平成25年3月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第35168号特許権侵害行為差止等請求事件(以下以下以下以下「甲事甲事甲事甲事件」というというというという。)。)。)。)平成23年(ワ)第35169号特許権侵害行為差止等請求事件(以下以下以下以下「乙事乙事乙事乙事件」というというというという。)。)。)。)口頭弁論終結日平成24年12月19日判 決徳島県阿南市<以下略>甲・乙事件原告日亜化学工業株式会社(以下以下以下以下「原告原告原告原告」というというというという。)。)。)。)同訴訟代理人弁護士古城春実同牧野知彦同高橋 綾同訴訟代理人弁理士鮫島 睦同田村 啓同玄 番 佐奈恵同訴訟復代理人弁護士加治梓子東京都台東区<以下略>甲・乙事件被告燦坤日本電器株式会社(以下以下以下以下「被告被告被告被告」というというというという。)。)。)。)同訴訟代理人弁護士松田純一同大橋君平同近森章宏同伊藤 大橋君平同近森章宏同伊藤卓同西村公芳同訴訟復代理人弁護士篠森重樹 同大坂憲正同西脇怜史台湾,台北<以下略>甲・乙事件被告補助参加人ユニティーオプトテクノロジーカンパニーリミテッド(以下以下以下以下「補助参加人補助参加人補助参加人補助参加人」というというというという。)。)。)。)同訴訟代理人弁護士升永英俊同補佐人弁理士佐藤睦主 文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 甲事件(1) 被告は,別紙物件目録1の1・2記載の製品を譲渡し,輸入し,又は譲渡の申出をしてはならない。 (2) 被告は,その占有にかかる前項記載の製品を廃棄せよ。 (3) 被告は,原告に対し,666万円及びこれに対する平成23年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 乙事件(1) 被告は,別紙物件目録2の1・2記載の製品を譲渡し,輸入し,又は譲渡の申出をし 6万円及びこれに対する平成23年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 乙事件(1) 被告は,別紙物件目録2の1・2記載の製品を譲渡し,輸入し,又は譲渡の申出をしてはならない。 (2) 被告は,その占有にかかる前項記載の製品を廃棄せよ。 (3) 被告は,原告に対し,80万円及びこれに対する平成23年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,「発光ダイオード」に関する特許権(特許第4530094号。以下「本件特許権本件特許権本件特許権本件特許権」といいといいといいといい,このこのこのこの特許特許特許特許を「本件特許本件特許本件特許本件特許」というというというという。本件特許本件特許本件特許本件特許の特許請特許請特許請特許請求の範囲範囲範囲範囲,明細書及明細書及明細書及明細書及び図面図面図面図面を合わせてわせてわせてわせて「本件明細書本件明細書本件明細書本件明細書」といいといいといいといい,本件特許に係る特許公報(甲2)を本判決末尾に添付する。)を有する原告が,被告に対し,被告が輸入販売している別紙物件目録1及び2記載のLED電球(以下以下以下以下,別紙別紙別紙別紙物件目録物件目録物件目録物件目録1の「1 イ号物件号物件号物件号物件」記載記載記載記載の物件物件物件物件を「イ号物件号物件号物件号物件」,」,」,」,同「2 ロ号物号物号物号物件」記載記載記載記載の物件物件物件物件を「ロ号物件号物件号物件号物件」,」,」,」,別紙物件目録別紙物件目録別紙物件目録別紙物件目録2の「1 ハ号物件号物件号物件 物件」記載記載記載記載の物件物件物件物件を「ロ号物件号物件号物件号物件」,」,」,」,別紙物件目録別紙物件目録別紙物件目録別紙物件目録2の「1 ハ号物件号物件号物件号物件」記載記載記載記載の物件を「ハ号物件号物件号物件号物件」,」,」,」,同「2 ニ号物件号物件号物件号物件」記載記載記載記載の物件物件物件物件を「ニ号物件号物件号物件号物件」といいといいといいといい,合わせてわせてわせてわせて「被告製品被告製品被告製品被告製品」というというというという。)。)。)。)は,本件特許に係る発明の技術的範囲に属し,本件特許権を侵害すると主張して,被告製品の譲渡等の差止め及び廃棄並びに損害賠償を求める事案である。 2 前提となる事実(末尾に証拠等を付した以外の事実は争いがない。)(1) 当事者ア原告は,半導体及び関連材料,部品,応用製品の製造,販売並びに研究開発等を業とする株式会社である(弁論の全趣旨)。 イ被告は,家庭電化製品の販売及び輸入等を業とする株式会社(日本法人)である。 被告は,被告製品を輸入し,譲渡の申出,譲渡等を行っている。 ウ補助参加人は,台湾に本店を有する外国法人である(弁論の全趣旨)。 補助参加人は,被告製品に用いられる発光ダイオードを,被告に対して販売している(弁論の全趣旨)。 (2) 本件特許権原告は,以下の特許権(本件特許権)を有している(甲1,2,乙1ないし6,12,19,30)。 ア登録番号特許第4530094号イ優先日平成8年7月29日(特願平8-198585号。但し最 初のもの)ウ原出願日平成9年7月29日(特願平10-508693号。乙 ア登録番号特許第4530094号イ優先日平成8年7月29日(特願平8-198585号。但し最 初のもの)ウ原出願日平成9年7月29日(特願平10-508693号。乙1。以下以下以下以下「本件最初本件最初本件最初本件最初の原出願原出願原出願原出願」というというというという。)分割出願(第1世代) 平成14年9月24日(特願2002-278066号。乙2)分割出願(第2世代) 平成17年5月19日(特願2005-147093号。乙3)分割出願(第3世代) 平成18年7月19日(特願2006-196344号。乙4)分割出願(第4世代) 平成20年1月7日(特願2008-269号。乙5。以下以下以下以下「本件原出願本件原出願本件原出願本件原出願」というというというという。)エ出願日平成21年3月18日(特願2009-65948号。特願2008-269号からの第5世代分割。以下以下以下以下「本件特許出願本件特許出願本件特許出願本件特許出願」といういういういう。)オ公開日平成21年6月18日(特開2009-135545号)カ登録日平成22年6月18日キ発明の名称発光ダイオード(3) 本件特許の請求項1記載の発明(以下以下以下以下「本件発明本件発明本件発明本件発明1」というというというという。)。)。)。)に係る特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(なお,甲23の1ないし3によれば,原告は訂正審判を請求しているようであるが,本件口頭弁論終結時現在,訂正が確定したものではないから,本件においてはこの訂正は考慮しない。)。 「【請求項1】窒化ガリウム系化合物半導 よれば,原告は訂正審判を請求しているようであるが,本件口頭弁論終結時現在,訂正が確定したものではないから,本件においてはこの訂正は考慮しない。)。 「【請求項1】窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を 発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し,前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって,前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっていることを特徴とする発光ダイオード。」(4) 本件発明1の構成を分説すると,以下のとおりである。 A1:窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,B1:該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し,C :前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって,D :前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっていることE :を特徴とする発光ダイオード。(5) 本件明細書の請求項2記載の発明(以下以下以下 ンス蛍光体の濃度が,前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっていることE :を特徴とする発光ダイオード。(5) 本件明細書の請求項2記載の発明(以下以下以下以下「本件発明本件発明本件発明本件発明2」といいといいといいといい,本件発本件発本件発本件発明1と合わせてわせてわせてわせて「本件発明本件発明本件発明本件発明」というというというという。)。)。)。)に係る特許請求の範囲の記載は,次のとおりである。 「【請求項2】凹部内に配置された窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと前記凹部に充填されて前記LEDチップを覆うコーティング樹脂であって, 該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し,前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって,前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっていることを特徴とする発光ダイオード。」(6) 本件発明2の構成を分説すると,以下のとおりである。 A2:凹部内に配置された窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップとB2:前記凹部に充填されて前記LEDチップを覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し,C :前記 であって,該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し,C :前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって,D :前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっていることE :を特徴とする発光ダイオード。 3 争点(1) 構成要件B1,B2,C,Dの「フォトルミネセンス蛍光体」の充足性(争点1) (2) 構成要件Cの「第2の光の発光スペクトル」の充足性(争点2)(3) 構成要件Dの充足性(争点3)(4) 分割要件違反に基づく新規性・進歩性欠如の有無(争点4)(5) 乙7に基づく進歩性欠如の有無(争点5)(6) サポート要件違反の有無(争点6)(7) 明確性違反の有無(争点7)(8) 差止めの必要性(争点8)(9) 損害(争点9)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(構成要件B1,B2,C,Dの「フォトルミネセンス蛍光体」の充足性)について(原告の主張)構成要件B1,B2,C,Dにいう「フォトルミネセンス蛍光体」は,「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体を含む組成」(以下「本件組成本件組成本件組成本件組成」というというというという。)。)。)。)を有するフォトル くとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体を含む組成」(以下「本件組成本件組成本件組成本件組成」というというというという。)。)。)。)を有するフォトルミネセンス蛍光体に限定されるものではない。 被告製品のコーティング樹脂はいずれもフォトルミネセンス蛍光体を含有しているから,構成要件B1,B2,C,Dを充足する。 (被告の主張)本件特許に後述のような分割要件違反に基づく無効理由がないとすると,構成要件B1,B2,C,Dにいう「フォトルミネセンス蛍光体」は本件組成を有するものに限定されると解するほかないから,フォトルミネセンス蛍光体が本件組成を有しない被告製品はいずれも構成要件B1,B2,C,Dを充足しない。 2 争点2(構成要件Cの「第2の光の発光スペクトル」の充足性)について(原告の主張)構成要件Cにいう「第2の光の発光スペクトル」は,ピーク波長が1つのものに限定されない。 