- 1 -平成24年6月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第247号意匠権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成24年5月24日判決東京都中央区<以下略>原告ラディウス株式会社訴訟代理人弁護士西尾孝幸同水村元晴同吉岡裕貴同小堀優同辻角智之同田畠宏一同伊村健二朗訴訟代理人弁理士古澤俊明東京都府中市<以下略>被告株式会社アベル訴訟代理人弁護士横井康真 主文 1 被告は,別紙物件目録記載の各製品を販売してはならない。 2 被告は,前項記載の各製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,92万2950円及びこれに対する平成23年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,これを10分し,その9を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 6 この判決の第1項ないし第3項は,仮に執行することができる。 - 2 - 事実及び理由 第1 請求 1 主文第2項と同旨 2 被告は,別紙物件目録記載の各製品を製造,販売してはならない。 3 被告は,原告に対し,820万8162円及びこれに対する平成23年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,意匠に係る物品を「エーシーアダプタ」とする後記2(2)の意匠権(以下「本件意匠権」といい,その登録意匠を「本件登録意匠」という。)の意匠権者で 。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,意匠に係る物品を「エーシーアダプタ」とする後記2(2)の意匠権(以下「本件意匠権」といい,その登録意匠を「本件登録意匠」という。)の意匠権者である原告が,別紙物件目録記載の各製品(以下「被告製品」と総称し,その意匠を「被告意匠」という。)を製造及び販売する被告の行為が原告の本件意匠権の侵害に当たる旨主張して,被告に対し,意匠法37条1項及び2項に基づき,被告製品の製造及び販売の差止め並びにその廃棄を求めるとともに,本件意匠権侵害の不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。 2 争いのない事実等(争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実)(1) 当事者ア原告は,コンピュータのソフトウェア,本体及び周辺装置の開発及び販売業務,電子部品の開発及び販売業務等を目的とする株式会社である。 イ被告は,情報通信機器の周辺アクセサリー用品の企画・製造・卸等を目的とする株式会社である。 (2) 原告の意匠権原告は,次の意匠権(本件意匠権)の意匠権者である。 登録意匠番号第1316224号出願日平成19年4月16日 - 3 -登録日平成19年11月2日意匠に係る物品エーシーアダプタ登録意匠別紙意匠公報のとおり(3) 本件登録意匠の形態ア基本的構成態様本件登録意匠の基本的構成態様は,別紙意匠公報記載の図面のとおり,箱状の本体の背面に折り畳み自在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタを設け,正面下部にランプを設けたものである。 イ具体的構成態様(ア) 本体は,縦横の寸法が同一の正四角形で,厚さが縦(横)寸法の約0.3倍の扁平な箱状である。本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2 ,正面下部にランプを設けたものである。 イ具体的構成態様(ア) 本体は,縦横の寸法が同一の正四角形で,厚さが縦(横)寸法の約0.3倍の扁平な箱状である。本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている。また,本体は,正面側と裏面側とに,垂直に二つ割りされた状態となっている。 (イ) 差込みプラグは,本体の平面部(上面部)から背面部にかけ,本体正面から見てやや右寄りに設けられている。プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用される。プラグピンの支持部の外周は,本体と同形の弧状をなし,この弧状部分には,水平方向にほぼ等間隔で5本の溝が形成されている。 (ウ) ランプは,直径が縦(横)寸法の約0.05倍で,本体正面の右下寄りに設けられ,充電時に点灯する。 (エ) USBコネクタが,底部の右寄りに設けられている。 (4) 被告の行為被告は,業として,平成22年6月ころから同年11月末日ころまでの間, - 4 -被告製品を販売していた。 3 争点本件の争点は,本件登録意匠と被告意匠の類否(争点1),本件登録意匠の意匠登録に無効理由があり,原告による本件意匠権の行使が意匠法41条において準用する特許法104条の3第1項の規定により制限されるか(争点2),被告による被告製品の製造の有無及び原告主張の差止めの必要性(争点3),原告の損害の有無及び被告が賠償すべき損害額(争点4)である。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件登録意匠と被告意匠の類否)について(1) 原告の主張ア被告意匠の形態(ア) 基本的構成態様被告意匠の基本的構成態様 4)である。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件登録意匠と被告意匠の類否)について(1) 原告の主張ア被告意匠の形態(ア) 基本的構成態様被告意匠の基本的構成態様は,別紙第1のとおり,箱状の本体の背面に折り畳み自在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続されるコードを接続し,正面下部にランプを設けたものである。 (イ) 具体的構成態様a 本体は,縦横の寸法が約50mm×約50mmの正四角形で,厚さが縦(横)寸法の約0.3倍の扁平な箱状である。本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている。また,本体の正面は,中央部が周縁部よりも厚さの約0.03倍(約0.5mm)程度膨出している。本体は,正面側と裏面側に,垂直に二つ割りされた状態である。 b 差込みプラグは,本体の平面部(上面部)から背面部にかけ,本体正面から見てやや右寄りに設けられている。プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用される。プ - 5 -ラグピンの支持部の外周は,本体と同形の弧状をなし,この弧状部分には,水平方向にほぼ等間隔で5本の溝が形成されている。 c ランプは,直径が縦(横)寸法の約0.05倍で,正面視の右下寄りに設けられ,充電時に点灯する。 d コードは,底面部の右寄りに設けられ,断線防止部材を介在して,本体内部の回路に接続されている。 イ本件登録意匠の要部本件登録意匠の本質的特徴を形成する形態構成要素である要部は,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも,厚さの 本件登録意匠の本質的特徴を形成する形態構成要素である要部は,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」点にある。 この点の形態は,周知・公知の形態に見られない,新規な部分であり,本件登録意匠の最も大きな美的特徴を表し,本件登録意匠全体に丸みを帯びた印象を与えている。 上記形態が新規な部分であることは,本件登録意匠の意匠登録出願(以下「本件出願」という。)前の従来のエーシーアダプタの形状は,「本体は,縦横の寸法が略同一正方形か,やや長さの異なる長方形で,厚さが縦又は横寸法の数分の1の扁平な箱状をなし,本体の表裏面の全周囲が小さな面取りをし,本体の四角隅部も単純な面取りをし,本体の四つの側面が垂直面を形成している」ものであって(例えば,乙2の1ないし3),全体が角張った印象を有していることから明らかである。 ウ被告意匠の類似性本件登録意匠と被告意匠は,①全体の基本構成が,箱状の本体の背面に折り畳み自在の差込みプラグを設け,正面下部にランプを設けた点,②本体の構成が,縦横の寸法が同一の正四角形で,厚さが縦(横)寸法の約0. 3倍の扁平な箱状であって,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分 - 6 -の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となって」おり(本件登録意匠の要部),正面側と裏面側に,垂直に二つ割りされている点,③差込みプラグが,本体正面から見てやや右寄りに設けられ,プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用され,プラグピンを支持している弧状部分には,水平方向に ている点,③差込みプラグが,本体正面から見てやや右寄りに設けられ,プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用され,プラグピンを支持している弧状部分には,水平方向にほぼ等間隔で5本の溝が形成されている点,④ランプが,本体正面の右下寄りに設けられ,充電時に点灯する点で共通している。 以上のとおり,両意匠は,本件登録意匠の要部の形態を含む形態が共通しているところ,これらの共通点は,意匠全体が丸みを帯びた印象を与え,需要者に共通の美観を生じさせるものであるから,被告意匠は,本件登録意匠と類似している。 一方で,本件登録意匠では,本体底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタが設けられているのに対し,被告意匠では,周辺機器に接続されるコードが断線防止部材を介在して,本体内部の回路に接続されている点,本件登録意匠では,本体の正面が平坦であるのに対し,被告意匠では,本体の正面が中央で周縁部よりも厚さの約0.03倍(約0.5mm)程度膨出している点で両意匠に差異があるが,これらの差異点は,間接対比観察では見分けがつかないほどの構成上の微差であり,両意匠の類否を左右するものではない。 エ被告の主張について被告は,後記のとおり,①エーシーアダプタ,充電器等の物品において,その角を本件登録意匠と同程度の径で面取りをすることは公知であることからすると(乙3),本体の全周囲が半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも四半球状となっている点のみが,ことさら需要者の注意をひくことはないから,この点のみが要部では - 7 -ない,②上記①の点のほかに,周辺機器との接続部分,本体の正面の形状及びランプの位置を併せた本件登録意匠の正面形態全体が意匠的まとまりとして要部を形成している,③両 点のみが要部では - 7 -ない,②上記①の点のほかに,周辺機器との接続部分,本体の正面の形状及びランプの位置を併せた本件登録意匠の正面形態全体が意匠的まとまりとして要部を形成している,③両意匠につき,正面視した全体形状を意匠的まとまりとして見た場合,需要者に共通の美観を生じさせるものではないから,被告意匠は,本件登録意匠と類似していない旨主張する。 しかし,本体の構成が,縦横の寸法が同一の正四角形で,厚さが縦(横)寸法の約0.3倍の扁平な箱状の本件登録意匠において,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」点が,これまでにない新規な形態であり,本件登録意匠の最も大きな美的特徴を表しており,この点が看者に最も強い印象を与える要部である。 