平成29(ワ)18277 謝罪広告等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成31年3月5日 東京地方裁判所
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判決文本文32,389 文字)

平成31年3月5日判決言渡し同日原本交付裁判所書記官平成29年(ワ)第18277号謝罪広告等請求事件口頭弁論の終結の日平成30年12月10日判決 主文 1 被告は,原告に対し,165万円及びこれに対する平成29年4月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを8分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は,被告が運営するウェブサイト「FRIDAYデジタル」(https://friday.kodansha.ne.jp/sn/u)に,別紙1第1記載の謝罪文を同第2 記載の条件で,3箇月間掲載せよ。 2 被告は,被告が発行する週刊誌「FRIDAY」に,別紙1第1記載の謝罪文を同第3記載の条件で,1回掲載せよ。 3 被告は,原告に対し,1100万円及びこれに対する平成29年4月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,茨城県守谷市の市長である原告が,被告が発行する週刊誌「FRIDAY」(以下「本件雑誌」という。)の平成29年4月28日号に掲載された「茨城守谷市長の『黒すぎる市政』に地方自治法違反疑惑」と題する記事(別紙2。 以下「本件雑誌記事」という。)及び被告の運営するインターネット上のウェブサ イト「FRIDAYデジタル」(以下「本件ウェブサイト」という。)に同月14 日に掲載された同旨の内容の記事(以下「本件ネット記事」とい )及び被告の運営するインターネット上のウェブサ イト「FRIDAYデジタル」(以下「本件ウェブサイト」という。)に同月14 日に掲載された同旨の内容の記事(以下「本件ネット記事」といい,本件雑誌記事と併せて以下「本件各記事」という。)によって名誉を毀損された旨主張し,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として,1100万円(慰謝料1000万円及び弁護士費用相当額100万円の合計額)及び同額に対する不法行為の日である平成29年4月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅 延損害金の支払を求めるとともに,民法723条所定の名誉を回復するのに適当な処分として,前記第1の1及び2のとおりの各謝罪広告を掲載することを求める事案である。 1 前提事実(以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。) ⑴ 当事者等ア原告は,平成12年3月に初当選してから16年以上にわたって守谷市(ただし,平成14年2月1日以前は守谷町)の市議会議員を務め,平成28年12月6日に守谷市長に就任した者である。原告は,昭和53年頃から平成12年1月頃まで,株式会社D工業(以下「D工業」という。)の代表取 締役として登記されていた。 (甲45,乙6の1及び2)イ D工業は,土木建築の設計施工等を目的とする株式会社である。D工業の登記上,平成26年12月1日にFが,平成28年8月1日にGがいずれもその代表取締役に就任している。D工業は,守谷市における最大の土木建築 業者であり,平成30年4月1日時点における従業員数は26名(F及びGを含まない。)である。 (甲2,57)ウ被告は,雑誌及び書籍の出版等を目的とする株式会社であ 土木建築 業者であり,平成30年4月1日時点における従業員数は26名(F及びGを含まない。)である。 (甲2,57)ウ被告は,雑誌及び書籍の出版等を目的とする株式会社であり,週刊誌である本件雑誌を発行するほか,本件ウェブサイトを運営している。本件雑誌は, 平成29年1月から同年3月の間の発行部数が約25万部であるほか,本件 ウェブサイトの訪問者数は,同年4月の1箇月間で延べ約31万6000人であった。 (甲3,4,18,19)⑵ 本件各記事の掲載被告は,平成29年4月14日,本件雑誌の平成29年4月28日号を発売 した。同号は,別紙2のとおりの「茨城守谷市長の『黒すぎる市政』に地方自治法違反疑惑」と題する本件雑誌記事を掲載していた。また,被告は,同月14日,その運営する本件ウェブサイトに,本件雑誌記事と同旨の内容の「茨城守谷市長の『黒すぎる市政』に地方自治法違反疑惑」と題する本件ウェブ記事を掲載した。 被告は,平成29年6月30日,本件ウェブサイト上に掲載していた本件ウェブ記事を削除した。 (甲5,6) 2 関連法令⑴ 地方自治法 92条の2 普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員,取締役,執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者,支配人及び清算人たることができない。 142条普通地方公共団体の長は,当該普通地方公共団体に対し請負をする 者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人(当該普通地方公共団体が出資している法人で政令で定めるものを除く。)の無限責任社員,取締役,執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべ する 者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人(当該普通地方公共団体が出資している法人で政令で定めるものを除く。)の無限責任社員,取締役,執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者,支配人及び清算人たることができない。 ⑵ 守谷市政治倫理条例 (目的) 1条この条例は,市政が市民の厳粛な信託によるものであることを認識し,その担い手である市長,副市長,教育長(以下「市長等」という。)が市民全体の奉仕者として,その人格と倫理の向上に努め,いやしくも自己の地位による影響力を不正に行使することによって,いかなる報酬及び金品(以下「報酬等」という。)も授受しない事項を定め,もって市政に対する市民の信託に 応え,併せて市民も市政に対する正しい認識と自覚のもとに,清浄で民主的な市政の発展に寄与することを目的とする。 (市長等及び議員の責務並びに政治倫理基準)2条市長等及び議員は,市政に携わる責務を深く自覚し,次に掲げる政治倫理基準を遵守しなければならない。 一,二 (略)三市並びに市が関係する公共工事,業務委託,物品納入及び使用資材の購入(以下「工事等」という。)に関して特定の業者の推薦又は紹介をするなど,有利な取り計らいをしないこと。 四,五 (略) 2 (略)(契約に関する遵守事項)10条市長等若しくは議員が役員をしている企業,市長等若しくは議員が実質的に経営に携わっている企業又は市長等若しくは議員が年額240万円以上の収入を得ている企業は,法第92条の2,第142条,第166条及 び第180条の5の趣旨を尊重し,第2条第1項第3号に規定する工事等の契約(1回の契約につき20万円未満の契約を除く。)を辞退しなければならない。ただし,災 条の2,第142条,第166条及 び第180条の5の趣旨を尊重し,第2条第1項第3号に規定する工事等の契約(1回の契約につき20万円未満の契約を除く。)を辞退しなければならない。ただし,災害等で緊急を要するとき又は工事等の契約を辞退することにより市の行政執行に支障がある場合は,この限りでない。 2 市長等及び議員は,前項の規定により企業が契約を辞退するときは,市民 に疑惑を持たれないように責任をもって企業の辞退届を提出するものとす る。 3~5 (略)⑶ 守谷市政治倫理条例施行規則(実質的に経営に携わっている企業)7条条例第10条第1項に規定する「市長等若しくは議員が実質的に経営に 携わっている企業」とは,次に掲げるとおりとする。 一市長等又は議員が,資本金その他これらに準ずるものの3分の1以上を出資している企業二市長等又は議員が,その経営方針に関与している企業 3 争点及び当事者の主張 ⑴ 本件各記事により摘示された事実,社会的評価の低下の有無について(原告の主張)本件各記事のうち,別表の「記事の内容」欄に記載の各記述(以下,各記述をそれぞれの番号に従い「本件記述①」などという。)は,当該欄に対応する「原告の主張」の「摘示事実」欄に記載の各事実を摘示するものであって,こ れらの記述は,同表の「原告の主張」の「社会的評価の低下」欄にそれぞれ記載のとおり,原告の社会的評価を低下させるものである。同表の「被告の主張」欄に記載の被告の主張に対する反論は,当該欄に対応する「原告の主張」の「被告の主張に対する反論」欄にそれぞれ記載のとおりである。 仮に,本件各記事の各記述を個別に捉えた場合に,原告の名誉を毀損すると は評価し難いとしても,一般人 該欄に対応する「原告の主張」の「被告の主張に対する反論」欄にそれぞれ記載のとおりである。 仮に,本件各記事の各記述を個別に捉えた場合に,原告の名誉を毀損すると は評価し難いとしても,一般人の普通の注意と読み方に照らし,本件各記事を全体としてみれば,本件各記事は,間接的ないしえん曲に,原告が,① 地方自治法及び② 守谷市政治倫理条例にそれぞれ違反するとともに,③ 官製談合を行っており,かつ,④ 原告の市政運営は「真っ黒」である旨の各事実を摘示するものであって,これらにより原告の社会的評価を低下させることは明 らかである。 (被告の主張)ア別表の「被告の主張」欄にそれぞれ記載のとおり,本件各記事中の各記述は,原告の主張する各事実を摘示するものではない。また,本件各記事が,全体として,原告の主張する前記(原告の主張)①から④までの各事実を摘示するものであるとの主張は争う。 ある行為が法律に違反するのではないかという報道は,一般に,告発する報道機関の意見の開陳と受け止められているものである。報道機関が報じた疑惑を全て事実として捉える読者などいないのであり,疑惑の対象が最終的に証明可能であるというだけで,報道が全て事実の摘示であるとされることはあってはならない。 イ本件各記事は,以下の事実ないし疑問を提示することにより,「守谷市の市長である原告の経営するオーナー企業が,守谷市の公共事業の入札で有利な落札をしているのではないか」という疑惑を指摘した意見ないし論評である。 ㋐原告は,市議会議長であった平成24年から平成28年まで,D工業の オーナー経営者であった。 ㋑上記㋐の当時,D工業は守谷市から多数の公共事業を受注していた。 ㋒守谷市の公共事業の落札率は, あった平成24年から平成28年まで,D工業の オーナー経営者であった。 ㋑上記㋐の当時,D工業は守谷市から多数の公共事業を受注していた。 ㋒守谷市の公共事業の落札率は,その多くが95パーセントという異常な高さである。 ㋓原告が市長に就任した以降も,D工業は守谷市の公共事業を受注してい る。 ㋔上記㋓の公共事業のうち,1件は落札率が100パーセントである。 ㋕原告が市長に就任した後もD工業の株式を手放していないのであれば,法律に違反する。 ウ前記イで挙げた事実ないし疑問のうち,原告がかつてD工業のオーナー経 営者であった事実や,D工業が守谷市における多数の公共事業を落札して受 注している事実,その落札率が高率である事実は客観的事実である。 被告が原告に対して批判的見識を提示したものがあるとすれば,第一に,「原告が現在もなおD工業のオーナー経営者ではないか」,第二に,「落札率からみて,守谷市の入札はゆがんだものではないか」という疑惑である。本件各記事が原告の社会的評価を低下させるものであるとするならば,これら の批判的言論によるものである。 ⑵ 違法性阻却事由の有無(被告の主張)ア公共性,公益目的本件各記事の内容は公共的関心事であり,その掲載目的は,守谷市におけ る公共事業の入札を監視し問題提起するという専ら公益を図るものであった。 イ各記述に係る原告の主張に対する反論別表の「被告の主張」欄に記載のとおり,原告が指摘する各記述について,当該記述内容は真実であるし,論評として相当である。 ウ違法性阻却に係る判断枠組み前記⑴(被告の主張)ウで述べたことからすれば,本件では,「原告が現在もなおD 各記述について,当該記述内容は真実であるし,論評として相当である。 ウ違法性阻却に係る判断枠組み前記⑴(被告の主張)ウで述べたことからすれば,本件では,「原告が現在もなおD工業のオーナー経営者ではないか」,「落札率からみて,守谷市の入札はゆがんだものではないか」という二つの批判的言論が正当なものであるか否か,言論としての許容性があるかどうかが争点である。 そして,公選公職人は相応の批判にさらされるべき立場にあり,有権者に対して必要な説明義務を負うのであって,公選公職人に対して疑惑の提示がされ,それが公選公職人において説明すべき事柄であるならば,その説明が十分なものであるかということが問われなければならない。本件各記事の対象とする事項は,公益に大きくかかわる重要な問題であり,原告 の説明義務が全うされているか否か,批判としての存在価値と重要性が考 慮されるべきである。 ところで,意見や論評によって名誉の毀損がされる場合の不法行為責任は,基礎となる事実が真実であるか,あるいは真実と信じるべき相当な事情が存在する場合には,否定されるのであって,基礎となる事実が意見ないし論評の論理的根拠になり得るものであれば,当該基礎となる事実から 当該意見ないし論評が合理的な推論を経て述べられたものであるかどうかは問われない。 二つの疑惑の提示は,意見ないし論評であるが,仮に事実の摘示として捉えられる点があったとしても,違法性を有するものではない。具体的には,以下のとおりである。 「原告が現在もなおD工業のオーナー経営者ではないか」との疑惑についてD工業は,守谷市内で最も有力な土建業者であり,守谷市で最高ランクの土建業者に指定されている。 D工業は,原告の祖父が創業し,原 もなおD工業のオーナー経営者ではないか」との疑惑についてD工業は,守谷市内で最も有力な土建業者であり,守谷市で最高ランクの土建業者に指定されている。 D工業は,原告の祖父が創業し,原告の父が経営を承継した同族企業で あって,原告の父は,守谷町議会議員となった際,入札時の批判をかわすために,D工業の代表取締役の名義を原告の母に変更し,その名義を使いながら実質的なオーナーとしてD工業を経営していた。原告は,昭和53年にD工業の経営を引き継いで代表取締役となり,その後,平成12年まで22年間にわたりD工業のオーナー経営者であった。原告は,守谷町の 町議会議員となった際,批判を避けるために,D工業の代表取締役を辞任したものの,自身の部下をD工業の社長に据えて,その後もD工業の経営を行っていた。平成26年12月にD工業の代表取締役となったFも,従前の代表取締役と同様に名目だけの代表者であった。 被告は,以上のような取材事実を基礎として,D工業はD家の家業であ り,当主が公職に就く際にダミーを立てる慣例になっており,原告はこれ に倣い現在もいまだD工業の実質的なオーナー経営者であると判断し,「原告は現在もなおD工業のオーナー経営者ではないか」とする批判的言論を掲げたものである。 原告は,本件訴訟において,「D工業の経営権を手放し,経営者ではなくなった事実」を立証しようとしたが,原告の提出した証拠は不自然であっ てそのような事実は立証できておらず,とりわけ,キーパーソンであるFの証言はおかしな点が複数あるなど到底信用性がない。また,原告は,被告による取材において,FにD工業の株式を200万円で譲ったと説明したが,その説明は虚偽であり,少なくともFの証言と整合性が取れないものである。取材に虚偽 あるなど到底信用性がない。また,原告は,被告による取材において,FにD工業の株式を200万円で譲ったと説明したが,その説明は虚偽であり,少なくともFの証言と整合性が取れないものである。取材に虚偽を述べてその取材結果である本件各記事を攻撃する ことは,公選公職人にあるまじき行動である。 「落札率からみて,守谷市の入札はゆがんだものではないか」という疑惑について守谷市における公共事業では,落札率が異常に高い事例が多数存在するほか,入札者がD工業だけの工事もあった。被告は,全国市民オンブズマ ン連絡会議からの取材及び受領した資料より,落札率が入札制度において競争原理が正当に機能しているかどうかを判断する指標になっている事実を確認した。さらに,被告は,公共事業論の専門家であるH法政大学名誉教授に対する取材において,落札率が99パーセントというのは官製談合でなければあり得ないという指摘を受けた。そして,守谷市において高 率での落札が続く要因の一つは,予定入札価格の事前公表制度であるが,同制度が入札における公正な競争の幅を狭めているのは公知の事実であり,国土交通省においてもこの問題を指摘している。しかし,守谷市は,予定入札価格の事前公表制を漫然と継続し,原告は,その病理現象を放置して利益を享受してきたのであり,予定入札価格の事前公表により,高額 な落札価格による落札を可能とし,保証してきたのである。 「守谷市における入札制度がゆがんだものではないか」という疑惑の提示は,その意見ないし論評の基礎となった守谷市の入札における落札率の高さ等の基礎となる事実が提示されており,この基礎となる事実は真実であるか真実と信じるべき相当の理由が認められる。そして,これらの基礎となる事実に基づく上記の論評は正当 守谷市の入札における落札率の高さ等の基礎となる事実が提示されており,この基礎となる事実は真実であるか真実と信じるべき相当の理由が認められる。そして,これらの基礎となる事実に基づく上記の論評は正当なものである。 エよって,原告とD工業との特殊な関係及び守谷市の入札事情を基に,疑惑を指摘し解明を訴えた本件各記事に違法性は認められない。 (原告の主張)ア公共性,公益目的被告の主張は争う。そもそも原告には被告が批判するような事実がないの であって,被告において証拠もなく客観的事実に反する事実を摘示すること自体極めて悪質であり,被告には公益を図る目的などなかった。 イ違法性阻却事由の有無原告の主張する摘示事実に係る主張別表の「原告の主張」の「摘示事実が真実に反すること」欄にそれぞれ 記載のとおり,本件各記事が摘示する各事実はいずれも真実ではない。同表の「被告の主張」欄に記載の被告の各主張に対する反論は,当該欄に対応する「原告の主張」の「被告の主張に対する反論」欄にそれぞれ記載のとおりである。 また,本件各記事で被告が摘示した前記⑴(原告の主張)①から④まで の各事実が真実に反することは,以下のとおり,ごく簡単な調査で確認可能である。さらに,本件各記事の掲載前,原告及び守谷市の副市長であったIは,被告の記者からの取材に応じ,以下の各事実が真実に反する旨を回答しているのであって,被告は,摘示事実が真実に反することを認識しながらあえて本件各記事を掲載したものであり,極めて悪質である。 