平成19(わ)258 強盗致死被告事件

裁判年月日・裁判所
平成19年10月15日 仙台地方裁判所
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判決文本文14,967 文字)

強盗致死罪の共謀共同正犯として起訴されたが,恐喝の限度でしか共謀していないと主張した被告人について,強盗の共謀の成立を認めた上,懲役10年の刑を言い渡した事例平成19年(わ)第258号主文被告人を懲役10年に処する。 未決勾留日数中90日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,A1,A2,A3及びA4と共謀の上,B(当時54歳)から金品を強取しようと企て,平成19年3月17日午前3時20分ころから同日午前3時25分ころまでの間,宮城県大崎市a東b丁目c番d号所在のe○店南側駐車場において,上記A1が,上記Bに対し,その顔面を手拳で数回殴打して同人を仰向けに転倒させ,顔面や腹部等を手拳で多数回殴打し,更に頭部,顔面等を多数回足蹴にし,腹部を踏みつけるなどの暴行を加え,その反抗を抑圧した上,同人所有又は管理に係る現金約1万4000円及び同人名義の運転免許証等27点在中の財布1個(時価2000円相当)を強取したが,上記暴行により,そのころ,同所において,同人を外傷性くも膜下出血により死亡させたものである。 (事実認定の補足説明)被告人は,被害者を脅して金や財布を取るつもりだったことは間違いないが,強盗する話はしていなかったし,A1が被害者に暴行するとは思っていなかったと述べ,弁護人も,被告人が強盗や強盗致死まで共謀した事実はなく,被告人には恐喝罪が成立するのみであると主張しているので,以下,判示のように強盗の共謀を認定した理由を補足して説明する。 まず,関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 (1)被告人,A1,A2,A3及びA4の4名(以下,被告人と上記4名を「被 告人ら」と総称する。)は,平成19年3月12日ころから,A2が運転する車に乗って遊び歩くなどして行動を共にするようになったが,当時,被告 ,A2,A3及びA4の4名(以下,被告人と上記4名を「被 告人ら」と総称する。)は,平成19年3月12日ころから,A2が運転する車に乗って遊び歩くなどして行動を共にするようになったが,当時,被告人とA2が,A1とA3が,それぞれ交際していた。 (2)同月16日夜,被告人らは,宮城県大崎市内のファミリーレストランfの駐車場に停めたA2運転の自動車内で,A4が「カラオケに行きたい。」と言い出したが,金がないという話になった。その際,A2が,援助交際を装って男性とホテルに行き,その男性が入浴している間に現金を盗んで逃げてくるという方法を提案したが,そのままでは恋人であるA3が男性とホテルに行く役を担当させられると懸念したA1が,それを避けようと「オヤジ狩りでもすっか。」と提案した。これに対し,A4が「あごのところを殴ったら,金でも出すんじゃねぇ。」と言い,被告人も「2,3発殴れば金取れんじゃない。」などと言って賛成し,他の2人も特にこれに反対することはなかった。 この間の事情について,被告人は,公判廷において,A1やA4が激しい暴行を加えるような話をしていたので,暴行は脅かし程度で済むと思い,「そこまでしなくても,2,3発殴れば出すんじゃないか。」と言った旨述べているが,A1やA4が激しい暴行を加えるような話をしていたことや,被告人が「そこまでしなくても」と言って抑制的な発言をしたかどうかについては,暴行に及ぶ話をしていたはずのA1やA4のほか,A2やA3のいずれもが,そのような発言はなかったとか,記憶にないと述べている上,被告人は,捜査段階においては,2,3発殴る旨の話をしたのはA4であると供述していたのであるから,被告人の上記公判廷における供述は,自己の刑事責任を軽くしようとの意図に基づくものと認められ,たやすく信用することができな おいては,2,3発殴る旨の話をしたのはA4であると供述していたのであるから,被告人の上記公判廷における供述は,自己の刑事責任を軽くしようとの意図に基づくものと認められ,たやすく信用することができない。 (3)A1は,A4と被告人に対し一緒にやろうと誘ったが,2人がこれを断ったため,A1だけが暴行を加えて金品を奪う実行役となり,A2がツーショットダイヤルを使って男性を誘き寄せることとし,同ダイヤルに「35歳で泉に住んでいる」などと称して連絡してきたB(以下「被害者」という。)