判決平成14年4月25日神戸地方裁判所平成12年(行ウ)第31号土地建物強制収用処分取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が平成12年3月22日付けでした起業者を尼崎市,物件所有者兼関係人を原告とする平成11年度(権)第5号に関する権利取得裁決,平成11年度(明)第3号に関する明渡裁決を取り消す。 第2 事案の概要など 1 事案の概要次の(1)の事実は,当事者間に争いがない。 (1) 本件裁決の存在尼崎市は,平成11年10月5日,被告に対し,原告を土地所有者兼関係者とし,原告所有に係る別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)及び同目録記載3の建物(本件土地上の建物,以下「本件建物」という。)について,権利取得裁決及び明渡裁決の申請をした。 被告は,平成12年3月22日付け裁決書で,原告に対し,別紙裁決書記載のとおり,平成11年度(権)第5号に関する権利取得裁決(以下「本件権利取得裁決」という。),平成11年度(明)第3号に関する明渡裁決(以下「本件明渡裁決」という。)を行なった(以下,両裁決をあわせて「本件裁決」という。)。本件裁決書(乙4)は,平成12年3月25日,原告に送達された。 (2) 本件裁決の違法事由本件は,原告が,本件裁決には次のような違法事由があると主張して,本件裁決の取消しを求める事案である。 ア本件道路事業は第1種市街地再開発事業として実施されたものであり,第1種市街地再開発事業については土地収用権がないのに,尼崎市は本件道路を都市計画道路として被告に裁決申請をし,被告はこの ア本件道路事業は第1種市街地再開発事業として実施されたものであり,第1種市街地再開発事業については土地収用権がないのに,尼崎市は本件道路を都市計画道路として被告に裁決申請をし,被告はこの違法を看過して本件権利取得裁決をした。 イ本件権利取得裁決では,残地に対する補償がなされていない。 ウ起業者である尼崎市は,本件裁決申請前までに行なうべき本件土地の任意買収交渉をしていない,また,同裁決後も土地収用法(以下「法」という。)15条の2に基づく斡旋の申請を行なっていない。 エ原告は,本件裁決手続において,十分な意見を述べる機会を与えられなかった。 オ尼崎市は,本件収用の前提となった事業の予定区域を定めるよう兵庫県知事に意見を提出して,同知事が都市計画法52条の2による建築規制ができるよう都市計画を進めなければならなかったのに,それをせず,本件建物の建築確認を認めた。 2 前提事実次の各事実の末尾に証拠を挙げた部分は,証拠によって認定した事実,その余は,当事者間に争いのない事実である。 (1) 本件道路事業計画等尼崎市は,別紙図面②記載の道路を西側に延伸して,別紙図面①記載の道路(以下「本件道路」という。)を建設する事業(以下「本件道路事業」という。)を計画した。本件土地建物は,本件道路事業の予定地上に存在した。 (2) 本件裁決等事案の概要(1)記載のとおり。 (3) 本件土地建物等本件土地は,平成11年12月,分筆前の尼崎市a町b丁目c番の土地(以下「分筆前のc番の土地」という。)から分筆された土地で,本件権利取得裁決で収用された。同収用の際,別紙物件目録記載2の土地(27.11平方メートルの土地,以下「本件残地」という。)が残地として残された。 のc番の土地」という。)から分筆された土地で,本件権利取得裁決で収用された。同収用の際,別紙物件目録記載2の土地(27.11平方メートルの土地,以下「本件残地」という。)が残地として残された。 ところで,原告は,平成2年7月,Bから,分筆前のc番の土地及びその地上建物(本件建物)を購入した(甲6,乙1ないし3)。 3 争点本件裁決の適法性,具体的には,以下のとおりである。 (1) 本件道路事業は,第1種市街地再開発事業として実施されたものであるか。第1種市街地再開発事業については土地収用権がないか。