a ① 地方自治法違反の事実がないこと 原告は,守谷町議会議員選挙に出馬するに当たり,平成12年1月24日,D工業の代表取締役を辞任したのであり 極めて悪質である。 a ① 地方自治法違反の事実がないこと 原告は,守谷町議会議員選挙に出馬するに当たり,平成12年1月24日,D工業の代表取締役を辞任したのであり,その後,原告がD工業の役員等になった事実はない。そのため,原告に地方自治法違反の事実がないことは,原告の守谷市議会議員又は守谷市長の在職期間と原告がD工業において役員として在籍した期間とが重なっていないことを調 査すれば容易に判明した。 b ② 守谷市政治倫理条例違反の事実がないこと原告は,平成12年3月に守谷町議会議員となった後,D工業の役員を務めたこともないし,経営に関与したこともない。また,原告に守谷市政治倫理条例違反の事実がないことは,同条例10条及びこれを受け た同条例施行規則7条並びに原告の株式の保有状況を調査すれば容易に判明した。 原告は,平成12年2月13日の守谷町議会議員選挙に出馬する際,D工業の株式を一切保有していなかった。原告が平成20年に同株式を2万株取得した経緯は,原告の父が高齢になったことから,相続税対策 のために生前贈与されたというものであり,原告は,D工業の経営や意思決定に関与していない。さらに,原告は,平成22年5月の原告の父の死去によってD工業の株式を相続により取得する際にも,守谷市政治倫理条例に違反しないようにD工業の全株式の33.33パーセントまでしか保有しなかった。そして,原告は,同条例に違反していなかった ものの,念のためD工業との形式的な関係も切ることとし,平成28年に親族の保有分も含めた全株式をFに譲渡した。 以上のとおり,原告が市長及び守谷市議会議員であった期間内において,原告がD工業の経営に関与していた事実は存在しない。 c ③ 官製談合の事実がな に親族の保有分も含めた全株式をFに譲渡した。 以上のとおり,原告が市長及び守谷市議会議員であった期間内において,原告がD工業の経営に関与していた事実は存在しない。 c ③ 官製談合の事実がないこと 原告が官製談合を行った事実は存在せず,前記bのとおり,原告は, 平成12年3月に守谷町議会議員となった後,D工業の経営に関与したことはなく,D工業による公共事業の受注に関与したことも一切ない。 また,守谷市は条件付一般競争入札により公共事業を発注しており,特定の企業を優遇して不当に指名することはできない仕組みとなっている。さらに,守谷市は予定価格を事前に公表している上,事業者に充分 に利益が出る水準よりも低く予定価格を設定しており,事業者が予定価格から大幅に発注価格を下げて入札することが難しい状況となっているため,落札率が高いことを根拠に官製談合があったと考えることはできない。 d ④ 原告による市政運営が「真っ黒」であるとの事実がないこと 前記aからcまでの主張のとおり,原告の市政運営が「真っ黒」であるとの事実は,真実に反する。 被告の主張に対する反論被告は,本件各記事について,「原告が現在もなおD工業のオーナー経営者ではないか」,「落札率からみて,守谷市の入札はゆがんだものではな いか」という疑問ないし事実を示したものであるなどとして,あたかも本件各記事が許されるべき批判的言論の一種であるかのように主張する。しかし,本件各記事の本質は,被告が質的にも量的にも十分な裏付け取材もせずに,個人的な憶測の下で,前記⑴(原告の主張)①から④までの各事実を摘示したことにある。 被告は,意見・論評について名誉毀損が問題となる場合には,基礎となる事実から意見・論評 け取材もせずに,個人的な憶測の下で,前記⑴(原告の主張)①から④までの各事実を摘示したことにある。 被告は,意見・論評について名誉毀損が問題となる場合には,基礎となる事実から意見・論評が推論されることの相当性は求められない旨主張するが,基礎となる事実から合理的に推認できない意見・論評の違法性は阻却されない。また,本件各記事は,何らの根拠もなく,原告について「真っ黒」,「やりたい放題の地方の殿様」,「疑惑」などとでっち上げて人格攻 撃に及ぶものであり,原告の受忍限度を超えるものである。 ⑶ 損害額(原告の主張)本件雑誌の発行部数や本件ウェブサイトの閲覧者数が極めて多いことに加え,本件各記事の内容が原告の政敵により政治利用され,守谷市を中心に全国的に拡散されている状況にあることからすれば,原告が被った精神的苦痛の慰 謝料は1000万円を下らない。 また,被告による本件各記事の掲載により,原告は,弁護士に依頼して法的手続をとることを余儀なくされたため,原告は,弁護士費用として,少なくとも上記慰謝料額の1割に相当する100万円の損害を被っている。 (被告の主張) 争う。 ⑷ 名誉回復措置の要否(原告の主張)本件各記事の摘示事実が全く事実に反し原告をおとしめるものであること,原告が現在守谷市長を務めており,その職責を果たすためには守谷市民を含む 全国民の支持を得ることが重要であることからすれば,本件各記事によっておとしめられた原告の社会的評価を回復することは極めて重要である。そして,原告の名誉を回復するためには金銭による損害賠償を命じるだけでは不十分であることからすれば,被告に対し,その発行ないし運営に係る本件雑誌及び本件ウェブサイトに謝罪広告を掲載 めて重要である。そして,原告の名誉を回復するためには金銭による損害賠償を命じるだけでは不十分であることからすれば,被告に対し,その発行ないし運営に係る本件雑誌及び本件ウェブサイトに謝罪広告を掲載させることが最も適切である。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記第2の1の前提事実(以下,単に「前提事実」という。)に加え,後掲 各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ⑴ 平成12年以前のD工業及び原告の状況D工業は,昭和38年10月2日に原告の祖父であるJが設立し,昭和41年からは原告の父であるKが代表取締役を務め,その経営に携わっていた同族企業であった。 原告は,昭和53年に同志社大学を卒業し,衆議院議員の私設秘書となった が,その頃,Kの意向により,D工業の代表取締役として登記された。原告は,衆議院議員の秘書を務めた後,昭和60年頃から東京都内の不動産会社で開発業務に従事していたが,平成7年頃,家業であるD工業を継ぐために守谷市に戻った。そして,同年以降,原告は,D工業の不動産管理業務に従事するほか,D工業の社長として対外行事に出席するなどしていた。 (甲45,原告)⑵ 平成12年から平成28年までのD工業及び原告の状況原告は,平成12年2月13日の守谷町議会議員選挙に立候補するに当たって,同年1月24日,D工業の代表取締役を辞任した。そして,原告は,上記選挙で初当選し,同年3月1日から,守谷町議会議員となった。原告は,平成 14年2月に守谷町が守谷市となった後も4回にわたって守谷市議会議員選挙に当選し,守谷町又は守谷市の議会議員を合計約16年務めた。 なお,原告がD工業の代表取締役を辞任した後にD 平成 14年2月に守谷町が守谷市となった後も4回にわたって守谷市議会議員選挙に当選し,守谷町又は守谷市の議会議員を合計約16年務めた。 なお,原告がD工業の代表取締役を辞任した後にD工業の代表取締役を務めた者は,L(登記上の在任期間平成12年1月24日から平成13年9月30日まで及び平成15年8月26日から平成16年1月15日まで),M(同平 成16年1月15日から平成17年9月30日まで及び平成21年8月24日から平成26年12月1日まで),N(同平成26年12月1日から平成28年8月1日まで),F(登記上の就任日平成26年12月1日)及びG(同平成28年8月1日)であった。このうち,LはKの姪の配偶者であったが,それ以外の者はいずれも原告の親族に関係した者ではなかった。また,原告は, Gと特段の面識はなかった。 (甲1の1,甲2,7,45,原告)⑶ 平成20年以降のD工業の株式の保有状況平成20年6月の時点では,D工業の発行済株式10万株のうち,原告の父であるKが6万1795株を,原告の母であるOが2万9875株を,原告の妹であるPが7500株をそれぞれ保有していた(K,O及びPの保有株数合 計9万9170株)。Kは,平成20年7月1日,原告及び原告の子であるQに対して各2万株を,原告の妻であるRに対して7500株をそれぞれ贈与した。 同各贈与により,筆頭株主はO(2万9875株)となったが,原告,Q及びRの保有株数合計は,4万7500株となった。そして,Kが平成22年5月23日に死去したことに伴う遺産分割協議により,原告は,Kが保有していた D工業の株式1万4295株のうち1万3330株を相続し,その余の965株はQが保有することとなった。これにより,平成22年9月以降 したことに伴う遺産分割協議により,原告は,Kが保有していた D工業の株式1万4295株のうち1万3330株を相続し,その余の965株はQが保有することとなった。これにより,平成22年9月以降,D工業の発行済株式10万株のうち,原告が3万3330株,原告の母であるOが2万9875株,原告の子であるQが2万0965株,原告の妻であるRが7500株,原告の妹であるPが7500株,原告の叔父であるTが830株をそれ ぞれ保有することとなり,原告は,筆頭株主となった。 また,Kの死去後,原告は,D工業について,土木建築に係る営業会社と資産の管理会社とに分割することとし,平成22年9月1日,資産の管理会社として守谷管財株式会社が設立された。 (甲7,10,45,原告) ⑷ FとD工業の関係Fは,茨城県内で建設業を営む株式会社F工務店の代表取締役を務めていたところ,D工業とFとの間で,平成25年6月21日付けで,「代表取締役委任契約書」と題する書面が作成された。