主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告A,被告B及び被告広島県は,原告広島県高等学校教職員組合福山地区支部に対し,連帯して金300万円及びこれに対する平成14年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告C,被告B及び被告広島県は,原告広島県高等学校教職員組合三次地区支部に対し,連帯して金300万円及びこれに対する平成14年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,教職員組合の地区支部である原告らが,それぞれの事務局が置かれている高等学校の体育館で支部の集会を開催するため,体育館の使用許可申請をしたが,当該高等学校の校長であった被告A及び被告Cがいずれも使用不許可としたため,同被告らの処分は違法であると主張し,また,広島県教育委員会教育長であった被告Bが被告A及び被告Cに原告らの体育館使用申請を不許可にするよう指示したと主張して,被告A,被告C及び被告Bに対して不法行為に基づく損害賠償(含遅延損害金)を,被告広島県に対して国賠法1条又は3条に基づく国家賠償(含遅延損害金)を請求している事案である。 1 争いのない事実及び証拠上容易に認定できる事実(後者は各項末尾掲記の各括弧内によって認定)(1) 当事者ア原告ら広島県高等学校教職員組合(以下「高教組」という。)は広島県内の教職員によって組織された地方公務員法(以下「地公法」という。)52条に基づく職員団体であり,原告らは,この高教組の各地区支部の一つである。 本件が起きた平成14年当時,府中地区には原告高教組府中地区支部(以下「原告旧府中地区支部」という。)が置かれていたが,同支部は平成16年4月に原告高教組福山地区支部と合併した。原告旧 つである。 本件が起きた平成14年当時,府中地区には原告高教組府中地区支部(以下「原告旧府中地区支部」という。)が置かれていたが,同支部は平成16年4月に原告高教組福山地区支部と合併した。原告旧府中地区支部は,平成14年当時,高教組の府中地区支部であって,同年度は広島県立戸手高等学校に置かれていた。原告高教組三次地区支部(以下「原告三次地区支部」という。)は高教組の三次地区支部であって,平成14年度は広島県立三次青陵高等学校に置かれていた。 (弁論の全趣旨)イ被告ら被告Aは,本件当時,戸手高等学校の校長の地位にあった。 被告Cは,本件当時,三次青陵高等学校の校長の地位にあった。 被告Bは,本件当時,地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)2条により組織された広島県教育委員会(以下「県教委」という。)の教育長の地位にあり,県教委の権限に属するすべての事務を司る(同法17条)者であった。 被告広島県は,本件当時,国家賠償法3条の規定する,被告A,被告C及び被告Bの費用負担者であった。 (2) 原告旧府中地区支部に関してア原告旧府中地区支部は,被告Aに対し,平成14年4月3日,高教組府中地区支部第50回定期大会(以下「第50回定期大会(府中地区)」という。)を戸手高等学校で同月20日に開催するために,同高等学校体育館を同日1日間,使用したい旨を申請した(以下「本件申請(府中地区)」という。)。 イ被告Aは,平成14年4月9日,本件申請(府中地区)に対し,定期大会につき,学校教育に支障をもたらすものが認められおよそ教育の場で行われるものとしてふさわしくないとの理由で不許可とした(以下「本件不許可処分(府中地区)」という。)。 ウ原告旧府中地区支部は,本件不許可処分(府中地区)により定期大会を戸手高等 よそ教育の場で行われるものとしてふさわしくないとの理由で不許可とした(以下「本件不許可処分(府中地区)」という。)。 ウ原告旧府中地区支部は,本件不許可処分(府中地区)により定期大会を戸手高等学校で開催することができなかったため,平成14年4月20日,府中市文化センターにおいて第50回定期大会(府中地区)を開催した。 (甲1)(3) 原告三次地区支部に関してア原告三次地区支部は,被告Cに対し,平成14年4月8日,高教組第50回定期総会(以下「第50回定期総会(三次地区)」という。また,府中地区と三次地区の第50回定期大会ないし総会をまとめて「本件各大会」という。)を三次青陵高等学校で同月20日に開催するために同高等学校体育館及び周辺駐車場を同日午前8時から午後1時まで使用したい旨を申請した(以下「本件申請(三次地区)」という。また,府中地区と三次地区の申請をまとめて,以下「本件各申請」という。)。 イ被告Cは,平成14年4月15日,本件申請(三次地区)に対し,定期総会につき,学校教育に支障をもたらすものが認められおよそ教育の場で行われるものとしてふさわしくないとの理由で不許可とした(以下「本件不許可処分(三次地区)」という。また,府中地区と三次地区の不許可処分をまとめて,以下「本件各不許可処分」という。)。 ウ原告三次地区支部は,本件不許可処分(三次地区)により定期総会を三次青陵高等学校で開催することができなかったため,平成14年4月20日,三次市まちづくりセンターにおいて第50回定期総会(三次地区)を開催した。 (甲2) 2 争点(1) 被告A,被告C及び被告Bに対する訴えの適法性(2) 本件各不許可処分の適法性(3) 責任原因(4) 損害 3 争点に関する当事者の主張(1) 被告A,被告C及び被告Bに対する訴えの適 (1) 被告A,被告C及び被告Bに対する訴えの適法性(2) 本件各不許可処分の適法性(3) 責任原因(4) 損害 3 争点に関する当事者の主張(1) 被告A,被告C及び被告Bに対する訴えの適法性について(原告らの主張)行政の複雑化・多様化によって行政権限が拡大し,公務員の権力行使による人権侵害の可能性や人権侵害による被害の重大性が格段に増大しているところ,国民からの統制・制御がない上に,公務員自身による抑制も期待できない結果,公務員による様々な汚職・権限濫用による事件が頻発している。また,公務と私的業務の関係が相対化しているのに,公務員であればその故意・過失により損害を与えても何ら責任追及されないことに合理的な理由はない。したがって,公務員がその職務行為につき故意,過失によって違法に他人に損害を加えた場合,公務員個人も責任を負うべきであるから,被告A,被告C及び被告Bに対する本件訴えは適法である。 (被告らの主張)原告らは,被告A,被告C及び被告Bに対し,民法709条に基づき損害賠償を請求しながら,被告広島県に対し,国家賠償法1条及び3条の規定に基づき損害賠償を請求している。原告らは,被告Aらの公務員としての職務行為につき故意,過失があるとして損害賠償を請求しているが,かかる場合,その公務員が属する国又は公共団体がこれを賠償する責めに任ずるのであって,公務員個人はその責任を負わない。したがって,被告A,被告C及び被告Bに対する損害賠償請求は不適法である。 (2) 本件各不許可処分の適法性について(原告らの主張)ア総論本件各不許可処分は,①憲法21条1項に違反し,②不許可とする理由がなく,③被告A及び被告Cが裁量権を逸脱・濫用して行ったものであり,④不当労働行為に該当するものであるから,違法な処分である。 イ憲法 各不許可処分は,①憲法21条1項に違反し,②不許可とする理由がなく,③被告A及び被告Cが裁量権を逸脱・濫用して行ったものであり,④不当労働行為に該当するものであるから,違法な処分である。 イ憲法21条1項違反本件各大会は,組合員の労働条件の維持改善及び教育の民主化実現を目的として活動する原告らにとって,その組合員がほぼ全員出席して催される重要な集会であって,憲法21条1項の表現の自由,集会の自由の行使として憲法上保障されており,同条2項により事前抑制が原則として禁止される。したがって,本件各大会の開催を制約する処分については,その合憲性が厳格に判断されなければならず,かかる大会が行われることにより明らかに公共の安寧秩序を不当に侵害する差し迫った危険,すなわち公共の安全に対する明白かつ現在の危険が存在する場合に限って,公共の福祉の見地から必要かつ最小限度の制約が許される。本件において公共の安全に対する明白かつ現在の危険が存在する場合に該当しないことは明らかであるから,本件各不許可処分は憲法21条に違反する。 ウ不許可理由不存在(ア) 学校教育法85条により,学校教育上支障のない限り,学校施設を教育,研究活動という本来の目的以外の使用目的で一般公衆・当該学校の構成員並びに国及び地方公共団体に利用させることが認められているところ,本件各大会は学校教育上支障を来すものではないから,本件各不許可処分は,理由がなく行われたものであって,違法である。 本件各不許可処分は高教組の活動を抑えようとする施策の一環としてなされたというのが実態である。すなわち,広島県の教育に不満を持つ一部保守派国会議員,広島県会議員,自由主義史観のグループと文部省が連携し教育への政治介入が行われ,平成10年には文部省是正指導がなされた。それ以降,県教委は教職員組 わち,広島県の教育に不満を持つ一部保守派国会議員,広島県会議員,自由主義史観のグループと文部省が連携し教育への政治介入が行われ,平成10年には文部省是正指導がなされた。それ以降,県教委は教職員組合の活動を封じ込めることに奔走し,本件各不許可処分も県教委に敵対する高教組には学校施設を貸すなという県教委の意向・指導に従ったものである。このことは政治介入に至った経緯やその後の状況からしても明らかであるし,従前,原告らは学校施設において集会を開催してきたが,それに伴って被告らが指摘するような「支障」が生じたことはなかったことからも明らかである。 (イ) 被告らが主張する本件各不許可処分の理由に対する反論a 地公法に抵触するとの主張に対して被告らは,本件各大会が,禁止されている争議行為を背景として今後とも闘争を展開することを意味しているから,地公法37条1項に抵触する旨主張する。しかし,原告らの本件各大会で争議行為に関連して取り上げられている内容は,「ストライキ態勢確立のたたかいに対する緊張感の希薄さがあることも否定できません。批准率・突入予定率の高さこそが,賃金・労働条件の前進に一定の成果をもたらした最大の要因なのだということを忘れてはなりません」,「1985年以降,広高教組はストライキに突入しておらず,スト未経験者が増加してきている。そのため『今年もどうせないだろう』といったふうに危機感が低下していたり,また県教委による組合攻撃の中で『こんな状況ではストが打てないのではないか』といったように自ら逃げているケースがあり,厳しく自己点検する必要がある。」といったことであり,決して争議行為の具体的な実施を前提として議論するものではなく,争議行為も辞さない構えで組合員らが団結し,労働条件について当局と折衝することの必要性を訴えるというもので ある。」といったことであり,決して争議行為の具体的な実施を前提として議論するものではなく,争議行為も辞さない構えで組合員らが団結し,労働条件について当局と折衝することの必要性を訴えるというものであって,何ら地公法37条1項に違反・抵触するものではない。また,全農林事件最高裁判決は現行法上公務員の争議行為禁止に見合う代償措置が制度として完備していることを根拠に争議権を全面一律禁止しており,代償措置制度が本来予定されている機能を発揮していない場合にその正常な運用を求める争議行為まで禁止することは違憲であるというべきである。本件各大会は,人事院勧告が完全には実施されず,軽視又は無視され,代償措置が本来の機能を果たさずその実効性を失うような違憲状態に陥った場合には争議行為も辞さない覚悟をもって地方公務員らが団結していることを当局に示すためのものである。そして,このような違憲状態になった場合に備えて平時から組合内部での意思の統一を確認しておくためのものである。したがって,原告らの取組は,団結権を確立し,それをはずみに人事委員会の勧告の完全実施を求める運動の一手段であり,正当な労働組合運動であるから,何ら地公法に抵触するものではない。