他方で,周知・公知の形態は要部とはなり得ないところ,エーシーアダプタ,充電器等の物品において,周辺機器との接続部分に接続コードを有する形態は,本件出願前に周知である(例えば,甲14)。このうち,充電器に関しては,本体部分が共通していれば,接続部分が接続コードか,USBコネクタかという差異があっても本意匠と関連意匠の類似関係にあることは,意匠登録例(甲15の1,2,16の1,2)から明らかである。 また,ランプの位置が相違しても,それ自体要部とならないことは,意匠登録例から明らかであり,しかも,本件登録意匠と被告意匠のランプの位置の差異は,ノギスで測らなければ判別することのできない微差である。 さらに,本件登録意匠と被告意匠の正面形状の差異も,間接対比観察では見分けがつかない微差である。 したがって,本件登録意匠の周辺機器との接続部分,本体の正 判別することのできない微差である。 さらに,本件登録意匠と被告意匠の正面形状の差異も,間接対比観察では見分けがつかない微差である。 したがって,本件登録意匠の周辺機器との接続部分,本体の正面の形状 - 8 -及びランプの位置は要部を形成するものではなく,また,本件登録意匠と被告意匠が類似することは前記ウのとおりであるから,被告の上記主張は,理由がない。 オまとめ以上によれば,被告意匠は,本件登録意匠に類似する意匠に該当する。 (2) 被告の主張ア被告意匠の形態について原告主張の被告意匠の形態については,本体が「扁平な」箱状であるとの点(前記(1)ア(イ)a)を除き,認める。 本体は,正面中央部が,その周辺部から約0.5mm程度膨らんでおり,「扁平」ではなく,やや丸みを帯びた形状となっている。 イ本件登録意匠の要部について(ア) 意匠における要部は,当該意匠の支配的部分を占め,意匠的まとまりを形成し,看者(需要者)の注意をひくものをいい,本件登録意匠のごとく,周知・公知の部分を寄せ集めた意匠においては,その意匠に係る物品の性質等から需要者が注目する部分を支配的部分とした全体的な意匠的まとまりを要部とすべきである。 しかるところ,本件登録意匠に係る物品が携帯電話等用のエーシーアダプタであって,その使用目的は携帯電話等と接続してこれを充電することにあるから,需要者は,携帯電話等との接続部分に最も注目する。 また,通常の販売・流通形態(店頭,ウェブサイト)では,需要者は,エーシーアダプタを正面又は正面やや斜めから見るのが普通であり,需要者としては正面の形態に最も注目し,正面の全体的な形状及びランプの位置に注目する。 そうすると,本件登録意匠においては,携帯電話等の周辺機器との接続部分,本体 や斜めから見るのが普通であり,需要者としては正面の形態に最も注目し,正面の全体的な形状及びランプの位置に注目する。 そうすると,本件登録意匠においては,携帯電話等の周辺機器との接続部分,本体の正面の形状及びランプの位置の正面形態全体がひとまと - 9 -まりとして要部となり,特に接続部分が最重要の要部である。 (イ)a この点に関し,原告は,本体の全周囲が半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも四半球状となってという構成態様のみが,本件登録意匠の要部である旨主張する。 しかし,通常の販売・流通形態では,需要者は本件登録意匠に係る物品を正面又は正面やや斜めから見るのが普通であり,側面の形態には注目しない。 また,携帯電話等用のエーシーアダプタにおいて,正面視,正四角形で薄い直方体形状となっているものはありふれている上,乙3(意匠登録第1275942号公報)に示すように,エーシーアダプタ等の物品において,その角を本件登録意匠と同程度の径で面取りをすることは本件出願前に公知であり,上記構成態様のみがことさら需要者の注意をひくことはない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 b また,原告は,意匠登録例(甲15の1,2,16の1,2)を挙げて,周辺機器との接続部分が異なっていっても,類似関係があるから,本件登録意匠の接続部分は,要部とはなり得ない旨主張する。 しかし,原告が挙げる意匠登録例は,本件とは全く事例が異なり,他の部分の形状が,需要者の注意を引き,要部となっているため,接続部分が要部となっていない事例であり,原告の上記主張は失当である。 ウ被告意匠が非類似であること(ア) 本件登録意匠の要部と被告意匠とを対比すると,次のとおりの差異がある。 a 周辺機器との接続 要部となっていない事例であり,原告の上記主張は失当である。 ウ被告意匠が非類似であること(ア) 本件登録意匠の要部と被告意匠とを対比すると,次のとおりの差異がある。 a 周辺機器との接続部分接続部分の基本的構成態様について,本件登録意匠においては,本 - 10 -体底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタを設けているのに対し,被告意匠においては,本体底面に周辺機器に接続されるコードを接続しており,また,その具体的構成態様も,正面から見た場合,本件登録意匠においては,接続部分は本体底面部に設けられた長方形状の凹部となっており,その底面はほぼ一直線で,すっきりとした意匠的なまとまりを形成しているのに対し,被告意匠においては,本体底面部左寄りの部分から本体部との長さ比で約25%にもなる高さを有する略台形状(高さ約12mm,底辺約9mm,上辺約5mm)の断線防止部材が設けられ,その先には本体部より長いコードが接続されており,全体的にアンバランスで重たい印象の意匠的なまとまりを形成している点。 b 正面の形状正面ないしやや斜めから見た場合,本件登録意匠は完全な平坦であり,やや角張った印象を与えるのに対し,被告意匠は中央部が膨らみ(正面中央部が,その周辺部から約0.5mm程度膨らんでいる。),丸みを帯びた印象を与える点。 c ランプの位置本件登録意匠におけるランプの位置は,底部と右側面部から等距離,すなわち,本体正面の左上及び右下を結んだ対角線上に位置(ランプの中心が本体右側面と底面からそれぞれ約17mmの位置)し,幾何学的な印象を与えるのに対し,被告意匠におけるランプの位置は,ランプが右側面に比べて底面に近い位置(ランプの中心が本体右側面から約16mmで,かつ,底面から約12mmの位置)にあり,非対称でア 幾何学的な印象を与えるのに対し,被告意匠におけるランプの位置は,ランプが右側面に比べて底面に近い位置(ランプの中心が本体右側面から約16mmで,かつ,底面から約12mmの位置)にあり,非対称でアンバランスな印象を与える点。 (イ) 以上を前提に,本件登録意匠及び被告意匠について,正面視した全体的形状を意匠的なまとまりとして見た場合,本件登録意匠は,周辺機 - 11 -器との接続部分が直線上で,ランプが本体正面の左上と右下とを結んだ対角線上に位置し,正面の形状が平坦であることから,全体としてすっきりとし,幾何学的な,さらにはかっちりとした平面的な印象を与えるものとなっているのに対し,被告意匠は,略台形状の接続部分が底部左寄りに設けられ,ランプは対角線からずれたアンバランスな位置にあり,正面の形状が丸みを帯びていることから,全体としてバランスを欠き,丸みを帯びた印象を与えるものとなっている。 したがって,本件登録意匠及び被告意匠は,需要者に共通の美感を生じさせるものではなく,両意匠は全く類似していない。 エまとめ以上のとおり,被告意匠は,本件登録意匠に類似する意匠に該当しない。 2 争点2(本件意匠権の権利行使の制限の成否)について(1) 被告の主張本件登録意匠は,以下のとおり,本件出願前に当業者に公然知られた形状である乙5(DOS/V Magazine 2006年2月号,165頁)記載のエーシーアダプタの形状(以下「乙5記載の意匠」という。)と乙3(意匠登録第1275942号公報)記載の意匠及び乙4(意匠登録第1205794号公報)記載の意匠に基づいて容易に本件登録意匠の創作をすることができたものであるから,本件登録意匠の意匠登録には意匠法3条2項に違反する無効理由(同法48条1項1号)があり,意匠登録無効審 94号公報)記載の意匠に基づいて容易に本件登録意匠の創作をすることができたものであるから,本件登録意匠の意匠登録には意匠法3条2項に違反する無効理由(同法48条1項1号)があり,意匠登録無効審判により無効にされるべきものであるから,同法41条において準用する特許法104条の3第1項の規定により,原告は,被告に対し,本件意匠権を行使することができない。 ア本件登録意匠と乙5記載の意匠との共通点及び差異点(ア) 乙5記載の意匠の形態は,別紙第2のとおり,本体が縦横の寸法が同一の正四角形で扁平な箱状であり,本体の全周囲は面取りがされてお - 12 -り,差込みプラグが本体の上面部から背面部にかけ,本体正面から見てやや左寄りに設けられ,プラグのピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用される態様であり,プラグピンの支持部の外周は弧状をなし,この弧状部分には,水平方向にほぼ等間隔で複数本の溝が形成されて,さらに長方形状の凹部形状のUSBコネクタを底部の左寄りに設けた形状からなっている。 (イ) 本件登録意匠と乙5記載の意匠とを対比すると,①本体の全周囲の面取りの径が異なる点(以下「差異点1」という。),②プラグピン及びUSBコネクタの配置が異なる点(以下「差異点2」という。),③乙5記載の意匠にはランプがない点(以下「差異点3」という。),④縦・横・厚さの正確な寸法(以下「差異点4」という。),⑤プラグピン支持部の溝の本数(乙5記載の意匠の本数は不明である。)(以下「差異点5」という。)において差異があるが,その余の構成態様は共通する。 イ本件登録意匠の創作容易性(ア) 差異点1について乙3記載の意匠は,別紙第3のとおりであり,縦(横)の約0.15倍の長さを半径とする面取りをした形状を有 その余の構成態様は共通する。 イ本件登録意匠の創作容易性(ア) 差異点1について乙3記載の意匠は,別紙第3のとおりであり,縦(横)の約0.15倍の長さを半径とする面取りをした形状を有している。 そして,乙5記載の意匠に乙3記載の意匠の上記形状を組み合わせて,その面取り径で乙5記載の意匠の角を落とせば,本体の全周囲が厚さを基準としてその約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされた形状(差異点1に係る本件登録意匠の構成態様)となる。 (イ) 差異点2についてエーシーアダプタにおいてプラグピン及びUSBコネクタの配置を適宜変更することは,当業者にとってありふれた手法にすぎない。 (ウ) 差異点3について - 13 -エーシーアダプタにおいては,乙4記載の意匠に示すとおり(別紙第4参照),その正面部にランプを設けることは公知の形状である。 (エ) 差異点4及び5について縦・横・厚さの正確な寸法及びプラグピン支持部の溝の本数については,本件登録意匠と乙5記載の意匠との間でそれほどの差異はなく,これらの点は顕著な差異ではない。 (オ) 小括以上を総合すると,当業者が乙5記載の意匠に乙3及び乙4記載の各意匠を組み合わせ,さらには配置の変更をすることにより,容易に本件登録意匠の創作をすることができたものである。 (2) 原告の主張ア(ア) 本件登録意匠は,縦(横)を基準とすれば,その約0.15倍の長さを半径とする面取りをしているが,本体の厚さが縦(横)寸法の約0. 3倍の扁平な箱状であり,しかも,全周囲が厚さを基準としてその約2分の1を半径とする半円弧状の面取りをしている。そして,本件登録意匠において,看者が最も注意を引かれる部分は,本体の全周囲が,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面 を基準としてその約2分の1を半径とする半円弧状の面取りをしている。