と同月1 7日午前0時35分ころから午前1時48分ころにかけて連絡を取り合い,同人を大崎市内の「g○店」の駐車場に呼び出した。 そして,被告人らは,A3が援助交際を装って被害者の車に乗り込み,「ジュースを飲みたい。」などと言って,同市内の焼肉店「h」の駐車場にある自動販売機前まで同人を誘導し,予めその自動販売機の陰に隠れているA1が,ジュースを買うために車から降りてくる被害者を襲い,金を奪うという計画を立てた。被告人は,A1に対し,「顔を見られないようにしておけ。指紋ばれているだろう。」などと言って,A2の車に積んであった被告人のニット帽と手袋を着けるように言い,これに応じてA1はニット帽等を着用して上記自動販売機付近で待機していた。 ところが,被害者は,自車にA3を乗せて自動販売機付近まで来たものの,被告人らの予期に反してA3を降ろすことなく走り去ってしまった。A1が,慌てて追いかけたが追いつけず,さらに,「g○店」の周囲を探したが被害者とA3を見つけることができなかったため,被告人らと合流し,午前2時20分ころ被害者とホテルにいるA3に連絡を取り,戻ってくるように言うと,午前2時37分ころ,被害者がA3を車に乗せて「h」の駐車場に戻ってきた。 A1は,同所で再 たため,被告人らと合流し,午前2時20分ころ被害者とホテルにいるA3に連絡を取り,戻ってくるように言うと,午前2時37分ころ,被害者がA3を車に乗せて「h」の駐車場に戻ってきた。 A1は,同所で再び被害者を襲おうと考え,被害者の車に走って近づいて行ったが,被害者がA3を降ろすと同時に走り去ってしまい,またもや金品を奪うことができなかった。 (4)その後,A1は,A3からホテルで被害者に胸や太股を触られたと聞かされて激しい怒りを覚え,A2運転の車内で,「あのおやじぶっ殺す。マジ,むかつく。」などと言って被害者に対する怒りを露わにし,被告人も「慰謝料として取れる。」などと言い,A1が「金が取れる。」などと呼応して,被告人らは再度被害者を呼び出すことにした。そして,A2が,A3を装って被害者に電話を掛け,泣き真似をしながら,家族に怒られて帰ることができないので迎えに来て欲しいなどと言って,被害者を同市内の「e」の駐車場にあるコイン ランドリー前に呼び出した。被告人らは,A1とA3を同コインランドリー付近で降ろし,その際,被告人とA4は,A1の相当に憤慨している様子を見て,怒りに任せて暴行を加え過ぎるといけないと思い,同人に「やり過ぎるなよ」などと声を掛けた。 この点について,被告人は,A1が車内で被告人に「逃げるようなやつだから,話だけで終わらせます。」と言っていたことや,A1が車から降りる前に笑って楽しそうにしており,怒っているようには見えなかったことなどから,同人が怒りに任せて激しく暴行するとは考えなかったと供述し,A2も,A1がそんなに腹を立てているように見えなかったとか,コインランドリー付近に降りる際にA1がニャンニャンと手振りを付けてふざけた仕草をした旨供述している。しかしながら,A1は,恋人であるA3から,被害者とホテルに行 を立てているように見えなかったとか,コインランドリー付近に降りる際にA1がニャンニャンと手振りを付けてふざけた仕草をした旨供述している。しかしながら,A1は,恋人であるA3から,被害者とホテルに行って胸や太股を触られたと聞かされて,非常にむかつき,被告人らに対し,被害者をぶっ殺すなどと伝え,その後も興奮していた旨明確に供述している上,被告人供述の「A1は話だけで終わらせますと言っていた」ことについてはこれを否定し,他の共犯者のいずれからもそのような証言はなく裏付けを欠き,A1自身,表面上は落ち着いて見えたかも分からないが,内心ではずっと怒りが収まっていなかった旨証言しているのであるから,被告人の上記供述は信用することができない。また,A1がニャンニャンの手振りをしたことについても,同人のお調子者的な性格に鑑みると,同人が被害者に対し憤りを感じているとの認識を直ちに否定するような事情とは認められない。さらに,被告人が,コインランドリー付近で車を降りていくA1に対し,「やり過ぎるなよ。」