さらに,現行法において,公務員の争議行動が全面禁止されている現状に対し,社会権規約委員会から平成15年8月末に政府に対して厳しい勧告がなされており,特に少なくとも公務員のストライキ権の保障については司法判断などを通じて即時に実施されるべきとの見解に立っていること,ILO理事会においても平成14年11月21日に日本の公務員制度はILO87号,98号条約に違反しているとして,条約に適合するよう法制度の改革を勧告したことをも鑑みれば,被告らの主張は理由がない。 b 学校教育法施行規則,学習指導要領に抵触するとの主張 務員制度はILO87号,98号条約に違反しているとして,条約に適合するよう法制度の改革を勧告したことをも鑑みれば,被告らの主張は理由がない。 b 学校教育法施行規則,学習指導要領に抵触するとの主張に対して被告らは,日の丸・君が代強制阻止闘争や主任制実働化強行批判につき学校教育法施行規則や学習指導要領に抵触する旨主張する。しかし,学習指導要領は,学校教育法に基づく同法施行規則の復委任による文部大臣の告示に過ぎず,法体系の中で最下位に属する法規であって,その内容に全面的な法的拘束力が認められるものではない(旭川学テ事件最高裁判決)。すなわち,学習指導要領に大綱的な基準としての性格は認められるものの,細かい点については教員の創意工夫やその地方の実情に即した教育活動が保障されているし,教員には憲法23条,教育基本法10条,ILO「教員の地位に関する勧告」61項により教育の自由が保障されており,教員は教育問題について絶えず意見を述べる権利が保障され,かつ,それが期待されている以上,教職員集団である原告らがその教育現場の実情に照らし,教育活動の場において地方の実情や創意工夫につき批判的に検討することは当然の社会的責務である。 日の丸・君が代問題については,広島県の場合,原爆投下により十数万人の命が奪われたという悲惨な歴史的経験があり平和教育が特に要請されているにもかかわず,D前教育長が着任して後,日の丸・君が代が強行され,およそ教育の場にふさわしくない事態や,子どもたちへの人権侵害の問題が生じている。このような状況に直面している原告らが教職員集団として意見を述べ,かつ,検討するのは当然のことであり,国民から期待されていることである。したがって,被告らの主張は理由がない。 主任制については,教職員は教育活動だけでなく子どもたちの生活全 団として意見を述べ,かつ,検討するのは当然のことであり,国民から期待されていることである。したがって,被告らの主張は理由がない。 主任制については,教職員は教育活動だけでなく子どもたちの生活全般の指導を行ってきたが,個々の生徒の生活全般に係わることができたのは,教師が一体となって連携・協力して学校運営に当たってきたからである。その基盤には,すべての教師が同じ資格で,同じ機能を担って教育に携わるという状況があった。しかし,主任制によれば,教育現場に管理統制,上命下達の原理が導入されることになり,教師集団の自主的な連携と協力体制が失われ,個々の教師たちが孤立してしまい,円滑な学校運営や行き渡った生活指導ができなくなることは必然である。また,主任制は,1日200円の手当支給という勤務労働条件にも係わるものである。したがって,教職員集団である原告らが,教育的問題であると共に勤務労働条件にも係わる主任制の問題について批判的に検討するのは当然のことであって,被告の主張は理由がない。 c 公職選挙法等に抵触するおそれがあるとの主張に対して被告らは,原告らが特定政党の候補者の推薦を決め政治活動を強力に推し進めるという方針を確認することが公職選挙法等に抵触するおそれがある旨主張するが,このような主張は原告らの政治活動の自由を真っ向から否定するものであるし,被告らの主張する抵触のおそれの根拠が明らかでなく,被告らの主張は理由がない。 d 生徒,保護者,広島県民が被告広島県の教育行政の在り方に不信を抱くようになるとの主張に対してこのような被告らの主張には何の根拠もないばかりか,被告広島県の教育行政の在り方についての批判を原告らに転嫁しようとするものである。もとより,教育行政に対する批評・批判は本来,県民,国民が様々な立場から自由に行うべきであっ 何の根拠もないばかりか,被告広島県の教育行政の在り方についての批判を原告らに転嫁しようとするものである。もとより,教育行政に対する批評・批判は本来,県民,国民が様々な立場から自由に行うべきであって,これをもって原告らの集会の自由を制約する理由にはなり得ない。 エ裁量権の逸脱・濫用学校施設の目的外利用は,一般公衆による純然たる私的に利用する場合から本件のように学校の構成員又は構成員と同様な学校教育者が学校教育活動の一環として利用する場合まで様々な形態があり,一律に律することはできない。また,本来,学校はセミ・パブリックフォーラムとして機能し,部分的に表現活動を保障すべき公共的な場所であり,私的な場所とは異なる性格を有しているし,近年においては学校施設が住民による表現活動及び学習の場,すなわち地域センターとして機能していることや,社会教育法44条の規定に鑑みて,表現の自由又は学習の自由に基づく権利主張を排除できないとして,一定の場合には管理権限者に使用させる義務を生ずることが確認されるようになってきており,地域に開かれた学校が叫ばれ,学校という組織に対する市民の認識や要望は大きくなっている。したがって,仮に学校教育法85条の「学校教育上支障のない限り」学校施設を社会教育その他公共のために利用させることができるとの規定を,学校施設の使用許可につき管理権限者の行政裁量に委ねる規定であると認めたとしても,その管理権限者の裁量は全くの自由裁量ではなく,「学校教育上の支障」については,集会の自由の憲法的保障の重要性と,学校施設のセミ・パブリックフォーラムとしての役割に鑑みて,必要最小限度の範囲に限定して解すべきである。すなわち,「学校教育上の支障」とは,原則として学校施設を集会に使用させた場合に生じる物的支障を指すと解すべきである。また, ーラムとしての役割に鑑みて,必要最小限度の範囲に限定して解すべきである。すなわち,「学校教育上の支障」とは,原則として学校施設を集会に使用させた場合に生じる物的支障を指すと解すべきである。また,集会を開催することで児童・生徒に精神的影響が生じ「学校教育上の支障」を来す場合があるとしても,それはその集会自体の反社会性が明らかであって,その社会的意義が乏しく,かつ,集会の開催それ自体が直接児童に対する精神的悪影響を及ぼすことが明らかである場合に限られるというべきである。そして,その運用は,国民に対して適正かつ公平で,社会教育法,学校教育法等の各種法律理念に沿ったものでなければならず,これに反して運用された場合は管理権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法である。具体的には,処分の目的及び動機,手続経過,比例・平等原則等を評価して判断すべきである。 本件において,本件各大会の参加人数等に照らすと他の施設での実施は困難が伴うこと,従前,原告らの開催する支部定期大会ないし定期総会について当然に使用許可がされていたこと,広島県下において,学校施設の目的外使用の申請に対し,そのほとんどが許可されており,不許可とされているのは高教組各地区支部の申請に係るものばかりであること,このような事情を知りながら本件各不許可処分をした被告らの目的は,原告らの最重要行事である本件各大会の開催を不可能又は困難にして原告らの活動・団結権を不当に抑える点にあったことは明白であること,前記ウのとおり,そもそも被告が主張する本件各不許可処分には理由がないこと,後記オのとおり,本件各不許可処分は不当労働行為意思の下になされたもので,便宜供与の一方的廃止として不当労働行為に該当すること等を考慮すると,本件各不許可処分には裁量権の逸脱,濫用があり違法である 後記オのとおり,本件各不許可処分は不当労働行為意思の下になされたもので,便宜供与の一方的廃止として不当労働行為に該当すること等を考慮すると,本件各不許可処分には裁量権の逸脱,濫用があり違法である。 オ不当労働行為性憲法28条により使用者は労働組合の団結権を承認してそれを損なわないよう尊重する義務が課され(団結権承認義務),その一つとして,使用者は労働者による労働組合の結成や運営に介入したり妨害したりしてはならないという不作為義務を負うところ,かかる支配介入禁止は,公務員労働者及び公務員労働組合の間にも当然に肯定されるから,県教委も支配介入は禁止され,そのような支配介入がなされた場合には,地公法上の行政措置要求や不服申立てのみならず,民法上の不法行為責任も追及できる。そして,本件各不許可処分の背景には,国民の意思を国家主義的に統制しようとする大きな流れがあり,これに反対する教職員組合に対し保守層の意向に従った県教委による数々の教職員組合潰しのための不当労働行為が行われてきたという経緯がある。本件各不許可処分もその一環としてなされたものであって,その真の目的は,高教組が県教委の行政方針に反対の態度を取っているため,これを嫌悪して学校施設を貸さないという報復的目的ないし組合活動阻害目的にあり,平成10年の文部省是正指導以降,県教委が行ってきた高教組に対する敵視・嫌悪に基づく方策の一つである。したがって,本件各不許可処分は,教職員組合である原告らの活動を封じ込めるという違法な目的,すなわち不当労働行為意思の下になされた違法なものである。 また,本件不許可処分は便宜供与の一方的廃止であって,不当労働行為に該当する。すなわち,原告らを含めた高教組の支部の定期大会・定期総会のために体育館などの学校施設を貸与することは数十年来の歴史的慣行と た,本件不許可処分は便宜供与の一方的廃止であって,不当労働行為に該当する。すなわち,原告らを含めた高教組の支部の定期大会・定期総会のために体育館などの学校施設を貸与することは数十年来の歴史的慣行として確立しており,従来,各校の校長は高教組の運動方針や活動内容を知った上で学校施設を貸与してきた。このように,従来は原告ら教職員組合に対し学校施設の使用が認められ,その際何ら支障は発生しておらず,かつ,本件での原告らの学校施設利用形態は従前と全く変わりがないにもかかわらず本件各不許可処分をしたことは,便宜供与の一方的廃止に該当する。 (被告らの主張)ア経緯県教委は,平成10年5月20日,文部省から広島県における学校の教育内容や管理運営上不適正な状況があるとの指摘,いわゆる文部省是正指導を受けて以来,法令等の遵守を通して教育の中立性を確保すると共に,職員団体等と適正な関係を保つことに留意して,是正すべき事項について改善や適正化に努めてきた。かかる文部省是正指導の趣旨は,「当たり前のことを当たり前にやりなさい。」という点にあり,従前の取扱いにかかわらず,現時点で一つ一つ吟味し,改めるべきものは改めるという断固とした対応をとることにした。 そこで,県教委は,県立学校施設の目的外使用について,たとえ毎年定例的になされるような申請であっても,その内容が学校設置目的に沿うものであるかどうか,施設管理上,学校教育上の支障に該当するかどうかといった観点から,1件1件審査して,許否の応答をすべきであるとの方針を確認した。 その結果,高教組各地区支部との関係では,定期大会ないし定期総会はおおむね平成12年度から県立学校施設を使用して開催されることはなくなり,高教組各地区支部が使用許可を申請した場合には,その都度,学校長がこれを審査して,学校教育上支障 は,定期大会ないし定期総会はおおむね平成12年度から県立学校施設を使用して開催されることはなくなり,高教組各地区支部が使用許可を申請した場合には,その都度,学校長がこれを審査して,学校教育上支障があるとの判断をしてきたものである。 イ判断基準地方公共団体は,住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設を設け,正当な理由がない限りこれを拒んではならないと同時に不当な差別的取扱いをしてはならないとされている(地方自治法244条)が,かかる施設は行政財産に属し(同法238条3項),その設置目的に沿って使用することが原則とされ,その目的外に使用する場合,その用途又は目的を妨げない限度において,管理権限者の許可を必要とする(同法238条の4第4項)。そして,地方公共団体が設置する公立の学校施設は行政財産に属するから,目的外使用に関する上記一般原則が当てはまる。また,学校施設の確保に関する政令(昭和24年2月1日第34号)1条,3条,学校教育法85条,広島県教育委員会公有財産管理規則(乙2。以下「本件管理規則」という。)