- 1 -令和5年(ネ)第1812号消費者契約法による差止請求控訴事件令和6年12月19日大阪高等裁判所第5民事部判決 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴人の当審における訴えの変更(追加請求)を許さない。 3 当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨(下記のうち別紙契約条項目録記載2の3.及び4.に係る部分は当審における追加請求である。) 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、消費者との間で、インターネットを経由して、被控訴人運営に係るテーマパークであるユニバーサル・スタジオ・ジャパンのチケットの購入契約を締結するに際し、別紙契約条項目録記載の各条項を内容とする意思表示を行ってはならない。 3 被控訴人は、前項記載の各条項が記載されたWEBチケットストア利用規約が印刷された規約用紙及び同規約が掲載されたウェブページを破棄せよ。 4 被控訴人は、その従業員らに対し、下記の内容を記載した書面を配布せよ。 記当社は、消費者との間でユニバーサル・スタジオ・ジャパンのチケット購入契約を締結するに際し、別紙契約条項目録記載の各条項を含む意思表示を行いませんので、当社が当該各条項を使用したチケット購入契約を行うための事務は一切行わないようにするとともに、当該各条項が記載されたWEBチケットストア利用規約が印刷された規約用紙及び同規約が掲載されたウェブページは全て破棄してください。 第2 事案の概要- 2 - 1 本件は、適格消費者団体である控訴人が、テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(以下「US び同規約が掲載されたウェブページは全て破棄してください。 第2 事案の概要- 2 - 1 本件は、適格消費者団体である控訴人が、テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(以下「USJ」という。)を運営する被控訴人に対し、①被控訴人が消費者との間でインターネットを経由してチケットの購入契約を締結する際に適用される利用規約(WEBチケットストア利用規約)中にある、一定の場合を除き購入後のチケットのキャンセルができない旨の条項(別紙契約条項目録記載1の条項。以下「本件条項1」という。)が、消費者の利益を一方的に害する条項に該当するなど消費者契約法(以下「法」という。)10条及び法9条1項1号の条項に当たると主張するとともに、②上記利用規約中にある、チケットの転売を禁止する旨の条項(別紙契約条項目録記載2の1. の条項。以下「本件条項2」といい、本件条項1と併せて「本件各条項」ともいう。)が、同じく法10条の条項に当たると主張し、法12条3項に基づく差止請求として、本件各条項を内容とする意思表示の停止(前記第1の2)、本件各条項が記載された上記利用規約が印刷された規約用紙等の破棄(前記第1の3)及び上記の意思表示の停止等のための被控訴人の従業員らに対する書面の配布(前記第1の4)を求めた事案である。 原審が控訴人の請求を全部棄却したので、これを不服とする控訴人が、本件控訴を提起した。 控訴人は、当審において、別紙契約条項目録記載2の3.及び4.(以下、併せて「本件追加条項」という。)が法10条の条項に当たると主張して、本件追加条項について、その意思表示の停止(前記第1の2)、これらの条項が記載された上記利用規約が印刷された規約用紙等の破棄(前記第1の3)及び上記の意思表示の停止等のための被控訴人の従業員らに対する書面の配 項について、その意思表示の停止(前記第1の2)、これらの条項が記載された上記利用規約が印刷された規約用紙等の破棄(前記第1の3)及び上記の意思表示の停止等のための被控訴人の従業員らに対する書面の配布(前記第1の4)の各請求を予備的に追加する旨の訴えの変更をした。これに対し被控訴人は、上記訴えの変更について、異議を述べた。 2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実、当裁判所に顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨から容易に認定することができる事実)、関連法- 3 -令の定め、争点及びこれに対する当事者の主張は、下記のとおり補正し、後記3のとおり当審における控訴人の補充的主張を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」中「第2 事案の概要」の2ないし4に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決2頁26行目以下、各「法9条1号」とあるのを全て「法9条1項1号」に改める。 ⑵ 原判決3頁15行目から16行目にかけて、4頁2行目から3行目にかけて及び13行目の各( )内の記載を、いずれも「争いがない」に改める。 ⑶ 原判決4頁2行目の「転売を禁止する旨」を「転売を禁止するなどの旨」に改め、同行目の「(本件条項2)」の次に「及び本件追加条項」を加える。 ⑷ 原判決4頁17行目の「法9条」を「法9条1項」に改める。 ⑸ 原判決5頁10行目の「次項」の次に「及び第十二条の三第一項」を加える。 ⑹ 原判決5頁22行目の「本件条項2」の次に「及び本件追加条項」を加え、「同条項」を「これらの条項」に改める。 ⑺ 原判決17頁14行目の末尾に改行の上、下記のとおり加える。 「⑺ 本件追加条項が法10条の要件を充足するか否か(争点7)【控訴人の主張】本件追加条項は、いわゆる権利没収条項であっ 頁14行目の末尾に改行の上、下記のとおり加える。 「⑺ 本件追加条項が法10条の要件を充足するか否か(争点7)【控訴人の主張】本件追加条項は、いわゆる権利没収条項であって、その存在自体が消費者の権利を制限し、消費者の利益を一方的に侵害することは明らかである。」 3 当審における控訴人の補充的主張⑴ 本件条項1 の法10条前段該当性チケット購入契約の中心的な要素は、事業者による役務の提供であり、チケット購入契約の法的性質は、典型契約中、準委任契約に最も近いといえる。 そして、チケット購入契約の本質は役務提供契約であり、役務提供契約は、- 4 -役務の提供を受ける必要がある役務受領者の利益のために行われるものであり、また、役務受領者にとってその役務の提供を受けることが不要となった場合あるいは役務の提供を受けることができなくなった場合にまで契約の終了を認めず、役務提供契約の効力を存続させることは社会経済的に非効率であるから、任意解除権が認められるべきである。役務提供者の不利益については損害賠償等により補填されれば十分である。役務提供性を認める以上、チケット購入契約においても任意解除権を否定する理由はない。 ⑵ 本件条項1の法10条後段該当性ア誤購入や急な予定変更により、チケット購入者にとっても思わぬ形で、チケットが不要となる場合がある。被控訴人が販売する本件チケットは、一般消費者が購入するチケットとしては高額であり、被害を看過することはできない。 イ被控訴人は、本件利用規約を令和4年8月1日に改訂し、スタジオ・パスについては、無償で、本来の入場予定日の90日後までであれば、入場日を変更することが可能となった。しかし、海外を含む遠隔地からの利用者については、旅行そのものが中止に 月1日に改訂し、スタジオ・パスについては、無償で、本来の入場予定日の90日後までであれば、入場日を変更することが可能となった。しかし、海外を含む遠隔地からの利用者については、旅行そのものが中止になったような場合には、90日以内にUSJを訪れるように日程を調整することは不可能である。また、枚数の誤購入や事情変更により、USJに来場できない(あるいは、来場予定者数を超えてチケットを購入してしまった)消費者については、日付変更ではなく、チケット購入契約のキャンセルやチケットの転売によるしか投下資本の回収をすることができない。 ウ被控訴人は本件条項1 にはただし書が存在し「法令上の解除または無効事由等がお客様に認められる場合はこの限りではありません。」とされていることをもって、キャンセルには柔軟に対応していると主張するが、誰がどのような手続でどのような対応をするという組織図やマニュアルもなく、具体的にどのような場合に「解除または無効」になるのかが分からな- 5 -いため、キャンセルする権利が顧客に認められるとは到底いえず、合理的な対応は不可能である。 控訴人のもとには「2023年8月10日に、日程を1日間違えて5枚のエクスプレス・パスを誤購入してしまい、直後に気が付いたことからすぐにUSJに事情を伝えて正しい日付のチケットへの変更を依頼したが、USJからは、『日程変更もキャンセルもできないチケットである』という機械的な対応をされ、結局、再度チケットを購入せざるを得ず、11万5100円が無駄になってしまった。」という相談があった。被控訴人は、Webサイトからの購入においてそもそも誤購入が発生しないかのように主張するが、購入者の過失を問えない誤購入が多数発生している。また、新型コロナウイルスの蔓延というやむを得ない理由に基づいてチケ 、Webサイトからの購入においてそもそも誤購入が発生しないかのように主張するが、購入者の過失を問えない誤購入が多数発生している。また、新型コロナウイルスの蔓延というやむを得ない理由に基づいてチケットのキャンセルが必要となる事態も発生する。そうであるにもかかわらず、被控訴人においてはいずれの場合においてもチケットのキャンセルについては適切な対応をとっていない。 ⑶ 本件条項2(転売禁止条項)の法10条前段該当性ア長年にわたってキャンセル禁止という状況が許容されてきたのは、チケット購入契約において、広くチケットの転売が認められており、これによりチケット購入者は投下資本の回収が可能となり、結果として、消費者にとって大きな不利益はなかったためである。被控訴人が運営するUSJにおいて、転売されたチケットによる入場が禁止された際に広く報道されたのは、少なくとも確立した慣習として、チケット購入契約においてはチケットの転売が禁止されていなかったことの証左である。