と声を掛けたことについては,A4及びA3が一致して明確に証言しているのであって,これは,被告人が,当時,A1が怒りに任せて激しい暴行に及ぶおそれがあると考えていたことを強く推認させるものであり,A1が怒りに任せて激しい暴行を加えるとは考えなかった旨の上記被告人の供述やA2の証言は信用することができない。 (5)その後,被告人,A2及びA4は,A2運転車両に乗って,「i」の駐車場に行ったが,そこからはA1らのいる本件現場が見えなかったため,被告人がA2に指示し,犯行現場から149.2メートルの距離にある「j」の駐車場に移動して車を停め,同所から様子を窺っていた。しかし,被害者がなかなか現れなかったため,被告人は,A1に電話を掛け,被害者に電話をしてみ し,犯行現場から149.2メートルの距離にある「j」の駐車場に移動して車を停め,同所から様子を窺っていた。しかし,被害者がなかなか現れなかったため,被告人は,A1に電話を掛け,被害者に電話をしてみるようにと言った。その後,被害者が来て,泣き真似をしてしゃがんでいたA3に声を掛けたので,A1が「何触ってんだよ。」などと怒鳴りつけ,これに対して被害者が「触ってません。」などと言ったため,A1は,被害者の言動に憤激して,約5分間にわたり,判示のとおりの暴行を加えた。 (6)被告人は,A2運転車両の助手席に座り,A1が被害者に対峙する様子を窺っていたが,被害者が来てから暫く後,A1の「おらあ」という叫び声が聞こえ,また,現場付近が薄暗く,被告人らのいる場所からは約150メートルもの距離があってぼんやりとしか見えなかったものの,人影が倒れたのを見て,A4らに対し,「おやじ倒れたんじゃねぇ。」などと言った。その後,被告人は,状況を聞くためにA1の携帯電話に電話を掛けたが応答がなく,A3から被告人に電話がきて,「止まらないんですけど。」などと言われたので,A3に対し,「声でかすぎだから。早く終わらせて帰って来い。」などと言った。 この点について,被告人は,現場が見えるように移動したのは,被害者が来るかどうかを確認するためだけであって,A1が被害者に対して暴行を加えるとは思っていなかったから,犯行時には現場を全く見ておらず,被害者が倒れたところも見ていないし,「倒れた。」と言ったのはA4であるなどと供述している。しかしながら,A4は,被害者が倒れたと言ったのは被告人であると明確に証言しており,その証言は,「被告人が被害者が倒れたんじゃないかということを言って,自分も見てみたら,A1だと思ったんですけれども,上下に動いていたんで,何かを踏んだり蹴った は被告人であると明確に証言しており,その証言は,「被告人が被害者が倒れたんじゃないかということを言って,自分も見てみたら,A1だと思ったんですけれども,上下に動いていたんで,何かを踏んだり蹴ったりしてるのだろうと思った。」という具体的なもので,A4が,「踏んだり蹴ったりしてる」という激しい暴行を 認識していることを推認させる,自己に不利益な証言をしながら,「倒れた。」と発言した者が誰であるかについてのみ虚偽の事実を述べなければならない事情は窺い得ないし,本件により既に少年院に入所している同人が,敢えて被告人に不利な嘘を述べる理由も必要もないことから,その証言の信用性は高い。他方,被告人の供述は,これに反する上,被告人の供述によっても,現場が見えるように「i」の駐車場から「j」の駐車場に移動した筈であるのに,共犯者がまさに犯行に及んでいる場面を全く見ていないというのは,甚だ不自然であり,また,A1が被害者に暴行を加えるとは思っていなかった旨の供述は,オヤジ狩りをする話合いの中で,被告人自身が「2,3発殴れば金取れんじゃない。」と言ったことや,A1が被害者に対する憤りを露わにした様子を被告人が見ていたことなどに照らし,信用することができない。したがって,被告人らの潜んでいた位置から,本件犯行現場が明瞭に視認できる状況にあったとはいえないものの,A1が被害者に暴行を加えた際,被告人が,その場面を確認し,人影(被害者)が倒れたことに気づいたことは明らかである。 (7)被告人は,A3に早く戻るよう電話で話した後,暫くして「j」の駐車場に戻ってきたA1とA3に対し,「どれだけやったの。」などと言って,A1から,同人が被害者を倒してその頭部等を蹴ったり,腹部にジャンプして吐血させたりしたことなどを聞いた。これを聞いた被告人,A2及びA4は,や A1とA3に対し,「どれだけやったの。」などと言って,A1から,同人が被害者を倒してその頭部等を蹴ったり,腹部にジャンプして吐血させたりしたことなどを聞いた。