- 1 -平成21年5月22日判決言渡東京簡易裁判所平成20年(少コ)第3397号保証委託料請求事件(通常手続移行)判決主文 被告らは原告に対し,連帯して,金25万2000円及びこれに対する平成。 20年7月15日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え 訴訟費用は被告らの連帯負担とする。 この判決は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1請求の趣旨主文同旨第2事案の概要 請求原因の要旨( )賃貸借契約及び連帯保証契約の成立 被告有限会社A商事(以下「被告会社」という)は,訴外有限会社C(以。 下「賃貸人」という)との間で次のとおり賃貸借契約を締結し,下記物件の。 引渡しを受けた。被告Bは賃貸人に対し,本件賃貸借契約に基づく被告会社の債務を,同日書面により連帯保証した。 (ア)契約日平成18年7月21日(イ)賃貸物件所在東京都千代田区a町bc丁目d番e号Dビル一棟156.26平方メートル(ウ)賃貸期間2年間(更新により平成22年7月20日満了予定)(エ)賃料1ヶ月金84万円(消費税込み)なお,原告は賃貸人に対し,本件賃貸借契約に基づく被告会社の債務を,- 2 -書面により保証した(以下「保証契約」という。 。)( )保証委託契約及び連帯保証契約の成立 原告は被告会社からの委託により,被告会社との間で次のとおり保証委託契約を締結した。被告Bは原告に対し,本件保証委託契約に基づく被告会社の債務を,同日書面により連帯保証した。 (ア)契約日平成18年7月21日(イ)契約期間2年間(賃貸借契約が更新されたときは,更新期間分延長する)(ウ)保証委託料金84万円(消費税込み)(エ)再保証委託料契約期間が更新期間分延長されたときは,金84万 1日(イ)契約期間2年間(賃貸借契約が更新されたときは,更新期間分延長する)(ウ)保証委託料金84万円(消費税込み)(エ)再保証委託料契約期間が更新期間分延長されたときは,金84万円(消費税込み)を更新期間開始日の1週間前に支払う。ただし,10日間以上の賃料滞納がない場合は,30パーセントにあたる金25万2000円とする。 ( )賃貸借契約の更新及び保証委託契約期間の延長 ,被告会社と賃貸人は平成20年7月21日から賃貸借契約を更新したのでこれにより本件保証委託契約期間も延長され,被告会社は原告に対し,同契約4条2項により再保証委託料金25万2000円を,更新期間開始日の1週間前である7月14日までに支払う義務がある。 被告らの主張の要旨( )保証委託契約の解除ないし更新・延長拒否の通知 被告会社には本件保証委託契約を解除する権利があり,被告会社が原告に対し,平成20年3月か4月頃と,同年5月ないし6月の2回にわたり,本件保証委託契約を更新ないし延長しないことを通知したことにより契約は終了しているから,再保証料の支払義務はない。 ( )公序良俗違反 本件保証委託契約は,①賃貸人が原告を指定し,賃貸人と原告で契約内容を決定し,被告らには契約内容を事前に十分知らされず,説明も受けていな- 3 -い状態で締結を強制されたこと,②初回保証料が業界の水準に比べて約3倍近い高額であること,③更新のたびに永久に再保証料を取り続けること,④再保証料の支払を軽減,免除される手続が存在しないこと,⑤賃料不払い等があった場合に物件の鍵を一方的に変更する権限を原告に与えたり,滞納賃料の取りたて等の権限を原告に与えたり,2ヶ月の賃料不払いをした場合に賃貸人が800万円の預託金返還請求権を原告に譲渡するなどの,原告の不当 に物件の鍵を一方的に変更する権限を原告に与えたり,滞納賃料の取りたて等の権限を原告に与えたり,2ヶ月の賃料不払いをした場合に賃貸人が800万円の預託金返還請求権を原告に譲渡するなどの,原告の不当な権利行使を容易に認める条項が含まれていること,などの事情を総合すれば,公序良俗違反により無効である。 ( )錯誤無効 被告らは,契約締結の際に,原告と仲介会社であるE株式会社(以下「仲介会社」という)に対し,当初契約期間の2年間賃料を滞りなく支払えば,。 その後の更新時には保証委託契約は更新しない旨を申し入れ,これが受諾されたものと思っていた。滞納しないで賃料を払っても更新の度に賃料の30パーセントの再保証料を払い続けると,信用が付加されるのに保証料総額は機械的に増加するという不合理なものであり,金額も多額になるという点で更新の度に再保証料を払うという合意には重要な要素に錯誤があり,無効である。 ( )借地借家法違反 本件保証委託契約は賃貸借契約と一体不可分の関係にあり,賃貸借契約更新の都度,保証委託契約も更新し再保証料を支払わせる点において賃借人に,,不利な条件を強いたもので借地借家法30条自体ないしその趣旨に違反し無効である。 原告の反論の要旨( )被告会社に,期間の定めのある本件保証委託契約を一方的に解除する権利 があるとの主張は争う。