【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 当審における訴訟費用は、全部被告人の負担とする。 理 由 本件控訴の趣意は、弁護人石川芳雄作成名義の控訴趣意書に記載さ
主文 本件控訴を棄却する。 当審における訴訟費用は、全部被告人の負担とする。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人石川芳雄作成名義の控訴趣意書に記載されているとおりで、これに対する答弁は、東京高等検察庁検察官中野國幸作成名義の答弁書に記載されているとおりであるから、これらを引用する。 一、 弁護人の控訴趣意第一点の一(原判示第一についての事実誤認の主張)について所論は、原判示第一の事実につき、被告人は、被害者がけんの制止に従わなかつたことに憤慨して同人に暴行したものではなく、むしろ、初め店内で被害者から殴打され、半ば防衛上争闘に及んだものであり、又、同人の顔面等をくつばきのままけつたことはないから、被告人の過剰防衛を認めず、かつ、顔面などをくつばきのままけりつける暴行を加え、顔面挫傷の傷害を負わせたという事実を認定した原判決は、事実を誤認したものである、というのである。 しかしながら、原判示第一の事実につき原判決が挙示する関係証拠を総合すると、原判示第一の事実は、所論指摘の点を含めて、優にこれを肯認することができるのであつて、記録を調査し、当審における事実の取調べの結果を参酌しても、原判示第一の事実につき所論の事実誤認は認められない。すなわち、被告人は、原判示第一のようにAと被害者たるBらのけんかを制止した際、Bに顔面を殴打されたことに憤慨し、同人を「C」前路上に連れ出して、同人の顔面を手拳で殴打し、転倒した同人の顔面をくつばきのままけりつける暴行を加え、そのため同人に原判示の傷害を負わせるにいたつたものであつて、被告人に対する顔面の殴打は、被告人の制止に従わない所為のあらわれというべきであるから、原判決が、Bらが被告人の制止に従わなかつたことなどに憤慨し、と判示したことをもつて、誤 にいたつたものであつて、被告人に対する顔面の殴打は、被告人の制止に従わない所為のあらわれというべきであるから、原判決が、Bらが被告人の制止に従わなかつたことなどに憤慨し、と判示したことをもつて、誤りとして非難するのはあたらない。 そして、原判示第一の被害者の傷害が被告人の右暴行に基づくものであることは明白であり、被告人も、原判示第一の暴行後「C」にもどつた際、顔面がはれあがるなどのけがをしていたことが認められるが、それは、被告人、被害者の両名がともに酒に酔つていて、当初互いに殴り合つた際に生じたものと思われ、Bが路上に転倒したのちは、同人は全く抵抗せず、被告人がくつばきのままで転倒したBの顔面等をけりつけるだけであつたことが認められるのであつて、この点に反する被告人の原審公判廷における供述部分はたやすく信用しがたい。以上の事実に照らすと、被告人は、急迫不正の侵害を受けて防衛の意思をもつてやむなく原判示第一の所為に出たものではなくして、むしろ、Bの右態度に憤慨して積極的に加害の意思で同判示の暴行に出たものと認められるから、その所為を目して過剰防衛にあたるとはいえない。論旨は理由がない。 二、 控訴趣意第一点の二(原判示第二についての事実誤認の主張)について所論は、原判示第二の事実につき、被告人は、同判示のDら四名に対し憤まんの情もだしがたく思つていたことはなく、いわんや、それをはらそうとしたこともなく、たまたま自宅に帰る途次、同判示の「E」に同人らがいるのを発見し、とつさに、同人らが待伏せしているものと直感し、同人らに先制攻撃をかけたところ、そのとき氏名不詳者数名が出現したため、驚いてその場を逃げ出したものであつて、これらの者と共謀して暴行を加えたことはないのに、原判決は、証拠に基づかず、あるいは証明力のない被告人の自供調書を採用 、そのとき氏名不詳者数名が出現したため、驚いてその場を逃げ出したものであつて、これらの者と共謀して暴行を加えたことはないのに、原判決は、証拠に基づかず、あるいは証明力のない被告人の自供調書を採用するなどして、事実を誤認したものである、というのである。 