20条の各規定も,それぞれ地方自治法238条の4第4項と同趣旨である。 これら法令の趣旨からすると,行政財産に属する学校施設のような公共施設は,その設置目的に沿わない場合,原則としてその使用は許されず,例外として目的又は用途を妨げない限度において,管理権限者の許可に基づき使用が認められるにすぎない。その許否については,管理権限者の裁量に委ねられているというべきであり,特に学校施設は,学校教育の利用に供することを目的として設置された施設であり,その性質上,広く一般に開放されることを想定して設置された施設ではないので,管理権限者の裁量権の幅は,一般の施設のそれと比較して広くなる。この趣旨に照らし,本件管理規則は使 して設置された施設であり,その性質上,広く一般に開放されることを想定して設置された施設ではないので,管理権限者の裁量権の幅は,一般の施設のそれと比較して広くなる。この趣旨に照らし,本件管理規則は使用許可基準をより明確に規定しているものの,これら使用許可基準に該当すれば,必ず使用を許可しなければならないというものではなく,これらの基準は管理権者において裁量権を行使する際の一つの指針を与えるものにすぎない。したがって,管理権限者の判断において,裁量権の逸脱・濫用に当たる事情がない限り本件各不許可処分は適法であり,その判断は学校施設の使用目的,代替施設の確保の困難性,施設管理上・学校教育上の支障などの諸事情を基盤として総合的に判断されるべきである。 ウ原告旧府中地区支部について(ア) 被告Aは,本件申請(府中地区)につき許可するか否かを審査し決定する権限を有していたので,当時の原告旧府中地区支部支部長であったEに対し,平成14年4月8日,第50回定期大会(府中地区)の内容を問うたところ,平成13年度に開催された高教組府中地区支部第49回定期大会(以下「第49回定期大会(府中地区)」という。)と同様であるとの回答を受けた。第49回定期大会(府中地区)の冊子(乙5)には,後記(イ)のような記載があり,放置しておけないような非社会的・反社会的なものや法令の規定に矛盾抵触するものが含まれており,第50回定期大会(府中地区)の内容は第49回定期大会(府中地区)と大略同様であることからすれば,第50回定期大会(府中地区)は,高教組の闘争方針について議論を尽くし,意思決定を行う場であることは明らかであって,これをもって高教組の労働運動そのものとみるほかない。こうした集会の会場として,戸手高等学校の学校施設を使用することは,学校施設の設置目的である学 くし,意思決定を行う場であることは明らかであって,これをもって高教組の労働運動そのものとみるほかない。こうした集会の会場として,戸手高等学校の学校施設を使用することは,学校施設の設置目的である学校教育とは何ら関係を有するものではない。したがって,本来の学校設置目的とは何らの関係がなく,一部,法令に矛盾抵触する内容等を含む集会が職員団体によって学校施設を使用して開催されるとすれば,その事実を知った生徒,保護者,広島県民等が学校施設の適正な使用ひいては広島県の教育行政の在り方について不信を抱くのは明らかであることから,戸手高等学校の学校施設を使用して第50回定期大会(府中地区)を開催することは施設管理上,学校教育上の支障に該当する。また,この大会の内容に照らし,学校施設において実施される必要があるわけでもなく,原告旧府中地区支部はあらかじめ代替施設(むしろ本命の施設というべきである。)を確保していたと考えられること等からすれば,本件不許可処分(府中地区)において,裁量権の逸脱,濫用はない。 (イ) 第49回定期大会(府中地区)の冊子の内容についてa 「生活と権利を守るたたかい」本項の内容は,平成12年度の秋季年末賃金確定闘争における取組を回顧・総括すると共に,地公法37条1項によって禁止されている争議行為を背景として今後とも闘争を展開するというものになっており,地公法の規定に抵触するものが存在するのは明らかであった。 b 「主任制・管理体制阻止のたたかい」主任の命課等に係わることは文部省是正指導項目であって,県教委はその適正化に向けて取り組んでいるところであるが,本項の内容は,原告旧府中地区支部において主任制度に反対しその実働化を阻止しようとするものであって,法令に従うべき義務を有する職員が反対闘争を引き続き行うことを意味して り組んでいるところであるが,本項の内容は,原告旧府中地区支部において主任制度に反対しその実働化を阻止しようとするものであって,法令に従うべき義務を有する職員が反対闘争を引き続き行うことを意味しており,学校教育法施行規則の規定に抵触するものが存在することは明らかであった。 c 「反臨教審,民主教育を確立するたたかい」本項の内容は,日の丸・君が代強制阻止闘争に係わるもので,単に意見を述べ,かつ,検討するという域に止まらず,国旗国歌条項を粉砕しようとする高教組の運動方針を確認するものであって,法的拘束力を有する高等学校学習指導要領に反するものであるし,卒業式・入学式の国旗掲揚・国歌斉唱等に関する文部省是正指導を受けてなされている県教委の適正化に向けた取組にも反するものであって,関係法令や上司の職務上の命令に従って教育指導を行わなければならないという職務上の責務を有する職員が学習指導要領所定の責務を放棄することを意味しており,法的拘束力のある学習指導要領の規定に抵触するものが存在することは明らかであった。 d 「選挙に対するとりくみ」職員団体活動として行われた政治的行為であっても,職員団体の構成員である個々の職員については,政治的行為や選挙活動に関する服務上の規制を受けるのであり,職員団体の活動であるからといって,個々の職員の行為がその制限を解除されるわけではない。本項の内容は,原告旧府中地区支部が特定政党の候補者の推薦を決め,政治活動を強力に推し進める旨の方針を確認するというものになっており,組合員たる職員が教育公務員特例法21条の4や公職選挙法136条の2に違反することとなる可能性をはらむものがあることは明らかであった。 e その他上記の外にも国や県教委が公にしている方針に真っ向から反対する闘争方針が数多く列挙されていた。 職選挙法136条の2に違反することとなる可能性をはらむものがあることは明らかであった。 e その他上記の外にも国や県教委が公にしている方針に真っ向から反対する闘争方針が数多く列挙されていた。 エ原告三次地区支部について(ア) 被告Cは,本件申請(三次地区)につき許可するか否かを審査し決定する権限を有していたので,当時の原告三次地区支部支部長であったFに対し,平成14年4月11日,第50回定期総会(三次地区)の内容を問うたところ,同月12日に原告三次地区支部書記長であったGから平成13年度に開催された高教組三次地区支部第49回定期総会(以下「第49回定期総会(三次地区)」という。また,府中地区と三次地区の第49回の大会をまとめて「第49回各大会」という。)と同様であるとして,その提出を受けた。第49回定期総会(三次地区)の冊子(乙6)には,後記(イ)のような記載があり,放置しておけないような非社会的・反社会的なものや法令の規定に矛盾抵触するものが含まれており,第50回定期総会(三次地区)の内容は第49回定期総会(三次地区)と大略同様であることからすれば,第50回定期総会(三次地区)は,高教組の闘争方針について議論を尽くし,意思決定を行う場であることは明らかであって,これをもって高教組の労働運動そのものとみるほかない。こうした集会の会場として,三次青陵高等学校の学校施設を使用することは,学校施設の設置目的である学校教育とは何ら関係を有するものではない。したがって,本来の学校設置目的とは何らの関係がなく,一部,法令に矛盾抵触する内容等を含む集会が職員団体によって学校施設を使用して開催されるとすれば,その事実を知った生徒,保護者,広島県民等が学校施設の適正な使用ひいては広島県の教育行政の在り方について不信を抱くのは明らかであることか 集会が職員団体によって学校施設を使用して開催されるとすれば,その事実を知った生徒,保護者,広島県民等が学校施設の適正な使用ひいては広島県の教育行政の在り方について不信を抱くのは明らかであることから,三次青陵高等学校の学校施設を使用して第50回定期総会(三次地区)を開催することは施設管理上,学校教育上の支障に該当する。また,この大会の内容に照らし,学校施設において実施される必要があるわけでもなく,原告三次地区支部はあらかじめ代替施設(むしろ本命の施設というべきである。)を確保していたと考えられること等からすれば,本件不許可処分(三次地区)において,裁量権の逸脱,濫用はない。 (イ) 第49回定期総会(三次地区)の冊子の内容についてa 「賃金引き上げ・生活を守るたたかい」前記ウ(イ)aと同様b 「管理体制打破,組織強化拡大のたたかい」前記ウ(イ)bと同様。ただし,原告旧府中地区支部を原告三次地区支部と読み替える。 c 「民主教育を確立するたたかい」前記ウ(イ)cと同様d 「政治改革のたたかい」前記ウ(イ)dと同様。ただし,原告旧府中地区支部を原告三次地区支部と読み替える。 e その他前記ウ(イ)eと同様オ原告らの主張に対する反論(ア) 憲法21条違反に対して集会の自由は,憲法21条が保障する表現の自由の一つの形態として可能な限り尊重されなければならないが,県立学校施設は一般人の集会を予定した施設ではなく,原則として当該管理者等の裁量にゆだねられている。したがって,原告らの主張は失当である。 (イ) 不当労働行為該当性に対して労働組合法及びこれに基づく命令の規定は,地公法58条1項により職員には適用されないし,地公法56条には職員団体についての不利益的取扱いの禁止を規定しているが,支配介入や団体交渉拒否の文言 対して労働組合法及びこれに基づく命令の規定は,地公法58条1項により職員には適用されないし,地公法56条には職員団体についての不利益的取扱いの禁止を規定しているが,支配介入や団体交渉拒否の文言は入っていない。これは,職員団体が政策的に認められた団体であることに帰する。また,そもそも高教組の支部に対し定期大会・総会において学校施設を貸与することは労使慣行ないし便宜供与には当たらない。すなわち,公務員の労使関係は公法によって規定されており労使慣行は存立する余地はないし,施設の使用についても地方公共団体の長等に施設管理権が認められている以上,これまで提供され続けてきた施設の使用の継続を求めることはできない。 県教委は,学校施設の目的外使用について申請者が職員団体であるとの理由で学校施設の使用を拒むものではなく,あくまで,その内容が学校施設の設置目的に沿うものであるか否か,施設管理上,学校教育上の支障に該当するか否かという観点から判断している。原告らの正当な組合活動を妨害する意図や動機がないことは明らかである。 (3) 責任原因(原告らの主張)ア被告A及び被告Cについて従前,高教組の大会につき校舎の使用が許可され,大会の開催によって何らの不都合が生じていなかったにもかかわらず,県教委及び被告Bは高教組を敵視しその活動を阻害しようとしたのであって,被告A及び被告Cはかかる県教委及びBの意向を受けて違法であることを知りつつ原告らの本件各申請につきそれぞれ不許可としたのであるから,故意に基づく不法行為が認められる。 仮に本件各不許可処分につき故意が認められないとしても,上記のように被告A及び被告Cには明らかに裁量を逸脱する重過失ないし過失があり,不法行為が成立する。 イ被告Bについて被告Bは,県教委の教育長として,教育委員会 つき故意が認められないとしても,上記のように被告A及び被告Cには明らかに裁量を逸脱する重過失ないし過失があり,不法行為が成立する。 イ被告Bについて被告Bは,県教委の教育長として,教育委員会の権限に属するすべての事務を司る強力な権限を有しており,憲法その他の法令に従って職務を遂行し,違法な行為を自ら行ったり,部下に指示したりしてはならないとの義務を有する。しかるに,被告Bは,被告A及び被告Cに対し,高教組の活動を阻害する目的で原告らの本件各申請を不許可とするよう指示したから,故意に基づく不法行為責任を負う。 ウ被告広島県について(ア) 被告B,被告A及び被告Cは,国賠法1条1項の「公務員」に該当するところ,上記のように同人らは,被告広島県の教育に関する事務のうち教育財産の管理に関する処分を行うにつき,故意又は重過失により原告に損害を与えたから,被告広島県は,同条項の責任を負う。 (イ) 被告広島県は,被告B,被告A及び被告Cの費用負担者であるから,同人らの上記不法行為につき,同法3条1項の責任を負う。 エ被告ら間の関係共同不法行為となり,原告らに対し,不真正連帯責任を負う。 (被告らの主張)原告らの責任原因に関する主張は争う。 (4) 損害(原告らの主張)代替会場での開催費用各30万円慰謝料各220万円弁護士費用各50万円(被告らの主張)原告らの損害に関する主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告A,被告C及び被告Bに対する訴えの適法性)について被告らは,被告A,被告C及び被告Bに対する本件訴えは不適法である旨を主張するが,同被告らはいずれも自然人であって当事者能力が認められる上,本訴請求は給付の訴えであって被告適格は原告が被告として選択した者に認められるから,同被告らにつき被告 件訴えは不適法である旨を主張するが,同被告らはいずれも自然人であって当事者能力が認められる上,本訴請求は給付の訴えであって被告適格は原告が被告として選択した者に認められるから,同被告らにつき被告適格も認めるのが相当である。したがって,被告A,被告C及び被告Bに対する本件訴えそれ自体が不適法であるとはいえない。 なお,前記争いのない事実等記載のとおり,被告A及び被告Cは広島県立高等学校の校長の地位にあり,被告Bは県教委の教育長の地位にあったから,同被告らはいずれも国家賠償法1条の「公務員」に該当する。そして,原告らの請求は,被告A,被告C及び被告Bの職務行為の違法を理由とする国家賠償請求であり,仮に同被告らにつき不法行為が成立するとしても公共団体である被告広島県が賠償の責めに任ずるのであって,実体法上,公務員個人はその責任を負うものではない(最高裁昭和28年(オ)第625号同30年4月19日第三小法廷判決・民集9巻5号534頁参照)ので,同被告らに対する請求は理由がない。 2 争点(2)(本件各不許可処分の適法性)について(1) 前記争いのない事実等,証拠(甲1ないし4,7,8,15ないし21,22の1・2,23ないし25,34ないし46,48ないし58,66の1・2,67,72ないし74,76ないし78,87,88,乙1ないし7,10ないし12,証人E,同F,同H,被告A本人,同C本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 ア背景事情第二次世界大戦後の昭和21年5月,主に小・中学校と高等学校の教職員によって広島県教職員組合(以下「広教組」という。)が結成された。昭和28年3月に小・中学校と高等学校によって教職員の任命権者が異なることになったため,広教組から分離・独立する形で,高等学校の教職員により高教組が結成され, 以下「広教組」という。)が結成された。昭和28年3月に小・中学校と高等学校によって教職員の任命権者が異なることになったため,広教組から分離・独立する形で,高等学校の教職員により高教組が結成され,それ以降,高教組と広教組は広島県教職員組合協議会を結成し,協調して教職員組合運動を行ってきた。高教組は,戦前の公教育への反省,民主教育の確立という理念を掲げ,賃金・労働条件の改善と民主教育の実現などを目指して活動を行い,高教組と県教委との間には,国旗掲揚・国歌斉唱の実施,主任制度,研修問題,時間外勤務などの多くの事項で協定が締結され,事実上の慣行が形成されたりしていて,これら協定・慣行に従って学校が運営されるという実態が存在していた。平成4年に学習指導要領に日の丸・君が代の指導が明記されたことに対し高教組等の教職員組合が反発したことから,当時の県教委教育長は,同年2月28日に日の丸・君が代の実施については学習指導要領に則って掲揚,斉唱するのを原則としつつ,君が代の歌詞には主権在民に馴染まず,身分差別につながるおそれがあるという見解もあり国民の十分なコンセンサスが得られておらず,日の丸についてはかつて天皇制の補強や植民地支配に援用されたことなどについて教育することが必要であるとして,日の丸・君が代についての教育内容は各学校が主体的に創造するものであり,何人もそれに介入してはならないという基本認識を明確にするなどの解釈を示し(2・28確認文書),現場ではこの解釈に従った運用がなされていた。ところが,平成9年,日の丸・君が代の実施に関する上記2・28確認文書について,一部マスコミが学習指導要領を逸脱する疑いがあるとの報道を行い,それに端を発して広島県の教育を巡る一連の報道がなされて以降,日の丸・君が代問題にとどまらず広島県の教育全般にわたって多く 文書について,一部マスコミが学習指導要領を逸脱する疑いがあるとの報道を行い,それに端を発して広島県の教育を巡る一連の報道がなされて以降,日の丸・君が代問題にとどまらず広島県の教育全般にわたって多くの議論が繰り広げられ,広島県議会本会議や文教委員会など様々な場面で教育問題が議題とされ,平成10年4月1日には国会で福山市立中学校の教諭が教育現場の状況について証言するなどしたため全国的な注目を集めることとなった。 このような流れの中で,文部省は,平成10年4月27日,28日に県教委及び福山市教育委員会に対して現地調査に入り,同年5月20日には広島県内及び福山市内の学校運営に不適正な実態があると指摘して,教育内容及び学校管理運営について是正を図ると共に是正状況を文部省へ報告するよう求めた(以下「文部省是正指導」という。)。ここでは,教育内容関係について7項目(卒業式・入学式の国旗掲揚・国歌斉唱,人権学習の内容,小学校の音楽での国歌「君が代」の指導,授業時間数や単位時間など),学校管理運営関係では6項目(教員の勤務と勤務時間に係る管理,主任等の命課の時期とその人選,職員会議の運営の実際等,学校運営に係る校長と職員団体との確認文書等の状況など)が是正指導の対象となった。文部省是正指導を受けて,県教委は,教職員の服務について法令,条例,服務規程等によって適正に処理し,学習指導要領を始めとする法令等に則った教育の推進を図ることとして,学校長や市町村教育委員会に対する指導や注意を行った。そして,同年7月1日に文部省の特殊教育課長であったDが県教委教育長に就任すると,県教委はさらに強力に各種指導や処分を行い,規則の改正等を行ったりして,公教育の中立性と県民に信頼される公教育の確立を図るための施策を行っていった。 文部省是正指導以降の県教委の施策に 任すると,県教委はさらに強力に各種指導や処分を行い,規則の改正等を行ったりして,公教育の中立性と県民に信頼される公教育の確立を図るための施策を行っていった。 文部省是正指導以降の県教委の施策に対し,高教組等の教職員組合は一斉に反発し,高教組と県教委は激しく対立した。日の丸・君が代は特に大きな問題として取り上げられ,平成11年2月には卒業式を翌日に控えた高等学校の校長が自ら命を絶つという事件も発生し,その原因や影響を巡って大きくマスコミにも取り上げられるなどした。そして,高教組等の教職員組合と,県教委の間における一連の対立は,マスコミ報道などによって県民のみならず国民の高い関心を集めていた。 イ本件各大会などについて原告らは高教組各地区支部の一つであったが,各地区支部では,例年4月と11月に集会を開催しており,4月の集会は春の定期大会,11月の集会は批准集会などと一般に呼称されていた。これら集会は全組合員が参加資格を有する行事で,原告ら各地区支部では重要度の高い行事と認識されていた。 春の定期大会では,前年度の決算・新年度の予算の承認,地区支部の新役員の承認,前年度の活動の総括,新年度の運動方針などについて議決・報告がなされていた。 毎年,地区内の高等学校の持ち回りで原告ら各地区支部の事務局が置かれるが,従前から春の定期大会や批准集会は,各地区支部の事務局が設置されている高等学校の体育館において使用料を支払うことなく開催されてきた。しかし,平成11年度の批准集会では当時九つあった地区支部の一部を除いて学校施設の使用が許可されず,平成12年度の春の定期大会ではいずれの地区支部においても学校施設の使用は許可されなかった。 ウ本件不許可処分(府中地区)について(ア) 原告旧府中地区支部では,本件の1年前である平成13年度は府中東 2年度の春の定期大会ではいずれの地区支部においても学校施設の使用は許可されなかった。 ウ本件不許可処分(府中地区)について(ア) 原告旧府中地区支部では,本件の1年前である平成13年度は府中東高等学校に事務局が置かれていた。平成12年度の春の定期大会以降,いずれの地区支部でも学校施設で集会を開催することができなくなっていたことから,平成13年度の春の定期大会である第49回定期大会(府中地区)は府中東高等学校の体育館ではなく,府中市文化センターで開催された。 本件で問題となっている平成14年度は,広島県立戸手高等学校に原告旧府中地区支部の事務局が置かれることになった。原告旧府中地区支部の申し入れにより,県教委は同原告に対して戸手高等学校の準備室の一つを1年間,事務局として使用することを許可した。なお,高教組戸手高等学校分会にも分会専用電話兼ファクシミリの設置が認められていた。 平成14年3月28日,広島地方裁判所は,別件についての判決を言い渡した(同裁判所平成11年(ワ)第1789号)。広教組を原告,呉市を被告として,広教組が教研集会を開催するため呉市立中学校の学校施設の使用許可を申請したところ,呉市教育委員会が不許可としたため,同処分の適法性が争われたという損害賠償請求の事案であり,同裁判所は,呉市教育委員会が学校施設の使用申請を不許可としたことは裁量権を逸脱した違法な処分である旨の判断を示した。他方,広島地方裁判所は,同日,高教組による批准集会のための学校施設使用申請に対し,当該高等学校長が不許可処分としたことの適法性が争点となった別の訴訟についての判決を言い渡した(同裁判所平成12年(ワ)第188号)。同裁判所は,批准集会の開催のための学校施設の使用を拒否したことについてについて,校長に裁量権の逸脱濫用はなかったとする旨 別の訴訟についての判決を言い渡した(同裁判所平成12年(ワ)第188号)。同裁判所は,批准集会の開催のための学校施設の使用を拒否したことについてについて,校長に裁量権の逸脱濫用はなかったとする旨の判断を示したものであるが,他方,高教組からの申請に対して何らの処分をしなかったという手続的な点に違法があるとして損害賠償請求自体は一部認容した。 原告旧府中地区支部の支部長に就任したEは,平成12年度の春の定期大会から学校施設を使用できなくなったのは,県教委による組合活動の阻害行為の一環であると考えていたところ,上記二つの別件判決が言い渡されたことを受け,近々開催する予定になっていた平成14年度の春の定期大会,すなわち第50回定期大会(府中地区)を,従前どおりに事務局が設置されている高等学校の体育館を使用して開催すべきであると考えるに至った。その時点で原告旧府中地区支部は,既に同大会の開催のために府中市文化センターを予約していたが,それとは別に学校施設の使用を申請することにした。そこで,原告旧府中地区支部は,戸手高等学校の校長であった被告Aに対し,平成14年4月3日,第50回定期大会(府中地区)を開催するため同高等学校の体育館を同月20日の1日間使用したいと申し入れた(その後,書面での申請もなされた。)。これに対し,被告Aは,上記別件判決のこともあったことから直ちには回答せず,県に相談すると答えて判断を留保した。2日後の同月5日,被告Aは県教委に赴き,県職員らと協議を行った。そこでは,学校施設の使用許可申請につき毎年定例的になされるようなものであっても,学校設置目的に沿うものか否か,学校教育上の支障があるか否かについて1件1件審査して許否の判断をすべきとの方針の下,第50回定期大会(府中地区)の要綱などの資料を入手して判断すること,資 あっても,学校設置目的に沿うものか否か,学校教育上の支障があるか否かについて1件1件審査して許否の判断をすべきとの方針の下,第50回定期大会(府中地区)の要綱などの資料を入手して判断すること,資料が入手できない場合には支部長などから大会の内容について聴き取りを行うこと,大会要綱のゲラなどの提示を受けて参考とすること,ゲラなどの提示を拒否された場合には支部長らの説明と過去の大会資料を参考に判断を行うことなどが確認された。