実際に、チケットの高額転売の問題が生ずるまでは、事業者は、チケットの所持者とチケット購入者の同一性の確認等は行っておらず、チケット所持者の個性等については一切問題とせず、チケットを持参したものであれば、利用を認めていた。チケット購入時から役務提供時までの間に、被控訴人が主張すると- 6 -ころの「契約上の地位の移転」があったとしても、役務提供者は無条件に承諾していたのである。被控訴人が主張するように、チケットの譲渡が契約上の地位の移転に当たるのであれば、事業者の承諾なきチケットの譲渡は、無効あるいは違法であり、本件条項2のような規定を待たずとも、チケットの譲渡を禁止し、チケットの譲受人による入場を拒絶できたはずである。上記慣習は、チケットの払戻しを一律に認めないという の譲渡は、無効あるいは違法であり、本件条項2のような規定を待たずとも、チケットの譲渡を禁止し、チケットの譲受人による入場を拒絶できたはずである。上記慣習は、チケットの払戻しを一律に認めないという別途の「慣習」により発生する契約の対価的不均衡を是正するための措置として、「法的な確信又は法的認識により支持される程度に達していた」ものであり、少なくとも「事実たる慣習」であったから、被控訴人がリセールサイト等を全く設けずに本件条項2を設けたことが問題となる。 法10条にいういわゆる任意規定には明文規定のみならず、一般的な法理等が含まれる(最高裁第二小法廷平成23年7月15日判決平成22年(オ)第863号、平成22年(受)第1066号民集65巻5号2269頁)。法10条がいわゆる任意規定との比較を法適用の要件とした趣旨は、一般的な同種の契約との比較において消費者に不利な契約であることを同条適用の前提条件とし、そのメルクマールとして「公の秩序に関しない規定」を要件としたものである。そのため、ここでいう「公の秩序に関しない規定」は、明文の規定でなくても同種の契約に通用するような一般的なルールとなっている「一般的な法理」についても該当すると考えられている。そうであれば、同種の契約に広く通用するルールとなっている慣習についても、上記最高裁判決にいう「一般的な法理等」に含まれると解すべきである。そして、そのように解しても、条項の不当性は第2要件(後段要件)の存否によって判断されるため、事業者に生ずる不利益は僅かなものにすぎない。 イチケット購入者が施設において受ける種々の制約は、チケット購入契約において付随的部分であり、それ自体はチケット転売の法的性質を決める- 7 -要素にならない(チケット購入契約の本質は、チケット代金を支払い、施設等 において受ける種々の制約は、チケット購入契約において付随的部分であり、それ自体はチケット転売の法的性質を決める- 7 -要素にならない(チケット購入契約の本質は、チケット代金を支払い、施設等の利用権を取得するという点にある。)。本件条項2は本来自由である債権譲渡に制約を課している点で、法10条前段要件該当性があるといえる。また、本件条項2の3.項は「お客様が購入されたすべてのチケットにつき・・・使用できなくなる措置をとります。」としており、チケットの効用そのものを否定しているのであるから、本件条項2は有体物としてのチケットの所有権移転の効果ばかりか、チケットの効力そのものを否定するものと解され、チケットの所有権の移転を民法で認められている以上に制約するものであるから、この点でも、法10条前段該当性があるといえる。 ウ特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(以下「不正転売禁止法」という。)が制定されたが、この法律ですら、禁止しているのは不正転売であって(3条)、全ての転売を一律に禁止しているわけではない(2条4項)。そもそも、不正転売禁止法は「興行入場券の適正な流通を確保」するための法律であり(1条)、転売自体を禁止するものではなく、逆に「興行主等は、興行入場券の適正な流通が確保されるよう、興行主等以外の者が興行主の同意を得て興行入場券を譲渡することができる機会の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。」としている(5条2項)。そして、実際に特定興行入場券を販売している事業者は、リセールサイトを開設している。つまり、不正転売禁止法は、販売価格を限度とする転売を許容しており、むしろ、そのような転売を権利ないしは法的保護に価すると考えているといえる。 エ本件チケットの性質に セールサイトを開設している。つまり、不正転売禁止法は、販売価格を限度とする転売を許容しており、むしろ、そのような転売を権利ないしは法的保護に価すると考えているといえる。 エ本件チケットの性質に鑑みれば、転売は慣習上認められた権利であって法的保護に価する利益を得るための行為である。転売を禁止しているのは、人気があって、消費者に対し圧倒的に優位な立場にあるごく一部の施設にすぎないことを考えると、裁判所が、そうした過度の転売権の制限の問題- 8 -点を審査するばかりか、逆に、これを是として容認することは、絶対に許されない。 