の一方法として、演習場としての用途又は目的を妨げない限度において、期限を定めて使用を許可しているにすぎ 本件演習場が昭和三九年三月三一日総理府(防衛庁)所管の行政財産になつてからは、被告局長が管理の一方法として、演習場としての用途又は目的を妨げない限度において、期限を定めて使用を許可しているにすぎないもので、私権は生じえないのである。 4 原告ら主張の通行権について原告らは、通行権の根拠として旧所有者との間の合意による通行地役権が存在していたと主張する。被告らは右の事実を否認するが、仮にかような合意があつたとしても、右の権利をその後所有権を取得した国に対抗しうるためには、その旨の登記を要するというまでもない(民法一七七条)。しかるに、本件演習場につき通行地役権の登記が存在しなかつたことは明らかであるから、右権利をもつて国に対抗することはできない。 六抗弁に対する原告らの答弁 1 抗弁1の事実は否認する。 入会権は、明治四一年当時の原告らの先祖の山村農耕者にとつて生活上必要不可欠のものであり、右権利を売り渡すことはない。このことは、原告らがその後も絶えることなく本件演習場に入山し採草採木していたこと及び旧陸軍省、防衛施設庁がいずれも原告らの慣行上の権利を認めると述べてきたことからも明白である。 2 同2の事実は否認する。 3 同3の事実は否認する。 (一) 所管換に基づく行政財産転換以降の権利関係(イ) 昭和三九年三月三一日、本件耕作地は総理府(防衛庁)に所管換となり、軍事目的のための行政財産に転換されることとなつたが、そもそも自衛隊法・防衛庁設置法等一連の軍事法規が憲法前文、九条に違反する以上、右所管換も明白かつ重大な瑕疵があつて効力を生ずるに由なく、法的には依然普通財産としての性格を有するものといわなければならない。 (ロ) 仮に自衛隊違憲論を離れても、右所管換等の処分にかかわらず、原告らの耕作権は私権としての同一性をもつて存続している なく、法的には依然普通財産としての性格を有するものといわなければならない。 (ロ) 仮に自衛隊違憲論を離れても、右所管換等の処分にかかわらず、原告らの耕作権は私権としての同一性をもつて存続しているものと解するほかない。 すなわち、国有財産法が普通財産の貸付契約の解除の場合の損失補償等の手続について定めている(二四条)にもかかわらず、右所管換当時、本件耕作地の貸付契約については、これを解除する旨の意思表示、またこれに伴い必要とされる損失補償等の手続は何らされていないのであり、しかも原告らが所管換後も一貫して耕作占有している以上、右貸付契約はそのまま維持され継続していると解するほかない。 また、所管換とこれに伴う行政財産決定によつて当然に(ほかに解除の手続を要せず自動的に)原告らの耕作権が消滅に帰するとの解釈はとうてい採用することができない。 (ハ) 所管換により、原告らの耕作権が消滅するのであれば、かような処分は、正当な補償なくして財産権を侵害するものとして憲法二九条に違反し、その法的効果は否定されるべきものである。 (ニ) そもそも私権が付着することによつて国の公用を制限することを承認せざるをえない行政財産なるものは自殺的概念であつて、ひつきようするに本件耕作地を行政財産と決定した国の行政処分そのものが重大かつ明白な瑕疵をまとい無効だといわねばならない。 (ホ)仮に本件耕作地の行政財産化の適法有効性を理由づけるとすれば、所管換は国の機関内部の決定にすぎないと解するほかなく、そうとするとそれに伴い従来存した私権の制約を自動的に払試しうるかという問題は、いわば対外的効果にかかわる異次元の問題であつて、本来的に公用と矛盾する私権を強制的に排除するためには収用等の別個独自の行政手続(処分)を経ることを必要とするはずである。しかるにこのような手続は 、いわば対外的効果にかかわる異次元の問題であつて、本来的に公用と矛盾する私権を強制的に排除するためには収用等の別個独自の行政手続(処分)を経ることを必要とするはずである。しかるにこのような手続は履践されていない。 なお国有財産法一八条は行政財産に対する私権の設定を排除しようとした規定であつて、本件のような私権の付着した普通財産が行政財産化された場合の私権の帰すうの問題については何ら関係がないのである。 (二) 国有財産使用許可申請について、原告らは、毎年、防衛権設庁宛てに本件耕作地につき使用許可申請書なる書面を提出しており、右書面によれば原告らはいずれも本件耕作地を行政財産として立入禁止等の使用制限に従うことを承認する旨の記載があるが、このことは河ら耕作権の放棄ないし合意解除等による私権の消滅を意味するものではない。