令和4(わ)618 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反

裁判年月日・裁判所
令和7年6月10日 仙台地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-94568.txt

判決文本文12,556 文字)

- 1 - 判決【被告人の表示省略】 主文 被告人を懲役2年に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 被告人から金50万円を追徴する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、宮城県議会議員として、同県議会における議案提出、発言、質問及び表決等の権限を有していたもの、分離前の相被告人Aは、水産物加工及び販売等を業とするB株式会社の代表取締役であったものであるが、被告人は、別表1記載のとおり、令和3年4月19日及び令和4年1月4日、2回にわたり、前記Aから、対面又は電話で、宮城県が実施する「令和3年福島県沖地震による災害」に係る中小企業等グループ補助金(なりわい再建支援事業)の交付に関し、同社が申請する金額で補助金の交付決定が受けられるように同県職員らに働き掛けてほしい旨の請託を受け、別表2記載のとおり、同月4日から同月12日までの間、3回にわたり、仙台市青葉区本町3丁目8番1号宮城県議会庁舎1階応接室において、同補助金について、その交付の可否及び交付金額の決定等に関する事務を担当していた同県水産林政部水産業振興課長Cに対し、「Aのやつをやらせないために調査をするんじゃなくさ、やるために調査をするような方向に、俺、変えてほしいなと思ってんだ。 そんでなければこれは本会議問題にもなるからね、こんな調査の仕方やってたんでは。」「何で止まったのかなっていうのを、僕は本会議でだって聞く権利があるんだから。」「俺も本会議で人を潰すためにやることは、僕は本来は嫌だから。だから、課長も少し考え方、あんたね、今までのこと変えてかねえと、不振興課になっちゃうからね。」「やっぱりうまくまとめよう。決裂したって何いいことあんの、あ すためにやることは、僕は本来は嫌だから。だから、課長も少し考え方、あんたね、今までのこと変えてかねえと、不振興課になっちゃうからね。」「やっぱりうまくまとめよう。決裂したって何いいことあんの、あと本- 2 - 会議で部長が矢面に立てられて立ち往生なんかしたらどうなんの。」「俺、本会議でこいつはやろうと思ってるんだよ、2月定例会で。」等と申し向けて、同県議会議員の権限に基づく影響力を行使して、前記Cをして同社が申請する金額での補助金の交付を受けられるための職務上の行為をさせるようにあっせんをし、同月13日、前記Aから、同社社員D及び同Eを介し、その報酬として、宮城県塩竃市(住所省略)株式会社F銀行G支店に開設された、被告人が専ら管理するH政策研究会(以下「政策研究会」という。)名義の普通預金口座に現金50万円の送金を受けてその供与を受け、もって自己の同県議会議員としての権限に基づく影響力を行使して、公務員にその職務上の行為をさせるようにあっせんをしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受した。 (証拠の標目)【省略】(補足説明)第1 本件争点本件争点は、以下のとおりである。 ① 被告人が、令和3年4月19日、12月28日、29日及び令和4年1月4日に、Aから本件グループ補助金の交付に関し、B株式会社が申請する金額で補助金の交付決定が受けられるよう宮城県職員らに対して働き掛けてほしいとの請託を受けたと認められるか否か。 ② 別表2の発言が、宮城県議会議員の権限に基づく影響力を行使したあっせんと認められるか否か。 ③ 振り込まれた現金50万円が本件あっせん行為の報酬であると認められるか否か。 ④ 被告人に故意があったと認められるか否か。 第2 前提となる事実関係証拠によれば、争点判断の前提と 否か。 ③ 振り込まれた現金50万円が本件あっせん行為の報酬であると認められるか否か。 ④ 被告人に故意があったと認められるか否か。 