そして,上記別件判決の訴訟資料の中に,前年度の第49回定期大会(府中地区)の大会資料が含まれていたことから,被告Aはそのコピーを受け取った。 被告Aは,受け取った第49回定期大会(府中地区)の大会資料を読んだところ,主任制や日の丸・君が代強制に反対といった内容が含まれていると判断し,今回開催予定の第50回定期大会(府中地区)の内容も同様である場合には体育館の使用を許可することは難しいと考えた。 (イ) 平成14年4月8日,被告Aは,教頭立合の下,Eらからの聴き取り調査を行ったところ,Eは第50回定期大会(府中地区)の大会議案書につき作成中だが,同大会の内容は昨年の第49回定期大会(府中地区)と同様であると答えた。そのため,被告Aは,「校長として県の教育施策に反対する内容を決議する大会に施設を使わせるわけにはいかない。」と述べ,さらに,地区支部に事務所を貸すことと,支部の運動方針を公に決定する定期大会のために使用許可を出すこととでは意味合いが違うので,本件申請(府中地区)に対し使用許可を出すことはできないと述べた。そして,翌日の同月9日に被告Aは,本件申請(府中地区)につき学校教育上の支障があることを理由として,本件不許可処分(府中地区)をした。 平成14年4月20日,原告旧府中地区支部は,事前に予約していた府中市文 同月9日に被告Aは,本件申請(府中地区)につき学校教育上の支障があることを理由として,本件不許可処分(府中地区)をした。 平成14年4月20日,原告旧府中地区支部は,事前に予約していた府中市文化センターで第50回定期大会(府中地区)を開催したが,特に混乱等は生じなかった。 (ウ) 被告Aは原告旧府中地区支部から「学校教育上の支障」の具体的内容について回答してほしいとの申し入れがあったことから,平成14年5月16日に同原告に対して口頭で説明した。まず,第50回定期大会(府中地区)の内容は,前年度に開催された第49回定期大会(府中地区)の内容と大略同じということであるから,第49回定期大会(府中地区)の大会資料に基づいて審査したことを述べ,第49回定期大会(府中地区)の大会資料によると,平成12年度府中地区経過報告として秋季年末賃金確定闘争における原告旧府中地区支部の取組みが総括されており,地公法37条1項によって禁止されている争議行為を背景として今後も闘争を展開するとの意思が確認されていること,主任制実働化阻止の方針が確認されており,学校教育法施行規則65条,22条の3の趣旨を根底から否定していること,卒業式や入学式での国旗掲揚・国歌斉唱に反対する方針が確認されており,法的拘束力のある学習指導要領に反すること,特定政党の候補者の推薦を決め,政治活動を強力に推し進める方針が確認されており,地公法36条,公職選挙法136条の2に違反する可能性をはらむこと,国や県教委が公にしている方針に真っ向から反対する闘争方針が数多く列挙されており,総じて被告広島県の公教育に対する県民の信頼を損なうことにつながることを説明した。その上で,第49回定期大会(府中地区)は原告旧府中地区支部の労働運動としての色彩が濃厚であり,第50回定期大会(府中地区) 告広島県の公教育に対する県民の信頼を損なうことにつながることを説明した。その上で,第49回定期大会(府中地区)は原告旧府中地区支部の労働運動としての色彩が濃厚であり,第50回定期大会(府中地区)もそれと変わらないのであれば集会の会場として戸手高等学校の学校施設を使用することは学校施設の設置目的に沿うものとはいえず,一部,法令に矛盾抵触する内容を含む集会が職員団体によって学校施設を使用して開催されれば,その事実を知った生徒,保護者,広島県民等が学校施設の適正な使用,ひいては被告広島県の教育行政の在り方に不信を抱くことは明らかであるから,学校教育上の支障に該当すると判断した旨を説明した。 (エ) 被告Aが見た第49回定期大会(府中地区)の資料には次のような事項が記載されていた。 大会スローガン(案)の冒頭に,「勤務労働条件の向上・拡大のため,広高教組運動を承継・発展させ組織を強化しよう。」と記載され,他にも「権力の攻撃(主任制・不当人事・官製研修・天皇制イデオロギーなど)と,断固闘おう。」,「日常の職場闘争を通して,教育労働者としての主体を確立し,職場の団結を強化しよう。」などがスローガンとして挙げられていた。 平成12年度の原告旧府中地区支部における経過報告として,「県教委は現場を無視して大量の人事異動を策してきました。教職員の半数が異動させられた分会,そのため学校運営に大きな支障をきたした学校が出ました。地区支部の組織破壊を画策した人事異動,分会でも同様に分会長・書記長を狙っての攻撃。あるいは解放教育係を中心的に異動させられた分会。それは組合つぶし・解放教育への攻撃・民主的な教育の破壊と露骨でした。そのような攻撃は,生徒の進路を保障し民主的な職場を守る観点から断じて許すわけにはいきません。」との文章が冒頭に記載されていた。 「 は組合つぶし・解放教育への攻撃・民主的な教育の破壊と露骨でした。そのような攻撃は,生徒の進路を保障し民主的な職場を守る観点から断じて許すわけにはいきません。」との文章が冒頭に記載されていた。 「生活と権利を守るたたかい」と題する項では,平成12年度の春闘を巡る経過が記された後,「広島県においては,五者共闘会議・広教協としての連帯をさらに強化し,ストライキを基軸とした通年的な戦いを堅持して諸要求の実現を目指さなくてはなりません。」という教職員によるストライキを視野に入れた趣旨の文章が記載され,具体的な平成12年度春季生活闘争の経過が詳細に報告されていた。さらに,秋季年末賃金確定闘争の経過,労働時間短縮と学校五日制を巡る闘争経過なども詳細に報告されていた。その中には,平成12年度は高教組のストライキ批准が87%で,ストライキ突入署名が89%という高率であったことを背景として五者共闘や交渉を積み上げ,五者共闘幹事団会議はストライキ突入の方針を確認したこと,各単組の態度を決定すべく,各単組会議へと移行したが,最終的には五者共闘幹事団会議として不満を残しつつもストライキ回避を決定したことなど,ストライキに関しての事細かな経過も記載されていた。 「『主任制』・管理体制阻止のたたかい」と題する項では,主任制は,「権力側の『意思』を文部省から県教委へ,そして校長・教頭・主任へと『上意下達』『指示・命令』する系統を完成させようとするものであり,対等・平等であるべき教職員集団の間に分裂を持ちこもうとする」制度であるとの認識を示していた。その上で,高教組等の教職員組合による主任制にまつわる闘争の経過をまとめ,主任制の実働化により職場に差別と分断が持ち込まれ,教職員が序列化されることになるが,平成12年3月に県教委は主任制実働化を行った結果,学校現場は 職員組合による主任制にまつわる闘争の経過をまとめ,主任制の実働化により職場に差別と分断が持ち込まれ,教職員が序列化されることになるが,平成12年3月に県教委は主任制実働化を行った結果,学校現場は混乱し生徒への影響や解放教育を阻害する状況が出現していると記載されていた。また,主任の命課,手当の拠出,主任研修,職員会議の在り方等にも言及し,最後に,「権力側は,『戦争のできる国づくり』に向け,教育のあり方を『国家のための教育』の方向へ変質させようとしています。そして,それを具現化していくために,『教職員の序列化』を目論んでいるのです。・・・すべての教職員が生徒の進路保障に向けて充分に取り組める態勢の構築が求められています。権力側から仕掛けられている攻撃は,民主教育を潰そうとするものです。それに対して闘わなければ,必ず破壊されてしまいます。総団結のもと,民主的で生徒の教育に資する学校組織の確立に向けた闘いを構築していかなければなりません。」と締めくくられていた。 「反臨教審・民主教育を確立するたたかい」と題する項では,日の丸・君が代を巡る近年の経緯が記載され,その中には,日の丸・君が代の強制は「権力者の意図を貫徹させ,権力者に従わせるために,上意下達のシステム(『主任制』に典型されるような)を構築していこうとするもの」であるなどという高教組の立場からの評価も織り込まれていた。その上で,日の丸・君が代の強制実施を阻止するための活動を展開すべきであるとして,具体的な活動方針が示されていた。また,文部省・県教委が行ってきた各種研修について,これらは研修の本旨を逸脱し研修の実が上がらないことは明らかであって,「研修のねらいは,教育行政の破綻で惹起した中途退学者の問題や『学級崩壊』は,教員の資質の低下にあるなど,その原因を教職員の資質の低下に転 修の本旨を逸脱し研修の実が上がらないことは明らかであって,「研修のねらいは,教育行政の破綻で惹起した中途退学者の問題や『学級崩壊』は,教員の資質の低下にあるなど,その原因を教職員の資質の低下に転嫁することにあります。そして,資質の向上を口実にして,『文部省の意を体する』従順な教職員づくり,生徒の現実を知ろうとしない教職員づくりをめざすというところにあります。」との認識を示し,官制研修に反対するとの立場を明確にしていた。そして,県教委は官制研修を教職員管理の道具として利用しており,厳しく問題提起する必要があるとしていた。 「組織攻撃をはねかえすたたかい」と題する項では,平成10年7月にD教育長が就任した以後の経緯について俯瞰する中で,同教育長による各種施策を「なりふりかまなぬ制度改悪の強行」とし,高教組の立場からの批判が繰り広げられていた。例えば,主任制の実働化を図るために規則を改悪し,その結果,請負主義がはびこり,教職員全体で教育課題に取り組むという推進体制が崩壊しようとしており,生徒の実態がわかりにくくなり,校長がすべての権限を行使するとの名目の下,学校が極めて閉鎖的になっているとしていた。そして,平成11年12月の県教委による懲戒処分の取消しを求めること,県教委の教職員に対する過払給与の返還請求は不当なものであって団結して戦うべきこと,平成10年度の人事異動について損害賠償を請求し,平成11年度の人事異動については人事委員会への申立てを行い,D教育長による人事異動の不当性を明らかにし,生活を守るために適正な人事異動がなされるよう今後も戦うべきことなどの様々な活動方針が示されていた。 「高校入試制度改悪阻止・反募停高校教育改革へのたたかい」と題する項では,被告広島県の高校入試につき平成11年度以降,定員内不合格が出たこと も戦うべきことなどの様々な活動方針が示されていた。 「高校入試制度改悪阻止・反募停高校教育改革へのたたかい」と題する項では,被告広島県の高校入試につき平成11年度以降,定員内不合格が出たことを初めとして,D教育長による入試制度の改悪はこれまでの解放教育を基底とする教育理念を空洞化させるものであるとの認識を示していた。そして,入試制度についての高教組の活動方針が示されていた。 「選挙に対するとりくみ」と題する項では,高教組として護憲の立場を取ることを明確にし,次回の参議院選挙において,新社会党より立候補する予定の者を組織推薦し支援することを決定した旨が記載されていた。 その他,各専門部の活動報告,各分会の活動総括,平成12年度の決算・監査,平成13年度の予算案等が記載されていた。 そして,平成14年4月20日に開催された第50回定期大会(府中地区)の議事進行状況は,第49回定期大会(府中地区)の資料に記載されている内容とほぼ同様のものであった。 エ本件不許可処分(三次地区)について(ア) 原告三次地区支部では,本件の1年前である平成13年度は三次高等学校に事務局が置かれていた。平成12年度の春の定期大会以降,いずれの地区支部でも学校施設で集会を開催することができなくなっていたことから,平成13年度の春の定期大会である第49回定期総会(三次地区)は,三次高等学校の体育館ではなく,リベルテという学校施設以外の施設で開催された。 本件で問題となっている平成14年度は,広島県立三次青陵高等学校に原告三次地区支部の事務局が置かれることになった。県教委は同原告に対して三次青陵高等学校の同和教育推進室を1年間,事務局として使用することを許可したが,使用料は徴収しなかった。なお,高教組三次青陵高等学校分会にも専用電話兼ファクシミリの設置が 。県教委は同原告に対して三次青陵高等学校の同和教育推進室を1年間,事務局として使用することを許可したが,使用料は徴収しなかった。なお,高教組三次青陵高等学校分会にも専用電話兼ファクシミリの設置が認められており,使用料は免除されていた。 