被告製品では,①LEDチップからの発光で,各蛍光体に吸収されずに通過した青色の光の発光スペクトル,②LEDチップからの発光に励起された赤色蛍光体からの赤色の光の発光スペクトル,③LEDチップからの発光に励起された緑色蛍光体からの緑色の光の発光スペクトル,が重なり合って白色の光を発光しているところ,②の赤色蛍光体と③の緑色蛍光体とを合わせて構成要件B1,B2,C,Dにいう「フォトルミネセンス蛍光体」であり,②の発光スペクトルと③の発光スペクトルとを合わせて構成要件Cにいう「第2の光の発光スペクトル」であるから,被告製品は,構成要件Cの「前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光す 光スペクトル」であるから,被告製品は,構成要件Cの「前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する」を充足する。 (被告の主張)本件発明は,単色性ピーク波長を有する発光ダイオードの発光色に,これとは異なる白色系以外の色の光を重ね合わせて白色系の発光を得ようとするものであるところ(本件明細書の段落【0003】ないし【0006】参照),一般に,白色系以外の色の光の発光スペクトルは単色性ピーク波長を有するから,構成要件Cにおける「第2の光の発光スペクトル」とは,単色性ピーク波長を有する「第1の光の発光スペクトル」と同様に,ピーク波長が1つのものと解さざるを得ない。 そうすると,赤色領域に発光ピークを有する赤色蛍光体からの光の発光スペクトルと,緑色領域に発光ピークを有する緑色蛍光体からの光の発光スペクトルとは,それぞれが独立した「発光スペクトル」であり,LEDチップからの青色の光の発光スペクトルだけを別にして,その赤色の光の発光スペクトルと 緑色の光の発光スペクトルとを重ね合わせたものを1つの「第2の光の発光スペクトル」と評価することはできない。 被告製品では,①各蛍光体に吸収されずに通過したLEDチップからの光の発光スペクトル(第1の光の発光スペクトル)と,②赤色蛍光体からの光の発光スペクトル(第2の光の発光スペクトル)とが重なり合って白色系の光を発光するのではなく,それらの発光スペクトルと③緑色蛍光体からの光の発光スペクトル(第3の光の発光スペクトル)とが重なり合って白色の光を発光するのであるから,被告製品は構成要件Cを充足しない。 3 争点3(構成要件Dの充足性)について(原告の主張)本件発明の請求項 (第3の光の発光スペクトル)とが重なり合って白色の光を発光するのであるから,被告製品は構成要件Cを充足しない。 3 争点3(構成要件Dの充足性)について(原告の主張)本件発明の請求項の記載や作用効果,本件明細書の段落【0048】の記載からすれば,構成要件Dは,要するに,コーティング樹脂中の蛍光体の含有分布の状態を全体としてみたときに,蛍光体の含有分布が,水分が侵入する起点であるコーティング樹脂の表面側から離れて位置するLEDチップが存在する方に有意に偏っている状態を意味している。 構成要件Dは,蛍光体の濃度が「コーティング樹脂の表面側」から「LEDチップ」に「向かって」高くなるという,「蛍光体の濃度変化の方向」を特定したものであって,「コーティング樹脂の表面側を起点として,同起点から徐々に高くなっていなければならない」というような「蛍光体の濃度が徐々に変化すること」を規定したものではない。 被告製品の蛍光体の分布が「コーティング樹脂中の蛍光体の含有分布の状態を全体としてみたときに,蛍光体の含有分布が,水分が侵入する起点であるコーティング樹脂の表面側から離れて位置するLEDチップが存在する方に有意に偏っている状態」になっていることは,一見して明らかである。被告はワイヤーの上という特殊な領域において局所的に蛍光体濃度が高くなっていることを問題とするが,このような事実は被告製品が構成要件Dを充足することを なんら妨げない。 (被告の主張)構成要件Dの「前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっている」とは,少なくとも「コーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度が高くなることはあっても低くなることはない」との意を含むと解される。 イ号物件では,蛍光体がL 高くなっている」とは,少なくとも「コーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度が高くなることはあっても低くなることはない」との意を含むと解される。 イ号物件では,蛍光体がLEDチップ上及びLEDチップから延在するワイヤー上に堆積し,LEDチップの上面とワイヤーとを通る鉛直線に沿って蛍光体の濃度分布をみると,コーティング樹脂の表面からワイヤーの直上までほぼ零であったものが,ワイヤーの直上で高くなり,ワイヤーを過ぎるとまたほぼ零となり,LEDチップの直上でまた高くなっている。このような「低(零)→高→低(零)→高」の濃度分布は,原告が正に特許請求の範囲から除外したものであり,イ号物件は構成要件Dを充足しない。 また,補助参加人が主張するように,助詞の「から」とは起点となる場所を示す語であるところ,イ号物件では蛍光体の濃度が高くなり始める起点がLEDチップ又はワイヤーの直上であって,「コーティング樹脂の表面側」では濃度がほぼ零であるから,イ号物件は,この点からも,構成要件Dを充足しない。 ロ号物件,ハ号物件,ニ号物件についても,以上の主張がいずれも同様に当てはまる。 (補助参加人の主張)構成要件Dの「から」とは,「起点となる場所を示す」助詞であるから,構成要件Dは,「前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度」が高くなり始める起点が,「前記コーティング樹脂の表面側」であり,当該濃度が「前記コーティング樹脂の表面側」から「前記LEDチップに向かって」高くなることを規定したものに他ならない。また,当該濃度が,同表面側から 徐々に高くなることを規定したものであることは,本件明細書の実施例1~8,10,12の記載や出願経過からも明らかである。 被告製品では,蛍光体のほとんどがチッ た,当該濃度が,同表面側から 徐々に高くなることを規定したものであることは,本件明細書の実施例1~8,10,12の記載や出願経過からも明らかである。 被告製品では,蛍光体のほとんどがチップ側に沈殿しており,その濃度が高くなる起点は,「コーティング樹脂の表面側」ではなく,「チップ側」のごく近傍である。被告製品では,蛍光体のほとんどがチップ側に均一の密度で沈殿しており,その濃度が「徐々に高くなる」こともない。 したがって,被告製品は,構成要件Dを充足しない。 4 争点4(分割要件違反に基づく新規性・進歩性欠如の有無)について(被告の主張)(1) 分割要件違反についてア分割出願が行われた場合,新たな出願がもとの特許出願の時にしたものとみなされる効果を有することからすれば,新たな出願に係る発明は,もとの出願の願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内にあることを要する。そして,原出願の請求項の発明特定事項の一部を削除して分割出願の請求項とする場合において,もとの出願の願書に最初に添付した明細書等に記載された事項の範囲内であるとして分割出願が適法であるとするためには,削除する事項が本来的に技術上の意義を有さないものであって,削除により新たな技術上の意義が追加されないことが明らかな場合(削除する事項が,任意の付加的事項であることが明細書等の記載から自明である場合も同様)であることを要する。 イ本件特許出願についてみると,本件原出願に係る発明においては,「フォトルミネセンス蛍光体が,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体を含む」ことが発明特定事項であり(乙 からなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体を含む」ことが発明特定事項であり(乙5。なお,乙5の【請求項1】には,「前記フォトルミネセンス蛍光体が,Y, Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたYとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体」と記載されているが,この記載のうち「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなる」と「YとAlを含む」とは整合しないように思われ,ここでは,【請求項1】の記載ではなく段落【0012】等の記載により上記発明特定事項を把握している。),蛍光体の組成が具体的に特定されていたが,本件発明においては,フォトルミネセンス蛍光体が「第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体」と定義されているだけで,蛍光体の具体的組成(本件組成)が削除されている。 ウ本件原出願の明細書等において本件組成を有しない発明は一切記載されておらず,かつ,本件原出願に係る発明の効果は本件組成によってこそ得られるというのであるから,本件組成が技術上の意義を有することは明らかである。 そして,このようにいわば絶対的な技術上の意義を有する本件組成を削除したにもかかわらず,本件発明に発明の効果が残存するというのであれば,削除により新たな技術上の意義が追加されることも当然である。 よって,「本件組成が本来的に技術的意義を有さないものであって 除したにもかかわらず,本件発明に発明の効果が残存するというのであれば,削除により新たな技術上の意義が追加されることも当然である。 よって,「本件組成が本来的に技術的意義を有さないものであって,削除により新たな技術上の意義が追加されないことが明らかな場合」に該当しないことは明白である。 また,「本件組成が任意の付加的事項であることが明細書等の記載から自明である場合」にも該当しないことは明白である。 エ以上のとおり,本件特許出願において「削除する事項」である本件組成 は,「本来的に技術上の意義を有さないものであって,削除により新たな技術上の意義が追加されないことが明らかな場合」にも「任意の付加的事項であることが明細書等の記載から自明である場合」にも該当しないから,本件特許出願は分割要件(特許法44条1項)に違反するもので出願日の遡及は認められず,その出願日は現実の出願日である平成21年3月18日である。 (2) 本件発明の新規性・進歩性欠如についてア本件特許出願(平成21年3月18日)の前である平成20年7月10日に頒布された特開2008-160140号公報(乙5)には,次の発明(以下以下以下以下「乙5発明発明発明発明」といといといという。)。)。)。)が記載されている。 p:カップ部105a内に配置された,発光層が窒化ガリウム系半導体を含むLEDチップ102と,q:カップ部105aに充填されてLEDチップ102を直接覆うコーティング樹脂であって,LEDチップ102によって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂101を有し,x:前記フォトルミネセンス蛍光体が,Y,Lu,Sc,La,Gd及び 吸収して,吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂101を有し,x:前記フォトルミネセンス蛍光体が,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体を含み,r:前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過したLEDチップ102の発光のスペクトルと,前記フォトルミネセンス蛍光体の発光のスペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって,s:コーティング樹脂101中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が, コーティング樹脂101の表面側からLEDチップ102に向かって高くなっているt:発光ダイオード100。 イ本件発明1と乙5発明を対比すると,乙5発明の構成要件p,q,r,s,tはそれぞれ本件発明1の構成要件A1,B1,C,D,Eに相当(一致)する。 したがって,乙5発明と本件発明1とは乙5発明の構成要件xの有無の点で相違するが,乙5発明の構成要件xは「フォトルミネセンス蛍光体」を限定するものであるから,乙5発明と本件発明1とは下位概念と上位概念の関係にあり,本件発明1は新規性を有しない。 仮に,本件発明1の新規性が否定されない場合であっても,本件発明1は乙5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明1は進歩性を有しない。 ウ本件発明2についても同様である。 (原告の主張)(1) 分割出願の適法性は,原出願に2以上の発明が記載されており,この一部を分割したかどうかで判断されるべきである。 そして,原出願に記載された発明とは,「もとの出 る。 (原告の主張)(1) 分割出願の適法性は,原出願に2以上の発明が記載されており,この一部を分割したかどうかで判断されるべきである。 そして,原出願に記載された発明とは,「もとの出願の願書に添付した明細書の特許請求の範囲に記載されたものに限られず,その要旨とする技術的事項のすべてがその発明の属する技術分野における通常の技術的知識を有する者においてこれを正確に理解し,かつ,容易に実施することができる程度に記載されているならば,右明細書の発明の詳細なる説明ないし右願書に添付した図面に記載されているものであっても差し支えない,と解するのが相当である」(最高裁昭和55年12月18日判決)。 したがって,本件における分割出願の適否は,原出願の明細書において,原出願で請求されているのとは異なる発明が,当業者であれば正確に理解 し,容易に実施できる程度に記載されているか否かという観点から判断されるべきである。 (2) 本件原出願の明細書(乙5の段落【0047】)には,「フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高くした場合は,外部環境からの水分などの影響をより受けにくくでき,水分による劣化を防止することができる」との記載がされている。そして,前記「フォトルミネセンス蛍光体」は,具体的には,「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み,セリウムで付活されたガーネット系蛍光体であ」るとされてはいるものの,「フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高く」するとの ガーネット系蛍光体であ」るとされてはいるものの,「フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高く」するとの上記構成を採用して「(フォトルミネセンス蛍光体の)水分による劣化を防止」するに際し,前記「フォトルミネセンス蛍光体」が,必ずしも上記の具体的組成のものに限られるものではないことは,当業者が容易に理解できるところである。すなわち,本件原出願には,(特定の組成の蛍光体に限定されない)本件発明が開示されているものといえる。 そして,段落【0047】によって,本件発明がひとまとまりの技術思想として記載されていることを認識した当業者であれば,比較例1の組成であっても,蛍光体を均等分布したものと比較すれば,やはり発明の効果は奏すると理解することが当然である。本件原出願の明細書に記載された比較例1は,単に,(ZnCd)S:Cu,Alという組成をもった蛍光体が水分に対して劣化しやすいことを示すにすぎず,本件発明の効果,すなわち,蛍光体の分布状態によって水分劣化の速度に差が出ることを否定する根拠にはならない。 このように,本件原出願の明細書には本件発明の開示があるから,本件分割出願は適法であって,被告の主張には理由がない。 5 争点5(乙7に基づく進歩性欠如の有無)について(被告の主張)(1) 乙7発明ア本件特許の優先権主張日より前に公刊された特開平7-99345号公報(乙7)には,次の発明(以下以下以下以下「乙7発明発明発明発明」というというというという。)。)。)。)が記載されている。 a3:化合物半導体を有するLEDチップ(発光チップ1)と,b3:該LEDチップ(発光チップ1)を直接覆うコーティ 発明」というというというという。)。)。)。)が記載されている。 a3:化合物半導体を有するLEDチップ(発光チップ1)と,b3:該LEDチップ(発光チップ1)を直接覆うコーティング樹脂(封止樹脂)であって,該LEDチップからの第1の光の一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光する蛍光物質(波長変換材料5)が含有されたコーティング樹脂を有し,c3:前記蛍光物質(波長変換材料5)に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って発光する発光ダイオードであって,d3:前記コーティング樹脂(封止樹脂)中の蛍光物質(波長変換材料5)の濃度が,前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップ(発光チップ1)に向かって高くなっているe3:発光ダイオード上記のうちのc3の「第1の光の発光スペクトルと第2の光の発光スペクトルとが重なり合って発光する」ことは乙7に明記されてはいないが,段落【0010】の波長変換材料5が第1の光を全て吸収し得ず,第1の光のうちの波長変換材料5に吸収されなかった光と波長変換材料5が発した光とが重なり合うことは明らかであるから,c3が導かれる。 また,原告が審査段階で提出した意見書(乙17)の記載内容から,d3 の構成が導かれる。 (2) 本件発明1と乙7発明との一致点及び相違点本件発明1と乙7発明とを対比すると,両者の間には次の一致点,相違点がある。 <一致点>① 発光ダイオードであること② 化合物半導体を有するLEDチップを有すること③ LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって,LEDチップからの第1の光の一部を吸収し波長変換して第1の光とは波長の異なる第2の光を発光する蛍光物 物半導体を有するLEDチップを有すること③ LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって,LEDチップからの第1の光の一部を吸収し波長変換して第1の光とは波長の異なる第2の光を発光する蛍光物質が含有されたコーティング樹脂を有すること④ 蛍光物質に吸収されずに通過した第1の光の発光スペクトルと第2の光の発光スペクトルとが重なり合って発光すること⑤ コーティング樹脂中の蛍光物質の濃度が,コーティング樹脂の表面側からLEDチップに向かって高くなっていること<相違点>① 本件発明1において,化合物半導体が窒化ガリウム系化合物半導体であること② 本件発明1において,第1の光の発光スペクトルと第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光すること(3) 相違点①・②について特開平5-152609号公報(乙14)には,「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップ(青色発光素子11)」という構成が記載されている。 特開平8-7614号公報(乙15)には,「LEDチップ(青色LED1)からの青色光の一部を吸収し波長変換して青色光とは波長の異なる橙色光を発光する蛍光物質(蛍光層5)であって,該蛍光物質に吸収されずに通 過した青色光の発光スペクトルと該蛍光物質からの橙色光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光するもの」という構成が記載されている。 各公報はいずれも原告の特許出願に係り,LEDからの光とこれにより励起された蛍光体からの光とを重ね合わせて発光を得るものであるから,技術分野及び作用,機能が共通する。相違点①は,特開平7-176794号公報(乙26)にも記載され,相違点②は,特開平7-176794号公報(乙26),特開平1-260707号公報(乙27)にも記載されている。 機能が共通する。相違点①は,特開平7-176794号公報(乙26)にも記載され,相違点②は,特開平7-176794号公報(乙26),特開平1-260707号公報(乙27)にも記載されている。 よって,乙7発明の相違点①に乙14,26の構成を適用し,相違点②に乙15,26,27の構成を適用して本件発明1に想到することは,当業者にとって容易である。 なお,「蛍光体の水分による劣化の抑制」という効果は,出願書類に記載されたものではなく,原告が出願書類の記載から逸脱,乖離して主張しているにすぎないが,仮に,このように水分との関係で本件発明1の効果を考えるとしても,本件発明1は原告が主張するような有利な効果を奏しない(乙18)。 (4) 本件発明2と乙7発明との一致点及び相違点本件発明2と乙7発明とを対比すると,両者の間には次の一致点,相違点がある。 <一致点>① 発光ダイオードであること② 化合物半導体を有するLEDチップを有すること③ LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって,LEDチップからの第1の光の一部を吸収し波長変換して第1の光とは波長の異なる第2の光を発光する蛍光物質が含有されたコーティング樹脂を有すること ④ 蛍光物質に吸収されずに通過した第1の光の発光スペクトルと第2の光の発光スペクトルとが重なり合って発光すること⑤ コーティング樹脂中の蛍光物質の濃度が,コーティング樹脂の表面側からLEDチップに向かって高くなっていること<相違点>① 本件発明2において,LEDチップが凹部内に配置されていること② 本件発明2において,コーティング樹脂が凹部に充填されていること③ 本件発明2において,化合物半導体が窒化ガリウム系化合物半導体であること④ 本件発明2において,第1の 置されていること② 本件発明2において,コーティング樹脂が凹部に充填されていること③ 本件発明2において,化合物半導体が窒化ガリウム系化合物半導体であること④ 本件発明2において,第1の光の発光スペクトルと第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光すること(5) 相違点①から④について相違点①及び②については,特開平7-99345号公報(乙7)に記載され,相違点③については特開平5-152609号公報(乙14)に記載され,相違点④については特開平8-7614号公報(乙15)に記載されているところ,各公報はいずれも原告の特許出願に係り,LEDからの光とこれにより励起された蛍光体からの光とを重ね合わせて発光を得るものであるから,技術分野及び作用,機能が共通する。相違点③は,特開平7-176794号公報(乙26)にも記載され,相違点④は,特開平7-176794号公報(乙26),特開平1-260707号公報(乙27)にも記載されている。 よって,相違点①及び②に乙7を適用し,相違点③に乙14,26を適用し,相違点④に乙15,26,27を適用して本件発明2に想到することは,当業者にとって容易である。 (6) 特許法167条について特許法167条は特許庁における再度の審判請求を禁じる規定で,これが 裁判所における主張を制限するものでないこと,及び,同法104条の3で準用等されていないことは,文言上,一見して明らかである。 本件訴訟において,訴訟上の信義則を理由に,被告の無効の抗弁が排斥されるべきでもない。 本件訴訟における前記4の分割要件違反に基づく新規性・進歩性欠如の無効理由(被告が無効2011-800021号で主張し,審決取消訴訟(乙30)を提起したもの。)及び後記7の明確性要件 もない。 本件訴訟における前記4の分割要件違反に基づく新規性・進歩性欠如の無効理由(被告が無効2011-800021号で主張し,審決取消訴訟(乙30)を提起したもの。)及び後記7の明確性要件違反の無効理由以外の無効理由(乙7発明を主引例とする進歩性違反の無効理由及び後記6のサポート要件違反の無効理由)は,被告が請求した本件特許にかかる無効審判(無効2011-800079号。以下以下以下以下「本件無効審判本件無効審判本件無効審判本件無効審判」というというというという。)において主張したものであるが,本件における乙7発明を主引例とする進歩性違反の無効主張は,未提示の文献(乙18,26,27)にも基づく進歩性欠如に関するものであるから,本件無効審判における無効理由と同一の証拠に基づくものではない。 (原告の主張)(1) 被告の無効主張は確定した無効不成立審決と同一の事実及び証拠に基づくものであって,許されないこと被告が主張する無効理由の内容はすべて,本件無効審判において被告が主張した内容と実質的に同一であり,無効主張に関する重要な証拠も全て本件無効審判において提出されたものと共通しているところ,本件無効審判については請求不成立の審決(乙19)に対して被告が審決取消訴訟を提起しなかったため,当該審決は確定している。被告は新たに乙26,27に基づく主張をしているが,これは審決が判断した相違点c(c’)に関するものではなく,相違点b(b’)に関する主張である。したがって,乙26,27によっては,相違点c(c’)についての審決の判断を覆すものではないから,新たな証拠が提出されたものとはいえない。 