同書面には,契約の目的として,D工業は,FをD工業の代表取締役として就任することを依頼し,Fはこれを受諾す ること,Fの役職を代表取締役兼オーナー代行とすること,D工業はFに対し て報酬として年800万円を支払うことなどが記載されていた。その後,Fは,同年7月1日付けで,D工業の取締役に就任した。 そして,平成25年7月1日付けで,原告の母であるOが,Fに対し,O保有のD工業の株式2万9875株のうち1万株を贈与する内容の贈与証書が作成された。同証書において,原告は立会人として記載され,原告の押印がさ れている。さらに,平成26年1月15日付けで,Oが,Fに対し,O保有のD工業の株式1万9875株のうち1万株を贈与する内容 成された。同証書において,原告は立会人として記載され,原告の押印がさ れている。さらに,平成26年1月15日付けで,Oが,Fに対し,O保有のD工業の株式1万9875株のうち1万株を贈与する内容の贈与証書が作成された。同証書においても,原告は立会人として記載され,原告の押印がされている。D工業が平成26年9月2日に提出した確定申告書(平成25年7月1日から平成26年6月30日までの事業年度に係るもの)には,Fが同社の 株式を2万株保有している旨が記載されている。 税理士法人ゼニックス・コンサルティング(以下「ゼニックス」という。)は,平成26年6月15日,D工業の会計参与に就任した。なお,ゼニックスの設立者であるU税理士は,平成19年からF工務店の顧問税理士となっていた。 ゼニックスは,OからFへの上記1回目の贈与に際して,D工業の株式1株が 107円であるとする財産評価明細書を作成した。 Fは,平成26年12月1日付けで,D工業の代表取締役に就任した。 (甲2,7,51,52の1及び2,甲55,58,61)⑸ 平成28年以降のD工業の株式の保有状況原告は,平成28年11月20日に行われた守谷市長選挙に立候補して当選 し,同年12月6日,守谷市長に就任した。 平成28年11月30日付けで,原告,O,P,Q及びRの5名とFとの間の株式譲渡契約書が作成された。同契約書には,上記5名が保有するD工業の株式合計7万9170株(うち原告の保有分3万3330株)をいずれもFに譲渡すること,これらの株式の合計評価額は744万1980円(1株当たり 94円)であり,Fは,原告がD工業に負っている未収入金債務のうちの同額 を引き受けることで上記株式の譲渡代金を支払ったものとすることな の合計評価額は744万1980円(1株当たり 94円)であり,Fは,原告がD工業に負っている未収入金債務のうちの同額 を引き受けることで上記株式の譲渡代金を支払ったものとすることなどが記載されている。また,同日付けで,D工業の取締役会において上記の株式譲渡を承認したことを内容とする取締役会議事録が作成された。D工業が平成29年8月28日に提出した確定申告書(平成28年7月1日から平成29年6月30日までの事業年度に係るもの)には,Fが同社の株式を9万9170株保 有している旨記載されている。 原告は,平成27年4月から平成30年3月までの間,D工業に対して,未収入金債務の返済として,毎月15万円ずつ送金して支払った。Fは,現在に至るまで,原告から引き受けた上記744万1980円の債務について,D工業に対して返済していない。 (甲1の1,甲53,56,59,60,F,原告)⑹ 平成24年7月以降のD工業の財務状況D工業の平成24年7月1日から平成25年6月30日までの期間に係る決算報告書では,総資産として7億4476万6436円,売上高として16億3454万6926円,売上総利益として6943万1820円,営業損失 として1448万5280円,当期純損失として1628万4087円がそれぞれ計上されている。また,同決算書における売掛金(未収入金)の内訳書には,原告に対する未収入金として3384万4000円が計上されている。 D工業の平成25年7月1日から平成26年6月30日までの期間に係る決算報告書では,総資産として9億7142万2954円,売上高として20 億7845万3507円,売上総利益として3億7130万1678円,営業利益として9703万1168円,当期純利益として5319万 では,総資産として9億7142万2954円,売上高として20 億7845万3507円,売上総利益として3億7130万1678円,営業利益として9703万1168円,当期純利益として5319万8937円がそれぞれ計上されている。また,同決算書における売掛金(未収入金)の内訳書には,原告に対する未収入金として3128万0715円が計上されている。 D工業の平成28年7月1日から平成29年6月30日までの期間に係る 決算報告書では,総資産として5億2395万1206円,売上高として10 億4777万5744円,売上総利益として2億1097万9838円,営業利益として735万9099円,当期純利益として352万9462円がそれぞれ計上されている。同決算書における売掛金(未収入金)の内訳書には,原告に対する未収入金として2549万0546円,Fに対する未収入金として744万1980円がそれぞれ計上されている。 (甲54~56)⑺ 守谷市における公共事業入札に係る事情守谷市は,平成12年頃から,市の発注する公共工事について条件付一般競争入札を採用しており,130万円以上の土木一式工事,建築一式工事等のうち,一般競争入札で執行できると認められる工事については,原則として,一 般競争入札により契約業者を決定している。 守谷市は,入札参加資格者について,その等級区分に応じた金額の入札に参加することができるものとしており,等級区分は,土木工事,建築工事,電気工事,管工事及び水道施設工事の業種別に区分され,土木工事,建築工事及び水道施設工事についてはS,A,B及びC,電気工事についてはA及びB,管 工事についてはA,B及びCの格付けがある。これらの格付けは,個々の事業者につき,茨城県の評価基準 木工事,建築工事及び水道施設工事についてはS,A,B及びC,電気工事についてはA及びB,管 工事についてはA,B及びCの格付けがある。これらの格付けは,個々の事業者につき,茨城県の評価基準(建設業法上の一般業許可と特定建設業許可の取得の別,平均完成工事高,技術職員数,営業年数,資本金の額等を基準に算定した経営規模評価結果の評点)及び守谷市における過去2年の平均工事成績評定の点を加算した合計点に基づき行われることとなっている。 守谷市において入札参加資格を有する者は有資格者名簿に記載され,平成29年の時点において,有資格者名簿に登録されている市内の土木業者は34社,建築業者は8社,電気業者は8社,管業者は20社,水道施設業者は23社ある。D工業は,土木業者及び建築業者としてSランク,管業者及び水道施設業者としてAランクの評価を受けている。なお,守谷市内の有資格名簿の中で, 土木業者及び建築業者としてSランクの評価を受けている会社は,D工業及び D工業の元役員であるTが設立したオオシン株式会社の2社のみであった。 そして,守谷市は,一般競争入札の予定価格をあらかじめ設定し,これを入札の前に公告するものとしている。予定価格は,守谷市の委託を受けた設計会社が,国及び県の発表している建築工事標準価格表や歩掛表等の資料に基づき算定した設計金額(その資料がない場合には民間業者からの相見積りの金額に 基づき算定した設計金額)を基に,守谷市の市長,副市長,総務部長及び事務局2名の合計5名が協議をして,過去の発注実績を踏まえて一定割合(数パーセント)の減額(歩切り)をして決定している。守谷市における入札予定価格の事前公表制は,原告が守谷市長に就任する前の平成12年頃から採用されていた。 (甲11~14, て一定割合(数パーセント)の減額(歩切り)をして決定している。守谷市における入札予定価格の事前公表制は,原告が守谷市長に就任する前の平成12年頃から採用されていた。 (甲11~14,46,原告,I)⑻ D工業の守谷市での入札状況ア全般守谷市が平成24年度に入札に付した公共工事の件数は79件,平均落札率は95.78パーセントであったところ,そのうちD工業が入札に参加し たものは18件,落札したものは6件あり,その落札率は78.24パーセント,95.93パーセント,79.07パーセント,99.55パーセント,98.93パーセント,98.41パーセントであった。 平成25年度の同件数は81件,平均落札率は95.27パーセントであったところ,そのうちD工業が入札に参加したものは9件,落札したものは 2件あり,その落札率は99.20パーセント,99.73パーセントであった。 平成26年度の同件数は66件,平均落札率は92.70パーセントであったところ,そのうちD工業が入札に参加したものは13件,落札したものは4件あり,その落札率は88.46パーセント,99.89パーセント, 99.77パーセント,99.29パーセントであった。 平成27年度の同件数は68件,平均落札率は93.74パーセントであったところ,そのうちD工業が入札に参加したものは9件,落札したものは1件あり,その落札率は84.27パーセントであった。 平成28年度の同件数は67件,平均落札率は92.74パーセントであったところ,そのうちD工業が入札に参加したものは6件,落札したものは 3件(うち原告が市長に就任した同年12月6日以降のものは2件)あり,その落札率は91.77パーセ 92.74パーセントであったところ,そのうちD工業が入札に参加したものは6件,落札したものは 3件(うち原告が市長に就任した同年12月6日以降のものは2件)あり,その落札率は91.77パーセント,90.02パーセント,100.00パーセントであった。 