これを聞いた被告人,A2及びA4は,やり過ぎたと思い,このままではやばいという話になり,すぐにその場を逃れて化女沼に行き,被害者の血のついたA1の衣服や被害者の財布等を投棄して証拠を隠滅した。 また,本件犯行の2,3日後,被告人は,「k」の駐車場に停めたA2の車の中で,A1及びA3に対し,警察で取り調べを受ける際には,被告人,A2及びA4はA1及びA3を現場に連れて行っただけである旨嘘をつくように指示した。 そこで,被告人と共犯者らとの間の共謀の内容について検討すると,上記1 (2)で認定したとおり,「f」の駐車場に停めたA2の車の中で,A2が援助交際を装って呼び出した男性から金を盗み取る話をした後に,A1が「オヤジ狩り」をすることを提案し,それに対して,A4が「あごを殴ったら金を出す。」,被告人が「2,3発殴ったら金が取れる。」などと言って賛成し,他の2名も特に反対しなかったことに照らすと,この時点で,カラオケに行くための遊興費等を手に入れるために,被告人らの間で,援助交際を装って呼び出した年輩の男性に対し,その顔面等を2,3発殴る暴行を加えて金を奪うという合意ができたものといえる。そして,暴行,脅迫の強さや程度について,A1が「被告人が2,3発殴ったら金取れると言ったのは,脅迫だけでは取れないが,暴行を加えれば取れるという意味だと思った。被告人の言ったとおり,2,3発殴って金を取るつもりでいた。殴る場所は顔等で,強さは思い切りの手前くらいで考えていた。」などと,A4が「まず脅して,それでも金を出さなければ2,3発くらい殴ってでも金を取るものだと思った。蹴ったりもする。 取るつもりでいた。殴る場所は顔等で,強さは思い切りの手前くらいで考えていた。」などと,A4が「まず脅して,それでも金を出さなければ2,3発くらい殴ってでも金を取るものだと思った。蹴ったりもする。抵抗できないようにして金を奪う。けがをすることは想定しているが,死なせたりすることは考えていない。相手のあごを殴ればぐらっと来て抵抗できずに金を出す。」と,A2が「脅したりし,脅しに応じなければ2,3発殴ればいいと思っていた。」などどと,A3が「最初は脅かして取るのかと思っていたが,被告人の言葉を聞いて,殴ってまで取るんだと思った。」などと,それぞれ証言しており,これらの証言内容を総合すると,具体的な話までは出なかったが,暴行を加えて相手から金を奪う意図を有していた点では一致していて,暴行の程度についても,相手に重傷を負わせるほどではないが,金を奪うために必要なくらいの暴行を加えるという認識があったものと認められる。 次に,コインランドリー前でA1が被害者に暴行を加えた時点における被告人らの認識について検討すると,前記認定のとおり,A1は,当初被害者がA3を自動車に乗せて自動販売機付近に来た際と被害者がホテルからA3を同所付近に送り届けた際の二度に渡り,被害者を襲って金を奪うことに失敗して苛立ちを募 らせていた上,戻ってきたA3から被害者に胸や太股を触られたと聞かされて激怒しており,「ぶっ殺すぞ。マジ,むかつく。」などと言って,被害者に激しい暴行を加える意図を露わにしたほか,恋人であるA3が触られたことから,「慰謝料として払ってもらう。」などと言って金品強取の意欲も示し,その上で被告人らは,再度被害者を呼び出すことにしたのである。そうすると,被告人らは,犯行直前ころには,A1が激しく憤り,当初の「f」の駐車場における話合いで想定した程 言って金品強取の意欲も示し,その上で被告人らは,再度被害者を呼び出すことにしたのである。そうすると,被告人らは,犯行直前ころには,A1が激しく憤り,当初の「f」の駐車場における話合いで想定した程度を超えてかなり激しい暴行を加える可能性があることを認識していたものと認められる。 被告人らがこのような認識を有していたことは,A1が被害者に暴行を加えて被害者が倒れたことが分かっても,被告人らが特に慌てた様子を示していないことや,被告人らが,A2の車に戻ってきたA1から,同人が被害者に加えた暴行について詳しい話を聞いても,手酷い暴行を加えたことを格別責める発言をしていないことによっても裏付けられている。 