平成21(ワ)26849 補償金請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年4月21日 東京地方裁判所
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判決文本文26,617 文字)

- 1 -平成23年4月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第26849号補償金請求事件口頭弁論終結日平成23年2月10日判決山梨県上野原市<以下略>原告A 訴訟代理人弁護士矢島邦茂東京都港区<以下略>被告沖電気工業株式会社訴訟代理人弁護士永島孝明同安國忠彦同明石幸二郎主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,6000万円及びこれに対する平成21年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の元従業員である原告が,部分メツキ方法等に関する後記2件の特許権に係る特許発明は,原告がした職務発明であり,その特許を受ける権利を被告に承継させた旨主張し,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条(以下「特許法旧35条」という。)3項及び4項の規定に基づき,被告に対し,上記特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の一部請求として6000万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 - 2 - 1 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)(1) 当事者ア原告は,昭和43年4月に被告に入社し,製品生産の技術管理,パッケージ開発等の業務に携わり,平成13年12月に株式会社沖環境テクノロジーに転籍した後,平成20年11月20日に同社を退職した者である。 イ被告は,電子通信装置・システム,情報処理装置・システム,制御計測装置・システム及び半導体等 12月に株式会社沖環境テクノロジーに転籍した後,平成20年11月20日に同社を退職した者である。 イ被告は,電子通信装置・システム,情報処理装置・システム,制御計測装置・システム及び半導体等各種電子部分についての開発,製造,販売及び輸出入等を目的とする株式会社である。 (2) 原告の職務発明及び特許を受ける権利の承継ア(ア) 被告は,昭和50年9月10日,発明の名称を「部分メツキ方法及び装置」とする発明につき特許出願(以下「本件出願1」という。)をし,昭和56年9月30日,特許第1067112号として特許権(以下「本件特許権1」といい,この特許を「本件特許1」という。)の設定登録(発明の数3)を受けた。 その後,本件特許権1は,平成7年9月10日,存続期間満了により消滅した。 (イ) 本件特許1に係る特許請求の範囲の第1項ないし第3項の記載は,次のとおりである(以下,第1項ないし第3項に係る発明を「本件発明1」と総称する。)。 「1 メツキ液の液面に比較的こまかいメツシユ状物質の絶縁性シートを配置し,上記シート表面に露呈した上記メツキ液に被メツキ部分を接触させてメツキを行う事を特徴とする部分メツキ方法。」「2 上記シート或は被メツキ部分に震動を与えながらメツキを行 - 3 -う事を特徴とする特許請求の範囲第1項記載の部分メツキ方法。」「3 メツキ液槽内に比較的こまかいメツシユ状物質の絶縁性シートが配置され該シートはメツキ液の増減に対応してその液面を浮遊する為の浮子が取付けられた事を特徴とする部分メツキ装置。」(ウ) 本件出願1の願書に添付した明細書の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある(甲1の1)。 a「多面体の任意の一面を部分メツキする方法としては,被メツキ面以外を適当なマスキング材で覆つ ウ) 本件出願1の願書に添付した明細書の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある(甲1の1)。 a「多面体の任意の一面を部分メツキする方法としては,被メツキ面以外を適当なマスキング材で覆つて,メツキする方法や,メツキ液面に被メツキ面を最小限浸漬する事によつて所望面のメツキを得る方法がある。前者は,種々のメツキ液に対する有効なマスキング材を選定しなければならない事,及び塗布及び剥離等の煩らわしい工程が伴う事等の不利がある。また,後者は,液面の管理が極めて困難で,不要部へのメツキの被着が起る。」(2欄13行~21行)b「本発明は上述の不利益を排除する事を目的として成されたもので,マスキング材が不要で且つメツキ不要部への被着が微少な部分メツキ方法及びその装置である。」(2欄24行~27行)c「本発明方法によれば,メツキ液面に浮かべられた比較的こまかいメツシユ状物質のシート表面に露呈した僅かのメツキ液に,多面体の被メツキ物体の任意の面を当接して浸漬する事により,有効な部分メツキが得られ,従来の様な液面の波立ち,液の表面張力によるはい上り等による不要面へのメツキを微少に押えられる。故に被メツキ面以外をマスクしてメツキを施こすわずらわしいマスキング工程が不要であり,作業能率をも著しく改善出来る。更に貴金属グループ等の高価な金属をメツキするにあたつては経済効果も著しく良い等優れた効果がある。」(3欄19行~4欄11行)イ(ア) 被告は,昭和63年7月8日,発明の名称を「ICモジュールの製 - 4 -造方法」とする発明につき特許出願(以下「本件出願2」といい,本件出願1と本件出願2を併せて「本件各出願」という。)をし,平成8年3月13日,特許第2503053号として特許権(以下「本件特許権2」といい,この特許を「本件特許2」 以下「本件出願2」といい,本件出願1と本件出願2を併せて「本件各出願」という。)をし,平成8年3月13日,特許第2503053号として特許権(以下「本件特許権2」といい,この特許を「本件特許2」という。)の設定登録(請求項の数1)を受けた。 その後,本件特許権2は,平成20年3月13日,特許料不納(第13年分)により消滅した(甲3の2)。 (イ) 本件特許2に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本件発明2」といい,「本件発明1と本件発明2を併せて「本件各発明」という。)。 「【請求項1】プリント基板上に搭載・固着されワイヤボンディングされた半導体素子をトランスファ成形金型を用いて樹脂封止して形成するICモジュールの製造方法において,上記トランスファ成形金型のゲート及びランナー部に内接する部分の上記プリント基板上にソルダレジストを形成したのち,このソルダレジストを有し上記半導体素子が固着されワイヤボンディングされた上記プリント基板を上記トランスファ成形金型のキャビティ内に収納し,上記トランスファ形成金型のポット内に封入された樹脂を溶融して溶融樹脂を形成し,上記トランスファ成形金型のプランジャを用いて上記溶融樹脂を加圧し上記ランナー部及びゲートを介して上記キャビティ内に上記溶融樹脂を移送・注入して上記半導体素子を樹脂封止することを特徴とするICモジュールの製造方法。」(ウ) 本件出願2の願書に添付した明細書の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある(甲3の1)。 a「[発明が解決しようとする課題] 上記のような従来のICモジュールの製造方法は,ポッティング樹脂の流れ止めのダムを半導体素 - 5 -子を搭載した基板に形成しそのダムの内側領域をポッティング樹脂で封止す 決しようとする課題] 上記のような従来のICモジュールの製造方法は,ポッティング樹脂の流れ止めのダムを半導体素 - 5 -子を搭載した基板に形成しそのダムの内側領域をポッティング樹脂で封止するという方法であるので,ダムをシルク印刷等の方法で形成しなければならず,しかも1チップ毎にポッティング樹脂を充填しなければならないという煩わしい工程と,そのための工数の増加といった経済的に不満足であるという問題があった。」