平成29年9月6日判決言渡平成29年(行コ)第56号所得税決定処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成24年(行ウ)第809号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 A税務署長が平成23年3月10日付けで控訴人に対してした平成17年分の所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,控訴人が,A税務署長(処分行政庁)から,控訴人が株式を保有するシンガポール共和国(以下「シンガポール」という。)に本店が所在する外国法人が,いわゆる外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)について定める租税特別措置法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下「措置法」という。)40条の4第1項所定の特定外国子会社等に該当し,同項所定の課税対象留保金額に相当する金額が控訴人の雑所得に係る収入金額とみなされるとして,平成23年3月10日付けで,控訴人の平成17年分の所得税の決定処分(以下「本件決定処分」という。)及び無申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件決定処分と併せて「本件決定処分等」という。)を受けたところ,本件決定処分等は,上記課税対象留保金額の算定の基礎となる同条2項2号所定の未処分所得の金額の計算に誤りがあり,違法であると主張して,本件決定処分等の取消しを求める事案である。 原審が控訴人の請求をいずれも棄却したところ,これを不服とする控訴人が 控訴を提起した。 2 関係法令等の定め,前提事実,税額等に関する当事者の主張,争点及び争点に関する当事者の る。 原審が控訴人の請求をいずれも棄却したところ,これを不服とする控訴人が 控訴を提起した。 2 関係法令等の定め,前提事実,税額等に関する当事者の主張,争点及び争点に関する当事者の主張の要旨は,次のとおり原判決を補正し,後記3のとおり控訴人の当審における補充主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1から5までに記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)原判決12頁14行目の「及び」から同16行目から同17行目にかけての「同じ。」までを「(中略」に改める。 3 控訴人の当審における補充主張(1) 外国子会社合算税制は,本邦の居住者が,本邦における課税を避けるために外国に留保した所得に課税することを目的とする制度であるから,特定外国子会社等において,利益の配当又は余剰金の分配をし得るだけの利益が出て,居住者が所得を得ていることが制度適用の前提となる。そして,租税公平主義の下,租税負担は担税力に即して公平に分配されなければならない。 しかしながら,B社は,平成11年頃に1722万9240シンガポールドルで購入した本件油そう船を平成17年に940万1433シンガポールドルで売却し,この間,本件油そう船を有していたことで736万6612シンガポールドルの所得を得たにとどまるから,本件油そう船により利益を得ておらず,控訴人がシンガポールに留保している所得は存在しないし,担税力の増加もないのであるから,本件決定処分等は,外国子会社合算税制の趣旨及び租税公平主義に反する。 (2) 措置法40条の4第2項2号において未処分所得の金額の定義規定が設けられたのは,特定外国子会社等の本店所在地国の税制によって左右されることなく,本邦において一定の基準に従って統一的に所得の金 (2) 措置法40条の4第2項2号において未処分所得の金額の定義規定が設けられたのは,特定外国子会社等の本店所在地国の税制によって左右されることなく,本邦において一定の基準に従って統一的に所得の金額の計算をし,統一的な課税を行うことが望ましいと考えられたためである。措置法施行令 39条の15第1項1号では,これを受けて,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額に係る計算を,本邦法令の規定の例に準じて計算することとされているから,特定外国子会社等が決算において行った経理を本邦法令の規定に照らして修正する必要があり,償却費として損金に算入される金額についても,特定外国子会社等の決算における償却費を本邦の減価償却制度により修正して計算するのが原則的な取扱いである。措置法通達66の6-10もこれと同様の解釈に立っている。 (3) そして,償却費として損金に算入される金額を,本邦の減価償却制度により修正して計算する場合には,外国関係会社が特定外国子会社等に該当するに至った年度より前に取得した資産については,その本店所在地国の減価償却制度による計算のままでは,特定外国子会社等に該当するに至った年度における資産の期首帳簿価額が確定しないことになるし,納税者は外国関係会社が特定外国子会社等に該当するか否かについては制御不能であり,期首帳簿価額の修正を認めないと,外国子会社合算税制の趣旨を超える重い税負担を強いる結果になる可能性がある。