第2 前提となる事実関係証拠によれば、争点判断の前提として、以下の事実が認められる。 - 3 - 1 本件グループ補助金の制度概要等本件グループ補助金は、令和3年福島県沖地震により被害を受けた宮城県・福島県の地域を対象に、中小企業等でグループを構成し、復興事業計画の認定(グループ認定)を受けて、当該グループに参加する事業者が、被災した施設復旧等の費用について補助金交付申請を行うというものであった。 本件グループ補助金において、補助の対象となる費用は、前記地震による災害のため損壊するなどした施設等のうち、事業を行うのに不可欠な施設等の復旧・整備等のための事業に要する経費であって、県知事が補助の対象と認めたものとされていた。なお、本件グループ補助金の申請等に対応する窓口は、宮城県水産林政部水産業振興課(以下「水産業振興課」という。)であった。 2 本件グループ補助金の申請に関する主な事実経過等(1) 令和3年4月の主な事実経過等4月7日、Aは、水産業振興課の職員に対し、電話で、地震で被災した創水2号(冷蔵庫のこと)が使用不可能になっている、今回のグループ補助金で新分野事業での建替を行いたいなどと述べた。これに対し、水産業振興課の職員は、建替を行うには市町で発行する罹災証明において全壊・大規模半壊の判定が必要となるなどと回答した。なお、新分野事業とは、従前の施設等の復旧に代えて実施する新商品製造ラインへの転換、生産効率向上のための設備導入などをいう。 4月8日、被告人は、議会棟において、A同席の下、水産業振興課のCらに対し、新分野事業でB株式会社の冷蔵庫を新築したいが可能かなどを尋ね 造ラインへの転換、生産効率向上のための設備導入などをいう。 4月8日、被告人は、議会棟において、A同席の下、水産業振興課のCらに対し、新分野事業でB株式会社の冷蔵庫を新築したいが可能かなどを尋ね、Cらは、建替を行うには市町村の罹災証明で全壊・大規模半壊の判定が必要である旨などを回答した。 4月16日、グループ補助金についての説明会が実施された。その際、Aは、必要書類が多く負担となっている、手続の簡略化を検討すべき、罹災証明書の判定は素人が行うもの、外観に被害がなくとも、地下配管が破損していれば施設の機能は損なわれており、大規模半壊相当の被害であると考える、建替の可否は専門家によ- 4 - る診断書によって柔軟に対応すべきなどと述べた。 4月19日、被告人は、Aから専門家の見解書を受け取った後、議会棟において、Cらに対し、市町村の罹災証明で大規模半壊以上の判定がないと建替ができないとのことだが、市町村の職員は建築の専門知識がないのに判定を付けること自体おかしい、専門家の診断書を持参したので確認するように、問題がなければすぐにでも申請させるなどと述べた。また、被告人は、新分野事業による建替の場合、原資となる元の建物は取り壊しが必要であるとの県側の回答について、そのような取り扱いは間違いである旨指摘し、もう一度中小企業庁に確認するように指示した。 4月20日、被告人は、Cから、電話で、市町村の罹災証明による判定になること、原資となる元の建物は取り壊しが必要となるなどと説明を受けたが、納得せず、明日自分が中小企業庁に聞きに行くので訪問の約束をするように指示した。 4月21日、被告人は中小企業庁に赴き、①補助金の上限額が一事業者15億円であるところ、今回何か所か被災を受けているので、それらを集めて15億ぐらいに該当する1万トンくら 束をするように指示した。 4月21日、被告人は中小企業庁に赴き、①補助金の上限額が一事業者15億円であるところ、今回何か所か被災を受けているので、それらを集めて15億ぐらいに該当する1万トンくらいの冷蔵庫を建設することができるか、②専門家に聴取した意見が、市が出した罹災証明の代わりになるか、③元々の施設を残しつつ、新しいものを建ててもよいかを尋ねるなどした。 4月23日、被告人は、A同席の下、Cらに対し、新たに1万トンの冷凍設備を建築する(15億の費用)、原資は本社、創水1号、創水2号(旧本社)、他となり、創水2号分を取り壊すが、そこは200坪しかなく1万トンの冷凍設備を建築できない、また、創水2号部分は埋立地で地盤沈下するため、基礎部分に多くの費用がかかる、創水2号以外の原資は修繕で対応したい、冷凍設備を別の場所へ建てられないかなどと述べた。 