平成22(ワ)24818 特許権差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年11月25日 東京地方裁判所
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判決文本文45,488 文字)

- 1 -平成23年11月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(ワ)第24818号特許権差止等請求事件口頭弁論終結日平成23年9月16日判決東京都港区<以下略>原告美和ロック株式会社同訴訟代理人弁護士熊谷秀紀保 田 眞紀子東京都足立区<以下略>被告新生デジタル株式会社同訴訟代理人弁護士今村健志戸張正子宮坂英司森下寿光 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙1「被告製品目録」記載の製品を製造し,販売し,又は販売のために展示してはならない。 2 被告は,別紙1「被告製品目録」記載の製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,148万5000円及びこれに対する平成22年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「ロータリーディスクタンブラー錠及び鍵」とする後 - 2 -記2(2)の特許の特許権者である原告が,被告が製造,販売する別紙1「被告製品目録」記載のブランクキー(以下「被告製品」という。判決注:ブランクキーとは,鍵コード溝形成の加工を行い合鍵を作成する前の,未加工の鍵材である。)が後記2(2)の本件特許発明の実施品である鍵の生産にのみ用いられるものであり(特許法101条1号),又は上記鍵の生産に用いる物であって本件特許発明による課題の解決に不可欠なものである(同条2号)と主張して,被告に対し,被告製品の製造,販売等の差止め み用いられるものであり(特許法101条1号),又は上記鍵の生産に用いる物であって本件特許発明による課題の解決に不可欠なものである(同条2号)と主張して,被告に対し,被告製品の製造,販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,不法行為(特許権侵害)による損害賠償請求(民法709条,特許法102条3項)として,148万5000円及びこれに対する平成22年7月7日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除き,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,錠前,建築金物及び工業金物の製造,販売等を目的とする株式会社である。(弁論の全趣旨)イ被告は,各種セキュリティ機器,セキュリティシステムの設計,製造,施工,販売,レンタル業務等を目的とする株式会社である。(弁論の全趣旨)(2) 原告は,次の特許の特許権者である(以下,この特許を「本件特許」といい,本件特許に係る特許権を「本件特許権」,本件特許に係る特許請求の範囲の【請求項2】に記載の発明を「本件特許発明」という。また,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書等」といい,その特許公報〈甲2〉を別紙2として添付する。)。 特許番号特許第4008302号発明の名称ロータリーディスクタンブラー錠及び鍵出願日平成14年8月5日 - 3 -優先日平成13年10月15日登録日平成19年9月7日特許請求の範囲【請求項2】内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた 内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロットに,中央部に鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔を形成し,剛性を高めるため環状に成形したロータリーディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された合鍵のブレードの平面部又は端縁部と干渉する係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの係合突起の先端と整合するブレードの部位に,有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき, - 4 -各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさ の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき, - 4 -各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:「回動させたとき」の誤記と認める。),カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。 (3) 本件特許発明の構成要件を分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件A」~「構成要件N」という。)。 (Ⅰ)A 内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,B この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,C この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,D 上記仕切板の間の各スロットに,中央部に鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔を形成し,剛性を高めるため環状に成形したロータリーディスクタンブラーを挿設し,E その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,F 鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,G 一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された合 - 5 -鍵のブレードの平面部又は端縁部と干渉する係合突起を一体に突設し,H 各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方 の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された合 - 5 -鍵のブレードの平面部又は端縁部と干渉する係合突起を一体に突設し,H 各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,I 他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたJ ロータリーディスクタンブラー錠(Ⅱ) (Ⅰ)の合鍵であって,K 鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの係合突起の先端と整合するブレードの部位に,有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成し,L この窪みが対応する係合突起と係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,M 以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:「回動させたとき」の誤記と認める。),カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするN ロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。 (4) 原告は,本件特許発明の実施品として,平成15年4月からPRシリンダー錠(以下「PR錠」という。)及びPR錠用の鍵(以下「PR鍵」といい,PR錠とPR鍵を併せて「PR製品」という。)を,平成17年1月からPSシリンダー錠(以下「PS錠」という。)及びPS錠用の鍵 (以下「PS鍵」という。なお,PS鍵は,PR鍵のブレードの長さを縮めたものである。)をそれぞれ製造,販売している。 - 6 -PR錠の鍵孔の幅は8.32(±0 という。)及びPS錠用の鍵 (以下「PS鍵」という。なお,PS鍵は,PR鍵のブレードの長さを縮めたものである。)をそれぞれ製造,販売している。 - 6 -PR錠の鍵孔の幅は8.32(±0.05)㎜であり,PR鍵の幅は8. 20(±0.02)㎜である。 (5)ア被告は,平成21年8月以降,被告製のPROシリンダー1個(キー3本付き),「DKS1」及び「DAIKI」の刻印のあるブランクキー(被告製品)50本,専用超硬カッター1本,専用ガイド1本,専用スペーサー1㎜2枚をセットで販売した(以下,上記シリンダー錠を「旧式錠」といい,被告製品のうち「DKS1」及び「DAIKI」の刻印のあるものを「旧式鍵」という。)。 旧式錠の鍵孔の幅は8.20(±0.02)㎜であり,旧式鍵の幅は8. 15(±0.02)㎜である。(甲6の1,弁論の全趣旨)イ被告は,平成21年10月1日,旧式錠及び旧式鍵の双方の寸法を修正して,新式のPROシリンダー錠(以下「新式錠」という。)並びに「DKS1」及び「Shinsei」の刻印のあるブランクキー(被告製品。 なお,旧式鍵と区別するため,この被告製品を「新式鍵」という。)の販売を開始した。 新式錠の鍵孔の幅は8.30(±0.02)㎜であり,新式鍵の幅は8. 20(±0.02)㎜である。 (6) 本件特許に係る無効審判請求事件の経緯ア第1次審決株式会社後藤製作所は,平成22年1月20日,本件特許について,無効審判請求(無効2010-800013)をした。(乙16の1)特許庁は,同年11月8日,本件特許発明について,特開平9-144398号公報(乙17の1)に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許は無効とすべきである旨の審決をした。(乙 特許発明について,特開平9-144398号公報(乙17の1)に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許は無効とすべきである旨の審決をした。(乙18の1)これに対し,原告は,同年12月16日,上記審決に対する取消訴訟(知 - 7 -的財産高等裁判所平成22年(行ケ)第10391号)を提起するとともに,平成23年1月18日,特許庁長官に対し,本件特許に係る特許請求の範囲の減縮及び特許請求の範囲の明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正審判の請求をした。(甲32)知的財産高等裁判所は,同年2月7日,本件特許を無効にすることについて特許無効審判において更に審理させることが相当であると認め,事件を審判官に差し戻すため,特許法181条2項の規定により,上記審決を取り消す決定をした。(甲39)イ第2次審決原告は,平成23年3月4日,特許庁長官に対し,特許請求の範囲の減縮,特許請求の範囲の明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。(甲40。なお,本件訂正請求により,上記アの訂正審判請求は取り下げられたものとみなされた〈特許法134条の3第4項〉。)また,原告は,同年6月6日,本件訂正請求に係る訂正請求書を補正する旨の手続補正(以下「本件補正」という。)