昭和35(う)29 威力業務妨害被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和36年2月21日 札幌高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件各控訴を棄却する。      当審における訴訟費用は全部被告人等の連帯負担とする。          理    由  弁護人大野正男の本件控訴の趣意は同介護人提出の控訴趣意

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判決文本文6,207 文字)

主文 本件各控訴を棄却する。 当審における訴訟費用は全部被告人等の連帯負担とする。 理由 弁護人大野正男の本件控訴の趣意は同介護人提出の控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する検察官の答弁は検察官検事竹平光明提出の弁護人控訴趣意に対する意見書と題する答弁書記載のとおりである。また検察官の本件控訴の趣意は検察官検事丸物彰提出の控訴趣意書記載のとおりである。よつて右各控訴趣意書並に答弁書をここに引用する。而して右各控訴趣意に対する当裁判所の判断は次のとおりである(但し、昭和三五年一一月二六日死亡した原審相被告人Aのみに関する検察官の控訴趣意第一点についてはこれを除く)。 弁護人の控訴趣意第一点(法令適用の誤)について。 所論は日本国有鉄道(以下国鉄と略称)職員を公務員とする以上国鉄の業務は公務であつて、公務は業務妨害罪における業務に含まれないから、国鉄職員を公務員であるとしながら、国鉄の業務に関して業務妨害罪の成立を認めた原判決は法令の解釈適用を誤つたものであると主張する。 しかし国鉄の運輸業務は本来国家権力の執行を目的としない非権力的な業務であつて、その業務の実態は本来民営鉄道(以下私鉄と略称)のそれと根本的に相違するところはない。その業務は本来社会的経済的企業活動である。ただわが国の国鉄はその沿革的理由と高度の公共性のため法令上公法人とされ、職員も公務に従事<要旨第一>する者とみなされるにすぎない。従つて国鉄の業務は公益事業である私鉄をも含む一般私企業と同様刑法第二</要旨第一>三三条及び第二三四条の業務妨害罪の対象となるものであつて、虚説偽計により又は威力を用いてその業務を妨害した場合には同条による業務妨害罪が成立するものと解するのが相当である(この点に関しては昭和三五年一一 び第二三四条の業務妨害罪の対象となるものであつて、虚説偽計により又は威力を用いてその業務を妨害した場合には同条による業務妨害罪が成立するものと解するのが相当である(この点に関しては昭和三五年一一月一八日最高裁判所第二小法廷判決参照)。 そして一方国鉄職員は日本国有鉄道法第三四条によつて法令により公務に従事する者とみなされるから、暴行又は脅迫を加えて国鉄職員の職務の執行を妨げた場合にはそれが本来の公務として権力の行使の認められている鉄道公安職員に対する場合であれば或は公務執行妨害罪(刑法第九五条一項)或は職務強要罪(同法第九五条二項)が成立することは勿論であるし、又その他の職員に対する場合も同様である。この点に関し弁護人は公務と業務とは二者択一の関係にある如く主張し、殊に国鉄が二重の保護法益を受ける理由はないと述べているけれども、二重の保護法益を受ける点は国鉄の沿革とその業務の高度の公共性を考えれば決してその合理性を首肯し得ないことはなく、むしろ当然と考えられるし、所謂公務には権力の行使を伴う公務と然らざる非権力的な公務とあるのであるから、公務と業務とが全く二者択一の関係にあると解さなければならない合理的根拠はあらゆる角度から考えてみても発見できない。 よつて威力を用いて国鉄の業務を妨害したとの認定の下に被告人等に対し威力業務妨害罪の成立を認めた原判決には何ら法令の解釈適用の誤はない。 所論は判例違反を主張するけれども、所論引用の判例中大正四年五月二一日大審院判決及び昭和二六年七月一八日最高裁判所大法廷判決はそれぞれ小学校長又は警察官の職務に関するものであるし、大正一〇年一〇月二四日大審院判決も本件とは事案を全く異にするのであつて、いずれも本件に適切でなく、また昭和二八年一〇月二日最高裁判所第二小法廷判決も単に公務執行妨害罪の保護対 に関するものであるし、大正一〇年一〇月二四日大審院判決も本件とは事案を全く異にするのであつて、いずれも本件に適切でなく、また昭和二八年一〇月二日最高裁判所第二小法廷判決も単に公務執行妨害罪の保護対象が公務員でなく公務そのものであるといつているにすぎないのであるから、弁護人の判例違反の主張はあたらない。 よって所論は採用し難く、論旨は理由がない。 同第二点及び第三点(いずれも事実誤認又は法令適用の誤)について。 (一) 所論はまずB丸の二等舷門とタラップを鎖で固定することは船体を破損する危険があり、またタラップを掛けておくときは官憲を船内に導入することになつてタラップ上等狭く危険な場所で衝突を起す虞があつたのであり、これを防止した被告人等の行為について刑法第三七条又は第三六条を適用せずまた期待不可能性による免責を認めなかつた原判決は違法であると主張する。 