転売行為自体は、投下資本の回収手段として消費者の財産権を守るものであり、許容されるべき権利(少なくとも法的保護に価するもの)であって、その制限は比例原則(必要最小限、せいぜい目的との関係で実質的な関連性を有するもの)の範囲でしか許されない。 事業者によって、チケット購入者によるチケットの転売が完全に禁じられるのであれば、チケット購入者の投下資本の回収の機会を確保し、チケット購入契約における対価的均衡を損なわないよう、事業者は、チケット購入者によるキャンセルに応じなければならない。チケットの転売またはチケット購入契約のキャンセルが認められることにより対価的均衡が確保されている状態こそ、チケット購入契約の原則的形態であり、本件条項1及び本件条項2は、各条項が同時に存在することによって、チケット購入契約の原則形態よりも消費者の権利を制約するものなのであるから、法10条前段該当性が認められるべきことは明らかである。 ⑷ 本件条項2の法10条後段該当性アチケットをキャンセル・転売できることが重要なのは、役務受領者の地位を保障し、契約の対価的均衡を維持するための手段にすぎない。キャンセル不可条項によって獲得さ 本件条項2の法10条後段該当性アチケットをキャンセル・転売できることが重要なのは、役務受領者の地位を保障し、契約の対価的均衡を維持するための手段にすぎない。キャンセル不可条項によって獲得された役務提供者の利益は、著しく「対価的均衡」を欠くもので(何人か顧客が来なかったとしても、被控訴人の催しは行われているのであるから、そのこと自体で被控訴人のコストは影響を受けない。)、法9条1項1号の趣旨(平均的損害額を超える違約金条項の無効)からしても許されない。消費者が役務提供を受け得ない状態となったにもかかわらず、事業者が債務を履行した場合と全く同一の対価を得ることは損害を超える不当な利益に当たる。そして、チケット購入契約において上記の対価的均衡を損なう不利益は、チケットの譲渡により解消可能- 9 -であり、それゆえ慣習的にチケットの譲渡は自由とされてきた。 イ近年、不正転売対策の必要から、チケットの転売を制限する傾向があり、本件各条項もその一つであるが、本来禁圧すべきは「不正転売」即ちチケットの購入者(その多くは転売を業とする者である。)が転売によって利益を得ることであり、①転売目的でチケットを購入した者も、後発的にチケットが不要となった購入者も一律に、②本来の防止目的である定価を超える転売も、通常転売者に利益の生じない定価以下の転売も一律に禁止し、③禁止違反の効果として前記のとおり権利没収をし、④その結果、被控訴人の提供する役務を受領できなくなった購入者はチケット購入契約により何の見返りも得ることができなくなることが正当化できるか(即ち消費者に一方的に不利益でないか)が、本件の本質的問題である。本件事案は、チケットの転売について、消費者契約法がどこまで立ち入らなければならないかを争点とするものである。被控訴人はテーマパーク 即ち消費者に一方的に不利益でないか)が、本件の本質的問題である。本件事案は、チケットの転売について、消費者契約法がどこまで立ち入らなければならないかを争点とするものである。被控訴人はテーマパークを運営しているのであるから、被控訴人の提供する役務は「映画、演劇、演芸、音楽、舞踊その他の芸術及び芸能…を不特定又は多数の者に見せ、又は聴かせる」ものとして、興行に当たることは明らかである(不正転売禁止法2条1項)。そこで、かかる興行のチケット(入場券)について、平成30年12月に成立した不正転売禁止法が下記のとおり示した「不正転売」に対する在り方が、参考にされるべきであるが、被控訴人の「不正転売」に対する姿勢は、不正転売禁止法の求めるところにはるかに劣っている。被控訴人は、本件条項2(転売禁止条項)の目的を「高額転売防止」としながら「不正転売」だけでなく一切の「転売」を禁止する。それは不正転売禁止法の定めるところより、過度に広汎である上、誤購入や事情変更の生じた消費者に対する配慮に欠け(被控訴人第1準備書面2頁によれば、錯誤による誤購入は「重大な過失(民法95条3項)がある」とされ、本件条項1ただし書による保護は原則として受けられない。)、前述したとおり、- 10 -転売した場合のサンクションは極めて重大である。 被控訴人の不正転売(高額転売)防止対策については、興行主の努力も尽くされておらず、消費者側の利益に対する配慮も低い。そもそも自分の購入した物を転売することは社会実態として広く行われている行為である上、キャンセルを禁止した上で過度に転売を禁止することは、上述した役務受領者の「受益・対価支払を強要されない地位」を害することになり、許されない。ところが、被控訴人は、一切の転売を禁止しており、それは不正転売(高額転売)を防止する 転売を禁止することは、上述した役務受領者の「受益・対価支払を強要されない地位」を害することになり、許されない。ところが、被控訴人は、一切の転売を禁止しており、それは不正転売(高額転売)を防止する手段としては、法が許容する範囲を超えている。 