以上により平成24年度から平成28年度までの間にD工業が守谷市の公共工事において落札した契約金額の総額は,税込み15億1161万58 80円に上る(原告が市長に就任した後に落札された2件を除いた総額は税込み14億4249万5880円)。 (甲15の1~5,甲16)イ個別の案件D工業が平成28年度に落札率100パーセントで落札した案件(愛宕中 学校格技場改修工事)は,もともと等級区分A及びBランクの事業者を対象として一般競争入札にかけられたものである。しかし,入札参加者全てが入札を辞退したため,守谷市は,等級区分Sランクの事業者を含めて再度一般競争入札を行うこととし,同入札においてD工業(Sランク)のみが入札し,落札したものである。 (甲31~34,46,I)⑼ 被告の本件に係る取材内容被告は,平成29年頃,守谷市議会の関係者から情報提供を受け,原告を取材対象とすることを決定し,被告の従業員であるVを担当編集者とする取材班を構成した。同取材班は,守谷市議会議員やD工業の元従業員などに取材をし たが,D工業やその代表取締役であるFには取材しなかった。そのほか,同取 材班は,全国市民オンブズマン連絡会議や法政大学名誉教授であるHに取材し,落札率と入札の関係等について説明を受けた。 そして,Vは,平成29年4月12日,原告に対し,原告とD工業との関係,守谷市における入札等に係る取材をした。原告は, 学名誉教授であるHに取材し,落札率と入札の関係等について説明を受けた。 そして,Vは,平成29年4月12日,原告に対し,原告とD工業との関係,守谷市における入札等に係る取材をした。原告は,同取材に対して,守谷市の副市長であったIと共に対応し,Vの質問に対し,原告が議員になる前にD工 業の代表取締役を辞任したこと,D工業の株式を取得した経緯やその株式を全てFに譲渡したこと,予定価格を事前に公表していることなどを含む守谷市における入札制度の概要,D工業の落札率に係る事情等について説明をした。その際,原告は,FへのD工業の株式の譲渡金額を尋ねられて,「金額は,評価が出たのが90円前後なので,200万円位かな。」と答えた。 (甲17,45,46,乙1,7,原告,I,V) 2 争点1(本件各記事により摘示された事実,社会的評価の低下の有無について)⑴ 判断枠組み以下では,本件各記事が原告の社会的評価を低下させるものであるかを検討するとともに,問題とされている記述が,事実を摘示するものであるか,意見 ないし論評の表明であるかについても検討するものとする。この際には,以下の点を踏まえるべきである。 アある記事の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは,当該記事についての一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきであり(最高裁判所昭和29年(オ)第634号昭和31年7月2 0日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照),そのことは,問題とされている表現が,事実を摘示するものであるか,意見ないし論評の表明であるかの区別に当たっても妥当するものというべきである(最高裁判所平成6年(オ)第978号平成9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁参照)。 イ か,意見ないし論評の表明であるかの区別に当たっても妥当するものというべきである(最高裁判所平成6年(オ)第978号平成9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁参照)。 イ当該表現が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する 特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解されるときは,当該表現は,上記特定の事項についての事実を摘示するものと解するのが相当である(前掲最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決参照)。そして,上記のような証拠等による証明になじまない物事の価値,善悪,優劣についての批評や論議などは,意見ないし論評の表明に属するというべきであるところ,法的 な見解の正当性それ自体は,証明の対象とはなり得ないものであり,法的な見解の表明が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項ということができないことは明らかであるから,法的な見解の表明は,事実を摘示するものではなく,意見ないし論評の表明の範ちゅうに属するものというべきである(最高裁判所平成15年(受)第1793,17 94号平成16年7月15日第一小法廷判決・民集58巻5号1615頁参照)。 ⑵ 本件各記事についてみると,以下のとおりいうことができる。 ア本件各記事の見出しは,「茨城守谷市長の『黒すぎる市政』に地方自治法違反疑惑」(本件記述①)という文言を中心にして,「地方の殿様の闇」(本件記 述②)及び「自らのオーナー企業で市の公共事業を次々と落札」(本件記述③)との各文言が付加されたものである。上記見出しを考慮すると,本件各記事の本文は,主に,原告が筆頭株主を務めるD工業において,原告の守谷市議会議長及び守谷市長の在職期間に守谷市の公共事業を相当数及び相当金額受注していたこと(本件記述 上記見出しを考慮すると,本件各記事の本文は,主に,原告が筆頭株主を務めるD工業において,原告の守谷市議会議長及び守谷市長の在職期間に守谷市の公共事業を相当数及び相当金額受注していたこと(本件記述⑥から⑧まで),原告が守谷市の政治倫理 条例や地方自治法に違反していること(本件記述⑧及び⑩),守谷市における公共事業の入札に関して官製談合など何らかの不正が行われていること(本件記述⑨)などが記述されたものということができる。 そうすると,本件各記事は,全体として,一般の読者に対し,守谷市長である原告が守谷市における公共事業入札に関連して何らかの不正ないし違 法行為を行っているとの印象を抱かせるものということができるから,原告 の社会的評価を低下させるものと認められる。 以下,問題となる各記述が,事実の摘示に当たるか,意見ないし論評の表明に当たるかについて検討する。 イ守谷市政治倫理条例違反に係る記述について本件各記事は,前記アの見出しの下,原告とD工業との関係性に係る事実 を記述した上で,「市長及び市議会議員が,自身が実質的に経営に携わっている企業で市の公共事業を受注することは,守谷市の政治倫理条例によって明確に禁じられている違反行為だ」(本件記述⑧)と記述しているところ,その前後の文脈等を考慮すると,本件各記事は,原告とD工業との関係が守谷市政治倫理条例に違反する旨の法的見解を表明するものと認められる。 そして,上記見解の基礎となる事実は,原告の守谷市議会議員及び守谷市長の在職期間(本件記述⑤)やD工業が平成24年から平成28年までに受注した公共事業の概要(本件記述⑦)のほか,D工業の創業者が原告の父であること,原告は議員になる以前にD工業の社長を務めていたこと,原告は平成24 記述⑤)やD工業が平成24年から平成28年までに受注した公共事業の概要(本件記述⑦)のほか,D工業の創業者が原告の父であること,原告は議員になる以前にD工業の社長を務めていたこと,原告は平成24年から平成28年までの間D工業の筆頭株主であったこと,原告は 平成28年10月時点でD工業の株式の33.3パーセントを保有し,残りの株式のほとんども原告の一族が保有していたこと(本件記述⑦及び⑧)などの各事実(これらの事実をまとめて以下「本件摘示事実①」という。)であると認められる。 すなわち,本件各記事は,一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれ ば,本件摘示事実①を基礎として,原告とD工業との関係が,守谷市政治倫理条例10条の定める「市長若しくは議員が実質的に経営に携わっている企業」という要件に該当し,同条に違反するとの法的見解を表明する意見ないし論評(以下「本件論評」という。)に当たると認められる。 ウ地方自治法違反に係る記述について 本件各記事は,「茨城守谷市長の『黒すぎる市政』に地方自治法違反疑惑」 という地方自治法違反に重点を置いた見出しを掲げた上で,本文において,原告に係る地方自治法違反の可能性を指摘し,「同法は市長および議員による兼業を禁じていますから,明らかな脱法行為です」(本件記述⑩)と記述しているところ,地方自治法違反の可能性を指摘しつつも「明らかな脱法行為」である旨の断定的な表現を用いていることなどからすれば,本件各記事は, 一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば,原告が地方自治法の兼業禁止規定(同法92条の2及び同法142条とみられる。)を潜脱し,同規定により禁じられた行為をしているとの事実(以下「本件摘示事実②」という。)を摘示するものであると認められる。 エ官製 の兼業禁止規定(同法92条の2及び同法142条とみられる。)を潜脱し,同規定により禁じられた行為をしているとの事実(以下「本件摘示事実②」という。)を摘示するものであると認められる。 エ官製談合に係る記述について 本件各記事は,D工業の落札率に関して,「落札率95%以上という点にも,重大な疑義があるという。 