そして,本件登録意匠において,看者が最も注意を引かれる部分は,本体の全周囲が,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りをし,本体の四角隅部が,その正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている点にある。 他方で,乙3記載の意匠は,本体の厚さが縦(横)寸法の約0.6倍であり,全周囲が厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りをしていないことは明らかである。 したがって,乙5記載の意匠に乙3記載の意匠を組み合わせても,本体の全周囲が厚さを基準としてその約2分の1を半径とする半円弧状の面取りされた形状(差異点1に係る本件登録意匠の構成態様)にはならない。 - 14 -(イ) 次に,差異点4及び5については,乙5記載の意匠から,縦・横・厚さの正確な寸法及びプラグピン支持部の溝の本数を明確に判断することはできず,本件登録意匠と比較することはできない。 なお,差異点2及び3は,本件登録意匠の特徴的な部分ではない。 イ以上によれば,本件登録意匠は,乙5記載の意匠と乙3及び乙4記載の各意匠に基づいて当業者が容易に創作をすることができたものとはいえないから,本件登録意匠には,被告主張の無効理由は存在しない。 3 争点3(被告による被告製品の製造の有無及び差止めの必要性)について(1) 原告の主張被告は,業として,平成22年6月ころから,被告製品を製造及び販売している。 そして,被告の上記製造及び販売は,原告の本件意匠権の侵害行為に当たるから,その差止めの必要性がある。 (2) 被告の主張原告の主張は争う。 被告が平成22年6月ころから被告製品の販売をしていたことは事実であるが,同年末をもって販売を停 の侵害行為に当たるから,その差止めの必要性がある。 (2) 被告の主張原告の主張は争う。 被告が平成22年6月ころから被告製品の販売をしていたことは事実であるが,同年末をもって販売を停止している。また,被告が被告製品を製造した事実はない。 4 争点4(原告の損害額)について(1) 原告の主張ア意匠法39条1項の損害額(ア) 被告製品の譲渡数量被告は,平成22年6月から同年11月までの間に,被告商品を合計2万3246個販売した。 (イ) 単位数量当たりの利益額原告が販売する本件登録意匠に係るエーシーアダプタ(検甲2。以 - 15 -下「原告製品」という。)は,USBコネクタに携帯電話用の接続ケーブルを接続して使用することができるから,被告製品と市場において競合し,被告による本件意匠権の侵害行為がなければ販売することができた物品に該当する。 原告製品の販売により得られる1個当たりの利益額は,以下のとおり341円を下らない。 a 原告製品の卸売販売価格 1個当たり607円b 変動経費 1個当たり266円(a) 原告は,原告製品を中国から輸入して販売しており,その1個当たりの変動経費は,本体2.75ドル,説明書0.017ドル,シール0.28ドル,ステッカー0.014ドルの合計3.187ドルである。そして,本件訴訟提起時(平成23年1月7日)の為替相場1ドル83.58円に基づいて計算すると,原告製品の変動経費は1個当たり266円(小数点以下切捨て)となる。 (b) この点に関し,被告は,後記のとおり,原告製品の国内輸送費,海上輸送費及び倉庫料を変動経費として考慮すべきである旨主張する。 しかし,原告は,平成22年1月から平成23年12月にかけて合計11万5 点に関し,被告は,後記のとおり,原告製品の国内輸送費,海上輸送費及び倉庫料を変動経費として考慮すべきである旨主張する。 しかし,原告は,平成22年1月から平成23年12月にかけて合計11万5140個の原告製品を仕入れて10万8801個出荷しており,このような取引規模に照らせば,前記(ア)の譲渡数量分の増加があったとしても国内輸送費及び海上輸送費の追加支出は生じない。また,原告は,原告製品3万2400個を収容できる20フィートコンテナを用いて,2ないし3か月に1度の頻度で仕入れの海上輸送をしていることから,コンテナには十分な空きがあり,前記(ア)の譲渡数量分の増加について追加の海上輸送費は発生しない。 - 16 -したがって,被告の上記主張は,失当である。 c 利益額(a-b) 1個当たり341円(なお,前記b(a)の原告主張の1個当たりの変動経費の合計金額の算出過程に違算があり,ドル建ての合計金額は3.061ドルが正しいが,1個当たりの利益の額としては341円と主張するものと解する。)(ウ) 「販売することができないとする事情」の不存在等被告は,後記のとおり,被告製品及び原告製品の形態の違いにより両製品の購買層が異なる,代替品が存在する,意匠が購入動機の形成に寄与していないなどとして,原告製品は,被告製品との関係において「侵害の行為がなければ販売することができた物品」(意匠法39条1項本文)に該当せず,また,被告製品の譲渡数量の全部に相当する原告製品を原告において「販売することができないとする事情」(同項ただし書)が存在する旨主張する。 しかしながら,被告の主張は,以下のとおり理由がない。 a 形態の違い及び代替品の存在について被告は,原告製品は,その接続口がUSBコネクタ(USB (同項ただし書)が存在する旨主張する。 しかしながら,被告の主張は,以下のとおり理由がない。 a 形態の違い及び代替品の存在について被告は,原告製品は,その接続口がUSBコネクタ(USBポート)であり,主にiPodシリーズやiPhoneといった,USBケーブルの接続により充電可能な製品に用いられるエーシーアダプタであるのに対し,被告製品は,Docomo,SoftBankの携帯電話(iPhoneのようなスマートフォンを除く。以下同じ。)の接続口に対応するケーブルが一体となったエーシーアダプタであり,両製品は,市場において競合していないし,同携帯電話用の充電器と接続ケーブルがセットになった廉価な代替品が存在するから,原告製品は,被告による「侵害の行為がなければ販売することができた物品」に該当せず,また,被告製品の譲渡数量の全部に相当する原告製品を原告において「販売することが - 17 -できないとする事情」がある旨主張する。 しかしながら,原告製品にDocomo,SoftBankの携帯電話用のUSBケーブルをつなぐことによって,原告製品もこれらの携帯電話のエーシーアダプタとして使用することができるから,原告製品は,被告による「侵害の行為がなければ販売することができた物品」に該当する。 また,原告製品と同種のUSBコネクタを有するエーシーアダプタにおいて,携帯電話用の接続ケーブルを利用して携帯電話の充電に用いるのはごく一般的なことであり(甲36ないし38),需要者は,デザインが優れたエーシーアダプタを用いるためであれば接続ケーブルを別途購入するし,接続ケーブルは600円より安価な料金で入手可能であるから,被告製品の販売価格(約1280円)との隔たりは大きなものではない。このことは,Docomo,SoftBankの携帯 ブルを別途購入するし,接続ケーブルは600円より安価な料金で入手可能であるから,被告製品の販売価格(約1280円)との隔たりは大きなものではない。このことは,Docomo,SoftBankの携帯電話用の充電器との接続ケーブルがセットになった代替品が存在するからといって,同携帯電話用の接続ケーブルを必要とする原告製品を選択しないことにはならないことを示すものといえる。 加えて,原告製品のようなUSBコネクタを有するエーシーアダプタは,ケーブルが一体となった被告製品のような携帯電話用のエーシーアダプタと異なり,携帯電話のみならず,iPodのような携帯用音楽プレーヤーやiPhoneのようなスマートフォン等の多様な製品の充電が可能だという大きな利点があることからすると,Docomo,SoftBankの携帯電話の利用者(ユーザー)である被告製品の需要者が,同携帯電話用の接続ケーブルを必要とする原告製品を選択することも当然にある。 さらに,被告は,原告製品のパッケージに「iPodシリーズ,iPhone3G対応」と記載されている点をとらえ,原告製品がiPhone・iPodのエーシーアダプタであるかのように主張するが,原告製品のパッケージ - 18 -の「充電可能機器」欄には携帯電話も記載されており,原告製品と被告製品の間に被告が主張するような明確な棲み分けはない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 b 購入動機の形成に対する意匠の寄与について被告は,被告製品が主にインターネットのショッピングサイトで販売され,同サイト上には正面から撮影された写真しか掲載されていないし,また,被告製品がパッケージに入っているため,正面の形状しかみることができないなどとして,被告意匠は,被告製品の購入動機の形成に寄与していない旨主張する 面から撮影された写真しか掲載されていないし,また,被告製品がパッケージに入っているため,正面の形状しかみることができないなどとして,被告意匠は,被告製品の購入動機の形成に寄与していない旨主張する。 しかし,被告製品(検甲1)がパッケージに入った状態であっても,特有の丸みを帯びた形状は需要者において看取することができる。 また,インターネット店舗の被告製品のレビュー(利用者の感想)において,「かわいいです。」(甲41),「おしゃれな充電器」,「かわいいけれど」(以上,甲42)というデザイン(意匠)の面に多くの注目が集まっており,性能は重視されていないし,被告製品は「「かわいいのに」ハイパワー」とのタイトルで売り出されており(甲41ないし45),そのデザインは大きな購入動機となっている。一方,原告製品のレビュー(甲46,47)においても,「デザインが個人的に好きですね。丸みがあり,艶々しています。」,「丸みを帯びたデザイン,他機種と比較してかなり質感が高いです。」,「そのデザインと小ささ,軽さに大変満足しています。」,「iPodにマッチしたデザインも気に入っている。」などの記載があり,原告製品において本件登録意匠が大きな購入動機となっており,原告製品と被告製品は意匠が極めて類似しており,被告製品においても,被告意匠が大きな購入動機となっていることがうかがえる。 以上によれば,本件登録意匠に類似する被告意匠が被告製品の購入 - 19 -動機となっていることは明らかであり,被告の上記主張は,理由がない。 (エ) 小括以上を総合すれば,被告が平成22年6月から同年11月までの間に被告製品を販売して本件意匠権を侵害したことにより,意匠法39条1項に基づいて算定される原告の損害額は,合計746万1966円を下らない。 合すれば,被告が平成22年6月から同年11月までの間に被告製品を販売して本件意匠権を侵害したことにより,意匠法39条1項に基づいて算定される原告の損害額は,合計746万1966円を下らない。 イ弁護士費用被告の本件意匠権の侵害行為と相当因果関係のある原告の弁護士費用相当の損害額は,前記アの損害額の1割に相当する74万6196円を下らない。 ウまとめ以上によれば,原告は,被告に対し,本件意匠権侵害の不法行為に基づく損害賠償として820万8162円(前記ア及びイの合計額)及びこれに対する平成23年1月20日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 (2) 被告の主張ア意匠法39条1項の損害額について(ア) 被告製品の譲渡数量の主張に対し原告主張の被告製品の譲渡数量(前記(1)ア(ア))は認める。 (イ) 単位数量当たりの利益額の主張に対しa 原告製品は,その接続口がUSBコネクタ(USBポート)であり,主にiPodシリーズやiPhoneといった,USBケーブルの接続により充電可能な製品に用いられるエーシーアダプタであるのに対し,被告製品は,Docomo,SoftBankの携帯電話の接続口に対応するケーブルが一体となったエーシーアダプタであり,両製品は,充電の対象となる製 - 20 -品がそれぞれ異なることから,市場において競合せず,仮に被告製品が販売されなかった場合,需要者は,被告製品と同じDocomo,SoftBankの携帯電話用のエーシーアダプタを購入するのであって,原告製品を購入するというような関係にはない。 したがって,原告製品は,被告製品との関係において,被告による「侵害の行為がなければ販売することができた物品」(意匠法 アダプタを購入するのであって,原告製品を購入するというような関係にはない。 したがって,原告製品は,被告製品との関係において,被告による「侵害の行為がなければ販売することができた物品」(意匠法39条1項本文)に該当しない。 b 原告主張の原告製品の卸売販売価格,変動経費の額及び利益額(前記(1)ア(イ))は,いずれも争う。 (a) 原告は,原告製品の卸売販売価格は1個当たり607円であると主張するが,卸売先が不明であり,また,原告製品の市場での販売価格が900円前後であることからすると,その卸売販売価格が607円であるというのは極めて高額であり,措信できない。 (b) 原告製品の変動経費に係る費用のドル円換算に際しては,原告製品本体が主に仕入れられた平成21年11月や平成22年1月の為替相場である1ドル約90円を基準とすべきであり,この基準によれば,原告主張の変動経費は,1個当たり286.83円となる。 そして,原告による原告製品の仕入れ数量は1000ないし3000個程度と少量のロット(甲22の1,2)であることからすると,原告製品の販売数量の増加に応じてその国内輸送費(7.58円),海上輸送費(11.77円)及び倉庫料(24.9円)の追加支出が生じるというべきであるから,上記286.83円にこれらの費用を加えた金額を,原告製品の変動経費として,その単位数量当たりの利益額の算出に当たり控除すべきである。 (ウ) 「販売することができないとする事情」の存在 - 21 -以下のとおり,被告製品の譲渡数量の全部に相当する原告製品を原告において「販売することができないとする事情」(意匠法39条1項ただし書)が存在する。 a 形態の違い(a) 前記(イ)aのとおり,原告製品はパソコンのUSBポートを用いるiPho 製品を原告において「販売することができないとする事情」(意匠法39条1項ただし書)が存在する。 a 形態の違い(a) 前記(イ)aのとおり,原告製品はパソコンのUSBポートを用いるiPhone等用のエーシーアダプタであり,被告製品はDocomo,SoftBankの携帯電話用の接続ケーブルを有するエーシーアダプタであることから,両製品は実質的な競合品とはいえないものの,あえて,原告製品に上記携帯電話用の接続ケーブルを接続することにより,原告製品も上記携帯電話用のエーシーアダプタとして使用することができる。 しかし,この場合,原告製品に加えて,別途上記携帯電話用の接続ケーブルを用意する必要があるところ,上記携帯電話用のエーシーアダプタが必要な需要者は,当該機器が充電できればよいから,ケーブルが一体となっている製品を選択し,あえて,原告製品のようなケーブルのない製品を選択することはないのに対し,他方で,多種の機器の充電に用いるエーシーアダプタが必要な需要者は,原告製品を選択することになるから,原告製品と被告製品とでは,そもそも購入対象者が異なる。 すなわち,原告製品のようなUSBコネクタを有するエーシーアダプタは,基本的にiPhoneやiPod等の機器の充電用,被告製品のような携帯電話用のケーブルが一体となったエーシーアダプタは,携帯電話の充電用というように,対象となる周辺機器の種類によって,明確に棲み分けがされている。このことは,原告製品のパッケージに「iPodシリーズ,iPhone3G対応」,被告製品のパッケージには,「docomo」,「SoftBank」とそれぞれ記載されていることから - 22 -も明らかである。 したがって,被告製品が販売されなかった場合,需要者がそれに代えて原告製品を購入するという関係 como」,「SoftBank」とそれぞれ記載されていることから - 22 -も明らかである。 したがって,被告製品が販売されなかった場合,需要者がそれに代えて原告製品を購入するという関係にはなく,かかる両製品の形態の違いは,「販売することができないとする事情」に該当する。 (b) この点に関し,原告は,甲36ないし38を挙げて,原告製品と同種のUSBコネクタを有するエーシーアダプタにおいて,Docomo,SoftBankの携帯電話用の接続ケーブルを利用して携帯電話の充電に用いるのはごく一般的なことである旨主張する。 しかし,甲36ないし38記載のエーシーアダプタは,iPod,iPhone等用のUSBポートでの充電が予定された機器のエーシーアダプタであるところ,これらの機器には,そもそもUSB接続用のケーブルが別に用意されており,携帯電話の充電のためにエーシーアダプタを購入しようとする者が,原告製品を選択する理由にはならない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 (c) また,原告は,原告製品は,被告製品と異なり,多様な周辺機器の充電が可能になるというメリットがある旨主張する。 しかし,原告主張の原告製品のメリットは,原告製品と被告製品は,対象となる周辺機器が明確に異なり,そもそも購入対象者が違うことを示すものであり,被告製品が存在しない場合に,原告製品が需要者に購入されるという理由にならない。 b 代替品の存在被告製品が販売されていた平成22年当時,被告製品と同種のDocomo,SoftBankの携帯電話用のエーシーアダプタ及び原告製品と同種のUSBコネクタを有するエーシーアダプタが数多く販売されていたところ,被告製品と同種の上記携帯電話用のエーシーアダプタは - 23 -おおよそ800円前 用のエーシーアダプタ及び原告製品と同種のUSBコネクタを有するエーシーアダプタが数多く販売されていたところ,被告製品と同種の上記携帯電話用のエーシーアダプタは - 23 -おおよそ800円前後で販売されているのに対し,原告製品と接続ケーブルを併せて購入すると,1500円程度(原告製品は900円前後,接続ケーブルは600円前後)になることから,仮に被告製品が販売されなかったとした場合には,需要者は被告製品と同種のエーシーアダプタと接続ケーブルの一体型の廉価な製品を代替品として購入するはずである。 c 意匠が購入動機の形成に寄与していないこと需要者が被告製品の購入に当たり被告意匠に注目しているという事実はなく,被告意匠が被告製品の購入動機の形成に寄与していない。 すなわち,被告製品は,主にインターネットのショッピングサイトで販売され,一体に接続されているケーブルを含めた全体について,正面から撮影された写真が掲載されているのみであり,また,被告製品は,ほとんどその正面形状しか見えない状態でパッケージに梱包されており,その意匠が需要者の購入動機に寄与することはない。むしろ,インターネットのショッピングサイトでは,主に「携帯電話ドコモ/ソフトバンク用」という用途のほかに,「充電ランプ付」,「240V対応で海外でも使用可能」,「ハイパワー出力」といった商品の性能について説明がされており,かかるサイトを見た需要者としては,専ら,どのような携帯電話に使用できるのか,その性能はどのようなものかということに注目するものといえる。 また,「とにかくピンクがかわいいです」(甲41),「見た目は真っ赤でおしゃれです」(甲42)といったインターネットのショッピングサイトにおける被告製品のレビューに照らしても,被告製品の購入動機となってい とにかくピンクがかわいいです」(甲41),「見た目は真っ赤でおしゃれです」(甲42)といったインターネットのショッピングサイトにおける被告製品のレビューに照らしても,被告製品の購入動機となっているのは,被告意匠ではなく,色であるといえる。 以上のように,被告意匠が被告製品の購入動機の形成に寄与してお - 24 -らず,仮に被告製品が販売されなかったとしても,それに代えて,本件登録意匠に係る原告製品が購入されるという関係にはない。 d 小括以上のとおり,被告製品及び原告製品の形態の違い,被告製品の代替品の存在,意匠が購入動機の形成に寄与していないことは,被告製品の譲渡数量の全部又は一部に相当する原告製品を原告において「販売することができないとする事情」(意匠法39条1項ただし書)に該当する。 イ弁護士費用について原告の主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件登録意匠と被告意匠の類否)について登録意匠とそれ以外の意匠との類否の判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとされ(意匠法24条2項),その判断に際しては,両意匠を全体的観察により対比し,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,更には登録意匠における公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,登録意匠について需要者が視覚を通じて注意をひきやすい特徴的部分(要部)を把握し,この特徴的部分を中心に両意匠を対比した上で,両意匠が全体的な美感を共通にするか否かによって類否を決するのが相当であると解される。 以上を前提に,被告意匠が本件登録意匠に類似する意匠に該当するかどうか判断する。 (1) 本件登録意匠及び被告意匠の形態等ア本件登録意匠の形態本件登録意匠は,「エーシーアダプタ」に係る意匠であり,その形態は, 本件登録意匠に類似する意匠に該当するかどうか判断する。 (1) 本件登録意匠及び被告意匠の形態等ア本件登録意匠の形態本件登録意匠は,「エーシーアダプタ」に係る意匠であり,その形態は,別紙意匠公報記載の図面のとおりである。 - 25 -本件登録意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様は,前記第2の2(3)のとおりである。 すなわち,本件登録意匠においては,①箱状の本体の背面に折り畳み自在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタを設け,正面下部にランプを設けている,②本体は,縦横の寸法が同一の正四角形で,厚さが縦(横)寸法の約0.3倍の扁平な箱状であり,正面側と裏面側とに,垂直に二つ割りされた状態となっている,③本体の全周囲が,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている,④差込みプラグは,本体の平面部(上面部)から背面部にかけ,本体正面から見てやや右寄りに設けられており,プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用され,プラグピンの支持部の外周は,本体と同形の弧状をなし,この弧状部分には,水平方向にほぼ等間隔で5本の溝が形成されている,⑤ランプは,直径が縦(横)寸法の約0.05倍で,本体正面の右下寄りに設けられ,充電時に点灯する,⑥USBコネクタが,底部の右寄りに設けられている。 イ被告意匠の形態被告意匠は,「携帯電話用エーシーアダプタ」に係る意匠であり,その形態は,別紙第1のとおりである。 被告意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様が,前記第3の1(1)アのとおりであること(ただし,同(イ)の本体が「扁平な」箱状であるとの点を除く。 であり,その形態は,別紙第1のとおりである。 