しかし青函局側でB丸の舷門とタラップとに鎖錠を施した行為が適法な権利行使と認むべきことは原判示のとおりであるのみならず、当時海上が極めて平穏であつたことは証拠によつて明かであるから、もしも荒天となつて激浪等によつてタラップを船体に固定しておくために船体に損傷を与える危険が生じたならば、そのときになつて鎖錠を解けばよいのであり、その他記録を精査してみても当時鎖錠によつて船体損傷等の切迫した危険があつたことを認めるに足りる適切の証拠はない。また当時多数官憲の導入により衝突を惹起するような緊迫した事態が生じていたことを認めるに足りる資料も全く存しない。しからば被告人等のタラップ取外し等の行為を緊急避難又は正当防衛行為であるとし或いは期待可能性のない行為であるとする所論は到底採用し得ない。 (二) また所論は被告人等組合員がB丸二等舷門附近にピケットを張つた行為は労働組合法第一条第二項の 急避難又は正当防衛行為であるとし或いは期待可能性のない行為であるとする所論は到底採用し得ない。 (二) また所論は被告人等組合員がB丸二等舷門附近にピケットを張つた行為は労働組合法第一条第二項の正当な行為と認めるか又は期待不可能性による免責を認むべきであつて、これを認めなかつた原判決は違法であると主張する。 しかし右ピケットは被告人等によるタラップ取外し後再び当局側がタラップを掛けることを防止する目的で張られたものであることは原判示のとおりであり、そしてタラップは船内と陸上の交通路として着船後出航まで常時架設しておくことが原則であることは原判決の認定したとおりであるから、当局側のタラップ架設行為及び右タラップ架設のためのピケ排除行為は適法な行為であつて、これを妨げる目的に出た本件ピケットは正当性の限界を超えるものであることは疑を容れる余地がない。またこれを期待可能性のない行為と解すべき何らの事情も認められない。よつて右所論も亦採用し得ない。 右(一)及び(二)の論旨はいずれも理由がない。 同第四点(事実誤認)について。 所論は被告人Cはタラップ取外し行為に加わつていないのであつて、この点に関する原判決の認定は事実を誤認したものであると主張する。 しかし原審における証人D、同E、同F、同Gの原判決記載の如き各証言によれば被告人CはB丸の二等舷門附近甲板においてタラップに手を掛けタラップ取外しに助力したことを優に認めることができる。同被告人は原審において右認定に反する供述をしているけれども、その供述の要旨はD労働課長と論争した直後輿奮から醒めたらタラップが外されていたように記憶するというのであるが、右タラップが外される当時右論争が終了していたことは前記Dの証言によつて明かであり、また右タラップ取外し行為は当時極めて注目すべき事態であ めたらタラップが外されていたように記憶するというのであるが、右タラップが外される当時右論争が終了していたことは前記Dの証言によつて明かであり、また右タラップ取外し行為は当時極めて注目すべき事態であつたのであるから、被告人Cがこれに参加していないとすればこれを望見した状況等その際の自己の行動については明確な記億があつて然るべきであるに拘らず、同被告人は右の如くあいまいな供述しかしていない点に徴すると、右供述は到底措信できない。当審における証人Hの右所論に沿う供述も亦この点につき何ら具体性がなく採用し難い、また前記D等四証人以外の証人はタラップ取外しの際における被告人Cの行動について供述していないことは所論のとおりであるけれども、その点は何ら原判決の認定の妨げとならず、その他にも右認定を覆すに足るべき何ら適切の証拠はない。しからば原判決には何ら所論の如き事実誤認はない。論旨は理由がない。 検察官の控訴趣意第二点及び弁護人の控訴趣意第五点(いずれも量刑不当)について。 検察官の所論はまず、原判決が公共企業体等の職員の争議行為についてその正当なものについては労働組合法(以下労組法と略称する)第一条第二項によつて刑事免責が認められると判示し、原裁判所が被告人等の所為は右正当性の限界を超えたにすぎないものとして量刑した点につき、公共企業体等の職員の争議行為は公共企業体等労働関係法(以下公労法と略称する)第一七条の規定によつていかなる場合にも刑事免責を受ける余地はないから、これと異なる法律解釈の下になされた原判決の量刑は不当であると主張する。 よつてこの点について考えてみるに、そもそも勤労者の団結権、団体交渉権、争議権のいわゆる労働三権は、世界各国において長期間に亘つて労働運動が展開されてきた結果労働尊重の精神から次第に認められるに至つた基本的 の点について考えてみるに、そもそも勤労者の団結権、団体交渉権、争議権のいわゆる労働三権は、世界各国において長期間に亘つて労働運動が展開されてきた結果労働尊重の精神から次第に認められるに至つた基本的権利であつて、その正当な行使が処罰や私法上の損害賠償責任から解放され、また労働契約上の不利益な取扱から救済されることは、わが国においては日本国憲法の下における労組法によつてはじめて確立されたものではあるけれども、右の如き歴史的沿革は特に重要視しなければならないことはいうまでもないところである。