平成11(オ)853等 全税関横浜損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成13年10月25日 最高裁判所第一小法廷
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判決文本文14,451 文字)

主文 本件各上告を棄却する。 上告費用は各上告人の負担とする。 理由 第1 平成11年(オ)第853号上告代理人山崎潮,同佐村浩之,同江口とし子,同植垣勝裕,同竹中章,同西謙二,同大須賀滋,同川口泰司,同田中芳樹,同廣戸芳彦,同白井ときわ,同若狭正幸,同高田薫,同高橋幸喜,同片山さつき,同宇山和也,同笠原喜保,同岸川誠次,同須賀清栄,同井竹嘉和,同大西彰の上告理由(第六を除く。)及び同年(オ)第854号上告代理人伊藤幹郎,同岡田尚,同小島周一,同杉本朗,同上条貞夫,同木村和夫,同武井共夫,同岡村三穂の上告理由(第二を除く。)について 1 本件は,平成11年(オ)第854号上告人(以下「個人原告」という。)らが,横浜税関の職員であった昭和39年4月1日から同49年3月31日までの期間(以下「本件係争期間」という。)に,任命権者である横浜税関長から,平成11年(オ)第853号被上告人(以下「原告組合」という。)の組合員(以下「原告組合員」という。)であることを理由に,昇任,昇格,昇給について不当な差別的取扱いを受け,これにより経済的,精神的損害を被ったとして,また,原告組合が,原告組合員(個人原告ら以外の者を含む。)が上記のような差別的取扱いを受けたほか,横浜税関当局の違法な支配介入等により団結権を侵害され,これにより無形の損害を被ったとして,いずれも国家賠償法1条1項に基づき,平成11年(オ)第853号上告人・同年(オ)第854号被上告人(以下「被告」という。)に対し,損害賠償を求める事件である。 2 原審は,本件の事実関係につき,次のとおり認定判断した。 (1) 全国税関労働組合(以下「全税関」という。)は,昭和22年11月に結成された,全国の税関に勤務する職員をもって組織される労働組合(職員団体)であり,同時に 係につき,次のとおり認定判断した。 (1) 全国税関労働組合(以下「全税関」という。)は,昭和22年11月に結成された,全国の税関に勤務する職員をもって組織される労働組合(職員団体)であり,同時に税関ごとにその支部組合が結成された。原告組合は,横浜税関に勤務する職員をもって組織される労働組合であり,全税関の支部である。個人原告らは,本件係争期間において,横浜税関に勤務していた職員であり,原告組合員であった。 原告組合は,昭和30年代半ばころまでは,職制を含む大部分の横浜税関の職員が加入しており,専ら待遇改善など職場の諸要求に重点を置き活動を行ってきたが,全税関が同33年に日本労働組合総評議会(総評)に加盟し同34年に日本国家公務員労働組合共闘会議に参加したころから,安保反対等の政治的要求を掲げる活動にも取り組むようになった。 昭和36年10月から12月にかけて,神戸税関において,全税関神戸支部が大幅賃上げ,政暴法反対,人員増加等の要求を掲げて勤務時間内職場集会,庁舎内デモ行進等を行ったことにつき,神戸税関長は,同月15日,支部長ら3人に対し懲戒免職処分を行った。同支部は,同37年2月の臨時大会において,同処分は無効であるとしてこれら3人を支援することを決議した。これに対し,執行部に批判的な同支部の職制組合員らが,神戸労働問題研究会を結成し,同年6月及び7月の役員選挙に対立候補を出して争った。そして,同年8月には鑑査部の職制組合員が集団で脱退し,同38年2月までに700人が脱退するに及び,同年3月,同研究会の会員を中心に神戸税関労働組合(以下「神戸労組」という。)が結成された。 横浜税関においても,昭和36年になって,原告組合執行部に対し,政治的な活動に重点が置かれすぎているなどの批判が寄せられることがあり,同37年1月9日,職制で 「神戸労組」という。)が結成された。 横浜税関においても,昭和36年になって,原告組合執行部に対し,政治的な活動に重点が置かれすぎているなどの批判が寄せられることがあり,同37年1月9日,職制で構成する横浜税関課長会が,神戸税関における懲戒免職処分を正当と受け止め,全税関の資金カンパに反対することを決め,原告組合に申し入れた。