何故ならば、権利放棄の意思表示は確定的かつ明示的にされることを要し、かつ事後的にも権利消滅に対応して外形的事実に格段の変更を伴うのが常態である。しかるに右申請行為は破告局長においてもつぱら原告ら農民の法的無知に乗じ一方的にさせたものであつて、原告らとしても一般人と異る破告局長の要求に従うことが紛争回避となるという意識に基づいて反覆しているにすぎない。また、地代の支払・耕作占有という外形的実体は一貫して継続しているのであつて、右の許可申請という事実のみによつて権利放棄の擬制的解釈を容れる余地はない。さらに農地法二〇条は小作契約の解約につき許可制をとつており、無許可の解約は無効であるから、右手続欠如の理由によつても権利は消滅しない。 七原告らの再抗弁(抗弁4に対して)被告らは背信的悪意者であるから、原告らは、通行権について登記がなくとも被告らに対して対抗しうる。 八再抗弁に行する被告らの答弁否認する。 第三証拠(省略 七原告らの再抗弁(抗弁4に対して)被告らは背信的悪意者であるから、原告らは、通行権について登記がなくとも被告らに対して対抗しうる。 八再抗弁に行する被告らの答弁否認する。 第三証拠(省略)○ 理由第一日本原演習場の概要原本の存在及び成立に争いのない乙第四号証の一・二、成立に争いのない甲第一号証、乙第一号証の一、第一一、第一二号証の各三、第二四号証、第三二号証及び第三三号証、いずれもその方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第一号証の二・三、第三号証、第五号証の一・二、第六ないし第八号証、第九号証の一・二、第一〇号証及び第二一号証、証人Jの証言に弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。 本件演習場は、岡山県の北東部に位置し、行政区画上勝田郡奈義町及び勝北町にまたがつて存在する面積約一一一五万九五〇〇平方メートルの演習場であつて、陸上自衛隊が実施する射撃訓練その他の訓練のために使用されている。そして、本件演習場は、那岐池から近藤高地までを結んだ線を境として、その東側部分を東地区、西側部分を西地区と称されており、それぞれの地区に射撃訓練のための弾着地域が設けられている。 本件演習場は、明治四一年ごろ旧陸軍省が買収して以来、旧陸軍において演習場として使用してきたが、終戦に伴い昭和二〇年一一月一日に大蔵省が旧国有財産法施行令(大正一一年勅令第一五号)二条により旧陸軍省から引継を受けてこれを管理するに至り、その後昭和二七年七月二六日に、日米安保条約三条に基づく日米行政協定二条一項に基づいて締結された「行政協定に基く日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」により、これを在日アメリカ合衆国軍に提供したが、昭和三二年一〇月一四日に使用解除となつて大蔵省に返還され、じ後同省(中国 づいて締結された「行政協定に基く日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」により、これを在日アメリカ合衆国軍に提供したが、昭和三二年一〇月一四日に使用解除となつて大蔵省に返還され、じ後同省(中国財務局)の管理するところとなつた。そして、本件演習場は昭和三九年三月三一日に総理府(防衛庁)所管の行政財産となり現在に至つているのであるが、その間にあつて、陸上自衛隊は昭和三三年四月一日以降これを前記のとおり射撃訓練等のために継続使用(右所管換えの時点までは三か月毎に更新の大蔵省の特別使用の承認による。)している。 なお、本件演習場の南側に接して奈義町内に陸上自衛隊日本原駐屯地が存在するが、これは昭和四〇年三月に開設されたもので、現在、陸上自衛隊中部方面隊第一三師団の第一三特科連隊及び第一三戦車大隊が駐屯している。右第一三特科連隊は一〇五ミリ榴弾砲、一五五ミリ榴弾砲及び高射機関砲等の火器を装備した部隊である。 第二原告らの地位原告らは、いずれも本件演習場付近(宮内、広岡、豊沢の各部落)に居住する住民であつて、その全部が環境権のほか右演習場内に入会権を、甲事件原告1ないし38、乙事件原告1ないし34(いずれも宮内部落民)が右演習場内に通行権を、甲事件原告3、10、18ないし20、22、24、27、28、30、31、35、42、43、乙事件原告3、12、13、31(いずれも宮内又は広岡部落民)が右演習場内に耕作権をそれぞれ有する、と主張しているものである。 