そして右労働三権も一定の者に対しては制限乃至禁止されることがあることは国民大衆を基盤とする公共の福祉との関係上当然であるけれども、右労働三権が右の如き歴史的沿革に基く基本権であることを重視するならば、これに対する刑罰的制限禁止は成定法上極めて明確でなければならないと解すべきである。 そこで公労法の規定について調べてみるに、同法第一八条は同法第一七条に違反して同盟罷業、怠業等を実施し又はこれを共謀し、そそのかし若しくはあおつた職員は解雇される旨を規定し、また同法第三条は正当な争議行為の民事免責規定たる労組法第八条の規定の適用を排除することを明定しているけれども、一方罰則については何らの直接的規定がなく、国家公務員及び地方公務員等の公務員に対する場合と異なり同盟罷業、怠業等を企て又はその遂行を共謀し、そそのかし若しくはあおつた行為を処罰する国家公務員法第一一〇条第一項第一七号、地方公務員法第六一条第四号のような罰則規定を置いていないのみならず、却つて第三条において、公共企業体等の職員に対しては刑事上の免責規定たる労組法第一条第二項を含む労働組合法の適用あるものとしているのである。 もつとも、右労組法第一条第二項は労働組合の正当な行為についてのみ刑事上の免 公共企業体等の職員に対しては刑事上の免責規定たる労組法第一条第二項を含む労働組合法の適用あるものとしているのである。 もつとも、右労組法第一条第二項は労働組合の正当な行為についてのみ刑事上の免責を認めているのであつて、暴力を含む正当でない団体交渉又は争議行為が処罰の対象となることは勿論であるけれども、その然らざる場合においても、公労法はその第一七条において全面的に争議行為を禁止している点で国家公務員法第九八条第五項及び地方公務員法第三七条第一項と同様であるから、労働組合法の適用のある公共企業体等の職員についても、労働組合法の適用のない国家公務員及び地方公務員と同じく正当な争議行為というものはあり得ず、従つて争議行為については右労組法第一条第二項の免責が認められないと解する論もあり、検察官の所論は右見解に従うものと考えられ、また立法者もかく解すべきことを意図していたものと推察されないではない。 <要旨第二>しかし公労法が公共企業体等の職員に対し、労働組合法の適用あることを明示しながら、特に争議行為につ</要旨第二>いては右労組法第一条第二項の適用を排除することを明確に規定していないし、他にこの点に関連し、争議行為について直接の罰則規定を設けていない以上、たとい同法第一七条が全面的な争議行為の禁止を規定していても、その違反の効果は同法第一八条による解雇に止まるものと解すべきであつて(なお別に民事上の免責が与えられないで損害賠償義務の発生することは前記の如く労組法第八条の適用を排除する第三条の規定に基くものであるが)、公共企業体等の職員の行つた争議行為の処罰については、労組法第一条第二項の適用によつて、一般私企業の従業員と同様、犯罪の構成要件に該当すると共に、争議の目的、時期、手段、方法等の点において労働組合法所定の正当性の限界を超え 争議行為の処罰については、労組法第一条第二項の適用によつて、一般私企業の従業員と同様、犯罪の構成要件に該当すると共に、争議の目的、時期、手段、方法等の点において労働組合法所定の正当性の限界を超えるものに限られるものと解するのが相当である(暴力の行使はいかなる場合にも正当性の範囲を逸脱すること勿論であるのみならず、右正当性が社会通念に従つて判断される以上、個々の場合において一般私企業の場合と若干の相違を来すことあるはいうまでもない)。 しからばこれと解釈の結論を同じくする原判決の法律解釈は相当であつて、この点に関する検察官の所論は採用し得ない。 そして被告人等組合員が本件の如き斗争を敢行した原因は遠く、国鉄当局が累次に亘つて仲裁裁定の完全実施を怠つてきたこと等にも由来している点や、当局が行つた舷門とタラップの鎖錠行為が異例の措置であつて組合側を刺戟した点等諸般の事情を斟酌すると、原判決が被告人等に対し執行猶予の言渡をした点その他原判決の量刑は決して不当に軽いということはできないから、検察官の量刑不当の論旨は理由がない。 しかし一方被告人等が北海道と本州との間の殆ど唯一の一般旅客の交通機関である青函連絡船の出航を約一時間半遅延せしめて国民大衆に多大の迷惑を及ぼした責任は軽くないのであつて、被告人に対して懲役刑を科した原判決の量刑が不当に重いとする弁護人の所論も採用できず、弁護人の論旨も理由がない。 よつて刑事訴訟法第三九六条により本件各控訴を棄却すべきものとし、同法第一八一条第一項本文一八二条により当審における訴訟費用は全部被告人等の連帯負担とし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官羽生田利朝裁判官今村三郎裁判官船田三雄) 主文 とし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官羽生田利朝裁判官今村三郎裁判官船田三雄)

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