- 1 - 主文 本件抗告を却下する。 抗告費用は別紙記載の者の負担とする。 理由 1 記録及び当裁判所に顕著な事実によれば、本件の経緯等は、次のとおりである。 ⑴ 抗告人は、別紙記載の者(以下「本件弁護士」という。)を手続代理人として、福岡家庭裁判所小倉支部に申し立てた婚姻費用分担調停(同裁判所令和6年(家イ)第144号、第434号)において、裁判所書記官に対する忌避の申立てをした。これに対し、同裁判所は、令和7年11月21日、上記申立てについて、手続の遅滞のみを目的としていることは明らかであり、不適法なものであるなどとして、これを却下する旨の決定(以下「原決定」という。)をした。原決定は、同日、本件弁護士に告知された。 ⑵ 本件弁護士は、同月25日、福岡県弁護士会により、業務停止6月の懲戒処分(以下「本件懲戒処分」という。)を受け、本件懲戒処分の効力が生じた。このことは、遅くとも同月26日には当裁判所の知るところとなった。 ⑶ 本件弁護士は、同月28日、抗告人の代理人として、原決定に対する不服申立てをする旨の同月26日付け書面(以下「本件書面」という。)を当裁判所に提出した。これにより、抗告人は、本件抗告をした。 ⑷ 本件弁護士が同月27日以降に弁護士として当裁判所に提出した裁判を求める旨の書面は、相当多数に上る。また、本件書面には、抗告人の住所として本件弁護士の法律事務所の所在地が記載され、抗告人本人の本件弁護士に対する委任状の添付もなく、本件抗告の理由の記載も、本件事案に即した実質的な記載が乏しい。 令和7年(マ)第490号裁判所書記官忌避申立て事件却下決定に対する即時抗告事件令和7年12月18日第一小法 任状の添付もなく、本件抗告の理由の記載も、本件事案に即した実質的な記載が乏しい。 令和7年(マ)第490号裁判所書記官忌避申立て事件却下決定に対する即時抗告事件令和7年12月18日第一小法廷決定- 2 -2⑴ 弁護士法57条1項2号に定める業務の停止の懲戒について、その告知を受けた弁護士は、その告知によって直ちに当該期間中、弁護士としての一切の職務を行うことができないことになり、この禁止に違背したときは重ねて懲戒を受けることがあるばかりでなく、禁止に違背してなされた職務上の行為もまた、違法であることを免れないというべきである。そうである以上、当該弁護士は、業務停止期間中、代理人として家事事件の手続行為をすることが許されないのはもちろんであって、もし裁判所が上記のような懲戒の事実を知ったときは、裁判所は、当該弁護士に対し、手続への関与を禁止し、これを手続から排除しなければならない(最高裁昭和40年(オ)第620号同42年9月27日大法廷判決・民集21巻7号1955頁参照)。本件抗告は、本件弁護士が、本件懲戒処分に違反してした即時抗告であって、当裁判所が本件懲戒処分を知った後にされたものである。そうすると、本件弁護士は、本件抗告の手続から排除されなければならず、本件抗告は、手続代理人となる資格を一時的に停止された者がした不適法なものとなる。 ⑵ そして、弁護士法1条は、1項において、弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とすると定め、2項において、弁護士は、前項の使命に基づき、誠実にその職務を行わなければならない旨を定めている。弁護士法上の懲戒制度は、上記のような弁護士及び弁護士法人の使命と職務を全うし、弁護士及び弁護士法人に対する信頼を維持し向上させるために定められたものであって、高度の公益性を有す い旨を定めている。弁護士法上の懲戒制度は、上記のような弁護士及び弁護士法人の使命と職務を全うし、弁護士及び弁護士法人に対する信頼を維持し向上させるために定められたものであって、高度の公益性を有するから、その趣旨は貫徹されるべきものである。また、日本弁護士連合会において、「被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会の採るべき措置に関する基準」が定められ(平成4年1月17日理事会議決)、その中で、弁護士会等は、懲戒処分の告知に当たり、被懲戒弁護士に対し、業務停止の期間が1か月を超える場合には、直ちに依頼者との委任契約を解除するとともに、委任契約を解除した受任事件について、解除後直ちにその係属する裁判所等に対し、辞任の手続を執らなければならないことを説明し、その遵守を説示しなければならない旨が定められている。以上のように、- 3 -弁護士の業務停止の期間中における業務規制等について、国民の弁護士に対する信頼及び各弁護士会の懲戒制度の実効性を確保する改善措置が図られているところである。 ⑶ 本件懲戒処分は、本件弁護士に対して、6か月間、弁護士の業務に従事をしてはならない旨を命ずるものであり、本件懲戒処分の効力が生じている限り、これに従うことが強く求められるというべきである。そうであるにもかかわらず、上記の経緯等によれば、本件抗告は、本件弁護士が、本件懲戒処分を受けながら、これに違反する意図をもって当裁判所に本件書面を提出することによりされたものということができる。また、本件弁護士が本件懲戒処分の効力が生じた後に提出した裁判を求める旨の書面は相当多数に上り、本件書面はそのうちの一つとして提出されたものであるし、本件弁護士は上記基準によって遵守が求められている措置を講じていないことがうかがわれ、懲戒 た後に提出した裁判を求める旨の書面は相当多数に上り、本件書面はそのうちの一つとして提出されたものであるし、本件弁護士は上記基準によって遵守が求められている措置を講じていないことがうかがわれ、懲戒処分の違反の程度は重大である。 さらに、本件書面には、抗告人本人の本件弁護士に対する委任状が添付されておらず、抗告理由に関して本件事案に即した実質的な記載が乏しいこともあって、本件抗告が抗告人の意思を反映したものであることをうかがわせる事情は見当たらない。 これらの事情を併せ考慮すると、本件抗告について抗告人本人の追認により有効となると解することは、弁護士法が懲戒制度を設けた上記趣旨を没却するに等しいから、そのように解することはできず、本件抗告は、その不備を補正することができないというべきである。 ⑷ したがって、本件抗告は、補正を命ずることなく、不適法として却下すべきである。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官安浪亮介裁判官岡正晶裁判官堺徹裁判官宮川美津子裁判官中村愼)「別紙省略」
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