をした。(甲41)特許庁は,同年8月30日,本件補正は訂正請求書の要旨を変更するもので認められず,本件訂正請求は,特許法134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項のいずれにも該当しないものを含み,また,同第5項が準用する同法126条3項に違反するもので,認められないとした上,本件特許発明は,特開平9-144398号公報(乙17の1)に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容 を含み,また,同第5項が準用する同法126条3項に違反するもので,認められないとした上,本件特許発明は,特開平9-144398号公報(乙17の1)に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとして,本件特許の請求項1~3に係る発明についての特許を無効とする審決をした。(甲47) 3 争点(1) 間接侵害の成否(被告製品の製造,販売,販売のための展示は,本件特許 - 8 -権を侵害するものとみなされるか)(2) 本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(3) 無効主張に対する対抗主張(訂正請求)(4) 原告の損害額 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(間接侵害の成否)についてア原告(ア) 特許法101条1号に規定する間接侵害被告は,平成20年8月,本件特許発明の実施品であるPR鍵を作るための元となる鍵(ブランクキー),合鍵作成用のドリルの刃及び作成マニュアルの販売を開始する旨を発表し,同年11月7日,8日に開催された日本ロックセキュリティ協同組合主催の展示会にこれを出展しようとした。この発表のあったセキュリティ産業新聞の記事には「美和ロック(判決注:原告)のPRは同社独自の製法で製造されているため,従来は鍵屋が合鍵を作ることが難しかったが,新生デジタル(判決注:被告)ではその作成法を研究。元となる鍵と合鍵作成用のドリルの刃,および作成マニュアルを業者に販売。意匠登録も取得済み。」との記載があり,被告製ブランクキーが原告製錠前用の鍵を製造するためのものであるとの明白な目的が示されている。 実際,被告製品は,原告製錠(PR錠)の鍵孔に入るように設計,製造されており,旧式鍵については,原告製錠(PR錠)の鍵孔には入るが,セッ 製造するためのものであるとの明白な目的が示されている。 実際,被告製品は,原告製錠(PR錠)の鍵孔に入るように設計,製造されており,旧式鍵については,原告製錠(PR錠)の鍵孔には入るが,セット販売している旧式錠の鍵孔には入らないなどの考えられないような欠陥があったことからしても,PR鍵用のブランクキーとしてのみ使用されていたことが明らかである。また,新式鍵についても,PR鍵の幅(8.20〈±0.02〉㎜)と全く同一に設計し,PR錠の合鍵を作るためのブランクキーとしての精度を高めたもので,PR鍵用の - 9 -ブランクキーとしてのみ使用されていたものである。この点,被告が旧式錠及び新式錠を製造,販売していたのは,被告製品が本件特許権に対する間接侵害となることを隠蔽するための手段にすぎない。 以上のとおり,被告製品は,本件特許発明の実施品であるPR鍵の生産にのみ用いられるものであり,それ以外に経済的,商業的,実用的な使用の事実は認められないから,被告が業としてこれを製造,販売することは,特許法101条1号に該当する。 (イ) 特許法101条2号に規定する間接侵害本件特許発明の課題は,「タンブラーの剛性が大きくて丈夫であり,リバーシブルの鍵が可能であってしかも鍵違いも大きな新規なロータリーディスクタンブラー錠及びその鍵を提供する」ことであり,「鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの係合突起の先端と整合するブレードの部位に,有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合する」ようにした合鍵を提供することによってこの課題を解決したものである(この窪みは,全て一列に形成されているわけではなく,ブレード部分の ディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合する」ようにした合鍵を提供することによってこの課題を解決したものである(この窪みは,全て一列に形成されているわけではなく,ブレード部分の幅方向に微妙にずれているため,窪みの列方向における間隔を狭くすることができ,その結果,鍵違いの数を増やすことができる。これは,タンブラーが支軸を支点にして振り子式に揺動するロータリーディスクタンブラー方式を採用したからこそ可能になったものである。)。 本件特許発明による新規なロータリーディスクタンブラー錠と,錠の鍵孔に挿入可能にされたブランクキーを用い,錠の鍵違いに応じた窪みを形成した合鍵があって初めて本件特許発明の課題が解決されるのであるから,被告製品(本件特許発明に係る鍵の一歩手前の状態にあるもの)は,本件特許発明による課題の解決に不可欠なものに該当する。 - 10 -また,ブランクキーは,特定の錠前の鍵孔にがたつくことなく挿入することができ,鍵コード溝形成の加工によって施錠,解錠できることが求められるため,その錠前の鍵孔の形状に適合した形状の鍵断面を有する必要がある。したがって,PR錠及びPS錠用には,それに応じた鍵断面形状のブランクキーを用いることが要求されるから,被告製品は,「日本国内において広く一般に流通しているもの」には当たらない。 さらに,原告は,被告に対し,再三にわたり,被告製品の製造,譲渡等の中止を求めてきており,平成21年11月上旬には,本件特許権に基づき,これらの行為の差止めを求める仮処分命令の申立て(当庁平成21年(ヨ)第22073号)をしていることから,被告は,遅くとも,上記仮処分命令申立書の送付を受けた後である同月15日には,原告の発明が特許発明(本件特許発明)であること及び被告製品が本件特許発 21年(ヨ)第22073号)をしていることから,被告は,遅くとも,上記仮処分命令申立書の送付を受けた後である同月15日には,原告の発明が特許発明(本件特許発明)であること及び被告製品が本件特許発明の実施に用いられることを知っていたというべきである。 したがって,被告が業として被告製品の製造,販売等をすることは,特許法101条2号により,本件特許権を侵害するものとみなされる。 イ被告(ア) 特許法101条1号に基づく間接侵害の主張について本件において,被告が被告製品を生産,譲渡等することが特許法101条1号に該当するためには,被告製品が本件特許発明に係る鍵の生産「にのみ」用いられていなければならない。ここで,「にのみ」とは,その物の生産以外の他の用途がないことを意味するもので,「他の用途」としては,経済的,商業的ないしは実用的な使用の事実がなければならないとされる。 しかるところ,被告は,主として集合住宅,共用部分等で使用されている,合鍵作成の需要の高いLAタイプ錠の交換用として,また,暗証番号電子錠の非常キーシリンダーとして,PROシリンダー錠を採用し, - 11 -LAタイプ錠と電子錠のブランクキーとしても使用することを想定して,被告製品を販売している。具体的な製品は,次のとおりである。 ・主錠交換用 PROシリンダー(LA・LSP)・補助錠用 S-16C-PRO・補助錠用 S-16C-PRO2R・補助錠用 S-202R-PRO・主錠交換用(LA・LSP) S-202RK-PROこのように,被告は,被告製品を,PROシリンダー錠(ピンシリンダー錠)の合鍵を生産するためのブランクキーとして販売しており(かかるPROシリンダー錠とその合鍵によって,ロック装置としての機能を十分果たすことが期待さ 被告製品を,PROシリンダー錠(ピンシリンダー錠)の合鍵を生産するためのブランクキーとして販売しており(かかるPROシリンダー錠とその合鍵によって,ロック装置としての機能を十分果たすことが期待されている。),被告製品に経済的,商業的ないしは実用的な使用の事実があるのは明白である。 被告製品は,飽くまでも被告製のシリンダー錠のための合鍵を作成することを主たる目的として作られたものであるが,同時に,流通量の多い原告製のシリンダー錠にも挿入できれば,ブランクキーとしてより便利になることから,汎用性を高めるため,原告製のシリンダー錠にも挿入できるように作成されたものである。また,被告製のシリンダー錠を「PROシリンダー錠」と命名したのは,錠前専門の業者(PRO)にも認められる製品にしたいという願いを込めたからであり,原告製の「PRシリンダー錠」に似せたものではない。 以上のとおり,被告製品は,本件特許発明に係る鍵の生産以外の用途がないとはいえないから,本件特許発明に係る鍵の生産「にのみ」用いる物ではなく,特許法101条1号には当たらない。 (イ) 特許法101条2号に基づく間接侵害の主張について特許法101条2号において,「その物の生産に用いる物」が「その発明による課題の解決に不可欠なもの」といえるためには,間接侵害規 - 12 -定が特許権の効力の不当な拡張とならないよう,従来技術の問題点を解決するための方法として当該発明が新たに開示する,従来技術にみられない特徴的技術手段について,当該手段を特徴付けている特有の構成ないし成分を直接もたらす,特徴的な部材,原料,道具等であることが必要である。 原告は,本件特許発明の特徴として,ロータリーディスクタンブラーの係合突起の先端と整合する部位に,ブレードの側端縁の鍵溝の代わり 直接もたらす,特徴的な部材,原料,道具等であることが必要である。 原告は,本件特許発明の特徴として,ロータリーディスクタンブラーの係合突起の先端と整合する部位に,ブレードの側端縁の鍵溝の代わりに合鍵の平面部及び端縁部に窪みを形成したことを挙げるが,これは鍵違いの増加という課題を得るためには周知の技術であり,従来技術にみられない特徴的技術手段とはいえない。 したがって,本件特許発明においては,鍵違いの増加という課題を解決するための方法として,本件特許発明が新たに開示する,従来技術にみられない特徴的技術手段が不明であり,被告製品が「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当するか否かの判断の前提を欠いているから,特許法101条2号の間接侵害の主張は失当である。 (2) 争点(2)(本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)についてア被告本件特許は,次の無効理由があるから,特許無効審判により無効にされるべきである。 (ア) 無効理由1(明確性要件違反)本件特許発明は「鍵」についての発明であるが,本件特許発明の構成要件のうち,構成要件A~Jは,ロータリーディスクタンブラー錠の構成の説明であり,構成要件K~Nについても,一般的なロータリーディスクタンブラー方式のシリンダー錠の解錠の仕組みの説明にすぎず,「鍵」の構成を特定しているのは,構成要件Kのうち,「係合突起の先 - 13 -端と整合するブレードの部位に,有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成し」た点のみである。 このように,本件特許発明に係る特許請求の範囲には,構成要件Kの一部以外の事項(特にロータリーディスクタンブラー錠の構成に関する構成要件A~J)が「鍵」の構造,機能,特性等にどのように関係しているかについて全く記載がなく, 係る特許請求の範囲には,構成要件Kの一部以外の事項(特にロータリーディスクタンブラー錠の構成に関する構成要件A~J)が「鍵」の構造,機能,特性等にどのように関係しているかについて全く記載がなく,また,この関係は,技術常識から当業者が理解できるものでもないから,構成要件K以外の事項(特にロータリーディスクタンブラーの構成に関する構成要件A~J)により本件特許発明を特定することの技術的意味が全く理解できない。 