被告会社主張のとおり,本件保証委託契約を更新ないし延長しない旨の通知があったが,それによって契約が終了することはなく,被告らの再保証委託料支払義務がなくなることはない。 - 4 -また,原告が契約締結を強制したことはなく,被告らは前記の契約条件を考慮した上で契約するかしないかを決定する自由があったのであり,最初の2年間賃料不払いがなかった場合でも,その後の更新に際して賃貸人が保証 原告が契約締結を強制したことはなく,被告らは前記の契約条件を考慮した上で契約するかしないかを決定する自由があったのであり,最初の2年間賃料不払いがなかった場合でも,その後の更新に際して賃貸人が保証人のない契約を締結しなければならない理由はない。 ( )仮に,被告らが,最初の2年間賃料不払いがなければ,その後の更新時に は保証委託契約は更新されず再保証料の支払義務はなくなるとの錯誤に陥っていたとしても,賃貸借契約書及び保証委託契約書には,賃貸借契約が更新されたときは,保証委託契約も更新期間分延長され,再保証料を支払う旨が明確に約定されているから,被告らに重大な過失がある。 ( )再保証料の支払いによって原告の賃貸人に対する保証責任を継続負担さ せ,本件賃貸借契約に基づく賃借人の地位を安定して享受することができるのであるから,賃借人に不利な特約として借地借家法30条ないしその趣旨に違反するとはいえない。 本件の争点本件保証委託契約の有効性第3当裁判所の判断 認定事実証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 ( )原告は不動産賃貸借契約に伴い,賃借人の賃料債務等を保証することを業 とする株式会社であり,被告会社は中華料理店を営む資本金1000万円の有限会社,被告Bは被告会社の唯一の取締役である。 ( )被告Bは中国武漢市に生まれた中国人であるが,F大学卒業後1989年 にG大学の研究生として来日し,1991年にH大学大学院法学研究科に入学して2年間国際法を勉強し,1993年に日本語で修士論文を提出して修士の学位を取得して卒業し,I百貨店に就職して3年間勤務した。その後,2003年3月頃,知人から中華料理店の運営を任されたことから,自分の店を持ち,事業,会社を拡大して行きたいと考えるようになり,本 士の学位を取得して卒業し,I百貨店に就職して3年間勤務した。その後,2003年3月頃,知人から中華料理店の運営を任されたことから,自分の店を持ち,事業,会社を拡大して行きたいと考えるようになり,本件ビルを- 5 -賃借して中華料理店を経営することとなった(乙5,被告代表者本人。 )( )被告代表者は,仲介会社から本件賃貸借契約書(甲1)の文案を事前に示 ,()。 (),され目を通していた被告代表者本人同契約書甲1の特約条項には「乙(賃借人)は本契約締結にあたり,甲(賃貸人)が指定する賃貸保証システムに加入するものとする「本契約更新の際,賃貸保証システムも更新」,することとする「保証委託契約料,更新料は乙(賃借人)の負担とする」」,との記載がある。 ( )賃貸人と仲介会社が保証会社として原告を選定し,被告代表者が保証人を 選定することは認められなかった。本件保証委託契約書(甲2)は,契約当日に被告代表者に示された(被告代表者本人。同契約書第4条には,前記第)2の1の( )(イ)ないし(エ)と同旨の記載がある。 ,(),( )被告代表者は原告と賃貸人間で締結された保証契約書甲5の内容は 本件訴訟に至るまで知らなかった。 以上認定した事実を踏まえて,被告らの各主張及び原告の主張の当否について検討する。 ( )保証委託契約の解除又は更新・延長拒否の通知による契約終了について 被告会社が原告に対し,2回にわたり本件保証委託契約を更新ないし延長しないことを通知したことに争いはない。しかし,本件保証委託契約は,賃貸人と被告会社間の賃貸借契約,賃貸人と原告間の保証契約と相俟って本件賃貸保証システムを構築しているものであり,期間の定めのある本件保証委託契約のみを被告会社が一方的に解除する権利 証委託契約は,賃貸人と被告会社間の賃貸借契約,賃貸人と原告間の保証契約と相俟って本件賃貸保証システムを構築しているものであり,期間の定めのある本件保証委託契約のみを被告会社が一方的に解除する権利があるとの主張にはなんら根拠がないといわざるを得ず,被告の主張は認められない。 ( )公序良俗違反について 本件保証委託契約が締結された経緯をみても,被告らが契約締結を強制され,諾否の自由を抑圧されて契約したことを認めるに足りる証拠はない。 賃貸人が保証会社として原告を指定し,賃貸人と原告のみで契約内容を実質的に決定していたとしても,被告らには契約内容を検討する機会が与えら- 6 -れ,契約締結を拒否ないし留保することができたものと解される。