原告組合執行部は,この動きを全税関に対する裏切りであると強く非難した。また,全税関は同年7月の全国大会において総評がいわゆるスト権奪還闘争を組むことを受けて臨時カンパを決定し,原告組合が同年12月の給与からこれを徴収しようとしたが,鑑査部の職制組合員がこれに反対を表明した。その後,同38年6月末から7月1日にかけて,原告組合執行部の信任投票が行われ,最低でも71%の信任票を得て,全員が信任された。ところが,同年9月,横浜税関当局が貨物検査場付近の貨物線高架工事に伴い現場検査を実施することとしたのに対し,原告組合が労働強化につながるとして反対運動を行ったところ,分会の職制組合員は,同年10月,分会執行部にはついていけないなどとして原告組合を脱退した。また,これに前後して,職制組合員26人が原告組合を脱退し,その後も職制組合員を中心に脱退者が相次ぎ,同年12月27日までに脱退者は250人以上に上った。これらの脱退者の有志は,同39年1月ころ,横浜税関労組刷新同志会を結成し,機関誌で原告組合を強く批判するとともに,原告組合員に対し,原告組合からの脱退と同会への結集を呼び掛けた。その後も原告組合からの脱退者が続出し,同年5月9日,脱退者を中心とする約500人により横浜税関労働組合(以下「横浜労組」という。)が結成され,刷新同志会は発展的に解消された。同38年10月から同39年9月までの1年間の脱退者は739人(うち職制 ,脱退者を中心とする約500人により横浜税関労働組合(以下「横浜労組」という。)が結成され,刷新同志会は発展的に解消された。同38年10月から同39年9月までの1年間の脱退者は739人(うち職制組合員215人)に及び,そのほとんどは横浜労組に加入し,横浜労組は結成1年後には組合員数が約900人となった。原告組合の組合員数は,同38年7月の約1300人から,同39年7月には569人に激減して,横浜労組と組合員数が逆転し,その後も新規採用職員の大部分が横浜労組に加入するようになったため,その差が拡大し,本訴提起時には196人にまで減少した。 昭和39年5月,横浜労組と神戸労組とによって税関労働組合全国協議会が結成され,同40年2月から5月にかけて,長崎,東京,名古屋,大阪,函館及び門司の各税関に,全税関の支部組合から脱退した組合員を中心とする新組合が結成され,その後,これら8税関の新組合(以下「税関労組」という。)によって税関労働組合連絡協議会が結成された。その結果,同年において既に税関労組の組合員数は全税関組合員数を上回り,同46年には,税関職員約7500人中税関労組の組合員が約5800人,全税関組合員数が七百数十人となった。 (2) 横浜税関当局が昭和41年以降に行った新入職員に対する研修終了後,横浜労組主催のバス旅行及び加入勧誘活動が行われ,新入職員のほとんどがこれに参加した。当局の研修に接着するこれらの企画は,横浜労組による加入勧誘が行われる趣旨のものであることを含めて,当局の容認又は暗黙の了解がなければ行い得ないものであり,この限度で,当局が横浜労組の活動を容認ないし助長するなどして関与したことを推認するのが相当である。 (3) 昭和39年に入関し横浜労組に加入していたAは,同40年初めころから横浜労組の姿勢に疑問を感じ,原告 ,当局が横浜労組の活動を容認ないし助長するなどして関与したことを推認するのが相当である。 (3) 昭和39年に入関し横浜労組に加入していたAは,同40年初めころから横浜労組の姿勢に疑問を感じ,原告組合に親和的な態度をとっていたところ,同年2月18日,Aの上司であった関税鑑査官Bが,「横浜税関総務部総務課」の印を押なつした封筒を用い肩書きの官名を記した書簡によりAの父兄を呼び出し,来庁した父兄に対し,Aについて,「赤の分子に操られている。」などと話をした。上記のような行為の態様等からみて,Bの行為は横浜税関の職制上司として親を通じてAの原告組合への加入を思いとどまらせようと働き掛けたものと認められ,この行為については横浜税関当局の容認,助長があったと推認することができ,この限度で当局の関与を認めるのが相当である。このほかにも,横浜労組から脱退し原告組合へ加入する姿勢がみられた職員に対して,これを思いとどまるよう職制上司が働き掛けを行った疑いは強い。 (4) 昭和46年に入関した職員のうちただ1人原告組合に加入したCは,横浜税関監視部取締第2部門第3班に配置されたところ,同班の同期入関者6人のうち5人が同47年3月3日から6月1日までの間に担当した31回の宿直勤務のうち10回以上同期入関者と相勤したのに対し,1回も相勤をしなかった。このことは,偶然の結果とは考えられず,後記(5)の東京税関文書において新入職員の配置等の面で全税関の影響を排除する方策が検討されていたことや,横浜税関当局も本件係争期間中一貫して全税関を嫌悪してその勢力拡大を警戒していたことを併せ考えれば,横浜税関当局において,Cの同期入関者との離間を図ったなどという見方を全く否定することはできない。そうすると,この点は,原告組合員たるCと原告組合員でない他の同期入関者とを宿直 ことを併せ考えれば,横浜税関当局において,Cの同期入関者との離間を図ったなどという見方を全く否定することはできない。そうすると,この点は,原告組合員たるCと原告組合員でない他の同期入関者とを宿直の勤務形態について差別的に扱ったというべきで,横浜税関当局が原告組合員と横浜労組の組合員との接触を断つ方針を採っており,Cの宿直勤務形態はその方針に基づくものと推認するほかはない。 (5) 昭和42年3月ないし同43年11月に開催された東京税関の幹部会議議事録等の写しとして提出された甲号証(以下「東京税関文書」という。)は,東京税関当局作成に係る文書の写しと認められる。その記載中には,大蔵省関税局や東京税関幹部が全税関と比べて税関労組の方を好ましいものとみて前者の活動への嫌悪,警戒と後者の育成の必要を述べたもの,新人職員の職場配置,独身寮,サークル活動,職場レクリエーションの在り方等について,新入職員を始めとする若年層の職員と全税関組合員との接触の場をできるだけ少なくし,全税関の影響力や勢力の伸張を極力排除するために東京税関において採られた様々な検討,方策を示したもので,全税関に対する嫌悪,警戒感を推認させるものがある。 これらの発言の多くは大蔵省関税局が主催して行われた全国税関総務部長会議や全国税関長会議の結果報告の一部としてされたもの,あるいは大蔵省の施策又は意向に関連してされたものであり,後記(6)の関税局文書及び(7)のDメモに関する事実を併せ考察すれば,東京税関におけるこれらの発言に示された認識は,関税局や東京税関のみならず,横浜税関を含む各税関においてほぼ共通のものがあったと推測される。しかし,これらの検討や方策は直接的には東京税関におけるものであるから,横浜税関において同様なことが行われたことを直ちに示すものではない。 (6) 税関においてほぼ共通のものがあったと推測される。しかし,これらの検討や方策は直接的には東京税関におけるものであるから,横浜税関において同様なことが行われたことを直ちに示すものではない。 (6) 昭和61年3月ないし4月に開催された全国税関総務部長会議又は同人事課長会議の関係資料の写しとして提出された甲号証(以下「関税局文書」という。)は,大蔵省関税局作成に係る文書の写しであると認められる。その記載中には,これらの会議において,上席官昇任,7級昇格及び4,5,6級昇格について全税関組合員の選考基準をそれ以外の職員の選考基準とは別個に扱うことを検討ないし確認しようとする部分があり,全税関組合員をそれ以外の職員に比べて昇格等に関し不利に扱おうという意向が示されているのみならず,その相当以前からそのような異なる選考基準ないし方針が存在していたことを疑わせる。もっとも,上記会議における議題自体は,それまでに既に発生していた上席官昇任に関する全税関組合員のそれ以外の職員と比べた場合の大幅な遅れを是正する方策を協議するものであって,それ自体全税関組合員を不利に扱おうとするものではなく,結論的にいかなる方策が決定,実施されたかは明らかでない。 