被告意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様が,前記第3の1(1)アのとおりであること(ただし,同(イ)の本体が「扁平な」箱状であるとの点を除く。)は,争いがない。 そして,上記争いのない事実と証拠(甲50,検甲1)によれば,被告意匠においては,①箱状の本体の背面に折り畳み自在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続されるコードを接続し,正面下部にランプを設 - 26 -けていること,②本体は,縦横の寸法が53mm×53mmの正四角形で,厚さが縦(横)寸法の約0.3倍の扁平な箱状であり,正面側と裏面側に,垂直に二つ割りされた状態となっており,また,本体の正面は,中央部が周縁部よりも厚さの約0.03倍(約0.5mm)程度膨出していること,③本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,その正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっていること,④差込みプラグは,本体の平面部(上面部)から背面部にかけ,本体正面から見てやや右寄りに設けられており,プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用され,プラグピンの支持部の外周は,本体と同形の弧状をなし,この弧状部分には,水平方向にほぼ等間隔で5本の溝が形成されていること,⑤ランプは,直径が縦(横)寸法の約0. 05倍で,正面視の右下寄りに設けられ,充電時に点灯すること,⑥コード(接続コード)は,底面部の右寄りに設けられ,断線防止部材(正面視,略台形(高さ約12mm,底辺約9mm,上辺約5mm)で,約1.5mmの溝を均等間隔で4本有する形状)を介在して,本体内部の回路に接続されていることが認められる。 (なお,「扁平」とは,「平たいこ 略台形(高さ約12mm,底辺約9mm,上辺約5mm)で,約1.5mmの溝を均等間隔で4本有する形状)を介在して,本体内部の回路に接続されていることが認められる。 (なお,「扁平」とは,「平たいこと。また,そのさま。」を意味し(甲19),必ずしも完全に平坦であることを意味するものではないと解される。そして,被告意匠は,本体が縦横の寸法が同一の正四角形で,厚さが縦(横)寸法の約0.3倍の箱状であることからすれば,正面の中央部が周縁部よりも厚さの約0.03倍(約0.5mm)程度膨出している点を考慮しても,「扁平な」箱状と認められる。)ウ両意匠の共通点及び差異点(ア) 本件登録意匠と被告意匠は,①箱状の本体の背面に折り畳み自在の差込みプラグを設け,正面下部にランプを設けた点,②本体が,縦横の - 27 -寸法が同一の正四角形で,厚さが縦(横)寸法の約0.3倍の扁平な箱状であり,また,正面側と裏面側に,垂直に二つ割りされている点,③本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている点,④差込みプラグが,本体の平面部(上面部)から背面部にかけ,本体正面から見てやや右寄りに設けられている点,⑤プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用され,プラグピンの支持部の外周は,本体と同形の弧状をなし,この弧状部分には,水平方向にほぼ等間隔で5本の溝が形成されている点,⑥ランプは,直径が縦(横)寸法の約0.05倍で,本体正面の右下寄りに設けられ,充電時に点灯する点において共通する。 (イ) 他方で,両意匠は,①本件登録意匠では,本体底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタが設けられているが, 約0.05倍で,本体正面の右下寄りに設けられ,充電時に点灯する点において共通する。 (イ) 他方で,両意匠は,①本件登録意匠では,本体底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタが設けられているが,被告意匠では,周辺機器に接続されるコードが断線防止部材を介在して,本体内部の回路に接続されている点,②本件登録意匠では,本体の正面の形状が平坦であるが,被告意匠では,中央部で周縁部よりも厚さの約0.03倍(約0.5mm)程度膨出している点,③本件登録意匠では,ランプの中心が本体右側面と底面からそれぞれ約17mmの均等な位置にあるのに対し,被告意匠では,ランプの中心が本体底面から約12mmで,かつ,本体右側面から約16mmの位置にあり,本件登録意匠に比べて底面に寄った位置に設けられている点において差異がある。 (2) 本件登録意匠の特徴的部分(要部)アエーシーアダプタの性質,用途及び使用態様別紙意匠公報記載の「意匠に係る物品の説明」及び証拠(乙1の1ないし4,検甲1)によれば,①本件登録意匠の意匠に係る物品であるエーシ - 28 -ーアダプタは,携帯電話,スマートフォン,携帯用音楽プレーヤー,携帯用ゲーム機等の周辺機器の充電に用いられる機器であること,②充電の際には,本体の背面に折り畳まれている差込みプラグを90度ないし180度起こした状態で商用電源のコンセントに差し込むと,本体の正面下部のUSBコネクタ(USBポート)に接続され接続用のケーブルを介した周辺機器にコンセントからの交流電圧を所定の直流電圧に変換して供給すること,③充電をしないときは,周辺機器から接続用のケーブルを抜き,差込みプラグを折り畳んで収納した状態で保管し,あるいは,この状態で身の回りに置いたり,外出時に携行するなどすることが認められる。 エーシーアダ しないときは,周辺機器から接続用のケーブルを抜き,差込みプラグを折り畳んで収納した状態で保管し,あるいは,この状態で身の回りに置いたり,外出時に携行するなどすることが認められる。 エーシーアダプタは,これらの周辺機器を充電するために用いるものであるから,これらの周辺機器を利用する者が需要者となる。 イ公知意匠(ア) 本件出願前(出願日平成19年4月16日)に頒布された刊行物である乙5(DOS/V Magagine 2006年2月号,165頁)には,エーシーアダプタに係る意匠が記載され(別紙第2参照),「箱状の本体の背面に折り畳み自在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタを設ける」構成,「本体は,縦横の寸法が同一の正四角形で扁平な箱状をなしており,本体の全周囲は面取りがされている」構成,「差込みプラグが本体の平面部(上面部)から背面部に設けられ,プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用され,プラグピンの支持部の外周は弧状をなしている」構成及び「USBコネクタは,底部に設けられている」構成が示されている。 (イ) 本件出願前に頒布された刊行物である乙3(意匠登録第1275942号公報)には,充電器に係る意匠が記載され(別紙第3参照),縦横の寸法が同一の正四角形で,厚さが縦(横)寸法の約0.6倍の箱状 - 29 -の本体において,「縦(横)の寸法の約0.15倍の長さを半径とする面取りをしている」構成が示されている。 また,本件出願前に頒布された刊行物である乙4(意匠登録第1205794号公報)には,電子ゲーム機用充電器に係る意匠が記載され(別紙第4参照),本体の「正面下部にランプを設ける」構成が示されている。 ウ検討(ア) 前記ア認定のエーシーアダプタの 5794号公報)には,電子ゲーム機用充電器に係る意匠が記載され(別紙第4参照),本体の「正面下部にランプを設ける」構成が示されている。 ウ検討(ア) 前記ア認定のエーシーアダプタの性質,用途及び使用態様によれば,エーシーアダプタは,携帯用の周辺機器の充電に用いる実用品であると同時に,身の回りに置き,あるいは,外出時に携帯するなど,日常生活において目に触れる機会の多い製品であるといえる。 そして,前記イの認定事実によれば,エーシーアダプタの意匠においては,本件登録意匠の構成態様に係る「箱状の本体の背面に折り畳み自在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタを設ける」構成(前記(1)ア①),「本体は,縦横の寸法が同一の正四角形で扁平な箱状であり」(前記(1)ア②),「本体の全周囲は面取りがされている」構成及び「縦(横)の寸法の約0.15倍の長さを半径とする面取りをする」構成,「差込みプラグが本体の平面部(上面部)から背面部に設けられ,プラグのピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用され,プラグピンの支持部の外周は弧状をなしている」構成(前記(1)ア④),本体の「正面下部にランプを設ける」構成(前記(1)ア⑤),「USBコネクタは,底部に設けられている」構成(前記(1)ア⑥)は,本件出願時にいずれも公知であったものといえる。 他方で,本件登録意匠の構成態様のうち,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四 - 30 -角隅部は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」点(前記(1)ア③)は,公知意匠には認められない構成態様であり,この構成態様により,需要者に対し,本体全体が丸みを帯 ,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」点(前記(1)ア③)は,公知意匠には認められない構成態様であり,この構成態様により,需要者に対し,本体全体が丸みを帯びた柔らかな印象を与えると同時に,本体正面視の四角隅部が四半球状となっていることにより整った印象も与えるものとなっており,上記構成態様は,他の公知意匠にはみられない新規な創作部分であるといえる。 すなわち,前記イ(イ)のとおり,乙3には,充電器に係る意匠において,縦横の寸法が同一の正四角形の箱状の本体において,「縦(横)の寸法の約0.15倍の長さを半径とする面取りをしている」構成が示されているが,厚さが縦(横)寸法の約0.6倍であって,これは本件登録意匠の2倍に当たり,縦(横)の長さと厚さとの比が異なり,さらには厚さに対する面取り径の比が本件登録意匠よりも小さく,本件登録意匠のような全周囲が厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りをしておらず,また,本体の四角隅部が,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっているものともいえず,本件登録意匠のような本体全体が丸みを帯びた柔らかな印象を与えるものとはいえない。他に本件登録意匠の上記構成態様が本件出願前に公然知られた形状であったことを認めるに足りる証拠はない。 以上を総合考慮すると,本件登録意匠において,需要者の注意を引きやすい特徴的部分は,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」点を含む,本体部全体の形態であると認められる。 (イ) これに対し被告は,通常の販売・流通形態(店頭,ウェブサイト)では,需要者は,エーシーアダ 厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」点を含む,本体部全体の形態であると認められる。 (イ) これに対し被告は,通常の販売・流通形態(店頭,ウェブサイト)では,需要者は,エーシーアダプタを正面又は正面やや斜めから見るの - 31 -が普通であり,需要者としては正面の形態に最も注目するから,本件登録意匠においては,携帯電話等の周辺機器との接続部分,本体の正面の形状及びランプの位置の正面形態全体がひとまとまりとして要部となり,特に接続部分が最重要の要部である旨主張する。 