平成23年法律第63号による改正前の特許法167条は「何人も,特許無効審判又は延長登録無効審判の確定審決 ての審決の判断を覆すものではないから,新たな証拠が提出されたものとはいえない。 平成23年法律第63号による改正前の特許法167条は「何人も,特許無効審判又は延長登録無効審判の確定審決の登録があつたときは,同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができない。」と定めている。 167条は直接的には再度の審判請求を禁じるものであって,無効の抗弁について述べているものではないが,同一の事実及び同一の証拠に基づいて無効審判を提起することが許されないのであれば,このような事実及び証拠に基づいて無効の抗弁を主張しても,もはや同法104条の3第1項にいう「当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるとき」に当たらないことは明らかであり,無効の抗弁が成立する余地はない。 (2) 本件発明1と乙7発明との一致点及び相違点念のため,被告が主張する無効理由がないことについて主張する。 本件発明1と乙7発明は,「LEDチップと,該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有する発光ダイオード。」である点で一致し,以下の点において相違する。 aLEDチップが,本件発明1では,窒化ガリウム系化合物半導体を有するものであるのに対し,乙7発明では,窒化ガリウム系化合物半導体を有するものであるのか否か明らかではない点(相違点a)。 b 本件発明1は,フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した(LEDからの)第1の光の発光スペクトルと(フォトルミネセンス蛍光体により波長変換された)第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系 本件発明1は,フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した(LEDからの)第1の光の発光スペクトルと(フォトルミネセンス蛍光体により波長変換された)第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光するものであるのに対し,乙7発明は,例えば,青色発光チップで緑色発光が得られる蛍光物質を含む緑色LEDと,単なる青色発光 チップのみからなる青色LEDとを同一平面上に水平に近接して並べた場合,緑色LEDを消灯して,青色LEDを点灯すると,青色LEDから洩れ出る光により,緑色LEDの蛍光物質が励起され,消灯した緑色LEDがあたかも点灯したような状態となり,両LEDの混色が発生するというような問題を解決し,波長の異なるLEDを近接して設置しても混色の起こらないLEDを提供するためのものであって,フォトルミネセンス蛍光体(蛍光物質)に吸収されずに通過した(発光チップからの)第1の光の発光スペクトルと(蛍光物質により変換された)第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光するものとはされていない点(相違点b)。 c コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,本件発明1では,コーティング樹脂の表面側からLEDチップに向かって高くなっているのに対し,乙7発明では,そのようになっているか否か明らかではない点(相違点c)。 (3) 乙7発明は本件発明1とは解決課題及び発明の意図を異にし,他の発明と組み合わせる動機付けもないから,乙7発明に接した当業者が,相違点b,cに係る構成について,本件発明1の構成となすことは当業者が容易になし得たことである,ということはできない。 (4) 本件発明2についても,乙7発明との相違点は,本件発明1と乙7発明の相違点と同様であるから,本件発明1と同様,乙7発明から容易に発明をする 易になし得たことである,ということはできない。 (4) 本件発明2についても,乙7発明との相違点は,本件発明1と乙7発明の相違点と同様であるから,本件発明1と同様,乙7発明から容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5) 本件発明は,「蛍光体の水分による劣化の抑制」という効果を奏する。 6 争点6(サポート要件違反の有無)について(被告の主張)(1) 特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範 囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきであるところ(知財高裁平成17年11月11日判決[「偏光フィルムの製造法」大合議判決]),本件特許出願では,「特許請求の範囲に記載された発明」は本件組成を有しない一方,「発明の詳細な説明に記載された発明」は本件組成を有するものに限られ,「当該発明の課題」は「より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供すること」である(段落【0010】)。 したがって,本件特許出願について,「発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のもの」とは,蛍光体が本件組成を有する発明で,当業者が「より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供すること」ができると認識 できる範囲内のもの」とは,蛍光体が本件組成を有する発明で,当業者が「より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供すること」ができると認識し得るものであり,本件発明のように蛍光体が本件組成を有しなければ,それに該当しないことは明白である。 また,蛍光体が本件組成を有しない「比較例1」の発光ダイオードが,「発光素子の発光光と蛍光体に付着していた水分あるいは外部環境から進入した水分により光分解し蛍光体結晶表面にコロイド状亜鉛金属を析出し外観が黒色に変色」して「寿命試験においては,約100時間で出力がゼロになった」ことに鑑みれば(段落【0108】及び【0109】),本件発明が,「その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のもの」,すなわち,当業者が出願時の技術常識に照らし「より高輝度で,長時間の使用環境下においても発光 光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供すること」ができると認識し得るものに該当しないことも明白である。 (2) 被告の無効主張が,特許法167条,104条の3,訴訟上の信義則により制限されることはない。 (原告の主張)(1) 被告の無効主張は,確定した無効不成立審決(乙19)と同一の事実及び証拠に基づくものであるから,特許法167条,104条の3により被告の無効主張は許されない。 (2) 本件明細書の段落【0007】,【0009】,【0048】には,ア蛍光体によっては,外部から侵入する水分や,製造時に内部に含まれた水分と,光及び熱とによって,劣化が促進されるものがあることイフォトルミネセンス蛍光体の含有分布は,混色性や耐久性にも影響することウフォトルミネセン 侵入する水分や,製造時に内部に含まれた水分と,光及び熱とによって,劣化が促進されるものがあることイフォトルミネセンス蛍光体の含有分布は,混色性や耐久性にも影響することウフォトルミネセンス蛍光体を,コーティング部の表面側から発光素子に向かって分布濃度を高くすれば,外部環境からの水分などの影響をより受けにくくでき,水分による劣化を防止できることが記載されている。 しかるところ,上記ア~ウによれば,a フォトルミネセンス蛍光体の分布濃度をコーティング部の表面側から発光素子に向かって高くすれば,そうでない場合に比べて,外部環境からの水分による劣化の防止の効果を期待できることb フォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を前記aのようにした際の水分による劣化防止の作用は,必ずしも特定の組成のフォトルミネセンス蛍光体に限られる,とは解されないことは,いずれも当業者が容易に理解できるところである。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明には,特定の蛍光体を備えた 発光ダイオードしか開示がないとしても,蛍光体に関し具体的組成の特定がされていない本件発明が,本件の発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできない。 7 争点7(明確性違反の有無)について(被告の主張)構成要件Dが「コーティング樹脂中の蛍光体の含有分布の状態を全体としてみたときに,蛍光体の含有分布が,水分が侵入する起点であるコーティング樹脂の表面側から離れて位置するLEDチップが存在する方に有意に偏っている状態」を意味するのであれば,その充足・非充足は「有意」か否かで判断すべきところ,「有意」とは,一般に,「①意志・意図のあること。したごころのあること。②統計で,偶然ではなく必然的に差が生じていること。③意味のあること。有意義。」と ・非充足は「有意」か否かで判断すべきところ,「有意」とは,一般に,「①意志・意図のあること。したごころのあること。②統計で,偶然ではなく必然的に差が生じていること。③意味のあること。有意義。」と解される。一方,本件明細書には,「統計で,偶然ではなく必然的に差が生じていること」や「意味のあること」について何らの説明もないから,構成要件Dの外縁は不明というほかなく,本件発明は明確でない。すなわち,本件特許は,特許法36条6項2号の規定に違反してされたものであり,同法123条1項4号に該当して無効とすべきものである。 (原告の主張)構成要件Dを,争点3(構成要件Dの充足性)で述べたとおり解釈しても,本件発明の権利範囲は明らかであるから,本件発明の外縁が不明確であるなどということはない。 8 争点8(差止めの必要性)について(原告の主張)被告製品は本件発明の技術的範囲に含まれるものであるから,原告は,被告に対し,被告製品の譲渡,輸入,又は譲渡の申出の差止め及び被告製品の廃棄を求める。 (被告の主張) 被告は,被告製品(TK-UL60W,TK-BE014C,TK-BE053L及びTK-BE053N)の後継となる新製品(FRLC7L,FRLC7N,FRLC4L,FRLC4N,FRLC4L-E17及びFRLC4N-E17)を平成24年1月31日に販売開始し,被告製品については,現在,輸入も譲渡もしていない。 原告の差止請求及び廃棄請求は,これらの点からも棄却されるべきである。 9 争点9(損害)について(原告の主張)(1) 甲事件イ号物件及びロ号物件の売上げは,年間約1億円を下回らないので,本件特許の登録日である平成22年6月18日から現在までの売上げの合計は,1億3320万円を下らな 原告の主張)(1) 甲事件イ号物件及びロ号物件の売上げは,年間約1億円を下回らないので,本件特許の登録日である平成22年6月18日から現在までの売上げの合計は,1億3320万円を下らない。本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額は,少なくともイ号物件及びロ号物件の販売額の5%に相当する666万円を下らない。 よって,原告は,被告に対し,民法709条,特許法102条3項に基づく損害賠償請求として,666万円及びこれに対する甲事件訴状送達の日の翌日である平成23年11月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (2) 乙事件ハ号物件及びニ号物件の売上げは,年間約1200万円を下回らないので,本件特許の登録日である平成22年6月18日から現在までの売上げの合計は,1600万円を下らない。本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額は,少なくともハ号物件及びニ号物件の販売額の5%に相当する80万円を下らない。 よって,原告は,被告に対し,民法709条,特許法102条3項に基づく損害賠償請求として,80万円及びこれに対する乙事件訴状送達の日の翌 日である平成23年11月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)争う。 第4 当裁判所の判断 1 被告製品の構成等(1) イ号物件についてアイ号物件は,「電球色」の「40W用」及び「60W用」電球であって,別紙物件目録1の1の写真に示された外観を備えたものである。 