第三本件演習場における射撃訓練及び立入禁止の状況前掲甲第一号証、乙第一号証の一・三、第二一号証、第二四号証、第三二号証及び第三三号証、成立に争いのない甲第五四号証の二・三、乙第一一六号証、第二七号証、第三四号証及び第三五証、証大J、同Kの各証言に弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認め 、第二四号証、第三二号証及び第三三号証、成立に争いのない甲第五四号証の二・三、乙第一一六号証、第二七号証、第三四号証及び第三五証、証大J、同Kの各証言に弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。 一射撃訓練及び立入禁止に至るまでの手続等まず、中部方面隊の方面総監部によつてとりまとめられた各師団、連隊及び部隊等の概略の訓練計画書が、毎年各四半期の始まる約二か月前に日本原駐屯地の業務隊長に提出され、これを受付けた業務隊長は、右訓練計画を調整したうえ、四半期毎の演習場使用計画書を作成する。そして、右使用計画書は、当該期の始まる三〇日前までに日本原演習場対策委員会(業務隊長、地元町長及び関係各部落の代表委員等で構成され、奈義町と勝北町に各別に設置されている。)に付議され、本件演習場の具体的使用日程が決定されることとになつている。 次いで、右具体的使用日程は、業務隊長から中部方面総監部及び射撃訓練予定の各部隊に通知され、これを受けた各部隊はその日程の中で細部の射撃訓練実施の態様等を決めて、これを業務隊長に通知する。業務隊長は、射撃訓練実施の一週間前までに、奈義町長、勝北町長、岡山県警察本部長及び津山営林所長等の関係各機関の長に対して、射撃訓練の日時、使用火器の種類及び立入禁止区域等を記載した「実弾射撃実施等について」と題する文書で通知する。これを受けた前記各町当局は、地元の関係各部落長に文書で通知し、各部落長はさらに地区住民に対し、回覧及び掲示板への掲示等の方法により周知徹底を図る。一方、各町当局は、射撃訓練実施の一週間前ごろから、毎日、有線放送により射撃訓練実施の日時及び立入禁止措置等について放送をして、その周知徹底を図つている。 さらに、本件演習場の西地区一〇か所、東地区五か所の演習場に通ずる主要道路の側端には、業務隊長名によつて 放送により射撃訓練実施の日時及び立入禁止措置等について放送をして、その周知徹底を図つている。 さらに、本件演習場の西地区一〇か所、東地区五か所の演習場に通ずる主要道路の側端には、業務隊長名によつて、日ごろから、「射撃を実施する場合には地元民の立入通行を禁止する。」旨の文言及び射撃の種類によつて立入禁止をする区域図を記載した掲示板が設置されており、また、射撃訓練実施の前日までには右掲示板に射撃の具体的内容(日時、種類、立入禁止時間及びその区域)を記載した射撃訓練計画書が貼布され、事前の周知徹底が図られている。 二射撃訓練の実施状況及び立入禁止措置の実態 1 射撃訓練の実施状況等日本原駐屯地の開設に伴い、第一三特科連隊中の第二大隊及び第一三戦車大隊が同駐屯地に移駐した後である昭和四〇年七月一〇日、業務隊長と奈義町長との間で、本件演習場の使用及び管理に関する事項のうち特に自衛隊と地元との間の利害関係を調整し、相互の便宜を図ることを目的として使用協定(「日本原演習場の使用等に関する協定」)が締結されたが、右使用協定中の本件演習場東地区における実弾射撃は実施しない旨の規定(使用協定五条但書)に基づき同東地区においては射撃訓練が実施されていなかつたところ、主力部隊の同駐屯地移駐が具体化してきたことに伴つて、昭和四五年四月九日、奈義町議会が東地区への試射の実施に同意する旨議決したことにより、同月二一日東弾着地域に対し一〇五ミリ榴弾砲による三発の実弾射撃が実施された。そして、同年八月五日に同町議会が東地区への射撃訓練実施に同意する旨の議決をしたことから、同月一〇日に業務隊長と奈義町長との間で使用協定五条但書を削除する旨の協定が成立した。以上の経過で、被告らは、使用協定の上からは本件演習場東地区での射撃訓練についての障害はなくなつた、との理解の下に、 一〇日に業務隊長と奈義町長との間で使用協定五条但書を削除する旨の協定が成立した。以上の経過で、被告らは、使用協定の上からは本件演習場東地区での射撃訓練についての障害はなくなつた、との理解の下に、現に後記のとおり射撃訓練を実施している。 なお、被告長官は昭和四六年六月二四日、二五日、二九日及び三〇日の四日間に、東弾着地域に対し、七五ミリ及び一〇五ミリ各榴弾砲による射撃訓練並びにTNT火薬の爆破訓練を実施する計画を有していたが、結局、都合により実施されなかつた。 その後、東地区においては、昭和五〇年秋ごろ奈義町内の高円部落寄りの馬天嶺付近に新しい東弾着地域及び射撃陣地が新設、整備されたことに伴つて、同年一二月から迫撃砲、ロケツト弾発射筒の射撃訓練が実施されており、その回数は年平均七回程度である。