(4欄6行~14行)b「この発明は上記の煩わしい工程と工数の増加という問題点を除去するために行われたもので,とくに経済性に優れたICモジュールの製造方法を提供するものである。」(4欄15行~17行)c「[作用] この発明においては,ICモジュールの樹脂封止工程において,トランスファ成形金型のゲート及びランナー部に内接するICモジュール基板上にソルダレジストを形成するから,封止樹脂をICモジュールを収納したトランスファ成形金型のキャビティに移送注入する場合,ソルダレジストは封止樹脂との親和性がよくないからゲート及びランナー部に封止された樹脂が固化したときもICモジュール基板表面の樹脂封止領域以外には付着しないし,また加圧された移送中の封止樹脂がゲート及びランナー部を通ってキャビティへスムースに流動する。」(4欄25行~35行)d「[発明の効果] 以上,詳細に説明したようにこの発明によれば半導体素子をトランスファ成形方法によって封止するので,連続的作業ができしかも多量に短時間に作業ができる。ハンドリングにおいても数個連結させておくことによりセット時間が短くなる。またトランスファ成形金型のゲート部,及びランナー部の樹脂に当接する部分にのみICモジュール基板にソルダーレジストを形成しておき,封止樹脂の流れをよくし前記 せておくことによりセット時間が短くなる。またトランスファ成形金型のゲート部,及びランナー部の樹脂に当接する部分にのみICモジュール基板にソルダーレジストを形成しておき,封止樹脂の流れをよくし前記基板に封止樹脂が付着することを防止する方法を用いたので歩留や経済性の向上に対する寄与大であ - 6 -る。」(6欄43行~7欄3行)ウ原告は,被告に在職中に,Bと共同で本件発明1をし,単独で本件発明2をした。 原告は,本件各出願の出願時までに,本件各発明についての特許を受ける権利をそれぞれ被告に承継させた。 本件各発明は,被告の業務範囲に属し,かつ,原告の職務に属するものであって,特許法35条1項所定の職務発明に当たる。 (3) 被告における職務発明に関する定めア被告は,昭和45年4月1日,その従業員が行った職務発明等に関し,「工業所有権管理規程」(以下「被告規程1」という。)及び「従業員等の発明取扱規程」(以下「被告規程2」といい,被告規程1と併せて「被告各規程」という。)を制定した。 被告各規程は,数次にわたる改正を経て,平成11年4月1日に被告規程2が廃止され,更にその後も被告規程1が改正されており,その最終改正は平成17年4月1日である(甲4,5の1,2,乙7の1ないし4,8)。被告各規程においては,「付則」で特段の定めがない限り,最新の規程が適用されるものとされている。 イ被告各規程は,職務発明をした被告の従業員は,その発明に係る特許を受ける権利を被告に譲渡しなければならないこと,被告は,従業員から特許を受ける権利を承継したときは,当該従業員に対し,補償金あるいは報奨金を支給することを定めている。 被告各規程は,その制定以来,「出願補償」,「登録補償」及び「実績補償」の3種類の補償を定めていたが,平 権利を承継したときは,当該従業員に対し,補償金あるいは報奨金を支給することを定めている。 被告各規程は,その制定以来,「出願補償」,「登録補償」及び「実績補償」の3種類の補償を定めていたが,平成11年4月1日に被告規程2が廃止され,同日以降は,被告規程1の定める「出願報奨」,「登録報奨」,「貢献特許報奨」及び「ライセンス賞」の4種類の報奨制度に改められ,更にその後,「ライセンス賞」は「ライセンス報奨」となった。 - 7 -これらに関する被告各規程の定めの概要は,次のとおりである。 (ア) 制定時(昭和45年4月1日)の被告規程1(乙7の1)「第11条(補償)会社は,特許を受ける権利を承継した発明について出願したとき,特許を受けたときおよび当該発明により会社が利益を受けたときは,その実績に応じ,補償金を支給する。」「第12条(従業員等の発明取扱い)従業員等がなした発明の取扱いおよび当該発明者に対する補償に関する事項はこの規程によるほか「従業員等の発明取扱規程」(判決注・被告規程2)によるものとする。」(イ) 1990年(平成2年)4月1日改正後の被告規程2(以下「平成2年被告規程2」という。乙8)「第10条(出願補償)●省略●」「第11条(登録補償)●省略●」「第12条(実績補償)●省略●」「第13条(実績補償金の算定)●省略●」「第14条(共同発明の場合の補償金の特則)●省略●」(ウ) 2000年(平成12年)4月1日改正後の被告規程1(以下「平成12年被告規程1」という。甲4)「第20条(出願報奨)●省略●」 - 8 -「第21条(登録報奨)●省略●」「第22条(貢献特許報奨)●省略●」「第23条(ライセンス賞)●省略●」「付則第1 )「第20条(出願報奨)●省略●」 - 8 -「第21条(登録報奨)●省略●」「第22条(貢献特許報奨)●省略●」「第23条(ライセンス賞)●省略●」「付則第1条(適用)●省略●」「付則第2条(旧規程廃止)●省略●」「付則第3条(特例)●省略●」(エ) 2005年(平成17年)4月1日改正後の被告規程1(以下「平成17年被告規程1」という。乙7の4)「第22条(貢献特許報奨)●省略●」「第23条(ライセンス報奨)●省略●」「第24条(算定に関する異議申立及び時効)●省略●」「付則第1条(適用)●省略●」「付則第2条(旧規程廃止)●省略●」「付則第3条(経過処置)●省略●」 - 9 -(4) 被告の原告に対する被告各規程に基づく補償の支払原告は,被告から,被告各規程に基づいて,本件発明1に関し,昭和62年12月,実績補償として2万5000円(Bと併せて5万円)の支払を受け,本件発明2に関し,平成8年5月末日ころ,登録補償として1万円の支払を受けた。 (5) 本件訴訟に至る経緯ア原告の代理人弁護士は,平成21年3月26日付け内容証明郵便で,被告に対し,本件各発明の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の一部として合計5億円を請求する旨の通知(以下「本件通知」という。)をした(乙3)。 イ被告の代理人弁護士は,平成21年5月13日到達の内容証明郵便で,原告の代理人弁護士に対し,被告には本件各発明により受けるべき利益(独占の利益)が生じておらず,また,本件各発明に係る相当対価請求権は既に時効により消滅しているので,本件通知による請求には応じられない旨の回答(以下「本件回答」という。)をした(乙9の1,2)。 ウ原告 益)が生じておらず,また,本件各発明に係る相当対価請求権は既に時効により消滅しているので,本件通知による請求には応じられない旨の回答(以下「本件回答」という。)をした(乙9の1,2)。 ウ原告は,平成21年7月31日,本件訴訟を提起した。 2 争点本件の争点は,本件発明1の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価として原告が被告から支払を受けるべき額(争点1),本件発明2の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価として原告が被告から支払を受けるべき額(争点2),本件各発明に係る相当対価請求権の消滅時効の成否(争点3)である。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件発明1に係る相当の対価)について(1) 原告の主張ア被告が本件発明1により受けるべき利益(ア) 「独占の利益」について - 10 -特許法旧35条4項の「その発明により使用者等が受けるべき利益」とは,使用者等が当該職務発明の実施を排他的に独占しうる地位を取得することにより受けることになると見込まれる利益,すなわち「独占の利益」をいい,使用者等が当該職務発明を第三者に実施許諾した場合には,実施料相当分がこの「独占の利益」ということになる。 