合同会社西友で販売されている60W用のものには,「urbane LED電球電球色相当 TK-UL60W」との商品名が付されている(甲3の1ないし3,5の2,6)。 なお,被告がイ号物件の後 合同会社西友で販売されている60W用のものには,「urbane LED電球電球色相当 TK-UL60W」との商品名が付されている(甲3の1ないし3,5の2,6)。 なお,被告がイ号物件の後継品と主張する「FRLC7L」(FORA60W 電球色),「FRLC4L」(FORA 40W 電球色)は,電球側面溝の上端が半円形状でなく角形状になっているなど,別紙物件目録1の1の外観を備えていない(乙32の1・3,乙33の1)。 イイ号物件の構成は,本件発明1,2の双方について対比可能なように,以下のとおり特定するのが相当である(乙34・4,5頁,弁論の全趣旨)。 イa:パッケージ凹部内に配置された窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,イb:該パッケージ凹部に充填されて該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの447nm付近に発光ピークを有する青色の光の一部を吸収し波長変換して赤色の光を発光する赤色蛍光体,及び,該LEDチップからの447nm付近に発光ピークを有する青色の光の一部を吸収し波長変換して緑色の光を発光する緑色蛍光 体が含有されたコーティング樹脂を有し,イc:前記各フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記青色の光の発光スペクトルと前記赤色蛍光体からの光の発光スペクトルと前記緑色蛍光体からの光の発光スペクトルとが重なり合って電球色の光を発光する発光ダイオードであって,イd:前記コーティング樹脂中に蛍光体が別紙写真1のように分布していることイe:を特徴とする発光ダイオード。 (2) ロ号物件についてアロ号物件は,「昼白色」の「40W用」及び「60W用」電球であって,別紙物件目録1の2の写真に示された外観を備えたものである。 株式会社ヤマダ電機で販 オード。 (2) ロ号物件についてアロ号物件は,「昼白色」の「40W用」及び「60W用」電球であって,別紙物件目録1の2の写真に示された外観を備えたものである。 株式会社ヤマダ電機で販売されている40W用のものには,「FORA LED電球昼白色相当 TK-BE014C」との商品名が付されている(甲4の1ないし3,7)。 なお,被告がロ号物件の後継品と主張する「FRLC7N」(FORA60W 昼白色),「FRLC4N」(FORA 40W 昼白色)は,電球側面溝の上端が半円形状でなく角形状になっているなど,別紙物件目録1の2の外観を備えていない(乙32の2・4,乙33の1)。 イロ号物件の構成は,本件発明1,2の双方について対比可能なように,以下のとおり特定するのが相当である(乙34・6,7頁,弁論の全趣旨)。 ロa:パッケージ凹部内に配置された窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,ロb:該パッケージ凹部に充填されて該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの453nm付近に発光ピークを有する青色の光の一部を吸収し波長変換して赤色の光を発光する赤色 蛍光体,及び,該LEDチップからの453nm付近に発光ピークを有する青色の光の一部を吸収し波長変換して緑色の光を発光する緑色蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し,ロc:前記各フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記青色の光の発光スペクトルと前記赤色蛍光体からの光の発光スペクトルと前記緑色蛍光体からの光の発光スペクトルとが重なり合って昼白色の光を発光する発光ダイオードであって,ロd:前記コーティング樹脂中に蛍光体が別紙写真2のように分布していることロe:を特徴とする発光ダイオード。 (3) ハ号 クトルとが重なり合って昼白色の光を発光する発光ダイオードであって,ロd:前記コーティング樹脂中に蛍光体が別紙写真2のように分布していることロe:を特徴とする発光ダイオード。 (3) ハ号物件についてアハ号物件は,「FORALED電球電球色相当 TK-BE053L」の商品名で特定されるLED電球である。 甲8ないし10によれば25W用のもので,40W用又は60W用のものであることを要件とするイ号物件とは重ならない。 イハ号物件の構成は,本件発明1,2の双方について対比可能なように,以下のとおり特定するのが相当である(乙34・8,9頁,弁論の全趣旨)。 ハa:パッケージ凹部内に配置された窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,ハb:該パッケージ凹部に充填されて該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの443nm付近に発光ピークを有する青色の光の一部を吸収し波長変換して赤色の光を発光する赤色蛍光体,及び,該LEDチップからの443nm付近に発光ピークを有する青色の光の一部を吸収し波長変換して緑色の光を発光する緑色蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し, ハc:前記各フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記青色の光の発光スペクトルと前記赤色蛍光体からの光の発光スペクトルと前記緑色蛍光体からの光の発光スペクトルとが重なり合って電球色の光を発光する発光ダイオードであって,ハd:前記コーティング樹脂中に蛍光体が別紙写真3のように分布していることハe:を特徴とする発光ダイオード。 (4) ニ号物件についてアニ号物件は,「FORALED電球昼白色相当 TK-BE053N」の商品名で特定されるLED電球である。 甲8,9,11によれば25W用 る発光ダイオード。 (4) ニ号物件についてアニ号物件は,「FORALED電球昼白色相当 TK-BE053N」の商品名で特定されるLED電球である。 甲8,9,11によれば25W用のもので,40W用又は60W用のものであることを要件とするロ号物件とは重ならない。 イニ号物件の構成は,本件発明1,2の双方について対比可能なように,以下のとおり特定するのが相当である(乙34・10,11頁,弁論の全趣旨)。 ニa:パッケージ凹部内に配置された窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,ニb:該パッケージ凹部に充填されて該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの444nm付近に発光ピークを有する青色の光の一部を吸収し波長変換して赤色の光を発光する赤色蛍光体,及び,該LEDチップからの444nm付近に発光ピークを有する青色の光の一部を吸収し波長変換して緑色の光を発光する緑色蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し,ニc:前記各フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記青色の光の発光スペクトルと前記赤色蛍光体からの光の発光スペクトルと前記緑色蛍光体からの光の発光スペクトルとが重なり合って昼白色の光を 発光する発光ダイオードであって,ニd:前記コーティング樹脂中の蛍光体が別紙写真4のように分布していることニe:を特徴とする発光ダイオード。 2 争点1(構成要件B1,B2,C,Dの「フォトルミネセンス蛍光体」の充足性)について(1) 本件発明の構成要件B1,B2,C,Dにいう「フォトルミネセンス蛍光体」につき,被告は,「フォトルミネセンス蛍光体」は,「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から いう「フォトルミネセンス蛍光体」につき,被告は,「フォトルミネセンス蛍光体」は,「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体を含む組成」(本件組成)を有するフォトルミネセンス蛍光体に限定されると主張し,原告は,本件組成を有する構成に限定されないと主張する。 (2) 本件発明にかかる「特許請求の範囲」には,本件発明にいう「フォトルミネセンス蛍光体」は,「該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光する」ものであることが記載されているが,その組成について特段の限定は付されていない。 (3) 本件明細書の段落【0014】には,「前記フォトルミネセンス蛍光体としては,Y3Al5O12:Ce,Gd3In5O12:Ceを始め,上述のように定義される種々のものが含まれる。」(下線部は当裁判所で付した。)との記載があり,そこでいう「前記フォトルミネセンス蛍光体」とは,段落【0012】の「該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体」を指すものと認められるが,段落【0001】~【0013】に,「フォトルミネセンス蛍光体」の「定義」とみられるものは見当た らない。 本件原出願の明細書(乙5。第4世代分割のもの。)では,段落【0012】で「前記フォトルミネセンス蛍光体が,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とを含み,かつセリウムで付活 ォトルミネセンス蛍光体が,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とを含み,かつセリウムで付活されたガーネット系蛍光体を含むことを特徴とする。」との記載があり,それを受けて段落【0014】で「前記フォトルミネセンス蛍光体としては,Y3Al5O12:Ce,Gd3In5O12:Ceを始め,上述のように定義される種々のものが含まれる。」としていたものであるが,第5世代分割による本件特許出願の際にフォトルミネセンス蛍光体の定義を削除したため,【0014】の文章の意味がつながらなくなったものと思われる。 本件明細書に「フォトルミネセンス蛍光体」の定義が存在しない以上,本件明細書の段落【0014】の「上記のように定義される」との箇所は意味不明な記載とみるほかない。 (4) 本件明細書の他の記載(フォトルミネセンス蛍光体の組成に触れた箇所として,段落【0014】~【0020】,【0022】,【0026】~【0031】,【0044】~【0046】,【0050】~【0064】,【0079】,【0080】,【0083】~【0086】,【0105】,【0106】,【0109】~【0113】,【0116】~【0120】,【0124】~【0126】,【0128】,【0135】~【0138】)を見ても,「好ましい」構成や実施形態,実施例における構成についての記載はあるが,本件発明におけるフォトルミネセンス蛍光体の組成について定義したり限定したりした箇所はない(段落【0026】【0046】には,本件原出願の明細書の前記段落【0012】と同様の組成の記載があるが,あくまでも「本件発明の一態様」「本実施形態1」とされている。)。 そうすると, 段落【0026】【0046】には,本件原出願の明細書の前記段落【0012】と同様の組成の記載があるが,あくまでも「本件発明の一態様」「本実施形態1」とされている。)。 そうすると,本件発明の構成要件B1,B2,C,Dにいう「フォトルミネセンス蛍光体」は,当該発明の属する分野においてその用語が有する普通の意味,すなわち,特に組成の限定のないフォトルミネセンス蛍光体一般を指すものと解するのが相当である。 (5) 被告製品における「赤色蛍光体」及び「緑色蛍光体」は,いずれもフォトルミネセンス蛍光体である以上,本件発明の構成要件B1,B2,C,Dにいう「フォトルミネセンス蛍光体」を充足する。 3 争点2(構成要件Cの「第2の光の発光スペクトル」の充足性)について(1) 被告は,構成要件Cにいう「第2の光の発光スペクトル」とは,単色性ピーク波長を有する「第1の光の発光スペクトル」と同様にピーク波長が1つのものを指すのであり,被告製品における赤色蛍光体からの赤色の光の発光スペクトルと,緑色蛍光体からの緑色の光の発光スペクトルとは,それぞれが独立した発光スペクトルであり,両者を重ね合わせたものを1つの「第2の光の発光スペクトル」と評価することはできない,と主張する。 