一方、西地区においては、昭和四八年三月一五日から一〇五ミリ榴弾砲、迫撃砲、無反動砲及び小銃等の射撃訓練が実施されており、その回数は年平均二〇回程度である。 2 立入禁止措置の実態射撃訓練実施日までにされる立入禁止に関する措置については前記のとおりであるが、実施当日は、午前八時ごろまでに立入禁止区域の出入口付近の要所に警戒員を配置して誤つて立ち入る者のないように警備するとともに、西地区一〇か所、東地区六か所の演習場内の指定場所に警戒旗(赤旗)を掲揚する。さらに、立入禁止時刻の午前八時からは業務隊員により立入禁止区域内に地元住民等が立ち入つていないかどうかの捜索を実施している。 立入禁止区域は、射撃訓練実施の場所、規模及び態様等により異なるが、東西の各地区において別個にされている現在の射撃訓練の際の立入禁止区域は別紙図面(四)のうち黒線内の部分である。昭和四五年四月二一日に西地区から東弾着地域に対する三発の試射が実施されたときは、本件演習場全域が立入禁 いて別個にされている現在の射撃訓練の際の立入禁止区域は別紙図面(四)のうち黒線内の部分である。昭和四五年四月二一日に西地区から東弾着地域に対する三発の試射が実施されたときは、本件演習場全域が立入禁止となつた。なお、東西の各地区にある弾着地域は常時立入禁止区域となつている。 第四本件各差止請求の適法性原告らは、被告長官が本件演習場において実施する射撃訓練及び被告局長がする本件演習場内への立入禁止措置について、いずれも抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」である旨主張するので、この点について順次判断することとする。 そこで、まず右判断の前提として、行政事件訴訟法三条一項に定める抗告訴訟の性質及びその対象について検討しておくこととする。行政庁の公権力の行使に当たる行為とは、一般に、行政庁が国民に対する関係で優越的な意思の主体として、国民の意思いかんにかかわらず一方的な意思決定に基づき、国民の権利利益に法律上又は事実上の影響を及ぼす行為であり、このような行為については公定力、すなわち正当な権限を有する行政機関又は裁判所により取り消されるまでは、一応適法であるとの推定を受け、行為の相手方はもとより、第三者もその行為の効力を承認し、又は行為の事実上の結果を受忍しなければならないという効力を有することが承認されている。行政事件訴訟法は、このような公定力という考え方を前提とし、国民が公定刀を有するところの公権力の行使により権利利益を侵害された場合の特別の救済制度として民事訴訟とは別に抗告訴訟の制度を設けたものである。したがつて、行政庁の行為のうち、右に述べた公定力を有しない行為については、たとえそれが国家の統治作用としてされるものである点において私人の行為と異なる性質を持つものであり、特別の公法的規制が施されている場合で 行政庁の行為のうち、右に述べた公定力を有しない行為については、たとえそれが国家の統治作用としてされるものである点において私人の行為と異なる性質を持つものであり、特別の公法的規制が施されている場合であつても、これが民事訴訟(行政事件訴訟法上の当事者訴訟を含む。)の対象となるかどうかはともかくとして、抗告訴訟の対象となることはないとされるのである。一方、行政庁の公権力の行使に当たる行為が前記のように行政庁により優越的な立場から一方的な意思決定に基づいてされるものであること、さらにこれが会定力を有するものであることからして、そのうち、少なくとも国民の権利利益を侵害又は制約する行為については、法治主義の要請から、法律による特別の授権に基づき、法の定めた要件を具備する場合にのみすることができるとの制約が生ずることになる。したがつて、このことから逆に、行政作用としてされる特定の行為が公権力の行使に当たる行為に該当するかどうかは、その行為の根拠法規が行政庁に対し優越的な意思の発動としてその行為を行わせ、かつ国民に対しその結果を受忍すべき一般的拘束力を与えることとしているかどうか、また、これを適法化するための要件を定め、かつ行政庁がこの要件の充足の有無を判断して行動すべきことを要求しているかどうかを、行政法規に基づき、その趣旨、目的や行為の性質をも勘案し、個別具体的に検討してこれを決定しなければならないことになる。 