【DRY-RUN】主 文 原判決中無罪の部分を除きその余を破棄する。 被告人Aを懲役六月に、被告人Bを懲役三月に、被告人Cを懲役四月に、被告人 Dを懲役五月に処する。 但し被告人B、同C、同D
主文 原判決中無罪の部分を除きその余を破棄する。 被告人Aを懲役六月に、被告人Bを懲役三月に、被告人Cを懲役四月に、被告人Dを懲役五月に処する。 但し被告人B、同C、同Dに対してはこの裁判確定の日より夫々三年間右刑の執行を猶予する。 訴訟費用中原審証人Eに支給した分は被告人Bの負担とし、原審証人Fに支給した分は被告人A、同C、同Dの負担とし、爾余の原審証人(証人Gを除く)及び当審証人に支給した分は被告人四名の負担とする。 理由 本件各控訴の趣意は末尾に添付した弁護人井上英男同木村賢三共同名義及び弁護人福井盛太同横田武共同名義の各控訴趣意書記載のとおりで、これに対し、当裁判所は次のとおり判断する。 弁護人井上英男同木村賢三の控訴趣意について。 第六点原判決冒頭には所論引用のとおり「被告人Aは太田市巡査部長、爾余の各被告人は夫々太田市巡査としていずれも太田市警察署に勤務、同署刑事課に所属し、司法警察員として犯罪を捜査すべき職務に専従しているもので、昭和二十七年四月二十八日平和条約の発効するまでは、連合国占領軍憲兵隊長の日本警察官署に対する指示命令により、犯罪捜査の専従職員として、日本人の連合国占領軍及びその要員に対する犯罪に関し、捜査を為すべき職責をも兼有していたもの」と判示しているところ、昭和二十年(西暦一九四五年)九月二日附降伏文書中には「日本国天皇及ビ日本帝国大本営ノ代表者ハ茲ニ一切ノ官庁、陸海軍ノ職員ニ対シ、連合国最高司令官ガ本降伏実施ノ為適当ナリト認メテ自ラ発シ又ハ其ノ委任ニ基キ発セシムル一切ノ布告、命令及ビ指示ヲ遵守シ且之ヲ施行スルコトヲ命ジ……」とあるし、同日附指令第一号附属一般命令第一号には「日本国ノ及ビ日本国ノ支配下ニ在ル軍及び行政官憲並ニ私人ハ本命令及ビ爾後連 発セシムル一切ノ布告、命令及ビ指示ヲ遵守シ且之ヲ施行スルコトヲ命ジ……」とあるし、同日附指令第一号附属一般命令第一号には「日本国ノ及ビ日本国ノ支配下ニ在ル軍及び行政官憲並ニ私人ハ本命令及ビ爾後連合国最高司令官又ハ他ノ連合国軍官憲ノ発スル一切ノ指示ニ誠実且迅速ニ服スルモノトス」と定めているのであるから、一私人といえども、連合国軍官憲の発する命令を遵守すべき義務を負うことがあるのは明らかである。しかし連合国軍官憲が日本国行政官庁に対し、何らかの指示命令を発するのも、多くの場合は、その行政官庁の本来の職務上の事項に関するものであると考えられるし、殊に連合国軍がいわゆる間接統治方式を採用したことを思えば、私人又は本来職務権限のない行政官庁に指示命令を与えるようなことはよほど特別な場合でなければ認められないものである。それ故連合国軍官憲の指示命令に従わねばならぬからといつても、指示を受けた行政官庁の職務権限に属しない事項については、特別の事由がない限り、他の権限ある行政官庁に指示するよう要求することもできるし、右指示命令を本来の職務権限を有する行政官庁に伝達することもできるのであつて、必ずしも当該行政官庁自身に於て指示命令事項を実施するを要しないわけである。又その指示命令を受けた行政官庁が当該事項について権限を有する場合は、その指示命令を遵守すべきことはいうまでもないけれど、その場合においては、本来の権限に基いてその職務を執行すれば足りるわけであるから、当該行政官庁として特別に指示命令によつて権限を賦与せられたものではないのはもちろん、国内法上認められている職務権限を行使することによつて連合国軍官憲の指示命令を遵守することができるのである。