原告三次地区支部の支部長に就任したFは,平成12年度の春の定期大会から学校施設を使用できなくなったのは,県教委による組合弱体化施策であって,このような不許可処分に唯々諾々と従うことはできないとの思いがあり,前記二つの別件判決を受け検討・議論した結果,原告三次地区支部として平成14年度の春の定期大会である第50回定期総会(三次地区)を従前のように学校施設を使用して開催すべきであるとの結論に至った。 その時点で原告三次地区支部は,既に同大会の開催のために三次市まちづくりセンター(上記リベルテが平成14年に改称)を予約していたが,それとは別に学校施設の使用を申請することにした。そこで,原告三次地区支部は,平成14年4月8日,第50回定期総会(三次地区)を開催するため三次青陵高等学校の体育館及びその周辺駐車場を同月20日の午前8時から午後1時まで使用することの許可を求める行政財産使用許可申請書を同高等学校の事務長に提出した。事務長から本件申請(三次地区)について報告を受けた被告Cは,すぐに県教委に連絡し,翌日の同月9日には県教委に赴いて県職員らと協議を行った。そこでは,学校施設の使用許可申請につき毎年定例的になされるようなものであっても,学校設置目的に沿うものか否か,学校教育上の支障があるか否かについて1件1件審査して許否の判断をすべきとの方針の下,第50回定期総会(三次地区)の要綱などの資料を入手して判断すること,資料が入手できない場合には支部長などから大会の内容について聴き取りを行うこと,大会要綱のゲ して許否の判断をすべきとの方針の下,第50回定期総会(三次地区)の要綱などの資料を入手して判断すること,資料が入手できない場合には支部長などから大会の内容について聴き取りを行うこと,大会要綱のゲラなどの提示を受けて参考とすること,ゲラなどの提示を拒否された場合には支部長らの説明と過去の大会資料を参考に判断を行うことなどが確認された。 (イ) 平成14年4月11日,被告CはFらから聴き取り調査を行ったところ,Fは第50回定期総会(三次地区)の資料が未だ完成していないと述べたので,被告Cは資料が完成次第,早急に提出するよう要求した。 翌日の平成14年4月12日,原告三次地区支部の書記長は,被告Cに対し,今年度の第50回定期総会(三次地区)の資料が手に入らなかったことから昨年度の第49回定期総会(三次地区)の資料を提出した。被告Cが目次を開くと,「主任制実働化阻止について」,「『日の丸・君が代』の強制阻止について」という表題があった。そこで,被告Cは,これらは被告広島県の教育行政施策に反対する内容となっており,これらを運動方針とする原告三次地区支部の会合を学校施設で開催すれば,県民,保護者,生徒からの信頼を失うことになるため,同施設の使用を許可することはできない旨を述べた。同月15日,被告Cは,本件申請(三次地区)につき学校教育上の支障があることを理由として,本件不許可処分(三次地区)とした。 平成14年4月20日,原告三次地区支部は,事前に予約していた三次市まちづくりセンターで第50回定期総会(三次地区)を開催したが,特に混乱等は生じなかった。 (ウ) 被告Cは原告三次地区支部から「学校教育上の支障」の具体的内容について回答してほしいとの申し入れがあったことから,平成14年5月10日に同原告に対して口頭で説明した。まず,第50回定期総 。 (ウ) 被告Cは原告三次地区支部から「学校教育上の支障」の具体的内容について回答してほしいとの申し入れがあったことから,平成14年5月10日に同原告に対して口頭で説明した。まず,第50回定期総会(三次地区)の内容は,前年度に開催された第49回定期総会(三次地区)の内容と大略同じということであるから,第49回定期総会(三次地区)の大会資料に基づいて審査したことを述べ,第49回定期総会(三次地区)の大会資料によると,平成12年度経過報告として秋季年末賃金確定闘争における原告三次地区支部の取組みが総括されており,地公法37条1項によって禁止されている争議行為を背景として今後も闘争を展開するとの意思が確認されていること,主任制実働化阻止の方針が確認されており,学校教育法施行規則65条,22条の3の趣旨を根底から否定していること,卒業式や入学式での国旗掲揚・国歌斉唱に反対する方針が確認されており,法的拘束力のある学習指導要領に反すること,特定政党の候補者の推薦を決め,政治活動を強力に推し進める方針が確認されており,地公法36条,公職選挙法136条の2に違反する可能性をはらむこと,国や県教委が公にしている方針に真っ向から反対する闘争方針が数多く列挙されており,総じて被告広島県の公教育に対する県民の信頼を損なうことにつながることを説明した。その上で,第49回定期総会(三次地区)は原告三次地区支部の労働運動としての色彩が濃厚であり,第50回定期総会(三次地区)も変わることがないとすれば集会の会場として三次青陵高等学校の学校施設を使用することは学校施設の設置目的に沿うものとはいえず,一部,法令に矛盾抵触する内容を含む集会が職員団体によって学校施設を使用して開催されれば,その事実を知った生徒,保護者,広島県民等が学校施設の適正な使用,ひいては被 の設置目的に沿うものとはいえず,一部,法令に矛盾抵触する内容を含む集会が職員団体によって学校施設を使用して開催されれば,その事実を知った生徒,保護者,広島県民等が学校施設の適正な使用,ひいては被告広島県の教育行政の在り方に不信を抱くことは明らかであるから,学校教育上の支障に該当すると判断した旨を説明した。 (エ) 被告Cが見た第49回定期総会(三次地区)の資料には,次のような事項が記載されていた。 大会スローガン(案)の冒頭に,「2001年度国民春闘,秋季年末賃金確定闘争に勝利し,賃金抑制,合理化攻撃を阻止し,生活と権利を守る労働基本権を確立しよう。」と記載され,引き続き,平成12年度の原告三次地区支部における経過報告が記載されていた。 「賃金引き上げ・生活を守るたたかい」と題する項では,人事院勧告,県人事委員会勧告の内容を紹介し,昨年に引き続きマイナス勧告となったことが記載されていた。また,同年秋季年末賃金確定闘争において,高教組がストライキを配置し,諸要求実現のために戦う方針であると組織決定され,五者共闘幹事団会議において各単組の実情を考慮しつつストライキの規模を「早朝2時間一波」と決定したこと,批准集会によってストライキ権が確立され,県教委との各種交渉が繰り広げられたが,最終的にはストライキ回避を決定したことなどの経緯が詳細に報告されていた。その上で,「確定闘争は職場闘争の集大成です。だからこそ日常的な職場闘争をさらに強化していくことが,最大の課題だと思います。」との認識が示されていた。 「年度末人事闘争」と題する項では,冒頭に「人事闘争は,組合員一人ひとりの権利,労働条件,くらし,健康を守るたたかいであり,自主的で独創的な教育実践が保障される民主的な職場を確立し,分会や組織全体の強化を図るためにも,極めて重要なたたかいで 事闘争は,組合員一人ひとりの権利,労働条件,くらし,健康を守るたたかいであり,自主的で独創的な教育実践が保障される民主的な職場を確立し,分会や組織全体の強化を図るためにも,極めて重要なたたかいです。」と記載されており,平成11年度における人事に関する組合活動の経緯が高教組の立場からの評価を交えて記されていた。さらに,平成12年度末人事闘争における組合の活動方針,例えば人事対策委員会の確立や不当配転阻止,異動希望推進の取組みなどが確認されていた。 「管理体制打破,組織強化拡大のたたかい」と題する項では,主任制とは,「教職員の管理・統制ひいては教育の国家統制にむけた攻撃であり,反動側の意思を文部省から県教委へ,そして校長・教頭へと『上意下達』『指示・命令』する系統を完遂しようと教職員集団の間に打ち込まれた分裂のくさび」にほかならないとの認識を示した上で,近年における主任制実働化阻止闘争の経過が詳細に報告され,高教組として学校組織の見直しを図るべきとの提言がなされていた。さらに,県教委によって高教組つぶしがなされているとの認識の下,その具体例として組合年休問題,会場不使用問題等に対する高教組の方針が記載され,組織拡大強化のための取組みを具体的に例示すると共に,今後の組織拡大・強化を最重要課題として取り組むべきとの認識が示されていた。 「民主教育を確立するたたかい」と題する項では,平成12年度における日の丸・君が代の実施に関する経緯が記載され,高教組として日の丸・君が代の半ば暴力的な強制に対する的確な対抗措置や阻止行動を講じなければならないとの活動方針が示されていた。また,文部省・県教委が各種研修を強制しているのは,「『教育荒廃』を私たち教員の『資質』に転嫁し,また文部省に従順な教職員づくりをめざすところにある」との認識が示されてい の活動方針が示されていた。また,文部省・県教委が各種研修を強制しているのは,「『教育荒廃』を私たち教員の『資質』に転嫁し,また文部省に従順な教職員づくりをめざすところにある」との認識が示されていた。そして,特に初任者研修が負担となっていることや,同研修において県教委が組合加入を妨げる冊子を配布していることなどを紹介し,県教委に対し申し入れや交渉をすべきとの活動方針が示されていた。 「高校入試制度改悪阻止・高校教育改革に関するたたかい」と題する項では,従前の被告広島県における入試の方針が平成13年度になって県教委によって改悪されたり,平成11年以降,定員内不合格が出たりしている現状を示し,県教委に問題提起すべきとの活動方針が示されていた。また,県教委が一部高等学校について平成12年度に募集停止にしたことについて,「生徒の就学の場を奪うという暴挙」と評価した上で,高教組として「新たなる闘いを構築」すべきとの活動指針が示された。 「政治改革のたたかい」と題する項では,新社会党からの立候補者を支持するとの高教組の立場が確認され,次回の参議院選挙において,新社会党より立候補する予定の者を組織推薦し支援することを決定したことが記載され,それに続けて,「日本国憲法・教育基本法を守るとともに,広島の教育を守るためにも,そして何よりも目の前にいる『教え子』を再び戦場に送らないために,総力を挙げたたたかいを構築しなければなりません。」とされていた。 その他,各専門部の活動報告,各分会の活動総括,平成12年度の決算・監査,平成13年度の予算案等が記載されていた。 平成14年4月20日に開催された第50回定期総会(三次地区)の議事進行状況は,第49回定期総会(三次地区)の資料に記載されている内容とほぼ同様のものであった。 (2) 前項の認定事実を前提 た。 平成14年4月20日に開催された第50回定期総会(三次地区)の議事進行状況は,第49回定期総会(三次地区)の資料に記載されている内容とほぼ同様のものであった。 (2) 前項の認定事実を前提に,本件各不許可処分が違法か否かについて検討する。 ア地方公共団体は,その設置する公の施設の利用関係について,正当な理由がない限り住民の利用を拒むことはできず,不当な差別的取扱いもしてはならない(地方自治法244条2項,3項)が,かかる施設が行政財産に属する場合においては,目的外使用が原則的に禁止された上で,例外的に,その用途又は目的を妨げない限度において,管理権者等による使用許可をすることができるとされている(地方自治法238条の4第4項)。本件で問題となっている県立高等学校の体育館及び周辺駐車場という学校施設は行政財産であるから,これらを例外的に目的外で使用するためには,学校施設の管理権者である教育委員会(地教行法23条2号,28条1項),もしくは教育委員会から委任を受けた学校長(県立学校長に対する事務委任規程1条20号,昭和38年3月29日広島県教育委員会教育長訓令第2号。乙4)の許可が必要となる。 行政財産の中でも特に本件のような学校施設は,本来的に教育目的のために設置されたものであり,広く世間に開放・利用されることを目的としていないことは明らかであり,かかる観点から,学校教育法85条は,「学校教育上の支障がない限り,学校には,社会教育に関する施設を附設し,又は学校の施設を社会教育その他公共のために,利用させることができる。」と定めているところであり,この規定も行政財産一般の目的外使用について定めた上記地方自治法238条の4第4項と同趣旨と考えられる。ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く文部省関係諸法令の措置に関する ところであり,この規定も行政財産一般の目的外使用について定めた上記地方自治法238条の4第4項と同趣旨と考えられる。ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く文部省関係諸法令の措置に関する法律1条によって,法律としての効力を有する学校施設の確保に関する政令(昭和24年2月1日政令第34号)1条が「この政令は,学校施設が学校教育の目的以外の目的に使用されることを防止し,もって学校教育に必要な施設を確保することを目的とする。」と定め,3条1項本文が「学校施設は,学校が学校教育の目的に使用する場合を除く外,使用してはならない。」とした上で,同項ただし書において,「管理者又は学校の長の同意を得て使用する場合」には目的外使用を認める旨を規定しているのも同様といえる。本件管理規則(乙2)は,これら法令の規定を受けて地教行法33条1項に基づき制定されており,本件管理規則20条も「行政財産は,その用途又は目的を妨げない限度において,かつ,次の各号の一に該当する場合に限り,これを使用させることができる。」と定めているところである。 これら地方自治法238条の4第4項,学校教育法85条等の趣旨に鑑みると,上記のように,本件のような学校施設においては目的外使用は原則として認められず,管理権者である県教委,もしくはその委任を受けた学校長の広範な裁量の下で,その許可処分により初めて例外的に使用が認められるに過ぎないと解されるところ,学校施設はあくまでも学校教育のために設置された施設であって,本来広く一般に開放・利用されることを予定されている施設ではない点に鑑み,管理権者の裁量は行政財産一般の場合と比較してより広範にわたると考えるのが相当である。そして,本件管理規則は,管理権者等がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を定めたものであって, 鑑み,管理権者の裁量は行政財産一般の場合と比較してより広範にわたると考えるのが相当である。そして,本件管理規則は,管理権者等がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を定めたものであって,このような準則は本来管理権者等の処分の妥当性を確保するための一つの指針を与えるものに過ぎないものであるから,処分がこの準則に違背してなされたとしても,原則として当不当の問題を生ずるにとどまり,当然に違法となるものではないし,この準則の要件に合致すれば必ず使用を許可しなければならないというものでもない。処分が違法となるのは,それが法の認める裁量権の範囲を超え又はその濫用があった場合に限られるのであって,本件においては,上記管理権者等の裁量権の性質に鑑み,その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等によりその判断が事実の基礎を欠き又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り,裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法となるものというべきである。また,その検討に当たっては,学校施設の使用目的,使用態様,代替施設の確保の困難性,従前の経緯,施設管理上・学校教育上の支障などの諸般の事情を総合して勘案すべきである。 イこれを本件につき検討すると,前記(1)ウ(エ),エ(エ)に認定のとおり,本件各大会の内容は第49回各大会の内容とほぼ同様であり,原告らの活動の総括の報告と今後の活動方針の提言や決算・予算の承認などが行われることが予定されていたものと認められる。そして,その活動総括及び活動方針は前記(1)ウ(エ),エ(エ)に認定したとおりであって,大会スローガンの内容,賃金,労働条件,君が代・日の丸問題,主任制,研修制度,学校組織の有り様,高校入試制度,国政選挙など多岐 括及び活動方針は前記(1)ウ(エ),エ(エ)に認定したとおりであって,大会スローガンの内容,賃金,労働条件,君が代・日の丸問題,主任制,研修制度,学校組織の有り様,高校入試制度,国政選挙など多岐にわたる問題に対して,原告らが教職員組合として行ってきた活動の経緯が詳細に報告されると共に,今後の活動指針が提言されることなどからも容易に分かるように,本件各大会は組合活動の一環として行われるもので,教育目的で実施されるものではないことは明らかであるから,本件各申請は学校施設の目的外使用に係る申請と認められる。そして,前記争いのない事実等に記載のとおり,本件各申請は,体育館ないし周辺駐車場を,1日もしくは5時間使用することを求めるものであるから,県立学校長に対する事務委任規程(乙4)1条20号によって,その使用許可に関する事務は当該高等学校の校長に委任される。したがって,本件申請(府中地区)については戸手高等学校の校長である被告Aが,本件申請(三次地区)については三次青陵高等学校の校長である被告Cがそれぞれ本件各申請に対する許否の判断を行うべきところ,前記争いのない事実等に記載のとおり,同被告らはいずれも不許可としたのであるから,これら本件各不許可処分が,被告A及び被告Cの裁量を逸脱濫用したものか否かを前項判示の諸般の事情を総合して検討する。 (ア) まず,本件各大会の目的及び使用態様について検討する。 本件各大会は上記のとおり組合活動の一環として行われるものであり,前記(1)イ認定のとおり,本件各大会は原告らの組合員全員が参加資格を有し,新年度の運動方針などが報告・議決されるものであり,第50回定期大会(府中地区)には約250名もの組合員が参加する(証人E)のであるから,本件各大会では原告ら地区支部の意思が決定され公になるものと考えられ 運動方針などが報告・議決されるものであり,第50回定期大会(府中地区)には約250名もの組合員が参加する(証人E)のであるから,本件各大会では原告ら地区支部の意思が決定され公になるものと考えられ,例えば各種委員会や分会会議などと比べても大きな社会的影響を有する形態で開催されるということができる。 (イ) 続いて,代替施設の確保の困難性を検討する。 前記(1)ウ(ア),エ(ア)に認定のとおり,原告旧府中地区支部においても原告三次地区支部においても,本件各申請を行う前に代替施設である府中市文化センター及び三次市まちづくりセンターを予約しており,本件各大会の1年前の第49回各大会はこれら施設において開催されていたことが認められる。そして,たとえ学校施設以外の施設を使用することによって事前準備や使用料,駐車場等の面で若干の不都合があるとしても(証人E,同F,同H),前記(1)ウ(イ),エ(イ)に認定のとおり本件各大会は特に混乱もなく開催されたのであるし,使用料を要したとしても,従前はたまたまこれが免除されていたに過ぎず,本来,施設を使用した原告らが料金を負担すべきことは論をまたない。原告らは他の施設使用の申込み等の事前準備のために年次有給休暇を取らなければならなくなったとして不満を述べるが,本件各大会は組合活動の一環であって,職務専念義務(地方公務員法35条)を負う教職員が組合活動を行うために年次有給休暇を取るべきことは当然である。これら事情からすれば,原告らにおいて代替施設を確保することが困難であったとはいえない。 (ウ) 従前の経緯を検討する。 前記(1)イに認定のとおり,春の定期大会や批准集会は従前から高教組の各地区支部事務局が置かれている高等学校の体育館を使用して開催されてきたが,平成11年度の批准集会から一部を除いて高等学校の体 前記(1)イに認定のとおり,春の定期大会や批准集会は従前から高教組の各地区支部事務局が置かれている高等学校の体育館を使用して開催されてきたが,平成11年度の批准集会から一部を除いて高等学校の体育館を使用できなくなり,平成12年度の春の定期大会からは全く使用できなくなったことが認められる。しかしながら,これは平成10年の文部省是正指導以降,県教委が学校施設の使用関係について,それまでの事実上の慣例にとらわれることなく,学校設置目的との親和性,学校教育上の支障の有無を一つ一つ審査して判断するという方針で臨んだ(前記(1)ウ(ア),エ(ア))からに他ならない。事実上の慣例を見直すという県教委の姿勢は文部省是正指導に従ったものと考えられるところ,確かに学校施設の使用関係の見直しは是正項目ではない(乙1)けれども,前記(1)アに認定の背景事情からすれば,文部省が是正指導を行うに至ったのは被告広島県における教育の適正化を図る必要があったと考えたからであると推測され,学校施設の使用関係の見直しもこの流れに則ったものと考えられる。そこで,文部省是正指導の内容をみると,そこでは教育内容や学校運営管理を法令等に従って実施するように求めており(乙1),特に明白な違法性を有するものは認められないから,文部省是正指導と同様の趣旨で学校施設の使用関係を見直すという県教委の施策にも相応の理由があると考えられる。原告らは文部省是正指導とそれ以降の県教委の施策に関して反対の立場を取るが,いずれが相当であるかは畢竟,民主政の過程ひいては県民の民意に委ねるべき事柄である。したがって,被告広島県においては文部省是正指導及びこれに伴う慣例の見直しによって,基礎となる事情が変更したというべきであって,原告らが学校施設を使用して春の定期大会を開催してきたという従前の経緯 したがって,被告広島県においては文部省是正指導及びこれに伴う慣例の見直しによって,基礎となる事情が変更したというべきであって,原告らが学校施設を使用して春の定期大会を開催してきたという従前の経緯を過大に重視すべきではない。 (ア) 施設管理上・学校教育上の支障を検討する。 a 本件各大会が開催された平成14年4月20日は土曜日で,戸手高等学校でも三次青陵高等学校でも授業や特別な行事は行われておらず,本件各大会を開催しても部活動その他への影響はなかった(被告A,同C,弁論の全趣旨)し,従前は高等学校の体育館を使用して春の定期大会が開催されてきたとの経緯(前記(1)イ)からすれば,施設管理上の支障は特に認められないと考えられる。 b しかしながら,原告らの組合活動の一環である本件各大会を学校施設で開催することは,次に述べるように,学校教育上の支障を来すといわざるを得ない。第1に,前記(1)ウ(エ),エ(エ)に認定のとおり,本件各大会の内容は第49回各大会と大略同じであるところ,第49回定期大会(府中地区)において,「ストライキを基軸とした通年的な戦いを堅持して諸要求の実現を目指さなくてはなりません。」とストライキを視野に入れた組合活動が提言された上,ストライキの方針であったが最終的に不満を残しつつもストライキを回避するに至った経緯が詳細に報告され,第49回定期総会(三次地区)では,高教組がストライキを配置し,諸要求実現のために戦う方針であると組織決定され,ストライキ権が確立されたが最終的にはストライキが回避されるに至った経緯が詳細に報告された上で,「確定闘争は職場闘争の集大成です。だからこそ日常的な職場闘争をさらに強化していくことが,最大の課題だと思います。」と提言されている。そこで検討すると,地公法37条1項は地方公務員の争議行為を禁 で,「確定闘争は職場闘争の集大成です。だからこそ日常的な職場闘争をさらに強化していくことが,最大の課題だと思います。」と提言されている。そこで検討すると,地公法37条1項は地方公務員の争議行為を禁止しているのであって,ストライキ権の確立から回避に至る経緯を報告し,争議行為を視野に入れた活動方針を示すだけでは,直ちに地公法37条1項に反するものではない。しかしながら,学校教育上の支障の有無は,本件各大会の内容が現に法令に違反しているか否かだけで判断されるのではなく,法令違反がないとしても,生徒,保護者等が公教育に対して不信を抱く危険性があれば,学校教育上の支障を認めることのできる事情として考慮するのが相当である。現実にストライキの実施が予定されているものではなくても,ストライキ権が確立されたことの報告や,ストライキを視野に入れた活動方針の提言は,ストライキの実施という意図や法令違反の可能性を示すものであるし,「ストライキを基軸とした通年的な戦いを堅持」などの内容からすれば,生徒,父兄等が公教育に対して不信を抱くことは想像に難くなく,本件のストライキに関する内容は,学校教育上の支障を肯定する事情として考慮するのが相当である。 