一射撃訓練差止請求の適法性 1 本件射撃訓練は、わが国の防衛及び公共の秩序の維持という自衛隊の主たる任務(自衛隊法三条)を遂行するため、防衛庁の長であり、かつ自衛隊の隊務の統括者である被告長官(国家行政組織法一〇条、防衛庁設置法三条、自衛隊法八条)により、防衛庁の権限に属する教育訓練(防衛庁設置法五条二一号)の一環として行われるものであ 長であり、かつ自衛隊の隊務の統括者である被告長官(国家行政組織法一〇条、防衛庁設置法三条、自衛隊法八条)により、防衛庁の権限に属する教育訓練(防衛庁設置法五条二一号)の一環として行われるものであつて、陸上自衛隊の各部隊の編成及び自衛隊員としての実力の養成等を目的とする事実行為としての性質を有するものと解される。 ところで、行政庁の事実行為についても、それが会権力の行使に当たる行為である場合には抗告訴訟の対象となるものと解されるが、その事実行為が私的行為と区別されて抗告訴訟の対象となる公権力の行使に当たる行為といいうるためには、抗告訴訟の性質及びその対象に関する前記理解からすれば、その事実行為が行政庁の一方的な意思決定に基づき、特定の行政目的のために国民の権利利益に実力を加えて行政上必要な状態を実現させようとする権力行為であることを要するものと解すべきであり、したがつて、公権力の行使に当たる行為といえるかどうかは、当該事実行為がその根拠となる行政法規に照らして権力行為といえるかどうかを前記の観点から検討して決めなければならない(この点について、原告らは、本件射撃訓練は一般国民にはとうてい許されることのない軍事行動のための訓練であるから当然に公権力の行使に当たる旨主張する。しかしながら、行政作用のうちで特定の行為が公権力の行使と認められるためには法律による個別具体的な授権が必要であることは前記のとおりであるから、射撃訓練が、その行為の性質上、一般国民には許されることのない防衛行政作用であるからといつて、この一事のみをもつて、直ちにこれを公権力の行使に当たる行為ということはできない。)。 2 そこで、以上の理解の下に本件射撃訓練の公権力性について検討する。 (一) 陸上自衛隊が昭和五一年から昭和五六年までの間、本件演習場の東地区において、年平 使に当たる行為ということはできない。)。 2 そこで、以上の理解の下に本件射撃訓練の公権力性について検討する。 (一) 陸上自衛隊が昭和五一年から昭和五六年までの間、本件演習場の東地区において、年平均七回程度の迫撃砲及びロケツト弾発射筒による射撃訓練を実施したことは前認定のとおりであり、将来、本件演習場の西地区の砲陣地から東地区の弾着地域に対する射撃訓練を実施する意向を有していることは弁論の全趣旨から窺われるところである。一方、原告らの全員又は地域によりその一部の者が入会権を有すると主張するその対象地域は別紙図面(二)のうち黄、青及び茶線内の部分のとおりであるから、陸上自衛隊が本件演習場の東地区において昭和五一年から昭和五六年までの間に実施した射撃訓練の地域と重複し、また、原告らの一部の者が耕作権を有すると主張する耕作地及び原告らの全員が通行権を有すると主張する甲乙の各道路は別紙図面(三)のうち緑線内の部分及び同図面(三)のとおりであるから、その所在位置は右射撃訓練実施地域の外側であるが、将来、本件演習場の西地区の砲陣地から東地区の弾着地域に対する射撃訓練が実施されることになれば、甲乙の各道路についてはその弾道下に位置することとなり、右耕作地についてはその弾道下に位置することはないが、射撃訓練に伴う危険が及ぶ範囲に位置することになるということができる。 したがつて、仮に原告らが有すると主張する入会権、耕作権及び通行権が存在するとした場合には、現在及び将来における射撃訓練の実施によつて、原告らの右各権利の行使が何らかの事実上の制約を受けることは否定できない。 (二) 次に、本件射撃訓練が原告らにおいて有すると主張する右各権利に対し何らかの制約を課し、その受忍を強要しうるものであるかどうかについてみるに、陸上自衛隊の教育訓練に関する法令をつぶ できない。 (二) 次に、本件射撃訓練が原告らにおいて有すると主張する右各権利に対し何らかの制約を課し、その受忍を強要しうるものであるかどうかについてみるに、陸上自衛隊の教育訓練に関する法令をつぶさに検討しても、防衛庁が教育訓練を行う権限を有することを定めた前記の防衛庁設置法五条二一号のほかには、防衛庁の内部部局である防衛局が自衛隊の部隊訓練の基本に関する事務を所掌することを定めた同法一二条五号、同じく内部部局である人事教育局が防衛局の所掌に属するものを除く職員の教育訓練の基本に関する事務を所掌することを定めた同法一四条五号、陸上幕僚監部が陸上自衛隊の教育訓練の計画の立案に関する事務を所掌することを定めた同法二三条二号、方面総監部(防衛部訓練課)が教育訓練の実施計画、演習に関する事務を所掌することを定めた方面総監部及び師団司令部組織規則一七条等の教育訓練の事務所掌を定めた法令並びに防衛諸計画の作成等に関する訓令(昭和五二年四月一五日防衛庁訓令八号)等があるのみである。