この場合において,第三者から支払われる実施料が相当な額であれば,これをもって「独占の利益」としてよいとしても,使用者等と第三者との間に親会社,子会社などの特別の関係があって,当該実施料の料率が著しく低額であるとか,無償であるときは,これを算定根拠とすることは正しくない。これを認めれば,使用者等は,職務発明に係る従業員の補償金を自己の裁量によっていかようにもすることができるからである。このような場合には,使用者等と第三者との間の約定の実施料ではなく,社会的相当性のある実施料が算定の根拠となるとい に係る従業員の補償金を自己の裁量によっていかようにもすることができるからである。このような場合には,使用者等と第三者との間の約定の実施料ではなく,社会的相当性のある実施料が算定の根拠となるというべきである。 被告は,以下に述べるとおり,株式会社沖電線(以下「沖電線」という。)が,被告から本件特許1について許諾を得て本件発明1を実施したことにより,実施料相当額の「独占の利益」を得たものである。 (イ) 沖電線による本件発明1の実施沖電線は,昭和56年9月30日(本件特許権1の設定登録日)から平成7年9月10日(本件特許権1の存続期間満了日)まで,被告の許諾を得て,本件発明1を実施したコネクタを製造販売した。 沖電線が上記期間に本件発明1を実施していたことは,次の諸点から裏付けられる。 a 被告は,昭和51年から昭和53年にかけて,本件発明1を実施した連続メッキ装置3機(0号機,1号機,2号機)を製作し,本 - 11 -件発明1の部分メッキ方法をコネクタの製造工程に採用していたが,昭和54年4月ころに,沖電線に上記連続メッキ装置3機を移管した。 沖電線は,上記移管を受けた後,本件発明1を実施したコネクタの製造販売を開始した。 b 本件発明1は,被告社内において,昭和57年度の優秀発明賞の候補になった。 c 被告と沖電線は,昭和59年1月31日,有効期間を同日から許諾対象特許等の存続期間満了日までの約定で,被告は沖電線に対し本件特許1及び登録実用新案1件について通常実施権を許諾し,沖電線は実施製品の最終販売価格に●省略●%を乗じた実施料を被告に支払う旨の実施許諾契約(以下「本件実施許諾契約」という。)を締結した。 沖電線が本件実施許諾契約を締結したのは,本件発明1を使用するためであり,使用しないものについ ●%を乗じた実施料を被告に支払う旨の実施許諾契約(以下「本件実施許諾契約」という。)を締結した。 沖電線が本件実施許諾契約を締結したのは,本件発明1を使用するためであり,使用しないものについて実施許諾契約など締結するはずがない。 d 被告は,昭和62年に,原告及びBに対し,本件発明1の実績補償として●省略●をそれぞれ支払った。 e 被告においては,職務発明の報奨等の算定に当たって,特許権の自社他社の実施状況及び売上げの調査報告を当該特許権の発明者に委ねている(発明者は自ら経理担当者等から直接聴取するなどして調査することが社内実務となっている。)ところ,原告は,本件発明1の実績補償に関し,被告から,1986年(昭和61年)4月1日から1991年(平成3年)3月31日までを調査対象期間として,同年6月10日付けの「特許発明実施状況調査について(依頼)」と題する書面(甲7の1。以下「本件調査票」という。)の - 12 -交付を受けたので,同年7月26日,その当時沖電線において本件発明1が実施されている旨回答した。 本件調査票に「貴方の発明が実績補償の対象になりました。」との記載があるように,被告は,発明が実施されているものについてのみ,実施状況調査を依頼している。 (ウ) 沖電線による本件発明1の実施に基づく実施料相当額被告が受けるべき沖電線による本件発明1の実施に基づく実施料相当額は,次のとおり,20億2500万円となる。 a 沖電線が被告の委託を受けて生産した本件発明1によるメッキが施されたコネクタの年間販売高 45億円b 実施料率 3%c 期間 15年d 実施料相当額(a×b×c) 20億2500万円(エ) 小括し 45億円b 実施料率 3%c 期間 15年d 実施料相当額(a×b×c) 20億2500万円(エ) 小括したがって,本件発明1により被告が受けるべき利益は,20億2500万円である。 イ相当の対価の額(ア) 被告の貢献度原告が本件発明1をするに至った経緯を考慮すれば,本件発明1がされるについて被告が貢献した程度(特許法旧35条4項)は,50%を超えることはない。 (イ) 共同発明者間の貢献割合本件発明1は,原告とBの2名の共同発明であるが,原告が一人で考案したものといっても過言ではないので,共同発明者間における原告の貢献割合は,90%である。 (ウ) 原告が支払を受けるべき相当の対価 - 13 -本件発明1により被告が受けるべき利益は20億2500万円であること(前記ア(エ)),本件発明1に関する被告の貢献度は50%(前記(ア))及び共同発明者間における原告の貢献割合は90%(前記(イ))であることによれば,原告が被告から支払を受けるべき本件発明1の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の額は,9億1125万円(20億2500万円×50%×90%)である。 そして,上記相当の対価の額から被告が原告に支払った本件発明1に係る補償金(実績補償)2万5000円を控除すると,その残額は,9億1122万5000円となる。 ウまとめしたがって,原告は,特許法旧35条3項に基づき,被告に対し,本件発明1の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価として,9億1122万5000円(前記イ(ウ))の一部である3000万円及びこれに対する平成21年9月10日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延 に係る相当の対価として,9億1122万5000円(前記イ(ウ))の一部である3000万円及びこれに対する平成21年9月10日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 (2) 被告の主張ア被告が本件発明1により受けるべき利益について以下に述べるとおり,沖電線が本件特許権1の存続期間中に本件発明1を実施した事実は存在せず,被告において本件発明1により受けるべき利益が発生していない。 (ア) 被告が本件発明1を実施した連続メッキ装置を沖電線に移管した事実は存在しない。 (イ) 原告が主張する社内表彰制度は,候補への推薦は技術部門からの自薦によること,発明を奨励するという観点から設けられた制度であること,現実に発明が実施されることを待たずして社内表彰されることもあったことからすれば,本件発明1が昭和57年度の優秀発明賞の - 14 -候補になったからといって本件発明1が実施されていたことの根拠となるものではない。 (ウ) 被告が昭和59年1月31日に沖電線との間で本件実施許諾契約を締結したことは認めるが,沖電線が本件発明1を実施した事実は存在しないし,前記(ア)のとおり,被告が本件発明1を実施した連続メッキ装置を沖電線に移管した事実も存在しない。 また,沖電線作成の被告に対する報告書(乙5の1ないし3)によれば,昭和63年10月1日以降,被告は沖電線から実施料収入を得ていないから,沖電線が少なくとも同日以降本件発明1を実施していないことは明らかである。 イ相当の対価の額について原告主張の相当の対価の額は否認する。 2 争点2(本件発明2に係る相当の対価)について(1) 原告の主張ア被告が本件発明2により受けるべき利益(ア) 被告によ 当の対価の額について原告主張の相当の対価の額は否認する。 