ウ本件条項2は、権利没収条項であること、被控訴人の利益を直接保護するものではないことからすれば、本件条項2の法10条後段要件該当性を判断するに当たっては、①手段が目的達成のために適合しているか(適合性の原則)、②目的達成のため他に緩やかな手段があるのに当該手段をとっていないか(必要性の原則)、③侵害される利益と達成する利益・目的・手段とが均衡を失していないか(均衡性の原則)を判断しなければならない。被控訴人が主張するように「不正転売を防止するには、一切の転売自体を禁止する必要がある」として、全ての転売を禁止するのであれば、それは過度に広汎な制約であって、①目的達成のために適合しておらず、②必要的でもない上、③均衡も取れていないことから許されない。 エ本件条項2の法10条後段該当性については、控訴人が本件条項1 の法10条後段該当性について述べたところが同様に妥当する。そして、キャンセル不可・転売禁止に伴う、消費者と被控訴人との対価的均衡の喪失状態を緩和(正当化)する一方策として、転売サイト(リセールサイト)の開設が考えられるところ、これは、高額転売を禁止しつつ、譲渡による投下資本の回収が可能となる合理的手段であり、コンサートチケット等で採用されてきた方策で、別業者へ全部の運営を委託したり、別業者と共同で- 11 -運営することも可能である。しかし、被控訴人は、専用のリセールサイトを開設せずに、一律に全ての転売を禁止している。 本件チケットの一部には特定興業入場券に該当するものもあるの 共同で- 11 -運営することも可能である。しかし、被控訴人は、専用のリセールサイトを開設せずに、一律に全ての転売を禁止している。 本件チケットの一部には特定興業入場券に該当するものもあるのであるから、少なくとも当該チケットについて、被控訴人は、不正転売禁止法5条2項で定めるとおり、「興行主等は、興行入場券の適正な流通が確保されるよう、興行主等以外の者が興行主の同意を得て興行入場券を譲渡することができる機会の提供その他必要な措置を講ずるよう努める」必要がある。ここでいう努力義務というのは、努力をすればいいという行為規範だけではなく、努力をしなかった場合に法10条の解釈等を通じて当該行為が無効になるという評価規範も含まれる。そうでなければ、法律上明記する意味もなく、また、そのためのコスト等を興行主が負担するかは、信義誠実(民法1条2項)といった一般条項を介して柔軟に判断すればいいからである。 しかし、被控訴人は、リセールサイトを開設する能力があるにもかかわらず、開設の検討すらしないまま、漫然と本件各条項によってキャンセル・転売を禁止しているのであるから、それは消費者の利益を「不当に害する」ものであって「一方的に害する」ものである。 リセールサイトを開設したところで、被控訴人は「高額転売の弊害」はなくならないというような主張(直前にリセールしたら転売業者が損をすることはない。)をしているが、コンサートチケット等についても同様であり、本質的問題でない。本件条項2は、それ自体、あるいは、本件条項1の存在と相俟って、消費者が有するチケットの転売権を完全に奪う効果を有し、チケット購入契約において、双務契約の本質である対価的均衡を損なうものであるから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものといえる(最高裁第一小法廷令和4年12 転売権を完全に奪う効果を有し、チケット購入契約において、双務契約の本質である対価的均衡を損なうものであるから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものといえる(最高裁第一小法廷令和4年12月12日判決令和3年(受)第987号民集76巻7号1696頁参照)。 - 12 -第3 当裁判所の判断 1 控訴人の当審における追加請求である本件追加条項に係る訴えの変更について控訴人は、当審において、予備的に本件追加条項に係る訴えの変更申立てをするところ、本件追加条項は、控訴人の主張するとおり、いわゆる権利没収条項であって、その存在自体が消費者の権利を制限するものであるということができるが、これらによって生じる消費者の不利益は、違約罰に類するものであって、キャンセルができない旨の条項(本件条項1)やチケットの転売を禁止する旨の条項(本件条項2)による不利益とは自ずと性質を異にする。そうすると、本件追加条項が本件各条項に違反した場合の効果を規定するものである点において、本件各条項と密接に関連するとはいえるものの、請求の基礎に変更がないとはいえず、また、仮にこれを認めた上で審理を行うとすれば、被控訴人の審級の利益が侵害されることとなる。さらに、上記申立てがなされたのが本件口頭弁論終結の8日前であることから、被控訴人において、その認否反論のため、改めて本件追加条項適用の実情の調査をすることによって訴訟手続の著しい遅延は避けられない。 したがって、上記訴えの変更申立てを許すことはできない。 