そして、右諸法令はいずれも教育訓練についての防衛庁ないし自衛隊における組織内部の事務分掌に関するものであつて、一方的に相手方の受忍を強要しうることを定めた規定としては、予備自衛官に対する訓練召集命令に関する自衛隊法七一条及び訓練のための漁船の操業の制限又は禁止に関する同法一〇五条がみられるのみであつて、他に受忍を強要しうることを認めた規定は存在しない。 加えて、本件射撃訓練は、被告長官の権限に基づき、自衛隊が公用財産である本件演習場をその供用目的に従つてみずから使用し、実施されるにすぎないものであつて、その性質上、本件演習場内に本件射撃訓練の実施を妨げる権利が存在しないことを前提とするものであり、仮に存在する場合には収用等の方法によりこれを消滅させたうえで実施することによ すぎないものであつて、その性質上、本件演習場内に本件射撃訓練の実施を妨げる権利が存在しないことを前提とするものであり、仮に存在する場合には収用等の方法によりこれを消滅させたうえで実施することによつても十分その目的を達することのできる性質のもの、換言すれば、本件演習場内に権利を有する者にその受忍を強要してまで本件射撃訓練を実施しなければならないといつた緊急事態を予想しえない性質のものである(それ故、被告長官は原告らが本件演習場内に有すると主張する権利を、むしろ有しないとの立場から本件射撃訓練を実施しようとしているのである。)。 以上によれば、本件射撃訓練については、本件演習場内に権利を有する者に対し、その権利の侵害又は制約を受忍させることのできる根拠規定はなく、またその性質からしても右のような受忍を強要する必要性は存在しないから、これをもつて公権力の行使に当たる行為とみることはできないというべきである(なお、前認定にかかる陸上自衛隊日本原駐屯地業務隊長と奈義町長との間の使用協定は、陸上自衛隊と地元住民の双方が、対等の立場で、本件演習場に関する利害関係を調整し相互の便宜を図ることを目的として締結したものであつて、陸上自衛隊が優越的な立場から原告らが有すると主張する各権利に制約を課すことを目的として締結したものではないから、右協定は、被告長官の一方的な意思決定により原告らに公法上の受忍義務を課す根拠とはなりえない。)。 (三) また、原告らは本件射撃訓練をもつてその有すると主張する環境権に制約を課すものである旨主張するけれども、仮に環境権という権利を是認しうるとしても、本件射撃訓練については、これが国民の権利利益を侵害に又は制約する場合においてもなお、その受忍を強要することができる根拠規定のないことは前記のとおりであるのみならず、そもそも本 是認しうるとしても、本件射撃訓練については、これが国民の権利利益を侵害に又は制約する場合においてもなお、その受忍を強要することができる根拠規定のないことは前記のとおりであるのみならず、そもそも本件射撃訓練は公用財産である本件演習場内において実施されるものであつて、その有形力は、性質上、本件演習場外に居住する原告らの権利利益に向けられたものではないし、その結果により生ずる騒音ないし震動については、一般の企業活動において生ずる騒音ないし震動と同様に、所有権等の私法上の権利相互の調整の問題として私法原理により解決することも可能である。 したがつて、本件射撃訓練は原告らが有すると主張する環境権(又はその背景にある物権ないし人格権)との関係においても公権力の行使に当たる行為とはいえない。 (四) さらに、原告らは大阪空港事件大法廷判決の考え方からすれば、本件射撃訓練が抗告訴訟の対象となる公権力の行使に当たることは明らかである旨主張するので、これについて付言する。 右大法廷判決は、空港管理権と航空行政権とが同一の機関に属し、かつ、空港管理権に基づく管理と航空行政権に基づく規制とが不即不離、不可分一体的に行使実現されていることを一つの論拠に、空港の供用の差止を求める請求が航空行政権の行使の取消変更ないしその発動を求める請求を包含することになるとしたうえで民事訴訟としては不適法であるとしたものである。したがつて、本件においても、右「航空行政権」に対応する「防衛行政権」というものが認められるかどうかがまず問題となる。 