しかしながら,意匠の特徴的部分の把握に際しては,意匠に係る物品の販売・流通時において視認し得る形状のみを前提にするのではなく,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様等も考慮すべきであるところ,前記(ア)認定のとおり,エーシーアダプタは,需要者が実際に手にとって携帯用の周辺機器の充電に用いる実用品であると同時に,身の回りに置き,あるいは,外出時に携帯するなどされるものであることからすると,需要者が本件登録意匠の正面の形態にのみ注目するとはいえない。 また,被告が主張する携帯電話等の周辺機器との接続部分,本体の正面の形状及びランプの位置は,前記イのとおり,いずれも本件出願前に公知の形状であることからすると,本件登録意匠においては,携帯電話等の周辺機器との接続部分,本体の正面の形状及びランプの位置の正面形態全体がひとまとまりとして需要者の注意を引きやすい特徴的部分(要部)を形成しているとはいえないし,ましてや接続部分が最重要の要部であるとはいえない。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 (3) 被告意匠の類似性前記(2)ウ(ア)認定のとおり,本件登録意匠において,需要者の注意を引きやすい特徴的部分は,「本体の全周囲は,厚さ方向に ,被告の上記主張は,採用することができない。 (3) 被告意匠の類似性前記(2)ウ(ア)認定のとおり,本件登録意匠において,需要者の注意を引きやすい特徴的部分は,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」点を含む,本体部の形態全体である。 そこで,この特徴的部分を中心に本件登録意匠と被告意匠を対比した上 - 32 -で,両意匠が全体的な美感を共通にするか否かについて判断するに,前記(1)ウ(ア)①ないし⑥認定のとおり,両意匠は,この特徴的部分において共通するのみならず,それ以外の基本的構成態様及び具体的構成態様の多くの部分においても共通しており,需要者に対し,全体として共通の美感を生じさせるものと認められる。 他方で,前記(1)ウ(イ)認定のとおり,両意匠には,①本件登録意匠では,本体底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタが設けられているが,被告意匠では,周辺機器に接続されるコードが断線防止部材を介在して,本体内部の回路に接続されている点,②本件登録意匠では,本体の正面の形状が平坦であるが,被告意匠では,中央部で周縁部よりも厚さの約0.03倍(約0.5mm)程度膨出している点,③本件登録意匠では,ランプの中心が本体右側面と底面からそれぞれ約17mmの均等な位置にあるのに対し,被告意匠では,ランプの中心が本体底面から約12mmで,かつ,本体右側面から約16mmの位置にあり,本件登録意匠に比べて底面に寄った位置に設けられている点において差異があるが,これらの差異点は,需要者の注意をひきやすい部分とはいえない上,差異点から受ける印象は,両意匠の共通点から受ける印象を凌駕するものではない。 面に寄った位置に設けられている点において差異があるが,これらの差異点は,需要者の注意をひきやすい部分とはいえない上,差異点から受ける印象は,両意匠の共通点から受ける印象を凌駕するものではない。 したがって,本件登録意匠と被告意匠は,上記差異点を考慮しても,需要者の視覚を通じて起こさせる全体的な美感を共通にしているものと認められるから,被告意匠は,本件登録意匠に類似している。 これに反する被告の主張は,採用することができない。 (4) まとめ以上のとおりであるから,被告意匠は,本件登録意匠と類似する意匠に該当する。 2 争点2(本件意匠権の権利行使の制限の成否)について被告は,本件登録意匠は,以下のとおり,本件出願前に当業者が公然知られ - 33 -た形状である乙5記載の意匠と乙3及び乙4記載の各意匠に基づいて容易に本件登録意匠の創作をすることができたものであるから,本件登録意匠の意匠登録には意匠法3条2項に違反する無効理由(同法48条1項1号)があり,意匠登録無効審判により無効にされるべきものであるから,同法41条において準用する特許法104条の3第1項の規定により,原告は,被告に対し,本件意匠権を行使することができない旨主張する。 (1) 乙5記載の意匠の形態乙5によれば,乙5記載の意匠は,エーシーアダプタに係る意匠であり(別紙第2参照),①箱状の本体の背面に折り畳み自在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタを設けていること,②本体は,縦横の寸法が同一の正四角形で,扁平な箱状であり,本体の全周囲に面取りがされていること,③差込みプラグは,本体の平面部(上面部)から背面部にかけ,本体正面から見てやや左寄りに設けられており,プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方 の全周囲に面取りがされていること,③差込みプラグは,本体の平面部(上面部)から背面部にかけ,本体正面から見てやや左寄りに設けられており,プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用されること,④USBコネクタは,底部左寄りに設けられていることが認められる。 (2) 本件登録意匠と乙5記載の意匠との対比ア本件登録意匠と乙5記載の意匠とは,①箱状の本体の背面に折り畳み自在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタを設けている点,②本体は,縦横の寸法が同一の正四角形で,扁平な箱状であり,本体の全周囲に面取りがされている点,③差込みプラグは,本体の平面部(上面部)から背面部にかけ,本体正面から見てやや左寄りに設けられており,プラグピンは背面の凹部に折り畳まれた状態から,後方又は上方に起立させて使用される点,④USBコネクタは,底部に設けられている点において共通する。 イ他方で,両意匠は,①本件登録意匠では,本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部 - 34 -は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっているのに対し,乙5記載の意匠では,縦・横・厚さの正確な寸法が不明であり,厚さに対する面取り径の比及び面取りの具体的形状も明らかでない点,②本件登録意匠では,正面下部にランプを設けているのに対し,乙5記載の意匠では,ランプを設けていない点,③本件登録意匠では,プラグピンの支持部の外周は,本体と同形の弧状をなし,この弧状部分には,水平方向にほぼ等間隔で5本の溝が形成されているのに対し,乙5記載の意匠では,プラグピンの支持部の外周が本体と同形の弧状をなしているかどうか不明であり,溝の本数も不明である点, ,この弧状部分には,水平方向にほぼ等間隔で5本の溝が形成されているのに対し,乙5記載の意匠では,プラグピンの支持部の外周が本体と同形の弧状をなしているかどうか不明であり,溝の本数も不明である点,④本件登録意匠では,USBコネクタは,底部の「右寄り」に設けられているのに対し,乙5記載の意匠では,底部の「左寄り」に設けられている点において差異がある。 (3) 創作容易性被告は,乙3記載の意匠は,別紙第3のとおりであり,縦(横)の約0. 15倍の長さを半径とする面取りをした形状を有しているところ,乙5記載の意匠に乙3記載の意匠の上記形状を組み合わせて,その面取り径で乙5記載の意匠の角を落とせば,本体の全周囲が厚さを基準としてその約2分の1を半径とする半円弧状の面取りされた形状(前記(2)イ①の差異点に係る本件登録意匠の構成態様)となる旨主張する。 しかしながら,前記1(2)イ(イ)認定のとおり,乙3には,充電器に係る意匠において,縦横の寸法が同一の正四角形の箱状の本体において,「縦(横)の寸法の約0.15倍の長さを半径とする面取りをしている」構成が示されているが,厚さが縦(横)寸法の約0.6倍であって,これは本件登録意匠の2倍に当たり,縦(横)の長さと厚さとの比が異なり,さらには厚さに対する面取り径の比が本件登録意匠よりも小さく,本件登録意匠のような全周囲が厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りをしている構成や,本体の四角隅部が,正面視において,いずれも,厚さの約2分 - 35 -の1を半径とする四半球状となっている構成は示されていない。 また,乙4記載の意匠は,本体の「正面下部にランプを設ける」構成が示されており(前記1(2)イ(イ)),この点において本件登録意匠と共通するものの,本体の長さ,厚さ及び面取りの径に関 ていない。 また,乙4記載の意匠は,本体の「正面下部にランプを設ける」構成が示されており(前記1(2)イ(イ)),この点において本件登録意匠と共通するものの,本体の長さ,厚さ及び面取りの径に関して本件登録意匠と共通する構成を有するわけではない。 そして,本体が正方形又は長方形の箱状のエーシーアダプタに係る意匠においては,縦(横)の長さと厚さの比率,面取りの有無,厚さに対する面取り径の比,面取りの具体的形状等により,当該意匠全体が需要者に与える美感を異にすることがあり得るところ,本件登録意匠においては,縦横の長さと厚さの比及び厚さに対する面取り径の比率等を工夫することにより,「本体の四角隅部は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」構成としたものであり,このような構成には,当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性が認められる。 そうすると,乙3ないし5記載の各意匠に接した当業者といえども,乙5記載の意匠において「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」構成(前記(2)イ①の差異点に係る本件登録意匠の構成態様)を採用し,本件登録意匠を創作することが容易であったものと認めることはできない。 (4) まとめ以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,当業者が乙5記載の意匠と乙3及び乙4記載の各意匠に基づいて容易に本件登録意匠の創作をすることができたものとは認められないから,本件登録意匠の意匠登録には意匠法3条2項に違反する無効理由があるとの被告の主張は,理由がない。 3 争点3(被告による被告製品の製造の有無及び差止めの必要性)について ものとは認められないから,本件登録意匠の意匠登録には意匠法3条2項に違反する無効理由があるとの被告の主張は,理由がない。 3 争点3(被告による被告製品の製造の有無及び差止めの必要性)について - 36 -原告は,被告は,業として,平成22年6月ころから,被告製品を製造及び販売しており,被告の上記製造及び販売は,原告の本件意匠権の侵害行為に当たるから,その差止めの必要性がある旨主張する。 そこで検討するに,被告が平成22年6月ころから被告製品を製造していたことは,争いがない。他方で,被告が被告製品を製造していた事実については,これを認めるに足りない。 次に,被告は,被告が平成22年末をもって被告製品の販売を停止した旨主張するが,仮にそうであるとしても,被告がその販売を停止するまでの半年程度被告製品を販売していたこと,被告が本件訴訟において本件登録意匠と被告意匠の類否を争っていることなどに照らせば,被告においては,なお被告製品を販売することにより本件意匠権を侵害するおそれがあるものと認められる。 以上によれば,原告の上記主張は,被告による被告製品の販売行為の差止めの必要があるとの限度で理由がある。 