2 本件各条項についての当裁判所の判断は、下記のとおり補正し、後記3のとおり当審における控訴人の補充的主張に対する判断を加えるほかは、原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」1ないし6に記載のとおりであるから、これを引用する。 おり補正し、後記3のとおり当審における控訴人の補充的主張に対する判断を加えるほかは、原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」1ないし6に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決22頁11行目の「購入した顧客」の次に「に対する購入完了を通知する電子メール上及び同電子メールの「キャンセルについて」のリンク先のいずれにも「法令上の解除又は無効事由等が認められる場合」にキャンセルが可能であることを明示し、顧客がこれを容易に認識し得る措置を施した上で、顧客」を加える。 - 13 -⑵ 原判決22頁14行目の「乙31、」の次に「46、47、」を加える。 ⑶ 原判決33頁4行目以下、各「法9条1号」とあるのを全て「法9条1項1号」に改める。 ⑷ 原判決33頁23行目から36頁5行目までを下記のとおりに改める。 「5 争点5(本件条項2の法10条前段該当性)について⑴ チケットの転売は、被控訴人から役務の提供を受ける権利の譲渡であり、債権譲渡であると解することができる。 そのような役務の提供を受ける権利については、長年、その権利が化体した無記名の有価証券類似の有体物としてのチケットが発行され、役務提供の対価である利用料金を支払った顧客が、その権利を表章するものとしてチケットを取得し、役務の提供を受ける権利は、チケットの所有権の移転に伴って移転し、当該施設において、チケットの所持者が役務の提供を受ける権利を有する者として取り扱われてきたことは公知の事実である。そして、被控訴人が本件条項2によって、チケットの転売を禁止することは、商慣行として定着していたチケットの有価証券類似の機能を新たに制限するものであって、原則自由とされている債権譲渡を制限することになり、任意規定の適用による場合に比して消費 トの転売を禁止することは、商慣行として定着していたチケットの有価証券類似の機能を新たに制限するものであって、原則自由とされている債権譲渡を制限することになり、任意規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限するものというべきである。 ⑵ これに対し、被控訴人は、チケットの転売は、単純な債権の譲渡ではなく、特定の日の入場、入場後の物品の購入、施設内での種々の行動制約等の複合的な権利義務についての契約上の地位の移転に他ならず、これには相手方の承諾が原則として必要であるが、契約上の地位の移転に際して相手方の承諾を要しないとする任意規定は存在しないと主張する。 なるほど、被控訴人との間でチケットの購入契約を締結して本件チケットを購入した者は、購入したチケットの内容に応じて、前記2- 14 -のとおり、被控訴人から、非日常的な空間として創られたUSJに入場させ、アトラクション等を稼働して利用させるなどの役務の提供を受けることができるものである。また、前記1エのとおり、チケットの購入者には、手荷物検査、分煙、撮影、危険物等の物品の持込み禁止等のUSJの園内における各種制約等も遵守することが求められ、仮にチケットの転売が許容されたとしても、チケットを譲り受けた者は、チケットの購入者が遵守を求められていたこのような制約等も承継して遵守することが求められると解される。 しかし、これらは、施設利用者が施設管理者の管理に従うべきであるという一般的な規範の下に具体化されたルールを受容するものにすぎず、基本的に顧客の個別的な事情に応じて決められたルールを引き継ぐものではない。したがって、上記のような遵守事項があるからといって、チケットの転売の本質が債権譲渡であることを否定することはできないし、チケットの転売に被控訴人の承諾を要することの根拠 を引き継ぐものではない。したがって、上記のような遵守事項があるからといって、チケットの転売の本質が債権譲渡であることを否定することはできないし、チケットの転売に被控訴人の承諾を要することの根拠にもならない。 ⑶ 以上で検討したところによれば、本件条項2について、任意規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限するものということができるので、法10条前段該当性が認められる。」⑸ 原判決36頁7行目から9行目までを下記のとおりに改める。 「⑴ 上記5でみたように、本件条項2について、法10条前段該当性を認めることができるが、次のとおり、法10条後段該当性を認めることができない。」⑹ 原判決39頁3行目から7行目までを下記のとおりに改める。 「 このように、本件条項2は、法10条前段の要件を充足するものの、同条後段の要件を充足するということができないのであるから、法10条の条項に当たるということはできず、したがって、法10条の条項に当たる- 15 -として、本件条項2についての差止めを求める控訴人の請求は理由がない。」 