第2に,前記(1)ウ(エ),エ(エ)に認定のとおり,第49回定期大会(府中地区)において,主任制とは対等・平等であるべき教職員集団の間に分裂を持ち込もうとする制度であって,その実働化により職場に差別と分断が持ち込まれるとして反対の立場を明確にし,そのために学校組織の確立に向けた闘争を行うべきと提言され,第49回定期総会(三次地区)では,主任制とは教職員の管理・統制ひいては教育の国家統制に向けた攻撃であるとして反対の立場を示し,その実働化阻止闘争の経過と共に学校組織の見直しが提言された。そこで検討すると,学校教育 三次地区)では,主任制とは教職員の管理・統制ひいては教育の国家統制に向けた攻撃であるとして反対の立場を示し,その実働化阻止闘争の経過と共に学校組織の見直しが提言された。そこで検討すると,学校教育法施行規則65条1項,22条の3第1項は高等学校に教務主任及び学年主任を置く旨を定めているから,主任制に反対し,学校組織の見直しと確立を提言している第49回各大会の内容には,学校教育法施行規則65条1項,22条の3第1項に抵触するものが含まれていたと認められる。 第3に,前記(1)ウ(エ),エ(エ)に認定のとおり,第49回定期大会(府中地区)において,卒業式等での国旗掲揚・国家斉唱は権力者の意図を貫徹させ,権力者に従わせるための上意下達システムを構築しようとするものであるなどとして,国旗掲揚等を強制すべきではないとの立場を明確にし,強制阻止に向けた活動を展開すべきであると提言され,第49回定期総会(三次地区)では,国旗掲揚・国家斉唱の半ば暴力的な強制に対して的確な対抗措置や阻止行動を講じなければならないと提言された。そこで検討すると,学校教育法43条,106条により高等学校の学科及び教科に関する事項は監督庁たる文部省が定めるとされているところ,同法施行規則57条の2に基づく高等学校学習指導要領(平成元年3月15日号外文部省告示第26号)第3章の第3の3は,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と定めているから,第49回各大会の内容には,同学習指導要領に反する内容が含まれていたことは否定できない。なお,原告らは学習指導要領の法的拘束力を否定する旨を主張するが,学習指導要領は,全体としてみた場合,高等学校における教育課程に関し,教育の機会均等の確保及び全国的な一定水 いたことは否定できない。なお,原告らは学習指導要領の法的拘束力を否定する旨を主張するが,学習指導要領は,全体としてみた場合,高等学校における教育課程に関し,教育の機会均等の確保及び全国的な一定水準の維持の目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な遵守基準を設定したものとして,法的拘束力を有するものとして有効と解されるのみならず,学校教育上の支障の有無を判断するに当たっては,法令違反の有無のみを考慮するものではないのは上記のとおりである。文部省告示である学習指導要領に反している以上,生徒,県民等が公教育への不信を抱くことは否定できず,日の丸・君が代に関する内容は学校教育上の支障を肯定する事情として考慮すべきである。 第4に,前記(1)ウ(エ),エ(エ)に認定のとおり,第49回定期大会(府中地区)において,次回の参議院選挙で新社会党から立候補する予定の者を組織推薦し支援することが決定されたこと,第49回定期総会(三次地区)においも同様に決定されたことが報告された。そこで検討すると,教育基本法8条2項において学校での党派的政治教育が禁止されていることなどから明らかなように,公教育においては政治的中立性が求められている。それにもかかわらず第49回各大会では特定政党の候補者を推薦する旨が報告されたのであって,教職員団体である原告らが特定政党に対する支持の報告を学校施設で行うことによって,政治的中立性を揺るがす事態を招く可能性があったことは否定できない。なお,原告らは,特定政党の支持について教職員組合としての原告らの政治活動であり,公職選挙法136条の2に反しないと主張する。しかしながら,法令違反がないとしても学校教育上の支障を判断するための事情となり得るのは上記のとおりである。いかに組合活動としての政治活動であったとしても,組合員 136条の2に反しないと主張する。しかしながら,法令違反がないとしても学校教育上の支障を判断するための事情となり得るのは上記のとおりである。いかに組合活動としての政治活動であったとしても,組合員は教職員であって,その教職員団体が特定政党の支持の決定をことさらに学校施設において報告することは,公教育の中立性を著しく害する結果となることは明らかである。したがって,特定政党支持に関する内容は学校教育上の支障を肯定する事情として考慮すべきである。 このように,本件各大会は,主任制については学校教育法施行規則に現に違反する内容を打ち出し,日の丸・君が代問題については高等学校学習指導要領に反し,ストライキ実施・政党支持については公教育に対する不信を招く危険性を内包していることが認められる。本来中立であるべき公教育の実践の場である県立学校において,上記のとおり現に学校教育法施行規則に違反する内容等を含む本件各大会を学校施設で開催することは,原告らの主義主張に反対する生徒や父兄,県民はもちろん,そうでない者に対しても,公教育への不信を惹起させる危険性があることは否定できない。そして,前記(1)アに認定のとおり,被告広島県の教育を巡って様々な議論が紛糾し,全国的にも注目を集めてきたとの経緯をも併せ鑑みれば,県民や国民の間に公教育への不信を引き起こす危険性は,もはや抽象的なものではなく具体的なものとして認められるのであって,これらからすれば,本件各大会を開催することにより学校教育上の支障を来すと認めるのが相当である。 (オ) そこで,前記(ア)ないし(エ)に認定判示した各種事情を総合すると,組合活動を目的とする本件各大会は,原告ら地区支部の意思が決定されるもので大きな社会的影響を有すること,代替施設を確保するのに困難はなかったこと,従前は使用が認 に認定判示した各種事情を総合すると,組合活動を目的とする本件各大会は,原告ら地区支部の意思が決定されるもので大きな社会的影響を有すること,代替施設を確保するのに困難はなかったこと,従前は使用が認められていたという経緯があるけれども,被告広島県においては,相応の理由によって施設使用関係についての事実上の慣例を見直す施策が取られて基礎となる事情が変更したのであり,従前の経緯を重視することはできないこと,本件各大会のために学校施設を使用しても施設管理上の支障は認められないけれども,生徒,父兄,県民の公教育への不信を引き起こす具体的な危険性の存在という学校教育上の支障が認められることからすれば,本件各不許可処分の判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等によりその判断が事実の基礎を欠き又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合には該当しないので,被告A及び被告Cが裁量権を逸脱濫用したものとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって,本件各不許可処分はいずれも適法である。 (3) 原告らの主張についてア原告らは,本件各不許可処分が憲法21条1項に違反する旨を主張するので検討する。憲法21条1項は集会の自由を保障するところ,集会に使用されることが前記(2)アに判示のとおり,本来的に教育目的のために設置されている学校施設の目的外使用の許否については管理権者に一般の行政財産と比較してもより広範な裁量が認められており,憲法が集会の自由を保障した趣旨はかかる裁量の範囲内,あるいは少なくとも学校教育上の支障がない範囲内において考慮すべきであって,前記(2)イに認定判示のとおり管理権者等に裁量権の逸脱濫用も学校教育上の支障の不存在も認められない以上,本件各不許可処 ,あるいは少なくとも学校教育上の支障がない範囲内において考慮すべきであって,前記(2)イに認定判示のとおり管理権者等に裁量権の逸脱濫用も学校教育上の支障の不存在も認められない以上,本件各不許可処分によって集会の自由の趣旨が否定されたと認めることはできず,原告らの上記主張は採用できない。 イ原告らは,本件各不許可処分は高教組の活動を抑えようとする不当労働行為意思の下になされた違法なものであると主張する。しかしながら,前項(2)に判示したように,本件各不許可処分は学校教育上の支障が認められることを理由として管理権者等の裁量権の範囲内で適法に行われたものであるから,不当労働行為には該当しないといわなければならない。それだけでなく,本件各不許可処分は原告らの事務局が置かれている高等学校における学校施設での集会の開催を制約するものに過ぎず,原告らが公務員の労働基本権や日の丸・君が代などの様々な問題について議論を深め,原告らの立場から提言することを否定するものではないし,他施設の使用により原告らに多少の不便があったとしても,前記(2)イ(イ)に認定判示のとおり原告らにおいて代替施設を確保することが困難であったとすることはできない。また,前記(1)ウ(ア),エ(ア)に認定のとおり,県教委は各県立学校の分会に対して,分会専用電話やファクシミリの設置場所としてその学校の校舎の一部を使用することを許可し,地区支部に対しては地区支部事務所としてその地区支部が置かれている学校の校舎の一部を使用することを許可している。加えて,学校長は高教組主催のスポーツ大会等のためにグラウンド等の使用を許可している(乙10,11,被告A,同C)ところでもある。したがって,本件各不許可処分が不当労働行為意思をもってなされた不当労働行為に当たるとする原告らの主張は採用できな めにグラウンド等の使用を許可している(乙10,11,被告A,同C)ところでもある。したがって,本件各不許可処分が不当労働行為意思をもってなされた不当労働行為に当たるとする原告らの主張は採用できない。 ウ原告らは,本件各処分は便宜供与の一方的廃止であって不当労働行為に当たると主張する。前記(1)イに認定のとおり,従前から春の定期大会や批准集会は各地区支部の事務局が設置されている高等学校の体育館を使用して開催されてきたことは認められる。しかしながら,学校施設などの行政財産は,住民全体の利益のために使用されるものであって,特定の個人や団体の利益のために使用されるべきものではない。前記(2)アに判示のとおり,本来,行政財産は行政上の用途又は目的のために最も適正に使用されるべきものであるから,特定の個人や団体に当然に行政財産の使用請求権を認めることはできないのである。このことは,地方自治法238条の4第4項等の規定からも明らかである。とすれば,従前から施設の使用を認めてきたという経緯があったとしても,その施設の本来の目的を阻害する態様での使用であったのであればこれを是正すべきは当然であるから,公務員労働者は従前の施設使用の実績を基に施設の使用継続を求めることはできないというべきである。なお,使用不許可処分によって公務員労働者の労働基本権を不当に害することはできないこともまた当然ではあるけれども,本件においては,前記(2)イ(ア),(イ),(エ),(オ)に認定判示のとおり,本件各大会の目的は学校施設の設置目的とはかけ離れていること,代替施設の確保が困難であったという事情は認められず,本件各大会を開催すること自体は否定されていないこと,本件各大会を学校施設で開催すると学校教育上の支障を来すと認められることなどからすれば,原告らの労働基本権が違 難であったという事情は認められず,本件各大会を開催すること自体は否定されていないこと,本件各大会を学校施設で開催すると学校教育上の支障を来すと認められることなどからすれば,原告らの労働基本権が違法に制約されたとみることはできない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 3 結語以上によれば,その余の点につき判断するまでもなく,原告らの本訴請求はいずれも理由がない。 広島地方裁判所民事第1部裁判長裁判官坂本倫城裁判官次田和明裁判官古川大吾
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