4 争点4(原告の損害額)について(1) 意匠法39条1項の損害額ア被告製品の譲渡数量被告が平成22年6月から同年11月30日までの間に合計2万3246個の被告製品を販売したことは,争いがない。 イ原告製品の「侵害の行為がなければ販売することができた物品」該当性(ア) 原告製品は,周辺機器との接続のためのUSBコネクタ(USBポート)を有するエーシーアダプタであり,このUSBコネクタにUSBケーブルを接続して周辺機器の充電を行う製品であり(検甲2ないし5),原告製品に携帯電話用のUSBケーブルを接続する ネクタ(USBポート)を有するエーシーアダプタであり,このUSBコネクタにUSBケーブルを接続して周辺機器の充電を行う製品であり(検甲2ないし5),原告製品に携帯電話用のUSBケーブルを接続することができることからすると,原告製品は,被告製品と市場において競合し,被告による本件意匠権の侵害行為がなければ販売することができた物品に該当するものと認められる。 - 37 -(イ) これに対し被告は,原告製品は,その接続口がUSBコネクタであり,主にiPodシリーズやiPhoneといった,USBケーブルの接続により充電可能な製品に用いられるエーシーアダプタであるのに対し,被告製品は,Docomo,SoftBankの携帯電話の接続口に対応するケーブルが一体となったエーシーアダプタであり,両製品は,充電の対象となる製品がそれぞれ異なることから,市場において競合しない旨主張する。 しかしながら,Docomo,SoftBankの携帯電話の接続口に対応する充電用のUSBケーブル製品が単体で販売されていること(甲39,乙6,弁論の全趣旨)に照らすならば,原告製品にこのようなUSBケーブルを接続することにより上記携帯電話の充電に原告製品を用いることができるものと認められる。 そうすると,原告製品の充電の対象となる周辺機器には,Docomo,SoftBankの携帯電話も含まれるといえるから,被告の上記主張は,その前提を欠くものであり,採用することができない。 ウ単位数量当たりの原告製品の利益額(ア) 原告製品の卸売販売価格証拠(甲31ないし33)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品の卸売販売価格は1個当たり607円であることが認められ,これに反する証拠はない。 (イ) 変動経費原告は,原告製品の1個当たりの変動経費は,本体 いし33)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品の卸売販売価格は1個当たり607円であることが認められ,これに反する証拠はない。 (イ) 変動経費原告は,原告製品の1個当たりの変動経費は,本体2.75ドル,説明書0.017ドル,シール0.28ドル,ステッカー0.014ドルの合計額であり,これを本件訴訟提起時(平成23年1月7日)の為替相場1ドル83.58円に基づいて計算すると,原告製品の変動経費は1個当たり266円となる旨主張する。 - 38 -これに対し被告は,原告製品の1個当たりの変動経費には,上記合計額に国内輸送費,海上輸送費及び倉庫料を加えるべきであり,また,ドル円換算に際しては平成21年11月あるいは平成22年1月の為替相場1ドル約90円を基準にすべきである旨主張する。 a 原告主張の1個当たりの各変動経費(本体2.75ドル,説明書0. 017ドル,シール0.28ドル,ステッカー0.014ドル)を合算すると,3.061ドルとなる。 上記ドル建ての経費を円換算するに当たっては,被告製品の販売期間である平成22年6月から同年11月30日までの換算レートの平均値を基準にするのが相当と認める。 しかるところ,甲51及び弁論の全趣旨によれば,上記期間のドル円換算レートの月平均値は,平成22年6月が91.31円,同年7月が89.09円,同年8月が86.37円,同年9月が84.66円,同年10月が83.42円,同年11月が81.39円であることが認められ,これらを平均すると1ドル当たり86.04円となる。 これを基準に上記ドル建ての経費を円換算すると,263.36円(小数点3位以下切捨て)となる。 b 被告は,原告製品の1個当たりの変動経費には,上記aの金額に国内輸送費,海上輸送費及び倉庫料を加えるべきである旨主 ドル建ての経費を円換算すると,263.36円(小数点3位以下切捨て)となる。 b 被告は,原告製品の1個当たりの変動経費には,上記aの金額に国内輸送費,海上輸送費及び倉庫料を加えるべきである旨主張する。 これに対し原告は,原告の取引規模に照らせば,被告製品の譲渡数量分が増加しても,国内輸送費,海上輸送費及び倉庫料について追加支出は生じないから,これらの経費を控除する必要はない旨主張する。 そこで検討するに,証拠(甲22ないし24,28,52,53(枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,①原告製品の1個当たりの国内輸送費は7.58円,海上輸送費は11.77円,倉庫料は24.90円であること,②原告は,平成22年1月 - 39 -から平成23年12月までの間に9万3960個の原告製品を仕入れて10万8801個出荷したこと,③上記仕入れに際しては,原告製品3万2400個の収容が可能な20フィートコンテナを用いて2か月ないし3か月に1度の海上輸送をしたことが認められる。 上記認定事実によれば,海上輸送費については,上記コンテナには前記ア記載の譲渡数量分に相当する原告製品を収容するのに十分な空き容量があったことが認められるから,上記譲渡数量分が増加しても追加支出が生じないというべきである。 他方で,国内輸送費及び倉庫料については,追加支出が発生しないことを示す具体的な根拠をうかがわせる証拠はない。 したがって,被告の上記主張は,上記aの金額に国内輸送費7.58円及び倉庫料24.90円を加えるべきであるとする限度で理由がある。 c 以上によれば,原告製品の単位数量当たりの利益を算出するに当たっては,変動経費として,263.36円(前記a)に国内輸送費7. 58円(前記b)及び倉庫料24.90円(前記b)を 理由がある。 c 以上によれば,原告製品の単位数量当たりの利益を算出するに当たっては,変動経費として,263.36円(前記a)に国内輸送費7. 58円(前記b)及び倉庫料24.90円(前記b)を加えた295. 84円を控除すべきことになる。 (ウ) 単位数量当たりの利益額以上を総合すると,原告製品の単位数量当たりの利益は,1個当たりの卸売販売価格607円(前記(ア))から,1個当たりの変動経費295.84円(前記(イ)c)を控除した311円(小数点以下切捨て)と認められる。 エ 「販売することができないとする事情」の存否等被告は,①Docomo,SoftBankの携帯電話用のエーシーアダプタが必要な需要者は,当該機器が充電できればよいから,被告製品のようなエーシーアダプタと接続ケーブルとが一体となっている製品を選択し,仮に被告製 - 40 -品が販売されなかったとした場合には,被告製品と同種の廉価の代替品を購入するはずであり,あえて,別途上記携帯電話用のUSBケーブルを必要とする原告製品を選択することはないのに対し,他方で,多種の周辺機器の充電に用いるエーシーアダプタが必要な需要者は,原告製品を選択することになるから,原告製品と被告製品とでは,そもそも購入対象者が異なり,明確に棲み分けがされており,②被告製品は,主にインターネットのショッピングサイトで販売され,一体に接続されているケーブルを含めた全体について,正面から撮影された写真が掲載されているのみであり,また,被告製品は,ほとんどその正面形状しか見えない状態でパッケージに梱包されており,その意匠が需要者の購入動機に寄与することはなく,むしろ,インターネットのショッピングサイトにおける被告製品のレビューに照らしても,被告製品の購入動機となっているのは,被告意匠で に梱包されており,その意匠が需要者の購入動機に寄与することはなく,むしろ,インターネットのショッピングサイトにおける被告製品のレビューに照らしても,被告製品の購入動機となっているのは,被告意匠ではなく,色であり,このような被告製品及び原告製品の形態の違い,被告製品の代替品の存在,意匠が購入動機の形成に寄与していないことは,被告製品の譲渡数量の全部又は一部に相当する原告製品を原告において「販売することができないとする事情」(意匠法39条1項ただし書)に該当するから,これらの事情に相当する数量に応じた額を控除すべきである旨主張する。 (ア) 被告製品a 被告製品は,Docomo,SoftBank又はauの携帯電話の接続口に対応する接続ケーブルが一体となった携帯電話用エーシーアダプタであり(別紙物件目録記載の品番がET-T511で始まるものはauの携帯電話用,ET-T512で始まるものはDocomo,SoftBankの携帯電話用の製品である。),入力はAC100V-240V,出力は5V/1000mA,重さは約52グラム,本体部分の寸法は縦横が53mm,高さ17mmである(甲6,50,乙7の1,弁論の全趣旨) - 41 -b 被告製品の市場における販売価格は,1279円から1453円である(甲7の1ないし4,乙7の1)。 c 被告製品のパッケージ表面(甲5の①の写真)には,被告製品が対応する携帯電話の機種名,「180°回転するプラグ」,「コードもコネクタも同じカラーコーディネート」,「携帯電話用充電器」,「かわいいのにハイパワー」,「スピーディに充電できる1000mA」,「充電中お知らせLEDランプ付き」との記載があり,裏面(甲6)には,対応する携帯電話(Docomo,SoftBank又はau)に使用ができる旨及び「充電が 「スピーディに充電できる1000mA」,「充電中お知らせLEDランプ付き」との記載があり,裏面(甲6)には,対応する携帯電話(Docomo,SoftBank又はau)に使用ができる旨及び「充電が終了すると消灯するお知らせLEDランプ付き。 出力1000mAなのでスピーディに充電できます。入力100V~240V対応で,海外でもご使用になれます。コンセントプラグが180°回転し邪魔になりません。」などの記載がある。 d インターネットのショッピングサイトの被告製品のページでは,「携帯電話充電器LED付きかわいいのにハイパワー」,「かわいいのにハイパワー!!スピーディに充電できる1000mA。充電お知らせLEDランプ付き」などと記載されている(甲5,6,甲7の1,3,4)。 (イ) 原告製品a 原告製品は,USBコネクタ(USBポート)を有するエーシーアダプタであり,スマートフォンであるiPhone3G,携帯用音楽プレーヤーであるiPod等の各種周辺機器の充電に用いられ,使用の際には,当該周辺機器に対応したUSBケーブルが別途必要とされ,入力はAC100V-240V,出力はDC5V1A(最大),重さは約37グラム,寸法は縦横が53mm,高さ17mmである(甲34,46,47,50,弁論の全趣旨)。 b 原告製品の市場における販売価格は,880円から1595円であ - 42 -る(甲46,47,甲55の1,乙1の3,1の4)。なお,周辺機器との接続用のUSBケーブルの市場における販売価格は,480円から600円程度である(甲39,乙6,乙7の1)。 c 原告製品のパッケージ表面(乙1の1)には,「iPodシリーズ,iPhone3G対応」,「USBACアダプター」,「海外でも使える」との記載があり,裏面(乙1の2)には,「充電 乙7の1)。 c 原告製品のパッケージ表面(乙1の1)には,「iPodシリーズ,iPhone3G対応」,「USBACアダプター」,「海外でも使える」との記載があり,裏面(乙1の2)には,「充電可能機器:iPod第4~5世代,…その他,USB接続による充電に対応するオーディオプレーヤー,携帯電話,ゲーム機など」などの記載がある。 d 原告製品について原告のウェブサイト(甲34)上には,「小さい。 軽い。そして可愛い。」