【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 当審における訴訟費用の全部は、被告人の負担とする。 理 由 木件控訴の趣意は、弁護人フランクリン・E・N・ウォーレンが
主文 本件控訴を棄却する。 当審における訴訟費用の全部は、被告人の負担とする。 理由 木件控訴の趣意は、弁護人フランクリン・E・N・ウォーレンが差し出した控訴趣意書に記載してあるとおりである、これに対する答弁は東京高等検察庁検事鈴木寿一が差し出した答弁書に記載してあるとおりであるから、いずれもこれを引用し、これに対して当裁判所は、次のように判断をする。 論旨第一点について。 記録によれば、起訴状記載の公訴事実の要旨は、アメリカ合衆国軍隊の構成員、即ち在日米空軍横田基地第四一航空師団本部中隊所属の空軍二等航空兵(現在は空軍三等航空兵)たる被告人が昭和三九年三月一日午前三時すぎ普通乗用自動車に「A(当時二六才)、B(当二一才)外二名を同乗させ」、運転中に業務上の注意義務を怠つたため運転を誤り、神奈川県高座郡a町bc番地附近で自車を約一一メートル下方のCグラウンドに転落させ、Aを頭蓋骨骨折、頭蓋底骨折、脳挫傷により死亡させ、Bに対し全治まで約三ケ月を要する左大腿骨骨折、脳震盪症、頭部、顔面挫創を負わぜたものであるというにあるところ、原審第三回公判において検察官より右公訴事実の末尾に「更に同乗のDに対し全治まで約三週間を要する右中手第五骨骨折、左大腿筋肉挫傷を、同乗のEに対し全治約五ケ月間を要する右大腿骨単純骨析、左前膊(橈骨)複雑骨折等の各傷害を負わせた」との訴因変更(追加)請求があり、裁判所は、これを許可して審理した上、昭和四〇年六月二二日、被告人が業務上の注意義務に違反して運転を誤り普通乗用自動車に同乗していた四名、即ちA、B、D及びEに対し業務上過失致死傷罪を犯したとの有罪言渡をしたことが明らかである。 所論は、右被害者のD及びEは合衆国軍隊の構成員(前者は在日米空軍横田基地に勤 動車に同乗していた四名、即ちA、B、D及びEに対し業務上過失致死傷罪を犯したとの有罪言渡をしたことが明らかである。 所論は、右被害者のD及びEは合衆国軍隊の構成員(前者は在日米空軍横田基地に勤務する空軍二等兵、後者は同空軍一等兵)であり、被告人が右両名に対し加えた業務上過失傷害の罪は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」一七条3の(a)(i)後段に定める「もつぱら合衆国軍隊の他の構成員の身体若しくは財産のみに対する罪」にあたるから右一七条3の(a)により合衆国の軍当局が本件被告人のこの犯罪につき第一次の裁判権をもつものであつて、日本国の当局が裁判権を行使するためには同条3の(C)により第一次の裁判権をもつ合衆国の軍当局において裁判権を行使しない旨の決定の通告をしなければならないところ、この通告はなかつたのであるから、原審が前記訴因の変更(追加)を許可して裁判権を行使したのは、前記協定に違反し、ひいて日本国憲法九八条二項に違反すると主張するのである。 よつて案ずるに、右協定一七条3の(a)(i)の規定によれば、合衆国の軍当局が合衆国軍隊の構成員に対し、その合衆国軍隊の他の構成員の身体若しくは財産に対する犯罪行為について裁判権を行使する第一次の権利を有するのは、もつぱら合衆国軍隊の他の構成員の身体若しくは財産のみに対する犯罪である場合に限られるので<要旨>あるから、当該合衆国軍隊の構成員の犯罪行為が合衆国軍隊の他の構成員の身体若しくは財産に対する犯罪に</要旨>あたると同時に右規定の条項に定められた以外の者の身体若しくは財産に対する罪にもあたる場合には、右犯罪行為は、これを「もつぱら合衆国軍隊の他の構成員の身体若しくは財産のみに対する罪」に に</要旨>あたると同時に右規定の条項に定められた以外の者の身体若しくは財産に対する罪にもあたる場合には、右犯罪行為は、これを「もつぱら合衆国軍隊の他の構成員の身体若しくは財産のみに対する罪」に該当するものとはいえないから、従つて右一七条3の(a)(i)の規定により合衆国の軍当局が裁判権を行使する第一次の権利を有するものではないというの外なく、かかる犯罪行為については、これを同条3の(b)所定の「その他の罪」に含まれるものとして、日本国の当局が裁判権を行使する第一次の権利を有するものといわなければならない。本件においては、原判決の判示するとおり、被告人の業務上過失の行為により一名死亡、三名負傷の結果を生じたものであり、右被害者のうち、負傷者D及び同Eの両名は合衆国軍隊の構成員であるが、死亡者A及び負傷者Bの両名は合衆国軍隊の構成員、軍属又はそれらの者の家族でないことは記録上認められるから、被告人の右被害者四名に対する本件業務上過失致死傷の犯罪行為については、これを前記協定一七条の3の(b)の規定にいわゆる「その他の罪」として日本国の裁判所が被告人に対する裁判権を行使する第一次の権利を有するものであることは前説示に照らし明らかである。従つて原審が前記のように検察官からの訴因の変更(追加)の請求を許可して審判を行つたことは適法であつて、所論のように前記協定一七条3の(a)(i)に違反するものではない。右協定一七条3の(a)(i)違反を前提とし原判決に日本国憲法九八条二項違反があるとする所論は、その前提を欠き採用し難く、論旨は理由がない。 (その余の判決理由は省略する)(裁判長判事白河六郎判事河本文夫判事藤野英一) 余の判決理由は省略する)(裁判長判事白河六郎判事河本文夫判事藤野英一)
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