尼崎市は,本件土地についての土地収用権がないのに,本件道路を都市計画道路として被告に裁決申請をし,被告はこの違法を看過して本件権利取得裁決をしたものであるか。 (2) 本件権利取得裁決における残地補償は適法か。また,本件裁決の違法事由として残地補償の違法を主張できるか。 (3) 尼崎市の本件裁決申請前の本件土地任意買収交渉不足や,本件裁決申請後の本件土地買収の斡旋申請の欠如が,本件裁決の違法事由となるか。 (4) 本件裁決手続には,原告が本件裁決手続で十分な意見を述べる機会を与えられなかった違法が存するか。 (5) 本件建物に対する建築確認は違法か。仮に,それが違法としても,本件裁決の効力に影響を与えるか。 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1)(本件道路事業の土地収用権欠如)について(原告の主張)ア本件道路事業は,第1種市街地再開発事業として実施されたものであり,都市計画事業として実施されたものではない。第1種市街地再開発事業については土地収用権がなく,権利返還方式で実施されるものである(都市再開発法6条2項,都市計画法60条ないし74条)。 イ尼崎市は,上 業として実施されたものではない。第1種市街地再開発事業については土地収用権がなく,権利返還方式で実施されるものである(都市再開発法6条2項,都市計画法60条ないし74条)。 イ尼崎市は,上記法律に違反して,本件道路を都市計画道路として被告に裁決申請をし,被告はこの違法を看過して本件裁決をしたものである。 (被告の主張)本件道路事業は,市街地再開発事業として実施されたものではなく,都市計画事業として実施されたものである。それに,市街地再開発事業も都市計画事業である。被告が尼崎市の本件裁決申請が違法であることを看過したというようなことはなく,本件裁決には何の違法性もない。 (2) 争点(2)(残地補償の違法)について(原告の主張)ア本件残地は,道路に面した奥行きのない利用価値のない土地で,ほとんど死地に等しい。しかし,本件権利取得裁決による残地補償は,なされないに等しく違法である。 イしたがって,本件裁決は違法である。 (被告の主張)アa 本件残地補償は,適正になされている。 また,残地について,ほとんど利用価値がない死地になる時は,残地収用の請求ができる(法76条1項)ところ,被告の審理に出席した原告代理人は,被告会長から本件残地について,収用請求できる旨の教示を受けたが,同残地は残す旨明確に答弁している。それにもかかわらず,現時点で被告の評価について問題にすることは,禁反言に反する。 b したがって,本件残地に関する被告の判断は,適法である。 イa 収用委員会の裁決のうち,損失補償に関する訴えは,これを提起した者が土地所有者である時は,起業者を相手方としなければならない(法133条)。 b ところで,原告は,本件残地の評価額を問題と 収用委員会の裁決のうち,損失補償に関する訴えは,これを提起した者が土地所有者である時は,起業者を相手方としなければならない(法133条)。 b ところで,原告は,本件残地の評価額を問題とするが,同評価額を問題とする請求は,損失補償に係る請求であって,本件訴えの中ではできない。 (3) 争点(3)(任意買収交渉不足,斡旋申請欠如による違法)について(原告の主張)起業者である尼崎市は,本件裁決申請前までに行なうべき原告との本件土地の任意買収交渉をしていない,また,本件裁決申請後も,法15条の2に基づく斡旋の申請を行なっていない。 (被告の主張)ア収用委員会が裁決しなければならない事項は,法48条1項,49条1項で規定されている。 イ尼崎市の本件裁決申請前における本件土地の任意買収交渉不足や,本件裁決申請後の本件土地買収の斡旋申請は,被告の審査の対象となり得ない。したがって,被告がその審理の中で原告主張に係る事項を審理しなかったとしても何ら問題はなく,本件裁決が違法となる余地はない。 (4) 争点(4)(意見を述べる機会がなかった違法)について(原告の主張)ア原告は,尼崎市で本件事業を担当していたa町再開発事務所長Aから,本件裁決の申請をするに当たって、収容委員会では十分意見を述べる機会がある旨いわれていたが,被告の審理手続では十分意見を述べることができなかった。 イしたがって,本件裁決は,裁決手続で意見を述べる機会がなかった点で違法がある。 (被告の主張)ア被告は,本件裁決に当たって,審理の機会のみならずその他の機会にも原告の意見を十分聞く機会を確保していた。 原告は,被告の2回にわたる審理の機会には,出席していないが,原告の代理人がい ア被告は,本件裁決に当たって,審理の機会のみならずその他の機会にも原告の意見を十分聞く機会を確保していた。 原告は,被告の2回にわたる審理の機会には,出席していないが,原告の代理人がいずれの機会にも出席するほか,本件裁決に当たって意見書も3通提出している。 イ本件裁決手続は,上記のとおり原告の意見を聞く機会を十分確保したもので,適法である。 (5) 争点(5)(本件建物の建築規制をしなかった違法)について(原告の主張)ア尼崎市は,Bが平成元年5月に本件建物の建築確認を受ける際,Bと事前協議をしたが,その際,本件土地が本件道路事業計画の予定地域に入っていたのに,本件建物の建築規制をしなかった。 ところで,尼崎市は,昭和62年ころには本件土地を含めた地域において本件道路事業計画があることを認識していた以上,その時点で,本件建物の建築ができないようにすることも含め,都市計画法12条の2に定める市街地再開発事業の予定区域を定めるよう兵庫県知事に意見を提出すべきであり,兵庫県知事が同法52条の2による建築規制ができるよう都市計画を進めるべきであった。 イところが,尼崎市は,上記のような建築規制措置をとらなかった違法がある。そして,上記のような尼崎市の行為の違法が被告の審理の中で明らかになれば,本件裁決の結論に相違が生じた。 (被告の主張)ア原告が主張する尼崎市とBとの事前協議は,尼崎市環境整備条例23条に基づく協議で,本件建物建築確認のための事前協議ではない。また,本件土地は,本件建物建築確認当時,都市計画事業の事業区域に入っていなかったが,建築確認から数年後に都市計画決定の変更決定がなされ,本件道路事業計画の対象区域内に入った。 イしたがって,原 本件土地は,本件建物建築確認当時,都市計画事業の事業区域に入っていなかったが,建築確認から数年後に都市計画決定の変更決定がなされ,本件道路事業計画の対象区域内に入った。 イしたがって,原告が主張する違法は,本件裁決に何らの影響も与えない。 第3 当裁判所の判断 1 事実の認定上記第2の2(前提事実)に,証拠(甲4,乙4~10〔枝番を含む〕)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 (1) 本件道路事業計画等ア都市計画道路3.5.505尼崎駅前3号線(別紙図面①②,以下「本件計画道路」という。)は,東側において都市計画道路2.1.5長州線(別紙図面③,以下「長州線」という。)との接続点を起点とし,西側において都市計画道路2.2.2長州久々知線(別紙図面④,以下「長州久々知線」という。)との接続点を終点とする延長約590メートルの都市計画道路で,その中間の地点で都市計画道路3.4.101尼崎駅前2号線(別紙図面⑤,以下「駅前2号線」という。)と接続している。 なお,駅前2号線との接続点を起点とし,長州久々知線との接続点を終点とする約310メートル(別紙図面①)を,以下「本件西側部分」といい,駅前2号線との接続点を起点とし,長州線との接続点を終点とする約280メートル(別紙図面②)を,以下「本件東側部分」という。 イ本件計画道路は,その当初,本件東側部分のみで,同部分は,JR尼崎駅北地区市街地再開発事業を計画するに当たり,都市再開発法4条1項により定められるべき公共施設として計画された都市計画道路で,昭和62年8月14日,都市計画決定がなされた(乙8の1ないし6)。 