,「これなら,どこへでも連れて行ける。」,「パソコン無しでコンセントからiPodシリーズの充電ができます。 iPhone3Gや各種オーディオプレーヤー,携帯電話…にお使いいただけます。」,「普段のお出かけにも気軽に持ち運べて,さらに海外旅行先でも使える,便利なUSBACアダプターです。」,「まるで石けんのような優しいカラーを取り揃えています。」などの記載がある。 また,インターネットのショッピングサイト上の原告製品のページには,「ワンランク上の高級感を演出する美しいラウンドフォルムデザイン」,「まるで石けんのような優しいカラーを取り揃えています。」,「通電中に青くきらめく青色LEDが,さらに美しさを際立たせます。」などの記載がある(甲47,55の1,乙1の1ないし4)。 (ウ) 代替品被告製品の販売期間である平成22年6月ないし同年11月当時,原告製品と同種のUSBコネクタを有するエーシーアダプタ(原告製品の競合品)は,880円から1320円程度の価格帯で市場において販売され(甲36,38,乙7の1),被告製品と同種のDocomo,SoftBank - 43 -等の携帯電話用の接続ケーブルが一体となったエーシーアダプタは,773円から980円程度の価格帯で市場において販売されていた(乙7の1ないし3) 種のDocomo,SoftBank - 43 -等の携帯電話用の接続ケーブルが一体となったエーシーアダプタは,773円から980円程度の価格帯で市場において販売されていた(乙7の1ないし3)。 (エ) 検討a 以上を前提に検討するに,被告製品は,Docomo,SoftBank等の携帯電話用のエーシーアダプタであり,一方,原告製品は,USBコネクタ(USBポート)を有するエーシーアダプタであり,上記携帯電話の充電に使用する際には,上記携帯電話の接続口に対応したUSBケーブルが別途必要とされるものである。 ところで,エーシーアダプタが,携帯用の周辺機器の充電に用いる実用品であると同時に,身の回りに置き,あるいは,外出時に携帯するなど,日常生活において目に触れる機会の多い製品であること(前記1(2)ウ(ア))に照らすならば,需要者は,エーシーアダプタの選択に当たっては,充電可能な製品の種類,その他の性能,価格,大きさ,重さのほか,デザイン,色などの諸要素を考慮するものと考えられる。 しかるところ,原告製品と被告製品は,いずれもDocomo,SoftBank等の携帯電話の充電に利用することができ,寸法,出力も概ね同じであり,また,重さは原告製品の方が軽いが,ケーブルの有無が異なるから,ほぼ同程度と評価することができる。 さらに,原告製品とDocomo,SoftBank等の携帯電話用の接続ケーブルを合わせた価格(1360円から1753円)と被告製品の価格(1279円から1453円)は,同じ価格帯に属するといえる。 そして,原告製品の本体の独特の丸みを帯びた印象を与えるデザインは,このようなデザインを好む需要者が原告製品を選択する動機付けになるものといえる。 - 44 -他方で,①Docomo,SoftBank 製品の本体の独特の丸みを帯びた印象を与えるデザインは,このようなデザインを好む需要者が原告製品を選択する動機付けになるものといえる。 - 44 -他方で,①Docomo,SoftBank等の携帯電話のみを充電することができればよいと考える需要者にあっては,価格面でより安価であり,ケーブルが一体であって使い勝手のよい,被告製品の代替品を選択する可能性が高いこと,②被告製品は,本体と一体となった接続ケーブルが本体と同色であるのに対し(甲50,乙7の1,弁論の全趣旨),原告製品の本体の色によっては,市販されている接続用のUSBケーブルと同色とはならないことから,この点を美観上好まず原告製品を選択しない可能性があることが認められる。 b 次に,被告製品には,ピンク,レッド,ホワイト,ブルー,ブラック等の色のバリエーションがあり(甲41ないし45,乙7の1),原告製品にも,ホワイト,ブラック,シアンブルー,ピンク,バイオレットの色のバリエーションがある(甲34)。 しかるところ,被告製品を購入した者が記載したインターネットのショッピングサイト上のレビュー(利用者の感想)においては,「とにかくピンクがかわいいです。」(甲41),「見た目は真っ赤でおしゃれです。」,「赤なら自分の充電器かどうかわかりやすいのではないかという点にひかれて購入し」(以上,甲42)との記載があるように,色が購入動機になっていることがうかがわれる。 c 前記a及びbの認定事実を総合すると,仮に被告による被告製品の販売がされなかった場合には,被告製品の購入者の多くは,Docomo,SoftBank等の携帯電話用の被告製品と同種の接続ケーブルが一体となった代替品を選択した可能性が高いものと認められる。 また,本件登録意匠と類似する被告意匠は,被告製品の購入 ,Docomo,SoftBank等の携帯電話用の被告製品と同種の接続ケーブルが一体となった代替品を選択した可能性が高いものと認められる。 また,本件登録意匠と類似する被告意匠は,被告製品の購入動機の形成に寄与していることが認められるものの,その購入動機の形成には,被告意匠のほか,被告製品がDocomo,SoftBank等の携帯電話用の専用品であることが大きく寄与し,被告製品の色彩等(本体と接続ケ - 45 -ーブルが同一色である点を含む。)も相当程度寄与しているものとうかがわれるから,被告意匠の購入動機の形成に対する寄与は,一定の割合にとどまるものと認められる。 以上によれば,原告製品と被告製品の形態の違い,被告製品と同種の代替品の存在,被告製品の購入動機の形成に対する被告意匠の寄与が一定の割合にとどまることは,被告製品の譲渡数量の一部に相当する原告製品を原告において「販売することができないとする事情」(意匠法39条1項ただし書)に該当するものと認められる。 そして,上記認定の諸点を総合考慮すると,意匠法39条1項ただし書の規定により控除すべき上記「販売することができないとする事情」に相当する数量は,被告製品の販売数量(前記ア)の9割と認めるのが相当である。 (オ) 被告の主張についてa 被告は,Docomo,SoftBankの携帯電話用のエーシーアダプタが必要な需要者は,当該機器が充電できればよいから,被告製品のようなエーシーアダプタと接続ケーブルとが一体となっている製品を選択し,仮に被告製品が販売されなかったとした場合には,被告製品と同種の廉価の代替品を購入するはずであり,あえて,別途上記携帯電話用のUSBケーブルを必要とする原告製品を選択することはないのに対し,他方で,多種の周辺機器の充電に用いるエーシー 合には,被告製品と同種の廉価の代替品を購入するはずであり,あえて,別途上記携帯電話用のUSBケーブルを必要とする原告製品を選択することはないのに対し,他方で,多種の周辺機器の充電に用いるエーシーアダプタが必要な需要者は,原告製品を選択することになるから,原告製品と被告製品とでは,そもそも購入対象者が異なり,明確に棲み分けがされている旨主張する。 しかしながら,前記(エ)aに説示したとおり,両製品に共通する需要者は,原告製品の丸みを帯びたデザインを重視するなどして,原告製品を購入する可能性があるものと認められるから,被告の上記主張 - 46 -は,採用することができない。 b 次に,被告は,被告製品は,主にインターネットのショッピングサイトで販売され,一体に接続されているケーブルを含めた全体について,正面から撮影された写真が掲載されているのみであり,また,被告製品は,ほとんどその正面形状しか見えない状態でパッケージに梱包されており,その意匠が需要者の購入動機に寄与することはなく,むしろ,インターネットのショッピングサイトにおける被告製品のレビューに照らしても,被告製品の購入動機となっているのは,被告意匠ではなく,色である旨主張する。 しかしながら,被告製品が主にインターネットのショッピングサイトで販売されていることを認めるに足りる証拠はないのみならず,被告製品の梱包の態様(甲5,検甲1)やインターネットのショッピングサイトの表示の態様(甲43ないし45)に照らすならば,需要者は,被告製品を購入するに当たり,被告製品の丸みを帯びたデザインを看取することができるものと認められ,その意匠が需要者の購入動機に寄与することがないとはいえない。 また,原告製品のレビューにおいて,「デザインが個人的に好きですね。丸みがあり,艶 たデザインを看取することができるものと認められ,その意匠が需要者の購入動機に寄与することがないとはいえない。 また,原告製品のレビューにおいて,「デザインが個人的に好きですね。丸みがあり,艶々しています。」,「丸みを帯びたデザイン,他機種と比較してかなり質感が高いです。」(以上,甲46),「そのデザインと小ささ,軽さに大変満足しています。」,「iPodにマッチしたデザインも気に入っている。」(以上,甲47)との記載があり,これらの記載は,原告製品において,デザイン(意匠)が購入動機となっていることを示すものといえる。加えて,被告意匠と本件登録意匠と類似していることに照らすならば,被告意匠においても,色のみならず,デザイン(意匠)も購入動機に寄与しているものと認められる。 - 47 -したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 オ小括以上によれば,意匠法39条1項により算出される原告の損害額は,被告製品の販売数量(前記ア)に単位数量当たりの原告製品の利益額(前記ウ(ウ))を乗じて得られた額である722万9506円から,「販売することができないとする事情」に相当する数量(上記販売数量の9割)に応じた額を控除した後の72万2950円となる。 (2) 弁護士費用本件事案の性質,審理の経過等諸般の事情を総合考慮すると,被告による本件意匠権の侵害行為と相当因果関係のある原告の弁護士費用相当額の損害は,20万円と認めるのが相当である。 (3) まとめよって,原告は,被告に対し,本件意匠権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として92万2950円(前記(1)オ及び(2)の合計額)及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平成23年1月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による く損害賠償請求として92万2950円(前記(1)オ及び(2)の合計額)及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平成23年1月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 5 結論以上によれば,原告の請求は,被告に対し,被告製品の販売の差止め及び廃棄並びに92万2950円及びこれに対する平成23年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから,これを認容することとし,その余の請求は,理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 - 48 -裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官高橋彩 裁判官石神有吾 - 49 -(別紙) 物件目録下記の携帯電話用エーシーアダプタ記 1 品番ET-T511WT,ET-T511BK,ET-T511PK,ET-T511VP,ET-T512WT,ET-T512BK,ET-T512BL,ET-T512RE,ET-T512PK,ET-T512VP,ET-T512PU 2 形態別紙第1のとおり(全品番に共通)
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