そこで、この点を検討するに、右大法廷判決においては、「航空行政権」とは「航空法その池航空行政に関する法令の規定に基づき運輸大臣に付与された航空行政上の権限で公権力の行使を本質的内容とするもの」とされ、具体的には、航空行政権の主管者としての いては、「航空行政権」とは「航空法その池航空行政に関する法令の規定に基づき運輸大臣に付与された航空行政上の権限で公権力の行使を本質的内容とするもの」とされ、具体的には、航空行政権の主管者としての運輸大臣が航空運送事業者に対して免許、認可等の形式で行う様々な規制をもつて航空行政権の行使と把えている。しかしながら、本件射撃訓練においては、教育訓練に関する前記諸法令をみても、右「航空運送事業者」に相当する第三者は存在しないのである。けだし、本件演習場において本件射撃訓練を実施するのはすべて自衛隊員であり、また、その射撃訓練は前記のとおり公用財産である本件演習場をその管理主体がその供用目的に従つてみずから使用しているものにすぎないからである。 したがつて、本件においては、防衛行政権というものを認めることはできないから、右大法廷判決の考え方を本件に援用することはできないものというほかない。 3 以上において検討したところによれば、本件射撃訓練は抗告訴訟の対象となる公権力の行使に当たる行為であるとは認められないから、その差止請求にかかる本件訴えは不適法というほかない。 二立人禁止差止請求の適法性 1 本件演習場の設置及び管理については、防衛庁(長官)がその権限を有し(国家行政組織法一〇条、防衛庁設置法三条、五条三号)、同庁の機関である防衛施設庁(長官)がその権限を行使し(防衛庁設置法四〇条、四一条)、同庁の地方支分部局である呉防衛施設局がその所掌事務を分掌する(同法五三条、五四条)こととされている。そして、本件演習場は自衛隊の施設に供される行政財産として、被告局長が、国有財産法三条、内閣及び総理府所管国有財産取扱規則(昭和五二年四月六日総理府訓令第二号)二条ないし五条、防衛庁本庁所属国有財産(施設)の取扱いに関する訓令(昭和一二八年七月一二日防衛 被告局長が、国有財産法三条、内閣及び総理府所管国有財産取扱規則(昭和五二年四月六日総理府訓令第二号)二条ないし五条、防衛庁本庁所属国有財産(施設)の取扱いに関する訓令(昭和一二八年七月一二日防衛庁訓令第三〇号)三条の各規定により、その管理に当たることとされている。 以上の法令上の根拠の下に、被告局長は本件演習場の管理主体として、射撃訓練の円滑な実施遂行のために本件立入禁止措置をとるものであるから、本件立入禁止措置は本件演習場の管理権に基づく作用であるということができる。 2 ところで、自衛隊員に対する射撃訓練その他の教育訓練事務の用に供されている陸上自衛隊の施設であり、かつ国有財産法上の行政財産であるところの本件演習場の管理権は、演習場を演習の用に供するために法律上認められる特殊の包括的な管理権能であつて、同種の私的施設の所有権に基づく管理権能、すなわち物を財産的価値の客体として管理する権能と全く同一のものであるとはいえない。しかし、公物管理権に基づく一定の行為が公権力の行使に当たる行為といえるかどうかは、抗告訴訟の性質とその対象に関する前記理解からすれば、当該行為を行政庁の権限として認めた法の趣旨、目的に照らして、それが個別具体的な法令の授権に基づき行政庁の優越的な意思の発動としてされるものであるかどうかを検討して決定しなければならないことになる。 3 そこで、本件立入禁止措置についてこれをみるに、右措置は、本件演習場の管理主体である破告局長が行政財産である本件演習場を射撃訓練その他の教育訓練の用に供するという演習場本来の目的の達成ないしこれに対する障害の除去、予防のためにする行為であるというべきところ、被告局長の管理権の根拠となる前記諸法令には本件演習場への立入禁止措置に関する規定は存在しないので、法は被告局長が本件演習場について に対する障害の除去、予防のためにする行為であるというべきところ、被告局長の管理権の根拠となる前記諸法令には本件演習場への立入禁止措置に関する規定は存在しないので、法は被告局長が本件演習場について立人禁止措置をとる場合でも、その優越的な立場から一方的な意思決定によりこれをなし、その行為の結果を相手方に受忍させることは予定していないものというべきである。したがつて、被告局長の行う本件立入禁止措置をもつて公権力の行使に当たる行為ということはできない。もつとも、被告局長の有する管理権は所有権に基づく管理権能と同等の権能であるから、被告局長は、私人がその所有地に対し所有権に基づいて立入禁止措置をとることができるのと同様に、本件演習場についても立入禁止措置をとることができ、しかして、その場合の法律関係は私人の所有地に関する私人間のそれと実質的には何ら異なるものではない。 