しかし,本件発明にかかる「特許請求の範囲」にもその他の本件明細書の記載にも,構成要件Cにいう「第2の光の発光スペクトル」を,ピーク波長が1つのものに限定するような記載はない。 本件明細書の段落【0018】~【0020】,【0028】~【0031】,【0064】,【0079】~【0085】,【0128】,【0129】,【0135】などには,2以上の組成の異なる蛍光体を用いる構成が開示されているから,構成要件Cにいう「第2の光の発光スペクトル」が,ピ 4】,【0079】~【0085】,【0128】,【0129】,【0135】などには,2以上の組成の異なる蛍光体を用いる構成が開示されているから,構成要件Cにいう「第2の光の発光スペクトル」が,ピーク波長が1つのものに限定されないことは明らかである。 (2) 被告製品における「前記赤色蛍光体からの光の発光スペクトルと前記緑色蛍光体からの光の発光スペクトル」は,構成要件Cにいう「第2の光の発光スペクトル」に該当するから,被告製品は,いずれも構成要件Cを充足する。 4 争点3(構成要件Dの充足性)について(1) 構成要件Dは,「前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっていること」を要求するものである。 「前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっている」との要件は,平成22年4月2日付け補正により,「前記コーティング樹脂の表面側よりも前記LEDチップ側で高くなっている」との要件から補正されたものであり,少なくとも「コーティング層表面とLEDチップの中間で蛍光体濃度が最も高くなるような場合」を除外するものである(乙17,丙2の3・4)。 原告は,上記要件につき,「コーティング樹脂中の蛍光体の含有分布を全体としてみたときに,蛍光体の含有分布が,水分が侵入する起点であるコーティング樹脂の表面側から離れて位置するLEDチップが存在する方に有意に偏っている状態」を意味すると主張する。 しかし,原告の定義では,原告においても除外されていることに争いのない「コーティング層表面とLEDチップの中間で蛍光体濃度が最も高くなるような場合」,すなわち,濃度を仮に0-5の6段階で表すとして,表面側からLEDチップ側に向 おいても除外されていることに争いのない「コーティング層表面とLEDチップの中間で蛍光体濃度が最も高くなるような場合」,すなわち,濃度を仮に0-5の6段階で表すとして,表面側からLEDチップ側に向かって順に「0-1-2-3-1」のような状態を除外できているか疑問である。 他方,被告は,上記要件につき,「コーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度が高くなることはあっても低くなることはない」状態を意味すると主張する。 蛍光体の形状などから,蛍光体とLEDチップとの間には空隙が生じるのは必然であり,厳密な意味で「一度高くなった後,下がるような状態」が生じないようにするのは不可能である。また,「コーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度が高くなることはあっても低くなる ことはない」ように意図して製造したとしても,濃度ムラにより,局所的に「LEDチップ側よりも表面側の方が高くなる」事態を100パーセント避けることも不可能である。 さらに,被告の定義では,蛍光体濃度がコーティング樹脂中で均一に分布する状態(「表面側から前記LEDチップに向かって高くなっている」に当たらないことは明らかである。)を除外できていない。 そうすると,「前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっている」とは,「コーティング樹脂中の蛍光体の含有分布を全体としてみたときに,蛍光体の含有分布がコーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に有意に偏っており,表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度が高くなることはあっても,有意に低くなることはない状態」の意味に解するのが相当である。 (2) ワイヤー上に堆積したフォトルミ 側に有意に偏っており,表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度が高くなることはあっても,有意に低くなることはない状態」の意味に解するのが相当である。 (2) ワイヤー上に堆積したフォトルミネセンス蛍光体について被告は,被告製品においては,フォトルミネセンス蛍光体がLEDチップ上及びLEDチップから延在するワイヤー上に堆積し,蛍光体の濃度分布はコーティング樹脂の表面からワイヤーの直上までほぼ0であったものが,ワイヤーの直上で高くなり,ワイヤーを過ぎるとまたほぼ0となり,LEDチップの直上でまた高くなっているから,フォトルミネセンス蛍光体の濃度がコーティング樹脂の表面側からLEDチップに向かって高くなっているとはいえない,と主張する。 しかし,本件明細書においても,蛍光体の分布は「フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材,形成温度,粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状,粒度分布などを調整することによって」実現することが想定されているのであり(段落【0048】,【0081】),より具体的には,樹脂中で蛍光体が比重の差により降下する過程のどこかで樹脂を硬化することによって実 現することが想定されているものと認められる。 このような方法で蛍光体の分布を実現する場合,チップからのワイヤーが樹脂中に含まれている実施形態にあっては,ワイヤー上部の蛍光体の濃度が多少高くなることは自然であって,本件明細書においても想定されていた事態といえる。 そうすると,ワイヤー上に蛍光体が堆積し,局所的にワイヤー上よりもLEDチップ側で蛍光体の濃度が低くなっているとしても,コーティング樹脂中の蛍光体の含有分布を全体としてみたときに,蛍光体の含有分布がコーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に有意に偏っており,ワイヤー上の蛍 で蛍光体の濃度が低くなっているとしても,コーティング樹脂中の蛍光体の含有分布を全体としてみたときに,蛍光体の含有分布がコーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に有意に偏っており,ワイヤー上の蛍光体を除いてみたときに,表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度が高くなることはあっても有意に低くなることはない状態にあれば,「前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっている」ものと認めるのが相当である。 この点に関する被告の主張は採用できない。 (3) コーティング樹脂の表面側を起点として徐々に高くなっていない点について被告及び補助参加人は,助詞の「から」とは起点となる場所を示す語であるところ,被告製品では蛍光体の濃度が高くなり始める起点がLEDチップ又はワイヤーの直上であって,「コーティング樹脂の表面側」では濃度がほぼ0である,また,被告製品では,蛍光体のほとんどがLEDチップ側に均一の密度で沈殿しており,その濃度が徐々に高くなることもないから,「前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっている」とはいえない,などと主張する。 しかし,構成要件Dにいう「前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっている」とは,上記(1)のとおり,「コーティング樹脂中の蛍光体の含有分布を全体としてみたときに,蛍光体の含有分布 がコーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に有意に偏っており,表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度が高くなることはあっても,有意に低くなることはない状態」と解するのが相当であり,濃度変化の起点を表面側に限定したり,濃度変化の態様を「徐々に高くなる」場合に限定したりする必要はないと解される。すなわち,上記要件は,濃度を仮に0- 低くなることはない状態」と解するのが相当であり,濃度変化の起点を表面側に限定したり,濃度変化の態様を「徐々に高くなる」場合に限定したりする必要はないと解される。すなわち,上記要件は,濃度を仮に0-5の6段階で表すとして,表面側からLEDチップ側に向かって順に「0-0-1-2-3」や「0-0-0-5-5」のような分布を除外するものではないと解される。 本件明細書の実施例1ないし8,10,12においては,「発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体が徐々に多く分布する」ように構成されている(段落【0106】,【0111】,【0113】,【0114】,【0116】,【0118】~【0120】,【0129】,【0138】)が,構成要件Dの文言は上記のように解釈できるのであるから,それ以上に実施例のような構成に限定すべき理由はない。 (4) イ号物件について以上を踏まえ,イ号物件におけるフォトルミネセンス蛍光体の分布が「コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっている」といえるか,すなわち,「コーティング樹脂中の蛍光体の含有分布を全体としてみたときに,蛍光体の含有分布がコーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に有意に偏っており,表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度が高くなることはあっても,有意に低くなることはない状態」となっているか検討する。 上記1(1)イで認定したイ号物件の構成イdによれば,イ号物件におけるフォトルミネセンス蛍光体は,LEDチップ上及びLEDチップから延在するワイヤー上に,別紙写真1のように分布している。 写真上側がコーティング樹脂表面であり,写真中央下側の逆台形の部分が LEDチップ,LEDチップの上面左右に存在する大きな白い塊は金ワイヤーの一部,それより小さな 1のように分布している。 写真上側がコーティング樹脂表面であり,写真中央下側の逆台形の部分が LEDチップ,LEDチップの上面左右に存在する大きな白い塊は金ワイヤーの一部,それより小さな白い塊がフォトルミネセンス蛍光体,左側のワイヤーの上から写真左側に延びている蛍光体はワイヤー上に堆積した蛍光体である。写真下側はパッケージ基板と思われる。 構成要件Dは,「前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっていること」を要求しているにすぎないから,その充足性判断はコーティング樹脂の表面からLEDチップの表面までの濃度分布を見ればよいと解され,LEDチップの左右の,LEDチップ表面を左右に伸ばした線からパッケージ基板までに堆積するフォトルミネセンス蛍光体については構成要件Dの充足性にとって関係がないものと解される。また,上記のとおり,蛍光体とLEDチップとの間にある空隙や,ワイヤー上に堆積した蛍光体についても考慮する必要はない。そこで,写真上側のコーティング樹脂の表面側からLEDチップの表面までの蛍光体の濃度分布を全体としてみると,蛍光体の濃度は,コーティング樹脂の表面側からLEDチップの付近まではほぼ0であり,LEDチップの付近で有意に高くなっているから,蛍光体の含有分布はコーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に有意に偏っているといえる。そして,表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度が高くなることはあっても,有意に低くなっていることはない。そうすると,イ号物件は,構成要件Dを充足するものと認められる。(5) ロ号物件について上記1(2)イで認定したロ号物件の構成ロdによれば,ロ号物件におけるフォトルミネセンス蛍光体は,LEDチップ上及びL 物件は,構成要件Dを充足するものと認められる。(5) ロ号物件について上記1(2)イで認定したロ号物件の構成ロdによれば,ロ号物件におけるフォトルミネセンス蛍光体は,LEDチップ上及びLEDチップから延在するワイヤー上に,別紙写真2のように分布している。 