JR尼崎駅北地区市街地再開発事業の起業者である尼崎市は,同事業の進展にともない,JR尼崎駅北地区の車両の流 計画道路で,昭和62年8月14日,都市計画決定がなされた(乙8の1ないし6)。 JR尼崎駅北地区市街地再開発事業の起業者である尼崎市は,同事業の進展にともない,JR尼崎駅北地区の車両の流れを円滑にするとともに歩行者の安全を確保するため,本件東側部分から更に本件西側部分を延伸する必要があると考え,本件西側部分の道路事業(本件道路事業)を含む変更計画案(延長約590メートルの都市計画道路)について,平成4年1月8日から同変更計画案である阪神間都市計画道路事業3.5.505尼崎駅前3号線都市計画案の縦覧(2週間)を行い,平成4年3月3日,それに対する都市計画変更決定(以下「本件変更決定」という。)を受け,平成4年8月11日,都市計画法59条の都市計画事業の認可を受けた(乙10の1ないし6)。 本件変更決定のうち具体的な変更部分は,本件道路事業部分であるところ,本件道路事業は,同認可を受けて都市計画事業として実施されたものである。 なお,本件道路事業は,都市計画道路を始めとする幹線道路が未整備で,防災及び交通の安全などで問題のあるJR尼崎駅北側地区において,JR尼崎駅北地区市街地再開発事業(平成12年3月完成)と連携を図り,再開発区域へのアクセス道路,さらには,JR尼崎駅と駅北西部市街地を結ぶアクセス道路として,交通の円滑化と都市機能の向上を図ろうとするものである。 ウ原告所有に係る本件土地建物は,本件道路事業の予定地上に存在していた。 (2) 被告での審理経過ア尼崎市は,原告との間で本件土地建物の任意買収交渉が進展しなかったため,平成11年10月5日,本件権利取得裁決及び明渡裁決の申請書を被告に提出した。被告は,同申請を受けて,原告及び関係人(本件土地建物抵当権者,本件建物賃借人)に対 の任意買収交渉が進展しなかったため,平成11年10月5日,本件権利取得裁決及び明渡裁決の申請書を被告に提出した。被告は,同申請を受けて,原告及び関係人(本件土地建物抵当権者,本件建物賃借人)に対し,平成11年10月13日付け書面で同申請などがあったことを通知し,尼崎市に対し,同申請書などを受理した旨の通知をした。 なお,原告及び関係人に対する上記通知には,被告宛に意見書が提出できる旨記載されていた。 イ尼崎市長は,法42条2項,47条の4第2項にしたがい,上記裁決申請書などの公告及び縦覧をした。 被告は,平成11年11月16日,本件裁決手続開始決定を行なって,その審理を開始し,法65条1項による現地調査も行うこととして,同年10月19日付け書面でこの旨を尼崎市,原告及び関係人にも通知をした。 被告は,第2回審理を平成12年1月28日に行なうこととして,その旨の通知を平成11年12月21日付け書面で尼崎市,原告及び関係人に通知をした。 ウ上記各日に被告の審理が行なわれたところ,原告は,同2回にわたる審理にいずれも欠席したが,原告の代理人は,いずれの審理にも出席して意見を述べた。 エ被告は,上記審理の機会の他,尼崎市,原告及び関係人が意見を述べる機会を確保するため,本件裁決に当たって,意見書の受付を行なったところ,尼崎市のみならず,原告の代理人からも3通(平成11年11月10日,同年12月13日,翌12年1月14日付け)の意見書が提出された。 オ被告は,2回目の審理を終えるに当たり,新たに主張したいことがあれば,平成12年2月11日までに意見書を提出されたい旨述べた。 カ被告は,原告代理人がその審理の際などに本件土地などの損失補償額に不満をもっていたので,同土地などについて不 張したいことがあれば,平成12年2月11日までに意見書を提出されたい旨述べた。 カ被告は,原告代理人がその審理の際などに本件土地などの損失補償額に不満をもっていたので,同土地などについて不動産鑑定を実施し,その結果を踏まえて,平成12年3月22日,本件裁決を行なった。