4 なお、被告らは、原告らが有すると主張する耕作権は国有財産法一八条三項にいわゆる行政財産の目的外使用許可に基づくものであると主張しているので、これを前提として本件立入禁止措置の公権力性について検討するに、成立に争いのない乙第一七号証の二によれば、原告らに対する国有財産使用許可書には使用上の制限として、その六条一項で「使用を許可した物件は、国有財産法一八条三項に規定する制限の範囲内で使用させるものであり、使用を許可された者は、常に善良なる管理者の注意をもつて維持保存しなければならない。」と、また、同三項で「使用を許可された者は、使用許可期間中であつても業務隊長が演習場内への立入を禁止したときは、これに従うこと。」と定められていることが認められるのであつて、右制限は、使用許可の付款というベきであるから、立入禁止措置がとられた場合に、使用許可を受けた原告らが本件演習場内での耕作使用 たときは、これに従うこと。」と定められていることが認められるのであつて、右制限は、使用許可の付款というベきであるから、立入禁止措置がとられた場合に、使用許可を受けた原告らが本件演習場内での耕作使用を制約されるのは、使用許可自体の効果によるものであつて、立入禁止措置自体によるものと解することはできない。したがつて、原告らの耕作使用が目的外使用許可に基づくものであつても、本件立入禁止措置をもつて公権力の行使に当たる行為であるとすることはできない。 5 ところで、被告局長が本件立入禁止措置を事実上の行為としてした場合、すなわち本件演習場内に私法上の権利を有すると主張する原告らが右措置に反して立ち入ろうとするのに対して、右権利の存在を否定する被告局長が管理権に基づいてこれを実力で排除した場合、右管理権の根拠となる前記諸法令にはこの点に関する規定が存在しないこと、及びその場合の法律関係が私人の所有地に関する私人間のそれと実質的には何ら異なるものでないことは、いずれも前記のとおりである(なお、入ることを禁じた場所に正当な理由がなく立ち入ることのできないことについては軽犯罪法一条三二号参照)。 したがつて、この点からみても、本件立入禁止措置をもつて公権力の行使に当たる事実行為であるとすることもできない。 6 また、本件において防衛行政権というものを認めることができないことは前記のとおりであるから、本件立入禁止措置についても、大阪空港事件大法廷判決の考え方を援用する原告らの主張は採用しがたい。 7 以上において検討したところによれば、本件立入禁止措置は抗告訴訟の対象となる公権力の行使に当たる行為であるとは認められないから、その差止請求にかかる本件訴えも不適法というほかない。 第五結論以上の次第で、原告らの本件射撃訓練及び本件立入禁止措置の差止請求にか 対象となる公権力の行使に当たる行為であるとは認められないから、その差止請求にかかる本件訴えも不適法というほかない。 第五結論以上の次第で、原告らの本件射撃訓練及び本件立入禁止措置の差止請求にかかる本件訴えはいずれも不適法であるから、これを却下することとする(なお、本件射撃訓練及び本件立入禁止措置が行政事件訴訟法三条一項の公権力の行使に当たらず、その結果、これらを抗告訴訟において争うことができないことは前記のとおりである。そこで、本件紛争の実態に鑑み、いかなる手続においてこれを解決すべきかについて付言する。まず、本件においては、原告らが本件演習場内に有すると主張する入会権、耕作権及び通行権の各権利関係の存否が明らかでないところに一つの紛争があるのであるから、原告らとしては、右各権利の確認請求又はこれが物権ないし同類似の権利である場合には妨害排除の請求を内容とする民事訴訟を提起することによりその救済を求めることができる《入会部落の構成員が単独で自己の使用収益権の確認請求又は妨害排除請求をすることができることについては最高裁昭和五七年七月一日第一小法廷判決民集三六巻六号八九一頁参照》。また、他の一つの紛争である環境権の侵害については、むしろ物権又は人格権に基づき、受忍限度を超える範囲内で本件射撃訓練の結果により生ずる騒音ないし震動を本件演習場外に発することの差止請求又は損害賠償請求を内容とする民事訴訟を提起することによりその救済を求めることもできる。)。よつて、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官白石嘉孝岡久幸治黒岩巳敏)別紙当事者目録、入会権の対象範囲及び図面(一)、(二)(省略) のとおり判決する。 (裁判官白石嘉孝岡久幸治黒岩巳敏)別紙当事者目録、入会権の対象範囲及び図面(一)、(二)(省略)
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