したがって,本件特許発明は著しく不明確であるから,本件特許は,特許法36条6項2号に違反するものとして,同法123条1項4号により無効にされるべきである。 (イ) 無効理由2(新規性の欠如)a 本件特許発明に係る特許請求の範囲は,「ロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって」という記載や,「ロータリーディスクタンブラー錠用の鍵」という記載から明らかなように,物の用途を用いてその物を特定する記載(用途限定)になっている。 しかしながら,本件特許発明に係る特許請求の範囲において,ロータリーディスクタンブラー錠の構成に関する記載は,本件明細書等の記載及び本件特許の優先日当時の技術常識を考慮しても,「ロータリーディスクタンブラー錠に特に適した鍵」などのように鍵を特定する意味を有しているとは解されず,結局,本件特許発明については,鍵自体の形状による特定しかされていない。したがって,本件特許発明は,「錠内の係合突起の先端と整合するブレードの平面部又は端縁部の位置に,有底で所定の深さの摺り鉢状の窪みを形成した鍵」ということになる。 - 14 -b 本件特許の優先日前に頒布された特許第3076370号公報(乙7の2)には,挿入軸部分の幅広平坦面に形成される有底で摺り鉢状の窪み「穴列A,B,C,D」と,挿入軸部分の左右側の - 14 -b 本件特許の優先日前に頒布された特許第3076370号公報(乙7の2)には,挿入軸部分の幅広平坦面に形成される有底で摺り鉢状の窪み「穴列A,B,C,D」と,挿入軸部分の左右側の端面に形成される有底で摺り鉢状の窪み「穴列E,F」とを有する鍵に関する発明(以下「乙7の2発明」という。)が開示されている。 c 乙7の2発明は,有底で摺り鉢状の窪みが存在する箇所を,挿入軸部分の幅広平坦面と,挿入軸部分の左右側の端面としていることから,ブレードの平面部又は端縁部の位置に,有底で所定の深さの摺り鉢状の窪みを形成した鍵である。そして,これら「有底で摺り鉢状の窪み」は,ロックシリンダー関連のタンブラーと協働するものとされており(【発明の詳細な説明】参照),錠内の係合突起の先端と整合することが分かるから,乙7の2発明は,錠内の係合突起の先端と整合するブレードの位置に,有底で所定の深さの摺り鉢の窪みを形成した鍵である。 したがって,本件特許発明と乙7の2発明には相違点がなく,本件特許発明は新規性を有しないから,本件特許は,特許法29条1項に違反するものとして,同法123条1項2号により無効にされるべきである。 (ウ) 無効理由3(進歩性の欠如)a 本件特許の優先日前に頒布された実願昭57-149628号(実開昭59-51958号)のマイクロフィルム(乙9,乙17の6)には,「外筒と,この外筒に回動可能に設けられた内筒と,内筒の径方向に断面大略矩形状である鍵挿入孔の短尺巾と長尺巾側面からガイド孔をそれぞれ径方向に外筒まで穿設して,両ガイド孔内に一群のピンタンブラーを納めてなるピンタンブラー方式シリンダー錠用の合鍵であって,鍵本体を上記鍵挿入孔と適合する断面矩形状に成形すると - 15 -共にその側面と板面とに上記ピン 両ガイド孔内に一群のピンタンブラーを納めてなるピンタンブラー方式シリンダー錠用の合鍵であって,鍵本体を上記鍵挿入孔と適合する断面矩形状に成形すると - 15 -共にその側面と板面とに上記ピンタンブラーをレベル合致状態に作動せしめる鍵部を大略倒円錐台形状に凹設形成してなる鍵」という発明(以下「乙9発明」という。)が開示されている。 b 本件特許発明と乙9発明とを対比すると,両者は,シリンダー錠内の係合突起の先端と整合するブレードの位置に,有底で所定の深さの摺り鉢状の窪みを形成した鍵という点で一致し,大まかにいえば,タンブラーがピンタンブラーかロータリーディスクタンブラーかの点で相違する。 c しかしながら,シリンダー錠において鍵違いの数を増加させるという本件特許発明の課題を解決するために,錠内のタンブラーにおける係合突起の形状に差をもたせることは,本件特許の優先日当時,当業者にとって周知の事実であり,これに対応する形で,鍵のブレードの端縁部の窪みをその係合突起が係合する場所に設けることも,シリンダー錠がロータリーディスクタンブラー方式であれ,ピンタンブラー方式であれ同様であって,本件特許の優先日当時,当業者にとって周知の事実であった。 したがって,ピンタンブラー方式のシリンダーで鍵違いを増加させるための周知技術(例えば,ピンタンブラーを鍵に対して多方向から作用させること)をロータリーディスクタンブラー方式のシリンダー錠に転用することは,当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。 以上のとおり,本件特許発明は,乙9発明に基づいて容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法123条1項2号に該当するものとして,無効にされるべきである。 (エ) 易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法123条1項2号に該当するものとして,無効にされるべきである。 (エ) 無効理由4(進歩性の欠如)a 本件特許の優先日前に頒布された特開平9-144398号公報 - 16 -(乙17の1)には,次のようなレバータンブラー錠(ロータリーディスクタンブラー錠の一つである。)用の鍵の発明(以下「乙17の1発明」という。)が開示されている。 「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝21を形成した外筒22と,この外筒22に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板23を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔24を貫通させた内筒部25と,この内筒部25の母線に沿って延在し,内筒部25の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝21と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバー27とを有し,上記仕切板23の間の各スロットに,中央部に鍵孔24を包囲し得る大きさの鍵挿通切欠を形成したC字状のレバータンブラー29を挿設し,その実体部の1か所を,内筒部25を軸線方向に貫通する支軸31に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通切欠を挟んで上記支軸31と対峙するレバータンブラー29の実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠き28を形成し,一方,鍵挿通切欠の開口端縁に,鍵孔24に挿入された合鍵のキー本体12の平面部又は端縁部と干渉する係合縁部を設け,各レバータンブラー29をこの係合縁部が合鍵に近接する方向にタンブラーばね32で付勢すると共に,常態では内筒部25を軸線方向に貫通するバックアップピン33に係止し,他方,これらのタンブラ け,各レバータンブラー29をこの係合縁部が合鍵に近接する方向にタンブラーばね32で付勢すると共に,常態では内筒部25を軸線方向に貫通するバックアップピン33に係止し,他方,これらのタンブラー群29の係合縁部の夫々が鍵孔24に挿通された合鍵のキー本体12に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の - 17 -傾斜面として形成された刻みと係合したとき,各レバータンブラー29の解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにしたレバータンブラー錠用の合鍵であって,鍵孔24に挿入されたときレバータンブラー29の係合縁部と整合するキー本体12の部位に,谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みを形成し,この刻みが係合縁部と係合したとき,各レバータンブラー29の解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒部25を回動させたとき,カム溝21とロッキングバー27との間に生じる楔作用によりロッキングバー27を内筒部25中心軸方向に移動させ,内筒分25を外筒22に対し相対回動できるようにしたレバータンブラー錠用の鍵」b 乙17の1発明の「内筒部25」が本件特許発明の「内筒」に相当し,「解錠切欠き28」が「解錠切欠」に相当し,「キー本体12」が「ブレード」に相当する。また,乙17の1発明の「鍵挿通切欠」と本件特許発明の「鍵挿通孔」とが「鍵挿通部」で共通し,以下同様に,「(C字状の)レバータンブラー29」と「(剛性を高めるため環状に形成した)ロータリーディスクタンブラー」とが「(ロータリー)ディスクタンブラー」で共通し,「係合縁部」と「係合突起」とが「係合部」で共通し,「谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻み」と「対応する窪み」とが「対応する凹部」で ータリー)ディスクタンブラー」で共通し,「係合縁部」と「係合突起」とが「係合部」で共通し,「谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻み」と「対応する窪み」とが「対応する凹部」で共通する。そして,乙17の1発明の「谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻み」と本件特許発明の「有底で所定の深さの摺り鉢形の窪み」とが「対応する凹部」で共通する。 そうすると,両者は,「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外 - 18 -筒と,この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロットに,中央部に鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通部を形成したディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1か所を,内筒の軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通部を挟んで上記支軸と対峙するディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,一方,鍵挿通部の開口端縁に,鍵孔に挿入された合鍵のブレードの平面部又は端縁部と干渉する係合部を設け,各ディスクタンブラーをこの係合部が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,他方,これらのタンブラー群の係合部のそれぞれが鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する凹部と係合したとき,各ディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたディスクタンブラー錠の合鍵であって,鍵 のそれぞれが鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する凹部と係合したとき,各ディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたディスクタンブラー錠の合鍵であって,鍵孔に挿入されたときディスクタンブラーの係合部と整合するブレードの部位に対応する凹部を形成し,この凹部が対応する係合部と係合したとき,各ディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,もって,合鍵と一体的に内筒を回動させたとき,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにした(ロータリー)ディスクタンブラー錠用の鍵。」