3 当審における控訴人の補充的主張に対する判断控訴人は、前記第2の3⑴のとおり主張する。 なるほど、典型的な役務提供契約は、役務の提供を受ける必要がある役務受領者の利益のために行われるものであり、また、役務受領者にとってその役務の提供を受けることが不要となった場合あるいは役務の提供を受けることができなくなった場合にまで契約の終了を認めず、役務提供契約の効力を存続させることは社会経済的に非効率であるということはできる。 しかし、典型的な役務提供契約とは異なり、チケットを購入した個々の顧客と被控訴人との間には人的信頼関係があるわけではない。そして、USJ内で提供される個々の役務と、顧客 であるということはできる。 しかし、典型的な役務提供契約とは異なり、チケットを購入した個々の顧客と被控訴人との間には人的信頼関係があるわけではない。そして、USJ内で提供される個々の役務と、顧客が購入したチケットに表章される個々の利用権との間には、直接の対応関係がなく、チケット購入者の個別的な事情により、役務の提供を受けることが不要となった場合あるいは役務の提供を受けることができなくなった場合であっても、被控訴人は、変わらず役務を提供せざるを得ないシステムになっている。そうすると、本件チケットの購入契約においては、当事者間に人的信頼を基礎に置く委任契約に認められている民法651条を類推適用して任意解除権を認めることは相当ではない。 ⑵ 控訴人は、前記第2の3⑵のとおり主張する。 ア確かに、誤購入や急な予定変更により、チケット購入者にとっても思わぬ形で、チケットが不要となる場合があるところ、被控訴人が販売する本件チケットは、一般消費者が購入するチケットとしては高額であり、購入者の経済的負担は軽視できない。また、スタジオ・パスについては、無償で、本来の入場予定日の90日後までであれば、入場日を変更することが可能となったとはいえ、海外を含む遠隔地からの利用者については、旅行そのものが中止になったような場合には、90日以内にUSJを訪れるよ- 16 -うに日程を調整することは困難であることも少なくないと考えられる。 しかし、そうであるからといって、本件条項1が民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものと直ちに評価することはできない。そして、本件条項1の趣旨・目的がチケット価格の高額化を防ぐことにあり、合理性があることは、補正の上引用した原判決第3の3で説示したとおりである。また、前記 するものと直ちに評価することはできない。そして、本件条項1の趣旨・目的がチケット価格の高額化を防ぐことにあり、合理性があることは、補正の上引用した原判決第3の3で説示したとおりである。また、前記⑴で説示したとおり、USJ内で提供される個々の役務と顧客が購入したチケットに表章される個々の利用権との間には、直接の対応関係がなく、チケット購入者の個別的な事情により、役務の提供を受けることが不要となった場合あるいは役務の提供を受けることができなくなった場合であっても、被控訴人は、変わらず役務を提供せざるを得ないシステムになっているのであるから、顧客が任意にキャンセルできることになれば、被控訴人において役務提供のために要した費用に見合った収入を得られなくなるおそれがあることや、高額な転売を目的とする者が大量にチケットを購入することの防止がより困難になるおそれがあることに照らすと、本件条項1にはやはり相応の合理性があり、適合性、必要性及び均衡性のいずれかおいて欠けるところがあるとは認められない。 イまた、本件条項1のただし書(法令上の解除または無効事由等がお客様に認められる場合はこの限りではありません。)の運用が不適切なものであれば、本来、キャンセルが認められるべき顧客の利益を不当に害することになると考えられるが、それは、本件条項1の定め方の瑕疵ではなく、解釈運用の不手際であるから、そのことによって、本件条項1が法10条後段に該当するものとはいえない。 ⑶ 控訴人が前記第2の3⑶において主張した点については、前記1で原判決を補正して説示したとおりである。 ⑷ 控訴人は、前記第2の3⑷のとおり主張する。 - 17 -ア前記⑴で説示したとおり、USJ内で提供される個々の役務と、顧客が購入したチケットに表章される個々の利用権と たとおりである。 ⑷ 控訴人は、前記第2の3⑷のとおり主張する。 - 17 -ア前記⑴で説示したとおり、USJ内で提供される個々の役務と、顧客が購入したチケットに表章される個々の利用権との間には、直接の対応関係がなく、チケット購入者の個別的な事情により、役務の提供を受けることが不要となった場合あるいは役務の提供を受けることができなくなった場合であっても、被控訴人は、変わらず役務を提供せざるを得ないシステムになっており、このような状況の下では、消費者が役務提供を受け得ない状態となったにもかかわらず、そのような消費者に対して事業者が債務を履行した場合と全く同一の対価を得たとしても不当な利益を得ることにはならない。 