したがって,この場合に,特定外国子会社等に該当する前の事業年度についての減価償却費を修正し,特定外国子会社等に該当する事業年度の資産の期首帳簿価額を引き直すことは法令上予定されているというべきである。 また,未処分所得の計算において減価償却費を損金算入するに当たり,確定した決算における損金経理は 会社等に該当する事業年度の資産の期首帳簿価額を引き直すことは法令上予定されているというべきである。 また,未処分所得の計算において減価償却費を損金算入するに当たり,確定した決算における損金経理は法令上要求されておらず,減価償却の制度自体,償却限度額に達するまでの任意の金額を納税者が計上できる仕組みになっていることからしても,減価償却費を損金算入するために損金経理は不要である。そして,控訴人には平成17年分の所得税について確定申告を行う義務がなく,そもそも特定外国子会社等の外国法令に基づく決算を修正するために,決算の修正の過程を明らかにする書類及びその修正した損益計算書の添付は実定法上要件とはされていないのであるから,修正した損益計算書 を確定申告書に添付して提出していなくても,修正した損益計算書の償却費によって未処分所得の金額を計算することができるというべきである。 (4) そうすると,控訴人作成損益計算書の償却費は,B社損益計算書における償却費を,本邦おける船舶の償却方法及び耐用年数を前提に適切に修正したものというべきであり,これに基づいて措置法施行令39条の15第1項1号に掲げる金額を算出し,措置法40条の4第1項所定の適用対象留保金額の算定を行うべきものであるから,本件決定処分等は違法である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の各請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は,次のとおり原判決を補正し,後記2のとおり控訴人の当審における補充主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)原判決48頁18行目の「であっても」の次に「,措置法施行令39条の15第1項1号に掲げる金額の計算において」を加え 判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)原判決48頁18行目の「であっても」の次に「,措置法施行令39条の15第1項1号に掲げる金額の計算において」を加える。 2 控訴人の当審における補充主張に対する判断(1) 控訴人は,B社が本件油そう船により利益を得ておらず,控訴人がシンガポールに留保している所得は存在せず,担税力の増加もないから,本件決定処分等は,外国子会社合算税制の趣旨及び租税公平主義に反する旨の主張をする。 しかしながら,控訴人の上記主張は,B社の事業のうち,本件油そう船に関するもののみを取り上げ,しかも,本件油そう船の取得時から売却時までの複数事業年度を通算して所得を捉えようとするものであり,法人税の課税標準となる所得の金額が,当該法人の事業全体について,事業年度ごとに計算することとされており(法人税法21条,22条1項),外国子会社合算税制における課税対象留保金額の計算も同様とされていること(措置法40 条の4第1項,第2項2号,措置法施行令25条の20第1項,第2項及び第5項,39条の15第1項1号等)と相容れず,議論の前提を誤るものである。 また,原判決が説示し,以下でも検討するところに従って,適正に控訴人の適用対象留保金額を計算した場合には,原判決が認定説示するとおり,控訴人の平成17年度の雑所得の金額は130万6238.38シンガポールドル(9231万1866円)になると認められるから,本件決定処分等が外国子会社合算税制の趣旨や租税公平主義に反するとはいえない。 したがって,控訴人の上記主張は採用できない。 (2) 控訴人は,特定外国子会社等の本店所在地国の税制によって左右されることなく,本邦において一定の基準に従って統 反するとはいえない。 したがって,控訴人の上記主張は採用できない。 (2) 控訴人は,特定外国子会社等の本店所在地国の税制によって左右されることなく,本邦において一定の基準に従って統一的に所得の金額の計算をし,統一的な課税を行うことが望ましいことから,措置法施行令39条の15第1項1号により,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額に係る計算において償却費として損金に算入される金額について,特定外国子会社等の決算における償却費を本邦の減価償却制度により修正して計算するのが原則的な取扱いである旨の主張をする。 