しかし,そのことを考慮しても,① 昭和38年から40年にかけて全国の税関に税関労組が結成され職員団体が2分されて以降,関税局以下の税関当局は全税関の勢力や影響力の拡大を嫌悪,警戒し,税関労組の勢力の拡大を期待する態度を有していたとみられること,② これがその後改められたことをうかがわせる事情は見当たらないこと,③ 上記会議が開かれた相当前の時点から全税関に所属する職員とそうでない職員との間において全体的に相当の昇任等の格差が顕在化していたとみられること等を考え併せれば,税関当局における上記のような全税関組合員 記会議が開かれた相当前の時点から全税関に所属する職員とそうでない職員との間において全体的に相当の昇任等の格差が顕在化していたとみられること等を考え併せれば,税関当局における上記のような全税関組合員とそれ以外の職員について昇任,昇格について別個に基準を設け,全税関組合員を全体的に他より低位に処遇するという差別的取扱いの姿勢は,その具体的内容や方法は明らかではないものの,少なくとも本件係争期間の一部を含む時期から,全体的,一般的指針として採られていた可能性を否定することができず,この限りで関税局以下の各税関当局の全税関ないし全税関組合員に対する昇任,昇格に関する全体的,一般的差別意思を推認することができる。 (7) 横浜税関α出張所統括審議官であったDが昭和47年ころに作成していた私物のノート(以下「Dメモ」という。)中の「旧勧誘解除」の記載は,横浜税関において,時期は特定することができないものの,同年6月8日開催の横浜税関課長会議以前の時期に,当局による原告組合員に対する原告組合からの脱退の勧誘が職制を通じて行われていた事実を推認させるものであり,同会議において,脱退勧誘の方針を解除する方針が示され,これが横浜税関管内幹部職員に伝達されたと認められる。しかし,Dメモ中の「特昇等は約束しない」の記載からは,職制を通じての脱退勧誘において以前には特別昇給等を約束して利益誘導的な勧誘を行っていたのをやめるとの意味までは読み取れない。 (8) 前記(1)の事実によれば,原告組合の分裂は,大局的にみれば,執行部の活動方針に対する職制組合員を中心としたかねてからの不満が神戸税関における組合分裂等に刺激されて一気に表面化したとみることができる。 しかしながら,個人原告らの大量の陳述書等によれば,昭和38年末ころから同42年ころにかけて,職制上司から部 からの不満が神戸税関における組合分裂等に刺激されて一気に表面化したとみることができる。 しかしながら,個人原告らの大量の陳述書等によれば,昭和38年末ころから同42年ころにかけて,職制上司から部下の原告組合員に対し時には将来の処遇面での利益,不利益を示唆しての脱退勧誘が行われたことは,否定しきれない。そして,① 前記(5)の東京税関文書及び(6)の関税局文書からうかがわれる当局の全税関に対する嫌悪,警戒意思の存在,② 同47年以前のある時期において横浜税関当局が原告組合員に対し原告組合からの脱退勧誘を職制を通じて行っていたのを解除したという,同(7)のDメモによって推認される事実,③ 同(1)のとおり,原告組合からの組合員の脱退は,当初職制組合員について原告組合執行部の信任投票後間もない同38年10月ころから始まって,一般職員に及び,同39年1月ころの刷新同志会の結成,同年5月の横浜労組の結成を挾んで,同38年7月に約1300人を数えた原告組合員数は1年後の同39年7月には569人に激減したこと,④ 同(3)のとおり,同40年2月ころ,Aの上司がその職制としての立場において原告組合加入防止の働き掛けをしており,この行為については横浜税関当局の少なくとも容認があったとみられることを総合観察すれば,上司から部下職員,個人原告に対する脱退の勧誘がすべて末端の職制の純然たる個人的見解や信念に基づいてされたものとみるのは不自然であって,少なくともその一部は,当局がこうした行為を容認,期待ないし助長し,職制がその期待にこたえた結果であると推認すべきであり,この限度で横浜税関当局の関与を認めるのが相当である。しかし,この限度を超えて,原告組合脱退に続く刷新同志会の結成,横浜労組の結成に横浜税関当局が直接的,組織的に関与したことを認めるには足りない り,この限度で横浜税関当局の関与を認めるのが相当である。しかし,この限度を超えて,原告組合脱退に続く刷新同志会の結成,横浜労組の結成に横浜税関当局が直接的,組織的に関与したことを認めるには足りない。 (9) 昭和38年7月1日から同50年7月1日までの昇任,昇格及び特別昇給の処遇状況に照らせば,資料の正確性に問題があることを考慮しても,原告組合員は,上記期間の当初においては,原告組合員以外の横浜税関職員(以下「非原告組合員」という。)