以上のとおりの被告人らの話合いの内容,A1が,予想に反して被害者を襲うことができずに苛立つとともに恋人であるA3の胸等を被害者が触ったことに憤激していたこと,被告人らが,そのようなA1の様子を認識しつつ,被害者を本件犯行現場に誘き寄せて襲うことになった経過に照らすと,被告人らは,当初からA1が被害者の顔面等を2,3発殴ることを予想していた上,犯行直前ころには,A1が憤激の念を募らせて更に強力な暴行に出ることも想定し,しかも,被告人らは,深夜,暗く人気のない駐車場で,年輩の被害者に対し,体力的にも優勢な若いA1が,物陰から突然現れて被害者を襲うことを認識して,A1を送り出したのであるから,同人が被害者に対し,その反抗を抑圧するに足りる暴行を加えて金品を強取する旨の認識を有していたものと認められる。 これに対し,被告人は,公判廷において,最初に「h」の駐車場で被害者を襲う話をしていたときには,被害者が援助交際目的でやって来るので,そのことを理由に被害者を脅し,それでも金を出さなければ2,3発殴ってやればいいと思 っていたが,再度被害者を 」の駐車場で被害者を襲う話をしていたときには,被害者が援助交際目的でやって来るので,そのことを理由に被害者を脅し,それでも金を出さなければ2,3発殴ってやればいいと思 っていたが,再度被害者を上記駐車場に呼び出したときには,被害者がA3に触ったことを理由として慰謝料名目で金を脅し取ればいいと思っており,A1も話だけで終わらせると言っていたので,当初の計画が変更され,犯行時には暴行を加えるとは思っていなかったとして,強盗の共謀を否定する供述をしている。 (1)しかしながら,A1が「話だけで終わらせる。」と言った事実は証拠上認められないし,A1が最後に被害者を呼び出す際に慰謝料に言及したことは,同人が引き続き金品を奪う意図を有していたことを示すものではあっても,暴行に出る可能性を否定する事情とは到底いえない。そして,被害者に対する怒りを露わにしていたA1が,気持ちを鎮めて暴行を加えない方針に変わったような事情は窺い得ない。 (2)なお,被告人は,捜査段階において,呼び出した男性を脅すだけでなく,殴ったりしてお金を奪い取ろうと思った,A1は怒っていたから男の人を目の前にしたら,当然殴ったりするだろうと思っていた,A3から電話があってA1の暴行が止まらないと聞いたときも,当初の計画どおりA1が男性から金を奪うために殴ったりしていると思ったなどと強盗の共謀を認める供述をしているところ,この点について弁護人は,平成19年5月11日以降になされた被告人の捜査段階における自白供述は,3人の取調べ警察官に囲まれ,否認すれば長期刑になると言われたり,大声を上げながら机を思い切り叩かれたり,共犯者の足を引っ張るななどと言われたために,仕方なくなされたもので,任意性,信用性がないと主張するので,この点について触れておくこととする。 確かに,被告人の公判 上げながら机を思い切り叩かれたり,共犯者の足を引っ張るななどと言われたために,仕方なくなされたもので,任意性,信用性がないと主張するので,この点について触れておくこととする。 確かに,被告人の公判供述並びに警察官であるE及びFの各証言に照らすと,勾留期限が迫るにつれて被告人に対する追及が厳しくなり,2人の警察官が同時に取調べを行ったり,時に大声を上げたり,共犯者の足を引っ張るななどと言って被告人を説得するなど,被告人にとっては相当程度威圧を感じるような取調べが行われたことが認められるものの,被告人は同年4月下旬から既に弁護人の接見を受けていたことや,そのころに録取された被告人の供述調書をみ ても,「2,3発殴れば金を出す。」と言ったのは,被告人ではなくA4であるとされているなど,被告人の言い分がそのまま記載されている部分もあることなどに照らすと,任意性を失わせるほどの強制や威迫があったとは認められない。そして,被告人の上記捜査段階における供述は,概ね共犯者らの証言と符合し,相応の証拠価値を有するものであって,被告人の公判供述は,上記捜査段階における供述とも相反していて,信用できない。 以上の事情を総合すれば,被告人らの間に強盗の共謀があったことを優に認定することができ,他に被告人及び弁護人が種々主張する事実を精査しても,上記認定に合理的疑いを容れる余地はない。 (量刑の理由) 本件は,被告人が,平成19年3月,共犯者4名(そのうち3名は少年)と援助交際名目で誘き寄せた被害者から金品を強取することを共謀して,共犯少年1名が,深夜,大型スーパーマーケットの駐車場で,当時54歳の被害者に対し,一方的に殴る蹴るなどの暴行を加え,現金1万4000円等在中の財布を強取し,同人を死亡させた事案である。 