『官製談合をしなければこの数字は出ません。 何らかの形で,不正に入札に関与した可能性は極めて高い』」(本件記述⑨)と記述している。この記述は,「疑義」という文言を使いつつも,その直後に「官製談合をしなければこの数字は出ません」という断定的な表現を用いて いることに加え,本件各記事の見出しや前後の文脈等が与える印象(前記ア)を考慮すると,本件各記事は,一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば,D工業に原告の関与する官製談合の疑惑がある旨を指摘するにとどまらず,原告及びD工業が官製談合に関与したとの事実(以下「本件摘示事実③」という。)を摘示するものであると認められる。 ⑶ア原告は,本件各記事について,原告の市政運営が「真っ黒」である事実を摘示するものである旨主張する。 しかしながら,原告の市政運営が「真っ黒」であることは,証拠等による証明になじまない物事の価値,善悪,優劣についての批評や論議そのものであるというべきであるから,事実を摘示するものということはできない。 イまた,原告は,本件各記事について,原告が守谷市政治倫理条例に違反す る事実を間接的ないしえん曲に摘示するものである旨主張する。 しかしながら,前記⑵イのとおり,本件論評は,本件摘示事実①のみを基礎とした被告の意見ないし論評に当たるというべきであって,本件摘示事実①のほかに,証拠等をもってその存否を決することが可能 する。 しかしながら,前記⑵イのとおり,本件論評は,本件摘示事実①のみを基礎とした被告の意見ないし論評に当たるというべきであって,本件摘示事実①のほかに,証拠等をもってその存否を決することが可能な特定の事項を摘示しているものとは認められない。 ウしたがって,原告の前記ア及びイの各主張は採用することができない。 ⑷ 被告は,本件各記事について,「原告が現在もなおD工業のオーナー経営者ではないか」,「落札率からみて,守谷市の入札はゆがんだものではないか」という疑惑等を提示することによって,「守谷市の市長である原告の経営するオーナー企業が,守谷市の公共事業の入札で有利な落札をしているのではないか」 という疑惑を指摘した意見ないし論評である旨主張する。 しかしながら,本件各記事について,被告の主張するような抽象的な事項を摘示するものと認められないのは前記⑵のとおりであり,被告の上記主張は採用することができない。 ⑸ 本件摘示事実②及び③並びに本件論評は,一般の読者に対し,原告が守谷市 の公共事業の入札に関して不正ないし違法行為を行っているとの印象を抱かせるものであり,原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 3 争点2(違法性阻却事由又は故意過失の有無)について⑴ 判断枠組みア前記2のとおり,本件摘示事実②及び③並びに本件論評は,原告の社会的 評価を低下させると認められる。 そして,事実の摘示による名誉毀損については,その行為が公共の利害に関する事実に係り,その目的が専ら公益を図るものである場合には,摘示された事実がその重要な部分において真実であることの証明があれば,同行為には違法性がなく,また,真実であることの証明がなくても,行為者がそれ を真実と信じるについて相当の理由 る場合には,摘示された事実がその重要な部分において真実であることの証明があれば,同行為には違法性がなく,また,真実であることの証明がなくても,行為者がそれ を真実と信じるについて相当の理由があるときは,同行為には故意又は過失 がなく,不法行為は成立しないというべきである(最高裁判所昭和37年(オ)第815号昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁参照)。 イ他方,特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損においては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら 公益を図ることにあった場合に,その意見ないし論評の基礎としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,その行為は違法性を欠き,仮に意見ないし論評の基礎としている事実が真実であることの証明がない場合にも,行為者においてその事実を真実と信じるについて相 当の理由があれば,故意又は過失は否定され,不法行為は成立しないというべきである(前掲最高裁判所平成9年9月9日第三小法廷判決参照)。 ウ原告は,意見ないし論評による名誉毀損が問題となる場合には,基礎となる事実から意見ないし論評が推論されることの相当性ないし合理性が求められる旨主張する。 しかしながら,表現の自由,とりわけ公共の利害に関する事項についての自由な批判,論評を保障することは民主主義社会の基盤の一つであって,基礎となる事実が重要な部分について真実か真実と信じるべき相当な理由がある場合には,意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,その内容の正当性や合理性は特に問われないと解すべきである(前掲最高裁判所 平成16年7月15日第一 実と信じるべき相当な理由がある場合には,意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,その内容の正当性や合理性は特に問われないと解すべきである(前掲最高裁判所 平成16年7月15日第一小法廷判決参照)。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 エ被告は,本件では,「原告が現在もなおD工業のオーナー経営者ではないか」,「落札率からみて,守谷市の入札はゆがんだものではないか」という二つの批判的言論が正当なものであるか否か,言論としての許容性があるかど うかが争点であり,さらに,公選公職人に対して疑惑の提示がされ,それが 公選公職人において説明すべき事柄であるならば,その説明が十分なものであるかということが問われなければならない旨主張する。 被告の上記主張の趣旨は必ずしも明らかではないものの,前記2⑵のとおり,本件各記事は,被告の主張するような抽象的な内容とは認められないのであって,被告の上記主張は前提を欠くものである。また,被告の主張する 判断枠組みについて,前記ア及びイの説示と異なる部分は,独自の見解というべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ⑵ 本件摘示事実①及び本件論評について以上のことからすれば,本件摘示事実①及び本件論評について被告が免責さ れるか否かは,その内容が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあるか,本件論評の基礎としている本件摘示事実①が重要な部分について真実であるか又は被告において真実と信じるべき相当な理由があるか,本件論評が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものではないといえるか,という観点により判断することとなる。 ア公共性・公益性本件各 じるべき相当な理由があるか,本件論評が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものではないといえるか,という観点により判断することとなる。 ア公共性・公益性本件各記事の内容によれば,本件各記事は,守谷市長である原告とD工業との関係性や守谷市における公共事業の入札事情を取り上げるものであり,本件各記事は,公共の利害に関する事実を報道するもので,その目的は専ら公益を図る目的に出たものであると認められる。 イ本件摘示事実①の真実性・真実相当性 本件摘示事実①は,具体的には,㋐原告が平成12年に守谷市議会議員に当選し,平成24年から3年にわたって市議会議長を務め,平成28年11月20日の選挙により守谷市長に就任した事実,㋑平成24年から平成28年までの間に,D工業が14件の公共事業を受注し,そのうち9件 の落札率は95パーセント以上で,受注総額は13億円に及ぶ事実,㋒D 工業は,原告の父が創業した会社で,売上高25億円の市内トップクラスの土建業者であり,原告自身昭和53年から議員に就任するまでその社長を務めていた事実,㋓原告は,D工業の社長を退いた後もD工業の株式を持ち続けており,平成24年から平成28年にかけては筆頭株主であり,平成28年10月の時点で,発行済株式の33.3パーセントを保有して いたほか,残りのほとんどの株式も原告の妻や息子など一族が所有していたという事実である。 なお,本件各記事において,原告とD工業の関係性に関して,「自ら(原告)のオーナー企業」,「自身(原告)が筆頭株主を務めるオーナー企業」などの記述がある。この「オーナー企業」との記述は,筆頭株主であるこ と以外にその根拠となる具体的事実の記述を伴うものではないから,上記㋐か 」,「自身(原告)が筆頭株主を務めるオーナー企業」などの記述がある。この「オーナー企業」との記述は,筆頭株主であるこ と以外にその根拠となる具体的事実の記述を伴うものではないから,上記㋐から㋓までの各事実を踏まえた被告による表現にすぎないというべきであって,真実性・真実相当性の判断においてその対象になるものではないというべきである。 ㋐及び㋑の事実について 原告は,平成12年に守谷市議会議員に当選し,平成24年から3年にわたって市議会議長を務め,平成28年11月20日の選挙により守谷市長に就任したと認められる(前記1の認定事実(以下,単に「認定事実」という。)