2 争点2(本件発明2に係る相当の対価)について(1) 原告の主張ア被告が本件発明2により受けるべき利益(ア) 被告による本件発明2の自己実施使用者等が職務発明である特許発明を自ら実施している場合には,これにより上げた利益のうち当該特許の排他的効力により第三者の実施を排除して独占的に実施することにより得られたと認められる利益が「独占の利益」に該当する。 被告は,本件特許権2の設定登録を受けた後,本件発明2を使用したICモジュールの製造販売を行うことにより,本件発明2を自ら実施した。 このことは,原告が,被告に在職中に,被告の試作室(電気特性試験等を行っている部門)において,本件発明2の実施品のサンプル(不良品)を現認していることなどから裏付けられる。 - 15 -(イ) 独占の利益の額被告が本件発明2を自己実施したことによる独占の利益は,次のとおり,393億3000万円である。 a 被告が生産したICモジュールの年間販売高874億円b 実施料率 3%c 期間 15年d 独占の利益(a×b×c) 393億3000万円(ウ) 小括したがって,被告が本件発明2により受けるべき利益は,393億3000万円である。 イ相当の対価の額(ア) 被告の貢献度原告が本件発明2をするに至った経緯を考慮すれば,本件発明2がされるについて被告が貢献した程度(特許法旧35条4項)は,50%を超えることはない。 (イ) 原告が支払を受けるべき相当の対価本件発明2により被告が受けるべき利益は393億3000万円であること(前記ア(ウ)),本件発明2に関する 35条4項)は,50%を超えることはない。 (イ) 原告が支払を受けるべき相当の対価本件発明2により被告が受けるべき利益は393億3000万円であること(前記ア(ウ)),本件発明2に関する被告の貢献度は50%(前記(ア))であることによれば,原告が被告から支払を受けるべき本件発明2の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の額は,196億6500万円(393億3000万円×50%)である。 そして,上記相当の対価の額から被告が原告に支払った本件発明2に係る補償金(登録補償)1万円を控除すると,その残額は,196億6499万円となる。 ウまとめ - 16 -したがって,原告は,特許法旧35条3項に基づき,被告に対し,本件発明2の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価として,196億6499万円の一部である3000万円及びこれに対する平成21年9月10日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 (2) 被告の主張ア被告が本件発明2により受けるべき利益について被告が本件発明2を自己実施した事実は存在せず,被告において本件発明2により受けるべき利益が発生していない。 イ相当の対価の額について原告主張の相当の対価の額は否認する。 3 争点3(消滅時効の成否)について(1) 被告の主張ア本件発明1に係る相当対価請求権の消滅時効の完成(ア) 本件特許権1については,昭和50年9月10日に出願がされ,昭和56年9月30日に設定登録がされ,平成7年9月10日に存続期間満了により消滅した。 被告が本件発明1(本件特許権1)を第三者に実施許諾することによって得た利益を対象とする実績補償については,平成2年被告規程2が適用される。 7年9月10日に存続期間満了により消滅した。 被告が本件発明1(本件特許権1)を第三者に実施許諾することによって得た利益を対象とする実績補償については,平成2年被告規程2が適用される。 平成2年被告規程2の12条1項は,「●省略●」て実績補償を支給する旨定めている。 上記条項は,権利満了までの5年ごとにその実績に応じて実績補償を支給するというのであるから,実績補償の請求権を5年ごとに分割し,それぞれの期間の経過をもって支払時期が到来することを定めたものである。 - 17 -そうすると,本件発明1については,昭和56年9月30日から昭和61年9月29日まで,昭和61年9月30日から平成3年9月29日まで,平成3年9月30日から平成8年9月29日までの各期間ごとにそれぞれ実績補償金が算定され,原告は被告に対して実績補償を請求することができるから,最終期間の終期の翌日である平成8年9月30日が本件発明1に係る相当対価請求権の消滅時効の起算日となる。 そして,上記起算日から既に10年の時効期間が経過しているから,原告が主張する本件発明1に係る相当対価請求権はすべて消滅時効が完成している。 (イ) 原告は,後記のとおり,原告が提出した本件調査票に対する被告からの返答がない以上,本件発明1の実績補償に関する請求権の行使を原告に期待することは事実上不可能であったことなどを理由として,原告の本件発明1に係る相当対価請求権の消滅時効は完成していない旨主張する。 しかし,原告が主張する相当対価請求権を行使できなかった事情は,事実上の障害であり,単に原告側の事情として,権利行使できることについて不知であったというにすぎないものであって,このような権利者の不知の場合においても,法律が特別に定める場合(民法126条,724 実上の障害であり,単に原告側の事情として,権利行使できることについて不知であったというにすぎないものであって,このような権利者の不知の場合においても,法律が特別に定める場合(民法126条,724条等)を除き,消滅時効の進行を妨げるものではない(大審院大正6年11月14日判決・民録23輯1965頁,大審院昭和12年9月17日判決・民集16巻1435頁)。 原告主張の本件調査票は,審査部門における報奨審査開始の契機,評価・算定の資料にすぎないのであり,調査票提出者が実施の事実を記載していたからといって,直ちに実施が認定されるわけでも,報奨が支払われるわけでもなければ,追加調査や提出者への調査結果報告 - 18 -が義務付けられているわけでもない。本件においても,原告に対し,被告からの回答及び実績補償の支払がなかったというのは,単に被告各規程の定める補償金支払要件を充たさなかった結果にすぎないから,被告が本件調査票に回答しなかったとしても,何ら法的義務違反がないことはもちろんのこと,原告による本件発明1に係る相当対価請求権の権利行使を障害する事情にも該当しない。 また,原告は,被告から回答がないことに不満,不服を抱いていたのであれば,関係各部署に問い合わせをすれば足りただけであり,結局,権利行使するに当たっての事実上の障害すら存在しないといわざるを得ない。 さらに,仮に原告の主張するように,被告が回答しない限り「権利を行使することができる時」(民法166条1項)が到来しないと解され,補償金等を請求できないというのであれば,かえって発明者に不利益な事情となって,不合理である。 したがって,原告の上記主張は,失当である。 イ本件発明2に係る相当対価請求権の消滅時効の完成(ア) 本件特許権2は,昭和63年7月8日に出願 発明者に不利益な事情となって,不合理である。 したがって,原告の上記主張は,失当である。 イ本件発明2に係る相当対価請求権の消滅時効の完成(ア) 本件特許権2は,昭和63年7月8日に出願がされ,平成8年3月13日に設定登録がされ,平成20年7月8日に消滅した。 平成12年被告規程1の付則2条によって,被告規程2が廃止され,廃止された規程による取扱案件については,平成11年4月1日以降,すべて新たな規程が適用されることとされた。 平成12年被告規程1の22条1項は,「●省略●」て貢献特許報奨を支給する旨定めている。 上記条項は,「特許権成立」を指す特許権の設定登録の日から2年の経過をもって支払時期が到来することを定めたものである。 そうすると,本件発明2については,本件特許権2の上記設定登録 - 19 -日から2年が経過した平成10年3月14日から原告は被告に対して貢献特許報奨を請求することができるから,同日が本件発明2に係る相当対価請求権の消滅時効の起算日となる。 そして,上記起算日から既に10年の時効期間が経過しているから,原告が主張する本件発明2に係る相当対価請求権は,消滅時効が完成している。