被告人らは,いずれも定職に就くこ スーパーマーケットの駐車場で,当時54歳の被害者に対し,一方的に殴る蹴るなどの暴行を加え,現金1万4000円等在中の財布を強取し,同人を死亡させた事案である。 被告人らは,いずれも定職に就くことなく,犯行の数日前からA2が運転する車に乗って遊び歩いており,犯行直前にA4からカラオケに行きたいという希望が出されたが,金がないことから,女性を囮にして援助交際名目で男性を誘き出し,同人に暴行を加えて金を奪うという,いわゆる「オヤジ狩り」を計画し実行したものであるが,利欲に基づく短絡的な動機に酌量の余地は全くない。 犯行の態様等をみても,被告人らは,ツーショットダイヤルを利用して援助交際を装って被害者を誘き寄せるという狡猾な手段を用い,被害者を呼び出す役,援助交際の相手を装う役,被害者に暴行等を加えて金品を奪う役にそれぞれ役割分担した上,実行役のA1が,身元が判明しないように,ニット帽や手袋を着用し,自動販売機の陰に隠れて待機するなどして犯行に臨んでおり,計画的で悪質である。被告人は,自らは捕まりたくないなどとして共同実行役を断ったものの, 利得に与るべく共犯者らと犯行方法について話し合ったり,A1に対し,ニット帽や手袋の着用を勧めるなど,積極的に関与している。被告人らは,二度犯行の機会を逃しても諦めることなく,更に被害者を呼び出して犯行に及んでおり,執拗である。 実行役のA1が被害者に加えた暴行は,被害者がA3の体に触ったことに因縁を付け,これを否定した被害者の顔面をいきなり手拳で数回殴打して同人をコンクリートの地面に仰向けに転倒させ,無抵抗となって言葉も発しない状態の被害者の顔面や腹部を,両手の指を交互に組んで拳を作り,それを思い切り振り下ろすハンマーパンチと称する方法で殴りつけたり,その頭部等を,底が木製で固く,側面には金具等が となって言葉も発しない状態の被害者の顔面や腹部を,両手の指を交互に組んで拳を作り,それを思い切り振り下ろすハンマーパンチと称する方法で殴りつけたり,その頭部等を,底が木製で固く,側面には金具等が付いている革製のブーツを履いた足で,サッカーボールを蹴るように思い切り蹴りつけ,踏みつけるなどした上,被害者の腹部に飛び乗り,同人を吐血するに至らせるという常軌を逸した執拗で残虐なものである。被告人は,犯行時,現場から離れた場所にいて,暴行の詳細までは認識していなかったものの,事前にA1が被害者に激しい暴行を加える可能性があることを認識しながら,「やり過ぎるな。」とは言ったものの,A1を現場に向かわせ,その結果,同人が上記暴行に出たものであり,また,犯行を遂げて戻ってきたA1から,同人が倒れた被害者を蹴ったり腹部に飛び乗ったりし,吐血させたことを聞いても,「下手したら内蔵破裂しているかも。」などと言って,被害者が重篤な状態に陥ったおそれについて言及しながらも,救急車を呼ぶなどの措置を講じておらず,被害者の生命,身体に対する配慮は全く見受けられない。 そして,A1が奪ってきた現金等を,共犯者らと一緒にA2の車の中で確認してその場から立ち去り,血の付いた衣服や被害者の財布等をビニール袋に入れ,これに石を詰めて沼に沈めるなど,率先して証拠隠滅行為に及んだ上,当日のうちに,奪った現金をスロットや飲食代金に平然と使うなどしており,犯行後の情状も良くない。さらに,被告人は,本件が新聞等で報道され,被害者が死亡したことを知るや,A1とA3に対し,警察で取り調べを受けても,被告人,A2及 びA4はA1とA3を現場に送って行っただけで,本件とは関係がないと供述するように申し向け,自ら警察官役となり,A3に取調べを想定した練習までさせており,実際にも,A1と ても,被告人,A2及 びA4はA1とA3を現場に送って行っただけで,本件とは関係がないと供述するように申し向け,自ら警察官役となり,A3に取調べを想定した練習までさせており,実際にも,A1とA3が捜査開始当初,被告人から言われたとおり供述して捜査を混乱させたもので,悪質である。さらに,被害者の死亡を知っても,行状を改めることなく,共犯者らと共に窃盗を敢行したり,A1やA4が,遊興費欲しさから,再び援助交際を装い男性を呼び出して顔にスプレーを吹きかけるなどして金品を奪う旨の本件と同種の犯行を計画しても,制止することなく,A1やA4らと行動を共にしていたもので,規範意識が著しく希薄であると言わざるを得ない。 被害者は,本件被害に遭い,無防備な状態で突然A1から苛烈な暴行を受け,想像を絶する肉体的,精神的苦痛を被った末に死亡したもので,結果は余りにも重大である。