⑵及び⑸)。 また,D工業は,平成24年度から平成28年度(原告の市長就任前) までに,守谷市の公共事業を合計14件を落札しており,そのうち9件の落札率は95パーセント以上であり,受注総額は13億円を超えると認められる(認定事実⑻)。 したがって,及び㋑の事実は真実であると認められる。 ㋒の事実について D工業の年間売上高は,平成27年7月1日から平成28年6月30日 までの期間について証拠上明らかではないものの,平成24年,平成25年及び平成28年の各7月1日から始まる各期(1年間)については,順に約16億円,20億円強及び約10億円である(認定事実⑹)。本件各記事においてD工業の売上高が記載された趣旨は,D工業の事業規模を伝えるためであったとみられるところ,売上高が20億円を超える期も実際に あったこと,D工業が土木業者及び建築業者として最上位であるSランクの評価を受けていること(認定事実⑺)を併せて考慮すれば㋒の事実のうちのD工業の売上高に係る事実は,重要な部分について真実であると認 たこと,D工業が土木業者及び建築業者として最上位であるSランクの評価を受けていること(認定事実⑺)を併せて考慮すれば㋒の事実のうちのD工業の売上高に係る事実は,重要な部分について真実であると認められる。 また,D工業は原告の祖父であるJにより設立されたものであるが,原 告の父であるKが同設立の3年後にはその代表者となり,その後長年にわたってD工業の経営に携わっていたこと(認定事実⑴)からすれば,前記㋒の事実のうちのD工業の創業に係る事実は,重要な部分について真実であると認められる。 さらに,原告は,昭和53年からD工業の代表取締役として登記された ところ,当初は議員秘書を務め,その後D工業以外の会社で勤務をしていたものの,遅くとも平成7年から平成12年1月までの間は,守谷市に戻って実際にD工業の社長職を務めていたものと認められるから(認定事実⑴及び⑵),原告自身が昭和53年から議員になるまでその社長を務めていたとの事実は,重要な部分について真実であると認められる。 ㋒の事実は,真実又はその重要な部分について真実であると認められる。 ㋓の事実について原告は,平成12年に守谷町議会議員選挙に立候補するに当たってD工業の代表取締役を辞任したが(認定事実⑵),原告が代表取締役在任中か らD工業の株式を保有していた事実は,本件全証拠によっても認められな い。むしろ,平成20年6月の時点では,原告はD工業の株式を保有しておらず,K(6万1795株),O(2万9875株)及びP(7500株)の3人が,発行済株式総数10万株のうち9万9170株を保有していたことが認められる(認定事実⑶)。 しかし,原告は,平成20年7月1日に,それまで過半数の株式を有し ていた父のKから2万株の贈 3人が,発行済株式総数10万株のうち9万9170株を保有していたことが認められる(認定事実⑶)。 しかし,原告は,平成20年7月1日に,それまで過半数の株式を有し ていた父のKから2万株の贈与を受けてD工業の株主になるとともに(原告と同時にKから贈与を受けた妻のR及び子のQの保有株式を合計すると4万7500株となる。),平成22年9月には,Kの相続により1万3330株を取得して保有株数3万3330株の筆頭株主となり(QもKの相続により965株取得したことから,原告,R及びQの保有株数合計は, 6万1795株となった。),同月から少なくとも平成28年11月30日までの間においてD工業の筆頭株主の地位にあったことが認められる(認定事実⑶及び⑸)。また,原告の親族によるD工業の株式の保有状況は,平成22年9月から少なくとも平成28年11月30日までの間は,Oの保有に係る2万株を除き,変動はなかったことが認められる(認定事実⑶か ら⑸まで)。 したがって,㋓の事実は,真実又はその重要な部分について真実であると認められる。 以上によれば,本件論評が基礎とする本件摘示事実①は,真実又はその重要な部分について真実であると認められる。 ウ本件論評が意見ないし論評としての域を逸脱しているか否かについて本件論評は,本件摘示事実①を基礎として,原告とD工業との関係が守谷市政治倫理条例に違反するとの法的見解を表明するものであり,その内容は人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものとまでは認められない。 エ原告は,本件各記事の守谷市政治倫理条例違反に係る記述について,原告 がD工業の経営に実質的に携わっていないこと,原告の保有株式の割合は守谷市政治倫理条例施行規則7条1号に規 エ原告は,本件各記事の守谷市政治倫理条例違反に係る記述について,原告 がD工業の経営に実質的に携わっていないこと,原告の保有株式の割合は守谷市政治倫理条例施行規則7条1号に規定されている「3分の1以上」に達していないことなどを主張し,違法性阻却事由がない旨主張する。しかしながら,原告の同主張は,本件論評を事実の摘示であることを前提としたものであり,前記2⑶イのとおり,原告の同主張はその前提において採用するこ とができない。 また,原告は,たとえ上記記述が意見ないし論評に当たるとしても,基礎となる事実から意見ないし論評が合理的に推認できない旨主張する。しかしながら,意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,その内容の正当性や合理性は特に問われないと解すべきであるのは前記⑴ウのとおり であり,原告の同主張は採用することができない。 オ小括以上によれば,本件論評は,その内容が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあると認められる。そして,本件論評の基礎としている本件摘示事実①は,その重要な部分について真実と認め られる上,本件論評は,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものとは認められない。 よって,本件論評は,違法性が阻却され,不法行為が成立しないというべきである。 ⑶ 本件摘示事実②について 本件摘示事実②について被告が免責されるか否かは,その内容が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあるか,本件摘示事実②真実であるか又は被告において真実と信じるべき相当な理由があるか,という観点により判断することとなる。 ア公共性・公益性 前記⑵アのとおり,本件各記事は,公共の利害に関する事 事実②真実であるか又は被告において真実と信じるべき相当な理由があるか,という観点により判断することとなる。 ア公共性・公益性 前記⑵アのとおり,本件各記事は,公共の利害に関する事実を報道するも ので,その目的は専ら公益を図る目的によるものであると認められる。 イ本件摘示事実②の真実性・真実相当性 真実性原告は,平成12年1月にD工業の代表取締役を辞任した後は,D工業の役員に就いたことはない(認定事実⑵)。また,原告は,平成20年7月 にKからD工業の株式2万株の贈与を受け,平成22年5月のKの死去に伴う遺産分割協議により1万3330株を相続し,合計3万3330株を保有するに至った(認定事実⑶)ものの,原告が平成12年に代表取締役を辞任した後,D工業において役員と同様の具体的な業務執行をしたことうかがわせる事情は認められず,同事実を認めるに足りる的確な証拠はな い。 加えて,原告は,Kの死去後の平成22年9月,D工業を分割して資産管理会社である守谷管財株式会社を設立したこと(認定事実⑶),D工業とFとの間で,平成25年6月,D工業がFに代表取締役として就任するよう依頼することを内容とする契約書が作成されたこと(認定事実⑷), その後,Oが保有するD工業の株式合計2万株がFに贈与され,その旨確定申告書に反映されたこと(認定事実⑷),原告が守谷市長に就任後,原告,O,P,Q及びRの5名の保有するD工業の株式全てがFに譲渡され,その旨確定申告書に反映されたこと(認定事実⑸)などの各事実に照らせば,原告は,Kからの贈与や相続によりD工業の株主となった以降,一貫 して,D工業との関係を解消する方向で行動していたものと認められる。 これらの事実に関して,D工業 実⑸)などの各事実に照らせば,原告は,Kからの贈与や相続によりD工業の株主となった以降,一貫 して,D工業との関係を解消する方向で行動していたものと認められる。 これらの事実に関して,D工業とFとの間の上記契約書の中ではFの役職が「代表取締役兼オーナー代行」とされていたこと(認定事実⑷),D工業の株式について一株107円とする財産評価明細書が作成されていたにもかかわらず,Oの保有するD工業の株式2万株がFに無償で贈与された こと(認定事実⑷)など,いわゆる同族会社を他人に譲り渡すための取引 として疑義がないとまではいえない。しかしながら,平成28年にD工業の代表取締役に就任したGについて原告は特段の面識がなかったこと(認定事実⑵),Fの代表取締役の就任後,F工務店の顧問税理士が設立したゼニックスがD工業の会計参与に就任したこと(認定事実⑷),原告,O,P,Q及びRの5名とFとの間の株式譲渡の対価となった原告のD工業に 対する未収金債務は実体のないものとはいえないこと(認定事実⑸)などの各事実も踏まえると,原告の上記行動が全く実体を伴わない形式的なものであるとか,原告がFを通じて継続してD工業の役員と同様の業務執行をしているとまで認めることはできない。 以上によれば,原告において,地方自治法の兼業禁止規定(同法92条 の2及び同法142条とみられる。)を潜脱し,同規定により禁じられた行為をしていると認めることはできない。 