の点で一致するとともに,次の点で相違する。 - 19 -(相違点1)鍵挿通部及び(ロータリー)ディスクタンブラーの構成について,本件特許発明では,鍵挿通部が「鍵挿通孔」であって,この「鍵挿通孔」を中央部に形成した(ロータリー)ディスクタンブラーが「剛性を高めるため環状に成形したロータリーディスクタンブラー」であるのに対して,乙17の1発明では,鍵挿通部が「鍵挿通切欠」であって,この「鍵挿通切欠」を中央部に形成した(ロータリー)ディスクタンブラーが「C字状のレバータンブラー」である点。 (相違点2)(ロータリー)ディスクタンブラーの解錠切欠とロッキングバーの内側縁とを整合させるための構成について,本件特許発明では,「ロータリーディスクタンブラー」の開口端縁に一体に突設した「係合突起」と合鍵のブレードに形成された対応する「有底で所定の深さの摺り鉢形の窪み」との係合により,上記整合を行うものであるのに対して,乙17の1発明では,上記「C字状のレバータンブラー」の開口端縁に設けた「係合縁部」と合鍵のブレードに 応する「有底で所定の深さの摺り鉢形の窪み」との係合により,上記整合を行うものであるのに対して,乙17の1発明では,上記「C字状のレバータンブラー」の開口端縁に設けた「係合縁部」と合鍵のブレードに形成された対応する「刻み」との係合により,上記整合を行うものである点。 c 相違点の検討(a) 相違点1について特開2000-96889号公報(乙17の9),実願平5-42779号(実開平7-14041号)のCD-ROM(乙17の11),特開昭62-189269号公報(乙17の12),特開平6-346639号公報(乙17の13)のいずれにも,中央部に鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔を形成してなる環状のロータリーディスクタンブラーを回動自在に挿設したロータリー型のディスクタンブラー錠(ロータリーディスクタンブラー方式のタンブラ - 20 -ー錠)が開示されている。 そうすると,ロータリー型のディスクタンブラー錠(ロータリーディスクタンブラー方式のタンブラー錠)の技術分野において,当該(ロータリー)ディスクタンブラー錠に回動自在に挿設する(ロータリー)ディスクタンブラーを,中央部に鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔を形成してなる環状のロータリーディスクタンブラーとすることは,従来から周知の技術にすぎない。 また,環状に成形したロータリーディスクタンブラーが,C字状の(ロータリー)ディスクタンブラーよりも剛性が高いことは自明である。そうすると,乙17の1発明の(ロータリー)ディスクタンブラー錠においても,(ロータリー)ディスクタンブラーとして,高い剛性が必要であることは明らかであるから,上記乙17の9,11~13で開示された周知の環状に成形してなるロータリーディスクタンブラーを採用して,上記相違点1に係る本件特許発明の構成 ーとして,高い剛性が必要であることは明らかであるから,上記乙17の9,11~13で開示された周知の環状に成形してなるロータリーディスクタンブラーを採用して,上記相違点1に係る本件特許発明の構成に想到することは,当業者が容易になし得たものである。 (b) 相違点2について実公平6-28616号公報(乙17の2)には,「ディスクタンブラ2の鍵板挿入用透孔10の孔縁部に一体に突設された受動突起14と,鍵板9に有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みとして形成されている対応する操作凹部12,13との係合により,ディスクタンブラ2を解錠位置に移動させるようにした,ディスクタンブラ型シリンダ錠」が開示されているところ,上記鍵板9の操作凹部12,13は有底で所定の深さの摺り鉢形のものと認められる。 また,実公昭55-32998号公報(乙17の3)には,「タンブラー6の鍵貫通孔15の開口端縁から一体に突設された解錠突起8と,鍵1に有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みとして形成され - 21 -ている対応する解錠穴2a,2b,2cとの係合により,タンブラー6を解錠位置に移動させるようにしたシリンダー錠」が開示されているところ,上記鍵1の解錠穴2a,2b,2cは有底で所定の深さの摺り鉢形のものと認められる。 さらに,上記のような有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みをブレードに形成した鍵は,上記乙17の2,3以外にも,意匠登録第965697号公報(乙17の4),意匠登録第1110356号公報(乙17の5),実願昭57-149628号(実開昭59-51958号)のマイクロフィルム(乙9,乙17の6),実願平4-89007号(実開平6-51443号)のCD-ROM(乙17の7),実公昭51-15730号公報(乙17の8)に記載されているように,タンブ 号)のマイクロフィルム(乙9,乙17の6),実願平4-89007号(実開平6-51443号)のCD-ROM(乙17の7),実公昭51-15730号公報(乙17の8)に記載されているように,タンブラー錠の技術分野において,従来から周知の技術にすぎない。 したがって,乙17の1発明の(ロータリー)ディスクタンブラー錠用の鍵において,(ロータリー)ディスクタンブラーの解錠切欠とロッキングバーの内側縁とを整合させるための係合構造として,上記乙17の2,3の発明等に開示された周知の係合構造を採用して,上記相違点2に係る本件特許発明の構成に想到することは,当業者が容易になし得たものである。 (c) 以上のとおり,本件特許発明は,乙17の1発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法123条1項2号に該当するものとして,無効にされるべきである。 イ原告(ア) 本件特許発明は,錠と鍵とが結合された技術的思想である。すなわち, - 22 -構成要件A~Nは,本件特許発明が錠と鍵との結合したロック装置全体であることを示し,構成要件K~Nは,本件特許発明の鍵的側面を示し,他方,構成要件Kは鍵の構成を,構成要件L,Mは鍵の機能をそれぞれ記述している。 鍵と錠の概念及びその相互関係が周知であれば,鍵だけを特許請求する場合,「何々の錠の鍵」と説明すれば十分であるが,本件特許の対象である「ロータリーディスクタンブラー錠及び鍵」は,錠と鍵とが結合された新規な技術的思想であるため,鍵を説明するためには錠の構成も説明しなければならず,構成要件A~Jのような記載が必須になる。このように,錠に関する記載も本件特許発明の発明特定事項である とが結合された新規な技術的思想であるため,鍵を説明するためには錠の構成も説明しなければならず,構成要件A~Jのような記載が必須になる。このように,錠に関する記載も本件特許発明の発明特定事項であるから,特許要件(新規性,進歩性等)を判断するに当たって,これを無視することはできない。 (イ) 無効理由1(明確性要件違反)に対し本件特許発明の対象は,錠及び鍵を含めたロック装置全体であり,鍵のみについての発明であることを前提とする被告の主張は失当である。 本件特許発明に係る特許請求の範囲は,鍵的側面に重点をおいた記載となっているが,本件特許発明を特定するには,構成要件A~Nの全てが必要であり,特許を受けようとする発明を明確に記載したものになっている。 (ウ) 無効理由2(新規性の欠如)に対し被告は,本件特許発明の発明特定事項の一部のみを取り出し,それと乙7の2発明とを比較して,本件特許発明に新規性がないと主張しているにすぎず,被告の主張は失当である。 (エ) 無効理由3(進歩性の欠如)に対し乙9発明のほか,被告が提出する証拠(乙6の1,2,乙7の1,2,乙11~15等)には,ロータリーディスクタンブラー錠という技術的 - 23 -思想について記載も示唆もない。したがって,これらに記載された発明をいかに組み合わせても,本件特許発明の構成を得ることは技術的合理性の見地から可能かつ相当であるとはいえず,当業者が容易に想到することができたとはいえない。 本件特許発明に係る鍵は,従来のロータリーディスクタンブラー錠における合鍵と異なり,ブレードの端縁部に形成されたV字形の鍵溝ではなく,窪みの深さによって鍵違いを得るようにしている。また,ブレードの平面部だけではなく端縁部にも窪みを形成することができるので,鍵違いを従来のロ なり,ブレードの端縁部に形成されたV字形の鍵溝ではなく,窪みの深さによって鍵違いを得るようにしている。また,ブレードの平面部だけではなく端縁部にも窪みを形成することができるので,鍵違いを従来のロータリーディスクタンブラー錠と比較して格段に多くすることができる。さらに,窪みの深さに応じてその中心位置をブレードの幅方向,あるいはブレードの端縁部の幅方向において微妙に変化させなくてはならないので,合鍵の複製が困難になる等,種々の効果を奏する。 (オ) 無効理由4(進歩性の欠如)に対しa 相違点1について(a) 被告は,ロータリーディスクタンブラー錠において,可動障害子の形状が環状であることが従来から周知の技術である旨主張するが,錠の基本的な技術原理(振り子の原理,摺動子の原理)や本件特許発明の課題(環状の可動障害子の数を増やして鍵違いを多くするという目的)を全く無視したものである。 すなわち,振り子の原理に基づくロータリーディスクタンブラー錠は,本件特許発明における錠以外には,原告の出願に係る乙17の1発明が存在するにすぎず,また,乙17の1発明にも,本件特許発明の課題(振り子の原理に基づくロータリーディスクタンブラー錠を大前提として,可動障害子の数を鍵の差込み方向に増やし,その結果,鍵違いを多くするというもの)は何ら記載も示唆もされ - 24 -ていない。 (b) 被告は,環状に成形した可動障害子としてのロータリーディスクタンブラーが,C字形状のロータリーディスクタンブラーよりも剛性が高いことが「自明」であると主張するが,誤りである。 まず,基本的な技術的原理として,振り子の原理を採用したロータリーディスクタンブラー錠において,可動障害子の剛性的機能を高めることを直載した引用文献はどこにも存在しない。 被告は りである。 まず,基本的な技術的原理として,振り子の原理を採用したロータリーディスクタンブラー錠において,可動障害子の剛性的機能を高めることを直載した引用文献はどこにも存在しない。 被告は,証拠に記載されていない発明の課題に関して,仮定の条件を用いて,あたかも「ロータリーディスクタンブラーの剛性的機能を高める目的(発明の課題)」が特許文献等に記載されているかのような論法で進歩性の判断をしている点において,失当である。 b 相違点2について被告は,振り子の原理に基づくロータリーディスクタンブラー錠において,鍵違いを多くするという発明の課題に基づいて,鍵のブレードに可動障害子としてのロータリーディスクタンブラーの係合突起に対応させて窪みを形成することが従来から周知の技術であったなどと主張するが,事実ではない。 (3) 争点(3)(無効主張に対する対抗主張)についてア原告(ア) 原告は,無効審判請求事件(無効2010-800013)において,平成23年3月4日,本件訂正請求をした。 本件訂正請求後の本件特許発明に係る特許請求の範囲は次のとおりである(下線は本件訂正請求により付加された部分である。)。 【請求項2】「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に - 25 -積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔 カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成し,前記鍵孔4の略中心を通る長径方向をX軸とする方向が長径で,一方,該鍵孔4の略中心或いは支軸23を通りかつ前記X軸と直交する短径方向をY軸とする方向が短径の環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,一方,鍵挿通孔の上下方向の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブ - 26 -レードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし ラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブ - 26 -レードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:「回動させたとき」の誤記と認める。),カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」(イ) 本件補正原告は,平成23年6月6日,上記無効審判請求事件(無効2010-800013)において,本件補正をした。本件補正後の本件特許発明に係る特許請求の範囲は,次のとおりである(下線は本件補正により追加等された部分である。)。 【請求項2】「内周面の母線に沿って横断面形状が略Ⅴ字形のカム溝を形成した外筒と,この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解綻切欠を形成し,一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の - 27 -移動軌跡が鍵孔 挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解綻切欠を形成し,一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の - 27 -移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する上からの係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:「回動させたとき」の誤記と認める。),カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」(ウ) 本件訂正請求における訂正事項(本件補正後のもの)は,次のとおりである(下線は訂正部分である。)。 a 前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔b 鍵挿通孔26を形成した環状ロータリー 本件訂正請求における訂正事項(本件補正後のもの)は,次のとおりである(下線は訂正部分である。)。 a 前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔b 鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設しc リバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する上からの係 - 28 -合突起d 鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したときe 該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより上記a~eの各事項は,訂正前の明細書における本件特許発明(本件特許公報発行時の特許発明)の目的及び効果並びに図面に対比して考察したとき,下線部分の文言を限定するもので,新たな別の課題及び効果を記載したものではない。したがって,特許請求の範囲の減縮(特許法134条の2第1項1号),特許請求の範囲の明瞭でない記載の釈明(同3号)に該当し,かつ,実質的に特許請求の範囲を拡張,変更するものでもない(特許法134条の2第5項,126条4項)。 すなわち,訂正前の明細書の【0015】と【0016】において,「更にまた,鍵の断面形状が上下非対称であるから,ブレードの裏表に関係なく鍵孔に挿入できる所謂リバーシブルの鍵を作れない,等未だ改良の余地がある(【0015】)。そこでこの発明は,タンブラーの剛性が大きくて丈夫であり,リバーシブルの鍵が可能であってしかも鍵違いも大きな新規なロータリーディスクタンブラー錠及びその鍵を提供することを目的としている(【0016】)。」との記載がある。また,訂正前の明細書の【0074】 バーシブルの鍵が可能であってしかも鍵違いも大きな新規なロータリーディスクタンブラー錠及びその鍵を提供することを目的としている(【0016】)。」との記載がある。また,訂正前の明細書の【0074】において,「また,ロータリーディスクタンブラーの係合突起の突出量を一定にする場合でも,或いは変化させる場合でも,窪みの深さに応じてその中心位置をブレードの幅方向,或いはブレードの端縁部の幅方向において微妙に変化させなくてはならないので,合鍵の複製が困難になり,錠前としての安全性が向上する,等 - 29 -種々の効果を奏する。」との記載がある。 つまり,本件特許発明の目的は,【0016】に記載されているように,(a)タンブラーの剛性が大きくて丈夫であること,(b)リバーシブルの鍵が可能であること,(c)リバーシブルの鍵が鍵違いも大きいことである。また,発明の効果として,(d)合鍵の複製が困難になり,錠前としての安全性が向上する点を挙げることができる(なお,「環状」には,「剛性を高めるため」という文言が付加されていたが,この文言は,単に発明の予測可能な効果を限定したものであるから,本件訂正請求において削除した。)。さらに,「上からの」係合突起は,リバーシブルの鍵の構成との関係でその形状を特定するものであり,例えば【図8】には,係合突起29が上方から下方へと延在し,【図10】や【0043】に記載されているように,リバーシブルの鍵の平坦面に形成された窪み25の深さに対応するように設定されている。 付言すると,訂正前の明細書における本件特許発明の目的は,「可動障害子の形状が,略C字形のレバータンブラー11(【図2】参照)であって,その基端部が軸支されたロータリー型レバータンブラー錠の問題点(リバーシブルの鍵が可能であって,しかも鍵違いを増 的は,「可動障害子の形状が,略C字形のレバータンブラー11(【図2】参照)であって,その基端部が軸支されたロータリー型レバータンブラー錠の問題点(リバーシブルの鍵が可能であって,しかも鍵違いを増やすことができないという欠点)に鑑み,ロータリー型レバータンブラー錠の技術的原理(可動障害子が,ピンタンブラーやディスクタンブラーのように,内筒の半径方向に直線的に動くものではなく,てこやレバーのように,内筒の左右方向に支軸を支点に振り子式に揺動する考え方)を出発点として改良されたものである。 したがって,訂正請求の内容は,訂正前の明細書における本件特許発明の課題及び効果を実質上変更することなく,訂正前の明細書の【0016】,【0025】,【0027】,【0039】,【0043】,【0061】(窪みの大きさ及び深さが相違する旨),【0072】, - 30 -【0073】(窪みの大きさ,深さ,ブレードの幅方向の位置の相違に基づく本発明の目的,効果)及び図面に基づき,本件特許発明の技術的原理を明瞭にすると共に,特許請求の範囲を明瞭ないし減縮したものである。 また,訂正内容は,上述したように訂正前の明細書及び図面に記載されている事項に基づいたものであるから,新規事項を追加したものではない。 (エ) ピンタンブラー,ディスクタンブラー等の可動障害子が内筒の半径方向に直線的に動くシリンダー錠や,該シリンダー錠の内筒体の鍵孔にブレードを自在に差し込むことができる公知ないし周知の鍵が存在していたとしても,本件特許発明は,「可動障害子が直線移動する従来の技術的原理とは異なる技術的原理」に基づくものであり,しかも,可動障害子の形状が略C字形のレバータンブラー11(【図2】参照)の欠点を克服するために,訂正前の明細書の【0016】に記載の課題及 来の技術的原理とは異なる技術的原理」に基づくものであり,しかも,可動障害子の形状が略C字形のレバータンブラー11(【図2】参照)の欠点を克服するために,訂正前の明細書の【0016】に記載の課題及び明細書の【0072】「例えば,従来のレバータンブラー錠には高々7枚のタンブラーしか入らなかったが,この発明によるロータリーディスクダンブラー錠においては11枚入る。(図6参照)」,【0074】「また,ロータリーディスクタンブラーの係合突起の突出量を一定にする場合でも……,窪みの深さに応じてその中心位置をブレードの幅方向……において微妙に変化させなくてはならないので,合鍵の複製が困難になり,錠前としての安全性が向上する」というような記載の効果を達成しようとするものであるから,訂正後の本件特許発明は新規性,進歩性等の特許要件を具備しており,無効理由はない。 (オ) 原告のPR製品は訂正後の本件特許発明の実施品であること訂正後の請求項において追加した部分とPR製品を比較すると,次のとおりである。 - 31 -aPR製品は,「前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔」という構成要件を満たしている(甲25の写真16,甲28参照)。 bPR製品は,「各スロットに,中央部に……鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラー」という構成要件も満たしている(甲4の2枚目の原理説明図及び3枚目の「2 ピッキングなどの不正解錠は非常に困難」との項目に示された図面参照)。 cPR製品は,「鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する上からの係合突起を一体に突設し,……」という構成要件も満たしている(上記bにおいて示された証拠参照)。 d ,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する上からの係合突起を一体に突設し,……」という構成要件も満たしている(上記bにおいて示された証拠参照)。 dPR製品は,「鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,」との構成要件も満たしている。 PR製品のタンブラーは4種類あり(甲44),各タンブラーの違いは,タンブラーの自由端部外側縁に形成された矩形の解錠切欠の形成位置のみである。すなわち,タンブラーの係合突起の突出量は,4種類のタンブラー全て同一であり,支軸の挿通孔の中心軸を通る水平線を基準として,係合突起下端までの突出量は1.70㎜となっている。 また,合鍵のブレードの平面部に形成された摺り鉢型の窪みは,上記4種類のタンブラーに応じて複数種類(4種類)の深さがある(その他は上記bにおいて示された証拠参照)。 以上のとおり,本件特許発明の内容が本件訂正請求(本件補正後のも - 32 -の)のとおりとなっても,PR製品は,本件特許発明の全ての構成要素を含む実施品である。