被害者は,長年に亘り地方公務員として勤務するなど,社会的に貢献しており,家庭においても,優しく頼り甲斐のある夫,父親として妻子と共に円満な生活を送っていたもので,未だ人生半ばの年齢にあって子供らの成長を楽しみにしていた筈の矢先に,生前の顔が分からなくなるほどの激しい暴行を受けて,深夜,無人の駐車場で絶命するに至っており,その無念さは察するに余りある。被害者の妻は,自分から夫を奪い,子供たちから父親を奪い,義父母から長男を奪った犯人を許すことはできない,殺したいほど憎いなどと述べているほか,本件によりこれまで経験したことのない最大の精神的,肉体的苦痛を味わったとして自らの苦しみも吐露し,被告人に対して厳罰を望んでおり,被害者の子供たちも,父親の死によって残された家族が皆傷つき,悲しみ,犯人を絶対に許さないという気持ちを持っており,犯人に対して厳しい処罰を望む旨述べている。無二の 被告人に対して厳罰を望んでおり,被害者の子供たちも,父親の死によって残された家族が皆傷つき,悲しみ,犯人を絶対に許さないという気持ちを持っており,犯人に対して厳しい処罰を望む旨述べている。無二の存在を失った遺族らの悲しみは余りにも深く,処罰感情が峻烈であるのも当然というべきである。 多数の人が買い物に訪れる大型スーパーマーケットの駐車場において,苛烈な暴行を受け,血だらけの姿で横たわっている被害者の死体が発見されたことによ り,近隣住民が被った多大な恐怖感,不安感や,昨今,援助交際を装って男性を誘き出し,暴行や脅迫を加えて金品を奪い取る事件が頻発していることも,量刑上看過できない。 加えて,被告人は,忍耐力に乏しく,16歳のときに高校を中退してから,職場を転々と変えて仕事が長続きせず,本件当時は無職の状態で共犯少年らとA2の車で遊び歩く放縦な生活を送っており,このような生活状況が本件犯行の背景を成している。また,被告人は,平成18年に恐喝罪で逮捕され,両親に厳しく叱責されたにも拘わらず本件犯行を敢行しており,他人に与える苦痛や恐怖感について省みるところがなく,犯罪に対する抵抗感が乏しいと言わざるを得ない。 ところで,検察官は,本件犯行において,被告人が主導的役割を果たしたと主張しているところ,共犯者の中には,被告人がリーダー格であったとか,怖くて被告人には逆らえなかったなどと述べる者がいるものの,被告人が共犯者らと一緒に遊ぶようになったのは本件の数日前からのことであり,被告人が年長者であることから,意見の尊重や遠慮等があったことは窺われるが,被告人が他の共犯者らを積極的に主導するような関係まで形成されていたとはいえないし,本件犯行においても,「オヤジ狩り」を提案して実行したのはA1であり,被害者を呼び出す方法や具体的な襲撃方法につ ,被告人が他の共犯者らを積極的に主導するような関係まで形成されていたとはいえないし,本件犯行においても,「オヤジ狩り」を提案して実行したのはA1であり,被害者を呼び出す方法や具体的な襲撃方法については被告人らが意見を出し合って決めており,犯行によって得た現金は遊興のために皆で平等に使ったことなどに徴すると,被告人が本件犯行の首謀者であるとか,主導的役割を果たしたとまでは認められない。ただ,本件犯行時,被告人は共犯者中で唯一の成人であり,本来であれば年長者として共犯少年らの行動を制止すべき立場にありながら,安易に同人らと一緒になって本件犯行を計画し,積極的に関与して重大な結果を生じさせたことが明らかであり,しかも,被告人は,遺族に対して何ら慰謝の措置を講じていないのであって,その刑事責任は相当に重く,厳しい非難に値する。 他方,被告人については,次のような酌むべき事情が認められる。 まず,被告人らの犯行の目的は,遊興費を手に入れることにあり,当初, 「f」の駐車場における話し合いの段階では,被告人らは,被害者の顔面等を,2,3発殴る程度の暴行を加えることを想定していたにすぎない。その後に至り,A1が被害者に激しい暴行を加える可能性があることを認識したものの,被告人が,A1に対し,「やり過ぎるな。」と言って注意を与えていることにも徴すると,被告人が想定していた暴行は,被害者の反抗を抑圧するために必要な,ある程度強度なものではあっても,遊興費を入手するために必要な限度のものと認められる。