なお,貢献特許報奨に係る分以外の本件発明2に係る相当対価請求権についても,少なくとも原告の被告に対する平成21年3月16日付け本件通知による本件発明2に係る相当の対価の請求の日から過去10年分の相当対価請求権は,消滅時効が完成している。 (イ) 原告は,後記のとおり,平成12年被告規程1の22条1項の「なお書き」の記載や,原告が提出した本件調査票に対する被告からの返答がない以上,本件発明2の貢献特許報奨に関する請求権の行使を原告に期待することは事実上不可能であったことなどを理由として,原告の本件発明2に係る 載や,原告が提出した本件調査票に対する被告からの返答がない以上,本件発明2の貢献特許報奨に関する請求権の行使を原告に期待することは事実上不可能であったことなどを理由として,原告の本件発明2に係る相当対価請求権の消滅時効は完成していない旨主張する。 しかし,原告主張の平成12年被告規程1の22条1項の「●省略●」との記載中の「●省略●」とは,その文言からも明らかなとおり,支払時期を定めたものではなく,報奨支給の要件であって,時効の起算日の解釈には何ら影響しないものである。そもそも,本件特許2に関しては,基礎となる「貢献特許報奨金の支給」が全くなかったのであるから,かかる前提を欠いて「重ねての支給」などあり得ない。 また,前記ア(イ)で述べたように,原告が主張する相当対価請求権を行使できなかった事情は,事実上の障害であって,単に原告側の事情として,権利行使できることについて不知であったというにすぎないものである。 - 20 -したがって,原告の主張は,理由がない。 ウ消滅時効の援用(ア) 被告は,平成21年5月13日,本件回答をもって,本件各発明に係る相当対価請求権について消滅時効を援用し,さらに,本訴において,再度上記消滅時効を援用した。 (イ) これに対し原告は,後記のとおり,原告において本件各発明に係る相当対価請求権を行使できなかった事情があるなどとして,被告が本件各発明に係る相当対価請求権について消滅時効を援用することは,信義則に反し権利の濫用に当たる旨主張する。 しかし,原告が主張する相当対価請求権を行使できなかった事情というのは,事実上の障害であって,単に原告側の事情として,権利行使できることについて不知であったというにすぎないものである。また,被告が原告による権利行使を妨げたような事情は全く存 きなかった事情というのは,事実上の障害であって,単に原告側の事情として,権利行使できることについて不知であったというにすぎないものである。また,被告が原告による権利行使を妨げたような事情は全く存在しないのであるから,被告において消滅時効を援用することが信義則に反するような事情もない。 したがって,原告の主張は,理由がない。 エまとめ以上によれば,原告主張の本件各発明に係る相当対価請求権は,時効により消滅している。 (2) 原告の主張ア本件発明1に係る相当対価請求権の消滅時効の完成について(ア) 民法166条1項は,消滅時効の起算点について,「権利を行使することができる時」と定めているが,これは権利行使について法律上の障害がないというだけではなく,その権利行使が現実に期待できるものであるということも必要であると解すべきである。そのように解さなければ,権利行使を期待することが事実上不可能な場合にまで, - 21 -時効の進行を容認することになり,権利者に対し正当な権利行使を制限することになって酷であるばかりか,「権利の上に眠る者は保護しない」という時効制度の本旨にもとる不当な結果になるからである。 しかるに,原告は,本件発明1の実績補償に関し,被告から,1991年(平成3年)6月10日付けの本件調査票の交付を受けたので,本件調査票の「実施状況の概要」のうちの「自社の実施状況」欄に沖電線での実施がある旨明記し,同「他社の実施状況」欄に「田中貴金属(EEJA)で装置を製造して富士通で使用」と記すなどした上で,平成3年7月26日,本件調査票に資料を添えて被告に回答した。これに対し被告からは何らの返答がなかった。 このように原告が本件発明1を実施している会社の名称を挙げて回答をしているのであるから,被告は,原 7月26日,本件調査票に資料を添えて被告に回答した。これに対し被告からは何らの返答がなかった。 このように原告が本件発明1を実施している会社の名称を挙げて回答をしているのであるから,被告は,原告の回答に対して,本件発明1の実施及び実施許諾の有無を,誠実に調査して返答する義務があるにもかかわらず,被告はその義務を一切履行していない。また,補償金が不支給の場合であっても,被告が原告にその旨通知すべき義務があることは,平成17年被告規程1の24条1項が,「●省略●」と定めていることからも裏付けられる。 そして,原告は,当然に被告からの返答を待って,本件発明1の実績補償に関する請求権を行使するのであり,その返答がない以上,これを行使することを原告に期待することは事実上不可能であったというべきであるから,本件発明1に係る相当対価請求権の消滅時効は未だにその進行を開始していない。 (イ) 本件調査票による調査依頼は,昭和61年4月1日から平成3年3月31日までの5年間を調査対象期間とするものであり,5年間の各年を被告の会計年度(4月1日から翌年3月31日まで)で区分けしているから,被告規程2の12条の「5年ごと」の実績とは,被告の - 22 -会計年度で区分けした5年間を意味する。 そして,本件調査票による調査依頼の後,平成8年6月に平成3年4月1日から平成8年3月31日までの5年間の実施状況についての調査依頼が,更に平成13年6月に平成8年4月1日から平成13年3月31日までの5年間の実施状況についての調査依頼がされている。 しかるに,本件特許権1の存続期間満了日は,平成7年9月10日であるが,例えば実施料などはそれ以降に支払われる場合があることからすると,平成8年4月1日から平成13年3月31日までの5年間の本件発明 かるに,本件特許権1の存続期間満了日は,平成7年9月10日であるが,例えば実施料などはそれ以降に支払われる場合があることからすると,平成8年4月1日から平成13年3月31日までの5年間の本件発明1の実績補償に関しては,消滅時効の起算日が上記調査依頼に対する回答提出後の平成13年6月以降になる。 したがって,本件発明1に係る相当対価請求権の消滅時効は完成していない。 イ本件発明2に係る相当対価請求権の消滅時効の完成について(ア) 原告は,本件発明2に関し,被告から,本件調査票と同じ書式の書面の交付を受け,同書面に「自社にて現在実施中」に○印をつけて提出したが,被告から原告に対して実施の有無についての返答はない。 本件発明1の場合と同様に,原告は,当然に被告から返答を待って,本件発明2の貢献特許報奨に関する請求権を行使するのであり,その返答がない以上,これを行使することを原告に期待することは事実上不可能であったというべきであるから,本件発明2に係る相当対価請求権の消滅時効は未だにその進行を開始していない。 (イ) 平成12年被告規程1の22条1項は,「●省略●」て支給するとの文言に続いて,「●省略●」として,更なる報奨支給の要件と共に,その支払時期を定めている。 この条項からすれば,原告が被告に対して貢献特許報奨を請求し得 - 23 -たのは,本件特許権2の設定登録日から2年が経過した平成10年3月14日から本件特許権2が消滅した平成20年7月8日までの間であるから,本件発明2の貢献特許報奨に関する請求権の消滅時効の起算日は,平成20年7月8日であるというべきである。 したがって,本件発明2に係る相当対価請求権の消滅時効は完成していない。 ウ消滅時効の援用について(権利の濫用)(ア) 仮に本件発明1に係る は,平成20年7月8日であるというべきである。 したがって,本件発明2に係る相当対価請求権の消滅時効は完成していない。 