そこで、まず、被告人の自供調書の作成経緯等に関する同人の原審及び当審公判廷における各供述にかんがみ、原判示第二の事実につき原判決の挙示する被告人の自供調書の形式、供述の経過、その内容等をしさいに検討しても、その証明力に疑いをいれるものはなく、したがつて、原判決がこれら被告人の自供調書を採用したことについて所論の非違は存しない。そして、これら自供調書に、原判示第二の事実につき原判決の挙示する関係証拠を総合すると、同第二の事実は、所論指摘の点を含めて、優にこれを肯認することができるのであつて、原判決が「判示第二の共謀についての判断」の項で説示するところも相当であり、当審における事実の取調べの結果に徴しても、これを動かすにたらず、ことに当審公判廷における被告人の供述中右に反する部分はたやすく信用しがたい。所論は独自の見解に基づきいたずらに原判決を非難するものであつて、とうてい採用しがたい。論旨は理由がない。 三、 控訴趣意第二点(訴訟手続の法令違反の主張)について所論は、要するに、原審は、第五回及び第六回各公判期日において受訴裁判所の裁判官以外のF裁判官を参与判事補として公判に立ち会わせているけれども、これは、刑事訴訟法第二八二条第二項所定の「裁判官」以外の者が裁判官の資格で「列席」したことになる点において同条項に違反するとともに、受訴裁判所の構成を定めた一人制裁判所に関する裁判所法第二六条に違反し、したがつて、又、裁判所の裁判を受ける権利を定めた憲法第三二条、裁判官が良心に従い独立して る点において同条項に違反するとともに、受訴裁判所の構成を定めた一人制裁判所に関する裁判所法第二六条に違反し、したがつて、又、裁判所の裁判を受ける権利を定めた憲法第三二条、裁判官が良心に従い独立して裁判をすべきことを定めた同法第七六条、公平の裁判所を保障する同法第三七条に違反し、ひいては刑事訴訟法第四八条、刑事訴訟規則第四四条第一項第四号に自ら反するものであり、又、参与判事補には事件につき意見を述べさせることができるけれども、これは、予断偏見を裁判所にいだかしめない格別の配慮をした刑事訴訟法第二五六条、第二八〇条、第二九六条、第三〇二条等の規定の精神に違反するのみならず、公平な裁判所を構成する以外の者が、事件につき法律上意見を述べるがごときは、たとえそれが拘束力のないものであつても、同法の認めざるところであり、受訴裁判所に予断又は偏見をいだかしめる危険を否定しえないから、参与判事補を公判に立ち会わせた点において、原審の訴訟手続には、判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の違反がある、というのである。 <要旨>そこで、記録を検討すると、原審は、本件の審理に際し、昭和四九年六月一三日判事補Gを参与させ</要旨>る旨の決定をして、その第一回公判期日に同判事補を立ち会わせ、その後の同年八月三一日右決定を取り消し、同年一〇月一日判事補Fを参与させる旨の決定をして、その第五回及び第六回各公判期日に同判事補をそれぞれ立ち会わせ、その各期日の公判調書に右各判事補がそれぞれ立ち会つた旨記載されていることが認められる。 ところで、右のように判事補(以下「参与判事補」という)を各公判期日に立ち会わせたのは、所論指摘のように「地方裁判所における審理に判事補の参与を認める規則」(昭和四七年最高裁判所規則第八号。以下単に「規則」という)第一条、第二条第一項に基づく という)を各公判期日に立ち会わせたのは、所論指摘のように「地方裁判所における審理に判事補の参与を認める規則」(昭和四七年最高裁判所規則第八号。