のうち対比すべき者との間での等級号俸は同じであったか低いとしても同一等級内での1,2号俸程度の差であったが,上記期間を通じてほぼ例外なく非原告組合員と比べて昇任,昇格及び特別昇給の面で低位に処遇され,結果として上記期間終了日現在の等級号俸は,対比すべき非原告組合員集団の中でも最も低位に処遇された者と同等かそれ以下であるということができる。ただし,年次の古い女子の場合は,横浜税関全体として男子と女子との間に集団としての大きな処遇の格差があったことがうかがわれるものの,原告組合員女子と非原告組合員女子との間に集団的にみた格差があったとはいえない。 (10) 個人原告ごとに昇任,昇格,昇給をみると,各個人原告は,同年同資格で入関した非原告組合員中最も処遇の遅れた者と同程度かそれより低位の処遇を受けていること,その大部分については,職務の一般的能力に関する限り非原告組合員の平均よりも劣るものではないことが認められる。 しかしながら,本件係争期間中,個人原告らの中には,原告組合の活動の一環として,正当な組合活動とは到底いえない無許可庁舎内集会,抗議行動,プレート着用,庁舎建物へのビラはり等の非違行為を繰り返し行い,病気休暇日数や遅刻と目すべき始業時休暇取得回数が平均をかなり上回る者が少なからず存在することが認められ い無許可庁舎内集会,抗議行動,プレート着用,庁舎建物へのビラはり等の非違行為を繰り返し行い,病気休暇日数や遅刻と目すべき始業時休暇取得回数が平均をかなり上回る者が少なからず存在することが認められる。これらの非違行為や休暇等が個人原告の間で最も軽度の部類に属する者についても,その内容,程度に照らし勤務成績評価への悪影響は看過し得ないものがある。他方において,非原告組合員については,少なくとも原告組合から脱退後又は原告組合に属しない段階では,個人原告らと同等の非違行為はなく,出勤状況についても消極に評価すべき事由があったと認めるべき証拠もないから,総じて各個人原告の本件係争期間中の勤務成績は非原告組合員のそれより劣るといわざるを得ない。 3 以上の事実関係に基づき,原審は,個人原告ら及び原告組合の被告に対する各損害賠償請求権の成否等につき,次のとおり判断した。 (1) 個人原告らの損害賠償請求権の成否一般職の職員の給与に関する法律,人事院規則等に照らせば,横浜税関長は,横浜税関の職員の昇任等について,成績主義の基本原則の下で,職員各自の経歴,学歴,知識,資格,能力,適性,勤務実績等を総合的に勘案して,限られた官職数や等級別定数に応じ,広範な裁量により決定することができるものとされている。横浜税関においては,全体的な傾向として,入関後勤務年数が比較的浅いうちはともかく,入関後勤務年数が経過しての上位官職や上位等級への発令については,その時期にかなりの差が出ていることがうかがわれる。勤務年数を経れば外形的な勤務成績に差がない場合でも昇任等に一定の差が出るのは当然であり,横浜税関において,昇任,昇格等の人事に関し,成績主義を排し年功序列を旨とした運用が行われていた事実を認めることはできない。 前記2(9)の事実によれば,原告組合員と非原告組 が出るのは当然であり,横浜税関において,昇任,昇格等の人事に関し,成績主義を排し年功序列を旨とした運用が行われていた事実を認めることはできない。 前記2(9)の事実によれば,原告組合員と非原告組合員との間には,本件係争期間中の処遇において,全体的,集団的にみて,特に男子について昇任,昇格,昇給等給与にかかわる面で格差があること,個別的にみても,特に男子の個人原告らは,それぞれ程度の差はあるものの,同年同資格で入関した非原告組合員男子と比べ低位の処遇を受けていることが認められる。また,東京税関文書や関税局文書の一部の内容からは,関税局や横浜税関を含む各税関当局が全税関を嫌悪,警戒し,一方税関労組の勢力の伸張を望み,そのような差別意思の表れとして,東京税関においては,新入職員の配置,サークル,レクリエーション等の場面で全税関の影響を減殺するための様々の方策が検討されたことが認められ,また,横浜税関においても,前記のとおり,本件係争期間中,原告組合に対する支配介入に当たるいくつかの類型の事実が認められる。