ウ消滅時効の援用について(権利の濫用)(ア) 仮に本件発明1に係る相当対価請求権の消滅時効が完成しているとしても,前記ア(ア)の事情があり,かつ,被告は,故意又は重大な過失によって,本件調査票に対して返答をせずに,原告の実績補償に関する補償金請求権の行使を妨げたのであるから,被告が上記消滅時効を援用することは,信義則に反し,権利の濫用として許されないというべきである。 (イ) これと同様に,仮に本件発明2に係る相当対価請求権の消滅時効が完成しているとしても,被告は原告の貢献報奨に関する補償金請求権の行使を妨げたのであるから,被告が上記消滅時効を援用することは,信義則に反し,権利の濫用として許されないというべきである。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明1に係る相当の対価請求について前記争いのない事実等によれば,被告は,昭和50年9月10日に本件発明1の特許出願(本件出願1)をし,昭和56年9月30日に本件特許権1の設定登録を受けた後,本件特許権1は,平成7年9月10日に存続期間満了により消滅したこと,原告が本件通知によって被告に対して本件各発明に係る相当対価の請求をしたのは,平成21年3月26日であることが認められる。 このような本件の事案に鑑み,まず,被告主張の消滅時効の成否(争点3)について判断することとする。 - 24 -(1) 消滅時効の完成の有無ア原告の本件発明1に係る相当の対価の請求は,沖電線が本件特許権1の上記設定登録日から上記存続期間満了日までの間被告の許諾により本件発明1を実施したことに基づく実施料相当額をもって被告が本件発明1により受けるべき利益(特許法旧35条 請求は,沖電線が本件特許権1の上記設定登録日から上記存続期間満了日までの間被告の許諾により本件発明1を実施したことに基づく実施料相当額をもって被告が本件発明1により受けるべき利益(特許法旧35条4項)であると主張するものであるから,被告各規程の定める実績補償に係る相当の対価を請求するものということができる。そして,実績補償に関しては,平成2年被告規程2が適用される。 ところで,従業者等は,勤務規則等により,職務発明についての特許を受ける権利を使用者等に承継させたときは,相当の対価の支払を受ける権利を取得し(特許法旧35条3項),その対価の額については,特許法旧35条4項により勤務規則等による額が同項により算定される額に満たないときは算定される額に修正されるが,その対価の支払時期については,そのような規定はない。 そうすると,勤務規則等に使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には,その支払時期が到来するまでの間は,相当の対価の支払を受ける権利の行使につき法律上の障害があるものとして,その支払を求めることができないというべきであるから,その支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となり(最高裁平成15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照),また,勤務規則等にそのような条項がない場合には,勤務規則等により支払うべき対価が発生したときが相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解するのが相当である。 イ被告は,平成2年被告規程2の12条1項は,実績補償の支払時期について,実績補償の請求権を特許権の権利満了までの5年ごとに分割し,それぞれの期間の経過をもって支払時期が到来することを定めたもので - 25 -あり,本件発明1については,昭和56年9 時期について,実績補償の請求権を特許権の権利満了までの5年ごとに分割し,それぞれの期間の経過をもって支払時期が到来することを定めたもので - 25 -あり,本件発明1については,昭和56年9月30日から昭和61年9月29日まで,昭和61年9月30日から平成3年9月29日まで,平成3年9月30日から平成8年9月29日までの各期間ごとにそれぞれ実績補償金が算定され,原告は被告に対して実績補償を請求することができるから,最終期間の終期の翌日である平成8年9月30日が本件発明1に係る相当対価請求権の消滅時効の起算日となるものであるが,上記起算日から既に10年の時効期間が経過しているから,原告が主張する本件発明1に係る相当対価請求権はすべて消滅時効が完成している旨主張する。 (ア) そこで検討するに,平成2年被告規程2の12条1項は,「●省略●」と規定し,●省略●までの等級区分に対応する「●省略●」ないし「●省略●」の実績補償の金額を規定している。 これによれば,平成2年被告規程2の12条1項は,被告が「従業員等から譲り受けた発明」が特許を受け,これを第三者に実施許諾したことによって利益を得たときは,当該従業員等に同項所定の等級区分に対応する実績補償請求権が発生することを定めたものと解される。 また,同項の「●省略●」との文言は,実績補償の支給を特許権の存続期間満了時までの5年ごとに行うことを定めたものと解されるから,同項は,実績補償請求権の支払時期に関する条項にも該当するものということができる。 しかし,他方で,同項は,具体的な支払期日を定めたものではなく,平成2年被告規程2の他の条項(乙8)をみても,具体的な支払期日の定めは見当たらず,このほか被告各規程を含む本件証拠上,このような定めがあることをうかがわせる証拠はな 支払期日を定めたものではなく,平成2年被告規程2の他の条項(乙8)をみても,具体的な支払期日の定めは見当たらず,このほか被告各規程を含む本件証拠上,このような定めがあることをうかがわせる証拠はない。また,平成2年被告規程2の13条は,実績補償金の算定に関し,「●省略●」と規定し - 26 -ているが,その算定評価の具体的な時期や算定評価に必要な期間に関する定めは存在せず,他にこのような定めがあることを認めるに足りる証拠はない。 以上を総合すると,従業員等は,第三者が職務発明に係る特許権の存続期間中に職務発明を実施し,これによって被告が第三者から実施許諾に基づく利益を得たときは,平成2年被告規程2の12条1項により実績補償請求権を取得し,当該特許権の存続期間満了時までの5年ごとに区分された期間が経過すれば,それぞれの期間に対応する実績補償請求権を行使することができるものと解するのが相当である。 (イ) 被告は,本件発明1に係る実績補償の対象期間は,上記のとおり,本件特許権1の設定登録日である昭和56年9月30日から5年ごとの各期間に区分され,その最終期間は,平成3年9月30日から平成8年9月29日までの期間であり,最終期間に対応する実績補償請求権の支払時期は最終期間の終期の翌日である平成8年9月30日である旨主張する。 しかるに,証拠(甲7の1,16)及び弁論の全趣旨によれば,①被告は,本件発明1の実績補償に関し,原告及びBに対し,1991年(平成3年)6月10日付けで本件調査票による実施状況調査を依頼したこと,②本件調査票(甲7の1)には,調査対象期間を1986年(昭和61年)4月1日から1991年(平成3年)3月31日までの5年間とし,その提出期限を同年7月26日とし,「この調査票による調査結果は,工業所有権委員 甲7の1)には,調査対象期間を1986年(昭和61年)4月1日から1991年(平成3年)3月31日までの5年間とし,その提出期限を同年7月26日とし,「この調査票による調査結果は,工業所有権委員会において実績補償金の算定を行なう重要な資料となりますので,全項目について記載もれがないように正確かつ慎重に記載して下さい。」,「またかりに実績があったとしても提出期限までに,この調査票の提出がないもの,および調査票に記載もれ等がありその補正に応じないものについては,今期(5 - 27 -年間)の補償を辞退したものとして処理いたしますのでご承知おき下さい。」との記載があることが認められる。 これらの事実によれば,平成3年当時において,本件発明1に係る実績補償の対象期間は,昭和61年4月1日から平成3年3月31日までの5年間に区分されていたことを一応うかがうことができる。