4月28日、B株式会社は、水産業振興課に対し、補助事業に要する経費16億3401万円、補助金交付申請額12億2550万7500円とする申請書類等を提出した。 4月30日、Aは、経理担当従業員に指示して、政策研究会名義の口座に10万- 5 - 円を送金した。また、同日、Aは、被告人から電話で、新土地に移設した場合、既存土地に建替した場合、修繕した場合について2社見積もりを提出するように指示された。 (2) 令和3年5月から11月の主な事実経過等5月7日、B株式会社は、水産業振興課に対し、修繕する場合、その場で建て直す場合、新しい場所に移転して建て直す場合の3種類の見積書を提出した。 6月2日、被告人は、Cに対して本件グループ補助金の審査について進捗等を確認した。 6月30日、B株式会社ら6社によるグループ認定申請が受理された。 7月20日頃、被告人は、B株式会社に電話をかけ 6月2日、被告人は、Cに対して本件グループ補助金の審査について進捗等を確認した。 6月30日、B株式会社ら6社によるグループ認定申請が受理された。 7月20日頃、被告人は、B株式会社に電話をかけ、グループ認定申請が承認されたこと、B株式会社のグループ申請の内容が通るように今、動いていることなどを伝えた。 7月21日、宮城県知事は、本件グループ補助金についてグループ認定を行った。 8月6日、被告人は、Cに対して本件グループ補助金の審査について進捗等を確認した。 9月29日、水産業振興課の職員は、B株式会社に赴き、現地確認を行ったが、大きな被災状況は確認できなかった。 10月14日、Aは、経理担当従業員に指示して、政策研究会名義の口座に50万円を送金した。 10月15日、被告人は、中小企業庁を訪問し、地震で旧来の冷蔵庫が駄目になってしまったので建替が必要であり、国においてもスムーズな交付決定をお願いしたいなどと述べた。 10月18日、29日及び11月5日、被告人は、Cに対して本件グループ補助金の審査について進捗等を確認し、早期に手続を進めてほしい旨述べた。 11月26日、水産業振興課の職員は、2回目の現地確認を行ったが、申請にあるような被災状況は確認できなかった。 - 6 - (3) 令和3年12月の主な事実経過等12月15日、Aは、現行建築基準法での修繕は認められないとの県の方針に基づき、耐震補強を行わない方法で修繕した場合の見積書(見積金額が9億650万円のもの)を提出した。また、同日、被告人は、Cに対し、「どうなったの、こんなに時間かけてんのねえんだぞ。」などと叱責するとともに、会計検査院が入ったからといって県の責任にはならない、ここで止める理由は一つもないなどと述べて、年内に結論を出すように指示した。 んなに時間かけてんのねえんだぞ。」などと叱責するとともに、会計検査院が入ったからといって県の責任にはならない、ここで止める理由は一つもないなどと述べて、年内に結論を出すように指示した。 12月20日、被告人は、Cに電話をし、B株式会社は県から提出を求められた書類は全部提出していると述べた。また、被告人は、Cが現在提出されている書類では申請金額で補助金の交付を認めることは難しいと回答したことに対し、こういう事業は、申込、いわば被災を受けた人たちの意向に沿ってやらなきゃいけない、県が金出す訳ではないから、難しくする理由はどこにもない、とにかく進めるようになどと述べた。 12月24日、被告人は、Cに電話をし、本件グループ補助金の認定について方針が決まったかどうかを尋ねた。また、被告人は、認定した補助金額を回答しないCに対し、「事業者にしたって、結局申込の額出なければ、また俺んところに来るんだよ。」などと言って不満を述べた上、認定額をくり返し尋ね、Cがかなり低い旨回答すると、被告人は、Cに対し、査定する権限があるのか、話にならない、俺が事業者から100パーセント委任を受けて頼まれているなどと述べ、その後、一方的に電話を切った。 12月27日、被告人は、Cに電話で、Aに認定金額を伝えたのかどうかを尋ねた。Cが、翌28日午後にB株式会社へ行って伝える予定であると述べると、被告人は、自分もB株式会社に行くと述べた。 12月28日、被告人はCに、自分もB株式会社で同席し、色々と話を聞くこと、令和4年1月6日に中小企業庁に行くことを伝えた。