そして,原告組合に対する上記差別意思に加えて,関税局文書からは,少なくとも本件係争期間を含む相当前の時期から,全国的に全税関組合員を昇任,昇格等の面で一般的にその他の職員より低位に処遇するという意味での全体的,一般的差別意思の存在が推認されること,横浜税関において,本件係争期間中,原告組合員と非原告組合員との間に全体的,集団的な処遇の格差が認められることを総合すれば,本件係争期間中原告組合員に対する昇任等給与面での当局の差別意思は,全体的,一般的にはこれを肯認するほかはない。そうすると,個人原告らが非原告組合員と比べて勤務実績や能力等において劣っていたなどの特段の事情がなければ,前記給与格差の全部又は一部は被告のこのような差別意思を反映 にはこれを肯認するほかはない。そうすると,個人原告らが非原告組合員と比べて勤務実績や能力等において劣っていたなどの特段の事情がなければ,前記給与格差の全部又は一部は被告のこのような差別意思を反映したものであると推認するのが相当である。 しかしながら,前記2(10)の事実によれば,個人原告らの本件係争期間中の処遇の格差は,いずれも横浜税関長の昇任等に関する裁量の範囲内にとどまるものというべきであり,本件係争期間中の個人原告らに対する処遇がその勤務成績,能力,適性等に照らし著しく不相当であって裁量権の範囲を逸脱しているとまで認めるには足りない。 (2) 原告組合の損害賠償請求権の成否等前記2(5)ないし(7)のとおり,横浜税関当局は,本件係争期間の前後を通じて,原告組合ないし原告組合員の活動に対する嫌悪,警戒心を持ち,横浜労組の勢力伸張を望み,その活動に対しては協力する姿勢を有していたところ,昇任等差別を除く具体的行為として,① 同(8)のとおり,職制上司等による原告組合からの脱退勧誘を容認,期待ないし助長するなどして関与し,② 同(2)のとおり,新入職員の研修直後の横浜労組による組合加入勧誘活動を含むバス旅行等の企画について,これを容認,助長するなどして関与し,③ 同(3)のとおり,横浜労組から脱退し原告組合へ加入する姿勢がみられた若手職員に対し職制上司等による脱退,加入かん止の働き掛けを容認,助長するなどして関与し,④ 同(4)のとおり,原告組合員であるCに対し,同47年の宿直勤務において非原告組合員たる同期入関者と相勤させないようにしてその勤務形態において差別的に取り扱ったものである。これらの横浜税関当局の行為は,いずれも原告組合に対する支配介入といわざるを得ず,その団結権を違法に侵害したものとして,被告は,国家賠償法1条1項 その勤務形態において差別的に取り扱ったものである。これらの横浜税関当局の行為は,いずれも原告組合に対する支配介入といわざるを得ず,その団結権を違法に侵害したものとして,被告は,国家賠償法1条1項により,原告組合に対し,これにより被った無形の損害の賠償をすべき義務がある。 その額については,上記支配介入が,原告組合の活動方針に基づく過激な違法行為の反復に対する対抗手段として行われた面があるにせよ,矯正措置,懲戒処分等違法行為に対して国の機関が採るべき正当な対応方法を超え,本件係争期間中を含む長期間にわたり様々の態様によって行われたものであって,とりわけ職制上司による脱退勧誘が原告組合員らの大量脱退の大きな契機となったことは否定することができず,そのため原告組合の存立,運営に重大な支障を及ぼしたことがうかがわれること,各個人原告に対する昇任等差別は結論において認められないものの,原告組合員であることを理由とする一定の昇任等差別の意思をもって人事査定を検討した事実は否定し難いこと等一切の事情を考慮して,200万円をもって相当と認める。 また,横浜税関長の違法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,50万円をもって相当と認める。 4 以上の原審の認定判断に対する被告及び個人原告らの各上告理由について検討する。 (1) 被告の上告理由についてア被告は,原審の前記2(5)ないし(8)の認定判断及び3(2)の被告の国家賠償責任を認めた判断には,理由不備,経験則違背及び国家賠償法1条1項の解釈適用を誤る違法があると主張する。 