同裁決は,同月25日,原告に送付された。 (3) 本件裁決の内容など被告は,別紙裁決書記載の他,本件土地の価格算定に当たっては,被告において行なった不動産鑑定評価,本件土地の近傍類地の取引価格及び被告が現地について調査した本件土地の価格形成上の諸要因等を総合勘案した結果,事業認定時における本件土地の価格を1㎡当たり35万5000円と決定した(乙4)。 また,被告は,本件土地を収用することにより生ずる残地(本件残地)についても,不動産鑑定の鑑定評価,本件残地の価格形成上の諸要因を総合勘案した結果,本件土地の収用により本件残地に地積過小,奥行短小等の減価要因が生じ,その価値が70%減じるものと認め,本件残地については,1㎡当たり24万8500円をもって,残地補償の単価とするのが相当と決定した(乙4)。 なお,本件明渡裁決による損失補償金は,建物移転料,工作物移転補償,立木補償,家賃減収補償,移転雑費等の名目でその支払い項目が挙げられている。 2 検討以上認定した事実を踏まえ,争点について,以下検討する。 (1) 争点(1)(本件道路事業の土地収用権欠如)についてア前示1(1)のとおり,本件道路事業は,市街地再開発事業として実施されたものではなく,都市計画事業として実施されたものである。 イそれに,市街地再開発事業も都市計画事業である。すなわち,都市計画事業とは,都市計画法59条の規定による認可又は承認 施されたものではなく,都市計画事業として実施されたものである。 イそれに,市街地再開発事業も都市計画事業である。すなわち,都市計画事業とは,都市計画法59条の規定による認可又は承認を受けて行われる都市計画施設(道路や公園等)の整備に関する事業及び市街地開発事業をいうところ(都市計画法4条15項),市街地再開発事業も市街地開発事業に含まれる(都市計画法12条4号)。したがって,市街地再開発事業も都市計画事業である。 ウそして,都市計画事業については,これを土地収用法3条各号の一に規定する事業とみなし,同法の規定が適用される(都市計画法69条)。したがって,本件道路事業についても,土地収用ができる事業であることは明らかである。 エ以上の次第で,争点(1)に関する原告主張(本件道路事業の土地収用権欠如)は,その前提事実(本件道路事業は市街地再開発事業として実施されたものである)を誤っている上,都市計画法についての解釈(市街地再開発事業については土地収用することができない)も誤っており,到底採用することができない。 (2) 争点(2)(残地補償の違法)についてア前示1(3)のとおり,被告は,本件土地を収用することにより生ずる残地(本件残地)についても,不動産鑑定の鑑定評価,本件残地の価格形成上の諸要因を総合勘案して,本件土地の収用により本件残地に地積過小,奥行短小等の減価要因が生じ,その価値が70%に減じるものと認め,1㎡当たり24万8500円をもって,残地補償の単価と認めており,その算定手続に問題はなく,その評価においても特に違法と認められる事由はない。 イまた,原告の本件残地に関する主張が,仮に,その残地補償額が低く,損失補償額に問題があるという趣旨であれば,損失補償に関する請求となると その評価においても特に違法と認められる事由はない。 イまた,原告の本件残地に関する主張が,仮に,その残地補償額が低く,損失補償額に問題があるという趣旨であれば,損失補償に関する請求となるところ,同請求に係る訴えは,これを提起した者が土地所有者である時は,起業者を相手方としなければならない(法133条)。したがって,原告の本件残地に関する主張は,本件裁決の違法事由として主張すること自体が失当となる。 ウ以上の次第で,争点(2)(残地補償の違法)に関する原告の主張も採用することができず,本件裁決が違法であるとは認められない。 (3) 争点(3)(任意交渉不足,斡旋欠如)による違法についてア収用委員会が権利取得裁決,明渡裁決で審査・判断すべき事項は,法48条1項,49条1項で規定されている。 