12月28日午後、水産業振興課は、B株式会社に赴き、Aに対し、申告された被害の大部分を認めず、実被害- 7 - の修繕費用等として、創水2号について補助対象額を8699万5236円とする認定金額を 8日午後、水産業振興課は、B株式会社に赴き、Aに対し、申告された被害の大部分を認めず、実被害- 7 - の修繕費用等として、創水2号について補助対象額を8699万5236円とする認定金額を伝え、令和4年1月5日までに、金額を修正した申請書等を提出するように依頼した(なお、被告人は、打ち合わせ冒頭の5分間程度同席して話をしたのみで、認定金額を聞くことなく退席した。)。 (4) 令和4年1月の主な事実経過等1月4日、被告人は、宮城県議会庁舎1階応接室において、Cに対し、別表2の1記載の発言をした。 1月5日、被告人は、Aに電話をし、15億の見積もりを持って中小企業庁に行ってくる、建築基準法に従った見積もりを押す、これを原資扱いにして移設に持っていく旨を伝えた。 1月6日、B株式会社は、補助事業に要する経費15億3355万5251円、補助金交付申請額12億4542万9937円とする申請書等を提出した。また、同日、被告人は、中小企業庁に赴き、見積書を提供した上で現行の建築基準法による施工を認めてほしいなどと述べた。 1月7日、被告人は、宮城県議会庁舎1階応接室において、Cに対し、別表2の2記載の発言をした。また、同日、水産業振興課は、B株式会社に対し、既に伝えている認定金額に基づき修正した申請書等を1月11日までに提出するように伝えた。 1月11日、被告人は、Aに対し、電話で、政策研究会よろしくねなどと言って政策研究会名義の口座への送金を依頼した。 1月12日、被告人は、宮城県議会庁舎1階応接室において、Cに対し、別表2の3記載の発言をした。また、同日、水産業振興課は、B株式会社に対し、被告人より①事業費の再精査の指示と、②B株式会社において設計業者による被害報告を準備しているとうかがっており、現在①の再確認をしているところ 言をした。また、同日、水産業振興課は、B株式会社に対し、被告人より①事業費の再精査の指示と、②B株式会社において設計業者による被害報告を準備しているとうかがっており、現在①の再確認をしているところであること、1月14日午後3時までに②を提出するように求めるメールを送付した。 1月13日、B株式会社は、補助事業に要する経費15億3355万5251円、- 8 - 補助金交付申請額12億4542万9937円とする申請書(日付は同月14日)等を提出した。また、同日、Aは、経理担当社員等に指示するなどして、政策研究会名義の口座に50万円を送金した(以下「本件50万円」という。)。 1月19日、B株式会社は、本件グループ補助金の交付申請を取り下げた。 第3 争点に対する判断以下、便宜上、②権限に基づく影響力を行使したあっせん行為の有無、①請託の有無、③本件50万円の性質(対価性)、④故意の有無の順に判断を示すことにする。 1 権限に基づく影響力を行使したあっせん行為の有無(1) 前記認定事実、特に、令和4年1月4日、7日及び12日の被告人の発言内容等によれば、被告人は、それまでに県から申請通りの被災状況が認められないことなどを繰り返し説明され、令和3年12月28日には、申請額を大幅に下回る認定金額が伝えられているにもかかわらず、令和4年1月4日以降、Cに対し、本会議で取り上げて上司を追及することなどをちらつかせながら、県には審査権限がない、又は申請通り認めても県職員に責任はないなどと繰り返し申し向けて、暗に申請通りに本件グループ補助金の交付を認めるように強い働き掛けをしていることが明らかである。 そうすると、被告人が、県議会議員の権限に基づく影響力を行使して、あっせん行為をしたということができる。 (2) 弁護人は、被告人は、 付を認めるように強い働き掛けをしていることが明らかである。 そうすると、被告人が、県議会議員の権限に基づく影響力を行使して、あっせん行為をしたということができる。 (2) 弁護人は、被告人は、B株式会社の申請をそのまま認めてほしいという趣旨で働きかけをしたのではなく、県の審査方法に問題があると考えたために、再度精査してほしいとの考えであったなどと主張する。 