ところが,A1は,恋人であるA3が被害者によって駐車場から連れ去られ,さらに,戻ってきたA3から被害者に胸等を触られたなどと聞かされて憤激したことに加え,本件現場に現れた被害者がA3に触ったことを否定したことから,被害者に対する憤懣を爆発させたもので ら連れ去られ,さらに,戻ってきたA3から被害者に胸等を触られたなどと聞かされて憤激したことに加え,本件現場に現れた被害者がA3に触ったことを否定したことから,被害者に対する憤懣を爆発させたものである。したがって,A1の暴行が激烈を極めた背景には,同人の被害者に対する憎悪の感情があり,本件犯行は衝動的に行われたものであって,被害者は全く抵抗をしていなかったのであるから,A1は容易に金品を強取し得たのに,A3に止められるまで執拗に激しい暴行を加え続けたものであり,A1自身,公判廷において,「現場で怒りのためにやり過ぎてしまった。暴行しているときは興奮状態で金を取るという目的も忘れてしまっていた。」などと供述している。被告人は,犯行現場から相当遠く離れ,具体的な暴行の態様までは詳細に認識し難い場所で待機していたもので,A1が被害者に間断なく暴行を加えたことも勘案すると,A1が被害者を倒したことは認識できたとしても,同人を死に至らしめるような激しい暴行を積極的に認容して継続させたとみることはできない。なお,この点について,A1の激烈な暴行も想定の範囲内であったかのように述べた被告人の捜査段階における供述調書があるものの,被告人がA1に対し,「やり過ぎるな。」と述べた事実とも符合せず,信用性に乏しい。そうすると,A1が被害者に対し,死に至らしめるような激しい暴行を加えたことは,被告人にとって想定外のことであったというべきであり,この点は量刑に当たって考慮せざるを得ない。また,被告人が,犯行後に証拠隠滅を図ったり,口裏合わせをした点は芳しくないものの,これらの行為は,当初 から予定し計画的に行ったものではなく,上記のようにA1が想定外の蛮行に及んで予想もしなかった重大な結果が生じたために慌てて行ったものと思われ,心情としては了解できないも これらの行為は,当初 から予定し計画的に行ったものではなく,上記のようにA1が想定外の蛮行に及んで予想もしなかった重大な結果が生じたために慌てて行ったものと思われ,心情としては了解できないものではないこと,A1が憤激して重大な結果を生じたことについては被害者の言動も与っていること,本件後に計画された上記の同種犯行については,被告人がそれほど積極的に関与していたものではなく,当初はA1らを制止しようとするなど相応の抵抗感を示していたと認められること,生涯を通じて被害者に償いをしていきたい旨述べ,今後は人に迷惑をかけるような行為をしない旨誓約していること,被告人の父親が,社会復帰後は家族で温かく迎え入れ,家族一丸となって被告人を更生させ,被害者への償いについてもできる限り助力したいと証言していること,現在22歳(犯行時21歳)の若年で,成人とはいえ未熟な面もあること,前科がないことなどの事情が認められる。 以上の事情を総合考慮し,被告人に科すべき刑について検討すると,上記のとおり,被害者に対し一方的に激烈な暴行を加えて死亡させた事案の悪質性,結果の重大性,遺族の処罰感情,社会に与えた衝撃の大きさ等に徴すると,その刑事責任は誠に重いというべきであるが,被害者の死亡という重大な結果が生じたのは,実行者である共犯者が,衝動に駆られて被告人が共謀により想定していた暴行の程度をはるかに超えて苛烈な暴行を加えたことによるものであること,被告人が本件の首謀者であるとか,本件を主導的に敢行したとはいえず,犯行時唯一の成人であったとはいえ,被告人に特別重い責任を負わせる理由が乏しいこと,その他,上記の酌むべき事情を被告人のために考慮して,酌量減軽を施した上,主文掲記の刑をもって処遇するのが相当と判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役2 を負わせる理由が乏しいこと,その他,上記の酌むべき事情を被告人のために考慮して,酌量減軽を施した上,主文掲記の刑をもって処遇するのが相当と判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役25年)平成19年10月15日仙台地方裁判所第2刑事部 山内昭善裁判長裁判官小池健治裁判官佐藤彩香裁判官

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