しかしながら,横浜税関における職制上司による原告組合員に対する脱退勧誘行為を当局が容認,期待ないし助長したことが原告組合に対する支配介入に当たる旨の原審の認定判断は,一部に措辞必ずしも適切でないところがあるとしても,原判 ける職制上司による原告組合員に対する脱退勧誘行為を当局が容認,期待ないし助長したことが原告組合に対する支配介入に当たる旨の原審の認定判断は,一部に措辞必ずしも適切でないところがあるとしても,原判決挙示の証拠関係に照らし,是認することができ,その過程に所論の違法はない。 また,被告は,東京税関文書や関税局文書から本件係争期間中における横浜税関当局の全税関に対する差別意思等を推認したことを論難する。確かに,関税局文書の記載は,原審のように理解することも十分に可能ではあるものの,正当な理由に基づいて生じた格差があまりにも大きくなったのでこれを縮小するための方策につき協議したものであると理解することもできないではない上,上席官昇任について全税関組合員にのみ適用される異なる基準があったという事実は,上席官が昭和52年に新設された官職であることがうかがわれることに照らすと,それ以前にまでさかのぼるものではないことや,東京税関文書の記載中には東京税関固有のこととみられる事実が含まれていることにかんがみれば,これらの資料のみから横浜税関当局が本件係争期間において全税関を差別する意思を有していたことを直ちに推認することは,ちゅうちょせざるを得ないところである。しかしながら,原判決は,これらに加えて,Dメモにより本件係争期間に属する昭和47年6月8日以前の時期に横浜税関当局により原告組合員に対し原告組合からの脱退の勧誘がされていた事実を始めとする前記2(8)掲記の横浜税関に固有の諸事実を認定した上で,それらをも総合して上記のように横浜税関においては当局の原告組合に対する一般的差別意思が認められるとしているのであって,これらの事実をも併せ考慮するならば,その推認過程に経験則に違反する違法があるとはいえず,これを是認することができるというべきである。Dメモ に対する一般的差別意思が認められるとしているのであって,これらの事実をも併せ考慮するならば,その推認過程に経験則に違反する違法があるとはいえず,これを是認することができるというべきである。Dメモに係る論旨は,原審の専権に属する証拠の取捨判断,事実の認定を非難するものにすぎない。 なお,税関当局の意思に基づいて職制上司が違法な組合活動を行わないよう部下を説得することが支配介入に当たらないことは,所論のとおりである。しかし,その限度を超えて,組合からの脱退を勧誘するに及ぶことは,支配介入に当たるというほかはなく,これをもって被告の違法行為と認めた原審の判断に国家賠償法1条1項の解釈適用を誤る違法はない。 以上によれば,論旨は,原判決を正解しないで又は結論に影響しない説示部分をとらえて原判決を論難するものであって,採用することができない。 イ被告は,原審が,前記2(2)のとおり,横浜税関当局が横浜労組のバス旅行等の活動を容認ないし助長したと認定判断した上で,同3(2)のとおり,これが原告組合に対する支配介入に当たると判断したことには, 理由不備,理由齟齬及び国家賠償法1条1項の解釈適用を誤る違法があると主張する。しかしながら,所論の点に関する原審の判断は,横浜税関当局が横浜労組にのみ特別の便宜を供与したことをいう趣旨に理解されるのであり,原審がこれをもって支配介入に当たるとしたことに所論の違法があるとはいえない。論旨は,原判決を正解しないでこれを論難するものであって,採用することができない。 ウ被告は,原審の前記2(3)の認定判断につき,経験則違背及び理由不備の違法があると主張する。しかしながら,原審の上記認定判断は,原判決挙示の証拠関係に照らし,是認することができ,その過程に所論の違法はない。論旨は,原審の専権に属する事実の認定を非 違背及び理由不備の違法があると主張する。しかしながら,原審の上記認定判断は,原判決挙示の証拠関係に照らし,是認することができ,その過程に所論の違法はない。論旨は,原審の専権に属する事実の認定を非難するものであって,採用することができない。 エ被告は,原審の前記2(4)の認定判断及び3(2)のうちCの宿直勤務に係る判断部分には,理由不備,経験則違背及び国家賠償法1条1項の解釈適用を誤る違法があると主張する。