しかし、令和4年1月4日、7日及び12日のやり取りの内容からして、そのように解するのは無理がある。 弁護人は、県はB株式会社の虚偽申請に気付いていたのであるから、被告人の働きかけによっても、判断が左右されるような現実的、具体的な可能性はなかったの- 9 - であり、「影響力を行使した」とはいえないとも主張する。 しかし、令和4年1月4日、7日及び12日の被告人の発言は、通常の公務員であれば、困惑又は畏怖するのに十分なもので、判断を左右されるような現実的、具体的な可能性が認められる態様であることに疑問はない。現に、被告人の働きかけに応じて、一度はB株式会社に対して認定金額を伝えていたにもかかわらず、提出期限の延期に応じ、事業費の再確認をするなどしていることは、このことを裏付けている。弁護人は、警察からの協力依頼があり、県が録画録音データを提供していた点も指摘しているが、そのことと本件グループ補助金申請に対する対応は別であり、前記結論を左右しない。 2 請託の有無(1) Aは、公判では、請託に関する具体的な状況につき覚えていないなどと供述したが、捜査段階において、令和3年4月19日及び令和4年1月4日に、本件グループ補助金が申請通りに交付されるように県に対する働きかけを依頼した旨供述している。 すなわち、①令和3年4月19日、被告人に対し、「県から、移転建替には大規 9日及び令和4年1月4日に、本件グループ補助金が申請通りに交付されるように県に対する働きかけを依頼した旨供述している。 すなわち、①令和3年4月19日、被告人に対し、「県から、移転建替には大規模半壊か全壊の罹災証明が必要だと言われた。」「塩竃市からは一部損壊の判定だけど、専門家から大規模半壊だと判断してもらっている。」「こういう見積書も出ている。」旨説明し、専門家に作ってもらった書類を、被告人に見せた。被告人は、それを見て、「こういう専門家の見解書出ているのか。」「これを県に持って行って説明するから。」「専門家がこういう意見を述べているんだから、それでいいはずだ。」「素人の市役所が判断することじゃない。」などと言った。私は、被告人が、被告人から専門家の見解書を県に見せて説明してもらって、その見解書を元に申請が進むようにしてほしいという思いで、「お願いします。」と言って、見解書をコピーして被告人に渡した。②令和4年1月4日、被告人は、年末に県から言われた話をもう一度聞いてくれて、その日に県に行って話をしてくると言ってくれた。その後、被告人から電話があり、「今から県と2時間打ち合わせてくる。」「国はいいって言- 10 - っているのに県はなんなんだ。」「県に出している書類のどこが駄目なのか聞いてみる。」などと言ってくれた。私は、被告人が県に掛け合ってくれると言ってくれたので、ここは被告人に任せて県を説得してもらおうと思い、被告人に、「よろしくお願いします。」と言った。 (2) Aの前記供述の信用性を検討すると、まず、令和3年4月19日のやり取りについては、同日、被告人が、Cに対し、罹災証明で大規模半壊以上の判定がないと建替ができないことはおかしい、専門家の診断書を持参したので確認するように、問題がなければすぐ 3年4月19日のやり取りについては、同日、被告人が、Cに対し、罹災証明で大規模半壊以上の判定がないと建替ができないことはおかしい、専門家の診断書を持参したので確認するように、問題がなければすぐにでも申請させるなどと述べていることと整合している。また、被告人が、4月19日以降、県職員に対し、電話や面談を通じて、本件グループ補助金の審査の進捗を確認するとともに、早期の交付を求めることを繰り返していたほか、わざわざ中小企業庁を訪問して本件グループ補助金の補助金交付に向けた働きかけをしていること、被告人が、Aに対してグループ認定が承認されたことに加え、申請が通るように動いている旨を伝えたり、Cに対して申請通りの額が認められなければ事業者は自分のところに来る、自分は事業者から委任を受けて頼まれているなどと述べていることも、Aから請託を受けていたことに照らして、自然な事実経過といえる。 