イところで,原告が主張するような本件裁決申請前後における尼崎市と原告との本件土地の任意買収交渉の経緯や斡旋申請の有無内容等は,被告が審査・判断すべき対象とはなり得ない。 ウしたがって,原告が争点(3)(任意買収交渉不足,斡旋申請欠如による違法)で主張する事項は,本件裁決の違法事由とはなり得ず,主張自体が失当である。 (4) 争点(4)(意見を述べる機会がなかった違法)についてア原告は,尼崎市で本件道路事業を担当していたa町再開発事務所長Aから,本件裁決の申請に当たって、収容委員会では十分意見を述べる機会がある旨いわれていたが,被告の審理の機会には十分意見を述べることができなかった旨主張する。 イしかし,前示1(2)のとおり,被告は,原告をして意見を述べる機会を確保するため,2回の審理の開催を原告に通知して,原告に同審理に出席のうえ意見を述べる機会を与え,その他,審理以外でも何回かにわたって意見 ,前示1(2)のとおり,被告は,原告をして意見を述べる機会を確保するため,2回の審理の開催を原告に通知して,原告に同審理に出席のうえ意見を述べる機会を与え,その他,審理以外でも何回かにわたって意見書提出の機会も与えている。そのような機会が与えられたことから,原告は出席していなかったものの,原告代理人が2回とも被告の審理に出席したうえ,そこで,原告の意見を述べ,更に,原告代理人は,本件裁決に先立って3通の意見書を被告に提出している。 以上の事実からすると,被告は,原告に対し,本件裁決手続の中で十分意見を述べる機会を与えていたものと認められ,それを覆すに足りる証拠はない。 ウそうすると,原告が争点(4)(意見を述べる機会がなかった違法)で主張する事実が認められず,本件裁決に至る手続が違法であったものとは認められない。 (5) 争点(5)(本件建物の建築規制をしなかった違法)についてア原告は,本件道路事業の起業者である尼崎市が,本件道路事業の施工に当たって,事前に本件建物の建築規制措置をとらなかったため,本件建物の建築確認がなされたところ,その措置がとられなかったことについて,本件裁決手続の中で明らかとなれば,同裁決の結論に相違が生じる旨主張する。 イ同主張の趣旨は,必ずしも明らかでないところ,原告が主張するような義務が起業者である尼崎市に生じるのか疑問である。しかも,前示のとおり,本件土地は,本件建物の建築確認(甲5)がなされた平成元年5月当時,本件道路事業の対象区域に入っていなかったものであり,本件土地が本件道路事業の対象区域に入ったのは,本件変更決定が平成4年3月3日に告示された後,都市計画法59条の都市計画事業の認可を受けた同年8月11日である(前記1(1)イ)。したがって,尼崎市は,本件建物の建 路事業の対象区域に入ったのは,本件変更決定が平成4年3月3日に告示された後,都市計画法59条の都市計画事業の認可を受けた同年8月11日である(前記1(1)イ)。したがって,尼崎市は,本件建物の建築確認がされた平成元年5月当時,本件建物の建築規制措置をとりうる余地がなかったというべきである。 また,仮に,原告が主張するとおり,本件建物の建築確認手続に違法事由があったとしても,本件道路事業は,本件建物建築確認とは別個の行為で,一体の関係になく,したがって,本件道路事業それ自体が直ちに違法となるものでなく,本件裁決に原告主張に係る違法が承継されることはあり得ない。 ウそうすると,原告の争点(5)で主張する事実(本件建物の建築規制措置をとらなかったことの違法)自体が認められず,仮に建築規制措置を取らなかったことが違法であったとしても,本件裁決が違法になるものではない。 第4 結論以上の次第で,本件裁決には原告主張の違法があるものとは認められず,原告の本訴請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官紙浦健二 裁判官中村哲裁判官秋田志保・
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