しかしながら,特定外国子会社等の未処分所得の金額の計算において,措置法40条の4第2項2号並びに同号を受けた措置法施行令25条の20第1項及び39条の15第1項1号が「特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額」について所定の計算をすることとしているのは,特定外国子会社等の本店所在地国と本邦との間で,会計制度や法人所得税に係る税制に相違があり,本邦と同様の要件を厳格に適用することが困難であるとしても,法人である以上は利害関係者に対して財政状態及び経営成績を明らかにするために決算が行われるから,その趣旨を踏まえつつ,納税者による恣意的な未処分所得の金額の計算を抑制すべく,特定外国子会社等がその本店所在地国における会計制度に従って行った決算に基づく所得の金額を基礎 とすることが原則であることを定めたものである。そして,措置法施行令39条の15第1項1号が,上記所得の金額につき,本邦法令の規定の例に準じて計算するものとしているのは,本邦と異なる会計制度に基づく特定外国子会社等の決算について損金経理のような形式的な要件を要求すると不都合が生ずる可能性があるため,そのような形式的な要件 定の例に準じて計算するものとしているのは,本邦と異なる会計制度に基づく特定外国子会社等の決算について損金経理のような形式的な要件を要求すると不都合が生ずる可能性があるため,そのような形式的な要件を満たさない場合においても本邦法令の規定の適用を認める趣旨に出たものであるから,特定外国子会社等の決算の修正が許容される範囲は,飽くまで,本邦と特定外国子会社等の本店所在地国との会計制度の差異の調整にとどまるべきである。 したがって,措置法施行令39条の15第1項1号に掲げる金額を算出するに当たり,減価償却資産の償却費の金額を計算する場合には,法人税法31条1項が同号所定のその例に準じるべき本邦法令の規定であり,同項が,選択的又は恣意的な経理を抑制し適正な課税の実現を図るべく,償却費を損金の額に算入するために損金経理を要求し,規則的かつ計画的な償却を求めていること(法人税法施行令48条から53条まで等。乙45の1,47参照)からすると,特定外国子会社等がその決算において償却費について適正に経理をしているにもかかわらず,当該償却費の金額を事後に任意の金額に修正することは許されないものというべきである。 なお,外国子会社合算税制において,特定外国子会社等の未処分所得の金額について,各国の税制によって左右されることなく本邦法令の規定の例に準じて統一的に計算することが望ましいとの考えに基づいて措置法施行令25条の20第1項の規定が設けられるなどしたことは,控訴人が主張するとおりであるが,上記で説示したことは,これに何ら反するものではない。また,控訴人が指摘する措置法通達66の6-10についても,原判決が「事実及び理由」中の第3の3(3)で説示するとおり,措置法施行令39条の15第1項1号に関する上記の解釈と整合的に理解することができる。 摘する措置法通達66の6-10についても,原判決が「事実及び理由」中の第3の3(3)で説示するとおり,措置法施行令39条の15第1項1号に関する上記の解釈と整合的に理解することができる。 以上からすれば,B社損益計算書に基づいて措置法施行令39条の15第 1項1号に掲げる金額を算出し,措置法40条の4第1項所定の適用対象留保金額の算定を行った本件決定処分等は,上記説示に沿うものであり,適法であるというべきである。 (4) これに対し,控訴人作成損益計算書は,原判決が「事実及び理由」中の第3の4(2)で説示するとおり,その作成経緯や内容に照らし,特定の事業年度においてB社に未処分所得の金額が生じないようにする意図の下に,B社の決算において償却費として経理した金額を事後に任意の金額に修正したものといわざるを得ない。これは,内国法人であればおよそすることができない利益調整行為にほかならない。また,特定外国子会社等に該当することとなる前の事業年度の償却費を修正し,特定外国子会社等に該当することとなる事業年度の資産の期首帳簿価格を引き直すことは,原判決が「事実及び理由」中の第3の5(7)で説示するとおり,措置法及び措置法施行令の規定上予定されていないものである。 したがって,控訴人作成損益計算書に基づいて措置法施行令39条の15第1項1号に掲げる金額を算出し,措置法40条の4第1項所定の適用対象留保金額の算定を行うことはできないから,B社損益計算書を修正した損益計算書の確定申告書への添付義務について論じるまでもなく,控訴人の主張を採用することはできない。 3 結論以上のとおりであるから,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は正当であって,本件控訴は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 人の主張を採用することはできない。 主文 結論以上のとおりであるから,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は正当であって,本件控訴は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第12民事部 裁判長裁判官杉原則彦 裁判官井上泰人 裁判官吉岡大地
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