したがって,被告製品は,依然として本件特許発明に係る鍵の生産にのみ用いられる物であり,本件特許発明の課題解決に不可欠な物(日本国内で広く一般に流通している物ではない。)であるから,本件特許権に対する間接侵害(特許法101条1号,2号)を構成することに変わりはない。 イ被告(ア) 本件特許発明は,鍵についての発明であり,訂正により錠の構成の特定をした 。)であるから,本件特許権に対する間接侵害(特許法101条1号,2号)を構成することに変わりはない。 イ被告(ア) 本件特許発明は,鍵についての発明であり,訂正により錠の構成の特定をしたことによって鍵の構成が特定される関係になければならないが,かかる関係の主張はない。 また,本件訂正請求については,少なくとも次の理由により,不適法である。 すなわち,まず「剛性を高めるため環状に成形したロータリーディスクタンブラー」を「前記鍵孔4の略中心を通る長径方向をX軸とする方向が長径で,一方,該鍵孔4の略中心或いは支軸23を通りかつ前記X軸と直交する短径方向のY軸とする方向が短径の環状ロータリーディスクタンブラー」に訂正したのは,ロータリーディスクタンブラーについて「剛性を高めるため環状に成形した」との記載を削除し,「前記鍵孔4の略中心を通る長径方向をX軸とする方向が長径で,一方,該鍵孔4の略中心或いは支軸23を通りかつ前記X軸と直交する短径方向のY軸とする方向が短径の環状」のものである点を特定したものである。 記載の削除については,「剛性を高めるため」は単に錠の部品が環状である構成の効果を示していただけであるので,鍵である請求項2の構成に変更はない。 特定した点については,環状ロータリーディスクタンブラーは鍵孔との位置が移動し,長径,短径が環の内側のことか外側のことかも不明で - 33 -あり,X軸,Y軸がどこかも明細書に記載されていないなど,当該特定は環状ロータリーディスクタンブラーのどのような構造を意味しているのか不明瞭である上,そもそも鍵の構成に関係していない。 したがって,かかる訂正は,特許請求の範囲の減縮,誤記又は誤訳の訂正,明瞭でない記載の釈明のいずれを目的とするものでもなく,特許法134条の2第1 瞭である上,そもそも鍵の構成に関係していない。 したがって,かかる訂正は,特許請求の範囲の減縮,誤記又は誤訳の訂正,明瞭でない記載の釈明のいずれを目的とするものでもなく,特許法134条の2第1項ただし書各号の規定に適合せず,不適法である。 また,「鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が……干渉する係合突起を一体に突設し」を「鍵挿通孔の上下方向の開口端縁に,先端の移動軌跡が……干渉する係合突起を一体に突設し」に訂正したのは,本件特許発明を特定するための事項である係合突起について,突設するのは「鍵挿通孔の上下方向の開口端縁に」である点を特定したものであるが,実施例等をみても,どこのことを意味しているのか不明であり,係合突起がどのような構造であるか,それにより鍵がどのような構造であるのか不明瞭である。 したがって,かかる訂正は,特許請求の範囲の減縮,誤記又は誤訳の訂正,明瞭でない記載の釈明のいずれを目的とするものでもなく,特許法134条の2第1項ただし書各号の規定に適合せず,不適法である。 (イ) 訂正によっても無効原因は解消されないことa 訂正事項が意味を持たないこと(a) 「鍵孔」を,「前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔」に訂正した点については,鍵孔の位置と形状を特定したにすぎず,鍵の構成に関係していないから,意味がないものである。 (b) 「剛性を高めるため環状に成形したロータリーディスクタンブラー」を「前記鍵孔4の略中心を通る長径方向をX軸とする方向が長径で,一方,該鍵孔4の略中心或いは支軸23を通りかつ前記X軸と直交する短径方向のY軸とする方向が短径の環状ロータリーディ - 34 -スクタンブラー」に訂正した点については,環状ロータリーディスクタンブラーは鍵孔との位置が移動し,長径,短径が環の X軸と直交する短径方向のY軸とする方向が短径の環状ロータリーディ - 34 -スクタンブラー」に訂正した点については,環状ロータリーディスクタンブラーは鍵孔との位置が移動し,長径,短径が環の内側のことか外側のことかも不明であり,X軸,Y軸がどこかも明細書に記載されていないなど,当該特定は環状ロータリーディスクタンブラーのどのような構造を意味しているのか不明瞭であるほか,そもそも,鍵の構成に関係していない。 本件補正により,「鍵挿入孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラー」に訂正した点については,ロータリーディスクタンブラーに鍵挿入孔が形成されていることを図面で特定したにすぎないもので,鍵の構成に関係していない。 (c) 「鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が……干渉する係合突起を一体に突設し」を「鍵挿通孔の上下方向の開口端縁に,先端の移動軌跡が……干渉する係合突起を一体に突設し」に訂正した点は,本件特許発明を特定するための事項である「係合突起」について,突設するのは「鍵挿通孔の上下方向の開口端縁に」である点を特定したものであるが,実施例等をみてもどこのことを意味しているのか不明であり,係合突起がどのような構造であるか,それにより鍵がどのような構造であるのか不明瞭であるほか,鍵の構成に関係していない。 (d) 「合鍵のブレードの平面部又は端縁部と干渉する係合突起」を,「リバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起」に訂正した点については,リバーシブルの鍵は本件特許発明の出願前から公知である(乙3の1,乙17の1等)。 本件補正後の「リバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する上からの係合突起」についても,係合突起が一体どのようなものであって,それがどのように合鍵のブレードの平面部と干渉 17の1等)。 本件補正後の「リバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する上からの係合突起」についても,係合突起が一体どのようなものであって,それがどのように合鍵のブレードの平面部と干渉す - 35 -るのか不明確である。 (e) 「鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの係合突起の先端と整合するブレードの部位に,有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき」を「鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき」と訂正した点については,係合突起は有底の深さの鍵の平面部の窪みに係合するのだから,係合突起の突出量が一定であるのは当然であり,鍵の構成を特定する意味を持たない。また,複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを設けることは,本件特許の優先日前にも当業者が行っていたことである(乙3の1,2,乙17の2~8等)。 (f) 「各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし」を「該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし」と訂正した点については,錠側の構成技術であって,鍵の構成技術とはならない。 b 明確性要件違反本件訂正請求による訂正があったとしても,本件特許発明は鍵の発明であるところ,その構成は従前どおり特定されておらず,鍵としての特許請求の範囲は相変わらず不明確なままであるから,特許法36条6項2号に違反する。 る訂正があったとしても,本件特許発明は鍵の発明であるところ,その構成は従前どおり特定されておらず,鍵としての特許請求の範囲は相変わらず不明確なままであるから,特許法36条6項2号に違反する。 c 進歩性の欠如仮に訂正事項のとおり訂正されたとしても,本件特許発明が進歩性 - 36 -を有することになるわけではない。 また,原告によれば,本件特許発明の目的は「可動障害子の形状が,略C字形のレバータンブラー11(【図2】参照)であって,その基端部が軸支されたロータリー型レバータンブラー錠の問題点(リバーシブルの鍵が可能であって,しかも鍵違いを増やすことができないという欠点)に鑑み,ロータリー型レバータンブラー錠の技術的原理(可動障害子が,ピンタンブラーやディスクタンブラーのように内筒の半径方向に直線的に動くものではなく,てこやレバーのように,内筒の左右方向に支軸を支点に振り子式に揺動する考え方)を出発点として改良されたもの」であり,訂正請求では,かかる目的に沿うように,上記技術的原理を明瞭にしたということであり(甲40・9頁),原告は,かかる技術的原理を用いた構成のロータリーディスクタンブラーに環状のものがないことを根拠として,本件特許発明には進歩性があると主張するものと考えられる。 しかし,振り子式に揺動させている構成は乙10の文献(「錠と鍵の世界」81頁以下〈③ロータリーディスクタンブラー方式〉),乙17の1(特開平9-144398号公報)等にも記載されているところ,これに乙17の9,11~13に記載の環状のタンブラーを採用して振り子式に揺動する構成のロータリーディスクタンブラーに想到することは当業者にとって容易である。 その上,本件特許の優先日前には,既にディンプルキーが販売されていたのであるし(乙3の1, 用して振り子式に揺動する構成のロータリーディスクタンブラーに想到することは当業者にとって容易である。 その上,本件特許の優先日前には,既にディンプルキーが販売されていたのであるし(乙3の1,2,乙17の2~8等),このようなディンプルキーとロータリーディスクタンブラー錠との組合せにおいて,原告が明細書で述べる課題解決のためには,鍵側ではなく専ら錠側における創意工夫を要するものであるから(したがって,訂正後の本件特許発明に係る特許請求の範囲をもってしても,ここから鍵とし - 37 -ての技術的思想を読み取ることは不可能である。),当業者にとって,乙10の文献に記載の錠や乙17の1の錠に,乙3の1,2や,乙17の2~8記載の摺り鉢形の窪みのディンプルキーを採用することも容易である。 したがって,仮に訂正が認められた場合においても,少なくとも進歩性がなく,本件特許の無効理由は解消されていない。 (4) 争点(4)(原告の損害額)についてア原告被告は,平成21年10月1日から平成22年6月末日まで,被告製品(単価550円)を合計4万5000個(1か月当たり5000個)販売した。 本件特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額は,売上げの6%を下回らないから,被告製品の販売により原告が受けた損害は,特許法102条3項により,次式のとおり,少なくとも148万5000円となる。 550円/本×4万5000本×6%×=148万5000円イ被告否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件事案に鑑み,争点(2)(本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について判断する。 (1) 無効理由2(新規性の欠如)についてア本件特許発明本件特許発明は,本件特許に係る特許請求の範囲の【 許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について判断する。 (1) 無効理由2(新規性の欠如)についてア本件特許発明本件特許発明は,本件特許に係る特許請求の範囲の【請求項2】に記載された発明であり,(Ⅰ)A 内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外 - 38 -筒と,B この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,C この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,D 上記仕切板の間の各スロットに,中央部に鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔を形成し,剛性を高めるため環状に成形したロータリーディスクタンブラーを挿設し,E その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,F 鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,G 一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された合鍵のブレードの平面部又は端縁部と干渉する係合突起を一体に突設し,H 各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,I 他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたJ ロータリーディスクタンブラー錠 鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたJ ロータリーディスクタンブラー錠 - 39 -(Ⅱ) (Ⅰ)の合鍵であって,K 鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの係合突起の先端と整合するブレードの部位に,有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成し,L この窪みが対応する係合突起と係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,M 以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:「回動させたとき」の誤記と認める。),カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするN ロータリーディスクタンブラー錠用の鍵によって特定されるものである。 上記構成要件A~Nの記載から明らかなとおり,本件特許発明は,特定の構成を備えたロータリーディスクタンブラー錠に用いられる「鍵」として表現されており,これを総体としてみれば,本件特許発明は「鍵」の発明であると認められるが,「鍵」そのものの構成としては,構成要件Kにおいて,「ロータリーディスクタンブラーの係合突起の先端と整合するブレードの部位に,有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成」することが特定されるにとどまる。 また,構成要件A~Nの記載をみても,本件特許発明の鍵が使用される錠がロータリーディスクタンブラー(特に環状に成形されたロータリーディスクタンブラー)を用いた形式のものであることによって,特に鍵自体の構成が工夫されているものとは認め難く,また,本件明細書等の発明の詳細な説明をみても,錠 ブラー(特に環状に成形されたロータリーディスクタンブラー)を用いた形式のものであることによって,特に鍵自体の構成が工夫されているものとは認め難く,また,本件明細書等の発明の詳細な説明をみても,錠が環状に成形されたロータリーディスクタンブラーを用いたものであることによって,本件特許発明の発明特定事項とされ - 40 -た構成要件Kの鍵の形状以外の構成が把握できるものではない(なお,【0073】には,本件特許発明の効果としてブレードの端縁部にも窪みが形成できることも挙げられているが,これは「窪み」を解除機構に利用することに起因するものであって,発明特定事項に含まれる構成による効果であると認められる。)。 したがって,「鍵」の発明である本件特許発明に係る発明特定事項のうち,ロータリーディスクタンブラー錠の構成に関する記載は,特定の構成を備えたロータリーディスクタンブラー錠に用いられる「鍵」として表現されているものの,そのことから構成要件K以外の構成が把握できるものではないから,当該鍵の構成を具体的に特定する意味を有しておらず,結局のところ,本件特許発明は,「錠の鍵孔に挿入されたときタンブラーの係合突起の先端と整合するブレードの部位に,有底で所定の深さの摺り鉢状の窪みを形成した鍵」の発明であると認められる。 イ乙7の2発明特許第3076370号公報(乙7の2)には,次の発明が記載されている。 「コアピンを有するタンブラーを備えたロックシリンダの(平板安全)キーであって,キー溝に挿入されたときコアピンの先端と整合する軸の部位に,皿穴又は段付き穴を形成してなる,(平板安全)キー。」ウ本件特許発明の発明特定事項と乙7の2発明の発明特定事項とを対比すると,後者の「(平板安全)キー」,「キー溝」,「軸」は,それぞれ前 皿穴又は段付き穴を形成してなる,(平板安全)キー。」ウ本件特許発明の発明特定事項と乙7の2発明の発明特定事項とを対比すると,後者の「(平板安全)キー」,「キー溝」,「軸」は,それぞれ前者の「鍵」,「鍵孔」,「ブレード」に相当する。また,後者の「皿穴又は段付き穴」は,特許第3076370号公報(乙7の2)の図面の記載から,前者でいう「有底」の「摺り鉢状の窪み」に相当すると認められる。 - 41 -さらに,後者の「コアピンの先端と整合する軸(ブレード)の部位」とは,前者でいう「タンブラーの係合突起の先端と整合するブレードの部位」と同義であるから,後者の有底の摺り鉢状の窪み(皿穴又は段付き穴)は,前者で摺り鉢状の窪みについていうのと同様の意味で「所定の深さ」になっているということができる。 したがって,本件特許発明と乙7の2発明において,発明特定事項に相違する点はなく,本件特許発明は,本件特許の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特許第3076370号公報(乙7の2)に記載された発明と認められるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない。 (2) 以上のとおり,本件特許発明に係る本件特許は,特許法123条1項2号により,特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。 2 争点(3)(無効主張に対する対抗主張)について(1) 本件補正ア原告は,本件特許に係る無効審判請求事件(無効2010-800013)において,本件訂正請求を行っているが,その後,本件訂正請求に係る訂正請求書について,本件補正を行っていることから,まず,本件補正の適否から検討する。 イ本件補正に係る手続補正書(甲41)によれば,本件補正のうち,本件特許発明に関係する部分は,次のとおりである(下線は補正部分 ,本件補正を行っていることから,まず,本件補正の適否から検討する。 イ本件補正に係る手続補正書(甲41)によれば,本件補正のうち,本件特許発明に関係する部分は,次のとおりである(下線は補正部分を示す。)。 (ア) 特許請求の範囲本件訂正請求に係る訂正請求書に添付した明細書における特許請求の範囲の「【請求項2】内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向 - 42 -に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成し,前記鍵孔4の略中心を通る長径方向をX軸とする方向が長径で,一方,該鍵孔4の略中心或いは支軸23を通りかつ前記X軸と直交する短径方向をY軸とする方向が短径の環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,一方,鍵挿通孔の上下方向の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,他方,これらのタン と干渉する係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブ - 43 -レードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:「回動させたとき」の誤記と認める。),カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」(訂正請求項2)を,「【請求項2】内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロット の内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する上からの係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピン - 44 -に係止し,他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:「回動させ の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:「回動させたとき」の誤記と認める。),カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」と補正する。 (イ) 発明の詳細な説明における課題を解決するための手段の欄【0018】「また,請求項2に記載の発明は,内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロ - 45 -ットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成し,前記鍵孔4の略中心を通る長径方向をX軸とする方向が長径で,一方,該鍵孔4の略中心或いは支軸23を通りかつ前記X軸と直交する短径方向をY軸とする方向が短径の環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,一方,鍵挿通孔の上下方向の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵の るロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,一方,鍵挿通孔の上下方向の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:「回動させたとき」の誤記と認める。),カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作 - 46 -用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とする。」