従つてその行為は特別な授権を俟たないで国内法上適法な行為と認められるわけではあるが、その権限行使に当つ れている職務権限を行使することによつて連合国軍官憲の指示命令を遵守することができるのである。従つてその行為は特別な授権を俟たないで国内法上適法な行為と認められるわけではあるが、その権限行使に当つてはその職務執行について決して無制限なものでなく、国内法上のいろいろの拘束を受けるのは当然の事というべきである。いゝかえるならば、与えられた指示、命令を遵守する必要があるからといつても、国内法上の義務からすべて解放されているわけではなく、国内法上の職務執行に準じ、でき得る限り国内法規に則つてその職務を執行すべき義務があるわけで、このような場合も亦国内法上の職務を行うというに該当するものといわなければならない。今これを本件についてみるに、被告人等はいずれも太田市警察署巡査又は同巡査部長として同警察署に勤務し、同署刑事課に所属し、司法警察員として犯罪捜査の職務に従事していたものである以上は、H、・I、J等の群馬県邑楽郡a町所在米軍Kキヤンプ内の窃盗被疑事件やL、M、G、F、N等の賍物故買及び昭和二十四年政令第三八九号違反被疑事件について日本国刑事訴訟法その他に関する法令に基いて、被疑者等に対する令状の執行を初め事件の捜査全般に従事する職務を有することはいう迄もない。然るに被告人A等太田市警察署員が右L、M、Gを逮捕したのは昭和二十五年十二月七日であり、Fを逮捕したのは同月八日であり、Nを逮捕したのは同月九日であつて、しかも同人等に対する太田簡易裁判所裁判官の逮捕状が発せられたのは同月十六日である。 而して右太田簡易裁判所裁判官の逮捕状が発せられるまでは前記O憲兵防長の逮捕命令によつて逮捕したもので、日本国内法のみに準拠したものといゝ得ない。しかし憲法並刑事訴訟法の規定に従い裁判官の発する令状に基いて被告人等がL、M、G、F、N等を逮捕する権限を有す 憲兵防長の逮捕命令によつて逮捕したもので、日本国内法のみに準拠したものといゝ得ない。しかし憲法並刑事訴訟法の規定に従い裁判官の発する令状に基いて被告人等がL、M、G、F、N等を逮捕する権限を有すればこそ、O憲兵隊長が前記のようにL等を逮捕すべき指示命令を与えたものであり、この指示命令に従うこと<要旨>が被告人等の本来の職務の執行であるから、たとえ逮捕命令そのものが国内法上適法な裁判官の令状によつて</要旨>はいないにしても、逮捕後L等を取調べるに当つてはできる限り刑事訴訟法その他国内法令に準拠すべきものであり、従つてその取調は一面においてO憲兵隊の指示命令を遵守することであると共に他面においては国内法上の職務執行行為に外ならないのである。それ故被告人等の右犯罪捜査に当つた行為が、一私人が連合国軍官憲の指示を受けた場合と類を異にするはいうまでもないし、被告人等の右行為が指令第一号附属一般命令第一号に対する義務の履行のみで、司法警察員としての職務の執行ではないとすることはできない。原判決は被告人等四名には日本国法によつて司法警察員としての職責以外に、連合国軍官憲の指示命令による犯罪捜査の職責をも兼有する旨判示しているのは、当裁判所の叙上見解と同一趣旨に帰するのみならず、原判決は結局被告人等が刑法第一九五条の「警察の職務を行い又は之を補助する者」其職務を行うに当つて、L等の被疑者に対し原判示の如き暴行々為をした旨判示しているのであるから、所論の如き違法の点はない。敍上の見解に反する論旨は採用できない。 (その他の判決理由は省略する。)(裁判長判事近藤隆蔵判事吉田作穂判事山岸薫一) 判事 近藤隆蔵 判事 吉田作穂 判事 山岸薫一
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