令和4年1月4日のやり取りに関して見ても、Aが、令和3年12月に9億あまりに減額した見積書を提出し、同月28日には県から大幅に減額した認定金額を伝えられ、同金額で新たに申請書を提出するように依頼されているにもかかわらず、令和4年1月6日に、認定金額を無視した金額で申請書を提出していることや、同月4日以降、被告人が、県議会議員の権限に基づく影響力の行使をちらつかせながら、それまで以上に働きかけを強めていることとよく整合している。 加えて、Aは、請託があったと虚偽を述べても、自らの責任を免れることができるという状況にはない上、これまで世話になっていた被告人に不利益な供述をする動機は乏しい。 以上からすると、捜査段階におけるAの前記供述は信用できる。 - 11 - (3) 弁護人は、被告人は、塩竃水産業全体のことを考えて本件補助金申請を支援していたのであ をする動機は乏しい。 以上からすると、捜査段階におけるAの前記供述は信用できる。 - 11 - (3) 弁護人は、被告人は、塩竃水産業全体のことを考えて本件補助金申請を支援していたのであり、これは塩竃港復興のために行われた政治活動であり、「請託」には当たらないと主張する。 しかし、前記のとおり、Aの捜査段階における供述より、Aから申請通り本件グループ補助金が交付されるように働きかけてほしいと依頼されたと認められるのであって、本件グループ補助金が交付されることによって塩竃水産業全体の発展や復興に資するとの考えを有していたとしても、請託があったといえることに変わりはない。 弁護人は、令和3年4月19日の請託について、補助金の申請日は4月28日であり、まだ申請金額が決まっていなかったこと、罹災証明書の交付日は21日であったことからして、Aが供述するような請託があったはずはないとも主張する。 しかし、令和3年4月21日に、被告人が、中小企業庁の担当者との会合で「15億ぐらいに該当する1万トンくらいの冷蔵庫を建設することができるか」などと発言していることからすると、4月19日の時点で約15億の申請をする旨の説明があったとしても、なんら不自然ではない。 また、関係証拠によれば、罹災証明書の交付はまだでも、令和3年4月19日の時点で、被告人が、専門家の診断書により建替を認められるように働きかけをしていたことは明らかである。さらに言えば、令和3年4月16日に実施された説明会においても、Aが罹災証明による判定について不満を述べていたことからしても、同月19日に罹災証明の話が出るはずがないなどとはいえない。 そうすると、弁護人の主張はいずれも理由がない。 (4) なお、検察官は、令和3年12月28日及び29日にも請託があったと主張している 同月19日に罹災証明の話が出るはずがないなどとはいえない。 そうすると、弁護人の主張はいずれも理由がない。 (4) なお、検察官は、令和3年12月28日及び29日にも請託があったと主張しているが、Aの公判供述によっても、被告人から頑張ろうといわれたのに対し、「わかりました。」と答えたことが認められるのみで、その詳細は判然としない。 したがって、請託というためには必ずしも明示的なやり取りは不要と解されることを踏まえても、請託があったと認めるのは困難である。 - 12 - 3 本件50万円の性質(対価性)について(1) 本件50万円は、1月11日に被告人から政策研究会よろしくねと言われたことに基づき、同月13日に送金されたものであるところ、これらの日時は、被告人が現に県に対して働きかけを行っている中又はその直後である。また、1月12日、B株式会社は、県から、被告人の指示により事業費の再精査をしている旨の連絡を受け、翌13日には、すでに大幅に減額する旨の査定がなされているにもかかわらず、改めて補助事業に要する経費を15億円余りとする申請書を提出しており、被告人による働きかけが一定の進展をもたらしていることも踏まえると、本件50万円は、被告人による一連の働きかけの見返り又は謝礼であったと推認できる。 加えて、Aも、公判廷において、被告人が申請通りに本件グループ補助金の交付決定が出るように県職員に働きかけるなどしてくれたことから、献金とお礼の趣旨で送金したと供述していることも併せ考えれば、本件50万円は、本件グループ補助金が申請通りに交付されるように働きかけたことに対する見返り又は謝礼であったと認められる。 (2) 弁護人は、①Aは、本件以前も被告人の政治活動を応援し、会費支払やパーティー券の購入を通じて応援してきたのであるから されるように働きかけたことに対する見返り又は謝礼であったと認められる。 (2) 弁護人は、①Aは、本件以前も被告人の政治活動を応援し、会費支払やパーティー券の購入を通じて応援してきたのであるから、今回の資金提供も同様に政治献金であると推認できる、②Aは、「お礼」と言っているが、「報酬」とは言っていない、③報酬にしては低額すぎる、④年が明けても認められるような事態の動きもないのに、50万円を送金しており、本件申請との関連性が低いなどと主張する。 しかし、①Aは、政策研究会について、規約通りに定期的に会費を支払っていたわけでもないこと、被告人も捜査段階において、政策研究会の実態はなく、働きかけに対する謝礼をしたいというものに対して、政策研究会の会費として入金してもらったものと供述していることからすると、そもそもAがこれまで政策研究会に支払ってきた各金員について純然たる政治献金とはいい難く、このことからすれば、前記認定を左右するものではない。②については、Aは働きかけの対価という趣旨で「お礼」と述べていると認められる。③については、その時点では、まだ申請通- 13 - りの金額が交付されたことが決まったわけでないことも踏まえれば、その時点における報酬として不自然なほど低額であるとはいえない。④については、前記のとおり、被告人による働きかけをした結果、申請書等の提出期限が延期されるとともに、事業費の再検討が行われていると認められるのであって、何らの動きもなかったとはいえない。したがって、この点に関する弁護人の主張は採用できない。 4 被告人の故意について被告人は、政策研究会の会費が、規約通りに定期的に支払われているといった状況もない中で、前記のとおり、Aから請託を受けて県職員に対して本件グループ補助金が申請通り交付されるよ 被告人の故意について被告人は、政策研究会の会費が、規約通りに定期的に支払われているといった状況もない中で、前記のとおり、Aから請託を受けて県職員に対して本件グループ補助金が申請通り交付されるように強い働きかけをし、それに近接した日時に支払を求めて、それを受け取っていることからすれば、少なくとも被告人が本件50万円について働きかけの見返り又は謝礼を含む趣旨であることは当然認識していたと推認できる。 第4 結論以上の検討によれば、他に弁護人が主張する点を踏まえて検討しても、被告人にあっせん利得処罰法違反が成立する。 (法令の適用)【省略】(量刑の理由)本件は、県議会議員であった被告人が、水産加工業等を営む会社の代表取締役から請託を受けて、議員の権限に基づく影響力を行使して、本件グループ補助金が申請どおりの金額で認められるようにあっせんをし、その報酬として現金50万円を受け取ったという事案である。 被告人は、前記会社に対する補助金が申請通りに交付されるようにするため、県職員が被災状況が十分確認できず、申請通りの交付は難しいなどと再三説明しているにもかかわらず、繰り返し県職員と面会した上、部長を本会議でやっつけるのは簡単だなどと申し向けるなどして、強引かつ執拗な働きかけを行い、その対価を受- 14 - け取っている。このような被告人の行為は、県民全体の利益のために行動することが期待されている県議会議員の職責にそぐわないものであり、公職にある者の政治活動の廉潔性及びこれに対する県民の信頼を害するものである。被告人において、本件グループ補助金の活用により塩竃港の復旧や発展を図りたいとの考えが背景としてあったにせよ、法律を遵守しなければならないことは当然である。これらのことからすると、被告人の刑事責任は重いというべきであ 件グループ補助金の活用により塩竃港の復旧や発展を図りたいとの考えが背景としてあったにせよ、法律を遵守しなければならないことは当然である。これらのことからすると、被告人の刑事責任は重いというべきである。 そこで、被告人にみるべき前科のないことなどの事情を考慮し、被告人に対しては、主文の刑に処した上で、その刑の執行を猶予することにした。 (求刑-懲役2年、追徴)令和7年6月12日仙台地方裁判所第2刑事部 裁判長裁判官須田雄一 裁判官小林礼子 裁判官髙橋祐梨子

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る