以下単に「規則」という)第一条、第二条第一項に基づくものであつて、それは、参与判事補の事件処理能力の修得向上を図り、あわせて一人制の裁判所の審理の充実強化を目的として、当該事件の記録及び証拠物の調査、主張と証拠の整理、検討、判例、学説の調査等事件処理上必要な事項に参加せしめようとするものであり、その審理への立ち会いは、単に参与判事補をして、記録、証拠物をとおして間接に事件の審理に参加せしめるにとどまらず、直接裁判所の審理にあずかり参加せしめようとするものであるけれども、所論も理解するように、もとより、それは、受訴裁判所の構成員たる裁判官として参加するものではなく、参与判事補は、その参加した事件に関し、その審理に立ち会い、記録、証拠物を調査して得た成果につき、裁判所の求めに応じて意見を述べ得るにとどまり、参与した事件について審判する独自の権限を有するものではないから、参与判事補を受訴裁判所の裁判官と同視する所論は失当であり、参与判事補を審理に立ち会わせても、受訴裁判所の構成、ことにそれが一人制の裁判所であることにはなんら変りがないのであるから、もとより裁判所法第二六条第一項に違反するものではなく、したがつて、又、被告人の裁判所において裁判を受ける権利を奪うものでもないから、憲法第三二条に抵触するものでないことは多言を要しないところである。又、刑事訴訟法第二八二条第二項は「公判廷は、裁判官及び裁判所書記官が列席し、且つ権察官が出席してこれを開く」と規定しているけれども、右は公判開廷の要件を定めたものに過ぎず、公判廷に列席した受訴裁判所の裁判官及び裁判所書記官並びに出席した検察官以外の者が公判の審理 が列席し、且つ権察官が出席してこれを開く」と規定しているけれども、右は公判開廷の要件を定めたものに過ぎず、公判廷に列席した受訴裁判所の裁判官及び裁判所書記官並びに出席した検察官以外の者が公判の審理に立ち会うことを禁ずる趣旨のものと解することはできないから、公判の審理に必要、有益であることなど合理的な理由がある限り、右以外の者を公判審理に立ち会わせることが許されるものと解するのを相当とする。このことは、例えば、日本國とアメリカ合衆國との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本國における合衆國軍隊の地位に関する協定(昭和三五年条約第七号)第一七条第九項により、アメリカ合衆國軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族が、わが國の裁判権に基づいて公訴を提起された場合には、いつでも、自己の裁判に合衆國の政府の代表者を立ち会わせる権利を認められていること、民事訴訟法第三五八条の四により、簡易裁判所は、司法委員をして審理に立ち会わしめ、事件につきその意見を徴することを得るものとされていることに照らしても明らかであるといわなければならない。そして、参与判事補の立ち会いは、右のような参与判事補制度の目的を達するため必要、有益な手段であつて合理性の認められるものであり、参与判事補の制度は、右のような制度目的、参与判事補の権限からいつて、裁判所の構成に変更を加え、あるいはこれに影響を与えようとするものではなく、あくまでも訴訟手続に関するものであつて、最高裁判所が審法第七七条の規定に基づいて定めた規則によるものであり、合憲、適法のものであることは明らかであるから、右規則に基づく参与判事補の立ち会いをもつて刑事訴訟法第二八二条第二項に違反するものということはできないというべきである。もつとも、参与判事補を審理に立ち会わせた場合には、その は明らかであるから、右規則に基づく参与判事補の立ち会いをもつて刑事訴訟法第二八二条第二項に違反するものということはできないというべきである。もつとも、参与判事補を審理に立ち会わせた場合には、その旨公判調書に記載することになつているが(規則第三条参照)、もともと公判調書は、公判期日における審判に関する重要な事項を記載して、訴訟手続の安定、明確性を期することになつているので、そのため、参与判事補が「裁判官」として立ち会うものでない旨を公判調書に記載して手続の公正を期することは審判に関する重要な事項であるから、参与判事補を立ち会わせた旨公判調書に記載したことをもつて、所論指摘の刑事訴訟法第四八条、刑事訴訟規則第四四条第一項第四号になんら抵触するものではない。 