写真上側がコーティング樹脂表面であり,写真中央下側の逆台形の部分がLEDチップ,LEDチップの上面左右に存在する大きな白い塊及びそこか ら延びた白い太い線は金ワイヤーの一部,それより小さな白い塊がフォトルミネセンス蛍光体,左右のワイヤーの上に沿って写っている蛍光体はワイヤー上に堆積した蛍光体である。写真下側はパッケージ基板と思われる。 写真上側のコーティング樹脂の表面側からLEDチップの表面までの蛍光体の濃度分布を全体としてみると,蛍光体の濃度は,コーティング樹脂の表面側からLEDチップの付近まではほぼ0であり,LEDチップの付近で有意に高くなっているから,蛍光体の含有分布はコーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に有意に偏っているといえる。そして,表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度が高くなることはあっても,有意に低くなっていることはない。そうすると,ロ号物件は,構成要件Dを充足するものと認められる。 (6) ハ号物件について上記1(3)イで認定したハ号物件の構成ハdによれば,ハ号物件におけるフォトルミネセンス蛍光体は,LEDチップ上及びLEDチップから延在するワイヤー上に,別紙写真3のように分布している。 写真上側がコーティング樹脂表面であり,写真ほぼ中央下側の逆台形の部分がLEDチップ,LEDチップの上面左右に存在する大きな白い塊及び右側の白い塊から延びた白い太い線は金ワイヤーの一部,それより小さな白い塊がフォト ング樹脂表面であり,写真ほぼ中央下側の逆台形の部分がLEDチップ,LEDチップの上面左右に存在する大きな白い塊及び右側の白い塊から延びた白い太い線は金ワイヤーの一部,それより小さな白い塊がフォトルミネセンス蛍光体である。写真下側はパッケージ基板と思われる。 写真左側にもLEDチップが写っているが,ここでは写真ほぼ中央のLEDチップについて,写真上側のコーティング樹脂の表面側からLEDチップの表面までの蛍光体の濃度分布を全体としてみると,蛍光体の濃度は,コーティング樹脂の表面側からLEDチップの付近まではほぼ0であり,LEDチップの付近で有意に高くなっているから,蛍光体の含有分布はコーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に有意に偏っているといえる。 そして,表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度が高くなることはあっても,有意に低くなっていることはない。そうすると,ハ号物件は,構成要件Dを充足するものと認められる。 (7) ニ号物件について上記1(4)イで認定したニ号物件の構成ニdによれば,ニ号物件におけるフォトルミネセンス蛍光体は,LEDチップ上及びLEDチップから延在するワイヤー上に,別紙写真4のように分布している。 写真上側がコーティング樹脂表面であり,写真ほぼ中央下側の逆台形の部分がLEDチップ,LEDチップの上面左右に存在する大きな白い塊は金ワイヤーの一部,それより小さな白い塊がフォトルミネセンス蛍光体である。 写真下側はパッケージ基板と思われる。 写真左側にもLEDチップが写っているが,ここでは写真ほぼ中央のLEDチップについて,写真上側のコーティング樹脂の表面側からLEDチップの表面までの蛍光体の濃度分布を全体としてみると,蛍光体の濃度は,コーティング樹脂の表面側からLED ,ここでは写真ほぼ中央のLEDチップについて,写真上側のコーティング樹脂の表面側からLEDチップの表面までの蛍光体の濃度分布を全体としてみると,蛍光体の濃度は,コーティング樹脂の表面側からLEDチップの付近まではほぼ0であり,LEDチップの付近で有意に高くなっているから,蛍光体の含有分布はコーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に有意に偏っているといえる。 そして,表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度が高くなることはあっても,有意に低くなっていることはない。そうすると,ニ号物件は,構成要件Dを充足するものと認められる。 (8) 被告製品が構成要件A1,A2及びEを充足することについては,被告,補助参加人とも争わない。 (9) 以上によれば,次のとおりである。 被告製品の構成イaないしニaは,本件発明1の構成要件A1,本件発明2の構成要件A2を充足する。 被告製品の構成イbないしニbは,本件発明1の構成要件B1,本件発明 2の構成要件B2を充足する。 被告製品の構成イcないしニcは,本件発明の構成要件Cを充足する。 被告製品の構成イdないしニdは,本件発明の構成要件Dを充足する。 被告製品の構成イeないしニeは,本件発明の構成要件Eを充足する。 そうすると,被告製品は,いずれもそれぞれ本件発明1・2の技術的範囲に属する。 5 争点4(分割要件違反に基づく新規性・進歩性欠如の有無)について(1) 分割要件違反についてア分割出願が原出願の時においてこれをしたものとみなされるためには,分割後の発明につき,原出願の願書に添付した当初の明細書に,分割後の発明の技術的事項のすべてが,その発明の属する技術分野における通常の技術的知識を有する者においてこれを正確に理解し,かつ,容易に実 分割後の発明につき,原出願の願書に添付した当初の明細書に,分割後の発明の技術的事項のすべてが,その発明の属する技術分野における通常の技術的知識を有する者においてこれを正確に理解し,かつ,容易に実施することができる程度に,記載されている場合でなければならない(最高裁昭和53年3月28日判決・集民123号331頁,同昭和55年12月18日判決・民集34巻7号917頁,同昭和56年3月13日判決・集民132号225頁)。 そこで,本件発明が,本件原出願(乙5)の特許請求の範囲,明細書及び図面(以下以下以下以下,合わせてわせてわせてわせて「乙5明細書明細書明細書明細書」というというというという。)。)。)。)に開示されているか検討する。 イ争点1(構成要件B1,B2,C,Dの充足性)において判断したとおり,本件発明にいう「フォトルミネセンス蛍光体」は,本件組成を有するものに限られない。 そこで,本件組成に限定されないフォトルミネセンス蛍光体に関する本件発明が乙5明細書に開示されているか検討する。 ウ原告は,乙5明細書の段落【0047】には,「フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に 向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高くした場合は,外部環境からの水分などの影響をより受けにくくでき,水分による劣化を防止することができる」との記載があり,前記「フォトルミネセンス蛍光体」は,具体的には,「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み,セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である」(本件組成)とされてはいるものの,「フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコ つの元素と,Al,Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み,セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である」(本件組成)とされてはいるものの,「フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高く」するとの構成を採用して「(フォトルミネセンス蛍光体の)水分による劣化を防止」するに際し,前記「フォトルミネセンス蛍光体」が,必ずしも本件組成のものに限られるものではないことは,当業者が容易に理解できる,すなわち,乙5明細書には本件組成に限定されない本件発明が開示されている,と主張する。 エ乙5明細書の段落【0047】は,同一段落中において,「コーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高く」する構成(以下以下以下以下「下部構成下部構成下部構成下部構成」というというというという。)。)。)。)と「フォトルミネセンス蛍光体を,発光素子からモールド部材等の表面側に向かって分布濃度が高くなるように分布させる」構成(以下以下以下以下「表面構成表面構成表面構成表面構成」というというというという。)。)。)。)の相反する2つの構成に区別した上で,下部構成では「水分による劣化を防止することができ」,表面構成では「発光素子からの発熱,照射強度などの影響をより少なくでき」ると説明している。 さらに,【0047】に続く【0048】,【0049】には,本件組成に属する蛍光体を用いる実施形態1について,「高効率でかつ十分な耐光性を有するので,該蛍光体を用いることにより,優れた発光特性の発光ダイオードを構成することができる」こと,「ガーネット構造を有するので,熱,光及び水 いる実施形態1について,「高効率でかつ十分な耐光性を有するので,該蛍光体を用いることにより,優れた発光特性の発光ダイオードを構成することができる」こと,「ガーネット構造を有するので,熱,光及び水分に強く,……励起スペクトルのピークを450nm付 近にすることができる」ことが記載されている。 そして,【0101】~【0109】,【図13】には,以下の実験結果について説明がされている。 ① 下部構成を採用した上で本件組成に属する蛍光体(「(Y0.8Gd0.2)3Al5O12:Ce蛍光体」)を使用した実施例1と,下部構成を採用した上で本件組成に属しない蛍光体(「(ZnCd)S:Cu,Al」)を使用した比較例1について,寿命試験を実施した。 ② 実施例1については,温度25℃20mA通電の条件下(【図13】の「(A)」のグラフ)でも,温度60℃90%RH下で20mA通電の条件下(同「(B)」のグラフ)でも,蛍光体に起因する変化は観測されなかったのに対し,比較例1については,後者の条件下(温度60℃90%RH下で20mA通電の条件下。同「(B)」のグラフ)では,約100時間で外部環境から進入した水分等の影響で蛍光体が劣化し出力がゼロになった。 ③ 以上のとおり,下部構成を採用する等同一条件の下での実験において,本件組成に属する蛍光体を使用した場合(実施例1)では,水分による劣化を防止できるとの効果が得られたのに対し,本件組成に属しない蛍光体を使用した場合(比較例1)では,高温多湿条件下で早期劣化の結果が生じ,その結果に相違が生じた。 オ上記【0101】~【0109】,【図13】によれば,当業者であれば,「(下部構成を採用した場合には,)水分による劣化を防止することができる」との乙5明細書の記載部分は,本件組成に属する蛍 。 オ上記【0101】~【0109】,【図13】によれば,当業者であれば,「(下部構成を採用した場合には,)水分による劣化を防止することができる」との乙5明細書の記載部分は,本件組成に属する蛍光体について述べたものであると認識,理解するのが自然であるといえる。また,【0048】と【0049】では,本件組成に属する蛍光体が「十分な耐光性を有」し,かつ,「熱,光及び水分に強」いとの性質を有することが言及されており,【0047】に続けてこれらの記載に接した当業者であれ ば,【0047】の記載のとおり下部構成を採用可能である(採用した場合に水分による劣化防止という効果を奏する)のは,本件組成に属する蛍光体が有する性質によるものと認識,理解するのが自然であるといえる。 そうすると【0047】に接した当業者において,【0047】に記載された下部構成が本件組成に属しない蛍光体についても採用可能であると理解するとまでは認められない。 カ加えて,①乙5明細書で実施形態又は実施例として挙げられている蛍光体は,いずれも本件組成に属する蛍光体のみであること,②【0047】の冒頭には,「このフォトルミネセンス蛍光体」と,「この」との指示語が用いられているが,同指示語は,前後の文脈から,【0045】等に記載されている本件組成に属する蛍光体を指しているのは明白であること等を総合するならば,【0047】の記載に接した当業者は,【0047】の「フォトルミネセンス蛍光体」について,本件組成に属する蛍光体に限定されないと理解するとまでは容易に認め難い。 