しかし,原審は,当局がCの宿直の勤務形態につき執った措置が原告組合員と横浜労組の組合員との接触を断つ方針に基づくものであって差別的取扱いと認められることを理由に,これを支配介入に当たるとしたものであり,原判決挙示の証拠関係に照らし,この認定判断は是認することができる。論旨は,原審の専権に属する事実の認定を非難するか,又は独自の見解に立って原判決を論難するものであって,採用することができない。 オ以上のとおりであって,所論の各点に関する原審の認定判断は是認するに足り,論旨はいずれも採用することができない。 (2) 個人原告らの上告理由について個人原告らは,被告の個人原告らに対する国家賠償責任を否定した原審の判断には,理由不備,理由齟齬の違法があると主張する。しかし,所論の点に関する原審の認定判断は,原判決挙示の証拠関係に照らし,正当として是認することができ,その過程に所論の違法はない。論旨は,原審の専権に属する証拠の取捨判断,事実の認定を非難するものにすぎず,採用することができない。 第2 平成11年(オ)第853号上告代理人山崎潮,同佐村浩之,同江口とし子,同植垣勝裕,同竹中章,同西謙二,同大須賀滋,同川口泰司,同田中芳樹,同廣戸芳彦,同白井ときわ,同若狭正幸,同高田薫,同高橋幸喜,同片山さつき,同宇山和也,同笠原喜保,同岸川誠次 之,同江口とし子,同植垣勝裕,同竹中章,同西謙二,同大須賀滋,同川口泰司,同田中芳樹,同廣戸芳彦,同白井ときわ,同若狭正幸,同高田薫,同高橋幸喜,同片山さつき,同宇山和也,同笠原喜保,同岸川誠次,同須賀清栄,同井竹嘉和,同大西彰の上告理由第六について原告組合の被告に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権は,同法4条,民法724条により,原告組合が損害及び加害者を知った時から3年間これを行使しないときは,時効により消滅する。上記損害賠償請求権は横浜税関当局が脱退勧誘の助長等前記した種々の支配介入を行って原告組合の団結権を侵害したことにより発生したものであるところ,職制上司等による脱退勧誘等の外形的事実がその当時から原告組合に明らかであったとしても,横浜税関当局がこれを助長したことなどを原告組合が当時から知っていたと断定するに足りる事実は,原審により確定されていない。したがって,上記損害賠償請求権について消滅時効の成立を認めることができないとした原審の判断は,結論において正当なものとして,是認することができる。論旨は,原審の認定しない事実を交えて,上記判断を論難するものであって,採用することができない。 第3 平成11年(オ)第854号上告代理人伊藤幹郎,同岡田尚,同小島周一,同杉本朗,同上条貞夫,同木村和夫,同武井共夫,同岡村三穂の上告理由第二について論旨は,原審が,脱退勧誘についての被告の関与等個人原告らが有する団結権に対する侵害行為を認定しながら,これを理由とする個人原告らへの損害賠償を被告に命じなかったことをもって,違憲ないし理由齟齬に当たる旨をいうが,個人原告らが本件において請求しているのは個人原告ら各自の昇任,昇格,昇給における差別的取扱いを理由とする損害の賠償であるから,所論違憲の主張は前提を欠き失当であり いし理由齟齬に当たる旨をいうが,個人原告らが本件において請求しているのは個人原告ら各自の昇任,昇格,昇給における差別的取扱いを理由とする損害の賠償であるから,所論違憲の主張は前提を欠き失当であり,原判決に理由齟齬の違法は認められない。 よって,裁判官深澤武久の意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 裁判官深澤武久の意見は,次のとおりである。 私は,多数意見の説示に大筋において賛成するものであるが,関税局文書及び東京税関文書の理解の仕方に関する説示中には,賛成することができない部分がある。すなわち,私は,これらの文書から横浜税関当局の原告組合ないし原告組合員に対する差別意思を認めることができると考えるものである。その詳細は,平成7年(オ)第1453号事件及び同9年(オ)第593号事件における私の反対意見において述べたとおりである。 (裁判長裁判官藤井正雄裁判官井嶋一友裁判官町田顯裁判官深澤武久)

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