又、参与判事補は、参与させた受訴裁判所の裁判官の求めにより、参与した事件について意見を述べることになつているが(規則第二条第二項参照)、右意見は、所論指摘の鑑定人の鑑定や証人の証言などのように裁判のために供せられる訴訟資料と異なり、裁判官が事件処理について参考にする判例、学説や、あるいは少年事件の処理にあたつて聴取する家庭裁判所調査官の意見(少年法第八条第二項、少年審判規則第一三条、第三〇条等参照)などと同じく、参与した事件について、審理に立ち会い、記録、証拠物を調査し、あるいは判例、学説を調査するなどして得られた事実上、法律上の意見であつて、裁判官の心証形成に資するものではなく、裁判官の判断を形成するうえでの参考に資するものであり、その意見は、受訴裁判所の裁判官をなんら拘束するものではなく、事件の審判は、あくまでも参与させた裁判官一人が、公平(憲法第三七条第一項)、かつ、良心に従い独立して行ない、憲法及び法律にのみ拘束される(同法第七六条第三項)ものであるから、参与判事補に意見を 、事件の審判は、あくまでも参与させた裁判官一人が、公平(憲法第三七条第一項)、かつ、良心に従い独立して行ない、憲法及び法律にのみ拘束される(同法第七六条第三項)ものであるから、参与判事補に意見を述べさせたからといつて、裁判官をしてより適正な判断を可能ならしめる余地があり得るということはできても、所論のような偏見を与える危険があるということのできないことは明らかであり、刑事訴訟法上右のような意見聴取を禁止しているものとは到底認めることはできず、所論の憲法の各条規に違反するものでもない。なお、所論は、刑事訴訟法第二五六条等の規定を引用し、予断排除の原則に触れる旨主張するけれども、予断排除の法則は、裁判所に証拠調べを経ない事実を知らしめないようにして事件につき予断をいだくことを排除しようとするものであるところ、参与判事補は、審理に立会い、記録、証拠物を調査して、その意見を述べるものであるから、右の予断排除の法則に抵触するものでないことは明らかである。それ故、原審の訴訟手続には所論のような法令違反は認められず、論旨は理由がない。所論は、独自の見解に基づき参与判事補の立ち会いを非難するものであつて、到底採用の限りでない。 四、 控訴趣意第三点(量刑不当の主張)について所論は、原判決が被告人を懲役一年二月の実刑に処したのは、原判示第一の所為につき過剰防衛による減軽を認めなかつたことを含めて、不当に重い、というのである。 そこで、記録を調査し、当審における事実の取調べの結果をあわせ検討すると、被告人は、これまでに、原判示の累犯前科のほか、少年時代に窃盗等の非行で中等少年院に送致された前歴もあるのに、またも、本件各犯行をおかしたものであつて、その犯行の動機、経緯、態様、結果、罪質等を考慮し、ことに、原判示第一の所為が過剰防衛にあたらないことは 盗等の非行で中等少年院に送致された前歴もあるのに、またも、本件各犯行をおかしたものであつて、その犯行の動機、経緯、態様、結果、罪質等を考慮し、ことに、原判示第一の所為が過剰防衛にあたらないことはさきに述べたとおりで減軽の事由はないけれども、しかし、被害者らにおいても、いずれも飲酒のうえかなり酔つていて、けんかを制止しようとした被告人に従わず、その後においても多くのちよう発行為をし、被害者Bも反撃行為に出てそのため被告人の顔面もはれあがつたと思われるのに、Bがこのことで処罰された形跡はなく、被害者らにも多分に責められるべき点がなかつたわけではないこと、被告人の原判示第二の所為は、帰途たまたま「E」にいた被害者らを発見して突発的に犯行に及んだものであつて、当初からの計画的なものではないことなどをあわせ考えても、被告人の本件刑責は軽視することを許されない。被告人が反省悔悟し、更生の意欲にもえていること、その他家庭の状況など所論指摘の被告人に有利なすべての情状をしんしやくしても、被告人が本件につき懲役一年二月の実刑に処せられるのはやむをえないというべきであつて、原判決の量刑が不当に重いものとは認められない。論旨は理由がない。 よつて、刑事訴訟法第三九六条により本件控訴を棄却し、当審における訴訟費用は、刑事訴訟法第一八一条第一項本文により全部被告人に負担させることとして、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官瀬下貞吉裁判官金子仙太郎裁判官小林眞夫)
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