これを前提とすると,次の対象期間となる5年間は,平成3年4月1日から平成8年3月31日までということとなり,被告の主張する上記最終期間よりもその終期が約6か月早まることとなる。 しかし,他方で,本件においては,本件発明1の実績補償に関し,本件調査票の上記調査対象期間の前後の時期を対象とした調査依頼があったことやその具体的な調査対象期間を客観的に裏付ける証拠は提出されていないことに照らすならば,次の対象期間となる5年間については,上記の平成3年4月1日から平成8年3月31日までの期間であると直ちに断定することはできない。 以上の諸点と本件特許権1が平成7年9月10日に存続期間満了により消滅していることを総合考慮すると,本件発明1に係る実績補償請求権の5年ごとの区分の最終期間に対応する支払時期は,遅くとも,被告が主張する平成8年9月30日までに到来していたものと認 期間満了により消滅していることを総合考慮すると,本件発明1に係る実績補償請求権の5年ごとの区分の最終期間に対応する支払時期は,遅くとも,被告が主張する平成8年9月30日までに到来していたものと認めるのが相当である。 そうすると,原告主張の本件発明1に係る相当対価請求権(実績補償請求権に係る部分)の消滅時効の起算点は,上記の平成8年9月30日と解されるから,上記相当対価請求権は,同日から10年を経た平成18年9月30日の経過により消滅時効が完成したものと認められる。 ウ(ア) これに対し原告は,本件発明1の実績補償に関し,被告から,1991年(平成3年)6月10日付けの本件調査票の交付を受けた後, - 28 -本件調査票の「実施状況の概要」のうちの「自社の実施状況」欄に沖電線での実施がある旨明記し,同「他社の実施状況」欄に「田中貴金属(EEJA)で装置を製造して富士通で使用」と記すなどした上で,平成3年7月26日,本件調査票に資料を添えて被告に回答したのに対し,被告から何らの返答がない以上,本件発明1の実績補償に関する請求権を行使することを原告に期待することは事実上不可能であったというべきであるから,本件発明1に係る相当対価請求権の消滅時効は未だにその進行を開始していない旨主張する。 そこで検討するに,証拠(甲7の1ないし3,16)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件調査票の「実施状況の概要」のうちの「自社の実施状況」欄の「a.現在実施中」の符号に○印を付して,「(沖電線)」と記載し,同「他社の実施状況」欄の「a.現在実施中」の符号に○印を付して,「田中貴金属(EEJA)で装置を製造して富士通で使用」と記載し,同「権利維持の必要性」欄の「B.あり」の符号に○印を付すなどした上,平成3年7月26日,原告及びBの連名 」の符号に○印を付して,「田中貴金属(EEJA)で装置を製造して富士通で使用」と記載し,同「権利維持の必要性」欄の「B.あり」の符号に○印を付すなどした上,平成3年7月26日,原告及びBの連名で本件調査票を被告に提出したこと,原告は,その際,添付書面として原告作成の「特許技術侵害調査報告書」(甲7の2)及び「FUJITSU 1987-7月号」の掲載論文(甲7の3)を被告に提出したことが認められる。 そして,前記イ(イ)②認定の本件調査票の記載事項によれば,本件調査票による調査は,被告の工業所有権委員会が,昭和61年4月1日から平成3年3月31日までの5年間の本件発明1の実績補償の算定を行う資料とするとともに,原告及びBにおける実績補償を請求する意思の有無を確認する目的で行われたものであることが認められる。一方で,被告各規程には,本件調査票による調査のような実績補償の算定のための調査に関する定めは見当たらないのみならず,ま - 29 -た,被告の勤務規則等において,被告において実績補償の算定のための調査を行った場合にその調査結果を従業員に通知しなければならないことや従業員においてその調査結果を待たなければ実績補償請求権を行使できないことの定めが存在することをうかがわせる証拠はない。 この点に関し,原告は,平成17年被告規程1の24条1項を根拠として挙げて,被告には調査結果を通知すべき義務がある旨主張する。 しかし,平成17年被告規程1の24条1項は,「●省略●」と規定し,発明者が「●省略●」に異議のある場合の異議申立手続について定めているが,この規程は平成17年4月1日に施行されたものであって(「付則1条」),そもそも本件特許権1の存続期間中の「実績補償」に関するものではないから,原告の主張は,採用することがで ついて定めているが,この規程は平成17年4月1日に施行されたものであって(「付則1条」),そもそも本件特許権1の存続期間中の「実績補償」に関するものではないから,原告の主張は,採用することができない(なお,平成17年被告規程1は,この異議申立手続を経なければ職務発明に係る相当対価請求権を行使できないことを定めたものではない。)。 以上によれば,原告主張の本件調査票による調査に対する回答について被告から返答がなかったことは,原告による本件発明1に係る相当対価請求権(実績補償請求権に係る部分)の行使についての法律上の障害に当たるものと認めることはできないし,また,権利の性質上その行使をすることが現実に期待することができない事情に当たるものと認めることもできない。 したがって,本件発明1に係る相当対価請求権(実績補償請求権に係る部分)の消滅時効は未だにその進行を開始していないとの原告の主張は,理由がない。 (イ) 次に,原告は,①本件発明1の実績補償に関し,本件調査票による - 30 -調査依頼があった後,平成8年6月に平成3年4月1日から平成8年3月31日までの5年間の実施状況についての調査依頼が,更に平成13年6月に平成8年4月1日から平成13年3月31日までの5年間の実施状況についての調査依頼がされていること,②本件特許権1の存続期間満了日は,平成7年9月10日であるが,例えば実施料などはそれ以降に支払われる場合があることからすると,平成8年4月1日から平成13年3月31日までの5年間の本件発明1の実績補償に関しては,消滅時効の起算日が上記調査依頼に対する回答提出後の平成13年6月以降になる旨主張する。 しかし,原告主張の上記①の調査依頼が行われたことについては,本件調査票のような調査票その他の書面等客観的な裏 時効の起算日が上記調査依頼に対する回答提出後の平成13年6月以降になる旨主張する。 しかし,原告主張の上記①の調査依頼が行われたことについては,本件調査票のような調査票その他の書面等客観的な裏付けとなる証拠は提出されていない。もっとも,原告の陳述書(甲16)中には,(本件調査票を)「…提出後の特許権利期間満了(平成7年(1995年)9月10日までの5年後の再度の調査時についても,コピーはしなかったが,「実施状況調査について」(甲第7号証の1)と同様の記載はしました。」(5頁8行~13行)との記載があるが,上記記載によっても,その調査がいついかなる期間を調査対象期間として行われたかについての具体的な記述はなく,上記①の調査依頼が行われたことを認めるに足りない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。 また,本件特許権1の存続期間満了前に第三者が本件発明1を実施したことに基づいて,被告が上記②の平成8年4月1日から平成13年3月31日までの期間中に第三者から実施料収入を得たことを認めるに足りる証拠はなく,上記期間中に原告主張の実績補償請求権が発生したものと認めることもできない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (2) 消滅時効の援用の権利濫用の成否 - 31 -ア被告が本訴において本件発明1に係る相当対価請求権(実績補償請求権に係る部分)の消滅時効を援用したことは当裁判所に顕著である。 