また,仮に,被告ら主張のとおり,初回保証料が業界の水準に比べて約3倍近い高額であり(その根拠には疑問の余地があるが,更新のたびに永久に再保証料を)取り続け再保証料の支払を軽減,免除される手続が存在しないなど,賃借人である被告らに一方的に不利益な条件であると判断したのであれば,契約締結を拒否ないし留保することができたものと解される。さらに,本件保証委託契約とともに本件賃貸保証システムを構築している賃貸借契約,保証契約には,賃料不払い等があった場合に物件の鍵を一方的に変更する権限を原告に与えるなどの原告の権利行使を容易に認める条項が含まれていることが認められるが,これらの条項に基づく原告の不当な権利行使が現実に行われ,これにより被告らになんらかの被害が生じたとの事実についての主張立証はない。 ,,以上の事情を総合すれば本件保証委託契約締結の経緯及びその内容には公序良俗違反により無効とすべき程の反社会性・反倫理性があるとは認められないというべきである。 ( )錯誤無効について 被告らは,契約締 情を総合すれば本件保証委託契約締結の経緯及びその内容には公序良俗違反により無効とすべき程の反社会性・反倫理性があるとは認められないというべきである。 ( )錯誤無効について 被告らは,契約締結の際に,原告と仲介会社に対し,当初契約期間の2年間賃料を滞りなく支払えば,その後の更新時には保証委託契約は更新しない旨を申し入れ,これが受諾されたものと思っていたとして錯誤を主張している。そして,被告代表者は中国人であるが,賃貸借契約書(甲1)及び保証委託契約書(甲2)に,賃貸借契約が更新されたときは保証委託契約も更新期間分延長され,再保証料を支払う旨の記載があるのを見落としたと述べるが,F大学卒業後にG大学の研究生として来日し,その後H大学大学院法学研究科に入学して2年間国際法を勉強し,日本語で修士論文を提出して学位を取得したという経歴からすると,むしろ一般人よりは本件のような契約条項についての理解力が優れているとみるのが相当であり,仮に被告らに契約内容についての錯誤があったとしても,被告らに重大な過失があるといわざ- 7 -るを得ず,錯誤無効を主張することは許されない(民法95条但書。 )さらに,滞納なく賃料を払っても更新の度に賃料の30パーセントの再保証料を払い続けることは,信用が付加されるのに保証料総額は機械的に増加し多額になるという不合理な合意であり,重要な要素に錯誤があると主張する。しかし,最初の2年間賃料不払いがなく一定の信用が付加されたとしても,その後の更新に際して賃貸人がまったく保証人のない,無担保の契約を締結しなければならないとする合理的な理由もないというべきである。本件保証委託契約においては,2年間賃料不払いがないことによる信用付加については,再保証料を30パーセントに減額することで相当に評価されているのであり, いとする合理的な理由もないというべきである。本件保証委託契約においては,2年間賃料不払いがないことによる信用付加については,再保証料を30パーセントに減額することで相当に評価されているのであり,保証料総額が機械的に増加する不合理な合意であるとの主張には理由がないというべきである。したがって,この点を理由とする錯誤無効の主張は認められない。 ( )借地借家法違反について 前記のとおり,本件保証委託契約が,賃貸借契約及び保証契約とともに本件賃貸保証システムを構築している一体不可分の関係にあることは,被告らが主張するとおりである。しかし,賃貸借契約更新の都度,保証委託契約も更新し再保証料を支払わせることが,賃借人である被告会社に一方的に不利な条件を強いるものであるとする点は,当初の契約時点で被告らには諾否の自由があったこと,継続的な契約関係である賃貸借契約において契約更新後も一定の保証システムが随伴することに一定の合理性が認められること,再保証料の支払いによって原告の賃貸人に対する保証責任を継続負担させ,本件賃貸借契約に基づく賃借人の地位を安定して享受することができること,本件保証委託契約においては,2年間賃料不払いがないことによる信用付加について再保証料の30パーセント減額により相当程度評価していることなどを考慮すると,これを賃借人である被告会社に一方的に不利な条件を強いるものであるとして借地借家法30条ないしその趣旨に違反するとみることは相当でなく,被告らの主張は理由がない。 - 8 - まとめ以上によれば,被告らの主張はいずれも認められず,原告の請求には理由があるので,主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第9室藤岡謙三裁判官 主文 められず,原告の請求には理由があるので,主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第9室 藤岡謙三 裁判官
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