真実相当性被告の取材班は,原告を取材対象とすることを決定した後,複数の関係者に対する取材(認定事実⑼)を通じて,原告とD工業の関係性について 本件摘示事実①を含む一定の情報を収集したものとみられる。しかし,地方自治法92条の2又は同法142条により市長や議員との 者に対する取材(認定事実⑼)を通じて,原告とD工業の関係性について 本件摘示事実①を含む一定の情報を収集したものとみられる。しかし,地方自治法92条の2又は同法142条により市長や議員との兼業が禁止される地位に株式会社の株主は含まれないと解されるところ,原告の守谷市議会議員又は守谷市長の在職期間と原告がD工業において役員として在籍した期間とが重なっていないことは,調査により容易に判明した事項 といえるし,実際に,平成29年4月12日の被告の記者による取材において,その旨が原告から説明されていた(認定事実⑼)。また,前記おり,原告が平成12年に代表取締役を辞任した後,D工業において役員と同様の具体的な業務執行をしたことをうかがわせる事情は認められず,原告がD工業の筆頭株主であったことなどの本件摘示事実①のみをもっ て,原告が地方自治法の兼業禁止規定により禁じられた行為をしているこ とを合理的に推認することもできない。そして,被告の取材班は,原告本人には取材をしたものの,原告とD工業の関係性に係る重要な関係者であるD工業やFには取材をしなかった(認定事実⑼)のであり,これらの各事実からすれば,被告において,原告が地方自治法の兼業禁止規定により禁じられた行為をしていることを真実と信じるについて相当な理由があ ったとは認められないというべきである。 ウ小括以上によれば,本件摘示事実②は,真実であるとは認められず,被告においてこれを真実と信じるべき相当な理由があるとも認められない。 ⑷ 本件摘示事実③について 本件摘示事実③について被告が免責されるか否かは,その内容が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあるか,本件摘示事実③が真実であるか又は被告において真実 いて 本件摘示事実③について被告が免責されるか否かは,その内容が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあるか,本件摘示事実③が真実であるか又は被告において真実と信じるべき相当な理由があるか,という観点により判断することとなる。 ア公共性・公益性 前記⑵アのとおり,本件各記事は,公共の利害に関する事実を報道するもので,その目的は専ら公益を図る目的によるものであると認められる。 イ真実性・真実相当性真実性守谷市は,公共事業の条件付一般競争入札の予定価格を入札前に公告し ている(認定事実⑺)。事業者は,これが公告されない場合と異なり,他の入札予定者の動向を推測しつつ,事前に公告されている予定価格に近い金額で入札することができるから,その結果として落札率が高率になる傾向があるといえる。そうすると,このような予定価格の事前公表制の下では,落札率が高率であることのみをもって官製談合があったことを推認する ことはできないというべきである。また,守谷市におけるD工業の入札状 況について,その落札件数や落札率に不自然な点があるとはいい難いし(認定事実⑻ア),平成28年度のD工業による落札率100パーセントの入札についても,同様である(認定事実⑻イ)。そして,原告によって公共事業入札の予定価格が恣意的に設定されたことがうかがわれる証拠はないし,その他D工業の入札に関して官製談合があったことを認めるに足 りる的確な証拠はない。 以上によれば,D工業に係る公共事業入札に関して,原告が関与して官製談合が行われたものと認めることはできない。 真実相当性被告の取材班は,原告を取材対象とすることを決定した後,複数の関係 者に取材し(認定事実 札に関して,原告が関与して官製談合が行われたものと認めることはできない。 真実相当性被告の取材班は,原告を取材対象とすることを決定した後,複数の関係 者に取材し(認定事実⑼),その取材内容を検討した結果,落札率が高率であることをもって官製談合の可能性が高いと認識したとみられる。 しかし,守谷市が条件付一般競争入札において予定価格を入札前に公告していることは,取材をすれば容易に判明するべき事項といえるだけでなく,実際に,平成29年4月12日の被告の記者による取材において,そ の旨が原告及びIから説明されていた(認定事実⑼)。そうすると,被告は,守谷市の入札においては,落札率が高いことのみをもって官製談合が行われているとはいえないと判断することが十分可能であったのであり,被告において,D工業に係る公共事業入札に関して,原告が関与して官製談合が行われたとの事実を真実であると信じるについて相当な理由があ ったとは認められないというべきである。 ウ小括以上によれば,本件摘示事実③は,真実であるとは認められず,被告においてこれを真実と信じるべき相当な理由があるとも認められない。 ⑸ 以上によれば,本件論評は,違法性が阻却されるため,原告に対する不法行 為を構成しないが,本件摘示事実②及び③は,違法性阻却事由が認められず, 原告に対する不法行為を構成するものというべきである。 4 争点3(損害額)について⑴ 本件各記事に含まれる本件摘示事実②及び③は,一般の読者に対し,原告が地方自治法に違反し,守谷市の実施する入札における官製談合に関与したとの印象を与えるものである。 原告は,現職の守谷市長であり,地方自治法に違反し,官製談合に関与していると ,原告が地方自治法に違反し,守谷市の実施する入札における官製談合に関与したとの印象を与えるものである。 原告は,現職の守谷市長であり,地方自治法に違反し,官製談合に関与していると報道されることにより,その社会的評価が低下し大きな不利益を受けるものといえる。本件雑誌の発行部数及び本件ウェブ記事が掲載された本件ウェブサイトの訪問者数は,いずれも相当数に及んでおり(前提事実⑴ウ),守谷市役所に対する問合せやクレーム,守谷市内における反響も決して小さくない (甲28~30)。 他方,本件各記事の目的は,地方自治体における首長ないし議員とその関連企業の関係性について問題提起をするという正当なものであったといえること,本件各記事のうち守谷市政治倫理条例違反に関する本件論評については違法性が阻却されることなど,その他本件に現れた一切の事情を考慮すれば,原 告の上記不利益による精神的苦痛に対する慰謝料額として150万円が相当と認められる。 ⑵ 本件における認容額,事案の内容その他一切の事情に照らすと,本件の被告による不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,15万円と認めるのが相当である。 5 争点4(名誉回復措置の要否)について前記4の慰謝料により被告の損害賠償義務が認められることにより,原告の名誉が相当程度回復することが想定されることなどからすれば,原告らの名誉を回復するために,金銭による損害賠償のほかに,謝罪広告を掲載する必要があるとまでは認められない。 第4 結論 よって,原告の請求は,不法行為に基づき,165万円の損害賠償及び同額に対する不法行為の日である平成29年4月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度 請求は,不法行為に基づき,165万円の損害賠償及び同額に対する不法行為の日である平成29年4月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第12部 裁判長裁判官小田正二 裁判官井出弘隆 裁判官唐津祐吾 (別紙1)第1 謝罪文 1 見出し守谷市D市長に対する謝罪文の掲載について 2 本文 当社は,当社発行の週刊誌「FRIDAY」平成29年4月28日号及び当社運営ウェブサイト「FRIDAYデジタル」(https://friday.kodansha.ne.jp/sn/u)において,『茨城守谷市長の「黒すぎる市政」に地方自治法違反』との見出しで,茨城県守谷市長であるD様が,あたかも①地方自治法及び②守谷市政治倫理条例に違反するとともに,③官製談合を行 っており,④守谷市政の運営が「真っ黒」であるかのような記事を掲載致しましたが,いずれも何らの根拠もなく,全く事実に反しておりました。上記記事によりD様の名誉を著しく傷付けまた守谷市に多大の損害を与えたことにつき心からお詫び申し上げます。 平成年月日 株式会社講談社代表取締役E第2 ウェブサイト「FRIDAYデジタル」への掲載条件 1 掲載場所被告が運営するウェブサイト「FRIDAYデジタル」 (https://friday.kodansha.ne.jp/sn/u)のトップページの上部及び「FRIDAYデジタ 1 掲載場所被告が運営するウェブサイト「FRIDAYデジタル」 (https://friday.kodansha.ne.jp/sn/u)のトップページの上部及び「FRIDAYデジタル」中の本件ネット記事(後記第2参照)を掲載したウェブページの上部 2 使用活字見出し及び本文につき,それぞれ,「FRIDAYデジタル」に掲載された本件 ネット記事に使用されている文字と同一の大きさ,書体 第3 週刊誌「FRIDAY」への掲載条件 1 掲載場所被告発行の週刊誌「FRIDAY」において,広告掲載ページを除いて表表紙からの最初の頁1面に。 2 使用活字見出しについては,14ポイント・明朝体。 本文については,12ポイント・明朝体。 別紙2については記載を省略

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