イこれに対し原告は,原告が本件調査票に資料を添えて被告に回答したのに対し,被告から何らの返答がないなどの前記(1)ウ(ア)の事情があり,かつ,被告は,故意又は重大な過失によって,本件調査票に対して返答をせずに,原告の実績補償に関する補償金請求権の行使を妨げたのであるから,被告が上記消滅時効を援用することは,信義 ア)の事情があり,かつ,被告は,故意又は重大な過失によって,本件調査票に対して返答をせずに,原告の実績補償に関する補償金請求権の行使を妨げたのであるから,被告が上記消滅時効を援用することは,信義則に反し,権利の濫用として許されない旨主張する。 しかし,前記(1)ウ(ア)で述べたように,被告の勤務規則等において,実績補償の算定のための調査を行った場合にその調査結果を従業員に通知しなければならないことや従業員においてその調査結果を待たなければ実績補償請求権を行使できないことの定めが存在することをうかがわせる証拠はなく,被告において,本件調査票による調査結果を原告に通知すべき義務があったということはできない。 また,原告が,平成3年7月26日に本件調査票を被告に提出した後,平成21年3月26日に本件通知によって被告に対し本件発明1に係る相当対価の請求をするまでの間,被告において原告の実績補償請求権の行使を妨げる行為を行ったことをうかがわせる証拠はない。この点,原告の陳述書(甲21)中には,「実際にも,私もあまりに長期に渡って沖電気から返答がなかったので,関係者に何度も当たっています。それでも,まともな返答がもらえなかったのです。」(4頁13行~15行)との記載があるが,上記記載によっても,原告がいついかなる部署の関係者に問い合わせをし,どのような回答があったのかについては具体的な記述がなく,被告において原告の実績補償請求権の行使を妨げる事情の存在は認められない。 さらに,被告において実績補償が5年ごとに区分した実績に基づいて - 32 -支給されていたことからすれば,原告は,遅くとも,本件調査票を被告に提出した平成3年7月26日から5年を経過した時点においては,被告が本件調査票の調査対象期間について実績補償の支給要件を充 32 -支給されていたことからすれば,原告は,遅くとも,本件調査票を被告に提出した平成3年7月26日から5年を経過した時点においては,被告が本件調査票の調査対象期間について実績補償の支給要件を充足しないものと判断したことを容易に推測できたものというべきである。 したがって,被告による上記消滅時効の援用が信義則に反し,権利の濫用に当たるものと認めることはできないから,原告の上記主張は,採用することができない。 (3) まとめ以上によれば,原告主張の本件発明1に係る相当対価請求権(実績補償請求権に係る部分)は時効により消滅したというべきである。 したがって,原告の本件発明1に係る相当の対価請求は,その余の点については判断するまでもなく,理由がない。 2 本件発明2に係る相当の対価請求について前記争いのない事実等によれば,被告は,昭和63年7月8日に本件発明2の特許出願(本件出願2)をし,平成8年3月13日に本件特許権2の設定登録を受けた後,本件特許権2は,平成20年3月13日に特許料不納により消滅したことが認められる。 原告の本件発明2に係る相当の対価の請求は,被告が自己実施(自社実施)により得た独占の利益をもって被告が本件発明2により受けるべき利益(特許法旧35条4項)であると主張するものであるから,被告各規程の定める実績補償及び被告規程1の定める貢献特許報奨に係る相当の対価を請求するものということができる。そして,実績補償に関しては,平成2年被告規程2が,貢献特許報奨に関しては,平成11年4月1日から平成17年3月31日までの分は平成12年被告規程1が,平成17年4月1日以降の分は平成17年被告規程1がそれぞれ適用される。 以上を前提に,原告の本件発明2に係る相当の対価(争点2)について判断 - 33 -す での分は平成12年被告規程1が,平成17年4月1日以降の分は平成17年被告規程1がそれぞれ適用される。 以上を前提に,原告の本件発明2に係る相当の対価(争点2)について判断 - 33 -することとする。 (1) 被告が本件発明2により受けるべき利益の有無ア原告は,被告が,本件特許権2の設定登録を受けた後,本件発明2を使用したICモジュールの製造販売を行うことにより本件発明2を自ら実施し,これによって独占の利益を得た旨主張する。 この点に関し,原告の陳述書(甲16)中には,「沖電気の試作室,電気特性試験等を行っている部門でサンプル(不良品)を簡単に入手し,本件2の発明が実施されていることについて確認できました。封止工程がモールド化された事は,一般的に封止外観を見れば分かります。」(4頁の8項)との記載がある。 しかし,上記記載に引き続いて「退職時にこれらのサンプルを全て廃棄してしまいました。」とあるように,原告が確認したとするサンプルの提出はされていない。また,原告の陳述書の上記記載は,原告が確認したとするサンプルの具体的な構造,形状を述べるものではなく,上記記載の内容からもそれが本件発明2の実施品であることを認めるに足りない。 さらに,原告が弁護士法23条の1に基づく照会に対する回答として提出した,株式会社タイセー(以下「タイセー」という。)作成の平成22年12月17日付け「ご照会の件についての回答」と題する書面(甲28の5)には,「株式会社タイセーは1984年頃より1995年頃の間におきまして沖電気工業株式会社八王子事業所(沖電気秩父工場を含む)様より半導体の組立依託を受けまして事業をおこなっておりました。1989年(平成元年)に当該事業部を,株式会社大精テクニカと分社し沖電気八王子事業所より部材の無償支 子事業所(沖電気秩父工場を含む)様より半導体の組立依託を受けまして事業をおこなっておりました。1989年(平成元年)に当該事業部を,株式会社大精テクニカと分社し沖電気八王子事業所より部材の無償支給,生産技術・管理も沖電気様の管理により事業展開しておりました。」との記載があるが,上記記載中のタイセーが被告からの半導体の組立委託の事業を行っていた - 34 -時期は本件特許権2の設定登録前であり,しかも,上記書面によっても,タイセーがいかなる製造方法により半導体の製造を行っていたのか不明である。 他に被告が本件特許権2の設定登録後に本件発明2を使用したICモジュールの製造販売を行っていたことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告が本件発明2を自己実施していたことを認めることはできないから,原告の上記主張は,理由がない。 イそうすると,被告において原告主張の本件発明2により受けるべき利益が存在するものとは認められない。 (2) まとめ以上によれば,原告の本件発明2に係る相当の対価請求は,その余の点については判断するまでもなく,理由がない。 3 結論(1) 以上のとおり,原告の請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 (2) なお,付言するに,原告は,本件口頭弁論終結後の平成23年4月8日に,弁論再開申立書を当裁判所に提出して,沖電線の本件発明1の実施の事実についての追加の主張立証の必要があることを理由に,本件弁論の再開を求めた。 しかし,前記1のとおり,原告の本件発明1に係る相当対価請求権は,時効により消滅したものと認められるので,本件弁論の再開の必要性はないものと判断した。 東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官大鷹一郎 - る相当対価請求権は,時効により消滅したものと認められるので,本件弁論の再開の必要性はないものと判断した。 東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官 大鷹一郎 裁判官 大西勝滋 裁判官 上田真史

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