を,「また,請求項2に記載の発明は,内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,この内筒の母線に沿って延在し 略V字形のカム溝を形成した外筒と,この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する上からの係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さ - 47 -の摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が で複数種類の大きさと深さ - 47 -の摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:「回動させたとき」の誤記と認める。),カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とする。」と補正する。 ウ上記イのとおり,原告は,本件補正において,①「前記鍵孔4の略中心を通る長径方向をX軸とする方向が長径で,一方,該鍵孔4の略中心或いは支軸23を通りかつ前記X軸と直交する短径方向をY軸とする方向が短径の」を削除し,②「上下方向の開口端縁に」を「開口端縁に」に改め,③「係合突起」を「上からの係合突起」に改める補正を行っている。 ところで,訂正請求に係る請求書の補正は,その要旨を変更するものであってはならないところ(特許法134条の2第5項,131条の2第1項本文),上記②,③の補正は,訂正事項を従前のものから変更するもので,従来の請求に代えて新たな請求をするものというべきであるから,本件訂正請求に係る訂正の内容を変更するものとして,訂正請求書の要旨を変更するものといわざるを得ない。したがって,本件補正は,上記規定に違反するものとして許されない。 (2) 本件訂正請求ア上記(1)のとおり,本件補正は不適法なものとして許されないから,これがなかったものとして,本件訂正請求の適否について検討する。 イ本件訂正に係る訂正請求書(甲40)によれば,本件訂正のうち,本件 - とおり,本件補正は不適法なものとして許されないから,これがなかったものとして,本件訂正請求の適否について検討する。 イ本件訂正に係る訂正請求書(甲40)によれば,本件訂正のうち,本件 - 48 -特許発明に関係する部分は,次のとおりである(下線は訂正部分を示す。)(ア) 特許請求の範囲「【請求項2】内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロットに,中央部に鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔を形成し,剛性を高めるため環状に成形したロータリーディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された合鍵のブレードの平面部又は端縁部と干渉する係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって, 挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの係合突起の先端と整合するブレードの部位に,有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが - 49 -対応する係合突起と係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:「回動させたとき」の誤記と認める。),カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」を,「【請求項2】内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成し,前記鍵孔4の略中心を通る長径方向をX軸とする方向が長径で,一方,該鍵孔4の略中心或いは支軸23を通りかつ前記X軸と直交する短径方向をY軸とする方向が短径の環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に, 或いは支軸23を通りかつ前記X軸と直交する短径方向をY軸とする方向が短径の環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,一方,鍵挿通孔の上下方向の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの - 50 -係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:「回動させたとき」の誤記と認める。),カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」と ,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」と訂正する。 (イ) 発明の詳細な説明における課題を解決するための手段の欄【0018】の「また,請求項2に記載の発明は,内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方 - 51 -向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロットに,中央部に鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔を形成し,剛性を高めるため環状に成形したロータリーディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された合鍵のブレードの平面部又は端縁部と干渉する係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブ 係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの係合突起の先端と整合するブレードの部位に,有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:「回動させたとき」の誤記と認める。),カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とする。」を,「また,請求項2に記載の発明は,内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,この外筒に回転自在に嵌合 - 52 -し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成し,前記鍵孔4の略中心を通る長径方向をX軸とする方向が長径で,一方,該鍵孔4の略中心或いは支軸23を通りかつ前記X軸と直交する短径方向をY軸とする方向が短径の環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に, 或いは支軸23を通りかつ前記X軸と直交する短径方向をY軸とする方向が短径の環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,一方,鍵挿通孔の上下方向の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前 - 53 -記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき(判決注:「回動させたとき」の誤記と認める。),カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とする。」と訂正する。 ウ上記イのとおり,原告 ,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とする。」と訂正する。 ウ上記イのとおり,原告は,本件訂正請求において,次の訂正を行っている。 (ア) 特許請求の範囲について,a 「鍵孔」 を,「前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔」と訂正。 b 「剛性を高めるため環状に成形したロータリーディスクタンブラー」を,「前記鍵孔4の略中心を通る長径方向をX軸とする方向が長径で,一方,該鍵孔4の略中心或いは支軸23を通りかつ前記X軸と直交する短径方向をY軸とする方向が短径の環状ロータリーディスクタンブラー」と訂正。 c 「鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が……干渉する係合突起を一体に突設し」 を,「鍵挿通孔の上下方向の開口端縁に,先端の移動軌跡が……干渉する係合突起を一体に突設し」と訂正。 d 「合鍵のブレードの平面部又は端縁部と干渉する係合突起」 を,「リバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起」と訂正。 e 「鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの係合突起の先端と整合するブレードの部位に,有底で所定の深さの摺り鉢形の - 54 -窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき」 を,「鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,この窪みが対応する係合突起と係合したとき」と訂正。 f 「各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし」 を,「該タンブラー群が前記摺り鉢型の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対 起と係合したとき」と訂正。 f 「各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし」 を,「該タンブラー群が前記摺り鉢型の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし」と訂正。 (イ) 課題を解決する手段(【0018】)において,g 上記訂正事項a~fに対応する訂正。 エ特許無効審判における訂正の請求は,①特許請求の範囲の減縮,②誤記又は誤訳の訂正,③明瞭でない記載の釈明を目的とするものに限って許されるものである(特許法134条の2第1項)ところ,前示1のとおり,本件特許発明は「鍵」発明であり,ロータリーディスクタンブラー錠の構成に関する上記限定を加えたからといって,「鍵」自体の構成が限定されるとは認められないのであるから,上記限定によって,本件特許発明に係る特許請求の範囲を減縮するものということはできず,また,本件特許発明の「鍵」の構成が明瞭になるとも,誤記又は誤訳が訂正されることになるということもできない。 したがって,本件訂正請求は,特許法134条の2第1項ただし書各号所定の事項を目的とするものとは認められないから,不適法なものであり,これによって,本件特許が有する前示1の無効理由を解消することはできない。 3 結論 - 55 -以上検討したところによれば,本件特許発明に係る本件特許は,特許法123条1項2号により,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない。 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない。よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 岡本岳 裁判官 鈴木和典 裁判官 寺田利彦 別紙1 被告製品目録 被告製造に係る製品名「PROシリンダー用ブランクキー」又は「PRO-Sシリンダー用ブランクキー」であって,キーヘッド部分の一面に「DKS1」という刻印があり,かつ,キーヘッド部分の他面に「DAIKI」又は「Shinsei」という刻印のあるブランクキー 別紙2特許公報(添付省略)

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