キ原告は,比較例1が示しているのは,下部構成を採用しても,「(ZeCd)S:Cu,Al」という組成の蛍光体の加速試験では約100時間で水分の影響によって劣化したとの結果であって,これが示す内容は,当該蛍光 比較例1が示しているのは,下部構成を採用しても,「(ZeCd)S:Cu,Al」という組成の蛍光体の加速試験では約100時間で水分の影響によって劣化したとの結果であって,これが示す内容は,当該蛍光体は実施例1の組成と比較して水分に弱いというだけのことであり,本件発明が【0047】に開示されていることを理解する妨げにならない,などと主張する。 しかし,乙5明細書から当業者が理解し,かつ,容易に実施することが可能と考えることができる事項は前記のとおりであり,水分による劣化防止効果は比較例1でも生じているが,「(ZeCd)S:Cu,Al」が本件組成のものと比較すると水分に弱いために,本件組成のものとの比較では,水分による劣化防止の効果が結果に表れない,といった趣旨を,当業者が乙5明細書から読み取れるとは容易に認め難い。原告は甲17,1 8の意見書を提出するが,上記認定を左右するものではない。 ク原告は,本件組成に属しない蛍光体((Sr.Ba)2SiO4:Euで表される緑色蛍光体と(Sr.Ca)AlSiN3:Euで表される赤色蛍光体)についても,効果が得られる場合がある旨の実験結果(甲14)を提出する。 しかし,分割が許されるためには,原出願の明細書に本件発明についての記載,開示があること(当業者において,記載,開示があると合理的に理解できることを含む。)を要するから,訴訟過程で提出された上記実験結果(甲14)をもって,前記の結論を左右することはできないというべきである。 ケなお,乙5・33~35頁によれば,原告は,平成20年2月6日に手続補正を行い,乙5の請求項の数を10に増やし,補正後の請求項1ないし3(及びその従属項である4ないし6,9,10)では「フォトルミネセンス蛍光体」を本件組成に限定していないこと,補正後 月6日に手続補正を行い,乙5の請求項の数を10に増やし,補正後の請求項1ないし3(及びその従属項である4ないし6,9,10)では「フォトルミネセンス蛍光体」を本件組成に限定していないこと,補正後の段落【0011】では,本件組成に限定されない「フォトルミネセンス蛍光体」について述べた上で,「前記フォトルミネセンス蛍光体は,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体であるを用いることが好ましい。」と記載されていることが認められ,これらの記載によれば,補正後の乙5の「特許請求の範囲」及び明細書には,本件組成に限定されないフォトルミネセンス蛍光体が開示されているということになる。 しかし,上記ウないしクで述べてきたところからすれば,この補正は願書に最初に添付した明細書(乙5の2ないし32頁,33頁の【図22】【図23】)に記載した事項の範囲内とはいえず,本件組成に限定されないフォトルミネセンス蛍光体という新規事項を追加するものというべきで あるから,本件では,この補正については考慮しない(なお,乙29・1頁には,本件原出願に関し,平成23年7月7日の拒絶理由通知(乙28)から平成24年5月21日の拒絶査定(乙29)までの間に手続補正書が提出されたことが記載されているが,その内容は明らかでない。)。 (2) 乙5に基づく新規性・進歩性欠如についてア上記のとおり,本件原出願から分割出願された本件特許出願には分割要件違反があるから,本件特許の出願日である平成21年3月18日(甲2)の時点における新規性・進歩性の有無を判断すべきことになる。 イ本件原出願の公開特許公報(特開2008-160140。 は分割要件違反があるから,本件特許の出願日である平成21年3月18日(甲2)の時点における新規性・進歩性の有無を判断すべきことになる。 イ本件原出願の公開特許公報(特開2008-160140。乙5)は,本件特許出願日より前である平成20年7月10日に国内において頒布された刊行物である。 ウ乙5発明1と本件発明1の対比についてア 乙5には,「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップ」が開示されている(乙5の請求項1)。イ 乙5には,「該発光素子によって発光された光の一部を吸収して,吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体」が開示されており(乙5の請求項1),該蛍光体を,LEDチップを直接覆うコーティング樹脂に含有させる構成も開示されている(乙5の段落【0046】,【0064】,【0076】,【図1】,【図2】)。本件発明1において蛍光体が吸収するのが「該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部」とあるのは,構成要件Cに「前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光」とあることに照らすと,LEDチップからの第1の光の全部を吸収する構成を含むものとは考えられず,本件発明1と乙5発明の相違点とはいえない。乙5において蛍光体の果たす役割が「波長変換」であることは,乙5 の請求項1からも自明であるが,乙5の段落【0005】でも開示されている。乙5の請求項1においては,上記蛍光体は「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたYとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体 」とされているが,乙5の つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたYとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体 」とされているが,乙5の段落【0012】【0015】【0026】【0028】等の記載,またYを含まない実施例8の記載(【0119】),Alを含まない実施例12の記載(【0137】)からすると,必ずしも「YとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体」に限らず,「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」を用いることは開示されている。しかし,上記(1)で検討したとおり,それ以外の組成の蛍光体を用いる構成が開示されているとは認められない。乙5の請求項1では,上記蛍光体は,「互いに組成の異なる2以上を含」むものとされているが,実施例1では,単一の組成の蛍光体を用いる構成が開示されている(乙5の【0104】【0105】)。ウ 乙5の請求項1には,「該2以上の蛍光体の発光する光と該LEDチップの発光との混色光を発光可能である」ことが開示されている。その混色光が「白色光」であることは,乙5の【0006】【0021】【0022】で開示されている。「2以上の蛍光体の発光する光」に限らず,単一組成の蛍光体の発光する光からでも白色の混色光を発光可能であることは,実施例1(【0104】【0105】【0107】)で開示されている。 そうすると,「前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過したLEDチップからの第1の光の発光スペクトルと,該蛍光体の発光する第2の光の発光スペクトルとが 07】)で開示されている。 そうすると,「前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過したLEDチップからの第1の光の発光スペクトルと,該蛍光体の発光する第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する」ことが開示されている。エ 乙5には,「(本件組成を有する)フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高くした場合は,外部環境からの水分などの影響をより受けにくくでき,水分による劣化を防止することができる。」こと(【0047】)が開示されている。当裁判所は,本件発明1の構成要件Dにいう「前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっている」とは,「コーティング樹脂中の蛍光体の含有分布を全体としてみたときに,蛍光体の含有分布がコーティング樹脂の表面側からLEDチップ側に有意に偏っており,表面側からLEDチップ側に向かって蛍光体濃度が高くなることはあっても,有意に低くなることはない状態」と解するものであるが,乙5における上記段落【0047】の記載は,本件発明1の構成要件Dの場合を含んでいるものと解される。オ 乙5の請求項1の「発光装置」が「発光ダイオード」であることは,乙5の【0002】~【0007】の項から開示されている。カ 以上によれば,乙5には,以下の発明(以下以下以下以下「乙5発明発明発明発明1」といといといという。)が開示されている。a1:窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,b1:該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光する 体を有するLEDチップと,b1:該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し, c :前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって,d :前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっており,e :前記フォトルミネセンス蛍光体が,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体であることf :を特徴とする発光ダイオード。キ 以上によれば,乙5発明1と本件発明1とは,「乙5発明1の蛍光体が,本件組成を有する蛍光体であるのに対し,本件発明1の蛍光体は本件組成を有するものに限られない点」において相違し,その余の点は同一である。そうすると,本件発明1は,基準時において公知であった乙5発明1を含む上位概念の発明であり,新規性を欠いている。エ乙5発明と本件発明2の対比についてア 乙5には,LEDチップをマウント・リードのカップ部に戴置する構成が開示されている(乙5の段落【0026】【0033】【図1】)。イ 乙5には,LEDチップを覆うようにカップ内にコーティング樹脂を充填する構成が開示されている(乙5の段落【0026】【0033】【図1】)。ウ 以上によれば,乙5には,以 1】)。イ 乙5には,LEDチップを覆うようにカップ内にコーティング樹脂を充填する構成が開示されている(乙5の段落【0026】【0033】【図1】)。ウ 以上によれば,乙5には,以下の発明(以下以下以下以下「乙5発明発明発明発明2」といといといという。)。)。)。)が開示されている。 a2:凹部内に配置された窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,b2:前記凹部に充填されて該LEDチップを覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し,c :前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって,d :前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっており,e :前記フォトルミネセンス蛍光体が,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体であることf :を特徴とする発光ダイオード。エ 以上によれば,乙5発明2と本件発明2とは,「乙5発明2の蛍光体が,本件組成を有する蛍光体であるのに対し,本件発明2の蛍光体は本件組成を有するものに限られない点」において相違し,その余の点は同一である。そうすると,本件発明2は,基準時において公知であった乙5発明2を含む上位概念の発明であり ,本件発明2の蛍光体は本件組成を有するものに限られない点」において相違し,その余の点は同一である。そうすると,本件発明2は,基準時において公知であった乙5発明2を含む上位概念の発明であり,新規性を欠いている。 6 上記のとおり,本件発明1・2は新規性を欠き無効であるから,その余の点について判断するまでもなく,特許法104条の3により,原告の権利行使は許されない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官小川雅敏 裁判官西村康夫
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