イそして、①転売目的でチケットを購入した者と後発的にチケットが不要となった一般購入者の客観的な区別は困難であるし、②被控訴人において転売価格を知ることは不可能であって、本来の防止目的である定価を超える転売であるか、通常転売者に利益の生じない定価以下の転売であるかを知ることもできないのであるから、これらの区別なく一律に転売を禁止することはやむを得ないところである。そして、転売が禁止された以上、③禁止に反して転売されたチケットが無効となり、④USJ内で提供される役務を受領できなくなった購入者は、チケット購入契約による経済的負担を回収する機会を失うことになるが、転売の禁止には、高額な転売を目的とする者の買い占めを防止し、それによって消費者である顧客に対し、自由な転売市場において形成されるであろう高額な転売価格に比べて低廉な定価で安定してチケットを購入できる機会を保障するという、消費者にとって利益となる目的・効果があると認められる以上、それが消費者の一方的な不利益をもたらすものということはできない。なお、不正転売禁止法 価で安定してチケットを購入できる機会を保障するという、消費者にとって利益となる目的・効果があると認められる以上、それが消費者の一方的な不利益をもたらすものということはできない。なお、不正転売禁止法は、不正な転売行為を強行法規によって規制するものであって、事業者が自ら販売するチケットの転売制限の上限を画するものではないから、本件条項2が不正転売禁止法よりも制限的であるとしても、そのことによって、- 18 -本件条項2が法10条後段に該当すると認めることはできない。 ウ前記ア、イで説示したところを踏まえれば、本件条項2にも相応の合理性があり、適合性、必要性及び均衡性のいずれかにおいて欠けるところがあるとは認められない。 なお、転売サイト(リセールサイト)の開設は、転売目的でチケットを購入した者が依然としてチケットの保有を継続中であると考えられる、チケットの発売開始に近接した時期に誤購入した購入者の救済には一定の効果があると考えられるものの、他方、そのような誤購入は、錯誤等、法令上の解除又は無効事由等が認められる場合に当たることが多いと推認されるから、リセールサイトを開設しなくても、被控訴人が本件条項1のただし書を適切に運用することによって救済が可能と考えられる。これに対し、使用予定日近くに差支えが生じて行けなくなった購入者については、転売目的でチケットを購入した者が売れ残ったチケットを処分するためにも転売サイトが利用可能となるから、時期的に、転売目的購入者の売れ残りチケットの処分と競合し、その結果、チケットの一般購入者がその損失を回避できなくなることもあり得るところであり、リセールサイトを開設してもその救済効果には限界があると考えられる。そうすると、経営上の判断から、被控訴人においてリセールサイトを開設していないことが、直ちに できなくなることもあり得るところであり、リセールサイトを開設してもその救済効果には限界があると考えられる。そうすると、経営上の判断から、被控訴人においてリセールサイトを開設していないことが、直ちに消費者の利益を一方的に害するものということは困難である。 ⑸ したがって、当審における控訴人の補充的主張⑴⑵⑷は、前記1で原判決を補正の上、引用して説示した当裁判所の判断を左右しない。 第4 結論以上の次第で、控訴人の訴えの変更(追加請求)はこれを許さないこととし、控訴人のその余の請求は、いずれも理由がなく、これを棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。 - 19 -大阪高等裁判所第5民事部 裁判長裁判官德岡由美子 裁判官住山真一郎 裁判官新宮智之 - 20 -別紙契約条項目録1(WEBチケットストア利用規約第8条)1.チケットの種別、理由の如何にかかわらず、購入後のキャンセルは一切できません。但し、法令上の解除または無効事由等がお客様に認められる場合はこの限りではありません。 2(WEBチケットストア利用規約第3条)1.お客様が、第三者にチケットを転売したり、転売のために第三者に提供することは、営利目的の有無にかかわらず、すべて禁止します。 3. お客様が第1項又は第2項前項に違反した場合は、お客様が購入されたすべてのチケット(当該チケットが転売などの対象とされたチケットであるか否かを問いません)につき、「パーク」への入場ができなくなる措置もしくは使用できなくなる措置をとります。なお、その場合も、返金は行いません。 ト(当該チケットが転売などの対象とされたチケットであるか否かを問いません)につき、「パーク」への入場ができなくなる措置もしくは使用できなくなる措置をとります。なお、その場合も、返金は行いません。 4. お客様が第1項又は第2項前項に違反した場合は、お客様のClubユニバーサルの会員登録を抹消するとともに、以後、チケットの券種や購入目的を問わず、会員登録することもチケットを購入することも禁止します。
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